説明

繊維強化プラスチックの製造方法

【課題】RTMまたはVaRTM法において、特に厚みが10mm以上である厚い部材に、油圧プレスなどの大型のプレス装置を使用することなく、型の簡易化および加圧装置を小型化することで、より低圧力で樹脂を未含浸なく含浸させるとともにボイドの発生を抑制する。
【解決手段】成形型内に強化繊維基材からなる積層体を配置し、該積層体の両面に樹脂注入口から延在する前記強化繊維基材よりも樹脂流動抵抗が低い樹脂拡散媒体を配置するとともに、樹脂吸引口から延在する樹脂吸引媒体を前記積層体に接触するように配置し、前記成形型内を該樹脂吸引媒体を介して真空吸引することにより減圧した後、該成形型内に前記樹脂拡散媒体を介して樹脂を注入し、前記積層体に樹脂を含浸させる繊維強化プラスチックの製造方法において、樹脂吸引媒体は、実質的に樹脂注入口と反対側に位置する該積層体の厚みによって形成される側壁に沿って接触するように配置することを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック(以下、FRP(Fiber Reinforced Plasticの略)と略称することもある。)の製造方法に関し、特に厚みが10mmから数十mmの厚いFRP成形品を簡易に成形できる繊維強化プラスチックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチックの製造方法には、強化繊維基材に予め樹脂を含浸させたプリプレグを、オートクレーブにより加熱および加圧して成形するオートクレーブ成形法や樹脂の含浸していない強化繊維基材を上型と下型で形成される空隙に配置し、油圧プレスなどを用いて型を加圧した状態にて、該空隙に加圧した樹脂を注入した後、加熱硬化して成形するRTM(Resin Transfer Molding)法が挙げられる。
【0003】
また、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法は、上型の代わりに、バギングフィルムを利用し、バギングフィルムで密閉した内部を真空吸引することにより減圧し、大気圧との差圧を利用して、樹脂を強化繊維基材に注入した後、加熱硬化して成形する方法であり、油圧プレスなどの加圧装置を使用しないため、低コストにて成形可能な成形法として、広く実用化されている。
【0004】
RTM法やVaRTM法における強化繊維基材への樹脂の含浸は、ダルシー則に従うと仮定すれば、樹脂の流速v(m/s)は、強化繊維基材への樹脂の含浸しやすさ(値が大きいほど含浸しやすい)を示す指標であるパーミアビリティーK(m)、樹脂の圧力P(Pa)、樹脂の粘度μ(Pa・s)を用いて、
v=−K・∇P/μ ・・・・・(1)
で表される。
【0005】
つまり樹脂の含浸距離は強化繊維基材のパーミアビリティーK(m)と樹脂の圧力P(Pa)に比例し、樹脂の粘度μ(Pa・s)に反比例する。
【0006】
そのため所定の強化繊維基材(パーミアビリティーK(m)を有する)を用いた厚い部材に樹脂を含浸させるためには、樹脂の注入圧力P(Pa)を高くするかもしくは粘度の低い樹脂を使用する必要があるが、樹脂の粘度を低減することは限界があるため、実質的には樹脂の注入圧力P(Pa)を高くすることが必要となる。
【0007】
樹脂の注入圧力P(Pa)を高くするためには、成形型の空隙に樹脂が注入された場合にも型が開くことなく、所定の空隙を保持することができるように、油圧プレス装置などの加圧装置を用いて、型を加圧プレスする必要がある。
【0008】
一方、VaRTM法は大気圧を利用するため、加圧装置は必要ないが、樹脂の注入圧力は大気圧に制限されるため、含浸厚みに限界がある課題があった(特許文献1)。この課題を解決する手段として、積層体の両面に樹脂拡散媒体もしくは樹脂通路を設け、樹脂を両面から含浸させることにより、含浸できる厚みを増加する方法が提案されている(特許文献2、3)。
【0009】
しかしながら、特許文献2、3はともに、樹脂拡散媒体もしくは樹脂通路から注入された樹脂が強化繊維基材に含浸する前にショートパスして真空吸引口から排出されることを防止する方法は記載されておらず、樹脂が強化繊維基材に含浸する前に真空吸引口から排出されることにより、未含浸が生じる懸念があった。
【0010】
また、特許文献2、3はともに、積層体の両面から含浸してくる樹脂の間にボイドが閉じ込められることを防止する方法は記載されていないため、成形した繊維強化プラスチックの中にボイドが生じる懸念があった。
【0011】
特許文献4には、真空RTM成形法において、樹脂の吸引口へのショートパスの形成を防止して、樹脂の未含浸部の発生を無くすことに関するFRPの成形方法に関する記載はあるものの、積層体の片面側からの樹脂の注入に関する記載しかなく、本発明で開示しているような厚板への含浸を可能とするための積層体の両面からの樹脂注入、含浸に関する記載はなく、ショートパスによる樹脂の未含浸はないものの、厚板への含浸ができずに未含浸が発生する懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−176163号公報
