脂質封入
本発明は、酸化されやすい脂質を酸化障害から保護するためのエマルジョン、及びそれを製造する方法に関する。当該脂質は、カゼイン及びホエータンパク質の複合体中に封入される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化しやすい脂質の保護、特にタンパク質複合体中に脂質を封入することにより酸化しやすい脂質を酸化的障害から保護するエマルジョンに関する。本発明は、当該エマルジョン、並びに当該エマルジョンを含む食品及び化粧品を調製する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
長鎖不飽和脂肪酸は、ヒトの健康において広範囲の栄養及び健康の利益を提供することが、最近認識されてきている(Uauy−Dagach,R.and Valenzuela,A.Nutrition Reviews 1996;54,102−108;Ruxton,C.H.S.,Reed,S.C.,Simpson,J.A.and Millington,KJ.2004;J.Human Nutr.Dietet.17,449−459)。
【0003】
例えば、オメガ−3脂肪酸は、冠状動脈性心臓病、高血圧症、2型糖尿病、関節リウマチ、クローン病及び閉塞性肺疾患の予防に寄与することが実証された(Simopoulos AP,Am J Clin Nutr,1999;70:560−569)。
【0004】
これらの脂質の潜在的な利益の認識は、それらを含む食品及び栄養補給食品において、刺激された関心を有する。しかし、脂質、例えばオメガ−3脂肪酸を食品に含ませることは、主な製剤チャレンジを生み出す。多くの脂質は、熱、光及び酸素に対して感受性であり、非常に速く酸化的障害を受ける。脂肪酸酸化は、食品のフレーバー、香り、質感、保存期間及び色に影響を与え得る食品劣化の主な原因である。
【0005】
食品中で所望されない特性、例えば異臭を生み出す上に、酸化的障害は、酸化しやすい脂質の有益な生物活性を排除し得る。体内のフリーラジカル形成の増大による、健康被害の可能性も存在する。従って、オメガ−3脂肪酸のような酸化しやすい脂質が、首尾よく食品中に組み込まれる場合、これらの負の特性は回避されなければならない。
【0006】
酸化的障害を減少させる1つの方法は、酸化しやすい脂質を封入して、酸化しやすい脂質の二重結合及び他の影響を受けやすい場所を攻撃する酸素、微量金属及び他の物質とのその接触を減少させることである。この目的のために、酸化しやすい脂質は、多くの他の物質、例えば他の油、多糖類及びタンパク質と組み合わされてきた。
【0007】
脂肪酸及び他の脂質のための多くの存在する封入系は、マイクロカプセルを形成するために多糖類及びゼラチンを用いる;例えば、英国特許GB1,236,885を参照のこと。それらのサイズが比較的大きいので、これらのマイクロカプセルは低粘性の製品中に体積され、従って、飲料、特に長期保存期間、熱処理食品における適用に適していない。
【0008】
米国特許第4,895,725号においては、魚油のマイクロカプセルは、魚油を非油溶性の腸溶性コーティング中に封入することにより製造する。口当たりは良いが、得られるカプセルは、熱安定性でなく、7より高いpHで不安定である。これは、広い範囲の食品中でのそれらの適用を非常に限定する。
【0009】
タンパク質は、酸化しやすい脂質を封入するのにも用いられており、臭いの強い脂質の香りを減少させるのに部分的に成功してきた。例えば、特許出願JP60−102168号は、魚臭さを抑えることのできる親水性タンパク質を組み込んだ魚油エマルジョンについて記載する。しかし、この組成物は酸化を受けやすく、更に抗酸化物質を含まなければならない。複雑な食品系における酸化機構は、バルクオイル中のものとは異なる。バルクオイル中で効果的な抗酸化物質である化合物は、複雑な食品系で酸化促進活性を有し得る。従って、可能であれば、抗酸化化合物の組み込みを回避することが望まれ得る。タンパク質は、一般的に加熱された場合に不安定でもあるので、タンパク質ベースのエマルジョンは、多くの食品適用に不適切であり得る。
【0010】
PCT公開WO01/80656は、ミルク又は水性部分、保護油、例えばオーツ麦油又はオーツ麦のふすま油、及びダイズタンパク質で安定化された多価不飽和脂質を含んで成る組成物について説明する。このエマルジョンは、保護油の抗酸化特性により、非安定化エマルジョンより低い酸化速度を示したことが報告されている。
【0011】
PCT公開WO96/19114は、魚油を含む油中水エマルジョンについて記載する。エマルジョンの脂肪相は、非水素化魚油及び抗酸化物質を含んで成る。水相は、脂肪相の成分と反応又は反応を触媒することのできる任意の成分を含まなければならない。この明細書は、乳タンパク質が、魚油と反応又は魚油との反応のための触媒として作用し得る成分、及び/又は金属異臭又は生臭さを引き起こす抗酸化物質を含んでいることを報告する。従って、エマルジョン中のこれらのタンパク質の使用が回避されるべきであることが示唆されている。
【0012】
しかし、米国特許出願第20030185960号において、乳タンパク質は、酸素感受性油を封入するために、炭水化物と組み合わせて用いられた。この明細書は、乳タンパク質、例えばカゼイン、ダイズ又はホエーを、還元基を含む炭化水素と共に加熱することについて記載する。得られたメイラード反応生成物は油と混合され、均質化される。不幸なことに、メイラード反応生成物は、ヒトの健康において負の影響を有すると考えられる。更に、得られたエマルジョンの高い糖度は、低カロリー及び/又は低炭水化物のおいしい製品におけるその使用を排除する。
【0013】
従って、本発明の目的は、上記の不利点の少なくともいくつかを軽減し、或いは少なくとも公衆に有用な選択肢を提供する、少なくとも1つの酸化しやすい脂質を封入するための改善された又は代替のエマルジョンを提供することである。
【発明の開示】
【0014】
発明の概要
第一の側面において、本発明は、カゼイン及びホエータンパク質の複合体中に封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを広く含む。
【0015】
1つの実施態様において、エマルジョンは、約0.5〜約60重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約1〜約50重量%、より好ましくは約10〜40重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましい実施態様において、エマルジョンは、約20〜約30重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。
【0016】
別の実施態様において、酸化されやすい脂質は、食用脂質、例えば多価不飽和脂肪酸又はそのエステルである。好ましくは、酸化されやすい脂質は、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルである。より好ましくは、酸化されやすい脂質は、魚油であり、或いは魚油から誘導される。最も好ましくは、酸化されやすい脂質は、オメガ−3脂肪酸、例えばエイコサペンタエン酸(EPA)又はドコサヘキサエン酸(DHA)である。
【0017】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約25重量%のカゼインを含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約0.25〜約5重量%のカゼインを含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のカゼイン、最も好ましくは約2〜約3重量%のカゼインを含んで成る。
【0018】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のホエータンパク質を含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約0.25〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のホエータンパク質、最も好ましくは、約2〜約3重量%のホエータンパク質を含んで成る。
【0019】
別の実施態様において、エマルジョン中のカゼインのホエータンパク質に対する重量比は、約10:1〜約1:10である。好ましくは、カゼインのホエータンパク質に対する比率は、約5:1〜約1:5、より好ましくは約2:1〜約1:2、最も好ましくは1:1である。
【0020】
好ましくは、カゼインは、カゼイン塩ナトリウムである。
【0021】
好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質単離物(WPI)である。
【0022】
別の実施態様において、複合体は、カゼイン及びホエータンパク質溶液の混合物を、約70℃〜約100℃、より好ましくは約80℃〜約95℃、最も好ましくは約90℃で加熱することにより形成する。好ましくは、加熱は、約1〜約30分間である。より好ましくは、加熱は、約5〜約20分間である。最も好ましくは、加熱は、約5分間である。
【0023】
好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6〜約9にpH調整される。より好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6.5〜約8、より好ましくは、約7.5〜約8.0にpH調整される。
【0024】
好ましい実施態様において、エマルジョンは、約2重量%のカゼイン及び約2重量%のホエータンパク質を含んで成る。
【0025】
任意に、エマルジョンは、脱臭することができる。1つの実施態様において、エマルジョンは、減圧下で窒素をそれにバブリングすることにより脱臭することができる。
【0026】
任意に、エマルジョンは、乾燥させて粉末を形成させることができる。1つの実施態様において、エマルジョンは、噴霧乾燥により乾燥させることができる。
【0027】
任意に、エマルジョンは、熱処理又は加熱滅菌することができる。1つの実施態様において、エマルジョンは、超高温により滅菌される(UHT)(例えば、140℃で5秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、低温殺菌される(例えば、72℃で15秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、レトルトされる(例えば、密封容器中で120℃で20分間加熱される)。
【0028】
第二の側面において、本発明は、
(a)水溶液中でカゼイン及びホエータンパク質の複合体を形成させること(ここで、カゼイン及びホエータンパク質は、ジスルフィド結合により結合している)、
(b)少なくとも1つの酸化されやすい脂質を水溶液中に分散させること、及び
(c)段階(b)において形成された混合物を均質化すること、
を含んで成る、カゼイン及びホエータンパク質の複合体により封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを製造する方法を広く含んで成る。
【0029】
1つの実施態様において、エマルジョンは、約0.5〜約60重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約1〜約50重量%、より好ましくは約10〜約40重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましい実施態様において、エマルジョンは、約20〜約30重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。
【0030】
別の実施態様において、酸化されやすい脂質は、食用脂質、例えば多価不飽和脂肪酸又はそのエステルである。好ましくは、酸化されやすい脂質は、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルである。より好ましくは、酸化されやすい脂質は、魚油であるか、或いは魚油から誘導される。最も好ましくは、酸化されやすい脂質は、オメガ−3脂肪酸、例えばEPA又はDHAである。
【0031】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のカゼイン、好ましくは約0.25〜約5重量%のカゼインを含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のカゼイン、最も好ましくは、約2〜約3重量%のカゼインを含んで成る。
【0032】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のホエータンパク質、好ましくは約0.25〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のホエータンパク質、最も好ましくは約2〜約3重量%のホエータンパク質を含んで成る。
【0033】
エマルジョンの別の実施態様において、カゼインのホエータンパク質に対する重量比は、約10:1〜約1:10である。好ましくは、カゼインのホエータンパク質に対する比率は、約5:1〜約1:5、より好ましくは、約2:1〜約1:2、最も好ましくは1:1である。
【0034】
好ましくは、カゼインは、カゼイン塩ナトリウムである。
【0035】
好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質単離物(WPI)である。
【0036】
別の実施態様において、複合体は、カゼイン及びホエータンパク質溶液の混合物を、約70℃〜約100℃、より好ましくは約80℃〜約95℃、最も好ましくは約90℃で加熱することにより形成する。好ましくは、加熱は、約1〜約30分間である。より好ましくは、加熱は、約5〜約20分間である。最も好ましくは、加熱は、約5分間である。
【0037】
好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6〜約9にpH調整される。より好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6.5〜約8、より好ましくは、約7.5〜約8.0にpH調整される。
