説明

管状火炎バーナおよびラジアントチューブ式加熱装置

【課題】高い安全性・信頼性を備えた管状火炎バーナおよびそれを搭載したラジアントチューブ式加熱装置を提供する。
【解決手段】管状火炎バーナ10には、燃料含有ガスあるいは酸素含有ガスの急激な流量変動を緩和する流量変動緩和手段31、41が設置されているとともに、燃焼室11内に、適用する燃料の着火温度以上の表面温度を有する保炎棒21が設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状火炎バーナおよびそれを搭載したラジアントチューブ式加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炉や燃焼器に取り付けられるバーナとして、先端が開放された管状の燃焼室を有し、この燃焼室の後端の閉塞端部近傍に燃料含有ガスを吹き込むノズルと酸素含有ガスを吹き込むノズルが、前記燃焼室の内周面の接線方向に向けて設けられている非予混合型の管状火炎バーナが知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。また、その管状火炎バーナを搭載したラジアントチューブ式加熱装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
この管状火炎バーナは、高速の旋回流中で火炎が形成されるので、極めて高負荷の燃焼が可能である。また、燃焼量の調節範囲が広いので、1基のバーナで広範囲の燃焼量に対応することができる。さらに、バーナ内に火炎が形成されるので、バーナの前方に燃焼用の空間が必要ではなく、燃焼設備の小型化が達成される。また、燃焼排ガスの温度のバラツキが小さく、局所的な高温領域が形成されない上に、酸素供給比を下げることもできるので、NOXなどの有害ガスの発生が少なく、ススの発生や未燃焼のまま排出されるガスもほとんどなく、排ガスの低公害化が達成される。
【特許文献1】特開平11−281015号公報
【特許文献2】特開平11−281018号公報
【特許文献3】特開2005−188844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、特許文献1〜3等に記載された従来の管状火炎バーナおよびその管状火炎バーナを搭載したラジアントチューブ式加熱装置は、以下に示すような技術課題がある。
【0005】
まず、従来の管状火炎バーナに関しては、次のような技術課題がある。
【0006】
(1)燃料含有ガスおよび酸素含有ガスの供給側の急激な流量変動に伴って失火する場合がある。その主な理由は、管状火炎バーナの火炎長が長い場合、バーナ内に保炎に有用な再循環領域が形成されないからである。また、実用バーナを想定した場合、バーナ内での平均空塔速度が層流燃焼速度を大幅に上回っており、吹き消えやすいからである。
【0007】
(2)着火しにくい。その主な理由は、着火装置の取り付け位置が燃焼室の上流端(閉鎖端)に限定されるからである。すなわち、燃焼室の側壁から着火装置を突き出すと燃焼室内に形成される旋回流が減衰するととともに、管状火炎の形態が乱れるため好ましくないからである。また、運転条件(燃料含有ガスおよび酸素含有ガスの流量、吹き込み速度、空気過剰率等)によって適正な着火位置が異なるからである。
【0008】
さらに、従来の管状火炎バーナを搭載したラジアントチューブ式加熱装置には、次のような技術課題がある。
【0009】
(3)燃焼室(ラジアントチューブ)が細長いため、異常燃焼(火炎伝播)により到達圧力が高くなり、管(ラジアントチューブ)が破損する場合がある。
【0010】
(4)ラジアントチューブの曲管部で二次流れが形成されるため、ここで急速に燃料と酸化剤との混合が進み、内壁近傍まで火炎が形成される結果、内壁の一部に局所高温部が形成され、焼損トラブルが発生する場合がある。
【0011】
(5)燃焼室内での火炎の安定性を確保するため、熱容量の大きいパイロットバーナを常時運転する必要がある。その結果、補助燃料の消費量が多くなる。
【0012】
(6)燃焼室が細長く、かつ壁が赤熱するため、従来の失火検知器では失火を検知しにくく、失火後のバルブ全閉操作が遅れ、異常燃焼(爆燃)に至る危険性がある。
【0013】
