説明

緩衝ブロック

【課題】 車両、岩石、流木や土石流又は船の衝突や構造部材の地震による衝突などの大きな衝撃を吸収する緩衝ブロックを提供する。また、緩衝ブロックは、衝撃で破損した時に跡片付けを容易にする。製造し易く、施工し易くする。
【解決手段】 道路の構造物や橋梁に用いる緩衝ブロック1であり、衝撃荷重Fを受ける正面側部分2と、緩衝ブロック取付対象物Sに接する背面側部分3は、それぞれ、複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料のような繊維補強セメント複合材料で構成し、それらの間の中間部分4を発泡スチロール樹脂などの発泡合成樹脂のような独立気泡含有材料で構成し、緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受けると、正面側部分、背面側部分と中間部分が圧縮変形する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の構造物や橋梁に用いる緩衝ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道路は、分岐点に、道路を左右に分岐する柵やブロックのような分岐用の構造物が設置してある。自動車道路の島式料金所は、平面U形状の壁状の構造物で囲われている。自動車道路の左側又は右側の路側には、自動車の飛び出しを防ぐ壁状の構造物が設置してある。これらの構造物には、車両衝突の衝撃を緩和する装置は、設けられていないようである。
【0003】
崖に隣接する道路には、崖からの落石を受ける落石避け用の屋根状構造物が設置してある。この上には、落石の衝撃を緩和する装置は、設けられていないようである。
【0004】
また、橋梁において、河川の流れの中に設立した橋脚には、流木や土石流又は船が衝突することがある。この衝突の衝撃を緩和する装置は、設けられていないようである。
【0005】
また、橋桁の端を支える橋台の胸壁には、橋桁の端が地震で衝突することがある。この衝突の衝撃を吸収する部材が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−303021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[課 題]
道路の構造物や橋梁に用いる緩衝手段は、次のようなことが要望される。
・車両、岩石、流木や土石流又は船の衝突や地震による構造部材の衝突などの大きな衝撃を吸収する緩衝能力がある。
・衝撃を受けて破損したときは、破損品の跡片付けが容易で、新品との交換が簡単である。破損後の復旧が早い。
・製造し易い。施工し易い。
【0008】
[着 想]
道路の構造物や橋梁に用いる緩衝手段は、ブロックにすることにした。ブロックは、道路の構造物や橋梁に施工し易い。
【0009】
緩衝ブロックの材料として、独立気泡を無数に含んだ独立気泡含有材料と、繊維を無数に含んだ繊維補強セメント複合材料に着目した。
【0010】
独立気泡含有材料は、発泡合成樹脂が代表例である。発泡スチロール樹脂、発泡ポリウレタン樹脂や発泡ポリプロピレン樹脂が例示される。これらは、緩衝性に優れている。空隙率は、50%以上が望ましい。
発泡スチロール樹脂のような発泡合成樹脂は、商品の梱包に保護材として使用されている。だが、上記のような大きな衝撃に対する緩衝手段としては、実用化されていないようである。
ところが、発泡合成樹脂は、大きな衝撃荷重を受けると、大きく変形して大きな衝撃を吸収する。大きな衝撃の緩衝手段になる。また、その大きな変形は、荷重がなくなると、相当量復元する。地震による衝突のような繰り返し荷重の緩衝手段に適する。だが、発泡合成樹脂は、大きな衝撃荷重を受けると、破損して破片が飛び散ることがある。破片が飛び散ると、危険である上、破損品の跡片付けに手間が掛かる。
【0011】
繊維補強セメント複合材料は、複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料、高靭性繊維補強セメント複合材料や超高強度繊維補強コンクリートが例示される。これらは、靭性に優れている。大きな衝撃荷重を受けると、大きく変形して大きな衝撃を吸収する。大きな衝撃の緩衝手段になる。また、その大きな変形は、荷重がなくなると、ある程度復元する。その上、繊維補強セメント複合材料は、発泡合成樹脂とは異なり、大きな衝撃荷重を受けても、破片が飛び散り難い。
【0012】
