説明

糖尿病及び肥満の治療のためのジペプチジルペプチダーゼIV阻害薬及びカンナビノイドCB1受容体拮抗薬の組み合わせ

本発明は、糖尿病、肥満に関連する糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害を治療するための、特定のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターと特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストとの組み合わせを含む医薬組成物、そのような組み合わせを含有するキット及びそのような組成物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病、肥満に関連する糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害を治療するための、特定のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターと特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストとの組み合わせを含む医薬組成物、そのような組み合わせを含有するキット及びそのような組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、複数の要因により引き起こされ、最も単純には、空腹時又はグルコースチャレンジ後状態における血漿グルコースのレベルの上昇(高血糖)によって特徴づけられる。一般的に認識されている2つの糖尿病の形態がある。患者が、グルコース利用を調節するホルモンであるインスリンを、ほとんど又は全く生成しない1型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病(IDDM)と、患者が、いくらかのインスリン生成し、さらには高インスリン血症(非糖尿病患者と比較して同じ、またはさらに上昇した血漿インスリンレベル)を示し、同時に高血糖症も示す2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)である。1型糖尿病は、典型的には、注射を介した外来インスリン投与により治療される。しかし、2型糖尿病患者は、多くの場合、主なインスリン感受性組織、すなわち筋肉、肝臓及び脂肪組織においてグルコース及び脂質代謝を刺激するインスリンの効果が減少するような「インスリン抵抗性」が生じる。インスリン抵抗性はあるが糖尿病ではない患者は、インスリン抵抗性を補填するインスリンレベルの上昇を有する場合があり、そのことによって血清グルコースレベルが上昇しない。2型糖尿病の患者では、血漿インスリンレベルは、上昇したときでさえも、顕著なインスリン抵抗性を克服するには不十分であり、高血糖症をもたらす。
【0003】
インスリン抵抗性は、主に、未だに完全に理解されていないレセプター後シグナル伝達欠陥に起因する。インスリンに対する抵抗性は、グルコース取り込みの不十分な活性化、グルコース酸化及び筋肉中のグリコーゲン貯蔵の減少、脂肪組織における脂肪分解の不適切なインスリン抑制、並びに肝臓によるグルコース生成の不適切な抑制をもたらす。
【0004】
糖尿病患者で生じる持続的又は制御不能な高血糖症は、罹患率及び早期死亡率の増加に関連する。2型糖尿病患者は、心血管性合併症、例えばアテローム性動脈硬化症、冠動脈性心疾患、発作、末梢血管疾患、高血圧症、腎症、神経障害及び網膜症を発症する危険性が増加する。
【0005】
インスリン抵抗性を有するが、未だに2型糖尿病を発症していない多くの患者は、X症候群とも呼ばれる代謝症候群、インスリン抵抗性症候群、又は多代謝症候群を発症する危険性もある。グルコース耐性障害を発症する前の5〜10年の期間は、内臓脂肪量の増大、高血圧、インスリン抵抗性及び高脂血症の危険性をもたらす多数のホルモンの平衡異常に関連する(BJORNSTOP, P., Current Topics in Diabetes Research,eds. Belfore,F.,Bergman,R.N.,and Molinath,G.M.,Front Diabetes,Basel,Karger,12:182−192(1993))。同様に、代謝症候群は、腹部肥満、高インスリン血症、高血圧、低HDL及び高VLDLを伴う、インスリン抵抗性により特徴づけられる。代謝症候群の多様な構成要素間の因果関係は依然として確認されていないが、インスリン抵抗性又は腹部肥満は、重要な役割を演じると思われる(Requen, G.M.,et al.,N.Eng.J.Med.,334:374−381(1996);Despres,J−P.,et al.,N.Engl.J.Med.,334:952−957(1996);Wajchenberg,B.L.,et al.,Diabetes /Metabolism Rev.,10:19−29(1994))。代謝症候群の患者は、明白な真性糖尿病を有する又は発症するかに関わらず、上記で示した心血管性合併症を発症する危険性が増加する。糖尿病は、グリタゾン及びグリタザールのようなPPARγアゴニスト;ビグアナイド剤;タンパク質チロシンホスファターゼ1Bインヒビター;ジベプチジルペプチダーゼIVインヒビター;インスリン;擬インスリン;スルホニル尿素;メグリチニド;αグルコシダーゼインヒビター;及びαアミラーゼインヒビターのようなインスリン増感剤を含む、多様な治療剤により治療することができる。
【0006】
膵臓B細胞を刺激してより多くのインスリンを分泌させるスルホニル尿素(例えば、トルブタミド及びグリピザイド)又はメグリチニドの投与によりインスリンの血漿レベルを上昇すること、及び/又はスルホニル尿素若しくはメグリチニドの効果がなくなったときに、インスリン注射によって、インスリン抵抗性組織を刺激するのに十分高濃度のインスリンをもたらすことができる。しかし、危険を伴うほど低いレベルの血漿グルコースが結果的にもたらされる可能性があり、さらに高いレベルの血漿インスリンによってインスリン抵抗性の増大が生じる可能性がある。ビグアナイド剤は、不明の作用機序を有するが、肝グルコース出力を減少し、インスリン感受性を増加して、高血糖症にいくらかの修正をもたらす。メトホルミン単剤治療は、多くの場合、肥満及び/又は異脂肪血症でもある2型糖尿病患者を治療するために使用される。メトホルミンに対する適切な反応の欠如は、多くの場合、その後に、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、インスリン又はαグルコシダーゼインヒビターによる治療が続く。しかし、2つのビグアナイド剤、フェンホルミン及びメトホルミンは、それぞれ乳酸アシドーシス及び嘔気/下痢を誘導する可能性もある。アカルボースのようなαグルコシダーゼインヒビターは、腸内でグルコースの吸収を遅延するように作用する。αアミラーゼインヒビターは、マルトースへのデンプン又はグリコーゲンの酵素分解を阻害し、また、生物が利用可能な糖の量を低減する。
【0007】
チアゾリジンジオンとしても知られているグリタゾン(すなわち、5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)及び非チアゾリジンジオン、すなわちグリチザールを含むPPARγアゴニストは、2型糖尿病の多くの症状を改善する潜在能力を有する化合物の別のクラスを表す。これらの作用物質は、幾つかの2型糖尿病の動物モデルにおいて、筋肉、肝臓及び脂肪組織でインスリン感受性を実質的に増加し、低血糖症を起こすことなく、上昇したグルコース血漿レベルに部分的又は完全な修正をもたらす。現在市販されているグリタゾンは、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)γサブタイプのアゴニストである。PPARγアゴニズムは、一般に、グリタゾンで観察される改善されたインスリン感作の原因であると考えられる。2型糖尿病及び/又は異脂肪血症を治療するために開発されている最新のPPARアゴニストは、1つ以上のPPARα、γ及びδサブタイプのアゴニストである。
【0008】
しかし、PPARγアゴニストによる糖尿病の治療は、体液貯留に関連している。PPARγアゴニストであるAvandia(登録商標)(マレイン酸ロシグリタゾン)のラベルの見直しは、患者が、浮腫及び心不全のような体液滞留及び容積関連症例を経験している場合があることを示している。
【0009】
また2型糖尿病の治療は、典型的には、運動、体重制限及び食事制限を含む。運動及び食事カロリー摂取量の低減は、糖尿病の状態を劇的に改善するが、この治療のコンプライアンスは、十分に定着した座りがちな生活習慣及び過剰食物消費、特に多量の飽和脂肪を含有する食物の消費のため、極めて不十分である。しかし、体重を減らし、運動を増やすことは、糖尿病の人にとっては最も困難である。
【0010】
異常なグルコースホメオスタシスも、肥満、高血圧症、並びに脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質代謝の変質に、直接的にも間接的にも関連している。肥満は、インスリン抵抗性の可能性を増加し、結果生じたインスリン抵抗性が体重の増加と共に増加する可能性を増加する。したがって、グルコースホメオスタシス、脂質代謝、肥満及び高血圧症の治療制御は、臨床管理予防及び真性糖尿病の治療において極めて重要である。
【0011】
BMIが白色人種では>30kg/m2、又はアジア人では>25kg/m2と定義することができる肥満は、西洋社会では主要な健康問題である。米国の成人の約97百万人が過体重又は肥満であると推定される。肥満は、エネルギー消費に対するカロリー摂取の比率の増加の結果としてもたらされる正のエネルギーバランスの結果である。食事摂取と体重のバランスを調節する分子要因は、完全には理解されていない[B.Staels et al.,J.Biol.Chem.,270:15958(1995);F.Lonnquist et al.,Nature Medicine, 1:950](1995)]。肥満をもたらす遺伝子及び/又は環境要因の理解は不十分であるが、幾つかの遺伝子要因が確認されている。
【0012】
疫学調査では、過体重及び肥満の増加の程度は、寿命を縮める重要な予測因子であることが示された。肥満は、他の疾患から独立しても、それと関連しても、多くの健康問題を引き起こすか又は悪化させる。重篤で生命を脅かす可能性のある肥満と関連する医学的な問題には、2型糖尿病;高血圧症;血漿インスリン濃度の上昇;インスリン抵抗性;異脂肪血症;高脂血症;子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、腎癌及び結腸癌;骨関節症;閉塞性睡眠時無呼吸のような呼吸器合併症;胆石;アテローム性動脈硬化症;心疾患;異常心臓律動;及び心臓不整脈が含まれる(Kopelman, P.G.,Nature,404:635−643 2000))。肥満は、また、代謝症候群、心臓肥大、特に左心室肥大、早期死亡に関連し、発作、心筋梗塞、うっ血性心不全、冠動脈性心疾患及び突然死による死亡率及び罹患率の有意な増加に関連する。
【0013】
腹部肥満は、冠動脈疾患のより高い危険性、並びに3つの主要な危険因子:高血圧、成人になって始まった糖尿病、及び血液中の高レベルの脂肪(脂質)に関連してきた。体重の減少は、これらの危険性を劇的に低減する。腹部肥満は、更に、グルコース不耐性、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、並びに上昇した高血圧、高密度リポタンパク質(HDL)のレベルの減少及び超低密度リポタンパク質(VLDL)のレベルの増加のような代謝症候群に関連する他の疾患と緊密に関連している(Montague et al.,Diabetes,49:883−888(2000))。
【0014】
肥満、及び糖尿病のような肥満関連障害は、多くの場合、食物摂取を低減すること又は運動のレベルを増加し、それによってエネルギー出力を増加することによって、患者が体重を減らすことを奨励して治療を行う。体重の5%〜10%の持続的な体重減少は、糖尿病のような肥満に関連する共存症を改善することが示されており、左心室肥大、骨関節症、並びに肺及び心臓機能障害のような肥満関連障害に改善をもたらすことができる。
【0015】
肥満を治療するために使用される体重減少薬には、オーリスタット[Davidson,M.H.et al.,JAMA,281:235−42(1999)]、デクスフェンフルラミン[Guy Grand,B.et al.,Lancet,2:1142−5 ](1989)],sibutramine[Bray,G.A.et al.,Obes.Res.],7:189−98(1999)]、及びフェンテルミン[Douglas,A.et al.,Int.J.Obes.,7:591−5(1983)]が含まれる。しかし、これらの薬剤及び抗肥満剤の副作用がこれらの使用を制限している。デクスフェンフラミンは、心臓弁膜症の疑いのため市場から回収され、オーリスタットは、胃腸の副作用により制限され、シブトラミンの使用は、死亡が報告され、イタリアの市場からの回収をもたらした心臓血管の副作用により制限されている。
【0016】
糖尿病、肥満に関連する糖尿病及び糖尿病関連疾患を治療する新しい方法の必要性が引き続き存在する。肥満及び代謝症候群のような肥満関連障害を治療及び予防する新しい方法の必要性も存在する。現在、代謝症候群の認可された治療は存在しない。
【0017】
本発明は、糖尿病、肥満に関連する糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害を治療するための、特定のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターと特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストを含む併用治療を提供することによって、この問題を対処する。これらの作用物質の、対応する臨床用量での組み合わせは、いずれかの作用物質の単独での治療よりも効果的であると期待される。準臨床的用量でのそのような組み合わせによる治療は、単独治療臨床用量でのいずれかの作用物質の単独による治療よりも副作用が少なく、臨床有効性を生じることが期待される。その結果、併用治療は、一次医療の際にそれぞれ個別の作用物質の処方に伴う試行錯誤なしに、所望の医療利益を得る可能性が高い。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストである、抗肥満剤と、特定のDPP−IVインヒビターである抗糖尿病剤とを含む組成物を提供し、この組成物は、糖尿病、肥満に関連する糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害の治療、制御及び/又は予防に有用である。
【0019】
2型糖尿病の治療におけるDPP−IVインヒビターの治療的有用性は、(i)D.J.Drucker in Exp.Opin.Invest.Drugs,12:87−100(2003);(ii)K.Augustyns,et al.,in Exp.Opin.Ther. Patents,13:499−510(2003);(iii)C.F.Deacon,et al.,in Exp.Opin.Investig. Drugs,13:1091−1102 (2004);(iv)A.E.Weber,“Dipeptidyl Peptidase IV Inhibitors for the Treatment of Diabetes,” J.Med.Chem.,47:4135−4141(2004);及び(v)J.J.Holst,“Treatment of Type 2 diabetes mellitus with agonists of the GLP−1 receptor or DPP−IV inhibitors,”Exp.Opin.Emerg.Drugs,9:155−166(2004)で考察されている。
【0020】
カンナビノイドレセプターリガンドの治療効果は、(i)R.G.Pertwee,“Cannabinoid receptor ligands:clinical and neuropharmacological considerations, relevant to future drug discovery and development,Exp.Opin.Invest.Drugs,9:1553−1571(2000)及び(ii)A.J.Drysdale,“Cannibinoids: Mechanisms and Therapeutic Applications in the CNS,”Curr.Med.Chem.,10:2719−2732(2003)に記載されている。
【0021】
本発明の組成物は、ヒトにおける糖尿病、特に2型糖尿病の治療、制御及び/又は予防に有用である。
【0022】
本発明の組成物は、更に、高脂血症;異脂肪血症;肥満;腹部肥満;高コレステロール血症;高トリグリセリド血症;アテローム性動脈硬化症;冠動脈性心疾患;発作;高血圧症;末梢血管疾患;血管再狭窄;腎症;神経障害;クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む過敏性腸管症候群、炎症性腸疾患ではあるがこれらに限定されないような炎症性状態;他の炎症性状態;膵臓炎;神経変性疾患;網膜症;脂肪細胞腫瘍、脂肪細胞癌ではあるがこれらに限定されないような腫瘍性状態、例えば脂肪肉腫;胃癌及び膀胱癌を含む癌;血管形成;アルツハイマー病;乾癬;並びにインスリン抵抗性が構成要素である他の疾患の治療、制御及び/又は予防に有用である。
【0023】
本発明の組成物は、また、食べ過ぎ;過食;血漿インスリン濃度の上昇;インスリン抵抗性;グルコース耐性;脂質障害;低HDLレベル;高LDLレベル;高血糖症;子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、肝癌及び結腸癌のような腫瘍性状態;骨関節症;閉塞性睡眠時無呼吸;胆石;異常心臓律動;心臓不整脈;心筋梗塞;うっ血性心不全;突然死;卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣疾患);頭蓋咽頭腫;プラダー・ウィリ症候群;フレーリッヒ症候群;GH欠乏症;正常範囲内変異低身長症;ターナー症候群;並びに全除脂肪体重の率で低減した代謝活性又は減少した安静時エネルギー消費を示す他の病理学的状態、例えば急性リンパ性白血病の子供の治療、制御及び/又は予防に有用である。
【0024】
本発明の組成物は、また、左心室肥大を含む心臓肥大を緩和しながら、糖尿病を治療、制御及び/又は予防することにも有用である。
【0025】
本発明の組成物は、更に、代謝症候群の治療、制御及び/又は予防に有用である。
【0026】
本発明は、また、これらの状態の治療に関し、これらの状態を治療するのに有用な薬剤の製造における本発明の組成物の使用に関する。
【0027】
本発明は、また、特定のDPP−IVインヒビターと特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストとを活性医薬成分として含む医薬組成物に関する。
【0028】
本発明は、また、DPP−IVインヒビター及びカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストの治療有効量を一緒に又は別々含む、糖尿病、肥満に関連する糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害の治療のための薬剤の製造における、特定のDPP−IVインヒビター及び特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストの使用に関する。
【0029】
本発明は、また、糖尿病、肥満に関連する糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害における同時、別個又は連続使用のために組み合わせた調合剤として、特定のDPP−IVインヒビター及び特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストを含有する製剤に関する。
【0030】
本発明は、また、別々に投与することができる特定のDPP−IVインヒビター及び特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストの組み合わせによる、糖尿病、肥満に関連する糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害の治療に関する。
【0031】
本発明は、また、別々の医薬の組み合わせをキットの形態に組み合わせることに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストである、抗肥満剤と、特定のDPP−IVインヒビターである抗糖尿病剤とを含む組成物を提供し、この組成物は、糖尿病、肥満に関連する糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害の治療又は予防に有用である。
【0033】
本発明の組成物で使用されるカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストは、
N−〔3−(4−クロロフェニル)−1−メチル−2−フェニルプロピル〕−2−(2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−1−メチル−2−フェニル−プロピル〕−2−(5−クロロ−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(3−ピリジル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(5−クロロ−3−ピリジル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(5−メチル−3−ピリジル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(5−シアノ−3−ピリジル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(3−メチルフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−フェニル−1−メチルプロピル〕−2−(4−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−フェニル−1−メチルプロピル〕−2−(4−トリフルオロメチル−2−ピリミジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−1−メチル−2−(チオフェン−3−イル)プロピル〕−2−(5−クロロ−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(5−クロロ−2−ピリジル)−2−フェニル−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−フルオロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−メトキシ−フェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(6−トリフルオロメチル−4−ピリミジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔2−(3−シアノフェニル)−1,4−ジメチルペンチル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔2−(3−シアノフェニル)−3−シクロブチル−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔2−(3−シアノフェニル)−1−メチル−ヘプチル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔2−(3−シアノフェニル)−3−シクロペンチル−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔2−(3−シアノフェニル)−3−シクロヘキシル−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
3−{1−〔ビス(4−クロロフェニル)メチル〕アゼチジン−3−イリデン}−3−(3,5−ジフルオロフェニル)−2,2−ジメチルプロパンニトリル;
1−{1−〔1−(4−クロロフェニル)ペンチル〕アゼチジン−3−イル}−1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2−メチルプロパン−2−オール;
3−((S)−(4−クロロフェニル){3−〔(1S)−1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル〕アゼチジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリル;
3−((S)−(4−クロロフェニル){3−〔(1S)−1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2−フルオロ−2−メチルプロピル〕アゼチジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリル;
3−((4−クロロフェニル){3−〔1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2,2−ジメチルプロピル〕アゼチジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリル;
3−((1S)−1−{1−〔(S)−(3−シアノフェニル)(4−シアノフェニル)メチル〕アゼチジン−3−イル}−2−フルオロ−2−メチルプロピル)−5−フルオロベンゾニトリル;
3−〔((S)−(4−クロロフェニル)(3−{(1S)−2−フルオロ−1−〔3−フルオロ−5−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)フェニル〕−2−メチルプロピル}アゼチジン−1−イル)メチル〕ベンゾニトリル;及び
5−((4−クロロフェニル){3−〔(1S)−1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2−フルオロ−2−メチルプロピル〕アゼチジン−1−イル}メチル)チオフェン−3−カルボニトリル;
並びにその立体異性体、薬学的に許容される塩、水和物及び結晶形態
からなる群より選択される。
【0034】
上記のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストは、WO2003/077847(2003年9月24日発行)及びWO2005/000809(2005年1月6日発行)で開示されている。
【0035】
一実施形態において、カンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストは、構造式III:
【0036】
【化1】

