説明

粘着剤層付き透明樹脂フィルム、積層フィルムおよびタッチパネル

【課題】第一透明樹脂フィルム、オリゴマー防止層および粘着剤層がこの順に積層されている粘着剤層付き透明樹脂フィルムであって、オリゴマー防止層に要求される、オリゴマー防止性を満足するとこができ、かつ、オリゴマー防止層に係る密着性の良好な粘着剤層付き透明樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】第一透明樹脂フィルム、オリゴマー防止層および粘着剤層がこの順に積層されている粘着剤層付き透明樹脂フィルムであって、前記オリゴマー防止層は、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物の硬化物により形成されたものであり、かつ前記オリゴマー防止層の厚みが5〜35nmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一透明樹脂フィルム、オリゴマー防止層および粘着剤層がこの順に積層されている粘着剤層付き透明樹脂フィルムに関する。当該粘着剤層付き透明樹脂フィルムは、例えば、該粘着剤層を介して、第二透明樹脂フィルム積層して積層フィルムを形成するために用いられる。当該積層フィルムは、光学用途等の各種用途に用いることができる。
【0002】
例えば、第二透明樹脂フィルムが、透明導電性薄膜を有する場合には、積層フィルムは透明導電性フィルムの積層体として用いることができる。透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのディスプレイ方式や光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルなどにおける透明電極に用いられる。その他、透明導電性フィルムは、透明物品の帯電防止や電磁波遮断、液晶調光ガラス、透明ヒーター等に用いられる。
【背景技術】
【0003】
透明導電性フィルムが電極として用いられるタッチパネルは、位置検出の方式により、光学方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがある。抵抗膜方式のタッチパネルでは透明導電性フィルムと透明導電体付きガラスとがスペーサを介して対抗配置されており、透明導電性フィルムに電流を流して透明導電体付きガラスにおける電圧を測定するような構造になっている。
【0004】
前記透明導電性フィルムとしては、押圧操作時の耐擦傷性や打点特性に耐えられるように、透明フィルム基材の一方の面に透明導電性薄膜を設けた導電性フィルムに、さらに粘着剤層を介して、前記透明フィルム基材の他方の面には外表層にハードコート層を有する透明基体を貼りあわせた透明導電性積層フィルムが提案されている。
【0005】
前記透明導電性積層フィルムは、タッチパネルなどの電子機器に組み込まれる際には、透明導電性膜の端部に銀ペーストからなるリードが設けられる。前記リードは、導電性ペーストを100〜150℃程度で1〜2時間程度、加熱して硬化処理する方法などにより形成される。
【0006】
しかし、透明導電性積層フィルムに用いられる透明フィルム基材として、ポリエチレンテレフタレート等の透明樹脂フィルムが用いられる場合には、透明フィルム基材中に含まれている低分子成分(オリゴマー)が加熱により析出し、透明導電性積層フィルムが白化する問題がある。その結果、前記透明導電性積層体には、画面の視認不良が生じる問題がある。かかる問題に対しては、透明フィルム基材にオリゴマー防止層を設けることが提案されている(特許文献1乃至3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−013504号公報
【特許文献2】特開平7−013695号公報
【特許文献3】特開2003−246972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記オリゴマー防止層の形成材料としては各種の材料が提案されている。しかし、透明フィルム基材にオリゴマー防止層を設けた場合には、オリゴマー防止層の形成材料によっては、透明フィルム基材とオリゴマー防止層との密着性や、透明導電性積層体における透明フィルム基材と透明基体との層間密着性が十分ではない場合があった。一方、タッチパネルなどの電子機器は薄型化が進んでおり、透明導電性積層体にも薄型化が求められている。
【0009】
本発明は、第一透明樹脂フィルム、オリゴマー防止層および粘着剤層がこの順に積層されている粘着剤層付き透明樹脂フィルムであって、オリゴマー防止層に要求される、オリゴマー防止性を満足するとこができ、かつ、オリゴマー防止層に係る密着性が良好な粘着剤層付き透明樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、前記粘着剤層付き透明樹脂フィルムを用いた積層フィルムを提供すること、さらには、当該積層フィルムを透明導電性フィルムとして用いたタッチパネルを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、第一透明樹脂フィルム、オリゴマー防止層および粘着剤層がこの順に積層されている粘着剤層付き透明樹脂フィルムであって、
前記オリゴマー防止層は、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物の硬化物により形成されたものであり、
かつ前記オリゴマー防止層の厚みが5〜35nmであることを特徴とする粘着剤層付き透明樹脂フィルム、に関する。
【0013】
前記粘着剤層付き透明樹脂フィルムは、前記第一透明樹脂フィルムとしては、ポリエステル系樹脂フィルムを用いる場合に好適に適用できる。
【0014】
