説明

粘着剤組成物及び粘着シート

【課題】優れた帯電防止性または導電性ならびに再剥離性を有する粘着剤組成物、及び粘着シート、詳しくは半導体ウエハ加工などに用いられる帯電防止性または導電性ならびに再剥離性を有する粘着剤組成物及び粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着剤中に、平均外周径が1〜1000nm、平均長さが0.01〜100μmであるカーボンナノ材料および23℃のおける粘度が7000〜18000mPa・sであるエポキシ基含有化合物が含有されてなる粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び粘着シートに関し、詳しくは半導体ウエハ加工などに用いられる帯電防止性または導電性ならびに再剥離性を有する粘着剤組成物及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気部品、電子部品、半導体部品を生産する際に、ダイシングなどの処理工程において部品の固定や、回路などの保護を目的として粘着シートが使用されている。このような粘着シートとしては、基材フィルムに再剥離性のアクリル系粘着剤層が設けられた粘着シートや、貼付後の処理工程においては強い剥離抵抗性があるが、剥離時には小さい力で剥離可能なエネルギー線架橋型再剥離性粘着剤層が設けられた粘着シートなどがある。
【0003】
これらの粘着シートは、所定の処理工程が終了すると剥離されるが、このとき部品と粘着シートとの間に剥離帯電と呼ばれる静電気が発生する。この静電気による被着体への悪影響(例えば、回路の破壊)を抑えるため、基材フィルムの背面側を帯電防止処理した粘着シートや、粘着剤層へ帯電防止剤を添加混合した粘着シート、基材フィルムと粘着剤層との間に帯電防止中間層を設けた粘着シートが使用されている。
【0004】
ところが、回路を形成する部品の基板がセラミックやガラスなどの絶縁材料である場合には、静電気の発生量が大きく、減衰に時間がかかる。このような場合には、前記粘着シートを用いても帯電防止性の効果が十分でなく、回路が破壊されてしまう可能性が大きかった。このため、上記部品の生産工程においては、例えば、イオナイザーなどの静電気除去装置をさらに使用して周囲環境における静電気の発生を抑えている。
【0005】
しかしながら、上記の対策では十分な帯電防止効果が得られず、生産性が低く、また保護性も十分でないという問題があった。また、粘着シートの剥離帯電の防止には、基材フィルム側ではなく、粘着剤側に処理するのが効果的と考えられている。従来の帯電防止粘着剤としては、銅粉、銀粉、ニッケル粉、アルミニウム粉などの金属粉などの導電性物質を粘着剤中に分散させたものが多用されている。しかし、かかる帯電防止粘着剤において、優れた導電性を得るために、導電性物質粒子相互の接触が密になるように導電性物質を多量に含有させると粘着力が低下してしまう。一方、粘着力を高めるために導電性物質の含有量を低減させると、上記各接触が不十分となって、導電性が低下するという二律背反の問題があった。
【0006】
導電性を向上するため、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルの何れか一方又は双方を粘着剤中に混合させた導電性粘着剤を、金属蒸着織布に塗布した粘着シートが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載されている粘着シートは、支持体層が金属蒸着織布であり用途が限定され、その導電性粘着剤は、汎用粘着シートに支持体として使用される樹脂フィルム材料への適応がなされておらず、支持体として樹脂フィルムを用いると、導電性が十分に発揮されない可能性がある。また、カーボンナノチューブは強い凝集性を示すので、カーボンナノチューブを単独で樹脂に混合させても、均一な分散が維持されず、性能が十分に発揮されない問題があった。
【0007】
また、特許文献2には、導電性ポリマーとカーボンナノチューブとを含む導電層を設けた表面保護フィルムが開示されている。しかし、導電層に粘着性を付与することは記載がなく、粘着シートに関する教示はない。特許文献3には、親水性ポリマーを配合することで帯電防止性が付与された帯電防止性粘着フィルムが開示されている。しかし、この粘着フィルムは、親水性ポリマーを含有するため、水に触れるような状況、たとえば水を噴霧しつつウエハのダイシングを行うような半導体加工プロセス等では、使用することができない。
【0008】
また、上記したように、カーボンナノ材料は強い凝集性を示すので、均一な分散が維持されず、性能が十分に発揮されない問題がある。この問題を解消するため、特許文献4、5では、分散剤を併用してカーボンナノ材料を粘着剤中に分散させる方法も提案されている。しかし、分散剤はイオン性のものが多く、半導体加工プロセスに使用されると半導体を汚染するおそれがある。また、分散剤の分子量が大きくなるほど、粘着剤との相溶性が悪化する傾向があり、粘着物性を不安定化しやすいという問題があった。
【0009】
なお、特許文献6には、ダイシングシートの粘着剤層に遊離のエポキシ基含有化合物を配合することで、粘着剤層とウエハ(チップ)との過度の密着が防止され、チップのピックアップ不良が低減されることが教示されている。しかし、特許文献6においては、前述したような剥離帯電にともなう諸問題については認識されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−172582号公報
【特許文献2】特開2007−237580号公報
【特許文献3】特開2007−291376号公報