【0037】
で示されるN−〔(1S,2S)−3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−メチル−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパンアミド
又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶形態である。
【0038】
本発明の方法及び組成物は、また、
【0039】
【化2】

【0040】
並びにその薬学的に許容される塩、水和物及び結晶形態
からなる群より選択される特定のDPP−IVインヒビターである抗糖尿病剤を含む。
【0041】
一実施形態において、特定のDPP−IVインヒビターは、構造式IV:
【0042】
【化3】

【0043】
で示される(2R)−4−オキソ−4−〔3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ〔1,2,4〕トリアゾロ〔4,3−a〕ピラジン−7(8H)−イル〕−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶形態である。
【0044】
この実施形態の部類において、式IVの化合物の薬学的に許容される塩は、構造式V:
【0045】
【化4】

【0046】
で示されるリン酸二水素塩
又は薬学的に許容されるその水和物である。薬学的に許容される水和物のこの部類の亜群は、結晶質一水和物である。結晶質リン酸二水素一水和物は、MK−0431と呼ばれる。
【0047】
本発明の組成物におけるDPP−IVインヒビターは、米国特許第6,699,871号(2004年3月2日)に開示されており、その内容は参照によって本明細書に組み込まれる。この一連のDPP−IVインヒビターの開発は、D. Kim,et al.,inJ.Med.Chem.,48:141−151 (2005)で記載されている。
【0048】
本発明は、また、糖尿病、特にインスリン非依存性糖尿病を治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0049】
本発明は、肥満に関連する糖尿病を治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0050】
本発明は、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症、及び/又は異脂肪血症を治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0051】
本発明は、高血糖症を治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0052】
本発明は、高コレステロール血症を治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0053】
本発明は、高トリグリセリド血症を治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0054】
本発明は、脂質障害、高脂血症、異脂肪血症、高非HDLコレステロール及び低HDLコレステロールを治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0055】
本発明は、低HDLコレステロールを含む異脂肪血症を治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0056】
本発明は、アテローム性動脈硬化症を治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0057】
アテローム性動脈硬化症の後遺症(狭心症、跛行、心臓発作、卒中など)がこれによって治療されることが理解される。
【0058】
本発明は、心臓肥大、特に左心室肥大を緩和しながら、糖尿病を治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0059】
本発明は、代謝症候群を治療、制御又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0060】
本発明は、糖尿病関連障害を治療する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0061】
本発明は、肥満を治療又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0062】
本発明は、肥満関連障害を治療又は予防する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量;及び
(b)特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩の治療有効量又は予防有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0063】
本発明は、また、これらの方法を実施するのに有用な医薬組成物又は薬剤に関する。
【0064】
本発明は、抗肥満剤の有効量及び抗糖尿病剤の有効量を一緒に又は別々に含む、糖尿病を治療、制御又は予防するための薬剤の製造における、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤の使用に関する。
【0065】
本発明は、また、抗肥満剤の治療有効量又は予防有効量及び抗糖尿病剤の有効量を一緒に又は別々に含む、肥満に関連する糖尿病を治療、制御又は予防するための薬剤の製造における、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤の使用に関する。
【0066】
本発明は、抗肥満剤の治療有効量又は予防有効量及び抗糖尿病剤の有効量を一緒に又は別々に含む、糖尿病関連疾患を治療、制御又は予防するための薬剤の製造における、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態、及び特定のDPP−IVインヒビターである抗糖尿病剤又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤の使用に関する。
【0067】
本発明は、抗肥満剤の治療有効量又は予防有効量及び抗糖尿病剤の有効量を一緒に又は別々に含む、肥満を治療、制御又は予防するための薬剤の製造における、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤の使用に関する。
【0068】
本発明は、抗肥満剤の治療有効量又は予防有効量及び抗糖尿病剤の有効量を一緒に又は別々に含む、肥満関連障害を治療、制御又は予防するための薬剤の製造における、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤の使用に関する。
【0069】
本発明は、抗肥満剤の治療有効量又は予防有効量及び抗糖尿病剤の有効量を一緒に又は別々に含む、代謝症候群を治療、制御又は予防するための薬剤の製造における、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤の使用に関する。
【0070】
本発明は、抗肥満剤の治療有効量又は予防有効量及び抗糖尿病剤の治療有効量又は予防有効量を一緒に又は別々に含む、心臓肥大、特に左心室肥大を緩和しながら、糖尿病を治療、制御又は予防するための薬剤の製造における、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤の使用に関する。
【0071】
本発明は、更に、糖尿病における同時、別個又は連続使用のための組み合わせ調合剤として、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤を含有する製剤に関する。
【0072】
本発明は、更に、糖尿病関連障害における同時、別個又は連続使用のための組み合わせ調合剤として、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤を含有する製剤に関する。
【0073】
本発明は、更に、肥満における同時、別個又は連続使用のための組み合わせ調合剤として、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤を含有する製剤に関する。
【0074】
本発明は、更に、肥満関連障害における同時、別個又は連続使用のための組み合わせ調合剤として、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤を含有する製剤に関する。
【0075】
本発明は、更に、代謝症候群における同時、別個又は連続使用のための組み合わせ調合剤として、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤を含有する製剤に関する。
【0076】
本発明は、更に、心臓肥大、特に左心室肥大を緩和しながら、糖尿病における同時、別個又は連続使用のための組み合わせ調合剤として、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤を含有する製剤に関する。
【0077】
本発明は、更に、活性成分として、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗肥満剤、及び特定のDPP−IVインヒビター又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶質形態である抗糖尿病剤を含む医薬組成物を提供する。
【0078】
本発明は、更に、別々に投与することができる、特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストである抗肥満剤及び特定のDPP−IVインヒビターである抗糖尿病剤の組み合わせによる、糖尿病、糖尿病関連障害、肥満又は肥満関連障害の治療又は予防に関する。したがって、本発明は、別々の医薬組成物をキットの形態に組み合わせることにも関する。本発明のキットは、2つの別個の医薬組成物を含み、第1の単位投与形態は、予防又は治療有効量の特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態、並びに第1の単位投与形態に薬学的に許容される担体又は稀釈剤を含み、第2の単位投与形態は、予防又は治療有効量の特定のDPP−IVインヒビター又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態、並びに第2の単位投与形態に薬学的に許容される担体又は稀釈剤を含む。
【0079】
本発明は、また、少なくとも1つの単位投与量の予防又は治療有効量の特定のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態、及び少なくとも1つの単位投与量の予防又は治療有効量の特定のDPP−IVインヒビター又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは結晶質形態を含むキットに関する。
【0080】
本発明の一実施形態において、キットは更に容器を含む。そのようなキットは、特に、錠剤又はカプセル剤のような固体経口剤形の送達に適している。そのようなキットは、好ましくは、多数の投与単位を含む。そのようなキットは、その意図される使用の順番で配列されている用量を有するカードを含むことができる。そのようなキットの例は「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装業界では周知であり、医薬単位投与量形態を包装するために広く使用されている。必要に応じて、記憶補助を、例えば数字、文字若しくは他の印の形態で、又は用量を投与することができる治療スケジュールの日若しくは時間を指定できるカレンダーの挿入により提供することができる。
【0081】
併用療法
本発明の組成物を、組成物を含む化合物が有用である、糖尿病、肥満に関連する糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害の治療、予防又は制御にも有用でありうる他の薬剤と組み合わせて使用することができる。したがって、そのような他の薬剤は、一般に使用される経路及び量によって、本発明の組成物と同時に又は連続して投与することができる。本発明の組成物が1つ以上の他の薬剤と同時に使用される場合、そのような他の薬剤及び本発明の組成物を含有する単位投与量形態の医薬組成物が好ましい。しかし、併用治療は、本発明の組成物及び1つ以上の他の薬剤が異なる重複スケジュールで投与される治療も含む。1つ以上の他の活性成分と組み合わせて使用する場合、本発明の組成物及び他の活性成分は、それぞれ単独で使用されるときよりも低い用量で使用することができることも考慮される。したがって、本発明の医薬組成物には、本発明の組成物に加えて、1つ以上の他の活性成分を含有するものが含まれる。
【0082】
本発明の組成物と組み合わせて投与することができ、別々に投与する又は同じ医薬組成物で投与することができる他の活性成分の例には、以下を挙げることができるが、これらに限定はされない。
(a)(i)グリタゾン(例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾン、バラグリタゾンなど)のようなPPARγアゴニスト、及びKRP−297、マルグリタザール、ナベグリタザール、テサグリタザール及びTAK−559のようなPPARα/γ二重アゴニストを含む他のPPARリガンド;フェノフィブル酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベザフィブレート)のようなPPARαアゴニスト;及びWO02/060388、WO02/08188、WO2004/019869、WO2004/020409、WO2004/020408及びWO2004/066963で開示されている選択的PPARγモジュレーター(SPPARγM);(ii)メトホルミン及びフェンホルミンのようなビグアナイド剤、並びに(iii)タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)インヒビターを含むインスリン増感剤;
(b)インスリン又は擬インスリン;
(c)スルホニル尿素及び他のインスリン分泌促進薬、例えばトルブタミド、グリブリド、グリピザイド、グリメピリド及びメグリチニド、例えばナテグリニド及びレパグリニド;
(d)αグルコシダーゼインヒビター(例えば、アカルボース及びミグリトール);
(e)WO97/16442;WO98/04528;WO98/21957;WO98/22108;WO98/22109;WO99/01423;WO00/39088及びWO00/69810;WO2004/050039;並びにWO2004/069158に開示されているグルカゴン受容体拮抗薬;
(f)GLP−1、GLP−1類似体又は模倣体、並びにエキセンジン4(エクセナチド)、リラグルチド(NN−2211)、CJC−1131、LY−307161及びWO00/42026及びWO00/59887記載されているGLP−1レセプターアゴニスト;
(g)WO00/58360で開示されているGIP及びGIP模倣物、並びにGIPレセプターアゴニスト;
(h)PACAP、PACAP模倣物、及びWO01/23420で開示されているPACAPレセプターアゴニスト;
(i)コレステロール低下剤、例えば(i)HMG−CoAレダクターゼインヒビター(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチン、及び他のスタチン)、(ii)捕捉剤(コレスチラミン、コレスチポール、及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベザフィブレート)のようなPPARαアゴニスト、(v)ナベグリタザール及びマルグリタザールのようなPPARα/γ二重アゴニスト、(v)βシトステロール及びエゼミチブのようなコレステロール吸収インヒビター、(vii)アバシミベのようなアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼインヒビター、並びに(viii)プロブコールのような酸化防止剤;
(j)WO97/28149で開示されているPPARδアゴニスト;
(k)フェンフルラミン、デクスフェンフラミン、フェンテラミン、シブトラミン、オーリスタット、ニューロペプチドY又はYアンタゴニスト、βアドレナリン作動性レセプターアゴニスト、メラノコルチンレセプターアゴニスト、特にメラノコルチン4レセプターアゴニスト、グレリンアンタゴニスト、ボンベシンレセプターアゴニスト(例えばボンベシンレセプターサブタイプ3アゴニスト)及びメラニン凝集ホルモン(MCH)レセプターアゴニストのような抗肥満性化合物;
(l)回腸胆汁酸トランスポーターインヒビター;
(m)アスピリン、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、グルココルチコイド、アズルフィジン及びシクロオキシゲナーゼ2選択的(COX−2)インヒビターのような、炎症性条件で使用されることが意図される作用物質;
(n)ACEインヒビター(エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル、キナプリル、タンドラプリル)、A−IIレセプターブロッカー(ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、テルミサルタン及びエプロサルタン)、βブロッカー、並びにカルシウムチャンネルブロッカーのような抗高血圧剤;
(o)WO03/015774;WO04/076420;及びWO04/081001で開示されているグルコキナーゼ活性化物質(GKA);
(p)米国特許第6,730,690号;WO03/104207;及びWO04/058741で開示されている11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型のインヒビター;
(q)トルセトラピブのようなコレステロールエステル輸送タンパク質(CETP);並びに
(r)米国特許第6,054,587号;同第6,110,903号;同第6,284,748号;同第6,399,782号;及び同第6,489,476号で開示されているフルクトース1,6−ビスホスファターゼのインヒビター。
【0083】
上記の組み合わせには、本発明の組成物と、1つの他の活性化合物だけでなく、2つ以上の他の活性化合物との組み合わせが含まれる。非限定例には、本発明の組成物と、抗異脂肪血症剤及び抗高血圧剤から選択される1個、2個又はそれ以上の活性化合物との組み合わせが挙げられる。本発明の組成物と、抗異脂肪血症剤及び抗高血圧剤から選択される1個、2個又はそれ以上の活性化合物との組み合わせは、代謝症候群を治療、制御又は予防するのに有用である。抗異脂肪血症剤及び/又は抗高血圧剤に加えて、DPP−IVインヒビター及びカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストを含む本発明の組成物の組み合わせは、これらの作用物質いずれかの単独による治療よりも代謝症候群の治療、制御又は予防に効果的である。特に、DPP−IVインヒビター及びカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニス、抗高血圧剤及び/又は抗異脂肪血症剤を含む組成物は、代謝症候群を相乗的に治療、抑制又は予防するのに有用である。
【0084】
定義
本発明の組成物における化合物には、置換の様式に応じて、光学異性体及びジアステレオマーのような立体異性体が含まれる。化合物は、1つ以上のキラル中心を含有することができ、ラセミ化合物、ラセミ混合物として、及び個別のジアステレオマー、鏡像異性体混合物又は単一の鏡像異性体として生じることができ、全ての異性体形態が本発明に含まれる。本発明は、本発明の組成物における化合物の全てのそのような異性体形態及びその混合物を包含することを意味する。したがって、化合物がキラルである場合、互いに実質的に遊離している別個の鏡像異性体が本発明の範囲内に含まれ、更に含まれるものは、2つの鏡像異性体の全ての混合物である。また本発明の範囲内に含まれるものは、本発明の化合物の結晶質形態及び水和物、例えば水和物である。
【0085】
これらの立体鏡像体の個別の合成又はクロマトグラフ分離は、本明細書に開示されている方法論の適切な変更により、当該技術で知られているようにして達成することができる。これらの絶対立体化学は、既知の絶対配置の不斉中心を含有する試薬を用いて、結晶質生成物又は必要であれば誘導体化された結晶質中間体のX線結晶学により決定することができる。
【0086】
必要に応じて、化合物のラセミ混合物を、個別の鏡像異性体が単離するように分離することができる。この分離は、化合物のラセミ混合物を鏡像異性的に純粋な化合物とカップリングして、ジアステレオマー混合物を形成すること、続いて個別のジアステレオマーを分別結晶化又はクロマトグラフィーのような標準的な方法により個別のジアステレオマーの分離することのような当該技術で周知の方法により実施することができる。カップリング反応は、多くの場合、鏡像異性的に純粋な酸又は塩基を使用して塩を形成する。次にジアステレオマー誘導体を、添加したキラル残基の開裂により純粋な鏡像異性体に変換することができる。化合物のラセミ混合物を、キラル固定相を利用するクロマトグラフィー法により直接分離することもでき、この方法は当該技術においてよく知られている。
【0087】
あるいは、化合物の任意の鏡像異性体を、当該技術で周知の方法により光学的に純粋な出発材料又は既知の方法により既知の構造の試薬を使用して、立体選択的合成によって得ることができる。
【0088】
本発明は、本発明の組成物中の化合物のプロドラッグをその範囲内に含む。一般に、そのようなプロドラッグは、これらの組成物における化合物の官能誘導体であり、インビボで必要な化合物に容易に変換される。したがって、本発明の治療の方法において、用語「投与する」は、組成物の要素として特に開示される化合物による、又は特に開示されていない化合物があっても、患者に投与された後にインビボで特定の化合物に変換する化合物による、糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害の治療を包含する。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製の従来の手順は、例えば、“Design of Prodrugs,”ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985に記載されている。
【0089】
本明細書に記載される幾つかの化合物は、特に指定のない限り、オレフィン性二重結合を含み、それは、EとZの両方の幾何異性体を含むことを意味する。
【0090】
本明細書に記載される幾つかの化合物は、互変異性体として存在することができ、それは、1つ以上の二重結合シフトを伴う水素の異なる結合点を有する。例えば、ケトン及びそのエノール形態は、ケト−エノール互変異性体である。個別の互変異性体、並びにその混合物は、本発明の化合物に包含される。