前記粘着剤層付き透明樹脂フィルムにおいて、前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤層であることが好ましい。
【0015】
また本発明は、前記粘着剤層付き透明樹脂フィルムと第二透明樹脂フィルムとが、粘着剤層付き透明樹脂フィルムの粘着剤層を介して貼り合せられていることを特徴とする積層フィルム、に関する。
【0016】
前記積層フィルムにおいて、前記第二透明樹脂フィルムが、前記粘着剤層に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜を有する透明導電性フィルムを用いることができる。
【0017】
また本発明は、前記透明導電性フィルムを有する積層フィルムを含有するタッチパネル、に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の粘着剤層付き透明樹脂フィルムにおけるオリゴマー防止層は、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物の硬化物により形成されたものであることから、好適なオリゴマー防止性を満足することができる。従って、粘着剤層付き透明樹脂フィルムに加熱処理が施された場合においても、第一透明樹脂フィルム中のオリゴマーが粘着剤層側に析出することを防ぐことができ、粘着剤層付き透明樹脂フィルムの白化を抑えて、良好な外観を維持することができ、さらには、当該粘着剤層付き透明樹脂フィルムを用いた積層フィルムの白化を抑えて、良好な外観を維持することができる。
【0019】
また前記オリゴマー防止層は、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物から形成されたものであるが、前記オリゴマー防止層の厚みを5〜35nmの範囲に制御していることから、前記オリゴマー防止層は第一透明樹脂フィルムや粘着剤層との間の投錨力が良好である。そのため、本発明の粘着剤層付き透明樹脂フィルムから形成した積層フィルムにおいても第一透明樹脂フィルムと第二透明樹脂フィルムとの層間密着性が良好であり、加湿密着性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明の粘着剤層付き透明樹脂フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【図1B】本発明の粘着剤層付き透明樹脂フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【図2A】本発明の積層フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【図2B】本発明の積層フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の粘着剤層付き透明樹脂フィルムおよび積層フィルムに係る実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1(A)、(B)は、本発明の粘着剤層付き透明樹脂フィルム1の一例を示す断面図である。図1(A)に示すように、粘着剤層付き透明樹脂フィルム1(A)は、第一透明樹脂フィルム10、オリゴマー防止層11および粘着剤層12がこの順で積層されている。なお、図1(B)に示す粘着剤層付き透明樹脂フィルム1(B)は、粘着剤層付き透明樹脂フィルム1(A)において、第一透明樹脂フィルム10を基準として、機能層(例えば、ハードコート層)13が、粘着剤層12とは反対側に設けた場合である。その他、機能層13は、オリゴマー防止層11と粘着剤層12との間に設けることもできる。
【0022】
図2は、本発明の積層フィルム2の一例を示す断面図である。図2Aの積層フィルム2(A)は、図1Bに示す粘着剤層付き透明樹脂フィルム1(B)の粘着剤層12に、第二透明樹脂フィルム20を積層した場合である。図2Bの積層フィルム2(B)は、図2Aにおいて、第二透明樹脂フィルム20の前記粘着剤層12に貼り合せない他方の片面に、アンダーコート層21を介して、透明導電性膜22を有する場合であり、図2Bの積層フィルム2(B)は透明導電性フィルムとして用いることができる。なお、図2Bでは、アンダーコート層21を介して、透明導電性膜22が設けられているが、透明導電性膜22は、アンダーコート層21を介することなく、直接、第二透明樹脂フィルム20に設けることができる。なお、図2A、Bの態様は、図1Aに示す粘着剤層付き透明樹脂フィルム1(A)についても同様に適用できる。
【0023】
まず、本発明の粘着剤層付き透明樹脂フィルム1について説明する。粘着剤層付き透明樹脂フィルム1は、第一透明樹脂フィルム10の片面に、オリゴマー防止層11および粘着剤層12をこの順で有する。
【0024】
第一透明樹脂フィルム10の材料としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチック材料があげられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂およびポリエーテルスルホン系樹脂である。
【0025】
また、特開2001−343529号公報(WO10/37007)に記載の、例えば、側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換及び/又は非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物が挙げられる。具体的には、イソブチレン及びN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物を、前記樹脂フィルムの材料として用いることができる。
【0026】
