紫外線検出装置及び離線検出記録計
【課題】太陽光及びノイズに影響されずに離線による放電現象を検出できる紫外線検出装置及び離線検出記録計を提供する。
【解決手段】紫外線検出装置100は、紫外線検出部10が、紫外線領域の波長を検出感度領域とする紫外線検出管11を備える。パルス発生部20は、複数の紫外線検出部10の検出時刻を同期させる。AND回路30は、検出時刻を同期して複数の紫外線検出部10によって検出された信号の論理積による演算結果を出力する。離線検出記録計200は、画像同期記録計51が、紫外線検出装置100の出力情報及びビデオカメラ54が撮像した映像をGPS端末53が出力する現在位置データに関連させて記録する。パルスカウンタ41は、紫外線検出装置100の出力情報を計数し、パルス計数記録装置43によって計数結果を記録する。
【解決手段】紫外線検出装置100は、紫外線検出部10が、紫外線領域の波長を検出感度領域とする紫外線検出管11を備える。パルス発生部20は、複数の紫外線検出部10の検出時刻を同期させる。AND回路30は、検出時刻を同期して複数の紫外線検出部10によって検出された信号の論理積による演算結果を出力する。離線検出記録計200は、画像同期記録計51が、紫外線検出装置100の出力情報及びビデオカメラ54が撮像した映像をGPS端末53が出力する現在位置データに関連させて記録する。パルスカウンタ41は、紫外線検出装置100の出力情報を計数し、パルス計数記録装置43によって計数結果を記録する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を検出する紫外線検出装置及び紫外線検出装置を利用した離線検出記録計に関する。
【背景技術】
【0002】
離線検出記録計とは、架空単線式電気鉄道における地上に敷設された架線(以下、「トロリ線」という。)と電気車(以下、「電車」という。)上に備えるパンタグラフとの接触状況を記録する記録計である。
架空単線式電気鉄道において、電車の運行に必要な電力は、変電所から送られ、地上に敷設されたトロリ線とこれに接触する電車上のパンタグラフを経由して車内に取り込まれる。電車の安定運行のためには、パンタグラフを流れる電流が遮断されず、電車の負荷に送られる必要がある。
パンタグラフは、低速走行時にはトロリ線との接触を維持できるが、高速走行やトロリ線に凸凹があると、トロリ線とパンタグラフが離れた状態の離線に至る。この離線が発生すると、車内停電が発生することがある。また、離線により、放電が発生すると、電波雑音や、パンタグラフのすり板とトロリ線の磨耗が増大する。そのため、集電系の良否を判断するために、これらの原因となる離線の頻度を測定することがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−274501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この離線を測定する方法としては、放電の発生を光センサで検出する光学式や、電流の遮断を電流計などで検出する電流式がある。
光学式の離線測定に用いられるセンサとして、Se(セシウム)-Te(テルル)光電面を備える電子管が知られている。この電子管は、深紫外線領域に強い感度を持つセンサであり、その感度波長範囲が200nm〜340nmにある。そのため、太陽光の影響を完全に避けることができないという問題がある。
【0004】
他のセンサとしては、感度波長範囲が185〜260nmにあるニッケル電極を用いた紫外線検出管と呼ばれる電子管がある。この紫外線検出管では、宇宙線や静電気などによるノイズの影響を受けやすいという問題がある。
このような紫外線検出管は、燃焼による炎が検出する紫外線を検出できる。火災報知機などに紫外線検出管を応用する際には、このようなノイズの影響を回避するための誤検出した信号を除去する対策が知られている。
【0005】
図9に示すブロック図は、誤検出した信号を除去する対策回路を備える火災報知機300の一例を示す。火災報知機300における紫外線検出部310は、紫外線検出管311と、紫外線検出管を駆動する駆動回路312を備える。紫外線検出部310で紫外線が検出されるとパルス信号が出力される。燃焼による炎から放出される紫外線であれば、連続的に放出されているので紫外線検出部310の出力信号は連続したパルス信号となる。また、紫外線検出部310によって、誤検出され出力される信号は、離散的な単発のパルス信号になる。
【0006】
ノイズ除去部330は、連続するパルス信号とノイズによる離散的な単発のパルスとを分離するフィルタ回路である。ノイズ除去部330は、入力されるパルス信号を計数するカウンタ回路331と、所定の時間パルス信号が入力されないとカウンタ回路331をリセットするリセット信号を出力するタイマ回路332を備える。ノイズ除去部330は、連続的にパルス信号が入力されたときにカウンタ回路331の計数が進み、リセットされずに所定の値に達すると連続的に紫外線が入力されていると判定する。
【0007】
図10に示すタイミングチャートは、ノイズ除去部330の処理を示す。
(a)は、紫外線検出部310によって検出結果によって出力された出力パルスを示し、時刻t1、t2、t3、t4、t5及びt6において、出力パルスが出力されている。(b)は、タイマ回路331が作動する時間を示し、時刻t1からタイマ動作を開始し、タイマ設定時間T1が経過するまで計時する。タイマ設定時間T1が経過し、設定された時間の計時が満了すると、タイマ回路331は停止する。停止したタイマ回路331は、紫外線検出部310が出力する次の出力パルス(時刻t6)を検出すると時刻t6から再びタイマ動作を開始する。(c)は、タイマ回路331が設定時間の計時を満了したときに出力するカウンタ回路332へのリセット信号を示す。タイマ回路331は、時刻t1から始めた設定時間の計時が満了した時刻(t1+T1)にリセット信号を出力する。(d)は、カウンタ回路332におけるカウンタ値(カウンタレベル)を示す。カウンタ回路332は、タイマ回路331における設定時間の計時が満了するとリセット信号を出力し、カウンタ回路332がリセットされる。カウンタ回路332は、そのリセット後に紫外線検出部310の出力パルスを検出すると、カウンタ値が順に加算され計数される。(e)は、カウンタ回路332の出力信号を示す。このカウンタ回路332は、予め定められる閾値(設定カウント値)に、紫外線検出部310の出力パルスの検出回数が達するとパルス信号を出力する。カウンタ回路332は、設定されたタイマ設定時間T1が経過するまでに、その検出回数に達しないときには、カウント値がリセットされる。
【0008】
この図では、駆動パルスの周期を50ミリ秒、パルス幅を5マイクロ秒、タイマ設定時間T1を1秒、予め定められる閾値(設定カウント値)を3に設定したときの例が示される。紫外線検出部310が出力する出力パルスを検出した回数が3回目の検出となることによって、そのカウント値が3となって閾値に達する。その時刻t3の時点で出力信号にパルス信号を出力する。カウンタ回路332は、その後も紫外線検出部310の出力パルスの検出を続け、タイマ設定時間T1が経過するとリセットされる。カウンタ回路332は、紫外線を検出回数が少なくカウント値が閾値に達せずにタイマ設定時間T1が経過すると、カウント値がリセットされる。つまり、火災報知機300に用いられることを目的としたタイマ回路331とカウンタ回路332を組み合わせたノイズ除去部330では、所定の時間(タイマ設定時間T1)内に継続的に検出された信号を正規の信号として判定している。
この判定方法によれば、発生する入力パルスの回数に基づいて、ノイズと思われる発生頻度の低い単発的なパルス信号を除去できる。このようにして紫外線検出部310を適用した火災報知機300では、火災警報を出力することができる。
【0009】
しかしながら、この火災報知機を目的とするノイズ除去部330を用いると、正規に検出されるべき現象が単発的であるがために、紫外線検出部で検出され出力される信号が単発的に発生するパルス信号であるときには、ノイズによる信号と区別することができずノイズと共に除去されてしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、太陽光及びノイズに影響されずに離線による放電現象を検出できる紫外線検出装置及び離線検出記録計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本発明は、複数の紫外線検出部と、前記複数の紫外線検出部によって検出された信号に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力する判定部と、を備えたことを特徴とする紫外線検出装置である。
また、本発明は、上記発明において、紫外線検出装置は、パルス信号を発生するパルス発生部を備え、前記紫外線検出部は、紫外線領域の波長を検出感度領域とする紫外線検出管と、前記パルス発生部から入力される信号に応じて前記紫外線検出管を駆動する駆動電圧を供給する駆動回路と、を備えることを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記判定部は、前記複数の紫外線検出部によって検出された信号の論理積演算による判定処理に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記判定部は、前記複数の紫外線検出部によって検出された信号の数が予め定められた所定の数以上とする判定基準に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力することを特徴とする。
【0012】
上記に記載の紫外線検出装置と、現在位置を検出して位置データを出力する位置検出部と、前記紫外線検出装置の判定部が出力する判定結果を前記位置検出部が検出する位置データに関連させて内部に備える記憶部に記録する記録部と、を備えること特徴とする離線検出記録計である。