【0091】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。用語「薬学的に許容される塩」は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む、薬学的に許容される非毒性の塩基又は酸から調製される塩を意味する。用語「薬学的に許容される塩」の範囲内に包含される塩基性化合物の塩は、本発明の化合物の非毒性塩を意味し、これは、一般に遊離塩基を適切な有機又は無機酸と反応させて調製される。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、ショウノウ酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、粘液酸塩、ナプシレート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモエート(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロンサン塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシレート、トリエトヨウ化物及び吉草酸塩。更に、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、その適切な薬学的に許容される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などを含む無機塩基から誘導される塩が挙げられるが、これらに限定はされない。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、第一級、第二級及び第三級アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、塩素、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが挙げられる。
【0092】
本発明の組成物の薬学的に許容される塩には、組成物の個別の成分のうちの1つが薬学的に許容される塩の形態の組成物、又は個別の成分が全て薬学的に許容される塩の形態である(それぞれの成分の塩は同一又は異なっていることができる)組成物、又は組み合わせた成分の薬学的に許容される塩(すなわち、組成物の塩)が含まれる。
【0093】
本明細書で使用されるとき、用語「組成物」は、特定の量で特定の成分を含む生成物、並びに特定の量で特定の成分の直接的又は間接的な組み合わせによりもたらされる任意の生成物を包含する。医薬組成物に関するそのような用語は、活性成分及び担体を構成する不活性成分を含む生成物を包含し、並びに任意の2つ以上の成分の組み合わせ、錯化若しくは凝集、又は1つ以上の成分の解離、又は1つ以上の成分の他の種類の反応、若しくは相互作用により、直接的又は間接的にもたらされるあらゆる生成物を包含することを意味する。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物を薬学的に許容される担体と混合して作製されるあらゆる組成物を包含する。「薬学的に許容される」とは、担体、稀釈剤又は賦形剤は、製剤の他の成分と適合性がなければならず、摂取者に有害であってはならないことを意味する。
【0094】
有用性:
本発明の組成物は、糖尿病、特にインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)の治療又は予防に有用である。本明細書の糖尿病は、遺伝的又は環境的のいずれかの原因に起因する場合がある。
【0095】
本発明の組成物は、肥満に関連する糖尿病の治療又は予防に有用である。本明細書における肥満に関連する糖尿病は、肥満に関連する、それにより引き起こされる、又はその結果として生じる。
【0096】
本発明の組成物は、糖尿病関連障害の治療又は予防に有用である。本明細書の糖尿病関連障害は、糖尿病に関連する、それにより引き起こされる、又はその結果として生じる。糖尿病関連障害の例には、高血糖症、グルコース耐性障害、インスリン抵抗性、肥満、脂質障害、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベル、高LDLレベル、アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、血管再狭窄、過敏性腸管症候群、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、他の炎症性状態、膵炎、腹部肥満、神経変性疾患、網膜症、腫瘍性状態、脂肪細胞腫瘍、脂肪細胞癌、例えば脂肪肉腫、前立腺癌及び胃癌、乳癌、膀胱癌及び結腸癌を含む他の癌、血管形成、アルツハイマー病、乾癬、高血圧、代謝症候群、卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)及び、インスリン抵抗性が構成要素である他の障害、例えば睡眠時無呼吸が挙げられる。本発明の組成物は、高血糖症、グルコース耐性障害、肥満、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベル、アテローム性動脈硬化症及び代謝症候群の治療、制御又は予防に特に有用である。
【0097】
本発明の組成物は、代謝症候群の治療又は予防にも有用である。抗高血圧剤及び/又は抗異脂肪血症剤を更に含む本発明の組成物は、代謝症候群の治療又は予防に有用である。
【0098】
本発明の組成物は、糖尿病の治療又は予防に有用である。
【0099】
本発明の組成物は、肥満の治療、制御又は予防に有用である。本明細書の肥満は、遺伝的又は環境的のいずれかの原因に起因する場合がある。DPP−IVインヒビター及びカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストから構成される組成物は、PPARγアゴニストのような特定の抗糖尿病剤による治療に関連する体重増加を治療及び/又は予防するためにも有用である。
【0100】
本発明の組成物は、肥満関連障害の治療、制御又は予防に有用である。本明細書の肥満病関連障害は、肥満に関連する、それにより引き起こされる、又はその結果として生じる。肥満関連障害の例には、肥満、糖尿病、食べ過ぎ、過食症及び過食、高血圧症、上昇した血漿インスリン濃度及びインスリン抵抗性、異脂肪血症、高脂血症、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、腎癌及び結腸癌、骨関節症、閉塞性睡眠時無呼吸、胆石、心疾患、異常心臓律動及び不整脈、心筋梗塞、うっ血性心不全、冠動脈性心疾患、突然死、発作、多嚢胞性卵巣症候群、頭蓋咽頭腫、プラダー・ウィリ症候群、フレーリッヒ症候群、GH欠乏症、正常範囲内変異低身長症、ターナー症候群、並びに全除脂肪体重率で低減した代謝活性又は減少した安静時エネルギー消費を示す他の病理学的状態、例えば急性リンパ性白血病の子供が挙げられる。肥満関連障害の更なる例は、代謝症候群、インスリン抵抗性症候群、生殖ホルモン異常、性機能及び生殖障害、例えば受精能障害、不妊症、男性の性機能不全症及び女性の男性型多毛症、母体肥満に関連する胎児欠陥、胃腸運動機能障害、例えば肥満関連胃食道逆流性疾患、呼吸障害、例えば肥満低喚起症候群(ピックウイック症候群)、息切れ、心血管障害、炎症、例えば血管系の全身性炎症、動脈硬化症、高コレステロール血症、腰痛、胆嚢疾患、高尿酸血症、痛風、及び腎癌、及び麻酔危険度の増加である。本発明の組成物は、アルツハイマー病及び喫煙の治療にも有用である。
【0101】
本明細書で使用されるとき、用語「糖尿病」は、インスリン依存性糖尿病(すなわち、1型糖尿病としても知られている、IDDM)とインスリン非依存性糖尿病(すなわち、2型糖尿病としても知られている、NIDDM)の両方を含む。1型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病は、グルコース利用を調節するホルモンであるインスリンの絶対的な欠乏の結果である。2型糖尿病又はインスリン独立性糖尿病(すなわち、インスリン非依存性糖尿病)は、多くの場合、正常な、さらには上昇したレベルのインスリンで生じ、組織がインスリンに適切に反応できないことによりもたらされると思われる。2型糖尿病の発症は肥満に関連し、ほとんどの2型糖尿病患者は肥満でもある。本発明の組成物は、1型と2型の両方の糖尿病を治療するのに有用である。本発明の組成物は、肥満に関連する糖尿病の治療に特に効果的である。用語「肥満に関連する糖尿病」は、肥満により引き起こされる糖尿病又は肥満の結果もたらされる糖尿病を意味する。この組成物は、2型糖尿病の治療に特に効果的である。本発明の組成物は、妊娠糖尿病を治療及び/又は予防するためにも有用である。
【0102】
糖尿病は、126mg/dl以上の空腹時血漿グルコースレベルにより特徴づけられる。糖尿病被験者は、126mg/dl以上の空腹時血漿グルコースレベルを有する。糖尿病前症は、110mg/dl以上、126mg/dl未満の空腹時血漿グルコース(FPG)レベルの障害、又はグルコース耐性障害、又はインスリン抵抗性により特徴づけられる。糖尿病前症被験者は、空腹時グルコース障害(110mg/dl以上126mg/dl未満の空腹時血漿グルコース(FPG)レベル)、又はグルコース耐性障害(>140mg/dl及び<200mg/dlの2時間血漿グルコースレベル)、又はインスリン抵抗性を有し、糖尿病を発症するリスクが結果として増大した患者である。
【0103】
真性糖尿病の治療は、糖尿病被験者を治療するために本発明の組み合わせを投与することを意味する。治療の一つの転帰は、上昇したグルコースレベルを有する被験者において、グルコースレベルを減少する可能性がある。治療の別の転帰は、上昇したインスリンレベルを有する被験者において、インスリンレベルを減少する可能性がある。治療の別の転帰は、上昇した血漿トリグリセリドレベルを有する被験者において、血漿トリグリセリドを減少する可能性がある。治療の別の転帰は、高LDLコレステロールレベルを有する被験者において、LDLコレステロールを減少することである。治療の別の転帰は、低HDLコレステロールレベルを有する被験者において、HDLコレステロールを増加する可能性がある。治療の別の転帰は、インスリン感受性を増加することである。治療の別の転帰は、グルコース耐性を有する被験者において、グルコース耐性を増強する可能性がある。治療のさらに別の転帰は、インスリン抵抗性が増加した又はインスリンレベルが上昇した被験者において、インスリン抵抗性を減少する可能性がある。真性糖尿病、特に肥満に関連する糖尿病の予防は、その必要性のある被験者で糖尿病の発症を防ぐために、本発明の化合物又は組み合わせを投与することを意味する。糖尿病を予防する必要性のある被験者は、過重量又は肥満の糖尿病前症被験者である。
【0104】
本明細書で使用されるとき、用語「高血圧症」には、原因不明の本態性若しくは原発性高血圧症、又は心臓及び血管の両方における変化のような2つ以上の原因に起因する高血圧症、及び原因が知られている二次性高血圧症が含まれる。二次性高血圧症の原因には、肥満;腎疾患;ホルモン障害;経口避妊薬、コルチコステロイド、シクロスポリンなどのような特定の薬剤の使用が含まれるが、これらに限定はされない。用語「高血圧症」は、収縮期と拡張期の両方の圧力が上昇する(>140mmHg/>90mmHg)高血圧、及び収縮期圧のみが140mmHg以上に上昇し、一方、拡張期圧が90mmHg未満である収縮期単独高血圧を包含する。正常な血圧は、120mmHg未満(収縮期圧)、80mmHg超(拡張期圧)として定義することができる。高血圧性の被験者は、高血圧症の被験者である。高血圧前症の被験者は、120mmHg、80mmHg超から139mmHg、89mmHg超の間の血圧の被験者である。治療の一つの転帰は、高血圧の被験者において、血圧を下げることである。高血圧症の治療は、高血圧性の被験者において高血圧症を治療するために、本発明の組み合わせを投与することを意味する。高血圧症の予防は、高血圧症又は高血圧症関連障害の発症を予防するために、高血圧前症の被験者に本発明の組み合わせを投与することを意味する。
【0105】
異脂肪血症又は脂質代謝障害には、1つ以上の脂質(すなわち、コレステロール及びトリグリセリド)の異常濃度、及び/又はアポリポタンパク質(すなわち、アポリポタンパク質A、B、C及びE)、及び/又はリポタンパク質(すなわち、脂質と、脂質を血液中に循環させるアポリポタンパク質により形成される高分子錯体、例えばLDL、VLDL及びIDL)により特徴づけられる多様な状態を含む。高脂血症は、異常に高いレベルの脂質、LDL及びVLDLコレステロール及び/又はトリグリセリドに関連する。異脂肪血症の治療は、異脂肪血症の被験者に本発明の組み合わせを投与することを意味する。異脂肪血症の予防は、異脂肪血症前症の被験者に本発明の組み合わせを投与することを意味する。異脂肪血症前症の被験者は、未だ異脂肪血症ではない、正常な脂質レベルよりも高いレベルを有する被験者である。
【0106】
用語「代謝症候群」は、Third Report of the National Cholesterol Education Program Expert Panel on Detection, Evaluation and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (ATP−III). E.S. Ford et al., JAMA,vol.287(3),Jan.16,2002,pp 356−359で定義されている。簡潔には、人が次の障害:異常肥満、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール、高血圧及び高空腹時血漿グルコースのうち3つ以上を有する場合、代謝症候群を有すると定義される。これらの基準は、ATP−IIIに定義されている。代謝症候群の治療は、代謝症候群の被験者に本発明の組み合わせを投与することを意味する。代謝症候群の予防は、代謝症候群が定義される2つの障害を有する被験者に本発明の組み合わせを投与することを意味する。代謝症候群が定義される2つの障害を有する被験者は、代謝症候群が定義される2つの障害を発症しているが、代謝症候群が定義される3つの以上障害を発症していない被験者である。
【0107】
左心室肥大(LVH)は、左心室質量指数(LVMI)及び相対壁厚(RWT)に基づいて確認される。左心室質量指数は、グラムの左心室質を平方メートルの体表面積で割ることにより定義される。相対壁厚は、後壁厚/左心室拡張終期直径×2により定義される。正常なLVMI値は、典型的には85であり、正常なRWTは、およそ0.36である。LVHの男性被験者は、131g/mを越えるLVMIを有し、LVHの女性被験者は、100g/mを越えるLVMIを有する。上昇したLVMI値を有する被験者は、85g/m〜131g/mのLVMIを有する男性被験者又は85g/m〜100g/mのLVMIを有する女性被験者である。心臓肥大又は左心室肥大の治療は、心臓肥大又は左心室肥大を有する被験者に本発明の組み合わせを投与することを意味する。心臓肥大又は左心室肥大の予防は、上昇したLVMI値を有する被験者においてLVMIを減少又は維持するために、又は正常なLVMI値を有する被験者においてLVMIの増加を防止するために、本発明の組み合わせの投与を意味する。
【0108】
心臓肥大又は左心室肥大の治療の一つの転帰は、心室質量の減少でありうる。心臓肥大又は左心室肥大の治療の別の転帰は、心室質量の増加速度の減少でありうる。心臓肥大又は左心室肥大の治療の別の転帰は、心室壁厚の減少でありうる。心臓肥大又は左心室肥大の治療の別の転帰は、心室壁厚の増加速度の減少でありうる。心臓肥大又は左心室肥大を緩和しながらの糖尿病の治療の一つの転帰は、心室質量の減少でありうる。心臓肥大又は左心室肥大を緩和しながらの糖尿病の治療の別の転帰は、心室質量の増加速度の減少でありうる。心臓肥大又は左心室肥大を緩和しながらの糖尿病の治療の別の転帰は、心室壁厚の減少でありうる。心臓肥大又は左心室肥大を緩和しながらの糖尿病の治療の別の転帰は、心室壁厚の増加速度の減少でありうる。
【0109】
本明細書で使用されるとき、用語「肥満」は、過剰な体脂肪がある状態である。肥満の機能上の定義は、体重指数(BMI)に基づき、身長あたりの体重として平方メートル(kg/m)で計算される。「肥満」は、それ以外は健康な被験者が、30kg/m以上の体重指数(BMI)を有する状態、又は少なくとも1つの共存症を有する被験者が、27kg/m2以上のBMIを有する状態を意味する。「肥満被験者」は、30kg/m以上の体重指数(BMI)を有する、それ以外は健康な被験者、又は27kg/m以上のBMIを有する、少なくとも1つの共存症を有する被験者である。「肥満の危険性のある被験者」は、25kg/m〜30kg/m未満のBMIを有する、それ以外は健康な被験者、又は25kg/m〜27kg/m未満のBMIを有する、少なくとも1つの共存症を有する被験者である。
【0110】
肥満に関連する危険性の増加は、アジア人ではより低い体重指数(BMI)で生じる。日本を含むアジア諸国では、「肥満」は、体重低減を必要とするか又は体重低減により改善される少なくとも1つの肥満誘導又は肥満関連共存症を有する被験者が、25kg/m2以上のBMIを有することを意味する。日本を含むアジア諸国では、「肥満被験者」は、体重の低減を必要とするか又は体重低減により改善される少なくとも1つの肥満誘導又は肥満関連共存症を有し、25kg/m以上のBMIを有する被験者を意味する。アジア太平洋では、「肥満の危険性のある被験者」は、23kg/m以上から25kg/m未満のBMIを有する被験者である。
【0111】
本明細書で使用されるとき、用語「肥満」は、上記の肥満の定義を全て包含することを意味する。
【0112】
肥満誘導又は肥満関連共存症には、糖尿病、インスリン非依存性糖尿病(2型)、肥満に関連する糖尿病、グルコース耐性障害、空腹時グルコース障害、インスリン抵抗性症候群、異脂肪血症、高血圧症、肥満に関連する高血圧症、高尿酸血症、痛風、冠動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、睡眠時無呼吸症候群、ピックウイック症候群、脂肪肝、脳梗塞、脳血栓症、一過性虚血発作、整形外科障害、変形性関節炎、腰仙痛、月経異常、及び不妊症、腰痛、及び麻酔危険度の増加が含まれるが、これらに限定はされない。特に、共存症には、高血圧症、高脂血症、異脂肪血症、グルコース不耐性、心血管疾患、睡眠時無呼吸、真性糖尿病、及び他の肥満関連状態が含まれる。
【0113】
肥満及び肥満関連障害の治療は、肥満被験者の体重を低減又は維持するための、本発明の組み合わせの投与を意味する。治療の一つの転帰は、本発明の化合物又は組み合わせの投与直前の肥満被験者の体重に対して、その被験者の体重を低減する可能性がある。治療の別の転帰は、食事制限、運動又は薬物療法の結果として以前に失った体重の体重回復を防ぐこと、及び喫煙の中止による体重増加を防ぐ可能性がある。治療の別の転帰は、肥満関連疾患の発症及び/又は重篤度を減少する可能性がある。治療のさらに別の転帰は、過体重又は肥満被験者において、糖尿病を発症する危険性を減少する可能性がある。治療は、好適には、総食物摂取量の低減、又は炭水化物若しくは脂肪のような食事の特定の成分の摂取の低減を含む、被験者による食物又はカロリー摂取の低減をもたらす、及び/又は栄養素吸収の阻害をもたらす、及び/又は代謝率の低減の阻害をもたらす、及びその必要性のある患者に体重の低減をもたらすことができる。治療は、また、代謝率の低減の阻害ではなく又はそれに加えて、代謝率の増加のような代謝率の変化をもたらすことができる、及び/又は体重低減により通常もたらされる代謝抵抗性を最小限にすることができる。
【0114】
肥満及び肥満関連障害の予防は、肥満の危険性のある被験者の体重を低減又は維持するために、本発明の組み合わせを投与することを意味する。予防の一つの転帰は、本発明の化合物又は組み合わせの投与直前の肥満の危険性のある被験者の体重に対して、その被験者の体重を低減する可能性がある。予防の別の転帰は、食事制限、運動又は薬物療法の結果として以前に失った体重の体重回復を防ぐ可能性がある。予防の別の転帰は、肥満の危険性のある被験者において、肥満発症前に治療が投与される場合、肥満が生じるのを防ぐ可能性がある。予防の別の転帰は、肥満の危険性のある被験者において、治療肥満発症前に投与される場合、肥満関連障害の発症及び/又は重篤度を減少する可能性がある。更に、治療が既に肥満の被験者において開始される場合、そのような治療は、動脈硬化症、2型糖尿病、多嚢胞性卵巣疾患、心血管疾患、骨関節症、皮膚障害、高血圧症、インスリン耐性、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症及び胆石症ではあるが、これらに限定はされないような、肥満関連障害の発症、進行又は重篤度を防ぐことができる。
【0115】
特に、本発明の組成物は、アテローム性動脈硬化症の治療に有用である。本明細書で使用されるとき、用語「アテローム性動脈硬化症」は、関連する医学分野で診療している医師により認識され、理解されている血管疾患及び状態を包含する。アテローム硬化性心血管疾患、冠動脈心疾患(冠動脈疾患又は虚血性心疾患としても知られている)、脳血管性疾患及び末梢血管疾患は、全てアテローム性動脈硬化症の臨床症状であり、したがって、用語「アテローム性動脈硬化症」及び「アテローム硬化性疾患」により包含される。治療有効量又は予防有効量のDDP−IVインヒビターを治療有効量又は予防有効量のカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストと組み合わせて成る医薬組成物を、冠動脈性心疾患事象、脳血管性事象又は間欠性跛行症の発症又は再発の危険性を予防又は低減するために投与できる。冠動脈心疾患事象とは、CHD死、心筋梗塞(すなわち、心臓発作)及び冠動脈再建手順を含むことが意図される。脳血管事象とは、虚血性又は出血性発作(脳血管発作としても知られている)及び一過性脳虚血発作を含むことが意図される。間欠性跛行症は、末梢血管疾患の臨床症状である。本明細書で使用されるとき、用語「アテローム硬化性疾患事象」は、冠動脈性心疾患事象、脳血管性事象又は間欠性跛行症を包含することが意図される。1つ以上の非致命的アテローム硬化性疾患の事象を以前に経験している被験者は、そのような事象の存在が再発する可能性を有する者であることが意図される。
【0116】
