説明

粉体膜形成装置及び粉体膜形成方法

【課題】均質な粉体膜を基板の表面に効率よく成膜できる粉体膜形成装置および粉体膜形成方法を提供する。
【解決手段】原料mを収容保持する処理容器2と処理容器2の内周面に近接配置した押圧部材1とが相対移動することにより、原料mに機械的外力を付与して原料mを微粒子化する微粒子生成手段Bと、微粒子生成手段Bにより生成された直後の微粒子Cを付着させる基板Aを保持する基板保持手段4とを備え、基板Aに付着した微粒子Cに圧縮力を付与する圧縮力付与手段Dを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を付着させて基板の表面に粉体膜を形成する粉体膜形成装置及び粉体膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の表面に微粒子を付着させて粉体膜を形成する際には、例えば、ナノメートルからマイクロメートルの領域の大きさを持った微粒子が利用される。このような微粒子を用いてポーラス構造(多孔質構造)の粉体膜を形成すると、比表面積が非常に大きくなり、例えば活性の高い触媒材料を得ることができる。
従来、基板の表面に粉体膜を形成する装置として、例えば、特許文献1〜2に開示されるものがあった。
【0003】
特許文献1には、例えばセラミックス微粒子である原料を基板等に噴射することにより、衝撃・固化して基板上にセラミックスの粉体膜を形成可能なエアロゾルデポジション法を適用した粉体膜形成装置が開示してある。
エアロゾルデポジション法では、通常、数十nmから数百nmの粒径の原料をエアロゾル化し、噴射ノズルにより加圧した後、低圧のチャンバ内に配設した基板等の被成膜物に噴射する。この結果、微粒子材料が固化して粉体膜が形成される。
【0004】
特許文献1の装置における噴射ノズルは、第1導入路から導入された微粒子を含むエアロゾルガスの導入方向に対して、第2導入路から導入するアシストガスの導入方向を例えば90度未満の角度に設定してある。このように双方のガスを合流させることで、エアロゾルガスの噴射圧を高めている。
【0005】
こうすることで、エアロゾルガスの流速が増大し、アシストガスが噴射ノズルの内壁に沿って流れ易くなるため、エアロゾルガスの微粒子材料が当該内壁に付着し難くなる。この結果、良質な膜を長時間に亘って安定に形成することができる。
【0006】
特許文献2には、ケーシングの内部に配置される処理容器、および、処理容器の内部に配置されたプレスヘッドによって微粒子生成手段が構成される粉体膜形成装置が開示してある。この装置では、生成された微粒子の、基板に到達するまでの搬送状態が制御される。これにより、微粒子の凝集を阻止しつつ微粒子を基板に付着させ、均質な粉体膜を基板の表面に形成することができる。
【0007】
微粒子の原料として、しばしばグラファイト(黒鉛)が利用される。グラファイトは層状物質として知られており、原子が共有結合などによって強く結合して密に配列した面がファン・デル・ワールス力などの弱い結合力によって平行に積み重なった物質である。
基板の表面にグラファイトの層状配向膜を作製するには、CVD法(Chemical Vapor Deposition)やPLD法(Pulsed Laser Deposition)といった気相法を適用することが知られている。
【0008】
例えば特許文献3には、CVD法による導電性グラファイト膜を形成する技術が記載してある。CVD法では、まず、薄膜を形成したい材料の構成元素を含む化合物を気化させて原料ガスとする。この原料ガスを基板上に供給し、基板表面での化学反応により薄膜を形成する。原料ガスは、熱やプラズマ等の作用により化学反応を起こす。この方法によれば多種類の薄膜を形成でき、例えば、特許文献3に示されたような、グラファイトの特性を維持したままの薄膜を基板上に形成することができる。
【0009】
【特許文献1】特開2005−163058号公報
【特許文献2】特開2006−150160号公報
【特許文献3】特許第2794913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
基板上に形成された粉体膜の活性度を高めるためには、比表面積を大きくする必要がある。そのため、基板上に付着させる微粒子の粒子サイズをできるだけ小さくするのが好ましい。例えば、粒子サイズが1〜100nm程度の所謂ナノ粒子が好適である。
但し、粒子サイズが小さくなると、微粒子が噴射されてから基板の表面に付着するまでの間に、微粒子同士が衝突して凝集し易くなる。このため、粉体膜を構成する粒子サイズが安定せず、均質な粉体膜が形成できなくなり、その結果、得られた粉体膜の比表面積を十分に大きくすることができない。
【0011】
特許文献1の装置において、エアロゾルデポジション法により形成される膜の品質は、吹き付けるガスの流速に依存し、ガス流速が速い程高品質の膜が形成される。当該装置では、原料を含有するエアロゾルガスにアシストガスを導入してエアロゾルガスの噴射圧を高め、基板への衝突速度を高めている。ただし、この装置では、別途作製した原料を噴射ノズル内の経路を通して基板に衝突させているため、その間に微粒子同士が凝集する虞がある。
【0012】