【特許文献4】特開2010−163586号公報
【特許文献5】特開2010−163587号公報
【特許文献6】特開2008−192917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、優れた帯電防止性または導電性ならびに再剥離性を有する粘着剤組成物、及び粘着シートを提供することを目的とする。さらに、エネルギー線を照射して硬化する場合に、その硬化後も優れた帯電防止性または導電性ならびに再剥離性を有する粘着剤組成物、及び粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、エポキシ基含有化合物をカーボンナノ材料の分散剤として使用することを着想するに至った。エポキシ基含有化合物は、一般に粘着剤として使用されるアクリル重合体との相溶性に優れ、またダイシングシートの粘着剤層に配合した場合には、被着体との過度の密着を防止するという作用も期待される。したがって、エポキシ基含有化合物がカーボンナノ材料の分散剤として使用できる場合には、上述の諸問題を一挙に解消できる可能性がある。本発明は、このような着想に基づいて完成されるに至った。
【0013】
上記のような着想に基づいて完成された本発明は、下記の事項を要旨として含む。
(1)粘着剤中に、カーボンナノ材料およびエポキシ基含有化合物が含有されてなる粘着剤組成物。
(2)エポキシ基含有化合物の23℃のおける粘度が7000〜18000mPa・sである(1)に記載の粘着剤組成物。
(3)カーボンナノ材料の平均外周径が1〜1000nm、平均長さが0.01〜100μmである(1)または(2)に記載の粘着剤組成物。
(4)粘着剤が、エネルギー線重合性基を有する化合物を含む(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(5)さらに、光重合開始剤を含む(4)に記載の粘着剤組成物。
(6)カーボンナノ材料を粘着剤組成物の固形分中0.01〜20質量%含有している(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(7)基材シートの片面又は両面に、(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が設けられている粘着シート。
(8)粘着シートが半導体ウエハ加工に用いられるものである(7)に記載の粘着シート。
(9)半導体ウエハ加工が、半導体ウエハをダイシングして半導体チップを得る工程および得られた半導体チップをピックアップする工程を含む(8)に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、導電材であるカーボンナノ材料の分散性が高く、優れた帯電防止性または導電性を有し、また、エネルギー線を照射して硬化する場合にも、その硬化後も優れた帯電防止性または導電性を有する。さらに、本発明の粘着剤組成物にはエポキシ基含有化合物が含まれるため、半導体ウエハ等の被着体に貼付された場合であっても、エポキシ基含有化合物の作用により、被着体と粘着剤層との過度の密着が防止され、優れた再剥離性を示す。すなわち、加工対象であるウエハの裏面と粘着剤層との相互作用が小さくなり、ウエハ裏面と粘着剤層とが過度に接着せず、ダイシング工程後のチップのピックアップ工程におけるピックアップ不良を低減することができ、半導体チップの製造を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の粘着剤組成物には、粘着剤と、カーボンナノ材料と、エポキシ基含有化合物が含有されており、粘着剤中に、カーボンナノ材料が均一に分散されている。ここで、均一に分散とは、粘着剤組成物及びそれを用いて形成された粘着剤層において、目視でカーボンナノ材料が凝集することなく、分散している状態をいう。カーボンナノ材料が均一に分散していると、良好な帯電防止性又は導電性を発揮する。ここで、帯電防止性を有するとは、表面抵抗率が1013Ω/□未満であることをいい、導電性を有するとは、表面抵抗率が10Ω/□未満であることをいう。なお、粘着剤組成物がエネルギー線重合性基を有する化合物を含む場合、粘着剤組成物の硬化前及び/又は硬化後の表面抵抗率が前記の範囲であれば帯電防止性又は導電性を有するものとする。
【0016】
粘着剤は、特に限定はされないが、カーボンナノ材料の分散性向上の観点から、有機溶剤可溶性粘着剤であることが好ましい。このような粘着剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、ポリビニルエーテル樹脂系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤などが挙げられる。
【0017】
アクリル樹脂系粘着剤の具体例は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主剤とする。(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種以上の単量体と、必要に応じて、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシブチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有化合物;アクリルアミドなどのアミド基含有化合物;スチレン、ビニルピリジンなどの芳香族化合物などの共重合性単量体の1種以上の単量体の共重合体などが挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体における(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有割合は、50〜98質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、70〜93質量%がさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、30万〜250万が好ましく、40万〜150万がより好ましく、45万〜100万が特に好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0019】
