説明

緊急地震情報放送システム

【課題】周辺にいる人々に異常事態が発生することを事前に認識させて、警戒を周知徹底させることにより、安全を確保させる緊急地震情報放送システムを提供する。
【解決手段】この緊急地震情報放送システム100は、例えば、地震1を検知してその情報を送信する地震計2と、地震計2からの情報を分析して震源や地震の規模を推定して各基地局に緊急地震情報を配信する公共機関(例えば気象庁)4と、基地局15に設置され緊急地震情報を受信する受信装置(受信手段)7と、受信装置7により受信した緊急地震情報を配信する配信装置8と、配信装置8から緊急地震情報を受信する複数の移動無線機12と、備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急地震情報放送システムに関し、さらに詳しくは、緊急地震情報が発生した場合に、移動無線機の周辺にいる人々に緊急地震情報の内容を放送して、情報の周知徹底を図る緊急地震情報放送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた観測データを解析して震源や地震の規模(マグニチュード)を直ちに推定して、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を推定し、地域住民等の関係者、関係機関に可能な限り迅速に知らせる緊急地震速報の体制が確立されつつある。この緊急地震速報は、現在、気象庁から発信されて、放送局を経由して各受信機で受信することにより知ることができる。
また、従来技術として特許文献1には、地震情報を受信して認識した車両が表示灯やハザードを点灯して、周囲の車両に非常事態が発生したことを目視により報知する装置について開示されている。
【特許文献1】特開2007−207208公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現在稼働中の緊急地震速報は、テレビ或いはラジオを視聴している人は速報を確認することができるが、テレビ或いはラジオを視聴していない人や、外出中の人は速報を即座に確認することができず、周知させるのが困難であった。
また、特許文献1に開示されている従来技術は、表示灯やハザードにより目視で周囲に報知するため、例えば、視覚障害者にはその状況を把握することができないといった問題がある。また、ハザードの点灯タイミングを車両の前後で交互に点灯することにより、非常事態を報知することが記載されているが、通常の駐車時におけるハザードの点灯と間違える虞が高い。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、緊急地震情報を受信する受信装置と、その情報を移動無線機に配信する配信装置とを備え、緊急地震情報を受信した移動無線機は、即座にその情報を音声により報知することにより、周辺にいる人々に異常事態が発生することを事前に認識させて、警戒を周知徹底させることにより、安全を確保させる緊急地震情報放送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、緊急地震情報を受信する受信手段と、該受信手段により受信した緊急地震情報を配信する配信装置と、該配信装置から前記緊急地震情報を受信する移動無線機と、備え、前記移動無線機は、少なくとも前記緊急地震情報を放送する放送機器を備えていることを特徴とする。
近年、地震発生と同時に、各地での主要動の到達時刻や震度を推定し可能な限り迅速に知らせる緊急地震速報システムが稼働している。本発明では、緊急地震情報を移動無線機が受信すると、その移動無線機が搭載している放送機器により周辺にいる人々に報知して、地震が発生することを事前に認識させるものである。これにより、周辺にいる人々に警戒を周知徹底させることにより、安全を確保させることができる。
請求項2は、前記移動無線機は、前記配信装置から前記緊急地震情報を受信して該緊急地震情報の内容を分析する分析回路と、該分析回路の分析結果に基づいて緊急地震情報を放送するか警報を発するかの何れかを選択する選択回路と、を備えたことを特徴とする。
地震は、震源地からの距離により主要動が到達する時間が異なる。即ち、直下型の地震の場合は、震源地が近いので、主要動が到達する時間が数秒と非常に短い。また、震源地が遠い場合は、主要動が到達する時間が数十秒と比較的長い。そのため、移動無線機が配信装置から受信した緊急地震情報の内容により、放送している余裕がある場合とない場合がある。そこで本発明では、緊急地震情報の内容を分析する分析回路を備えて、放送している余裕がない場合は、警報のみを発生し、放送している余裕がある場合は、その内容を放送する。これにより、報知される内容により警戒の度合いを即座に判断することができる。
【0005】
請求項3は、前記移動無線機は、緊急地震情報を受信した後に取るべき行動指針を示す報知情報を記憶する報知情報記憶部と、該報知情報を送信する送信機と、を備え、前記配信装置から前記緊急地震情報を受信すると、前記報知情報記憶部から報知情報を読み出して前記送信機により送信することを特徴とする。
緊急地震情報を受信した場合、その情報を放送する対象、或いは場所により伝える内容が大きく異なる。例えば、学校等では、集団で行動しなければならないため、それに適した放送内容となる。また、不特定多数の群集がいる場所(スタジアム、劇場、映画館等)では、パニックに陥らないようにするための内容となる。そこで本発明では、予め、幾つかの場面を想定した放送内容を報知情報記憶部に記憶しておき、移動無線機がいる場所に適した報知情報を選択して放送する。これにより、場所或いは対象に最も適した放送内容を放送することができる。
請求項4は、前記送信機により送信された報知情報を受信する受信機、及び該受信機により受信した報知情報を報知する報知手段を有する警報報知装置を、電柱、又は/及び、鉄塔の適所に備えたことを特徴とする。