【0038】
任意に、本方法は、脱臭の更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、減圧下で窒素をそれにバブリングすることにより脱臭することができる。
【0039】
任意に、本方法は、エマルジョンを乾燥させる更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、噴霧乾燥により乾燥させることができる。
【0040】
任意に、本方法は、熱処理又は加熱滅菌の更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、超高温により滅菌される(UHT)(例えば、140℃で5秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、低温殺菌される(例えば、72℃で15秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、レトルトされる(例えば、密封容器中で120℃で20分間加熱される)。
【0041】
第三の側面において、本発明は、
(a)カゼイン及びホエータンパク質の水溶液を加熱し、タンパク質複合体を形成させること、
(b)少なくとも1つの酸化されやすい脂質を水溶液中に分散させること、及び
(c)段階(b)において形成された混合物を均質化すること、
を含んで成る、カゼイン及びホエータンパク質の複合体により封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを製造する方法を広く含んで成る。
【0042】
1つの実施態様において、エマルジョンは、約0.5〜約60重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約1〜約50重量%、より好ましくは約10〜約40重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましい実施態様において、エマルジョンは、約20〜約30重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。
【0043】
別の実施態様において、酸化されやすい脂質は、食用脂質、例えば多価不飽和脂肪酸又はそのエステルである。好ましくは、酸化されやすい脂質は、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルである。より好ましくは、酸化されやすい脂質は、魚油であるか、或いは魚油から誘導される。最も好ましくは、酸化されやすい脂質は、オメガ−3脂肪酸、例えばEPA又はDHAである。
【0044】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のカゼイン、好ましくは約0.25〜約5重量%のカゼインを含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のカゼイン、最も好ましくは、約2〜約3重量%のカゼインを含んで成る。
【0045】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のホエータンパク質、好ましくは約0.25〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のホエータンパク質、最も好ましくは約2〜約3重量%のホエータンパク質を含んで成る。
【0046】
エマルジョンの別の実施態様において、カゼインのホエータンパク質に対する重量比は、約10:1〜約1:10である。好ましくは、カゼインのホエータンパク質に対する比率は、約5:1〜約1:5、より好ましくは、約2:1〜約1:2、最も好ましくは1:1である。
【0047】
別の実施態様において、カゼインは、カゼイン塩ナトリウムである。
【0048】
別の実施態様において、ホエータンパク質は、ホエータンパク質単離物(WPI)である。
【0049】
別の実施態様において、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、約70℃〜約100℃、より好ましくは約80℃〜約95℃、最も好ましくは約90℃で加熱する。好ましくは、加熱は、約1〜約30分間である。より好ましくは、加熱は、約5〜約20分間である。最も好ましくは、加熱は、約5分間である。
【0050】
好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6〜約9にpH調整される。より好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6.5〜約8、より好ましくは、約7.5〜約8.0にpH調整される。
【0051】
任意に、本方法は、脱臭の更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、減圧下で窒素をそれにバブリングすることにより脱臭することができる。
【0052】
任意に、本方法は、エマルジョンを乾燥させる更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、噴霧乾燥により乾燥させることができる。
【0053】
任意に、本方法は、熱処理又は加熱滅菌の更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、超高温により滅菌される(UHT)(例えば、140℃で5秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、低温殺菌される(例えば、72℃で15秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、レトルトされる(例えば、密封容器中で120℃で20分間加熱される)。
【0054】
本発明の更なる側面は、本発明のエマルジョンを乾燥させることにより得られる粉末、並びに双方の組み合わせの本発明のエマルジョン又は粉末を組み込んだ食品及び化粧品を提供する。
【0055】
1つの実施態様において、本発明は、本発明のエマルジョン又は粉末を含んで成る食品、例えばディップ、調味料、ソース又はペーストを提供する。
【0056】
別の実施態様において、本発明は、本発明のエマルジョン又は粉末を含んで成る化粧品、例えば保湿剤、スキンクリーム、ハンドクリーム、フェイス−クリーム又はマッサージクリームを提供する。
【0057】
発明の詳細な説明
本明細書中で用いられる場合、用語「脂質」は、有機溶媒中で可溶性の物質を意味し、油、脂肪、トリグリセリド、脂肪酸及びリン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書中で用いられる場合、用語「エマルジョン」は、2つの非混和性液相を含んで成る組成物(ここで、液相の1つは、小さな液滴の形態で他方の中に分散している)を意味する。
【0059】
本明細書中で用いられる場合、用語「多価不飽和脂肪酸又はそのエステル」は、炭化水素鎖中に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する脂肪酸、又はそのような酸のエステルを意味する。
【0060】
本明細書中で用いられる場合、用語「高度不飽和脂肪酸又はそのエステル」は、少なくとも18個の炭素原子と少なくとも3個の二重結合を有する多価不飽和脂肪酸、又はそのような酸のエステルを意味する。
【0061】
本明細書中で用いられる場合、用語「魚油」は、魚を含む(これに限定されない)水中で生きている動物から抽出された油又は脂肪を意味する。例としては、マグロ、ニシン、サバ、イワシ、サケ、タラの肝臓、アンチョビ、ハリバ及びサメ並びにそれらの組み合わせから抽出された油又は脂肪が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書中で用いられる場合、用語「オメガ−3脂肪酸」は、第一の二重結合が、酸基の反対側の末端から3番目の炭素−炭素結合において生じる多価不飽和脂肪酸を意味する。
【0063】
本明細書中で用いられる場合、用語「含んで成る」は、「少なくとも一部分において存在する」を意味する。すなわち、その用語を含む本明細書中の記述を解釈する場合、各記述においてその用語により前置きされる特徴は、全て存在する必要があるが、他の特徴も存在し得る。
【0064】
本明細書中で開示される数の範囲への言及(例えば、1〜10)は、その範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10)、及びその範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2〜8、1.5〜5.5及び3.1〜4.7)への言及も組み込み、従って、本明細書中で明確に開示された全ての範囲の全ての下位範囲は、それにより明確に開示されることが意図される。これらは、具体的に意図されるもののほんの一例であり、列挙される最も低い値と最も高い値の間の数値の全ての可能な組み合わせは、同様の方法において本出願中で明確に記述されているとみなされるべきである。
【0065】
第一の側面において、本発明は、カゼイン及びホエータンパク質の複合体中に封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを提供する。好ましくは、当該複合体は、ある程度まで架橋した又は別の方法で共有結合したカゼイン及びホエータンパク質を含んで成る。
【0066】
複合体による酸化されやすい脂質の封入は、酸化されやすい脂質を安定化し、その酸化速度を減少させる。また、それは、脂質の臭いと味をマスクし、それを消費者にとってより口当たりの良いものとする。得られた生成物は、それが熱安定性であるという利点を有し、これは、それが熱処理され又は加熱滅菌されることを可能にする。
【0067】
この複合体は、好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液を加熱することにより作られる。
【0068】
理論に拘束されることを望むわけではないが、この方法は、各タンパク質のスルフヒドリル基を放出するホエータンパク質のアンフォールディングを引き起こし、それがカゼインと分子内ジスルフィド結合を形成することを可能にすると考えられる。ホエータンパク質中に存在する過剰のスルフヒドリル基は、還元状態を保つ。これらの遊離のスルフヒドリル基は、複合体に更なる抗酸化活性を付与する。
【0069】
好ましくは、複合体による酸化されやすい脂質の封入は、タンパク質複合体と脂質の混合物の均質化により達成される。これは、0.4±0.5μmの平均直径を有する酸化されやすい脂質の微粒子の形成をもたらし、これはタンパク質複合体中に封入されている。油水界面に吸着したタンパク質複合体は、エマルジョンの安定性を大きく改善し、酸化されやすい脂質を酸化剤及び酸化促進剤に対する曝露から保護する。酸化促進剤、例えば金属イオンは、脂質酸化の開始のための活性化エネルギーを低下させることができる。これらの金属イオンのいくつかは、タンパク質複合体により結合され、これは脂質酸化におけるそれらの負の影響を軽減する。
【0070】
本発明における使用のためのカゼインは、任意のカゼインタンパク質であることができ、例えばα−カゼイン、κ−カゼイン、β−カゼイン及びδ−カゼイン、並びにそれらの塩及びその混合物が挙であるが、これらに限定されない。好ましくは、カゼインは、カゼイン塩ナトリウムである。
【0071】
本発明における使用のためのホエータンパク質は、任意の乳清タンパク質又はタンパク質組成物であることができ、例えばホエータンパク質単離物、ホエータンパク質濃縮物、α−ラクトアルブミン及びβ−ラクトグロブリンであるが、これらに限定されない。好ましくは、ホエータンパク質はWPIである。
【0072】
酸化されやすい脂質は、大気酸素への曝露により少なくとも部分的に酸化された任意の脂質であることができる。酸化されやすい脂質は、食品、医薬又は化粧品産業における使用の任意の脂質でることができ、好ましくは食用脂質である。酸化されやすい脂質は、海洋動物、植物、植物プランクトン又は微細藻類を含む藻類、又は任意の他の適切なソースから抽出することができる。或いは、それは合成的に生成することができる。酸化されやすい脂質は、非精製、精製又は高度精製形態、濃縮又は非濃縮において用いることができる。
【0073】
本発明における使用に適した酸化されやすい脂質としては、植物油、例えばカノーラ油、ルリヂサ油、月見草油、ベニバナ油、ヒマワリ油、アマニ油、小麦胚芽油、藻類油、ブドウ種油;酸素感受性脂肪;オメガ−3脂肪酸前駆体、例えばα−リノレン酸;及び、魚、例えばマグロ、ニシン、サバ、イワシ、サケ、タラの肝臓、アンチョビ、ハリバ及びサメから得られる魚油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
好ましい酸化されやすい脂質は、多価不飽和脂肪酸及びそのエステル、特に高度不飽和脂肪酸又はそのエステルである。好ましくは、本発明のエマルジョンは、少なくとも約10%の多価不飽和脂肪酸又はエステルを含む。高度不飽和脂肪酸、例えばオメガ−3及びオメガ−6脂肪酸、及びそれらを含む油、例えばEPA及びDHAが特に好ましい。
【0075】
本発明のエマルジョンの酸化安定性は、当業界で知られた任意の試験、例えば過酸化物価(Association of Official Analytical Chemists,International;Official Method CD 8−53)又はTBARS試験(Inou,T.,Ando,K.and Kikugawa,K.1998.Journal of the American Oil Chemists’ Society,75,597−600)を用いて測定することができる。組成物の酸化安定性を分析するための別の技術は、プロパナール形成を測定することによる。プロパナールは、オメガ−3脂肪酸の主な酸化生成物であるが、脂質が酸化された場合に生成される異臭の主な源である。従って、プロパナール形成の揮発性物質分析は、酸化安定性を測定するのに用いることができる(D Djordjevic,D J McClements and E A Decker,Journal of Food Science 2004,Vol.69 Nr.5,356−362.;H Lee et al.Journal of Food Science 2003,Vol.68 Nr.7 2169−2177;Augustin Mary Ann and Sanguansri,Luz.米国特許出願第20030185960号)。
