説明

糸の異物検出装置及びこれを備えた繊維機械

【課題】糸のトラッシュと色糸とを判別して、トラッシュは異物として検出しないようにする。
【解決手段】走行する糸Yに光を照射する投光手段72a,72bと、投光手段72a,72bの照射光による糸Yからの反射光を受光する受光手段73a,73bと、受光手段73a,73bの受光量を測定する測定手段78と、測定手段78の測定値に基づいて所定の演算をし、演算値と閾値とを比較して前記糸に混在するトラッシュと色糸とを判別する判別手段74とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行糸に混在する異物を検出する異物検出装置及びこれを備えた繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
紡績機や自動ワインダーなどの繊維機械は、給糸部から供給される糸を巻取部へ巻き取り、巻取りパッケージなどを形成する(特許文献1等)。繊維機械は、走行する糸に混在する異物等を検出する検出装置を備えている。この異物検出装置が糸の異物を検出した際、繊維機械は、糸の異物混入部を切断、除去して、糸継ぎ手段で給糸側の糸端と巻取側の糸端とを繋ぎ、その後異物混入部の取り除かれた糸が巻取部に巻き取られる。
【0003】
このような異物検出装置として、走行する糸に光を照射し、この照射光による糸からの反射光を受光して、この受光量から糸の異物を検出する装置がある(特許文献2等)。この異物検出装置は、受光量の大きさに基づいて糸の異物を検出する。そして、従来の異物検出装置では、走行する糸のトラッシュ(スライバに含有する葉カスや繊維の固まり等が混入した糸部分)と色糸(輸送途中等にスライバに混入した黒や暗色等の糸部分)との双方を異物混入部として検出する。しかし、糸のトラッシュは後工程で漂白されることにより、糸に含まれていても問題ないこともある。
【特許文献1】特開2003−113539号公報
【特許文献2】特開2005−68569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明が解決しようとする課題は、糸のトラッシュと色糸とを判別して、トラッシュは異物として検出しないようにする糸の異物検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決するために、本発明の提供する糸の異物検出装置は、走行する糸に光を照射する投光手段と、投光手段の照射光による前記糸からの反射光を受光する受光手段と、受光手段の受光量を測定する測定手段と、測定手段の測定値に基づいて所定の演算をし、演算値と閾値とを比較して糸に混在するトラッシュと色糸とを判別する判別手段とを備えている。
【0006】
好ましくは、前記判別手段は、基準値以下である測定値を置換値に置き換えて、所定区間における基準値と測定値又は置換値とによって形成される領域面積を演算して、演算値を得る。
【0007】
さらに好ましくは、前記判別手段は、所定区間における測定値の中央値と最小値との差を演算して、演算値を得る。
【0008】
本発明に係る繊維機械は、供給側から供給される糸を巻取り側に巻き取る繊維機械において、走行糸に混在する異物を検出する異物検出装置を備えており、異物検出装置は、走行する糸に光を照射する投光手段と、投光手段の照射光による糸からの反射光を受光する受光手段と、受光手段の受光量を測定する測定手段と、測定手段の測定値に基づいて所定の演算をし、演算値と閾値とを比較して糸に混在するトラッシュと色糸とを判別する判別手段とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る糸の異物検出装置は、前記のように、糸からの反射光による測定値に基づいて所定の演算を行い、この演算値から糸に混在するトラッシュと色糸とを判別する判別手段を備えている。これにより、後工程で問題のなくなるトラッシュについては、異物として検出しないようにすることができ、糸継ぎ回数を減少させ操業性を大幅に向上できると共に、色糸の検出精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る糸の異物検出装置及びこれを備えた繊維機械について詳細に説明する。
【0011】
図1は、糸の異物検出装置を備えた紡績機を示す全体正面図である。図2は、図1の一部断面側面図である。紡績機は、原動機ボックス10とダストボックス11との間に、多数の紡績ユニット(糸処理ユニット)1,1,1・・・が並設されている。紡績機は、各紡績ユニット1,1,1・・・に沿うレール14が設けられており、このレール14を糸継ぎ台車9が左右方向に往復走行可能に構成されている。糸継ぎ台車9は、糸継ぎを要求する紡績ユニット1に走行、停止して、糸継ぎ作業を行う。
