説明

脂質白金錯体およびその使用方法

本発明は、新規な脂質白金錯体、リポソーム封入脂質白金錯体、脂質白金錯体を含む医薬組成物、および脂質白金錯体を用いて癌を治療する方法を提供する。本発明の化合物または組成物の単位剤形を含むキットも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年5月2日に出願された米国仮特許出願第60/467,567号(参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする)の利益を主張するものである。
【0002】
1. 本発明の分野
本発明は、脂質白金錯体、脂質白金錯体の製造方法、リポソーム封入脂質白金錯体、脂質白金錯体を含む組成物、および脂質白金錯体を用いる癌の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 本発明の背景
白金配位化合物は、細胞障害性薬剤として1965年に初めて同定された。cis-ジアンミンジクロロ白金(II)(シスプラチン)は、ヒトにおける広範囲の腫瘍疾患を治療するのに有用である、臨床上重要な抗癌剤である。Loehrerら, Ann. Int. Med. 100: 704-713 (1984)。しかし、シスプラチンの長期投与は、悪阻、腎毒性、内耳神経毒性、および神経毒性をはじめとする重度の全身毒性により制限されている。Zwellingら, "Platinum Complexes" in Pharmacologic Principles of Cancer Treatment, B.A. Chabner, Saunders編集, Philadelphia, PA (1982)。シスプラチンの治療係数を改善することを目的として、多数の白金類似体がこれまで調製、試験されてきているが、それらの結果は一般的にそれほど芳しくない。M. C. Christian, "The Current Status of Platinum Analogs", Seminars in Oncology, 1992, 19 (6), 720-733を参照されたい。
【0004】
cis-ジアンミン(1,1-シクロブタンジカルボキシラト)白金(II)(カルボプラチン)は第2世代の白金類似体であって、シスプラチン以外で唯一病院で幅広く使用されている白金薬剤である。従来の化学療法薬療法でシスプラチンの代わりにカルボプラチンを使用した場合、効果的であり、シスプラチンに比べて嘔吐性、腎毒性、神経毒性、および内耳神経毒性は低いが、カルボプラチンにはシスプラチンにはない有害な骨髄抑制特性がある。Goら, J. Clin. Oncol. 1999, 17 (1):409-22。オキサリプラチンは、近年開発された第3世代のシスプラチン類似体であって、種々の腫瘍のタイプにおいて臨床的活性を示し、かつシスプラチンおよびカルボプラチンとの交差耐性を示さない、1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)担体リガンドを有する。オキサリプラチンは、5-フルオロウラシル耐性および化学療法未変性(native)疾患の両方において、5-フルオロウラシル(5-FU)と共同的に作用し、現在、乳癌、肺癌、前立腺癌、および非ホジキンリンパ腫に対する単一薬剤として、ならびに組み合わせレジメントで評価されている。Missetら, Crit Rev. Oncol. Hematol. 2000, 35 (2):75-93。
【0005】
近年の臨床試験で有望視された他の白金類似体としては、NDDP(cis-ビス-ネオデカノアト-trans-R,R-1,2-ジシクロヘキサン白金(II)、米国特許第5,178,876号;ネダプラチン、Latorreら, Int. J Oncol. 2002, 21(1): 179-86;JM335(trans-アミン-(シクロヘキシルアミンジクロロジヒドロキソ)白金(IV))、Kellandら, J. Inorg. Biochem. 1999, 77 (1-2): 115-115;イプロプラチン、Martin, Clin. Breast Cancer 2001, 2(3): 190-208;複核白金錯体のBBR3005(trans-PtCl(NH3)22H2N(CH2)6NH2)2+)およびBBR3171(cis-PtCl(NH3)22H2N(CH2)6NH2)2+)、ならびに三核白金錯体のBBR3464(trans-PtCl(NH3)2-2mu-trans-Pt(NH3)2(H2N(CH2)6NH2)2)4+、Robertsら, J. Inorg. Biochem. 1999, 77(1-2): 47-50;ならびに立体的ヒンダード白金錯体のAMD473(cis-アミンジクロロ(2-メチルピリジン)白金(II))、Holfordら, J. Cancer 1998, 77(3): 366-73が挙げられる。
【0006】
米国特許第4,256,652号には、cis-DACH、trans-R,R-DACH、およびtrans-S,S-DACHをはじめとする、1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)の分割立体異性体を含む白金錯体が記載されている。trans-DACH結合白金錯体は、類似のcis-DACH錯体に比べて、一般的に抗腫瘍薬剤として効果があった。
【0007】
リポソームは、乾燥脂質フィルムに水溶液を添加した際に自然に形成され得る脂質小胞であって、疎水性薬剤および親水性薬剤の両方における薬剤担体として使用可能であり、その場合、前記薬剤はそれぞれリポソームの疎水性区画または親水性区画中に封入される。Mayhewら, Liposomes, 編集Marc J. Ostro, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y. (1983)。多重膜リポソームは、疎水性薬剤を担持するのに特に好適な多層脂質小胞(MLV)のクラスである。MLVを動物およびヒトに静脈内投与した場合、肝臓、脾臓、および細網内皮系(RES)細胞に富んでいる他の器官に集中する。Kasiら, Int. J. Nucl. Med. Biol. 11:35-37 (1984); Lopez-Beresteinら, Cancer Drug Deliv., 1: 199-205 (1984);およびLopez-Beresteinら, Cancer Res. 44:375-378 (1984)。
【0008】
リポソームは、抗癌剤のin vitro送達で利用されてきた(Mayhewら, Liposomes, 編集Ostro, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y. (1983), immunomodulators and anti-fungal agents (Mehtaら, Immunology 51:517-527 (1984))。リポソームを用いるin vivo薬剤送達が動物およびヒトの両方で報告されている。Lopez-Beresteinら, Clin Exp Metastasis 2:127-137 (1984);Lopez-Beresteinら, J. Inf. Dis. 147:937-945(1983);およびLopez-Beresteinら, J. Inf. Dis. 151:704-710 (1985)。
【0009】
抗腫瘍性錯体をリポソームカプセル化することにより、ドキソルビシン誘発心毒性およびシスプラチン誘発腎毒性をはじめとする薬剤関連毒性を低減させることができるとの研究が報告されている。Forssenら, Proc. Natl. Acad. Sci. 78:873-1877 (1981);Olsonら, Eur. J. Cancer Clin. Oncol. 18:167-176 (1982);Gabizonら, Cancer Res. 42:4734-4739 (1982);Hermanら, Cancer Res. 43:5427-5432 (1983);およびFreiseら, Arch. Int. Pharmacodynamie Therapie 258:180-192 (1982)。さらに検証によると、抗腫瘍剤をリポソームに組込んだ場合、恐らくは、(a)有効成分の持続放出(Mayhewら, Ann. N.Y. Acad. Sci. 308:371-386, Patelら, Int. J. Cancer 34:717-723. (1984));(b)腫瘍細胞による有効成分の取り込み向上;または(c)有効成分のより選択的な臓器分布に基づいて、これらの薬剤の抗腫瘍活性が高まり得ることが示唆されている。Gabizonら, Cancer Res. 43: 4730-4735 (1983); Mayhewら, Cancer Drug Deliv. 1: 43-58 (1983);および米国特許第4,330,534号。
【0010】