繊維補強セメント複合材料の一種である複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料は、荷重が増加して変形が大きくなるに従って、微細ひび割れの本数が増加するが、微細ひび割れの幅は増加しない。破片が発生し難い。
なお、社団法人土木学会が平成19年3月に発行した「複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料設計・施工指針(案)」によると、「複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料(HPFRCC、High Performance Fiber Reinforced Cement Composition)」とは、次のように定義される。「繊維補強セメント複合材料(FRCC)のうち、一軸引張応力下において擬似ひずみ硬化特性を示し、微細で高密度の複数ひび割れを形成することにより、最大引張ひずみが数%にも達する極めて高靭性で延性な挙動を示す材料」。ここで、「擬似ひずみ硬化特性」とは、「初期ひび割れ発生後も引張応力が上昇する特性」を言う。
【0013】
上記のような両材料の特性を考慮すると、緩衝ブロックは、衝撃荷重を受ける正面側部分と、緩衝ブロック取付対象物に接する背面側部分とをそれぞれ繊維補強セメント複合材料で構成し、それらの間の中間部分を発泡合成樹脂のような独立気泡含有材料で構成する。すると、両材料は、衝撃荷重に対して直列配置になる。両材料の衝撃吸収能力が加算される。
また、発泡合成樹脂のような独立気泡含有材料は、前後を正面側と背面側の繊維補強セメント複合材料で挟まれる。衝撃荷重を受けたとき、破損しても、破片が飛び散り難い。
【0014】
このような緩衝ブロックは、次のように製造する。
先ず、緩衝ブロックの中間部分となる発泡合成樹脂体のような独立気泡含有材料体を製作する。発泡合成樹脂体のような独立気泡含有材料体は、成形し易いし、切断加工し易い。軽量で、取り扱い易い。その上、安価である。
この独立気泡含有材料体は、緩衝ブロック成形用の型枠に容れ、型枠内の緩衝ブロック中間部分となる空間に配置する。この型枠は、内部の緩衝ブロック正面側部分となる空間と背面側部分となる空間に、繊維補強セメント複合材料となる生コンクリートを投入して充填する。型枠内のコンクリートが硬化すると、脱型する。すると、緩衝ブロックが得られる。
【0015】
この緩衝ブロックは、正面側部分と背面側部分が繊維補強セメント複合材料で、中間部分が発泡合成樹脂体のような独立気泡含有材料体で構成される。正面側部分と背面側部分の繊維補強セメント複合材料は、中間部分の発泡合成樹脂体のような独立気泡含有材料体に付着している。両材料を接合する手間が掛からない。製造が簡単である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1.道路の構造物や橋梁に用いる緩衝ブロックであり、
衝撃荷重を受ける正面側部分と、緩衝ブロック取付対象物に接する背面側部分は、それぞれ、繊維補強セメント複合材料で構成し、それらの間の中間部分を、独立気泡を無数に含み空隙率が50%以上である独立気泡含有材料で構成し、
緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受けると、正面側部分、背面側部分と中間部分が圧縮変形する構成にしたことを特徴とする。
2.道路の構造物や橋梁に用いる緩衝ブロックであり、
衝撃荷重を受ける正面側部分と、緩衝ブロック取付対象物に接する背面側部分は、それぞれ、繊維補強セメント複合材料で構成し、それらの間の中間部分を発泡合成樹脂で構成し、
緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受けると、正面側部分、背面側部分と中間部分が圧縮変形する構成にしたことを特徴とする。
3.上記2の緩衝ブロックにおいて、
繊維補強セメント複合材料は、複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料にし、
発泡合成樹脂は、発泡スチロール樹脂にしたことを特徴とする。
4.上記1〜3のいずれかの緩衝ブロックにおいて、
正面側部分、背面側部分と中間部分は、それぞれ、板状の形状にして板状部にし、正面側部分の板状部と中間部分の板状部及び背面側部分の板状部を積層したことを特徴とする。
5.上記1〜3のいずれかの緩衝ブロックにおいて、
正面側部分は、方形枠状の形状にして方形枠状部にし、方形枠状部の前側板の前面を緩衝ブロックの正面にし、
