説明

絶縁膜の製造方法、反応装置、発電装置及び電子機器

【課題】絶縁膜の絶縁耐圧の向上を図ることのできる絶縁膜の製造方法、反応装置、発電装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】反応物の反応を起こすマイクロリアクタ1は、金属基板である上板2及び底板3等から構成されてなり、底板3とその表面に設けられる薄膜ヒータ32との間に絶縁膜31として、希土類元素Rの結晶構造を有するR膜(Y膜)が形成されている。R膜は、底板3の表面にR膜を成膜した後、水素化してRH膜を形成し、さらに酸化することによって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基板の表面に成膜された絶縁膜の製造方法、反応装置、発電装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ等の電子機器の小型化、軽量化が非常に意識され、それに伴い、機器内に搭載される部品自体の小型化が要求されている。そこで、半導体デバイスの開発で蓄積されたシリコンウエハの加工技術を利用した、小型のセンサ、ポンプ、アクチュエータ、モーター、化学反応器等のマイクロデバイスを生み出す技術としてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術が知られている。例えば、改質型燃料電池の分野においてMEMS技術は、気化器、改質器、一酸化炭素除去器を積み重ねたマイクロリアクタモジュールと言われる小型の改質型反応装置に用いられている。
マイクロリアクタモジュールの各反応器(マイクロリアクタ)は、基板に微細な溝を形成し、溝が形成された基板を接合したものであり、その溝が流路となる。また、各反応流路には、反応を促進させるための触媒が形成されている。図19は基板がガラス基板である場合の図で、基板400には薄膜ヒータ兼温度センサ405と、絶縁保護層406とが形成されている。図19(a)は、基板400の平面図、図19(b)は(a)の切断線XIX−XIXに沿って切断した際の矢視断面図である。図19(b)に示されるように、基板400の表面に密着層401、拡散防止層402、発熱抵抗層403、拡散防止層404からなる薄膜ヒータ兼温度センサ405と、絶縁保護層406とが形成されている。なお、図面の関係上、流路は図示していない。このような薄膜ヒータ兼温度センサは水蒸気改質器において280〜400℃、一酸化炭素除去器において100〜180℃と、所望の温度制御の役割と、温度センシングの役割を担っている。
【0003】
上述のようにマイクロリアクタを、金属基板を元に作製した場合、基板及び薄膜ヒータは、ともに電気伝導性を有していること、薄膜ヒータには電圧が印加されることから、金属基板と薄膜ヒータとの間には絶縁膜が必要となる。上記特許文献1に記載の金属製のマイクロリアクタの場合、絶縁膜として基板自体を陽極酸化させ、膜厚5〜150μmの絶縁膜を設けている。しかしながら、陽極酸化により形成された絶縁膜は、しばしば膜が細孔質となり、高絶縁耐圧の絶縁膜は期待できない。また、絶縁膜の膜厚が5〜150μmと厚いため、金属基板も厚くなり、反応器の熱容量がその分増加することを考慮すると高速起動に向かないという問題がある。さらに、マイクロリアクタは高温環境下で作動されるため、選択する基板としては高耐熱性を有する金属(例えば、Ni,Ni−Cr合金、インコネル等のNi含有合金)を使用しなければならないという制限もある。
【0004】
一方、YOを冷陰極の電子放出膜として用いられることが知られている(例えば、特許文献2参照)。このYOの結晶は酸化工程における酸素濃度に依存し、五つのタイプの膜が作製される。そのうち、NaCl型を含むYO(1.32>X≧0.95)膜が冷陰極の電子放出膜として適しているというものである。YO膜の作成方法は洗浄工程を経た基板(ここではNi及びCrを含有するもの)に、蒸着法あるいはスパッタ法によりY金属膜を形成し、酸化工程を行う。その後、膜が微結晶、アモルファスであった場合には別途アニール工程を行っている。
【特許文献1】特開2004−256387号公報
【特許文献2】特開平10−269986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2において作製されたYOは、Xの範囲が1.32>X≧0.95と化学量論からずれており、電気的性質としては良導体として振る舞う。そのために層間絶縁膜として用いることはできないという問題がある。
一方、層間絶縁膜として高耐圧材料で知られているSiO膜を用いた場合、蒸着法、スパッタ法、CVD法、塗布法等で成膜されたSiO膜は通常、アモルファス(非晶質)構造となる。アモルファス構造のSiOは、図20に示すように、線膨張係数が0.5〜0.6(10-6/℃)であり、金属の線膨張係数10〜14(10-6/℃)に対して二桁も小さい。室温より高い温度環境下で用いる化学反応器のような小型デバイスにおいて、基板と膜との熱膨張係数の不一致は基板の歪みや、層間絶縁膜の亀裂、剥離を引き起こし、最終的には金属基板と発熱体間の電気的絶縁の信頼性を低下させてしまうという問題がある。この問題は小型反応器のみならず、600℃〜900℃もの高温で作動する固体酸化物型燃料電池のような高温作動デバイス共通の問題である。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、層間絶縁膜の絶縁耐圧の向上を図ることのできる絶縁膜の製造方法、反応装置、発電装置及び電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、絶縁膜の製造方法において、金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分にSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つからなるR膜を成膜する工程と、
前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、
前記RH膜を酸化してR膜とする酸化工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の絶縁膜の製造方法において、
前記酸化工程は、前記金属基板を酸化させない真空雰囲気下で行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の絶縁膜の製造方法において、
前記酸化工程は、1×10-4Pa以下の真空雰囲気下で行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、絶縁膜の製造方法において、金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に、水素を含有し、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、
蒸着後の前記金属基板を酸化してR膜とする酸化工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の絶縁膜の製造方法において、
前記酸化工程は、前記金属基板を酸化させない真空雰囲気下で行うことを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4に記載の絶縁膜の製造方法において、
前記酸化工程は、1×10-4Pa以下の真空雰囲気下で行うことを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、絶縁膜の製造方法において、
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分にSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rを含有する第一のR膜を形成する工程と、
前記希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素RからなるR膜を成膜する工程と、前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、前記RH膜を酸化する工程と、からなる第二のR膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、絶縁膜の製造方法において、
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分にSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素RからなるR膜を成膜する工程と、前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、前記RH膜を酸化する工程と、を含む第一のR膜を形成する工程と、