また、本発明は、上記発明において、離線検出記録計は、前記紫外線検出装置の前記判定部が出力する判定結果を計数する計数部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記記憶部は、映像情報をさらに記憶し、前記記録部は、入力される映像信号を前記判定結果に対応させ、該判定結果によって示された時刻を含む予め定められた時間の映像を記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この本発明によれば、紫外線検出装置は、複数の紫外線検出部によって検出された信号による演算結果を判定条件とすることを特徴とする。これにより、単発性の現象をノイズに影響されることなく検出することができる。
また、本発明によれば、上記発明において、紫外線検出装置は、パルス発生部がパルス信号を発生する。紫外線検出部における紫外線検出管は、紫外線領域の波長を検出感度領域とする。また駆動回路は、パルス発生部から入力されるパルス信号に応じて紫外線検出管を駆動する駆動電圧を供給することとした。また、これにより、複数の紫外線検出部を同じ検出タイミングで動作させることにより、複数の紫外線検出部で検出する現象と検出しない現象を区別することができる。そして、複数の紫外線検出部で検出する単発性の現象と、個別の紫外線検出部で誤検出した現象とを区別することができる。また、太陽光の波長範囲外に検出領域を設定することができ、太陽光に影響することなく紫外線の検出を行うことができる。
【0015】
また、本発明によれば、上記発明において、判定部は、複数の紫外線検出部によって検出された信号の論理積演算による判定処理に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力することとする。また、これにより、全ての紫外線検出管で検出された現象のみを選択して検出することができる。
また、本発明によれば、上記発明において、判定部は、複数の紫外線検出部によって検出された信号の数が予め定められた所定の数以上の数とする判定基準に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力することを特徴とする。また、これにより、予め定められた所定の数以上の紫外線検出管で検出された現象のみを選択して検出することができる。一部の紫外線検出管の劣化などに影響されることなく現象の特定を行うことができる。
【0016】
また、本発明によれば、離線検出記録計は、上記に記載の紫外線検出装置の判定結果と位置検出部が検出した現在位置データに関連させて内部に備える記憶部に記録する。また、これにより、離線が生じたときに起こる放電による紫外線放射の発生場所に関する情報を記録することができる。
また、本発明によれば、上記発明において、離線検出記録計における計数部は、紫外線検出装置の判定結果の判定情報、すなわち紫外線の検出回数を計数する。また、これにより、離線が生じたときに起こる放電による紫外線放射の検出件数を計数することが可能となる。計数された情報を解析することにより、所定の時間或いは所定の区間における紫外線検出量を分析することができる。
【0017】
また、本発明によれば、上記発明において、記憶部は、映像情報をさらに記憶する。記録部は、入力される映像信号を判定結果に対応させ、判定結果によって示された時刻を含む予め定められた時間の映像を記録することを特徴とする。また、これにより、判定結果によって示された時刻において検出した紫外線検出の発生状況を、記憶部に映像情報として記録する。紫外線検出の有無だけでなく、そのときの発生状況を映像によって確認することにより、紫外線発生の原因の解析に有効となる情報を収集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態による紫外線検出装置について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による離線検出記録計200の利用形態を示す構成図である。
この図には、軌道1とその上部にトロリ線2が設けられている。軌道1に沿って、電車3が走行する。電車3の上面には、パンタグラフ4が設けられ、軌道1とトロリ線2の間に印加されている高圧電力を受電し走行用の電力に用いられる。パンタグラフ4の先端が、トロリ線2と接触することでトロリ線2からの電車3への電力供給が行われる接続点となる。電車3の上面において、トロリ線2とパンタグラフ4の接点における放電による光を受光できる位置に離線検出記録計200が設けられ、トロリ線2とパンタグラフ4との間に発生する放電現象を検出することができる。
この離線検出記録計200は、紫外線検出装置100、記録処理部150、ビデオカメラ54からなる。紫外線検出装置100は、紫外線を用いてトロリ線2とパンタグラフ4の接点における放電を検出するセンサとなる。紫外線検出装置100によって放電が検出されると、検出された事象に合わせて、そのときの状況をビデオカメラ54で撮像した映像情報とともに記録される。
【0019】
現在の日本の鉄道では、トロリ線には主に銅系合金が、パンタグラフには主に銅・炭素系材料が使われている。この様な材料間に発生する放電では、太陽光には含まれない200〜234nmの領域の光(深紫外線と呼ばれている光)を放出する。また、地上に到達する太陽光では、太陽からは放出されていてもそこに含まれる300nm以下の成分は、大気による吸収などよって殆ど到達しない。そのため、紫外線の波長領域にのみ感度を持つセンサを用いれば、太陽光による誤検出を回避して放電により放出される紫外線を検出することが可能になる。
【0020】
紫外線検出装置100及び離線検出記録計200に適用される紫外線検出部の一実施形態について説明する。
図2は、紫外線検出部10とパルス発生回路20を示すブロック図である。また、図3は、図2に示した紫外線検出部10における各部の電圧波形を示した図である。
紫外線検出部10は、パルス発生回路20と組み合わせて用いられる。この図に示される紫外線検出部10は、紫外線を検出して検出信号を出力する。紫外線検出部10は、紫外線検出管11、駆動回路12を備える。
紫外線検出部10における紫外線検出管11は、紫外線を検出する放電管である。紫外線検出管11は、アノードカソード間に所定の電圧が印加されているときに紫外線を検出すると、電極間にグロー放電が発生し紫外線を検出したことを検知することができる。
【0021】
紫外線検出部10における駆動回路12は、紫外線検出管11に紫外線を検出させるための高電圧を印加する回路である。駆動回路12は、昇圧回路13、抵抗R12−6、コンデンサC12−7、ワンショットマルチバイブレータ回路12−8を備える。
駆動回路12における昇圧回路13は、スイッチング素子であるトランジスタTr12−1、昇圧トランスT12−2、昇圧トランスT12−2の1次巻線の逆起電力を抑えるダイオードD12−3、整流用ダイオードD12−4及び平滑用コンデンサC12−5を備える。昇圧回路13においてトランジスタTr12−1は、エミッタが基準電位に接続され、コレクタが昇圧用トランスT12−2の1次巻線を介して電源に接続される。昇圧用トランスT12−2の1次巻線には、並列にダイオードD12−3が接続される。昇圧用トランスT12−2の2次巻線は、一端が基準電位に接続され、他端には整流用ダイオードD12−4のアノードが接続される。ダイオードD12−4のカソードには、パルス電圧の出力端子(アノード接続端)と並列接続される平滑用コンデンサC12−5を介して基準電位に接続される。
入力端子(カソード接続端)には、並列に接続された抵抗R12−6とコンデンサC12−7で構成された負荷インピーダンスと、ワンショットマルチバイブレータ12−8の入力端が接続される。ワンショットマルチバイブレータ12−8の出力端は、紫外線検出部10の出力端子に接続される。
【0022】
昇圧回路13においてトランジスタTr12−1は、図3(a)に示す発振回路22の出力信号(出力電圧V1)を入力信号としてスイッチング動作を行う。トランジスタTr12−1が、「ON(オン)」状態になると、昇圧用トランスT12−2の1次巻線にパルス電流が流れる。昇圧用トランスT12−2の1次巻線にパルス電流が流れると、2次巻線に高電圧のパルス電圧が発生する。昇圧用トランスT12−2の2次巻線に接続される整流用ダイオードD12−4と平滑用コンデンサC12−5によって、2次巻線に発生したパルス電圧が平滑化され高電圧(例えば、数百ボルト)を得る。この高電圧は、紫外線検出管11のアノード端子に印加される。
【0023】
紫外線検出部10において並列に接続された抵抗R12−6とコンデンサC12−7とは、紫外線検出管11のカソードに接続される負荷インピーダンスである。ワンショットマルチバイブレータ回路12−8は、入力されるパルス信号を検出すると、予め定められる所定のパルス幅のパルスを出力する。入力されるパルスが不規則な波形であっても、波形を整えたパルス信号を出力することができる。
【0024】
紫外線検出管11に負荷インピーダンスを接続し、アノードに高電圧V2を印加する。高電圧V2が印加された状態で紫外線検出管11に紫外線が入射すると、電極間にグロー放電が生じ電流iが流れる。このとき、コンデンサC12−5の電荷の放出とともに、紫外線検出管11のアノードカソード間電圧が急激に下がり、放電が停止する。そのため、紫外線検出管11のカソード電圧(出力電圧V3)は、図3(b)に示す連続した波形のパルス電圧を示す。紫外線検出部10では、この出力電圧V3をワンショットマルチバイブレータ回路12−8により図3(c)に示す矩形波に波形整形し、紫外線検出部10の出力電圧Voutとする。この矩形波のパルス幅は、連続して入力されるパルス電圧の周期より短く設定し、波形整形された矩形波のパルスが連続しないようにする。