組成物の「投与」又は組成物を「投与する」という用語は、本発明の組成物を治療の必要性がある被験者に提供することを意味すると理解されるべきである。本発明の医薬組成物には、DPP−IVインヒビター及びカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストを含有する単一の医薬投与製剤を投与すること、並びにそれぞれの作用物質をそれぞれ別個の医薬投与製剤で投与することが含まれる。別個の投与製剤が使用される場合、組成物の個別の成分を実質的に同じ時に、すなわち同時に、又は時間をずらして別々に、すなわち組成物の他の成分の投与の前若しくは後で連続的に投与することができる。したがって、本発明の医薬組成物は、そのような同時又は交互治療のレジメンを全て含むことが理解され、用語「投与」及び「投与する」はそのように解釈される。これらの多様な方法による投与は、抗肥満剤と抗糖尿病剤の組み合わせの薬学的利益効果が被験者で実質的に同じ時に認められる限り、本発明の組成物に適している。そのような利益効果は、好ましくは、それぞれの活性薬剤の標的血液レベル濃度が実質的に同じ時に維持される際に達成される。DPP−IVインヒビターとカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストの組み合わせは、1日1回用量スケジュールで同時に同時投与されるが、抗肥満剤が1日1回及び抗糖尿病剤が1日あたり1回、2回又はそれ以上のような多様な用量スケジュールも本明細書に包含される。両方の作用物質の組み合わせから構成される単一経口投与製剤が好ましい。単一投与製剤は患者にとって都合がよく、これは、複数の投薬が必要な糖尿病、代謝疾患の患者又は肥満の患者とって特に重要な配慮である。
【0117】
本明細書で使用されるとき、用語「被験者」は、哺乳動物、特にヒトを意味し、治療、観察又は実験の対象である。一実施形態において、用語「哺乳動物」は「ヒト」であり、前記ヒトは、男性又は女性のいずれかである。本発明の組み合わせは、ネコ及びイヌにおいて肥満及び肥満関連障害を治療又は予防するためにも有用である。このように、用語「哺乳動物」には、ネコ及びイヌのような愛玩動物が含まれる。
【0118】
用語「その必要性のある被験者」は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医により治療又は予防の必要性が認められた被験者を意味する。一実施形態において、その必要性のある被験者は、哺乳動物である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、肥満被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、糖尿病を有する肥満被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、糖尿病を発症する危険性のある肥満被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、糖尿病被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、肥満糖尿病被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、肥満を発生する危険性のある糖尿病の被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、代謝症候群を有する肥満被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、代謝症候群を発症する危険性のある肥満被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、代謝症候群を有する糖尿病被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、代謝症候群を発症する危険性のある糖尿病被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、代謝症候群を有する肥満糖尿病の被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、代謝症候群を発症する危険性のある肥満被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、代謝症候群を発症する危険性のある糖尿病被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、代謝症候群を発症する危険性のある肥満糖尿病の被験者である。
【0119】
別の実施形態において、その必要性のある被験者は、心臓肥大又は左心室肥大を有する肥満被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、心臓肥大又は左心室肥大を有する糖尿病被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、心臓肥大又は左心室肥大を有する肥満糖尿病被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、心臓肥大又は左心室肥大を発症する危険性のある肥満被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、心臓肥大又は左心室肥大を発症する危険性のある糖尿病被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、心臓肥大又は左心室肥大を発症する危険性のある肥満糖尿病被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、PPARγアゴニスト治療を受けている、心臓肥大又は左心室肥大を有する肥満糖尿病被験者である。別の実施形態において、その必要性のある被験者は、PPARγアゴニスト治療を受けている、心臓肥大又は左心室肥大を発症する危険性のある肥満糖尿病被験者である。
【0120】
本発明の治療方法を実施するために、本発明の組成物の投与は、組成物中の化合物の治療有効量又は予防有効量を、そのような治療又は予防の必要性のある被験者に投与することによって実施される。本発明の方法による予防投与の必要性は、周知の危険因子を使用して決定される。個別の化合物の有効量は、最終分析において、その症例の担当の医師により決定されるが、治療される正確な疾患、疾患の重篤度及び患者が罹患している他の疾患又は状態の重篤度、選択された投与経路、患者が同時に必要とする場合がある他の薬剤及び治療、並びに医師の判断における他の要因のような要因に応じて決定される。
【0121】
本明細書で使用されるとき、用語「治療有効量」は、治療される疾患の症状の軽減を含む、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医により追求される組織、系、対象又はヒトにおいて生物学的又は医学的反応を誘発する、組成物中の活性化合物の量を意味する。本発明の新規治療方法は、当業者に既知の疾患用である。
【0122】
本明細書で使用されるとき、用語「予防有効量」は、疾患を発症する危険性のある被験者において、糖尿病、肥満に関連する糖尿病、糖尿病に関連する障害、肥満又は肥満関連障害の発症を予防するために、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医により追求される組織、系、対象又はヒトにおいて生物学的又は医学的反応を誘発する、組成物中の活性化合物の量を意味する。
【0123】
組成物の活性成分の予防又は治療用量の程度は、治療される状態の重篤度の性質、及び組成物中の特定の化合物、及び投与経路により変えることができる。個別の患者の年齢、体重及び反応性によっても変わる。一般に、組み合わせにおけるそれぞれの化合物の1日用量範囲は、単回又は分割用量で、被験者の体重につき約0.0001mg/kg〜100mg/kg、好ましくは約0.001mg/kg〜約50mg/kgの範囲内である。一方、一部の場合では、これらの制限外の用量を使用する必要性が生じる場合もある。
【0124】
経口組成物が用いられる場合、適切な用量範囲は、例えば、1日あたり組成物中のそれぞれの化合物、約0.001mg/kg〜約100mg/kg、好ましくは1日あたり約0.01mg/kg〜約2000mg/kgである。経口投与では、組成物は、好ましくは、0.01mg〜1,000mg、例えば、0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0、2.5、5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、125、150、175、200、225、250、500、750、850、1,000及び2,000mgの治療される被験者に対する用量を症状に応じて調整した各活性成分を含有する錠剤の剤形で提供される。この用量レジメンを調整して、最適な治療反応をもたらすことができる。
【0125】
本発明の組み合わせにおける抗糖尿病DPP−IVインヒビターは、動物の体重1kgあたり約0.1mgから約100mgの1日用量で投与され、好ましくは単回1日用量又は1日あたり2〜6回の分割用量又は持続性放出形態で与えられる。ほとんどの大型哺乳動物では、総1日用量は、約1.0mg〜約1000mg、好ましくは約10mg〜約200mgである。70kgの成人の場合は、総1日用量は、一般に約7mg〜約350mgである。この用量レジメンを調整して、最適な治療反応をもたらすことができる。
【0126】
一実施形態において、WO2003/077847で開示されている置換アミドンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストは、約1.0mg〜約1000mg、好ましくは約1mg〜約50mgの総1日用量で投与される。70kgの成人の場合は、総1日用量は、一般に約1mg〜約35mgである。この用量レジメンを調整して、最適な治療反応をもたらすことができる。
【0127】
組成物に用いられるそれぞれの活性成分の有効投与量は、用いる特定の化合物、投与経路、治療される状態及び治療される状態の重篤度に応じて変わることができる。したがって、本発明の組成物を利用する用量レジメンは、被験者の類、種、年齢、一般的な健康、体重、食事、性別及び医療状態;治療される状態の重篤度;患者の腎臓及び肝臓機能;薬剤の組み合わせ;並びに用いられる特定の化合物及びその投与経路を含む多様な要因に従って選択される。通常の技能を有する医師、臨床医又は獣医師は、状態の進行を防止する、対抗する又は阻止するために必要な薬剤の有効量を容易に決定及び処方することができる。
【0128】
本発明の組み合わせにおける作用物質の重量比は、変えることができ、それぞれの成分の有効用量に応じて決定される。一般に、それぞれの有効用量が使用される。
【0129】
本発明の別の態様は、医薬担体と、本発明の組成物中のそれぞれの化合物の治療有効量又は予防有効量とを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物のような用語「組成物」は、活性成分と、担体を構成する薬学的に許容される賦形剤のような不活性成分とを含む生成物を包含し、並びに任意の2つ以上の成分の組み合わせ、錯化若しくは凝集、又は1つ以上の成分の解離、又は1つ以上の成分の他の種類の反応、若しくは相互作用により、直接的又は間接的にもたらされるあらゆる生成物を包含することを意味する。したがって、本発明の医薬組成物は、抗肥満剤及び抗糖尿病剤と薬学的に許容される賦形剤を混合して作製されるあらゆる組成物を包含する。
【0130】
あらゆる適切な投与経路を用いて、被験者、特にヒトに本発明の組成物の有効用量を提供することができる。例えば、経口、直腸内、局所、非経口、眼、肺、経鼻などを用いることができる。剤形には、錠剤、トローチ剤、分散剤、懸濁剤、液剤、カプセル剤、クリーム剤、軟膏剤、エアゾール剤などが含まれる。
【0131】
本発明の医薬組成物は、DPP−IVインヒビター及びカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストの組み合わせを活性成分として含むか又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはエスエルを含み、薬学的に許容される担体及び場合により他の治療成分も含むことができる。「薬学的に許容される」とは、担体、稀釈剤又は賦形剤は、製剤の他の成分と適合性がなければならず、摂取者に有害であってはならないことを意味する。特に、用語「薬学的に許容される塩」は、無機塩基又は酸及び有機塩基又は酸を含む、薬学的に許容される非毒性の塩基又は酸から調製される塩を意味する。
【0132】
組成物は、経口、直腸内、局所、非経口(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)、眼(眼内)、肺(エアゾール吸入)、又は経鼻投与に適した化合物を含むが、あらゆる場合において最も適切な経路は、治療される状態の特性及び重篤度、並びに活性成分の特性によって決まる。これらの組成物は、単位投与量形態で都合よく存在することができ、薬剤学の技術で周知の方法のいずれかによって調製することができる。
【0133】
吸入による投与では、本発明の組成物は、加圧パック又は噴霧器からエアゾールスプレー調合剤の形態で都合よく送達される。組成物を、配合されうる粉末として送達することもでき、粉末組成物を、通気粉末吸入装置の助けを借りて吸入することができる。好ましい吸入用送達系は、フルオロカーボン又は炭化水素のような適切な噴射剤中の本発明の組成物の懸濁液又は溶液として配合することができる計量用量吸入(MDI)エアゾール、及び追加の賦形剤を有するか又は有さない組成物の乾燥粉末として配合できる乾燥粉末吸入(DPI)エアゾールである。
【0134】
本発明の組成物の適切な局所用製剤には、経皮装置、エアゾール剤、クリーム剤、液剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、散布粉剤などが含まれる。本発明の組成物を含有する局所用医薬組成物は、通常、約0.005重量%〜5重量%の活性化合物を、薬学的に許容されるビヒクルと混合して含む。本発明の組成物を投与するのに有用な経皮皮膚パッチ剤には、当業者に周知のものが含まれる。経皮送達系の形態で投与するためには、投与用量は、当然のことながら投与レジメンの全体にわたって断続的ではなく連続的である。
【0135】
本発明の組成物は、小型単層小胞、大型単層小胞及び多相小胞のようなリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステリルアミン又はホスファチジルコリンのような多様なリン脂質から形成することができる。
【0136】
本発明の組成物は、化合物の分子が結合するモノクローナル抗体を個別の担体として使用して送達することもできる。これらの組成物における化合物は、標的化可能な薬剤担体として可溶性ポリマーと結合することもできる。そのようなポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパラミドフェノン、又はパルミトイル残基で置換されているポリエチレンオキシドポリシンを含むことができる。更に、本発明の組成物は、薬剤の制御放出を達成するのに有用な生分解性ポリマーの部類、例えばポリ酢酸、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエスエル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーに結合することができる。
【0137】
本発明の組成物は、カカオバター、グリセリンゼラチン、硬化植物油、多様な分子量のポリエチレングリコールと、リエチレングリコールの脂肪酸エステルとの混合物のような基剤を用いて、坐剤として送達することもできる。
【0138】
実際の使用では、本発明の組成物におけるそれぞれの化合物を活性成分として、従来の医薬配合技術に従って医薬担体と密接に混合して組み合わせることができる。担体は、例えば経口又は非経口(静脈内を含む)の投与に望ましい調製形態に応じて、多種多様な形態を取ることができる。経口投与用の組成物を調製するために、例えば、懸濁剤、エリキシル剤及び液剤のような経口液体調合剤の場合には、例えば、水、グリコール、油、アルコール、風味剤、防腐剤、着色剤などのような、又は、例えば、粉末剤、カプセル剤、ペレット剤、散剤及び錠剤のような経口固体調合剤の場合には、担体、例えば、デンプン、糖、微晶質セルロース、稀釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などのような通常の医薬媒質のいずれかを用いることができ、固体経口調合剤が液体調合剤より好ましい。その容易な投与のため、錠剤及びカプセル剤が最も有利な経口投与単位形態を表し、この場合には、当然のことながら固体医薬担体が用いられる。必要に応じて、錠剤を、標準的な水性又は非水性技術によって被覆することができる。
【0139】
上記で記載された慣用の投与量に加えて、組成物は、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第3,630,200号及び同第4,008,719に記載されているような、制御放出方法及び/又は送達装置により投与することもできる。
【0140】
経口投与に適切な本発明の医薬組成物は、それぞれ所定量の活性成分を含有するカプセル剤(徐放性及び持続性放出製剤を含む)、丸剤、カシュ剤、粉末剤、顆粒剤又は錠剤のような、粉末剤若しくは顆粒剤として、又はエリキシル剤、チンキ剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤及び乳剤を含む、液剤、又は水溶液、非水溶液、水中油エマルション若しくは油中水液体エマルション中の懸濁剤のような別個の単位として存在することができる。そのような組成物は、薬剤学の任意の方法により調製することができるが、全ての方法は、活性成分と、1つ以上の必要な成分と構成する担体とが関連する工程を含む。一般に、組成物は、活性成分を液体担体と又は微粉化固体担体と又はその両方と均一かつ緊密に混合し、次に必要であれば生成物を所望の調合剤に造形することによって調製される。例えば、錠剤は、場合により1つ以上の補助成分と共に圧縮又は成形することによって調製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械において、場合により結合剤、潤滑剤、不活性稀釈剤、界面活性剤又は分散剤と混合した粉末又は顆粒のような易流動性形態の活性成分を圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、適切な機械において、不活性液体稀釈剤で湿潤した粉末化合物の混合物を成形することによって作製することができる。
【0141】
例えば、錠剤、カプセル剤、ペレット剤又は粉末剤の剤形での経口投与では、活性成分を、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコール、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール、クロスカルメロースナトリウムなどのような経口非毒性の薬学的に許容される不活性担体と組み合わせることができ、液体形態、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、スラリー剤、乳剤、懸濁剤、液剤及び発泡性組成物での経口投与では、経口薬剤成分を、エタノール、グリセロール、水、油などのようなあらゆる経口非毒性の薬学的に許容される不活性担体と組み合わせることができる。更に、望ましい又は必要な際に、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、緩衝剤、被覆及び着色剤を組み込むこともできる。適切な結合剤は、グルコース、無水ラクトース、易流動性ラクトース、βラクトースなどのデンプン、ゼラチン、天然糖、及びトウモロコシ甘味料、アカシア、グアー、トラガカント、又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどの天然及び合成ガムを含むことができる。これらの投与形態で使用される潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。被覆として、又は投与単位の物理的形態を変えるために、多様な他の材料が存在できる。例えば、錠剤を、セラック、糖、又はその両方で被覆することができる。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性成分に加えて、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、染料、及びチェリー又はオレンジ風味のような風味剤を含有することができる。投与単位形態がカプセル剤である場合、上記の種類の材料に加えて、脂肪油のような液体担体を含有することができる。
【0142】
望ましくは、各錠剤は、0.01〜1,000mg、特に0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0、2.5、5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、125、150、175、200、225、250、500、750、850及び1,000mgの治療される被験者への投与量を症状に応じて調整した各活性成分を本発明の組成物中に含有し、各カシュ剤又はカプセル剤は、約0.01〜1,000mg、特に0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0、2.5、5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、125、150、175、200、225、250、500、750、850及び1,000mgの治療される被験者への投与量を症状に応じて調整した各活性成分を本発明の組成物中に含有する。
【0143】
本発明を例示するものは、上記のDPP−IVインヒビター及びCBカンナビノイド受容体拮抗薬/インバースアゴニストと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。
【0144】
また本発明を例示するものは、上記のDPP−IVインヒビター及びカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト、並びに薬学的に許容される担体のいずれかを組み合わせて作製された医薬組成物である。本発明で示されているものは、上記の抗肥満剤及び抗糖尿病剤、並びに薬学的に許容される担体のいずれかを組み合わせることを含む、医薬組成物の作製方法である。
【0145】
用量を、単回1日投与量で投与することができるか、又は総1日投与量を、1日2〜6回に分割して投与することができる。更に、投与に選択された個別の化合物の特性に基づいて、用量は低い頻度で、例えば毎週、週2回、毎月などで投与することができる。投与単位は、当然のことながら、頻度が低い投与では対応して大きくなる。
【0146】
鼻腔内経路、経皮経路、直腸内若しくは膣内坐剤により、又は連続静脈内溶液により投与される場合、用量投与は、当然のことながら、用量レジメンの全体を通して断続的ではなく連続的である。
【0147】
以下は、本発明の組成物の代表的な医薬投与製剤の例である。
【0148】
1)錠剤 150mg/錠剤
式IIIの化合物 10mg
MK−0431 64.25mg
微晶質セルロース 53.19mg
ヒドロキシプロピルセルロース 9mg
クロスカルメロースナトリウム 9mg
ステアリン酸マグネシウム 4.5mg
ブチルヒドロキシアニソール(BHA) 0.06mg