リポソームシスプラチン製剤はすでに調製されているが、カプセル化効率が非常に悪いこと、また得られたリポソーム製剤の安定性が比較的低いことが難点となっている。Freiseら, Arch. Int. Pharmacodynamie Therapie 258:180-192(1982)。白金錯体L-NDDPは、錯体ビス-ネオデカノアト-cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン白金(II)のリポソーム製剤であって、現在、膵臓癌、転移性結腸直腸癌および悪性中皮腫の臨床試験で有望視されている。L-NDDPは、実際には、リポソーム内で活性化されて抗腫瘍活性に関与する活性白金種を提供するプロドラッグであると考えられる。Perez-Solerら, Cancer Chemother. Pharmacol. (1994), 33:378-384。
【0011】
関連技術としては、米国特許第5,041,581号、"Hydrophobic Cis-Platinum Complexes Efficiently Incorporated into Liposomes";米国特許第5,117,022号、"Hydrophobic Cis-Platinum Complexes Efficiently Incorporated intoLiposomes";米国特許第5,178,876号、"Hydrophobic Cis-Platinum Complexes Efficiently Incorporated into Liposomes";米国特許第5,186,940号、"Hydrophobic Cis-Platinum Complexes Efficiently Incorporated into Liposomes";米国特許第5,384,127号、"Stable Liposomal Formulation of Lipophilic Platinum complexes";および特許第5,843,475号、"Delivery and Activation Through Liposome Incorporation of Diaminocyclohexane Platinum (II) Complexes"が挙げられる。
【0012】
欧州特許出願第83306726.7号には、ラセミ型DACHリガンドおよび脂肪酸置換基を有するホスファチジルリガンドを持つ白金錯体が記載されている。これらの錯体は、主として血漿中では不溶性のものとして記載されており、脂質小胞担体で用いられるのが好ましい。国際公開第WO 98/33481号には、リン脂質の存在下で種々のDACH白金錯体を調製する方法が記載されているが、脂質結合を有する白金錯体の形成または単離については報告されてはいない。
【0013】
リポソームの商品化成功を妨げる障害は、リポソームの大量製造に対して適当なコントロールが欠如していたことであった。直径が1μM超のリポソームは特定の治療用途において適していることはいえず、従って、1ミクロン未満のリポソームを再現可能に生産することが望ましい。米国特許第5,902,604号には、リン脂質および界面活性剤を含む前リポソーム凍結乾燥物(lyophilate)は、再構成時に水性媒体中で1ミクロン未満のリポソームを提供することができることが記載されている。
【0014】
臨床医が種々の抗癌剤を利用可能であるにもかかわらず、従来の化学療法には多くの欠点がある(例えば、Stockdale, 1998, "Principles Of Cancer Patient Management" in Scieratific American Medicine, vol.3, Rubenstein and Federman編集, 第12章, 第10節を参照されたい)。大部分の抗癌剤には毒性があり、化学療法は、重度であって、かつ多くの場合危険性のある副作用(例えば、重度の悪心、骨髄抑制、免疫抑制等)をもたらす可能性がある。さらに、腫瘍細胞の多くは、多重薬剤耐性を介して抗癌剤に対して耐性であるか、耐性を発現する。従って、癌および関連の増殖性疾患を治療するのに有用な、治療指標が改善された新規薬剤が当技術分野において強く求められている。
【0015】
本出願の第2節におけるすべての参考文献の引用は、その参考文献が本発明の先行技術であるということを承認するものではない。
【発明の開示】
【0016】
3. 本発明の要約
本発明は、脂質白金錯体、および癌治療における脂質白金錯体の使用に関する。
【0017】
従って、一態様では、本発明は、以下に記載の式(I):
【化1】

【0018】
(式中、
R1およびR2は、独立して-N(R6)2、-NH3+であるか;あるいは、R1およびR2はそれぞれ-NH2であって、かつC2-C6アルキレンまたはC3-C7シクロアルキレン基を介して結合して、場合により1種または複数のR7で置換されていてもよい、二座ジアミンリガンドを形成しており;
R3は脂質リガンドであり、但し、R3はホスファチジン酸ではなく;
R4は脂質リガンド、無機リガンド、-CN、または-OC(O)R5であり、但し、R4はホスファチジン酸ではなく;
R5は、C1-C24アルキルであり;
各R6は、独立して、-H、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、または-アリールであり;
各R7は、独立して、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、または-アリールである)
で表される精製錯体(「脂質白金錯体」)、またはその製薬上許容可能な塩を提供する。
【0019】
また本発明は、脂質白金錯体を含むリポソーム(「リポソーム脂質白金錯体」)を提供する。
【0020】
また本発明は、癌の治療方法であって、かかる治療を必要とする被験体に、癌治療に有効な量の脂質白金錯体またリポソーム脂質白金錯体を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0021】
また本発明は、癌治療に有効な量の脂質白金錯体またはリポソーム脂質白金錯体と、製薬上許容可能な担体またはビヒクルとを含む医薬組成物を含む。本組成物は癌治療に有用である。本発明は、製薬上許容可能な塩として提供される場合の脂質白金錯体を含む。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、脂質白金錯体の製造方法を含む。
【0023】
さらに本発明は、脂質白金錯体またはリポソーム脂質白金錯体を含有する容器を含むキットを提供する。
【0024】
本発明の詳細は、添付の記述および下記の実施例で述べる。本明細書に記載の方法および原料に類似するすべての方法および原料または同等のすべての方法および原料を本発明の実施または試験で使用することができるが、ここでは事例的な方法および原料を記載している。本発明の他の特徴、目的、および利点は、本記載から、および特許請求の範囲から明らかであろう。本明細書および添付の特許請求の範囲においては、記載内容に明らかなる別段の記載がない限り、単数形には複数形も含まれるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
4. 発明の詳細な説明
本発明は、以下に記載の式I:
【化2】

【0026】
(式中、
R1およびR2は、独立して-N(R6)2、-NH3+であるか;あるいは、R1およびR2はそれぞれ-NH2であって、かつC2-C6アルキレンまたはC3-C7シクロアルキレン基を介して結合して、場合により1種または複数のR7で置換されていてもよい、二座ジアミンリガンドを形成しており;
R3は脂質リガンドであり、但し、R3はホスファチジン酸ではなく;
R4は脂質リガンド、無機リガンド、-CN、または-OC(O)R5であり、但し、R4はホスファチジン酸ではなく;
R5は、C1-C24アルキルであり;
各R6は、独立して、-H、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、または-アリールであり;
各R7は、独立して、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、または-アリールである)
による新規クラスの脂質白金錯体、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、および水和物を提供する。
【0027】
一実施形態では、脂質白金錯体は、精製形態である。
【0028】
4.1 定義
本明細書で用いられる「C1-C6アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の、飽和炭化水素または不飽和炭化水素を意味する。代表的なC1-C6アルキル基としては、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、エチレニル、プロピレニル、1-ブテニル、2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、アセチレニル、ペンチニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、および3-ヘキシニルが挙げられる。
【0029】
