説明

美白剤、及びそれを含有する組成物

【課題】 優れた美白作用を有する、(a)L−システイン及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を有効成分とする美白剤及びそれを含有する組成物を提供する。
【解決手段】本発明の美白剤及びそれを含有する組成物、すなわち(a)L−システイン及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を有効成分とする美白剤及びそれを含有する組成物は、各成分単独で示される作用に比べて優れた美白作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)L−システイン及び/又はその塩、及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を有効成分とする美白剤、及び該美白剤を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シミやソバカスあるいはクスミやシワといった肌の老化は、紫外線照射、酸化的刺激、ホルモン異常、遺伝的要素などに大きく影響を受けていると言われており、その中でも紫外線照射の影響が最も大きいと考えられている。
【0003】
紫外線を受けると体内で過剰なメラニン色素が産生し、その沈着が原因でシミやシバカス等が生じることから、メラニン色素の生成や沈着を抑制する方法が種々試みられている。
【0004】
その代表的な成分としてビタミンCが挙げられる。
【0005】
すなわち、ビタミンCは、紫外線照射などにより生じたフリーラジカルを消去するとともに、メラニン色素産生に関与する酵素のチロシナーゼを阻害することでメラニン色素産生自体を抑制することにより作用すると考えられており、主に経口投与で用いられている。
【0006】
またビタミンC以外には、外用の美白剤として、メラニン色素産生自体を抑制するハイドロキノン誘導体(例えば、特許文献1参照。)、チロシナーゼ阻害による美白効果を期待したエラグ酸(例えば、非特許文献1参照。)、コウジ酸(例えば、特許文献2、3参照。)、アルブチン(例えば、特許文献4参照。)などが提案されている。
【0007】
しかしながら、メラニン色素は紫外線防御における重要な物質であり、必要以上にメラニン色素産生自体を抑制することは好ましいことではない。
【0008】
そのため、メラニン色素そのものの淡色化する検討も種々行われ多くの商品が開発されている。
【0009】
L−システインはその代表的成分であることが知られている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0010】
すなわち、L−システインは、2種類あるメラニン(淡色のフェオメラニンと濃色のユウメラニン)のうち、淡色のフェオメラニンの合成に関与することにより、紫外線で亢進した濃色のユウメラニン合成を抑制することにより色素沈着を防止することが知られている。
【0011】
L−シスチンは、体内でL−システインに変換され、上記作用を示すことが知られている。
【0012】
一方、コエンザイムQ10は、コハク酸脱水素酵素活性に関連する補酵素でユビキノンまたはユビデカレノンとも呼ばれる物質で、諸外国や日本においても、広く使用されている(例えば、非特許文献3参照。)。
【0013】
このコエンザイムQ10は外用で光老化に効果があること(例えば、非特許文献4参照。)、同様にコエンザイムQ10が外用で紫外線による酸化ストレスに対して有効であること(例えば、非特許文献5参照。)が知られている。
【0014】
他方、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムは、ビタミンとしては広く用いられているものの、それらから選ばれる1種以上が効率的にメラノサイトの活性化を抑制し美白作用を有することについては何ら開示も示唆もされていない。
【0015】
ましてや、(a)L−システイン及び/又はその塩、及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上が美白剤として有用であることや該美白剤を含有する組成物について何ら開示も示唆もされていない。
【0016】
【特許文献1】特開昭63−246311号公報
【特許文献2】特公昭32−8100号公報
【特許文献3】特開平1−275524号公報
【特許文献4】特開昭63−8314号公報
【非特許文献1】立花新一ら、Fragrance J、9巻、37頁、1997年
【非特許文献2】Ozeki Hら、Biochim.Biophys.Acta、1336(3)、539頁、1997年
【非特許文献3】府川秀明、日本農芸化学会誌、第76巻、第1号、58−59頁、2002年
【非特許文献4】Hoppe U.ら、Biofactors、9、371頁、1999年
【非特許文献5】Blatt T.ら、Z.Gerontol Geriatr.、32、83頁、1999年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、優れた美白作用を有する、(a)L−システイン及び/又はその塩、及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を有効成分とする美白剤、及び該美白剤を含有する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らの研究によれば、(a)L−システイン及び/又はその塩、及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を組合せることにより優れた相乗効果を発揮し、各成分単独で示される作用に比べて優れた美白作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
