筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置
【課題】 本発明は圧縮行程噴射モードと吸気行程噴射モードとの間の切り換え時における失火を防止して、エンジンのトルク変動又はトルク低下を防止する。
【解決手段】 内燃機関の圧縮行程時に燃料を噴射する圧縮行程噴射モードと、内燃機関の吸気行程時に燃料を噴射する吸気行程噴射モードとを切り換え可能に構成されるとともに、圧縮行程噴射モードとして、圧縮行程上死点近傍において点火プラグに向けて燃料を噴射するとともに燃料に直接点火する第1の燃料噴射モードと、圧縮行程時に第1の燃料噴射モードの燃料噴射タイミングよりも早期のタイミングで燃料を噴射してピストンの上昇により燃料を点火プラグ近傍に集めて点火するモード第2の燃料噴射モードとを有し、第1の燃料噴射モードと吸気行程噴射モードとの切り換え時には、第2燃料噴射モードを介して切り換えを行なうようにする。
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【解決手段】 内燃機関の圧縮行程時に燃料を噴射する圧縮行程噴射モードと、内燃機関の吸気行程時に燃料を噴射する吸気行程噴射モードとを切り換え可能に構成されるとともに、圧縮行程噴射モードとして、圧縮行程上死点近傍において点火プラグに向けて燃料を噴射するとともに燃料に直接点火する第1の燃料噴射モードと、圧縮行程時に第1の燃料噴射モードの燃料噴射タイミングよりも早期のタイミングで燃料を噴射してピストンの上昇により燃料を点火プラグ近傍に集めて点火するモード第2の燃料噴射モードとを有し、第1の燃料噴射モードと吸気行程噴射モードとの切り換え時には、第2燃料噴射モードを介して切り換えを行なうようにする。
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮行程時に燃料噴射を実行可能な筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、筒内(シリンダ内)に直接燃料を噴射する筒内噴射型のガソリンエンジンが実用化されている。一般的に、このような筒内噴射型のガソリンエンジンにおいては、圧縮行程に燃料を噴射する圧縮行程噴射モードと吸気行程に燃料を噴射する吸気行程噴射モードとが切り換え可能に設定されている。このうち圧縮行程噴射モード(圧縮リーン噴射モード)は、ピストンが上昇する途中で燃料を噴射するモードであって、気筒内に層状の混合気を形成して、超希薄(超リーン)な空燃比で安定した燃焼を実現するものである。つまり、層状の吸気流を利用して噴射燃料を点火プラグの近傍に集めることができるため、点火プラグの近傍のみは着火性のよい空燃比状態(即ち、理論空燃比又は理論空燃比よりもやや濃化側の空燃比状態)として安定した着火性能を得ながら、全体としては極めて希薄な空燃比にして大幅に燃費を節約しながら運転することができるのである。
【0003】
また、吸気行程噴射モードでは、燃料の予混合により燃焼室全体の空燃比状態を均一化しながら、安定した着火と確実な火炎伝播を実現して十分な高出力を得られるように運転を行なうことができる。なお、吸気行程噴射モードには、空燃比を理論空燃比(ストイキオ)近傍として大きな出力を得られるようにしたストイキオモードと、空燃比をストイキオよりも希薄にして燃費の向上を図るリーンモードと、急加速時等に一時的に空燃比をストイキオよりも濃化(リッチ)にするエンリッチモード等が設けられている。
【0004】
そして、このような筒内噴射エンジンでは、エンジン回転数及びエンジン負荷に基づいて、圧縮行程噴射モード(圧縮リーンモード),吸気行程噴射ストイキオモード(ストイキオモード),吸気行程噴射リーンモード(吸気リーンモード),吸気行程噴射エンリッチモード(エンリッチモード)等の各運転モードが切り換えられる。
また、圧縮行程噴射モードとしては、圧縮行程上死点近傍で点火プラグへ向けて燃料を噴射して、この燃料に直接点火するようにした噴射モード(スプレーガイド噴射モードという)と、圧縮行程の上死点前にピストンの頂面に向けて燃料を噴射し、ピストンの上昇により燃料を点火プラグの近傍に集めて点火するモード(ウォールガイド噴射モード)とが知られている。
【0005】
このうちウォールガイド噴射モードは、気筒内で形成される層状の吸気流を利用した層状燃焼により超希薄(超リーン)な空燃比で安定した燃焼を実現する噴射モードである。この噴射モードでは、ピストンに向けて噴射した燃焼噴霧がピストンの上昇により集められ、点火プラグの先端付近では比較的リッチな混合気を形成するとともに、この混合気の周囲には略空気のみの層が形成される。したがって、全体としては極めて希薄な空燃比(吸気行程噴射のリーンモードよりもリーンな空燃比)としながら良好な燃焼を実現でき、燃費を節約しながら運転することができる。
【0006】
また、スプレーガイド噴射モードでは、点火プラグへ向けて燃料を直接的に噴射することで、燃焼室内に層状希薄状態を形成することができ、上述のウォールガイド噴射モードよりもさらに超希薄な空燃比で安定した燃焼状態を得ることができる。
なお、下記の特許文献1には、圧縮行程噴射モードとして、燃料噴射中又は燃料噴射直後のピストンに衝突する以前の燃料に点火する第1の運転モードと、燃料噴射終了後ピストンを経由した燃料に点火する第2の運転モードとをそなえ、これらの運転モードをエンジン運転状態に応じて切り換える技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−353594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したスプレーガイド噴射モードでは、圧縮行程噴射時に燃料噴霧に直接点火するため、超リーン域での燃焼が安定しており燃費の良い運転が可能である。このため、極力スプレーガイド噴射モードで運転を行いたいという要望がある。
しかし、スプレーガイド噴射モードでは発生可能な出力トルクが低く、全運転域でスプレーガイド噴射モードを実行することは不可能である。このため、負荷の高い運転域や回転数の高い運転域では、吸気噴射モードでの運転に切り換えが必要となる。
【0008】
図8はこのようなスプレーガイド噴射モード(圧縮行程噴射モード)からストイキオモード(吸気行程噴射モード)への切り換え時のエンジントルク特性の変化を説明するためのタイムチャートであって、(a)はエンジントルク、(b)は制御A/F(目標空燃比)、(c)は燃料噴射時期、(d)は体積効率Ev、(e)はスロットルバルブ開度ETV、(f)は燃料噴射モードである。
【0009】
さて、エンジン負荷や回転数等の変動により、図8(f)に示すように、燃料噴射モードをストイキオモード(吸気行程噴射モード)からスプレーガイド噴射モード(圧縮行程噴射モード)に切り換えられると(t=t1)、エンジンに要求されるトルクが同一であっても要求される空気量に差があるため、この場合はETV(電子制御スロットルバルブ)の開度を増大させる〔図8(e)参照〕。
【0010】
しかし、ETV開度を変更しても、筒内に吸入される空気量は、スロットルバルブから燃焼室までの間の容積に起因する応答遅れがあるため、空気量の変化は瞬時に反映されない。したがって、図8(d)に示すように、体積効率はETVの開度変化よりも遅れて増加することとなり、図8(b)に示すように目標空燃比は出力トルクに大きな変動が生じないように空気量変化に合わせて滑らかに変える必要がある。
一方、図10に示すように、スプレーガイド噴射モードでは空燃比をリッチ化するほど、安定して燃焼する運転域が狭くなる傾向にあり、空燃比A/F25未満ではトルク低下や失火を招くおそれがある。これに対して、上述したようなストイキオモードからスプレーガイド噴射モードへの実際の切り換え時(t=t2)には空燃比A/F25未満、具体的にはA/F19〜24程度で切り換えられるので、燃料噴射タイミングの切り換え時に失火域に突入し、トルク変動が生じる恐れがある〔図8(a),(c)参照〕。また、切り換えタイミング直前においても、ストイキオモードのリーン限界を超えているため同様に失火が発生するおそれがある。