本明細書で用いられる「アルコキシ」という用語は、-O-(C1-C6アルキル)基を意味する。代表的なアルコキシ基としては、これらに限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、およびネオヘキシルオキシが挙げられる。
【0030】
本明細書で用いられる「C1-C24アルキル」という用語は、1〜24個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の、飽和炭化水素または不飽和炭化水素を意味する。代表的なC1-C24アルキル基としては、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、ネオヘキシル、イソヘプチル、ネオヘプチル、イソオクチル、ネオオクチル、イソノニル、ネオノニル、イソデシル、ネオデシル、ミリストイル、オレオイル、パルミトイル、ステアロイル、ラウロイル、およびカプロイルが挙げられる。C1-C24アルキル基は、非置換であってもよく、あるいは場合により、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、-アルコキシ、-アリール、-複素環、-ハロ、-CN、-COOH、-COOR6、-OC(O))R6、-NH2、-C(O)R6、-CHO、-NHR6、N(R6)2、-NHC(O)R6、または-C(O)NHR6基(式中、R6は、-H、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、または-アリールである)の1種または複数と置換されていてもよい。
【0031】
本明細書で用いられる「アルキルカルボキシラト」という用語は、次の構造:
【化3】

【0032】
(式中、R5はC1-C24アルキル基である)を有する基を意味する。
【0033】
「C2-C6アルキレン」は、二価であって、2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素または不飽和炭化水素を意味する。
【0034】
本明細書で用いられる「アリール」という用語は、フェニル基またはナフチル基を意味する。
【0035】
本明細書で用いられる「二座ジアミンリガンド」という用語は、一般式:
NH2-X-NH2
(式中、Xは、2個のNH2基を結合するC2-C6アルキレンまたはC3-C7シクロアルキレン基である)で表されるリガンドを意味する。かかる二座リガンドは2個のNH2基によって白金に配位結合しており、その各基は、金属上の個別の配位部位を占めている。二座ジアミンリガンドは、キラルであってもアキラルであってもよい。代表的な二座ジアミンリガンドとしては、これらに限定されるものではないが、trans-R,R-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-S,S-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン、および1,2-エチレンジアミン、(1R,2R)-(+)-1,2-ジフェニルエチレンジアミン、および(1S,2S)-(-)-1,2-ジフェニルエチレンジアミンが挙げられる。
【0036】
本明細書で用いられる「C3-C7シクロアルキル」という用語は、3員、4員、5員、6員、または7員の飽和または不飽和非芳香族炭素環である。代表的なシクロアルキルとしては、これらに限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプタニル、1,3-シクロヘキサジエニル、1,4-シクロヘキサジエニル、1,3-シクロヘプタジエニル、および1,3,5-シクロヘプタトリエニルが挙げられる。
【0037】
「C3-C7シクロアルキレン」は、3員、4員、5員、6員、または7員の二価であって、飽和または不飽和の非芳香族炭素環を意味する。
【0038】
本明細書で用いられる「ハロ(halo)」という用語は、-F、-Cl、-Br、または-Iを意味する。
【0039】
本明細書で用いられる「無機リガンド」という用語は、炭素含有有機官能基を含まないリガンドを意味する。無機リガンドの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、Cl-、Br-、I-、F-、NO3-、OH-、H2O、HCO3-、およびHSO4-が挙げられる。
【0040】
本明細書で用いられる「脂質白金錯体」という用語は、本明細書に記載の式(I)で表される四配位の白金錯体を意味する。好ましい実施形態では、脂質白金錯体は精製された形態である。
【0041】
本明細書では、「精製された」という用語は、(例えば、合成有機化学反応混合物の他の成分から)単離された場合、その単離物が、単離物重量の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の本発明の脂質白金錯体を含有していることを意味する。好ましい実施形態では、単離物は、単離物重量の少なくとも95%の本発明の脂質白金錯体を含有している。
【0042】
本明細書では以下の略語を使用するとともに、その示した定義を有する:DACHは、1,2-ジアミノシクロヘキサンであり;DMPCは、ジミリストイルホスファチジルコリンであり;DMPGは、ジミリストイルホスファチジルグリセロールであり;DMSOは、ジメチルスルホキシドであり;EtOHは、エチルアルコールであり;HPLCは、高圧液体クロマトグラフィーであり;L-NDDPは、リポソーム中に封入されているNDDPであり;NDDPは、cis-ビス-ネオデカノアト-trans-R,R-1,2-ジシクロヘキサン白金(II)であり;MLVは、多重層脂質小胞である。
【0043】
4.2 本発明の脂質白金錯体
本発明の脂質白金錯体は、(式I中、R1およびR2によって表されている)2個の隣接した配位部位が、アミンまたはアンミン(NH3+)リガンドによって独立して占められているか、あるいは、R1とR2が一緒になって1つの二座ジアミンリガンドを表す、四配位白金(II)錯体である。第3の配位部位(式IのR3)は脂質リガンドによって占められており、一方、最後の配位部位(式IのR4)は、脂質リガンド、無機リガンド、または有機リガンド(但し、脂質リガンドとして、ホスファチジン酸は本発明から除く)により占められ得る。
【0044】
本発明は、本発明の脂質白金錯体の有機塩および無機塩をはじめとする、本発明の脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩をさらに包含する。本発明の脂質白金錯体は、少なくとも1個のアミノ基を含有している。従って、本発明の脂質白金錯体のアミノ基により酸付加塩を形成することが可能である。好ましい塩は、これらに限定されるものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、糖酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)が挙げられる。製薬上許容可能な塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン、または他の対イオンなどの別の分子の包含していてもよい。対イオンは、本発明の脂質白金錯体上に存在し得る、電荷を安定させるすべての有機成分または無機成分であってよい。さらに、製薬上許容可能な塩は、その構造中で2個以上の電荷原子を有していてもよい。複数の電荷原子が製薬上許容可能な塩の一部である場合、前記塩は複数の対イオンを有し得る。従って、脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩は、1種または複数の電荷原子および/または1種または複数の対イオンを有し得る。
【0045】
4.2.1 アミン/アンミンリガンド
R1およびR2は、独立して、アミンまたはアンミン(NH3+)リガンドである。本発明のアミンリガンドは、式-N(R6)2(式中、各R6は、独立して、-H、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、または-アリールである)によって表される。代替の実施形態では、R1およびR2はそれぞれ-NH2であって、C2-C6アルキレンまたはC3-C7シクロアルキレン基を介して結合し、二座ジアミンリガンド(場合によりR7で置換されていてもよい)を形成している。本発明で有用な二座ジアミンリガンドは、これらに限定されるものではないが、trans-RR-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-S,S-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン、および1,2-エチレンジアミンが挙げられる。
【0046】
一実施形態では、脂質白金錯体は、二座ジアミンリガンドを含む。
【0047】
特定の実施形態では、脂質白金錯体は、二座1,2-エチレンジアミンリガンドを含む。別の実施形態では、二座1,2-エチレンジアミンリガンドは、1,2-ジフェニルエチレンジアミンである。別の実施形態では、1,2-エチレンジアミンリガンドは、(1R,2R)-(+)-1,2-ジフェニルエチレンジアミン、または(1S,2S)-(-)-1,2-ジフェニルエチレンジアミンである。