特許文献2の装置においては、微粒子生成手段により生成された微粒子は、ケーシングの内部を浮遊して処理容器の外部に配置してある基板に付着する。このため、より良好な粉体膜を形成するためには、処理容器内で生成した微粒子同士が基板に到達するまでの間に凝集するのを防止する必要がある。
【0013】
また、気相法で成膜しようとすると、成膜が原子レベルとなるため成膜速度が非常に遅く、効率上、工業的生産には適さない。イオンまたはプラズマ放電電極など設備費の嵩む特殊な装置が必要という点においても好ましくない。
【0014】
従って、本発明の目的は、均質な粉体膜を基板の表面に効率よく成膜できる粉体膜形成装置および粉体膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明の第一特徴構成は、原料を収容保持する処理容器と当該処理容器の内周面に近接配置した押圧部材とが相対移動することにより、前記原料に機械的外力を付与して前記原料を微粒子化する微粒子生成手段と、前記微粒子生成手段により生成された直後の微粒子を付着させる基板を保持する基板保持手段とを備え、前記基板に付着した微粒子に圧縮力を付与する圧縮力付与手段を備える粉体膜形成装置とした点にある。
【0016】
本構成によれば、微粒子生成手段により生成された直後の微粒子を基板に付着させて粉体膜を形成するため、微粒子同士の凝集が極めて少ない。即ち、生成後に処理容器の内部で浮遊する微粒子は、直ちに基板保持手段が保持する基板の近傍に到達し、当該微粒子は、分散した状態で基板の表面に沿って流れる。このとき、当該微粒子の表面は活性化されているため、基板に到達した微粒子は基板の表面に容易に付着する。
このように本構成であれば、微粒子の表面エネルギーを利用して、非加熱・ドライプロセスの条件下で均質な粉体膜を得ることができる。
【0017】
また、本構成の装置は圧縮力付与手段を有するから、既に基板上に付着している微粒子をさらに押圧することで、微粒子の活性化した表面を近接させて微粒子同士をより強固に結合させることができる。
例えば、原料として層状構造を有する物質を使用した場合、微粒子生成手段によって原料に機械的外力を付与すると活性化面が表れた薄片状の微粒子が生成され、この微粒子が基板に到達して順次積層される。ただし、当該微粒子は寸法が大きく、また、形状が薄片状であるため、夫々の微粒子が有する活性化面同士が十分に接近することができない。よって、単に薄片状の微粒子が積層しただけでは、強固な膜を形成することはできない。
しかしながら、本構成では圧縮力付与手段によって、上記積層した微粒子を押圧することにより、薄片状の微粒子が有する活性化面同士が十分に近接し、当該薄片状の微粒子の方向性が維持されて均一な配向性を有する状態で強固に結合した膜が形成されることとなる。
これらの結果、均質な粉体膜を基板の表面に効率よく形成することができる。
【0018】
本発明の第二特徴構成は、上述の粉体膜形成装置において、前記圧縮力付与手段が前記基板の微粒子付着面に当接する加圧部材を備えた点にある。
【0019】
本構成によれば、基板の表面に形成された粉体膜に対して直に圧縮力を付与することができる。そのため、粉体膜の密度等をより正確に制御することができる。
【0020】
本発明の第三特徴構成は、上述の粉体膜形成装置において、前記加圧部材が予め設定した位置において圧縮力を付与するものであり、前記基板保持手段が前記加圧部材による圧縮力付与位置に対して前記基板をスライドさせるスライド機構を備えた点にある。
【0021】
本構成によれば、予め設定した位置において圧縮力を付与し、基板をスライド移動させて、加圧部材が圧縮力を付与する基板の位置を変更することで、基板上に形成する粉体膜の全域に均等に圧縮力が付与される。この結果、密度等が均質な粉体膜を広い領域に形成することができる。
【0022】
本発明の第四特徴構成は、上述の粉体膜形成装置において、前記基板保持手段が、前記圧縮力付与手段による前記基板に付着した微粒子への圧縮力を緩和する圧縮力緩和機構を備えた点にある。
【0023】
本構成のように圧縮力緩和機構を備えることで、基板が加圧部材によって加圧される際に、過度な加圧力が加わるのを防止することができる。よって、所望の粉体密度を有する粉体膜の形成が容易となる。
【0024】
本発明の第五特徴構成は、原料を収容保持する処理容器と当該処理容器の内周面に近接配置した押圧部材とが相対移動することにより、前記原料に機械的外力を付与して前記原料を微粒子化する微粒子化工程と、前記微粒子化した直後の微粒子を基板に付着させる微粒子付着工程と、前記基板に付着した微粒子に圧縮力を付与する圧縮力付与工程と、を有する粉体膜形成方法とした点にある。
【0025】
本構成のように、微粒子化工程および微粒子付着工程によって、生成された直後の微粒子を基板に付着させることにすれば、上記第一特徴構成に関する項で述べた如く、微粒子同士を凝集させることなく基板に到達させることができる。この結果、非加熱・ドライプロセスの条件下で均質な粉体膜を得ることができる。
さらに、本構成の如く、圧縮力付与工程を備えることで、積層した微粒子にさらに圧縮力を加えて微粒子同士の付着力を高めることができる。本構成であれば、比較的サイズの大きな微粒子であって、単に積層させただけでは互いに付着し難い微粒子を用いる場合であっても、強固な粉体膜を形成することができる。しかも、粒径の大きな微粒子を用いることができるため、極めて効率的に粉体膜を形成することができる。