これらの粘着剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの粘着剤のうち、アクリル樹脂系粘着剤が好ましく用いられる。特に、アクリル系共重合体を、ポリイソシアナート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤などの架橋剤の1種以上で架橋させて得られるアクリル樹脂系粘着剤が好ましい。
【0020】
ポリイソシアナート系架橋剤としては、トリレンジイソシアナート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、キシリレンジイソシアナート(XDI)、水素化トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート及びその水添体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、ナフチレン−1,5−ジイソシアナート、ポリイソシアナートプレポリマー、ポリメチロールプロパン変性TDIなどが挙げられる。
【0021】
架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤の使用量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましい。
【0022】
カーボンナノ材料は、種々の形状のものが用いられる。具体例としては、例えば、カーボンナノコイル、単層又は多層のカーボンナノチューブなどが挙げられる。カーボンナノコイルの形状は、円筒状の中空の繊維状のものであってもよいし、中空でない繊維状のものであってもよい。その末端形状は必ずしも円筒状である必要はなく、例えば円錐状など変形していても差し支えない。さらに、その末端は、閉じた構造であってもよいし、開いた構造であってもよい。また、カーボンナノチューブの形状は、一般に円筒状の中空の繊維状のものであるが、その末端形状は必ずしも円筒状である必要はなく、例えば円錐状など変形していても差し支えない。さらに、カーボンナノチューブの末端は、閉じた構造であってもよいし、開いた構造であってもよい。カーボンナノチューブの市販品としては、イルジン・ナノテクノロジー社製の商品名「CVD−MWNT CM−95」、昭和電工社製の商品名「VGCF」、「VGCF−X」、「VGCF−H」、Nanocyl社製、商品名「Nanocyl NC−7000」などが好ましく挙げられる。カーボンナノ材料の含有量は、粘着剤組成物の固形分中0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましい。
【0023】
カーボンナノ材料は、好ましくは平均外周径が1〜1000nm、平均長さが0.01〜100μmであり、より好ましくは平均外周径が2〜500nm、平均長さが0.1〜50μmであり、さらに好ましくは平均外周径が5〜200nm、平均長さが0.5〜30μmである。
【0024】
ここで、平均外周径と平均長さは、電子顕微鏡を用いてカーボンナノ材料の任意の100点につき各々測定した値の平均値とする。なお、平均外周径の測定は、カーボンナノ材料の長さ方向中央部について行う。また、カーボンナノ材料の形状が同心円の断面形状を有する円筒形状である場合は、外周径は、外側の円周の直径を意味する。また、カーボンナノ材料は、平均外周径に対する平均長さの比(平均長さ/平均外周径)が、10〜6000であることが好ましく、20〜500であることがより好ましい。
【0025】
さらに、粘着剤層にはエポキシ基含有化合物が配合されてなる。本発明で使用されるエポキシ基含有化合物としては、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有し、たとえばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビフェニル型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0026】
エポキシ基含有化合物の23℃のおける粘度は、好ましくは7000〜18000mPa・s、さらに好ましくは8000〜16000mPa・s、特に好ましくは9000〜15000mPa・sである。エポキシ基含有化合物の23℃のおける粘度が上記範囲にあることで、カーボンナノ材料が粘着剤組成物中に、凝集せず均一に分散する。また、カーボンナノ材料を分散した後の粘着剤組成物において、カーボンナノ材料が沈降しづらく保管安定性に優れる。さらに、3本ロールミルでの混練が容易となる利点もある。
【0027】
また、エポキシ基含有化合物の分子量は、比較的低いことが好ましく、100〜2000、好ましくは200〜1000、特に好ましくは300〜500である。分子量がこの範囲であれば、貼付後のチップと粘着剤の界面にエポキシ基含有化合物が存在しやすくなり、チップのピックアップ力を低減させる効果をもつ。
【0028】