前記第一のR膜の上に、前記希土類元素Rを含有する第二のR膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、絶縁膜の製造方法において、
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分にSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rを含有する第一のR膜を形成する工程と、
前記第一のR膜の上に、水素を含有し、前記希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、蒸着後の前記金属基板を酸化する酸化工程と、を含む第二のR膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明は、絶縁膜の製造方法において、
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に、水素を含有し、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、蒸着後の前記金属基板を酸化する酸化工程と、を含む第一のR膜を形成する工程と、
前記第一のR膜の上に、前記希土類元素Rを含有する第二のR膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明は、反応装置において、
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分にSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つからなるR膜を成膜する工程と、
前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、
前記RH膜を酸化してR膜とする酸化工程と、を含む製造方法により成膜されたR膜を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項12の発明は、反応装置において、
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に、水素を含有し、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、
蒸着後の前記金属基板を酸化してR膜とする酸化工程と、を含む製造方法により成膜されたR膜を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項13の発明は、反応装置において、
金属基板と、
前記金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に成膜されて、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rを含有する第一のR膜と、
前記希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素RからなるR膜を成膜する工程と、前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、前記RH膜を酸化する工程と、を含む製造方法により成膜された第二のR膜と、を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項14の発明は、反応装置において、
金属基板と、
前記金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に成膜されて、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素RからなるR膜を成膜する工程と、前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、前記RH膜を酸化する工程と、を含む製造方法により成膜された第一のR膜と、
前記第一のR膜の上に成膜されて、前記希土類元素Rを含有する第二のR膜と、を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項15の発明は、反応装置において、
金属基板と、
前記金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に成膜されて、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rを含有する第一のR膜と、
前記第一のR膜の上に成膜されて、水素を含有し、前記希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、蒸着後の前記金属基板を酸化する酸化工程と、を含む製造方法により成膜された第二のR膜と、を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項16の発明は、反応装置において、
前記金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に成膜されて、水素を含有し、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、蒸着後の前記金属基板を酸化する酸化工程と、を含む製造方法により成膜された第一のR膜と、
前記第一のR膜の上に成膜されて、前記希土類元素Rを含有する第二のR膜と、を備えることを特徴とする。
【0022】
請求項17の発明は、発電装置において、
請求項11〜16のいずれか一項に記載の反応装置を備え、
前記反応装置により生成される生成物により発電を行うことを特徴とする。
【0023】
請求項18の発明は、電子機器において、
請求項17に記載の発電装置と、
前記発電装置によって発電された電気により動作する電子機器本体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、金属基板と薄膜ヒータとの間に結晶構造を有するR膜を形成することができ、金属基板との熱膨張係数の差を小さくして、高温環境下で金属基板が歪んだ際に起こり易い絶縁膜の亀裂や剥離を防止でき、絶縁膜としての信頼性を高めることができる。また、金属基板を酸化させることなくR膜を成膜することができる。さらに、絶縁膜を二層構造とした場合には、膜内のピンホールを軽減でき、信頼性の高い絶縁膜を設けることができ、それに加えて上層、下層と異なる手法により膜を作製することで膜作製段階に発生する反りを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
[第一の実施の形態]
図1は、本発明に係る反応装置の実施形態におけるマイクロリアクタ1の分解斜視図である。
マイクロリアクタ1は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、電子手帳、デジタルカメラ、携帯電話機、腕時計、レジスタ、プロジェクタといった電子機器に内蔵され、発電セル(燃料電池)に使用する水素ガスを生成する反応装置である。
マイクロリアクタ1は、矩形薄板状の天板2及び底板3と、天板2と底板3との間に天板2の下面及び底板3の上面に対して垂直となるように立設される平面視L字型の枠体4,4と、枠体4,4の内側で枠体4,4の長手方向内壁面に対して垂直となるように設けられる薄板状の例として三つの隔壁5,5,…とを備えている。三つの隔壁5,5,…によって、枠体4,4の内側が葛折り状の流路6に仕切られている。隔壁5,5,…の高さは周囲の枠体4の高さにほぼ等しい。また、枠体4,4の各両端部間には、流路6に通じるように隙間(流入口、流出口)が形成されている。
天板2、底板3、枠体4,4及び隔壁5,5,…は、いずれも耐熱性の良い、例えばNi、Ni−Cr合金、インコネル等のNi含有合金等の金属材料からなる。底板3、枠体4,4、隔壁5,5,…及び天板2は蝋付けにより接合されている。また、マイクロリアクタ1の流路6を形成する底板3の上面、天板2の下面、枠体4,4の内側面及び隔壁5,5,…の両側面に触媒が担持されている。触媒としては、少なくとも一種類以上の金属種又は少なくとも一種以上の金属酸化物が含まれていることが好ましく、具体的には白金触媒、Cu/ZnO系触媒、Pd/ZnO系触媒等が挙げられる。
【0026】
図2(a)は、底板3の下面図、図2(b)は、図2(a)の切断線II−IIに沿って切断した際
の矢視断面図である。
底板3の下面には、全面に絶縁膜31が形成されている。絶縁膜31は、結晶構造を有するY膜である。結晶構造としてはC型(ビクスバイト構造)である(詳細は後述する。)。結晶構造を有することにより、アモルファスに比べて密に原子が充填されるので、熱による膨張が大きくなり、その結果、線膨張係数が7.2×10-6/℃高くなることから金属基板である底板3の線膨張係数に近くなる点で好ましい。
【0027】
