説明

絶縁回路基板およびその製造方法、パワーモジュール用ベースおよびその製造方法

【課題】パワーモジュールの使用時に絶縁回路基板の絶縁層に割れが発生することを防止しうる絶縁回路基板を提供する。
【解決手段】絶縁回路基板4は、絶縁板5の一面に導電層6がろう付されたものであり、導電層6における絶縁板5にろう付された面とは反対側の面が電子素子搭載面8となっている。導電層6の輪郭を形成しかつ導電層6の厚み方向に幅を持つ輪郭面9に、ろう材を、絶縁板5に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部11を形成する。導電層6の輪郭面9に、絶縁板5側の端部から電子素子搭載面8に向かって所定の幅を有し、かつろう材貯留部11内のろう材と絶縁板5との接触を抑制する接触抑制部12を設ける。ろう材貯留部11は、輪郭面9における接触抑制部12よりも電子素子搭載面8側の部分に形成し、かつ接触抑制部12に対して凹んだ凹部13からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、絶縁回路基板およびその製造方法、パワーモジュール用ベースおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、たとえばパワーデバイスなどの電子素子が実装される絶縁回路基板およびその製造方法、ならびに絶縁回路基板に実装されたパワーデバイスなどの電子素子を冷却するのに用いられるパワーモジュール用ベースおよびその製造方法に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」という用語は、「純アルミニウム」と表現する場合を除いて、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。また、この明細書および特許請求の範囲において、「純アルミニウム」という用語は、純度99.00wt%以上の純アルミニウムを意味するものとする。これと同様に、この明細書および特許請求の範囲において、「ニッケル」、「銅」、「銀」および「金」という用語は、それぞれ純度99.00wt%以上の純金属の他に合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子(電子素子)からなるパワーデバイスを備えたパワーモジュールにおいては、半導体素子から発せられる熱を効率良く放熱して、半導体素子の温度を所定温度以下に保つ必要がある。そこで、従来、パワーデバイスを実装するパワーモジュール用ベースとして、アルミニウム製ヒートシンクおよびヒートシンクにろう付された絶縁回路基板からなり、絶縁回路基板が、ヒートシンクにろう付されたセラミック製絶縁板と、絶縁板におけるヒートシンクにろう付された面とは反対側の面にろう付されたアルミニウム製導電板とよりなり、導電板における絶縁板にろう付された面とは反対側の面が電子素子搭載面となされているものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載のパワーモジュール用ベースは、絶縁回路基板の導電板の電子素子搭載面にニッケルメッキが施された後、パワーデバイスがはんだ付けされることにより実装されてパワーモジュールとして用いられている。そして、パワーデバイスから発せられた熱は、導電板および絶縁板を経てヒートシンクに伝えられ、放熱されるようになっている。
【0005】
ところで、特許文献1記載のパワーモジュール用ベースは、ヒートシンク、絶縁板および導電板を、隣り合うものどうしの間にAl−Si合金系のろう材を配置した状態で積層し、ヒートシンク、絶縁板および導電板を、加圧しつつ加熱してヒートシンクと絶縁板および絶縁板と導電板とをろう付することにより製造されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のパワーモジュール用ベースの製造方法では、ヒートシンク、絶縁板および導電板を積層状態で加圧しつつ加熱すると、ろう材は、まず外周縁部から溶融し始め、その後徐々に中央部に向けて熱が伝導し溶融が進んでいくので、ろう材の中央部を溶融させるまで加熱しようとすると、その前に、ろう材の外周縁部に存在しておりかつ既に溶融したろう材が、導電板と絶縁板との間からしみ出し、さらにその表面張力で凝集することによって、導電板の側面を伝って電子素子搭載面まで流れて電子素子搭載面を覆うおそれがあった。そして、溶融したろう材が導電板の電子素子搭載面を覆い、ここで凝固すると、電子素子搭載面への良好なニッケルメッキや、電子素子の良好なはんだ付けが困難になる。しかも、凝固したろう材上からニッケルメッキを施した導電板の電子素子搭載面に電子素子をはんだ付すると、電子素子の熱サイクル寿命を低下させるおそれがある。
【0007】
そこで、このような問題を解決したパワーモジュール用ベースとして、セラミックス製絶縁板、絶縁板の一面にろう付されかつ絶縁板にろう付された面とは反対側の面が電子素子が搭載される搭載面となされたアルミニウム製導電板、および絶縁板の他面にろう付されたアルミニウム製伝熱板よりなる絶縁回路基板と、絶縁回路基板の伝熱板における絶縁板にろう付された面とは反対側の面がろう付されたヒートシンクとよりなり、導電板の輪郭を形成しかつ導電板の厚み方向に幅を持つ輪郭面おける絶縁板側の端部に、導電板の絶縁板側を向いた面と、前記輪郭面とに跨るように形成された切り欠きからなる凹部が、前記輪郭面の全周にわたって連続的に形成され、当該凹部によりろう材を絶縁板に対して接触状態で溜めるろう材貯留部が形成されているパワーモジュール用ベースが提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2記載のパワーモジュール用ベースは、絶縁板、導電板および伝熱板を、絶縁板と導電板および伝熱板との間に配置したろう材によりろう付して絶縁回路基板を製造した後、絶縁回路基板の伝熱板をヒートシンクにろう付することにより製造されている。そして、絶縁回路基板の製造時に、絶縁板と導電板との間に配置されていたろう材から溶け出した溶融ろう材が、導電板の切り欠き内に流入し、ここで凝固するようになっている。したがって、特許文献2記載のパワーモジュール用ベースにおいては、溶融ろう材が導電板の側面を伝って電子素子搭載面まで流れ流れ、ここで凝固することが抑制されている。
【0009】
しかしながら、導電板の切り欠き内に存在する凝固したろう材が導電板の切り欠き内に溜まっているので、電子素子搭載面にニッケルメッキを施した後のパワーデバイスのはんだ付けの際の加熱冷却や、パワーモジュール用ベースにパワーデバイスがはんだ付けされてなるパワーモジュールの使用時の冷熱サイクルによって、セラミック製絶縁板とろう材との接触部に比較的大きい熱応力が発生し、ろう材との接触部を起点として絶縁板に割れが発生し、パワーモジュールの冷熱信頼性を低下させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公平8−10202号公報
【特許文献2】特開2007−311527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、上記問題を解決し、パワーモジュールの使用時に絶縁回路基板の絶縁層に割れが発生することを防止しうる絶縁回路基板およびその製造方法、パワーモジュール用ベースおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0013】
1)セラミックス製絶縁層の一面に金属製導電層がろう付され、導電層における絶縁層にろう付された面とは反対側の面が電子素子搭載面となされている絶縁回路基板であって、
導電層の輪郭を形成しかつ導電層の厚み方向に幅を持つ輪郭面に、ろう材を、絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部が形成されている絶縁回路基板。
【0014】
2)導電層の輪郭面に、絶縁層側の端部から電子素子搭載面に向かって所定の幅を有し、かつろう材貯留部内のろう材と絶縁層との接触を抑制する接触抑制部が設けられており、前記輪郭面における接触抑制部よりも電子素子搭載面側の部分に、接触抑制部に対して凹んだ凹部が形成され、当該凹部がろう材貯留部となっている上記1)記載の絶縁回路基板。
【0015】
3)導電層の輪郭面におけるろう材貯留部となる凹部の電子素子搭載面側端部が、電子素子搭載面に開口している上記2)記載の絶縁回路基板。
【0016】
4)導電層の輪郭面におけるろう材貯留部となる凹部が、前記輪郭面の全周にわたって連続的に形成されている上記3)記載の絶縁回路基板。
【0017】
5)導電層の前記輪郭面が、絶縁層側から電子素子搭載面側に向かって段部を介して順次小さくなった段付き面となされ、当該段付き面における最も絶縁層側の部分が接触抑制部となっているとともに、段付き面における接触抑制部よりも電子素子搭載面側の部分に、ろう材貯留部となる凹部が設けられている上記4)記載の絶縁回路基板。
【0018】
6)導電層が、積層されて互いに接合された複数枚の金属板からなり、全金属板の大きさが異なっているとともに、全金属板の大きさが絶縁層側から順次小さくなっている上記5)記載の絶縁回路基板。
【0019】
7)導電層の輪郭面を段付き面とする段部のうちの少なくとも1つに、電子素子搭載面側に開口した凹部が形成されている上記5)または6)記載の絶縁回路基板。
【0020】
8)段部の凹部が、当該段部の全周にわたる凹溝からなる上記7)記載の絶縁回路基板。
【0021】
9)導電層の輪郭面におけるろう材貯留部となる凹部が、前記輪郭面の全周にわたって連続的に形成された溝からなる上記2)記載の絶縁回路基板。
【0022】
10)導電層が、積層されて互いに接合された複数枚の金属板からなり、導電層の厚み方向の中間部に位置する金属板の大きさが他の金属板よりも小さくなっていることによって、前記輪郭面に全周にわたる連続した溝が形成されている上記9)記載の絶縁回路基板。
【0023】
11)導電層が、積層されて互いに接合された複数枚の金属板からなり、少なくとも1枚の金属板に、当該金属板に隣接する金属板を向いた面と側面とに跨る切り欠きが形成されることによって、前記輪郭面に全周にわたる連続した溝が形成されている上記9)記載の絶縁回路基板。
【0024】
