説明

管状の成形体

【課題】生分解性の管状の成形体であり、かつ、剛性およびじん性を有する管状の成形体を得ること。
【解決手段】管状の成形体は、少なくとも1層のA層、および、少なくとも1層のB層を有する管状の成形体であり、このA層が、ガラス転移温度が0℃以下である乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル、及び、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を主成分として含む樹脂組成物から成り、B層が、乳酸系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性材料を使用した管状の成形体に関し、特に、剛性を保持しつつ、じん性を有する管状の成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭、オフィスビル、工場、公共施設等の上下水道、ガス、蒸気等のユーティリティ配管として一時的に仮設する必要がある場合に、ならびに、土木、園芸用品等で土中に埋設されるような用途に、金属パイプ、およびポリ塩化ビニル(PVC)やABS等のプラスチックパイプが用いられている。これらのパイプは、使用期間が終了した時点で、あるいは不用になった時点で撤去の必要が生じるが、パイプが土中に埋設されていると撤去に多大な手間やコストがかかる。そのため、撤去されずに放置されることがあり、将来的な土地利用計画に不都合をきたすことがあった。そこで、撤去されずに放置されたとしても問題が生じないパイプ等が求められていた。
【0003】
近年においては自然環境中で分解するプラスチックとして生分解性プラスチックが知られているが、生分解性プラスチックを用いたパイプは極くわずかしか知られていない。例えば、特開平10−78174号公報には、内層が生分解性プラスチック、外層が既存の樹脂からなるパイプが開示されているが、パイプ全体を生分解性に設計したものではないので、このパイプでは既存の樹脂部分が生分解せずに残存してしまう。また、特開平11−323104号公報には、ポリアルキルアルカノエート系樹脂からなるパイプが開示されているが、剛性、強度に乏しく、特殊な用途でしか使用し得ないものであった。さらに、特開2000−2392号公報にはポリ乳酸、または、ポリブチレンサクシネートからなる管状物又はバルブの端部封止用キャップが開示されているが、生分解性プラスチックの中でも乳酸系樹脂は剛性が高く、この点ではパイプ用途に好適と思われるが、そのままでは、脆くて、衝撃性に乏しく、一方、ポリブチレンサクシネートは耐衝撃性に優れるものの、軟質の樹脂であるため、剛性に乏しく、成形性にも乏しいためパイプ用途に用いることは難しかった。さらにまた、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートを単純にブレンドしたものでは、じん性、耐衝撃性、成形性等、パイプ、継ぎ手の管状物に要求される特性を全て満足することはできなかった。特開2002−348877号公報、および、特開2004−115322号公報には生分解性樹脂からなる植生管が開示されているが、これも特開2000−2392号公報と同様にパイプ、継ぎ手の要求特性を満足できるものではなかった。また、両公報には生分解性樹脂に肥料成分を配合することが開示されているが、肥料成分を配合することにより成形時に著しい樹脂の分解を生じることがあり、実用的な技術とは言い難い。さらにまた、従来の技術においてはパイプに関する技術的アプローチはされていたかも知れないが、パイプとパイプを接合するための継ぎ手、および、パイプとパイプを接続するための手法については開示されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平10−78174号公報
【特許文献2】特開平11−323104号公報
【特許文献3】特開2000−2392号公報
【特許文献4】特開2002−348877号公報
【特許文献5】特開2004−115322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、従来の生分解性パイプでは成し得なかった、優れた剛性及びじん性を有する管状の成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管状の成形体は、少なくとも1層のA層、および、少なくとも1層のB層を有する管状の成形体であり、前記A層が、ガラス転移温度が0℃以下である乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル、及び、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を主成分として含む樹脂組成物から成り、前記B層が、乳酸系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から成ることを特徴とする。
【0007】
本発明の成形体は、前記A層および前記B層を、前記管状の成形体の外表面側からこの順に有することができる。
本発明においては、前記B層の内側に更にA層を有し、前記管状の成形体の外表面側から、A層、B層およびA層をこの順に有することができる。
【0008】
本発明において、前記B層は、曲げ弾性係数が1.5GPa以上であることが好ましい。また、前記A層は、伸びが5%以上であることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記成形体は接続部を有しており、該接続部は、前記成形体の両端部のうち少なくとも一方に存在することができる。
ここで、前記接続部は、受口形状または差口形状であることができる。
【0010】