(7)燃焼室が細長いため、内壁近傍で燃焼反応が凍結される割合が多く、その結果、未燃ガス成分や粒子状物質の排出濃度が高くなる。
【0014】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、高い安全性・信頼性を備えた管状火炎バーナおよびそれを搭載したラジアントチューブ式加熱装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0016】
[1]先端が開放された管状の燃焼室を有し、前記燃焼室に燃料含有ガスを吹き込むノズルと酸素含有ガスを吹き込むノズルをそれぞれ備え、それらの各ノズルの噴射方向が燃焼室内周面の接線方向と一致している管状火炎バーナにおいて、
前記各ノズルに供給する燃料含有ガスまたは酸素含有ガスの急激な流量変動を緩和する流量変動緩和手段と、前記燃焼室の後端から燃焼室内に挿入された円形断面の棒状体と、該棒状体の外表面の温度を前記燃料の着火温度以上に維持するための棒状体加熱手段とを備えていることを特徴とする管状火炎バーナ。
【0017】
[2]前記棒状体は、前記燃焼室に挿入される部分の軸方向長さが前記燃焼室の内径の2〜10倍の範囲内になっていることを特徴とする前記[1]に記載の管状火炎バーナ。
【0018】
[3]前記棒状体加熱手段の熱源は、バーナまたは電気ヒーターからなることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の管状火炎バーナ。
【0019】
[4]棒状体加熱手段の熱源がバーナからなっている場合、当該バーナの燃焼排ガスが、管状火炎バーナの燃焼排ガスを再循環させるためのエゼクターの駆動ガスとして利用されることを特徴とする前記[3]に記載の管状火炎バーナ。
【0020】
[5]前記酸素含有ガスが、管状火炎バーナの燃焼排ガスにより予熱されるようになっていることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の管状火炎バーナ。
【0021】
[6]前記燃料含有ガスまたは/および酸素含有ガスに、管状火炎バーナの燃焼排ガスが含有されるようになっていることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の管状火炎バーナ。
【0022】
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の管状火炎バーナをラジアントチューブの一端または両端に配設したことを特徴とするラジアントチューブ式加熱装置。
【0023】
[8]ラジアントチューブの両端に管状火炎バーナを配設した場合は、管状火炎バーナが交番燃焼するようになっていることを特徴とする前記[7]に記載のラジアントチューブ式加熱装置。
【0024】
[9]ラジアントチューブの曲管部の内径が直管部より細くなっていることを特徴とする前記[7]または[8]に記載のラジアントチューブ式加熱装置。
【0025】
[10]ラジアントチューブの両端の差圧または/および燃焼排ガス温度の異常を検出して、不活性ガスによるパージから再稼動までの操作を自動的に行うための自動運転制御装置が配設されていることを特徴とする前記[7]〜[9]のいずれかに記載のラジアントチューブ式加熱装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明においては、幅広い燃料流量に対して安定した排ガス低公害化が実現でき、高い安全性・信頼性を備えた管状火炎バーナおよびラジアントチューブ式加熱装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は本発明の一実施形態に係る管状火炎バーナを示すものであり、図1(a)は縦断面図、図1(b)は図1(a)におけるA−A矢視図である。
【0029】
図1に示すように、この実施形態に係る管状火炎バーナ10は、先端11aが開放された管状の燃焼室11を有し、燃料含有ガス(燃料ガス)を吹き込む燃料含有ガス用ノズル12と酸素含有ガス(空気)を吹き込む酸素含有ガス用ノズル13を燃焼室11の後端11b側にそれぞれ備え、それらのノズル12、13の噴射方向が燃焼室11内周面の接線方向と一致している。これによって、燃焼室11内に高速旋回流で長火炎の管状火炎14が形成される。
【0030】