【特許文献2】特開2004−188965号公報
【特許文献3】特開2008−179149号公報
【特許文献4】特許第4432563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明においては、RTMまたはVaRTM法において、特に厚みが10mm以上である厚い部材に樹脂を未含浸なく含浸させるとともにボイドの発生を抑制することを課題とする。
【0014】
特にVaRTM法において、油圧プレスなどの大型のプレス装置を使用することなく、厚い部材に樹脂を未含浸なく含浸させるとともにボイドの発生を抑制することにより、従来の両面型と油圧プレスなどの加圧装置を使用したRTM法に対して、設備費用を大幅に低減し、極力安価に成形できることを課題とする。
【0015】
また、RTM法のように、両面型および油圧プレスなどの加圧装置を使用する場合であっても、より低圧力で厚い部材に樹脂を未含浸なく含浸させることにより、型の簡易化および加圧装置の小型化により、上記同様に設備費用を低減し、安価に成形できることを課題とする。
【0016】
従来技術である積層体の両面に樹脂拡散媒体を配置し、樹脂を両面から含浸する方法は、厚い部材に樹脂を含浸させる効果的な方法ではあるものの、従来の両面含浸方法は樹脂の真空吸引口へのショートパスを防ぐ対策がなされていないため、樹脂は流路抵抗の大きい強化繊維基材の厚み方向への含浸よりも先に、流路抵抗の低い真空吸引口へショートパスしてしまい、積層体中に樹脂の未含浸部分が形成されてしまう懸念があった。また樹脂を積層体の両側から含浸できるようにしたとしても、樹脂と樹脂との間にボイドが閉じ込められ、成形した強化繊維プラスチックの中にボイドが生じる懸念があった。
【0017】
そのため、本発明は樹脂流路が真空吸引口へのショートパスを形成しないようにすることにより、樹脂を厚い部材へ未含浸なく含浸させるとともに、ボイドを形成させない樹脂注入および含浸方法を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を達成するために、本発明の繊維強化プラスチックの製造方法は、成形型内に強化繊維基材からなる積層体を配置し、該積層体の両面に、樹脂注入口から延在し、前記強化繊維基材よりも樹脂流動抵抗が低い樹脂拡散媒体を配置するとともに、樹脂吸引口から延在する樹脂吸引媒体を前記積層体に接触するように配置し、該樹脂吸引媒体を介して前記成形型内を真空吸引することにより減圧した後、該成形型内に前記樹脂拡散媒体を介して樹脂を注入し、前記積層体に樹脂を含浸させる繊維強化プラスチックの製造方法において、樹脂吸引媒体は、実質的に樹脂注入口と反対側に位置する該積層体の厚みによって形成される側壁に沿って接触するように配置して、樹脂を当該積層体の両面から注入、含浸させるものである。このように積層体の両面から樹脂を含浸させる方法により、一方の面のみから樹脂を注入、含浸する方法に比べて、樹脂の含浸厚みを大幅に向上することができると共に、樹脂吸引媒体を積層体の厚みの側壁に配置することにより、樹脂を積層体の樹脂注入口側から樹脂吸引口側に向かって厚み方向に含浸させた後、積層体の厚み方向に含浸した樹脂を樹脂吸引媒体から吸引することが可能となり、樹脂のショートパスの形成による未含浸の発生を抑制することができる。
【0019】
さらに樹脂吸引媒体は積層体の側壁に沿って配置するため、樹脂を硬化後に樹脂吸引媒体は成形した繊維強化プラスチックから容易に剥離して、除去することができる。
【0020】
樹脂吸引媒体を積層体の厚みによって形成される側壁に沿って接触するように配置し、この樹脂吸引媒体を介して前記成形型内を真空吸引することにより、積層体の層間方向に真空吸引することが可能となる。樹脂拡散媒体に樹脂を注入、拡散させると、樹脂の含浸に伴って当該厚み方向に樹脂の有無による差圧を生じさせることができるため、樹脂を厚み方向に制御して注入、含浸することができる。これにより、樹脂の真空吸引口へのショートパスの形成を大幅に抑制し、樹脂を厚い部材に未含浸なく含浸させることが可能となる。
【0021】
ここで樹脂拡散媒体および樹脂吸引媒体は、樹脂を効率よく拡散、吸引できる材料であれば特に限定するものではなく、成形に使用する強化繊維基材、樹脂や成形条件により、適切に選定することができる。例えば、形態はメッシュ、パンチング、不織布などが挙げられ、特に網目の一辺の長さが2〜10mm程度のメッシュは樹脂の拡散、吸引の能力に優れるため好ましい。2mmよりも小さいと樹脂の拡散、吸引能力が小さくなる傾向にあり、10mmよりも大きいと、樹脂拡散媒体の上に配置するバギングフィルムなどが当該網目の空隙内部に入り込み、空隙を減少させやすくなるおそれがある。
【0022】
樹脂拡散媒体および樹脂吸引媒体の材質はナイロン、ポリエステルなどの樹脂、ステンレスなどの金属を好適に使用することが可能であり、注入する樹脂に対する耐性、成形温度の耐熱性、成形に要する圧力に対する耐圧性を有していれば特に限定するものではない。