【0012】
各紡績ユニット1は、ドラフト装置3、紡績装置40、糸送り装置41及び巻き取り装置44を備えている。ドラフト装置3は、バックローラ31、サードローラ32、ミドルローラ33及びフロントローラ34を有している。紡績装置40は、空気噴射ノズル等を有しており、巻き取り装置44は、巻取りパッケージ44a等を備えている。
【0013】
機台15の背部に設けられたスライバケンス(図示略)から引き出されたスライバCが、バックローラ31へ供給され、ドラフト装置3によってドラフト(延伸)される。紡績装置40によって、この繊維束に圧縮空気の旋回気流を作用させて紡績して、紡績糸Yを生成する。
【0014】
紡績装置40から排出された紡績糸Yは、糸送り装置41によって下方へ送られ、糸の異物を検出する異物検出装置7と糸の異物を除去するカッター装置42とを経て、巻き取り装置44によって巻取りパッケージ44aに巻き取られる。異物検出装置7は、糸に混入した異物等を検出する機能を有する。
【0015】
糸送り装置41は、デリベリローラ41aと、このデリベリローラ41aに接触するニップローラ41bとからなる。紡績装置40から排出された紡績糸Yは、デリベリローラ41aとニップローラ41bとの間に挟まれて、デリベリローラ41aの回転駆動によって下方へ送られる。
【0016】
糸継ぎ台車9は、紡績装置40からの紡績糸Yを吸引捕捉するサンクションパイプ(供給側糸端捕捉手段)91と、巻取りパッケージ44aからの紡績糸Yを吸引捕捉するサクションマウス(巻取り側糸端捕捉手段)92と、このサクションパイプ91及びサクションマウス92が捕捉した各紡績糸Yを繋ぐ糸継ぎ装置93と、を備えている。糸継ぎ装置93は、図示しないクランプ部材、カッター部材、スプライサー等で構成されている。
【0017】
次に、異物検出装置7と、この異物検出装置7によって糸異物を検出した際の、糸異物を除去して糸継ぎをする動作について説明する。図3は、糸の異物検出装置等の構成を示すブロック図である。図4は、異物検出装置の検出部を示す断面図である。図5は、糸の反射信号を示すグラフ図であり、(a)はトラッシュにおける反射信号を示し、(b)は色糸における反射信号を示す。
【0018】
異物検出装置7及びカッター装置42は、機台15の正面側に設けられており(図2)、紡績装置40から紡出される紡績糸Yが通過する。異物検出装置7は、検出部71及び判別部74によって、走行する紡績糸Yの糸異物を検知し、判別する。
【0019】
図4の如く、検出部71は、LED等の発光素子からなる投光部72a及び72bと、光電変換素子からなる受光部73a及び73bとを備えている。検出部71は、糸通路71aを備えており、この糸通路71aを糸Yが走行する。投光部72a及び72bは、糸Yに対して2つの異なる方向から照射する。受光部73aは、投光部72aからの照射光が糸Yを透過した透過光(図4の実線矢印)と、投光部72bからの照射光が糸Yで反射した反射光(図4の点線矢印)を受光する。受光部73bは、投光部72bからの照射光が糸Yを透過した透過光(図4の実線矢印)と、投光部72aからの照射光が糸Yで反射した反射光(図4の点線矢印)を受光する。
【0020】
検出部71は、投光部72a及び72bの2つの異なる方向から糸Yの異物混入に対する監視を行うことができ、より確実に異物検出を行う。さらに、投光部72a及び72bによる二方向からの照射を交互に行うことによって、外部から侵入する光や他の光源による影響を防止すると共に、全体として連続した異物監視を実現することができる。
【0021】
受光部73a及び73bは、受光量の大きさに比例して電圧値が上昇するように構成されている。測定部78は、受光部73a及び73bからの電圧値に基づいて、反射光及び透過光の受光量を測定する。反射光の変動の大きさから糸の異物の混入を検出し、透過光の変動の大きさから糸の太さに関する異常を検出する。従って、糸のトラッシュ及び色糸の混入は糸異物であるので、反射光の変動に基づいて検出する。投光部72a及び72bの照射光を所定糸長さ又は時間の経過毎に交互に出力することにより、反射光と透過光の受光量を判別して測定する。
【0022】
判別部74は、演算部75、記憶部76、比較部77を備えている。演算部75は、測定部78からの測定値(電圧値)に基づいて所定の演算を行う。記憶部76は、糸異物の有無を検知するための閾値が記憶されている。比較部77は、演算部75による演算値と、記憶部76の記憶する閾値とを比較する。比較部77は、比較結果に基づいて糸のトラッシュと色糸とを判別して、紡績ユニットコントローラ13へ通信する。
【0023】