【0026】
本発明の第六特徴構成は、上述の粉体膜形成方法において、前記原料の摩擦係数を制御する摩擦制御工程を有する点にある。
【0027】
本構成のように原料の摩擦係数を制御することで、原料の粉砕に際して原料に与える外力の大きさを変更することができ、粉砕速度や生成した微粒子の大きさ等を制御することができる。
例えば、摩擦係数を下げることで、微粒子に加わる力が低減し、粉砕の効率が低下すると共に、サイズの大きな微粒子を得易くなる。一方、摩擦係数を高めることで、微粒子に加わる力を増大させ、粉砕効率を高めると共に、サイズの小さな微粒子を得ることができる。
【0028】
本発明の第七特徴構成は、上述の粉体膜形成方法において、前記摩擦制御工程が真空度を変化させる工程とした点にある。
【0029】
本構成のように真空度を変化させることで、原料粒子間に介在する気体の量を調節することができる。
例えば、真空度を高めることで、原料粒子間に存在する気体の量が減少する。この結果、原料粒子同士がより近接して互いに衝突し易くなり、両者間に力が伝達し易くなって粉砕効率が高まる。一方、真空度を低下させると、原料粒子間の気体の量が増大し、相互に衝突し難くなって原料粒子間に作用する力が減少し、粉砕効率が低下する。
また、例えばグラファイト粒子においては、真空度を高めることで酸素分圧が低下するため、酸素分子の粒子表面への吸着が減少し、原料粒子間の摩擦係数を増大することができる。その結果、原料粒子間に作用する力が増大して粉砕効率が向上する。
このように真空度を変化させるという簡単な手法を用いることで、得られる微粒子のサイズ等を変化させることができるうえ、粉砕効率を調節することができる。
【0030】
本発明の第八特徴構成は、上述の粉体膜形成方法において、前記摩擦制御工程が雰囲気ガスを変化させる工程とした点にある。
【0031】
粉体膜を形成する原料によっては、例えば、酸化を防止する等の目的から不活性ガス雰囲気中で粉砕を行わなければならない場合もある。このような場合に、本構成のように雰囲気ガス種の条件を変化させることができれば、上記特徴構成七の項で述べたのと同様に、原料の摩擦係数を制御して、得られる微粒子のサイズや粉砕効率を調節することができる。
【0032】
本発明の第九特徴構成は、上述の粉体膜形成方法において、前記摩擦制御工程が前記原料と異なる異種粒子を添加する工程とした点にある。
【0033】
微粒子の摩擦係数を調整するには、上記の如く気体の制御を行う他に、原料となる微粒子の周囲に別の微粒子を分散させることも有効である。つまり、分散させるべく添加した微粒子が、粉砕対象である微粒子の間に介在して転がり部材の機能を発揮する結果、粉砕対象の微粒子同士の摩擦係数を低下させることができる。
また、原料と異なる異種粒子を添加することにすれば、複数種類の材料からなる粉体膜を得ることができ、例えば電気的特性の異なる各種の粉体膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の粉体膜形成装置では、ナノサイズの微粒子をセンサや燃料電池の電解質基板など各種基板の表面に付着させて粉体膜を形成することができる。
【0035】
当該微粒子としては、例えば、微粒子の原料となる塊状の固体に、圧縮力・剪断力・衝撃力等の機械的外力を付与して形成したものを用いることができる。微粒子のサイズ・形状としては、極めて微細な球形状のものから、比較的大きな片状のものまで、原料や粉砕方法を適宜設定することで各種の形状サイズのものが利用できる。
【0036】
本実施形態では、例えば層状構造の原料を用いる場合について説明する。このような原料物質として、例えば電極材料となるグラファイト(黒鉛)に機械的な外力を付与すると、グラファイトは層状に劈開して薄片状の微粒子が得られる。以下にはこの薄片状の微粒子を用いて積層構造の粉体膜を形成する場合について説明する。
【0037】
〔粉体膜形成装置〕
図1〜3に示すように、本発明に係る粉体膜形成装置Xは、まず、微粒子化する原料mを収容保持する処理容器2と、当該処理容器2の内周面2aに近接して設けた押圧部材1とを有する。当該押圧部材1と処理容器2とが微粒子生成手段Bを構成し、これら両部材の相対移動によって前記原料mに機械的外力を付与し、原料mを微粉化する。押圧部材1と処理容器2とは、少なくとも何れか一方が回転して相対移動する。本実施形態では、処理容器2が固定され、その内部で押圧部材1が回転する。
微粒子生成手段Bで生成された直後の微粒子を付着させる基板Aを保持する基板保持手段4が、前記処理容器2の内周面2aの方向に沿って微粒子生成手段Bに近接した位置に配置してある。
さらに、本発明では、基板Aに付着した微粒子に圧縮力を付与する圧縮力付与手段Dを備える。
【0038】
(押圧部材)
押圧部材1は、原料に押圧力を付与して原料を粉砕する部材である。
押圧部材1は処理容器2の水平軸心Zを中心に回転自在な軸体11に保持されるプレスヘッド1Aで構成する。プレスヘッド1Aの先端部には、処理容器2の内周面2aに対向して凸状に湾曲した処理面1aが形成してある。