【0023】
厚みは0.5〜2mmが好ましい。0.5mmよりも小さいと樹脂の拡散、吸引能力が小さくなる傾向にあり、2mmよりも大きいと樹脂拡散媒体中に保持される樹脂の量が多くなり、樹脂の収率が低下するおそれがある。
【0024】
バギングフィルムの材質はナイロン、ポリエステルなどの樹脂であり、厚みが50〜100μm程度のものを好適に用いることができ、注入する樹脂に対する耐性、成形温度の耐熱性、成形にようする圧力に対する耐圧性を有していれば特に限定するものではない。
【0025】
さらに積層体の厚みによって形成される側壁に沿って接触するように配置される前記樹脂吸引媒体は、前記積層体の両面から積層体内に含浸した樹脂が合流する層間を含むように実質的に積層体の全長にわたり配置(図3で示すX部分)することにより、積層体の両面に配置した樹脂拡散媒体から注入された樹脂が積層体の両面から厚み方向に含浸し、樹脂が合流して、厚み方向への樹脂の含浸が完了した後、樹脂吸引媒体により吸引することができるため、より未含浸の発生を抑制して、樹脂の含浸厚みを向上することができるため好ましい。
【0026】
積層体が同一材料から構成されており、且つ積層体が対称積層構成である場合、積層体の両面から樹脂を注入、含浸した場合、樹脂は積層体の両表面から厚み中心方向に向かって含浸が進み、厚みの中心にて合流すると考えられる。よって、特に積層体が同一材料から構成されている場合には、樹脂吸引媒体は、積層体の厚み中央部を含むように配置することにより、積層体の両面に配置した樹脂拡散媒体から注入された樹脂が積層体の両面から厚み方向に含浸し、樹脂が合流して、厚み方向への樹脂の含浸が完了した後、樹脂吸引媒体により吸引することができるため、より未含浸の発生を抑制して、樹脂の含浸厚みを向上することができるため好ましい。
【0027】
ここで、樹脂吸引媒体と積層体の厚みによって形成される側壁との間に、積層体中央部に隙間を持つ封止固定材が積層体の厚みによって形成される側壁に沿って配置され、この封止固定材を介して樹脂吸引媒体が固定されていることが好ましい。また、封止固定材のショアA硬さはHS50以下であることが好ましい。このように、ショアA硬さが低ければ、封止固定材と積層体の間が十分に気密され、樹脂のショートパスを抑制することができる。
【0028】
封止固定材は、積層体の高さ中央部に沿って、高さが0.1〜5mmのスリット状の樹脂吸引口が開けられていることが好ましい。また、前記封止固定材の樹脂吸引口の幅は、0.1〜50mmであることが好ましい。これにより、樹脂吸引口の変形量は小さくできる。前記封止固定材の高さは、樹脂吸引口以外の積層体の側壁から樹脂が流出させなくする点や、封止固定材と積層体の側壁が接触する長さを最大限にさせる点からも、積層体の厚みと実質的に同じ長さであることが好ましい。これは、封止固定材と積層体の側壁との間は隙間無く密封しているものの、完全密封ではないため、部分的に回りこんだ樹脂が封止固定材と積層体の側壁との間から徐々に吸引口側に進んでいくことを防止するためである。
【0029】
より好ましくは、前記封止固定材は樹脂と離型性が良いシリコーンゴムが好ましい。これにより、真空吸引した際にシール材の変形量が抑えられ、樹脂流路の位置精度が向上し、より未含浸の発生を抑制して、樹脂の含浸厚みを向上することができる。
【0030】
また、樹脂拡散媒体が配置される積層体の面上において、前記樹脂吸引媒体が配置されている側壁との間に樹脂拡散媒体の配置されていない隙間(図3で示すY部分)を有することが好ましい。このような隙間を設けることにより、樹脂は、樹脂拡散媒体を配置した箇所における積層体の厚み方向に含浸しながら、樹脂拡散媒体の無い箇所へも徐々に樹脂は面内方向への拡散が進む。さらに、樹脂拡散媒体の無い箇所における積層体内部にまで樹脂が含浸してはじめて、樹脂吸引媒体7から吸引される。そのため、当該隙間の長さYを調整することにより、注入した樹脂が樹脂吸引媒体から吸引されるまでの時間を調整することができる。
【0031】
より具体的には、樹脂拡散媒体を配置した箇所における積層体の厚み方向に樹脂が含浸完了したとしても、隙間Yの部分に樹脂が含浸されていなければ、すぐには樹脂吸引媒体7から吸引されない。特に、樹脂注入、含浸中に想定外の未含浸部が発生した場合であっても、上記隙間Yにより、樹脂が吸引されるまでに十分な時間を確保できるため、樹脂は該未含浸部を含浸した後、樹脂吸引媒体から樹脂を吸引することができる。
【0032】
樹脂拡散媒体が配置される積層体の面上において、前記樹脂吸引媒体が配置されている側壁との間に樹脂拡散媒体の配置されていない隙間(図3で示すY部分)の長さは、1〜30mmが好ましい。1mmよりも短いと上記の効果がほとんど期待できない。一方、30mmよりも長いと当該隙間部分が未含浸となる懸念が生じる。また、この隙間の長さは、積層体の幅方向(図1乃至図7の断面図において紙面と略垂直方向)にわたってほぼ一定幅に設けられていることが好ましい。