すなわち、本発明は、(a)L−システイン及び/又はその塩、及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を有効成分とする美白剤、及び該美白剤を含有する組成物である。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の美白剤及びそれを含有する組成物は、(a)L−システイン及び/又はその塩、及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を組合せることにより優れた相乗効果を発揮し、公知の美白剤であるビタミンCおよびビタミンEに比べて有意に優れた美白作用を示した。従って、本発明の経口組成物は美白剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に用いるL−システイン及び/又はその塩としては、L−システインとL−塩酸システインが挙げられ、それらは一般用医薬品製造承認基準のビタミン主薬製剤等の有効成分として記載されている。L−システインは湿疹、じんま疹、薬疹、中毒疹、尋常性▲ざ▼瘡、多形浸出性紅斑等の医療用の治療薬として用いられている。L−塩酸システインは食品添加物公定書解説書(廣川書店発行、1990年)に記載されており、パンや天然果汁用の食品添加物としても用いられている。
【0023】
本発明に用いるL−シスチンは、日本薬局方外医薬品規格(公定書協会発行、1997年)、745−747頁に記載のものが挙げられる。
【0024】
本発明に用いるコエンザイムQ10は、合成あるいは微生物を培養してその菌体よりコエンザイムQ10を抽出することにより得ることができる。また、コエンザイムQ10は市販されており、日清ファルマ社製のコエンザイムQ10が挙げられる。
【0025】
本発明に用いられるリボフラビンは、第十四改正日本薬局方、(株式会社じほう発行、2001年、以下局方と略記する)、749−750頁に記載のものが挙げられる。
【0026】
本発明に用いられる塩酸ピリドキシンは、局方、361頁に記載のものが挙げられる。
【0027】
本発明に用いられるニコチン酸アミドは、局方、588頁に記載のものが挙げられる。
【0028】
本発明に用いられるパントテン酸カルシウムは、局方、615−616頁に記載のものが挙げられる。
【0029】
本発明の、(a)L−システイン及び/又はその塩、及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を有効成分とする美白剤、及び該美白剤を含有する組成物は、内服の場合、(a)L−システイン及び/又はその塩、及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を混合したものをそのままの形で使用することもできるが、通常、食品及び/又は医薬品に使用される通常の賦形剤(例えば結晶セルロース、ショ糖脂肪酸エステル、白糖等)を加え、例えば乾式造粒法あるいは湿式造粒法により造粒して製造し、このようにして製造した造粒物をそのまま使用することもできるが、それらをさらに打錠機を用い圧縮成
形物として使用することもできる。
【0030】
また、通常、液状の食品に使用される浸潤剤、乳化剤、分散助剤、界面活性剤、甘味料、酸味料、糖アルコール、フレーバー、芳香物質等賦形剤を加えて溶解し、液体の状態として製造することもできる。
【0031】
さらに、本発明の美白剤、及び該美白剤を含有する組成物は、外用剤として用いることもできる。この場合、通常、本発明の美白剤と液状やクリーム状の外用剤に使用される浸潤剤、乳化剤、分散助剤、界面活性剤、賦形剤、香料を加えて乳化或は可溶化し、本発明の美白剤を含有した外用剤とすることができる。
【0032】
本発明の、(a)L−システイン及び/又はその塩、及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上の配合割合は用いられる種類によっても異なるが、例えば、(a)L−システイン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビンの内服の場合、(a)L−システインは1〜1000重量部、好ましくは30〜300重量部であり、(b)コエンザイムQ10は1〜200重量部、好ましくは10〜100重量部、(c)リボフラビンは0.4〜30重量部、好ましくは2〜30重量部である。
【0033】
本発明の、(a)L−システイン及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上の配合比は、例えば、(a)L−システイン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビンの場合、L−システイン1重量部に対して、(b)コエンザイムQ10が0.001〜200重量部、好ましくは0.033〜3.33重量部、(c)リボフラビン0.0004〜30重量部、好ましくは0.0067〜1重量部である。
【0034】
また、(a)L−システイン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビンの外用塗布剤の場合、L−システイン1重量部に対して、(b)コエンザイムQ10が0.001〜20重量部、好ましくは0.002〜10重量部、(c)リボフラビンは0.01〜100重量部、好ましくは0.02〜50重量部である。