12)絶縁層が、AlN、Al、SiC、SiおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなり、導電層を構成する複数の金属板のうち最も絶縁層側の金属板がアルミニウムからなるとともに、Al−Si合金系ろう材により絶縁層にろう付されており、導電層を構成する複数の金属板のうち最も電子素子搭載面側の金属板がニッケル、銅、銀および金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる上記6)、10)または11)記載の絶縁回路基板。
【0025】
13)導電層の電子素子搭載面の周縁部に、ろう材溜凹部が形成されている上記1)〜12)のうちのいずれかに記載の絶縁回路基板。
【0026】
14)導電層の輪郭面に、輪郭面と電子素子搭載面とに跨る切り欠きからなる凹部と、輪郭面の周方向にのびる溝からなる凹部とが混在して設けられている上記2)記載の絶縁回路基板。
【0027】
15)導電層が方形であり、導電層の相対向する2つの辺部に切り欠きからなる凹部が設けられ、残りの2つの辺部に溝からなる凹部が設けられている上記14)記載の絶縁回路基板。
【0028】
16)上記1)〜15)のうちのいずれかに記載された絶縁回路基板の絶縁層における導電層がろう付された面とは反対側の面が、冷却器にろう付されているパワーモジュール用ベース。
【0029】
17)絶縁回路基板の絶縁層と冷却器との間に応力緩和部材が介在させられ、応力緩和部材が絶縁層および冷却器にろう付されている上記16)記載のパワーモジュール用ベース。
【0030】
18)上記16)または17)記載のパワーモジュール用ベースの絶縁回路基板における導電層の電子素子電子素子搭載面に、パワーデバイスがはんだ付されているパワーモジュール。
【0031】
19)上記6)記載の絶縁回路基板を製造する方法であって、
セラミック板からなる絶縁層と、大きさが異なる複数枚の導電層形成用の金属板とを用意すること、絶縁層上に、すべての金属板を、最大の金属板から順に積層状に載せて上側金属板の周縁を下側金属板の周縁よりも内側に位置させるとともに、絶縁層と下端金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、絶縁層および全金属板を加熱して絶縁層と最大金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面が絶縁層側から最小金属板側に向かって段部を介して順次小さくなった段付き面となっている導電層を形成すること、前記段付き面における最も絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記段付き面における接触抑制部よりも最小金属板側の部分に、上端が上方に開口するとともに導電層の輪郭面の全周にわたる連続した凹部からなり、かつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【0032】
20)上記10)記載の絶縁回路基板を製造する方法であって、
セラミック板からなる絶縁層と、1枚の大きさが他のものよりも小さくなっている複数枚の導電層形成用の金属板とを用意すること、絶縁層上に、すべての金属板を、最小の金属板が中間部に位置するように積層状に載せるとともに、絶縁層と下端金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、絶縁層および全金属板を加熱して絶縁層とこれに隣接する金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面に全周にわたる溝が連続的に形成されている導電層を形成すること、導電層の輪郭面における溝よりも絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記輪郭面における接触抑制部よりも絶縁層とは反対側の部分に、前記溝からなりかつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【0033】
21)上記11)記載の絶縁回路基板を製造する方法であって、
セラミック板からなる絶縁層と、複数枚の導電層形成用の金属板とを用意し、少なくとも1枚の金属板に、その片面と側面とに跨る切り欠きを全周にわたって形成すること、絶縁層上に、すべての金属板を、切り欠きを有する金属板における切り欠きが開口する側の片面に他の金属板が存在するように載せるとともに、絶縁層と下端金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、絶縁層および全金属板を加熱して絶縁層とこれに隣接する金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面に全周にわたる溝が連続的に形成されている導電層を形成すること、導電層の輪郭面における溝よりも絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記輪郭面における接触抑制部よりも絶縁層とは反対側の部分に、前記溝からなりかつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【0034】
22)上記6)記載の絶縁回路基板と、当該絶縁回路基板の絶縁層における導電層がろう付された面とは反対側の面がろう付されている冷却器とを備えたパワーモジュール用ベースを製造する方法であって、
冷却器と、セラミック板からなる絶縁層と、大きさが異なる複数枚の導電層形成用の金属板とを用意すること、冷却器上に絶縁層を配置するとともに、冷却器と絶縁層との間にろう材を配置すること、絶縁層上に、すべての金属板を、最大の金属板から順に積層状に載せて上側金属板の周縁を下側金属板の周縁よりも内側に位置させるとともに、絶縁層と下端金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、冷却器、絶縁層および全金属板を加熱して冷却器と絶縁層、絶縁層と最大金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面が絶縁層側から最小金属板側に向かって段部を介して順次小さくなった段付き面となっている導電層を形成すること、前記段付き面における最も絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記段付き面における接触抑制部よりも最小金属板側の部分に、上端が上方に開口するとともに導電層の輪郭面の全周にわたる連続した凹部からなり、かつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とするパワーモジュール用ベースの製造方法。
【0035】
23)上記10)記載の絶縁回路基板と、当該絶縁回路基板の絶縁層における導電層がろう付された面とは反対側の面がろう付されている冷却器とを備えたパワーモジュール用ベースを製造する方法であって、
冷却器と、セラミック板からなる絶縁層と、1枚の大きさが他のものよりも小さくなっている複数枚の導電層形成用の金属板とを用意すること、冷却器上に絶縁層を配置するとともに、冷却器と絶縁層との間にろう材を配置すること、絶縁層上に、すべての金属板を、最小の金属板が中間部に位置するように積層状に載せるとともに、絶縁層と金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、冷却器、絶縁層および全金属板を加熱して冷却器と絶縁層、絶縁層とこれに隣接する金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面に全周にわたる溝が連続的に形成されている導電層を形成すること、導電層の輪郭面における溝よりも絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記輪郭面における接触抑制部よりも絶縁層とは反対側の部分に、前記溝からなりかつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とするパワーモジュール用ベースの製造方法。
【0036】
24)上記11)記載の絶縁回路基板と、当該絶縁回路基板の絶縁層における導電層がろう付された面とは反対側の面がろう付されている冷却器とを備えたパワーモジュール用ベースを製造する方法であって、
冷却器と、セラミック板からなる絶縁層と、複数枚の導電層形成用の金属板とを用意し、少なくとも1枚の金属板に、その片面と側面とに跨る切り欠きを全周にわたって形成すること、冷却器上に絶縁層を配置するとともに、冷却器と絶縁層との間にろう材を配置すること、絶縁層上に、すべての金属板を、切り欠きを有する金属板における切り欠きが開口する側の片面に他の金属板が存在するように載せるとともに、絶縁層と下端金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、冷却器、絶縁層および全金属板を加熱して冷却器と絶縁層、絶縁層とこれに隣接する金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面に全周にわたる溝が連続的に形成されている導電層を形成すること、導電層の輪郭面における溝よりも絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記輪郭面における接触抑制部よりも絶縁層とは反対側の部分に、前記溝からなりかつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とするパワーモジュール用ベースの製造方法。
【0037】
25)絶縁層がAlN、Al、SiC、SiおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなり、導電層を構成する複数の金属板のうち最も絶縁層側の金属板がアルミニウムからなり、導電層を構成する複数の金属板のうち絶縁層から最も離れた側の金属板がニッケル、銅、銀および金よりなる群から選ばれた1種の材料からなり、ろう材がAl−Si合金系ろう材からなる上記22)〜24)のうちのいずれかに記載のパワーモジュール用ベースの製造方法。
【0038】
26)冷却器と絶縁層との間に応力緩和部材を配置するとともに、冷却器および絶縁層と応力緩和部材との間にろう材を配置しておき、冷却器、応力緩和部材、絶縁層および全金属板を加圧しつつ加熱して冷却器と応力緩和部材、応力緩和部材と絶縁層、絶縁層とこれに隣接する金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付する上記22)〜25)のうちのいずれかに記載のパワーモジュール用ベースの製造方法。