【0076】
図1は、本発明の方法の好ましい実施態様を示す。図に示すように、水中で等量(重量による)のカゼイン及びホエータンパク質を第一に混合し、水溶液を形成することにより、エマルジョンを生成する。1:1の比率のタンパク質成分が好ましいが、他の比率を本発明の方法において用いることができる。
【0077】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のカゼインを含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約0.25〜約5重量%のカゼインを含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のカゼイン、最も好ましくは約2〜約3重量%のカゼインを含んで成る。
【0078】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のホエータンパク質を含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約0.25〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のホエータンパク質、最も好ましくは約2〜約3重量%のホエータンパク質を含んで成る。
【0079】
好ましくは、全タンパク質濃度は、約0.5〜約10%である。より好ましくは、全タンパク質濃度は、約2〜約8%である。好ましい実施態様において、全タンパク質濃度は、4%である。異なるタンパク質濃度を有するエマルジョンは、異なる適用において有用であることができる。高いタンパク質濃度のエマルジョン(例えば、10%のタンパク質)は、粘性があり、取り扱いが困難であり得る。タンパク質は高価な成分であるので、低いタンパク質濃度の高い安定性のエマルジョンは、経済的に有利である。
【0080】
任意に、水は最初に脱イオン化することができ、当業界で知られた技術を用いて酸素を除去することができる。
【0081】
この実施態様においては、その後、混合物のpHを約6〜約9に調整する。好ましくは、pHを、約6.5〜約8、より好ましくは約7.5〜約8に調整する。pHは、任意の塩基性水溶液、例えばNaOH溶液、酸性水溶液、例えばHCl溶液を用いて調整することができる。
【0082】
この実施態様においては、その後、混合物を約70℃〜約100℃まで1〜30分間加熱する。好ましくは、混合物を、約75℃〜約95℃、より好ましくは約90℃まで加熱する。好ましくは、混合物を5分間加熱する。加熱は、タンパク質のアンフォールディングを引き起こし、それによりそのスルフヒドリル基を曝露する。スルフヒドリル基は、スルフヒドリル−ジスルフィド交換反応を受け、分子内結合を形成し、2つのタイプのタンパク質の複合体を生成すると考えられる。
【0083】
その後、酸化されやすい脂質、この場合魚油を、複合体と混合する。混合物を均質化し、本発明のエマルジョンを形成する。均質化段階は、当業界で知られた任意の従来の乳化方法により実施することができる。例えば、酸化されやすい脂質は、高せん断混合下で水相に添加し、プレエマルジョンを調製することができる。プレエマルジョンは、その後、高圧均質化にかけることができる。油と均質化する場合、ジスルフィド結合複合体は、より厚く、より安定な界面層を形成する。これは、単一タンパク質又はタンパク質の非複合混合物により生成されるエマルジョンと比較して、エマルジョンに対してより大きな封入及びより優れた熱安定性を提供する。
【0084】
任意に、エマルジョンは、熱処理又は加熱滅菌することができる。例えば、エマルジョンは、超高温処理(例えば、140℃で5秒間)又は低温殺菌(例えば、72℃で15秒間)にかけることができる。エマルジョンは、レトルトすることもできる(例えば、密封容器中で120℃で20分間加熱される)。エマルジョンは、当業界で知られた任意の方法により乾燥し、封入された酸化されやすい脂質を含む粉末を形成することもできる。エマルジョンを乾燥する方法としては、噴霧乾燥が挙げられるが、これに限定されない。
【0085】
本発明のエマルジョンは、添加剤、例えば着香料、栄養素、ビタミン、安定剤、防腐剤、抗酸化物質、甘味料、着色剤、マスキング剤、糖類、緩衝液、崩壊剤、懸濁化剤、可溶化剤、乳化剤、エンハンサーなども含んで成ることができる。
【0086】
オメガ−3脂肪酸などの酸化されやすい脂質を含む食品は、高価値、機能性食品であると考えられる。本発明により作られたエマルジョン及び粉末は、成分として様々な食料品、例えばミルク及びミルクベースの製品、ディップ、スプレッド、ソース、ペースト、ヨーグルト、調味料、ドレッシング、飲料、パスタ製品、パン及びベーカリー製品、肉及び魚製品、乳児食、加工チーズ、天然のチーズ、野菜ジュース、フルーツジュース、ソーセージ、パテ、キャンディ、マヨネーズ、ドレッシング、大豆ソース、大豆ペースト(これらに限定されない)中での使用に適している。それらは、代替ソース又はアイスクリーム中の油と脂肪の部分的交換、乳製品デザート、クリーム、スープのもと、充填乳製品デザート、スナック食品及び栄養素及びスポーツバーとして用いることもできる。
【0087】
本発明のエマルジョンは、それが熱安定性であるという利点を有し、これはそれが滅菌されることを可能にする。これは、消費の前に滅菌されなければならない食品及び栄養補助食品製品、例えば調製粉乳及びUHT飲料に、封入された脂質を添加することを可能にするので大きな利点である。
【0088】
本発明のエマルジョンは、他の分野において、例えば油溶性香味料、抗酸化物質及び医療用の他の生物活性物質を封入するために用いることもできる。例えば、オイルベース中に供給された栄養補助食品、例えばタラの肝油、鉱油、油溶性ビタミン及び薬剤は、全て本発明のエマルジョンに組み込むことができる。特に、本発明のエマルジョンは、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンE、トコフェロール、トコトリエノール、ビタミンK(キノン)、ベータ−カロチン(プロビタミンA)及びそれらの混合物を供給するために用いることができる。
【0089】
本発明のエマルジョンは、化粧品、例えば保湿剤、スキンクリーム、ハンドクリーム、フェイスクリーム、マッサージクリーム又はメイクアップの製造において用いることもできる。
【0090】
本発明のエマルジョンは、酸化しやすい脂質、例えば魚油を安定化するための便利で費用効率の高い手段を提供する。タンパク質複合体中の封入は、酸化しやすい脂質の酸化速度を減少させ、任意の嫌な臭い及び/又は味がマスクされることを確実にし、それを消費者に対してより口当たりの良いものとする。
【0091】
酸化しやすい脂質を酸化剤及び酸化促進剤から保護する以外に、曝露されたスルフヒドリル基は、それら自身抗酸化活性を有し得る。従って、本発明のエマルジョンの固有の抗酸化特性は、酸化されやすい脂質を腐食から防ぐことの援助もする。更に、カゼイン及びホエータンパク質は、金属イオン、例えばFe及びCuのイオンを結合することも知られている。これらのイオンは、脂質酸化の誘導のための触媒であると考えられる。
【0092】
本発明のエマルジョンの固有の抗酸化活性は、エマルジョン又はエマルジョンから作られる製品に添加される追加の抗酸化化合物に対する必要性を軽減又は排除し得る。これは、バルクオイル中の抗酸化物質として首尾良く用いられる多くの化合物が、複雑な食品系で酸化促進作用を実証し得るので、有利である。
【0093】
本発明のエマルジョンは、酸化に対して耐性であり、熱処理、例えば低温殺菌及びUHTに対して安定であり、長期の保存期間を有し、改善された香り及び味を有する。
【0094】
本発明の様々な側面は、以下の実施例を参照することにより、非限定的な方法で例示されるだろう。
【実施例】
【0095】
実施例1
1kgのエマルジョンを生成するために、20gのホエータンパク質単離物及び20gのカゼイン塩ナトリウム(両方ともFonterra Co−operative Ltd,New Zealandにより供給される)は、660gの脱イオン水中に40℃で30分間継続的な撹拌により溶解した。脱イオン水は、減圧下で水を0.22μmのろ過膜に通し、酸素を除去することにより生成した。タンパク質溶液のpHを、1MのNaOHを用いて7.5に調整した。タンパク質溶液を、超高温(UHT)パイロットプラント(Alpha Laval,Sweden)中で90℃まで急速に加熱し、この温度で10分間保持し、その後氷浴中で20℃まで即座に冷却した。タンパク質溶液(700g)を、300gのマグロ油(ROPUFA’30’n−3 食用油,Roche Vitamins(UK)Ltd)と混合し、この混合物を、2段階のホモジナイザー(AVP 2000,Demark)中で、250バールの第一段階の圧力及び40バールの第二段階の圧力により均質化した。油相のより効果的な混合のために、エマルジョンを2回均質化した。その後、UHTプラントを用いてエマルジョンを72℃で15秒間低温殺菌した。
【0096】
この方法を、図1において図示する。
【0097】
実施例2
8つのタンパク質含有エマルジョン(A−D及びF−G)の酸化速度を、4日間にわたって、本発明のエマルジョン(E)と比較した。エマルジョンの組成物を、以下に示す。
A:2%のカゼイン塩ナトリウム
B:4%のカゼイン塩ナトリウム
C:2%のWPI
D:4%のWPI
E:本発明のエマルジョン(2%のWPI及び2%のカゼイン塩ナトリウム)
F:2%のカゼイン塩ナトリウム+90℃で30分間加熱した2%のグルコース
G:4%のカゼイン塩ナトリウム+90℃で30分間加熱した4%のグルコース
H:2%のWPI+90℃で30分間加熱した2%のグルコース
I:4%のWPI+90℃で30分間加熱した4%のグルコース
【0098】
エマルジョンA〜Dは、D Djordjevic,D J McClements及びE A Deckerにより刊行された論文、Journal of Food Science 2004,Vol.69 No.5,356−362(これは、米国特許第6,444,242号の基礎を形成する)に基づいて調製した。エマルジョンEは、実施例1に基づいて調製した。エマルジョンF〜Iを、米国特許出願第20030185960号の教示から調製した。
【0099】
全てのエマルジョンは、30%の魚油を含んでいた。エマルジョンを60℃でインキュベートし、16、39、63及び84時間において試験した。結果を図2に示す。酸化の程度を、酸性条件下でmmol/kgの油中のマロンアルデヒド(MDA)の濃度を測定するチオバルビツール酸反応性物質(TBAR)試験を用いて測定した。
【0100】
図2から分かるように、エマルジョンEは、比較のタンパク質ベースのエマルジョンより、顕著に低い酸化速度を示した。
【0101】
実施例3
オメガ−3脂肪酸の酸化の副産物の1つである、プロパナールの形成を測定することにより、酸化安定性及び揮発性異臭の形成に関して、実施例2で規定するエマルジョンA〜Iを調べた(D Djordjevic,D J McClements and E A Decker,Journal of Food Science 2004,Vol.69 Nr.5,356−362.;H Lee et al.Journal of Food Science 2003,Vol.68 Nr.7 2169−2177;Augustin Mary Ann and Sanguansri,Luz.米国特許出願第20030185960号)。
【0102】
各エマルジョン(3g)を、ガラスバイアル(20ml)中に密封し、次いで試料を50℃でインキュベートし、その後SPMEファイバー(Supelco 75μm Carboxen−PDMS)を用いて20分間固相微量抽出(SPME)を行った。その後、Shimazu AOC−5000オートサンプラー、及びキャプラリーカラム(30m、0.32i.d.、0.5μmのフィルム)及びFID検出器を取り付けたSupelcowax 10を装着したShimazu GC−2010ガスクロマトグラフを用いて、試料を分析した。各試料に関して、少なくとも2回分析を実施した。本物のプロパナールから作った標準曲線を用いて、プロパナール濃度をピーク面積から測定した。
【0103】
図3から分かるように、エマルジョンEは、比較のタンパク質ベースのエマルジョンよりも、顕著に低い酸化速度を示した。
【0104】
実施例4
本発明のエマルジョン(表1)を、様々な濃度のタンパク質複合体を用いて調製し、全タンパク質濃度の脂質酸化の程度への影響を測定した。
【0105】
乳化の前に、タンパク質混合溶液をpH6.7に調整し、5分間で90℃まで加熱することを除いて、実質的に実施例1で説明したようにエマルジョンを調製した。
【0106】
【表1】
【0107】
エマルジョンを60℃でインキュベートし、16及び39時間後に試験した。結果を、図4A及び4Bに示す。図4Aは、脂質酸化(TBAR値)を示し、図4Bは、ヒドロペルオキシド値を示す。
【0108】
脂質酸化は、2%を超えるタンパク質濃度を有するエマルジョンにおいて顕著に減少した。
【0109】
実施例5
5%のWPI+5%のカゼイン塩ナトリウムを用いることを除いて、同様の方法において調製した本発明のエマルジョンに対して、プロパナール分析を用いて、酸化安定性及び揮発性異臭の形成に関して、実施例4に規定したエマルジョンd(2%のWPI+2%のカゼイン塩ナトリウム)を試験した。
【0110】
実施例5の結果は、エマルジョンの酸化安定性は、10%の全タンパク質濃度においてでさえも保持されることを示す。
【0111】
実施例6
異なるpHのタンパク質溶液を加熱することにより調製した本発明のエマルジョンの脂質酸化速度を測定した。2重量%のカゼイン塩ナトリウム溶液及び2重量%のWPI溶液の混合物のpHを、6.2〜8.0の範囲に調整し、その後5分間で90℃で加熱することを除いて、実施例1に記載のようにエマルジョンを調製した。結果を、図6A及び6Bに示す。図6Aは、脂質酸化値(TBAR)を示し、一方図6Bは、ヒドロペルオキシド値を示す。
【0112】
