管状支柱
【課題】衝撃エネルギの吸収能力に優れ、合わせて、景観性を担保すると共に製造コストを抑えることができる管状支柱を提供する。
【解決手段】管状支柱100のベースプレート10に立設された丸形鋼管20には、路外側に側壁を貫通して下端23に到達する管軸方向に長い縦スリット50が形成されている。したがって、縦スリット50側に向けて管状支柱100を倒そうとする衝撃荷重がかかった際、縦スリット50の長手方向の中央の幅が拡大すると共に、側縁は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。よって、側縁の周囲が十分に塑性変形して十分な衝撃エネルギを吸収する。
【解決手段】管状支柱100のベースプレート10に立設された丸形鋼管20には、路外側に側壁を貫通して下端23に到達する管軸方向に長い縦スリット50が形成されている。したがって、縦スリット50側に向けて管状支柱100を倒そうとする衝撃荷重がかかった際、縦スリット50の長手方向の中央の幅が拡大すると共に、側縁は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。よって、側縁の周囲が十分に塑性変形して十分な衝撃エネルギを吸収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管状支柱、特に、道路等に設置される防護柵等の固定に用いられる管状支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に設置されるガードレール、ガードパイプ、ガードケーブル、また橋梁に設置される高欄、さらに山間部等に設置される落石防止防護柵、雪崩防護柵等(本明細書において、これらを「防護柵等」と総称する)は、間隔を設けて設置された支柱に固定されている。かかる支柱は、車両、落石や雪崩等が衝突した際の衝突による衝撃力(正確には衝撃エネルギ)を吸収して車両落石や雪崩等を受け止める必要があることから、所定の剛性を有する鋼管(丸形金属管や角形金属管を含む)やH形鋼によって製造されている。
【0003】
図19及び図20は、従来の鋼管支柱を曲げた際の荷重−変位線図であって、図19の(a)は丸形鋼管(STK400、外径139.8mm、肉厚4.5mm)を曲げアーム長さ600mmで、図19の(b)は丸形鋼管(STK400、外径114.3mm、肉厚4.5mm)を曲げアーム長さ600mmで、図20は角形鋼管(STKR400、外辺125mm×125mm、肉厚6.0mm)を曲げアーム長さ760mmで、曲げている。
すなわち、最大荷重に到達した後、鋼管支柱とベースプレートとの溶接部に亀裂が生じて溶接部が破断するため、荷重が急激に低下しているから、鋼管支柱は所望の変位を保証するだけの変形をしていないことになる。すなわち、支柱自体の剛性を高めたのでは、支柱とベースプレートとの溶接部に亀裂が生じ、かえって衝撃エネルギの吸収量が増加しないという問題があった。
【0004】
このため、溶接部を補強しようとする技術と、鋼管支柱に先行して座屈する部分を予めも設けてそこを積極的に座屈させることによって溶接部の破断を防止し、これによって鋼管支柱の塑性変形量を増大させようとする技術と、が開示されている。
特に、後者について、衝撃吸収性を保証すると共に、経済性、作業性並びに景観性を高めようとする発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−188031号公報(第5−6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、支柱が丸形金属管や角形金属管であって、車道と反対側の下方位置に側面方向から見て「く字状」の切欠を形成し、該開口部に断面く字状の補強プレートを取り付けたものである。すなわち、車道に向かって見ると、丸形金属管では楕円状の開口部に楕円板を折り曲げた補強プレートが取り付けられ、角形金属管では矩形の開口部に矩形板を折り曲げた補強プレートが取り付けられる。したがって、以下のような問題があった。
(あ)「く字状」の切欠を形成する作業と、断面く字状の補強プレートを製造する作業と、開口部に補強プレートを溶接する作業とを必要とするため、製造コストが高くなる。
(い)「く字状」の切欠が側面方向から視認されるため、外観から受ける鋼管支柱の信頼感が低くなる。
(う)切欠部の開き角度が大きい場合や補強プレートが薄い場合、支柱の剛性が低下し、所望の量の衝撃エネルギを吸収することができない。
(え)切欠部の開き角度が小さい場合や補強プレートが厚い場合、変形の初期において、補強プレートの面同士が当接したり、補強プレートの折り曲げ部に変形が集中したりして、支柱の剛性が高くなり、溶接部が破断する可能性が出てくる。このため、結果として、所望の量の衝撃エネルギを吸収することができ難くなる。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、衝撃エネルギの吸収能力に優れた管状支柱を提供することを最大の目的とし、合わせて、景観性を担保すると共に、製造コストを抑えることができる管状支柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る管状支柱は、基礎に固定されるベースプレートと、該ベースプレートに立設された管体と、を有し、
前記管体の前記ベースプレート近傍に、管軸方向に長い切欠部が形成されていることを特徴とする。
(2)前記(1)において、前記切欠部が、前記管体を貫通する縦スリット又は縦孔であることを特徴とする。
【0009】
(3)前記(1)において、前記切欠部が、前記管体の外面または内面の一方に形成され、または前記管体の外面および内面の両方に対向して形成され、底面を有する溝であることを特徴とする。
(4)前記(1)乃至(3)の何れかにおいて、前記切欠部の管軸方向の中央部における幅が、前記切欠部の端部における幅より広いことを特徴とする。
(5)前記(1)乃至(4)の何れかにおいて、少なくとも前記切欠部の一部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮力を受ける範囲に位置していることを特徴とする。
【0010】
(6)前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記管体が断面円形で、1の前記切欠部が形成され、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部が前記管体の外側に向かって突出するように変形すると共に、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする。
【0011】
(7)前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる面に1または2以上設けられていることを特徴とする。
(8)前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる両隅部または該両隅部近傍に設けられていることを特徴とする。
【0012】
(9)前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる面と引っ張り側になる面とを連結する側面の前記圧縮側になる面寄りに設けられていることを特徴とする。
【0013】
(10)前記(7)乃至(9)の何れかにおいて、前記管体が断面矩形で、1の切欠部が形成されたものであって、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする。
(11)前記(7)乃至(9)の何れかにおいて、前記管体が断面矩形で、一対の切欠部が形成されたものであって、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記一対の切欠部に挟まれた面が、前記管体の内側に向かって陥入するように変形することを特徴とする。
【0014】
(12)前記(1)乃至(11)の何れかにおいて、前記管体の前記切欠部に対向する内面に、補強板が設置されていることを特徴とする。
(13)前記(12)において、前記補強板は、矩形状の平板または矩形状の断面円弧板であって、
一方の端縁が、前記ベースプレートに接合され、
両側縁が、それぞれ前記管体の内面に接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る管状支柱は以上の構成であるから、以下の効果を奏する。
(i)本発明に係る管状支柱は管軸方向に長い切欠部が形成されているから、切欠部側に曲げられた際、変形が切欠部の両側縁部に集中する。すなわち、切欠部の上端部自体および下端部自体の形状はほとんど変形することなく、側縁部同士の間隔が広がると共に、側縁部が大きく変形する。
したがって、変形の初期においては、管軸方向の圧縮力は広い断面積において支持されるから、剛性の低下が少ない。また、変形が進んでからも、切欠部の上端部と下端部とが当接することがなく、切欠部の両側縁部が外側に向かって変形するため、衝撃エネルギを十分に吸収することができる。
【0016】
なお、管状支柱とは、その断面形状を限定するものではなく、たとえば断面丸形や断面矩形あるいは断面馬蹄形の金属管であって、鋼製であれば丸形鋼管や角形鋼管あるいは馬蹄形鋼管を指している。また、管軸方向に長いとは、切欠部の上端と下端との距離(長さ)が切欠部の側縁同士の距離(幅)よりも大きいことを指している。また、基礎は道路の路側や橋梁の地覆を形成する部位等を指している。
また、ベースプレートとは、基礎に固定される板状部材に限定するものではなく、基礎に設置(載置や埋め込み等を含む)される金属部材、たとえば形鋼(溝形鋼やH形鋼等)や鋼管(丸形鋼管、角形鋼管等)を含むものである。
【0017】
(ii)また、切欠部が管体を貫通する縦スリット(貫通した溝に同じ)又は縦孔(貫通した孔に同じ)であるから、切欠部側に曲げられた際、側縁部同士の間隔(幅)が確実に広がると共に、側縁部が大きく変形する。さらに、縦スリットの幅を狭くしておけば、景観性が阻害されることなく、外観から受ける鋼管支柱の信頼性が担保される。
【0018】
(iii)また、切欠部が底面を有する、すなわち、縦スリットまたは縦孔の厚さ方向の一部に「一皮」が形成されたものであるから、切欠部側に曲げられた際、変形の初期において当該底面(一皮)が破断し、その後は前記(2)と同様に側縁部同士の間隔(幅)が確実に広がるため、前記(i)、(ii)の効果を奏する。また、側面に開口部が形成されないため、支柱内に雨水等が侵入することがなく、保全性や耐久性が向上すると共に、景観性も向上する。
【0019】
(iv)また、切欠部の長手方向の中央部が端部よりも幅広であるから、切欠部側に曲げられた際、切欠部の長手方向の中央部を起点として側縁部が変形し、中央部において最も大きく変形をするため、側縁部同士の間隔(幅)が確実に広がる。
(v)また、少なくとも切欠部の一部が圧縮力を受ける範囲に位置しているから、すなわち、切欠部の全部が圧縮力を受ける範囲に配置されたり、切欠部が圧縮力を受ける範囲と引っ張り力を受ける範囲とに跨って配置されたりするから、前記(i)〜(iv)のそれぞれの効果が確実になる。
【0020】
(vi)また、断面円形の管体に形成された1条の切欠部の中央部が、外側に向かって突出するように変形すると共に、中央部の幅が拡大するから、前記(i)の効果が得られる。
【0021】
(vii)さらに、断面矩形の管体において、圧縮側になる面に1または2以上の切欠部が設けられているから、前記(i)の効果が得られる。
(viii)さらに、断面矩形の管体において、圧縮側になる両隅部または該両隅部近傍に切欠部が設けられているから、前記(i)の効果が得られる。
(ix)さらに、断面矩形の管体において、側面の圧縮側になる面寄りに切欠部が設けられているから、前記(i)の効果が得られる。
【0022】
(x)さらに、断面矩形の管体に形成された1条の切欠部の中央部が、大きく変形して、幅が拡大するから、前記(i)の効果が得られる。
(xi)さらに、断面矩形の管体において、一対の切欠部に挟まれた面が内側に向かって陥入するように変形するから、前記(i)の効果が得られる。
【0023】
(xii)そして、管体の引っ張り側の内面に補強板が設置されているから、補強板が衝撃エネルギの吸収体として機能し、前記(i)の効果が促進される。
(xiii)そして、前記補強板の両側縁が管体に接合され、一方の端縁がベースプレートに接合されているから、ベースプレートと管体との接合部に作用する力が緩和され、当該接合部の破断が遅延するため、前記(i)の効果が促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態1〜9に係る管状支柱を図面に基づいて説明する。なお、
実施の形態1は1条の縦スリット(貫通して管端に到達)付き丸形鋼管(図1〜9)、
実施の形態2は1条の縦孔(貫通して管端に未到達)付き丸形鋼管(図10〜12)、
実施の形態3は1条の縦溝(貫通しない)付き角形鋼管(図13〜15)、
実施の形態4は1条の貫通孔および縦溝付き角形鋼管(図16、17)、
実施の形態5は1条の縦スリット付き角形鋼管(図18の(a))、である。
実施の形態6は一対(2条)の縦スリット付き角形鋼管(図18の(b)、(c))、である。さらに、
実施の形態7は側面に縦スリットが形成された角形鋼管(図22)、
実施の形態8は補強板が設置された縦スリット付き丸形鋼管(図23)、
実施の形態9は補強板が設置された縦スリット付き角形鋼管(図24)、
である。なお、以下の説明および図において、同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0025】
[実施の形態1:縦スリット付き丸形鋼管]
(全体構成)
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る管状支柱を示すものであって、図1の(a)は正面図、図1の(b)は側面図、図1の(c)は背面図、図1の(d)は底面図、図2は一部を断面にした拡大背面図である。図1において、管状支柱100は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された丸形鋼管20(断面円形の管体に相当する)と、図示しない柵用材を設置するために丸形鋼管20に設けられた柵用材設置部30と、を有している。なお、柵用材とは、ガードレールのビーム、ガードパイプの横パイプ・横桟、ガードケーブルのワイヤロープ等を総称するものである。
【0026】
なお、以下の説明において、車道と歩道との境界に設置される場合には、車道側を「道路側」、歩道側を「路外側」と称し、橋梁の側縁に設置される場合は、内側を「道路側」、外側を「路外側」と称している。また、各図において同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、管状支柱100が鋼製であるものについて説明するが、鋼製部材の一部または全部が鋼以外の金属(たとえば、ステンレススチール、アルミニウム合金等)にすることができる。
【0027】
(ベースプレート)
ベースプレート10は、矩形状の鋼板であって、中央に丸形鋼管20が挿入(または嵌入)される支柱用孔12と、図示しない基礎に設置する際に、設置用ボルトが貫通する設置用孔13と、が形成されている。なお、矩形状の鋼板に替えて、丸形の鋼板であってもよい。
【0028】
(丸形鋼管)
丸形鋼管20の上端21には蓋22が設置され、柵用材設置部30に対応する位置(背面)に柵用材を固定するための柵用材固定用孔24と、下端部の背面に縦スリット50が形成されている。
そして、丸形鋼管20の下端部は、ベースプレート10に形成された支柱用孔12に挿入(または嵌入)され、丸形鋼管20の側面とベースプレート10の上面11とが溶接部90aによって、丸形鋼管20の下端23とベースプレート10の支柱用孔12とが溶接部90bによって、それぞれ固定されている。
【0029】
(縦スリット)
管軸方向に長い切欠部としての縦スリット50は、丸形鋼管20の側壁を貫通する管軸方向に形成された貫通溝であって、丸形鋼管20の下端23に到達している。なお、縦スリット50の幅(側縁同士の円周方向の距離に同じ)は限定するものではなく、力学的に不連続であれば、極めて狭い幅であってもよい。また、後述する理由により、縦スリット50の長さ(縦スリット50の上端と丸形鋼管20の下端23との距離に同じ)は、縦スリット50の幅よりも大きいものである。
【0030】
(柵用材設置部)
柵用材設置部30の一例として、丸形鋼管20の上端21近くの正面(道路側)に設置される矩形部材31であって、柵用材を固定するための柵用材固定用孔33a、33b、34が形成されている。柵用材固定用孔34(道路側)と丸形鋼管20に形成された柵用材固定用孔24(路外側)と対峙しているため、両者を貫通する共通のボルトによって柵用材を固定することができる。なお、柵用材固定用孔34(道路側)を省略した場合には、丸形鋼管20に柵用材固定用孔24(路外側)は形成されない。また、柵用材設置部30の形態はこれに限定するものでなく、設置される柵用材の形状に応じて、適宜変更されるものである。
【0031】
(実施例)
図3は、図1に示す管状支柱の実施例等を示す背面図であって、図1の(a)は実施例、図1の(b)は比較例1、図1の(c)は比較例2である。図4は、図3に示す実施例等を示す底面図である。図5は図3に示す実施例等に曲げ荷重をかけた場合の荷重−変位曲線であって、(a)は実施例、(b)は比較例1、(c)は比較例2である。
【0032】
図3の(a)および図4において、本発明の実施例である管状支柱100は、丸形鋼管20は、外径139.8mm、肉厚6.6mmの鋼管(STK400)であって、幅10mmの縦スリット50が形成されている。縦スリット50の上端は曲率半径5mmの円弧であって、下端は丸形鋼管20の下端23に到達(開口)している。
【0033】
また、ベースプレート10は、道路側と路外側との奥行きが220mm、道路方向(橋軸方向に同じ)の長さが260mm、厚さが22mmの鋼板(SS400)の矩形状の鋼板であって、内径141mmの支柱用孔12と、内径24mmの設置用孔13と、が形成されている。
そして、丸形鋼管20の下端23は支柱用孔12に19mmだけ侵入し、丸形鋼管20の周側面とベースプレート10の上面11とが、および丸形鋼管20の下端23とベースプレート10の支柱用孔12とが、それぞれ溶接固定(溶接部90a、90b)されている。したがって、縦スリット50は、背面視において管軸方向の長さ70mmの範囲が視認されるものである。
【0034】
(比較例)
図3の(b)において、比較例1である管状支柱980の丸形鋼管20の背面には、管軸方向の距離(高さ)10mm、半径方向の距離(幅)30mmの小横孔98が形成されている。小横孔98の水平方向の中心線はベースプレート10の上面11から55mmの距離にある。その他の部位については実施例である管状支柱100に同じである。