エポキシ基含有化合物の配合割合は、エポキシ基含有化合物の種類により一概には決定できないが、一般的には粘着剤層を構成する全成分の合計100質量部中(固形分中)に、0.1〜50質量部、好ましくは0.2〜25質量部、特に好ましくは0.5〜10質量部程度用いられる。
【0029】
上記エポキシ基含有化合物は、粘着剤層中に遊離の状態で含まれていることが好ましい。すなわち、粘着剤層は、好ましくは“遊離のエポキシ基含有化合物”を含んでいる。ここで、遊離の状態とは、エポキシ基含有化合物が(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の他の成分と実質的に未反応の状態にあることをいう。具体的には、粘着剤層のゾル成分のエポキシ基の滴定によって、未反応のエポキシ基含有化合物の有無が判断できる。
【0030】
したがって、本発明における粘着剤層には、上記エポキシ基含有化合物と反応する物質(エポキシ硬化剤)および反応を促進する物質(反応触媒)は実質的に含まれないことが好ましい。粘着剤層中にエポキシ硬化剤および反応触媒が含まれると、半導体ウエハの貼付後、エポキシ基含有化合物が反応して硬化し、遊離のエポキシ基含有化合物が減少するため本発明の効果が得られないことがある。また、半導体ウエハと粘着剤層とが接着することがあり、ピックアップ不良の原因となる。実質的に含まれることのないエポキシ硬化剤および反応触媒としては、アミン類、有機酸、酸無水物、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリアミドがあげられる。
【0031】
上記のように本発明における粘着剤層は、実質的に粘着剤、カーボンナノ材料およびエポキシ基含有化合物からなる。また、本発明における粘着剤層は、エネルギー線硬化性の粘着剤であってもよい。
【0032】
本発明の粘着剤組成物を、エネルギー線を照射することにより硬化させる場合は、粘着剤組成物中にエネルギー線重合性基を有する化合物を含有するエネルギー線硬化型粘着剤を用いる。
【0033】
エネルギー線重合性基を有する化合物としては、例えば、エネルギー線重合性基を有する粘着剤の主剤、エネルギー線重合性基を有するモノマーやオリゴマーなどが挙げられる。エネルギー線重合性基を有する粘着剤の主剤の例としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の水酸基やカルボキシル基(アクリル酸等)と反応する官能基及びエネルギー線重合性基を有する化合物を、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に付加させたものなどが挙げられる。このような付加する化合物の例としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナートやメタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0034】
エネルギー線硬化型粘着剤に含有させるエネルギー線重合性基を有するモノマー及び/又はオリゴマーとしては、例えば、多官能アクリレート、ウレタンアクリレートやポリエステルアクリレート等の2官能基以上を有する多官能のエネルギー線硬化型のアクリル系化合物が挙げられ、ウレタンアクリレート系オリゴマーやポリエステルアクリレート系オリゴマーが好ましく、ウレタンアクリレート系オリゴマーが特に好ましい。
【0035】
エネルギー線重合性基を有するオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、1000〜10万が好ましい。特に、ウレタンアクリレート系オリゴマーの分子量は、1000〜50000が好ましく、2000〜30000がより好ましい。
【0036】
エネルギー線重合性基を有するモノマー及び/又はオリゴマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。エネルギー線重合性基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの含有量は、特に制限ないが、粘着剤組成物の固形分中5〜80質量%が好ましく、15〜60質量%がより好ましい。ここで、固形分とは、粘着剤層を形成する際に、乾燥により除去される成分、具体的には、後述する溶剤や分散媒を除いた成分をいう。
【0037】
エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線などが挙げられる。紫外線を使用する場合は、硬化性組成物には、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物、ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物、2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物、1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物などの公知の光重合開始剤を用いることができ、また、オリゴマー型光重合開始剤を用いることもできる。
【0038】
光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。光重合開始剤の配合量は、エネルギー線重合性基を有する化合物100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、0.2〜10質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がさらに好ましい。