TBAR及びヒドロペルオキシド値の両方の結果は、加熱時のpHが、形成されたエマルジョンの脂質酸化速度においてかなりの影響を有することを、明確に示す。pH7.5又は8.0で加熱したタンパク質溶液を用いて、最も酸化的に安定なエマルジョンを調製した。
【0113】
実施例7
異なるpHでタンパク質溶液を加熱することにより調製した本発明のエマルジョン中のプロパナールの形成を試験することにより、本発明のエマルジョンの脂質酸化速度及び揮発性異臭の形成を測定した。
【0114】
2%のWPI及び2%のカゼイン塩ナトリウムの溶液を、1MのHCl又はNaOHを用いて異なるpH値に調整し、90℃で5分間加熱した。試料を10℃まで冷却し、魚油と混合し、均質化して、30%の油を含む最終的なエマルジョンを生成した。
【0115】
図7は、新鮮なエマルジョン(7A)及び60℃での6時間の保管後のエマルジョン(7B)中のプロパナールの形成を示す。実施例2で規定したように、エマルジョンAに関して同等のデータも提供される。
【0116】
実施例6で提供されたヒドロペルオキシド及びTBARの結果と一致して、このデータは、最も酸化的に安定なエマルジョンが、約pH7.5〜8.0で加熱したタンパク質溶液を用いて調製されることを確認する。
【0117】
実施例8
更なる実験において、2つの異なる温度で加熱されたタンパク質溶液から調製される本発明のエマルジョンを比較した。エマルジョンは両方とも、pH7.5で加熱した2重量%のカゼイン塩ナトリウム及び2重量%のホエータンパク質単離物の溶液から調製した。結果を、図8A及び図8Bに示す。図8Aは、TBAR濃度を示し、図8Bは、ヒドロペルオキシド値を与える。
【0118】
90℃で加熱したタンパク質溶液から作ったエマルジョンにおける脂質酸化速度は、75℃で加熱したものと比較して、より低かったことは明らかである。
【0119】
実施例9
異なる熱処理を、本発明のエマルジョンに適用し、それらの酸化的性質を、実施例3に記載のように、プロパナール形成を用いて評価した。エマルジョンを、
(a)72℃で30秒間の低温殺菌、
(b)140℃で4秒間の超高温(UHT)処理、及び
(c)120℃で20分間のレトルト(密封ボトル中での熱処理)、
にかけた。
【0120】
得られたプロパナール濃度を、新鮮な試料のものと比較した。結果を図9に示す。熱処理は、エマルジョンの酸化速度をわずかに増大させたが、プロパナール形成は、未処理の既知の魚油エマルジョンのものと比較して大きくなかった。例えば、図3を参照のこと。
【0121】
実施例10
実施例4に記載のエマルジョンdを、コーンシロップ溶液と混合し、12%の魚油及び18%のコーンシロップを含んで成る組成物を形成した。混合エマルジョンを、2バールの噴霧圧力で、二流体ノズルを有する実験室噴霧乾燥機を用いて乾燥した。乾燥のための入口及び出口の空気温度は、それぞれ180℃及び80℃であった。
【0122】
乾燥粉末(40%の魚油を含む)を水中で再構成し、10%の魚油のエマルジョンを得た。再構成エマルジョンの酸化安定性を、実施例3に記載のプロパナール分析を用いて、新鮮なエマルジョンdのものと比較した。これを、図10に示す。
【0123】
再構成エマルジョンは、新鮮なエマルジョンより、顕著に多いプロパナールを放出しなかった。
【0124】
実施例11
魚油を含むフムス・ディップ(hummus dip)製品の開発
本発明のエマルジョンを、高濃度のオメガ3遊離脂肪酸(FFA)、いわゆるエイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含むフムス・ディップを調製するのに用いた。フムスの2つの香りを、以下に記載するように作った−「オリーブ及び日干しトマト」及び「赤唐辛子及びハラペニョ」。
【0125】
オリーブ及び日干しトマトのフムス・ディップ
成分:ヒヨコ豆(59.13%)、オリーブ(10%)、エマルジョン(13.36%)、レモンジュース(8.79%)、日干しトマト(5%)、タヒニ(2.53%)、ニンニク(0.84%)、塩(0.06%)、コショウ(0.18%)、クエン酸(0.09%)、ソルビン酸カリウム(0.02%)。
【0126】
赤唐辛子及びハラペニョのフムス・ディップ
成分:ヒヨコ豆(66.29%)、エマルジョン(13.36%)、レモンジュース(8.18%)、赤唐辛子(3%)、ハラペニョ(2.5%)、水(2.5%)、タヒニ(2.83%)、ニンニク(0.94%)、塩(0.08%)、コショウ(0.2%)、クエン酸(0.1%)、ソルビン酸カリウム(0.02%)。
【0127】
図11に示した方法に従って、エマルジョン(実施例1に記載の方法を用いて作った)を、13.3%の濃度(4%の魚油と同等)でフムス・ディップに添加した。
【0128】
エマルジョンを最初に低温殺菌し、その後均質になるまで他の成分と混ぜ合わせた。密封容器中に詰めた後、フムス・ディップを冷蔵した。
【0129】
フムス・ディップは、冷蔵条件下で1ヶ月間安定であることが見出された。脂肪酸組成分析が、オーストラリアのニューカッスル大学により、フムス・ディップに関して実施され、以下のものを含んでいることが見出された:
【0130】
【表2】
【0131】
両方のフムス・ディップは、実質的な量のEPA及びDHAを含んでいたが、検出可能な魚臭は有していなかった。
【0132】
本発明は、多くの変更及びバリエーションによって実施することができ、上記の実施例は、単なる例示によることに留意すべきである。例えば、本発明は、他の比率のカゼイン及びホエータンパク質を用いて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のエマルジョンは、食品産業において有用性を有する。それらは、酸化されやすい脂質、例えばオメガ−3脂肪酸を酸化障害から保護するのに用いることができる。
【0134】
本発明のエマルジョンは、食品及び化粧品に組み込むことができ、酸化されやすい脂質の酸化を予防又は軽減し、それにより製品の保存期間を増大させる。
【0135】
上記の説明は、単に例示により提供されるのであり、本発明がそれに限定されるものではないことを、当業者は理解するだろう。
【0136】
本発明は、以下の図面を参照して説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、本発明の方法の好ましい実施態様を示す流れ図である。
【図2】図2は、60℃でのインキュベーション間の4日間にわたる本発明の好ましい実施態様を含むタンパク質ベースのエマルジョンの脂質酸化速度を示すグラフである(チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の濃度として測定した)。
【図3】図3は、60℃でのインキュベーションの間の16時間にわたる本発明の好ましい実施態様を含むタンパク質エマルジョンの脂質酸化速度を示すグラフである(SPMEにより抽出されたヘッドスペース・プロパナールの濃度として測定した)。
【図4】図4は、様々な濃度のタンパク質溶液を用いて調製した本発明の好ましいエマルジョンの脂質酸化速度を示す2つのグラフである。図4Aは、TBARS値を示し、図4Bは、ヒドロペルオキシド値を示す。
【図5】図5は、本発明の2つの好ましい実施態様の脂質酸化速度を示すグラフである(プロパナールの形成を測定することにより測定した)。
【図6】図6は、異なるpH条件下で調製した本発明の好ましいエマルジョンの脂質酸化速度を示す2つのグラフである。図6Aは、TBARS値を示し、図6Bは、ヒドロペルオキシド値を示す。
【図7】図7は、異なるpH条件下で調製した本発明の好ましいエマルジョンの脂質酸化速度を示す2つのグラフである(プロパナールの形成を測定することにより測定した)。図7Aは、新たに調製したエマルジョンの脂質酸化速度を示し、一方図7Bは、60℃で6時間インキュベートしたエマルジョンの脂質酸化速度を示す。
【図8】図8は、温度の異なる条件下で調製した好ましいエマルジョンの脂質酸化速度を示す2つのグラフである。図8Aは、TBARS値を示し、図8Bは、ヒドロペルオキシド値を示す。
【図9】図9は、熱処理の前及び後の本発明の好ましい実施態様の脂質酸化速度を示すグラフである(プロパナールの形成を測定することにより測定した)。
【図10】図10は、乾燥及び再構成の後の本発明の好ましいエマルジョンの脂質酸化速度を示すグラフである(プロパナールの形成を測定することにより測定した)。
【図11】図11は、本発明のエマルジョンからのフムス・ディップの調製の工程を示す流れ図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化しやすい脂質の保護、特にタンパク質複合体中に脂質を封入することにより酸化しやすい脂質を酸化的障害から保護するエマルジョンに関する。本発明は、当該エマルジョン、並びに当該エマルジョンを含む食品及び化粧品を調製する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
長鎖不飽和脂肪酸は、ヒトの健康において広範囲の栄養及び健康の利益を提供することが、最近認識されてきている(Uauy−Dagach,R.and Valenzuela,A.Nutrition Reviews 1996;54,102−108;Ruxton,C.H.S.,Reed,S.C.,Simpson,J.A.and Millington,KJ.2004;J.Human Nutr.Dietet.17,449−459)。
【0003】
例えば、オメガ−3脂肪酸は、冠状動脈性心臓病、高血圧症、2型糖尿病、関節リウマチ、クローン病及び閉塞性肺疾患の予防に寄与することが実証された(Simopoulos AP,Am J Clin Nutr,1999;70:560−569)。
【0004】
これらの脂質の潜在的な利益の認識は、それらを含む食品及び栄養補給食品において、刺激された関心を有する。しかし、脂質、例えばオメガ−3脂肪酸を食品に含ませることは、主な製剤チャレンジを生み出す。多くの脂質は、熱、光及び酸素に対して感受性であり、非常に速く酸化的障害を受ける。脂肪酸酸化は、食品のフレーバー、香り、質感、保存期間及び色に影響を与え得る食品劣化の主な原因である。
【0005】
食品中で所望されない特性、例えば異臭を生み出す上に、酸化的障害は、酸化しやすい脂質の有益な生物活性を排除し得る。体内のフリーラジカル形成の増大による、健康被害の可能性も存在する。従って、オメガ−3脂肪酸のような酸化しやすい脂質が、首尾よく食品中に組み込まれる場合、これらの負の特性は回避されなければならない。
【0006】
酸化的障害を減少させる1つの方法は、酸化しやすい脂質を封入して、酸化しやすい脂質の二重結合及び他の影響を受けやすい場所を攻撃する酸素、微量金属及び他の物質とのその接触を減少させることである。この目的のために、酸化しやすい脂質は、多くの他の物質、例えば他の油、多糖類及びタンパク質と組み合わされてきた。
【0007】
脂肪酸及び他の脂質のための多くの存在する封入系は、マイクロカプセルを形成するために多糖類及びゼラチンを用いる;例えば、英国特許GB1,236,885を参照のこと。それらのサイズが比較的大きいので、これらのマイクロカプセルは低粘性の製品中に体積され、従って、飲料、特に長期保存期間、熱処理食品における適用に適していない。
【0008】
米国特許第4,895,725号においては、魚油のマイクロカプセルは、魚油を非油溶性の腸溶性コーティング中に封入することにより製造する。口当たりは良いが、得られるカプセルは、熱安定性でなく、7より高いpHで不安定である。これは、広い範囲の食品中でのそれらの適用を非常に限定する。
【0009】
タンパク質は、酸化しやすい脂質を封入するのにも用いられており、臭いの強い脂質の香りを減少させるのに部分的に成功してきた。例えば、特許出願JP60−102168号は、魚臭さを抑えることのできる親水性タンパク質を組み込んだ魚油エマルジョンについて記載する。しかし、この組成物は酸化を受けやすく、更に抗酸化物質を含まなければならない。複雑な食品系における酸化機構は、バルクオイル中のものとは異なる。バルクオイル中で効果的な抗酸化物質である化合物は、複雑な食品系で酸化促進活性を有し得る。従って、可能であれば、抗酸化化合物の組み込みを回避することが望まれ得る。タンパク質は、一般的に加熱された場合に不安定でもあるので、タンパク質ベースのエマルジョンは、多くの食品適用に不適切であり得る。
【0010】
PCT公開WO01/80656は、ミルク又は水性部分、保護油、例えばオーツ麦油又はオーツ麦のふすま油、及びダイズタンパク質で安定化された多価不飽和脂質を含んで成る組成物について説明する。このエマルジョンは、保護油の抗酸化特性により、非安定化エマルジョンより低い酸化速度を示したことが報告されている。
【0011】
PCT公開WO96/19114は、魚油を含む油中水エマルジョンについて記載する。エマルジョンの脂肪相は、非水素化魚油及び抗酸化物質を含んで成る。水相は、脂肪相の成分と反応又は反応を触媒することのできる任意の成分を含まなければならない。この明細書は、乳タンパク質が、魚油と反応又は魚油との反応のための触媒として作用し得る成分、及び/又は金属異臭又は生臭さを引き起こす抗酸化物質を含んでいることを報告する。従って、エマルジョン中のこれらのタンパク質の使用が回避されるべきであることが示唆されている。
【0012】
しかし、米国特許出願第20030185960号において、乳タンパク質は、酸素感受性油を封入するために、炭水化物と組み合わせて用いられた。この明細書は、乳タンパク質、例えばカゼイン、ダイズ又はホエーを、還元基を含む炭化水素と共に加熱することについて記載する。得られたメイラード反応生成物は油と混合され、均質化される。不幸なことに、メイラード反応生成物は、ヒトの健康において負の影響を有すると考えられる。更に、得られたエマルジョンの高い糖度は、低カロリー及び/又は低炭水化物のおいしい製品におけるその使用を排除する。
【0013】
従って、本発明の目的は、上記の不利点の少なくともいくつかを軽減し、或いは少なくとも公衆に有用な選択肢を提供する、少なくとも1つの酸化しやすい脂質を封入するための改善された又は代替のエマルジョンを提供することである。
【発明の開示】
【0014】
発明の概要
第一の側面において、本発明は、カゼイン及びホエータンパク質の複合体中に封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを広く含む。
【0015】