図3の(c)において、比較例2である管状支柱990の丸形鋼管20の背面には、管軸方向の距離(高さ)20mm、半径方向の距離(幅)60mmの大横孔99が形成されている。小横孔98の水平方向の中心線はベースプレート10の上面11から55mmの距離にある。その他の部位については実施例である管状支柱100に同じである。
【0035】
(荷重−変位曲線)
図5は、図3に示す実施例等を曲げた際の荷重−変位曲線である。
図5の(a)において、本発明の実施例である管状支柱100を背面側に向けて押すと、最大荷重(Pmax)51.30kNに到達した後も荷重はなだらかに減少するだけで、300mm以上変位している。この間の平均荷重(Pw)は46.84kNである。
また、図5の(c)において、管状支柱100と同様に比較例2である管状支柱990を背面側に向けて押すと、最大荷重(Pmax)47.30kNに到達した後も荷重はなだらかに減少するだけで、300mm以上変位している。この間の平均荷重(Pw)は44.20kNである。
すなわち、丸形鋼管20の下部が十分に塑性変形し、これによって溶接部90a、90bへの負担が減少し、溶接部90a、90bに亀裂(破断個所)が発生していない(これについては別途詳細に説明する)。なお、丸形鋼管20を押す載荷位置は、ベースプレート10の底面13から800mm(曲げアーム長に同じ)の位置である。
【0036】
図5の(b)において、管状支柱100と同様に比較例1である管状支柱980を背面側に向けて押すと、変位と共に荷重は増大する。このとき、当初は、変位の増分に対する荷重の増分が除々に小さくなるのに対し、変位が約150mm辺において、変位の増分に対する荷重の増分が大きくなり、間もなく最大荷重(Pmax)58.0kNに到達している。そして、その後は、僅かに変位したところで急激に荷重が低下している。
すなわち、丸形鋼管20の下部が十分に塑性変形する前に、溶接部90a、90bに亀裂(破断個所)が発生している(これについては別途詳細に説明する)。
【0037】
(変形挙動)
図6〜図8は、図3に示す実施例等を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図であって、図6は実施例、図7は比較例1、図8は比較例2である。なお、図面を簡単にするため、設置用ボルトがベースプレート10の設置用孔13を貫通しているが、これらを図示しない。
【0038】
図6において、(a)は変形の初期、(b)および(c)は変形の終期を示している。管状支柱100は管軸方向に長い縦スリット50(図中、A−B−C−F−E−D−Aで囲まれた範囲に同じ)を具備するから、縦スリット50側に曲げられると、変形の初期において、側縁(A−Cを結ぶ範囲、D−Fを結ぶ範囲)同士を水平方向に引き離す力が作用するから、側縁の管軸方向の中央における間隔(位置Bと位置Eとの距離に相当する、以下「幅」と称す)は広がると共に、側縁の管軸方向の中央(位置B、位置Eに同じ)は外側に向かって押し出される。このとき、縦スリット50の上端(A−Dを結ぶ範囲)は、ほとんど変形しない。また、縦スリット50の下端(C−Fを結ぶ範囲)は、ベースプレート10の支柱用孔12に拘束されているから変形しない(図6の(a)参照)。
【0039】
さらに、変位(曲げ荷重)が増大すると、前記変形の傾向は助長され、側縁(A−Cを結ぶ範囲、D−Fを結ぶ範囲)は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。すなわち、縦スリット50の上端(A−Dを結ぶ範囲)および下端(C−Fを結ぶ範囲)はそれ自体ほとんど変形しないで、その上端と下端とは当接しないから、曲げによる圧縮荷重は側縁に流れ込み、側縁の周囲が十分に塑性変形することになる(図6の(b)参照)。
このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形して持ち上がるものの、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない(図6の(c)参照)。
【0040】
図7において、(a)は変形の初期、(b)および(c)は変形の終期を示している。
比較例1である管状支柱980は円周方向に長い小横孔98(図中、a−c−n−f−d−m−aで囲まれた範囲に同じ)を具備するから、小横孔98側に曲げられると、変形の初期において、上端(a−d結ぶ範囲)と下端(c−fを結ぶ範囲)とを近づける力が作用するから、小横孔98の上端は変形して、その中央mは下端に接近する。このとき、小横孔98の側部自体(a−cを結ぶ範囲、d−fを結ぶ範囲)は、ほとんど変形しないで、僅かに外側に押し出される(図7の(a)参照)。
【0041】
さらに、曲げ荷重が増大すると、前記変形の傾向は助長され、上端と下端とは広い範囲で当接し、小横孔98の側部自体は扁平または押し潰される。そうすると、曲げによる圧縮荷重は上端と下端との当接部に流れ込むから、丸形鋼管20は圧縮荷重に関しては、小横孔98がない状態になり、変位の増分に対する荷重の増分は大きくなる(図5の(b)において荷重が増加するポイントに相当する)。
このため、丸形鋼管20の下部は、十分に塑性変形することができないことになる(図7の(b)参照、塑性範囲を破線にて模式的に示している)。そして、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用するから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形して持ち上がると共に、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生する(図7の(c)参照)。
【0042】
図8において、(a)は変形の初期、(b)は変形の終期を示している。
比較例2である管状支柱990は円周方向に長い大横孔99(図中、a−b−c−n−f−e−d−m−aで囲まれた範囲に同じ)を具備するから、大横孔99側に曲げられると、変形の初期において、上端(a−dを結ぶ範囲)と下端(c−fを結ぶ範囲)とを近づける力と、側縁部(a−b−cを結ぶ範囲、d−e−fを結ぶ範囲)を変形させる力とが作用する。このため、大横孔99の上端は変形して、その中央mは下端に接近する。また、側縁は扁平に変形する(位置aと位置cとが接近する、位置dと位置fとが接近する)と共に、側縁の管軸方向の中央(位置b、位置e)は外側に向かって押し出される(図8の(a)参照)。
【0043】
さらに、曲げ荷重が増大すると、前記変形の傾向は助長され、上端と下端とは広い範囲で当接する(大横孔99の側縁の近く(位置a、位置bの近く)を挟む広い範囲で当接する)。そして、側縁(a−cを結ぶ範囲、d−fを結ぶ範囲)は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。すなわち、大横孔99の側縁は所定の長さを具備するから、側縁の周囲が十分に塑性変形することになる(図8の(b)参照)。
このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形するものの、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない(図6の(c)参照)。
【0044】
なお、比較例2である管状支柱990は大横孔99を具備することから、丸形鋼管20の剛性が低下し、支持することができる荷重が低くなっている(図5の(c)参照)。さらに、管状支柱990の側縁の長さ(a−cを結ぶ範囲、d−fを結ぶ範囲)は、実施例である管状支柱100の側縁の長さ(A−Cを結ぶ範囲、D−Fを結ぶ範囲)に比べて短いため、かかる側縁の周囲であって、塑性変形容易な範囲も狭いことから、塑性変形による衝撃エネルギの吸収量についても、管状支柱990の方が管状支柱100よりも小さい。すなわち、比較例2は本発明の実施例より劣っている。
また、管状支柱990では大横孔99の上端と下端とが当接した後は、該当接した範囲に圧縮力が流れ込むから、大きな変位にまで曲げたとき、変位の増分に対する荷重の増分が大きくなり、その後、溶接部90aに亀裂が発生するおそれがある。すなわち、比較例1である管状支柱980に類似した挙動をするおそれがある。この点においても、本発明が優れている。
【0045】
(縦貫通溝の形状)
図9は本発明の実施の形態1に係る管状支柱における切欠部(縦貫通溝)を模式的に示す背面図である。以上、「管軸方向に長い切欠部」として縦スリット50を示しているが、本発明はこれに限定するものではない。以下、その一例を示す。
図9の(a)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する長方形の縦貫通溝50aが形成されている。なお、縦貫通溝50aの上端隅部を円弧にしてもよい。
図9の(b)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する三角形の縦貫通溝50bが形成されている。なお、縦貫通溝50bの頂点を円弧にしてもよい。
図9の(c)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する台形状の縦貫通溝50cが形成されている。なお、縦貫通溝50cの上端隅部を円弧にしたり、上端(台形においては底辺)を円弧にしたりしてもよい。
【0046】
図9の(d)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する略菱形の縦貫通溝50dが形成されている。したがって、丸形鋼管20が曲げ変形をするとき、変形の初期において、縦貫通溝50dの側縁の中央(幅が広い)に変形が集中する。なお、縦貫通溝50dの上端隅部を円弧にしたり、上端(台形においては底辺)を円弧にしたりしてもよい。さらに、く字状の側縁を円弧にしてもよい。
図9の(e)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達するスリット状の縦貫通溝50eが形成されている。縦貫通溝50eの管軸方向の中央に貫通孔51eが形成されているから、丸形鋼管20が曲げ変形をするとき、変形の初期において、貫通孔51eに変形が集中する。なお、縦貫通溝50eの幅(側縁同士の隙間)は限定されるものではない。
【0047】
(縦貫通溝の数)
なお、縦貫通溝の数は1本に限定するものではなく、同様な変形挙動(側縁が外側に向かって押し出される)を呈するものであれば2本以上の複数本を設けてもよい。このとき、それぞれの縦貫通孔の形状(幅、長さ)は同じでも、あるいは相違してもよい。
【0048】
(角形鋼管)
以上は、丸形鋼管20に切欠部(貫通した縦スリット50)を設けたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、角形鋼管であってもよい。このとき、曲げ荷重が作用する正面(たとえば、道路側等)に対峙する背面、すなわち、曲げ荷重を受けた際に圧縮側になる面に切欠部を設けることになる。
たとえば、背面の中央部に比較的幅の広い切欠部を設けたり(図18の(a)参照)、複数の切欠部を設けておけば、前記のような変形性能の向上を図ることができる。また、隅部(剛性が高い)のうち圧縮側になる両隅部を切り欠いたり(図18の(c)参照)、圧縮側になる両隅部の近傍に切欠部を設けたり(図18の(b)参照)すれば、前記のような変形性能の向上を図ることができる。
【0049】
[実施の形態2:縦孔付き丸形鋼管]
(全体構成)
図10および図11は本発明の実施の形態2に係る管状支柱を示すものであって、図10の(a)は正面図、図10の(b)は側面図、図10の(c)は背面図、図10の(d)は底面図、図11の(a)は一部を断面にした拡大背面図である。図10において、管状支柱200は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された丸形鋼管20と、図示しない柵用材を設置するために丸形鋼管20に設けられた柵用材設置部230と、を有し、丸形鋼管20には縦貫通孔(以下「縦孔」と称す)60が形成されている。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0050】
(縦孔)
管軸方向に長い切欠部としての縦孔60は、丸形鋼管20の側壁を貫通する管軸方向に長い貫通孔であって、丸形鋼管20の下端23に到達してない。したがって、溶接部90a、90bは円環状に連続するから、溶接作業が容易になる。
なお、縦孔60の幅(側縁同士の円周方向の距離に同じ)は限定するものではなく、力学的に不連続であれば、極めて狭い幅であってもよい。また、実施の形態1と同様の理由により、縦孔60の長さ(縦孔60の上端と下端との距離に同じ)は、縦孔60の幅よりも大きいものである。また、縦孔60の下端と丸形鋼管20の下端23との距離は限定されるものではなく、縦孔60の側縁部に変形を集中させることができる位置であればよい。
【0051】
(柵用材設置部)
柵用材設置部230は、丸形鋼管20の上端21近くと管軸方向の中央部との正面(道路側)に、それぞれブラケット232a、232bを介して設置される柵用材(鋼管部材)231a、231bである。なお、柵用材設置部230の形態はこれに限定するものでなく、設置される柵用材の数量や形状に応じて、適宜変更されるものである。また、柵用材設置部230に替えて、実施の形態1に示す柵用材設置部30を設置してもよい。
【0052】
(変形挙動)
管状支柱200の丸形鋼管20は下部に縦孔60を具備するから、縦孔60側に曲げられた際、実施の形態1に示す管状支柱100と同様の変形挙動を呈する。すなわち、変形の初期において、縦孔60の側縁同士を引き離す力が作用するから、側縁の管軸方向の中央における間隔(縦孔60の幅に相当する)は広がると共に、側縁の管軸方向の中央は外側に向かって押し出される。このとき、縦孔60の上端は、ほとんど変形しない。また、縦孔60の下端は、丸形鋼管20の下端23に到達していないから、丸形鋼管20の板厚およびベースプレート10の支柱用孔12に拘束され、変形しない。
【0053】
さらに、曲げ荷重が増大すると、前記変形の傾向は助長され、側縁は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。すなわち、縦孔60の上端と下端とは当接しないから、曲げによる圧縮荷重は側縁に流れ込み、側縁の周囲が十分に塑性変形することになる。
このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形するものの、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない。
【0054】
(縦孔の形状)
図12は本発明の実施の形態2に係る管状支柱における切欠部(縦孔)を模式的に示す背面図である。以上、実施の形態1では「管軸方向に長い切欠部」のうち丸形鋼管20の下端部に到達したものを「縦貫通溝」と称呼しているのに対し、実施の形態2では、丸形鋼管20の下端部に到達しないものを「縦孔60(図11参照)」と称呼して図示しているが、本発明は図示するものに限定するものではない。以下、その一例を示す。
図12の(a)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない矩形状の縦孔60aが形成されている。なお、縦孔60aの上端隅部を円弧にしてもよい。
図12の(b)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない三角形の縦孔60bが形成されている。なお、縦孔60bの頂点を円弧にしてもよい。
図12の(c)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない台形状の縦孔60cが形成されている。なお、縦孔60cの上端隅部を円弧にしたり、上端(台形においては底辺)を円弧にしたりしてもよい。
【0055】
図12の(d)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない略菱形の縦孔60dが形成されている。したがって、丸形鋼管20が曲げ変形をするとき、変形の初期において、縦孔60dの側縁の中央(幅が広い)に変形が集中する。なお、縦孔60dの上端隅部を円弧にしたり、上端(台形においては底辺)を円弧にしたりしてもよい。さらに、く字状の側縁を円弧にしてもよい。
図12の(e)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しないスリット状の縦孔60eが形成されている。縦孔60eの管軸方向の中央に貫通孔61eが形成されているから、丸形鋼管20が曲げ変形をするとき、変形の初期において、貫通孔61eに変形が集中する。なお、縦孔60eの幅(側縁同士の隙間)を限定するものではない。
【0056】
なお、縦孔60の数を限定しないことや、丸形鋼管に替えて角形鋼管に縦孔60を設けることができることは、実施の形態の形態1に同じである。
【0057】
[実施の形態3:縦溝付き角形鋼管]
(全体構成)
図13および図14は本発明の実施の形態3に係る管状支柱を示すものであって、図13の(a)は正面図、図13(b)は側面図、図13の(c)は背面図、図13の(d)は底面図、図14の(a)は一部を断面にした拡大正面図である。図13において、管状支柱300は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された角形鋼管40(断面矩形の管体に相当する)と、防護柵等を設置するために角形鋼管40に設置された柵用材設置部330と、を有している。
なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0058】
(ベースプレート)
ベースプレート10は、矩形状の鋼板であって、中央に角形鋼管40が挿入(または嵌入)される支柱用孔14と、図示しない基礎に設置する際に、設置用ボルトが貫通する設置用孔13と、が形成されている。なお、矩形状の鋼板に替えて、丸形の鋼板であってもよい。
【0059】
(角形鋼管)
角形鋼管40の上端41の近くに、柵用材設置部330を取り付けるための取付孔44a、44bと、背面側の側面の内側に下端43に到達する縦溝70が形成されている。
そして、角形鋼管40の下端部は、ベースプレート10に形成された支柱用孔14に挿入(または嵌入)され、角形鋼管40の側面とベースプレート10の上面11とが溶接部90aによって、角形鋼管40の下端43とベースプレート10の支柱用孔14とが溶接部90bによって、それぞれ固定されている。
【0060】
(縦溝)
管軸方向に長い切欠部としての縦溝70は、角形鋼管40の内面に形成された底を具備する溝であって、管軸方向に長く形成され、角形鋼管40の下端43に到達している。すなわち、縦溝70は実施の形態1に示す縦スリット50に底を付けたものに相当している。したがって、縦溝70の長さ(縦溝70の上端と角形鋼管40の下端23との距離に同じ)は、縦溝70の幅よりも大きいものである限り、その幅は極めて狭い幅であってもよい。また、正面視の形状もまた限定するものではなく、たとえば、図9に示すバリエーションをとることができる。さらに、図示された縦溝70は角形鋼管40の内面に形成され、外部から視認できないものであるが、本発明はこれに限定するものではなく、角形鋼管40の外面に形成され、外部から視認できるものであってもよい。