【0048】
特定の実施形態では、脂質白金錯体は、二座1,2-ジアミノシクロヘキサンリガンドを含む。
【0049】
好ましい実施形態では、脂質白金錯体は、二座trans-R,R-1,2-ジアミノシクロヘキサンリガンドを含む。
【0050】
4.2.2 脂質リガンド
脂質は白金への添加成分として本明細書において有用であり、本発明の脂質白金錯体は、1個または2個の脂質リガンドを有する四配位白金錯体を含む。便宜上、(i)脂質白金錯体上でリガンドとして使用可能な脂質と、(ii)リポソーム脂質白金錯体のリポソーム成分として使用可能な脂質とは区別するために、かかる脂質はそれぞれ、本明細書では「脂質リガンド」と「リポソーム脂質成分」と呼称する。
【0051】
本発明で有用な脂質リガンドは、これらに限定されるものではないが、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ糖脂質、およびステロールが挙げられる。脂質リガンドとして有用な糖脂質の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、セラミド、セレブロシドおよびガングリオシド等のスフィンゴ糖脂質が挙げられる。脂質リガンドとして有用なステロールの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、コレステロールが挙げられる。ホスファチジン酸は、本発明の脂質リガンドとしての使用からは除く。
【0052】
一実施形態では、脂質白金錯体は、1個の脂質リガンドを有する。
【0053】
別の実施形態では、脂質白金錯体は、2個の脂質リガンド(同一であっても異なっていてもよい)を有する。
【0054】
一実施形態では、脂質リガンドは糖脂質である。
【0055】
特定の実施形態では、脂質リガンドは、セレブロシド、ガングリオシドまたはカルジオリピンである。
【0056】
別の実施形態では、脂質リガンドはステロールである。
【0057】
特定の実施形態では、脂質リガンドはコレステロールである。
【0058】
好ましい実施形態では、脂質リガンドはリン脂質である。
【0059】
特定の実施形態では、脂質白金錯体は、リン脂質である1個の脂質リガンドを有する。
【0060】
別の特定の実施形態では、脂質白金錯体は、リン脂質である2個の脂質リガンドを有する。
【0061】
脂質リガンドとして本発明で有用な好ましいリン脂質は、次の構造:
【化4】

【0062】
(式中、
X1は、
【化5】

【0063】
であり、
X2は、-(C1-C6アルキレン)-(NR9)2、-(C1-C6アルキレン)-OH、-(C1-C6アルキレン-N+(R9)3、-(C1-C6アルキレン)-CH(OH)CH2OH、-CH2CH[-N+(R9)3]COOH、または-イノシトール-1-イルであり;
各R8は、独立して、-Hまたは-C1-C6アルキルであり;
各R9は、独立して、-Hまたは-C1-C24アルキルである)
を有する。
【0064】
脂質リガンドとして本発明で有用な他のリン脂質は、これらに限定されるものではないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミンおよびスフィンゴ脂質、特にスフィンゴミエリンが挙げられる。
【0065】
一実施形態では、脂質リガンドとして本発明で有用なリン脂質は、これらに限定されるものではないが、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、卵ホスファチジルコリン、ジラウリロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジラウリロイルホスファチジルグリセロール、ジオレイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルグリセロール、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルグリセロール、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルグリセロール、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、脳スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、およびジステアロイルスフィンゴミエリンが挙げられる。
【0066】
一実施形態では、脂質リガンドはホスファチジルグリセロールである。
【0067】
別の実施形態では、脂質リガンドはホスファチジルコリンである。
【0068】
好ましい実施形態では、脂質リガンドは、ジミリストイルホスファチジルグリセロールまたはジミリストイル(dimyrisoyl)ホスファチジルコリンである。
【0069】
また、脂質リガンドとして本発明に従って使用可能なリン脂質としては、これらに限定されるものではないが、合成リン脂質が挙げられ、これは非置換であってもよく、あるいは、-OH、-Cl-C6アルキル、-CN、-NO2、-C3-C7シクロアルキル、-アリール、-ハロゲン、-アルコキシ、-NH2、-NH-(C1-C6アルキル)、-N-(C1-C6アルキル)2、-C(O)OH、-C(O)O-(C1-C6アルキル)、-OC(O)-(C1-C6アルキル)、-C(O)(C1-C6アルキル)、-C(O)NH2、-C(O)NH-(C1-C6アルキル)、または-C(O)N-(C1-C6アルキル)2の1種または複数で独立して置換され得る1種または複数の脂肪族成分を有していてもよい。
【0070】
またリン脂質の塩も、本発明において白金リガンドとして有用であり得る。本発明における白金リガンドとして有用なリン脂質の塩の例としては、これらに限定されるものではないが、アンモニウム塩;アルカリ金属塩、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、またはマグネシウム塩;および他の金属塩、例えば銀塩または水銀塩が挙げられる。
【0071】
4.2.3 他のリガンド
本脂質白金錯体は、非アミノリガンドおよび/または非脂質リガンドも含み得る。
【0072】
本発明で有用な他のリガンドとしては、これらに限定されるものではないが、無機リガンド、例えば、これらに限定されるものではないが、Cl-、Br-、I-、F-、NO3-、OH-、H2O、HCO3-、およびHSO4-;有機リガンド、例えば、これらに限定されるものではないが、-CN、および式:-OC(O)R5で表されるアルキルカルボキシラト基(式中、R5はC1-C24アルキルである)が挙げられる。本発明における白金リガンドとして有用なアルキルカルボキシラト基の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、ネオペンタノアト、ネオヘプタノアト、ネオオクタノアト、ネオノナノアト、ネオデカノアト、シクロペンテンカルボキシラト、2,2-ジメチルオクタノアト、2,2-ジエチル-4-メチルペンタノアト、2-エチルヘキサノアト、2-エチルブチラト、2-プロピルペンタノアト、2-メチル-2-エチルヘプタノアト、2,2-ジエチルヘキサノアト、2,2-ジメチル-4-エチルヘキサノアト、ラウラト、ミリスタト、および2,2,4,4-テトラメチルペンタノアトが挙げられる。
【0073】
一実施形態では、リガンドは、6〜14個の炭素原子を有するアルキルカルボキシラト基である。
【0074】
別の実施形態では、リガンドは、9〜11個の炭素原子を有するアルキルカルボキシラト基である。
【0075】
特定の実施形態では、リガンドは、10個の炭素原子を有するアルキルカルボキシラト基である。
【0076】
別の実施形態では、本発明の脂質白金錯体は、式:-OC(O)R5(式中、R5は分枝状C1-C24アルキル基である)で表されるアルキルカルボキシラト基であるリガンドを有する。
【0077】
さらに別の実施形態では、脂質白金錯体は、式:-OC(O)R5(式中、R5は直鎖状C1-C24アルキル基である)で表されるアルキルカルボキシラト基であるリガンドを有する。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明の脂質白金錯体は、ネオデカノアト基であるリガンドを有する。
【0079】
本明細書に記載されている特定の有機リガンド基が1種または複数のキラル中心を有し得ることは、有機化学分野の当業者は理解するであろう。本発明では、1種または複数のキラル中心をもつすべてのリガンドのあらゆる可能な立体異性体を包含するものと想定される。
【0080】
4.3 脂質白金錯体の調製
式(I)の脂質白金錯体は、下記のスキーム1で説明されている合成方法によって調製することができる。本発明の範囲の脂質白金錯体を、適切かつ関連性のある出発原料、合成中間体、および試薬を選択することによりどのように調製するかについては、当業者には明らかであろう。
【0081】
スキーム1
【化6】

【0082】