1つの実施態様において、エマルジョンは、約0.5〜約60重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約1〜約50重量%、より好ましくは約10〜40重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましい実施態様において、エマルジョンは、約20〜約30重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。
【0016】
別の実施態様において、酸化されやすい脂質は、食用脂質、例えば多価不飽和脂肪酸又はそのエステルである。好ましくは、酸化されやすい脂質は、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルである。より好ましくは、酸化されやすい脂質は、魚油であり、或いは魚油から誘導される。最も好ましくは、酸化されやすい脂質は、オメガ−3脂肪酸、例えばエイコサペンタエン酸(EPA)又はドコサヘキサエン酸(DHA)である。
【0017】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約25重量%のカゼインを含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約0.25〜約5重量%のカゼインを含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のカゼイン、最も好ましくは約2〜約3重量%のカゼインを含んで成る。
【0018】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のホエータンパク質を含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約0.25〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のホエータンパク質、最も好ましくは、約2〜約3重量%のホエータンパク質を含んで成る。
【0019】
別の実施態様において、エマルジョン中のカゼインのホエータンパク質に対する重量比は、約10:1〜約1:10である。好ましくは、カゼインのホエータンパク質に対する比率は、約5:1〜約1:5、より好ましくは約2:1〜約1:2、最も好ましくは1:1である。
【0020】
好ましくは、カゼインは、カゼイン塩ナトリウムである。
【0021】
好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質単離物(WPI)である。
【0022】
別の実施態様において、複合体は、カゼイン及びホエータンパク質溶液の混合物を、約70℃〜約100℃、より好ましくは約80℃〜約95℃、最も好ましくは約90℃で加熱することにより形成する。好ましくは、加熱は、約1〜約30分間である。より好ましくは、加熱は、約5〜約20分間である。最も好ましくは、加熱は、約5分間である。
【0023】
好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6〜約9にpH調整される。より好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6.5〜約8、より好ましくは、約7.5〜約8.0にpH調整される。
【0024】
好ましい実施態様において、エマルジョンは、約2重量%のカゼイン及び約2重量%のホエータンパク質を含んで成る。
【0025】
任意に、エマルジョンは、脱臭することができる。1つの実施態様において、エマルジョンは、減圧下で窒素をそれにバブリングすることにより脱臭することができる。
【0026】
任意に、エマルジョンは、乾燥させて粉末を形成させることができる。1つの実施態様において、エマルジョンは、噴霧乾燥により乾燥させることができる。
【0027】
任意に、エマルジョンは、熱処理又は加熱滅菌することができる。1つの実施態様において、エマルジョンは、超高温により滅菌される(UHT)(例えば、140℃で5秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、低温殺菌される(例えば、72℃で15秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、レトルトされる(例えば、密封容器中で120℃で20分間加熱される)。
【0028】
第二の側面において、本発明は、
(a)水溶液中でカゼイン及びホエータンパク質の複合体を形成させること(ここで、カゼイン及びホエータンパク質は、ジスルフィド結合により結合している)、
(b)少なくとも1つの酸化されやすい脂質を水溶液中に分散させること、及び
(c)段階(b)において形成された混合物を均質化すること、
を含んで成る、カゼイン及びホエータンパク質の複合体により封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを製造する方法を広く含んで成る。
【0029】
1つの実施態様において、エマルジョンは、約0.5〜約60重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約1〜約50重量%、より好ましくは約10〜約40重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましい実施態様において、エマルジョンは、約20〜約30重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。
【0030】
別の実施態様において、酸化されやすい脂質は、食用脂質、例えば多価不飽和脂肪酸又はそのエステルである。好ましくは、酸化されやすい脂質は、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルである。より好ましくは、酸化されやすい脂質は、魚油であるか、或いは魚油から誘導される。最も好ましくは、酸化されやすい脂質は、オメガ−3脂肪酸、例えばEPA又はDHAである。
【0031】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のカゼイン、好ましくは約0.25〜約5重量%のカゼインを含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のカゼイン、最も好ましくは、約2〜約3重量%のカゼインを含んで成る。
【0032】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のホエータンパク質、好ましくは約0.25〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のホエータンパク質、最も好ましくは約2〜約3重量%のホエータンパク質を含んで成る。
【0033】
エマルジョンの別の実施態様において、カゼインのホエータンパク質に対する重量比は、約10:1〜約1:10である。好ましくは、カゼインのホエータンパク質に対する比率は、約5:1〜約1:5、より好ましくは、約2:1〜約1:2、最も好ましくは1:1である。
【0034】
好ましくは、カゼインは、カゼイン塩ナトリウムである。
【0035】
好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質単離物(WPI)である。
【0036】
別の実施態様において、複合体は、カゼイン及びホエータンパク質溶液の混合物を、約70℃〜約100℃、より好ましくは約80℃〜約95℃、最も好ましくは約90℃で加熱することにより形成する。好ましくは、加熱は、約1〜約30分間である。より好ましくは、加熱は、約5〜約20分間である。最も好ましくは、加熱は、約5分間である。
【0037】
好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6〜約9にpH調整される。より好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6.5〜約8、より好ましくは、約7.5〜約8.0にpH調整される。
【0038】
任意に、本方法は、脱臭の更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、減圧下で窒素をそれにバブリングすることにより脱臭することができる。
【0039】
任意に、本方法は、エマルジョンを乾燥させる更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、噴霧乾燥により乾燥させることができる。
【0040】
任意に、本方法は、熱処理又は加熱滅菌の更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、超高温により滅菌される(UHT)(例えば、140℃で5秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、低温殺菌される(例えば、72℃で15秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、レトルトされる(例えば、密封容器中で120℃で20分間加熱される)。
【0041】
第三の側面において、本発明は、
(a)カゼイン及びホエータンパク質の水溶液を加熱し、タンパク質複合体を形成させること、
(b)少なくとも1つの酸化されやすい脂質を水溶液中に分散させること、及び
(c)段階(b)において形成された混合物を均質化すること、
を含んで成る、カゼイン及びホエータンパク質の複合体により封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを製造する方法を広く含んで成る。
【0042】
1つの実施態様において、エマルジョンは、約0.5〜約60重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約1〜約50重量%、より好ましくは約10〜約40重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。好ましい実施態様において、エマルジョンは、約20〜約30重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る。
【0043】
別の実施態様において、酸化されやすい脂質は、食用脂質、例えば多価不飽和脂肪酸又はそのエステルである。好ましくは、酸化されやすい脂質は、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルである。より好ましくは、酸化されやすい脂質は、魚油であるか、或いは魚油から誘導される。最も好ましくは、酸化されやすい脂質は、オメガ−3脂肪酸、例えばEPA又はDHAである。
【0044】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のカゼイン、好ましくは約0.25〜約5重量%のカゼインを含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のカゼイン、最も好ましくは、約2〜約3重量%のカゼインを含んで成る。
【0045】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のホエータンパク質、好ましくは約0.25〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のホエータンパク質、最も好ましくは約2〜約3重量%のホエータンパク質を含んで成る。
【0046】
エマルジョンの別の実施態様において、カゼインのホエータンパク質に対する重量比は、約10:1〜約1:10である。好ましくは、カゼインのホエータンパク質に対する比率は、約5:1〜約1:5、より好ましくは、約2:1〜約1:2、最も好ましくは1:1である。
【0047】
別の実施態様において、カゼインは、カゼイン塩ナトリウムである。
【0048】
別の実施態様において、ホエータンパク質は、ホエータンパク質単離物(WPI)である。
【0049】
別の実施態様において、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、約70℃〜約100℃、より好ましくは約80℃〜約95℃、最も好ましくは約90℃で加熱する。好ましくは、加熱は、約1〜約30分間である。より好ましくは、加熱は、約5〜約20分間である。最も好ましくは、加熱は、約5分間である。
【0050】
好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6〜約9にpH調整される。より好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液は、加熱の前に、約6.5〜約8、より好ましくは、約7.5〜約8.0にpH調整される。
【0051】
任意に、本方法は、脱臭の更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、減圧下で窒素をそれにバブリングすることにより脱臭することができる。
【0052】
任意に、本方法は、エマルジョンを乾燥させる更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、噴霧乾燥により乾燥させることができる。
【0053】
任意に、本方法は、熱処理又は加熱滅菌の更なる段階を含む。1つの実施態様において、エマルジョンは、超高温により滅菌される(UHT)(例えば、140℃で5秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、低温殺菌される(例えば、72℃で15秒間)。別の実施態様において、エマルジョンは、レトルトされる(例えば、密封容器中で120℃で20分間加熱される)。
【0054】
本発明の更なる側面は、本発明のエマルジョンを乾燥させることにより得られる粉末、並びに双方の組み合わせの本発明のエマルジョン又は粉末を組み込んだ食品及び化粧品を提供する。
【0055】
1つの実施態様において、本発明は、本発明のエマルジョン又は粉末を含んで成る食品、例えばディップ、調味料、ソース又はペーストを提供する。
【0056】