そして、この管状火炎バーナ10においては、燃料含有ガス用ノズル12に燃料含有ガスを供給する配管に、燃料含有ガスの急激な流量変動を緩和する流量変動緩和手段31が設置され、酸素含有ガス用ノズル13に酸素含有ガスを供給する配管に、酸素含有ガスの急激な流量変動を緩和する流量変動緩和手段41が設置されている。流量変動緩和手段31、41としては、バッファタンク、絞り、フィルタ(膜、充填層)等が用いられる。また、図1中の32と42は流量計、34と43は流量調整弁、34と44は逆止弁、35と45は開閉弁である。ここで、流量計32、42としてマスフローメーターを用いた場合には、マスフローメーターには流量変動緩和機能もあるので、流量変動緩和手段31、41としてのバッファタンク、絞り、フィルタ等を設置しなくともよい。
【0031】
このように、この管状火炎バーナ10は、流量変動緩和手段31、41が設置されていることによって、燃料含有ガスあるいは酸素含有ガスの急激な流量変動が緩和されるので、失火が回避されて、異常燃焼が防止され、管状火炎の本来の低公害化および広範囲熱負荷適合性に加え、安全性・信頼性が向上する。また、稼働率が向上し、補修費が低減するので運転費が安価となる。
【0032】
さらに、この管状火炎バーナ10においては、燃焼室11の後端11bから燃焼室11内に同心円状に挿入された円形断面の棒状体(ここでは、中空の円錐台形の棒状体)21と、その棒状体21の外表面の温度を燃料の着火温度以上に維持するための棒状体加熱手段(ここでは、電気ヒーター)24を備えている。そして、棒状体21には熱電対23が取り付けられており、熱電対23による測温結果に基づいてヒーターコントローラ24が電気ヒーター22による入熱量を調整するようになっている。
【0033】
このように、この管状火炎バーナ10では、燃焼室11の後端11bから燃焼室11内に同心円状に棒状体21を設置し、その棒状体21の外表面の温度を燃料の着火温度以上に維持するようにしているので、もし、流量変動緩和手段31、41の働きにも関わらず何らかの原因で大きな流量変動が発生した場合でも、燃料の着火温度以上の表面温度が維持された棒状体21によって、失火に対するリスクを大幅に軽減することができる。したがって、失火後の爆発を未然に防止することができる。すなわち、この棒状体21は保炎棒としての機能を有することになる。
【0034】
ここで、燃焼室11内に同心円状に棒状体(保炎棒)21を設置することは、保炎棒21によって旋回流が乱されにくいこと、および、気体に遠心力が働くため保炎棒21によって加熱された気体が周囲に拡散しにくいこと、保炎棒の表面に近づくほど円周方向の流速が小さくなるため火炎が吹き消えにくいことなどの理由により、良好な着火性および保炎性が得られる。したがって、本発明は、特に交番燃焼のような間欠的な燃焼を行う場合に威力を発揮するものと考えられる。
【0035】
なお、保炎棒21の外表面の形態としては、単純な円形でもある程度の保炎効果が期待できるが、望ましくは、外表面に凹凸を設け、着火後の初期火炎核が旋回流等によって吹き飛ばされないようにする方がよい。例えば、保炎棒21の外表面に軸方向に複数本溝(幅5mm・深さ5mm程度)を配設すると、その溝の中に循環流が形成されるため、保炎性が格段に向上する。
【0036】
また、保炎棒21の基本形状については、円筒状でもある程度の保炎効果が期待できるが、望ましくは、図1に示しているように、上流端(燃焼室11の後端11b側)から下流に向けて先細の円錐台形状を採用するほうがよい。その主な理由は、先細形状の方が、材料力学的に保炎棒21の自重による最大たわみ量を小さくできること、および、保炎棒21の周囲に管状火炎が形成された場合、下流ほど燃焼排ガス量が増加するため、下流に向けて通路断面積を増加させた方が望ましい(旋回流の減衰を抑制することができる)からである。
【0037】
さらに、保炎棒21の外表面の温度の設定値については、熱電対23の指示値が必ずしも保炎棒21の外表面の平均温度を示すとは限らないこと、および、着火操作に伴うガス流れにより保炎棒21が冷やされることなどを考慮し、燃料の着火温度より100℃程度以上高めに設定することが望ましい。
【0038】