【発明の効果】
【0039】
上記1)〜15)の絶縁回路基板によれば、導電層の輪郭を形成しかつ導電層の厚み方向に幅を持つ輪郭面に、ろう材を、絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部が形成されているので、絶縁回路基板の製造時、および絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースの製造時における絶縁層と導電層とのろう付の際に、絶縁層と導電層との間に配置したろう材が溶融するとともに、溶融ろう材が輪郭面を通って導電層の電子素子搭載面側に流れたとしても、当該溶融ろう材はろう材貯留部において溜められてここで凝固することになり、溶融ろう材が導電層の電子素子搭載面を覆い、電子素子搭載面上で凝固することが抑制される。したがって、硬化したろう材が導電層の電子素子搭載面に存在することが抑制され、導電板の電子素子搭載面に施すニッケルメッキに欠陥が生じることが抑制されるとともに、ニッケルメッキを施した導電層の電子素子搭載面に電子素子をはんだ付した場合にも、電子素子の熱サイクル寿命の低下が抑制される。しかも、ろう材貯留部は、ろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるので、電子素子搭載面にニッケルメッキを施した後のパワーデバイスのはんだ付けの際の加熱冷却や、絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースにパワーデバイスがはんだ付けされているパワーモジュールの使用時の冷熱サイクルによっても、セラミック製絶縁層と凝固したろう材との接触部に生じる熱応力に起因する絶縁層の割れが防止され、パワーモジュールの冷熱信頼性が向上する。
【0040】
上記2)〜4)の絶縁回路基板によれば、絶縁回路基板の製造時、および絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースの製造時における絶縁層と導電層とのろう付の際に、ろう材貯留部となる凹部内に確実に貯められてここで凝固するとともに、絶縁層との接触が効果的に防止される。
【0041】
上記5)の絶縁回路基板によれば、絶縁回路基板の製造時、および絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースの製造時における絶縁層と導電層とのろう付の際に、絶縁層と導電層との間に配置したろう材が溶融するとともに、溶融ろう材が輪郭面を通って導電層の電子素子搭載面側に流れたとしても、当該溶融ろう材は、効果的にろう材貯留部となる凹部に貯められてここで凝固する。
【0042】
上記6)の絶縁回路基板によれば、上記5)の絶縁回路基板を比較的簡単に得ることができる。
【0043】
上記7)および8)の絶縁回路基板によれば、絶縁回路基板の製造時、および絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースの製造時における絶縁層と導電層とのろう付の際に、溶融ろう材が電子素子搭載面に流れ込むことが効果的に防止される。
【0044】
上記9)の絶縁回路基板によれば、絶縁回路基板の製造時、および絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースの製造時における絶縁層と導電層とのろう付の際に、絶縁層と導電層との間に配置したろう材が溶融するとともに、溶融ろう材が輪郭面を通って導電層の電子素子搭載面側に流れたとしても、当該溶融ろう材は、効果的にろう材貯留部となる凹部を構成する溝に貯められてここで凝固する。
【0045】
上記10)および11)の絶縁回路基板によれば、上記9)の絶縁回路基板を比較的簡単に得ることができる。
【0046】
上記12)の絶縁回路基板によれば、導電層を構成する複数の金属板のうち最も電子素子搭載面側の金属板がニッケル、銅、銀および金よりなる群から選ばれた1種の材料からなるので、当該絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースにパワーモジュールをはんだ付けする前に、電子素子搭載面にニッケル、銅、銀または金のメッキを施す必要が無くなり、製造工数が減少するとともに製造コストが低減される。
【0047】
上記13)の絶縁回路基板によれば、絶縁回路基板の製造時、および絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースの製造時における絶縁層と導電層とのろう付の際に、溶融ろう材が電子素子搭載面における電子素子が搭載される部分に流れ込むことが効果的に防止される。
【0048】
上記16)および17)のパワーモジュール用ベースによれば、パワーモジュール用ベースの製造時における絶縁層と導電層とのろう付の際に、絶縁層と導電層との間に配置したろう材が溶融するとともに、溶融ろう材が輪郭面を通って導電層の電子素子搭載面側に流れたとしても、当該溶融ろう材はろう材貯留部において溜められてここで凝固することになり、溶融ろう材が導電層の電子素子搭載面を覆い、電子素子搭載面上で凝固することが抑制される。したがって、硬化したろう材が導電層の電子素子搭載面に存在することが抑制され、導電板の電子素子搭載面に施すニッケルメッキに欠陥が生じることが抑制されるとともに、ニッケルメッキを施した導電層の電子素子搭載面に電子素子をはんだ付した場合にも、電子素子の熱サイクル寿命の低下が抑制される。しかも、ろう材貯留部は、ろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるので、電子素子搭載面にニッケルメッキを施した後のパワーデバイスのはんだ付けの際の加熱冷却や、パワーモジュール用ベースにパワーデバイスがはんだ付けされているパワーモジュールの使用時の冷熱サイクルによっても、セラミック製絶縁層と凝固したろう材との接触部に生じる熱応力に起因する絶縁層の割れが防止され、パワーモジュールの冷熱信頼性が向上する。
【0049】
上記17)のパワーモジュール用べースによれば、電子素子搭載面にパワーモジュールをはんだ付けしているパワーモジュールの使用時の冷熱サイクル時に、絶縁層と冷却器との線熱膨張係数の相違に起因して生じる熱応力が応力緩和部材によって緩和されるので、絶縁層にクラックが発生することが抑制される。
【0050】
上記19)の方法によれば、上記6)の絶縁回路基板を比較的簡単に製造することができる。
【0051】
上記20)の方法によれば、上記10)の絶縁回路基板を比較的簡単に製造することができる。
【0052】
上記21)の方法によれば、上記11)の絶縁回路基板を比較的簡単に製造することができる。
【0053】
上記22)の方法によれば、上記6)の絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースを比較的簡単に製造することができる。
【0054】
上記23)の方法によれば、上記10)の絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースを比較的簡単に製造することができる。
【0055】
上記24)の方法によれば、上記11)の絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースを比較的簡単に製造することができる。
【0056】
上記25)の方法によれば、製造されたパワーモジュール用ベースにパワーモジュールをはんだ付けする前に、電子素子搭載面にニッケル、銅、銀または金のメッキを施す必要が無くなり、製造工数が減少するとともに製造コストが低減される。
【0057】
上記26)の方法によれば、上記17)のパワーモジュールを比較的簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の実施形態1の絶縁回路基板を有するパワーモジュール用ベースにパワーデバイスが実装されることにより構成されたパワーモジュールを示す垂直断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】導電層の第1の変形例を示す図2相当の図である。
【図4】導電層の第2の変形例を示す図2相当の図である。
【図5】導電層の第3の変形例を示す図2相当の図である。
【図6】導電層の第4の変形例を示す図2相当の図である。
【図7】導電層の第5の変形例を示す図2相当の図である。
【図8】導電層の第6の変形例を示す図2相当の図である。
【図9】導電層の第7の変形例を示す図2相当の図である。
【図10】導電層の第8の変形例を示す図2相当の図である。
【図11】導電層の第9の変形例を示す図2相当の図である。
【図12】導電層の第10の変形例を示す図2相当の図である。
【図13】導電層の第11の変形例を示す図2相当の図である。
【図14】導電層の第12の変形例を示す図2相当の図である。
【図15】導電層の第13の変形例を示す斜視図である。
【図16】導電層の第14の変形例を示す斜視図である。
【図17】この発明の実施形態2の絶縁回路基板を有するパワーモジュール用ベースにパワーデバイスが実装されることにより構成されたパワーモジュールを示す垂直断面図である。
【図18】この発明の実施形態3の絶縁回路基板を有するパワーモジュール用ベースにパワーデバイスが実装されることにより構成されたパワーモジュールを示す垂直断面図である。
【図19】実施例とともに行った比較例を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0060】
なお、以下の説明において、図1の上下を上下というものとする。
【0061】
また、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0062】
実施形態1
この実施形態は図1および図2に示すものである。
【0063】
図1は実施形態1の絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースにおける導電層の電子素子搭載面にパワーデバイスが実装されたパワーモジュールを示し、図2は図1の要部を示す。
【0064】