別の実施態様において、本発明は、本発明のエマルジョン又は粉末を含んで成る化粧品、例えば保湿剤、スキンクリーム、ハンドクリーム、フェイス−クリーム又はマッサージクリームを提供する。
【0057】
発明の詳細な説明
本明細書中で用いられる場合、用語「脂質」は、有機溶媒中で可溶性の物質を意味し、油、脂肪、トリグリセリド、脂肪酸及びリン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書中で用いられる場合、用語「エマルジョン」は、2つの非混和性液相を含んで成る組成物(ここで、液相の1つは、小さな液滴の形態で他方の中に分散している)を意味する。
【0059】
本明細書中で用いられる場合、用語「多価不飽和脂肪酸又はそのエステル」は、炭化水素鎖中に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する脂肪酸、又はそのような酸のエステルを意味する。
【0060】
本明細書中で用いられる場合、用語「高度不飽和脂肪酸又はそのエステル」は、少なくとも18個の炭素原子と少なくとも3個の二重結合を有する多価不飽和脂肪酸、又はそのような酸のエステルを意味する。
【0061】
本明細書中で用いられる場合、用語「魚油」は、魚を含む(これに限定されない)水中で生きている動物から抽出された油又は脂肪を意味する。例としては、マグロ、ニシン、サバ、イワシ、サケ、タラの肝臓、アンチョビ、ハリバ及びサメ並びにそれらの組み合わせから抽出された油又は脂肪が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書中で用いられる場合、用語「オメガ−3脂肪酸」は、第一の二重結合が、酸基の反対側の末端から3番目の炭素−炭素結合において生じる多価不飽和脂肪酸を意味する。
【0063】
本明細書中で用いられる場合、用語「含んで成る」は、「少なくとも一部分において存在する」を意味する。すなわち、その用語を含む本明細書中の記述を解釈する場合、各記述においてその用語により前置きされる特徴は、全て存在する必要があるが、他の特徴も存在し得る。
【0064】
本明細書中で開示される数の範囲への言及(例えば、1〜10)は、その範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10)、及びその範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2〜8、1.5〜5.5及び3.1〜4.7)への言及も組み込み、従って、本明細書中で明確に開示された全ての範囲の全ての下位範囲は、それにより明確に開示されることが意図される。これらは、具体的に意図されるもののほんの一例であり、列挙される最も低い値と最も高い値の間の数値の全ての可能な組み合わせは、同様の方法において本出願中で明確に記述されているとみなされるべきである。
【0065】
第一の側面において、本発明は、カゼイン及びホエータンパク質の複合体中に封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを提供する。好ましくは、当該複合体は、ある程度まで架橋した又は別の方法で共有結合したカゼイン及びホエータンパク質を含んで成る。
【0066】
複合体による酸化されやすい脂質の封入は、酸化されやすい脂質を安定化し、その酸化速度を減少させる。また、それは、脂質の臭いと味をマスクし、それを消費者にとってより口当たりの良いものとする。得られた生成物は、それが熱安定性であるという利点を有し、これは、それが熱処理され又は加熱滅菌されることを可能にする。
【0067】
この複合体は、好ましくは、カゼイン及びホエータンパク質の水溶液を加熱することにより作られる。
【0068】
理論に拘束されることを望むわけではないが、この方法は、各タンパク質のスルフヒドリル基を放出するホエータンパク質のアンフォールディングを引き起こし、それがカゼインと分子内ジスルフィド結合を形成することを可能にすると考えられる。ホエータンパク質中に存在する過剰のスルフヒドリル基は、還元状態を保つ。これらの遊離のスルフヒドリル基は、複合体に更なる抗酸化活性を付与する。
【0069】
好ましくは、複合体による酸化されやすい脂質の封入は、タンパク質複合体と脂質の混合物の均質化により達成される。これは、0.4±0.5μmの平均直径を有する酸化されやすい脂質の微粒子の形成をもたらし、これはタンパク質複合体中に封入されている。油水界面に吸着したタンパク質複合体は、エマルジョンの安定性を大きく改善し、酸化されやすい脂質を酸化剤及び酸化促進剤に対する曝露から保護する。酸化促進剤、例えば金属イオンは、脂質酸化の開始のための活性化エネルギーを低下させることができる。これらの金属イオンのいくつかは、タンパク質複合体により結合され、これは脂質酸化におけるそれらの負の影響を軽減する。
【0070】
本発明における使用のためのカゼインは、任意のカゼインタンパク質であることができ、例えばα−カゼイン、κ−カゼイン、β−カゼイン及びδ−カゼイン、並びにそれらの塩及びその混合物が挙であるが、これらに限定されない。好ましくは、カゼインは、カゼイン塩ナトリウムである。
【0071】
本発明における使用のためのホエータンパク質は、任意の乳清タンパク質又はタンパク質組成物であることができ、例えばホエータンパク質単離物、ホエータンパク質濃縮物、α−ラクトアルブミン及びβ−ラクトグロブリンであるが、これらに限定されない。好ましくは、ホエータンパク質はWPIである。
【0072】
酸化されやすい脂質は、大気酸素への曝露により少なくとも部分的に酸化された任意の脂質であることができる。酸化されやすい脂質は、食品、医薬又は化粧品産業における使用の任意の脂質でることができ、好ましくは食用脂質である。酸化されやすい脂質は、海洋動物、植物、植物プランクトン又は微細藻類を含む藻類、又は任意の他の適切なソースから抽出することができる。或いは、それは合成的に生成することができる。酸化されやすい脂質は、非精製、精製又は高度精製形態、濃縮又は非濃縮において用いることができる。
【0073】
本発明における使用に適した酸化されやすい脂質としては、植物油、例えばカノーラ油、ルリヂサ油、月見草油、ベニバナ油、ヒマワリ油、アマニ油、小麦胚芽油、藻類油、ブドウ種油;酸素感受性脂肪;オメガ−3脂肪酸前駆体、例えばα−リノレン酸;及び、魚、例えばマグロ、ニシン、サバ、イワシ、サケ、タラの肝臓、アンチョビ、ハリバ及びサメから得られる魚油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
好ましい酸化されやすい脂質は、多価不飽和脂肪酸及びそのエステル、特に高度不飽和脂肪酸又はそのエステルである。好ましくは、本発明のエマルジョンは、少なくとも約10%の多価不飽和脂肪酸又はエステルを含む。高度不飽和脂肪酸、例えばオメガ−3及びオメガ−6脂肪酸、及びそれらを含む油、例えばEPA及びDHAが特に好ましい。
【0075】
本発明のエマルジョンの酸化安定性は、当業界で知られた任意の試験、例えば過酸化物価(Association of Official Analytical Chemists,International;Official Method CD 8−53)又はTBARS試験(Inou,T.,Ando,K.and Kikugawa,K.1998.Journal of the American Oil Chemists’ Society,75,597−600)を用いて測定することができる。組成物の酸化安定性を分析するための別の技術は、プロパナール形成を測定することによる。プロパナールは、オメガ−3脂肪酸の主な酸化生成物であるが、脂質が酸化された場合に生成される異臭の主な源である。従って、プロパナール形成の揮発性物質分析は、酸化安定性を測定するのに用いることができる(D Djordjevic,D J McClements and E A Decker,Journal of Food Science 2004,Vol.69 Nr.5,356−362.;H Lee et al.Journal of Food Science 2003,Vol.68 Nr.7 2169−2177;Augustin Mary Ann and Sanguansri,Luz.米国特許出願第20030185960号)。
【0076】
図1は、本発明の方法の好ましい実施態様を示す。図に示すように、水中で等量(重量による)のカゼイン及びホエータンパク質を第一に混合し、水溶液を形成することにより、エマルジョンを生成する。1:1の比率のタンパク質成分が好ましいが、他の比率を本発明の方法において用いることができる。
【0077】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のカゼインを含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約0.25〜約5重量%のカゼインを含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のカゼイン、最も好ましくは約2〜約3重量%のカゼインを含んで成る。
【0078】
別の実施態様において、エマルジョンは、少なくとも約0.25重量%のホエータンパク質を含んで成る。好ましくは、エマルジョンは、約0.25〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る。より好ましくは、エマルジョンは、約1〜約4重量%のホエータンパク質、最も好ましくは約2〜約3重量%のホエータンパク質を含んで成る。
【0079】
好ましくは、全タンパク質濃度は、約0.5〜約10%である。より好ましくは、全タンパク質濃度は、約2〜約8%である。好ましい実施態様において、全タンパク質濃度は、4%である。異なるタンパク質濃度を有するエマルジョンは、異なる適用において有用であることができる。高いタンパク質濃度のエマルジョン(例えば、10%のタンパク質)は、粘性があり、取り扱いが困難であり得る。タンパク質は高価な成分であるので、低いタンパク質濃度の高い安定性のエマルジョンは、経済的に有利である。
【0080】
任意に、水は最初に脱イオン化することができ、当業界で知られた技術を用いて酸素を除去することができる。
【0081】
この実施態様においては、その後、混合物のpHを約6〜約9に調整する。好ましくは、pHを、約6.5〜約8、より好ましくは約7.5〜約8に調整する。pHは、任意の塩基性水溶液、例えばNaOH溶液、酸性水溶液、例えばHCl溶液を用いて調整することができる。
【0082】
この実施態様においては、その後、混合物を約70℃〜約100℃まで1〜30分間加熱する。好ましくは、混合物を、約75℃〜約95℃、より好ましくは約90℃まで加熱する。好ましくは、混合物を5分間加熱する。加熱は、タンパク質のアンフォールディングを引き起こし、それによりそのスルフヒドリル基を曝露する。スルフヒドリル基は、スルフヒドリル−ジスルフィド交換反応を受け、分子内結合を形成し、2つのタイプのタンパク質の複合体を生成すると考えられる。
【0083】
その後、酸化されやすい脂質、この場合魚油を、複合体と混合する。混合物を均質化し、本発明のエマルジョンを形成する。均質化段階は、当業界で知られた任意の従来の乳化方法により実施することができる。例えば、酸化されやすい脂質は、高せん断混合下で水相に添加し、プレエマルジョンを調製することができる。プレエマルジョンは、その後、高圧均質化にかけることができる。油と均質化する場合、ジスルフィド結合複合体は、より厚く、より安定な界面層を形成する。これは、単一タンパク質又はタンパク質の非複合混合物により生成されるエマルジョンと比較して、エマルジョンに対してより大きな封入及びより優れた熱安定性を提供する。
【0084】
任意に、エマルジョンは、熱処理又は加熱滅菌することができる。例えば、エマルジョンは、超高温処理(例えば、140℃で5秒間)又は低温殺菌(例えば、72℃で15秒間)にかけることができる。エマルジョンは、レトルトすることもできる(例えば、密封容器中で120℃で20分間加熱される)。エマルジョンは、当業界で知られた任意の方法により乾燥し、封入された酸化されやすい脂質を含む粉末を形成することもできる。エマルジョンを乾燥する方法としては、噴霧乾燥が挙げられるが、これに限定されない。
【0085】
本発明のエマルジョンは、添加剤、例えば着香料、栄養素、ビタミン、安定剤、防腐剤、抗酸化物質、甘味料、着色剤、マスキング剤、糖類、緩衝液、崩壊剤、懸濁化剤、可溶化剤、乳化剤、エンハンサーなども含んで成ることができる。
【0086】
オメガ−3脂肪酸などの酸化されやすい脂質を含む食品は、高価値、機能性食品であると考えられる。本発明により作られたエマルジョン及び粉末は、成分として様々な食料品、例えばミルク及びミルクベースの製品、ディップ、スプレッド、ソース、ペースト、ヨーグルト、調味料、ドレッシング、飲料、パスタ製品、パン及びベーカリー製品、肉及び魚製品、乳児食、加工チーズ、天然のチーズ、野菜ジュース、フルーツジュース、ソーセージ、パテ、キャンディ、マヨネーズ、ドレッシング、大豆ソース、大豆ペースト(これらに限定されない)中での使用に適している。それらは、代替ソース又はアイスクリーム中の油と脂肪の部分的交換、乳製品デザート、クリーム、スープのもと、充填乳製品デザート、スナック食品及び栄養素及びスポーツバーとして用いることもできる。
【0087】
本発明のエマルジョンは、それが熱安定性であるという利点を有し、これはそれが滅菌されることを可能にする。これは、消費の前に滅菌されなければならない食品及び栄養補助食品製品、例えば調製粉乳及びUHT飲料に、封入された脂質を添加することを可能にするので大きな利点である。
【0088】
本発明のエマルジョンは、他の分野において、例えば油溶性香味料、抗酸化物質及び医療用の他の生物活性物質を封入するために用いることもできる。例えば、オイルベース中に供給された栄養補助食品、例えばタラの肝油、鉱油、油溶性ビタミン及び薬剤は、全て本発明のエマルジョンに組み込むことができる。特に、本発明のエマルジョンは、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンE、トコフェロール、トコトリエノール、ビタミンK(キノン)、ベータ−カロチン(プロビタミンA)及びそれらの混合物を供給するために用いることができる。
【0089】