また、前記接続部は、前記成形体の両端部に存在していてもよく、この場合には、一方の端部の接続部は受口形状であり、他方の端部の接続部は差口形状であるか、あるいは、両端部の接続部が共に受口形状であるか共に差口形状であることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記受口形状がメスねじ形状であり、前記差口形状がオスねじ形状であることが好ましい。
【0012】
本発明の成形体は、前記B層および前記A層を、前記管状の成形体の外表面側からこの順に有することができる。
【0013】
この成形体は接続部を有しており、該接続部は差口形状であって、前記成形体の両端部のうち少なくとも一方に存在することができる。
この差口形状はオスねじ形状であることができる。
【0014】
本発明の成形体は、配管、土木・園芸用品または芯材として使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の管状の成形体は、生分解性を有し、かつ、優れた剛性およびじん性を有する。したがって、上下水道、ガス、蒸気等のユーティリティ配管として一時的な仮設に有効に使用され、土木、園芸用品等で土中に埋設されるような用途にも有効に使用され、使用期間終了後に取り出して廃棄する必要がなく、環境にやさしい成形体である。また、接続部に関する技術的アプローチがあり、接続部において優れた特性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明の成形体は管状の成形体であり、少なくとも1層のA層と、少なくとも1層のB層とを有する管状の成形体である。A層およびB層は、それぞれ、管状の成形体の外層として配置されていても良いし、内層として配置されていても良い。すなわち、管状の成形体の外表面側から、例えば、A層およびB層がこの順に配置されていても良いし、B層およびA層がこの順に配置されていてもよい。さらにまた、2層以上のA層を有していてもよく、2層以上のB層を有していてもよく、例えば、A層、B層およびA層が、管状の成形体の外表面側からこの順に配置されていてもよい。かかる3層構成の場合には、A層をスキン層、B層をコア層と呼んでも良い。本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、A層およびB層以外の他の層を含んでいてもよく、他の層は適当な位置に配置されていることができる。
【0018】
本発明においては、管状の成形体の全体厚みに占めるA層の厚み割合が合計で、20%以上、80%以下であることが好ましく、30%以上、70%以下であることが更に好ましく、40%以上、60%以下であることが特に好ましい。A層の厚みが20%を下回る場合には、じん性を成形体に付与できないことがあり、80%を上回る場合には、用途によっては剛性が不足することがある。
【0019】
B層は、剛性付与に主に貢献し、管状の成形体の全体厚みに占めるB層の厚み割合が合計で、20%以上、80%以下であることが好ましく、30%以上、70%以下であることが更に好ましく、40%以上、60%以下であることが特に好ましい。B層の厚みが20%を下回る場合には、剛性を成形体に付与できないことがあり、80%を上回る場合には、用途によってはじん性が不足することがある。
【0020】
ここで、A層は、ガラス転移温度が0℃以下である乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル、及び、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を主成分とする樹脂組成物を用いてなる。
また、B層は、乳酸系樹脂を主成分とする樹脂組成物を用いて成る。
【0021】
ここで、「主成分」とは、主成分となる樹脂組成物の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容することを意味するものとし、特に主成分となる樹脂組成物の含有割合を特定するものではないが、主成分となる樹脂組成物(樹脂組成物が2成分以上からなる場合には、これらの合計量)は樹脂組成物中、50重量%以上であり、好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは90重量%以上(100重量%を含む)である。なお、本発明において上記以外でも「主成分」と表示した場合には、特にことわりがない限り上記と同様の意味を有するものとする。
【0022】
(乳酸系樹脂)
本発明のB層の形成に用いられる乳酸系樹脂は、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸である、ポリ(DL−乳酸)やこれらの混合体である。
【0023】
乳酸系樹脂の重合法としては、縮合重合法、開環重合法などの公知のいずれかの方法を採用することができる。例えば、縮合重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系樹脂を得ることができる。
【0024】
また、開環重合法では、適当な触媒を選択し、必要に応じて重合調整剤等を用いて、乳酸の環状二量体であるラクチドから乳酸系重合体を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、結晶性をもつ乳酸系樹脂を得ることができる。
【0025】
さらに、耐熱性を向上させる等の必要に応じ、乳酸系樹脂の本質的な性質を損なわない範囲で、例えば、乳酸系樹脂成分を90質量%以上含有する範囲内で、少量の共重合成分を添加することができる。少量の共重合成分としては、テレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオール等を用いることができる。さらにまた、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を使用することもできる。
【0026】