代表的な方法では、アミン(本明細書では一般的な二座ジアミン1により表されている)をテトラクロロ白金酸カリウムと処理することにより、式2aで表されるジアミノジクロロ白金錯体が得られる。次いで、これを硫酸銀および水で処理することにより、式3で表される中間体ジアミノスルファト白金(II)一水和物が得られる。次いで、中間体3を化学量的に過剰な反応性脂質(式4のリン脂質等)と反応させて、式6で表されるジアミノ-ビス-リン脂質白金錯体を得ることができる。特定の実施形態では、中間体3を化学量的に過剰な単一の脂質と反応させる代わりに、中間体3を各々1当量の2種類の異なる脂質と同時に反応させて、2種類の異なる脂質リガンドを有する脂質白金錯体を得ることができる。あるいは、無機リガンドのアルカリ金属塩またはアルキルカルボン酸5のアルカリ金属塩などの別の反応性リガンドの過剰存在下において、式3の錯体を、半化学量的な量の脂質(例えば4)と反応させて、式7の白金錯体(脂質結合および非脂質結合の両方を含んでいる)を得ることができる。
【0083】
代替の実施形態では、式(I)の脂質白金錯体は、下記のスキーム2で説明されている合成方法により調製することができる。
【0084】
スキーム2
【化7】

【0085】
スキーム2では、2当量の式5で表されるリン脂質を2当量のAgNO3と反応させることにより、2当量の式9で表されるリン脂質が得られる。次いで、2当量の式9のリン脂質を、クロロホルム中で1当量の白金錯体2bと反応させることにより、式6のジアミノ-ビス-リン脂質白金錯体が得られる。
【0086】
スキーム2の特定の実施形態では、一般的な二座白金錯体2bはcis-[trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]ジヨード白金(II)(10)であり、一般的なリン脂質ナトリウム5は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)(13)のナトリウム塩であり、錯体10と銀錯体9から形成された錯体は、cis-ビス[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)][trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)(14)である。
【0087】
式2のジアミノジクロロ白金錯体を調製するための一般的方法:
水に溶解したジアミン1の約0.5M溶液を、室温にて水に溶解したK2PtCl4(1.05当量)の濾液にゆっくりと添加する。得られた混合物を約16時間室温に静置する。前記時間の経過後、有色沈殿物が出現する。沈殿物を濾過し、濾液がAgNO3に対してそれ以上反応しなくなるまで水で洗浄し、次いで、濾液をエタノールとアセトンを連続使用して洗浄する。沈殿物は、約1時間濾過漏斗中で乾燥させ、次いで、真空内で乾燥させて式2aの錯体を得る。
【0088】
式3のジアミノスルファト白金錯体を調製するための一般的方法:
水に溶解したAg2SO4(約0.97当量)の約0.03M溶液を光から保護した反応槽中に投入し、得られた水溶液を約40℃まで加温する。式2aの錯体を添加し、反応物を室温にて約48時間撹拌させる。次いで、この反応混合物を1cm以下のセライトのパッドを通して濾過し、そのセライトを水で洗浄する。次いで濾液を真空内で濃縮し、得られた固形残留物を真空内で乾燥させ、式3の錯体を得る。
【0089】
式6のジアミノ-ビス-リン脂質白金錯体を調製するための一般的方法:
水に溶解した式3の錯体の約0.1M撹拌溶液に、H2O:EtOH(容量で約8:1)の混合物中のリン脂質ナトリウム塩4(約2.0当量)の約0.5M溶液を添加した。この反応混合物を約24時間撹拌し、得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、真空乾燥して式6の錯体を得る。これは、カラムクロマトグラフイーまたはHPLCを用いてさらに精製することができる。
【0090】
式7のジアミノ-リン脂質白金錯体を調製するための一般的方法:
水に溶解した式3の錯体の約0.5M撹拌溶液に、H2O:EtOH(容積で約8:1)の混合物中のリン脂質ナトリウム塩4(約0.5当量)およびアルコキシカルボニルナトリウム塩5(約1.5当量)の溶液を添加した。この反応混合物を約24時間撹拌し、得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、真空乾燥して式7の錯体を得る。これは、カラムクロマトグラフイーまたはHPLCを用いてさらに精製することができる。
【0091】
スキーム1の方法を用いて調製可能な本発明の錯体としては、これらに限定されるものではないが、cis-ビス[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II);cis-ビス[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)trans-(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II);cis-ビス[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II);cis-[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)(ネオ-デカノアト)trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II);cis-[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)(ネオ-デカノアト)trans-(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II);およびcis-[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)(ネオ-デカノアト)cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)が挙げられる。
【0092】
一実施形態では、脂質白金錯体は、cis-ビス[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)]trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)である。
【0093】
別の実施形態では、脂質白金錯体は、cis-[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)](ネオ-デカノアト)trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)である。
【0094】
好ましい実施形態では、脂質白金錯体は精製された形態である。
【0095】
また本発明は、式(I)で表される化合物の製造方法に関する。一実施形態では、本発明は、式(I)の化合物の製造方法であって、式(II):
【化8】

【0096】
の錯体を少なくとも約2モル当量の式(III)
【化9】

【0097】
で表される化合物
(式中、
haloは-F、-Cl、-Br、-I、または-Atであり;
M+は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、またはAg+であり;
R1、R2、R3、R4、X1、およびX2は、上に定義されているとおりである)
と反応させるステップを含む、前記方法に関する。
【0098】
一実施形態では、本発明は、R3がリン脂質である、式(I)で表される化合物の製造方法に関する。
【0099】
一実施形態では、本発明は、R4がリン脂質である、式(I)で表される化合物の製造方法に関する。
【0100】
一実施形態では、本発明は、R3およびR4が互いに独立してリン脂質である、式(I)で表される化合物の製造方法に関する。
【0101】
一実施形態では、本発明は、R1およびR2が結合して二座ジアミンリガンドを形成する、式(I)で表される化合物の製造方法に関する。
【0102】
他の実施形態では、本発明は、R1およびR2が結合して二座ジアミンリガンドを形成し、かつ二座ジアミンリガンドがtrans-R,R-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-S,S-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン、または1,2-エチレンジアミンである、式(I)で表される化合物の製造方法に関する。
【0103】
他の実施形態では、本発明は、R1およびR2が結合してtrans-R,R-1,2-ジアミノシクロヘキサンを形成しており、R3およびR4がそれぞれ1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)である、式(I)で表される化合物の製造方法に関する。
【0104】