第一透明樹脂フィルム10は、少なくとも一方向に延伸処理されたものを用いることができる。延伸処理は特に限定されることはなく、一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸等の各種の延伸処理があげられる。第一透明樹脂フィルム10としては、機械的な強度の点からは二軸延伸処理された樹脂フィルムが好ましい。
【0027】
前記第一透明樹脂フィルム10は、通常、1層のフィルムにより形成されている。第一透明樹脂フィルム10の厚さは、通常、90〜300μmであるのが好ましく、より好ましくは100〜250μmである。
【0028】
オリゴマー防止層11は、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物の硬化物により形成されたものである。オリゴマー防止層11は、第一透明樹脂フィルム10中の移行成分、例えば、ポリエステル系樹脂フィルム中の移行成分であるポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する等の機能を有する。
【0029】
オリゴマー防止層11の厚さは、オリゴマー防止層11に十分な層間密着性とオリゴマー移行機能を付与するため、5〜35nmである。オリゴマー防止層11の厚さを5nm以上とすることで、オリゴマー移行機能を付与している。一方、オリゴマー防止層11の厚さが、大きくなりすぎる場合には、オリゴマー防止層11と第一透明樹脂フィルム1や粘着剤層12との密着性が不十分となることから、オリゴマー防止層11の厚さは35nm以下に制御している。オリゴマー防止層11の厚さは5〜25nmであるのが好ましく、さらには10〜25nmであるのが好ましい。
【0030】
アルコキシシランは、一般的にゾル−ゲル法に用いられているものを使用できる。例えば、一般式(1):R1Si(OR4−n(式中、xは0〜2の整数示し、R1はエポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、メルカプト基等の官能基を持っていてもよい低級アルキル基、アリル基、アリール基を示し、同一でも異なっていてもよい。Rは水素原子または低級アルキル基を示す。)で表される化合物を例示できる。なお、低級アルキル基とは炭素数6以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。
【0031】
前記一般式(1)で表わされるアルコキシシランの具体的としては、x=0の場合には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類が挙げられ;x=1の場合には、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類が挙げられ;x=2の場合には、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−グリシドシキプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類が挙げられる。なお、アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン類および/またはトリアルコキシシラン類が好ましい。これらアルコキシシランは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
アルコキシシランの部分縮合物とは、前記アルコキシシランの1種または2種以上が、少なくとも2分子以上加水分解した部分縮合である。アルコキシシランの縮合物の縮合度は特に制限されないが、取り扱い性が良好なことから、アルコキシシランの縮合物1分子あたりSi原子を平均2〜8個含有する縮合物が好ましい。なお、当該縮合物の構造は特に限定されず、直鎖構造、分岐構造のいずれでもよく、分岐鎖同士間に、または分岐鎖と主鎖との間に酸素原子を介する結合が存在してもよい。
【0033】
オリゴマー防止層11は、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物から得られた硬化物により形成される。アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物は、加水分解縮合反応により硬化をするため、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物には、前記硬化を促進させるために適当な触媒を含有さすることができる。また、前記硬化は常温または加熱下にて行うことができる。また、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物に光酸発生剤または光塩基発生剤を含有させることにより、光照射下にて硬化を促進させることができる。
【0034】
前記触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類、前記金属アルコキシドとの金属キレート化合物等が挙げられる。
【0035】
前記光酸発生剤としては、例えば、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンゼン)ホスフェート、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。前記光塩基発生剤としては、例えば、ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、ジ(メトキシベンジル)ヘキサメチレンカルバメート等が挙げられる。
【0036】
アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物の加水分解縮合反応は、無溶媒下で行ってもよく、溶媒に溶解した溶液中で行ってもよい。前記溶媒として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−へキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン等のケトン類;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−ペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロへキサノール等の1価アルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族類;ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセチルアセトン類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類等などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
オリゴマー防止層11は、上記アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物の硬化物により形成されているが、当該形成方法としては、例えば、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物と触媒等を含有する組成物またはその溶液を混合することにより、加水分解縮合により得られたシリカゾルを、第一透明樹脂フィルム10に塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。なお、前記シリカゾルとしては、コルコートシリーズ(コルコート社製)等の市販品を用いることができる。前記シリカゾルの塗布方法としては、各種の方法を採用することができ、例えば、スプレーコート、グラビアコート、ロールコート、バーコート、ダイコート等の公知の方法が挙げられる。前記塗布は、最終的に得られるオリゴマー防止層11の厚さが5〜35nmになるように行われる。
【0038】
その他、オリゴマー防止層11は、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物と触媒等を含有する組成物またはその溶液を、直接、第一透明樹脂フィルム10に塗布し、硬化、乾燥させる方法が挙げられる。
【0039】
また、前記組成物は、適宜に溶媒により希釈した組成物溶液として用いることができる。前記組成物に、溶媒を含有する組成物溶液は、第一透明樹脂フィルム10に塗工して塗工層を形成した後、溶媒を乾燥してから、硬化される。また、前記組成物が光酸発生剤または光塩基発生剤を含有する場合には、適宜に、光照射が施される。
【0040】
また、粘着剤層付き透明樹脂フィルム1は、第一透明樹脂フィルム10のオリゴマー防止層11を設けない側の面には、機能層(ハードコート層)13を設けることができる。
【0041】
機能層13としては、例えば、外表面の保護を目的としたハードコート層を設けることができる。ハードコート層の形成材料としては、例えば、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。ハードコート層の厚さとしては、0.1〜30μmが好ましい。厚さを0.1μm以上とすることが、硬度を付与するうえで好ましい。一方、厚さが30μmを超えると、ハードコート層にクラックが発生したり、粘着剤層付き透明樹脂フィルム1全体にカールが発生するおそれがある。
【0042】
また、前記機能層13としては、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けることができる。また前記ハードコート層上に、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。防眩処理層の厚みは0.1〜30μmが好ましい。反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止層は複数層を設けることができる。
【0043】
粘着剤層12としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0044】
また、前記粘着剤層12には、ベースポリマーに応じた架橋剤を含有させることができる。また、粘着剤層12には必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性が付与された粘着剤層12とすることもできる。
【0045】
なお、前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、酸化カルシウム、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性の無機系微粒子や、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタンの如き適宜なポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子など適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。
【0046】
前記粘着剤層12は、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた粘着剤溶液(固形分濃度:10〜50重量%程度)から形成される。前記溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の粘着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
