説明

脂肪蓄積抑制剤

【課題】副作用の恐れがない、効果的で安全性の高い脂肪蓄積抑制剤、およびこれらを含有する食品、化粧料、飼料および医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、ゴボウの葉の抽出物を有効成分とする脂肪蓄積抑制剤、およびこれらを含有する食品、化粧料、飼料および医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪蓄積抑制剤に関し、更に詳しくは細胞が過剰な脂肪を蓄積することを防ぐことにより肥満を予防および/または改善する食品、化粧料、飼料または医薬組成物に関する。
【0002】
本発明は、ゴボウの葉の抽出物を含有する脂肪蓄積抑制剤に関する。詳細には、ゴボウの葉から抽出された成分を有効成分として含み、細胞の脂肪蓄積抑制活性を有する、肥満の予防および改善に好適な脂肪蓄積抑制剤、ならびにこの脂肪蓄積抑制剤を含有する食品、化粧料、飼料および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、食の欧米化、過剰量の食物摂取、運動不足等の原因による、肥満、脂肪肝、高脂血症の増加が社会問題となっている。従来、肥満、脂肪肝、高脂血症の予防や治療は、食事制限等の摂取カロリー低下、運動等の消費カロリー増加などの方法により行われてきた。しかしながら、摂取カロリーの低下や消費カロリーの増加を図るには、長期にわたって日常生活に負担や制限が課されることから、そのような予防や治療方法の継続には相当の困難が伴う。また医薬品により、肥満、脂肪肝、高脂血症の改善をしようとする場合には、通院や薬剤の投与管理が煩雑であるうえ、副作用の恐れがあり、また費用もかかることから、継続するには困難がある。
【0004】
これに対して、これまでに様々な天然物の抽出物を有効成分とするダイエット剤や脂質代謝改善剤が提案されている。例えば、カテキン類を高濃度に含む茶の抽出物およびその濃縮液を用いたダイエット飲料、ガルシニアから抽出したガルシニアエキスとコーヒーや茶から抽出したカフェインとを含有する脂肪代謝促進剤が提案されている。しかしながら、これらの抽出物には独特の苦味や臭いがあり、有効な量を継続して摂取するのは困難である。
【0005】
肥満では、生体内の脂肪細胞が蓄積している中性脂肪量が増加し、細胞が肥大化している。食事制限や運動による方法、食物繊維の摂取、脂肪分解促進剤の利用などの手段は、主として既に体内に蓄積された脂肪を減少させる方法であり、肥大化した細胞に対する改善としては不十分である。これに対し、生体内での脂肪の蓄積を抑制する方法は、体内での脂肪の蓄積を直接的に抑制し、細胞の肥大化を抑制するため、肥満や疾患の根本的な改善策として優れており、また日常的な予防方法としても効果的である。このような生体内における脂肪の蓄積を抑制する脂肪蓄積抑制活性を有するものとして、哺乳動物の乳由来のリン脂質(特許文献1参照)や褐藻の酵素分解物(特許文献2参照)がこれまでに報告されている。
【0006】
特許文献3には、ゴボウの抽出物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤が報告されている。このα−グルコシダーゼ阻害剤は、ゴボウ抽出物に含まれるステロイド配糖体、脂肪酸または脂肪酸エステルを有効成分とする。α−グルコシダーゼ阻害剤などの糖質吸収抑制剤は、肥満の内、脂質代謝異常を伴う肥満には効果を示さない。一方、脂肪細胞の脂肪蓄積抑制は、肥満の病態の上流に位置する脂肪細胞に直接作用するものであり、すべての肥満に対して効果を有する。すなわち、α−グルコシダーゼ阻害剤と脂肪蓄積抑制剤とは、その作用機序、投与対象および効果が異なる。そして、ゴボウ抽出物が脂肪蓄積抑制活性を有することについては、これまで報告されていない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−275614号公報
【特許文献2】特開平7−278005号公報
【特許文献3】特開2005−255568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、副作用の恐れがなく、効果的で安全性の高い脂肪蓄積抑制剤、ならびにこれらを含有する食品、化粧料、飼料および医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、食経験のある各種動植物抽出物を用いて、脂肪蓄積抑制活性を有する成分を特定するため鋭意研究を行った。その結果、ゴボウの葉を溶媒で抽出して得られる抽出物が強い脂肪蓄積抑制活性を有することを見出した。本発明者らはさらに検討を重ね、ゴボウの葉の抽出物から脂肪蓄積抑制活性を有する活性成分を単離し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1)ゴボウの葉の抽出物を有効成分として含む脂肪蓄積抑制剤。
(2)ゴボウの葉の抽出物が、ゴボウの葉の有機溶媒抽出物である(1)記載の脂肪蓄積抑制剤。
(3)ゴボウの葉の抽出物が、ゴボウの葉のアルコール抽出物または含水アルコール抽出物である(1)または(2)記載の脂肪蓄積抑制剤。
【0011】
(4)抽出物が次の化学式(1)
【化1】

で表される化合物を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤。
【0012】
(5)次の化学式(1)
【化2】