【0025】
パルス発生回路20は、紫外線検出部10に紫外線を検出するタイミング信号を入力する信号発生部である。パルス発生回路20は、電源部21と発振回路22を備える。パルス発生回路20において電源部21は、発振回路22並びに紫外線検出部10に供給する電力を出力する電源である。発振回路22は、定期的に繰り返されるパルス電圧を出力する。例えば、周波数は数十〜数百Hz(ヘルツ)のパルス電圧である。なお、パルス発生回路20は、出力するパルス電圧を分岐して、図示されない複数の紫外線検出部10に同じパルス電圧をそれぞれ入力することができる。
【0026】
紫外線検出部10とパルス発生回路20を組み合わせることにより、紫外線検出管11の電極(アノードカソード)間に、パルス高電圧(パルス間隔は数ミリ秒から数十ミリ秒間隔、パルス幅は数マイクロ秒、電圧は数百V(ボルト))を印加する。そして、紫外線検出管11に紫外線が入射したとき、紫外線検出部10はパルス電圧を出力する。
図を参照し、紫外線検出部10の動作を説明する。
図4は、入力される紫外線強度に応じて紫外線検出部10が出力する信号の変化を示すタイミングチャートである。この図の横軸は、時間の経過を示し、各縦軸は紫外線検出部10が出力する出力信号を示す出力電圧を示す。また、この図では入射される紫外線強度が異なる条件を、4段階に分けて示し、図の上部に示される条件では、入射される紫外線強度が最も弱く、下部に行くほど強い条件となることを示している。図に示される出力信号にパルス信号として表されているときが、紫外線を検出した時点を示す。入射される紫外線の強度が強くなるほど、出力されるパルス数が多くなり、紫外線の強度が所定の値より強くなると出力されるパルスは、パルス発生回路20によって誘起される全てのタイミングで発生する連続的なパルス列を示す。
【0027】
ここで示した紫外線検出部10の動作原理を示した。紫外線検出部10では、基本回路を示したものでありノイズ除去などの対策を施されたものではない。紫外線検出部10が備える紫外線検出管11は、検出感度が高く、紫外線の入射だけでなく、宇宙線の入射や、周囲環境の静電気によっても放電が開始されることがあり、そのような状態のもとで誤って検出された出力信号がまばらに出力されることがある。
【0028】
続いて、単発的な現象を捕捉し、そしてまばらに出力されるノイズによるパルスに対してノイズ除去処理を施した紫外線検出装置100について説明する。
図5は、紫外線検出装置100を示すブロック図である。前述の紫外線検出部10、パルス発生回路20と同じ構成には、同じ符号を付し、異なる構成について説明する。
紫外線検出装置100は、紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−n、パルス発生回路20、AND回路30を備える。nは2以上の自然数を示す。紫外線検出装置100において紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nは、複数設けられた紫外線検出部10を示し、それぞれが前述の紫外線検出部10と同じものを示す。また、それぞれの紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nが備える紫外線検出管と駆動回路は、対応して設けられ、それぞれ紫外線検出管11−1、11−2、・・・11−n及び駆動回路12−1、12−2、・・・12−nとする。AND回路30は、紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nからそれぞれ出力される出力信号を入力し、論理積演算による判定処理を行った判定結果を出力する。AND回路30が判定処理をする信号は、パルス発生回路20から出力されるパルス信号に同期して検出された信号をワンショットマルチバイブレータ12−8によって波形整形されたパルス信号である。そのため、波形整形されたパルス信号のパルス幅を検出された信号より延長することで、それぞれの紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nがそれぞれ出力する信号の位相差を吸収することができる。
【0029】
紫外線検出装置100におけるパルス発生回路20の出力端には、各紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nが備える駆動回路12−1、12−2、・・・12−nがそれぞれ接続され、駆動回路12−1、12−2、・・・12−nを介して紫外線検出管11−1、11−2、・・・11−nがパルス発生回路20によって出力されるパルス信号に同期して誘起される。各紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nの出力端には、パルス発生回路20に同期したタイミングで検出した紫外線検出結果がそれぞれ出力される。各紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nの出力端には、AND回路30の入力端がそれぞれ接続され、AND回路30に入力された信号の論理積演算による判定処理を行った結果がAND回路30の出力端に出力される。
【0030】
図を参照し、紫外線検出装置100におけるノイズ除去について説明する。
図6は、それぞれの紫外線検出部10が誤検出して出力された信号とノイズ除去処理を示すタイミングチャートである。この図の横軸は、時間の経過を示し、各縦軸は紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nが出力する出力信号を示す出力電圧とノイズ除去処理を施した結果の信号を示す。また、この図に示される条件は入射される紫外線強度が最も弱い条件、すなわち紫外線の入射がない状態を示す。
【0031】
紫外線検出部10−1の出力信号を示すグラフ(a)には、時刻t11、t12、t13で誤検出された信号が出力されたことが示される。紫外線検出部10−2の出力信号を示すグラフ(b)には、時刻t21、t22、t23で誤検出された信号が出力されたことが示される。また、紫外線検出部10−nの出力信号を示すグラフ(c)には、時刻tn1、tn2、tn3で誤検出された信号が出力されたことが示される。以上に示した時刻では、全ての紫外線検出部から信号が同時に出力される時刻はない。したがって、それぞれの紫外線検出部の出力信号が入力されるAND回路30は、論理積演算による判定処理を行うので、全ての入力に「1」がそろわないと、AND回路30の出力信号には「1」が出力されない。すなわち、全ての紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nでそろって紫外線を検出した条件となったときに正しい検出信号と判定して、検出信号を判定結果として出力する。
この紫外線検出装置100を用いることで、紫外線検出部10のノイズ除去処理を施すことができる。
【0032】
(第2実施形態)
以下、本発明の一実施形態による離線検出記録計について図面を参照して説明する。
図を参照し、離線検出記録計200について説明する。
図7は、離線検出記録計200を示すブロック図である。前述の紫外線検出装置100と同じ構成を示すときには同じ符号を付し、異なる構成について説明する。
離線検出記録計200は、紫外線検出装置100、ビデオカメラ54及び記録処理部150を備える。離線検出記録計200におけるビデオカメラ54は、屋外設置を可能とする構造を備え、パンタグラフ並びにその周囲を撮像し、動画の映像信号を出力する。記録処理部150は、パルスカウンタ41、カウンタ表示部42、画像同期記録計51、記憶装置52、GPS端末53を備える。記録処理部150においてパルスカウンタ41は、紫外線検出装置100から出力されるパルス数を計数する。カウンタ表示部42は、パルスカウンタ41で計数した結果を表示する。パルス計数記録装置43は、パルスカウンタ41で計数した結果をフラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性の記録媒体に記録する。
【0033】
GPS端末53は、全地球測位システム(Global Positioning System)で用いられる端末装置で、GPS衛星を捕捉しGPS端末53が位置する地点におけるGPS位置情報を取得し出力する。
画像同期記録計51は、GPS位置情報に関連付けて、事象を検出した時刻、紫外線検出装置100の出力パルスとパルスカウンタ41によって計数されたパルス計数、ビデオカメラ54が出力するパンタグラフ4並びにその周囲の映像信号を動画の情報として記憶装置52に間欠的に記録する。記憶装置52は、ハードディスク等の書換え可能な不揮発性の記録媒体を備え、着脱容易な構造を有し、記録処理部150から取り出すことができる。記憶装置52に記録された情報は、図示しない情報再生装置を用いて再生する。その情報再生装置では、記憶装置52に記録された紫外線検出装置100の出力パルスとパルスカウンタ41が出力するパルス数とビデオカメラ54が出力するパンタグラフ4のビデオ映像と関係付けて参照することができる。
【0034】
図8は、離線検出記録計200における画像同期記録計51の記憶処理を示すタイムチャートである。
(a)は、紫外線検出装置100の出力パルスを示す。時刻t0とt1に放電による紫外線を検出された場合の波形である。