【0061】
(柵用材設置部)
柵用材設置部330は、正面視(背面視に同じ)において略コ字状に曲げられ板材(水平部331、鉛直部332a、332bを具備する)であって、鉛直部332a、332bには、角形鋼管40に形成された取付孔44a、44bを貫通する取付ボルト(図示しない)が貫通する取付孔334a、334bが形成されている。
また、鉛直部331a、331bの正面側はそれぞれ折り曲げられ、柵用材固定部333a、333bが形成されている。そして、柵用材固定部333aおよび柵用材固定部333bには、それぞれ柵用材を固定するための柵用材固定用孔335a、336aおよび柵用材固定用孔335b、336bが形成されている。
なお、柵用材設置部330は図示すものに限定するものではなく、また、これに替えて、柵用材設置部30(実施の形態1)や柵用材設置部230(実施の形態2)を取り付けてもよい。
【0062】
(変形挙動)
角形鋼管40は管軸方向に長い縦溝70を具備するから、縦溝70側に曲げられると、変形の初期において、縦溝70の底に円周方向の引っ張り力が作用するため、縦溝70の底は容易に破断する。そうすると、縦溝70は実施の形態1に示す縦スリット50に同等であって、同様の変形挙動を呈することになる。
すなわち、縦溝70の底が破断して形成された側縁は、その間隔が広がると共に、側縁の管軸方向の中央は外側に向かって押し出される。さらに、変位(曲げ荷重)が増大すると、前記変形の傾向は助長され、側縁は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。
【0063】
よって、曲げによる圧縮荷重は側縁に流れ込み、側縁の周囲が十分に塑性変形することになる。このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない。また、角形鋼管40の内面に形成された縦溝70を外側から視認することができないから、角形鋼管40の景観性を損なうことがなく、強度低下を想起させることもなく、看者に、強度に対する安心感を与えることができる。さらに、角形鋼管40の周囲は閉塞されるから、雨水等の侵入がなく、保全性に優れている。
なお、縦溝70が角形鋼管40の内面に形成されたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、縦溝70が角形鋼管40の外面に形成されてもよい。また、角形鋼管40に替えて、丸形鋼管20の内面または外面に縦溝70を形成してもよい。
【0064】
(縦溝の形状)
図15は本発明の実施の形態3に係る管状支柱における切欠部(縦溝)を模式的に示す拡大底面図である。縦溝70は、変形の初期においてその底が破断し、その後は縦スリット50と同様の変形挙動を呈する限り、その形状を限定するものではなく、以下、その一例を示す。なお、前記のように、縦溝70は角形鋼管(または丸形鋼管)の内面または外面に形成されるものであるから、図15における紙面の上方向は、外面側または内面側の何れの方向であってもよい。
【0065】
図15の(a)は、底面視(断面に同じ)において、略V字状の底付き縦溝70aである。このとき、縦溝70aの底の最奥部71aに変形が集中するから、縦溝70aは極めて容易に破断する。よって、縦溝70aの周囲は、早期にかつ確実に実施の形態1に示す縦スリット50に類似した変形挙動をする。
図15の(b)は、底面視(断面に同じ)において、略コ字状の底付き縦溝70bである。このとき、縦溝70aの底71bの管軸方向の中央から破断が進むものと考えられる。なお、縦溝70aの幅は限定するものではない。
【0066】
図15の(c)は、底面視(断面に同じ)において、円弧状の底付き縦溝70cである。このとき、縦溝70cの底の最奥部71cに変形が集中するものの、略V字状の縦溝70cよりは変形の集中が少ないから、曲げ荷重が僅かな場合、縦溝70cは破断することなく、縦溝70cの塑性変形だけで衝撃エネルギを吸収することができる。
図15の(d)は、底面視(断面に同じ)において、角形鋼管40の内面および外面の両方に略V字状の底付き縦溝70d、70eを形成したものである。このとき、縦溝70dの底の最奥部71dと縦溝70eの底の最奥部71eとが対峙する位置(以下「最薄肉部」と称す)72dに、変形が集中するから、最薄肉部72dは極めて容易に破断する。よって、縦溝70の周囲は、早期にかつ確実に実施の形態1に示す縦スリット50に類似した変形を開始する。
【0067】
なお、前記のように、実施の形態3に示す縦溝70はその底が破断した後は実施の形態1に示す縦スリット50と同様の変形挙動を呈し、一方、実施の形態2に示す縦孔60は実施の形態1に示す縦スリット50と同様の変形挙動を呈するから、縦溝70の下端を角形鋼管40の下端43に到達しないものにしても、実施の形態1に示す縦スリット50と同様の変形挙動を得ることができる。すなわち、実施の形態2に示す縦孔60を底を具備する縦溝(角形鋼管40の下端43に到達しない)にしてもよい。
また、縦溝70の数を限定しないことや、角形鋼管に替えて丸形鋼管に縦溝70を設けることができることは、実施の形態の形態1に同じである。
【0068】
[実施の形態4:貫通孔および縦溝付き角形鋼管]
(全体構成)
図16および図17は本発明の実施の形態4に係る管状支柱を示すものであって、図16の(a)は正面図、図16(b)は側面図、図16の(c)は背面図、図16の(d)は底面図、図17は一部を断面にした拡大正面図である。
図16および図17において、管状支柱400は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された角形鋼管40と、柵用材を設置するために角形鋼管40に設置された柵用材設置部430と、を有している。
なお、実施の形態3(実施の形態1に同じ)と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0069】
(角形鋼管)
角形鋼管40の上端41に、柵用材設置部330を取り付けるための切欠部45が形成され、上端41の切欠部45を除く範囲に蓋42が設置されている。
また、背面側の側面の内側に下端43に到達しない縦溝80が形成され、縦溝80の管軸方向の中央に貫通孔82が設けられている。なお、角形鋼管40に替えて丸形鋼管20を用いてもよい。
【0070】
(縦溝および貫通孔)
管軸方向に長い切欠部としての縦溝80は、角形鋼管40の内面に形成された底を具備する凹部であって、管軸方向に長く形成され、角形鋼管40の下端43に到達していない。すなわち、縦溝80は実施の形態2に示す縦孔60に底を付けたものに相当している。したがって、縦溝80の長さ(縦溝80の上端と下端との距離に同じ)は、縦溝80の幅よりも大きいものである限り、その幅は極めて狭い幅であってもよい。また、正面視の形状もまた限定するものではなく、たとえば、図12に示すバリエーションをとることができる。
【0071】
(柵用材設置部)
柵用材設置部430は、角形鋼管40に形成された切欠部45に設置される断面L字状部材431(鉛直部432および水平部433を具備する)と、角形鋼管40の管軸方向の略中央に設置される矩形部材435とから形成されている。
断面L字状部材431の水平部433および矩形部材435には、それぞれ柵用材を固定するための柵用材固定用孔434a、434bおよび柵用材固定用孔436a、436bが形成されている。
なお、本発明は柵用材設置部430を図示するものに限定するものではなく、たとえば、これに替えて、柵用材設置部30(実施の形態1)、柵用材設置部230(実施の形態2)、あるいは柵用材設置部330(実施の形態3)を取り付けてもよい。
【0072】
(変形挙動)
角形鋼管40は管軸方向に長い縦溝80および貫通孔82を具備するから、縦溝80側に曲げられると、変形の初期において、貫通孔82の周囲に引っ張り力が集中するため、縦溝80の底81は、貫通孔82を起点にして容易に破断する(管軸方向に亀裂が進展する)。そうすると、縦溝80は実施の形態1に示す縦スリット50に同等であって、同様の変形挙動を呈することになる。
すなわち、縦溝80の底81が破断して形成された側縁は、その間隔が広がると共に、側縁の管軸方向の中央は外側に向かって押し出される。さらに、変位(曲げ荷重)が増大すると、前記変形の傾向は助長され、側縁は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。
【0073】
よって、曲げによる圧縮荷重は側縁に流れ込み、側縁の周囲が十分に塑性変形することになる。このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない。
また、角形鋼管40の背面では貫通孔82のみが視認され、縦溝80は視認することができないから、角形鋼管40の景観性を損なうことがなく、強度低下を想起させることもなく、看者に、強度に対する安心感を与えることができる。
なお、縦溝80が角形鋼管40の内面に形成されたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、縦溝80が角形鋼管40の外面に形成されてもよい。また、角形鋼管40に替えて、丸形鋼管20の内面または外面に縦溝70を形成してもよい。
【0074】
ところで、前記のように、実施の形態4に示す縦溝80はその底が破断した後は実施の形態2に示す縦孔60と同様の変形挙動を呈し、一方、実施の形態2に示す縦孔60は実施の形態1に示す縦スリット50と同様の変形挙動を呈するから、縦溝80の下端を角形鋼管40の下端43に到達したものにしても、実施の形態2に示す縦孔60と同様の変形挙動を得ることができる。すなわち、実施の形態1に示す縦スリット50に底を設け(外面から視認可能または視認不能の場合がある)、その底に貫通孔を設けてもよい。
【0075】
なお、以上は、角形鋼管40の背面の中央に1本の縦溝80を設けているが、その幅を広くしたり(図18の(a)参照)、縦溝80をを複数個所に設けておけば、変形性能の向上を図ることができる。また、隅部(剛性が高い)のうち圧縮側になる両隅部(図18の(c)参照)に、あるいは圧縮側になる両隅部の近傍(図18の(b)参照)に縦溝80を設ければ、変形性能の向上を図ることができる。
【0076】
[実施の形態5:縦スリット付き角形鋼管]
図18の(a)は本発明の実施の形態5に係る管状支柱を示す斜視図であって、実施の形態1〜4において付記した内容を図示するものである。なお、実施の形態4と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図18の(a)において、管状支柱500には、角形鋼管40の曲げ荷重が作用する正面46(たとえば、道路側等)に対峙する背面48、すなわち、曲げ荷重を受けた際に圧縮側になる面の中央部に、幅の広い縦スリット50が形成されている。したがって、管状支柱50においても、縦スリット50の変形が促進されるから、管状支柱400(実施の形態4)と同様の変形性能またはより向上した変形性能が得られる。
なお、縦スリット50に替えて、貫通した縦孔(実施の形態2)、底付きの縦溝70(実施の形態3)、あるいは貫通孔が形成された底付きの縦溝80(実施の形態4)の何れを設けても、同様の効果が得られるものである。
【0077】
[実施の形態6:一対の縦スリット付き角形鋼管]
図18の(b)および(c)は本発明の実施の形態6に係る管状支柱を示す斜視図であって、実施の形態1〜4において付記した内容を図示するものである。なお、実施の形態4と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図18の(b)において、管状支柱600には、角形鋼管40の圧縮側になる背面48の両隅部の近傍に縦スリット50が形成されている。
図18の(c)において、管状支柱700には、角形鋼管40の4隅のうち、曲げ荷重が作用した際、圧縮側になる両隅部の中央に縦スリット50が形成されている。すなわち、かかる両隅部の中央が切り欠かれた形態を呈している。
【0078】
(変形挙動)
図21は、管状支柱700を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図であって、(a)は変形の初期、(b)および(c)は変形の終期を示している。なお、図中の各部位の寸法(大小関係)は限定するものではなく、また、局部変形による増肉や減肉については図示しない。また、図面を簡単にするため、設置用ボルトがベースプレート10の設置用孔13を貫通しているが、これらを図示しない。
【0079】
図21において、管状支柱700は、正面46に背面48の方向に略水平方向の荷重が作用するものであって、圧縮力を受ける背面48と側面47、49との両隅に、それぞれ管軸方向に長い縦スリット50、50(図中、A1−B1−C1−F1−E1−D1−A1で囲まれた範囲、およびA2−B2−C2−F2−E2−D2−A2で囲まれた範囲に同じ)を具備している。
【0080】
縦スリット50側に曲げ荷重が小さい初期では、管状支柱700の圧縮力を受ける背面48は、角形鋼管40の内部に向かって凸状に撓もうとする。このため、背面48の縦スリット50によって挟まれた範囲(A1−B1−C1−C2−B2−A2−A1で囲まれた範囲に同じ)は、内部に陥入(侵入)するように弓なりに変形する。すなわち、当該範囲は軸方向に圧縮されながら、曲げられている(図21の(a)参照)。
そして、曲げようとする荷重が大きくなると、当該範囲は、断面Ω(オメガ)字状に大きく塑性変形する。
【0081】
また、角形鋼管40の側面47、49(引っ張り側の正面46と圧縮側の背面48とを繋ぐ面に同じ)に位置している縦スリット50の側縁(D1−E1−F1)および側縁(D2−E2−F2)は、軸方向に圧縮を受けている。そして、曲げ荷重または角形鋼管40の非対称性によって、側縁(D1−E1−F1)および側縁(D2−E2−F2)は、内面側または外面側に向かって、座屈状に変形する(図21の(b)参照)。
なお、角形鋼管40の側面47、49は、正面46に近い範囲では引っ張り力が作用しているため、かかる座屈状の変形の程度は、正面46に近づく程小さくなっている(図21の(c)参照)。
【0082】
以上のように、管状支柱700は、背面48の縦スリット50によって挟まれた範囲の大きな塑性変形と、側面47、49の座屈状の変形とによって、大きな衝撃エネルギを吸収することが可能になっている。そして、これによって、正面46とベースプレート10との接合部に作用する引っ張り力が緩和されるから、当該接合部の破断が防止されている。なお、縦スリット50に替えて、貫通した縦孔(実施の形態2)、底付きの縦溝70(実施の形態3)、あるいは貫通孔が形成された底付きの縦溝80(実施の形態4)の何れを設けても、同様の効果が得られるものである。
【0083】
[実施の形態7:側面縦スリット付き角形鋼管]
図22は本発明の実施の形態7に係る管状支柱を示す斜視図であって、なお、実施の形態4と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図22の(a)において、管状支柱800には、角形鋼管40の側面47、49に縦スリット50、50が形成されている。縦スリット50、50は、背面48に近い範囲にあるため、圧縮力を受けている。また、縦スリット50、50によって挟まれた範囲の両側縁の近くには、管状支柱800の隅部が含まれるものの、当該範囲は圧縮力を受けながら曲げ変形をするから、管状支柱800は管状支柱700(実施の形態6)と略同様の挙動を呈する。
【0084】
図22の(b)において、管状支柱900は、管状支柱800(図22の(a)参照)における隅部寄りの縦スリット50、50に替えて、側面47、49の幅方向のほぼ中央に縦スリット50、50が配置されたものである。
すなわち、縦スリット50、50の幅方向の中心を通る縦線が、角形鋼管40が曲げられた際の中立線(一点鎖線で表示する)に、ほぼ一致するように配置されている。このとき、縦スリット50、50は所定の幅を有するから、縦スリット50、50は中立線を跨ぐことになる。つまり、縦スリット50、50を形成する側縁の内、背面48に近い側縁は、変形の初期段階において軸方向に圧縮力を受ける範囲に位置し、正面46に近い側縁は、変形の初期段階において軸方向に引っ張り力を受ける範囲に位置している。
したがって、管状支柱800に準じた変形挙動を呈することになる。
【0085】
[実施の形態8:補強板付き丸形鋼管]
図23は本発明の実施の形態8に係る管状支柱を模式的に説明するものであって、(a)は側面視の断面図、(b)は平面視の断面図である。なお、実施の形態1および実施の形態6と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図23において、管状支柱1100は、管状支柱100の丸形鋼管20の内面で、縦スリット50に対向する位置に断面円弧状の補強板91を設置したものである。このとき、補強板91の下端91bはベースプレート10に、補強板91の側縁91a、91cは、それぞれ丸形鋼管20の内面に溶接固定されている。
したがって、丸形鋼管20に作用した引っ張り力は、補強板91を経由してベースプレート10に伝達されるから、丸形鋼管20とベースプレート10との溶接部に作用する引っ張り力が緩和され、当該部位における破断が防止される(これについては、別途詳細に説明する)。
【0086】
[実施の形態9:補強板付き角形鋼管]
図24は本発明の実施の形態9に係る管状支柱を模式的に説明するものであって、(a)は側面視の断面図、(b)は平面視の断面図である。なお、実施の形態1および実施の形態6と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図24において、管状支柱1600は、管状支柱600において、縦スリット50に対向する角形鋼管40の正面46の内面に、矩形平板状の補強板92を設置したものである。このとき、補強板92の下端92bはベースプレート10に、補強板92の側縁92a、92cは、それぞれ角形鋼管40の内面に溶接固定されている。
したがって、角形鋼管40に作用した引っ張り力は、補強板92を経由してベースプレート10に伝達されるから、角形鋼管40とベースプレート10との溶接部に作用する引っ張り力が緩和され、当該部位における破断が防止される(これについては、別途詳細に説明する)。
【0087】
[縦スリットおよび補強板の効果について]
図25〜図36は、本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットおよび補強板の効果を説明するものであって、図25〜図36は、これを確認するための供試材を示す断面図、図28〜図36はそれぞれの効果を示す荷重−変位線図である。