【0033】
さらに樹脂吸引媒体は積層体の厚みによって形成される側壁に沿って接触し、積層体から吸引する箇所以外の箇所を気密材料で覆うことが好ましい。樹脂吸引媒体の一部に気密材料を配置することにより、想定に反して樹脂拡散媒体から拡散してきた樹脂が真空吸引口につながる樹脂吸引媒体に到達したとしても、気密材料が樹脂の樹脂吸引媒体への吸引を抑止し、ショートパスの形成を抑止することができる。
【0034】
気密材料はバギングフィルムと同じ材料を用いることが可能であるが、特に限定されるものではない。
【0035】
このような抑止をより確実にするためには、気密材料は樹脂吸引媒体の両面に配置することが更に好ましい。樹脂吸引媒体の両面に気密材料を配置することにより、積層体の両面に配置された樹脂拡散媒体から拡散される樹脂の、樹脂吸引媒体へのショートパス形成を抑止することができる。
【0036】
これにより、樹脂は樹脂拡散媒体から積層体の厚み方向に含浸した後にのみ樹脂吸引媒体から吸引されるため、樹脂の注入条件における最大の含浸性が発現される。
【0037】
樹脂拡散媒体の樹脂流動抵抗は低いほうが好ましく、より好ましくは強化繊維基材の樹脂流動抵抗の1/10以下であることが好ましい。このように流動抵抗が低ければ、樹脂拡散媒体に注入された樹脂の強化繊維基材の面方向への拡散性が十分に確保され、樹脂拡散媒体中に注入された樹脂は、強化繊維基材表面に沿う方向に迅速に拡散されつつ、強化繊維基材の厚み方向にも迅速に含浸されていくことになる。
【0038】
一方、樹脂吸引媒体の樹脂流動抵抗は強化繊維基材の樹脂流動抵抗の1/3以下であることが好ましい。樹脂拡散媒体や樹脂吸引媒体といった樹脂流動媒体は、強化繊維基材の通気抵抗に比べて十分に低ければ、積層体内部の真空度が下がることを抑制することができるため、厚い積層体に対しても樹脂含浸性を損なうことがないため好ましい。
【0039】
樹脂吸引媒体は、成形後に繊維強化プラスチックから取り除くことが好ましい。樹脂拡散媒体は多くの場合、繊維強化プラスチックとして用いられる部材ではないために取り除かれる。樹脂吸引媒体においても、積層体との間に剥離用のピールプライなどを介して積層体の厚みによって形成される側壁に沿って接触するように配置することにより、成形後に容易に剥がして、取り除くことができる。そのため、切断などの後加工が不要であり、製造時間を短縮できる効果が期待できる。そのため、成形体の寸法が大きいほど、本発明の効果も大きくなるため、好ましい。
【0040】
一方、積層体の厚みよって形成される側壁にそって接触するように配置される樹脂吸引媒体の先端の一部が積層体の層間に挿入されていることが好ましい。
【0041】
樹脂吸引媒体の先端を層間に挿入するように配置し、前記成形型内を樹脂吸引媒体を介して真空吸引することにより、樹脂拡散媒体を介して、積層体の厚み方向に直接的に真空吸引することが可能となり、樹脂拡散媒体に樹脂を注入、拡散させた際には、当該厚み方向に樹脂の差圧を生じさせることができるため、樹脂を厚み方向に制御して注入、含浸することができる。これにより、樹脂の真空吸引口へのショートパスの形成を大幅に抑制し、樹脂を厚い部材に未含浸なく含浸させることが可能となる。
【0042】
ただし、本発明は、樹脂吸引媒体の先端を積層体の層間に挿入した状態で樹脂を硬化して成形するため、成形後の繊維強化プラスチックの内部に樹脂吸引媒体が残ってしまうものの、樹脂拡散媒体が繊維強化プラスチックの内部に残っても問題ない場合、もしくは成形後に切断加工などにより樹脂拡散媒体を除去する場合には適用することができる。

また本発明は、積層体が実質的に強化繊維が一方向にのみ配列している場合に、顕著な効果が期待できるため好ましい。強化繊維が一方向にのみ配列している積層体は、強化繊維が異なる角度に積層された積層体(例;厚み方向に積層した4層が対称となる8層の積層体:[45°/0°/−45°/90°]など)に比べて、強化繊維をより密に配列することができるものの、トレードオフの関係で樹脂の含浸性は低下する傾向にある。このため、従来は樹脂を含浸できる厚みが大幅に制限されていた。これに対し、本発明による成形方法を用いれば、強化繊維が一方向に配列した積層体であっても、未含浸部分を発生させることなく本発明による効率よい樹脂含浸の効果をより顕著に発現できるため、好ましい。
【発明の効果】
【0043】
上記説明したように、本発明の繊維強化プラスチックの製造方法によれば、特に厚みが10mm以上である厚い部材に樹脂を未含浸なく含浸させるとともにボイドの発生を抑制することができる。
【0044】
特にVaRTM法において、油圧プレスなどの大型のプレス装置を使用することなく、厚い部材に樹脂を未含浸なく含浸させるとともにボイドの発生を抑制することにより、従来の両面型と油圧プレスなどの加圧装置を使用したRTM法に対して、設備費用を大幅に低減し、極力安価に成形できることが可能となる。
【0045】