本発明のエマルジョンは、化粧品、例えば保湿剤、スキンクリーム、ハンドクリーム、フェイスクリーム、マッサージクリーム又はメイクアップの製造において用いることもできる。
【0090】
本発明のエマルジョンは、酸化しやすい脂質、例えば魚油を安定化するための便利で費用効率の高い手段を提供する。タンパク質複合体中の封入は、酸化しやすい脂質の酸化速度を減少させ、任意の嫌な臭い及び/又は味がマスクされることを確実にし、それを消費者に対してより口当たりの良いものとする。
【0091】
酸化しやすい脂質を酸化剤及び酸化促進剤から保護する以外に、曝露されたスルフヒドリル基は、それら自身抗酸化活性を有し得る。従って、本発明のエマルジョンの固有の抗酸化特性は、酸化されやすい脂質を腐食から防ぐことの援助もする。更に、カゼイン及びホエータンパク質は、金属イオン、例えばFe及びCuのイオンを結合することも知られている。これらのイオンは、脂質酸化の誘導のための触媒であると考えられる。
【0092】
本発明のエマルジョンの固有の抗酸化活性は、エマルジョン又はエマルジョンから作られる製品に添加される追加の抗酸化化合物に対する必要性を軽減又は排除し得る。これは、バルクオイル中の抗酸化物質として首尾良く用いられる多くの化合物が、複雑な食品系で酸化促進作用を実証し得るので、有利である。
【0093】
本発明のエマルジョンは、酸化に対して耐性であり、熱処理、例えば低温殺菌及びUHTに対して安定であり、長期の保存期間を有し、改善された香り及び味を有する。
【0094】
本発明の様々な側面は、以下の実施例を参照することにより、非限定的な方法で例示されるだろう。
【実施例】
【0095】
実施例1
1kgのエマルジョンを生成するために、20gのホエータンパク質単離物及び20gのカゼイン塩ナトリウム(両方ともFonterra Co−operative Ltd,New Zealandにより供給される)は、660gの脱イオン水中に40℃で30分間継続的な撹拌により溶解した。脱イオン水は、減圧下で水を0.22μmのろ過膜に通し、酸素を除去することにより生成した。タンパク質溶液のpHを、1MのNaOHを用いて7.5に調整した。タンパク質溶液を、超高温(UHT)パイロットプラント(Alpha Laval,Sweden)中で90℃まで急速に加熱し、この温度で10分間保持し、その後氷浴中で20℃まで即座に冷却した。タンパク質溶液(700g)を、300gのマグロ油(ROPUFA’30’n−3 食用油,Roche Vitamins(UK)Ltd)と混合し、この混合物を、2段階のホモジナイザー(AVP 2000,Demark)中で、250バールの第一段階の圧力及び40バールの第二段階の圧力により均質化した。油相のより効果的な混合のために、エマルジョンを2回均質化した。その後、UHTプラントを用いてエマルジョンを72℃で15秒間低温殺菌した。
【0096】
この方法を、図1において図示する。
【0097】
実施例2
8つのタンパク質含有エマルジョン(A−D及びF−G)の酸化速度を、4日間にわたって、本発明のエマルジョン(E)と比較した。エマルジョンの組成物を、以下に示す。
A:2%のカゼイン塩ナトリウム
B:4%のカゼイン塩ナトリウム
C:2%のWPI
D:4%のWPI
E:本発明のエマルジョン(2%のWPI及び2%のカゼイン塩ナトリウム)
F:2%のカゼイン塩ナトリウム+90℃で30分間加熱した2%のグルコース
G:4%のカゼイン塩ナトリウム+90℃で30分間加熱した4%のグルコース
H:2%のWPI+90℃で30分間加熱した2%のグルコース
I:4%のWPI+90℃で30分間加熱した4%のグルコース
【0098】
エマルジョンA〜Dは、D Djordjevic,D J McClements及びE A Deckerにより刊行された論文、Journal of Food Science 2004,Vol.69 No.5,356−362(これは、米国特許第6,444,242号の基礎を形成する)に基づいて調製した。エマルジョンEは、実施例1に基づいて調製した。エマルジョンF〜Iを、米国特許出願第20030185960号の教示から調製した。
【0099】
全てのエマルジョンは、30%の魚油を含んでいた。エマルジョンを60℃でインキュベートし、16、39、63及び84時間において試験した。結果を図2に示す。酸化の程度を、酸性条件下でmmol/kgの油中のマロンアルデヒド(MDA)の濃度を測定するチオバルビツール酸反応性物質(TBAR)試験を用いて測定した。
【0100】
図2から分かるように、エマルジョンEは、比較のタンパク質ベースのエマルジョンより、顕著に低い酸化速度を示した。
【0101】
実施例3
オメガ−3脂肪酸の酸化の副産物の1つである、プロパナールの形成を測定することにより、酸化安定性及び揮発性異臭の形成に関して、実施例2で規定するエマルジョンA〜Iを調べた(D Djordjevic,D J McClements and E A Decker,Journal of Food Science 2004,Vol.69 Nr.5,356−362.;H Lee et al.Journal of Food Science 2003,Vol.68 Nr.7 2169−2177;Augustin Mary Ann and Sanguansri,Luz.米国特許出願第20030185960号)。
【0102】
各エマルジョン(3g)を、ガラスバイアル(20ml)中に密封し、次いで試料を50℃でインキュベートし、その後SPMEファイバー(Supelco 75μm Carboxen−PDMS)を用いて20分間固相微量抽出(SPME)を行った。その後、Shimazu AOC−5000オートサンプラー、及びキャプラリーカラム(30m、0.32i.d.、0.5μmのフィルム)及びFID検出器を取り付けたSupelcowax 10を装着したShimazu GC−2010ガスクロマトグラフを用いて、試料を分析した。各試料に関して、少なくとも2回分析を実施した。本物のプロパナールから作った標準曲線を用いて、プロパナール濃度をピーク面積から測定した。
【0103】
図3から分かるように、エマルジョンEは、比較のタンパク質ベースのエマルジョンよりも、顕著に低い酸化速度を示した。
【0104】
実施例4
本発明のエマルジョン(表1)を、様々な濃度のタンパク質複合体を用いて調製し、全タンパク質濃度の脂質酸化の程度への影響を測定した。
【0105】
乳化の前に、タンパク質混合溶液をpH6.7に調整し、5分間で90℃まで加熱することを除いて、実質的に実施例1で説明したようにエマルジョンを調製した。
【0106】
【表1】
【0107】
エマルジョンを60℃でインキュベートし、16及び39時間後に試験した。結果を、図4A及び4Bに示す。図4Aは、脂質酸化(TBAR値)を示し、図4Bは、ヒドロペルオキシド値を示す。
【0108】
脂質酸化は、2%を超えるタンパク質濃度を有するエマルジョンにおいて顕著に減少した。
【0109】
実施例5
5%のWPI+5%のカゼイン塩ナトリウムを用いることを除いて、同様の方法において調製した本発明のエマルジョンに対して、プロパナール分析を用いて、酸化安定性及び揮発性異臭の形成に関して、実施例4に規定したエマルジョンd(2%のWPI+2%のカゼイン塩ナトリウム)を試験した。
【0110】
実施例5の結果は、エマルジョンの酸化安定性は、10%の全タンパク質濃度においてでさえも保持されることを示す。
【0111】
実施例6
異なるpHのタンパク質溶液を加熱することにより調製した本発明のエマルジョンの脂質酸化速度を測定した。2重量%のカゼイン塩ナトリウム溶液及び2重量%のWPI溶液の混合物のpHを、6.2〜8.0の範囲に調整し、その後5分間で90℃で加熱することを除いて、実施例1に記載のようにエマルジョンを調製した。結果を、図6A及び6Bに示す。図6Aは、脂質酸化値(TBAR)を示し、一方図6Bは、ヒドロペルオキシド値を示す。
【0112】
TBAR及びヒドロペルオキシド値の両方の結果は、加熱時のpHが、形成されたエマルジョンの脂質酸化速度においてかなりの影響を有することを、明確に示す。pH7.5又は8.0で加熱したタンパク質溶液を用いて、最も酸化的に安定なエマルジョンを調製した。
【0113】
実施例7
異なるpHでタンパク質溶液を加熱することにより調製した本発明のエマルジョン中のプロパナールの形成を試験することにより、本発明のエマルジョンの脂質酸化速度及び揮発性異臭の形成を測定した。
【0114】
2%のWPI及び2%のカゼイン塩ナトリウムの溶液を、1MのHCl又はNaOHを用いて異なるpH値に調整し、90℃で5分間加熱した。試料を10℃まで冷却し、魚油と混合し、均質化して、30%の油を含む最終的なエマルジョンを生成した。
【0115】
図7は、新鮮なエマルジョン(7A)及び60℃での6時間の保管後のエマルジョン(7B)中のプロパナールの形成を示す。実施例2で規定したように、エマルジョンAに関して同等のデータも提供される。
【0116】
実施例6で提供されたヒドロペルオキシド及びTBARの結果と一致して、このデータは、最も酸化的に安定なエマルジョンが、約pH7.5〜8.0で加熱したタンパク質溶液を用いて調製されることを確認する。
【0117】
実施例8
更なる実験において、2つの異なる温度で加熱されたタンパク質溶液から調製される本発明のエマルジョンを比較した。エマルジョンは両方とも、pH7.5で加熱した2重量%のカゼイン塩ナトリウム及び2重量%のホエータンパク質単離物の溶液から調製した。結果を、図8A及び図8Bに示す。図8Aは、TBAR濃度を示し、図8Bは、ヒドロペルオキシド値を与える。
【0118】
90℃で加熱したタンパク質溶液から作ったエマルジョンにおける脂質酸化速度は、75℃で加熱したものと比較して、より低かったことは明らかである。
【0119】
実施例9
異なる熱処理を、本発明のエマルジョンに適用し、それらの酸化的性質を、実施例3に記載のように、プロパナール形成を用いて評価した。エマルジョンを、
(a)72℃で30秒間の低温殺菌、
(b)140℃で4秒間の超高温(UHT)処理、及び
(c)120℃で20分間のレトルト(密封ボトル中での熱処理)、
にかけた。
【0120】
得られたプロパナール濃度を、新鮮な試料のものと比較した。結果を図9に示す。熱処理は、エマルジョンの酸化速度をわずかに増大させたが、プロパナール形成は、未処理の既知の魚油エマルジョンのものと比較して大きくなかった。例えば、図3を参照のこと。
【0121】
実施例10
実施例4に記載のエマルジョンdを、コーンシロップ溶液と混合し、12%の魚油及び18%のコーンシロップを含んで成る組成物を形成した。混合エマルジョンを、2バールの噴霧圧力で、二流体ノズルを有する実験室噴霧乾燥機を用いて乾燥した。乾燥のための入口及び出口の空気温度は、それぞれ180℃及び80℃であった。
【0122】
乾燥粉末(40%の魚油を含む)を水中で再構成し、10%の魚油のエマルジョンを得た。再構成エマルジョンの酸化安定性を、実施例3に記載のプロパナール分析を用いて、新鮮なエマルジョンdのものと比較した。これを、図10に示す。
【0123】
再構成エマルジョンは、新鮮なエマルジョンより、顕著に多いプロパナールを放出しなかった。
【0124】
実施例11
魚油を含むフムス・ディップ(hummus dip)製品の開発
本発明のエマルジョンを、高濃度のオメガ3遊離脂肪酸(FFA)、いわゆるエイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含むフムス・ディップを調製するのに用いた。フムスの2つの香りを、以下に記載するように作った−「オリーブ及び日干しトマト」及び「赤唐辛子及びハラペニョ」。
【0125】
オリーブ及び日干しトマトのフムス・ディップ
成分:ヒヨコ豆(59.13%)、オリーブ(10%)、エマルジョン(13.36%)、レモンジュース(8.79%)、日干しトマト(5%)、タヒニ(2.53%)、ニンニク(0.84%)、塩(0.06%)、コショウ(0.18%)、クエン酸(0.09%)、ソルビン酸カリウム(0.02%)。
【0126】
赤唐辛子及びハラペニョのフムス・ディップ
成分:ヒヨコ豆(66.29%)、エマルジョン(13.36%)、レモンジュース(8.18%)、赤唐辛子(3%)、ハラペニョ(2.5%)、水(2.5%)、タヒニ(2.83%)、ニンニク(0.94%)、塩(0.08%)、コショウ(0.2%)、クエン酸(0.1%)、ソルビン酸カリウム(0.02%)。
【0127】
図11に示した方法に従って、エマルジョン(実施例1に記載の方法を用いて作った)を、13.3%の濃度(4%の魚油と同等)でフムス・ディップに添加した。
【0128】
エマルジョンを最初に低温殺菌し、その後均質になるまで他の成分と混ぜ合わせた。密封容器中に詰めた後、フムス・ディップを冷蔵した。
【0129】
フムス・ディップは、冷蔵条件下で1ヶ月間安定であることが見出された。脂肪酸組成分析が、オーストラリアのニューカッスル大学により、フムス・ディップに関して実施され、以下のものを含んでいることが見出された:
【0130】
【表2】
【0131】
両方のフムス・ディップは、実質的な量のEPA及びDHAを含んでいたが、検出可能な魚臭は有していなかった。
【0132】
本発明は、多くの変更及びバリエーションによって実施することができ、上記の実施例は、単なる例示によることに留意すべきである。例えば、本発明は、他の比率のカゼイン及びホエータンパク質を用いて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のエマルジョンは、食品産業において有用性を有する。それらは、酸化されやすい脂質、例えばオメガ−3脂肪酸を酸化障害から保護するのに用いることができる。
【0134】
本発明のエマルジョンは、食品及び化粧品に組み込むことができ、酸化されやすい脂質の酸化を予防又は軽減し、それにより製品の保存期間を増大させる。
【0135】
上記の説明は、単に例示により提供されるのであり、本発明がそれに限定されるものではないことを、当業者は理解するだろう。
【0136】
本発明は、以下の図面を参照して説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、本発明の方法の好ましい実施態様を示す流れ図である。
【図2】図2は、60℃でのインキュベーション間の4日間にわたる本発明の好ましい実施態様を含むタンパク質ベースのエマルジョンの脂質酸化速度を示すグラフである(チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の濃度として測定した)。