以上の構成により、受光部73a及び73bからの反射信号(電圧信号)が測定部78へ次々と入力され、走行する紡績糸Yをモニタする。即ち、走行糸Yの反射光による受光量が変動すると、受光部73a及び73bの出力する電圧値が変動する。そして、この電圧値が、測定値に変換されて測定部78へ入力され、この測定値に基づいて演算部75が所定の演算を行う。なお、電圧値を測定値として、電圧値から直接所定の演算を行ってもよい。
【0024】
測定部78は、長さ又は時間の経過に伴う受光部73a及び73bからの出力電圧を測定する。図5のグラフ図は、経過長さ又は時間と出力電圧の関係を示している。例えば、糸Yの長さ0.5[mm]毎に出力電圧をプロットしてグラフを作成する。演算部75は、走行糸Yの所定区間L(例えば15.0[mm])における基準電圧値A1(基準レベル)と出力電圧(又は測定値)のグラフGとが囲む領域の面積S(図5の斜線部分)を演算する。この演算値が受光量の大きさとなる。演算値と閾値とを比較部77が比較して、糸Yの異物の存在の有無を検知する。所定区間は、本例では所定走行糸長さであるが、所定経過時間などでもよい。
【0025】
しかし、従来の演算方式では、単に所定区間Lにおける上記の領域面積Sを演算して演算値を得ていたので、異物の存在を検知することはできるが、トラッシュと色糸とを区別して判別することができない。図5の(a)はトラッシュの状態を示すグラフ、(b)は色糸の状態を示すグラフである。
【0026】
そこで、本発明では、図5の如く、トラッシュは「暗くて短い」、色糸は「少し暗くて長い」、という特徴に基づいて、下記で説明する所定の演算方式によりトラッシュと色糸とを判別する。そして、比較部77は、トラッシュと判断した場合に紡績ユニットコントローラ13へ通信せず、色糸と判断した場合にのみ紡績ユニットコントローラ13へ信号を送り、この信号によって、紡績糸Yの糸異物(色糸)を除去し糸継ぎするための次の動作を開始するよう構成した。
【0027】
この信号を受信した紡績ユニットコントローラ13は、直ちにカッター装置42を作動させて紡績糸Yを切断すると共に、ドラフト装置3及び紡績装置40を一旦停止し、糸継ぎ台車コントローラ94へ信号を送る。これにより、糸継ぎ台車9は、該当する紡績ユニット1の前まで自走する。その後、紡績ユニットコントローラ13が、ドラフト装置3及び紡績装置40を再駆動する。
【0028】
そして、糸継ぎ台車9が、サクションパイプ91で紡出側の糸Yを吸引捕捉し、サクションマウス92で巻取り側の糸Yを吸引捕捉して、各糸Yを糸継ぎ装置93に案内して糸継ぎする。糸継ぎ完了後、紡績及び巻取りを再開する。
【0029】
(第一実施例の演算方式)
先ず、第一実施例の演算方式(レベル方式)について説明する。置換基準レベル[%]、最大置換点数[点]及び置換値[%]を設定する。演算部75は、適宜これらを設定できる手段を備えている。置換基準レベル(出力電圧A2)とは、基準レベル(出力電圧A1)に対する所定の割合(又は所定の電圧値)をいい、置換基準レベル以下の測定値(電圧値)を置換値に置き換える。最大置換点数とは、置き換える測定値(又は電圧値)の所定の最大点数をいう。置換値は、基準レベル(出力電圧A1)に対する所定の割合(又は所定の電圧値)である。
【0030】
演算部75は、所定長さLについて、置換基準レベル以下の測定値(電圧値)を最大置換点数内で置換値に置き換えて、基準レベル(出力電圧A)と測定値(電圧値)又は置換値とによって形成される領域面積Sを演算する。この演算値(領域面積S)と閾値とを比較部77が比較して、演算値が閾値よりも大きいときに、糸Yの異物(色糸)の存在を検知する。即ち、トラッシュについては異物と検知しないように、置換基準レベル、置換値、閾値等が設定されている。
【0031】
第一実施例の演算方式について、具体的な数値を例示して説明する。図6は、第一実施例の演算方式を説明するためのフローチャート図である。
「基準出力電圧A1」を1.0[V]とし、これを「基準レベル」0[%]とする。「置換基準レベル」を−50[%]に設定する(「電圧値A2」は、0.5[V](=1.0[V]×50[%])である)。「最大置換点数」を2[点]とする。「置換値」を0[%]とする。「所定長さL」を15.0[mm]とする。「閾値」を−300[mm・%](=15.0[mm]×−20[%])とする。
【0032】
測定部78が走行する糸Yを通過長さ0.5[mm]毎に出力電圧を測定する。出力電圧毎に、基準出力電圧A1に対する割合を測定値[%]とする(例えば、出力電圧0.9[V]の測定値は−10[%]となる)。
【0033】