【0047】
粘着剤層12の形成は、前記オリゴマー防止層11に積層することにより行う。形成方法としては、特に制限されず、粘着剤(溶液)を塗工し乾燥する方法、粘着剤層を設けた離型フィルムにより転写する方法等があげられる。塗工法は、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。
【0048】
前記粘着剤層12は、粘着剤層付き透明樹脂フィルム1と下記に示す第二透明樹脂フィルム20(透明導電性フィルムの場合を含む)を接着した後に得られる積層フィルム2において、そのクッション効果により、例えば、第二透明樹脂フィルム20の一方の面に設けられた透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしての打点特性、いわゆるペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させる機能を有する。この機能をより良く発揮させる観点から、粘着剤層12の弾性係数を1〜100N/cmの範囲、厚さを1μm以上、通常5〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。前記厚さであると上記効果が十分発揮され、第二透明樹脂フィルム20と粘着剤層付き透明樹脂フィルム1の粘着剤層12との密着力も十分である。上記範囲よりも薄いと上記耐久性や密着性が十分確保できず、また上記範囲よりも厚いと透明性などの外観に不具合が発生してしまうおそれがある。
【0049】
前記の弾性係数が1N/cm未満であると、粘着剤層12は非弾性となるため、加圧により容易に変形して第二透明樹脂フィルム20、さらには第二透明樹脂フィルム20に設けられる透明導電性膜22に凹凸を生じさせる。また、加工切断面からの粘着剤のはみ出しなどが生じやすくなり、そのうえ透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしての打点特性の向上効果が低減する。一方、弾性係数が100N/cmを超えると、粘着剤層12が硬くなり、そのクッション効果が期待できなくなるため、透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしてのペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させることが困難になる傾向がある。
【0050】
また、粘着剤層12の厚さが1μm未満となると、そのクッション効果が期待できないため、透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしてのペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させることが困難になる傾向がある。その一方、厚くしすぎると、透明性を損なったり、粘着剤層12の形成や粘着剤層付き透明樹脂フィルム1の粘着剤層12と第二透明樹脂フィルム20の貼り合わせ作業性、更にコストの面でも好結果を得にくい。
【0051】
この様な粘着剤層12を介して貼り合わされる積層フィルム2(B)は、良好な機械的強度を付与し、ペン入力耐久性および面圧耐久性の他に、とくに、カールなどの発生防止に寄与するものである。
【0052】
前記オリゴマー防止層11と前記粘着剤層12と間の密着力は1.5N/25mm以上あるのが好ましい。前記密着力は2N/25mm以上、さらには3N/25mm以上、さらいは4N/25mm以上あることが好ましい。前記密着力を4N/25mm以上とすることで、例えば、得られる透明導電性積層体をタッチパネルに適用した場合に、ペン入力で押圧される際の粘着剤層の変形を抑えることができる。
【0053】
前記粘着剤3は、前記貼り合せに用いられるまで、離型フィルムで保護することができる。離型フィルムとしては、粘着剤層12と接着する面に移行防止層及び/又は離型層が積層されたポリエステルフィルム等を用いるのが好ましい。
【0054】
前記離型フィルムの総厚は、30μm以上であることが好ましく、60〜100μmの範囲内であることがより好ましい。粘着剤層12の形成後、ロール状態にて保管する場合に、ロール間に入り込んだ異物等により発生することが想定される粘着剤層12の変形(打痕)を抑制する為である。
【0055】
前記移行防止層としては、ポリエステルフィルム中の移行成分、特に、ポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する為の適宜な材料にて形成することができる。移行防止層の形成材料として、無機物若しくは有機物、又はそれらの複合材料を用いることができる。移行防止層の厚さは、0.01〜20μmの範囲で適宜に設定することができる。移行防止層の形成方法としては特に限定されず、例えば、塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法などが用いられる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法等も用いることができる。
【0056】
前記離型層としては、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブテン等の適宜な剥離剤からなるものを形成することができる。離型層の厚さは、離型効果の点から適宜に設定することができる。一般には、柔軟性等の取り扱い性の点から、該厚さは20μm以下であることが好ましく、0.01〜10μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜5μmの範囲内であることが特に好ましい。離型層の形成方法としては特に制限されず、前記移行防止層の形成方法と同様の方法を採用することができる。