(b)は、上記の紫外線検出装置100の出力パルスに同期して、パンタグラフ4を撮像したビデオカメラ54から入力される映像信号を記録として残すタイミングを示す。画像同期記録装置51は、紫外線検出装置100の出力パルスが入力されたことを検出(以下、「事象検出」という。)することにより、その事象検出された時刻(例えば、時刻t10)の前後のビデオカメラ54からの映像を記録する。その事象検出前及び事象検出後に記録する時間は、予め設定される時間T11と時間T12とする。ビデオカメラ54から入力される映像信号は、画像同期記録計51内において常時一時的に記録され、事象検出によって設定時間範囲の映像情報を切り出して、恒久的な記録として記憶装置52に記録される。すなわち、時刻t10における事象検出では、時刻(t10−T11)から時刻(t10+T12)の間の映像が、紫外線検出装置100の出力パルスとその時刻、位置情報などと関連付けられて記録される。例えば、時間T11と時間T12の設定時間は、それぞれ数十秒程度の時間とすることにより状況を把握しやすくなる。また、次の事象検出が時刻t20に検出されたとすると、時刻(t20−T11)から時刻(t20+T12)の間の映像などが同様に記録される。
また、事象検出が離散的で、時刻t10と時刻t20とが離れているときには、記憶装置52に記録される情報は、間欠的な情報として記録される。このような完結的な記録とすることにより、必要とされる時刻周辺の事象のみを記録として残すことができ、記録媒体の容量を削減できるだけでなく、情報の検索が容易となる。
【0035】
なお、記録処理部150は、CPUと、CPU(Central Processing Unit)に対して周期的に割込み信号を発生するタイマICと、外部に接続されるコンピュータとの間でデータの送受信を行うインタフェース部(以下、IFともいう。)及びCPUの作業領域やプログラム格納領域として用いられるPROM(Programmable Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)及びEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、ハードディスクを備える。パルス計数記憶装置43、画像同期記録計51によって保持されるデータは、RAM、EEPROMあるいはハードディスクに割り付けられた記憶領域に記憶される。
【0036】
トロリ線2とパンタグラフ4との接触状況の変化によって離線が発生し、その離線による放電で紫外線が放出される。この離線検出記録計200は、離線で放出される紫外線を検出し、検出状況を記録する。離線検出記録計200に記憶された検出状況を解析することで、トロリ線2及びトロリ線2へのパンタグラフ4の接触部(すり板)の劣化状況を判定することができる。
【0037】
離線検出記録計200には、2種類の情報が記録される。第1の情報は、離線が生じたときに発生する放電による紫外線放射の検出件数である。この発生件数は、離線検出記録計200におけるパルスカウンタ41にて計数されたパルス回数として記録される。この第1の情報を解析することにより、パンタグラフ4のすり板の劣化状況を判定することができる。すなわち、同じ路線の特定の区間を走行したときに、同じ車両または他の車両で検出された紫外線放射検出回数の平均回数に比べ、検出回数が多くなる傾向があるパンタグラフ4は、劣化していると推定できる。
【0038】
また、第2の情報は、離線が生じたときに起こる放電による紫外線放射の発生場所に関する情報である。この発生場所に関する情報は、離線検出記録計200における画像同期記録計51にて記録された位置情報と関連付けて記録されたパルス検出履歴やパンタグラフ4とその周囲の状況を映像として記録される。この第2の情報を解析することにより、トロリ線2の劣化状況を判定することができる。すなわち、複数の離線検出記録計200で検出された情報をもとに、紫外線検出箇所が多く検出されている場所では、トロリ線2が劣化していると推定できる。
また、第2の情報を時系列的に記録し、時系列的による発生件数及び発生箇所の増加傾向を劣化状況の傾向を解析することにより、特定箇所において急に発生件数が増えたとすれば、その箇所においてトロリ線2の状況が変化しているものと推定できる。さらに、離線発生箇所のビデオ映像を分析することにより、パンタグラフ4の挙動から異常の発生原因を特定することも可能である。
このように、離線検出記録計200において記録された情報を用いて、トロリ線2及びパンタグラフ4の予防保全を行うことが可能となり、事故発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0039】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。紫外線検出装置100が備える紫外線検出部10の構成や接続形態ついても特に限定されるものではなく、用途に応じて変更することが可能である。
実施形態に示した紫外線検出装置100における紫外線検出部10には、地表に届く太陽光の波長領域に感度を有しない紫外線検出管11を適用した。この紫外線検出管11の感度特性は、波長が約260nm(ナノメートル)以下の紫外線の検出特性が優れている。また、太陽光の波長領域の光に反応せず紫外線に反応する他の光センサを用いることも可能である。これにより、太陽光の影響を受けることなく、紫外線の発生状況を検出することが可能となり、日中に屋外環境において利用する離線検出記録計200への応用が可能となる。
【0040】
また、高感度の紫外線検出管11を用いることにより、離線検出記録計200の設置場所をパンタグラフ4の位置から離して設けることが可能となる。
また、カウンタ表示部42は、離線検出記録計200に設けずに記録処理部150が備えるインタフェース部に接続されたコンピュータとすることができる。
【0041】
また、複数(n個)の紫外線検出部10からのノイズ処理をAND回路20によって論理積演算による判定処理をすることとした。この論理積演算による判定処理に変えて、検出された信号の数が予め定められた所定の数以上とする判定基準による判定処理に代えることも可能である。すなわち、所定の数を(n−k)個以上とし、複数の紫外線検出部10から出力される出力信号を加算回路によって加算し、その加算結果が(n−k)以上となることを比較する判定回路による判定処理に代えることが可能である。このkは、(n−1)以下の予め定められる所定の自然数を示す。このように判定基準を所定の数以上の検出数に変えることにより、紫外線検出部の特性のばらつきを許容することを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態による電源システム1を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態による紫外線検出部を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態における紫外線検出部の出力信号を示すタイムチャート(その1)である。
【図4】第1実施形態における紫外線検出部の出力信号を示すタイムチャート(その2)である。
【図5】第1実施形態における紫外線検出装置を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態における紫外線検出装置の処理を示すタイムチャートである。
【図7】第2実施形態における離線検出記録計を示すブロック図である。
【図8】第2実施形態における離線検出記録計の処理を示すタイムチャートである。
【図9】従来技術における火災報知機を示すブロック図である。
【図10】従来技術における火災報知機の処理を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0043】
100 紫外線検出装置
150 記録処理部
200 離線検出記録計
10−1、10−2、・・・10−n 紫外線検出部
11−1、11−2、・・・11−n 紫外線検出管
12−1、12−2、・・・12−n 駆動回路
20 パルス発生回路
30 AND回路(判定部)
41 パルスカウンタ
42 カウンタ表示部
43 パルス計数記録装置
51 画像同期記録計
52 記憶装置
53 GPS端末
54 ビデオカメラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を検出する紫外線検出装置及び紫外線検出装置を利用した離線検出記録計に関する。
【背景技術】
【0002】
離線検出記録計とは、架空単線式電気鉄道における地上に敷設された架線(以下、「トロリ線」という。)と電気車(以下、「電車」という。)上に備えるパンタグラフとの接触状況を記録する記録計である。
架空単線式電気鉄道において、電車の運行に必要な電力は、変電所から送られ、地上に敷設されたトロリ線とこれに接触する電車上のパンタグラフを経由して車内に取り込まれる。電車の安定運行のためには、パンタグラフを流れる電流が遮断されず、電車の負荷に送られる必要がある。
パンタグラフは、低速走行時にはトロリ線との接触を維持できるが、高速走行やトロリ線に凸凹があると、トロリ線とパンタグラフが離れた状態の離線に至る。この離線が発生すると、車内停電が発生することがある。また、離線により、放電が発生すると、電波雑音や、パンタグラフのすり板とトロリ線の磨耗が増大する。そのため、集電系の良否を判断するために、これらの原因となる離線の頻度を測定することがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−274501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この離線を測定する方法としては、放電の発生を光センサで検出する光学式や、電流の遮断を電流計などで検出する電流式がある。
光学式の離線測定に用いられるセンサとして、Se(セシウム)-Te(テルル)光電面を備える電子管が知られている。この電子管は、深紫外線領域に強い感度を持つセンサであり、その感度波長範囲が200nm〜340nmにある。そのため、太陽光の影響を完全に避けることができないという問題がある。
【0004】