移動無線機が街路を走行中に地震が発生した場合、移動無線機に搭載している放送機器により走行しながら放送してもよいが、放送内容が伝達する距離には限界がある。そこで本発明では、街路に設置されている電柱を利用して、その電柱に受信機と報知手段(例えば、スピーカ)を有する警報報知装置を備えて、移動無線機から報知情報を受信してスピーカにより報知する。これにより、遠方まで報知情報を伝達することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、緊急地震速報を移動無線機が受信すると、その移動無線機が搭載している放送機器により周辺にいる人々に報知して、地震が発生することを事前に認識させるので、周辺にいる人々に警戒を周知徹底させることにより、安全を確保させることができる。
また、緊急地震情報の内容を分析する分析回路を備えて、放送している余裕がない場合は、警報のみを発生し、放送している余裕がある場合は、その内容を放送するので、報知される内容により警戒の度合いを即座に判断することができる。
また、予め、幾つかの場面を想定した放送内容を報知情報記憶部に記憶しておき、移動無線機がいる場所に適した報知情報を選択して放送するので、場所或いは対象に最も適した放送内容を放送することができる。
また、街路に設置されている電柱を利用して、その電柱に受信機と報知手段(例えば、スピーカ)を有する警報報知装置を備えて、移動無線機から報知情報を受信してスピーカにより報知するので、遠方まで報知情報を伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の一実施形態に係る緊急地震情報放送システムの構成を示すブロック図である。この緊急地震情報放送システム100は、例えば、地震1を検知してその情報を送信する地震計2と、地震計2からの情報を分析して震源や地震の規模を推定して各基地局に緊急地震情報を配信する公共機関(例えば気象庁)4と、基地局15に設置され緊急地震情報を受信する受信装置(受信手段)7と、受信装置7により受信した緊急地震情報を配信する配信装置8と、配信装置8から緊急地震情報を受信する複数の移動無線機12と、備えて構成されている。そして各移動無線機12は、少なくとも緊急地震情報を放送する放送機器21を備えている。また、配信装置8のアンテナ9から配信された緊急地震情報を受信可能なエリアに、緊急地震情報を受信する受信機13とスピーカ14を備えた電柱10から、緊急地震情報を放送しても良い。
近年、地震発生と同時に、各地での主要動の到達時刻や震度を推定し可能な限り迅速に知らせる緊急地震速報システムが稼働している。本実施形態では、緊急地震情報を移動無線機12が受信すると、その移動無線機12が搭載している放送機器21により周辺にいる人々に報知して、地震が発生することを事前に認識させるものである。これにより、周辺にいる人々に警戒を周知徹底させることにより、安全を確保させることができる。
【0008】
図2は第1の実施形態に係る移動無線機の構成を示す図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。この移動無線機12Aは、アンテナ11を備え、配信装置8のアンテナ9から配信された緊急地震情報を受信する車載無線機20と、車載無線機20により受信した緊急地震情報をそのまま放送する放送機器21と、放送機器21から出力された緊急地震情報を拡声するスピーカ22と、を備えている。尚、車載無線機20は基地局15と交信を行なうための送信機も備えている。また、放送機器21には、スピーカ22から緊急地震情報を拡声するための増幅器を含んでいる。以下、同様とする。
本実施形態の移動無線機12Aは、最も基本的な構成要件により構成されている。即ち、アンテナ11を備え、配信装置8のアンテナ9から配信された緊急地震情報を受信する車載無線機20と、車載無線機20により受信した緊急地震情報をそのまま放送する放送機器21と、放送機器21から出力された緊急地震情報を拡声するスピーカ22である。従って、通常の基地局15との交信は、移動無線機12A内のスピーカとマイクロフォンにより行なわれ、それらの内容はスピーカ22からは出力されない。そして、交信中に緊急地震情報が受信されると、交信を中断して放送機器21側に切り替わって、緊急地震情報がスピーカ22から放送される。その結果、その情報を聞いた人達は、最新の地震情報を知ることができる。
【0009】
図3は第2の実施形態に係る移動無線機の構成を示す図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。この移動無線機12Bは、アンテナ11を備え、配信装置8のアンテナ9から配信された緊急地震情報を受信する車載無線機20と、緊急地震情報を受信して内容を分析する分析回路24と、分析回路24の分析結果に基づいて緊急地震情報を放送するか警報を発するかの何れかを選択する選択回路25と、選択回路25により緊急地震情報が選択されると、その緊急地震情報をそのまま放送する放送機器21と、放送機器21から出力された緊急地震情報を拡声するスピーカ22と、選択回路25により警報が選択されると、警報を発生する警報設備27と、警報器28と、備えて構成されている。
地震は、震源地からの距離により主要動が到達する時間が異なる。即ち、直下型の地震の場合は、震源地が近いので、主要動が到達する時間が数秒と非常に短い。また、震源地が遠い場合は、主要動が到達する時間が数十秒と比較的長い。そのため、移動無線機12Bが配信装置8から受信した緊急地震情報の内容により、放送している余裕がある場合とない場合がある。そこで本実施形態では、緊急地震情報の内容を分析する分析回路24を備えて、放送している余裕がない場合は、警報設備27を駆動して警報器28から警報のみを発生し、放送している余裕がある場合は、放送機器21を介してスピーカ22からその内容を放送する。これにより、報知される内容により警戒の度合いを即座に判断することができる。