プレスヘッド1Aの全体の側断面形状は、例えば卵型あるいは棒状等に形成することができる。またこの他に、側断面が円形のロータ状となるように形成し、当該ロータの周縁部に適当数の処理面を備えるなど各種の形状を採り得る。
【0039】
粉体膜形成装置Xには、軸体11を回転駆動するモータ・プーリー・ベルト等からなる回転駆動手段12が設けてある。回転駆動手段12は、軸体11を回転駆動することで、プレスヘッド1Aを処理容器2に対して相対移動させる。ここでは、固定された処理容器2の内周面2aに対し、プレスヘッド1Aの処理面1aを相対移動させる。この相対移動により、両者の間隙7にある原料mに対して、非常に強力な圧縮力と剪断力との機械的エネルギーが付与される。この結果、原料mが磨砕され、表面が活性化された微粉状の生成粉体Cが得られる。このような微粒子生成手段Bにおいて、生成粉体Cが生成する部位は、特に処理面1aと内周面2aとの対向部位である。
【0040】
(処理容器)
処理容器2は、基台5に固定設置され、水平方向の軸芯Zを有する筒状の部材である。
当該処理容器2の内部は、プレスヘッド1Aが回転する円筒状の処理室3が形成してある。当該処理室3が微粒子生成空間であり、プレスヘッド1Aおよび処理容器2の相対回転の際に原料mに付与された機械的外力により生成した生成粉体Cは処理室3の内部を循環浮遊する。
プレスヘッド1Aの処理面1aと内周面2aとの間には間隙7が形成され、内周面2aには、原料投入手段90から供給される原料mが堆積する。
【0041】
内周面2aの一部には、基板保持手段4を収納する凹部31を設けてある。本実施形態ではこの凹部31において基板Aに成膜される。
凹部31は、処理容器2の軸芯Zの上方に位置し、垂直上方に凹設してある。凹部31には、その一部が処理室3に連通する開口部32を設けてある。この開口部32から基板Aが処理室3に臨む。これにより、処理室3の内部を循環浮遊する生成粉体Cが基板Aに付着する。
【0042】
生成粉体Cを開口部32の位置で基板Aに付着させる場合、生成粉体Cが開口部32を経由して凹部31の内部に侵入するのを防止するため、凹部31の側から処理室3の側にガスを流通させる(図3)。当該ガスとしては、処理室3の内部に充填する空気或いは各種の不活性ガス等を用いる。ガスを凹部31に供給するガス流入部24を凹部31に設け、処理室3のガスを処理室3の外部に流出させるガス流出部25を処理室3に設ける。このとき、例えば、ガス流出部25の一端を軸体11の内部に、軸体11の軸芯とガス流出部25の中心とが一致するように設け、処理室3とガス流出部25とを連通状態とする。
処理室3の外部に流出したガスは、再度、凹部31に還流させてもよい。
【0043】
(圧縮力付与手段及び基板保持手段)
基板保持手段4は、基板Aが、処理容器2の内周面2aの一部を構成するように配置する。基板保持手段4は、板状の保持部材41・後述のスライド機構E・圧縮力緩和機構Gで構成する。
【0044】
基板Aの表面に形成される粉体膜Fの表面は、圧縮力付与手段である加圧部材Dが描く回転円の接線L上に配置する(図2)。ここで、「加圧部材D」は、基板Aの微粒子付着面に形成された粉体膜Fに対する当接等によって直接的に圧縮力を付与できる部材をいう。この圧縮力を付与する位置を圧縮力付与位置Nと称し、本実施形態では、加圧部材Dの回転円に対する接線Lの位置に基板Aを配置したときの両者の接点が圧縮力付与位置Nとなる。
【0045】
本発明の粉体膜形成装置Xでは、基板Aの材質は特に限定されない。従って、基板Aとしては、例えば電極を構成する銅等の金属基板・ガラス基板・プラスチック基板・樹脂基板・セラミックス基板、及び、弱熱性基板等、種々の材料を用いることができる。
基板Aの表面には、生成粉体Cが、ファンデルワールス力・静電気力および化学結合等によって付着する。よって、所望の付着状態が得られるように、用いる原料の種類に応じて基板材料を選択するのが好ましい。
【0046】
基板保持手段4は、加圧部材Dによる圧縮力付与位置Nに対して基板Aをスライドさせるスライド機構Eを備える。
当該スライド機構Eは、凹部31の壁面に沿って配設されたレール、および、基板Aをスライド移動させる動力を発生する駆動手段等により構成する。当該レールは、加圧部材Dが描く回転円の接線Lと平行に配設する。
尚、当該スライド移動に伴い、開口部32を経由して処理室3と凹部31とが連通することが考えられる。このとき、基板Aを直接保持する保持部材41において、当該保持部材41が処理室3側に臨む面積が広くなるように構成する。これにより、スライド機構Eによる基板Aのスライド移動に伴い、処理室3内の生成粉体Cが開口部32を経由して凹部31の内部に侵入するのを防止することができる。
【0047】
基板Aは加圧部材Dの回転円の接線L上に配置してある。スライド機構Eが基板Aを接線L上に沿ってスライド移動させることで、粉体膜Fの全ての部位が圧縮力付与位置Nを通過することになる。このため、基板Aに形成された粉体膜Fの全体に圧縮力を付与することができる。よって、本構成のように、加圧部材Dによる圧縮力付与位置Nが固定されている場合、基板Aをスライド移動させることにより、粉体膜Fの全体に亘って粉体密度等の特性を均一に制御することができる。
【0048】
基板保持手段4は、加圧部材Dによる基板Aに付着した生成粉体Cへの圧縮力を緩和する圧縮力緩和機構Gを備える。