で表される化合物を有効成分として含む脂肪蓄積抑制剤。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤を含有する食品、化粧料または飼料。
(7)脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する状態を予防または改善するためのものである、(6)記載の食品、化粧料または飼料。
(8)状態が肥満である、(7)記載の食品、化粧料または飼料。
(9)(1)〜(5)のいずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤を含有する、脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する疾患を予防または治療するための医薬組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、体脂肪が新たに蓄積するのを抑制しうる優れた脂肪蓄積抑制活性を奏し、副作用の心配がなく安全性が高い上に、風味がよく簡便に摂取可能で長期間の継続的摂取が容易な脂肪蓄積抑制剤、ならびにこれを含有する食品、化粧料、飼料および医薬組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ゴボウ(Arctium Lappa)はキク科の根菜であり、原産地はヨーロッパ、シベリア、中国であるが、日本においても古くから栽培され、食用に供されている。地中の直根を主に食する。成分は炭水化物のイヌリンが多い。がっちりとして太い滝野川ゴボウ、茎が白い砂川ゴボウ、根が紡錘形の梅田ゴボウ、葉を食する葉ゴボウ、短形種である堀川ゴボウ、大浦ゴボウなど多くの種類がある。本発明で用いられるゴボウは、上記のいずれかのゴボウを単独で用いてもよいし、複数種のゴボウを組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明の脂肪蓄積抑制剤は、ゴボウの葉の抽出物、好ましくはゴボウの葉を有機溶媒で抽出して得られる抽出物(ゴボウの葉の有機溶媒抽出物)を有効成分として含む。ゴボウの茎や地下部を抽出して得られる抽出物は脂肪蓄積抑制活性を有しないため、本発明の効果は得られない。
【0016】
以下、本発明に用いられるゴボウの葉の抽出物の製造方法について詳細に説明する。ゴボウの葉の抽出物を得るための抽出方法は特に制限されないが、有機溶媒を用いる抽出方法が好ましい。上記のようなゴボウの葉をそのまま、あるいは切断または粉砕したもの、乾燥したもの、圧搾抽出した搾汁を、抽出溶媒中に浸漬、攪拌または還流などする方法、ならびに超臨界流体抽出法などの公知の方法を挙げることができる。
【0017】
抽出に用いられる溶媒は、ゴボウから脂溶性成分を抽出できるものであれば種類を問わないが、好ましくは有機溶媒、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、および1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールなどの室温で液体であるアルコール;ジエチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン;ヘキサン;ならびにクロロホルム等を挙げることができる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の有機溶媒の中では、操作性や環境性の点から、室温で液体であるアルコール、たとえば、炭素原子数1〜4の低級アルコールを用いるのが好ましく、残留溶媒による安全性の観点からはエタノールを用いるのがより好ましい。
【0018】
本発明において有機溶媒には、有機溶媒にさらに水性成分が含まれている含水有機溶媒も包含される。抽出効率を高く保持する観点からは、上記含水有機溶媒中の水性成分の含有量は、通常80体積%以下、好ましくは65体積%以下、より好ましくは50体積%以下であるのが望ましい。含水有機溶媒としては、好ましくは上記のようなアルコールにさらに水性成分が含まれている含水アルコール、より好ましくは含水エタノールが用いられる。
【0019】
この場合、水性成分としては、水および水溶性成分の水溶液などが挙げられる。上記有機溶媒と、酸性水溶液、中性水溶液(もしくは水)、または塩基性水溶液とを混合することで、抽出条件をそれぞれ酸性条件、中性条件、または塩基性条件に調整することができる。
【0020】
抽出操作は、ゴボウの葉を生のままであるいは小片に切断したもの、乾燥したゴボウの葉を水や熱水を用いて戻したもの、または乾燥したゴボウの葉をそのまま、破砕あるいは粉砕などの処理により粉末化したものなどと、上述した抽出溶媒とを用いて行うことができる。具体的な抽出方法としては、ゴボウの葉を、常圧あるいは加圧下で、室温あるいは加温した溶媒中に加え、浸漬や攪拌しながら抽出する方法、溶媒中で還流しながら抽出する方法などが挙げられる。その際、抽出温度は5℃から溶媒の沸点以下の温度とするのが適切であり、抽出時間は使用する溶媒の種類や抽出条件、含水有機溶媒の場合にはさらに水性成分含有量によっても異なるが、30分〜72時間程度とするのが適切である。還流操作により抽出を行う場合は、ゴボウの葉の抽出物が変性や熱分解を起こさないように低沸点の溶媒を用いるのが好ましい。また、二酸化炭素などを用いる超臨界流体抽出法により抽出操作を実施することもできる。
【0021】