【0011】
図9は空燃比をパラメータとしてこのような燃料噴射モード毎のエンジンのトルク特性を示す図であって、図示するようにストイキオモード及びスプレーガイド噴射モードではいずれも空燃比A/F25前後でトルクが大きく落ち込んでおり、失火していることがわかる。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、圧縮行程噴射モードと吸気行程噴射モードとの間の切り換え時における失火を防止して、エンジンのトルク変動又はトルク低下を防止するようにした、筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明の筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置は、筒内に燃料を直接噴射して点火プラグにより着火する筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置であって、該内燃機関の圧縮行程時に該燃料を噴射する圧縮行程噴射モードと、該内燃機関の吸気行程時に該燃料を噴射する吸気行程噴射モードとを切り換え可能に構成されるとともに、該圧縮行程噴射モードとして、空燃比がリーンになるほど燃焼安定領域が広がる第1の燃料噴射モードと、該空燃比がリッチになるほど燃焼安定領域が広がる第2の燃料噴射モードとを有し、該第1の燃料噴射モードと該吸気行程噴射モードとの切り換え時には、該第2燃料噴射モードを介して切り換えを行うことを特徴としている。
【0013】
また、該圧縮行程噴射モードとして、圧縮行程上死点近傍において点火プラグに向けて燃料を噴射するとともに、該燃料に直接点火する第1の燃料噴射モードと、圧縮行程時に該第1の燃料噴射モードの燃料噴射タイミングよりも早期のタイミングで燃料を噴射するとともに、ピストンの上昇により該燃料を該点火プラグ近傍に集めて点火する第2の燃料噴射モードとを有し、該第1の燃料噴射モードと該吸気行程噴射モードとの切り換え時には、該第2燃料噴射モードを介して切り換えを行うことを特徴としている。
【0014】
また、該吸気行程噴射モードと該第1の燃料噴射モードとの切り換え時には、目標空燃比が第1の所定値以下であると該吸気行程噴射に設定され、該目標空燃比が該第1の所定値よりも大きく、且つ該第1の所定値よりも希薄な第2の所定値未満であると該第2の燃料噴射モードに設定され、該目標空燃比が該第2の所定値以上であると該第1の燃料噴射モードに設定されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、圧縮行程噴射モードと吸気行程噴射モードとの切り換え時における失火を防止でき、トルクの低下やトルク変動を防止することができ、ドライバビリティの向上を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜図7を用いて本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置を説明すると、図1はその要部の機能構成を示す模式的なブロック図、図2及び図3は内燃機関の要部構成を示す模式図であって、図2は第1の燃料噴射モードについて説明するための図、図3は第2の燃料噴射モードについて説明するための図、図4は第1及び第2の燃料噴射モードの特性について説明するための図、図5はその作用について説明するためのフローチャート、図6はその作用について説明するためのタイムチャート、図7はその作用について説明するための図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、本発明に適用される内燃機関(エンジン)は、筒内に直接燃料を噴射して点火するようにした筒内噴射型内燃機関1であって、本実施形態ではガソリンエンジンが適用されている。
図示するように、このエンジン1の燃焼室3は、シリンダヘッド8の下面と、シリンダ7の壁面と、ピストン2の頂面とにより形成されている。また、シリンダヘッド8には燃料噴射弁(以下、単にインジェクタという)4が取り付けられている。このインジェクタ4は、その先端側が燃焼室3に臨むように配設されており、このインジェクタ4から燃焼室3内に直接燃料が噴射されるようになっている。
【0018】
一方、燃焼室3の下面を形成するピストン2の頂面には、図示するような凹部(キャビティという)6が形成されており、この凹部6は、本実施形態では下に凸状に湾曲した球面状に形成されている。なお、このような凹部6の形状としては球面に限定されるものではなく種々の形状を適用することができる。
また、シリンダヘッド8の中央よりもやや偏倚した位置に点火プラグ5が取り付けられている。そして、インジェクタ4と点火プラグ5は、少なくともインジェクタ4から供給される燃料が直接点火プラグ5の先端に到達可能なように燃料噴射方向や点火プラグ5の突き出し量等が設定されている。
【0019】
ところで、図1に示すように、エンジン1には、その作動全般を電気的に制御するECU(制御手段;コントローラ)11が付設されている。
また、上記コントローラ11の入力側にはエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ15、エンジン負荷としての吸気量を検出するエアフローセンサ(AFS)16が接続されている。
【0020】
また、コントローラ11内には、燃料噴射モードを切り換えるための燃料噴射モード切り換え手段12が設けられており、上述のエンジン回転数センサ15及びエアフローセンサ16で得られるエンジン回転数Ne及び負荷(ここでは体積効率Ev)に基づいて、この燃料噴射モード切り換え手段12により燃料噴射モードが設定されるようになっている。
【0021】
なお、エアフローセンサ16に代えてアクセル開度センサやスロットル開度センサを設け、これらのセンサの検出情報に基づいてエンジン負荷を検出するようにしてもよい。
ここで、図示するように、燃料噴射モード切り換え手段12には、インジェクタ4に対して吸気行程噴射に適したタイミングでインジェクタ駆動信号を出力する吸気行程噴射用インジェクタ制御手段13と、インジェクタ4に対して圧縮行程噴射に適したタイミングでインジェクタ駆動信号を出力する圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段14とをそなえている。
【0022】
また、燃料噴射モード切り換え手段12には、エンジン回転数Ne及び負荷Evをパラメータとしたマップ(図示省略)が記憶されており、これらのパラメータに応じた燃料噴射モードがマップから読み出されて、燃料噴射モードが設定されるようになっている。そして、所定の運転条件が成立すると、圧縮行程噴射モードが選択され、これ以外では吸気行程噴射モードが選択されるようになっている。なお、ここで所定の運転条件とは、スロットル開度が所定開度以下の低負荷運転域、エンジン回転数が所定回転数以下の低回転域、燃圧が所定値以上等である。
【0023】
そして、圧縮行程噴射モードが選択されると、圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段14からインジェクタ4に対する制御信号が出力されて、インジェクタ4の作動が制御される。この場合には、圧縮行程にあるときに燃料噴射を行い、燃焼室内に全体として超リーンな混合気を形成して燃焼を行う。
また、吸気行程噴射モードが選択されると、吸気行程噴射用インジェクタ制御手段13からインジェクタ4に対する制御信号が出力されて、インジェクタ4の作動が制御される。この場合には、吸気行程にあるときに燃料噴射を行い、燃焼室内にエンジン1の運転状態に応じた空燃比の混合気を形成して燃焼を行う。
【0024】