図1において、パワーモジュール(1)は、パワーモジュール用ベース(2)と、パワーモジュール用ベース(2)に実装されたパワーデバイス(3)(電子素子)とよりなる。
【0065】
パワーモジュール用ベース(2)は、方形のセラミックス製絶縁板(5)(絶縁層)、および絶縁板(5)の上面にろう付された導電層(6)からなる絶縁回路基板(4)と、絶縁回路基板(4)の絶縁板(5)の下面がろう付されたアルミニウム製冷却器(7)(ヒートシンク)とによって構成されている。ここでは、導電層(6)は1枚の方形アルミニウム板(10)からなる。なお、図1においては示されていないが、1つの絶縁板(5)には複数の導電層(6)がろう付され、1つの冷却器(7)は複数の絶縁回路基板(4)の絶縁板(5)がろう付されるのが一般的である。
【0066】
絶縁回路基板(4)の絶縁板(5)は、必要とされる電気絶縁特性、熱伝導率および機械的強度を満たしていれば、どのようなセラミックから形成されていてもよいが、たとえばAlN、Al、SiC、SiおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料から形成されていることが好ましい。絶縁板(5)の外周縁部は導電層(6)の外周縁部よりも外側に位置しており、導電層(6)と冷却器(7)との間の絶縁性能は十分に確保されている。
【0067】
導電層(6)を構成するアルミニウム板(10)は、電気伝導率および熱伝導率が高く、変形能が高い純アルミニウム、たとえば純度99.99質量%以上の純アルミニウムにより形成されていることが好ましい。そして、導電層(6)の上面、すなわち導電層(6)における絶縁板(5)にろう付された面とは反対側の面が、電子素子搭載面(8)となされている。
【0068】
導電層(6)の輪郭を形成しかつ導電層(6)の厚み方向(上下方向)に幅を持つ輪郭面(9)に、ろう材を、絶縁板(5)に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部(11)が設けられている。すなわち、図2に示すように、導電層(6)の輪郭面(9)に、絶縁板(5)側の端部から電子素子搭載面(8)に向かって所定の幅を有し、かつろう材貯留部(11)内のろう材と絶縁板(5)との接触を抑制する接触抑制部(12)が設けられており、輪郭面(9)における接触抑制部(12)よりも電子素子搭載面(8)側(上側)の部分に、接触抑制部(12)に対して凹みかつ上端部が電子素子搭載面(8)に開口した凹部(13)が、輪郭面(9)をなぞるようにその全周にわたって連続的に形成されている。換言すれば、導電層(6)の輪郭面(9)が、絶縁板(5)側から電子素子搭載面(8)側に向かって段部(14a)を介して順次小さくなった段付き面(14)となされ、段付き面(14)における最も絶縁板(5)側の部分が接触抑制部(12)となっているとともに、段付き面(14)における接触抑制部(12)よりも上側の部分に、ろう材貯留部(11)となる凹部(13)が形成されている。ここでは、段付き面(14)は、1つの段部(14a)を介して1段階だけ小さくなっており、平面から見た外形が、2重となった2つの方形部を有していることになる。
【0069】
冷却器(7)は、複数の冷却流体通路(15)が並列状に設けられた扁平中空状であり、熱伝導性に優れるとともに、軽量であるアルミニウムにより形成されていることが好ましい。冷却流体としては、液体および気体のいずれを用いてもよい。なお、冷却器(7)としては、ケース内にインナーフィンが配置されたものが用いられてもよい。
【0070】
パワーデバイス(3)は、絶縁回路基板(4)の導電層(6)の電子素子搭載面(8)にニッケルメッキが施された後に、電子素子搭載面(8)のニッケルメッキ上にはんだ付けされており、これによりパワーモジュール用ベース(2)に実装されている。パワーデバイス(3)から発せられる熱は、導電層(6)および絶縁板(5)を経て冷却器(7)に伝えられ、冷却流体通路(15)内を流れる冷却流体に放熱されるようになっている。
【0071】
絶縁回路基板(4)を含むパワーモジュール用ベース(2)の製造方法は次の通りである。
【0072】
予め、プレス打ち抜き加工、打ち抜き加工と彫り込み加工、鋳造などの適当な方法によって、導電層(6)の輪郭面(9)となる側面に凹部(13)を有するアルミニウム板(10)をつくる。また、冷却器(7)および絶縁板(5)を用意しておく。そして、まず冷却器(7)上に、絶縁板(5)およびアルミニウム板(10)をこの順序で配置する。冷却器(7)と絶縁板(5)との間および絶縁板(5)とアルミニウム板(10)との間にはそれぞれアルミニウムろう材層を設けておく。ろう材層は、たとえばSi10質量%を含み、残部Alおよび不可避不純物からなるAl−Si合金系ろう材からなる。冷却器(7)と絶縁板(5)との間に配置されるろう材層は、ろう材箔や、心材の両面にろう材層が形成されたアルミニウムブレージングシートなどからなる。絶縁板(5)とアルミニウム板(10)との間に配置されるろう材層は、ろう材箔や、心材の両面にろう材層が形成されたアルミニウムブレージングシートからなる。また、絶縁板(5)とアルミニウム板(10)との間に配置されるろう材層は、アルミニウム板(10)の下面に予めクラッドされていてもよい。
【0073】
その後、適当な治具によりアルミニウム板(10)、絶縁板(5)および冷却器(7)を加圧した状態にして仮止めしたものを真空雰囲気とされた加熱炉中に入れ、適当な温度に適当な時間加熱し、絶縁板(5)とアルミニウム板(10)とをろう付することにより、絶縁板(5)および導電層(6)からなる絶縁回路基板(4)を製造すると同時に、絶縁回路基板(4)の絶縁板(5)と冷却器(7)とをろう付する。こうして、パワーモジュール用ベース(2)が製造される。
【0074】
上述したパワーモジュール用ベース(2)の製造時における絶縁板(5)と導電層(6)となるアルミニウム板(10)とのろう付の際に、絶縁板(5)とアルミニウム板(10)との間に配置したろう材が溶融するとともに、溶融ろう材が導電層(6)の輪郭面(9)を通って電子素子搭載面(8)側に流れるが、図2に鎖線で示すように、当該溶融ろう材(B)はろう材貯留部(11)となる凹部(13)内に溜められてここで凝固することになり、溶融ろう材が導電層(6)の電子素子搭載面(8)を覆って電子素子搭載面(8)上で凝固することが抑制される。したがって、硬化したろう材が導電層(6)の電子素子搭載面(8)に存在することが抑制され、導電層(6)の電子素子搭載面(8)に施すニッケルメッキに欠陥が生じることが抑制されるとともに、ニッケルメッキを施した導電層(6)の電子素子搭載面(8)にパワーデバイス(3)をはんだ付した場合にも、パワーデバイス(3)の熱サイクル寿命の低下が抑制される。しかも、ろう材貯留部(11)は、ろう材(B)を絶縁板(5)に対して非接触状態で溜めるので、電子素子搭載面(8)にニッケルメッキを施した後のパワーデバイス(3)のはんだ付けの際の加熱冷却や、パワーモジュール用ベース(2)にパワーデバイス(3)がはんだ付けされているパワーモジュール(1)の使用時の冷熱サイクルによっても、セラミック製絶縁板(5)と凝固したろう材との接触部に生じる熱応力に起因する絶縁板(5)の割れが防止され、パワーモジュール(1)の冷熱サイクル信頼性が向上する。
【0075】
図3〜図14は導電層の変形例を示す。
【0076】
図3に示す導電層(20)は、上下方向に積層されるとともに互いにろう付され、かつ大きさの異なる複数、ここでは2枚の方形アルミニウム板(21)(22)からなり、全アルミニウム板(21)(22)の大きさが異なっているとともに、全アルミニウム板(21)(22)の大きさが絶縁板(5)側(下側)から上側に向かって順次小さくなっている。各アルミニウム板(21)(22)は、図2に示す導電層(6)を形成するアルミニウム板(10)と同様な材質である。そして、導電層(20)の上側アルミニウム板(21)の上面が電子素子搭載面(8)となっている。
【0077】
導電層(20)を形成する2枚のアルミニウム板(21)(22)の大きさが絶縁板(5)側(下側)から上側に向かって順次小さくなっていることによって、導電層(20)の輪郭面(9)に、下側アルミニウム板(22)の側面からなりかつ上下方向に所定の幅を有する接触抑制部(12)が設けられるとともに、輪郭面(9)における接触抑制部(12)よりも上側の部分に、接触抑制部(12)に対して凹みかつ上端部が電子素子搭載面(8)に開口した凹部(13)が、輪郭面(9)をなぞるようにその全周にわたって連続的に形成されている。そして、図2の絶縁層(6)と同様に、導電層(20)の輪郭面(9)が、絶縁板(5)側から電子素子搭載面(8)側に向かって1つの段部(14a)を介して1段階だけ小さくなった段付き面(14)となされ、段付き面(14)における最も絶縁板(5)側の部分が接触抑制部(12)となっているとともに、段付き面(14)における接触抑制部(12)よりも上側の部分に、ろう材貯留部(11)となる凹部(13)が形成されている。その他の構成は、図2に示す導電層(6)と同様である。
【0078】
図3に示す導電層(20)を備えたパワーモジュール用ベースの製造方法は次の通りである。
【0079】
すなわち、冷却器(7)と、絶縁板(5)と、大きさが異なる2枚のアルミニウム板(21)(22)とを用意し、冷却器(7)上に絶縁板(5)を配置するとともに、絶縁板(5)上に、両アルミニウム板(21)(22)を、大きいアルミニウム板(22)から順に積層状に載せて上側アルミニウム板(21)の周縁を下側アルミニウム板(22)の周縁よりも内側に位置させる。冷却器(7)と絶縁板(5)との間、絶縁板(5)と下側アルミニウム板(22)との間、および両アルミニウム板(21)(22)間には、それぞれ図1および図2に示すパワーモジュール用ベース(2)を製造する場合と同様なアルミニウムろう材層を設けておく。冷却器(7)と絶縁板(5)との間に配置されるろう材層は、ろう材箔や、心材の両面にろう材層が形成されたアルミニウムブレージングシートなどからなる。絶縁板(5)と下側アルミニウム板(22)との間および両アルミニウム板(21)(22)間に配置されるろう材層は、ろう材箔や、心材の両面にろう材層が形成されたアルミニウムブレージングシートからなる。また、絶縁板(5)と導電層(6)との間に配置されるろう材層は、下側アルミニウム板(22)の下面に予めクラッドされていてもよく、両アルミニウム板(21)(22)間に配置されるろう材層は、上側アルミニウム板(21)の下面または下側アルミニウム板(22)の上面に予めクラッドされていてもよい。