ついで、抽出液および残渣を含む混合物を、必要に応じて濾過あるいは遠心分離などに供し、残渣である固形成分を除去して抽出液を得る。なお、除去した固形成分を再度、抽出操作に供することもでき、さらにこの操作を何回か繰り返してもよい。
【0022】
このようにして得られた抽出液をそのままゴボウの葉の抽出物として用いてもよく、さらに必要に応じて、濃縮あるいは凍結乾燥やスプレードライなどの方法により、乾燥、粉末化したものを、ゴボウの葉の抽出物として使用してもよい。
【0023】
抽出液を乾燥する場合、具体的な乾燥方法は、ゴボウの葉の抽出物が変性や熱分解を起こさない条件下で行いうる方法あれば、どのような方法でもよく、例えば、必要に応じて賦形剤を添加し、濾過、遠心分離、遠心濾過、スプレードライ、スプレークール、ドラムドライ、真空乾燥、凍結乾燥等の方法が挙げられ、これらの方法を単独でまたは組み合わせて採用できる。
【0024】
本発明者らはさらに、ゴボウの葉の抽出物に含まれる化学式(1):
【化3】

で表される化合物が、脂肪蓄積抑制活性を有することを見出した。従って、一実施形態において本発明は、化学式(1)で表される化合物を有効成分として含む脂肪蓄積抑制剤に関する。
【0025】
化学式(1)で表される化合物は、無水物であっても、溶媒和物であってもよい。従って、化学式(1)で表される化合物には、その溶媒和物も包含される。ここで溶媒は溶質の活性を妨げるものでなければ特に制限されない。適当な溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノールおよび酢酸が含まれる。
【0026】
本発明の化学式(1)で表される化合物の立体異性体のうち、式(1’)で表される化合物はオノポルドピクリン(Onopordopicrin)であり、植物に含まれていることが知られている。
【0027】
【化4】

【0028】
化学式(1)で表される化合物は、強力な脂肪細胞の脂肪蓄積抑制活性を有しており、脂肪蓄積抑制剤の有効成分として使用できる。また、これらを食品、化粧料、飼料および医薬組成物において使用することもできる。
【0029】
化学式(1)で表される化合物は化学合成によって得ることができる。化学式(1)で表される化合物はまた、この化合物を含有する植物、該植物をそのまま乾燥させた乾燥物、その粉砕物、およびそれらを圧搾抽出することにより得られる搾汁を、上記のような有機溶媒または含水有機溶媒により粗抽出し、さらにこの粗抽出物を分配クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィーやHPLCなどの各種クロマトグラフィーなどで段階的に精製するなど、周知の方法で精製して得ることができる。
【0030】
化学式(1)で表される化合物を含有する植物としては、キク科の植物、例えば、Arctium属植物、例えばArctium Lappa、Centaurea属植物、例えばCentaurea cyanus、Centaurea aspera、Centaurea tweediei、Centaurea sonchifolia、Centaurea eryngioides、Centaurea achaia、Centaurea glomerata、Centaurea melitensis、Centaurea nicaensis、Centaurea scoparia、Onopordon属植物、例えばOnopordon carmanicum、Onopordon leptolepis、nopordon acanthium、Onopordon alexandrinum、Onopordon algeriense、Onopordon ambiguum、Onopordon anatolicum、Onopordon boissieri、Onopordon candidum、Onopordon caricum、Onopordon illyricum、Onopordon polycephalum、Onopordon acaulon、Onopordon cyrenaicum、Onopordon espina Cosson、Onopordon laconicum、Onopordon myriacanthum、Onopordon sibthorpianum、Onopordon tauricum、Berkheya属植物、例えばBerkheya zeyheri、Carduus属植物、例えばCarduus micropterus、Onopordum属植物、例えばOnopordum nervosum Boiss.などが挙げられる。
【0031】
HPLCによる分離においては、例えば、ペプチド用HPLCでおもに用いられる逆相系カラムまたはイオン交換系カラムを使用でき、これらはそれぞれ充填剤の基剤によりシリカ系(シリカゲルなど)と高分子系(ビニルポリマーなど)にわけられる。本発明では、好ましくはシリカ系充填剤を用いる逆相系カラムを用いる。
【0032】
逆相系充填剤の置換基としては、オクタデシルシリル基、オクチル基、フェニル基、ジフェニル基などが挙げられる。これらの置換基は、通常、シリカゲル表面のシラノール基に導入されるが、トリメチルシリル化することにより残存シラノール基をエンドキャップしたものが好ましく用いられる。分離カラムの具体例としては、例えば、オクタデシルシリル基をシルカゲルに結合させたInertsil ODS−3(GLサイエンス)等が挙げられる。
【0033】