また、燃料噴射モードとしては、上述のような圧縮行程噴射モードと吸気行程噴射モードとに大別されるが、これらの各モードにはさらに複数の異なる燃料噴射モードが設けられている。このうち圧縮行程噴射モード(圧縮リーン噴射モード)としては、ピストン2が圧縮行程上死点近傍にあるときに点火プラグ5へ向けて燃料を噴射して、この燃料に直接点火するようにした噴射モード(スプレーガイド噴射モード;第1の燃料噴射モード、図2参照)と、圧縮行程の上死点前にピストン2の凹部6に向けて燃料を噴射し、ピストン2の上昇により燃料を点火プラグ5の近傍に集めて点火するモード(ウォールガイド噴射モード;第2の燃料噴射モード、図3参照)とをそなえている。
【0025】
このうちウォールガイド噴射モードは、気筒内で形成される層状の吸気流を利用した層状燃焼により超希薄(超リーン)な空燃比で安定した燃焼を実現する噴射モードである。この噴射モードでは、図3に示すように、ピストン2の凹部6に向けて噴射した燃焼噴霧がピストン2の上昇により集められ、点火プラグ5の先端付近では比較的リッチな混合気が形成されるとともに、この混合気の周囲には略空気のみの層が形成される。したがって、全体としては極めて希薄な空燃比としながら良好な燃焼を実現でき、燃費を節約しながら運転することができる。
【0026】
また、スプレーガイド噴射モードでは、図2に示すように、点火プラグ5へ向けて燃料を直接的に噴射することで、燃焼室3内に層状希薄状態を形成することができ、上述のウォールガイド噴射モードよりもさらに超希薄な空燃比で安定した燃焼状態を得ることができる。
ここで、図1に示すように、圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段14には、燃料噴射モードをスプレーガイド噴射モードに設定するスプレーガイド噴射モード設定手段(図中、S/G噴射モードと記す)14aと、燃料噴射モードをウォールガイド噴射モードに設定するウォールガイド噴射モード(同じく、図中、W/G噴射モードと記す)14bとが設けられており、圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段14ではエンジン回転数情報及びエンジン負荷情報等に応じて、スプレーガイド噴射モードとウォールガイド噴射モードとを切り換えるようになっている。
【0027】
なお、本実施形態においては、燃料噴射を開始するタイミングを変更することでこれら2つのモード(スプレーガイド噴射モード及びウォールガイド噴射モード)を切り換えることができる。
一方、吸気行程噴射モードでは、燃料の予混合により燃焼室全体の空燃比状態を均一化しながら、安定した着火と確実な火炎伝播を実現して十分な高出力を得られるように運転を行なうことができ、空燃比を理論空燃比(ストイキオ)近傍として大きな出力を得られるようにしたストイキオモード、空燃比をストイキオよりも希薄にして燃費の向上を図るリーンモードと、急加速時等に一時的に空燃比をストイキオよりも濃化(リッチ)にするエンリッチモード等が設けられている。
【0028】
このため、図1に示すように、吸気行程噴射用インジェクタ制御手段13には、燃料噴射モードをストイキオモードに設定するストイキオモード設定手段13aと、エンリッチモードに設定するエンリッチモード設定手段13bと、リーンモードに設定するリーンモード設定手段13cとを備えており、これらの各設定手段13a〜13cにより、吸気行程噴射時の燃料噴射量や燃料噴射タイミングが設定されるようになっている。
【0029】
なお、吸気行程噴射モードについては従来より広く知られたものであるので、この吸気行程噴射モードについての詳細な説明については省略する。
次に、本発明の要部について説明すると、本装置では吸気行程噴射モード(主にリーンモード)とスプレーガイド噴射モードとの間の切り換え制御に特徴がある。すなわち、本装置では、吸気行程噴射モードからスプレーガイド噴射モードへの切り換え時及びスプレーガイド噴射モードから吸気行程噴射モードへの切り換え時には、一旦ウォールガイド噴射モードを介してから切り換えを行うように構成されている。
【0030】
具体的には、スプレーガイド噴射モードで運転中にエンジン回転数Ne又はエンジン負荷Evが変動して吸気行程噴射モードの運転域にエンジン運転状態が変化すると、すぐに吸気行程噴射に移行するのではなく、まずスプレーガイド噴射モードからウォールガイド噴射モードに切り換え、次いでウォールガイド噴射モードから吸気行程噴射モードに切り換えるようになっているのである。なお、これとは逆の吸気行程噴射モードからスプレーガイド噴射モードへの切り換え時にも同様であって、この場合には、まず吸気行程噴射モードからウォールガイド噴射モードに切り換えてから、ウォールガイド噴射モードからスプレーガイド噴射モードへ切り換えるようになっている。
【0031】
これは、スプレーガイド噴射モードから直接吸気行程噴射モードへ切り換えたり、或いは、吸気行程噴射モードから直接スプレーガイド噴射モードに切り換えたりしてしまうと、これらの燃料噴射モードでは燃焼が不安定なる運転域を通るため、失火が生じやすくなり、エンジントルクが低下するからである。なお、燃焼が不安定なる運転域とは、具体的には空燃比が19〜24程度の運転領域である。
【0032】
そこで、本装置では、このような領域の空燃比でも安定した燃焼状態が得られるウォールガイド噴射モードに一旦切り換えてから、スプレーガイド噴射モード又は吸気行程噴射モードへ切り換えるようにしているのである。
ここで、図4はスプレーガイド噴射モードとウォールガイド噴射モードとの燃焼特性について説明する図であって、横軸が燃料噴射時期、縦軸が点火時期を示しており、安定した燃焼を得られる領域を空燃比(A/F)毎に示している。
【0033】
この図からもわかるように、スプレーガイド噴射モードでは安定した燃焼を得られる空燃比は25〜40程度であり、空燃比がリーンになるほど燃焼安定領域が広がる特性を有している。一方、ウォールガイド噴射モードでは、安定した燃焼を得られる空燃比は20〜25程度であり空燃比がリッチになるほど燃焼安定領域が広がる特性を有している。
このようなスプレーガイド噴射モードでは空燃比が25〜40と非常にリーンであるため燃費の向上を図ることができるものの、空燃比が24以下の領域では安定した燃焼を得られず失火を生じる場合がある。
【0034】
これに対して、例えば空燃比25のときの燃焼安定領域はスプレーガイド噴射モードよりもウォールガイド噴射モードの方が広く、空燃比25以下の領域では、ウォールガイド噴射モードの方が燃焼を良好に保つことができる。
そこで、本実施形態では、エンジン回転数及びエンジン負荷情報からスプレーガイド噴射モード(又は吸気行程噴射モード)から吸気行程噴射モード(又はスプレーガイド噴射モード)への切り換えが判定されると、目標空燃比A/Fを監視して、この目標空燃比A/Fが例えば18以下であれば吸気行程噴射(リーンモード)に設定し、目標空燃比A/Fが25以上であればスプレーガイド噴射モードに設定し、目標空燃比A/Fが18〜25の領域にあるときには、制御マップ上では要求されていないウォールガイド噴射モードにあえて設定するようになっている。
【0035】
つまり、スプレーガイド噴射モードと吸気行程噴射モードとの間で燃料噴射モードの切り換えが行われる場合に、エンジン回転数やエンジン負荷等の情報からは本来は設定されないウォールガイド噴射モードに一旦切り換えるのである。この場合、上述のように、目標空燃比A/F≦18のとき吸気行程噴射モード、18<目標空燃比A/F<25のときウォールガイド噴射モード、目標空燃比A/F≧25のときスプレーガイド噴射モードにそれぞれ設定することにより、燃料噴射モード切り換え時の失火を防止して、トルクの低下を防止しているのである。
【0036】
本発明の一実施形態に係る筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置は上述のように構成されているので、その作用を図5に示すフローチャートを用いて簡単に説明すると以下のようになる。