【0080】
その後、適当な治具により両アルミニウム板(21)(22)、絶縁板(5)および冷却器(7)を加圧した状態にして仮止めしたものを真空雰囲気とされた加熱炉中に入れ、適当な温度に適当な時間加熱し、絶縁板(5)と下側アルミニウム板(22)および両アルミニウム板(21)(22)どうしろう付することにより、絶縁板(5)上に、輪郭面(9)が絶縁板(5)側から上側に向かって段部(14a)を介して順次小さくなった段付き面(14)となっている導電層(6)を形成して、絶縁板(5)および導電層(20)からなる絶縁回路基板(4)を製造すると同時に、絶縁回路基板(4)の絶縁板(5)と冷却器(7)とをろう付する。こうして、パワーモジュール用ベースが製造される。
【0081】
図4に示す導電層(25)は、図3に示す導電層(20)における上側アルミニウム板(21)の代わりに、上側アルミニウム板(21)と同一寸法のニッケル板(26)が用いられたものであり、ニッケル板(26)の上面が電子素子搭載面(8)となっている。その他の構成は図3に示す導電層(20)と同じであり、図4に示す導電層(25)を有するパワーモジュール用ベースは、上側アルミニウム板(21)の代わりにニッケル板(26)を用いて、図3に示す導電層(20)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0082】
図4に示す導電層(25)を有するパワーモジュール用ベースの場合、導電層(25)の電子素子搭載面(8)にパワーデバイス(3)をはんだ付けする前に、電子素子搭載面(8)にニッケルメッキを施す必要がなくなる。
【0083】
図5に示す導電層(30)は、図2に示す導電層(6)と同様なアルミニウム板(10)からなる。導電層(30)の輪郭面(9)は、絶縁板(5)側から電子素子搭載面(8)側に向かって複数、ここでは2つの段部(14a)(14b)を介して2段階に順次小さくなった段付き面(14)となされ、段付き面(14)における最も絶縁板(5)側の部分が接触抑制部(12)となっている。また、段付き面(14)における接触抑制部(12)よりも上側の部分に、接触抑制部(12)に対して凹みかつ上端部が電子素子搭載面(8)に開口するとともに、ろう材貯留部(11)となる凹部(31)が、輪郭面(9)をなぞるようにその全周にわたって連続的に形成されている。段付き面(14)は、2つの段部(14a)(14b)を介して2段階小さくなっており、平面から見た外形が、3重となった3つの方形部を有していることになる。その他の構成は図2に示す導電層(6)と同じであり、図5に示す導電層(30)を有するパワーモジュール用ベースは、導電層(30)の輪郭面(9)となる側面が2つの段部(14a)(14b)を介して2段階小さくなった段付き面(14)となっているアルミニウム板(10)を用いて、図2に示す導電層(6)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0084】
図6に示す導電層(35)は、上下方向に積層されるとともに互いにろう付され、かつ大きさの異なる複数、ここでは3枚の方形アルミニウム板(36)(37)(38)からなり、全アルミニウム板(36)(37)(38)の大きさが異なっているとともに、全アルミニウム板(36)(37)(38)の大きさが下側から上側に向かって順次小さくなっている。各アルミニウム板(36)(37)(38)は、図2に示す導電層(6)を形成するアルミニウム板と同様な材質である。そして、導電層(6)の上側アルミニウム板(36)の上面が電子素子搭載面(8)となされている。
【0085】
導電層(35)を形成する3枚のアルミニウム板(36)(37)(38)の大きさが下側から上側に向かって順次小さくなっていることによって、導電層(35)の輪郭面(9)が、絶縁板(5)側から電子素子搭載面(8)側に向かって複数、ここでは2つの段部(14a)(14b)を介して2段階に順次小さくなった段付き面(14)となされ、段付き面(14)における最も絶縁板(5)側の部分が接触抑制部(12)となっているとともに、段付き面(14)における接触抑制部(12)よりも上側の部分に、ろう材貯留部(11)となる凹部(31)が形成されている。その他の構成は図5に示す導電層(30)と同じである。
【0086】
図6に示す導電層(35)を有するパワーモジュール用ベースは、2枚のアルミニウム板(21)(22)の代わりに3枚のアルミニウム板(36)(37)(38)を用いて、図3に示す導電層(20)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0087】
図7に示す導電層(40)は、図6に示す導電層(35)における上側アルミニウム板(36)の代わりに、上側アルミニウム板(36)と同一寸法のニッケル板(41)が用いられたものであり、ニッケル板(41)の上面が電子素子搭載面(8)となっている。その他の構成は図6に示す導電層(35)と同じであり、図7に示す導電層(40)を有するパワーモジュール用ベースは、上側アルミニウム板(36)の代わりにニッケル板(41)を用いて、図6に示す導電層(35)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0088】
図7に示す導電層(40)を有するパワーモジュール用ベースの場合、導電層(40)の電子素子搭載面(8)にパワーデバイス(3)をはんだ付けする前に、電子素子搭載面(8)にニッケルメッキを施す必要がなくなる。
【0089】
図8に示す導電層(45)は、図2に示す導電層(6)と同様なアルミニウム板(10)からなり、凹部(13)に加えて、電子素子搭載面(8)におけるパワーデバイス(3)がはんだ付けされる部分よりも外周寄りの部分に、上方に開口したろう材溜凹部(46)が形成されている。ろう材溜凹部(46)は、導電層(45)の周縁部の全周にわたって連続的に形成されていてもよいし、あるいは断続的に形成されていてもよい。その他の構成は図2に示す導電層(6)と同様であり、凹部(13)に加えてろう材溜凹部(46)を有するアルミニウム板(10)を用いて、図2に示す導電層(6)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0090】
なお、図3〜図7に示す導電層(20)(25)(30)(35)(40)においても、電子素子搭載面(8)におけるパワーデバイス(3)がはんだ付けされる部分よりも外周寄りの部分に、上方に開口したろう材溜凹部(46)が形成されていてもよい。
【0091】
図9に示す導電層(50)は、図2に示す導電層(6)と同様なアルミニウム板(10)からなり、凹部(13)に加えて、段付き面(14)の段部(14a)に、上方に開口しかつ段部(14a)の全周にわたる凹溝(51)が連続的に形成されている。その他の構成は図2に示す導電層(6)と同様であり、凹部(13)に加えて凹溝(51)を有するアルミニウム板(10)を用いて、図2に示す導電層(6)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0092】
なお、図3〜図8に示す導電層(20)(25)(30)(35)(40)においても、段部(14a)(14b)に、上方に開口しかつ段部(14a)(14b)の全周にわたる凹溝(51)が連続的に形成されていてもよい。
【0093】
図10に示す導電層(55)は、図2に示す導電層(6)と同様なアルミニウム板(10)からなり、導電層(55)の輪郭面(9)の上下方向の中間部に、輪郭面(9)をなぞるようにその全周にわたる溝(56)が連続的に形成され、溝(56)が、ろう材を、絶縁板(5)に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部(11)となっている。また、導電層(55)の輪郭面(9)における溝(56)よりも下方の部分に、上下方向に所定の幅を有しかつろう材貯留部(11)内のろう材と絶縁板(5)との接触を抑制する接触抑制部(12)が設けられている。図10に示す導電層(55)を有するパワーモジュール用ベースは、導電層(55)の輪郭面(9)となる側面に溝(56)が形成されているアルミニウム板(10)を用いて、図2に示す導電層(6)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0094】
図11に示す導電層(60)は、上下方向に積層されるとともに互いにろう付された2枚の方形アルミニウム板(61)(62)からなる。各アルミニウム板(61)(62)は、図2に示す導電層(6)を形成するアルミニウム板(10)と同様な材質であり、上側のアルミニウム板(61)の肉厚は下側のアルミニウム板(62)の肉厚よりも大きくなっている。
【0095】
上側アルミニウム板(61)の下面(下側アルミニウム板(62)側を向いた面)と側面とに跨る切り欠き(63)が、上側アルミニウム板(61)の全周にわたって形成されることによって、輪郭面(9)の上下方向の中間部に、輪郭面(9)をなぞるようにその全周にわたる溝(56)が連続的に形成され、溝(56)が、ろう材を、絶縁板(5)に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部(11)となっている。その他の構成は、図10に示す導電層(55)と同様である。
【0096】
図11に示す導電層(60)を有するパワーモジュール用ベースは、大きさの異なる2枚のアルミニウム板(21)(22)の代わりに、切り欠き(63)を有する上側アルミニウム板(61)と下側アルミニウム板(62)とを用いて、図3に示す導電層(20)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0097】
図12に示す導電層(65)は、上下方向に積層されるとともに互いにろう付された2枚の方形アルミニウム板(66)(67)からなる。各アルミニウム板(66)(67)は、図2に示す導電層(6)を形成するアルミニウム板(10)と同様な材質であり、下側のアルミニウム板(67)の肉厚は上側のアルミニウム板(66)の肉厚よりも大きくなっている。
【0098】