逆相系カラムを用いたHPLCにおける移動相としては、極性溶媒を使用する。極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールや、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等の水溶液を使用でき、好ましくはアセトニトリルを用いる。また、上記極性溶媒にはベースラインの安定化やピークのテーリングを防止する目的でトリフルオロ酢酸を添加して用いるのが好ましい。
【0034】
本発明において脂肪蓄積抑制とは、主に脂肪細胞における脂肪の蓄積の抑制をさす。ここで、脂肪細胞は、組織間に散在または疎性結合組織の一つとして毛細血管の走行に沿う集団として脂肪組織を形成する、多量の脂肪を含む細胞をさし、主に褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞に分類される。特に白色脂肪細胞は、皮下脂肪や内臓脂肪を構成する細胞であり、この白色脂肪細胞中の脂肪を低減させるまたは白色脂肪細胞への脂肪の蓄積を抑制することが、体脂肪を効率よく減らす上で重要である。
【0035】
脂肪細胞における脂肪の蓄積の抑制は、脂肪細胞の脂肪含量を測定することにより評価することができる。脂肪細胞の脂肪含量を測定する方法としては、脂肪細胞を顕微鏡で観察し、個々の細胞の細胞質に脂肪が蓄積されて生ずる脂肪滴の多少を目視で判断する方法や、細胞内脂質を抽出しトリグリセリドを測定する方法や、細胞内の脂肪を酵素分解し生じたグリセロールを定量することにより脂肪含量を測定する方法などが挙げられる。また、脂肪細胞をオイルレッドOで染色した後、細胞を溶解し、溶解液中のオイルレッドOの量を分光光度計等で定量することにより該細胞の脂肪含量を測定する方法を挙げることもできる。細胞内の脂肪を酵素分解し、生じたグリセロール量を測定する方法は、市販のキット、例えば、デタミナーTG−S555(協和メデックス株式会社製)等を使用して行うことができる。トリグリセリドを測定する方法は、市販のキット、例えば、トリグリセリドテストワコー(和光純薬工業製)を使用して行うことができる。脂肪細胞をオイルレッドOで染色する方法は、例えば、Novikoff A. B. et al., J. Cell Biol., 87, 180-196等に記載の一般的な方法により行うことができる。
【0036】
本発明の脂肪蓄積抑制剤は、ゴボウ由来の抽出物と化学式(1)で表される化合物をそれぞれ単独で含んでいてもよいし、組み合わせて含んでいてもよい。また、化学式(1)で表される化合物を脂肪蓄積抑制剤として食品、化粧料、飼料または医薬組成物に配合してもよいし、ゴボウの葉の抽出物に化学式(1)で表される化合物を混合したものを脂肪蓄積抑制剤として食品、化粧料、飼料または医薬組成物に配合してもよい。本発明の脂肪蓄積抑制剤を単独で、あるいは他の成分と共に、継続的に摂取することにより、体脂肪の蓄積、すなわち脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する状態または疾患の、治療、予防および改善効果が期待できる。
【0037】
脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する状態または疾患としては、例えば、肥満、脂肪肝、蜂巣炎、高グリセリド血症、高脂血症などが挙げられ、ひいては、高血圧、冠動脈疾患、閉塞性動脈硬化なども包含される。
【0038】
本発明の脂肪蓄積抑制剤の有効成分であるゴボウの葉の抽出物および化学式(1)で表される化合物は、α−グルコシダーゼ阻害活性を実質的に有しない。従って、本発明の脂肪蓄積抑制剤、これを含む食品、化粧料、飼料または医薬組成物は、肥満の内、糖質代謝異常や糖質吸収異常を伴う肥満よりも、脂質代謝異常を伴う肥満に特に有効である。α−グルコシダーゼ阻害剤などの糖質吸収抑制剤は、肥満の内、脂質代謝異常を伴う肥満には効果を示さないが、本発明の脂肪蓄積抑制は、肥満の病態の上流に位置する脂肪細胞に直接作用するものであり、すべての肥満に対して効果を有する。
【0039】
本発明の脂肪蓄積抑制剤は、通常の場合、ゴボウの葉の抽出物の乾燥質量を基準として、成人1日当たり0.001〜50gの範囲、好ましくは成人1日当たり0.01〜10gの範囲で摂取される。ゴボウの葉の抽出物は安全性の高いものであるため、その摂取量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。また、本発明の脂肪蓄積抑制剤は、化学式(1)の化合物を基準として、成人1日当たり0.001〜1000mgの範囲、好ましくは成人1日当たり0.01〜100mgの範囲で摂取される。
【0040】
その際、ゴボウの葉の抽出物および/または化学式(1)で表される化合物を、そのまま単独で脂肪蓄積抑制剤として摂取してもよいが、本発明の効果を阻害しない限り、後述する添加剤、他の公知の脂肪蓄積抑制物質、脂肪分解促進物質、脂肪代謝改善物質等を単独または複数組み合わせて配合して得られた組成物として摂取してもよい。
【0041】
本発明の脂肪蓄積抑制剤の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、吸入剤などの経口剤、坐剤などの経腸製剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤などの皮膚外用剤、点滴剤、注射剤などが挙げられる。これらのうちでは、経口剤が好ましい。
【0042】