まず、燃料噴射モードの切り換え中か否かを判定する(ステップS1)。具体的には、このステップS1では、吸気行程噴射モードからスプレーガイド噴射モードへの切り換え中か否か、又はスプレーガイド噴射モードから吸気行程噴射モードへの切り換え中か否かを判定する。
【0037】
切り換え中でなければそのままリターンし、切り換え中であれば、空気量の変化に合わせて制御A/F(目標空燃比)を滑らかに変化させる(ステップS2)。そして、制御A/Fが第1の所定値(ここでは18)より大きいか否かを判定し(ステップS3)、所定値以下であれば燃料噴射モードとして吸気行程噴射(リーンモード)に設定する(ステップS4)。
【0038】
一方、制御A/Fが18より大きければ、圧縮行程噴射に設定する(ステップS5)。ここで、エンジン回転数が所定回転数(例えば1500rpm)未満であって(ステップS6)、且つ制御A/Fが第2の所定値(ここでは25)未満であれば(ステップS7)、ウォールガイド噴射モードに設定し(ステップS8)、エンジン回転数が所定回転数以上、又は制御A/Fが25以上であればスプレーガイド噴射モードに設定して(ステップS9)、リターンする。
【0039】
なお、このフローチャートにおいて、エンジン回転数が所定回転数以上であるとスプレーガイド噴射モードに設定するようにしているのは、所定回転数以上ではウォールガイド噴射モードが成立しなくなるからである。
次に、本装置の作用を図6(a)〜(g)に示すタイムチャートを用いて説明する。なお、(a)はエンジントルク、(b)は制御A/F(目標空燃比)、(c)は点火時期、(d)は燃料噴射時期、(e)は体積効率、(f)はスロットルバルブ開度、(g)は燃料噴射モードである。
【0040】
さて、エンジン負荷や回転数等の変動により、図6(g)に示すように、燃料噴射モードがストイキオモード(吸気行程噴射モード)から圧縮行程噴射モードに切り換えられると(t=t1)、エンジンに要求されるトルクが同一であっても要求される空気量に差があるため、ETV(電子制御スロットルバルブ)の開度が増大していく〔図6(f)参照〕。
【0041】
しかし、スロットルバルブから燃焼室までの間には大きな容積が存在するため空気量の変化は瞬時に反映されない。したがって、図6(e)に示すように、体積効率EvはETV開度変化よりも遅れて増加することとなり、このとき出力トルクに大きな変動が生じないように空気量変化に合わせて制御A/Fを滑らかに変化させる〔図6(b)参照〕。
そして、図6(d)及び図7に示すように、制御A/Fが第1の所定値より大きくなると、実際の燃料噴射モードが圧縮行程噴射のうちウォールガイド噴射モードに設定される(t=t2)。なお、このときには図6(c)に示すように点火時期をいったん遅角させる。そして、このように一旦ウォールガイド噴射モードに切り換えることにより、吸気行程噴射及びスプレーガイド噴射モードにおける失火領域を回避することができる。
【0042】
その後、制御A/Fが第2の所定値(>第1の所定値)以上になると、スプレーガイド噴射モードに設定するとともに、点火時期をスプレーガイド噴射モードに適したタイミングに設定する。
そして、このように吸気行程噴射モードとスプレーガイド噴射モードとを切り換える際には、一旦ウォールガイド噴射モードを介して切り換えを行うことにより、吸気行程噴射モードとスプレーガイド噴射モードとの切り換え時の失火を回避することができ、エンジンのトルク変動又はトルク低下を極力防止することができる〔図6(a)参照〕。
【0043】
以上説明したように、本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、圧縮行程噴射モードと吸気行程噴射モードとの間の切り換え時における失火を防止して、エンジンのトルク変動又はトルク低下を防止することができる。したがって、ドライバビリティも向上する。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、第1の燃料噴射モード及び第2の燃料噴射モードはそれぞれスプレーガイド噴射モード及びウォールガイド噴射モードに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置の機能構成を示す模式的なブロック図である。
【図2】本発明に適用される筒内噴射型内燃機関の要部構成を示す模式図であって、第1の燃料噴射モードについて説明するための図である。
【図3】本発明に適用される筒内噴射型内燃機関の要部構成を示す模式図であって、第2の燃料噴射モードについて説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置の第1及び第2の燃料噴射モードの特性について説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置の作用について説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置の作用について説明するためのタイムチャートである。
【図7】本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置の作用について説明するための図であって、燃料噴射モードの切り換えの特性を説明する図である。
【図8】従来技術の課題について説明するための図である。
【図9】従来技術の課題について説明するための図である。
【図10】従来技術の課題について説明するための図である。
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン(内燃機関)
2 ピストン
3 燃焼室
4 インジェクタ(燃料噴射弁)
5 点火プラグ
6 凹部
7 シリンダ
8 シリンダヘッド
11 コントローラ(制御手段)
12 燃料噴射モード切り換え手段
13 吸気行程噴射用インジェクタ制御手段
14 圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段
15 エンジン回転数センサ(エンジン回転数検出手段)
16 エアフローセンサ(吸気量検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮行程時に燃料噴射を実行可能な筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、筒内(シリンダ内)に直接燃料を噴射する筒内噴射型のガソリンエンジンが実用化されている。一般的に、このような筒内噴射型のガソリンエンジンにおいては、圧縮行程に燃料を噴射する圧縮行程噴射モードと吸気行程に燃料を噴射する吸気行程噴射モードとが切り換え可能に設定されている。このうち圧縮行程噴射モード(圧縮リーン噴射モード)は、ピストンが上昇する途中で燃料を噴射するモードであって、気筒内に層状の混合気を形成して、超希薄(超リーン)な空燃比で安定した燃焼を実現するものである。つまり、層状の吸気流を利用して噴射燃料を点火プラグの近傍に集めることができるため、点火プラグの近傍のみは着火性のよい空燃比状態(即ち、理論空燃比又は理論空燃比よりもやや濃化側の空燃比状態)として安定した着火性能を得ながら、全体としては極めて希薄な空燃比にして大幅に燃費を節約しながら運転することができるのである。
【0003】
また、吸気行程噴射モードでは、燃料の予混合により燃焼室全体の空燃比状態を均一化しながら、安定した着火と確実な火炎伝播を実現して十分な高出力を得られるように運転を行なうことができる。なお、吸気行程噴射モードには、空燃比を理論空燃比(ストイキオ)近傍として大きな出力を得られるようにしたストイキオモードと、空燃比をストイキオよりも希薄にして燃費の向上を図るリーンモードと、急加速時等に一時的に空燃比をストイキオよりも濃化(リッチ)にするエンリッチモード等が設けられている。
【0004】