下側アルミニウム板(67)の上面(上側アルミニウム板(66)側を向いた面)と側面とに跨る切り欠き(63)が、下側アルミニウム板(67)の全周にわたって形成されることによって、輪郭面(9)の上下方向の中間部に、輪郭面(9)をなぞるようにその全周にわたる溝(56)が連続的に形成され、溝(56)が、ろう材を、絶縁板(5)に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部(11)となっている。その他の構成は、図10に示す導電層(55)と同様である。
【0099】
図12に示す導電層(65)を有するパワーモジュール用ベースは、大きさの異なる2枚のアルミニウム板(21)(22)の代わりに、上側アルミニウム板(66)と切り欠き(68)を有する下側アルミニウム板(67)とを用いて、図3に示す導電層(20)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0100】
図13に示す導電層(70)は、図12に示す導電層(65)における上側アルミニウム板(66)の代わりに、上側アルミニウム板(66)と同一寸法のニッケル板(71)が用いられたものであり、ニッケル板(71)の上面が電子素子搭載面(8)となっている。その他の構成は図12に示す導電層(65)と同じであり、図13に示す導電層(40)を有するパワーモジュール用ベースは、上側アルミニウム板(66)の代わりにニッケル板(71)を用いて、図12に示す導電層(65)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0101】
図13に示す導電層(70)を有するパワーモジュール用ベースの場合、導電層(70)の電子素子搭載面(8)にパワーデバイス(3)をはんだ付けする前に、電子素子搭載面(8)にニッケルメッキを施す必要がなくなる。
【0102】
図14に示す導電層(75)は、図13に示す導電層(70)における下側アルミニウム板(67)の代わりに、上下方向に積層されるとともに互いにろう付された2枚の方形アルミニウム板(76)(77)が用いられたものである。導電層(75)の上下方向の中間部のアルミニウム板(76)の外形は、下端に位置するアルミニウム板(77)および上端の板(71)の外形よりも小さくなっている。すなわち、導電層(75)が、積層されるとともに互いにろう付された複数、ここでは3枚の板(71)(76)(77)からなり、導電層(75)の厚み方向の中間部に位置するアルミニウム板(76)の大きさが他の板(71)(77)よりも小さくされることによって、輪郭面(9)にその全周にわたって連続しかつろう材貯留部(11)となる溝(56)が形成されている。図14に示す導電層(75)を有するパワーモジュール用ベースは、大きさの異なる3枚のアルミニウム板(36)(37)(38)の代わりに、ニッケル板(71)および2枚のアルミニウム板(76)(77)を用いて、図6に示す導電層(35)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0103】
図14に示す導電層(75)を有するパワーモジュール用ベースの場合、導電層(70)の電子素子搭載面(8)にパワーデバイス(3)をはんだ付けする前に、電子素子搭載面(8)にニッケルメッキを施す必要がなくなる。
【0104】
なお、図14に示す導電層(75)において、板(71)に代えて、図12に示す導電層(65)の上側アルミニウム板(66)が用いられていてもよい。
【0105】
なお、上記においては、図3、図4、図6、図7、図11〜図14に示す導電層(20)(25)(35)(40)(60)(65)(70)(75)においては、これらを形成する複数の板はろう付されているが、これに限定されるものではなく、他の適当な方法、たとえば圧延などにより接合されていてもよい。この場合、複数の板を接合して導電層(20)(25)(35)(40)(60)(65)(70)(75)を形成した後に、導電層(20)(25)(35)(40)(60)(65)(70)(75)が絶縁板(5)にろう付される。
【0106】
また、図3、図4、図6、図7、図11〜図14に示す導電層(20)(25)(35)(40)(60)(65)(70)(75)を形成する板の数も適宜変更可能である。
【0107】
図15に示す導電層(80)は、図2に示す導電層(6)と同様なアルミニウム板(10)からなり、導電層(80)の輪郭面(9)における相対向する2つの辺部の上下方向の中間部に、当該辺部の長さ方向にのびる溝からなる凹部(81)が形成されるとともに、凹部(81)よりも下方の部分に、上下方向に所定の幅を有しかつろう材貯留部(11)内のろう材と絶縁板(5)との接触を抑制する接触抑制部(12)が設けられている。また、導電層(80)の輪郭面(9)の残りの2つの辺部に、輪郭面(9)と電子素子搭載面(8)とに跨る切り欠きからなる凹部(82)が形成され、凹部(82)よりも下方の部分に、上下方向に所定の幅を有しかつろう材貯留部(11)内のろう材と絶縁板(5)との接触を抑制する接触抑制部(12)が設けられている。そして、溝からなる凹部(81)および切り欠きからなる凹部(82)が、ろう材を、絶縁板(5)に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部(11)となっている。
【0108】
図15に示す導電層(80)を有するパワーモジュール用ベースは、導電層(80)の輪郭面(9)となる側面に凹部(81)(82)が形成されているアルミニウム板(10)を用いて、図2に示す導電層(6)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0109】
図16に示す導電層(85)は、図2に示す導電層(6)と同様なアルミニウム板(10)からなり、導電層(85)の輪郭面(9)の下部に、上下方向に所定の幅を有する接触抑制部(12)が設けられるとともに、接触抑制部(12)よりも上側の部分に、接触抑制部(12)に対して凹み、かつ上端部が電子素子搭載面(8)に開口した複数の凹部(86)が、各辺部の長さ方向に間隔をおいて形成されている。そして、凹部(86)が、ろう材を、絶縁板(5)に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部(11)となっている。
【0110】
図16に示す導電層(85)を有するパワーモジュール用ベースは、導電層(85)の輪郭面(9)となる側面に凹部(86)が形成されているアルミニウム板(10)を用いて、図2に示す導電層(6)を有するパワーモジュール用ベースと同様にして製造される。
【0111】
実施形態2
この実施形態は図17に示すものである。
【0112】
図17は実施形態2の絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースにおける導電層の電子素子搭載面にパワーデバイスが実装されたパワーモジュールを示す。
【0113】
図17において、パワーモジュール(90)は、パワーモジュール用ベース(91)と、パワーモジュール用ベース(91)に実装されたパワーデバイス(3)(電子素子)とよりなる。
【0114】
パワーモジュール用ベース(91)は、実施形態1のパワーモジュール用ベース(2)における絶縁回路基板(4)の絶縁板(5)と冷却器(7)との間に応力緩和部材(92)が配置され、応力緩和部材(92)が絶縁板(5)および冷却器(7)にろう付されたものである。
【0115】
応力緩和部材(92)は、熱伝導率が高く、しかも変形能が高い純アルミニウム、たとえば純度99.99質量%以上の純アルミニウムで形成された板からなることが好ましい。図示は省略したが、応力緩和部材(92)には、上下方向にのびる複数の貫通穴が形成されていることが好ましい。
【0116】
その他の構成は、実施形態1のパワーモジュール用ベース(2)と同様である。
【0117】
図17に示すパワーモジュール用ベース(91)の製造方法は、応力緩和部材(92)を用意し、冷却器(7)上に、応力緩和部材(92)、絶縁板(5)およびアルミニウム板(10)をこの順序で配置し、冷却器(7)と応力緩和部材(92)との間、応力緩和部材(92)と絶縁板(5)との間にろう材層を設けることを除いては、実施形態1のパワーモジュール用ベース(2)の製造方法と同様である。冷却器(7)と応力緩和部材(92)との間、および応力緩和部材(92)と絶縁板(5)との間に配置されるろう材層は、ろう材箔や、心材の両面にろう材層が形成されたアルミニウムブレージングシートなどからなる。また、冷却器(7)と応力緩和部材(92)との間、および応力緩和部材(92)と絶縁板(5)との間に配置されるろう材層は、応力緩和部材(92)の両面に予めクラッドされていてもよい。
【0118】
実施形態3
この実施形態は図18に示すものである。
【0119】
図18は実施形態3の絶縁回路基板を備えたパワーモジュール用ベースにおける導電層の電子素子搭載面にパワーデバイスが実装されたパワーモジュールを示す。
【0120】
図18において、パワーモジュール(95)は、パワーモジュール用ベース(96)と、パワーモジュール用ベース(96)に実装されたパワーデバイス(3)(電子素子)とよりなる。
【0121】
パワーモジュール用ベース(96)は、実施形態2のパワーモジュール用ベース(91)におけるアルミニウム板(10)上面にニッケル板(97)が配置されてアルミニウム板(10)にろう付されることにより、絶縁回路基板(4)の絶縁層(6)が構成されたものである。そして、ニッケル板(97)の上面が電子素子搭載面(8)となっており、ここにパワーデバイス(3)がはんだ付けされて実装されている。その他の構成は、実施形態2のパワーモジュール用ベース(91)と同様である。
【0122】
図18に示すパワーモジュール用ベース(96)の製造方法は、ニッケル板(97)を用意し、アルミニウム板(10)上にニッケル板(97)を配置し、アルミニウム板(10)とニッケル板(97)との間にろう材層を設けることを除いては、実施形態2のパワーモジュール用ベース(91)の製造方法と同様である。アルミニウム板(10)とニッケル板(97)との間に配置されるろう材層は、ろう材箔や、心材の両面にろう材層が形成されたアルミニウムブレージングシートなどからなる。また、アルミニウム板(10)とニッケル板(97)との間に配置されるろう材層は、アルミニウム板(10)の上面に予めクラッドされていてもよい。
【0123】