このような剤型の脂肪蓄積抑制剤は、上述した有効成分に、慣用される賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等の添加剤を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。なお、液剤、懸濁剤等の液体製剤は、服用直前に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。
【0043】
本発明の脂肪蓄積抑制剤が、上記添加剤や他の脂肪蓄積抑制物質、脂肪分解促進物質、脂肪代謝改善物質などを含む場合、脂肪蓄積抑制剤中のゴボウの葉の抽出物および/または化学式(1)で表される化合物の含有量は、その剤型により異なるが、ゴボウの葉の抽出物の乾燥質量を基準として、通常は、0.001〜99質量%、好ましくは0.01〜80質量%の範囲であり、化学式(1)で表される化合物を基準として、通常は、0.00001〜80質量%、好ましくは0.001〜50質量%の範囲である。上述した成人1日当たりのゴボウの葉の抽出物(乾燥質量)および/または化学式(1)で表される化合物の摂取量を摂取できるよう、1日当たりの投与量が管理できる形にすることが望ましい。
【0044】
さらに、本発明の脂肪蓄積抑制剤には、医薬、食品、飼料の製造に用いられる種々の添加剤を配合することができ、さらにその他種々の物質と共存させてもよい。このような物質や添加剤としては、各種油脂、生薬、アミノ酸、多価アルコール、天然高分子、ビタミン、ミネラル、食物繊維、界面活性剤、精製水、賦形剤、安定剤、pH調製剤、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料、着色料および香料などが挙げられる。
【0045】
前記各種油脂としては、たとえば大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油等の植物油、牛脂、イワシ油等の動物油脂が挙げられる。
【0046】
前記生薬としては、たとえば牛黄、地黄、枸杞子、ロイヤルゼリー、人参、鹿茸等が挙げられる。
【0047】
前記アミノ酸としては、たとえばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニン等が挙げられる。
【0048】
多価アルコールとしては、たとえばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール等が挙げられる。前記糖アルコールとして、たとえば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール等が挙げられる。
【0049】
前記天然高分子としては、たとえばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテンまたはグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリン等が挙げられる。
【0050】
前記各種ビタミンとしては、たとえばビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB群、ビタミンE(トコフェロール)の他に、ビタミンA、D、K、酪酸リボフラビンなどが含まれる。また、ビタミンB群には、ビタミンB1誘導体、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、さらにビオチン、パントテン酸、ニコチン酸、葉酸などの各種ビタミンB複合体が包含される。ビタミンB1誘導体には、チアミンまたはその塩、チアミンジスルフィド、フルスルチアミンまたはその塩、ジセチアミン、ビスブチチアミン、ビスベンチアミン、ベンフォチアミン、チアミンモノフォスフェートジスルフィド、シコチアミン、オクトチアミン、プロスルチアミンなどのビタミンB1の生理活性を有する全ての化合物が包含される。
【0051】
前記ミネラルとしては、たとえばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等が挙げられる。
食物繊維としては、ガム類、マンナン、ペクチン、ヘミセルロース、リグニン、β−グルカン、キシラン、アラビノキシランなどが挙げられる。
前記界面活性剤としては、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
前記賦形剤としては、たとえば白糖、ブドウ糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、乳糖、デキストリン、澱粉、結晶セルロース、サイクロデキストリン等が挙げられる。
【0052】
また、他の公知の脂肪蓄積抑制物質、脂肪分解促進物質、脂肪代謝改善物質、あるいは他の機能性成分や種々の添加剤として、上記以外に、たとえば、タウリン、グルタチオン、カルニチン、クレアチン、コエンザイムQ、グルクロン酸、グルクロノラクトン、トウガラシエキス、ショウガエキス、カカオエキス、ガラナエキス、ガルシニアエキス、テアニン、γ−アミノ酪酸、カプサイシン、カプシエイト、各種有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、フラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0053】
それら添加剤の配合量は、添加剤の種類と所望すべき摂取量に応じて適宜決められるが、一般的には脂肪蓄積抑制剤中、0.01〜90質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜50質量%の範囲である。