【0035】
また、本発明の美白剤およびそれを含有した組成物は、そのまま又は食品の形態で用いるに際して、所望の美白効果を発現するような用量で用いられる。
【0036】
すなわち、具体的には、一日の服用量が、例えば、L−システイン及び/又はL−シスチンとして30mgから300mgとコエンザイムQ10として1mgから200mg、また、リボフラビン0.4〜30mg、塩酸ピリドキシン0.5〜100mg、ニコチン酸アミド2〜60mg、パントテン酸カルシウム5〜30mgとなるよう適宜混合する。
【0037】
本発明の美白剤及びそれを含有する組成物は、必須成分である上記化合物の他に、通常の医薬品や食品に使用されるビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、コウジ酸、アルブチン等の美白剤、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン等のムコ多糖類、トレハロース、ソルビトール等の低分子糖類、アミノ酸誘導体、セラミド、γ−オリザノール等の油脂類等を配合することができる。
【0038】
本発明の美白剤及びそれを含有する組成物は、通常成人1日当たり1〜数回に分けて服用するかまたは外用剤として塗布する。
【0039】
以下に試験例を挙げて本発明を詳細に説明する。各成分は市販のものを用いた。
【0040】
[試験例]
試験例1(紫外線照射後のメラノサイト活性化抑制試験)
(1)試験方法
DBA/2NCrjマウス(雄性、6週齢)6匹を1群として用いた。医療用紫外線照射装置デルマレー(クリニカル・サプライ社製)を用いて、中波長紫外線を5分間0.09J/cm2照射した。この照射を1日1回、9日間行った。その後、1%レシチンに溶解させた、表1に示す被験物質を1日1回5日間及び10日間、ゾンデを用いて直接胃の中に投与した。その後、DBA/2NCrjマウスから両耳を採取し、外側の皮膚が上になるように置き、左右の耳から1箇所ずつ、6mmのトレパンで皮膚を採取した。その後、外側の皮膚を採取し、定法に従ってメラニン色素を産生しているメラノサイトの指標であるド−パ陽性メラノサイトの染色を行い、顕微鏡下でメラノサイト数を数え、1mm2当たりのメラノサイト数を計測した。なお、1群のDBA/2NCrjマウスは中波長紫外線を照射せず、同様に実験を行った(非照射投与群という)。
【0041】
【表1】

【0042】
(3)試験結果
本発明の経口組成物はL−システイン単独、CoQ10単独、リボフラビン、塩酸ピリドキシンとニコチン酸アミドの混合物に比べて有意にドーパ陽性メラノサイト数低下が確認された。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1(錠剤)
(処方)
L−シスチン 40g
コエンザイムQ10 6g
リボフラビン 1.6g
塩酸ピリドキシン 5.0g
ニコチン酸アミド 5.0g
結晶セルロース 80g
ニ酸化ケイ素 5.0g
ソルビトール 145.4g
ショ糖脂肪酸エステル 12g
合計 300g
【0044】
(製造法)
上記の各成分を混合し、その混合物を打錠機で1錠中にL−シスチン40mg、コエンザイムQ10 6mg、リボフラビン1.6mg、塩酸ピリドキシン5mg及びニコチン酸アミド5mgを含む錠剤を得る。
【0045】
実施例2(糖衣錠)
L−シスチンをL−システインに代えた以外は実施例1と同様にして調製し、常法により糖衣を施して実施例2の錠剤を得る。
【0046】
実施例3(液剤)
(処方)
L−シスチン 10g
1mol/L塩酸 100mL
10%水溶性コエンザイムQ10 15g
リン酸リボフラビンナトリウム 0.4g
塩酸ピリドキシン 1.5g
ニコチン酸アミド 1.5g
クエン酸ナトリウム 55g
リンゴ酸 20g
スクラロース 1g
エリスリトール 200g
香料 10g
精製水 適量
全量 10L
【0047】
(製造法)
L−シスチンを1mol/L塩酸で溶解し、精製水に入れて十分に溶解し、上記の各成分を加えて加熱溶解し、冷後、香料及び精製水を加えて全量10Lとする。この液を加熱殺菌後、100mLずつ容器に移し、実施例3の液剤を得る。
【0048】
実施例4(ローション剤)
(処方)
[A]成分:
10%水溶性CoQ10 100g
ニコチン酸アミド 100g
L−塩酸システイン 50g
1,3−ブチレングリコール 500g
メチルパラベン 10g
プロピルパラベン 10g
2%カルボキしビニルポリマー水溶液 4500g
[B]成分:
トリエタノールアミン 60g
香料 15g
精製水 適量
全量 10L
【0049】
(製造法)
2%カルボキしビニルポリマー水溶液に他の[A]成分を順次加熱溶解した後、混合攪拌しながら[B]成分を加え、均一に混和し、徐々に冷却して、実施例4のローション剤を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)L−システイン及び/又はその塩、及び/又はL−シスチン、(b)コエンザイムQ10、及び(c)リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を有効成分とする美白剤。
【請求項2】
請求項1を含有する組成物。


【公開番号】特開2006−1903(P2006−1903A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182106(P2004−182106)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】