背面側部分は、背面板と中央板をT形状に連結してT形状部にし、T形状部の背面板の後面を緩衝ブロックの背面にし、
T形状部の背面板の前面の中央位置から前側に突出した中央板は、前端を方形枠形状部の後側板の後面の中央位置に連結し、
中間部分は、T形状部の中央板の左側と右側でそれぞれT形状部の背面板と方形枠状部の後側板の間を充填する方形状にして方形状部にし、また、方形枠状部内を充填する方形状にして方形状部にし、
緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受けると、方形枠状部の後側板が曲げ変形する、又は、曲げ変形して破断する構成にしたことを特徴とする。
6.上記1〜3のいずれかの緩衝ブロックにおいて、
正面側部分は、正面板の左右端からそれぞれ傾斜側板が後方内側寄りに突出する形状にし、正面板の前面を緩衝ブロックの正面にし、
背面側部分は、背面板の左右端からそれぞれ傾斜側板が前方内側寄りに突出する形状にし、背面板の後面を緩衝ブロックの背面にし、
正面板の左右の傾斜側板は、それぞれ、後端を背面板の左右の傾斜側板の前端に連結し、
中間部分は、正面板とその左右の傾斜側板及び背面板とその左右の傾斜側板で囲われた部分を充填する内側部と、正面板の左側傾斜側板と背面板の左側傾斜側板の間、正面板の右側傾斜側板と背面板の右側傾斜側板の間をそれぞれ充填する外側部にし、
緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受けると、正面板の左側傾斜側板と背面板の左側傾斜側板、正面板の右側傾斜側板と背面板の右側傾斜側板がそれぞれ曲げ変形する、又は、曲げ変形して破断する構成にしたことを特徴とする。
7.上記1〜6のいずれかの緩衝ブロックにおいて、
圧縮変形後の復元量を増加させるバネを設け、
バネは、正面側部分と背面側部分の間に嵌め込み、中間部分を貫通し、
緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受け、正面側部分が背面側部分側に変位すると、バネは中間部分と伴に圧縮され、また、衝撃荷重がなくなると、バネは弾性力で伸長し、中間部分は復元膨張し、正面側部分は、バネの復元伸長と中間部分の復元膨張で、前側に押し返される構成にしたことを特徴とする。
8.上記1〜7のいずれかの緩衝ブロックを製造する方法であり、
緩衝ブロックの中間部分となる独立気泡含有材料体を形成し、
独立気泡含有材料体を、緩衝ブロック成形用の型枠に容れて型枠内の緩衝ブロック中間部分となる空間に配置し、
型枠内の緩衝ブロック正面側部分となる空間と背面側部分となる空間に、繊維補強セメント複合材料となる生コンクリートを投入して充填し、
型枠内のコンクリートが硬化すると、脱型することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
緩衝ブロックは、車両、岩石、流木や土石流又は船の衝突や構造部材の地震による衝突などの大きな衝撃を吸収する。大きな衝撃の緩衝能力がある。また、衝撃を受けて破損したときは、破損品の跡片付けが容易である。製造し易い。施工し易い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の第1例における緩衝ブロックの平面図。
【図2】同緩衝ブロックの斜視図。
【図3】同緩衝ブロックの第1製造工程、発泡合成樹脂体を形成した状態の斜視図。
【図4】同緩衝ブロックの第2製造工程、発泡合成樹脂体を型枠内に配置した状態の斜視図。
【図5】同緩衝ブロックの第3製造工程、型枠に繊維補強セメント複合材料の生コンクリートを投入して充填した状態の斜視図。
【図6】同緩衝ブロックの第1使用例、道路の分岐用構造物に取り付けた状態の平面図。
【図7】同緩衝ブロックの第2使用例、道路の島式料金所の壁状構造物に取り付けた状態の平面図。
【図8】同緩衝ブロックの第3使用例、トンネル内道路の車道両側の壁状構造物に取り付けた状態の縦断正面図。
【図9】同緩衝ブロックの第4使用例、道路の落石避け用屋根状構造物に取り付けた状態の正面図。
【図10】同緩衝ブロックの第5使用例、曲面板状にして橋梁の橋脚に取り付けた状態の平面図。
【図11】実施形態の第2例における緩衝ブロックの平面図。
【図12】同緩衝ブロックの斜視図。
【図13】同緩衝ブロックの第6使用例、橋梁の橋台に取り付けた状態の部分縦断正面図。
【図14】同緩衝ブロックの第7使用例、橋梁の橋桁に取り付けた状態の部分縦断正面図。
【図15】実施形態の第3例における緩衝ブロックの平面図。
【図16】同緩衝ブロックの正面図。