他のセンサとしては、感度波長範囲が185〜260nmにあるニッケル電極を用いた紫外線検出管と呼ばれる電子管がある。この紫外線検出管では、宇宙線や静電気などによるノイズの影響を受けやすいという問題がある。
このような紫外線検出管は、燃焼による炎が検出する紫外線を検出できる。火災報知機などに紫外線検出管を応用する際には、このようなノイズの影響を回避するための誤検出した信号を除去する対策が知られている。
【0005】
図9に示すブロック図は、誤検出した信号を除去する対策回路を備える火災報知機300の一例を示す。火災報知機300における紫外線検出部310は、紫外線検出管311と、紫外線検出管を駆動する駆動回路312を備える。紫外線検出部310で紫外線が検出されるとパルス信号が出力される。燃焼による炎から放出される紫外線であれば、連続的に放出されているので紫外線検出部310の出力信号は連続したパルス信号となる。また、紫外線検出部310によって、誤検出され出力される信号は、離散的な単発のパルス信号になる。
【0006】
ノイズ除去部330は、連続するパルス信号とノイズによる離散的な単発のパルスとを分離するフィルタ回路である。ノイズ除去部330は、入力されるパルス信号を計数するカウンタ回路331と、所定の時間パルス信号が入力されないとカウンタ回路331をリセットするリセット信号を出力するタイマ回路332を備える。ノイズ除去部330は、連続的にパルス信号が入力されたときにカウンタ回路331の計数が進み、リセットされずに所定の値に達すると連続的に紫外線が入力されていると判定する。
【0007】
図10に示すタイミングチャートは、ノイズ除去部330の処理を示す。
(a)は、紫外線検出部310によって検出結果によって出力された出力パルスを示し、時刻t1、t2、t3、t4、t5及びt6において、出力パルスが出力されている。(b)は、タイマ回路331が作動する時間を示し、時刻t1からタイマ動作を開始し、タイマ設定時間T1が経過するまで計時する。タイマ設定時間T1が経過し、設定された時間の計時が満了すると、タイマ回路331は停止する。停止したタイマ回路331は、紫外線検出部310が出力する次の出力パルス(時刻t6)を検出すると時刻t6から再びタイマ動作を開始する。(c)は、タイマ回路331が設定時間の計時を満了したときに出力するカウンタ回路332へのリセット信号を示す。タイマ回路331は、時刻t1から始めた設定時間の計時が満了した時刻(t1+T1)にリセット信号を出力する。(d)は、カウンタ回路332におけるカウンタ値(カウンタレベル)を示す。カウンタ回路332は、タイマ回路331における設定時間の計時が満了するとリセット信号を出力し、カウンタ回路332がリセットされる。カウンタ回路332は、そのリセット後に紫外線検出部310の出力パルスを検出すると、カウンタ値が順に加算され計数される。(e)は、カウンタ回路332の出力信号を示す。このカウンタ回路332は、予め定められる閾値(設定カウント値)に、紫外線検出部310の出力パルスの検出回数が達するとパルス信号を出力する。カウンタ回路332は、設定されたタイマ設定時間T1が経過するまでに、その検出回数に達しないときには、カウント値がリセットされる。
【0008】
この図では、駆動パルスの周期を50ミリ秒、パルス幅を5マイクロ秒、タイマ設定時間T1を1秒、予め定められる閾値(設定カウント値)を3に設定したときの例が示される。紫外線検出部310が出力する出力パルスを検出した回数が3回目の検出となることによって、そのカウント値が3となって閾値に達する。その時刻t3の時点で出力信号にパルス信号を出力する。カウンタ回路332は、その後も紫外線検出部310の出力パルスの検出を続け、タイマ設定時間T1が経過するとリセットされる。カウンタ回路332は、紫外線を検出回数が少なくカウント値が閾値に達せずにタイマ設定時間T1が経過すると、カウント値がリセットされる。つまり、火災報知機300に用いられることを目的としたタイマ回路331とカウンタ回路332を組み合わせたノイズ除去部330では、所定の時間(タイマ設定時間T1)内に継続的に検出された信号を正規の信号として判定している。
この判定方法によれば、発生する入力パルスの回数に基づいて、ノイズと思われる発生頻度の低い単発的なパルス信号を除去できる。このようにして紫外線検出部310を適用した火災報知機300では、火災警報を出力することができる。
【0009】
しかしながら、この火災報知機を目的とするノイズ除去部330を用いると、正規に検出されるべき現象が単発的であるがために、紫外線検出部で検出され出力される信号が単発的に発生するパルス信号であるときには、ノイズによる信号と区別することができずノイズと共に除去されてしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、太陽光及びノイズに影響されずに離線による放電現象を検出できる紫外線検出装置及び離線検出記録計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本発明は、複数の紫外線検出部と、前記複数の紫外線検出部によって検出された信号に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力する判定部と、を備えたことを特徴とする紫外線検出装置である。
また、本発明は、上記発明において、紫外線検出装置は、パルス信号を発生するパルス発生部を備え、前記紫外線検出部は、紫外線領域の波長を検出感度領域とする紫外線検出管と、前記パルス発生部から入力される信号に応じて前記紫外線検出管を駆動する駆動電圧を供給する駆動回路と、を備えることを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記判定部は、前記複数の紫外線検出部によって検出された信号の論理積演算による判定処理に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記判定部は、前記複数の紫外線検出部によって検出された信号の数が予め定められた所定の数以上とする判定基準に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力することを特徴とする。
【0012】
上記に記載の紫外線検出装置と、現在位置を検出して位置データを出力する位置検出部と、前記紫外線検出装置の判定部が出力する判定結果を前記位置検出部が検出する位置データに関連させて内部に備える記憶部に記録する記録部と、を備えること特徴とする離線検出記録計である。
また、本発明は、上記発明において、離線検出記録計は、前記紫外線検出装置の前記判定部が出力する判定結果を計数する計数部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記記憶部は、映像情報をさらに記憶し、前記記録部は、入力される映像信号を前記判定結果に対応させ、該判定結果によって示された時刻を含む予め定められた時間の映像を記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この本発明によれば、紫外線検出装置は、複数の紫外線検出部によって検出された信号による演算結果を判定条件とすることを特徴とする。これにより、単発性の現象をノイズに影響されることなく検出することができる。
また、本発明によれば、上記発明において、紫外線検出装置は、パルス発生部がパルス信号を発生する。紫外線検出部における紫外線検出管は、紫外線領域の波長を検出感度領域とする。また駆動回路は、パルス発生部から入力されるパルス信号に応じて紫外線検出管を駆動する駆動電圧を供給することとした。また、これにより、複数の紫外線検出部を同じ検出タイミングで動作させることにより、複数の紫外線検出部で検出する現象と検出しない現象を区別することができる。そして、複数の紫外線検出部で検出する単発性の現象と、個別の紫外線検出部で誤検出した現象とを区別することができる。また、太陽光の波長範囲外に検出領域を設定することができ、太陽光に影響することなく紫外線の検出を行うことができる。
【0015】
また、本発明によれば、上記発明において、判定部は、複数の紫外線検出部によって検出された信号の論理積演算による判定処理に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力することとする。また、これにより、全ての紫外線検出管で検出された現象のみを選択して検出することができる。
また、本発明によれば、上記発明において、判定部は、複数の紫外線検出部によって検出された信号の数が予め定められた所定の数以上の数とする判定基準に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力することを特徴とする。また、これにより、予め定められた所定の数以上の紫外線検出管で検出された現象のみを選択して検出することができる。一部の紫外線検出管の劣化などに影響されることなく現象の特定を行うことができる。
【0016】
また、本発明によれば、離線検出記録計は、上記に記載の紫外線検出装置の判定結果と位置検出部が検出した現在位置データに関連させて内部に備える記憶部に記録する。また、これにより、離線が生じたときに起こる放電による紫外線放射の発生場所に関する情報を記録することができる。
また、本発明によれば、上記発明において、離線検出記録計における計数部は、紫外線検出装置の判定結果の判定情報、すなわち紫外線の検出回数を計数する。また、これにより、離線が生じたときに起こる放電による紫外線放射の検出件数を計数することが可能となる。計数された情報を解析することにより、所定の時間或いは所定の区間における紫外線検出量を分析することができる。
【0017】