ここで、絶縁膜31であるビクスバイト構造を有するY膜の製造方法について二つの方法を説明する。
<第一の製造方法>
まず、スパッタ法で金属基板(底板3)の下面にY膜を成膜した後、成膜されたY膜を4%以下の水素量と残りが不活性ガス(Ar、Ne、Nガス)雰囲気において、温度300〜400℃で15分焼成を行うことによりYH膜を形成し、さらに、YH膜を真空雰囲気下(1×10-4Pa)、520〜800℃で30分焼成することにより成膜することができる。なお、スパッタの試料としては水素を含有していないYインゴットを使用する。また、Y膜の成膜方法はスパッタ法に限らず、蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、塗布法等でも構わない。金属基板の膜厚は0.5mm以下であり、その基板厚との関係から、絶縁膜31の膜厚は、200〜600nm程度の範囲が好ましい。
なお、YH膜はY膜と比較して、酸素を取り込みやすく、膜中での酸素の拡散速度を早くさせる働きがあるため、真空雰囲気下でさえ、炉内の残留している微量酸素(0.1〜1(×10-6Pa))を取り込み、水素と置き換わる形でY膜が形成される。図3は、真空中で10℃/minの速さで700℃まで昇温し、700℃で30分保持した際の炉内の水素分圧値を時間に対してプロットしたものである。昇温開始時、炉内の水素分圧は1〜2(×10-6Pa)であったが、温度の上昇につれて徐々に水素分圧は高くなっていることから、YH膜から水素が脱離していると理解できる。それとともに、後述するX線回折測定結果からY膜が形成されたものと考えられる。520℃において水素分圧は最も高く2400(×10-6Pa)の値を示していることから、Y膜の作製において焼成温度は520℃で十分と言える。
【0028】
<第二の製造方法>
図4は、第二の製造方法における蒸着法を説明するための図である。
まず、蒸着源であるYのインゴットを、4%以下の水素量と残りが不活性ガス(Ar、Ne、Nガス)雰囲気において、温度300〜400℃で1時間焼成を行うことにより水素を含有したYのインゴット7を予め用意する。次いで、水素含有Yインゴット7を用いて金属基板(底板3)の温度が280℃、成膜時の真空度3〜5(×10-3Pa)、成膜速度18nm/minの条件で、金属基板の下面に蒸着する。この蒸着により、金属基板の下面にY、YH、Y膜が成膜される。さらに、図示しないが、成膜されたY、YH、Y膜を真空雰囲気下で300〜800℃で30分焼成することによりY膜が成膜される。(Yの領域ではYが酸素と結合し、YHの領域ではYと結合している水素が脱離し酸素と結合する)。金属基板の厚さは上述したものと同様で0.5mm以下で、絶縁膜31の膜厚は200〜600nm程度の範囲が好ましい。
このように、水素を含有したYインゴット7を蒸着源として蒸着した後、金属基板を酸化してY膜を成膜した場合、上記第一の製造方法に比べて作製工程を簡略化できる点で好ましい。
【0029】
そして、上述の二つの方法のいずれかによって形成した絶縁膜31には、図2(b)に示すように、薄膜ヒータ32が蛇行した状態にフォトリソ技術によりパターニングされている。薄膜ヒータ32は、絶縁膜31側から順に、金属密着層33、拡散防止層34、発熱抵抗層35を積層したものである。発熱抵抗層35は、三つの層の中で最も低い抵抗率の材料(例えば、Au)であり、薄膜ヒータ32に電圧が印加されると電流が集中的に流れて発熱する。拡散防止層34は、薄膜ヒータ32が発熱しても発熱抵抗層35の材料が拡散防止層34に熱拡散されにくく、かつ拡散防止層34の材料が発熱抵抗層35に熱拡散しにくい材料であり、比較的融点が高くかつ反応性が低い物質(例えば、W)を用いることが好ましい。また、金属密着層33は、拡散防止層34が絶縁膜31に対して密着性が低く剥離しやすいことを防止するために設けられ、拡散防止層34に対しても絶縁膜31に対しても密着性に優れた材料(例えば、Ta、Mo、Ti、Cr)からなる。金属密着層33の膜厚は、100〜200nm、拡散防止層34の膜厚は、50〜100nm、発熱抵抗層35の膜厚は、200〜400nmが好ましい。薄膜ヒータ32は、起動時にマイクロリアクタ1を加熱し、温度に依存して電気抵抗が変化するため、抵抗値の変化から温度の変化を読み取る温度センサとしても機能する。具体的には、薄膜ヒータ32の温度が電気抵抗に対して線形に変化する領域を用いる。
【0030】
上述の構成からなるマイクロリアクタ1においては、薄膜ヒータ32に接続されたリード線(図示しない)に電圧を印加して、薄膜ヒータ32を発熱させることによりマイクロリアクタ1を加熱させ、反応物を流路6に送り込むことによって、反応物が流路6を流動している際に、反応物が反応する。
【0031】
図5は、底板3Aの変形例を示したものであり、図5(a)は底板3Aに枠体4A,4Aを接合した際の上面図で、図5(b)は、図5(a)の切断線V−Vに沿って切断した際の矢視断面図である。図5(a)に示すように、底板3Aの上面で隔壁5A,5A,…を除いた箇所に絶縁膜31Aを蛇行して形成している。このように、流路と同じ側に薄膜ヒータを配置する構成でもよいが、この場合は、図5(b)に示すように触媒との絶縁性を確保するために、絶縁保護層を成膜する必要があり、絶縁膜31A上に四つの層(金属密着層33A、拡散防止層34A、発熱抵抗層35A、拡散防止層36A)からなる薄膜ヒータ32Aを蛇行した状態でパターニングし、その上に絶縁保護層37Aが成膜されることになる。絶縁保護層37AとしてはY膜が望ましいが、膜が薄いならばSiO膜でも良い。
【0032】
以上のように、マイクロリアクタ1において、底板3の下面で薄膜ヒータ32との間に絶縁膜31である結晶構造(ビクスバイト構造)を有するY膜が介在しており、Y膜は金属と熱膨張係数が非常に近いため、底板3の金属基板との熱膨張係数の差を小さくすることができる。その結果、室温より高い環境下で金属基板が歪んだ際に起こりやすい絶縁膜31の亀裂や剥離を防止することができ、絶縁膜31としての信頼性を高めることができる。また、絶縁膜31を成膜する場合、不活性ガス雰囲気において焼成するため、金属基板である底板3を酸化させることなくY膜を成膜することができる。
【0033】
[第二の実施の形態]
図6は、図2と同様に底板3Bを切断線II−IIに沿って切断した際の矢視断面図である。
第二の実施の形態のマイクロリアクタは、第一の実施の形態のマイクロリアクタ1と異なり、絶縁膜31Ba,31BbがY膜の二層構造となっている。
具体的には、図6に示すように、底板3Bの下面には、全面に結晶構造を有する二層の絶縁膜31Ba,31Bbが形成されている。二層の絶縁膜31Ba,31BbはいずれもY膜であり、底板3Bの下面に直接成膜された第一のY膜31Baと、第一のY膜31Ba上に成膜された第二のY膜31Bbとからなる。結晶構造としては上述したビクスバイト構造である。
【0034】
ここで、第一のY膜31Ba及び第二のY膜31Bbの製造方法について四つの方法を説明する。
<第三の製造方法>
第一のY膜31Baは、金属基板(底板3B)の下面に蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、塗布法等により直接、Y膜を成膜することによって形成する。
第二のY膜31Bbは、上述したように第一のY膜31Ba上にスパッタ法によりY膜を成膜した後、成膜したY膜を4%以下の水素量と残りが不活性ガス(Ar、Ne、Nガス)雰囲気において、温度300〜400℃で15分焼成を行うことによりYH膜を形成し、さらに、YH膜を真空雰囲気下(1×10-4Pa)、520〜800℃で30分焼成することにより成膜することができる。なお、Y膜の成膜方法はスパッタ法に限らず、蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、塗布法等でも構わない。金属基板の厚さは0.5mm以下であり、その基板厚との関係から、第一のY膜の膜厚31Baと第二のY膜31Bbの膜厚が併せて、200〜600nm程度の範囲が好ましい。
【0035】
<第四の製造方法>
これは、第三の製造方法におけるをY膜の二層構造を逆の順序で製造するものである。
第一のY膜31Baは、第三の製造方法における第二のY膜31Bbと同様に、金属基板(底板3B)の表面にスパッタ法、蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、塗布法等によりY膜を成膜した後、成膜したY膜を4%以下の水素量と残りが不活性ガス(Ar、Ne、Nガス)雰囲気において、温度300〜400℃で15分焼成を行うことによりYH膜を形成し、さらに、YH膜を真空雰囲気下(1×10-4Pa)、520〜800℃で30分焼成することにより成膜することができる。
第二のY膜31Bbは、第三の製造方法における第一のY膜31Baと同様に、成膜した第一のY膜31Baの上に蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、塗布法等により直接、Y膜を成膜することによって形成する。