ちなみに、着火操作後、管状火炎が保炎棒21の周囲に形成されると、火炎からの輻射及び燃焼排ガスによる熱伝達により、保炎棒21の外表面温度が燃料の着火温度以上を維持することになるため、保炎棒21に外部エネルギーを加えるのは、燃焼開始初期段階のみでよいことになる。したがって、本方式は、従来のパイロットバーナ方式と比較して省エネルギー効果が大きい。
【0039】
なお、保炎棒21の軸方向長さについては、燃焼室11の内径の2〜10倍とすることが好ましい。燃焼室11の内径の2倍未満であると、ガスの供給変動に対する保炎性が極端に悪化し、異常燃焼防止が困難になるからであり、燃焼室11の内径の10倍を超えると、自重によるたわみ量が過大となり、火炎の軸対象性が維持できなくなり、保炎棒21の外壁や燃焼室11の内壁の焼損が発生する危険性があるからである。
【0040】
また、保炎棒21の外径(平均外径)については、燃焼室11の内径の0.4〜0.6倍が好ましい。保炎棒21の外径があまり小さいと、伝熱面積が小さくなって保炎性が悪くなるからであり、逆に、保炎棒21の外径があまり大きいと、燃焼室11の空間が狭くなり、壁と火炎とが近づきすぎて焼損する危険性があるからである。
【0041】
同様に、保炎棒21が燃焼室11の軸心に対して偏心しすぎると、管状火炎が燃焼室11の内壁に接近し、焼損トラブルが発生する場合がある。また、保炎棒21の偏心により旋回流が乱され、かつ旋回速度が減速するため、管状火炎が形成できなくなってしまう。
【0042】
このように、この管状火炎バーナ10は、燃焼室11内に保炎棒21が設置されていることによって、保炎性が大幅に改善されるので、失火が回避されて、異常燃焼が防止され、安全性・信頼性が向上する。また、稼働率が向上し、補修費が低減するので運転費が安価となる。
【0043】
そして、この管状火炎バーナ10においては、燃料含有ガスまたは/および酸素含有ガスに管状火炎バーナ10の燃焼排ガスが含有されるようになっている。すなわち、図1に示すように、管状火炎バーナ10の燃焼排ガスが流量計36、流量調整弁37、逆止弁38を経由して燃料ガスに混合され、同様に、流量計46、流量調整弁47、逆止弁48を経由して空気に混合されるようになっている。
【0044】
これにより、燃料/酸素濃度が低減し、緩慢燃焼が促進されて、局所高温が回避され、環境負荷物質であるNOxの排出が低減する。また、高い排ガス再循環率が達成され、これに伴なって、空気過剰率を小さく抑えることができるため、排ガス顕熱が大幅に低下し、熱効率が向上することから、燃料消費量が節約でき、省エネルギーとなる。
【0045】
なお、図1においては、保炎棒21の加熱手段として電気ヒーター22を用いているが、図2に示すように、保炎棒21の加熱手段としてバーナを用いてもよい。
【0046】
すなわち、図2(a)は、保炎棒21の加熱手段として管状火炎バーナを用いた場合であり、保炎棒21(ここでは、中空の円筒状の棒状体)の中空部内に管状火炎バーナ51が配置されている。また、図2(b)は、保炎棒21の加熱手段として市販の通常バーナを用いた場合であり、保炎棒21の中空部内に内筒53を設置し、その内筒53の後端(保炎棒21の上流端側)に市販の通常バーナ52が取り付けられている。
【0047】
保炎棒21の加熱手段として電気ヒーター22を用いた場合には、精密な実時間制御が行えるので、信頼性が向上する。また、付帯設備がコンパクトとなり、設備費が安価になる。
【0048】
これに対して、保炎棒21の加熱手段として管状火炎バーナ51を用いた場合には、燃焼を開始する前に、下流側の火炎から熱の供給を受けるため、超過エンタルピ火炎が形成され、補助燃料や電気が節約できるので、運転費が安価となる。
【0049】
また、保炎棒21の加熱手段として市販の通常バーナ52を用いた場合には、運転費が安価となる。
【0050】
なお、保炎棒21の加熱手段として管状火炎バーナ51または通常バーナ52を用いた場合には、その排ガスを、管状火炎バーナ10の燃焼排ガスを再循環(NOx低減対策)させるためのエゼクターの駆動ガスとして利用することができる。
【0051】
すなわち、図3は、上流端から管長さの1/4の位置に低温蒸気または冷空気によるエゼクター57を備え、下流端から管長さの1/4の位置に高温ガスによるエゼクター56を備えた1/4波長管(Rijke Tube)55に、管状火炎バーナ10が設置された燃焼設備(例えば、廃棄物焼却炉のボイラ)の出口から排出される燃焼排ガスを導くに際して、保炎棒21を加熱した管状火炎バーナ51または通常バーナ52の排ガスをエゼクター56の駆動ガスとして利用するものである。