【図17】実施形態の第4例における緩衝ブロックの平面図。
【図18】同緩衝ブロックの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1例(図1〜図10参照)]
〔緩衝ブロックの構成〕
本例の緩衝ブロック1は、図1と図2に示すように、3枚の板状部を積層した構造の直方体にしている。繊維補強セメント複合材料は、複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料にしている。独立気泡含有材料は、発泡合成樹脂にし、発泡スチロール樹脂にしている。
【0020】
衝撃荷重Fを受ける正面側部分2と、緩衝ブロック取付対象物Sに接する背面側部分3は、それぞれ、複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料で構成し、平板状の形状にして板状部にしている。正面側部分2と背面側部分3の間の中間部分4は、発泡スチロール樹脂で構成し、平板状の形状にして板状部にしている。正面側部分2、背面側部分3と中間部分4は、積層して接合している。
【0021】
緩衝ブロック1は、正面に衝撃荷重Fを受けると、正面側部分2、背面側部分3と中間部分4がそれぞれ圧縮変形する。全体の圧縮変形で衝撃を吸収する。
3枚の板状部2、3、4は、それぞれ、厚さが圧縮変形量に関連する。各板状部2、3、4の厚さは、緩衝ブロックの設計特性に応じて増減する。
【0022】
〔緩衝ブロックの製造法〕
第1製造工程は、図3に示すように、中間部分4となる発泡スチロール樹脂の発泡合成樹脂体4を形成する。発泡合成樹脂体4は、発泡合成樹脂を中間部分4の形状に成形する。又は、中間部分4より大きい発泡合成樹脂体を中間部分4の形状に切断加工する。
第2製造工程は、図4に示すように、中間部分4となる発泡合成樹脂体4を緩衝ブロック成形用の型枠5内に配置する。発泡合成樹脂体4は、型枠5内に容れ、型枠5内の中間部分4となる空間に配置する。
第3製造工程は、図5に示すように、型枠5に複数微細ひび割れ型の繊維補強セメント複合材料の生コンクリートを投入して充填する。型枠5内の正面側部分2となる空間と、背面側部分3となる空間に、それぞれ、繊維補強セメント複合材料2、3となる生コンクリートを投入して充填する。型枠5内の生コンクリートは、上面を均す。生コンクリートは、発泡合成樹脂体4の板状部の板面に接触する。
第4製造工程は、型枠内5のコンクリートが硬化すると、脱型する。緩衝ブロック1が得られる。
【0023】
〔緩衝ブロックの材料〕
発泡スチロール樹脂(EPS)は、発泡ポリスチレン樹脂とも言われ、独立気泡を無数に含んでいる。独立気泡の量は、緩衝ブロックの設計特性に応じて増減する。実施例の発泡スチロール樹脂は、型枠内で発泡させて成形する。単位体積当りの重量は、0.3kN/m3位である。空隙率が50%以上である。
【0024】
複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料(HPFRCC)は、上記の土木学会の定義の通りである。補強用繊維を無数に含んでいる。補強用繊維は、有機系の短繊維である。その寸法、力学特性や混入量は、緩衝ブロックの設計特性に応じて調節する。実施例の補強用繊維は、高強度ポリエチレン繊維であり、太さ12μm、長さ12mm、引張強度2.6GPa、弾性係数88GPaで、混入量が0.5vol%と1.5vol%である。
【0025】
また、複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料となる生コンクリートは、水、セメント、骨材、減水剤や補強用繊維などからなる。コンクリートの配合は、緩衝ブロックの設計特性に応じて調節する。実施例の配合は、体積1m3当り、大体、水340kg、セメント1300kg、細骨材400kg、高性能AE減水剤38kg、増粘剤0.9kgである。
実施例の複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料は、引張強度が6弱〜8弱MPaで、弾性係数が20〜22GPaである。
【0026】
〔緩衝ブロックの使用例〕
第1使用例
緩衝ブロック1は、図6に示すように、自動車道路の分岐用構造物11の端に取り付ける。緩衝ブロック1の背面は、分岐用構造物11の端面に重ねて密接する。緩衝ブロック1の正面は、自動車12の進行方向と逆向きにする。
【0027】
第2使用例