【0010】
図4は第2の実施形態に係る移動無線機の動作を説明するフローチャートである。先ず、基地局15の受信装置7が公共機関4から緊急地震情報を受信すると(S1でYES)、各移動無線機12に緊急地震情報を配信する(S2)。各移動無線機12の車載無線機20が配信装置8から緊急地震情報を受信すると(S3でYES)、その情報は分析回路24に伝えられて緊急地震情報の内容が分析される(S4)。分析の結果、放送している余裕がない場合は(S5でNO)、選択回路25により警報設備27を駆動して警報器28から警報のみを発生する(S7)。一方、ステップS5で放送している余裕がある場合は(S5でYES)、選択回路25により放送機器21を介してスピーカ22からその内容を放送する(S6)。
【0011】
図5は第3の実施形態に係る移動無線機の構成を示す図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。この移動無線機12Cは、アンテナ11を備え、配信装置8のアンテナ9から配信された緊急地震情報を受信する車載無線機20と、緊急地震情報を受信した後に取るべき行動指針を示す報知情報を記憶する報知情報記憶部31と、報知情報を送信する送信機32と、アンテナ33と、を備え、また、送信機32により送信された報知情報を受信する受信機35、及び受信機35により受信した報知情報を報知するスピーカ(報知手段)37を有する警報報知装置38を、鉄塔(電柱でも可)34の適所に備える。そして、配信装置8から緊急地震情報を受信すると、報知情報記憶部31から報知情報を読み出して送信機32によりアンテナ33から送信する。報知情報を受信機35が受信して増幅し、スピーカ37から報知情報を出力する。
即ち、緊急地震情報を受信した場合、その情報を放送する対象、或いは場所により伝える内容が大きく異なる。例えば、学校等では、集団で行動しなければならないため、それに適した放送内容となる。また、不特定多数の群集がいる場所(スタジアム、劇場、映画館等)では、パニックに陥らないようにするための内容となる。そこで本実施形態では、予め、幾つかの場面を想定した放送内容を報知情報記憶部31に記憶しておき、移動無線機12Cがいる場所に適した報知情報を選択して送信機32により送信する。また、移動無線機12Cが街路を走行中に地震が発生した場合、移動無線機12Cに搭載している放送機器により走行しながら放送してもよいが、放送内容が伝達する距離には限界がある。そこで本実施形態では、街路に設置されている電柱を利用して、その電柱に受信機35とスピーカ37を有する警報報知装置38を備えて、移動無線機12Cから報知情報を受信してスピーカ37により報知する。これにより、場所或いは対象に最も適した放送内容を放送することができると共に、遠方まで報知情報を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る緊急地震情報放送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る移動無線機の構成を示す図である。
【図3】第2の実施形態に係る移動無線機の構成を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る移動無線機の動作を説明するフローチャートである。
【図5】第3の実施形態に係る移動無線機の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0013】
1 地震、2 地震計、3 アンテナ、4 公共機関、5、6 アンテナ、7 受信装置、8 配信装置、9 アンテナ、10 電柱、11 アンテナ、12 移動無線機、13 受信機、14 スピーカ、15 基地局、20 車載無線機、21 放送機器、22 スピーカ、24 分析回路、25 選択回路、27 警報設備、28 警報器、31 報知情報記憶部、32 送信機、100 緊急地震情報放送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急地震情報を受信する受信手段と、該受信手段により受信した緊急地震情報を配信する配信装置と、該配信装置から前記緊急地震情報を受信する移動無線機と、備え、
前記移動無線機は、少なくとも前記緊急地震情報を放送する放送機器を備えていることを特徴とする緊急地震情報放送システム。
【請求項2】
前記移動無線機は、前記配信装置から前記緊急地震情報を受信して該緊急地震情報の内容を分析する分析回路と、該分析回路の分析結果に基づいて緊急地震情報を放送するか警報を発するかの何れかを選択する選択回路と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の緊急地震情報放送システム。
【請求項3】
前記移動無線機は、緊急地震情報を受信した後に取るべき行動指針を示す報知情報を記憶する報知情報記憶部と、該報知情報を送信する送信機と、を備え、前記配信装置から前記緊急地震情報を受信すると、前記報知情報記憶部から報知情報を読み出して前記送信機により送信することを特徴とする請求項1に記載の緊急地震情報放送システム。
【請求項4】
前記送信機により送信された報知情報を受信する受信機、及び該受信機により受信した報知情報を報知する報知手段を有する警報報知装置を、電柱、又は/及び、鉄塔の適所に備えたことを特徴とする請求項3に記載の緊急地震情報放送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−276954(P2009−276954A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126648(P2008−126648)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】