そして、このような筒内噴射エンジンでは、エンジン回転数及びエンジン負荷に基づいて、圧縮行程噴射モード(圧縮リーンモード),吸気行程噴射ストイキオモード(ストイキオモード),吸気行程噴射リーンモード(吸気リーンモード),吸気行程噴射エンリッチモード(エンリッチモード)等の各運転モードが切り換えられる。
また、圧縮行程噴射モードとしては、圧縮行程上死点近傍で点火プラグへ向けて燃料を噴射して、この燃料に直接点火するようにした噴射モード(スプレーガイド噴射モードという)と、圧縮行程の上死点前にピストンの頂面に向けて燃料を噴射し、ピストンの上昇により燃料を点火プラグの近傍に集めて点火するモード(ウォールガイド噴射モード)とが知られている。
【0005】
このうちウォールガイド噴射モードは、気筒内で形成される層状の吸気流を利用した層状燃焼により超希薄(超リーン)な空燃比で安定した燃焼を実現する噴射モードである。この噴射モードでは、ピストンに向けて噴射した燃焼噴霧がピストンの上昇により集められ、点火プラグの先端付近では比較的リッチな混合気を形成するとともに、この混合気の周囲には略空気のみの層が形成される。したがって、全体としては極めて希薄な空燃比(吸気行程噴射のリーンモードよりもリーンな空燃比)としながら良好な燃焼を実現でき、燃費を節約しながら運転することができる。
【0006】
また、スプレーガイド噴射モードでは、点火プラグへ向けて燃料を直接的に噴射することで、燃焼室内に層状希薄状態を形成することができ、上述のウォールガイド噴射モードよりもさらに超希薄な空燃比で安定した燃焼状態を得ることができる。
なお、下記の特許文献1には、圧縮行程噴射モードとして、燃料噴射中又は燃料噴射直後のピストンに衝突する以前の燃料に点火する第1の運転モードと、燃料噴射終了後ピストンを経由した燃料に点火する第2の運転モードとをそなえ、これらの運転モードをエンジン運転状態に応じて切り換える技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−353594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したスプレーガイド噴射モードでは、圧縮行程噴射時に燃料噴霧に直接点火するため、超リーン域での燃焼が安定しており燃費の良い運転が可能である。このため、極力スプレーガイド噴射モードで運転を行いたいという要望がある。
しかし、スプレーガイド噴射モードでは発生可能な出力トルクが低く、全運転域でスプレーガイド噴射モードを実行することは不可能である。このため、負荷の高い運転域や回転数の高い運転域では、吸気噴射モードでの運転に切り換えが必要となる。
【0008】
図8はこのようなスプレーガイド噴射モード(圧縮行程噴射モード)からストイキオモード(吸気行程噴射モード)への切り換え時のエンジントルク特性の変化を説明するためのタイムチャートであって、(a)はエンジントルク、(b)は制御A/F(目標空燃比)、(c)は燃料噴射時期、(d)は体積効率Ev、(e)はスロットルバルブ開度ETV、(f)は燃料噴射モードである。
【0009】
さて、エンジン負荷や回転数等の変動により、図8(f)に示すように、燃料噴射モードをストイキオモード(吸気行程噴射モード)からスプレーガイド噴射モード(圧縮行程噴射モード)に切り換えられると(t=t1)、エンジンに要求されるトルクが同一であっても要求される空気量に差があるため、この場合はETV(電子制御スロットルバルブ)の開度を増大させる〔図8(e)参照〕。
【0010】
しかし、ETV開度を変更しても、筒内に吸入される空気量は、スロットルバルブから燃焼室までの間の容積に起因する応答遅れがあるため、空気量の変化は瞬時に反映されない。したがって、図8(d)に示すように、体積効率はETVの開度変化よりも遅れて増加することとなり、図8(b)に示すように目標空燃比は出力トルクに大きな変動が生じないように空気量変化に合わせて滑らかに変える必要がある。
一方、図10に示すように、スプレーガイド噴射モードでは空燃比をリッチ化するほど、安定して燃焼する運転域が狭くなる傾向にあり、空燃比A/F25未満ではトルク低下や失火を招くおそれがある。これに対して、上述したようなストイキオモードからスプレーガイド噴射モードへの実際の切り換え時(t=t2)には空燃比A/F25未満、具体的にはA/F19〜24程度で切り換えられるので、燃料噴射タイミングの切り換え時に失火域に突入し、トルク変動が生じる恐れがある〔図8(a),(c)参照〕。また、切り換えタイミング直前においても、ストイキオモードのリーン限界を超えているため同様に失火が発生するおそれがある。
【0011】
図9は空燃比をパラメータとしてこのような燃料噴射モード毎のエンジンのトルク特性を示す図であって、図示するようにストイキオモード及びスプレーガイド噴射モードではいずれも空燃比A/F25前後でトルクが大きく落ち込んでおり、失火していることがわかる。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、圧縮行程噴射モードと吸気行程噴射モードとの間の切り換え時における失火を防止して、エンジンのトルク変動又はトルク低下を防止するようにした、筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明の筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置は、筒内に燃料を直接噴射して点火プラグにより着火する筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置であって、該内燃機関の圧縮行程時に該燃料を噴射する圧縮行程噴射モードと、該内燃機関の吸気行程時に該燃料を噴射する吸気行程噴射モードとを切り換え可能に構成されるとともに、該圧縮行程噴射モードとして、空燃比がリーンになるほど燃焼安定領域が広がる第1の燃料噴射モードと、該空燃比がリッチになるほど燃焼安定領域が広がる第2の燃料噴射モードとを有し、該第1の燃料噴射モードと該吸気行程噴射モードとの切り換え時には、該第2燃料噴射モードを介して切り換えを行うことを特徴としている。
【0013】
また、該圧縮行程噴射モードとして、圧縮行程上死点近傍において点火プラグに向けて燃料を噴射するとともに、該燃料に直接点火する第1の燃料噴射モードと、圧縮行程時に該第1の燃料噴射モードの燃料噴射タイミングよりも早期のタイミングで燃料を噴射するとともに、ピストンの上昇により該燃料を該点火プラグ近傍に集めて点火する第2の燃料噴射モードとを有し、該第1の燃料噴射モードと該吸気行程噴射モードとの切り換え時には、該第2燃料噴射モードを介して切り換えを行うことを特徴としている。
【0014】
また、該吸気行程噴射モードと該第1の燃料噴射モードとの切り換え時には、目標空燃比が第1の所定値以下であると該吸気行程噴射に設定され、該目標空燃比が該第1の所定値よりも大きく、且つ該第1の所定値よりも希薄な第2の所定値未満であると該第2の燃料噴射モードに設定され、該目標空燃比が該第2の所定値以上であると該第1の燃料噴射モードに設定されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、圧縮行程噴射モードと吸気行程噴射モードとの切り換え時における失火を防止でき、トルクの低下やトルク変動を防止することができ、ドライバビリティの向上を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜図7を用いて本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置を説明すると、図1はその要部の機能構成を示す模式的なブロック図、図2及び図3は内燃機関の要部構成を示す模式図であって、図2は第1の燃料噴射モードについて説明するための図、図3は第2の燃料噴射モードについて説明するための図、図4は第1及び第2の燃料噴射モードの特性について説明するための図、図5はその作用について説明するためのフローチャート、図6はその作用について説明するためのタイムチャート、図7はその作用について説明するための図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、本発明に適用される内燃機関(エンジン)は、筒内に直接燃料を噴射して点火するようにした筒内噴射型内燃機関1であって、本実施形態ではガソリンエンジンが適用されている。