緩衝ブロック1は、図7に示すように、自動車道路の島式料金所の壁状構造物13の端に取り付ける。緩衝ブロック1の背面は、壁状構造物13の端面に重ねて密接する。緩衝ブロック1の正面は、自動車12の進行方向と逆向きにする。
【0028】
第3使用例
緩衝ブロック1は、平板状の形状にする。平板状の緩衝ブロック1は、図8に示すように、トンネル内道路の車道と歩道の境界の擁壁、車道両側の壁状構造物14に多数枚を配列して取り付ける。緩衝ブロック1の背面は、壁状構造物14の表面に重ねて密接する。緩衝ブロック1の正面は、車道向きにする。
【0029】
第4使用例
緩衝ブロック1は、平板状の形状にする。平板状の緩衝ブロック1は、図9に示すように、道路の落石避け用屋根状構造物15の上に多数枚を敷き詰めて取り付ける。緩衝ブロック1の背面は、下向きにし、落石避け用屋根状構造物15の上面に重ねて密接する。緩衝ブロック1の正面は、上向きにする。
【0030】
第5使用例
緩衝ブロック1は、背面を凹面にする曲面板状の形状にする。曲面板状の緩衝ブロック1は、図10に示すように、橋梁の橋脚16の上流端に取り付ける。緩衝ブロック1の凹面の背面は、橋脚16の上流端面に重ねて密接する。緩衝ブロック1の凸面の正面は、河川の流れ方向と逆向きにする。
また、曲面板状の緩衝ブロック1は、橋脚16の下流端にも取り付ける。
【0031】
[第2例(図11〜図14参照)]
〔緩衝ブロックの構成〕
本例は、第1例の緩衝ブロック1の正面側部分2、背面側部分3と中間部分4の形状を変更している。
【0032】
本例の緩衝ブロック21は、図11と図12に示すように、直方体にしている。衝撃荷重Fを受ける正面側の部分22と、緩衝ブロック取付対象物Sに接する背面側の部分23は、連結している。正面側の複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料の部分22と背面側の複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料の部分23は、それぞれ、鉄筋24を格子状に組んで埋没している。中間部分の発泡スチロール樹脂の部分は、前側の部分25、左側の部分26と右側の部分26の3個所に別れている。
【0033】
正面側の部分22は、長方形枠状の形状にして方形枠状部にしている。方形枠状部22は、前側板の前面を緩衝ブロック21の正面にしている。背面側の部分23は、背面板と中央板をT形状に連結してT形状部にしている。T形状部23は、背面板の後面を緩衝ブロック21の背面にしている。T形状部23の中央板は、背面板の前面の中央位置から前側に突出し、前端を方形枠形状部22の後側板27の後面の中央位置に連結している。
【0034】
中間部分は、前側の部分25を、方形枠状部22内を充填する方形状にして方形状部にしている。左側の部分26と右側の部分26は、T形状部23の中央板の左側と右側でそれぞれT形状部23の背面板と方形枠状部22の後側板27の間を充填する方形状にして方形状部にしている。
【0035】
中間部分の発泡スチロール樹脂の前側部分25、左側部分26、右側部分26と、正面側の複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料の部分22、背面側の複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料の部分23は、相互に接合している。
【0036】
方形枠状部22の後側板27は、薄板にしている。緩衝ブロック21は、正面に衝撃荷重Fを受けると、全体が圧縮変形する上、図11に鎖線28で示すように、後側板27が曲げ変形する。図11の鎖線28は、後側板27の撓み曲線を略示する。後側板27は、中央部分が正面側に変位する。緩衝ブロック21は、全体の圧縮変形と後側板27の曲げ変形で衝撃を吸収する。
また、衝撃荷重Fが大きいと、後側板27は破断する。破断個所は、T形状部23の中央板の前端の左端位置と右端位置、方形枠形状部22の左側板の後端の右端位置と右側板の後端の左端位置になるであろう。緩衝ブロック21は、全体の圧縮変形、後側板27の曲げ変形と破断で衝撃を吸収する。
後側板27は、厚さtや長さが曲げ変形量と破断荷重に関連する。厚さtや長さは、緩衝ブロックの設計特性に応じて増減する。
【0037】
〔緩衝ブロックの製造法〕
第1例におけるのと同様である。
〔緩衝ブロックの材料〕
第1例におけるのと同様である。
【0038】
〔緩衝ブロックの使用例〕
緩衝ブロック21は、第1例における第1使用例、第2使用例、第3使用例と第4使用例と同様に使用される。
【0039】
第6使用例