【0039】
粘着剤中に、カーボンナノ材料をエポキシ基含有化合物により均一に分散させるには、分散媒中に粘着剤、カーボンナノ材料、エポキシ基含有化合物を混合して粘着剤分散液を得て、その粘着剤分散液をよく撹拌することが好ましい。さらに、カーボンナノ材料の分散性を向上するためには、カーボンナノ材料とエポキシ基含有化合物とを混合した後に、粘着剤を混合することが好ましい。撹拌は、公知の撹拌方法で行うことが出来るが、特に好ましくは超音波振動を与えて撹拌することが好ましい。撹拌時間は、特に制限ないが、通常0.5〜5時間が好ましい。
【0040】
粘着剤中に、カーボンナノ材料をエポキシ樹脂により、一層均一に分散させるには、予めカーボンナノ材料とエポキシ樹脂を、3本ロールミルなどを用いて、混練してカーボンナノ材料分散液を得て、次いで、そのカーボンナノ材料分散液を粘着剤に混合することが好ましい。粘着剤は、分散媒あるいはエネルギー線重合性基を有するモノマー及び/又はオリゴマーに分散または溶解された粘着剤分散液または粘着剤溶液の状態で使用することが好ましい。
【0041】
分散媒としては、有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、イソブタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。これらの内、芳香族溶剤が好ましい。
【0042】
この場合、カーボンナノ材料分散液中のカーボンナノ材料の含有量は、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。カーボンナノ材料分散液は、撹拌してカーボンナノ材料を均一に分散させることが好ましい。撹拌は、公知の撹拌方法で行うことが出来るが、特に好ましくは超音波振動を与えて撹拌することが好ましい。撹拌時間は、特に制限ないが、通常0.5〜5時間が好ましい。
【0043】
本発明の粘着シートは、基材シートの片面又は両面に、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層が設けられている。基材シートとしては、種々のプラスチックシート、フィルムが使用できる。基材シートの具体例としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素系樹脂などの各種合成樹脂のシート、フィルムが挙げられ、特に、高強度であり安価であることから、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂より成るシート、フィルムが好ましい。基材シートは、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。さらに、これらフィルムを着色したもの、あるいは印刷を施したものであってもよく、硬化性樹脂を薄膜化、硬化してシート化したものが使われてもよい。なお、粘着剤としてエネルギー線硬化型粘着剤を用いる場合には、エネルギー線を透過する基材シートが好ましい。
【0044】
基材シートの厚みは、特に制限ないが、通常10〜350μmが好ましく、25〜300μmがより好ましく、50〜250μmが特に好ましい。基材シートの表面は、易接着処理を施してもよい。易接着処理としては、特に制限ないが、例えば、コロナ放電処理等が挙げられる。本発明の粘着シートにおいては、基材シートの片面又は両面に、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成されている。粘着剤層の厚みは、特に制限されないが、通常乾燥後の膜厚が3〜150μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、10〜60μmがさらに好ましい。
【0045】
基材シートの片面又は両面に、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層を形成するには、基材シートの片面又は両面に、上記粘着剤組成物を塗布して、必要に応じて乾燥することにより、形成できる。上記粘着剤組成物の基材シートへの塗布方法は、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、カーテンコート法など従来公知の方法が挙げられる。乾燥は、通常20〜150℃で行うことが好ましい。
【0046】
本発明の粘着シートは、被着体に貼付して使用され、帯電防止性又は導電性が要求される分野であれば、その用途は限定されない。本発明の粘着シートは、粘着シートを被着体に貼付した後、エネルギー線を照射しない用途に使用することもできるし、粘着シートを被着体に貼付し、処理工程を経た後、エネルギー線を照射して、粘着力を低減して、被着体から剥離し、除去して使用することもできる。後者の用途としては、例えば、半導体ウエハを接着固定し、形成素子を小片に切断、分割し、その素子小片をピックアップ方式で自動回収するダイシング工程において、半導体ウエハの裏面に貼付してウエハを保持するために用いられるウエハダイシングシートや、半導体ウエハの裏面研削工程において、半導体ウエハ表面を保護するために用いられる表面保護シート(裏面研削シート)などが挙げられる。
【0047】
照射されるエネルギー線としては、種々のエネルギー線発生装置から発生するエネルギー線が用いられる。例えば、紫外線としては、通常は紫外線ランプから輻射される紫外線が用いられる。この紫外線ランプとしては、通常波長300〜400nmの領域にスペクトル分布を有する紫外線を発光する、高圧水銀ランプ、ヒュ−ジョンHランプ、キセノンランプ等の紫外線ランプが用いられ、照射量は通常50〜3000mJ/cmが好ましい。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