先ず、所定長さLについて、測定値を用いて領域面積Sを演算する。演算値(領域面積S)と閾値(−300)とを比較する(図6のステップS1)。演算値(領域面積S)が閾値(−300)より大きいとき(例えば、領域面積Sが−200のとき)、糸の異常を検知しない。演算値(領域面積S)が閾値より小さいとき(例えば、領域面積Sが−400のとき)、次のステップ(S2)へ進む。
【0034】
領域S内の最小測定値を抽出する。最小測定値と置換基準レベル(−50)とを比較する(図6のステップS2)。最小測定値が置換基準レベル(−50)より大きいとき(例えば、最小測定値が−25のとき)、糸の異常を検知して、異常部分を切断、除去する(図6のステップS10)。この場合、糸の異常部分が「少し暗くて長い」と判断できるので、トラッシュではないと判別する。そして、最小測定値が置換基準レベル(−50)より小さいとき(例えば、最小測定値が−80或いは−60のとき)、次のステップ(S3)へ進む。
【0035】
先ず、領域面積S(−400)で、領域S内における置換基準レベル(−50)よりも小さい測定値が、(−80,−70,−60)である例について説明する。
領域S内の最小測定値と置換基準レベル(−50)とを比較する(図6のステップS3)。最小測定値は−80であって、置換基準レベル(−50)より小さいので、次のステップ(S4)へ進む。最小測定値(−80)を置換値(0)に置き換えて、演算値(領域面積S)を次の演算式で補正する(図6のステップ4)。
・「補正後の演算値」(−320)=「演算値」(−400)−「最小測定値」(−80)+「置換値」(0)
そして、置換点数を1点とする(図6のステップS5)。置換点数(1点)と最大置換点数(2点)とを比較する(図6のステップS6)。置換点数(1点)が最大置換点数(2点)より小さいので、ステップS3へ戻る。
【0036】
領域S内の残りの最小測定値と置換基準レベル(−50)とを比較する(図6のステップS3)。残りの最小測定値は−70であって(上記より−80は0に置換されているため)、置換基準レベル(−50)より小さいので、次のステップ(S4)へ進む。残りの最小測定値(−70)を置換値(0)に置き換えて、演算値(領域面積S)を次の演算式で再補正する(図6のステップ4)。
・「再補正後の演算値」(−250)=「補正後の演算値」(−320)−「残りの最小測定値」(−70)+「置換値」(0)
そして、置換点数を1アップして2点とする(図6のステップS5)。置換点数(2点)と最大置換点数(2点)とを比較する(図6のステップS6)。置換点数(2点)が最大置換点数(2点)と同じなので、次のステップS7へ進む。
【0037】
最終補正後の演算値(−250)と閾値(−300)とを比較する(図6のステップS7)。最終補正後の演算値が閾値より大きいので、トラッシュと認識してスキップする(図6のステップS8)。トラッシュは、前記したように「暗くて短い」ので(図5(a))、測定値が置換値に置き換わることにより演算値が大きくなり、閾値以上になる場合が多く異物として検出されなくなる。
【0038】
次に、領域面積S(−400)で、領域S内における置換基準レベル(−50)よりも小さい測定値が、(−60)である例について説明する。
領域S内の最小測定値と置換基準レベル(−50)とを比較する(図6のステップS3)。最小測定値は−60であって、置換基準レベル(−50)より小さいので、次のステップ(S4)へ進む。最小測定値(−60)を置換値(0)に置き換えて、演算値(領域面積S)を次の演算式で補正する(図6のステップ4)。
・「補正後の演算値」(−340)=「演算値」(−400)−「最小測定値」(−60)+「置換値」(0)
そして、置換点数を1点とする(図6のステップS5)。置換点数(1点)と最大置換点数(2点)とを比較する(図6のステップS6)。置換点数(1点)が最大置換点数(2点)より小さいので、ステップS3へ戻る。
【0039】
領域S内の残りの最小測定値と置換基準レベル(−50)とを比較する(図6のステップS3)。上記より−60は0に置換されているので、残りの最小測定値は置換基準レベル(−50)より大きい。従って、ステップ(S7)へ進む。
【0040】
最終補正後の演算値(−340)と閾値(−300)とを比較する(図6のステップS7)。最終補正後の演算値が閾値より小さいので、色糸と認識して(図6のステップS9)、色糸部分を切断、除去する(図6のステップS10)。色糸は、前記したように「少し暗くて長い」ので(図5(b))、測定値が置換値に置き換わっても、演算値はさほど大きくならないので、閾値以下のままとなり、異物(色糸)として検出される。
【0041】
(第二実施例の演算方式)