乳酸系樹脂は、さらに、乳酸および/または乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸等の他のヒドロキシカルボン酸単位との共重合体であっても、脂肪族ジオールおよび/または脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。
【0027】
他のヒドロキシカルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0028】
乳酸系樹脂に共重合される上記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、上記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等が挙げられる。
【0029】
本発明に使用される乳酸系樹脂は、重量平均分子量が5万以上、40万以下の範囲が好ましく、10万以上、25万以下の範囲がより好ましい。乳酸系樹脂の重量平均分子量が5万未満では機械物性等の実用物性がほとんど発現されないことがあり、40万より大きい場合には、溶融粘度が高すぎて成形加工性に劣ることがある。
【0030】
本発明に好ましく使用される乳酸系樹脂の代表的なものとしては、三井化学(株)製の「レイシア」シリーズ、Nature Works社製の「Nature Works」シリーズ等が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0031】
本発明の管状の成形体におけるA層は、上記したように、脂肪族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル、および、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を主成分として含有する樹脂組成物を用いて成る。但し、この脂肪族ポリエステルは、乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルであり、かつ、ガラス転移温度が0℃以下であることが必要であり、−20℃以下であることが好ましい。A層に用いられる乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルのガラス転移温度が0℃以下であることにより、成形体に優れた耐衝撃性を付与することができる。
【0032】
(乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル)
A層に用いられる乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルとしては、例えば、乳酸系樹脂を除く、ポリヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合して得られる脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルなどを挙げることができる。
【0033】
上記「ポリヒドロキシカルボン酸」としては、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体や共重合体を挙げることができる。
【0034】
上記「脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル」としては、以下に列挙する脂肪族ジオール及び脂肪族ジカルボン酸の中からそれぞれ1種類または2種類以上を選んで縮合して得られる重合体、あるいは、必要に応じて更にイソシアネート化合物等でジャンプアップして得られる所望の重合体等を挙げることができる。
【0035】
上記「脂肪族ジオール」としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を代表的なものとして挙げることができ、上記「脂肪族ジカルボン酸」としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等を代表的なものとして挙げることができる。
【0036】
上記「環状ラクトン類を開環縮合して得られる脂肪族ポリエステル」としては、環状モノマーであるε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等を1種類以上選択して重合することにより得られるものを挙げることができる。
【0037】
上記「合成系脂肪族ポリエステル」としては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピオンオキサイド等との共重合体等を挙げることができる。
【0038】
上記の「菌体内で生合成される脂肪族ポリエステル」としては、アルカリゲネスユートロファスを始めとする菌体内でアセチルコエンチームA(アセチルCoA)により生合成される脂肪族ポリエステル等を挙げることができる。この脂肪族ポリエステルは、主にポリ−β−ヒドロキシ酪酸(ポリ3HB)であるが、プラスチックとしての実用特性向上のために、吉草酸ユニット(HV)を共重合し、ポリ(3HB−CO−3HV)の共重合体にすることが工業的に有利である。一般的には、HV共重合比は0〜40%である。さらに長鎖のヒドロキシアルカノエートを共重合してもよい。
【0039】
ここで、「X〜Y」(X、Yは任意の数字(単位も含む))として表示した場合には、「X以上、Y以下」を意図し、「Xより大きくYよりも小さいことが好ましい」旨の意図も包含する。なお、本発明において上記以外でも「X〜Y」と表示した場合には、特にことわりがない限り上記と同様の意味を有するものとする。
【0040】
上記「乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル」としては、例えば、コハク酸と1,4−ブタンジオールとアジピン酸とを重合して得られる昭和高分子社製の「ビオノーレ」シリーズ、ε−カプロラクトンを開環縮合して得られるダイセル化学工業(株)製の「セルグリーン」シリーズ等を商業的に入手することができるものとして挙げることができる。