【0052】
これによって、排ガス再循環用の高温ブロワが省略でき、消費電力が節約できるとともに、設備費が安価となる。また、高温ブロワの焼損やダスト付着によるトラブルが回避され、安全性や信頼性が向上するとともに、運転費が安価となる。
【0053】
ちなみに、廃棄物焼却炉の排ガスを高温用誘引ブロワによって再循環させる場合には、設備費が高価、ブロワの羽根車へのダスト付着によるトラブル発生(異常振動、羽根車破損)等の問題がある。
【0054】
また、この管状火炎バーナ10においては、酸素含有ガスを管状火炎バーナ10の燃焼排ガスにより予熱することもできる。
【0055】
すなわち、図4に示すように、一対の蓄熱体61a、61bと切換弁62を設置して、交番式で酸素含有ガスを管状火炎バーナ10の燃焼排ガスで予熱する。ここで、図4(a)は、酸素含有ガス(空気)を蓄熱体61aで予熱し、管状火炎バーナ10の燃焼排ガスで蓄熱体61bを加熱している状態を示し、図4(b)は、管状火炎バーナ10の燃焼排ガスで蓄熱体61aを加熱し,酸素含有ガス(空気)を蓄熱体61bで予熱している状態を示している。
【0056】
このように、酸素含有ガスを管状火炎バーナ10の燃焼排ガスにより予熱することによって、管状火炎バーナ10に用いる燃料代が節約でき、運転費が安価になる。また、燃料/酸素含有ガスの反応性が向上し、失火が防止されて、異常燃焼が防止されるので、補修費が低減し、運転費が安価になる。さらに、失火が防止されることにから、安全性・信頼性が向上するとともに、稼働率が向上して運転費が安価になる。
【0057】
そして、図5、図6に、上記の管状火炎バーナ10を搭載したラジアントチューブ式加熱装置を示す。図5は、U字形状のラジアントチューブ75の一端に管状火炎バーナ10を設置した一端型ラジアントチューブ式加熱装置71であり、図6は、U字形状のラジアントチューブ75の両端にそれぞれ管状火炎バーナ10(10a、10b)を設置した両端型ラジアントチューブ式加熱装置72である。
【0058】
このような管状火炎バーナ10を搭載したラジアントチューブ式加熱装置71、72においては、ラジアントチューブ75に沿って、火炎が空間に形成されるため、ラジアントチューブ内壁での燃焼凍結が回避され、環境負荷物質である未燃ガスや粒子状物質の排出が低減する。また、安定した長火炎が形成されて、局所高温が回避されるので、内壁の焼損が防止され、補修費が低減し、運転費が安価になる。また、局所高温が回避されることによって、環境負荷物質であるNOxの排出も低減する。さらに、安定した長火炎が形成されることによって、ラジアントチューブ75の外表面の温度分布が平均化されるため、加熱対象(製品)の加熱効率が向上し、燃料消費量が節約できて省エネルギーとなるとともに、製品の加熱温度分布が均一化して製品の品質が向上する。その上、加熱温度の調整範囲が拡大し、制御性も向上するので、設備能力が向上し、製品の品質も向上する。
【0059】
なお、図6に示すように、この両端型ラジアントチューブ式加熱装置72では、それぞれの管状火炎バーナ10a、10bに対応して設けられている蓄熱体76a、76bを用いて、管状火炎バーナ10a、10bの排ガスで酸素含有ガス(空気)を予熱しながら交番燃焼するようになっている。
【0060】
これによって、酸素含有ガスの実流速が増加するため、より長火炎が形成されるので、ラジアントチューブ75の表面温度が平均化し、加熱効率が向上することから、燃料代が節約でき、運転費が安価になる。また、管状火炎バーナ10a、10bに設けられている保炎棒21の表面温度が均一化されて、失火がより一層確実に防止されるようになり、異常燃焼が防止されて、補修費が低減し、運転費が安価になる。
【0061】
そして、図7に示すように、ラジアントチューブ75は、曲管部75bの内径を直管部75aより細くし、その間をテーパ管75cで接続するようにしてもよい。
【0062】