また、RTM法のように、両面型および油圧プレスなどの加圧装置を使用する場合であっても、より低圧力で厚い部材に樹脂を未含浸なく含浸させることにより、型の簡易化および加圧装置の小型化により、上記同様に設備費用を低減し、安価に成形できる。
本発明は樹脂流路が真空吸引口へのショートパスを形成しないようにすることにより、樹脂を厚い部材へ未含浸なく、含浸させることができるとともに、ボイドの形成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来技術における繊維強化プラスチックのRTM成形の断面模式図を示した図である。
【図2】図1において、樹脂が積層体に注入、含浸される様子を模式的に示した図である。
【図3】本発明における繊維強化プラスチックのRTM成形の断面模式図を示した図である。
【図4】図3において、樹脂が積層体に注入、含浸される様子を模式的に示した図である。
【図5】本発明における繊維強化プラスチックのRTM成形のうち、別の実施態様における断面模式図を示した図である。
【図6】図5において、樹脂が積層体に注入、含浸される様子を模式的に示した図である。
【図7】本発明における繊維強化プラスチックのRTM成形のうち、別の実施態様における断面模式図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0048】
図1は、従来技術の繊維強化プラスチックのRTM成形仕様の断面の模式図を示す。
【0049】
図1では、成形型1の上に樹脂注入口2に繋がる樹脂拡散媒体(裏)3を配置し、その上に積層体4を配置する。さらに積層体4の上に樹脂拡散媒体(表)5を配置し、バギングフィルム8で密閉した内部を真空吸引により減圧するために、真空吸引口6に繋がる樹脂吸引媒体7を配置する。バギングフィルム8で全体を覆い、シール材9で成形型1との間を密閉する。バギングフィルム8を成形型の上型とすれば、バギングフィルム8と成形型1で形成される成形型内部を、真空吸引口6から真空ポンプなどにより、真空吸引することにより、減圧し、樹脂注入口2から樹脂を注入する。
【0050】
図2に従来技術のRTM成形仕様において、樹脂が積層体に注入、含浸される様子を示す。
【0051】
注入された樹脂は、樹脂拡散媒体(裏)3と樹脂拡散媒体(表)5が配置されている箇所において、矢印10のように、樹脂拡散媒体(裏)3、樹脂拡散媒体(表)5の中を拡散した後、積層体4の厚み方向(矢印11、13)に含浸する。樹脂拡散媒体(裏)3、樹脂拡散媒体(表)5が配置されていない箇所に樹脂が積層体4に含浸しようとすると、樹脂拡散媒体による樹脂の供給がないため、積層体4に含浸された樹脂のみによる強化繊維基材の面内方向への含浸(矢印14)が必要である。
【0052】
しかしながら、樹脂吸引媒体7が積層体の層間、あるいは側壁に接触させるように配置されていないため、矢印15で示されるようなショートパスによる樹脂の流路の方が、矢印14の流路よりも、短時間で樹脂吸引媒体7に到達する。すなわち、樹脂が樹脂拡散媒体(裏)3、樹脂拡散媒体(表)5を配置していない箇所の厚み方向にわたって含浸完了するよりも先に、樹脂はショートパスを経由して樹脂吸引媒体7に吸引されることにより、積層体4内に未含浸箇所が生じてしまう懸念があった。
【0053】
図3は、本発明の一実施態様に係る繊維強化プラスチックのRTM成形仕様の断面模式図を示す。なお、図1で用いられる部材と同じ部材には、共通の符号を付してある。
【0054】
本発明は、成形型1の上に樹脂注入口2に繋がる樹脂拡散媒体(裏)3を配置し、その上に積層体4を配置する。さらに積層体4の上に樹脂拡散媒体(表)5を配置するとともに、樹脂吸引媒体7は、樹脂注入口2と反対側に位置する積層体4の厚みによって形成される側壁に沿って接触するように配置する。
【0055】
樹脂吸引媒体7の他端には真空吸引口6を配置し、バギングフィルム8で全体を覆い、シール材9でバギングフィルム8と成形型1との間を密閉し、真空吸引口6から図示しない真空ポンプなどを利用して、バギングフィルム8で密閉した内部を真空吸引して減圧する。
【0056】
ここで、樹脂吸引媒体7は、積層体4の厚み中央部を含むように、積層体の厚みによって形成される側壁の全長に渡り配置されている。さらに、樹脂吸引媒体7は、積層体の厚みによって形成される側壁の中央部の吸引箇所(図3に示すX部分)の上下に封止固定材16を配置して、吸引箇所以外の両面を気密材料17により覆っている。
【0057】
封止固定材16は、粘着性のテープやシーラントのような弾性体のシールを利用して良いが、真空吸引後の形状の安定性を高めるためや、成形後の離型性を考慮してシリコーンゴムを使用することが好ましい。
【0058】
ここで、封止固定材16は樹脂吸引媒体7と積層体4の厚みによって形成される側壁との間に、積層体の厚み中央部を含まないように配置され、高さ中央部に沿って高さが0.1〜5mmのスリット状の樹脂吸引口が開けられ、幅は、0.1〜50mmで高さは積層体の厚みと同じ長さであることが好ましい。