緩衝ブロック21は、図13(a)に示すように、橋梁において、橋台の胸壁31に取り付ける。緩衝ブロック21は、胸壁31に形成した凹部に容れ、下面を凹部の底面に載せ、背面を凹部の壁面に重ねて密接する。緩衝ブロック21の正面は、胸壁31の壁面から突出し、橋桁32の端面に対面する。
地震で橋桁32の端が橋台の胸壁31側に突進し、橋桁32の端面が緩衝ブロック21の正面に衝突すると、図13(b)に示すように、緩衝ブロック21は、正面に衝撃荷重を受け、圧縮される。
なお、胸壁31に取り付けた緩衝ブロック21は、衝撃荷重を受けた後も、上方位置を通過する自動車の荷重を受け止めることができる。
【0040】
第7使用例
緩衝ブロック21は、図14(a)に示すように、橋桁32の端に取り付ける。緩衝ブロック21は、橋桁32の端に形成した凹部に容れ、下面を凹部の底面に載せ、背面を凹部の壁面に重ねて密接する。緩衝ブロック21の正面は、橋桁32の端面と同一面にし、橋台の胸壁31に形成した凸部に対面する。
地震で橋桁32の端が橋台の胸壁31側に突進し、緩衝ブロック21の正面が胸壁31の凸部に衝突すると、図14(b)に示すように、緩衝ブロック21は、正面に衝撃荷重を受け、圧縮される。
なお、橋桁32に取り付けた緩衝ブロック21は、衝撃荷重を受けた後も、上方位置を通過する自動車の荷重を受け止めることができる。
【0041】
[第3例(図15、図16参照)]
本例は、図15と図16に示すように、第2例の緩衝ブロック21に、衝撃荷重による圧縮変形後の復元量を増加させるバネ36を組み込んでいる。
【0042】
バネ36は、鋼線のコイルバネにしている。コイルバネ36は、緩衝ブロック21の正面から見て左右上下の4個所にそれぞれ前後方向に沿って配置している。各コイルバネ36は、正面側部分の方形枠状部22の前側板と背面側部分のT形状部23の背面板の間に嵌め込んでいる。そして、方形枠状部22の後側板27に貫通した孔、中間部分の前側の方形状部25に貫通した孔と、中間部分の左側又は右側の方形状部26に貫通した孔を貫通している。
【0043】
緩衝ブロック21は、正面に衝撃荷重を受け、正面側部分の方形枠状部22の前側板が背面側部分のT形状部23の背面板側に変位すると、コイルバネ36は、中間部分25、26と伴に、圧縮される。衝撃荷重がなくなると、コイルバネ36は弾性力で伸長し、中間部分25、26は復元膨張する。方形枠状部22の前側板又は方形枠状部22は、コイルバネ36の復元伸長と中間部分25、26の復元膨張で、前側に押し返される。緩衝ブロック21は、形状が相当量復元する。
その他の点は、第2例におけるのと同様である。第2例におけるのと同様な部分には、図中、第2例におけるのと同一の符号を付ける。
【0044】
[第4例(図17、図18参照)]
〔緩衝ブロックの構成〕
本例は、第2例の緩衝ブロック21の正面側部分22、背面側部分23と中間部分25、26の形状を変更している。
【0045】
本例の緩衝ブロック41は、図17と図18に示すように、直方体にしている。衝撃荷重Fを受ける正面側の部分42と、緩衝ブロック取付対象物Sに接する背面側の部分43は、連結している。中間部分は、中央の部分44、左側の部分45と右側の部分45の3個所に別れている。
【0046】
正面側部分42は、正面板の左右端からそれぞれ傾斜側板46が後方内側寄りに突出する形状にしている。正面板の前面は、緩衝ブロック41の正面にしている。背面側部分43は、背面板の左右端からそれぞれ傾斜側板47が前方内側寄りに突出する形状にしている。背面板の後面は、緩衝ブロック41の背面にしている。正面板の左右の傾斜側板46は、それぞれ、後端を背面板の左右の傾斜側板47の前端に連結している。
【0047】
中間部分は、中央の部分44を、正面板とその左右の傾斜側板46及び背面板とその左右の傾斜側板47で囲われた部分を充填する内側部、方形の前後方向中央部が括れた括れ状部にしている。左側の部分45と右側の部分45は、正面板の左側傾斜側板46と背面板の左側傾斜側板47の間を充填する外側部、三角形状部と、正面板の右側傾斜側板46と背面板の右側傾斜側板47の間を充填する外側部、三角形状部とにしている。
【0048】
中間部分の発泡スチロール樹脂の中央部分44、左側部分45、右側部分45と、正面側の複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料の部分42、背面側の複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料の部分43は、相互に接合している。