本実施形態では、圧縮力緩和機構Gをバネ部材によって構成する場合を示す。
即ち、基板Aを直接保持する保持部材41を複数のバネ部材43によって凹部31の内部で支持する。このとき、例えばバネ部材43の一端は保持部材41に接続し、他端はスライド機構Eに接続させる。
【0049】
これにより、加圧部材Dが基板Aを加圧したとき、圧縮力緩和機構Gによって、基板Aに対する加圧部材Dの圧縮力を緩和する方向、即ち、基板Aが加圧部材Dから離間する方向に基板Aを後退させることができる。加圧部材Dによる圧縮力の緩和の程度は、バネ部材のバネ定数を変更することにより、種々設定することができる。
従って、圧縮力緩和機構Gを設けることにより、基板Aの表面に形成された粉体膜Fの粉体密度等を所望の値に制御し易くなる。
【0050】
加圧部材Dは、基板Aに付着した生成粉体Cに圧縮力を付与する手段である。
例えば加圧部材Dは、基板Aに当接可能な加圧部材Dで構成する。これにより、基板Aの表面に付着した生成粉体Cに直接的に圧縮力を付与し、粉体膜Fを形成することができる。そのため、粉体膜Fの粉体密度等を正確に制御することができる。
【0051】
本実施形態では、プレスヘッド1Aの処理面1aを加圧部材Dとする。これは、微粒子生成手段Bとして原料mに機械的エネルギーを付与する押圧部材1の処理面1aと共通である。加圧部材Dは、軸芯Zを中心に回転する。
このように、押圧部材1と加圧部材Dとを共通部材とすることで、粉体膜形成装置Xの構成を簡略化することができる。
【0052】
加圧部材Dは、一回転する度に圧縮力付与位置Nに位置する粉体膜Fに対して断続的に圧縮力を付与する。このように断続的に粉体膜Fに圧縮力を付与することで、基板に対する微粒子の付着と、付着した微粒子に対する圧縮力の付与とを交互に行うことができる。よって、膜成形の初期の段階から後期の段階にかけて粉体膜Fに対して一定の圧縮力を付与することができ、膜厚の厚み方向の全域に亘って均質な粉体膜を形成することができる。
【0053】
本発明の粉体膜形成装置Xでは、微粒子生成手段Bにより生成された直後の微粒子を基板Aに付着させて粉体膜Fを形成するため、表面が活性化されていて互いに付着し易い状態にある生成粉体Cを凝集させることなく基板Aに到達させることができる。このことは、特に凝集し易いサイズの小さな原料を用いる場合に有効である。
ただし、本発明の装置では、圧縮力付与手段Dを備えているので、既に基板上に付着している微粒子をさらに押圧することで、微粒子の活性化した表面を近接させて微粒子同士をより強固に結合させることができ、サイズの大きな微粒子を積層させる場合にも有効である。
また、例えば、原料mとして層状構造を有する物質であるグラファイトを使用する場合、微粒子生成手段Bによってグラファイトに機械的外力を付与すると活性化面が表れた薄片状の微粒子が生成され、この微粒子が基板に到達して順次積層される。ただし、当該微粒子は寸法が大きく、また、形状が薄片状であるため、夫々の微粒子が有する活性化面同士が十分に接近することができない。よって、単に薄片状の微粒子が積層しただけでは、強固な膜を形成することはできない。
しかしながら、本構成では圧縮力付与手段である加圧部材Dによって、上記積層したグラファイトの微粒子を押圧することにより、薄片状の微粒子が有する活性化面同士が十分に近接し、当該薄片状の微粒子の方向性が維持されて均一な配向性を有する状態で強固に結合した膜が形成されることとなる。
これらの結果、均質なグラファイトの粉体膜を基板の表面に効率よく形成することができる。
【0054】
〔粉体膜形成方法〕
本発明の粉体膜形成装置Xを用いた粉体膜形成方法を以下に説明する。
図4に示したように、粉体膜形成方法は、原料mを処理容器2の内部に投入すると共に、処理容器2の内部の気圧や雰囲気ガスを調整したり、原料mに異種粒子を添加して原料mの摩擦係数を調節する摩擦制御工程と、当該処理容器2の内周面2aに近接配置した押圧部材1とを相対移動させることにより、原料mに機械的外力を付与して原料mを微粒子化する微粒子化工程と、微粒子化した直後の微粒子を基板Aに付着させる微粒子付着工程と、基板Aに付着した微粒子に圧縮力を付与する圧縮力付与工程と、を有する。
【0055】
このうち、摩擦制御工程において原料mの摩擦係数を制御すると、原料mの粉砕速度や生成粉体Cの特性を大幅に異ならせることができる。そのため、成膜プロセスを任意に制御して種々の特性を有する粉体膜を得易くなる。
【0056】
例えば、摩擦制御工程は、真空度を変化させる工程とすることができる。具体的には、真空ポンプ(図外)により処理室3の内部から空気等の気体を排出する。
このように、真空度を変化させることで、原料粒子間に介在する空気等の気体の量を調節することができる。真空度を高めることで、原料粒子間に存在する気体の量が減少する。この結果、原料粒子同士がより近接して互いに衝突し易くなり、両者間に力が伝達し易くなって粉砕効率が高まる。一方、真空度を低下させると、原料粒子間の気体の量が増大し、相互に衝突し難くなって原料粒子間に作用する力が減少し、粉砕効率が低下する。
例えばグラファイト粒子においては、真空度を高めることで酸素分圧が低下するため、酸素分子の粒子表面への吸着が減少し、原料粒子間の摩擦係数を増大することができる。その結果、原料粒子間に作用する力が増大して粉砕効率が向上する。