なお、以下は、縦スリット50が形成されたものについての説明であるが、縦スリット50に替えて、縦貫通溝60や縦溝(底付き)70を形成しても同様の効果が得られるものである。
【0088】
図25および図26は、角形鋼管40における縦スリット50の高さが75mmの場合で、正面の裏側に補強板92が設置されたものであって、縦スリット50が側面47、49に形成されたものは符号に「S」を付して「K−75SP(図25の(b)参照)」と、縦スリット50が背面48に形成されたものは符号に「H」を付して「K−75HP(図26の(a)参照)」と、縦スリット50が隅部中央に形成されたものは符号に「C」を付して「K−75CP(図26の(b)参照)」と、を示している。
図27は、丸形鋼管20における縦スリット50の高さが70mmの場合で、縦スリット50に対向する位置(正面)の裏側に補強板91が設置された「V5−70CP」を示している。
【0089】
なお、以下の説明において、補強板92が設置されないものについては、前記符号の「P」を省略して称呼する。また、縦スリット50の高さが75mmでないものについては、前記符号の「75」を実際の縦スリットの高さに置き換えて称呼する。したがって、補強板92が設置されないで、100mm高さの縦スリット50が隅部中央に形成されたものは「K−100C」と称呼する。
そして、表1に供試材をまとめて示す。なお、表1の備考には、確認しようとする効果および関連する図番を記載する。
【0090】
【表1】
【0091】
(縦スリットの位置効果、補強板なし)
図28および図29の何れにおいて、最大荷重は縦スリット50の設置位置が側面47、49であるもの(K−100S,K−75S)が最も大きく、次に、背面48であるもの(K−100H、K−75H)、そして、隅部中央(図中、スリットセンターと表示する)にあるもの(K−100C,K−75C)が最も低い値を示している。
すなわち、縦スリット50が側面47、49にあるものでは、圧縮を受ける背面48の両側部には断面円弧状の角部(幅13mm)があるため、背面48の曲げ剛性が大きくなっていることが最大荷重を高めた一因と考えられる。一方、縦スリット50が背面48にあるものでは、側面47、49が座屈状に変形する際に、圧縮側に位置する断面円弧状の角部(幅13mm)が変形抵抗となると考えられる。
【0092】
そして、縦スリット50が角部の中央にあるものでは、角部の円弧状範囲が小さくなっているため、背面48の曲げ剛性および側面47、49の曲げ剛性が、縦スリット50が側面47、49や背面48にあるものよりも小さくなり、結果として、最大荷重が最も小さくなったものと考えられる。
そして、縦スリット50の高さが100mmであるもの(図28参照)では、何れも目的変位300mm以上の変位を呈する大きな変形をしている。一方、縦スリット50の高さを75mmにすると(図28参照)、縦スリット50が背面または隅部中央にある場合には、大きな変形をしているのに対し、側面にある場合には、190mm辺りの変位において破断し、目的変位300mm以上に到達していない。
【0093】
(縦スリット高さの効果、補強板なし)
図28と図29とを対比するに、縦スリット50の高さが100mmおよび75mmのもの最大荷重は、縦スリット50が側面47、49にある場合は「54.2kNおよび56.3kN」、背面48にある場合は「51.3kNおよび54.3kN」、隅部中央にある場合は「46.4kNおよび50.6kN」になっている。
すなわち、縦スリット50の高さが低い方が、それぞれ、3.9%、5.8%、9.1%だけ高くなっている。したがって、仮に、55kNを目標最大荷重とすると、高さ75mm以下の縦スリット50を側面47、49または背面48に設ける必要があることが示唆される。
なお、縦スリット50を打ち抜き(ブランキング)によって形成する場合、金型(ダイス)の肉厚を保証するためには、縦スリット50を隅部中央に設けるのが好適であるが、補強板なしで、高さ75mmの縦スリット50を隅部中央に設けたのでは、55kNの目標最大荷重を得ることができない。
【0094】
(補強板の効果)
図30〜図32において、補強板92が設置されたものおよび設置されないものの最大荷重は、縦スリット50が側面47、49にある場合は「57.5Nおよび56.3kN」、背面48にある場合は「56.8kNおよび54.3kN」、隅部中央にある場合は「53.4Nおよび50.6kN」になっている。すなわち、補強板92の最大荷重に対する効果は縦スリット50の設置位置が、側面、背面、隅部中央の順に大きくなり、それぞれ2.1%、4.6%、5.5%だけ最大荷重が増加している。特に、縦スリット50が側面に設けられた場合(図30参照)、補強板92がないと、目標変位300mmに到達する前に破断するのに対し、補強板92があると、目標変位300mmを越える大きな変形が得られている。
すなわち、正面46とベースプレート10との溶接部に作用する引っ張り力が緩和されると共に、正面46のベースプレート10に近い範囲の曲げ剛性が向上していると考えられる。特に、側面47、49に設けたもの(図30)において、補強板92がないK−75Sでは早期(変位190mm)に正面46とベースプレート10との溶接部が破断して荷重が急激に減少しているのに対し、補強板92が設置されているK−75SPではかかる溶接部の破断が発生していない。
【0095】
(縦スリットの位置効果、補強板あり)
図33および図34において、補強板92がない場合(図28および図29参照)と同様に、最大荷重は縦スリット50の設置位置が側面47、49であるもの(K−75SP、K−60SP)が最も大きく、次に、背面48であるもの(K−75HP、K−60HP)、そして、隅部中央(図中、スリットセンターと表示する)にあるもの(K−75CP,K−60CP)が最も低い値を示している。
【0096】
また、図33と図34とを対比するに、補強板92が設置された場合、縦スリット50の高さが75mmおよび60mmのものの最大荷重は、縦スリット50が側面47、49にある場合は「57.5kNおよび59.1kN」、背面48にある場合は「56.8kNおよび58.5kN」、隅部中央にある場合は「53.4kNおよび58.2kN」になっている。
すなわち、縦スリット50の高さが低い方が、それぞれ、2.8%、3.0%、9.0%だけ高くなっている。したがって、仮に、55kNを目標最大荷重とすると、高さ60mm以下の縦スリット50であれば、隅部中央に設けたものでも、これをクリアーすることが示唆される。
【0097】
(縦スリットの高さの効果、補強板あり)
図35において、補強板92が設置された場合も補強板92がない場合と同様、縦スリット50の高さが、75mm、60mm、50mmと低くなるに従って最大荷重が大きくなっている。
しかし、縦スリット50の高さが40mmのK−40CPになると、高さ50mmのK−50CPに比較して最大荷重は殆ど増加しないまま、目標変位300mmより少ない変位280mmにおいて、正面46とベ−スプレート10との溶接部に破断が生じている。
このように角形鋼管40の肉厚(6mm)に対して縦スリット50の高さが比較的小さい場合、背面48において内部に十分陥入する曲げ変形が生じる前に、背面48の肉厚が増加する圧縮変形が生じることが一因と考えられる。
【0098】
(丸形鋼管における補強板の効果)
図36において、丸形鋼管20に補強板91が設置されたV570CP−1は、角形鋼管40に補強板92が設置された場合と同様、最大荷重が補強板91の設置によって増加している。すなわち、補強板91の設置によって、最大荷重が、51.3kNから55.3kNに、7.8%増加している。
なお、V570CP−1は一条の縦スリット50が形成されたものであるが、圧縮力が作用する位置に複数の縦スリットを形成しても同様の挙動を示すものである。また、縦スリット50の高さを変更した場合には、角形鋼管40におけるものに準じた効果が奏せられるものと考えられる。
【0099】
(丸形鋼管におけるスリットおよび補強板の効果)
図37において、丸形鋼管20のみである「スリット無し補強PL無し」では、最大荷重が55.8kNであるものの、変位170mm辺りで破断している。
また、丸形鋼管20に縦スリット50を設けた「M5−75スリット」では、最大荷重が、50.2kNに低下したものの、変位量が増加し、縦スリット50を設けた効果が認められる。ただし、目標変位である300mmには到達していない。
さらに、丸形鋼管20に縦スリット50および補強板91を設けた「M5−75Pスリット」では、縦スリット50を設けた影響で最大荷重が、51.1kNに低下したものの、補強板91を設けた効果によって変位量が大幅に増加している(目標変位である300mmを越えている)。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は以上の構成であるため、衝撃エネルギの吸収能力に優れると共に、景観性を担保しながら製造コストを抑えることができるから、防護柵等(ガードレール、ガードパイプ、ガードケーブル、高欄、落石防止防護柵、雪崩防護柵等を総称している)を支持する支柱として利用されるだけでなく、様々な目的に応じて配置される様々な形態の部材を支持する支柱として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態1に係る管状支柱を示す正面図等。
【図2】図1に示す管状支柱の一部を断面にした拡大背面図。
【図3】図1に示す管状支柱の実施例等を示す背面図。
【図4】図3に示す実施例等を示す底面図。
【図5】図3に示す実施例等を曲げた際の荷重−変位曲線。
【図6】図3に示す実施例を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図。
【図7】図3に示す比較例1を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図。
【図8】図3に示す比較例2を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図。
【図9】図1に示す管状支柱における切欠部を模式的に示す背面図。
【図10】本発明の実施の形態2に係る管状支柱を示す正面図等。
【図11】図10に示す管状支柱の一部を断面にした拡大背面図。
【図12】図10に示す管状支柱における切欠部を模式的に示す背面図。
【図13】本発明の実施の形態3に係る管状支柱を示す正面図等。
【図14】図13に示す管状支柱の一部を断面にした拡大正面図。
【図15】図13に示す管状支柱における切欠部を模式的に示す拡大底面図。
【図16】本発明の実施の形態4に係る管状支柱を示す正面図等。
【図17】図16に示す管状支柱の一部を断面にした拡大正面図。
【図18】本発明の実施の形態5に係る管状支柱を示す斜視図。
【図19】従来の鋼管支柱を曲げた際の荷重−変位線図。
【図20】従来の鋼管支柱を曲げた際の荷重−変位線図。
【図21】管状支柱700を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図。
【図22】本発明の実施の形態7に係る管状支柱を示す斜視図。
【図23】本発明の実施の形態8に係る管状支柱を模式的に説明する断面図。
【図24】本発明の実施の形態9に係る管状支柱を模式的に説明する断面図。
【図25】本発明の実施の形態9に係る管状支柱における、縦スリットおよび補強板の効果を説明するための供試材を示す断面図。
【図26】本発明の実施の形態9に係る管状支柱における、縦スリットおよび補強板の効果を説明するための供試材を示す断面図。
【図27】本発明の実施の形態8に係る管状支柱における、補強板の効果を説明するための供試材を示す断面図。
【図28】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットの位置の効果を説明する荷重−変位線図。
【図29】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットの位置の効果を説明する荷重−変位線図。
【図30】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、補強板の効果を説明する荷重−変位線図。
【図31】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、補強板の効果を説明する荷重−変位線図。
【図32】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、補強板の効果を説明する荷重−変位線図。
【図33】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットの位置の効果を説明する荷重−変位線図。
【図34】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットの位置の効果を説明する荷重−変位線図。
【図35】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットの高さの効果を説明する荷重−変位線図。
【図36】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、補強板の効果を説明する荷重−変位線図。
【図37】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットおよび補強板の効果を説明する荷重−変位線図。
【符号の説明】
【0102】
10:ベースプレート、11:上面、12:支柱用孔(実施の形態1、2)、13:設置用孔、14:支柱用孔(実施の形態3、4)、20:丸形鋼管、21:上端、22:蓋、23:下端、24:柵用材固定用孔、30:柵用材設置部、31:矩形部材、33a:柵用材固定用孔、33b:柵用材固定用孔、34:柵用材固定用孔、40:角形鋼管、41:上端、42:蓋、43:下端、44a:取付孔、44b:取付孔、45:切欠部、46:正面、47:側面、48:背面、49:側面、50:縦スリット(実施の形態1)、50a:縦貫通溝、50b:縦貫通溝、50c:縦貫通溝、50d:縦貫通溝、50e:縦貫通溝、51e:貫通孔、60:縦孔(実施の形態2)、60a:縦孔、60b:縦孔、60c:縦孔、60d:縦孔、60e:縦孔、61e:貫通孔、70:縦溝(実施の形態3)、70a:縦溝、70b:縦溝、70c:縦溝、70d:縦溝、70e:縦溝、71a:最奥部、71b:底、71c:最奥部、71d:最奥部、71e:最奥部、72d:最薄肉部、80:縦溝(実施の形態4)、81:底、82:貫通孔、90a:溶接部、90b:溶接部、98:小横孔(比較例1)、99:大横孔(比較例2)、100:管状支柱(実施の形態1)、200:管状支柱(実施の形態2)、230:柵用材設置部、231a:柵用材(鋼管部材)、232a:ブラケット、300:管状支柱(実施の形態3)、330:柵用材設置部、331:水平部、332a:鉛直部、332b:鉛直部、333a:柵用材固定部、333b:柵用材固定部、334a:取付孔、334b:取付孔、400:管状支柱(実施の形態4)、430:柵用材設置部、431:字状部材、432:鉛直部、433:水平部、434a:柵用材固定用孔、435:矩形部材、435a:柵用材固定用孔、435b:柵用材固定用孔、436a:柵用材固定用孔、500:管状支柱(実施の形態5)、600:管状支柱(実施の形態5)、700:管状支柱(実施の形態6)、800:管状支柱(実施の形態7)、900:管状支柱(実施の形態7)、1100:管状支柱(実施の形態8)1600:管状支柱(実施の形態9)、980:管状支柱(比較例1)、990:管状支柱(比較例2)。
【技術分野】
【0001】
本発明は管状支柱、特に、道路等に設置される防護柵等の固定に用いられる管状支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に設置されるガードレール、ガードパイプ、ガードケーブル、また橋梁に設置される高欄、さらに山間部等に設置される落石防止防護柵、雪崩防護柵等(本明細書において、これらを「防護柵等」と総称する)は、間隔を設けて設置された支柱に固定されている。かかる支柱は、車両、落石や雪崩等が衝突した際の衝突による衝撃力(正確には衝撃エネルギ)を吸収して車両落石や雪崩等を受け止める必要があることから、所定の剛性を有する鋼管(丸形金属管や角形金属管を含む)やH形鋼によって製造されている。
【0003】
図19及び図20は、従来の鋼管支柱を曲げた際の荷重−変位線図であって、図19の(a)は丸形鋼管(STK400、外径139.8mm、肉厚4.5mm)を曲げアーム長さ600mmで、図19の(b)は丸形鋼管(STK400、外径114.3mm、肉厚4.5mm)を曲げアーム長さ600mmで、図20は角形鋼管(STKR400、外辺125mm×125mm、肉厚6.0mm)を曲げアーム長さ760mmで、曲げている。
すなわち、最大荷重に到達した後、鋼管支柱とベースプレートとの溶接部に亀裂が生じて溶接部が破断するため、荷重が急激に低下しているから、鋼管支柱は所望の変位を保証するだけの変形をしていないことになる。すなわち、支柱自体の剛性を高めたのでは、支柱とベースプレートとの溶接部に亀裂が生じ、かえって衝撃エネルギの吸収量が増加しないという問題があった。
【0004】
このため、溶接部を補強しようとする技術と、鋼管支柱に先行して座屈する部分を予めも設けてそこを積極的に座屈させることによって溶接部の破断を防止し、これによって鋼管支柱の塑性変形量を増大させようとする技術と、が開示されている。
特に、後者について、衝撃吸収性を保証すると共に、経済性、作業性並びに景観性を高めようとする発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−188031号公報(第5−6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、支柱が丸形金属管や角形金属管であって、車道と反対側の下方位置に側面方向から見て「く字状」の切欠を形成し、該開口部に断面く字状の補強プレートを取り付けたものである。すなわち、車道に向かって見ると、丸形金属管では楕円状の開口部に楕円板を折り曲げた補強プレートが取り付けられ、角形金属管では矩形の開口部に矩形板を折り曲げた補強プレートが取り付けられる。したがって、以下のような問題があった。
(あ)「く字状」の切欠を形成する作業と、断面く字状の補強プレートを製造する作業と、開口部に補強プレートを溶接する作業とを必要とするため、製造コストが高くなる。
(い)「く字状」の切欠が側面方向から視認されるため、外観から受ける鋼管支柱の信頼感が低くなる。
(う)切欠部の開き角度が大きい場合や補強プレートが薄い場合、支柱の剛性が低下し、所望の量の衝撃エネルギを吸収することができない。