【0057】
前記塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法に於いては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の電離放射線硬化型樹脂や前記樹脂に酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、マイカ等を混合したものを用いることができる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法又は電気メッキ法を用いる場合、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト又はスズやこれらの合金等からなる金属酸化物、ヨウ化鋼等からなる他の金属化合物を用いることができる。
【0058】
本発明の積層フィルム2は、前記粘着剤層付き透明樹脂フィルム1の粘着剤層12に、第二透明樹脂フィルム20を積層することで形成することができる。
【0059】
第二透明樹脂フィルム20は、前記粘着剤層12に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜22を設けることができる。
【0060】
粘着剤層12の構成材料である粘着剤の種類によっては、適当な粘着用下塗り剤を用いることで投錨力を向上させることが可能なものがある。従って、そのような粘着剤を用いる場合には、粘着用下塗り剤を用いることが好ましい。粘着用下塗り剤は、通常、第二透明樹脂フィルム20の側に設けられる。
【0061】
前記粘着用下塗り剤としては、粘着剤の投錨力を向上できる層であれば特に制限はない。具体的には、例えば、同一分子内にアミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等の反応性官能基と加水分解性のアルコキシシリル基とを有するシラン系カップリング剤、同一分子内にチタンを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するチタネート系カップリング剤、及び同一分子内にアルミニウムを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するアルミネート系カップリング剤等のいわゆるカップリング剤、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エステルウレタン系樹脂等の有機反応性基を有する樹脂を用いることができる。工業的に取扱い易いという観点からは、シラン系カップリング剤を含有する層が特に好ましい。
【0062】
第二透明樹脂フィルム20としては、前記第一透明樹脂フィルム10と同様の樹脂フィルムを例示できる。第二透明樹脂フィルム20は、第一透明樹脂フィルム10と同じ材料を用いることができる。前記第二透明樹脂フィルム20の厚みは、通常、10〜200μmであり、好ましくは20〜100μmである。
【0063】
第二透明樹脂フィルム20は、前記粘着剤層12に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜22を設けることができる。
【0064】
第二透明樹脂フィルム20に透明導電性膜22を設けて透明導電性フィルムを作成する場合には、第二透明樹脂フィルム20の厚さは10〜40μmであることが好ましく、20〜30μmであることがより好ましい。透明導電性フィルムに用いる第二透明樹脂フィルム20の厚みが10μm未満であると、第二透明樹脂フィルム20の機械的強度が不足し、この第二透明樹脂フィルム20をロール状にして、透明導電性膜22を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが40μmを超えると、透明導電性膜22の製膜加工において第二透明樹脂フィルム20の投入量を低減させ、またガスや水分の除去工程に弊害を生じ、生産性を損なうおそれがある。また、透明導電性積層フィルムの薄型化が困難となる。
【0065】
前記第二透明樹脂フィルム10には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる透明導電性膜22またはアンダーコート層21の前記第二透明樹脂フィルム20に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電性膜22またはアンダーコート層21を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0066】
透明導電性膜22の構成材料としては特に限定されず、例えば酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられる。透明導電性膜22として、前記金属酸化物により形成する場合には、前記材料中の酸化スズを制御する(所定量となるように含有させる)ことにより、透明導電性膜22を非晶質にすることができる。非晶質透明導電性膜を形成する場合、当該金属酸化物は、酸化インジウム90〜99重量%および酸化スズ1〜10重量%を含有することが好ましい。さらには、酸化インジウム95〜98重量%および酸化スズ2〜5重量%を含有することが好ましい。なお、透明導電性膜22を形成した後、必要に応じて、100〜150℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化することができる。また、前記非晶質透明導電性薄膜の結晶質化は、本発明の積層フィルムを形成した後に、加熱処理を施すことにより行うことができる。結晶化の加熱温度は、前記アニール処理と同様の温度(100〜150℃)を採用することができる。
【0067】