他の実施形態では、本発明は、R1およびR2が結合してtrans-R,R-1,2-ジアミノシクロヘキサンを形成しており、R3およびR4がそれぞれ1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)であり、M+がAg+である、式(I)で表される化合物の製造方法に関する。
【0105】
4.4 リポソーム脂質白金錯体
好ましい実施形態では、本発明は、脂質白金錯体およびリポソーム脂質成分を含むリポソーム、ならびにこれらのリポソームの調製および使用を提供する。便宜上、本明細書では、これらのリポソーム製剤を「リポソーム脂質白金錯体」と称する。本発明のリポソーム脂質白金錯体は、癌治療に有用である。
【0106】
好ましい実施形態では、本発明のリポソーム脂質白金錯体は、精製された形態の脂質白金錯体を含む。
【0107】
本発明のリポソーム脂質白金錯体は、脂質白金錯体の他に、脂質白金錯体を含有するリポソームをも含む。リポソーム脂質白金錯体のリポソームを含む脂質は、本明細書では「リポソーム脂質成分」と称する。リポソーム脂質成分として本発明で有用な脂質としては、これらに限定されるものではないが、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ糖脂質、およびステロールが挙げられる。リポソーム脂質成分として有用な糖脂質の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、セラミド、セレブロシドおよびガングリオシドなどのスフィンゴ糖脂質が挙げられる。リポソーム脂質成分として有用なステロールの代表的な例としては、これに限定されるものではないが、コレステロールが挙げられる。
【0108】
一実施形態では、本発明のリポソームは、2種類以上の異なるリポソーム脂質成分を含む。
【0109】
特定の実施形態では、本発明のリポソームは、2種類の異なるリポソーム脂質成分を含む。
【0110】
好ましい実施形態では、リポソーム脂質成分はリン脂質である。リポソーム脂質成分として本発明で有用なリン脂質は、これらに限定されるものではないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、およびスフィンゴ脂質、特にスフィンゴミエリンが挙げられる。
【0111】
本発明のリポソーム脂質成分として有用なリン脂質の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、卵ホスファチジルコリン、ジラウリロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジラウリロイルホスファチジルグリセロール、ジオレイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルグリセロール、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルグリセロール、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルグリセロール、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、脳スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、およびジステアロイルスフィンゴミエリンが挙げられる。
【0112】
本発明のリポソーム脂質成分として有用な好ましいリン脂質は、これらに限定されるものではないが、ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルコリンである。最も好ましいホスファチジルグリセロールは本質的にDMPGからなるものであり、最も好ましいホスファチジルコリンは本質的にDMPCからなるものである。好ましい実施形態では、本発明のリポソーム脂質組成物は、好ましくは1対10から10対1の間のモル比で、さらに好ましくは3対7のモル比で、リポソーム脂質成分としてのDMPGとDMPCの混合物を含むリポソームを有する。
【0113】
特定の実施形態では、本発明のリポソーム脂質白金錯体は、脂質白金錯体およびリポソーム脂質成分を1対2から1対30の間のモル比で含有する。一実施形態では、脂質白金錯体およびリポソーム脂質成分は、1対2から1対7の間のモル比で存在する。別の実施形態では、脂質白金錯体およびリポソーム脂質成分は、1対3から1対5の間のモル比で存在する。特に、リポソーム脂質成分がDMPC、DMPG、またはその組み合わせである場合、前述のモル比が好ましい。
【0114】
リポソーム脂質白金錯体のリポソームがDMPCまたはDMPGのどちらも含まない場合、本発明のリポソーム脂質白金錯体は、脂質白金錯体およびリポソーム脂質成分を1対2から1対30の間のモル比で、好ましくは1対5から1対20の間で、最も好ましくは1対10と1対15の間で含有し得る。
【0115】
リポソーム脂質白金錯体のリポソームは、多重層、単層であってよく、あるいは不確定の層状構造を有し得る。癌治療に有効な量のリポソーム脂質白金錯体と製薬上許容可能な担体またはビヒクルとを含む医薬組成物は、癌の治療において投与することができる。
【0116】
本発明のリポソーム脂質白金錯体は、脂質白金錯体およびリポソーム脂質成分を含む以外に、本発明の化合物以外の追加の抗癌剤(本明細書では「追加の抗癌剤」と称する)をさらに含んでいてもよい。その場合、本発明の脂質白金錯体と追加の抗癌剤は同一のリポソーム中に封入される。追加の抗癌剤は、これらに限定されるものではないが、下記の第4.6.3節で本明細書中に列挙されているものが挙げられる。
【0117】
一実施形態では、本発明のリポソーム脂質白金錯体中に封入される追加の抗癌剤は、ゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである。
【0118】
四配位白金(II)種とリン脂質とを含むリポソームの調製については、米国特許第5,041,581号(参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする)に記載されている。
【0119】
本発明のリポソーム脂質白金錯体は、非イオン性、アニオン性、またはカチオン性である界面活性剤をさらに含み得る。かかるリポソームは、1μM未満の中央径を有し得る。本発明で有用な界面活性剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ソルビタンポリオキシエチレンカルボキシレート、例えば、ソルビタンポリオキシエチレンモノオレエートおよびソルビタンポリオキシエチレンモノラウレート;一般の脂肪酸のソルビタンエステル、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、およびソルビタンモノラウレート;ポリオキシエチレンエーテル、例えば、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノパルミチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、およびポリオキシエチレンモノオレイルエーテル;ならびにブロック共重合体、例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含むものが挙げられる。
【0120】
1ミクロン未満の直径を有する本発明のリポソーム脂質白金錯体は、1種または複数のリポソームリン脂質成分と脂質白金錯体の溶液に界面活性剤を添加することにより調製することができる。界面活性剤は、1種または複数のリポソーム脂質成分全量の0.01モル%から5モル%の間の量で存在し得る。一実施形態では、界面活性剤は、1種または複数のリポソーム脂質成分全量の0.5モル%から4モル%の間の量で存在する。好ましい実施形態では、本界面活性剤は、1種または複数のリポソーム脂質成分全量の1.5モル%から3モル%の間の量で存在する。抗癌剤、界面活性剤およびリン脂質を含む直径が1ミクロン未満のリポソームの調製は、米国特許第5,902,604号(参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする)に記載されている。
【0121】
一実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。
【0122】
別の実施形態では、非イオン性界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタンカルボキシレートである。
【0123】
特定の実施形態では、非イオン性界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである。
【0124】
別の特定の実施形態では、非イオン性界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートである。
【0125】
本発明の直径が1ミクロン未満のリポソーム脂質白金錯体は、有用な薬理学的特性を保持し得る。1ミクロン未満のリポソーム製剤は、被験体の循環系の毛細管を閉塞することがないため、特に非経口投与において、さらに具体的には静脈投与方法において有用である。