図示するように、このエンジン1の燃焼室3は、シリンダヘッド8の下面と、シリンダ7の壁面と、ピストン2の頂面とにより形成されている。また、シリンダヘッド8には燃料噴射弁(以下、単にインジェクタという)4が取り付けられている。このインジェクタ4は、その先端側が燃焼室3に臨むように配設されており、このインジェクタ4から燃焼室3内に直接燃料が噴射されるようになっている。
【0018】
一方、燃焼室3の下面を形成するピストン2の頂面には、図示するような凹部(キャビティという)6が形成されており、この凹部6は、本実施形態では下に凸状に湾曲した球面状に形成されている。なお、このような凹部6の形状としては球面に限定されるものではなく種々の形状を適用することができる。
また、シリンダヘッド8の中央よりもやや偏倚した位置に点火プラグ5が取り付けられている。そして、インジェクタ4と点火プラグ5は、少なくともインジェクタ4から供給される燃料が直接点火プラグ5の先端に到達可能なように燃料噴射方向や点火プラグ5の突き出し量等が設定されている。
【0019】
ところで、図1に示すように、エンジン1には、その作動全般を電気的に制御するECU(制御手段;コントローラ)11が付設されている。
また、上記コントローラ11の入力側にはエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ15、エンジン負荷としての吸気量を検出するエアフローセンサ(AFS)16が接続されている。
【0020】
また、コントローラ11内には、燃料噴射モードを切り換えるための燃料噴射モード切り換え手段12が設けられており、上述のエンジン回転数センサ15及びエアフローセンサ16で得られるエンジン回転数Ne及び負荷(ここでは体積効率Ev)に基づいて、この燃料噴射モード切り換え手段12により燃料噴射モードが設定されるようになっている。
【0021】
なお、エアフローセンサ16に代えてアクセル開度センサやスロットル開度センサを設け、これらのセンサの検出情報に基づいてエンジン負荷を検出するようにしてもよい。
ここで、図示するように、燃料噴射モード切り換え手段12には、インジェクタ4に対して吸気行程噴射に適したタイミングでインジェクタ駆動信号を出力する吸気行程噴射用インジェクタ制御手段13と、インジェクタ4に対して圧縮行程噴射に適したタイミングでインジェクタ駆動信号を出力する圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段14とをそなえている。
【0022】
また、燃料噴射モード切り換え手段12には、エンジン回転数Ne及び負荷Evをパラメータとしたマップ(図示省略)が記憶されており、これらのパラメータに応じた燃料噴射モードがマップから読み出されて、燃料噴射モードが設定されるようになっている。そして、所定の運転条件が成立すると、圧縮行程噴射モードが選択され、これ以外では吸気行程噴射モードが選択されるようになっている。なお、ここで所定の運転条件とは、スロットル開度が所定開度以下の低負荷運転域、エンジン回転数が所定回転数以下の低回転域、燃圧が所定値以上等である。
【0023】
そして、圧縮行程噴射モードが選択されると、圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段14からインジェクタ4に対する制御信号が出力されて、インジェクタ4の作動が制御される。この場合には、圧縮行程にあるときに燃料噴射を行い、燃焼室内に全体として超リーンな混合気を形成して燃焼を行う。
また、吸気行程噴射モードが選択されると、吸気行程噴射用インジェクタ制御手段13からインジェクタ4に対する制御信号が出力されて、インジェクタ4の作動が制御される。この場合には、吸気行程にあるときに燃料噴射を行い、燃焼室内にエンジン1の運転状態に応じた空燃比の混合気を形成して燃焼を行う。
【0024】
また、燃料噴射モードとしては、上述のような圧縮行程噴射モードと吸気行程噴射モードとに大別されるが、これらの各モードにはさらに複数の異なる燃料噴射モードが設けられている。このうち圧縮行程噴射モード(圧縮リーン噴射モード)としては、ピストン2が圧縮行程上死点近傍にあるときに点火プラグ5へ向けて燃料を噴射して、この燃料に直接点火するようにした噴射モード(スプレーガイド噴射モード;第1の燃料噴射モード、図2参照)と、圧縮行程の上死点前にピストン2の凹部6に向けて燃料を噴射し、ピストン2の上昇により燃料を点火プラグ5の近傍に集めて点火するモード(ウォールガイド噴射モード;第2の燃料噴射モード、図3参照)とをそなえている。
【0025】
このうちウォールガイド噴射モードは、気筒内で形成される層状の吸気流を利用した層状燃焼により超希薄(超リーン)な空燃比で安定した燃焼を実現する噴射モードである。この噴射モードでは、図3に示すように、ピストン2の凹部6に向けて噴射した燃焼噴霧がピストン2の上昇により集められ、点火プラグ5の先端付近では比較的リッチな混合気が形成されるとともに、この混合気の周囲には略空気のみの層が形成される。したがって、全体としては極めて希薄な空燃比としながら良好な燃焼を実現でき、燃費を節約しながら運転することができる。
【0026】
また、スプレーガイド噴射モードでは、図2に示すように、点火プラグ5へ向けて燃料を直接的に噴射することで、燃焼室3内に層状希薄状態を形成することができ、上述のウォールガイド噴射モードよりもさらに超希薄な空燃比で安定した燃焼状態を得ることができる。
ここで、図1に示すように、圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段14には、燃料噴射モードをスプレーガイド噴射モードに設定するスプレーガイド噴射モード設定手段(図中、S/G噴射モードと記す)14aと、燃料噴射モードをウォールガイド噴射モードに設定するウォールガイド噴射モード(同じく、図中、W/G噴射モードと記す)14bとが設けられており、圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段14ではエンジン回転数情報及びエンジン負荷情報等に応じて、スプレーガイド噴射モードとウォールガイド噴射モードとを切り換えるようになっている。
【0027】
なお、本実施形態においては、燃料噴射を開始するタイミングを変更することでこれら2つのモード(スプレーガイド噴射モード及びウォールガイド噴射モード)を切り換えることができる。
一方、吸気行程噴射モードでは、燃料の予混合により燃焼室全体の空燃比状態を均一化しながら、安定した着火と確実な火炎伝播を実現して十分な高出力を得られるように運転を行なうことができ、空燃比を理論空燃比(ストイキオ)近傍として大きな出力を得られるようにしたストイキオモード、空燃比をストイキオよりも希薄にして燃費の向上を図るリーンモードと、急加速時等に一時的に空燃比をストイキオよりも濃化(リッチ)にするエンリッチモード等が設けられている。
【0028】
このため、図1に示すように、吸気行程噴射用インジェクタ制御手段13には、燃料噴射モードをストイキオモードに設定するストイキオモード設定手段13aと、エンリッチモードに設定するエンリッチモード設定手段13bと、リーンモードに設定するリーンモード設定手段13cとを備えており、これらの各設定手段13a〜13cにより、吸気行程噴射時の燃料噴射量や燃料噴射タイミングが設定されるようになっている。
【0029】