【0054】
本発明の脂肪蓄積抑制剤は、脂肪細胞内に脂肪が蓄積されるのを抑制し、優れた肥満予防作用、肥満改善作用を奏する。また、風味がよく簡便に摂取可能で長期間の継続的摂取が容易である。そのため、本発明の脂肪蓄積抑制剤は、脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する状態、特に肥満を予防または改善するための食品、飼料または化粧料に配合することができる。
【0055】
また、本発明の脂肪蓄積抑制剤、またはこれを含む、食品、飼料、化粧料もしくは医薬組成物を、上述したような有効量で投与することにより、脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する状態、特に肥満を、予防、治療または改善することができる。
【0056】
<脂肪蓄積抑制剤を含有する食品>
ゴボウの葉の抽出物および化学式(1)で表される化合物は、脂肪蓄積抑制活性を有する上、安全性が高く、風味もよい。さらに、様々な食品に添加しても食品自体の風味を阻害しない。従って、これらを有効成分とする本発明の脂肪蓄積抑制剤は、種々の食品に添加して継続的に摂取することができ、体脂肪が蓄積される状態、すなわち脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する状態、特に肥満、脂肪肝および蜂巣炎を予防および改善することができる。
【0057】
本発明の食品は、ゴボウの葉の抽出物および/または化学式(1)で表される化合物を含む脂肪蓄積抑制剤を含有する。本発明において、食品には飲料も包含される。本発明の脂肪蓄積抑制剤を含有する食品には、肥満予防作用により健康増進を図る健康食品、機能性食品、特定保健用食品等の他、本発明の脂肪蓄積抑制剤を配合できる全ての食品が含まれる。さらに、本発明において食品には、人用の飲食品のみならず、家畜、競走馬、ペットなどの飼料も含まれる。
【0058】
具体的には、経管経腸栄養剤などの流動食、錠剤、錠菓、チュアブル錠、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤などの健康食品または栄養補助食品;緑茶、ウーロン茶や紅茶などの茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、精製水などの飲料;バター、ジャム、ふりかけ、マーガリンなどのスプレッド類;マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープまたはソース類、菓子(たとえばビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)などが挙げられる。
【0059】
本発明の食品は、本発明の脂肪蓄積抑制剤のほかに、食品や飼料の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤(たとえば呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、安定剤、フレーバー)などを配合して、常法に従って製造することができる。
【0060】
本発明の食品において、脂肪蓄積抑制剤の含有量は、食品の形態により異なるが、ゴボウの葉の抽出物の乾燥質量を基準として、通常は、0.001〜80質量%、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは20〜50質量%の範囲であり、化学式(1)で表される化合物を基準として、通常は、0.0001〜80質量%、好ましくは0.001〜50質量%、より好ましくは1〜20質量%の範囲である。ゴボウの葉の抽出物は安全性の高いものであるため、その含有量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。上述した、成人1日当たりのゴボウの葉の抽出物(乾燥質量)の摂取量また化学式(1)で表される化合物の摂取量が飲食できるよう、1日当たりの摂取量が管理できる形にするのが好ましい。
【0061】
本発明の脂肪蓄積抑制剤は、脂肪細胞内に脂肪が蓄積するのを抑制し、優れた肥満予防作用、肥満改善作用を奏する上に、安全性が高く副作用の心配がない。また、風味がよく、様々な食品に添加してもその食品の風味を阻害しないため、得られる食品は長期間の継続的摂取が容易であり、優れた肥満予防作用、肥満改善作用が期待される。
【0062】
<脂肪蓄積抑制剤を含有する化粧料>
ゴボウの葉の抽出物および化学式(1)で表される化合物は、脂肪蓄積抑制活性を有する上、安全性が高いため、これらを有効成分とする本発明の脂肪蓄積抑制剤は化粧料に配合することもできる。本発明の化粧料は、継続的に適用することができるため、体脂肪が蓄積される状態、すなわち脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する状態、特に肥満および蜂巣炎を予防および改善できる。
【0063】
化粧料としては特に限定されるものではないが、機能面からは、例えばフェイスまたはボディ用乳液、化粧液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、シートなどが好ましい。化粧料における脂肪蓄積抑制剤の含有量は、特に限定されるものではないが、一例としてあげると、化粧料基材の重量に対して、ゴボウの葉の抽出物の乾燥質量を基準として通常は、0.001〜80質量%、好ましくは0.01〜50質量%の範囲であり、化学式(1)で表される化合物を基準としては、通常は、0.0001〜80質量%、好ましくは0.001〜50質量%の範囲が適当である。