次に、第二実施例の演算方式(波形方式)について説明する。この方式は、演算部75が、所定長さLにおける電圧値(測定値)の中央値と最小値とを導き、中央値と最小値との差を演算する。そして、この演算値と閾値とを比較部77が比較して、演算値が閾値よりも小さい時に糸Yの異物(色糸)の存在を検知する。
【0042】
第二実施例の演算方式について、具体的な数値を例示する。所定長さLを15.0[mm]とする。閾値を0.6[V]と設定する。所定長さLにおける0.5[mm]毎の出力電圧と昇順で並べた出力電圧との関係を表1及び表2に示す。表1は図5(a)の所定長さLについて、表2は図5(b)の所定長さLについて示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の如く、図5(a)の所定長さLについて、最小値は最小(第1順位)の出力電圧で0.17[V]、中央値は昇順に並べた中央(第15順位)の出力電圧で1.00[V]となる。演算値は0.83[V](=1.00[V]−0.17[V])となる。この場合、演算値0.83[V]が閾値0.6[V]以上なので異物の存在を検知しない。
【0045】
【表2】

【0046】
表2の如く、図5(b)の所定長さLについて、最小値は最小(第1順位)の出力電圧で0.45[V]、中央値は昇順に並べた中央(第15順位)の出力電圧で0.93[V]となる。演算値は0.48[V](=0.93[V]−0.45[V])となる。この場合、演算値0.48[V]が閾値0.6[V]以下なので異物の存在を検知する。
【0047】
上記のように、この演算方式によれば、トラッシュについては異物として検知せず(図5(a)及び表1)、色糸については異物として検出する(図5(b)及び表2)。この演算方式による演算値が、トラッシュと色糸とで大きな差が出力されることを見出し、閾値を適切に設定することにより、トラッシュは異物として検出されず、色糸は異物として検出される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】糸の異物検出装置を備えた紡績機を示す全体正面図である。
【図2】図1の一部断面側面図である。
【図3】糸の異物検出装置等の構成を示すブロック図である。
【図4】異物検出装置の検出部を示す断面図である。
【図5】糸の反射信号を示すグラフ図であり、(a)はトラッシュにおける反射信号を示し、(b)は色糸における反射信号を示す。
【図6】第一実施例の演算方式を説明するためのフローチャート図である。
【符号の説明】
【0049】
3 ドラフト装置
4 巻き取り装置
41 糸送り装置
42 カッター装置
13 紡績ユニットコントローラ
7 異物検出装置
71 検出部
72a,72b 投光部
73a,73b 受光部
74 判別部
75 演算部
76 記憶部
77 比較部
78 測定部
9 糸継ぎ台車
C スライバ
Y 紡績糸
L 所定長さ
S 領域面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する糸に光を照射する投光手段と、前記投光手段の照射光による前記糸からの反射光を受光する受光手段と、前記受光手段の受光量を測定する測定手段と、前記測定手段の測定値に基づいて所定の演算をし、演算値と閾値とを比較して前記糸に混在するトラッシュと色糸とを判別する判別手段とを備えていることを特徴とする糸の異物検出装置。
【請求項2】
前記判別手段は、基準値以下である前記測定値を置換値に置き換えて、所定区間における前記基準値と前記測定値又は前記置換値とによって形成される領域面積を演算して、前記演算値を得ることを特徴とする請求項1に記載の糸の異物検出装置。
【請求項3】
前記判別手段は、所定区間における前記測定値の中央値と最小値との差を演算して、前記演算値を得ることを特徴とする請求項1に記載の糸の異物検出装置。
【請求項4】
供給側から供給される糸を巻取り側に巻き取る繊維機械において、走行糸に混在する異物を検出する異物検出装置を備えており、前記異物検出装置は、走行する糸に光を照射する投光手段と、前記投光手段の照射光による前記糸からの反射光を受光する受光手段と、前記受光手段の受光量を測定する測定手段と、前記測定手段の測定値に基づいて所定の演算をし、演算値と閾値とを比較して前記糸に混在するトラッシュと色糸とを判別する判別手段とを備えていることを特徴とする繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−291544(P2007−291544A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119131(P2006−119131)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】