このように真空度を変化させるという簡単な手法を用いることで、得られる微粒子のサイズ等を変化させることができるうえ、粉砕効率を調節することができる。
【0057】
摩擦制御工程は、雰囲気ガスを変化させる工程とすることもできる。例えば、グラファイトを粉砕する場合、雰囲気ガスが酸素であると粉砕後の微粒子は薄片状になり易い。雰囲気ガスがヘリウムである場合には立体的な形状になり易い。
また、既存の雰囲気ガス中に異なるガス種を注入してガス置換し、雰囲気ガスの種類を変化させることもできる。
【0058】
摩擦制御工程は、原料mと異なる異種粒子を添加することとしてもよい。グラファイトを粉砕する場合の異種粒子としては、例えばポリビニリデンフルオライド(PVDF)を用いることができる。
このように微粒子の核となる物質の周りに微粒子とは異なる成分の粒子を付着あるいは結合させることにより、原料mであるグラファイトの摩擦係数を容易に制御することができる。また、原料mと異なる異種粒子を添加するため、形成された粉体膜Fには複数種類の材料に基づく特性を保持させることができる。
異種粒子は、成膜プロセスの当初より原料mと共存させたり、成膜プロセスの途中から原料mに混合することができる。
尚、上記何れの摩擦制御工程も原料に応じて行えばよく、また、必ずしも行う必要はない。
【0059】
<その他の構成>
(原料投入手段)
図1に示す如く、原料投入手段90を備えることで、原料mを処理室3に連続して供給することができる。これにより、所望の粉体膜Fを連続して製造することができる。
【0060】
また、ある原料mを供給して微粒子を生成し、基板Aの表面に粉体膜Fを形成させた後に、異なる原料の微粒子あるいは同質であるが粒径の異なる微粒子を供給して成膜してもよい。これにより、基板Aの表面に複数層の異なる材料からなる粉体膜Fを形成できる。
例えば、基板Aに生成粉体Cを付着し易くするためのプライマー膜を形成する原料を、原料投入手段90から投入して微粒子化・微粒子付着・圧縮力付与を行い、基板Aにプライマー膜を形成する。この後、原料mを当該原料投入手段90から投入し、微粒子化・微粒子付着・圧縮力付与を行って前記プライマー膜に粉体膜Fを積層する。本発明の装置であれば、様々な原料の組み合わせを用いて種々の粉体膜Fを得ることができる。
尚、原料投入手段90は、例えば、処理容器2の内部に当該原料mを供給できるように、出退自在に構成できる。
【0061】
(温調手段)
微粒子生成手段Bにより生成粉体Cを生成した際、或いは、圧縮力付与手段Dにより断続的に圧縮力を付与した際、摩擦熱等により粉体膜形成装置Xの温度が上昇する。そのため、成膜に適した温度に調節するため、温調手段を設けることが可能である。
温調手段としては、例えば処理容器2の外周表面全体を覆うジャケット(図外)を設けておき、冷却用の液体を循環させるとよい。勿論、成膜条件によっては加熱用の液体を循環させてもよい。
【0062】
(放電手段)
粉体膜形成装置Xには、生成粉体Cに放電する放電手段20を設けてもよい。当該放電手段20により、例えば、内周面2aに対向配置された放電部としての処理面1aから内周面2aに堆積している生成粉体Cに放電する。
放電手段20は、処理容器2から絶縁したプレスヘッド1Aに接続する導線22と、処理容器2に接続した導線23とに対し、電源部21から電圧を印加できるように構成してある。これにより、プレスヘッド1Aの処理面1aと、処理容器2の内周面2aとの間隙7に、グロー放電等により放電プラズマを発生させる。この結果、内周面2aと処理面1aとの間隙7で機械的エネルギーが付与されている生成粉体Cの表面を活性化することができる。
【0063】
尚、この放電手段20により放電を行う場合には、内周面2a及び処理面1aを、生成粉体Cと同じ材料等でコーティングしておけば、内周面2a及び処理面1aのエッチングによる汚染を抑制できて好都合である。
また、放電手段20は、プレスヘッド1Aの処理面1aとしたが、当該処理面1aとは別の放電部から内周面2aに対して放電を行うものであってもよい。
【0064】
(微粒子状態判定手段)
微粒子化処理を行う際には、原料mが団粒化している場合がある。このような場合には、プレスヘッド1Aを介して軸体11およびモータに過大なトルクが掛かり、粉体が過熱したり装置が損傷したりする不都合が生じるおそれがある。これを防止するために、例えば軸体11のトルク変動を検知するトルクセンサ50を備えておくのが好ましい。これにより、処理室3の内部における原料mのおおよその粒子径が把握できる。仮に、トルクセンサ50の検出値が過大となった場合には上記団粒化の発生を検知することができる。
【0065】
また、このようなトルクセンサを備えることで、本発明の粉体膜形成装置Xに、微粒子状態判定手段28を構成することができる。
微粒子状態判定手段28は、処理容器2の内部で機械的作用が加えられる原料mの処理状態が進行するほど、生成粉体Cの比表面積が大きくなり、処理面1aと内周面2aとの相対移動における抵抗が大きくなることを利用する。つまり、軸体11の回転数や軸体11にかかるトルクが所定値を超えた場合に、原料mの処理状態が所望の微粒子状態に達したと判定することができる。
【0066】
(動力制御手段)