【0036】
<第五の製造方法>
第一のY膜31Baは、第三の製造方法における第一のY膜31Baと同様に、金属基板(底板3B)の表面にスパッタ法、蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、塗布法等により直接、Y膜を成膜することによって形成する。
第二のY膜31Bbは、成膜した第一のY膜31Baの上に、蒸着源である水素含有Yインゴットを蒸着する。水素含有Yインゴットは、第一の実施の形態における第二の製造方法で説明したように、Yのインゴットを4%以下の水素量と残りが不活性ガス(Ar、Ne、Nガス)雰囲気において、温度300〜400℃で1時間焼成を行うことにより得られる。また、蒸着条件としては、金属基板の温度が280℃、成膜時の真空度3〜5(×10-3Pa)、成膜速度18nm/minとする。そして、蒸着により成膜されたY、YH、Y膜を真空雰囲気下で300〜800℃で30分焼成することにより第二のY膜31Bbが成膜される。
【0037】
<第六の製造方法>
これは、第五の製造方法におけるをY膜の二層構造を逆の順序で製造するものである。
第一のY膜31Baは、第五の製造方法の第二のY膜31Bbと同様に、金属基板(底板3B)の表面に、蒸着源である水素含有Yインゴットを蒸着する。そして、蒸着により成膜されたY、YH、Y膜を真空雰囲気下で300〜800℃で30分焼成することにより成膜する。
第二のY膜31Bbは、成膜した第一のY膜31Baの上に、スパッタ法、蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、塗布法等により直接、Y膜を成膜することによって形成する。
【0038】
そして、上述の四つの方法のいずれかによって形成した二層の絶縁膜31Ba,31Bbには、図6に示すように、薄膜ヒータ32Bが蛇行した状態にフォトリソ技術によりパターニングされている。薄膜ヒータ32Bは、上記第一の実施の形態の薄膜ヒータ32と同様で、絶縁膜31Ba,31Bb側から順に、金属密着層33B、拡散防止層34B、発熱抵抗層35Bを積層したものである。
【0039】
以上のように、絶縁膜31Ba,31Bbを二層構造とした場合には、第二のY膜31Bbによって第一のY膜31Ba内のピンホールを軽減でき、信頼性の高い絶縁膜31Ba,31Bbとすることができる。
また、第一のY膜31Baと第二のY膜31Bbとを異なる手法により作製することで、後述の実施例1で明らかなように膜作製段階に発生する反りを抑制することができる。すなわち、上述の第三の製造方法のように、金属基板にY膜をスパッタ法により成膜後、結晶子サイズを上げるために焼成した場合、成膜直後のY膜に比較して、原子同士の距離が短くなり、膜としては収縮する。したがって、金属基板は膜に引っ張られて金属基板は下に凸となる。このように金属基板が歪んでしまうと、例えば、他の金属部材との接合をする場合など、接触面積が減少することから接合ができず、他のプロセスにとって悪影響を及ぼす。したがって、第一のY膜31Baが成膜されて下に凸に反った金属基板に、上述のようにさらに第二のY膜31Bbを成膜することで、第一のY膜31Baを成膜した直後と比較して酸素を取り込むことにより結晶のY膜が成膜されるので、その分膜は伸長することになり、上に凸に反ることになる。このように膜作製における金属基板の反りは、第一のY膜31Baと第二のY膜31Bbとでそれぞれ異なるため、互いに異なる方法によるY膜を組み合わせることで金属基板の反りを相殺させることができる。
【0040】
[応用例1]
次に、本発明に係る反応装置の応用例としてマイクロリアクタモジュール100について説明する。
図7は、マイクロリアクタモジュール100を斜め下から示した斜視図、図8は、マイクロリアクタモジュール100の分解斜視図、図9は、マイクロリアクタモジュール100を機能毎に分けた場合の概略側面図、図10は、マイクロリアクタモジュール100と発電セル(燃料電池)160を備える発電システム500、及び、電子機器本体600を含むブロック図である。
マイクロリアクタモジュール100は、ベースプレート101、下部枠102、中部枠103、燃焼器プレート104、上部枠105、蓋プレート106を積層してなる高温反応部107と、ベースプレート111、下部枠112、中部枠113、上部枠115及び蓋プレート116を積層した低温反応部117と、高温反応部107と低温反応部117との間に架設された連結管121と、低温反応部117の下面に連結した多管材122と、多管材122の周りにおいて積層された3枚の燃焼器プレート123と、低温反応部117の下面にパターニングされた電熱線(薄膜ヒータ)124と、低温反応部117から連結管121、高温反応部107にかけての下面にパターニングされた電熱線(薄膜ヒータ)125と、低温反応部117の下面から燃焼器プレート123の外面にかけてパターニングされた電熱線(薄膜ヒータ)126とを備える。
また、パターニングされた電熱線124と、低温反応部117の下面(ベースプレート111)との間及びパターニングされた電熱線125と、高温反応部107の下面(ベースプレート101)との間には、それぞれ全面に亘って絶縁膜131が形成されている。絶縁膜131は、上述した第一の実施の形態における一層の絶縁膜31と同様に第一の製造方法により成膜されたビクスバイト構造を有するY膜である。また、絶縁膜131の膜厚は、200〜600nm程度の範囲が好ましい。
なお、絶縁膜131は、第一の実施の形態における第二の製造方法により成膜されたY膜としても良い。また、第二の実施の形態のように、第一のY膜31Baと第二のY膜31Bbとからなる二層構造からなる絶縁膜であっても良い。この場合、第二の実施の形態における第三〜第六の製造方法によりそれぞれ成膜することができる。
【0041】
3枚の燃焼器プレート123は外周部に側壁及び流路を仕切るリブが設けられた凹部を持つプレートであり、中央部に貫通孔が形成され、その貫通孔に多管材122が嵌め込まれる。燃焼器プレート123が多管材122の周囲で接合により積層され、更に一番上の燃焼器プレート123が低温反応部117の下面に接合されることによってこれらの接合面内に流路が形成されており、3枚の燃焼器プレート123によって第一燃焼器141(図9)が構成されている。第一燃焼器141には空気と気体燃料(例えば、水素ガス、メタノールガス等)がそれぞれ別々にあるいは混合気として多管材122を通って供給され、燃料器プレート123間の流路において塗布されている触媒により触媒燃焼が起こる。
また、多管材122には、水と液体燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、ブタン、ガソリン)がそれぞれ別々にあるいは混合された状態で燃料容器から供給され、第一燃焼器141における燃焼熱によって水と液体燃料が気化する気化器142(図9)を構成している。気化した燃料と水の混合気は、ベースプレート111の流路、連結管121を通って高温反応部107の下部の内側に送られる。
高温反応部107の下部はベースプレート101、下部枠102、中部枠103を積層したものであり、これらの積層体の内側に流路が形成され、これによって第一改質器143(図6)が構成される。この第一改質器143の流路を気化された混合気が流れて水素等が触媒反応により生成される。混合気中の液体燃料がメタノールの場合には、次式(1)のような反応になる。さらに次式(2)のような反応により、微量ながら副生成物である一酸化炭素が生成される。
CHOH+HO→3H+CO …(1)
+CO→HO+CO …(2)
【0042】
この触媒反応には熱が必要だが、電熱線125や燃焼器プレート104により熱エネルギーが供給される。燃焼器プレート104は外周部に側壁及び流路を仕切るリブが設けられた凹部を持つプレートである。ここで、燃焼器プレート104が上部枠105と接合することでその接合面内に燃焼室が形成され、これによって第二燃焼器144(図9)が構成される。気体燃料(例えば、水素ガス、メタノールガス等)と空気の混合気が多管材122、ベースプレート111の流路、連結管121を通って燃焼室(第二燃焼器144(図9))に供給され、燃焼室において触媒燃焼が起こる。第二燃焼器144(図9)によって高温反応部107は、280〜400℃程度に加熱される。
【0043】
ベースプレート101、下部枠102、中部枠103の積層体から混合気が更に上部枠105の内側に送られる。上部枠105の内側には複数の隔壁が設けられ、上部枠105の上側開口が蓋プレート106によって閉塞されることによって上部枠106の内側に流路が形成され、これによって第二改質器145(図9)が構成される。上部枠106の内側に送られた混合気は上部枠106の内側の流路を流れて水素等が触媒反応により生成され、さらに微量ながら副生成物である一酸化炭素が生成される(上記式(1)、(2)参照)。そして、水素等を含む混合気が連結管121を通って低温反応部の内側に送られる。