【0126】
従って、本発明の直径が1ミクロン未満のリポソーム脂質白金化合物は、特に癌の治療において有用である。
【0127】
4.5 医薬組成物および治療目的の投与
他の態様では、本発明は、有効量の本発明の化合物と製薬上許容可能な担体またはビヒクルとを含む医薬組成物を提供する。便宜上、本発明の脂質白金錯体と本発明のリポソーム脂質白金錯体は、それぞれ「本発明の化合物」と見なすものとする。本医薬組成物は動物またはヒトへの投与に好適である。
【0128】
本発明の医薬組成物は、本組成物を被験体に投与することができるすべての形態であってよく、前記被験体は、好ましくは動物であり、これらに限定されるものではないが、ヒト、哺乳動物、すなわち非ヒト動物(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)であり、さらに好ましくは哺乳動物であって、最も好ましくはヒトである。
【0129】
本発明の組成物は、固体、液体またはガス(エアロゾル)の形態をとり得る。代表的な投与経路としては、これらに限定されるものではないが、経口投与、局所投与、非経口投与、舌下投与、直腸内投与、膣内投与、眼内投与、および鼻腔内投与を挙げることができる。非経口投与としては、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、胸膜腔内注射、胸骨内注射または点滴法が挙げられる。好ましくは、本組成物は非経口的に、最も好ましくは静脈内に投与する。本発明の医薬組成物は、被験体に本組成物が投与された場合に、本発明の化合物が生物的に利用され得るように製剤化することができる。例えば、錠剤が単回投与単位であり得る場合、組成物は1回または複数回の投与単位の形態であってよく、またエアロゾル形態の本発明の化合物の容器は、複数の投与単位を保有することができる。
【0130】
本医薬組成物を調製するのに使用される原料は、使用量において非毒性であり得る。本医薬組成物中の1種または複数の有効成分の最適量は、種々の要因によって変わることは当業者に明らかであろう。関連要因としては、これらに限定されるものではないが、被験体(例えばヒト)のタイプ、被験体の全体的な健康、被験体が治療を必要としている癌のタイプ、多重薬剤投薬計画の一部としての本組成物の使用、本発明の化合物の特定の形態、投与方法、および使用する組成物が挙げられる。
【0131】
本組成物が例えば錠剤または散剤形態であるように、製薬上許容可能な担体またはビヒクルは粒子状物質であってよい。担体は、本組成物が例えば経口用シロップまたは注射用液体である場合、液体であり得る。さらに、担体は、吸入器投与等で有用なエアロゾル組成物を提供する場合、気体であり得る。
【0132】
本組成物は経口投与を目的としてもよく、そのような目的においては、本組成物は固体形態または液体態であるのが好ましく、その場合、半固体形態、半液体形態、懸濁液形態、およびゲル形態が固体または液体として本明細書で検討されている形態の範疇に含まれる。
【0133】
本組成物は、経口投与用の固形組成物として、散剤、果粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム、ウエハー等の形態に製剤化することができる。かかる固形組成物は、一般には1種または複数の不活性希釈剤を含有している。さらに、下記の1種または複数のものが存在し得る:結合剤、例えば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、またはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトース、またはデキストリン;崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル(Primogel)、コーンスターチ等;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテックス(Sterotex);流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味料、例えば、ショ糖またはサッカリン;香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味剤;および着色剤。
【0134】
本医薬組成物がカプセル(例えばゼラチンカプセル)の形態をしている場合、上記タイプの原料の他に、ポリエチレングリコール、シクロデキストリンまたは脂肪油等の液体担体を含有し得る。
【0135】
本医薬組成物は、液体、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルジョン、または懸濁液の形態をとり得る。液体は、経口投与において、または注射による送達において有用であり得る。経口投与を目的とする場合、組成物は、1種または複数の甘味料、保存剤、色素/着色剤、および調味料を含み得る。注射による投与の組成物では、1種または複数の界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、沈澱防止剤、バッファー、安定剤、および等張剤をさらに含み得る。
【0136】
本発明の液状組成物は、それらが溶液、懸濁液または他の形態のいずれであっても、下記の1種または複数をさらに含み得る:殺菌済み希釈剤、例えば、注射用蒸留水、食塩水、好ましくは生理的食塩水、リンゲル液、等張食塩水、固定油、例えば、溶媒または懸濁媒として提供できる合成モノグリセリドまたはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、シクロデキストリン、プロピレングリコール、または他の溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;バッファー、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩、および等張性を調節するための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。非経口用組成物は、アンプル、ディスポーザブル注射筒、またはガラス、プラスチック、もしくは他の物質製の複数回投与用バイアル中に封入することができる。生理的食塩水は好ましいアジュバントである。注射用組成物は殺菌済みであるのが好ましい。
【0137】
特定の障害または症状の治療に有効な本発明の化合物の量は、障害または症状の性質に応じて変わり、標準の臨床上の技術によって測定することができる。さらに、場合によりin vitroアッセイまたはin vivoアッセイを用いて、最適の用量範囲の同定を容易にすすめることができる。本組成物で使用されるべき正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重症度によっても変わり、当業者の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。
【0138】
本医薬組成物は、好適な用量が得られるように有効量の本発明の化合物を含む。一般には、この量は、少なくとも本組成物重量の0.01%の本発明の化合物である。経口投与を目的とする場合、この量は、本組成物重量の0.1%から80%の間にあるように変わり得る。好ましい経口組成物は、本組成物重量の4%から50%の範囲の本発明の化合物を含み得る。本発明の好ましい組成物は、非経口投与量単位が、本発明の化合物重量の0.01%から2%の範囲を含むように調製される。
【0139】
本発明の化合物は、単回投与で、または複数回投与で投与することができる。
【0140】
一実施形態では、本発明の化合物は、複数回投与で投与される。複数回投与で投与される場合、本化合物は、症状を治療するのに十分な頻度と量で投与される。一実施形態では、投与の頻度は、1日1回からおよそ8週毎に1回の範囲である。別の実施形態では、投与の頻度は、およそ週に1回からおよそ6週毎に1回の範囲である。別の実施形態では、投与の頻度は、およそ3週毎に1回からおよそ4週毎に1回の範囲である。
【0141】
事前の毒性に関する試験によると、本発明の化合物は、cis-ビス-ネオデカノアト-trans-R,R-1,2-ジシクロヘキサン白金(II)、(NDDP)またはシスプラチン等の他の白金細胞障害性薬剤を用いて使用した量と同じ量またはそれ未満の量で被験体に投与することができることが明らかである。一般に被験体に投与される本発明の化合物の用量は、被験体の体重の0.1〜150mg/kgの範囲、より一般的には、0.1mg/kg〜100mg/kgの範囲にある。一実施形態では、被験体に投与される用量は、被験体の体重の0.1mg/kg〜50mg/kgの範囲、または1mg/kg〜50mg/kgの範囲にあり、より好ましくは、被験体の体重の0.1mg/kg〜25mg/kgの範囲、または1mg/kg〜25mg/kgの範囲にある。
【0142】