【図3】図3は、60℃でのインキュベーションの間の16時間にわたる本発明の好ましい実施態様を含むタンパク質エマルジョンの脂質酸化速度を示すグラフである(SPMEにより抽出されたヘッドスペース・プロパナールの濃度として測定した)。
【図4】図4は、様々な濃度のタンパク質溶液を用いて調製した本発明の好ましいエマルジョンの脂質酸化速度を示す2つのグラフである。図4Aは、TBARS値を示し、図4Bは、ヒドロペルオキシド値を示す。
【図5】図5は、本発明の2つの好ましい実施態様の脂質酸化速度を示すグラフである(プロパナールの形成を測定することにより測定した)。
【図6】図6は、異なるpH条件下で調製した本発明の好ましいエマルジョンの脂質酸化速度を示す2つのグラフである。図6Aは、TBARS値を示し、図6Bは、ヒドロペルオキシド値を示す。
【図7】図7は、異なるpH条件下で調製した本発明の好ましいエマルジョンの脂質酸化速度を示す2つのグラフである(プロパナールの形成を測定することにより測定した)。図7Aは、新たに調製したエマルジョンの脂質酸化速度を示し、一方図7Bは、60℃で6時間インキュベートしたエマルジョンの脂質酸化速度を示す。
【図8】図8は、温度の異なる条件下で調製した好ましいエマルジョンの脂質酸化速度を示す2つのグラフである。図8Aは、TBARS値を示し、図8Bは、ヒドロペルオキシド値を示す。
【図9】図9は、熱処理の前及び後の本発明の好ましい実施態様の脂質酸化速度を示すグラフである(プロパナールの形成を測定することにより測定した)。
【図10】図10は、乾燥及び再構成の後の本発明の好ましいエマルジョンの脂質酸化速度を示すグラフである(プロパナールの形成を測定することにより測定した)。
【図11】図11は、本発明のエマルジョンからのフムス・ディップの調製の工程を示す流れ図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カゼイン及びホエータンパク質の複合体中に封入された、少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョン。
【請求項2】
カゼイン及びホエータンパク質溶液の混合物を約70℃〜約100℃で加熱することにより形成されるカゼイン及びホエータンパク質の複合体中に封入された、少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョン。
【請求項3】
約0.5〜約60重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る、請求項1又は請求項2に記載のエマルジョン。
【請求項4】
約20〜約30重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る、請求項3に記載のエマルジョン。
【請求項5】
少なくとも1つの酸化されやすい脂質が魚油である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項6】
少なくとも1つの酸化されやすい脂質が、多価不飽和脂肪酸又はそのエステルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項7】
多価不飽和脂肪酸がオメガ−3脂肪酸である、請求項6に記載のエマルジョン。
【請求項8】
オメガ−3脂肪酸が、ドコサヘキサエン酸又はエイコサペンタエン酸である、請求項7に記載のエマルジョン。
【請求項9】
約1〜約5重量%のカゼインを含んで成る、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項10】
約1〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項11】
エマルジョン中のカゼインのホエータンパク質に対する重量比が、約2:1〜約1:2である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項12】
カゼインがカゼイン塩ナトリウムである、請求項1〜11のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項13】
ホエータンパク質が、ホエータンパク質単離物(WPI)又はホエータンパク質濃縮物(WPC)である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項14】
約2〜4重量%カゼイン及び約2〜4重量%のホエータンパク質を含んで成る、請求項1〜13のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項15】
(a)水溶液中でカゼイン及びホエータンパク質の複合体を形成させること(ここで、カゼイン及びホエータンパク質は、ジスルフィド結合により結合している)、
(b)少なくとも1つの酸化されやすい脂質を水溶液中に分散させること、及び
(c)段階(b)において形成された混合物を均質化すること、
を含んで成る、カゼイン及びホエータンパク質の複合体により封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを製造する方法。
【請求項16】
(a)カゼイン及びホエータンパク質の水溶液を加熱し、タンパク質複合体を形成させること、
(b)少なくとも1つの酸化されやすい脂質を水溶液中に分散させること、及び
(c)段階(b)において形成された混合物を均質化すること、
を含んで成る、カゼイン及びホエータンパク質の複合体により封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを製造する方法。
【請求項17】
カゼイン及びホエータンパク質の水溶液が、約6〜約9の範囲のpHを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの酸化されやすい脂質が魚油である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの酸化されやすい脂質が多価不飽和脂肪酸である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
多価不飽和脂肪酸がオメガ−3脂肪酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
エマルジョンが、約1〜約5重量%のカゼインを含んで成る、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
エマルジョンが、約1〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る、請求項15〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
カゼインのホエータンパク質に対する比率が、約2:1〜約1:2である、請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
カゼインがカゼイン塩ナトリウムである、請求項15〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ホエータンパク質が、ホエータンパク質単離物(WPI)又はホエータンパク質濃縮物(WPC)である、請求項15〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
カゼイン及びホエータンパク質の複合体中に封入された、少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョン。
【請求項2】
カゼイン及びホエータンパク質溶液の混合物を約70℃〜約100℃で加熱することにより形成されるカゼイン及びホエータンパク質の複合体中に封入された、少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョン。
【請求項3】
約0.5〜約60重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る、請求項1又は請求項2に記載のエマルジョン。
【請求項4】
約20〜約30重量%の少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成る、請求項3に記載のエマルジョン。
【請求項5】
少なくとも1つの酸化されやすい脂質が魚油である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項6】
少なくとも1つの酸化されやすい脂質が、多価不飽和脂肪酸又はそのエステルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項7】
多価不飽和脂肪酸がオメガ−3脂肪酸である、請求項6に記載のエマルジョン。
【請求項8】
オメガ−3脂肪酸が、ドコサヘキサエン酸又はエイコサペンタエン酸である、請求項7に記載のエマルジョン。
【請求項9】
約1〜約5重量%のカゼインを含んで成る、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項10】
約1〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項11】
エマルジョン中のカゼインのホエータンパク質に対する重量比が、約2:1〜約1:2である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項12】
カゼインがカゼイン塩ナトリウムである、請求項1〜11のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項13】
ホエータンパク質が、ホエータンパク質単離物(WPI)又はホエータンパク質濃縮物(WPC)である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項14】
約2〜4重量%カゼイン及び約2〜4重量%のホエータンパク質を含んで成る、請求項1〜13のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項15】
(a)水溶液中でカゼイン及びホエータンパク質の複合体を形成させること(ここで、カゼイン及びホエータンパク質は、ジスルフィド結合により結合している)、
(b)少なくとも1つの酸化されやすい脂質を水溶液中に分散させること、及び
(c)段階(b)において形成された混合物を均質化すること、
を含んで成る、カゼイン及びホエータンパク質の複合体により封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを製造する方法。
【請求項16】
(a)カゼイン及びホエータンパク質の水溶液を加熱し、タンパク質複合体を形成させること、
(b)少なくとも1つの酸化されやすい脂質を水溶液中に分散させること、及び
(c)段階(b)において形成された混合物を均質化すること、
を含んで成る、カゼイン及びホエータンパク質の複合体により封入された少なくとも1つの酸化されやすい脂質を含んで成るエマルジョンを製造する方法。
【請求項17】
カゼイン及びホエータンパク質の水溶液が、約6〜約9の範囲のpHを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの酸化されやすい脂質が魚油である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの酸化されやすい脂質が多価不飽和脂肪酸である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
多価不飽和脂肪酸がオメガ−3脂肪酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
エマルジョンが、約1〜約5重量%のカゼインを含んで成る、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
エマルジョンが、約1〜約5重量%のホエータンパク質を含んで成る、請求項15〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
カゼインのホエータンパク質に対する比率が、約2:1〜約1:2である、請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
カゼインがカゼイン塩ナトリウムである、請求項15〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ホエータンパク質が、ホエータンパク質単離物(WPI)又はホエータンパク質濃縮物(WPC)である、請求項15〜24のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−538916(P2008−538916A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508779(P2008−508779)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/NZ2006/000083
【国際公開番号】WO2006/115420
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(592072539)マッセイ ユニバーシティー (2)
【氏名又は名称原語表記】MASSEY UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/NZ2006/000083
【国際公開番号】WO2006/115420
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(592072539)マッセイ ユニバーシティー (2)
【氏名又は名称原語表記】MASSEY UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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