【0044】
低温反応部117はベースプレート111、下部枠112、中部枠113、上部枠115、蓋プレート116を積層したものであるが、これらの積層体の内側に流路が形成され、これによって一酸化炭素除去器146(図9)が構成される。一酸化炭素除去器146の流路を混合気が流れて混合気中の、上記(2)式で生成された一酸化炭素が次式(3)式のように選択的に酸化される。
2CO+O→2CO …(3)
一酸化炭素の選択酸化反応は室温よりも高い温度(100〜180℃程度)で起こるので、低温反応部117が電熱線124や燃焼器プレート123によって加熱される。低温反応部117で一酸化炭素を除去した水素リッチガスが多管材122を通って発電セル160の燃料極に供給される。発電セル160では酸素極に空気が供給され、酸素と水素の電気化学反応により電気エネルギーが生成される。
そして、図10に示すように、発電システム500は、発電セル160により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換するDC/DCコンバータ171と、DC/DCコンバータ171に接続される2次電池172と、それらを制御する制御部173も備える。
DC/DCコンバータ171は発電セル160により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換したのちに電子機器本体600に供給する機能の他に、発電セル160により生成された電気エネルギーを2次電池172に充電し、燃料電池7側が運転されていない時に、電子機器本体600に2次電池172側から電気エネルギーを供給する機能も果たせるようになっている。制御部173は気化器142、第一、二改質器143、145、一酸化炭素除去器146、第二燃焼器144、発電セル160を運転するために必要な図示しないポンプやバルブ類、そして、ヒータ類、DC/DCコンバータ171等を制御し、電子機器本体600に安定して電気エネルギーが供給されるような制御を行なう。
【0045】
高温反応部107、低温反応部117、連結管121は断熱パッケージ(図示しない)内に収容されているが、断熱パッケージ内が真空圧とされているので、断熱効果が高くなっている。また、断熱パッケージ内にはゲッター材132が設けられ、リード線151,152、配線133を通じてゲッター材132のヒータに電圧を印加すると、ゲッター材132が活性化して、断熱パッケージ内の真空度が高まる。リード線151,152のほかにも何本かリード線が設けられているが、リード線153,154は電熱線124に接続され、リード線155,156は電熱線125に接続され、リード線157,158は電熱線126に接続されている。
【0046】
以上のように、マイクロリアクタモジュール100において、ベースプレート101,111の下面と、この下面に設けられた電熱線124,125との間に結晶構造(ビクスバイト構造)を有するY膜(絶縁膜131)を設けるので、室温より高い環境下で金属と熱膨張係数が非常に近いため、ベースプレート101,111の歪みによる絶縁膜131の亀裂や剥離を防止することができ、絶縁膜としての信頼性を高めることできる。
また、絶縁膜131を成膜する場合、不活性ガス雰囲気において焼成するため、金属基板であるベースプレート101,111を酸化させることなくY膜を成膜することができる。
さらに、絶縁膜131を二層構造とした場合には、下層の膜内のピンホールを軽減でき、信頼性の高い絶縁膜を設けることができ、それに加えて上層、下層と異なる手法により膜を作製することで膜作製段階に発生する反りを抑制することができる。
【0047】
[応用例2]
上述した応用例1は、水素製造を行うための化学反応器を想定していたが、これに限らず、改質器等を含む固体酸化物型の発電セル(燃料電池)のように高温作動(600〜900℃)するデバイスにも、結晶構造(ビクスバイト構造)を有するY膜からなる絶縁膜を用いることができる。図11は、固体酸化物型の発電セル200の概略断面図である。
発電セル200は、箱型状をなした金属容器210と、金属容器210内に設けられた膜電極接合体220と、金属容器210内が膜電極接合体220によって仕切られることにより金属容器210内の上側と下側とにそれぞれ形成される燃料取り込み部211及び酸素取り込み部212とを備えている。
金属容器210は、耐熱性の良いNi、Ni−Cr合金、インコネル等の合金からなるものである。膜電極接合体220は、燃料極膜221、固体酸化物電解質膜222及び酸素極膜223を備え、金属容器210内の燃料極膜221は燃料取り込み部211側に配されており、酸素極膜223は金属容器210内の酸素取り込み部212側に配されている。固体酸化物電解質膜222は、燃料極膜221及び酸素極膜223の間に介在し、燃料極膜221、固体酸化物電解質膜222及び酸素極膜223が接合されている。燃料極膜221の固体酸化物電解質膜222と反対側の面には、陽極側の集電体224が設けられ、酸素極膜223の固体酸化物電解質膜222と反対側の面には、陰極側の集電体225が設けられている。金属容器210内の内側面には、絶縁膜であるY膜231が形成されている。絶縁膜231は、上述した絶縁膜31と同様にスパッタ法により成膜された結晶構造(ビクスバイト構造)を有するY膜である。成膜方法としては、スパッタ法に限らず、蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、塗布法等でも構わない。
そして、燃料極膜221、固体酸化物電解質膜222、酸素極膜223及び二つの集電体224,225は、いずれも金属容器210の上面及び下面に対して平行となるように金属容器210内の互いに対向する内側面に形成された絶縁膜231,231間に渡って設けられている。
【0048】
固体酸化物電解質膜222は、酸素極膜223から燃料極膜221へ酸素イオンを運ぶ役割を有し、酸素イオンを透過させる性質をもつ。固体酸化物電解質膜222は、酸化還元雰囲気中で安定なYSZ(イットリア安定化ジルコニア)等が用いられる。
酸素極膜223では導入される空気中の酸素が電極上で吸着、解離し反応場において、電子と結合して酸素イオンを生成する。従って、酸化雰囲気中で安定な多孔質材料で、電子伝導性の良い、例えば、La1−xSrMnOが用いられる。
燃料極膜221では導入される水素が酸素イオンと反応して、水蒸気と電子を生成する。従って、還元雰囲気下で安定な多孔質材料で、水素との親和性が良く、電子伝導率が高い、例えば、Ni/YSZ(サーメット)が用いられる。
集電体224,225は、集電板の役割を担うことから電子伝導率が高く、イオン導電率の低い、例えば、Ni−Cr合金、Fe−Cr合金が用いられる。
【0049】
金属容器210の外側面には、改質器に連結されて改質器で生成された燃料(H)を燃料取り込み部211に取り込む燃料供給管241と、発電に使用されなかった未反応の燃料(H)を排出する燃料排出管242とが外側面を貫通して設けられている。また、金属容器210の外側面に、酸素取り込み部212に酸素を取り込む酸素供給管243と、発電に使用されなかった未反応の酸素を排出する酸素排出管244とが外側面を貫通して設けられている。
【0050】
金属容器210の上面には、全面に絶縁膜232が形成されている。絶縁膜232は、上述した第一の実施の形態における一層の絶縁膜31と同様に第一の製造方法により成膜されたビクスバイト構造を有するY膜である。また、絶縁膜231の膜厚は、200〜600nm程度の範囲が好ましい。
なお、絶縁膜231は、第一の実施の形態における第二の製造方法により成膜されたY膜としても良い。また、第二の実施の形態のように、第一のY膜31Baと第二のY膜31Bbとからなる二層構造からなる絶縁膜であっても良い。この場合、第二の実施の形態における第三〜第六の製造方法によりそれぞれ成膜することができる。
絶縁膜232上には、薄膜ヒータ233が蛇行した状態にフォトリソ技術によりパターニングされている。薄膜ヒータ233は、絶縁膜232側から順に、金属密着層(例えば、Ta、Mo、Ti、Cr)、拡散防止層(例えば、W)、発熱抵抗層(例えば、Au)を積層したものである。金属密着層の膜厚は、100〜200nm、拡散防止層の膜厚は、50〜100nm、発熱抵抗層の膜厚は、200〜400nmが好ましい。薄膜ヒータ233は、起動時に金属容器210を加熱し、温度に依存して電気抵抗が変化するため、抵抗値の変化から温度の変化を読み取る温度センサとしても機能する。具体的には、薄膜ヒータ233の温度が電気抵抗に対して線形に変化する領域を用いる。
【0051】