【0041】
(芳香族脂肪族ポリエステル)
A層の形成に用いられる芳香族脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族鎖の間に芳香環を導入することによって結晶性を低下させた芳香族脂肪族ポリエステル等が挙げられる。例えば、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分、および脂肪族ジオール成分を縮合して得られる芳香族脂肪族ポリエステルが用いられる。
【0042】
上記芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、上記脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。また、上記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。なお、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分あるいは脂肪族ジオール成分は、それぞれ2種類以上を用いてもよい。
【0043】
本発明において、最も好適な芳香族ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、最も好適な脂肪族ジカルボン酸成分はアジピン酸であり、最も好適な脂肪族ジオール成分は1,4−ブタンジオールである。
【0044】
上記「芳香族脂肪族ポリエステル」の代表的なものとしては、テトラメチレンアジペートとテレフタレートとの共重合体、ポリブチレンアジペートとテレフタレートとの共重合体等が挙げられる。テトラメチレンアジペートとテレフタレートとの共重合体としては、例えば、Eastman Chemicals社製の「Eastar Bio」を商業的に入手することができ、また、ポリブチレンアジペートとテレフタレートとの共重合体としては、例えば、BASF社製の「Ecoflex」を商業的に入手することができる。
【0045】
(乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体)
A層に用いられる「乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体」は、その共重合体中に占める乳酸系樹脂の割合が特定の範囲内であることが好ましい。例えば、耐熱性の観点から言えば、乳酸系樹脂の割合が、10質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは20質量%以上である。例えば、じん性の付与効果の観点から言えば、乳酸系樹脂の割合が80質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは70質量%以下である。
【0046】
乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ジオールとジカルボン酸を脱水縮合して得られるポリエステルまたはポリエーテルポリオールを、ラクチドと開環重合するか、あるいは、エステル交換反応させて得る方法や、ジオールとジカルボン酸を脱水縮合して得られるポリエステルまたはポリエーテルポリオールを、乳酸系樹脂と脱水・脱グリコール縮合、またはエステル交換反応することによって得る方法等が挙げられる。なお、乳酸系樹脂としては、上述のB層の形成に使用される乳酸系樹脂を適宜、用いることができる。
【0047】
上記ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ペプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖状ジオール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール等の分岐鎖状ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオールが挙げられる。
【0048】
また、上記ジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の直鎖状ジカルボン酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、エチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、2−エチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−エチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、2−エチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−エチルアジピン酸、メチルグルタル酸等の分岐状ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、ビスフェノールA、ビフェノール等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0049】
また、上記「乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体」は、イソシアネート化合物やカルボン酸無水物を用いて所定の分子量に調整することが可能である。ただし、加工性、耐久性の面から、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体は、重量平均分子量が5万〜30万の範囲であることが好ましく、10万〜25万の範囲であることが更に好ましい。
【0050】
乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体の構造としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。本発明において、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体は何れの構造でもよいが、耐衝撃性の改良効果および透明性の観点から、ブロック共重合体および/またはグラフト共重合体であることが好ましい。
【0051】
乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体がランダム共重合体であるものとしては、三菱化学(株)製の「GS Pla」シリーズ等が商業的に入手可能なものとして挙げられ、ブロック共重合体またはグラフト共重合体としては、大日本インキ化学工業(株)製の「プラメート」シリーズ等が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0052】
本発明においては、A層、B層などの各層には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、更に、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、顔料、染料等の添加剤を配合することができる。
【0053】
本発明の管状の成形体を構成するA層は、伸びが5%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましい。A層の伸びが5%以上であれば、輸送時および使用時に管の破壊等を生じることがない。また、管状の成形体を構成するB層は、曲げ弾性率が1.5GPa以上であることが好ましく、2.0GPa以上であることが更に好ましい。B層の曲げ弾性率が1.5GPa以上であれば、特に長尺の管を使用する場合に、たわみ、変形等を生じることなく使用することができる。
なお、本発明において剛性の評価は、成形体の曲げ弾性率で表示されるが、管状の成形体の曲げ弾性率が2.0GPa以上であることが好ましく、2.5GPa以上であることが更に好ましい。成形体の曲げ弾性率が2.0GPa以上であれば、充分な剛性を有することになる。本発明において曲げ弾性率は、後述の実施例に記載の測定方法により測定されたものである。
【0054】
本発明において、じん性は曲げ許容量で表示される。本発明において曲げ許容量は、後述の実施例に記載の測定方法により測定されたものである。管状の成形体および接続部の曲げ許容量が、それぞれ300mm以上であれば、優れたじん性を有することになる。
【0055】
本発明の管状の成形体は、1または2以上の接続部を有することができ、接続部の形状は、例えば、受口形状、差口形状にすることができる。接続部は、例えば、管状の成形体の一方の端部に、あるいは、両方の端部に設けることができる。両方の端部に接続部を有する場合には、両方の端部の接続部が受口形状の接続部であっても良いし、両方の端部の接続部が差口形状の接続部であっても良いし、あるいは、一方の端部の接続部が受口形状の接続部であり、他方の端部の接続部が差口形状の接続部であっても良い。成形体の端部をこのような形状にすれば、2本以上の成形体の受口形状の接続部と差口形状の接続部とを順々に接続していくことができる。ここで、受口形状とは、嵌合しうる凹部形状であり、差口形状とは、嵌合しうる凸部形状であり、これらの受口形状と差口形状とが嵌合可能であれば、いかなる形状であっても良い。例えば、受口形状として「メスねじ加工」したもの、差口形状として「オスねじ加工」したもの等を使用することができる。
【0056】
本発明の管状成形体の2本以上を、その接続部同士で接合すれば管形状を延長することができる。あるいは、本発明の管状成形体の接続部に、一般的な管状成形体からなる継ぎ手管状体を接合しても良く、このようにしても管形状を延長することができる。この場合、一般的な管状成形体の端部には、接合可能な差口形状または受口形状が形成されていることが好ましく、また、この材料としては、例えば、塩化ビニル等のプラスチック等が挙げられる。接合部は、接合される一方が受口形状であり、接合される他方が差口形状であることが好ましい。
【0057】
本発明においては、外表面側からA層/B層の2層構成の管状の成形体の端部に接続部が形成されている場合には、受口形状の接続部を形成することが好ましく、外表面側からB層/A層の2層構成の管状の成形体の場合には、差口形状の接続部を形成することが好ましい。また、外表面側からA層/B層/A層の3層構成の管状の成形体の場合には、受口形状の接続部でも差口形状の接続部でも形成することができる。例えば、外表面側からA層/B層の2層構成の管状の成形体の端部に形成された受口形状の接続部に、外表面側からB層/A層の2層構成の管状の成形体の端部に形成された差口形状の接続部を嵌め込んで接合部を形成することができる。
【0058】
管状の成形体に、接続部として受口形状または差口形状の加工を施すと、この接続部となる成形体部分の厚さは、接続部以外の管状の成形体本体の厚さよりも薄くなる。したがって、本来ならば、接続部の強度が管状成形体本体の強度よりも著しく劣ることになる。しかしながら、本発明によれば、管状成形体本体自体が優れた剛性および靭性を有しており、しかも、受口形状の接続部と差口形状の接続部が嵌合(接合)して接合部を形成するならば、接続後の接合部は管状成形体本体と同じ厚さになるので、接合部に引張力あるいは曲げ力が加わっても、接合部に亀裂、破断等が生じることは無い。すなわち、本発明によれば、本来ならば管状の成形体の弱点となりうる接合部においても、非常に優れた剛性およびじん性を有しており、優れた特性を有する管状の成形体を提供することができる。
【0059】
本発明の管状の成形体は、通常の押出成形により形成することができる。例えば、A層およびB層を形成する樹脂組成物を各々の押出機に投入し、所定の層構成となる口金にて賦形する。また、口金賦形以降のフォーマー、冷却水槽、引取機、切断機、巻取機等の各条件は、特に限定されることなく、適宜調整されることが好ましい。