【0059】
この状態において、樹脂注入口2から樹脂を注入すると、図4に示すように、樹脂は、矢印10、12のように、樹脂拡散媒体(裏)3と樹脂拡散媒体(表)5に拡散しながら、矢印11、13のように積層体の厚み方向にも含浸しはじめる。本発明においては、樹脂吸引媒体7が積層体の厚みによって形成される側壁の中央部に配置されているため、樹脂拡散媒体3,5を通じて厚み方向に含浸した樹脂は樹脂吸引媒体7の吸引により、矢印14の方向(面内方向)に含浸が進み、樹脂拡散媒体3,5の配置されていない箇所にも樹脂を含浸することができ、未含浸部の発生を大幅に抑制することができる。
【0060】
積層体を構成している強化繊維基材が同一であり、積層構成が厚み方向に対して対称であれば、積層体の厚み方向に含浸した樹脂の合流(矢印11,13の合流)は厚み中央となるため、樹脂吸引媒体7の配置は積層体の厚み中央とすることが好ましい。
【0061】
一方、例えば強化繊維の種類、目付け、織組織が異なるなどの複数の種類の強化繊維基材を用いて積層体が構成されており、積層構成が厚み方向に対して対称ではない場合は、樹脂の厚み方向への含浸速度は、積層体を構成する各強化繊維基材の含浸性に依存するため、必ずしも同じとはならず、結果として、積層体に含浸した樹脂の合流する箇所は、必ずしも積層体の厚み中央になるとは限らない。
【0062】
そのため、このような非対称の場合には、樹脂吸引媒体7は含浸試験などにより、樹脂の含浸が合流する箇所を予め確認する、もしくは含浸計算またはFEM(Finite Element Method)を利用した含浸シミュレーションなどの解析結果をもとに見積もった樹脂の合流箇所を確認して、樹脂の合流する層間を包含するように配置することが好ましい。
【0063】
さらに、樹脂吸引媒体7は、積層体の吸引箇所以外を気密材料17で覆っているため、樹脂拡散媒体3,5から注入された樹脂が積層体4に含浸せずに樹脂吸引媒体7に吸引されてしまうショートパス(矢印15)の形成を抑制することができ、未含浸箇所の発生を大幅に抑制することができる。
【0064】
また図3では、前述したように、樹脂拡散媒体を配置した箇所における積層体の厚み方向に樹脂が含浸完了したとしても、隙間Yの部分に樹脂が含浸されていなければ、すぐには樹脂吸引媒体7から吸引されない。特に、樹脂注入、含浸中に想定外の未含浸部が発生した場合であっても、上記隙間Yにより、樹脂が吸引されるまでに十分な時間を確保できるため、樹脂は該未含浸部を含浸した後、樹脂吸引媒体から樹脂を吸引することができる。
【0065】
つまり、積層体の内部において、強化繊維基材の厚み方向の含浸性や厚みなどの品質のばらつきにより、樹脂の厚み方向の含浸時間にばらつきが生じ、必ずしも積層体の樹脂注入口2の側から順次含浸が完了していくとは限らない。そのため、積層体の内部に未含浸部を残した状態で、樹脂が樹脂吸引媒体7に到達して、吸引されてしまうことも起こり得る。ここで、当該隙間Yを設けることにより、樹脂は樹脂拡散媒体3,5から積層体の厚み方向に含浸して合流したした後、面内方向に当該隙間Yだけ含浸した後に吸引される。そのため、想定外に樹脂が合流した後に、積層体の内部に未含浸部が発生した場合であっても、樹脂が合流した後に樹脂吸引媒体7に到達するまでの時間を利用して、未含浸部の含浸を完了することができる。
【0066】
図5は、本発明の別の実施態様に係る、樹脂吸引媒体の先端の一部を積層体の層間に挿入して成形するRTM成形方法の概略断面図である。
【0067】
この状態において、樹脂注入口2から樹脂を注入すると、図6で示すように、樹脂は、矢印10、12のように、樹脂拡散媒体(裏)3と樹脂拡散媒体(表)5に拡散しながら、矢印11、13のように積層体の厚み方向にも含浸しはじめる。本発明においては、樹脂吸引媒体7が積層体の層間に挿入されているため、樹脂拡散媒体3,5を通じて厚み方向に含浸した樹脂は樹脂吸引媒体7により矢印14の方向に含浸が進み、樹脂拡散媒体3,5の配置されていない箇所の積層体にも含浸することができ、未含浸部の発生を大幅に抑制することができる。
【0068】
また、図5では、図3と同様に樹脂拡散媒体(裏)3と樹脂拡散媒体(表)5は共に、樹脂吸引媒体7が配置されている側壁との間に樹脂拡散媒体の配置されていない隙間Yが設けてある。そのため、上記と同様に、樹脂が積層体の製品となる範囲、すなわち樹脂吸引媒体が層間に挿入されていない箇所に完全に含浸するために必要な時間を経た後、樹脂吸引媒体から吸引される。樹脂注入、含浸中に想定外の未含浸が発生した場合でも、隙間Yが設けられていることにより、樹脂が吸引されるまでの十分な時間が確保できるため、この時間で樹脂は未含浸部をも含浸完了した後、樹脂吸引媒体から吸引される。
【0069】
さらに、樹脂吸引媒体7は積層体の吸引箇所以外を気密材料17で覆っているため、樹脂拡散媒体3,5から注入された樹脂が積層体4に含浸せずに樹脂吸引媒体7に吸引されてしまうショートパス(矢印15)の形成を抑制することができる。この気密材料17によっても、樹脂の未含浸箇所の発生を大幅に抑制することができる。