粉体膜形成装置Xには、例えば、微粒子化工程の終了を知って回転駆動手段12の駆動速度を低下させる等の動力制御手段30を設けてもよい。当該装置を備えることで、微粒子化工程等を最適なタイミングで停止することができる。この結果、粉体膜Fを形成する微粒子の粒度分布が狭くなり、均質な粉体膜Fを得ることができる。
【0067】
〔実施例1〕
上述した粉体膜形成装置Xを用いて、以下の条件で成膜処理を行い、基板Aに粉体膜を形成した。粉体原料としてグラファイト12.0gを使用した。異種粒子としてPVDF4.0gを使用した。
原料mがグラファイトのみの場合の粉体膜形成装置Xの運転条件は、プレスヘッド1Aの回転数4000rpm、気圧10Pa、処理時間20分とした。
グラファイトにPVDFを添加した場合の粉体膜形成装置Xの運転条件は、プレスヘッド1Aの回転数4000rpm、気圧50Pa、処理時間10分とした。
【0068】
図5に微粒子化工程前のグラファイトの顕微鏡写真を示す。これより、グラファイトは層状構造を有する物質であることがわかる。
図6にグラファイトを微粒子化処理して成膜した粉体膜Fの断面の顕微鏡写真を示す。これにより、粉体膜Fはその断面視において層状を示すことがわかる。即ち、本発明の粉体膜形成装置Xでは、生成した薄片状の微粒子が直ちに基板保持手段4の表面に付着すれば、薄片状の比較的サイズの大きな粒子であっても所望の粉体膜Fが得られることがわかる。
図7にグラファイトを微粒子化処理して成膜した粉体膜Fの表面の顕微鏡写真を示す。これにより、粉体膜Fは平滑な表面形状を有することがわかる。
【0069】
〔実施例2〕
摩擦制御工程を行ったときの比表面積の推移を調べた。
図8には、真空度を変化させる摩擦制御工程を行った場合の、生成粉体Cの比表面積(m2/g)と真空度(Pa)との関係の変化を示した。処理は、グラファイト9.9gに対して4000rpmで20分間行った。
図8では、真空度が低いほど比表面積が大きく、つまり、真空度が下がるほど粉砕効率が高まることがわかる。
【0070】
図9には、雰囲気ガスを常圧の空気とした場合、および、真空度を10Paとした場合において、微粒子化の処理時間が経過したときの比表面積の推移を調べた。微粒子化処理は、グラファイト9.9gに対して4000rpmの条件で行った。
雰囲気ガスを常圧の空気とした場合には粉砕時間が経過しても比表面積は殆ど変化せず、粉砕処理効率に変化はない。しかし、真空度を10Paに高めると、粉砕時間の経過に伴って比表面積が増大し、粉砕効率が向上することがわかる。
【0071】
図10には、原料mと異なる異種粒子を添加する摩擦制御工程を行った場合における生成粉体Cの比表面積(m2/g)と運転時間(分)との関係を示す。粉砕処理は、グラファイト12.0gとPVDF4.0gに対して4000rpm、50Paの条件で行った。
これによれば、異種粒子を添加した場合、運転時間の経過に伴って比表面積が増大することがわかった。
【0072】
〔別実施の形態〕
<1> 上記実施形態では、層状物質としてグラファイトを使用した例を示した。しかし、これに限られるものではなく、例えば無機層状物質として、層状ケイ酸塩であるクレイ(粘土鉱物)・層状水酸化物・遷移金属酸化物・遷移金属ジカルコゲナイド・リン酸塩・金属リン化合物等を用いることができる。
また、ランタン系、イットリウム系、ビスマス系、タリウム系などの酸化物超伝導材料等を使用することもできる。
さらに、伝導性を有する層状ペロブスカイト化合物・遷移金属ダイカルコゲナイド・ハロゲン化金属などから成る層状物質材料の使用も可能である。
【0073】
<2> 粉体膜Fを構成する微粒子は、単一材料からなるものに限らず、複数の材料を合成して生成した生成粉体Cであってもよい。
【0074】
<3> 上記実施形態では、処理容器2が固定され、当該処理容器2の内部で押圧部材1が回転する場合を例示した。しかし、このような実施形態に限らず、押圧部材1が固定され処理容器2が回転するものや、押圧部材1および処理容器2が反対方向に回転するものであってもよい。
【0075】
<4> 上記実施形態では、単一の処理面1aを備えたプレスヘッド1Aを例示したが、これに限らず、複数の処理面1aを備えたものであってもよい。
【0076】
<5> 上記実施形態では、プレスヘッド1Aの処理面1aと圧縮力付与手段Dとを共通の部材とした。しかし、これに限らず、処理面1aと圧縮力付与手段Dとを別部材とすることも可能である。このとき、圧縮力付与手段Dは、プレスヘッド1Aとは別個に駆動制御して、基板Aの粉体膜Fに圧縮力を付与するように構成する。圧縮力付与手段Dは、微粒子生成手段Bである処理面1aより基板Aに近接した位置に設ける。
また、圧縮力付与手段Dは、回転駆動する態様に限らず、往復駆動することにより基板Aの粉体膜Fに圧縮力を付与するように構成してもよい。
【0077】
<6> 上記実施形態では、粉体膜Fに断続的に圧縮力を付与する構成について説明した。しかし、これに限られるものではなく、連続的に粉体膜Fに圧縮力を付与する構成としてもよい。
例えば圧縮力付与手段Dを、基板Aに微粒子を所定の厚さとなるように付着させて形成した粉体膜Fの表面を回転しながら移動するローラで構成する。このとき、基板Aはスライド移動せずに固定した状態とする。
また、当該ローラと基板Aとを、互いに逆方向となるように相対移動させてもよい。