また、本発明によれば、上記発明において、記憶部は、映像情報をさらに記憶する。記録部は、入力される映像信号を判定結果に対応させ、判定結果によって示された時刻を含む予め定められた時間の映像を記録することを特徴とする。また、これにより、判定結果によって示された時刻において検出した紫外線検出の発生状況を、記憶部に映像情報として記録する。紫外線検出の有無だけでなく、そのときの発生状況を映像によって確認することにより、紫外線発生の原因の解析に有効となる情報を収集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態による紫外線検出装置について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による離線検出記録計200の利用形態を示す構成図である。
この図には、軌道1とその上部にトロリ線2が設けられている。軌道1に沿って、電車3が走行する。電車3の上面には、パンタグラフ4が設けられ、軌道1とトロリ線2の間に印加されている高圧電力を受電し走行用の電力に用いられる。パンタグラフ4の先端が、トロリ線2と接触することでトロリ線2からの電車3への電力供給が行われる接続点となる。電車3の上面において、トロリ線2とパンタグラフ4の接点における放電による光を受光できる位置に離線検出記録計200が設けられ、トロリ線2とパンタグラフ4との間に発生する放電現象を検出することができる。
この離線検出記録計200は、紫外線検出装置100、記録処理部150、ビデオカメラ54からなる。紫外線検出装置100は、紫外線を用いてトロリ線2とパンタグラフ4の接点における放電を検出するセンサとなる。紫外線検出装置100によって放電が検出されると、検出された事象に合わせて、そのときの状況をビデオカメラ54で撮像した映像情報とともに記録される。
【0019】
現在の日本の鉄道では、トロリ線には主に銅系合金が、パンタグラフには主に銅・炭素系材料が使われている。この様な材料間に発生する放電では、太陽光には含まれない200〜234nmの領域の光(深紫外線と呼ばれている光)を放出する。また、地上に到達する太陽光では、太陽からは放出されていてもそこに含まれる300nm以下の成分は、大気による吸収などよって殆ど到達しない。そのため、紫外線の波長領域にのみ感度を持つセンサを用いれば、太陽光による誤検出を回避して放電により放出される紫外線を検出することが可能になる。
【0020】
紫外線検出装置100及び離線検出記録計200に適用される紫外線検出部の一実施形態について説明する。
図2は、紫外線検出部10とパルス発生回路20を示すブロック図である。また、図3は、図2に示した紫外線検出部10における各部の電圧波形を示した図である。
紫外線検出部10は、パルス発生回路20と組み合わせて用いられる。この図に示される紫外線検出部10は、紫外線を検出して検出信号を出力する。紫外線検出部10は、紫外線検出管11、駆動回路12を備える。
紫外線検出部10における紫外線検出管11は、紫外線を検出する放電管である。紫外線検出管11は、アノードカソード間に所定の電圧が印加されているときに紫外線を検出すると、電極間にグロー放電が発生し紫外線を検出したことを検知することができる。
【0021】
紫外線検出部10における駆動回路12は、紫外線検出管11に紫外線を検出させるための高電圧を印加する回路である。駆動回路12は、昇圧回路13、抵抗R12−6、コンデンサC12−7、ワンショットマルチバイブレータ回路12−8を備える。
駆動回路12における昇圧回路13は、スイッチング素子であるトランジスタTr12−1、昇圧トランスT12−2、昇圧トランスT12−2の1次巻線の逆起電力を抑えるダイオードD12−3、整流用ダイオードD12−4及び平滑用コンデンサC12−5を備える。昇圧回路13においてトランジスタTr12−1は、エミッタが基準電位に接続され、コレクタが昇圧用トランスT12−2の1次巻線を介して電源に接続される。昇圧用トランスT12−2の1次巻線には、並列にダイオードD12−3が接続される。昇圧用トランスT12−2の2次巻線は、一端が基準電位に接続され、他端には整流用ダイオードD12−4のアノードが接続される。ダイオードD12−4のカソードには、パルス電圧の出力端子(アノード接続端)と並列接続される平滑用コンデンサC12−5を介して基準電位に接続される。
入力端子(カソード接続端)には、並列に接続された抵抗R12−6とコンデンサC12−7で構成された負荷インピーダンスと、ワンショットマルチバイブレータ12−8の入力端が接続される。ワンショットマルチバイブレータ12−8の出力端は、紫外線検出部10の出力端子に接続される。
【0022】
昇圧回路13においてトランジスタTr12−1は、図3(a)に示す発振回路22の出力信号(出力電圧V1)を入力信号としてスイッチング動作を行う。トランジスタTr12−1が、「ON(オン)」状態になると、昇圧用トランスT12−2の1次巻線にパルス電流が流れる。昇圧用トランスT12−2の1次巻線にパルス電流が流れると、2次巻線に高電圧のパルス電圧が発生する。昇圧用トランスT12−2の2次巻線に接続される整流用ダイオードD12−4と平滑用コンデンサC12−5によって、2次巻線に発生したパルス電圧が平滑化され高電圧(例えば、数百ボルト)を得る。この高電圧は、紫外線検出管11のアノード端子に印加される。
【0023】
紫外線検出部10において並列に接続された抵抗R12−6とコンデンサC12−7とは、紫外線検出管11のカソードに接続される負荷インピーダンスである。ワンショットマルチバイブレータ回路12−8は、入力されるパルス信号を検出すると、予め定められる所定のパルス幅のパルスを出力する。入力されるパルスが不規則な波形であっても、波形を整えたパルス信号を出力することができる。
【0024】
紫外線検出管11に負荷インピーダンスを接続し、アノードに高電圧V2を印加する。高電圧V2が印加された状態で紫外線検出管11に紫外線が入射すると、電極間にグロー放電が生じ電流iが流れる。このとき、コンデンサC12−5の電荷の放出とともに、紫外線検出管11のアノードカソード間電圧が急激に下がり、放電が停止する。そのため、紫外線検出管11のカソード電圧(出力電圧V3)は、図3(b)に示す連続した波形のパルス電圧を示す。紫外線検出部10では、この出力電圧V3をワンショットマルチバイブレータ回路12−8により図3(c)に示す矩形波に波形整形し、紫外線検出部10の出力電圧Voutとする。この矩形波のパルス幅は、連続して入力されるパルス電圧の周期より短く設定し、波形整形された矩形波のパルスが連続しないようにする。
【0025】
パルス発生回路20は、紫外線検出部10に紫外線を検出するタイミング信号を入力する信号発生部である。パルス発生回路20は、電源部21と発振回路22を備える。パルス発生回路20において電源部21は、発振回路22並びに紫外線検出部10に供給する電力を出力する電源である。発振回路22は、定期的に繰り返されるパルス電圧を出力する。例えば、周波数は数十〜数百Hz(ヘルツ)のパルス電圧である。なお、パルス発生回路20は、出力するパルス電圧を分岐して、図示されない複数の紫外線検出部10に同じパルス電圧をそれぞれ入力することができる。
【0026】
紫外線検出部10とパルス発生回路20を組み合わせることにより、紫外線検出管11の電極(アノードカソード)間に、パルス高電圧(パルス間隔は数ミリ秒から数十ミリ秒間隔、パルス幅は数マイクロ秒、電圧は数百V(ボルト))を印加する。そして、紫外線検出管11に紫外線が入射したとき、紫外線検出部10はパルス電圧を出力する。
図を参照し、紫外線検出部10の動作を説明する。
図4は、入力される紫外線強度に応じて紫外線検出部10が出力する信号の変化を示すタイミングチャートである。この図の横軸は、時間の経過を示し、各縦軸は紫外線検出部10が出力する出力信号を示す出力電圧を示す。また、この図では入射される紫外線強度が異なる条件を、4段階に分けて示し、図の上部に示される条件では、入射される紫外線強度が最も弱く、下部に行くほど強い条件となることを示している。図に示される出力信号にパルス信号として表されているときが、紫外線を検出した時点を示す。入射される紫外線の強度が強くなるほど、出力されるパルス数が多くなり、紫外線の強度が所定の値より強くなると出力されるパルスは、パルス発生回路20によって誘起される全てのタイミングで発生する連続的なパルス列を示す。
【0027】
ここで示した紫外線検出部10の動作原理を示した。紫外線検出部10では、基本回路を示したものでありノイズ除去などの対策を施されたものではない。紫外線検出部10が備える紫外線検出管11は、検出感度が高く、紫外線の入射だけでなく、宇宙線の入射や、周囲環境の静電気によっても放電が開始されることがあり、そのような状態のもとで誤って検出された出力信号がまばらに出力されることがある。
【0028】
続いて、単発的な現象を捕捉し、そしてまばらに出力されるノイズによるパルスに対してノイズ除去処理を施した紫外線検出装置100について説明する。
図5は、紫外線検出装置100を示すブロック図である。前述の紫外線検出部10、パルス発生回路20と同じ構成には、同じ符号を付し、異なる構成について説明する。
紫外線検出装置100は、紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−n、パルス発生回路20、AND回路30を備える。nは2以上の自然数を示す。紫外線検出装置100において紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nは、複数設けられた紫外線検出部10を示し、それぞれが前述の紫外線検出部10と同じものを示す。また、それぞれの紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nが備える紫外線検出管と駆動回路は、対応して設けられ、それぞれ紫外線検出管11−1、11−2、・・・11−n及び駆動回路12−1、12−2、・・・12−nとする。AND回路30は、紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nからそれぞれ出力される出力信号を入力し、論理積演算による判定処理を行った判定結果を出力する。AND回路30が判定処理をする信号は、パルス発生回路20から出力されるパルス信号に同期して検出された信号をワンショットマルチバイブレータ12−8によって波形整形されたパルス信号である。そのため、波形整形されたパルス信号のパルス幅を検出された信号より延長することで、それぞれの紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nがそれぞれ出力する信号の位相差を吸収することができる。