【0070】
気密材料17は、気体の気密を保てる材料であれば特に限定するものではなく、中でもバギングフィルムと同じ材質のものを用いることが好ましい。図5に示すように、気密材料17を樹脂吸引媒体7の上に配置し、真空吸引口6を覆い、シール材9で密着することにより、想定外に樹脂拡散媒体(表)5から拡散した樹脂が、図6に示す矢印15のようなショートパスを形成したとしても、樹脂は樹脂吸引媒体7から直接吸引されない。樹脂は、積層体の厚み方向に含浸した後にはじめて吸引されるため、積層体の含浸性を向上することができる。同様に、気密材料17を樹脂吸引媒体7の下に配置し、シール材で密着することにより、想定外に樹脂拡散媒体(裏)3から拡散した樹脂が矢印15のようにショートパスを形成したとしても、樹脂は樹脂吸引媒体7から直接吸引されない。樹脂は、積層体の厚み方向に含浸した後にはじめて吸引されるため、積層体の含浸性を向上することができる。
【0071】
図5に示す方法は、樹脂硬化後に樹脂吸引媒体7の一部が硬化した積層体の内部に残ってしまうため、積層体全体を繊維強化プラスチックとしては使用できないものの、図3に示す方法よりも、簡単に樹脂吸引媒体7を配置することができるため、製造サイクルタイムを短縮できる等において好ましい態様である。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
東レ社製炭素繊維(T620SC−24000)を一方向に配列し、炭素繊維の目付けが600g/mである炭素繊維基材を使用した。
【0073】
上記の炭素繊維基材を一方向に引き揃えて50枚を積層した積層体を準備した。
【0074】
上記の積層体を図5に示すように、成形型1の上に配置した。
【0075】
樹脂拡散媒体(表)5および樹脂拡散媒体(裏)3、樹脂吸引媒体7は、すべて同一のポリプロピレン製のメッシュであり、各空隙の形状は一辺が2.5mm、厚みが約0.6mmのものを使用した。
【0076】
樹脂拡散媒体(裏)3と樹脂拡散媒体(表)5は、図3に記載の隙間Yが共に10mmとなるように配置した。
【0077】
樹脂吸引媒体7は、図3に示すように、積層体4の厚みが形成する側壁の厚み方向の中央箇所と接触するように、積層体の厚みが形成する側壁の全長に渡って配置した。樹脂吸引媒体7の上下に封止固定材16を配置し、積層体4の厚みが形成する側壁に直接接触する部分Xが5mmとなるように配置した。また、図3に示すように、気密材料17を樹脂吸引媒体7の両面に配置して、成形型1との間でシール材9を用いて密閉した。ここで気密材料17は、厚み約50μmのナイロン製バギングフィルムを使用した。
【0078】
さらに樹脂注入口2、真空吸引口6として、幅、高さ15mmのアルミ製チャンネルを使用して、図3に示すように、樹脂注入口2を樹脂拡散媒体(表)5および樹脂拡散媒体(裏)3の上に配置し、真空吸引口6を樹脂吸引媒体7の上に配置した後、外径12mm、内径9mmのナイロン製チューブ(図示せず)を樹脂注入口2、真空吸引口6に挿入した。
【0079】
さらにその上から、全体をバギングフィルム8で覆い、成形型1との間でシール材9を用いて密閉した。シール材9と封止固定材16は同一のシール材を用いた。
【0080】
樹脂注入口2に挿入したナイロン製チューブを閉じた状態で、真空吸引口6に挿入したナイロン製チューブを真空ポンプ(図示せず)につなげて、バギングフィルム8で密閉した内部を真空吸引することにより減圧した。
【0081】
この状態における積層体4の厚みTは約30mmであった。
【0082】
バギングフィルム8の内部を真空吸引により減圧した状態において、液状のエポキシ樹脂を、大気圧を利用して、樹脂注入口2に挿入してあるナイロン製チューブを通って注入し、樹脂拡散媒体(表)5、樹脂拡散媒体(裏)3を用いて積層体4に拡散、含浸した。
【0083】
エポキシ樹脂は、主剤と硬化剤の2液混合の樹脂であり、樹脂の粘度は初期粘度が約160mPas、60分後に約2倍に増粘する傾向を有するものであった。
【0084】
この結果、積層体4に含浸した樹脂は、注入開始から約20分後に、樹脂吸引媒体7に染み出してくるのが観察された。この樹脂の染み出しにより、樹脂の積層体4への含浸は完了したと判断し、真空吸引口6を閉じて、真空吸引を中止した後、樹脂注入口2を閉じて、樹脂の注入を中止した。
【0085】
樹脂の含浸した積層体4は、樹脂注入口2と真空吸引口6を閉じた状態で、室温にて24時間およびオーブンを用いて60℃にて15時間の加熱を行い、樹脂を硬化した。樹脂の硬化を完了した後、成形体を成形型1から脱型した。
【0086】
成形体を幅方向の中央にて、全長にわたり切断して、切断面を観察した結果、未含浸箇所のないことが確認できた。
【0087】
(実施例2)
樹脂吸引媒体7を図7に記載のように中央部にスリット状の吸引口が開けられた封止固定材16に沿わせて配置した以外は、実施例1と同様にして成形した。