【0078】
<7> 上述した本実施形態では、圧縮力付与手段Dは基板Aに当接可能な構成とした。しかし、これに限られるものではなく、圧縮力付与手段Dと基板Aとは当接せずに基板Aに圧縮力を付与する構成としてもよい。例えば、圧縮力付与手段Dとして、圧縮空気を放出する構成とする。この場合、圧縮空気を粉体膜Fに向けて放出することで、粉体膜Fの粉体密度等の特性を制御することが可能となる。
【0079】
さらに、基板Aの表面に形成された粉体膜Fに遠心力を付与することで、当該粉体膜Fに圧縮力を付与するものとしてもよい。そのためには、例えば押圧部材1を固定し、処理容器2を回転させて、基板Aを処理容器2の側で保持して粉体膜Fを形成するものとする。これにより、処理容器2の回転により基板Aに形成した粉体膜Fに遠心力が作用する。処理容器2の回転数を制御することで、粉体膜Fに作用する遠心力が調節でき、粉体膜Fの密度等を制御することができる。
【0080】
<8> 上記実施形態では、圧縮力緩和機構Gをバネ部材によって構成する場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、例えば衝撃吸収性能を有する低反発の弾性樹脂などが適用可能である。
【0081】
<9> 上記実施形態では、処理容器2は、水平方向の軸芯Zを有する筒状の部材とした。しかし、これに限られるものではなく、当該軸芯Zは鉛直方向であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の粉体膜形成装置及び粉体膜形成方法は、原料に、機械的外力を付与して生成した微粒子を、基板に付着させて粉体膜を形成する成膜装置及び成膜方法として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の粉体膜形成装置の断面概略図
【図2】本発明の粉体膜形成装置の要部概略図
【図3】本発明の粉体膜形成装置の要部概略図
【図4】本発明の粉体膜形成方法の手順の概要を示したフローチャート
【図5】粉砕処理前のグラファイトを示す顕微鏡写真
【図6】グラファイトの粉体膜の断面を示す顕微鏡写真
【図7】グラファイトの粉体膜の表面を示す顕微鏡写真
【図8】摩擦制御工程における真空度と比表面積との関係を示す図
【図9】雰囲気が異なる場合の粉砕運転時間と比表面積との関係を示す図
【図10】異種粒子を添加した場合の粉砕運転時間と比表面積との関係を示す図
【符号の説明】
【0084】
X 粉体膜形成装置
A 基板
B 微粒子生成手段
C 微粒子(生成粉体)
D 圧縮力付与手段(加圧部材)
E スライド機構
G 圧縮力緩和機構
m 原料
1 押圧部材
2 処理容器
4 基板保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を収容保持する処理容器と当該処理容器の内周面に近接配置した押圧部材とが相対移動することにより、前記原料に機械的外力を付与して前記原料を微粒子化する微粒子生成手段と、前記微粒子生成手段により生成された直後の微粒子を付着させる基板を保持する基板保持手段とを備え、
前記基板に付着した微粒子に圧縮力を付与する圧縮力付与手段を備えた粉体膜形成装置。
【請求項2】
前記圧縮力付与手段が前記基板の微粒子付着面に当接可能な加圧部材である請求項1に記載の粉体膜形成装置。
【請求項3】
前記加圧部材が予め設定した位置において圧縮力を付与するものであり、前記基板保持手段が前記加圧部材による圧縮力付与位置に対して前記基板をスライドさせるスライド機構を備える請求項2に記載の粉体膜形成装置。
【請求項4】
前記基板保持手段が、前記圧縮力付与手段による前記基板に付着した微粒子への圧縮力を緩和する圧縮力緩和機構を備える請求項1〜3の何れか一項に記載の粉体膜形成装置。
【請求項5】
原料を収容保持する処理容器と当該処理容器の内周面に近接配置した押圧部材とが相対移動することにより、前記原料に機械的外力を付与して前記原料を微粒子化する微粒子化工程と、
前記微粒子化した直後の微粒子を基板に付着させる微粒子付着工程と、
前記基板に付着した微粒子に圧縮力を付与する圧縮力付与工程と、を有する粉体膜形成方法。
【請求項6】
前記原料の摩擦係数を制御する摩擦制御工程を有する請求項5に記載の粉体膜形成方法。
【請求項7】
前記摩擦制御工程が真空度を変化させる工程である請求項6に記載の粉体膜形成方法。
【請求項8】
前記摩擦制御工程が雰囲気ガスを変化させる工程である請求項6に記載の粉体膜形成方法。
【請求項9】
前記摩擦制御工程が前記原料と異なる異種粒子を添加する工程である請求項6に記載の粉体膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−119659(P2008−119659A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309394(P2006−309394)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(502360363)株式会社ホソカワ粉体技術研究所 (59)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】