【0060】
本発明の管状の成形体は、一般家庭、オフィスビル、工場、公共施設等の上下水道、ガス、蒸気等のユーティリティ配管として、一時的に仮設する必要がある場合に使用することができる。また、土木、園芸用品等として土中に埋設されるような用途にも使用することができる。本発明の管状の成形体は、優れた剛性、じん性を有するため、使用期間中は各用途に適した優れた実用特性を有し、しかも、使用期間が終了して不用となった場合には、土中に埋設した状態で生分解することができるので、土中から取り出し撤去する必要がない。したがって、撤去のための多大なコストが不要となり、土中に永久に保存されることはないので環境問題を発生することもない。さらにまた、管状成形体では接続部が弱点となるが、本発明では優れた接続部を実現することができるので、接続部において、亀裂、破断等が生じることもない。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。また、以下の実施例において使用された測定方法および評価方法を下記に示す。
【0062】
(1)曲げ許容量
じん性の評価として、曲げ許容量を測定した。すなわち、外径114mm、内径100mm、長さ2000mmの管状の成形体(パイプ)を形成した。この管状の成形体(パイプ)の両端を自由端とする梁の中心部に荷重を徐々にかけていき、管状の成形体(パイプ)が完全に破損する直前の曲げ量を測定した。曲げ量が300mm以上である場合を記号「○」、曲げ量が300mm未満である場合を記号「×」で表示した。
【0063】
(2)接合部の曲げ許容量
接合部のじん性の評価として、接合部の曲げ許容量を測定した。すなわち、接合部において、上記「(1)曲げ許容量」と同様の測定を行い、曲げ量を測定した。曲げ量が300mm以上である場合を記号「○」、曲げ量が300mm未満である場合を記号「×」で表示した。
【0064】
(3)曲げ弾性率
剛性の評価として、曲げ弾性率を測定した。すなわち、外径114mm、内径100mmの管状の成形体(パイプ)から、長さ130mm、幅15mmの試験片を切り出して、この試験片について曲げ弾性係数を測定した。曲げ弾性係数が2.0GPa以上である場合を記号「○」、2.0GPa未満である場合を記号「×」で表示した。
【0065】
[実施例1]
(A層用樹脂組成物の作製)
乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルとして、ポリブチレンサクシネート・アジペート(三菱化学(株)製の「GS Pla AD92W」、重量平均分子量16万)を用い、ポリブチレンサクシネート・アジペートからなる樹脂組成物を得た。
【0066】
(B層用樹脂組成物の作製)
結晶性ポリ乳酸(Nature Works社製の「Nature Works 4032D」、重量平均分子量20万)と、無機フィラーとしてタルク(日本タルク(株)製の「ミクロエースL1」、平均粒径4.9μm)とを、質量比が90:10の割合となるようにドライブレンドして、B層用の樹脂組成物を作製した。
【0067】
(管状の成形体の作製)
得られたA層用樹脂組成物およびB層用樹脂組成物を、管状の3層成形用の押出機に供給して成形体を作製した。すなわち、A層およびB層の押出機は、それぞれ、クラウスマッファイ社製のスクリュー径45mmの押出機を用い、3層成形用の口金(φ114mm用の口金)を用いて賦形し、外径が114mmの円形となる整形具を用いた。また、A層およびB層のスクリュー設定温度は175℃であり、A層のスクリュー回転数は45rpm、B層のスクリュー回転数は50rpmの条件のもと、A層/B層/A層の3層からなる管状の成形体を作製し、冷却して成形体を得た。得られた成形体は、外径が114mmであり、スキン層(A層)厚みが合計で4mm、コア層(B層)の厚みが3mmであった。なお、得られた成形体のB層の曲げ弾性率は4.5GPaであり、また、A層の伸びは100%であった。
【0068】
(測定および評価)
得られた管状の成形体について、曲げ許容量、および、曲げ弾性率の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0069】
[実施例2]
実施例1において作製した管状の成形体から、長さ1000mmのパイプを2本切り出し、一方のパイプの端部にオスねじ加工を施し、残りのパイプの端部にメスねじ加工を施した。オスねじ加工を施したパイプの端部と、メスねじ加工を施したパイプの端部とを嵌め込み、2本のパイプを接合した。得られた接合部について、接合部曲げ許容量の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
[実施例3]
(B層用樹脂組成物の作製)
結晶性ポリ乳酸(Nature Works社製の「Nature Works 4032D」、重量平均分子量20万)と、無機フィラーとしてタルク(日本タルク(株)製の「ミクロエースL1」、平均粒径4.9μm)とを、質量比が90:10の割合となるようにドライブレンドして、外層用としてB層用の樹脂組成物を作製した。
【0071】
(A層用樹脂組成物の作製)
乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルとして、ポリブチレンサクシネート・アジペート(三菱化学(株)製の「GS Pla AD92W」、重量平均分子量16万)からなる樹脂組成物(内層用)を得た。
【0072】
(管状の成形体の作製)