【0088】
成形体を実施例1と同様に切断して、切断面を観察した結果、未含浸箇所のないことが確認できた。
【0089】
(比較例1)
樹脂吸引媒体7を図1に記載のように積層体4の層間に挿入せず、気密材料17も使用しないこと以外は、実施例1と同様にして成形した。
【0090】
成形体を実施例1と同様に切断して、切断面を観察した結果、積層体4の厚み方向の中央から樹脂吸引媒体(裏)に近い側の広範囲に樹脂の未含浸箇所が確認された。
【符号の説明】
【0091】
1 成形型
2 樹脂注入口
3、5 樹脂拡散媒体
4 積層体
6 真空吸引口
7 樹脂吸引媒体
8 バギングフィルム
9 シール材
10、11、12、13、14、15 矢印
16 封止固定材
17 気密材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型内に強化繊維基材からなる積層体を配置し、該積層体の両面に樹脂注入口から延在する前記強化繊維基材よりも樹脂流動抵抗が低い樹脂拡散媒体を配置するとともに、
樹脂吸引口から延在する樹脂吸引媒体を前記積層体に接触するように配置し、前記成形型内を該樹脂吸引媒体を介して真空吸引することにより減圧した後、該成形型内に前記樹脂拡散媒体を介して樹脂を注入し、前記積層体に樹脂を含浸させる繊維強化プラスチックの製造方法において、樹脂吸引媒体は、実質的に樹脂注入口と反対側に位置する該積層体の厚みによって形成される側壁に沿って接触するように配置することを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項2】
積層体の厚みによって形成される側壁に沿って接触するように配置される前記樹脂吸引媒体は、前記積層体の両面から積層体内に含浸した樹脂が合流する層間を含むように配置されることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項3】
積層体の厚みよって形成される側壁に沿って接触するように配置される前記樹脂吸引媒体は、前記積層体の厚み中央部を含むように配置することを特徴とする請求項2に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項4】
樹脂吸引媒体と積層体の厚みによって形成される側壁との間に、封止固定材を介して前記樹脂吸引媒体が固定されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項5】
前記封止固定材は、前記積層体の厚みと実質的に同じ高さを有し、前記積層体の厚み中央部に高さ0.1〜5mm、幅0.1〜50mmの樹脂吸引口を有することを特徴とする請求項4に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂拡散媒体が配置される積層体の面上において、前記樹脂吸引媒体が配置されている側壁との間に樹脂拡散媒体の配置されていない隙間を有することを特徴する請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂吸引媒体は、積層体の厚みによって形成される側壁に沿って接触し、積層体から吸引する箇所以外の箇所を気密材料で覆うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂拡散媒体の樹脂流動抵抗は前記強化繊維基材の樹脂流動抵抗の1/10以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂吸引媒体の樹脂流動抵抗は前記強化繊維基材の樹脂流動抵抗の1/3以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項10】
積層体の厚みによって形成される側壁に沿って接触するように配置される前記樹脂吸引媒体の先端の一部が積層体の層間に挿入されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項11】
樹脂吸引媒体を、成形後の繊維強化プラスチックから取り除くことを特徴とする請求項1〜9に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項12】
樹脂吸引媒体の少なくとも一部を、積層体内に残存させることを特徴とする請求項10に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項13】
前記積層体は、実質的に強化繊維が一方向にのみ配列していることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86547(P2012−86547A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47459(P2011−47459)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】