これによって、曲管部75bで旋回速度が増速して、管状火炎が安定的に維持され、内壁近傍での反応凍結や不完全燃焼が回避されることとなり、粒子状物質の排出が低減する。また、管状火炎が安定に維持されることにより、局所高温が回避されて、加熱効率が向上し、運転費が安価になる。さらに、局所高温が回避されることにより、環境負荷物質であるNOxの排出が低減する。その上、ラジアントチューブ75の曲管部75bが軽量化されることになるので、設備費が安価になる。
【0063】
なお、曲管部75bの内径を直管部75aより細くする際には、段付きの管で両者を接続することでも、ある程度の旋回速度の増速効果が期待できるが、図7に示したように、テーパ管75c(内径の開き角が30°程度以下)を介して滑らかに接続した方が渦等の発生に伴なう流体力学的なロスを低く抑えることができるので望ましい。
【0064】
そして、このラジアントチューブ式加熱装置71、72は、ラジアントチューブ75の両端の差圧または/および燃焼排ガス温度の異常を検出して、不活性ガスによるパージから再稼動までの操作を自動的に行うための自動運転制御装置(図示せず)が配設されている。
【0065】
ラジアントチューブ75内に火炎が形成されると、管内壁と接触するガスの平均温度が上昇し、ガスの粘性が増加することに起因して、ラジアントチューブ75の両端の差圧が上昇する。したがって、ラジアントチューブ75の両端の差圧または/および燃焼排ガス温度を常時モニターすることにより、失火を速やかに検知し、窒素ガス等によるパージを行うことにより、異常燃焼(爆燃、爆轟)を未然に防止することができる。
【0066】
すなわち、自動運転制御装置は以下のような手順で制御を行う。
【0067】
(S1)ラジアントチューブ75の両端の差圧または/および燃焼排ガス温度の異常を検出する。
【0068】
(S2)管状火炎バーナ10の開閉弁35、45を閉じて、燃料含有ガスと酸素含有ガスの供給を停止する。
【0069】
(S3)保炎棒21への熱負荷を上昇させる。
【0070】
(S4)窒素ガスによるラジアントチューブ75内のパージを行う。その際に、窒素ガスの量はラジアントチューブ75の内容積の少なくとも5倍以上とする。
【0071】
(S5)管状火炎バーナ10の開閉弁35、45を開き、流量調整弁33、43の開度を絞った状態で、燃料含有ガスと酸素含有ガスの供給を再開し、着火操作を行う。
【0072】
(S6)徐々に流量調整弁33、43の開度を大きくして燃焼負荷を上昇させた後、定格運転条件に設定する。
【0073】
上記のような制御を行うことにより、失火後速やかに適正な処置をとることができるようになり、異常燃焼が防止されて、補修費が低減し、運転費が安価になる。また、異常燃焼が防止されることにより、適切に加熱されずに製品不良となる割合を最小化することができる。
【0074】
以上に述べたように、この実施形態に係る管状火炎バーナ10およびラジアントチューブ式加熱装置71、72においては、燃料含有ガスあるいは酸素含有ガスの急激な流量変動を緩和する流量変動緩和手段31、41が設置されているとともに、管状火炎バーナ10の燃焼室11内に、適用する燃料の着火温度以上の表面温度を有する保炎棒21が設置されており、仮に急激な流量変動があっても、その影響を受けにくく、火炎の安定性が格段に向上する。したがって、安全性・信頼性の向上、安価な運転費・設備費、環境負荷物質(NOx、粒子状物質)の低減、省エネルギー、製品品質の向上等の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る管状火炎バーナを示す図である。
【図2】保炎棒加熱手段としてバーナを用いた場合を示す図である。
【図3】保炎棒加熱手段としてバーナを用いた場合の排ガスの利用を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る管状火炎バーナにおいて、酸素含有ガスを管状火炎バーナの排ガスで予熱するようにしていることを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る管状火炎バーナを一端に備えたラジアントチューブ式加熱装置を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る管状火炎バーナを両端に備えたラジアントチューブ式加熱装置を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるラジアントチューブの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10、10a、10b 管状火炎バーナ