得られたB層用樹脂組成物(外層用)およびA層用樹脂組成物(内層用)を、管状の2層成形用の押出機に供給して成形体を作製した。すなわち、A層およびB層の押出機は、それぞれ、にクラウスマッファイ社製のスクリュー径45mmの押出機を用い、2層成形用の口金(φ114mm用の口金)を用いて賦形し、外径が114mmの円形となる整形具を用いた。また、A層およびB層のスクリュー設定温度は175℃であり、A層およびB層のスクリュー回転数は、それぞれ、45rpmであった。かかる条件のもと、成形体の外表面側から、B層/A層の2層からなる管状の成形体を作製し、冷却して成形体を得た。得られた成形体は、A層の厚みが3.5mm、B層の厚みが3.5mmであった。なお、得られた成形体のB層の曲げ弾性率は4.5GPaであり、また、A層の伸びは100%であった。
【0073】
(測定および評価)
得られた管状の成形体について、曲げ許容量、および、曲げ弾性率の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0074】
[実施例4]
実施例3において作製した管状の成形体から長さ1000mmのパイプを切り出し、そのパイプの一方の端部にオスねじ加工を施した。同様のサイズの管状の塩化ビニル管の一方の端部に、メスねじ加工を施した。オスねじ加工を施したパイプの端部と、メスねじ加工を施した塩化ビニル管端部とを嵌め込み接合部を形成した。得られた接合部について、接合部曲げ許容量の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
[実施例5]
(A層用樹脂組成物の作製)
乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルとして、ポリブチレンサクシネート・アジペート(三菱化学(株)製の「GS Pla AD92W」、重量平均分子量16万)からなる樹脂組成物(外層用)を得た。
【0076】
(B層用樹脂組成物の作製)
結晶性ポリ乳酸(Nature Works社製の「Nature Works 4032D」、重量平均分子量20万)と、無機フィラーとしてタルク(日本タルク(株)製の「ミクロエースL1」、平均粒径4.9μm)とを、質量比が90:10の割合となるようにドライブレンドして、内層用としてB層用の樹脂組成物を作製した。
【0077】
(管状の成形体の作製)
得られたA層用樹脂組成物(外層用)およびB層用樹脂組成物(内層用)を、管状の2層成形用の押出機に供給して成形体を作製した。すなわち、A層およびB層の押出機は、それぞれ、クラウスマッファイ社製のスクリュー径45mmの押出機を用い、2層成形用の口金(φ114mm用の口金)を用いて賦形し、外径が114mmの円形となる整形具を用いた。また、A層およびB層のスクリュー設定温度は175℃であり、A層およびB層のスクリュー回転数は、それぞれ、45rpmであった。かかる条件のもと、成形体の外表面側から、A層/B層の2層からなる管状の成形体を作製し、冷却して成形体を得た。得られた成形体は、A層の厚みが3.5mm、B層の厚みが3.5mmであった。なお、得られた成形体のB層の曲げ弾性率は4.5GPaであり、また、A層の伸びは100%であった。
【0078】
(測定および評価)
得られた管状の成形体について、曲げ許容量、および、曲げ弾性率の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0079】
[実施例6]
実施例5において作製した管状の成形体から長さ1000mmのパイプを切り出し、そのパイプの一方の端部にメスねじ加工を施した。同様のサイズの管状の塩化ビニル管の一方の端部に、オスねじ加工を施した。オスねじ加工を施したパイプの端部と、メスねじ加工を施した塩化ビニル管端部とを嵌め込み接合部を形成した。得られた接合部について、接合部曲げ許容量の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0080】
[比較例1]
(B層用樹脂組成物の作製)
結晶性ポリ乳酸(Nature Works社製の「Nature Works 4032D」、重量平均分子量20万)と、無機フィラーとしてタルク(日本タルク(株)製の「ミクロエースL1」、平均粒径4.9μm)とを、質量比が90:10の割合となるようにドライブレンドして樹脂組成物(単層用)を作製した。
【0081】
(管状の成形体の作製)
得られたB層用樹脂組成物(単層用)を、管状の単層成形用の押出機に供給して成形体を作製した。すなわち、押出機はクラウスマッファイ社製のスクリュー径45mmの押出機を用い、単層成形用の口金(φ114mm用の口金)を用いて賦形し、外径が114mmの円形となる整形具を用いた。また、スクリュー設定温度は175℃であり、スクリュー回転数は45rpmであった。かかる条件のもと、管状の成形体(単層)を作製し、冷却して成形体を得た。得られた成形体は、厚みが7mmであった。
【0082】
(測定および評価)
得られた管状の成形体について、曲げ許容量、および、曲げ弾性率の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
[比較例2]
比較例1において作製した管状の成形体から長さ1000mmのパイプを切り出し、そのパイプの一方の端部にメスねじ加工を施した。同様のサイズの管状の塩化ビニル管の一方の端部に、オスねじ加工を施した。オスねじ加工を施したパイプの端部と、メスねじ加工を施した塩化ビニル管端部とを嵌合して接続部を形成した。得られた接続部について、接続部曲げ許容量の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0084】
[比較例3]
(A層用樹脂組成物の作製)
乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルとして、ポリブチレンサクシネート・アジペート(三菱化学(株)製の「GS Pla AD92W」、重量平均分子量16万)からなる樹脂組成物(単層用)を得た。
【0085】
(管状の成形体の作製)