【0064】
<脂肪蓄積抑制剤を含有する医薬組成物>
ゴボウの葉の抽出物および化学式(1)で表される化合物は、脂肪蓄積抑制活性を有する上、安全性が高いため、これらを有効成分とする本発明の脂肪蓄積抑制剤は、体脂肪が蓄積される状態、すなわち脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する疾患を予防および治療するための医薬組成物として使用できる。当該医薬組成物の有効量を患者、好ましくは哺乳動物に投与することにより、脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する疾患、特に肥満、脂肪肝および蜂巣炎を予防および治療することができる。
【0065】
本発明の医薬組成物には、ゴボウの葉の抽出物および/または化学式(1)で表される化合物に加え、本発明の効果を阻害しない限り、添加剤、他の公知の脂肪蓄積抑制物質、脂肪分解促進物質、脂肪代謝改善物質等を単独または複数組み合わせて配合してもよい。
【0066】
本発明の医薬組成物に関し、その剤形、添加剤、有効成分であるゴボウの葉の抽出物および/または化学式(1)で表される化合物の含有量、ならびに投与量等については、脂肪蓄積抑制剤と同様である。
【0067】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
(実施例1) ゴボウの葉のエタノール抽出物の調製
葉ゴボウの葉部の凍結乾燥品30gを、3Lのエタノールに浸漬し、そのまま24時間静置して抽出を行った。抽出後に固形分を濾過により除去し、液体分を濃縮乾燥して4.1gの葉ゴボウの葉抽出物を得た。
【0069】
(実施例2) ゴボウの葉のメタノール抽出物の調製
葉ゴボウの葉部の凍結乾燥品30gを、3Lのメタノールに浸漬し、そのまま24時間静置して抽出を行った。抽出後に固形分を濾過により除去し、液体分を濃縮乾燥して5.1gの葉ゴボウの葉抽出物を得た。
【0070】
(比較例1) ゴボウの茎のエタノール抽出物の調製
葉ゴボウの茎部の凍結乾燥品30gを、3Lのエタノールに浸漬し、そのまま24時間静置して抽出を行った。抽出後に固形分を濾過により除去し、液体分を濃縮乾燥して6.1gの葉ゴボウの茎抽出物を得た。
【0071】
(比較例2) ゴボウの根のエタノール抽出物の調製
葉ゴボウの根部の凍結乾燥品30gを、3Lのエタノールに浸漬し、そのまま24時間静置して抽出を行った。抽出後に固形分を濾過により除去し、液体分を濃縮乾燥して1.2gの葉ゴボウの根抽出物を得た。
【0072】
(実施例3) 化学式(1)で表される化合物の単離
実施例2で得られた抽出物を、薄層クロマトグラフィーにかけ(図1)、矢印のスポットを単離した。その結果、180mgの化合物が得られた。
展開溶媒:CHCl:MeOH(9:1)
Rf値:0.58
【0073】
(実施例4) 実施例3で単離した化合物の構造解析
以下に、実施例3で単離した化合物のNMRスペクトルデータを示す。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)
1.51 (3H, s), 2.00 (1 H, m), 2.21 (1 H, m), 2.23 (1H, m), 2.50 (1 H, br t), 2.60 (2H, br t), 3.09 (1 H, m), 4.12 (1 H, d, J=14.0 Hz), 4.32 (1 H, d, J=14.0 Hz), 4.36 (2 H, s), 4.84 (1 H, br d, 10.4 Hz), 5.00 (1 H, m), 5.11 (1 H, br t), 5.21 (1 H, m), 5.78 (1 H, br d), 5.97 (1H, s), 6.29 (1 H, s), 6.30 (1 H, br s)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)
16.78, 26.34, 34.81, 48.72, 52.95, 61.62, 62.37, 73.09, 76.45, 125.39, 126.36, 128.54, 129.78, 132.38, 135.36, 139.33, 143.82, 165.02, 169.72 (each 1 C, s)
NMRスペクトルデータから、化学式(1)で表される化合物が同定された。
【0074】
(試験例1) ゴボウ抽出物の脂肪蓄積抑制活性の測定
(1)脂肪細胞への分化・培養
3T3−L1細胞を、96ウェルプレートに播種し、3日培養した。分化誘導培地(0.5mM 1−メチル−3−イソブチルキサンチン、0.25μM デキサメタゾン、10μg/mL インスリンを含む10%FCS添加DMEM培地)で2日間培養し、脂肪細胞に分化誘導した。その後、成熟促進培地(5μg/mL インスリンを含む10%FCS添加DMEM培地)に変えて5日間培養した。
この際、上記分化誘導培地および成熟促進培地に、実施例1、2、比較例1、2で得られたゴボウ抽出物を各種濃度で添加し、培養終了後、細胞中に蓄積されている脂肪量の測定を行った。対照群として、いずれの抽出物を添加しない培地で培養したものを使用した。
【0075】
(2)脂肪量の測定