なお、本発明における「非晶質」とは、電界放出型透過型電子顕微鏡(FE−TEM)により、透明導電性薄膜を表面観察した際に、当該透明導電性薄膜の表面全体において、多角形又は長円形状の結晶が占める面積割合が50%以下(好ましくは0〜30%)であることをいう。
【0068】
透明導電性膜22の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗を1×103Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さ10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。厚さが15nm未満であると表面電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、35nmを超えると透明性の低下などをきたしてしまう。
【0069】
透明導電性膜22の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0070】
アンダーコート層21は、無機物、有機物、または無機物と有機物との混合物により形成することができる。アンダーコート層21は一層または2層以上の複数層で形成することができ、複数層の場合には、これらの各層を組み合わせることができる。
【0071】
例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の括弧内の数値は光の屈折率である〕があげられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。特に、SiO2が好適である。上記の他、酸化インジウム100重量部に対して、酸化セリウムを10〜40重量部程度、酸化スズを0〜20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
【0072】
無機物により形成されたアンダーコート層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスとして、またはウェット法(塗工法)などにより形成できる。アンダーコート層を形成する無機物としては、前述の通り、SiOが好ましい。ウェット法では、シリカゾル等を塗工することによりSiO2膜を形成することができる。
【0073】
また有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などがあげられる。これら有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0074】
アンダーコート層21の厚さは、特に制限されるものではないが、光学設計、前記第二透明樹脂フィルム20からのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1〜300nm程度であり、好ましくは5〜300nmである。なお、アンダーコート層21を2層以上設ける場合、各層の厚さは、5〜250nm程度であり、好ましくは10〜250nmである。
【0075】
また、図2Bに示す積層フィルム2(B)を製造した場合において、当該積層フィルム2(B)の透明導電性膜22が、金属酸化物により形成された非晶質透明導電性薄膜の場合には、前記非晶質透明導電性薄膜を加熱により結晶質化することができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
<オリゴマー防止層の厚みの測定>
リガク(株)製の蛍光X線分析装置により、Si強度比を測定して作製した検量線から算出した。
【0078】
実施例1
【0079】
(オリゴマー防止層形成材料を調製)
シリカゾル(コルコート(株)製のコルコートP)を固形分濃度が2%になるようにエタノールで希釈した溶液を用いた。
【0080】
(オリゴマー防止層の形成)
第一透明樹脂フィルムである、厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム1という)の一方の面に、前記オリゴマー防止層形成材料をシリカコート法により塗布し、その後、150℃で2分間加熱して、乾燥、硬化させて、厚さ20nmのオリゴマー防止層を形成して、オリゴマー防止層を有するPETフィルム1を得た。
【0081】
(粘着剤層付きPETフィルム1の作成)
上記オリゴマー防止層を有するPETフィルム1のオリゴマー防止層に粘着剤層を形成して、粘着剤層付きハードコートフィルムを得た。前記粘着剤層は、厚さ20μm、弾性係数10N/cmの透明なアクリル系の粘着剤層(屈折率1.47)である。粘着剤層組成物としては、アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5のアクリル系共重合体100重量部に、イソシアネート系架橋剤を1重量部配合してなるものを用いた。
【0082】
(透明導電性フィルムの作成)
第二透明樹脂フィルムである、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム2という)の一方の面に、アルゴンガス80%と酸素ガス20%とからなる0.4Paの雰囲気中で、PETフィルム2の温度が100℃の条件下で、放電出力:6.35W/cm、酸化インジウム90重量%、酸化スズ10重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ25nmのITO膜を形成して、透明導電性フィルムを得た。上記ITO膜は、非晶質であった。
【0083】
(透明導電性積層フィルムの作成)
粘着剤層付きPETフィルム1の粘着剤層に、透明導電性フィルムにおいてPETフィルム2の透明導電性膜を形成していない側の面を貼り合せて、透明導電性積層フィルムを得た。得られた透明導電性積層フィルムに対して、140℃で90分間の加熱処理を施して、非晶質のITO膜を結晶化した。