リン酸二水素ナトリウム塩64.25mgは、遊離塩基50mgと同等である。
【0149】
製造方法:
直接圧縮法に伴う工程は、
(1)式IIIの化合物、MK−0431及びクロスカルメロースナトリウムをVブレンダー又は他の適切なブレンダーで約5〜30分間分ブレンドすること;
(2)ヒドロキシプロピルセルロース及び微晶質セルロースを加えて、圧縮特性を改善すること;
(3)ステアリン酸マグネシウムで約1〜15分間潤滑すること;
(4)潤滑したブレンドを所望の錠剤像に圧縮すること;及び必要に応じて、
(5)フィルムを被覆すること
を含む。
【0150】
BHA又はBHTのような酸化防止剤を、式IIIの化合物及びMK−0431及び他の賦形剤とブレンドする前に賦形剤のうちの1つに積層するか、又はバルク薬剤合成法の際に式IIIの化合物及びMK−0431に積層することによって添加できる。錠剤を、場合により、6.00mgの標準HPC/HPMC/TiOフィルムコート配合(Opadry I(登録商標))で被覆して、156mgのコーティング剤を提供する。
【0151】
肥満及び肥満関連状態を治療又は予防するのに有用な他の作用物質を用いる本発明の化合物の組成物の範囲は、原則的には肥満及び肥満関連障害を治療するのに有用なあらゆる医薬組成物とのあらゆる組み合わせを含む。
【0152】
本発明を説明するために、以下の実施例が含まれる。これらの実施例は本発明を制限しない。これらは、単に、本発明を実施し易くする方法を示唆することが意図している。当業者は、本発明を実施する他の方法を見出すことができ、これらは容易に理解される。しかし、これらの方法も、本発明の範囲内であると認められる。
【0153】
WO2003/077847(2003年9月24日発行)で開示されている置換アミドカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストは、そこで開示されている合成方法に従って調製され、下記の構造式IIIのN−〔(1S,2S)−3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−メチル−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパンアミドの合成により例示された。
【0154】
【化5】