上述の構成からなる発電セル200においては、薄膜ヒータ233に接続されたリード線(図示しない)に電圧を印加して、薄膜ヒータ233を発熱させることにより金属容器210を700℃〜1000℃程度に加熱した状態で、水素を燃料供給管241から燃料取り込み部211に供給し、膜電極接合体220での電気化学反応に使用されなかった水素は燃料排出管242から排出される。一方、酸素を含む空気が酸素供給管243から酸素取り込み部212に供給され、酸素が酸素極膜223でイオン化して固体酸化物電解質膜222を透過する。膜電極接合体220での電気化学反応に使用されなかった酸素は酸素排出管244から排出される。固体酸化物電解質膜222を透過した酸素イオンは、燃料極膜221で水素と反応し、水が燃料取り込み部211内に生成される。このとき生じた電子は、陰極側の集電体225から、配線を介して外部回路を通って陽極側の集電体224に戻り伝導する。生成された水は、水蒸気の状態となっており、燃料排出管242から排出される。このように酸素イオンの移動に伴い、電気エネルギーが生成される。
【0052】
[応用例3]
図12は、固体酸化物型の別の発電セル300の概略断面図である。
図12に示す発電セル300は、上述した発電セル200のように金属容器210を使用するのではなく、二枚の金属基板311,312を使用したものである。具体的には、発電セル300は、上下に互いに対向して配された二枚の金属基板311,312と、二枚の金属基板311,312間に両金属基板311,312と平行となるように設けられた膜電極接合体320と、膜電極接合体320を金属基板311,312に固定する支柱部313,314と、膜電極接合体320によって仕切られることにより膜電極接合体320と下側の金属基板311との間に形成される燃料取り込み部315と、膜電極接合体320と上側の金属基板312との間に形成される酸素取り込み部316とを備えている。
下側の金属基板311の上面の周縁部には、上方に立設する支柱部313が枠状に形成され、上側の金属基板312の下面の周縁部には、下方に立設する支柱部314が枠状に形成されている。これら支柱部313,314は、セラミック等の絶縁材料から形成されている。
【0053】
膜電極接合体320は、下側の支柱部313,313と上側の支柱部314,314との間に挟持されており、これによって下側の金属基板311と膜電極接合体320の間及び上側の金属基板312と膜電極接合体320の間に空間が形成されている。膜電極接合体320は、燃料極膜321、固体酸化物電解質膜322及び酸素極膜323を備え、燃料極膜321は燃料取り込み部315側に面して配されており、酸素極膜323は酸素取り込み部316側に面して配されている。固体酸化物電解質膜322は、燃料極膜321及び酸素極膜323の間に介在し、燃料極膜321、固体酸化物電解質膜322及び酸素極膜323が接合されている。燃料極膜321の固体酸化物電解質膜322と反対側の面には、陽極側の集電体324が設けられ、酸素極膜323の固体酸化物電解質膜322と反対側の面には、陰極側の集電体325が設けられている。そして、燃料極膜321、固体酸化物電解質膜322、酸素極膜323及び二つの集電体324,325は、いずれも二つの金属基板311,312に対して平行となるように、左右両側の支柱部313,313,314,314に渡って設けられている。
【0054】
固体酸化物電解質膜322、燃料極膜321、酸素極膜323は、上述したものと同様のため、その説明を省略する。
下側の支柱部313の外側面には、改質器に連結されて改質器で生成された燃料(H)を燃料取り込み部315に取り込む燃料供給管341と、発電に使用されなかった未反応の燃料(H)を排出する燃料排出管342とが外側面を貫通して設けられている。また、上側の支柱部314の外側面に、酸素取り込み部316に酸素を取り込む酸素供給管343と、発電に使用されなかった未反応の酸素を排出する酸素排出管344とが外側面を貫通して設けられている。
【0055】
上側の金属基板312の上面には、全面に絶縁膜332が形成されている。絶縁膜332は、上述した第一の実施の形態における一層の絶縁膜31と同様に第一の製造方法により成膜されたビクスバイト構造を有するY膜である。また、絶縁膜332の膜厚は、200〜600nm程度の範囲が好ましい。
なお、絶縁膜332は、第一の実施の形態における第二の製造方法により成膜されたY膜としても良い。また、第二の実施の形態のように、第一のY膜31Baと第二のY膜31Bbとからなる二層構造からなる絶縁膜であっても良い。この場合、第二の実施の形態における第三〜第六の製造方法によりそれぞれ成膜することができる。
絶縁膜332上には、薄膜ヒータ333が蛇行した状態にフォトリソ技術によりパターニングされている。薄膜ヒータ333は、絶縁膜332側から順に、金属密着層(例えば、Ta、Mo、Ti、Cr)、拡散防止層(例えば、W)、発熱抵抗層(例えば、Au)を積層したものである。金属密着層の膜厚は、100〜200nm、拡散防止層の膜厚は、50〜100nm、発熱抵抗層の膜厚は、200〜400nmが好ましい。薄膜ヒータ333は、起動時に金属容器を加熱し、温度に依存して電気抵抗が変化するため、抵抗値の変化から温度の変化を読み取る温度センサとしても機能する。具体的には、薄膜ヒータ333の温度が電気抵抗に対して線形に変化する領域を用いる。
【0056】
上述の構成からなる発電セル300においても、薄膜ヒータ333に接続されたリード線に電圧を印加して、薄膜ヒータ333を発熱させることにより金属基板311,312等からなる筐体を600〜900℃程度に加熱した状態で、水素を燃料供給管341から燃料取り込み部315に供給し、膜電極接合体320での電気化学反応に使用されなかった水素は燃料排出管342から排出される。一方、酸素を含む空気が酸素供給管343から酸素取り込み部316に供給し、酸素が酸素極膜323でイオン化して固体酸化物電解質膜322を透過する。膜電極接合体320での電気化学反応に使用されなかった未反応の酸素は酸素排出管344から排出される。固体酸化物電解質膜322を透過した酸素イオンは、燃料極膜321で水素と反応し、水が燃料取り込み部315内に生成される。このとき生じた電子は、陰極側の集電体325から、配線を介して外部回路を通って陽極側の集電体324に戻り伝導する。生成された水は、水蒸気の状態となっており、燃料排出管342から排出される。このように酸素イオンの移動に伴い、電気エネルギーが生成される。
【0057】
以上のように、図11及び図12に示す固体酸化物型の発電セル200,300において、金属容器210,金属基板312の上面と、この上面に設けられた薄膜ヒータ233,333との間に結晶構造(ビクスバイト構造)を有するY膜(絶縁膜232,332)を設けるので、作動温度が600〜900℃と非常に高い場合にも、金属と熱膨張係数が非常に近いため、金属容器210,金属基板312の歪みによる絶縁膜232,332の亀裂や剥離を防止することができ、絶縁耐圧としての性能に優れたものとすることができる。
また、絶縁膜232,332を成膜する場合、不活性ガス雰囲気において焼成するため、金属容器210、金属基板312を酸化させることなくY膜を成膜することができる。
さらに、絶縁膜232,332を二層構造とした場合には、下層の膜内のピンホールを軽減でき、信頼性の高い絶縁膜を設けることができ、それに加えて上層、下層と異なる手法により膜を作製することで膜作製段階に発生する反りを抑制することができる。
なお、ここでは発電セルが固体酸化物型の例を述べたが、溶融炭酸塩形等の別の発電セルであってもよい。
【0058】
[実施例1]
次に、第一の実施の形態における第一の製造方法によって成膜したY膜が結晶化すること、第二の実施の形態における第三の製造方法によって第一のY膜と第二のY膜の二層構造とすることにより金属基板の反りが抑制されることを以下の実施例を挙げて説明する。
≪X線回折測定≫
熱酸化膜付きSi基板上に、スパッタ技術を用いてY膜(360nm)を成膜した。スパッタ条件は、ターゲット材料:Y、到達圧力:5×10-4Pa、Ar流量:20sccm、スパッタ圧力:0.1Pa、スパッタ電力:500Wとした。そして、成膜したY膜を水素ガス(3%)と残りがArガス雰囲気において温度350℃で15分焼成を行い、YH膜を形成し、X線回折測定を行った。
YH膜は蛍石構造を有すると報告されている。図13は、成膜直後のYH膜のX線回折測定の結果であり、蛍石型として指数付けを行っている。対象物が薄膜であることから配向し易く、観測されない回折ピークがあるものの結晶のYH膜が作製されている理解できる。特に、(111)面、(311)面、(420)面では顕著な回折ピークが観測された。
次いで、YH膜を形成後、真空中で700℃にて30分焼成することによりY膜を形成し、X線回折測定を行ったものを図14に示す。
膜は上述したようにビクスバイト構造を有する結晶である。ビクスバイト構造は蛍石構造を変形させた構造であり、同様に指数付けを行っている。単位格子としては蛍石構造の2倍の周期を取ると報告されている。したがって、YH膜で顕著に観測された(111)面、(311)面、(420)面は、(222)面、(622)面、(840)面に対応する。図14に示すようにこれらの面に当たるピーク強度はある程度大きく、Y膜はYH膜の配向を引きずっていると言える。また、Yの他にYO1.335に当たるピークも観測されている。