【0084】
実施例2〜3、比較例1、2
実施例1において、オリゴマー防止層の形成にあたり、オリゴマー防止層の厚さを表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、オリゴマー防止層を有するPETフィルム1を得た。また、実施例1と同様にして、当該粘着剤層付きPETフィルム1を得て、さらに、実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。
【0085】
実施例および比較例で得られた、オリゴマー防止層を有するPETフィルム1および透明導電性積層フィルムについて、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
<オリゴマー防止層と粘着剤層と間の密着性>
オリゴマー防止層を有するPETフィルム1を50mm×50mmに切り出したものをサンプルとした。当該サンプルを、実施例1で用いた粘着剤により形成した厚さ5μmの粘着剤層を介して、オリゴマー防止層側が表側になるように、PETフィルム1側を、厚さ5mmのガラス板に貼り合わせた。次いで、オリゴマー防止層に、カッターナイフにより1〜2mm感覚の碁盤目状の切り傷をそれぞれ縦横11本付け、合計100個のマス目を作った。その碁盤目の上に、ニチバン製セロテープ(品番No.405,長さ20mm以上)を貼り付けた後、テープの上からヘラで擦ってオリゴマー防止層に完全に密着させた。その後、テープの端をつかみ、90°に近い角度にてすばやく引き剥がし、碁盤目のオリゴマー防止層の離脱状態を目視確認し、剥がれの状態を下記基準で判定した。
○:剥がれが見られない。
△:マス目の1/4未満に剥がれが見られる。
×:マス目の1/4以上に剥がれが見られる。
【0087】
<オリゴマー防止性>
透明導電性積層フィルムを50mm×50mmに切り出したものをサンプルとした。当該サンプルを、140℃および150℃の加熱環境下にそれぞれ2時間に保存した。150℃で2時間の環境下での保存は過酷試験になる。前記加熱処理を行ったサンプルを、さらに、80℃の加熱環境下および60℃、95%RHの加湿環境下にそれぞれ240時間投入した後に、目視(CCD顕微鏡)にて、オリゴマーの結晶(サイズ10μm以上)の観察を行い、下記基準で評価した。
○:オリゴマーの結晶が見られなかった。
△:オリゴマーの結晶がわずかに見られた。
×:オリゴマーの結晶が多数見られた。
【0088】
<層間密着性>
透明導電性積層フィルムを100mm×100mmに切り出したものをサンプルとした。当該サンプルを、150℃で1時間加熱した後に、60℃、95%RHの加湿環境下に500時間投入した。その後、前記処理されたサンプルの端部を手で剥がし、(株)島津製作所製の引っ張り試験機(製品名:テンシロン)によって、PETフィルム1の方を固定し、一方、PETフィルム2(透明導電性フィルム)の方を10m/minの速度で180°方向に剥離するときに要する層間の密着力(N/10mm)を測定し、下記の基準で判定した。
◎:密着力が2.5N/10mm以上
○:密着力が1.5〜2.5N/10mm未満
○:密着力が1.5N/10mm未満
【0089】
【表1】

【符号の説明】
【0090】
1 粘着剤層付き透明樹脂フィルム
10 第一透明樹脂フィルム
11 オリゴマー防止層
12 粘着剤層
13 機能層(ハードコート層)
2 積層フィルム
20 第二透明樹脂フィルム
21 アンダーコート層
22 透明導電性膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一透明樹脂フィルム、オリゴマー防止層および粘着剤層がこの順に積層されている粘着剤層付き透明樹脂フィルムであって、
前記オリゴマー防止層は、アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物の硬化物により形成されたものであり、
かつ前記オリゴマー防止層の厚みが5〜35nmであることを特徴とする粘着剤層付き透明樹脂フィルム。
【請求項2】
前記第一透明樹脂フィルムが、ポリエステル系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1記載の粘着剤層付き透明樹脂フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤層であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の粘着剤層付き透明樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤層付き透明樹脂フィルムと第二透明樹脂フィルムとが、前記粘着剤層付き透明樹脂フィルムの粘着剤層を介して貼り合せられていることを特徴とする積層フィルム。
【請求項5】
前記第二透明樹脂フィルムは、前記粘着剤層に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜を有する透明導電性フィルムであることを特徴とする請求項4記載の積層フィルム。
【請求項6】
請求項5記載の透明導電性フィルムを有する積層フィルムを含有するタッチパネル。


【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2012−223904(P2012−223904A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90873(P2011−90873)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】