11 燃焼室
11a 燃焼室の先端
11b 燃焼室の後端
12 燃料含有ガス用ノズル
13 酸素含有ガス用ノズル
14 管状火炎
21 棒状体(保炎棒)
22 電気ヒーター
23 熱電対
24 ヒーターコントローラ
31 流量変動緩和手段
32 流量測定手段
33 流量調整弁
34 逆止弁
35 開閉弁
36 流量計
37 流量調整弁
38 逆止弁
41 流量変動緩和手段
42 流量測定手段
43 流量調整弁
44 逆止弁
45 開閉弁
46 流量計
47 流量調整弁
48 逆止弁
51 管状火炎バーナ
52 通常バーナ
53 内筒
55 1/4波長管
56、57 エゼクター
61a、61b 蓄熱体
62 切換弁
71 一端型ラジアントチューブ式加熱装置
72 両端型ラジアントチューブ式加熱装置
75 ラジアントチューブ
75a 直管部
75b 曲管部
75c テーパ管
76a、76b 蓄熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が開放された管状の燃焼室を有し、前記燃焼室に燃料含有ガスを吹き込むノズルと酸素含有ガスを吹き込むノズルをそれぞれ備え、それらの各ノズルの噴射方向が燃焼室内周面の接線方向と一致している管状火炎バーナにおいて、
前記各ノズルに供給する燃料含有ガスまたは酸素含有ガスの急激な流量変動を緩和する流量変動緩和手段と、前記燃焼室の後端から燃焼室内に挿入された円形断面の棒状体と、該棒状体の外表面の温度を前記燃料の着火温度以上に維持するための棒状体加熱手段とを備えていることを特徴とする管状火炎バーナ。
【請求項2】
前記棒状体は、前記燃焼室に挿入される部分の軸方向長さが前記燃焼室の内径の2〜10倍の範囲内になっていることを特徴とする請求項1に記載の管状火炎バーナ。
【請求項3】
前記棒状体加熱手段の熱源は、バーナまたは電気ヒーターからなることを特徴とする請求項1または2に記載の管状火炎バーナ。
【請求項4】
棒状体加熱手段の熱源がバーナからなっている場合、当該バーナの燃焼排ガスが、管状火炎バーナの燃焼排ガスを再循環させるためのエゼクターの駆動ガスとして利用されることを特徴とする請求項3に記載の管状火炎バーナ。
【請求項5】
前記酸素含有ガスが、管状火炎バーナの燃焼排ガスにより予熱されるようになっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の管状火炎バーナ。
【請求項6】
前記燃料含有ガスまたは/および酸素含有ガスに、管状火炎バーナの燃焼排ガスが含有されるようになっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の管状火炎バーナ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の管状火炎バーナをラジアントチューブの一端または両端に配設したことを特徴とするラジアントチューブ式加熱装置。
【請求項8】
ラジアントチューブの両端に管状火炎バーナを配設した場合は、管状火炎バーナが交番燃焼するようになっていることを特徴とする請求項7に記載のラジアントチューブ式加熱装置。
【請求項9】
ラジアントチューブの曲管部の内径が直管部より細くなっていることを特徴とする請求項7または8に記載のラジアントチューブ式加熱装置。
【請求項10】
ラジアントチューブの両端の差圧または/および燃焼排ガス温度の異常を検出して、不活性ガスによるパージから再稼動までの操作を自動的に行うための自動運転制御装置が配設されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のラジアントチューブ式加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−107031(P2008−107031A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291386(P2006−291386)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】