説明

繊維強化樹脂製中空成形体の製造方法

【課題】 成形体の強度を低下させることなく簡単に実施できるFRP製中空成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】 二つのFRP製部材を互いに封密に結合して中空芯材13を形成する。この中空芯材13は中空芯材の内部と外部とを互いに連通する連通孔14を有している。連通孔14以外の中空芯材13の側面及び底面をプリプレグ17,18で覆い、これらプリプレグ17,18を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維強化樹脂製中空成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可溶性中子の外周面を繊維強化樹脂シートで覆い、この繊維強化樹脂シートにプラスチック材料を適用した後このプラスチック材料を硬化させて成形体を形成し、この成形体に排出孔を穿ち、可溶性中子を溶剤により溶解させて排出孔から排出する、繊維強化樹脂製中空成形体の製造方法が公知である(特許文献1参照)。このようにして製造される中空成形体には例えばフレームやタンクなどが挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−232337号公報
【特許文献2】特開平9−122277号公報
【特許文献3】特開平1−152021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、中子を取り出さなければならないので、製造方法が複雑になるという問題点がある。また、中子を効率的に排出させるためには排出孔を大きくし又は排出孔の数を多くする必要があるので、成形体の強度が低下するおそれもある。
【0005】
そこで本発明は、成形体の強度を低下させることなく簡単に実施できる繊維強化樹脂製中空成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明によれば、複数の繊維強化樹脂製部材を互いに封密に結合して中空芯材を形成し、該中空芯材は該中空芯材の内部と外部とを互いに連通する連通孔を有しており、該連通孔以外の該中空芯材の外面を少なくとも部分的にプリプレグで覆い、該プリプレグを硬化させる、各段階を含んでなる、繊維強化樹脂製中空成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
成形体の強度を低下させることなく簡単に実施できる繊維強化樹脂製中空成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明による繊維強化樹脂(FRP)製中空成形体の製造方法を用いて製造されたFRP製中空フレーム1を示している。この中空フレーム1は平面状に拡がる面盤2上に固定されてその長手方向に延びている。また、図1に示される例では中空フレーム1の頂面に、中空フレーム1の内部と外部とを互いに連通する連通孔3が形成されている。
【0009】
次に、図2から図4を参照しながら、本発明による実施形態の中空フレーム1の製造方法を説明する。
【0010】
まず、例えば二つのFRP製部材11,12が用意され、図2に示されるようにこれらFRP製成形体11,12が互いに封密に結合されて中空芯材13が形成される。
【0011】
図2に示されるFRP製部材11,12はそれぞれカップ状及び平板状をなしている。このように、中空芯材13を単一の部材からではなく複数の部材11,12から形成しているので、中空芯材13を簡単に形成できる。
【0012】
FRP製部材11,12は例えば従来通り、プリプレグを型に入れ、加熱硬化することにより得ることができる。ここで、プリプレグは未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させた強化繊維シートであり、強化繊維にはガラス、アラミド、カーボン等を、熱硬化性樹脂にはエポキシ、ビニルエステル等をそれぞれ用いることができる。
【0013】
FRP製部材11は例えば4層に積層されたプリプレグから形成されるのに対し、FRP製部材12は例えば1層又は2層に積層されたプリプレグから形成される。詳しくは後述するが、このようにFRP製部材12をFRP製部材11よりも薄くしているのは、FRP製部材12に可撓性を付与するためである。
【0014】
FRP製部材11の頂部には、硬化後結合前に、例えば機械加工により直径1mm程度の連通孔14が形成される。この連通孔14は中空芯材13の内部15と外部とを連通する。なお、連通孔14を部材11,12の結合後に形成することも可能である。
【0015】
これらFRP製部材11,12は環状をなすフランジ状結合部16において例えば速硬化型エポキシ接着剤により封密に結合される。このようにフランジ状結合部16を設けることによって、FRP製部材11,12間の正確な位置決めが不要となる。
【0016】
なお、図2から図5まででは、プリプレグが積層された状態が概略的に示してある。
【0017】
次いで、図3に示されるように、中空芯材13の側面が例えば2層のプリプレグ17により覆われ、中空芯材13の底面が例えば4層のプリプレグ18により覆われ、これにより中空芯材13とプリプレグ17,18とからなる未硬化品19が形成される。この場合、プリプレグ17の底端とプリプレグ18とが互いに接触し、それにより中空芯材13の結合部16がプリプレグ17,18により覆われるようになっている。
【0018】