(え)切欠部の開き角度が小さい場合や補強プレートが厚い場合、変形の初期において、補強プレートの面同士が当接したり、補強プレートの折り曲げ部に変形が集中したりして、支柱の剛性が高くなり、溶接部が破断する可能性が出てくる。このため、結果として、所望の量の衝撃エネルギを吸収することができ難くなる。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、衝撃エネルギの吸収能力に優れた管状支柱を提供することを最大の目的とし、合わせて、景観性を担保すると共に、製造コストを抑えることができる管状支柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る管状支柱は、基礎に固定されるベースプレートと、該ベースプレートに立設された管体と、を有し、
前記管体の前記ベースプレート近傍に、管軸方向に長い切欠部が形成されていることを特徴とする。
(2)前記(1)において、前記切欠部が、前記管体を貫通する縦スリット又は縦孔であることを特徴とする。
【0009】
(3)前記(1)において、前記切欠部が、前記管体の外面または内面の一方に形成され、または前記管体の外面および内面の両方に対向して形成され、底面を有する溝であることを特徴とする。
(4)前記(1)乃至(3)の何れかにおいて、前記切欠部の管軸方向の中央部における幅が、前記切欠部の端部における幅より広いことを特徴とする。
(5)前記(1)乃至(4)の何れかにおいて、少なくとも前記切欠部の一部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮力を受ける範囲に位置していることを特徴とする。
【0010】
(6)前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記管体が断面円形で、1の前記切欠部が形成され、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部が前記管体の外側に向かって突出するように変形すると共に、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする。
【0011】
(7)前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる面に1または2以上設けられていることを特徴とする。
(8)前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる両隅部または該両隅部近傍に設けられていることを特徴とする。
【0012】
(9)前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる面と引っ張り側になる面とを連結する側面の前記圧縮側になる面寄りに設けられていることを特徴とする。
【0013】
(10)前記(7)乃至(9)の何れかにおいて、前記管体が断面矩形で、1の切欠部が形成されたものであって、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする。
(11)前記(7)乃至(9)の何れかにおいて、前記管体が断面矩形で、一対の切欠部が形成されたものであって、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記一対の切欠部に挟まれた面が、前記管体の内側に向かって陥入するように変形することを特徴とする。
【0014】
(12)前記(1)乃至(11)の何れかにおいて、前記管体の前記切欠部に対向する内面に、補強板が設置されていることを特徴とする。
(13)前記(12)において、前記補強板は、矩形状の平板または矩形状の断面円弧板であって、
一方の端縁が、前記ベースプレートに接合され、
両側縁が、それぞれ前記管体の内面に接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る管状支柱は以上の構成であるから、以下の効果を奏する。
(i)本発明に係る管状支柱は管軸方向に長い切欠部が形成されているから、切欠部側に曲げられた際、変形が切欠部の両側縁部に集中する。すなわち、切欠部の上端部自体および下端部自体の形状はほとんど変形することなく、側縁部同士の間隔が広がると共に、側縁部が大きく変形する。
したがって、変形の初期においては、管軸方向の圧縮力は広い断面積において支持されるから、剛性の低下が少ない。また、変形が進んでからも、切欠部の上端部と下端部とが当接することがなく、切欠部の両側縁部が外側に向かって変形するため、衝撃エネルギを十分に吸収することができる。
【0016】
なお、管状支柱とは、その断面形状を限定するものではなく、たとえば断面丸形や断面矩形あるいは断面馬蹄形の金属管であって、鋼製であれば丸形鋼管や角形鋼管あるいは馬蹄形鋼管を指している。また、管軸方向に長いとは、切欠部の上端と下端との距離(長さ)が切欠部の側縁同士の距離(幅)よりも大きいことを指している。また、基礎は道路の路側や橋梁の地覆を形成する部位等を指している。
また、ベースプレートとは、基礎に固定される板状部材に限定するものではなく、基礎に設置(載置や埋め込み等を含む)される金属部材、たとえば形鋼(溝形鋼やH形鋼等)や鋼管(丸形鋼管、角形鋼管等)を含むものである。
【0017】
(ii)また、切欠部が管体を貫通する縦スリット(貫通した溝に同じ)又は縦孔(貫通した孔に同じ)であるから、切欠部側に曲げられた際、側縁部同士の間隔(幅)が確実に広がると共に、側縁部が大きく変形する。さらに、縦スリットの幅を狭くしておけば、景観性が阻害されることなく、外観から受ける鋼管支柱の信頼性が担保される。
【0018】
(iii)また、切欠部が底面を有する、すなわち、縦スリットまたは縦孔の厚さ方向の一部に「一皮」が形成されたものであるから、切欠部側に曲げられた際、変形の初期において当該底面(一皮)が破断し、その後は前記(2)と同様に側縁部同士の間隔(幅)が確実に広がるため、前記(i)、(ii)の効果を奏する。また、側面に開口部が形成されないため、支柱内に雨水等が侵入することがなく、保全性や耐久性が向上すると共に、景観性も向上する。
【0019】
(iv)また、切欠部の長手方向の中央部が端部よりも幅広であるから、切欠部側に曲げられた際、切欠部の長手方向の中央部を起点として側縁部が変形し、中央部において最も大きく変形をするため、側縁部同士の間隔(幅)が確実に広がる。
(v)また、少なくとも切欠部の一部が圧縮力を受ける範囲に位置しているから、すなわち、切欠部の全部が圧縮力を受ける範囲に配置されたり、切欠部が圧縮力を受ける範囲と引っ張り力を受ける範囲とに跨って配置されたりするから、前記(i)〜(iv)のそれぞれの効果が確実になる。
【0020】
(vi)また、断面円形の管体に形成された1条の切欠部の中央部が、外側に向かって突出するように変形すると共に、中央部の幅が拡大するから、前記(i)の効果が得られる。
【0021】
(vii)さらに、断面矩形の管体において、圧縮側になる面に1または2以上の切欠部が設けられているから、前記(i)の効果が得られる。
(viii)さらに、断面矩形の管体において、圧縮側になる両隅部または該両隅部近傍に切欠部が設けられているから、前記(i)の効果が得られる。
(ix)さらに、断面矩形の管体において、側面の圧縮側になる面寄りに切欠部が設けられているから、前記(i)の効果が得られる。
【0022】
(x)さらに、断面矩形の管体に形成された1条の切欠部の中央部が、大きく変形して、幅が拡大するから、前記(i)の効果が得られる。
(xi)さらに、断面矩形の管体において、一対の切欠部に挟まれた面が内側に向かって陥入するように変形するから、前記(i)の効果が得られる。
【0023】
(xii)そして、管体の引っ張り側の内面に補強板が設置されているから、補強板が衝撃エネルギの吸収体として機能し、前記(i)の効果が促進される。
(xiii)そして、前記補強板の両側縁が管体に接合され、一方の端縁がベースプレートに接合されているから、ベースプレートと管体との接合部に作用する力が緩和され、当該接合部の破断が遅延するため、前記(i)の効果が促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態1〜9に係る管状支柱を図面に基づいて説明する。なお、
実施の形態1は1条の縦スリット(貫通して管端に到達)付き丸形鋼管(図1〜9)、
実施の形態2は1条の縦孔(貫通して管端に未到達)付き丸形鋼管(図10〜12)、
実施の形態3は1条の縦溝(貫通しない)付き角形鋼管(図13〜15)、
実施の形態4は1条の貫通孔および縦溝付き角形鋼管(図16、17)、
実施の形態5は1条の縦スリット付き角形鋼管(図18の(a))、である。
実施の形態6は一対(2条)の縦スリット付き角形鋼管(図18の(b)、(c))、である。さらに、
実施の形態7は側面に縦スリットが形成された角形鋼管(図22)、
実施の形態8は補強板が設置された縦スリット付き丸形鋼管(図23)、
実施の形態9は補強板が設置された縦スリット付き角形鋼管(図24)、
である。なお、以下の説明および図において、同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0025】
[実施の形態1:縦スリット付き丸形鋼管]
(全体構成)
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る管状支柱を示すものであって、図1の(a)は正面図、図1の(b)は側面図、図1の(c)は背面図、図1の(d)は底面図、図2は一部を断面にした拡大背面図である。図1において、管状支柱100は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された丸形鋼管20(断面円形の管体に相当する)と、図示しない柵用材を設置するために丸形鋼管20に設けられた柵用材設置部30と、を有している。なお、柵用材とは、ガードレールのビーム、ガードパイプの横パイプ・横桟、ガードケーブルのワイヤロープ等を総称するものである。
【0026】
なお、以下の説明において、車道と歩道との境界に設置される場合には、車道側を「道路側」、歩道側を「路外側」と称し、橋梁の側縁に設置される場合は、内側を「道路側」、外側を「路外側」と称している。また、各図において同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、管状支柱100が鋼製であるものについて説明するが、鋼製部材の一部または全部が鋼以外の金属(たとえば、ステンレススチール、アルミニウム合金等)にすることができる。
【0027】
(ベースプレート)
ベースプレート10は、矩形状の鋼板であって、中央に丸形鋼管20が挿入(または嵌入)される支柱用孔12と、図示しない基礎に設置する際に、設置用ボルトが貫通する設置用孔13と、が形成されている。なお、矩形状の鋼板に替えて、丸形の鋼板であってもよい。
【0028】
(丸形鋼管)
丸形鋼管20の上端21には蓋22が設置され、柵用材設置部30に対応する位置(背面)に柵用材を固定するための柵用材固定用孔24と、下端部の背面に縦スリット50が形成されている。
そして、丸形鋼管20の下端部は、ベースプレート10に形成された支柱用孔12に挿入(または嵌入)され、丸形鋼管20の側面とベースプレート10の上面11とが溶接部90aによって、丸形鋼管20の下端23とベースプレート10の支柱用孔12とが溶接部90bによって、それぞれ固定されている。
【0029】
(縦スリット)
管軸方向に長い切欠部としての縦スリット50は、丸形鋼管20の側壁を貫通する管軸方向に形成された貫通溝であって、丸形鋼管20の下端23に到達している。なお、縦スリット50の幅(側縁同士の円周方向の距離に同じ)は限定するものではなく、力学的に不連続であれば、極めて狭い幅であってもよい。また、後述する理由により、縦スリット50の長さ(縦スリット50の上端と丸形鋼管20の下端23との距離に同じ)は、縦スリット50の幅よりも大きいものである。
【0030】
(柵用材設置部)
柵用材設置部30の一例として、丸形鋼管20の上端21近くの正面(道路側)に設置される矩形部材31であって、柵用材を固定するための柵用材固定用孔33a、33b、34が形成されている。柵用材固定用孔34(道路側)と丸形鋼管20に形成された柵用材固定用孔24(路外側)と対峙しているため、両者を貫通する共通のボルトによって柵用材を固定することができる。なお、柵用材固定用孔34(道路側)を省略した場合には、丸形鋼管20に柵用材固定用孔24(路外側)は形成されない。また、柵用材設置部30の形態はこれに限定するものでなく、設置される柵用材の形状に応じて、適宜変更されるものである。
【0031】
(実施例)
図3は、図1に示す管状支柱の実施例等を示す背面図であって、図1の(a)は実施例、図1の(b)は比較例1、図1の(c)は比較例2である。図4は、図3に示す実施例等を示す底面図である。図5は図3に示す実施例等に曲げ荷重をかけた場合の荷重−変位曲線であって、(a)は実施例、(b)は比較例1、(c)は比較例2である。
【0032】
図3の(a)および図4において、本発明の実施例である管状支柱100は、丸形鋼管20は、外径139.8mm、肉厚6.6mmの鋼管(STK400)であって、幅10mmの縦スリット50が形成されている。縦スリット50の上端は曲率半径5mmの円弧であって、下端は丸形鋼管20の下端23に到達(開口)している。
【0033】
また、ベースプレート10は、道路側と路外側との奥行きが220mm、道路方向(橋軸方向に同じ)の長さが260mm、厚さが22mmの鋼板(SS400)の矩形状の鋼板であって、内径141mmの支柱用孔12と、内径24mmの設置用孔13と、が形成されている。
そして、丸形鋼管20の下端23は支柱用孔12に19mmだけ侵入し、丸形鋼管20の周側面とベースプレート10の上面11とが、および丸形鋼管20の下端23とベースプレート10の支柱用孔12とが、それぞれ溶接固定(溶接部90a、90b)されている。したがって、縦スリット50は、背面視において管軸方向の長さ70mmの範囲が視認されるものである。
【0034】
(比較例)
図3の(b)において、比較例1である管状支柱980の丸形鋼管20の背面には、管軸方向の距離(高さ)10mm、半径方向の距離(幅)30mmの小横孔98が形成されている。小横孔98の水平方向の中心線はベースプレート10の上面11から55mmの距離にある。その他の部位については実施例である管状支柱100に同じである。
図3の(c)において、比較例2である管状支柱990の丸形鋼管20の背面には、管軸方向の距離(高さ)20mm、半径方向の距離(幅)60mmの大横孔99が形成されている。小横孔98の水平方向の中心線はベースプレート10の上面11から55mmの距離にある。その他の部位については実施例である管状支柱100に同じである。
【0035】
(荷重−変位曲線)
図5は、図3に示す実施例等を曲げた際の荷重−変位曲線である。
図5の(a)において、本発明の実施例である管状支柱100を背面側に向けて押すと、最大荷重(Pmax)51.30kNに到達した後も荷重はなだらかに減少するだけで、300mm以上変位している。この間の平均荷重(Pw)は46.84kNである。
また、図5の(c)において、管状支柱100と同様に比較例2である管状支柱990を背面側に向けて押すと、最大荷重(Pmax)47.30kNに到達した後も荷重はなだらかに減少するだけで、300mm以上変位している。この間の平均荷重(Pw)は44.20kNである。
すなわち、丸形鋼管20の下部が十分に塑性変形し、これによって溶接部90a、90bへの負担が減少し、溶接部90a、90bに亀裂(破断個所)が発生していない(これについては別途詳細に説明する)。なお、丸形鋼管20を押す載荷位置は、ベースプレート10の底面13から800mm(曲げアーム長に同じ)の位置である。
【0036】
図5の(b)において、管状支柱100と同様に比較例1である管状支柱980を背面側に向けて押すと、変位と共に荷重は増大する。このとき、当初は、変位の増分に対する荷重の増分が除々に小さくなるのに対し、変位が約150mm辺において、変位の増分に対する荷重の増分が大きくなり、間もなく最大荷重(Pmax)58.0kNに到達している。そして、その後は、僅かに変位したところで急激に荷重が低下している。
すなわち、丸形鋼管20の下部が十分に塑性変形する前に、溶接部90a、90bに亀裂(破断個所)が発生している(これについては別途詳細に説明する)。
【0037】
(変形挙動)
図6〜図8は、図3に示す実施例等を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図であって、図6は実施例、図7は比較例1、図8は比較例2である。なお、図面を簡単にするため、設置用ボルトがベースプレート10の設置用孔13を貫通しているが、これらを図示しない。
【0038】
図6において、(a)は変形の初期、(b)および(c)は変形の終期を示している。管状支柱100は管軸方向に長い縦スリット50(図中、A−B−C−F−E−D−Aで囲まれた範囲に同じ)を具備するから、縦スリット50側に曲げられると、変形の初期において、側縁(A−Cを結ぶ範囲、D−Fを結ぶ範囲)同士を水平方向に引き離す力が作用するから、側縁の管軸方向の中央における間隔(位置Bと位置Eとの距離に相当する、以下「幅」と称す)は広がると共に、側縁の管軸方向の中央(位置B、位置Eに同じ)は外側に向かって押し出される。このとき、縦スリット50の上端(A−Dを結ぶ範囲)は、ほとんど変形しない。また、縦スリット50の下端(C−Fを結ぶ範囲)は、ベースプレート10の支柱用孔12に拘束されているから変形しない(図6の(a)参照)。
【0039】
さらに、変位(曲げ荷重)が増大すると、前記変形の傾向は助長され、側縁(A−Cを結ぶ範囲、D−Fを結ぶ範囲)は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。すなわち、縦スリット50の上端(A−Dを結ぶ範囲)および下端(C−Fを結ぶ範囲)はそれ自体ほとんど変形しないで、その上端と下端とは当接しないから、曲げによる圧縮荷重は側縁に流れ込み、側縁の周囲が十分に塑性変形することになる(図6の(b)参照)。
このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形して持ち上がるものの、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない(図6の(c)参照)。
【0040】
図7において、(a)は変形の初期、(b)および(c)は変形の終期を示している。
比較例1である管状支柱980は円周方向に長い小横孔98(図中、a−c−n−f−d−m−aで囲まれた範囲に同じ)を具備するから、小横孔98側に曲げられると、変形の初期において、上端(a−d結ぶ範囲)と下端(c−fを結ぶ範囲)とを近づける力が作用するから、小横孔98の上端は変形して、その中央mは下端に接近する。このとき、小横孔98の側部自体(a−cを結ぶ範囲、d−fを結ぶ範囲)は、ほとんど変形しないで、僅かに外側に押し出される(図7の(a)参照)。
【0041】