【0059】
≪基板の反り≫
次に、4インチ、0.5mmのNi基板上にY膜(300nm)をスパッタ法により成膜後、Ar雰囲気中で800℃にて30分焼成した場合の膜作成により生じた基板の
反りを測定した。測定結果を図15に示す。図15に示すように、基板の反りは45μmの下凸となった。
そして、このNi基板上に成膜されたY膜上にY膜(200nm)をスパッタ法により成膜後、Arと3%水素雰囲気下、350℃へ15分で昇温し、15分保持してYH膜を成膜し、さらに、真空雰囲気下(10-3〜10-4Pa)、700℃へ70分昇温し、30分保持してY膜を成膜した。そのときの反りを測定し、測定結果を図16に示す。図16に示すように、基板の反りは80μmの上凸となった。以上のように、Y膜を二層構造とすることにより、Y膜を一層のみ成膜した場合の基板で下に凸となっていた反りを、逆に上に凸となるように反らすことができることがわかる。なお、Y膜をさらに薄くすることにより上に凸となる逆反りを抑制することができると考えられる。
【0060】
[実施例2]
次に、第一の実施の形態における第四の製造方法によって成膜したY膜が結晶化することを以下の実施例を挙げて説明する。
≪X線回折測定≫
Ni基板上に、蒸着法を用いて水素含有Yインゴットを蒸着源とした成膜を行った。蒸着の条件は、蒸着源であるYに水素が含まれていなければ爆発限界である4%を超えない程度の水素量と残りが不活性ガス(Ar、Ne、Nガス)雰囲気下でYインゴットを300〜400℃で1時間焼成を行ったものを使用し、基板温度:280℃、成膜時真空度:3〜5(×10-3Pa)、成膜速度:18nm/minとする。そして、得られた試料に関するX線回折測定を行った。図17は、成膜直後の試料のX線回折測定の結果(右上の挿入図は2θ:25°〜35°の拡大図)であり、蛍石構造を有するYH、ビクスバイト構造を有するY、基板であるNiの回折パターンが観測された。上述したように蒸着源であるYのインゴット中に含まれる微量水素の影響により、YHを含む膜が成膜されていることが理解できる。また、Yの回折パターンが観測されずにYの回折パター何が観測されていることは、成膜時すでに水素の影響により、成膜中の微量酸素を取り込んでしまっていると理解できる。
図18は、図17の試料について真空(1×10-4Pa)雰囲気下で700℃の焼成を行った試料に関するX線回折結果である。図18に示すように、Y、Niの回折パターンに加えて、膜と基板との界面においてYとNiとの拡散に起因したNiYの回折パターンが観測された。図17で観測されたYHの回折パターンは観測されず、水素が脱離したきれいなY膜であると言える。また、Yの回折ピークは図17と比較して半値幅の狭いピークであり、より結晶子サイズが大きくなっていると理解できる。Yは酸化し易い金属であるため、ハンドリングし難い材料であるが、このように目的材料が酸化物である場合は問題とならない点で好ましい。
【0061】
以上、本発明において、これまで結晶化が容易で、絶縁耐圧のよい酸化物として、Yについて述べてきた。Yは他の希土類と似た性質をもつことから、他の希土類酸化物(R:Rは希土類元素)もまた、有望な材料であることが予想される(図21参照)。
なお、いずれのRも線膨張係数が7〜10(×10-6/℃)と金属のそれに近い。また、融点も十分高いため、高温環境下でも耐え得ることができる(図22参照)。
上述したように、金属基板上に設ける層間絶縁膜としては、Y膜のみならず、他の希土類酸化物(R:Rは希土類元素)も結晶化が容易で、絶縁耐圧性がよいことが予想される。しかしながら、これら2つの性質の内、絶縁耐圧性を有する希土類酸化物はある程度限定され、Yが良好な絶縁性を有するのは、Yの酸化物が三二酸化物だけであり(ただし、極めて、特殊な条件下の場合を除く)、他の組成の酸化物が存在しないためである(あるいは、存在しにくい)。
他の酸化物が存在する場合、例えば、Euの酸化物の場合、EuOとEuが存在する。この内EuOは半導体で、Eは絶縁体であり、前者はEu2+、後者はEu3+である。2種類以上の酸化物が存在するとEはEu3+だけでなく、Eu2+が存在することから、酸素欠損をもちE−Xとなりやすい。このような酸素欠損、すなわち異なる価数混合した状態は、絶縁耐圧の低下、あるいは、電気(あるいはイオン)伝導性をもたらす。
したがって、絶縁膜として相応しい材料としては、典型的な酸化物である三二酸化物(R)のみ有する酸化物である。ゆえに、絶縁膜としては、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luに限られる。前記以外の希土類元素により構成される酸化物はRO、RO等の複数の酸化物を取り得ることや、作動温度範囲で結晶構造が変化することから除外される。また、希土類元素は化学的性質が酷似し、固溶しやすいという特徴を有していることから、RはSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luのうち2つ以上含有した場合でもよい。
希土類酸化物は結晶構造によりA型(六方晶)、B型(単斜晶)、C型(立方晶、ビクスバイト構造)の3つに分類でき、これまで説明してきたYは室温でC型(ビクスバイト構造)に該当する。前記3種の結晶構造のうち、C型(ビクスバイト構造)は安定領域がA型(六方晶)、B型(単斜晶)に比べて広く、このC型にあたるSc、Y、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luは結晶構造を有する膜を作製しやすく、本発明において特に最適であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】マイクロリアクタ1の分解斜視図である。
【図2】(a)は、底板3の下面図、(b)は、(a)の切断線II−IIに沿って切断した際の矢視断面図である。
【図3】第一の製造方法において、真空中で10℃/minの速さで700℃まで昇温し、700℃で30分保持した際の炉内の水素分圧値を時間に対してプロットしたものである
【図4】第二の製造方法における蒸着法を説明するための図である。
【図5】底板3Aの変形例であり、(a)は底板3Aに枠体4A,4Aを接合した際の上面図で、(b)は、(a)の切断線V−Vに沿って切断した際の矢視断面図である。
【図6】底板3Bを切断線II−IIに沿って切断した際の矢視断面図である。
【図7】マイクロリアクタモジュール100を斜め下から示した斜視図である。
【図8】マイクロリアクタモジュール100の分解斜視図である。
【図9】マイクロリアクタモジュール100を機能毎に分けた場合の概略側面図である。
【図10】マイクロリアクタモジュール100と発電セル160を備える発電システム500、及び、電子機器本体600を含むブロック図である。
【図11】固体酸化物型の発電セル200の概略断面図である。
【図12】固体酸化物型の別の発電セル300の概略断面図である。
【図13】第一の製造方法における、成膜直後のYH膜のX線回折測定の結果である。
【図14】YH膜を形成後、真空中で700℃にて30分焼成して形成したY膜のX線回折測定の結果である。
【図15】実施例1における、基板に一層のY膜を成膜した場合の基板の反りを測定した結果である。
【図16】実施例1における、基板に二層のY膜を成膜した場合の基板の反りを測定した結果である。
【図17】実施例2の第四の製造方法における、成膜直後の試料のX線回折測定の結果である。
【図18】実施例2における、図17の試料について焼成を行った際のX線回折結果である。
【図19】従来例を示すためのもので、(a)は、基板400の平面図、(b)は(a)の切断線XIX−XIXに沿って切断した際の矢視断面図である。
【図20】線膨張係数の一覧表である。
【図21】希土類元素とそれから作られる希土類酸化物の一覧表である。
【図22】希土類酸化物の融点、結晶構造の一覧表である。
【符号の説明】
【0063】
1 マイクロリアクタ
2 天板
3,3A,3B 底板
7 インゴット
31,31A,131,231,232,332 絶縁膜
31Ba 第一のY膜(第一のR膜、絶縁膜)
31Bb 第二のY膜(第二のR膜、絶縁膜)
32,32A,32B,233,333,405 薄膜ヒータ
33,33A,33B 金属密着層
34,34A,34B,36A,402 拡散防止層
35,35A,35B,403 発熱抵抗層
37A,406 絶縁保護層
100 マイクロリアクタモジュール
101,111 ベースプレート
124,125,126 電熱線(薄膜ヒータ)
141 第一燃焼器
142 気化器
143 第一改質器
144 第二改質器
145 第二改質器
146 一酸化炭素除去器
160 発電セル(燃料電池)
200,300 固体酸化物型発電セル(燃料電池)
210 金属容器
311,312 金属基板
500 発電システム