【0155】
中間体2−メチル−2−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパン酸の調製(1):
【0156】
【化6】

【0157】
工程1:2−メチル−2−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパン酸エチル
アセトニトリル50mL中の2−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルピリジン(5.73g、39mmol)、2−ブロモ酪酸エチル(5.7mL、39mmol)及び炭酸セシウム(25g、77mmol)の混合物を5℃で一晩加熱した。揮発物質を、ロータリーエバポレーターでの濃縮により除去し、残渣を水(100mL)とEtOAc(100mL)に分配した。有機層を分離し、水層をEtOA(2×10mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮乾固し、残渣を、ヘキサン中の5%EtOAcで溶離するシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を得た。
H NMR(500MHz,CDOD):δ7.99(d,1H),7.67(dd,1H),6.68(d,1H),4.13(q,2H),1.64(s,6H),1.14(t,3H). LC−MS:m/e 244(M+H)(3.41min).
【0158】
工程2:2−メチル−2−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパン酸(1)
アセトニトリル15mL及び水15mL中の2−メチル−2−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパン酸エチル及び水酸化ナトリウム(0.85g、21mmol)の混合物を50℃で一晩加熱した。揮発物質を、ロータリーエバポレーターでの濃縮により除去し、残渣を2M塩酸(100mL)とエーテル(100mL)に分配した。有機層を分離し、水(2×50mL)で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮乾固して、標記化合物を得た。
H NMR(500MHz,CDOD):δ8.38(brs,1H),7.93(dd,1H),7.13(d,1H),1.70(s,6H).LC−MS:m/e 250(M+H)(2.6min).
【0159】
工程A:2−メチル−2−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパンアミド(2)の調製
【0160】
【化7】

【0161】
オーバーヘッド撹拌機、窒素入口及び熱電対を備えた12Lの3首分液漏斗において、MeCN(6.5L)中の2−メチル−2−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパン酸()(772g)の溶液を調製した。塩化チオニル(316mL)を30分間かけて加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌した。オーバーヘッド撹拌機、窒素入口及び熱電対を備えた別の22Lの3頚丸底フラスコに、30%NHOH水溶液(5L)を投入し、−20℃に冷却した。分液漏斗からの酸塩化物溶液を、NHOH溶液に、内部反応温度が−15〜−20℃に保持されるように、2時間かけて加えた。添加が完了すると、得られたスラリーを室温に温め、更に1時間撹拌した。反応混合物を、トルエン(15L)及び水(15L)を含有する50Lの抽出機に移し、層を分離した。有機層を飽和NaHCO水溶液(5L)、次に水(5L)で洗浄した。有機層を12Lの4頚丸底フラスコに移し、真空下、50℃で濃縮して、約2Lの容量にした。濃縮が終了に近づくと、固体が沈殿し始め、バッチを78℃に加熱して、全ての固体を溶解した。ヘプタン(5L)を加え、バッチをゆっくりと冷却して、結晶質の固体を得た。スラリーを濾過し、フィルターケーキをn−ヘプタン(1L)で洗浄した。得られた固体を窒素流下で乾燥して、標記化合物を得た。
【0162】
工程B:3−〔1−(4−クロロベンジル)−2−オキソプロピル〕ベンゾニトリル(4)の調製
【0163】
【化8】

【0164】
触媒調製:
熱電対、オーバーヘッド撹拌機、セプタムラバー、N入口及びバブラーに接続したガスアダプターを備えた12Lの4頚丸底フラスコに、酢酸パラジウム(12.8g)、トリ−o−トリルホスフィン(69.9g)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(2.8L)を投入した。Nを溶液中、周囲温度で20分間泡立てた。次にフラスコを加熱マントルで56℃に加熱し、混合物を60℃で20分間撹拌した。トルエン中のジエチル亜鉛(1.1M、78.0mL)の溶液をシリンジを介して加えた。得られた懸濁液を56℃で45分間撹拌した。
【0165】
シアン化反応:
メカニカルスターラー、熱電対、窒素入口及びバブラーに接続したガスアダプターを備えた12Lの4頚フラスコに、3−(3−ブロモフェニル)−4−(4−クロロフェニル)ブタン−2−オン()、シアン化亜鉛(201g)及びN,N−ジメチルホルムアミド(4.0L)を投入した。窒素を懸濁液中、室温で30分間、加熱マントルを使用して56℃で1時間泡立てた。ブロモケトン/Zn(CN)のスラリー(56℃)を、触媒溶液に(56℃で)加えた。移動が完了した後、反応混合物をN下、56℃で4.5時間撹拌した。得られた懸濁液を氷浴で冷却し、30%水酸化アンモニウム水溶液(971mL)を、温度を30℃未満に保持しながら、5分間かけて加えた。懸濁液を室温に温め、60分間撹拌し、次にトルエン(5L)で溶離するSOLKA FLOCパッドで濾過した。濾液を、20%水酸化アンモニウム水溶液(6.9L)及びトルエン5Lを含有する抽出機に加えた。二相混合物を室温で15分間撹拌し、次に分離した。有機層を、ブライン(飽和NaCl:水 1:1)7L、次に水7Lで洗浄した。有機相を、オーバーヘッド撹拌機、熱電対、メカニカルスターラーを備えた12Lの4頚フラスコに移し、バッチ濃縮機に接続した。バッチを真空下、15〜38℃で濃縮して、1.5Lの容量にし、次にヘプタン(850mL)を加えた。この時点で試料を取り、バイアルで結晶化させた。この種試料をフラスコへ再投入すると、結晶化のための種床を作った。種床が形成されると(約30分間)、ヘプタン6.5Lを40分間かけて加え、バッチを0℃に冷却した。バッチを濾過し、フィルターケーキをヘプタン(2L)で洗浄した。得られた固体を窒素流下で乾燥して、標記化合物を得た。
【0166】
工程C:3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロパ−1−エン−1−イル4−メチルベンゼンスルホネート(5)
【0167】
【化9】

【0168】
メカニカルスターラー、熱電対及び窒素入口を備えた12Lの4頚フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド(7.2L)、続いて3−〔1−(4−クロロベンジル)−2−オキソプロピル〕ベンゾニトリル(,744g)を投入し、次に窒素で反応混合物中に室温で30分間泡立てた。反応混合物を−10℃に冷却し、NaOtBu(265g)を固体として、撹拌しながら一度に加えた(最高温度=−2℃)。溶液を冷却しながら発熱が止まるまで撹拌し、温度は低下し始めた(約2分)。冷却浴を取り外し、反応を室温に温め、次に1時間撹拌した。混合物を−20℃に冷却し、温度を−5℃未満に保持ながら(最高温度=−8℃)、p−トルエンスルホン酸無水物(TsO、893g)を、固体として、撹拌しながら2つに分けて加えた。混合物をまた−10℃まで冷却して、1時間撹拌した。反応を1M NaHCO(1.9L)で停止させ、IPAc 15L及び水13Lを含有する50Lの抽出機に移した。層を分離し、有機層を水7.5Lで2回洗浄した。有機層を僅かな真空下(25Hg)、55℃で、約2Lに濃縮した。2Lの容量に達したとき、バッチは結晶化し始めたため、それで真空を止め、フラスコを73℃に加熱して均質溶液を生成した。混合物をゆっくりと室温に冷ましながら、ヘプタン(6.6L)を加えた。得られたスラリーを室温で1時間熟成させてから濾過した。フィルターケーキをヘプタン3Lで洗浄し、窒素流下で乾燥して、標記化合物を得た。
【0169】
工程D:N−〔(1Z)−3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロパ−1−エン−1−イル〕−2−メチル−2−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパンアミド(6)
【0170】
【化10】

【0171】
3Lの3頚丸底フラスコに、tert−アミルアルコール(2.4L)を投入した。窒素ガスを溶液中で2時間泡立てた。メカニカルスターラー、還流冷却器及び還流冷却器の上の窒素/真空アダプターを備えた5Lの3頚丸底フラスコに、Pddba(27.5g)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(51.2g)、2−メチル−2{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパンアミド(2,313g)、3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロパ−1−エン−1−イル4−メチルベンゼンスルホネート(5,526g)及び炭酸カリウム(332g)を投入した。フラスコを密閉、排気し、窒素を充填し戻した。tert−アミルアルコール(2.4L)を反応フラスコに加え、続いて100℃に加熱し、100℃で18時間撹拌した。得られた懸濁液を25℃に冷却し、メカニカルスターラーを備えた22Lの4頚丸底フラスコに移した。バッチをMTBE 7.2Lで稀釈し、次にDARCO KB−B(登録商標)(250g)を混合物に投入した。得られた混合物を室温で2時間撹拌し、次にSOLKA FLOCパッドで濾過した。フィルターケーキをMTBE 7Lで洗浄した。バッチを、オーバーヘッド撹拌機及び熱電対を備えた12Lの4頚丸底フラスコへ、真空供給した。バッチを10〜20℃で濃縮して、全てのMTBEを除去し、次に30〜40℃で残りのt−アミルアルコールの容量を約1.5Lに減らした。ヘプタン(5L)を約30分間かけて加え、バッチを20℃に冷却した。フィルターケーキをヘプタン−MTBE(10:1)2Lで洗浄し、窒素流下で乾燥して、標記化合物を得た。
【0172】
工程E:3−{(1Z)−1−(4−クロロベンジル)−2−〔(2−メチル−2−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパノイル)アミノ〕プロパ−1−エン−1−イル}ベンズアミド(7)
【0173】
【化11】

【0174】
オーバーヘッド撹拌機、熱電対及び窒素入口を備えた5Lの3頚丸底フラスコに、シアンエンアミド 524g及びKCO 112gを加えた。DMSO(2.7L)を投入し、容器を室温で水浴に沈めた。過酸化水素溶液(30%水溶液165mL)を、温度が25℃を越えて上昇しないように反応器にゆっくりと加えた。添加が完了した後、反応を1時間熟成させた。バッチを酢酸イソプロピル1Lで稀釈し、SOLKA FLOC床で濾過した。床を酢酸イソプロピル4.5Lで洗浄し、得られた溶液を、水5.5Lを含有する50Lの抽出機に移した。層を分離し、有機層を水3.1Lで2回洗浄し、5Lに濃縮し、溶媒を約60℃でトルエン5Lに代えた。溶媒の交換が完了したとき、ヘプタン500mLを加え、混合物を20℃に冷却した。浴を20℃で30分間熟成させ、次に濾過し、トルエン1Lで洗浄した。得られた固体を窒素流下で一晩乾燥して、標記化合物を得た。
【0175】
工程F:3−{(1S,2S)−1−(4−クロロベンジル)−2−〔(2−メチル−2−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパノイル)アミノ〕プロピル}ベンズアミド(8)
【0176】
【化12】