さらに、曲げ荷重が増大すると、前記変形の傾向は助長され、上端と下端とは広い範囲で当接し、小横孔98の側部自体は扁平または押し潰される。そうすると、曲げによる圧縮荷重は上端と下端との当接部に流れ込むから、丸形鋼管20は圧縮荷重に関しては、小横孔98がない状態になり、変位の増分に対する荷重の増分は大きくなる(図5の(b)において荷重が増加するポイントに相当する)。
このため、丸形鋼管20の下部は、十分に塑性変形することができないことになる(図7の(b)参照、塑性範囲を破線にて模式的に示している)。そして、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用するから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形して持ち上がると共に、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生する(図7の(c)参照)。
【0042】
図8において、(a)は変形の初期、(b)は変形の終期を示している。
比較例2である管状支柱990は円周方向に長い大横孔99(図中、a−b−c−n−f−e−d−m−aで囲まれた範囲に同じ)を具備するから、大横孔99側に曲げられると、変形の初期において、上端(a−dを結ぶ範囲)と下端(c−fを結ぶ範囲)とを近づける力と、側縁部(a−b−cを結ぶ範囲、d−e−fを結ぶ範囲)を変形させる力とが作用する。このため、大横孔99の上端は変形して、その中央mは下端に接近する。また、側縁は扁平に変形する(位置aと位置cとが接近する、位置dと位置fとが接近する)と共に、側縁の管軸方向の中央(位置b、位置e)は外側に向かって押し出される(図8の(a)参照)。
【0043】
さらに、曲げ荷重が増大すると、前記変形の傾向は助長され、上端と下端とは広い範囲で当接する(大横孔99の側縁の近く(位置a、位置bの近く)を挟む広い範囲で当接する)。そして、側縁(a−cを結ぶ範囲、d−fを結ぶ範囲)は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。すなわち、大横孔99の側縁は所定の長さを具備するから、側縁の周囲が十分に塑性変形することになる(図8の(b)参照)。
このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形するものの、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない(図6の(c)参照)。
【0044】
なお、比較例2である管状支柱990は大横孔99を具備することから、丸形鋼管20の剛性が低下し、支持することができる荷重が低くなっている(図5の(c)参照)。さらに、管状支柱990の側縁の長さ(a−cを結ぶ範囲、d−fを結ぶ範囲)は、実施例である管状支柱100の側縁の長さ(A−Cを結ぶ範囲、D−Fを結ぶ範囲)に比べて短いため、かかる側縁の周囲であって、塑性変形容易な範囲も狭いことから、塑性変形による衝撃エネルギの吸収量についても、管状支柱990の方が管状支柱100よりも小さい。すなわち、比較例2は本発明の実施例より劣っている。
また、管状支柱990では大横孔99の上端と下端とが当接した後は、該当接した範囲に圧縮力が流れ込むから、大きな変位にまで曲げたとき、変位の増分に対する荷重の増分が大きくなり、その後、溶接部90aに亀裂が発生するおそれがある。すなわち、比較例1である管状支柱980に類似した挙動をするおそれがある。この点においても、本発明が優れている。
【0045】
(縦貫通溝の形状)
図9は本発明の実施の形態1に係る管状支柱における切欠部(縦貫通溝)を模式的に示す背面図である。以上、「管軸方向に長い切欠部」として縦スリット50を示しているが、本発明はこれに限定するものではない。以下、その一例を示す。
図9の(a)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する長方形の縦貫通溝50aが形成されている。なお、縦貫通溝50aの上端隅部を円弧にしてもよい。
図9の(b)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する三角形の縦貫通溝50bが形成されている。なお、縦貫通溝50bの頂点を円弧にしてもよい。
図9の(c)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する台形状の縦貫通溝50cが形成されている。なお、縦貫通溝50cの上端隅部を円弧にしたり、上端(台形においては底辺)を円弧にしたりしてもよい。
【0046】
図9の(d)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する略菱形の縦貫通溝50dが形成されている。したがって、丸形鋼管20が曲げ変形をするとき、変形の初期において、縦貫通溝50dの側縁の中央(幅が広い)に変形が集中する。なお、縦貫通溝50dの上端隅部を円弧にしたり、上端(台形においては底辺)を円弧にしたりしてもよい。さらに、く字状の側縁を円弧にしてもよい。
図9の(e)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達するスリット状の縦貫通溝50eが形成されている。縦貫通溝50eの管軸方向の中央に貫通孔51eが形成されているから、丸形鋼管20が曲げ変形をするとき、変形の初期において、貫通孔51eに変形が集中する。なお、縦貫通溝50eの幅(側縁同士の隙間)は限定されるものではない。
【0047】
(縦貫通溝の数)
なお、縦貫通溝の数は1本に限定するものではなく、同様な変形挙動(側縁が外側に向かって押し出される)を呈するものであれば2本以上の複数本を設けてもよい。このとき、それぞれの縦貫通孔の形状(幅、長さ)は同じでも、あるいは相違してもよい。
【0048】
(角形鋼管)
以上は、丸形鋼管20に切欠部(貫通した縦スリット50)を設けたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、角形鋼管であってもよい。このとき、曲げ荷重が作用する正面(たとえば、道路側等)に対峙する背面、すなわち、曲げ荷重を受けた際に圧縮側になる面に切欠部を設けることになる。
たとえば、背面の中央部に比較的幅の広い切欠部を設けたり(図18の(a)参照)、複数の切欠部を設けておけば、前記のような変形性能の向上を図ることができる。また、隅部(剛性が高い)のうち圧縮側になる両隅部を切り欠いたり(図18の(c)参照)、圧縮側になる両隅部の近傍に切欠部を設けたり(図18の(b)参照)すれば、前記のような変形性能の向上を図ることができる。
【0049】
[実施の形態2:縦孔付き丸形鋼管]
(全体構成)
図10および図11は本発明の実施の形態2に係る管状支柱を示すものであって、図10の(a)は正面図、図10の(b)は側面図、図10の(c)は背面図、図10の(d)は底面図、図11の(a)は一部を断面にした拡大背面図である。図10において、管状支柱200は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された丸形鋼管20と、図示しない柵用材を設置するために丸形鋼管20に設けられた柵用材設置部230と、を有し、丸形鋼管20には縦貫通孔(以下「縦孔」と称す)60が形成されている。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0050】
(縦孔)
管軸方向に長い切欠部としての縦孔60は、丸形鋼管20の側壁を貫通する管軸方向に長い貫通孔であって、丸形鋼管20の下端23に到達してない。したがって、溶接部90a、90bは円環状に連続するから、溶接作業が容易になる。
なお、縦孔60の幅(側縁同士の円周方向の距離に同じ)は限定するものではなく、力学的に不連続であれば、極めて狭い幅であってもよい。また、実施の形態1と同様の理由により、縦孔60の長さ(縦孔60の上端と下端との距離に同じ)は、縦孔60の幅よりも大きいものである。また、縦孔60の下端と丸形鋼管20の下端23との距離は限定されるものではなく、縦孔60の側縁部に変形を集中させることができる位置であればよい。
【0051】
(柵用材設置部)
柵用材設置部230は、丸形鋼管20の上端21近くと管軸方向の中央部との正面(道路側)に、それぞれブラケット232a、232bを介して設置される柵用材(鋼管部材)231a、231bである。なお、柵用材設置部230の形態はこれに限定するものでなく、設置される柵用材の数量や形状に応じて、適宜変更されるものである。また、柵用材設置部230に替えて、実施の形態1に示す柵用材設置部30を設置してもよい。
【0052】
(変形挙動)
管状支柱200の丸形鋼管20は下部に縦孔60を具備するから、縦孔60側に曲げられた際、実施の形態1に示す管状支柱100と同様の変形挙動を呈する。すなわち、変形の初期において、縦孔60の側縁同士を引き離す力が作用するから、側縁の管軸方向の中央における間隔(縦孔60の幅に相当する)は広がると共に、側縁の管軸方向の中央は外側に向かって押し出される。このとき、縦孔60の上端は、ほとんど変形しない。また、縦孔60の下端は、丸形鋼管20の下端23に到達していないから、丸形鋼管20の板厚およびベースプレート10の支柱用孔12に拘束され、変形しない。
【0053】
さらに、曲げ荷重が増大すると、前記変形の傾向は助長され、側縁は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。すなわち、縦孔60の上端と下端とは当接しないから、曲げによる圧縮荷重は側縁に流れ込み、側縁の周囲が十分に塑性変形することになる。
このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形するものの、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない。
【0054】
(縦孔の形状)
図12は本発明の実施の形態2に係る管状支柱における切欠部(縦孔)を模式的に示す背面図である。以上、実施の形態1では「管軸方向に長い切欠部」のうち丸形鋼管20の下端部に到達したものを「縦貫通溝」と称呼しているのに対し、実施の形態2では、丸形鋼管20の下端部に到達しないものを「縦孔60(図11参照)」と称呼して図示しているが、本発明は図示するものに限定するものではない。以下、その一例を示す。
図12の(a)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない矩形状の縦孔60aが形成されている。なお、縦孔60aの上端隅部を円弧にしてもよい。
図12の(b)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない三角形の縦孔60bが形成されている。なお、縦孔60bの頂点を円弧にしてもよい。
図12の(c)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない台形状の縦孔60cが形成されている。なお、縦孔60cの上端隅部を円弧にしたり、上端(台形においては底辺)を円弧にしたりしてもよい。
【0055】
図12の(d)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない略菱形の縦孔60dが形成されている。したがって、丸形鋼管20が曲げ変形をするとき、変形の初期において、縦孔60dの側縁の中央(幅が広い)に変形が集中する。なお、縦孔60dの上端隅部を円弧にしたり、上端(台形においては底辺)を円弧にしたりしてもよい。さらに、く字状の側縁を円弧にしてもよい。
図12の(e)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しないスリット状の縦孔60eが形成されている。縦孔60eの管軸方向の中央に貫通孔61eが形成されているから、丸形鋼管20が曲げ変形をするとき、変形の初期において、貫通孔61eに変形が集中する。なお、縦孔60eの幅(側縁同士の隙間)を限定するものではない。
【0056】
なお、縦孔60の数を限定しないことや、丸形鋼管に替えて角形鋼管に縦孔60を設けることができることは、実施の形態の形態1に同じである。
【0057】
[実施の形態3:縦溝付き角形鋼管]
(全体構成)
図13および図14は本発明の実施の形態3に係る管状支柱を示すものであって、図13の(a)は正面図、図13(b)は側面図、図13の(c)は背面図、図13の(d)は底面図、図14の(a)は一部を断面にした拡大正面図である。図13において、管状支柱300は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された角形鋼管40(断面矩形の管体に相当する)と、防護柵等を設置するために角形鋼管40に設置された柵用材設置部330と、を有している。
なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0058】
(ベースプレート)
ベースプレート10は、矩形状の鋼板であって、中央に角形鋼管40が挿入(または嵌入)される支柱用孔14と、図示しない基礎に設置する際に、設置用ボルトが貫通する設置用孔13と、が形成されている。なお、矩形状の鋼板に替えて、丸形の鋼板であってもよい。
【0059】
(角形鋼管)
角形鋼管40の上端41の近くに、柵用材設置部330を取り付けるための取付孔44a、44bと、背面側の側面の内側に下端43に到達する縦溝70が形成されている。
そして、角形鋼管40の下端部は、ベースプレート10に形成された支柱用孔14に挿入(または嵌入)され、角形鋼管40の側面とベースプレート10の上面11とが溶接部90aによって、角形鋼管40の下端43とベースプレート10の支柱用孔14とが溶接部90bによって、それぞれ固定されている。
【0060】
(縦溝)
管軸方向に長い切欠部としての縦溝70は、角形鋼管40の内面に形成された底を具備する溝であって、管軸方向に長く形成され、角形鋼管40の下端43に到達している。すなわち、縦溝70は実施の形態1に示す縦スリット50に底を付けたものに相当している。したがって、縦溝70の長さ(縦溝70の上端と角形鋼管40の下端23との距離に同じ)は、縦溝70の幅よりも大きいものである限り、その幅は極めて狭い幅であってもよい。また、正面視の形状もまた限定するものではなく、たとえば、図9に示すバリエーションをとることができる。さらに、図示された縦溝70は角形鋼管40の内面に形成され、外部から視認できないものであるが、本発明はこれに限定するものではなく、角形鋼管40の外面に形成され、外部から視認できるものであってもよい。
【0061】
(柵用材設置部)
柵用材設置部330は、正面視(背面視に同じ)において略コ字状に曲げられ板材(水平部331、鉛直部332a、332bを具備する)であって、鉛直部332a、332bには、角形鋼管40に形成された取付孔44a、44bを貫通する取付ボルト(図示しない)が貫通する取付孔334a、334bが形成されている。
また、鉛直部331a、331bの正面側はそれぞれ折り曲げられ、柵用材固定部333a、333bが形成されている。そして、柵用材固定部333aおよび柵用材固定部333bには、それぞれ柵用材を固定するための柵用材固定用孔335a、336aおよび柵用材固定用孔335b、336bが形成されている。
なお、柵用材設置部330は図示すものに限定するものではなく、また、これに替えて、柵用材設置部30(実施の形態1)や柵用材設置部230(実施の形態2)を取り付けてもよい。
【0062】
(変形挙動)
角形鋼管40は管軸方向に長い縦溝70を具備するから、縦溝70側に曲げられると、変形の初期において、縦溝70の底に円周方向の引っ張り力が作用するため、縦溝70の底は容易に破断する。そうすると、縦溝70は実施の形態1に示す縦スリット50に同等であって、同様の変形挙動を呈することになる。
すなわち、縦溝70の底が破断して形成された側縁は、その間隔が広がると共に、側縁の管軸方向の中央は外側に向かって押し出される。さらに、変位(曲げ荷重)が増大すると、前記変形の傾向は助長され、側縁は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。
【0063】
よって、曲げによる圧縮荷重は側縁に流れ込み、側縁の周囲が十分に塑性変形することになる。このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない。また、角形鋼管40の内面に形成された縦溝70を外側から視認することができないから、角形鋼管40の景観性を損なうことがなく、強度低下を想起させることもなく、看者に、強度に対する安心感を与えることができる。さらに、角形鋼管40の周囲は閉塞されるから、雨水等の侵入がなく、保全性に優れている。
なお、縦溝70が角形鋼管40の内面に形成されたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、縦溝70が角形鋼管40の外面に形成されてもよい。また、角形鋼管40に替えて、丸形鋼管20の内面または外面に縦溝70を形成してもよい。
【0064】
(縦溝の形状)
図15は本発明の実施の形態3に係る管状支柱における切欠部(縦溝)を模式的に示す拡大底面図である。縦溝70は、変形の初期においてその底が破断し、その後は縦スリット50と同様の変形挙動を呈する限り、その形状を限定するものではなく、以下、その一例を示す。なお、前記のように、縦溝70は角形鋼管(または丸形鋼管)の内面または外面に形成されるものであるから、図15における紙面の上方向は、外面側または内面側の何れの方向であってもよい。
【0065】
図15の(a)は、底面視(断面に同じ)において、略V字状の底付き縦溝70aである。このとき、縦溝70aの底の最奥部71aに変形が集中するから、縦溝70aは極めて容易に破断する。よって、縦溝70aの周囲は、早期にかつ確実に実施の形態1に示す縦スリット50に類似した変形挙動をする。
図15の(b)は、底面視(断面に同じ)において、略コ字状の底付き縦溝70bである。このとき、縦溝70aの底71bの管軸方向の中央から破断が進むものと考えられる。なお、縦溝70aの幅は限定するものではない。
【0066】
図15の(c)は、底面視(断面に同じ)において、円弧状の底付き縦溝70cである。このとき、縦溝70cの底の最奥部71cに変形が集中するものの、略V字状の縦溝70cよりは変形の集中が少ないから、曲げ荷重が僅かな場合、縦溝70cは破断することなく、縦溝70cの塑性変形だけで衝撃エネルギを吸収することができる。
図15の(d)は、底面視(断面に同じ)において、角形鋼管40の内面および外面の両方に略V字状の底付き縦溝70d、70eを形成したものである。このとき、縦溝70dの底の最奥部71dと縦溝70eの底の最奥部71eとが対峙する位置(以下「最薄肉部」と称す)72dに、変形が集中するから、最薄肉部72dは極めて容易に破断する。よって、縦溝70の周囲は、早期にかつ確実に実施の形態1に示す縦スリット50に類似した変形を開始する。
【0067】