【0049】
(実施例1)
(1)カーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂の調製
カーボンナノチューブ(昭和電工社製、商品名「VGCF」、円筒状の中空の繊維状形状、平均外周径(外側の円周の平均直径)150nm、平均長さ8μm、平均外周径に対する平均長さの比53)2.8gを、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名「エピコート828」97.2gに添加し、3本ロールミルで混練し、カーボンナノチューブがエポキシ樹脂中に分散された、カーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を得た。なお、多層カーボンナノチューブの平均外周径(外側の円周の平均直径)及び平均長さの値は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名「S−4700」)を用いて、各々5万倍、15000倍の倍率で観察したものである。
【0050】
(2)粘着剤組成物の調製
粘着剤樹脂の主剤としてアクリル酸エステル共重合体樹脂(アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸メチル/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート=84/10/1/5(質量比)、重量平均分子量70万、溶剤トルエン、固形分濃度40質量%)100質量部に、イソシアナート系架橋剤(東洋インキ製造社製、商品名「オリバインBHS8515」、固形分濃度37.5質量%)8質量部に、上記(1)で調製されたカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂1.54質量部を配合して混合し、粘着剤組成物を調製した。粘着剤組成物の固形分中のカーボンナノチューブ含有量は0.1質量%であった。
【0051】
(3)粘着シートの作成
上記(2)で調製した粘着剤組成物を、剥離コートフィルムに乾燥膜厚が40μmになるように塗布し、乾燥させ、剥離コートフィルム上に、粘着剤組成物の単層シート(いわゆるノンキャリアフィルム)を作成した。
【0052】
(実施例2)
(1)カーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂の調製
実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を調製した。
【0053】
(2)粘着剤組成物の調製
粘着剤樹脂の主剤としてアクリル酸エステル共重合体樹脂(アクリル酸n−ブチル/アクリル酸=90/10(質量比)、重量平均分子量70万、溶剤トルエン、固形分濃度33質量%)100質量部に、イソシアナート系架橋剤(東洋インキ製造社製、商品名「オリバインBHS8515」、固形分濃度37.5質量%)10質量部、エネルギー線重合性基含有オリゴマーとしてウレタンアクリレート系オリゴマー(大日精化工業社製、商品名「セイカビームEXL−810TL」、重量平均分子量10000、固形分濃度61質量%)70質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」)1.26質量部を混合し、次に、上記(1)で調製されたカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂溶液3.0質量部を配合して混合し、エネルギー線硬化型の粘着剤組成物を調製した。粘着剤組成物の固形分中のカーボンナノチューブ含有量は0.1質量%であった。
【0054】
(3)粘着シートの作成
上記(2)で調製した粘着剤組成物を、剥離フィルムの片面に乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、乾燥させ、粘着剤層を形成した。粘着剤層を導電コート付ポリオレフィン基材と貼り合わせ、転写することで粘着シートを作成した。
【0055】
(実施例3)
実施例2(1)において、カーボンナノチューブ(昭和電工社製、商品名「VGCF」)の使用量を3.0gとして、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名「エピコート827」97.0gに変更した以外は、実施例2と同様にしてカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を調製した。得られたカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を用いて、実施例2と同様にして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0056】
(実施例4)
実施例2(1)において、カーボンナノチューブとして、昭和電工社製、商品名「VGCF−X」(円筒状の中空の繊維状形状、平均外周径150nm、平均長さ6μm、平均外周径に対する平均長さの比40)3.0gを用い、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名「エピコート828」97.0gを用いた以外は、実施例2と同様にしてカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を調製した。得られたカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を用いて、実施例2と同様にして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0057】