【0029】
紫外線検出装置100におけるパルス発生回路20の出力端には、各紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nが備える駆動回路12−1、12−2、・・・12−nがそれぞれ接続され、駆動回路12−1、12−2、・・・12−nを介して紫外線検出管11−1、11−2、・・・11−nがパルス発生回路20によって出力されるパルス信号に同期して誘起される。各紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nの出力端には、パルス発生回路20に同期したタイミングで検出した紫外線検出結果がそれぞれ出力される。各紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nの出力端には、AND回路30の入力端がそれぞれ接続され、AND回路30に入力された信号の論理積演算による判定処理を行った結果がAND回路30の出力端に出力される。
【0030】
図を参照し、紫外線検出装置100におけるノイズ除去について説明する。
図6は、それぞれの紫外線検出部10が誤検出して出力された信号とノイズ除去処理を示すタイミングチャートである。この図の横軸は、時間の経過を示し、各縦軸は紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nが出力する出力信号を示す出力電圧とノイズ除去処理を施した結果の信号を示す。また、この図に示される条件は入射される紫外線強度が最も弱い条件、すなわち紫外線の入射がない状態を示す。
【0031】
紫外線検出部10−1の出力信号を示すグラフ(a)には、時刻t11、t12、t13で誤検出された信号が出力されたことが示される。紫外線検出部10−2の出力信号を示すグラフ(b)には、時刻t21、t22、t23で誤検出された信号が出力されたことが示される。また、紫外線検出部10−nの出力信号を示すグラフ(c)には、時刻tn1、tn2、tn3で誤検出された信号が出力されたことが示される。以上に示した時刻では、全ての紫外線検出部から信号が同時に出力される時刻はない。したがって、それぞれの紫外線検出部の出力信号が入力されるAND回路30は、論理積演算による判定処理を行うので、全ての入力に「1」がそろわないと、AND回路30の出力信号には「1」が出力されない。すなわち、全ての紫外線検出部10−1、10−2、・・・10−nでそろって紫外線を検出した条件となったときに正しい検出信号と判定して、検出信号を判定結果として出力する。
この紫外線検出装置100を用いることで、紫外線検出部10のノイズ除去処理を施すことができる。
【0032】
(第2実施形態)
以下、本発明の一実施形態による離線検出記録計について図面を参照して説明する。
図を参照し、離線検出記録計200について説明する。
図7は、離線検出記録計200を示すブロック図である。前述の紫外線検出装置100と同じ構成を示すときには同じ符号を付し、異なる構成について説明する。
離線検出記録計200は、紫外線検出装置100、ビデオカメラ54及び記録処理部150を備える。離線検出記録計200におけるビデオカメラ54は、屋外設置を可能とする構造を備え、パンタグラフ並びにその周囲を撮像し、動画の映像信号を出力する。記録処理部150は、パルスカウンタ41、カウンタ表示部42、画像同期記録計51、記憶装置52、GPS端末53を備える。記録処理部150においてパルスカウンタ41は、紫外線検出装置100から出力されるパルス数を計数する。カウンタ表示部42は、パルスカウンタ41で計数した結果を表示する。パルス計数記録装置43は、パルスカウンタ41で計数した結果をフラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性の記録媒体に記録する。
【0033】
GPS端末53は、全地球測位システム(Global Positioning System)で用いられる端末装置で、GPS衛星を捕捉しGPS端末53が位置する地点におけるGPS位置情報を取得し出力する。
画像同期記録計51は、GPS位置情報に関連付けて、事象を検出した時刻、紫外線検出装置100の出力パルスとパルスカウンタ41によって計数されたパルス計数、ビデオカメラ54が出力するパンタグラフ4並びにその周囲の映像信号を動画の情報として記憶装置52に間欠的に記録する。記憶装置52は、ハードディスク等の書換え可能な不揮発性の記録媒体を備え、着脱容易な構造を有し、記録処理部150から取り出すことができる。記憶装置52に記録された情報は、図示しない情報再生装置を用いて再生する。その情報再生装置では、記憶装置52に記録された紫外線検出装置100の出力パルスとパルスカウンタ41が出力するパルス数とビデオカメラ54が出力するパンタグラフ4のビデオ映像と関係付けて参照することができる。
【0034】
図8は、離線検出記録計200における画像同期記録計51の記憶処理を示すタイムチャートである。
(a)は、紫外線検出装置100の出力パルスを示す。時刻t0とt1に放電による紫外線を検出された場合の波形である。
(b)は、上記の紫外線検出装置100の出力パルスに同期して、パンタグラフ4を撮像したビデオカメラ54から入力される映像信号を記録として残すタイミングを示す。画像同期記録装置51は、紫外線検出装置100の出力パルスが入力されたことを検出(以下、「事象検出」という。)することにより、その事象検出された時刻(例えば、時刻t10)の前後のビデオカメラ54からの映像を記録する。その事象検出前及び事象検出後に記録する時間は、予め設定される時間T11と時間T12とする。ビデオカメラ54から入力される映像信号は、画像同期記録計51内において常時一時的に記録され、事象検出によって設定時間範囲の映像情報を切り出して、恒久的な記録として記憶装置52に記録される。すなわち、時刻t10における事象検出では、時刻(t10−T11)から時刻(t10+T12)の間の映像が、紫外線検出装置100の出力パルスとその時刻、位置情報などと関連付けられて記録される。例えば、時間T11と時間T12の設定時間は、それぞれ数十秒程度の時間とすることにより状況を把握しやすくなる。また、次の事象検出が時刻t20に検出されたとすると、時刻(t20−T11)から時刻(t20+T12)の間の映像などが同様に記録される。
また、事象検出が離散的で、時刻t10と時刻t20とが離れているときには、記憶装置52に記録される情報は、間欠的な情報として記録される。このような完結的な記録とすることにより、必要とされる時刻周辺の事象のみを記録として残すことができ、記録媒体の容量を削減できるだけでなく、情報の検索が容易となる。
【0035】
なお、記録処理部150は、CPUと、CPU(Central Processing Unit)に対して周期的に割込み信号を発生するタイマICと、外部に接続されるコンピュータとの間でデータの送受信を行うインタフェース部(以下、IFともいう。)及びCPUの作業領域やプログラム格納領域として用いられるPROM(Programmable Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)及びEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、ハードディスクを備える。パルス計数記憶装置43、画像同期記録計51によって保持されるデータは、RAM、EEPROMあるいはハードディスクに割り付けられた記憶領域に記憶される。
【0036】
トロリ線2とパンタグラフ4との接触状況の変化によって離線が発生し、その離線による放電で紫外線が放出される。この離線検出記録計200は、離線で放出される紫外線を検出し、検出状況を記録する。離線検出記録計200に記憶された検出状況を解析することで、トロリ線2及びトロリ線2へのパンタグラフ4の接触部(すり板)の劣化状況を判定することができる。
【0037】
離線検出記録計200には、2種類の情報が記録される。第1の情報は、離線が生じたときに発生する放電による紫外線放射の検出件数である。この発生件数は、離線検出記録計200におけるパルスカウンタ41にて計数されたパルス回数として記録される。この第1の情報を解析することにより、パンタグラフ4のすり板の劣化状況を判定することができる。すなわち、同じ路線の特定の区間を走行したときに、同じ車両または他の車両で検出された紫外線放射検出回数の平均回数に比べ、検出回数が多くなる傾向があるパンタグラフ4は、劣化していると推定できる。
【0038】
また、第2の情報は、離線が生じたときに起こる放電による紫外線放射の発生場所に関する情報である。この発生場所に関する情報は、離線検出記録計200における画像同期記録計51にて記録された位置情報と関連付けて記録されたパルス検出履歴やパンタグラフ4とその周囲の状況を映像として記録される。この第2の情報を解析することにより、トロリ線2の劣化状況を判定することができる。すなわち、複数の離線検出記録計200で検出された情報をもとに、紫外線検出箇所が多く検出されている場所では、トロリ線2が劣化していると推定できる。