上述したニッケル板(26)(41)(71)(97)を用いた導電層(25)(40)(70)(75)において、ニッケル板(26)(41)(71)(97)に代えて、銅板、銀板または金板が用いられてもよい。
【0124】
以下、この発明によるパワーモジュール用ベースの具体的実施例について、比較例とともに説明する。
【0125】
実施例1
この実施例は実施形態2のパワーモジュール用ベース(91)である。
【0126】
絶縁板(5)として、焼結助剤を含むAlNからなり、縦:35mm、横:30mm、厚み:0.63mmのものを用意した。導電層(6)を形成するアルミニウム板(10)として、純度99.99wt%の純アルミニウムからなり、縦:33mm、横:28mm、厚み:1.0mmであるものを用意した。アルミニウム板(10)の上面から側面にかけて、幅0.7mm、深さ0.5mmの切り欠きを形成することにより、アルミニウム板(10)の側面に、その全周にわたって連続しかつろう材貯留部(11)となる凹部(13)を形成しておいた。応力緩和部材(92)として、純度99.99wt%の純アルミニウムからなり、縦:34mm、横:29mm、厚み:1.6mmのアルミニウム板からなるものを用意した。また、冷却器(7)の代わりに、JIS A3003からなり、かつ縦:60m、横:50mm、厚み:5.0mmのアルミニウム板を用意した。さらに、Al−10wt%Si合金からなり、かつ厚みが25μmのろう材箔を用意した。
【0127】
そして、冷却器(7)の代わりとなるアルミニウム板上に、応力緩和部材(92)、絶縁板(5)、およびアルミニウム板(10)を、アルミニウム板(10)の凹部(13)が上側に来るように、この順序で載せた。このとき、冷却器(7)の代わりとなるアルミニウム板と応力緩和部材(92)との間、応力緩和部材(92)と絶縁板(5)との間、および絶縁板(5)とアルミニウム板(10)との間に、それぞれAl−10wt%Si合金からなり、かつ厚みが25μmのろう材箔を配置しておいた。
【0128】
ついで、冷却器(7)の代わりとなるアルミニウム板、応力緩和部材(92)、絶縁板(5)およびアルミニウム板(10)を積層方向に8g/mmの面圧を負荷して加圧しながら、600℃の真空雰囲気中に15分間置き、冷却器(7)の代わりとなるアルミニウム板と応力緩和部材(92)、応力緩和部材(92)と絶縁板(5)、および絶縁板(5)とアルミニウム板(10)とをそれぞれろう付してパワーモジュール用ベース(91)を製造した。
【0129】
製造されたパワーモジュール用ベース(91)を観察したところ、凝固したろう材はアルミニウム板(10)の凹部(13)内に溜まり、アルミニウム板(10)の上面には凝固したろう材は見られなかった。
【0130】
また、熱サイクルの信頼性を評価するために、125℃に加熱→−40℃に冷却を1サイクルとして3000サイクルの冷熱サイクル試験を行ったところ、絶縁板(5)には割れは発生していなかった。
【0131】
実施例2
この実施例は実施形態3のパワーモジュール用ベース(96)である。
【0132】
上記実施例1と同じ絶縁板(5)、アルミニウム板(10)、応力緩和部材(92)および冷却器(7)の代わりとなるアルミニウム板に加えて、純度99wt%の純ニッケルからなり、縦:33mm、横:28mm、厚み:0.2mmのニッケル板(97)を用意した。さらに、Al−10wt%Si合金からなり、かつ厚みが25μmおよび10μmの2種類のろう材箔を用意した。
【0133】
そして、冷却器(7)の代わりとなるアルミニウム板上に、応力緩和部材(92)、絶縁板(5)、アルミニウム板(10)およびニッケル板(97)を、アルミニウム板(10)の凹部(13)が上側に来るように、この順序で載せた。このとき、冷却器(7)の代わりとなるアルミニウム板と応力緩和部材(92)との間、応力緩和部材(92)と絶縁板(5)との間、および絶縁板(5)とアルミニウム板(10)を形成するアルミニウム板との間に、それぞれ厚みが25μmのろう材箔を配置するとともに、アルミニウム板(10)を形成するアルミニウム板とニッケル板との間に厚みが10μmのろう材箔を配置しておいた。
【0134】
ついで、冷却器(7)の代わりとなるアルミニウム板、応力緩和部材(92)、絶縁板(5)、アルミニウム板(10)およびニッケル板(97)を積層方向に8g/mmの面圧を負荷して加圧しながら、600℃の真空雰囲気中に15分間置き、冷却器(7)の代わりとなるアルミニウム板と応力緩和部材(92)、応力緩和部材(92)と絶縁板(5)、絶縁板(5)とアルミニウム板(10)、およびアルミニウム板(10)とニッケル板とをそれぞれろう付してパワーモジュール用ベース(96)を製造した。
【0135】
製造されたパワーモジュール用ベース(96)を観察したところ、凝固したろう材はアルミニウム板(10)の凹部(13)内に溜まり、ニッケル板(97)の上面には凝固したろう材は見られなかった。
【0136】
また、熱サイクルの信頼性を評価するために、125℃に加熱→−40℃に冷却を1サイクルとして3000サイクルの冷熱サイクル試験を行ったところ、絶縁板(5)には割れは発生していなかった。
【0137】
比較例1
図19に示すように、アルミニウム板(10)の下面から側面にかけて、幅0.7mm、深さ0.5mmの切り欠き(100)を形成することにより、アルミニウム板(10)の側面に、その全周にわたって連続した凹部(101)を形成したことを除いては、上記実施例1と同じ条件で、冷却器(7)の代わりとなるアルミニウム板と応力緩和部材(92)、応力緩和部材(92)と絶縁板(5)、および絶縁板(5)とアルミニウム板(10)とをそれぞれろう付してパワーモジュール用ベース(91)を製造した。
【0138】
製造されたパワーモジュール用ベース(91)を観察したところ、凝固したろう材はアルミニウム板(10)の凹部(101)内に溜まり、アルミニウム板(10)の上面には凝固したろう材は見られなかった。しかしながら、凹部(101)内で凝固したろう材と絶縁板(5)とが直接接触していた。
【0139】
また、熱サイクルの信頼性を評価するために、125℃に加熱→−40℃に冷却を1サイクルとして1000サイクルの冷熱サイクル試験を行ったところ、絶縁板(5)に、凝固したろう材との接触部を起点として亀裂が発生していた。
【符号の説明】
【0140】
(1)(90)(95):パワーモジュール
(2)(91)(96):パワーモジュール用ベース
(3):パワーデバイス(発熱体となる電子素子)
(4):絶縁回路基板
(5):絶縁板(絶縁層)
(6)(20)(25)(30)(35)(40)(45)(50)(55)(60)(65)(70)(75)(80)(85):導電層
(7):冷却器
(8):電子素子搭載面
(9):輪郭面
(10)(21)(22)(36)(37)(38)(61)(62)(66)(67)(76)(77):アルミニウム板
(11):ろう材貯留部
(12):接触抑制部
(13)(31):凹部
(14):段付き面
(14a)(14b):段部
(26)(41)(71)(97):ニッケル板
(46):ろう材溜凹部
(51):凹溝
(56):溝
(63)(68):切り欠き
(92):応力緩和部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス製絶縁層の一面に金属製導電層がろう付され、導電層における絶縁層にろう付された面とは反対側の面が電子素子搭載面となされている絶縁回路基板であって、
導電層の輪郭を形成しかつ導電層の厚み方向に幅を持つ輪郭面に、ろう材を、絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部が形成されている絶縁回路基板。
【請求項2】
導電層の輪郭面に、絶縁層側の端部から電子素子搭載面に向かって所定の幅を有し、かつろう材貯留部内のろう材と絶縁層との接触を抑制する接触抑制部が設けられており、前記輪郭面における接触抑制部よりも電子素子搭載面側の部分に、接触抑制部に対して凹んだ凹部が形成され、当該凹部がろう材貯留部となっている請求項1記載の絶縁回路基板。
【請求項3】
導電層の輪郭面におけるろう材貯留部となる凹部の電子素子搭載面側端部が、電子素子搭載面に開口している請求項2記載の絶縁回路基板。
【請求項4】
導電層の輪郭面におけるろう材貯留部となる凹部が、前記輪郭面の全周にわたって連続的に形成されている請求項3記載の絶縁回路基板。
【請求項5】
導電層の前記輪郭面が、絶縁層側から電子素子搭載面側に向かって段部を介して順次小さくなった段付き面となされ、当該段付き面における最も絶縁層側の部分が接触抑制部となっているとともに、段付き面における接触抑制部よりも電子素子搭載面側の部分に、ろう材貯留部となる凹部が設けられている請求項4記載の絶縁回路基板。
【請求項6】
導電層が、積層されて互いに接合された複数枚の金属板からなり、全金属板の大きさが異なっているとともに、全金属板の大きさが絶縁層側から順次小さくなっている請求項5記載の絶縁回路基板。
【請求項7】
導電層の輪郭面を段付き面とする段部のうちの少なくとも1つに、電子素子搭載面側に開口した凹部が形成されている請求項5または6記載の絶縁回路基板。
【請求項8】
段部の凹部が、当該段部の全周にわたる凹溝からなる請求項7記載の絶縁回路基板。
【請求項9】
導電層の輪郭面におけるろう材貯留部となる凹部が、前記輪郭面の全周にわたって連続的に形成された溝からなる請求項2記載の絶縁回路基板。
【請求項10】
導電層が、積層されて互いに接合された複数枚の金属板からなり、導電層の厚み方向の中間部に位置する金属板の大きさが他の金属板よりも小さくなっていることによって、前記輪郭面に全周にわたる連続した溝が形成されている請求項9記載の絶縁回路基板。
【請求項11】
導電層が、積層されて互いに接合された複数枚の金属板からなり、少なくとも1枚の金属板に、当該金属板に隣接する金属板を向いた面と側面とに跨る切り欠きが形成されることによって、前記輪郭面に全周にわたる連続した溝が形成されている請求項9記載の絶縁回路基板。
【請求項12】
絶縁層が、AlN、Al、SiC、SiおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなり、導電層を構成する複数の金属板のうち最も絶縁層側の金属板がアルミニウムからなるとともに、Al−Si合金系ろう材により絶縁層にろう付されており、導電層を構成する複数の金属板のうち最も電子素子搭載面側の金属板がニッケル、銅、銀および金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる請求項6、10または11記載の絶縁回路基板。