【0177】
触媒調製:
充填グローブボックスにおいて、(−)−TMBTP 2.83gを、撹拌バーを含む0.5Lのボトルに加えた。(COD)RhBF(1.85g)を同じボトルに加え、次にメタノール(360mL)を加えた。得られた溶液を、1時間撹拌しながら熟成させた。BF−MeOH(41.2g、MeOH中12重量%、BF 4.94g)を触媒溶液に加え、得られた混合物を1Lのステンレススチールボンベに加えた。MeOH 50mLを使用して、ボンベ中の混合物をすすいだ。イソプロパノール(200mL)をボンベのすすぎチャンバに投入し、次にボンベの各チャンバを、グローブボックスから取り出す前に密閉した。
【0178】
水素化:
化合物を5Lのボトルに投入し、イソプロパノール(3.3L)をボトルに加えてスラリーを作った。得られたスラリーを、2ガロンのステンレススチールオートクレーブへ、ポリエチレンラインを通して真空供給させた。5Lのボトルをイソプロパノール1Lですすぎ、すすぎ水も2ガロンのオートクレーブに移した。オートクレーブをNで5回脱ガスし、次に部分真空下に置いた。触媒ボンベを、軟性ポリエチレンチューブ(Nでフラッシュした)を介してオートクレーブに接続し、触媒溶液をオートクレーブ中に引き込み、続いてすすぎチャンバからイソプロパノール洗浄水を引き込んだ。オートクレーブを密閉し、Nパージで3回脱ガスし、150psiまで加圧した。撹拌を始め、温度が40℃に上昇した。反応を、150psi、40℃で18時間熟成させた。温度を室温に下げ、得られた溶液をポリエチレンジャグに移した。
【0179】
工程G:N−〔1S,2S〕−3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−メチル−2−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパンアミド(9)
【0180】
【化13】

【0181】
工程Fからの粗水素化溶液では、イソプロパノール4LからDMF約1Lに溶媒交換した(40℃、30mmHg)。得られた、DMF中の中間体 470gの溶液を、メカニカルスターラー、熱電対及び2Lの添加漏斗を備えた12Lの4頚丸底フラスコに移した。塩化シアヌル(103g)をMTBE 2L中でスラリー化し、得られたスラリーを、2Lの添加漏斗を介して約10分間かけて反応に投与した。反応混合物を、1時間撹拌しながら熟成させた。バッチを10℃に冷却し、MTBE 3Lで稀釈した。水2L及び飽和NaHCO溶液2Lを、温度を20℃未満に保持しながら、反応に加えた。得られたスラリーを、MTBE 3L、水3L及び飽和NaHCO水溶液3Lを含有する50Lの抽出機に移した。追加の水12Lをバッチに加え、層を沈降させた。有機層を水3Lで2回洗浄した。有機層を、35℃、17Hgで共沸して、容量を約11Lに維持しながらKFを219にした(仕様500)。次にバッチをECOSORB C941 320gで処理した。バッチを50℃で4時間熟成させ、次にSOLKA FLOCパッドで濾過し、MTBE 6Lで洗浄した。得られた濾液を22Lの容器に再投入し、11Lの容量に濃縮し、ECOSORB C941 116gで再処理した。このスラリーをSOLKA FLOC床で濾過し、MTBE 6Lで洗浄した。得られた無色のMTBE層を、1ミクロンの直列フィルターを通して、オーバーヘッド撹拌機及び熱電対を備えた12Lの4頚丸底フラスコへ移し、17Hg、35℃で約2Lの容量に濃縮した。バッチを室温に冷却し、試料を取り出して、種床を作った。一旦試料が結晶化したら、フラスコへ戻し、バッチを30分間熟成させて、大型の種床を作った。単離した固体を窒素流下で乾燥して、標記化合物を半溶媒和物として得た。
【0182】
本発明の組成物で使用される構造式IVの化合物を含むDPP−IVインヒビターを、米国特許第6,699,871号に記載されたように調製し、この内容はその全体が参照として本明細書に組み込まれる。構造式Vのリン酸二水素塩及びその結晶質一水和物形態を、下記の通り調製した。
【0183】
【化14】

【0184】
(2R)−4−オキソ−4−〔3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ〔1,2,4〕トリアゾロ〔4,3−a〕ピラジン−7(8H)−イル〕−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンリン酸二水素一水和物(MK−0431)
3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ〔1,2,4〕トリアゾロ〔4,3−a〕ピラジン塩酸塩(1−4)の調製
【0185】
【化15】

【0186】
工程A:ビスヒドラジド(1−1)の調製
ヒドラジン(20.1g、水中35重量%、0.22mol)をアセトニトリル310mLと混合した。エチルトリフルオロアセテート31.5g(0.22mol)を60分間掛けて加えた。内部温度が14℃から25℃に増加した。得られた溶液を22〜25℃で60分間熟成させた。溶液を7℃に冷却した。50重量%のNaOH水溶液17.9g(0.22mol)及び塩化クロロアセチル25.3g(0.22mol)を16℃未満の温度で130分間かけて同時に加えた。反応が完了したとき、混合物を、27〜30℃、26〜27Hg真空で真空蒸留して、水及びエタノールを除去した。蒸留中、アセトニトリル720mLをゆっくりと加えて、一定の容量(およそ500mL)を維持した。スラリーを濾過して、塩化ナトリウムを除去した。ケーキをアセトニトリル約100mLですすいだ。溶媒の除去によって、ビス−ヒドラジド1−1を得た。
H NMR(400 MHz,DMSO−d):δ 4.2(s,2H),10.7(s,1H),and 11.6(s,1H)ppm.
13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ 41.0,116.1(q,J=362Hz),155.8(q,J=50 Hz),and 165.4 ppm
【0187】
工程B:5−(トリフルオロメチル)−2−(クロロメチル)−1,3,4−オキサジアゾール(1−2)の調製
ACN(82mL)中の工程Aのビスヒドラジド1−1(43.2g、0.21mol)を5℃に冷却した。オキシ塩化リン(32.2g、0.21mol)を、温度を10℃未満に維持しながら加えた。混合物を80℃に加熱し、この温度で、HPLCが2領域%未満の1−1を示すまで、24時間熟成させた。別の容器において、IPAc 260mL及び水250mLを混合し、0℃に冷却した。反応スラリーを、内部温度を10℃未満に保持しながら、投入停止させた。添加後、混合物を30分間激しく撹拌し、温度が室温に上昇し、水相を切り離した。次に有機層を、水215mL、5重量%の重炭酸ナトリウム水溶液215mL、最後に20重量%のブライン水溶液215mLで洗浄した。処理後のHPLCアッセイの発生は、86〜92%だった。揮発物を、75〜80mmHg、55℃で蒸留して除去し、油状物を得て、これを更に精製せずに工程Cで直接使用できた。そうでなければ、生成物を蒸留により精製して、1−2を得ることができる。
H NMR(400 MHz,CDCl): δ 4.8(s,2H)ppm.
13C−NMR (100MHz,CDCl): δ 32.1,115.8(q,J=337Hz),156.2(q,J=50Hz),and 164.4 ppm.
【0188】
工程C:N−〔(2Z)−ピペラジン−2−イリデン〕トリフルオロアセトヒドラジド(1−3)の調製
−20℃に冷却した、メタノール(150mL)中のエチレンジアミン(33.1g、0.55mol)の溶液に、工程Bの蒸留オキサジアゾール1−2(29.8g、0.16mol)を、内部温度を−20℃に保持しながら加えた。添加が完了した後、得られたスラリーを−20℃で1時間熟成させた。次にエタノール(225mL)を投入し、スラリーを、ゆっくりと−5℃に温めた。−5℃で60分後、スラリーを濾過し、エタノール(60mL)により−5℃で洗浄した。アミジン1−3を白色の固体(24.4g、99.5領域%、HPLCによると純粋)として得た。
H−NMR(400 MHz,DMSO−d):δ 2.9(t,2H),3.2(t,2H),3.6(s,2H),and 8.3(b,1H)ppm.
13C−NMR (100 MHz,DMSO−d):δ 40.8,42.0,43.3,119.3(q,J=350 Hz),154.2,and 156.2(q,J=38Hz)ppm.
【0189】
工程D:3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ〔1,2,4〕トリアゾロ〔4,3−a〕ピラジン塩酸塩(1−4)の調製
メタノール110mL中のアミジン1−3(27.3g、0.13mol)の懸濁液を55℃に温めた。37%塩酸(11.2mL、0.14mol)をこの温度で15分間かけて加えた。添加中、全ての固体が溶解し、透明な溶液になった。反応を30分間熟成させた。溶液を20℃に冷却し、この温度で種床が形成されるまで(10分間〜1時間)熟成させた。MTBE 300mLを20℃で1時間かけて投入した。得られたスラリーを2℃に冷却し、30分間熟成させ、濾過した。固体を、エタノール:MEBE(1:3)50mLで洗浄し、真空下、45℃で乾燥した。
H−NMR(400 MHz,DMSO−d):δ 3.6(t,2H),4.4(t,2H),4.6(s,2H),and 10.6(b,2H)ppm;
13C−NMR(100 MHz,DMSO−d):δ 39.4,39.6,41.0,118.6(q,J=325Hz),142.9(q,J=50Hz),and 148.8ppm.
【0190】
【化16】