また、第2の情報を時系列的に記録し、時系列的による発生件数及び発生箇所の増加傾向を劣化状況の傾向を解析することにより、特定箇所において急に発生件数が増えたとすれば、その箇所においてトロリ線2の状況が変化しているものと推定できる。さらに、離線発生箇所のビデオ映像を分析することにより、パンタグラフ4の挙動から異常の発生原因を特定することも可能である。
このように、離線検出記録計200において記録された情報を用いて、トロリ線2及びパンタグラフ4の予防保全を行うことが可能となり、事故発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0039】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。紫外線検出装置100が備える紫外線検出部10の構成や接続形態ついても特に限定されるものではなく、用途に応じて変更することが可能である。
実施形態に示した紫外線検出装置100における紫外線検出部10には、地表に届く太陽光の波長領域に感度を有しない紫外線検出管11を適用した。この紫外線検出管11の感度特性は、波長が約260nm(ナノメートル)以下の紫外線の検出特性が優れている。また、太陽光の波長領域の光に反応せず紫外線に反応する他の光センサを用いることも可能である。これにより、太陽光の影響を受けることなく、紫外線の発生状況を検出することが可能となり、日中に屋外環境において利用する離線検出記録計200への応用が可能となる。
【0040】
また、高感度の紫外線検出管11を用いることにより、離線検出記録計200の設置場所をパンタグラフ4の位置から離して設けることが可能となる。
また、カウンタ表示部42は、離線検出記録計200に設けずに記録処理部150が備えるインタフェース部に接続されたコンピュータとすることができる。
【0041】
また、複数(n個)の紫外線検出部10からのノイズ処理をAND回路20によって論理積演算による判定処理をすることとした。この論理積演算による判定処理に変えて、検出された信号の数が予め定められた所定の数以上とする判定基準による判定処理に代えることも可能である。すなわち、所定の数を(n−k)個以上とし、複数の紫外線検出部10から出力される出力信号を加算回路によって加算し、その加算結果が(n−k)以上となることを比較する判定回路による判定処理に代えることが可能である。このkは、(n−1)以下の予め定められる所定の自然数を示す。このように判定基準を所定の数以上の検出数に変えることにより、紫外線検出部の特性のばらつきを許容することを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態による電源システム1を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態による紫外線検出部を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態における紫外線検出部の出力信号を示すタイムチャート(その1)である。
【図4】第1実施形態における紫外線検出部の出力信号を示すタイムチャート(その2)である。
【図5】第1実施形態における紫外線検出装置を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態における紫外線検出装置の処理を示すタイムチャートである。
【図7】第2実施形態における離線検出記録計を示すブロック図である。
【図8】第2実施形態における離線検出記録計の処理を示すタイムチャートである。
【図9】従来技術における火災報知機を示すブロック図である。
【図10】従来技術における火災報知機の処理を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0043】
100 紫外線検出装置
150 記録処理部
200 離線検出記録計
10−1、10−2、・・・10−n 紫外線検出部
11−1、11−2、・・・11−n 紫外線検出管
12−1、12−2、・・・12−n 駆動回路
20 パルス発生回路
30 AND回路(判定部)
41 パルスカウンタ
42 カウンタ表示部
43 パルス計数記録装置
51 画像同期記録計
52 記憶装置
53 GPS端末
54 ビデオカメラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紫外線検出部と、
前記複数の紫外線検出部によって検出された信号に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力する判定部と、
を備えたことを特徴とする紫外線検出装置。
【請求項2】
パルス信号を発生するパルス発生部
を備え、
前記紫外線検出部は、
紫外線領域の波長を検出感度領域とする紫外線検出管と、
前記パルス発生部から入力される信号に応じて前記紫外線検出管を駆動する駆動電圧を供給する駆動回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の紫外線検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記複数の紫外線検出部によって検出された信号の論理積演算による判定処理に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紫外線検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記複数の紫外線検出部によって検出された信号の数が予め定められた所定の数以上とする判定基準に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紫外線検出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の紫外線検出装置と、
現在位置を検出して位置データを出力する位置検出部と、
前記紫外線検出装置の前記判定部が出力する判定結果と前記位置検出部が検出する位置データとを記憶する記憶部と、
前記紫外線検出装置の前記判定部が出力する判定結果を前記位置検出部が検出する位置データに関連させて前記記憶部に記録する記録部と、
を備えること特徴とする離線検出記録計。
【請求項6】
前記紫外線検出装置の前記判定部が出力する判定結果を計数する計数部と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の離線検出記録計。
【請求項7】
前記記憶部は、
映像情報をさらに記憶し、
前記記録部は、
入力される映像信号を前記判定結果に対応させ、該判定結果によって示された紫外線検出時刻を含む予め定められた時間の範囲の映像を記録する
ことを特徴とする請求項5に記載の離線検出記録計。
【請求項1】
複数の紫外線検出部と、
前記複数の紫外線検出部によって検出された信号に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力する判定部と、
を備えたことを特徴とする紫外線検出装置。
【請求項2】
パルス信号を発生するパルス発生部
を備え、
前記紫外線検出部は、
紫外線領域の波長を検出感度領域とする紫外線検出管と、
前記パルス発生部から入力される信号に応じて前記紫外線検出管を駆動する駆動電圧を供給する駆動回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の紫外線検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記複数の紫外線検出部によって検出された信号の論理積演算による判定処理に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紫外線検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記複数の紫外線検出部によって検出された信号の数が予め定められた所定の数以上とする判定基準に基づいて紫外線の有無を判定し判定結果を出力する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紫外線検出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の紫外線検出装置と、
現在位置を検出して位置データを出力する位置検出部と、
前記紫外線検出装置の前記判定部が出力する判定結果と前記位置検出部が検出する位置データとを記憶する記憶部と、
前記紫外線検出装置の前記判定部が出力する判定結果を前記位置検出部が検出する位置データに関連させて前記記憶部に記録する記録部と、
を備えること特徴とする離線検出記録計。
【請求項6】
前記紫外線検出装置の前記判定部が出力する判定結果を計数する計数部と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の離線検出記録計。
【請求項7】
前記記憶部は、
映像情報をさらに記憶し、
前記記録部は、
入力される映像信号を前記判定結果に対応させ、該判定結果によって示された紫外線検出時刻を含む予め定められた時間の範囲の映像を記録する
ことを特徴とする請求項5に記載の離線検出記録計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−122102(P2010−122102A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296708(P2008−296708)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】
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