(実施例5)
実施例2(1)において、カーボンナノチューブとして、昭和電工社製、商品名「VGCF−H」(円筒状の中空の繊維状形状、平均外周径15nm、平均長さ3μm、平均外周径に対する平均長さの比20)3.0gを用い、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名「エピコート828」97.0gを用いた以外は、実施例2と同様にしてカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を調製した。得られたカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を用いて、実施例2と同様にして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0058】
(実施例6)
実施例5において、粘着剤組成物中に配合するカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂の使用量を1.5質量部とした以外は、実施例5と同様にして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0059】
(実施例7)
実施例5において、粘着剤組成物中に配合するカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂の使用量を0.3質量部とした以外は、実施例5と同様にして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0060】
(実施例8)
実施例2(1)において、カーボンナノチューブとして、Nanocyl社製、商品名「Nanocyl NC−7000」(円筒状の中空の繊維状形状、平均外周径9.5nm、平均長さ1.5μm、平均外周径に対する平均長さの比158)3.0gを用い、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名「エピコート828」97.0gを用いた以外は、実施例2と同様にしてカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を調製した。得られたカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を用いて、実施例2と同様にして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0061】
(実施例9)
実施例2(1)において、カーボンナノチューブ(昭和電工社製、商品名「VGCF」)の使用量を3.0gとして、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製、商品名「YD−825GSH」97.0gに変更した以外は、実施例2と同様にしてカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を調製した。得られたカーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を用いて、実施例2と同様にして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0062】
(比較例1)
実施例1において、カーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を配合しない以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0063】
(比較例2)
実施例2において、カーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を配合しない以外は実施例2と同様にして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0064】
(比較例3)
実施例2において、カーボンナノチューブ分散エポキシ樹脂を配合せずに、カーボンナノチューブ0.1質量%を粘着剤に直接配合した以外は実施例2と同様にして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0065】
(粘着力測定)
23℃、50%RHの環境下、実施例および比較例の粘着シートを25mm幅にカットし、直径6インチ、厚さ600μmのシリコンウエハの裏面(ミラー面)に貼付し、180度剥離粘着力(紫外線照射前)を測定した。同様にして、シリコンウエハの粘着シートを貼付後、リンテック社製紫外線照射装置RAD−2000を用いて120mW/cm、70mJ/cmで基材面から紫外線照射し、30分間放置した後、180度剥離粘着力(紫外線照射後)を測定した。なお、実施例1および比較例1の粘着シートは、粘着剤組成物だけからなるノンキャリアフィルムなので、粘着力の測定を行わなかった。比較例3の粘着シートは、カーボンナノチューブの凝集物が多く、正常な表面状態の粘着剤層が得られなかったため、粘着力の測定は行わなかった。
【0066】
(ダイシング試験)
実施例の粘着シートを、直径8インチ、厚さ350μmのシリコンウエハの裏面に貼付し、以下の条件でウエハのダイシングを行った後、エネルギー線硬化型の粘着剤においては、さらにリンテック社製紫外線照射装置RAD−2000を用いて120mW/cm、70mJ/cmで基材面から紫外線照射した。いずれの粘着シートにおいても、ダイシング工程においてチップ飛びは起こらず、ウエハおよびチップを保持、固定することができた。