【0049】
正面側部分42の正面板の左右の傾斜側板46と背面側部分43の背面板の左右の傾斜側板47は、薄板にしている。緩衝ブロック41の正面に衝撃荷重Fを受けると、全体が圧縮変形する上、正面板の左側傾斜側板46と背面板の左側傾斜側板47、正面板の右側傾斜側板46と背面板の右側傾斜側板47がそれぞれ曲げ変形する。緩衝ブロック21は、全体の圧縮変形と、正面板の左右の傾斜側板46と背面板の左右の傾斜側板47の曲げ変形で衝撃を吸収する。
【0050】
また、衝撃荷重Fが大きいと、正面板の左右の傾斜側板46、背面板の左右の傾斜側板47は破断する。緩衝ブロック41は、全体の圧縮変形、正面板の左右の傾斜側板46、背面板の左右の傾斜側板47の曲げ変形と破断で衝撃を吸収する。
正面板の左右の傾斜側板46、背面板の左右の傾斜側板47は、厚さ、長さや傾斜角度を緩衝ブロックの設計特性に応じて増減する。
【0051】
〔緩衝ブロックの製造法〕
第1例におけるのと同様である。
〔緩衝ブロックの材料〕
第1例におけるのと同様である。
〔緩衝ブロックの使用例〕
第2例におけるのと同様である。
【0052】
[変形例]
1.実施形態の第1例において、緩衝ブロック1は、無筋であるが、正面側部分2、背面側部分3に鉄筋を埋没する。
2.実施形態の第2例、第3例において、緩衝ブロック21は、鉄筋を埋没しているが、無筋にする。
3.実施形態の第4例において、緩衝ブロック41は、無筋であるが、正面側部分42、背面側部分43に鉄筋を埋没する。
4.実施形態の第4例において、正面板の左右の傾斜側板46、背面板の左右の傾斜側板47は、それぞれ、平面板であるが、曲面板にする。
5.実施形態の第1例において、緩衝ブロック1は、バネを組み込んでいないが、圧縮変形後の復元量を増加させるバネを、正面側部分2と背面側部分3の間に組み込む。
6.実施形態の第4例において、緩衝ブロック41は、バネを組み込んでいないが、圧縮変形後の復元量を増加させるバネを、正面側部分42の正面板と背面側部分43の背面板の間に組み込む。
【符号の説明】
【0053】
F 衝撃荷重
S 緩衝ブロック取付対象物
1 緩衝ブロック
2 正面側部分、板状部、繊維補強セメント複合材料、複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料
3 背面側部分、板状部、繊維補強セメント複合材料、複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料
4 中間部分、板状部、独立気泡含有材料、発泡合成樹脂体、発泡スチロール樹脂体
5 緩衝ブロック成形用の型枠
11 自動車道路の分岐用構造物
12 自動車、車両
13 自動車道路の島式料金所の壁状構造物
14 車道両側の壁状構造物
15 道路の落石避け用屋根状構造物
16 橋梁の橋脚
21 緩衝ブロック
22 正面側部分、方形枠状部
23 背面側部分、T形状部
24 鉄筋
25、26 中間部分、
25 前側部分、方形状部
26 左側部分、右側部分、方形状部
27 方形枠状部の後側板
28 鎖線、後側板の撓み曲線
t 後側板の厚さ
31 橋梁の橋台の胸壁
32 橋梁の橋桁
36 バネ、コイルバネ
41 緩衝ブロック
42 正面側部分
43 背面側部分
44、45 中間部分
44 中央部分、内側部、括れ状部
45 左側部分、右側部分、外側部、三角形状部
46 正面板の左右の傾斜側板
47 背面板の左右の傾斜側板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の構造物や橋梁に用いる緩衝ブロックであり、
衝撃荷重を受ける正面側部分と、緩衝ブロック取付対象物に接する背面側部分は、それぞれ、繊維補強セメント複合材料で構成し、それらの間の中間部分を、独立気泡を無数に含み空隙率が50%以上である独立気泡含有材料で構成し、
緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受けると、正面側部分、背面側部分と中間部分が圧縮変形する構成にしたことを特徴とする。
【請求項2】
道路の構造物や橋梁に用いる緩衝ブロックであり、
衝撃荷重を受ける正面側部分と、緩衝ブロック取付対象物に接する背面側部分は、それぞれ、繊維補強セメント複合材料で構成し、それらの間の中間部分を発泡合成樹脂で構成し、
緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受けると、正面側部分、背面側部分と中間部分が圧縮変形する構成にしたことを特徴とする。