上記(1)の培養終了後、培地を除去し、細胞をダルベッコのリン酸緩衝液50μLで3回洗浄した。ついで、2−プロパノール100μLずつをウェルに添加し、20分間攪拌することにより、細胞内脂質を2−プロパノールで抽出した。得られた抽出液の中性脂肪量を市販キット(トリグリセライドE−テストワコー;和光純薬)を用いて定量した。
【0076】
その結果を、対照群の中性脂肪量を100%としたときの相対値で表1および表2に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
以上から、ゴボウの葉の抽出物が脂肪蓄積抑制活性を有するのに対し、ゴボウの茎や地下部を抽出して得られる抽出物は脂肪蓄積抑制活性を有しないことが示された。
【0080】
(試験例2) 化学式(1)の化合物の脂肪蓄積抑制活性の測定
実施例3で得られた本発明の化学式(1)の化合物の前駆脂肪細胞における脂肪蓄積抑制活性を、試験例1と同様の方法で測定した。対照群の中性脂肪量を100%としたときの相対値で表3に示す。その結果、本発明の化学式(1)の化合物は3T3−L1細胞に対し、強力な脂肪蓄積抑制活性を有することが示された。
【0081】
【表3】

【0082】
(試験例3) ゴボウの葉の抽出物のα−グルコシダーゼ活性の測定
特開2005−255568の実施例に記載されたのと同様の方法により、実施例2で得られたゴボウの葉のメタノール(MeOH)抽出物のα−グルコシダーゼ活性を測定した。陽性対照として、1−デオキシノジリマイシンのα−グルコシダーゼ活性も測定した。結果を以下の表4に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
以上から、ゴボウの葉の抽出物は、1−デオキシノジリマイシンと比較してα−グルコシダーゼ活性がはるかに低く、α−グルコシダーゼ活性を実質的に有しないことが示された。従って、ゴボウの葉の抽出物は、特開2005−255568に記載されるゴボウ抽出物とは異なるものであることが示された。
【0085】
(実施例5) 錠剤の製造
実施例1で得られたゴボウの葉のエタノール抽出物20g、結晶セルロース(旭化成)73.8gおよびポリビニルピロリドン(BASF)5gを混合し、これにエタノール30mLを添加して、湿式法により常法にしたがって顆粒を製造した。この顆粒を乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて打錠用顆粒末とし、打錠機を用いて打錠し、1錠が1gの錠剤100個を製造した。
【0086】
(実施例6) 顆粒剤の製造
実施例1で得られたゴボウの葉のエタノール抽出物20g、乳糖(DMV)160gおよび結晶セルロース(旭化成)60gを混合し、これにエタノール130mLを添加し、練合機を用いて通常の方法で5分間練合した。練合終了後、10メッシュで篩過し、乾燥機中にて50℃で乾燥した。乾燥後、整粒し、顆粒剤240gを得た。
【0087】
(実施例7) シロップ剤の製造
精製水400gを煮沸し、これをかき混ぜながら、白糖750gおよび実施例1で得られたゴボウの葉のエタノール抽出物10gを加えて溶解し、熱時に布ごしし、これに精製水を加えて全量1000mLとし、シロップ剤を製造した。
【0088】
(実施例8) クリーム剤の製造
【0089】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】ゴボウの葉の有機溶媒抽出物を凍結乾燥して得られた乾燥固体にエタノールを加え、上清を減圧下に濃縮、乾固し、薄層クロマトグラフィーにより分離した結果を示す。矢印のスポットが化学式(1)で表される化合物を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴボウの葉の抽出物を有効成分として含む脂肪蓄積抑制剤。
【請求項2】
ゴボウの葉の抽出物が、ゴボウの葉の有機溶媒抽出物である請求項1記載の脂肪蓄積抑制剤。
【請求項3】
ゴボウの葉の抽出物が、ゴボウの葉のアルコール抽出物または含水アルコール抽出物である請求項1または2記載の脂肪蓄積抑制剤。
【請求項4】
抽出物が次の化学式(1)
【化1】

で表される化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の脂肪蓄積抑制剤。
【請求項5】
次の化学式(1)
【化2】

で表される化合物を有効成分として含む脂肪蓄積抑制剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の脂肪蓄積抑制剤を含有する食品、化粧料または飼料。
【請求項7】
脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する状態を予防または改善するためのものである、請求項6記載の食品、化粧料または飼料。
【請求項8】
状態が肥満である、請求項7記載の食品、化粧料または飼料。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項記載の脂肪蓄積抑制剤を含有する、脂肪細胞における脂肪の蓄積に関連する疾患を予防または治療するための医薬組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−137976(P2008−137976A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328081(P2006−328081)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】