なお、吸気行程噴射モードについては従来より広く知られたものであるので、この吸気行程噴射モードについての詳細な説明については省略する。
次に、本発明の要部について説明すると、本装置では吸気行程噴射モード(主にリーンモード)とスプレーガイド噴射モードとの間の切り換え制御に特徴がある。すなわち、本装置では、吸気行程噴射モードからスプレーガイド噴射モードへの切り換え時及びスプレーガイド噴射モードから吸気行程噴射モードへの切り換え時には、一旦ウォールガイド噴射モードを介してから切り換えを行うように構成されている。
【0030】
具体的には、スプレーガイド噴射モードで運転中にエンジン回転数Ne又はエンジン負荷Evが変動して吸気行程噴射モードの運転域にエンジン運転状態が変化すると、すぐに吸気行程噴射に移行するのではなく、まずスプレーガイド噴射モードからウォールガイド噴射モードに切り換え、次いでウォールガイド噴射モードから吸気行程噴射モードに切り換えるようになっているのである。なお、これとは逆の吸気行程噴射モードからスプレーガイド噴射モードへの切り換え時にも同様であって、この場合には、まず吸気行程噴射モードからウォールガイド噴射モードに切り換えてから、ウォールガイド噴射モードからスプレーガイド噴射モードへ切り換えるようになっている。
【0031】
これは、スプレーガイド噴射モードから直接吸気行程噴射モードへ切り換えたり、或いは、吸気行程噴射モードから直接スプレーガイド噴射モードに切り換えたりしてしまうと、これらの燃料噴射モードでは燃焼が不安定なる運転域を通るため、失火が生じやすくなり、エンジントルクが低下するからである。なお、燃焼が不安定なる運転域とは、具体的には空燃比が19〜24程度の運転領域である。
【0032】
そこで、本装置では、このような領域の空燃比でも安定した燃焼状態が得られるウォールガイド噴射モードに一旦切り換えてから、スプレーガイド噴射モード又は吸気行程噴射モードへ切り換えるようにしているのである。
ここで、図4はスプレーガイド噴射モードとウォールガイド噴射モードとの燃焼特性について説明する図であって、横軸が燃料噴射時期、縦軸が点火時期を示しており、安定した燃焼を得られる領域を空燃比(A/F)毎に示している。
【0033】
この図からもわかるように、スプレーガイド噴射モードでは安定した燃焼を得られる空燃比は25〜40程度であり、空燃比がリーンになるほど燃焼安定領域が広がる特性を有している。一方、ウォールガイド噴射モードでは、安定した燃焼を得られる空燃比は20〜25程度であり空燃比がリッチになるほど燃焼安定領域が広がる特性を有している。
このようなスプレーガイド噴射モードでは空燃比が25〜40と非常にリーンであるため燃費の向上を図ることができるものの、空燃比が24以下の領域では安定した燃焼を得られず失火を生じる場合がある。
【0034】
これに対して、例えば空燃比25のときの燃焼安定領域はスプレーガイド噴射モードよりもウォールガイド噴射モードの方が広く、空燃比25以下の領域では、ウォールガイド噴射モードの方が燃焼を良好に保つことができる。
そこで、本実施形態では、エンジン回転数及びエンジン負荷情報からスプレーガイド噴射モード(又は吸気行程噴射モード)から吸気行程噴射モード(又はスプレーガイド噴射モード)への切り換えが判定されると、目標空燃比A/Fを監視して、この目標空燃比A/Fが例えば18以下であれば吸気行程噴射(リーンモード)に設定し、目標空燃比A/Fが25以上であればスプレーガイド噴射モードに設定し、目標空燃比A/Fが18〜25の領域にあるときには、制御マップ上では要求されていないウォールガイド噴射モードにあえて設定するようになっている。
【0035】
つまり、スプレーガイド噴射モードと吸気行程噴射モードとの間で燃料噴射モードの切り換えが行われる場合に、エンジン回転数やエンジン負荷等の情報からは本来は設定されないウォールガイド噴射モードに一旦切り換えるのである。この場合、上述のように、目標空燃比A/F≦18のとき吸気行程噴射モード、18<目標空燃比A/F<25のときウォールガイド噴射モード、目標空燃比A/F≧25のときスプレーガイド噴射モードにそれぞれ設定することにより、燃料噴射モード切り換え時の失火を防止して、トルクの低下を防止しているのである。
【0036】
本発明の一実施形態に係る筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置は上述のように構成されているので、その作用を図5に示すフローチャートを用いて簡単に説明すると以下のようになる。
まず、燃料噴射モードの切り換え中か否かを判定する(ステップS1)。具体的には、このステップS1では、吸気行程噴射モードからスプレーガイド噴射モードへの切り換え中か否か、又はスプレーガイド噴射モードから吸気行程噴射モードへの切り換え中か否かを判定する。
【0037】
切り換え中でなければそのままリターンし、切り換え中であれば、空気量の変化に合わせて制御A/F(目標空燃比)を滑らかに変化させる(ステップS2)。そして、制御A/Fが第1の所定値(ここでは18)より大きいか否かを判定し(ステップS3)、所定値以下であれば燃料噴射モードとして吸気行程噴射(リーンモード)に設定する(ステップS4)。
【0038】
一方、制御A/Fが18より大きければ、圧縮行程噴射に設定する(ステップS5)。ここで、エンジン回転数が所定回転数(例えば1500rpm)未満であって(ステップS6)、且つ制御A/Fが第2の所定値(ここでは25)未満であれば(ステップS7)、ウォールガイド噴射モードに設定し(ステップS8)、エンジン回転数が所定回転数以上、又は制御A/Fが25以上であればスプレーガイド噴射モードに設定して(ステップS9)、リターンする。
【0039】
なお、このフローチャートにおいて、エンジン回転数が所定回転数以上であるとスプレーガイド噴射モードに設定するようにしているのは、所定回転数以上ではウォールガイド噴射モードが成立しなくなるからである。
次に、本装置の作用を図6(a)〜(g)に示すタイムチャートを用いて説明する。なお、(a)はエンジントルク、(b)は制御A/F(目標空燃比)、(c)は点火時期、(d)は燃料噴射時期、(e)は体積効率、(f)はスロットルバルブ開度、(g)は燃料噴射モードである。
【0040】
さて、エンジン負荷や回転数等の変動により、図6(g)に示すように、燃料噴射モードがストイキオモード(吸気行程噴射モード)から圧縮行程噴射モードに切り換えられると(t=t1)、エンジンに要求されるトルクが同一であっても要求される空気量に差があるため、ETV(電子制御スロットルバルブ)の開度が増大していく〔図6(f)参照〕。
【0041】
しかし、スロットルバルブから燃焼室までの間には大きな容積が存在するため空気量の変化は瞬時に反映されない。したがって、図6(e)に示すように、体積効率EvはETV開度変化よりも遅れて増加することとなり、このとき出力トルクに大きな変動が生じないように空気量変化に合わせて制御A/Fを滑らかに変化させる〔図6(b)参照〕。
そして、図6(d)及び図7に示すように、制御A/Fが第1の所定値より大きくなると、実際の燃料噴射モードが圧縮行程噴射のうちウォールガイド噴射モードに設定される(t=t2)。なお、このときには図6(c)に示すように点火時期をいったん遅角させる。そして、このように一旦ウォールガイド噴射モードに切り換えることにより、吸気行程噴射及びスプレーガイド噴射モードにおける失火領域を回避することができる。
【0042】
その後、制御A/Fが第2の所定値(>第1の所定値)以上になると、スプレーガイド噴射モードに設定するとともに、点火時期をスプレーガイド噴射モードに適したタイミングに設定する。
そして、このように吸気行程噴射モードとスプレーガイド噴射モードとを切り換える際には、一旦ウォールガイド噴射モードを介して切り換えを行うことにより、吸気行程噴射モードとスプレーガイド噴射モードとの切り換え時の失火を回避することができ、エンジンのトルク変動又はトルク低下を極力防止することができる〔図6(a)参照〕。