600 電子機器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分にSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つからなるR膜を成膜する工程と、
前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、
前記RH膜を酸化してR膜とする酸化工程と、を含むことを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【請求項2】
前記酸化工程は、前記金属基板を酸化させない真空雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1に記載の絶縁膜の製造方法。
【請求項3】
前記酸化工程は、1×10-4Pa以下の真空雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1に記載の絶縁膜の製造方法。
【請求項4】
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に、水素を含有し、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、
蒸着後の前記金属基板を酸化してR膜とする酸化工程と、を含むことを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【請求項5】
前記酸化工程は、前記金属基板を酸化させない真空雰囲気下で行うことを特徴とする請求項4に記載の絶縁膜の製造方法。
【請求項6】
前記酸化工程は、1×10-4Pa以下の真空雰囲気下で行うことを特徴とする請求項4に記載の絶縁膜の製造方法。
【請求項7】
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分にSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rを含有する第一のR膜を形成する工程と、
前記希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素RからなるR膜を成膜する工程と、前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、前記RH膜を酸化する工程と、からなる第二のR膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【請求項8】
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分にSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素RからなるR膜を成膜する工程と、前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、前記RH膜を酸化する工程と、を含む第一のR膜を形成する工程と、
前記第一のR膜の上に、前記希土類元素Rを含有する第二のR膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【請求項9】
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分にSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rを含有する第一のR膜を形成する工程と、
前記第一のR膜の上に、水素を含有し、前記希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、蒸着後の前記金属基板を酸化する酸化工程と、を含む第二のR膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【請求項10】
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に、水素を含有し、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、蒸着後の前記金属基板を酸化する酸化工程と、を含む第一のR膜を形成する工程と、
前記第一のR膜の上に、前記希土類元素Rを含有する第二のR膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【請求項11】
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分にSc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つからなるR膜を成膜する工程と、
前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、
前記RH膜を酸化してR膜とする酸化工程と、を含む製造方法により成膜されたR膜を備えることを特徴とする反応装置。
【請求項12】
金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に、水素を含有し、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、
蒸着後の前記金属基板を酸化してR膜とする酸化工程と、を含む製造方法により成膜されたR膜を備えることを特徴とする反応装置。
【請求項13】
金属基板と、
前記金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に成膜されて、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rを含有する第一のR膜と、
前記希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素RからなるR膜を成膜する工程と、前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、前記RH膜を酸化する工程と、を含む製造方法により成膜された第二のR膜と、を備えることを特徴とする反応装置。
【請求項14】
金属基板と、
前記金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に成膜されて、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素RからなるR膜を成膜する工程と、前記R膜を不活性ガス雰囲気下で水素化しRH膜を形成する工程と、前記RH膜を酸化する工程と、を含む製造方法により成膜された第一のR膜と、
前記第一のR膜の上に成膜されて、前記希土類元素Rを含有する第二のR膜と、を備えることを特徴とする反応装置。
【請求項15】
金属基板と、
前記金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に成膜されて、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rを含有する第一のR膜と、
前記第一のR膜の上に成膜されて、水素を含有し、前記希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、蒸着後の前記金属基板を酸化する酸化工程と、を含む製造方法により成膜された第二のR膜と、を備えることを特徴とする反応装置。
【請求項16】
金属基板と、
前記金属基板の表面の絶縁性を必要とする部分に成膜されて、水素を含有し、Sc、Y、La、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Luの希土類元素Rのうち少なくとも一つの希土類元素Rを蒸着源として蒸着する蒸着工程と、蒸着後の前記金属基板を酸化する酸化工程と、を含む製造方法により成膜された第一のR膜と、
前記第一のR膜の上に成膜されて、前記希土類元素Rを含有する第二のR膜と、を備えることを特徴とする反応装置。
【請求項17】
請求項11〜16のいずれか一項に記載の反応装置を備え、
前記反応装置により生成される生成物により発電を行うことを特徴とする発電装置。
【請求項18】
請求項17に記載の発電装置と、
前記発電装置によって発電された電気により動作する電子機器本体と、を備えることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−102738(P2009−102738A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310560(P2008−310560)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【分割の表示】特願2006−267832(P2006−267832)の分割
【原出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】