【請求項13】
導電層の電子素子搭載面の周縁部に、ろう材溜凹部が形成されている請求項1〜12のうちのいずれかに記載の絶縁回路基板。
【請求項14】
導電層の輪郭面に、輪郭面と電子素子搭載面とに跨る切り欠きからなる凹部と、輪郭面の周方向にのびる溝からなる凹部とが混在して設けられている請求項2記載の絶縁回路基板。
【請求項15】
導電層が方形であり、導電層の相対向する2つの辺部に切り欠きからなる凹部が設けられ、残りの2つの辺部に溝からなる凹部が設けられている請求項14記載の絶縁回路基板。
【請求項16】
請求項1〜15のうちのいずれかに記載された絶縁回路基板の絶縁層における導電層がろう付された面とは反対側の面が、冷却器にろう付されているパワーモジュール用ベース。
【請求項17】
絶縁回路基板の絶縁層と冷却器との間に応力緩和部材が介在させられ、応力緩和部材が絶縁層および冷却器にろう付されている請求項16記載のパワーモジュール用ベース。
【請求項18】
請求項16または17記載のパワーモジュール用ベースの絶縁回路基板における導電層の電子素子電子素子搭載面に、パワーデバイスがはんだ付されているパワーモジュール。
【請求項19】
請求項6記載の絶縁回路基板を製造する方法であって、
セラミック板からなる絶縁層と、大きさが異なる複数枚の導電層形成用の金属板とを用意すること、絶縁層上に、すべての金属板を、最大の金属板から順に積層状に載せて上側金属板の周縁を下側金属板の周縁よりも内側に位置させるとともに、絶縁層と下端金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、絶縁層および全金属板を加熱して絶縁層と最大金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面が絶縁層側から最小金属板側に向かって段部を介して順次小さくなった段付き面となっている導電層を形成すること、前記段付き面における最も絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記段付き面における接触抑制部よりも最小金属板側の部分に、上端が上方に開口するとともに導電層の輪郭面の全周にわたる連続した凹部からなり、かつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【請求項20】
請求項10記載の絶縁回路基板を製造する方法であって、
セラミック板からなる絶縁層と、1枚の大きさが他のものよりも小さくなっている複数枚の導電層形成用の金属板とを用意すること、絶縁層上に、すべての金属板を、最小の金属板が中間部に位置するように積層状に載せるとともに、絶縁層と下端金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、絶縁層および全金属板を加熱して絶縁層とこれに隣接する金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面に全周にわたる溝が連続的に形成されている導電層を形成すること、導電層の輪郭面における溝よりも絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記輪郭面における接触抑制部よりも絶縁層とは反対側の部分に、前記溝からなりかつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【請求項21】
請求項11記載の絶縁回路基板を製造する方法であって、
セラミック板からなる絶縁層と、複数枚の導電層形成用の金属板とを用意し、少なくとも1枚の金属板に、その片面と側面とに跨る切り欠きを全周にわたって形成すること、絶縁層上に、すべての金属板を、切り欠きを有する金属板における切り欠きが開口する側の片面に他の金属板が存在するように載せるとともに、絶縁層と下端金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、絶縁層および全金属板を加熱して絶縁層とこれに隣接する金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面に全周にわたる溝が連続的に形成されている導電層を形成すること、導電層の輪郭面における溝よりも絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記輪郭面における接触抑制部よりも絶縁層とは反対側の部分に、前記溝からなりかつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【請求項22】
請求項6記載の絶縁回路基板と、当該絶縁回路基板の絶縁層における導電層がろう付された面とは反対側の面がろう付されている冷却器とを備えたパワーモジュール用ベースを製造する方法であって、
冷却器と、セラミック板からなる絶縁層と、大きさが異なる複数枚の導電層形成用の金属板とを用意すること、冷却器上に絶縁層を配置するとともに、冷却器と絶縁層との間にろう材を配置すること、絶縁層上に、すべての金属板を、最大の金属板から順に積層状に載せて上側金属板の周縁を下側金属板の周縁よりも内側に位置させるとともに、絶縁層と下端金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、冷却器、絶縁層および全金属板を加熱して冷却器と絶縁層、絶縁層と最大金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面が絶縁層側から最小金属板側に向かって段部を介して順次小さくなった段付き面となっている導電層を形成すること、前記段付き面における最も絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記段付き面における接触抑制部よりも最小金属板側の部分に、上端が上方に開口するとともに導電層の輪郭面の全周にわたる連続した凹部からなり、かつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とするパワーモジュール用ベースの製造方法。
【請求項23】
請求項10記載の絶縁回路基板と、当該絶縁回路基板の絶縁層における導電層がろう付された面とは反対側の面がろう付されている冷却器とを備えたパワーモジュール用ベースを製造する方法であって、
冷却器と、セラミック板からなる絶縁層と、1枚の大きさが他のものよりも小さくなっている複数枚の導電層形成用の金属板とを用意すること、冷却器上に絶縁層を配置するとともに、冷却器と絶縁層との間にろう材を配置すること、絶縁層上に、すべての金属板を、最小の金属板が中間部に位置するように積層状に載せるとともに、絶縁層と金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、冷却器、絶縁層および全金属板を加熱して冷却器と絶縁層、絶縁層とこれに隣接する金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面に全周にわたる溝が連続的に形成されている導電層を形成すること、導電層の輪郭面における溝よりも絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記輪郭面における接触抑制部よりも絶縁層とは反対側の部分に、前記溝からなりかつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とするパワーモジュール用ベースの製造方法。
【請求項24】
請求項11記載の絶縁回路基板と、当該絶縁回路基板の絶縁層における導電層がろう付された面とは反対側の面がろう付されている冷却器とを備えたパワーモジュール用ベースを製造する方法であって、
冷却器と、セラミック板からなる絶縁層と、複数枚の導電層形成用の金属板とを用意し、少なくとも1枚の金属板に、その片面と側面とに跨る切り欠きを全周にわたって形成すること、冷却器上に絶縁層を配置するとともに、冷却器と絶縁層との間にろう材を配置すること、絶縁層上に、すべての金属板を、切り欠きを有する金属板における切り欠きが開口する側の片面に他の金属板が存在するように載せるとともに、絶縁層と下端金属板との間および隣り合う金属板間にろう材を配置すること、冷却器、絶縁層および全金属板を加熱して冷却器と絶縁層、絶縁層とこれに隣接する金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付し、絶縁層上に、輪郭面に全周にわたる溝が連続的に形成されている導電層を形成すること、導電層の輪郭面における溝よりも絶縁層寄りの部分を、導電層の厚み方向に所定の幅を有する接触抑制部とし、前記輪郭面における接触抑制部よりも絶縁層とは反対側の部分に、前記溝からなりかつろう材を絶縁層に対して非接触状態で溜めるろう材貯留部を形成することを特徴とするパワーモジュール用ベースの製造方法。
【請求項25】
絶縁層がAlN、Al、SiC、SiおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなり、導電層を構成する複数の金属板のうち最も絶縁層側の金属板がアルミニウムからなり、導電層を構成する複数の金属板のうち絶縁層から最も離れた側の金属板がニッケル、銅、銀および金よりなる群から選ばれた1種の材料からなり、ろう材がAl−Si合金系ろう材からなる請求項22〜24のうちのいずれかに記載のパワーモジュール用ベースの製造方法。
【請求項26】
冷却器と絶縁層との間に応力緩和部材を配置するとともに、冷却器および絶縁層と応力緩和部材との間にろう材を配置しておき、冷却器、応力緩和部材、絶縁層および全金属板を加圧しつつ加熱して冷却器と応力緩和部材、応力緩和部材と絶縁層、絶縁層とこれに隣接する金属板、および隣り合う金属板どうしをろう付する請求項22〜25のうちのいずれかに記載のパワーモジュール用ベースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−182279(P2012−182279A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43750(P2011−43750)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】