なお、前記のように、実施の形態3に示す縦溝70はその底が破断した後は実施の形態1に示す縦スリット50と同様の変形挙動を呈し、一方、実施の形態2に示す縦孔60は実施の形態1に示す縦スリット50と同様の変形挙動を呈するから、縦溝70の下端を角形鋼管40の下端43に到達しないものにしても、実施の形態1に示す縦スリット50と同様の変形挙動を得ることができる。すなわち、実施の形態2に示す縦孔60を底を具備する縦溝(角形鋼管40の下端43に到達しない)にしてもよい。
また、縦溝70の数を限定しないことや、角形鋼管に替えて丸形鋼管に縦溝70を設けることができることは、実施の形態の形態1に同じである。
【0068】
[実施の形態4:貫通孔および縦溝付き角形鋼管]
(全体構成)
図16および図17は本発明の実施の形態4に係る管状支柱を示すものであって、図16の(a)は正面図、図16(b)は側面図、図16の(c)は背面図、図16の(d)は底面図、図17は一部を断面にした拡大正面図である。
図16および図17において、管状支柱400は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された角形鋼管40と、柵用材を設置するために角形鋼管40に設置された柵用材設置部430と、を有している。
なお、実施の形態3(実施の形態1に同じ)と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0069】
(角形鋼管)
角形鋼管40の上端41に、柵用材設置部330を取り付けるための切欠部45が形成され、上端41の切欠部45を除く範囲に蓋42が設置されている。
また、背面側の側面の内側に下端43に到達しない縦溝80が形成され、縦溝80の管軸方向の中央に貫通孔82が設けられている。なお、角形鋼管40に替えて丸形鋼管20を用いてもよい。
【0070】
(縦溝および貫通孔)
管軸方向に長い切欠部としての縦溝80は、角形鋼管40の内面に形成された底を具備する凹部であって、管軸方向に長く形成され、角形鋼管40の下端43に到達していない。すなわち、縦溝80は実施の形態2に示す縦孔60に底を付けたものに相当している。したがって、縦溝80の長さ(縦溝80の上端と下端との距離に同じ)は、縦溝80の幅よりも大きいものである限り、その幅は極めて狭い幅であってもよい。また、正面視の形状もまた限定するものではなく、たとえば、図12に示すバリエーションをとることができる。
【0071】
(柵用材設置部)
柵用材設置部430は、角形鋼管40に形成された切欠部45に設置される断面L字状部材431(鉛直部432および水平部433を具備する)と、角形鋼管40の管軸方向の略中央に設置される矩形部材435とから形成されている。
断面L字状部材431の水平部433および矩形部材435には、それぞれ柵用材を固定するための柵用材固定用孔434a、434bおよび柵用材固定用孔436a、436bが形成されている。
なお、本発明は柵用材設置部430を図示するものに限定するものではなく、たとえば、これに替えて、柵用材設置部30(実施の形態1)、柵用材設置部230(実施の形態2)、あるいは柵用材設置部330(実施の形態3)を取り付けてもよい。
【0072】
(変形挙動)
角形鋼管40は管軸方向に長い縦溝80および貫通孔82を具備するから、縦溝80側に曲げられると、変形の初期において、貫通孔82の周囲に引っ張り力が集中するため、縦溝80の底81は、貫通孔82を起点にして容易に破断する(管軸方向に亀裂が進展する)。そうすると、縦溝80は実施の形態1に示す縦スリット50に同等であって、同様の変形挙動を呈することになる。
すなわち、縦溝80の底81が破断して形成された側縁は、その間隔が広がると共に、側縁の管軸方向の中央は外側に向かって押し出される。さらに、変位(曲げ荷重)が増大すると、前記変形の傾向は助長され、側縁は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。
【0073】
よって、曲げによる圧縮荷重は側縁に流れ込み、側縁の周囲が十分に塑性変形することになる。このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない。
また、角形鋼管40の背面では貫通孔82のみが視認され、縦溝80は視認することができないから、角形鋼管40の景観性を損なうことがなく、強度低下を想起させることもなく、看者に、強度に対する安心感を与えることができる。
なお、縦溝80が角形鋼管40の内面に形成されたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、縦溝80が角形鋼管40の外面に形成されてもよい。また、角形鋼管40に替えて、丸形鋼管20の内面または外面に縦溝70を形成してもよい。
【0074】
ところで、前記のように、実施の形態4に示す縦溝80はその底が破断した後は実施の形態2に示す縦孔60と同様の変形挙動を呈し、一方、実施の形態2に示す縦孔60は実施の形態1に示す縦スリット50と同様の変形挙動を呈するから、縦溝80の下端を角形鋼管40の下端43に到達したものにしても、実施の形態2に示す縦孔60と同様の変形挙動を得ることができる。すなわち、実施の形態1に示す縦スリット50に底を設け(外面から視認可能または視認不能の場合がある)、その底に貫通孔を設けてもよい。
【0075】
なお、以上は、角形鋼管40の背面の中央に1本の縦溝80を設けているが、その幅を広くしたり(図18の(a)参照)、縦溝80をを複数個所に設けておけば、変形性能の向上を図ることができる。また、隅部(剛性が高い)のうち圧縮側になる両隅部(図18の(c)参照)に、あるいは圧縮側になる両隅部の近傍(図18の(b)参照)に縦溝80を設ければ、変形性能の向上を図ることができる。
【0076】
[実施の形態5:縦スリット付き角形鋼管]
図18の(a)は本発明の実施の形態5に係る管状支柱を示す斜視図であって、実施の形態1〜4において付記した内容を図示するものである。なお、実施の形態4と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図18の(a)において、管状支柱500には、角形鋼管40の曲げ荷重が作用する正面46(たとえば、道路側等)に対峙する背面48、すなわち、曲げ荷重を受けた際に圧縮側になる面の中央部に、幅の広い縦スリット50が形成されている。したがって、管状支柱50においても、縦スリット50の変形が促進されるから、管状支柱400(実施の形態4)と同様の変形性能またはより向上した変形性能が得られる。
なお、縦スリット50に替えて、貫通した縦孔(実施の形態2)、底付きの縦溝70(実施の形態3)、あるいは貫通孔が形成された底付きの縦溝80(実施の形態4)の何れを設けても、同様の効果が得られるものである。
【0077】
[実施の形態6:一対の縦スリット付き角形鋼管]
図18の(b)および(c)は本発明の実施の形態6に係る管状支柱を示す斜視図であって、実施の形態1〜4において付記した内容を図示するものである。なお、実施の形態4と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図18の(b)において、管状支柱600には、角形鋼管40の圧縮側になる背面48の両隅部の近傍に縦スリット50が形成されている。
図18の(c)において、管状支柱700には、角形鋼管40の4隅のうち、曲げ荷重が作用した際、圧縮側になる両隅部の中央に縦スリット50が形成されている。すなわち、かかる両隅部の中央が切り欠かれた形態を呈している。
【0078】
(変形挙動)
図21は、管状支柱700を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図であって、(a)は変形の初期、(b)および(c)は変形の終期を示している。なお、図中の各部位の寸法(大小関係)は限定するものではなく、また、局部変形による増肉や減肉については図示しない。また、図面を簡単にするため、設置用ボルトがベースプレート10の設置用孔13を貫通しているが、これらを図示しない。
【0079】
図21において、管状支柱700は、正面46に背面48の方向に略水平方向の荷重が作用するものであって、圧縮力を受ける背面48と側面47、49との両隅に、それぞれ管軸方向に長い縦スリット50、50(図中、A1−B1−C1−F1−E1−D1−A1で囲まれた範囲、およびA2−B2−C2−F2−E2−D2−A2で囲まれた範囲に同じ)を具備している。
【0080】
縦スリット50側に曲げ荷重が小さい初期では、管状支柱700の圧縮力を受ける背面48は、角形鋼管40の内部に向かって凸状に撓もうとする。このため、背面48の縦スリット50によって挟まれた範囲(A1−B1−C1−C2−B2−A2−A1で囲まれた範囲に同じ)は、内部に陥入(侵入)するように弓なりに変形する。すなわち、当該範囲は軸方向に圧縮されながら、曲げられている(図21の(a)参照)。
そして、曲げようとする荷重が大きくなると、当該範囲は、断面Ω(オメガ)字状に大きく塑性変形する。
【0081】
また、角形鋼管40の側面47、49(引っ張り側の正面46と圧縮側の背面48とを繋ぐ面に同じ)に位置している縦スリット50の側縁(D1−E1−F1)および側縁(D2−E2−F2)は、軸方向に圧縮を受けている。そして、曲げ荷重または角形鋼管40の非対称性によって、側縁(D1−E1−F1)および側縁(D2−E2−F2)は、内面側または外面側に向かって、座屈状に変形する(図21の(b)参照)。
なお、角形鋼管40の側面47、49は、正面46に近い範囲では引っ張り力が作用しているため、かかる座屈状の変形の程度は、正面46に近づく程小さくなっている(図21の(c)参照)。
【0082】
以上のように、管状支柱700は、背面48の縦スリット50によって挟まれた範囲の大きな塑性変形と、側面47、49の座屈状の変形とによって、大きな衝撃エネルギを吸収することが可能になっている。そして、これによって、正面46とベースプレート10との接合部に作用する引っ張り力が緩和されるから、当該接合部の破断が防止されている。なお、縦スリット50に替えて、貫通した縦孔(実施の形態2)、底付きの縦溝70(実施の形態3)、あるいは貫通孔が形成された底付きの縦溝80(実施の形態4)の何れを設けても、同様の効果が得られるものである。
【0083】
[実施の形態7:側面縦スリット付き角形鋼管]
図22は本発明の実施の形態7に係る管状支柱を示す斜視図であって、なお、実施の形態4と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図22の(a)において、管状支柱800には、角形鋼管40の側面47、49に縦スリット50、50が形成されている。縦スリット50、50は、背面48に近い範囲にあるため、圧縮力を受けている。また、縦スリット50、50によって挟まれた範囲の両側縁の近くには、管状支柱800の隅部が含まれるものの、当該範囲は圧縮力を受けながら曲げ変形をするから、管状支柱800は管状支柱700(実施の形態6)と略同様の挙動を呈する。
【0084】
図22の(b)において、管状支柱900は、管状支柱800(図22の(a)参照)における隅部寄りの縦スリット50、50に替えて、側面47、49の幅方向のほぼ中央に縦スリット50、50が配置されたものである。
すなわち、縦スリット50、50の幅方向の中心を通る縦線が、角形鋼管40が曲げられた際の中立線(一点鎖線で表示する)に、ほぼ一致するように配置されている。このとき、縦スリット50、50は所定の幅を有するから、縦スリット50、50は中立線を跨ぐことになる。つまり、縦スリット50、50を形成する側縁の内、背面48に近い側縁は、変形の初期段階において軸方向に圧縮力を受ける範囲に位置し、正面46に近い側縁は、変形の初期段階において軸方向に引っ張り力を受ける範囲に位置している。
したがって、管状支柱800に準じた変形挙動を呈することになる。
【0085】
[実施の形態8:補強板付き丸形鋼管]
図23は本発明の実施の形態8に係る管状支柱を模式的に説明するものであって、(a)は側面視の断面図、(b)は平面視の断面図である。なお、実施の形態1および実施の形態6と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図23において、管状支柱1100は、管状支柱100の丸形鋼管20の内面で、縦スリット50に対向する位置に断面円弧状の補強板91を設置したものである。このとき、補強板91の下端91bはベースプレート10に、補強板91の側縁91a、91cは、それぞれ丸形鋼管20の内面に溶接固定されている。
したがって、丸形鋼管20に作用した引っ張り力は、補強板91を経由してベースプレート10に伝達されるから、丸形鋼管20とベースプレート10との溶接部に作用する引っ張り力が緩和され、当該部位における破断が防止される(これについては、別途詳細に説明する)。
【0086】
[実施の形態9:補強板付き角形鋼管]
図24は本発明の実施の形態9に係る管状支柱を模式的に説明するものであって、(a)は側面視の断面図、(b)は平面視の断面図である。なお、実施の形態1および実施の形態6と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図24において、管状支柱1600は、管状支柱600において、縦スリット50に対向する角形鋼管40の正面46の内面に、矩形平板状の補強板92を設置したものである。このとき、補強板92の下端92bはベースプレート10に、補強板92の側縁92a、92cは、それぞれ角形鋼管40の内面に溶接固定されている。
したがって、角形鋼管40に作用した引っ張り力は、補強板92を経由してベースプレート10に伝達されるから、角形鋼管40とベースプレート10との溶接部に作用する引っ張り力が緩和され、当該部位における破断が防止される(これについては、別途詳細に説明する)。
【0087】
[縦スリットおよび補強板の効果について]
図25〜図36は、本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットおよび補強板の効果を説明するものであって、図25〜図36は、これを確認するための供試材を示す断面図、図28〜図36はそれぞれの効果を示す荷重−変位線図である。
なお、以下は、縦スリット50が形成されたものについての説明であるが、縦スリット50に替えて、縦貫通溝60や縦溝(底付き)70を形成しても同様の効果が得られるものである。
【0088】
図25および図26は、角形鋼管40における縦スリット50の高さが75mmの場合で、正面の裏側に補強板92が設置されたものであって、縦スリット50が側面47、49に形成されたものは符号に「S」を付して「K−75SP(図25の(b)参照)」と、縦スリット50が背面48に形成されたものは符号に「H」を付して「K−75HP(図26の(a)参照)」と、縦スリット50が隅部中央に形成されたものは符号に「C」を付して「K−75CP(図26の(b)参照)」と、を示している。
図27は、丸形鋼管20における縦スリット50の高さが70mmの場合で、縦スリット50に対向する位置(正面)の裏側に補強板91が設置された「V5−70CP」を示している。
【0089】
なお、以下の説明において、補強板92が設置されないものについては、前記符号の「P」を省略して称呼する。また、縦スリット50の高さが75mmでないものについては、前記符号の「75」を実際の縦スリットの高さに置き換えて称呼する。したがって、補強板92が設置されないで、100mm高さの縦スリット50が隅部中央に形成されたものは「K−100C」と称呼する。
そして、表1に供試材をまとめて示す。なお、表1の備考には、確認しようとする効果および関連する図番を記載する。
【0090】
【表1】
【0091】
(縦スリットの位置効果、補強板なし)
図28および図29の何れにおいて、最大荷重は縦スリット50の設置位置が側面47、49であるもの(K−100S,K−75S)が最も大きく、次に、背面48であるもの(K−100H、K−75H)、そして、隅部中央(図中、スリットセンターと表示する)にあるもの(K−100C,K−75C)が最も低い値を示している。
すなわち、縦スリット50が側面47、49にあるものでは、圧縮を受ける背面48の両側部には断面円弧状の角部(幅13mm)があるため、背面48の曲げ剛性が大きくなっていることが最大荷重を高めた一因と考えられる。一方、縦スリット50が背面48にあるものでは、側面47、49が座屈状に変形する際に、圧縮側に位置する断面円弧状の角部(幅13mm)が変形抵抗となると考えられる。
【0092】
そして、縦スリット50が角部の中央にあるものでは、角部の円弧状範囲が小さくなっているため、背面48の曲げ剛性および側面47、49の曲げ剛性が、縦スリット50が側面47、49や背面48にあるものよりも小さくなり、結果として、最大荷重が最も小さくなったものと考えられる。
そして、縦スリット50の高さが100mmであるもの(図28参照)では、何れも目的変位300mm以上の変位を呈する大きな変形をしている。一方、縦スリット50の高さを75mmにすると(図28参照)、縦スリット50が背面または隅部中央にある場合には、大きな変形をしているのに対し、側面にある場合には、190mm辺りの変位において破断し、目的変位300mm以上に到達していない。
【0093】
(縦スリット高さの効果、補強板なし)
図28と図29とを対比するに、縦スリット50の高さが100mmおよび75mmのもの最大荷重は、縦スリット50が側面47、49にある場合は「54.2kNおよび56.3kN」、背面48にある場合は「51.3kNおよび54.3kN」、隅部中央にある場合は「46.4kNおよび50.6kN」になっている。
すなわち、縦スリット50の高さが低い方が、それぞれ、3.9%、5.8%、9.1%だけ高くなっている。したがって、仮に、55kNを目標最大荷重とすると、高さ75mm以下の縦スリット50を側面47、49または背面48に設ける必要があることが示唆される。
なお、縦スリット50を打ち抜き(ブランキング)によって形成する場合、金型(ダイス)の肉厚を保証するためには、縦スリット50を隅部中央に設けるのが好適であるが、補強板なしで、高さ75mmの縦スリット50を隅部中央に設けたのでは、55kNの目標最大荷重を得ることができない。
【0094】
(補強板の効果)
図30〜図32において、補強板92が設置されたものおよび設置されないものの最大荷重は、縦スリット50が側面47、49にある場合は「57.5Nおよび56.3kN」、背面48にある場合は「56.8kNおよび54.3kN」、隅部中央にある場合は「53.4Nおよび50.6kN」になっている。すなわち、補強板92の最大荷重に対する効果は縦スリット50の設置位置が、側面、背面、隅部中央の順に大きくなり、それぞれ2.1%、4.6%、5.5%だけ最大荷重が増加している。特に、縦スリット50が側面に設けられた場合(図30参照)、補強板92がないと、目標変位300mmに到達する前に破断するのに対し、補強板92があると、目標変位300mmを越える大きな変形が得られている。