中空芯材13の頂面も、プリプレグにより覆ってもよい。ただし、この場合には、連通孔14が閉鎖されないようにする必要がある。
【0019】
なお、図3及び図4では、各図面を参照して新たに説明される部材等が実線で示され、すでに説明した部材等が破線で示されている。
【0020】
次いで、図4に示されるように、プリプレグ18を下にして、未硬化品19が面盤2上に配置される。なお、面盤2に代えて、型上に未硬化品19を配置することもできる。
【0021】
次いで、連通孔14を除いて未硬化品19全体がポリアミド、ナイロン等の薄いフィルムないしバッグ20により覆われる。この場合、面盤2上に設けられたシールテープ21と、連通孔14周りに設けられたシールテープ22とによって目止めされる。
【0022】
フィルム22には減圧ポート23が設けられており、この減圧ポート23に真空ポンプ(図示しない)が接続されてフィルム22内が減圧される。これにより、未硬化品19内の空気が除去される。
【0023】
次いで、フィルム22内を減圧したまま、面盤2及び未硬化品19がオートクレーブ(図示しない)に投入されて加圧及び加熱条件化でプリプレグ17,18が加熱硬化される。このようにして、中空フレーム1が製造される。なお、中空芯材13の連通孔14は中空フレーム1の連通孔3を構成する。
【0024】
ところで、面盤2上に配置されたプリプレグ18は中空フレーム1のいわゆる背面を構成することになる。従来の例えば中子を用いて中空フレームを製造する場合には、この背面にはオートクレーブ内の高圧がほとんど作用しないので、背面が平坦でない等の不具合が生ずるおそれがあった。
【0025】
これに対し、上述した本発明の実施形態によれば、連通孔14を介して中空芯材13の内部15(図2)に高圧が作用し、中空芯材13は硬化済みであるので、この高圧が中空芯材13外に漏れることがない。その上で、FRP製部材12が可撓性を備えているので、プリプレグ18に高圧を作用させることができる。その結果、中空フレーム1の背面を平坦にできる等、背面の良好な品質を確保することができる。
【0026】
一方、本発明の実施形態によれば、中空フレーム1を製造するために、上型を必要としない。従って、製造設備を簡素化することができる。
【実施例】
【0027】
パールボード(商品名)を型として、カーボン/エポキシプリプレグ(東邦テナックス社製、W3101/Q−112J)を4層積層し、130℃で2時間加熱硬化させ、FRP製部材11を得た。次いで、FRP製部材11の頂面に直径1mmの連通孔14をボール盤により形成した。一方、アルミ平板上に、カーボン/エポキシプリプレグ(東邦テナックス社製、W3101/Q−112J)を2層積層し、130℃で2時間加熱硬化させ、FRP製部材12を得た。
【0028】
これらFRP製部材11,12を速硬化型エポキシ接着剤を用いて互いに結合し、中空芯材13を得た。
【0029】
次いで、中空芯材13の各側面にプリプレグ17としてカーボン/エポキシプリプレグ(東邦テナックス社製、W3101/Q−112J)を2層積層した。一方、平板状の型上にプリプレグ18としてカーボン/エポキシプリプレグ(東邦テナックス社製、W3101/Q−112J)を4層積層した。
【0030】
次いで、FRP製部材12が接触面となるように、中空芯材13をプリプレグ17と共に、プリプレグ18上に配置した。
【0031】
プリプレグ18の外周を囲むように、型上にシールテープ21を配置し固定した。また、中空芯材13の連通孔14の周りにもシールテープ22を配置し固定した。
【0032】
次いで、連通孔14を除いて、中空芯材13及びプリプレグ17,18をナイロン製バッグ20で覆い、上述のシールテープ21,22で固定した。次いで、バッグ20に真空ラインを接続し、真空ポンプで減圧し、30分放置した。
【0033】
次いで、減圧したまま、中空芯材13及びプリプレグ17,18をオートクレーブ内に投入し、6気圧、130℃で2時間、加圧及び加熱硬化し、中空フレーム1を得た。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】中空フレームの(A)斜視図、及び(B)線B−Bに沿ってみた断面図である。
【図2】本発明の中空フレームの製造方法を説明する図である。
【図3】本発明の中空フレームの製造方法を説明する図である。
【図4】本発明の中空フレームの製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0035】
1 中空フレーム
2 面盤
3 連通孔
11,12 FRP製部材
13 中空芯材
17,18 プリプレグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維強化樹脂製部材を互いに封密に結合して中空芯材を形成し、該中空芯材は該中空芯材の内部と外部とを互いに連通する連通孔を有しており、該連通孔以外の該中空芯材の外面を少なくとも部分的にプリプレグで覆い、該プリプレグを硬化させる、各段階を含んでなる、繊維強化樹脂製中空成形体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−289903(P2006−289903A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117050(P2005−117050)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】