【0191】
工程A:4−オキソ−4−〔3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ〔1,2,4〕トリアゾロ〔4,3−a〕ピラジン−7(8H)−イル〕−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン(2−3)の調製
2,4,5−トリフルオロフェニル酢酸(2−1)(150g、0.789mol)、メルドラム酸(125g、0.868mol)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(7.7g、0.063mol)を、5Lの3頚フラスコに投入した。N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(525mL)を、室温で一度に加えて固体を溶解した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(282mL、1.62mol)を、温度を40℃未満に維持しながら、室温で一度に加えた。塩化ピバロイル(107mL、0.868mol)を、温度を0〜5℃に維持しながら、1〜2時間かけて滴加した。反応混合物を5℃で1時間熟成させた。トリアゾール塩酸塩1−4(180g、0.789mol)を40〜50℃で一度に加えた。反応溶液を70℃で数時間熟成させた。次に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(625mL)を20〜45℃で滴加した。バッチに接種し、20〜30℃で1〜2時間熟成させた。次に、追加の5%炭酸水素ナトリウム水溶液525mLを2〜3時間かけて滴加した。室温で数時間熟成させた後、固体を濾過する前に、スラリーを0〜5℃で1時間冷却した。湿潤ケーキを20%DMAc水溶液(300mL)、続いて追加の2バッチの20%DMAc水溶液(400mL)、最後に水(400mL)で置換洗浄した。ケーキを室温で吸引乾燥した。
【0192】
工程B:(2Z)−4−オキソ−4−〔3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ〔1,2,4〕トリアゾロ〔4,3−a〕ピラジン−7(8H)−イル〕−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタ−2−エン−2−アミン(2−4)の調製
5Lの丸底フラスコに、メタノール(100mL)、ケトアミド2−3(200g)及び酢酸アンモニウム(110.4g)を投入した。次にメタノール(180mL)及び28%水酸化アンモニウム水溶液(58.6mL)を、添加中の温度を30℃未満に保持しながら加えた。追加のメタノール(100mL)を反応混合物に加えた。混合物を還流温度で加熱し、2時間熟成させた。反応を室温に冷却し、次に氷浴で約5℃に冷却した。30分後、固体を濾過し、乾燥して、2−4を固体、融点271.2℃として得た。
【0193】
工程C:(2R)−4−オキソ−4−〔3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ〔1,2,4〕トリアゾロ〔4,3−a〕ピラジン−7(8H)−イル〕−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(2−5)の調製
500mLのフラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体{〔RH(cod)Cl〕}(292mg、1.18mmol)及び(R,S)t−ブチルJosiphos(708mg、1.3mmol)を窒素雰囲気下で投入した。次に脱ガスMeOH(200mL)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。4Lの水素化装置に、エナミンアミド2−4(118g、0.29mol)を、MeOH(1L)と共に投入した。スラリーを脱ガスした。次に触媒溶液を、窒素下で水素化装置に移した。3回脱ガスした後、エナミンアミドを、200psiの水素ガス、50℃で13時間水素化した。アッセイにより、HPLCが93%であり、光学純度が94%eeであることが認められた。
【0194】
光学純度は、以下の方法により更に向上した。水素化反応からのメタノール溶液(MeOH 180mL中18g)を濃縮し、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)(45mL)に代えた。この溶液に、HPO水溶液(0.5M、95mL)を加えた。層を分離した後、3N NaOH(35mL)を水層に加え、次にこれをMTBE(180mL+100mL)で抽出した。MTBE溶液を濃縮し、溶媒を高温トルエン(180mL、約75℃)に代えた。次に高温トルエン溶液をゆっくりと(5〜10時間)0℃に冷ました。結晶を濾過により単離した(13g、収率72%、98〜99%ee);融点114.1〜115.7℃。
H NMR (300 MHz,CDCN): δ 7.26(m),7.08(m),4.90(s),4.89(s),4.14(m),3.95(m),3.40(m),2.68(m),2.49(m),1.40(bs).
【0195】
化合物2−5は、アミド結合回転異性体として存在する。特に示されない限り、炭素13シグナルがあまり良好に分割されないので、大小の回転異性体は一緒に集まっている。
13C NMR(CDCN):δ 171.8,157.4(ddd ,JCF=242.4,9.2,2.5Hz),152.2(major),151.8(minor),149.3(ddd;JCF=246.7,14.2,12.9 Hz),147.4(ddd,JCF=241.2,12.3,3.7Hz),144.2(q,JCF=38.8Hz),124.6(ddd,JCF=18.5,5.9,4.0Hz),120.4(dd,JCF=19.1,6.2Hz),119.8(q,JCF=268.9Hz),106.2(dd,JCF=29.5,20.9Hz),50.1,44.8,44.3(minor),43.2(minor),42.4,41.6(minor),41.4,39.6,38.5(minor),36.9.
【0196】
結晶質遊離塩基は、以下のように単離することもできる。
(a)水素化工程の完了時の反応混合物に、25重量%のEcosorb C−941を投入する。混合物を窒素下で1時間撹拌し、次に濾過する。ケーキをメタノール2L/kgで洗浄する。遊離塩基の回収は約95%であり、光学純度は約95%eeである。
(b)メタノール中の遊離塩基溶液を3.5〜4.0L/kg容量(遊離塩基投入物に基づく)に濃縮し、次にイソプロパノール(IPA)に溶媒を代えて、最終容量を3.0L/kg IPAにする。
(c)スラリーを40℃に加熱し、40℃で1時間熟成させ、次に2時間かけて25℃に冷却する。
(d)ヘプタン(7L/kg)を7時間かけて投入し、スラリーを22〜25℃で12時間撹拌する。濾過する前の上澄み濃度は10〜12mg/gである。
(e)スラリーを濾過し、固体を30%IPA/ヘプタン(2L/kg)で洗浄する。
(f)固体を真空オーブンにより40℃で乾燥する。
(g)遊離塩基の光学純度は約99%eeである。
【0197】
(2R)−4−オキソ−4−〔3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ〔1,2,4〕トリアゾロ〔4,3−a〕ピラジン−7(8H)−イル〕−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンリン酸二水素一水和物(MK−0431)
オーバーヘッド撹拌機、加熱マントル及び熱電対を備えた250mLの丸底フラスコに、イソプロパノール(IPA)31.5mL、水13.5mL、(2R)−4−オキソ−4−〔3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ〔1,2,4〕トリアゾロ〔4,3−a〕ピラジン−7(8H)−イル〕−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン遊離塩基15.0g(36.9mmol)及び85%リン酸水溶液4.25g(36.9mmol)を投入した。混合物を75℃に加熱した。低温度で厚い白色の沈殿物が形成されたが、75℃になると溶解した。溶液を68℃に冷却し、次にこの温度で2時間保持した。固体のスラリー床がこの熟成時間中に形成された〔溶液に0.5〜5重量%の小粒径(alpine摩砕)の一水和物を接種することができる〕。次にスラリーを4℃/時間の速度で21℃に冷却し、その後一晩保持した。次にIPA 105mLをスラリーに加えた。1時間後、スラリーを濾過し、IPA 45mLで洗浄した(他の結晶形態になることを避けるために、固体を水/IPA溶液で洗浄することもできる)。固体を空気に開放したフリットにより乾燥した。固体18.6gを回収した。固体は、HPLC領域率によると99.8%を越える純度であると見出された(HPLC条件は上記と同一である)。単離した固体の粒径分布分析は、80ミクロンの平均PSDが、180ミクロンよりも95%低かったことを示した。固体の結晶形態は、X線粉末回析及び熱重量分析により一水和物であることが示された。
【0198】
実施例1
DPP−IVインヒビター(MK−0431)とカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト(式IIIの化合物)との併用処置のインビボ研究(肥満/食物摂取及びグルコース/インスリンに対する効果)
DIOマウスを、式IIIの化合物の有効用量とMK−0431の有効用量で同時に処置する。
【0199】
材料及び方法:
雄C57BL/6Jマウス(CLEA Japan Inc.、薬剤投与の開始時で12〜16か月齢)を使用する。マウスに水と通常のペレット型固形飼料(CE−2,CLEA Japan Inc.)を自由に与える。彼らは、温度23±2℃、相対湿度55±15%、1週間の隔離及び順化期間中は12時間の明暗サイクル(7時から19時)で維持された動物飼育室に保持される。薬剤投与の開始前に、マウスは、MHF食餌(Oriental BioService Co., Tokyo,Japan)を、体重増加が平坦になるまで少なくとも2か月間摂取する。体重増加が平坦になった後、食餌を粉末MHF食餌に変える。粉末MHF食餌は、粉末供給装置(小皿)により与えられる。食餌及び皿は毎日交換され、一日食物摂取量を測定する。この期間中、動物には、ビヒクル(蒸留水中0.5%メチルセルロース)が胃管栄養法により1日1回経口投与される。安定した摂取が観察された後、新たな食物の量は、こぼれる食物の量を最小限にするために、1日食物摂取量+0.3gに調整される。順化期間後、MHF食餌摂取マウスを、2つの群に分けて、体重及び食物摂取の平均値を合わせる(n=8〜12)。群の一つには、ビヒクルを経口投与し、一方、第2の群には、式IIIの化合物とMK−0431の組み合わせを投与する。MK−0431は、100mg/kgの用量を1日一回、式IIIの化合物は、10mg/kgの用量を1日一回、それぞれ胃管栄養法により1.5ヶ月間与える。投与は、体重測定後で暗期が始まる1時間半前に行う。食物及び体重を測定する。処置期間の終了時に、動物を一晩絶食させ、経口グルコース耐性試験を実施する。
【0200】
有効な組み合わせは、ビヒクル処置群と比較して、処置群において>5%の体重減、統計学的に有意な、グルコース及び/若しくはインスリンの低減、並びに/又は経口グルコース耐性試験における改善をもたらす。
【0201】
実施例2
DPP−IVインヒビター(MK−0431)とカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト(式IIIの化合物)との併用治療のヒト研究(肥満/食物摂取及びグルコース/インスリンに対する効果)
材料及び方法:
II型糖尿病を示す、空腹時血漿グルコールレベル障害、グルコース耐性障害又は血清インスリンの上昇を有する、適切な人数のBMI≧30の人に、食事制限及び身体的活動の増加について助言する。食事制限、身体的活動及び生活習慣の変化の標準的なプログラムを含む、2週間のプラセボならし期間の後、患者を4つの治療群:プラセボ;MK−0431の有効量、例えば100mg;式IIIの化合物の有効量、例えば10mg;及び式IIIの化合物の有効量+MK−0431の有効量、に無作為化する。予め有効であると認められるので、式IIIの化合物を、1日あたり1回以上与える。予め有効であると認められるので、MK−0431を、1日あたり1回以上与える。この2つの化合物を単一投与単位で与えてもよい。患者を6ヶ月間治療し、体重を2〜4週間毎に測定し、食欲、空腹、飽満を標準的なアンケートを使用して2〜12週間毎に計る。血清グルコース及びインスリンレベルは、0日目に、4〜12週間の間隔で、及び最終投与後に測定する。
【0202】
有効な組み合わせは、≧5%の体重低減及び血清インスリンレベルの改善をもたらし、これはインスリン感受性の改善及び/又は空腹時血中グルコースレベルの低下を示す。
【0203】
実施例3
代謝症候群の非糖尿病齧歯類モデル:場合により抗高血圧剤及び/又は抗異脂肪血症剤を含有する、DPP−IVインヒビター(MK−0431)とカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト(式IIIの化合物)の併用処置の研究。(血圧、血清インスリンレベル、トリグリセリドレベル及び脂肪酸レベルに対する効果)
以下の実験は、代謝症候群の動物モデルにおいて血圧を低下する化合物の能力を実証する。この実験は、血中インスリンレベル、血圧及び血清トリグリセリドが上昇しているが、血清グルコースレベルは正常な範囲内である非糖尿病齧歯類モデルを使用する。
【0204】
材料及び方法
初期体重175〜199gの雄Sprague−Dawleyラット(Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN)を全ての実験に使用する。食餌操作前に、全てのラットはPurina Rat Chow(no.5012;St.Louis,MO)及び水を自由に摂取し、12時間(6時〜18時)の明暗サイクルに維持される。次にラットを、総カロリーの60%がフルクトースである食餌(TD 78463; Harlan Teklad,Madison,WI)に付す。フルクトース強化食餌を11日間与え、その間、ラットを血圧測定の手順に順化させる。周囲温度を30℃に保つ。使用した器具には、手動スキャナー(model 65−12,IITC,Inc.,Woodland Hills,CA)と接続された磁気動物ホルダー、パルス増幅器(model 59,IITC,Inc.)及び二重チャンネル記録器(model 1202,Linear Intrs.Corp.,Reno,Nevada)が含まれる。
【0205】
初期食餌期間終了時に、血圧を測定し、ラットを無作為に2つの群に分ける。両群でフルクトース強化食餌を維持するが、一方の群には、MK−0431(例えば100mpk PO)及び式IIIの化合物と、場合によりエナラプリル若しくはロサルタンのような抗高血圧剤及び/又はシンバスタチンのような抗脂質剤との組み合わせを胃管栄養補給するが、他方の群は、同じ方法によりビヒクル単独で処置される。血圧を、組み合わせ又はビヒクルのいずれかの投与前後に、1週間につき1回測定する(治療は8週間)。両方の場合において、一般的な手順は同様である。ラットを動物飼育室から取り出し、9時に実験室に入れる。ラットは、自由に水を摂取でき、13時に血圧を測定する前に静寂領域で保持される。外部予熱がないテイルカフ法を使用して収縮期血圧を測定する。収縮期血圧は意識のある状態で測定され、この技術により得られるものは、直接動脈カニューレ挿入法により得られるものに類似していることが示されている。最終血圧測定を、組み合わせ又はビヒクルを最終日の朝の投与後の午後に実施した。研究したラットのおよそ半分で、尾静脈血を1300時(食物を取り除いた4時間後)に採り、遠心分離、冷凍し、後で血漿グルコース、インスリン及びトリグリセリド濃度をアッセイする。血漿遊離脂肪酸濃度を、市販のキット(Waro Chemicals Inc.,Richmond,VA)を使用して、ACS−ACOD法により酵素的にアッセイする。
【0206】
この実施例で使用した動物モデルは、代謝症候群の特徴の多くを有する。フルクトースを摂取したラットは、血中グルコースを増加せず、したがってこれは糖尿病モデルではない。しかし、これらのラットは、血清インスリンの増加、トリグリセリド及び遊離脂肪酸濃度の増加、並びに血圧の増加は示す。従って、この動物モデルは代謝症候群の動物モデルである。
【0207】
有効な組み合わせは、代謝症候群に関連する症状の特徴的な群を改善する。有効な組成物は、血中グルコースレベルが正常のままである非糖尿病ラットモデルにおいて、代謝症候群の症状:血圧、血中インスリン、遊離脂肪酸、体重及びトリグリセリドレベルのうちの少なくとも2つを低下する。
【0208】
BRS3 KOマウス(Ohki−Hamazki et al,Nature,390:165(1997)及び食餌誘導肥満及び高血圧イヌ(Hall et al,Am.J.Hypertension,14:103S−115S(2001))を含む、追加的な動物モデルも使用できる。
【0209】
本発明は、特定の特別の実施形態を参照して記載及び説明されてきたが、当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、手順及びプロトコールの多様な適合、変更、修正、置換、削除、又は追加を行えることを理解する。例えば、本明細書における上記の特定の投与量以外の有効投与量を、上記で示される本発明の化合物によりいずれかの適応症が治療される哺乳動物の反応が異なる場合にも適用できる。観察される特定の薬理学的応答は、選択される特定の活性化合物又は医薬担体が存在するかに従って及び応じて、並びに用いられる製剤の種類及び投与様式に従って及び応じて変わる場合があり、結果におけるそのような予測される変動又は差異は、本発明の目的及び実施に従って考慮される。したがって、本発明は、特許請求の範囲により定義され、そのような請求項は、合理的である限りできるだけ広義に解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−〔3−(4−クロロフェニル)−1−メチル−2−フェニルプロピル〕−2−(2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−1−メチル−2−フェニル−プロピル〕−2−(5−クロロ−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(3−ピリジル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(5−クロロ−3−ピリジル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(5−メチル−3−ピリジル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(5−シアノ−3−ピリジル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(3−メチルフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−フェニル−1−メチルプロピル〕−2−(4−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−フェニル−1−メチルプロピル〕−2−(4−トリフルオロメチル−2−ピリミジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−1−メチル−2−(チオフェン−3−イル)プロピル〕−2−(5−クロロ−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(5−クロロ−2−ピリジル)−2−フェニル−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−フルオロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−メトキシ−フェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−(6−トリフルオロメチル−4−ピリミジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔2−(3−シアノフェニル)−1,4−ジメチルペンチル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔2−(3−シアノフェニル)−3−シクロブチル−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔2−(3−シアノフェニル)−1−メチル−ヘプチル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔2−(3−シアノフェニル)−3−シクロペンチル−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
N−〔2−(3−シアノフェニル)−3−シクロヘキシル−1−メチルプロピル〕−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシ)−2−メチルプロパンアミド;
3−{1−〔ビス(4−クロロフェニル)メチル〕アゼチジン−3−イリデン}−3−(3,5−ジフルオロフェニル)−2,2−ジメチルプロパンニトリル;
1−{1−〔1−(4−クロロフェニル)ペンチル〕アゼチジン−3−イル}−1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2−メチルプロパン−2−オール;
3−((S)−(4−クロロフェニル){3−〔(1S)−1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル〕アゼチジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリル;
3−((S)−(4−クロロフェニル){3−〔(1S)−1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2−フルオロ−2−メチルプロピル〕アゼチジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリル;
3−((4−クロロフェニル){3−〔1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2,2−ジメチルプロピル〕アゼチジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリル;
3−((1S)−1−{1−〔(S)−(3−シアノフェニル)(4−シアノフェニル)メチル〕アゼチジン−3−イル}−2−フルオロ−2−メチルプロピル)−5−フルオロベンゾニトリル;
3−〔((S)−(4−クロロフェニル)(3−{(1S)−2−フルオロ−1−〔3−フルオロ−5−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)フェニル〕−2−メチルプロピル}アゼチジン−1−イル)メチル〕ベンゾニトリル;及び
5−((4−クロロフェニル){3−〔(1S)−1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2−フルオロ−2−メチルプロピル〕アゼチジン−1−イル}メチル)チオフェン−3−カルボニトリル;並びにその立体異性体、薬学的に許容される塩、水和物及び結晶形態からなる群より選択されるカンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニストと、
下記構造式:
【化1】

で示される(2R)−4−オキソ−4−〔3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ〔1,2,4〕トリアゾール〔4,3−a〕ピラジン−7(8H)−イル〕−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンである、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害薬又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶形態とを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記ジペプチジルペプチダーゼIV阻害薬の前記薬学的に許容される塩が、下記構造式:
【化2】

で示されるリン酸二水素塩又は薬学的に許容されるその水和物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記CB受容体拮抗薬/インバースアゴニストが、下記式:
【化3】

で示されるN−〔(1S,2S)−3−(4−クロロフェニル)−2−(3−シアノフェニル)−1−メチルプロピル〕−2−メチル−{〔5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル〕オキシ}プロパンアミド又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは結晶形態である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記リン酸二水素塩が結晶質一水和物の形態である、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害から選択される状態を治療する方法であって、その必要性のある対象に請求項3に記載の組成物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項6】
前記リン酸二水素塩が結晶質一水和物の形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記状態が糖尿病である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記状態が肥満である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記糖尿病関連障害が、高血糖症、糖尿病前症、グルコース耐性障害、空腹時血糖異常、肥満、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベル、高LDLレベル、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、睡眠時無呼吸、多嚢胞性卵巣症候群及び代謝症候群からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
治療の必要性がある被験者における糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害の治療に有用な薬剤製造のための、請求項3に記載の組成物の治療有効量の使用。
【請求項11】
治療の必要性がある対象における糖尿病、糖尿病関連障害、肥満及び肥満関連障害の治療に有用な薬剤製造のための、請求項4に記載の組成物の治療有効量の使用。
【請求項12】
薬学的に許容される担体又は希釈剤と一緒に、単一の医薬組成物として、前記カンナビノイドCB受容体拮抗薬/インバースアゴニスト及び前記ジペプチジルペプチダーゼIV阻害薬を投与する請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2008−540426(P2008−540426A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510121(P2008−510121)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/016754
【国際公開番号】WO2006/119260
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】