【0043】
以上説明したように、本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、圧縮行程噴射モードと吸気行程噴射モードとの間の切り換え時における失火を防止して、エンジンのトルク変動又はトルク低下を防止することができる。したがって、ドライバビリティも向上する。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、第1の燃料噴射モード及び第2の燃料噴射モードはそれぞれスプレーガイド噴射モード及びウォールガイド噴射モードに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置の機能構成を示す模式的なブロック図である。
【図2】本発明に適用される筒内噴射型内燃機関の要部構成を示す模式図であって、第1の燃料噴射モードについて説明するための図である。
【図3】本発明に適用される筒内噴射型内燃機関の要部構成を示す模式図であって、第2の燃料噴射モードについて説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置の第1及び第2の燃料噴射モードの特性について説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置の作用について説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置の作用について説明するためのタイムチャートである。
【図7】本発明の一実施形態にかかる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置の作用について説明するための図であって、燃料噴射モードの切り換えの特性を説明する図である。
【図8】従来技術の課題について説明するための図である。
【図9】従来技術の課題について説明するための図である。
【図10】従来技術の課題について説明するための図である。
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン(内燃機関)
2 ピストン
3 燃焼室
4 インジェクタ(燃料噴射弁)
5 点火プラグ
6 凹部
7 シリンダ
8 シリンダヘッド
11 コントローラ(制御手段)
12 燃料噴射モード切り換え手段
13 吸気行程噴射用インジェクタ制御手段
14 圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段
15 エンジン回転数センサ(エンジン回転数検出手段)
16 エアフローセンサ(吸気量検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒内に燃料を直接噴射して点火プラグにより着火する筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
該内燃機関の圧縮行程時に該燃料を噴射する圧縮行程噴射モードと、該内燃機関の吸気行程時に該燃料を噴射する吸気行程噴射モードとを切り換え可能に構成されるとともに、該圧縮行程噴射モードとして、空燃比がリーンになるほど燃焼安定領域が広がる第1の燃料噴射モードと、該空燃比がリッチになるほど燃焼安定領域が広がる第2の燃料噴射モードとを有し、
該第1の燃料噴射モードと該吸気行程噴射モードとの切り換え時には、該第2燃料噴射モードを介して切り替えを行う
ことを特徴とする、筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
筒内に燃料を直接噴射して点火プラグにより着火する筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
該内燃機関の圧縮行程時に該燃料を噴射する圧縮行程噴射モードと、該内燃機関の吸気行程時に該燃料を噴射する吸気行程噴射モードとを切り換え可能に構成されるとともに、該圧縮行程噴射モードとして、圧縮行程上死点近傍において点火プラグに向けて燃料を噴射するとともに、該燃料に直接点火する第1の燃料噴射モードと、圧縮行程時に該第1の燃料噴射モードの燃料噴射タイミングよりも早期のタイミングで燃料を噴射するとともに、ピストンの上昇により該燃料を該点火プラグ近傍に集めて点火する第2の燃料噴射モードとを有し、
該第1の燃料噴射モードと該吸気行程噴射モードとの切り換え時には、該第2燃料噴射モードを介して切り替えを行う
ことを特徴とする、筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
該吸気行程噴射モードと該第1の燃料噴射モードとの切り換え時には、
目標空燃比が第1の所定値以下であると該吸気行程噴射に設定され、
該目標空燃比が該第1の所定値よりも大きく、且つ該第1の所定値よりも希薄な第2の所定値未満であると該第2の燃料噴射モードに設定され、
該目標空燃比が該第2の所定値以上であると該第1の燃料噴射モードに設定される
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項1】
筒内に燃料を直接噴射して点火プラグにより着火する筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
該内燃機関の圧縮行程時に該燃料を噴射する圧縮行程噴射モードと、該内燃機関の吸気行程時に該燃料を噴射する吸気行程噴射モードとを切り換え可能に構成されるとともに、該圧縮行程噴射モードとして、空燃比がリーンになるほど燃焼安定領域が広がる第1の燃料噴射モードと、該空燃比がリッチになるほど燃焼安定領域が広がる第2の燃料噴射モードとを有し、
該第1の燃料噴射モードと該吸気行程噴射モードとの切り換え時には、該第2燃料噴射モードを介して切り替えを行う
ことを特徴とする、筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
筒内に燃料を直接噴射して点火プラグにより着火する筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
該内燃機関の圧縮行程時に該燃料を噴射する圧縮行程噴射モードと、該内燃機関の吸気行程時に該燃料を噴射する吸気行程噴射モードとを切り換え可能に構成されるとともに、該圧縮行程噴射モードとして、圧縮行程上死点近傍において点火プラグに向けて燃料を噴射するとともに、該燃料に直接点火する第1の燃料噴射モードと、圧縮行程時に該第1の燃料噴射モードの燃料噴射タイミングよりも早期のタイミングで燃料を噴射するとともに、ピストンの上昇により該燃料を該点火プラグ近傍に集めて点火する第2の燃料噴射モードとを有し、
該第1の燃料噴射モードと該吸気行程噴射モードとの切り換え時には、該第2燃料噴射モードを介して切り替えを行う
ことを特徴とする、筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
該吸気行程噴射モードと該第1の燃料噴射モードとの切り換え時には、
目標空燃比が第1の所定値以下であると該吸気行程噴射に設定され、
該目標空燃比が該第1の所定値よりも大きく、且つ該第1の所定値よりも希薄な第2の所定値未満であると該第2の燃料噴射モードに設定され、
該目標空燃比が該第2の所定値以上であると該第1の燃料噴射モードに設定される
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−138873(P2007−138873A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336230(P2005−336230)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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