【0067】
ダイシング条件
装置:東京精密社製、商品名「AWD−4008B」
ダイシングブレード:ディスコ社製、商品名「NBC−ZH2050 2HECC」
ブレード回転数:30000rpm
ダイシングスピード:100mm/秒
ダイシングサイズ(チップサイズ):10mm×10mm
カットモード:ダウンカット
【0068】
(ピックアップ力測定)
上記ダイシング試験を行った後、リンテック社製紫外線照射装置RAD−2000を用いて120mW/cm、70mJ/cmで基材面から紫外線照射し、4ピン突き上げ法によりピックアップ力を測定した。実施例の粘着シートにおいては、いずれもピックアップ不良は生じず、ピックアップ可能であった。ダイシング中の回路面への研削水の浸入の有無および、ピックアップ力およびピックアップに要した時間を表に記載した。なお、実施例1および比較例1は、粘着剤組成物だけからなるノンキャリアフィルムなので、ダイシング試験およびピックアップ力測定を行わなかった。比較例3の粘着シートは、カーボンナノチューブの凝集物が多く、正常な表面状態の粘着剤層が得られなかったため、ダイシング試験およびピックアップ力測定を行わなかった。
【0069】
(表面抵抗率の測定)
23℃、50%RHの環境下、100mm×100mmサイズの粘着シートを、表面抵抗計((株)ADVANTEST製、商品名「R8252 ELECTROMETER」)に設置し、粘着シートの粘着剤面の表面抵抗率を測定し、紫外線(UV)照射前の表面抵抗値とした。
【0070】
また、同様な粘着シートを、リンテック社製紫外線照射装置RAD−2000を用いて120mW/cm、70mJ/cmで基材面から紫外線照射し、その紫外線照射後の粘着シートの粘着剤面の表面抵抗率を上記と同様な方法で測定した。なお、比較例3の粘着シートは、カーボンナノチューブの凝集物が多く、正常な表面状態の粘着剤層が得られなかったため、表面抵抗率の測定を行わなかった。
【0071】
(帯電圧の測定)
23℃、50%RHの環境下、40mm×40mmサイズの粘着シートを、電荷減衰測定装置((株)宍戸商会製、商品名「STATIC HONESTMER」)の上に粘着剤層面を上向きに設置し、1300rpmで回転させ、粘着剤面に10kVの電圧を印加させて、印加60秒後の粘着剤面の帯電圧を測定し、紫外線(UV)照射前の帯電圧とした。
【0072】
また、同様な粘着シートを、リンテック社製紫外線照射装置RAD−2000を用いて120mW/cm、70mJ/cmで基材面から紫外線照射し、その紫外線照射後の粘着シートの帯電圧を上記と同様な方法で測定した。
【0073】
(帯電圧の半減期測定)
23℃、50%RHの環境下、40mm×40mmサイズの粘着シートを、電荷減衰測定装置((株)宍戸商会製、商品名「STATIC HONESTMER」)の上に粘着剤面を上向きに設置し、1300rpmで回転させ、粘着剤面に10kVの電圧を印加させて粘着剤面の帯電圧を測定した。印加開始から60秒後に電圧の印加を停止し、その時点から帯電圧の値が半分になるまでの時間を測定した。この時間を紫外線(UV)照射前の半減期とした。
【0074】
また、同様な粘着シートを、リンテック社製紫外線照射装置RAD−2000を用いて120mW/cm、70mJ/cmで基材面から紫外線照射し、その紫外線照射後の粘着シートの帯電圧の半減期を上記と同様な方法で測定した。
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤中に、カーボンナノ材料およびエポキシ基含有化合物が含有されてなる粘着剤組成物。
【請求項2】
エポキシ基含有化合物の23℃のおける粘度が7000〜18000mPa・sである請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
カーボンナノ材料の平均外周径が1〜1000nm、平均長さが0.01〜100μmである請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
粘着剤が、エネルギー線重合性基を有する化合物を含む請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
さらに、光重合開始剤を含む請求項4に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
カーボンナノ材料を粘着剤組成物の固形分中0.01〜20質量%含有している請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
基材シートの片面又は両面に、請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が設けられている粘着シート。
【請求項8】
粘着シートが半導体ウエハ加工に用いられるものである請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
半導体ウエハ加工が、半導体ウエハをダイシングして半導体チップを得る工程および得られた半導体チップをピックアップする工程を含む請求項8に記載の粘着シート。

【公開番号】特開2012−214586(P2012−214586A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79951(P2011−79951)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】