【請求項3】
繊維補強セメント複合材料は、複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料にし、
発泡合成樹脂は、発泡スチロール樹脂にしたことを特徴とする請求項2に記載の緩衝ブロック。
【請求項4】
正面側部分、背面側部分と中間部分は、それぞれ、板状の形状にして板状部にし、正面側部分の板状部と中間部分の板状部及び背面側部分の板状部を積層したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝ブロック。
【請求項5】
正面側部分は、方形枠状の形状にして方形枠状部にし、方形枠状部の前側板の前面を緩衝ブロックの正面にし、
背面側部分は、背面板と中央板をT形状に連結してT形状部にし、T形状部の背面板の後面を緩衝ブロックの背面にし、
T形状部の背面板の前面の中央位置から前側に突出した中央板は、前端を方形枠形状部の後側板の後面の中央位置に連結し、
中間部分は、T形状部の中央板の左側と右側でそれぞれT形状部の背面板と方形枠状部の後側板の間を充填する方形状にして方形状部にし、また、方形枠状部内を充填する方形状にして方形状部にし、
緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受けると、方形枠状部の後側板が曲げ変形する、又は、曲げ変形して破断する構成にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝ブロック。
【請求項6】
正面側部分は、正面板の左右端からそれぞれ傾斜側板が後方内側寄りに突出する形状にし、正面板の前面を緩衝ブロックの正面にし、
背面側部分は、背面板の左右端からそれぞれ傾斜側板が前方内側寄りに突出する形状にし、背面板の後面を緩衝ブロックの背面にし、
正面板の左右の傾斜側板は、それぞれ、後端を背面板の左右の傾斜側板の前端に連結し、
中間部分は、正面板とその左右の傾斜側板及び背面板とその左右の傾斜側板で囲われた部分を充填する内側部と、正面板の左側傾斜側板と背面板の左側傾斜側板の間、正面板の右側傾斜側板と背面板の右側傾斜側板の間をそれぞれ充填する外側部にし、
緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受けると、正面板の左側傾斜側板と背面板の左側傾斜側板、正面板の右側傾斜側板と背面板の右側傾斜側板がそれぞれ曲げ変形する、又は、曲げ変形して破断する構成にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝ブロック。
【請求項7】
圧縮変形後の復元量を増加させるバネを設け、
バネは、正面側部分と背面側部分の間に嵌め込み、中間部分を貫通し、
緩衝ブロックの正面に衝撃荷重を受け、正面側部分が背面側部分側に変位すると、バネは中間部分と伴に圧縮され、また、衝撃荷重がなくなると、バネは弾性力で伸長し、中間部分は復元膨張し、正面側部分は、バネの復元伸長と中間部分の復元膨張で、前側に押し返される構成にしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の緩衝ブロック。
【請求項8】
請求項1〜の7いずれかに記載の緩衝ブロックを製造する方法であり、
緩衝ブロックの中間部分となる独立気泡含有材料体を形成し、
独立気泡含有材料体を、緩衝ブロック成形用の型枠に容れて型枠内の緩衝ブロック中間部分となる空間に配置し、
型枠内の緩衝ブロック正面側部分となる空間と背面側部分となる空間に、繊維補強セメント複合材料となる生コンクリートを投入して充填し、
型枠内のコンクリートが硬化すると、脱型することを特徴とする緩衝ブロックの製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−26085(P2012−26085A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162613(P2010−162613)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者: 社団法人日本コンクリート工学協会 刊行物名:「コンクリート工学年次論文集」第32巻(CD−ROM版)2号 発行日: 平成22年6月15日
【出願人】(592086880)丸栄コンクリート工業株式会社 (22)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】