得られたA層用樹脂組成物(単層用)を、管状の単層成形用の押出機に供給して成形体を作製した。すなわち、押出機はクラウスマッファイ社製のスクリュー径45mmの押出機を用い、単層成形用の口金(φ114mm用の口金)を用いて賦形し、外径が114mmの円形となる整形具を用いた。また、スクリュー設定温度は175℃であり、スクリュー回転数は45rpmであった。かかる条件のもと、管状の成形体(単層)を作製し、冷却して成形体を得た。得られた成形体は、厚みが7mmであった。
【0086】
(測定および評価)
得られた管状の成形体について、曲げ許容量、および、曲げ弾性率の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0087】
[比較例4]
比較例3において作製した管状の成形体から長さ1000mmのパイプを切り出し、そのパイプの一方の端部にメスねじ加工を施した。同様のサイズの管状の塩化ビニル管の一方の端部に、オスねじ加工を施した。オスねじ加工を施したパイプの端部と、メスねじ加工を施した塩化ビニル管端部とを嵌合して接続部を形成した。得られた接続部について、接続部曲げ許容量の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
表1から明らかなように、実施例1、3、5の管状の成形体は、曲げ許容量が300mm以上であって優れたじん性を有するものであり、また、これらの成形体は、曲げ弾性率が2.0GPa以上であって優れた剛性も有するものであることが分かった。しかも、これらの管状の成形体は、さらに接続部を形成した実施例2、4、6についても、接合部の曲げ許容量が300mm以上であり、優れたじん性を示した。
【0090】
一方、単層構成の管状の成形体である比較例1、3は、曲げ許容量または曲げ弾性率が所定数値レベルに達しておらず、じん性または剛性に劣っていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の管状の成形体は、生分解性を有し、かつ、優れた剛性およびじん性を有する。したがって、一般家庭、オフィスビル、工場、公共施設等の上下水道、ガス、蒸気等のユーティリティ配管として一時的な仮設に有効に使用され、土木、園芸用品等で土中に埋設されるような用途にも有効に使用されるが、使用期間終了後に取り出して廃棄する必要がない。また、接合部においても優れた特性を発揮することができるので、接合部において、亀裂、破断等が生じることもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のA層、および、少なくとも1層のB層を有する管状の成形体であり、前記A層が、ガラス転移温度が0℃以下である乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル、及び、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を主成分として含む樹脂組成物から成り、前記B層が、乳酸系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から成ることを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記A層および前記B層を、前記管状の成形体の外表面側からこの順に有することを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記B層の内側に更にA層を有し、前記管状の成形体の外表面側から、A層、B層およびA層をこの順に有することを特徴とする請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
前記B層は、曲げ弾性係数が1.5GPa以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項5】
前記A層は、伸びが5%以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項6】
前記成形体は接続部を有しており、該接続部は、前記成形体の両端部のうち少なくとも一方に存在することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項7】
前記接続部は受口形状であるか、または差口形状であることを特徴とする請求項6に記載の成形体。
【請求項8】
前記接続部は、前記成形体の両端部に存在し、一方の端部の接続部は受口形状であり、他方の端部の接続部は差口形状であることを特徴とする請求項6に記載の成形体。
【請求項9】
前記接続部は、前記成形体の両端部に存在し、該両端部の接続部が共に受口形状であるか、あるいは、共に差口形状であることを特徴とする請求項6に記載の成形体。
【請求項10】
前記受口形状がメスねじ形状であり、前記差口形状がオスねじ形状であることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項11】
前記B層および前記A層を、前記管状の成形体の外表面側からこの順に有することを特徴とする請求項1、及び4から5のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項12】
前記成形体は接続部を有しており、該接続部は差口形状であって、前記成形体の両端部のうち少なくとも一方に存在することを特徴とする請求項11に記載の成形体。
【請求項13】
前記差口形状がオスねじ形状であることを特徴とする請求項12に記載の成形体。
【請求項14】
前記成形体を、配管、土木・園芸用品または芯材として使用することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の成形体。

【公開番号】特開2010−89268(P2010−89268A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258556(P2008−258556)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】