すなわち、正面46とベースプレート10との溶接部に作用する引っ張り力が緩和されると共に、正面46のベースプレート10に近い範囲の曲げ剛性が向上していると考えられる。特に、側面47、49に設けたもの(図30)において、補強板92がないK−75Sでは早期(変位190mm)に正面46とベースプレート10との溶接部が破断して荷重が急激に減少しているのに対し、補強板92が設置されているK−75SPではかかる溶接部の破断が発生していない。
【0095】
(縦スリットの位置効果、補強板あり)
図33および図34において、補強板92がない場合(図28および図29参照)と同様に、最大荷重は縦スリット50の設置位置が側面47、49であるもの(K−75SP、K−60SP)が最も大きく、次に、背面48であるもの(K−75HP、K−60HP)、そして、隅部中央(図中、スリットセンターと表示する)にあるもの(K−75CP,K−60CP)が最も低い値を示している。
【0096】
また、図33と図34とを対比するに、補強板92が設置された場合、縦スリット50の高さが75mmおよび60mmのものの最大荷重は、縦スリット50が側面47、49にある場合は「57.5kNおよび59.1kN」、背面48にある場合は「56.8kNおよび58.5kN」、隅部中央にある場合は「53.4kNおよび58.2kN」になっている。
すなわち、縦スリット50の高さが低い方が、それぞれ、2.8%、3.0%、9.0%だけ高くなっている。したがって、仮に、55kNを目標最大荷重とすると、高さ60mm以下の縦スリット50であれば、隅部中央に設けたものでも、これをクリアーすることが示唆される。
【0097】
(縦スリットの高さの効果、補強板あり)
図35において、補強板92が設置された場合も補強板92がない場合と同様、縦スリット50の高さが、75mm、60mm、50mmと低くなるに従って最大荷重が大きくなっている。
しかし、縦スリット50の高さが40mmのK−40CPになると、高さ50mmのK−50CPに比較して最大荷重は殆ど増加しないまま、目標変位300mmより少ない変位280mmにおいて、正面46とベ−スプレート10との溶接部に破断が生じている。
このように角形鋼管40の肉厚(6mm)に対して縦スリット50の高さが比較的小さい場合、背面48において内部に十分陥入する曲げ変形が生じる前に、背面48の肉厚が増加する圧縮変形が生じることが一因と考えられる。
【0098】
(丸形鋼管における補強板の効果)
図36において、丸形鋼管20に補強板91が設置されたV570CP−1は、角形鋼管40に補強板92が設置された場合と同様、最大荷重が補強板91の設置によって増加している。すなわち、補強板91の設置によって、最大荷重が、51.3kNから55.3kNに、7.8%増加している。
なお、V570CP−1は一条の縦スリット50が形成されたものであるが、圧縮力が作用する位置に複数の縦スリットを形成しても同様の挙動を示すものである。また、縦スリット50の高さを変更した場合には、角形鋼管40におけるものに準じた効果が奏せられるものと考えられる。
【0099】
(丸形鋼管におけるスリットおよび補強板の効果)
図37において、丸形鋼管20のみである「スリット無し補強PL無し」では、最大荷重が55.8kNであるものの、変位170mm辺りで破断している。
また、丸形鋼管20に縦スリット50を設けた「M5−75スリット」では、最大荷重が、50.2kNに低下したものの、変位量が増加し、縦スリット50を設けた効果が認められる。ただし、目標変位である300mmには到達していない。
さらに、丸形鋼管20に縦スリット50および補強板91を設けた「M5−75Pスリット」では、縦スリット50を設けた影響で最大荷重が、51.1kNに低下したものの、補強板91を設けた効果によって変位量が大幅に増加している(目標変位である300mmを越えている)。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は以上の構成であるため、衝撃エネルギの吸収能力に優れると共に、景観性を担保しながら製造コストを抑えることができるから、防護柵等(ガードレール、ガードパイプ、ガードケーブル、高欄、落石防止防護柵、雪崩防護柵等を総称している)を支持する支柱として利用されるだけでなく、様々な目的に応じて配置される様々な形態の部材を支持する支柱として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態1に係る管状支柱を示す正面図等。
【図2】図1に示す管状支柱の一部を断面にした拡大背面図。
【図3】図1に示す管状支柱の実施例等を示す背面図。
【図4】図3に示す実施例等を示す底面図。
【図5】図3に示す実施例等を曲げた際の荷重−変位曲線。
【図6】図3に示す実施例を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図。
【図7】図3に示す比較例1を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図。
【図8】図3に示す比較例2を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図。
【図9】図1に示す管状支柱における切欠部を模式的に示す背面図。
【図10】本発明の実施の形態2に係る管状支柱を示す正面図等。
【図11】図10に示す管状支柱の一部を断面にした拡大背面図。
【図12】図10に示す管状支柱における切欠部を模式的に示す背面図。
【図13】本発明の実施の形態3に係る管状支柱を示す正面図等。
【図14】図13に示す管状支柱の一部を断面にした拡大正面図。
【図15】図13に示す管状支柱における切欠部を模式的に示す拡大底面図。
【図16】本発明の実施の形態4に係る管状支柱を示す正面図等。
【図17】図16に示す管状支柱の一部を断面にした拡大正面図。
【図18】本発明の実施の形態5に係る管状支柱を示す斜視図。
【図19】従来の鋼管支柱を曲げた際の荷重−変位線図。
【図20】従来の鋼管支柱を曲げた際の荷重−変位線図。
【図21】管状支柱700を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図。
【図22】本発明の実施の形態7に係る管状支柱を示す斜視図。
【図23】本発明の実施の形態8に係る管状支柱を模式的に説明する断面図。
【図24】本発明の実施の形態9に係る管状支柱を模式的に説明する断面図。
【図25】本発明の実施の形態9に係る管状支柱における、縦スリットおよび補強板の効果を説明するための供試材を示す断面図。
【図26】本発明の実施の形態9に係る管状支柱における、縦スリットおよび補強板の効果を説明するための供試材を示す断面図。
【図27】本発明の実施の形態8に係る管状支柱における、補強板の効果を説明するための供試材を示す断面図。
【図28】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットの位置の効果を説明する荷重−変位線図。
【図29】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットの位置の効果を説明する荷重−変位線図。
【図30】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、補強板の効果を説明する荷重−変位線図。
【図31】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、補強板の効果を説明する荷重−変位線図。
【図32】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、補強板の効果を説明する荷重−変位線図。
【図33】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットの位置の効果を説明する荷重−変位線図。
【図34】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットの位置の効果を説明する荷重−変位線図。
【図35】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットの高さの効果を説明する荷重−変位線図。
【図36】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、補強板の効果を説明する荷重−変位線図。
【図37】本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットおよび補強板の効果を説明する荷重−変位線図。
【符号の説明】
【0102】
10:ベースプレート、11:上面、12:支柱用孔(実施の形態1、2)、13:設置用孔、14:支柱用孔(実施の形態3、4)、20:丸形鋼管、21:上端、22:蓋、23:下端、24:柵用材固定用孔、30:柵用材設置部、31:矩形部材、33a:柵用材固定用孔、33b:柵用材固定用孔、34:柵用材固定用孔、40:角形鋼管、41:上端、42:蓋、43:下端、44a:取付孔、44b:取付孔、45:切欠部、46:正面、47:側面、48:背面、49:側面、50:縦スリット(実施の形態1)、50a:縦貫通溝、50b:縦貫通溝、50c:縦貫通溝、50d:縦貫通溝、50e:縦貫通溝、51e:貫通孔、60:縦孔(実施の形態2)、60a:縦孔、60b:縦孔、60c:縦孔、60d:縦孔、60e:縦孔、61e:貫通孔、70:縦溝(実施の形態3)、70a:縦溝、70b:縦溝、70c:縦溝、70d:縦溝、70e:縦溝、71a:最奥部、71b:底、71c:最奥部、71d:最奥部、71e:最奥部、72d:最薄肉部、80:縦溝(実施の形態4)、81:底、82:貫通孔、90a:溶接部、90b:溶接部、98:小横孔(比較例1)、99:大横孔(比較例2)、100:管状支柱(実施の形態1)、200:管状支柱(実施の形態2)、230:柵用材設置部、231a:柵用材(鋼管部材)、232a:ブラケット、300:管状支柱(実施の形態3)、330:柵用材設置部、331:水平部、332a:鉛直部、332b:鉛直部、333a:柵用材固定部、333b:柵用材固定部、334a:取付孔、334b:取付孔、400:管状支柱(実施の形態4)、430:柵用材設置部、431:字状部材、432:鉛直部、433:水平部、434a:柵用材固定用孔、435:矩形部材、435a:柵用材固定用孔、435b:柵用材固定用孔、436a:柵用材固定用孔、500:管状支柱(実施の形態5)、600:管状支柱(実施の形態5)、700:管状支柱(実施の形態6)、800:管状支柱(実施の形態7)、900:管状支柱(実施の形態7)、1100:管状支柱(実施の形態8)1600:管状支柱(実施の形態9)、980:管状支柱(比較例1)、990:管状支柱(比較例2)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に固定されるベースプレートと、該ベースプレートに立設された管体と、を有し、
前記管体の前記ベースプレート近傍に、管軸方向に長い切欠部が形成されていることを特徴とする管状支柱。
【請求項2】
前記切欠部が、前記管体を貫通する縦スリット又は縦孔であることを特徴とする請求項1記載の管状支柱。
【請求項3】
前記切欠部が、前記管体の外面または内面の一方に形成され、または前記管体の外面および内面の両方に対向して形成され、底面を有する溝であることを特徴とする請求項1記載の管状支柱。
【請求項4】
前記切欠部の管軸方向の中央部における幅が、前記切欠部の端部における幅より広いことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の管状支柱。
【請求項5】
少なくとも前記切欠部の一部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮力を受ける範囲に位置していることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の管状支柱。
【請求項6】
前記管体が断面円形で、1の前記切欠部が形成され、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部が前記管体の外側に向かって突出するように変形すると共に、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の管状支柱。
【請求項7】
前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる面に1または2以上設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の管状支柱。
【請求項8】
前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる両隅部または該両隅部近傍に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の管状支柱。
【請求項9】
前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる面と引っ張り側になる面とを連結する側面の前記圧縮側になる面寄りに設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の管状支柱。
【請求項10】
前記管体が断面矩形で、1の切欠部が形成されたものであって、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の管状支柱。
【請求項11】
前記管体が断面矩形で、一対の切欠部が形成されたものであって、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記一対の切欠部に挟まれた面が、前記管体の内側に向かって陥入するように変形することを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の管状支柱。
【請求項12】
前記管体の前記切欠部に対向する内面に、補強板が設置されていることを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の管状支柱。
【請求項13】
前記補強板は、矩形状の平板または矩形状の断面円弧板であって、
一方の端縁が、前記ベースプレートに接合され、
両側縁が、それぞれ前記管体の内面に接合されていることを特徴とする請求項12記載の管状支柱。
【請求項1】
基礎に固定されるベースプレートと、該ベースプレートに立設された管体と、を有し、
前記管体の前記ベースプレート近傍に、管軸方向に長い切欠部が形成されていることを特徴とする管状支柱。
【請求項2】
前記切欠部が、前記管体を貫通する縦スリット又は縦孔であることを特徴とする請求項1記載の管状支柱。
【請求項3】
前記切欠部が、前記管体の外面または内面の一方に形成され、または前記管体の外面および内面の両方に対向して形成され、底面を有する溝であることを特徴とする請求項1記載の管状支柱。
【請求項4】
前記切欠部の管軸方向の中央部における幅が、前記切欠部の端部における幅より広いことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の管状支柱。
【請求項5】
少なくとも前記切欠部の一部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮力を受ける範囲に位置していることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の管状支柱。
【請求項6】
前記管体が断面円形で、1の前記切欠部が形成され、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部が前記管体の外側に向かって突出するように変形すると共に、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の管状支柱。
【請求項7】
前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる面に1または2以上設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の管状支柱。
【請求項8】
前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる両隅部または該両隅部近傍に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の管状支柱。
【請求項9】
前記管体が、所定の方向から荷重を受けるように立設される断面矩形であって、
前記切欠部が、前記管体が荷重を受けた際に圧縮側になる面と引っ張り側になる面とを連結する側面の前記圧縮側になる面寄りに設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の管状支柱。
【請求項10】
前記管体が断面矩形で、1の切欠部が形成されたものであって、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の管状支柱。
【請求項11】
前記管体が断面矩形で、一対の切欠部が形成されたものであって、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記一対の切欠部に挟まれた面が、前記管体の内側に向かって陥入するように変形することを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の管状支柱。
【請求項12】
前記管体の前記切欠部に対向する内面に、補強板が設置されていることを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の管状支柱。
【請求項13】
前記補強板は、矩形状の平板または矩形状の断面円弧板であって、
一方の端縁が、前記ベースプレートに接合され、
両側縁が、それぞれ前記管体の内面に接合されていることを特徴とする請求項12記載の管状支柱。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
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【図4】
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【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2008−202393(P2008−202393A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14648(P2008−14648)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
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