本発明の化合物は、任意の都合のよい経路によって、例えば、点滴またはボーラス注入によって、上皮層または皮膚粘膜層(例えば、口腔粘膜、直腸、腸粘膜など)を介した吸収によって投与することができる。投与は全身投与または局所投与であってよい。例えば、微粒子、マイクロカプセル、カプセルなどの様々な送達系は周知であって、それらは本発明の化合物を投与するのに有用で有り得る。特定の実施形態では、本発明の1種以上の化合物が被験体に投与される。投与方法としては、これらに限定されるものではないが、経口投および非経口投与が挙げられ;非経口投与としては、これらに限定されるものではないが、皮内投与、筋内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与;鼻腔内投与、硬膜外投与、舌下投与、鼻腔内投与、脳内投与、脳室内投与、脊髄内投与、心室内投与、経皮投与、直腸投与、吸入による投与、あるいは耳、鼻、眼球、または皮膚への局所投与が挙げられる。好ましい投与方法は当業者の自由判断に委ねられ、1つには病状の部位、例えば、癌、癌性腫瘍または前癌症状の部位等によって決まる。
【0143】
一実施形態では、本発明の化合物は非経口的に投与される。
【0144】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は静脈内投与される。
【0145】
特定の実施形態では、本発明の1種または複数の化合物を治療を必要とする領域へ局所投与することが望ましい。これは、限定することを目的とするものではないが、例えば、外科手術中の局所注入により;例えば、外科手術後の創傷被覆材との併用における局所投与により;注射により;カテーテルにより;坐薬により;または移植片(移植片は、シラスティック(sialastic)膜等の膜または繊維をはじめとする、多孔性材料、非多孔性材料、ゼラチン状材料である)により達成することができる;一実施形態では、癌、腫瘍または前癌症状組織の部位(あるいは旧部位)に直接噴射することにより投与され得る。特定の実施形態では、脳室内注射および髄腔内注射をはじめとする任意の好適な経路によって本発明の1種または複数の化合物を中枢神経系へ導入することが望ましい。脳室内注射は、例えば、オマヤ槽などの貯蔵部へ取り付けられた脳室内カテーテルによって容易に行なうことができる。
【0146】
また肺投与は、例えば、吸入器または噴霧器、およびエアロゾル化剤とした製剤を使用することによって、あるいはフルオロカーボンまたは合成肺界面活性剤の灌流によって行なうこともできる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、従来の結合剤および担体(トリグリセリド等)を用いて坐薬として製剤化することができる。
【0147】
別の実施形態では、本発明の化合物は徐放系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを用いることができる(Langer, 前掲;Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987);Buchwaldら, Surgery 88:507 (1980);Saudekら, N. Engl. J. Med. 321:574 (1989))を参照されたい)。別の実施形態では、高分子材料を用いることができる(Medical Applications of Controlled Release, LangerおよびWise (編集), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974);Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, SmolenおよびBall (編集), Wiley, New York (1984);RangerおよびPeppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983)を参照されたい;また、Levyら, Science 228:190 (1985);Duringら, Ann. Neurol. 25:351 (1989);Howardら, J. Neurosurg. 71:105 (1989)も参照されたい)。別の実施形態では、徐放系は、本発明の化合物を標的(例えば脳)に隣接して置くことにより、全身的用量のごく一部の用量のみを必要とすることできる(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, 前掲, vol. 2, pp.115-138 (1984)を参照されたい)。Langerが概説で述べている他の徐放系(Science 249:1527-1533 (1990))を用いることができる。
【0148】
「担体」という用語は、本発明の化合物と一緒に投与される、希釈剤、アジュバントまたは賦形剤を意味する。かかる製薬上の担体は、液体、例えば水および油(石油起源、動物起源、植物起源、または合成起源のものを含む、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等)で有り得る。担体は、生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素等であってよい。さらに、補助剤、安定化剤、粘稠化剤、平滑剤および着色剤も使用可能である。一実施形態では、被験体に投与する場合、本発明の化合物および製薬上許容可能な担体は殺菌されている。本発明の化合物を静脈内投与する場合、好ましい担体は水である。食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液も特に注射剤用の液体担体として使用可能である。また好適な製薬上の担体としては、添加剤、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。所望の場合、本組成物は少量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤も含有し得る。
【0149】
本組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、散剤、徐放製剤、坐剤、エマルジョン、エアロゾル、スプレー、懸濁液の形態、または使用に好適な任意の他の形態をとり得る。一実施形態では、製薬上許容可能な担体はカプセルである(例えば、米国特許第5,698,155号を参照されたい)。他の好適な製薬上の担体の例は、E. W. Martinの「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0150】
製剤化可能な持続放出組成物または制御放出組成物としては、これらに限定されるものではないが、本発明のリポソーム脂質白金錯体、および本発明の脂質白金錯体がマイクロカプセル化、多重コーティング剤等により異なった分解性を有するコーティング剤を用いて保護されている他の製剤が挙げられる。また、例えば注射用製剤を調製するために、本組成物を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物(lyophilizate)を使用することができる。
【0151】
好ましい実施形態では、本発明の脂質白金錯体はリポソーム中に封入される。特に好ましい実施形態では、リポソームの直径は1μM未満である。
【0152】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、動物(特にヒト)への静脈内投与に適合した医薬組成物として、常法に従って製剤化される。一般には、静脈内投与用の担体またはビヒクルは、殺菌済みの等張水溶性緩衝液である。必要に応じて、本組成物は可溶化剤を含むこともできる。静脈内投与用の組成物は、場合により、注射部位の疼痛を緩和するために、リグノカイン等の局所麻酔薬を含み得る。一般に、これらの成分は、例えば、有効成分の量を提示しているアンプルまたはサッシェ(sachette)等の密封容器中、凍結乾燥粉末または水非含有濃縮物として、別々に供給されるか、あるいは単位剤形中に一緒に混合されている。本発明の化合物が点滴により投与される場合、例えば、殺菌済みの製薬グレードの水または生理食塩水を含有する点滴ボトルで送出することができる。本発明の化合物を注射により投与する場合、投与前に成分を混合することができるように注射用蒸留水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0153】
経口送達用組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水溶性懸濁液もしくは油性懸濁液、顆粒剤、散剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態であってよい。経口投与組成物は、任意の薬剤、例えば、甘味料(フルクトース、アスパルテームまたはサッカリン等);香味剤(ペパーミント、ウインターグリーンオイル、またはチェリー等);着色剤;および保存剤を1種または複数含み、製薬上口当たりの良い調製物を提供することができる。さらに、錠剤または丸剤の形態の場合、胃腸管における分解および吸収を遅延させるために組成物を被覆することによって、長期間にわたる持続作用性を提供することができる。浸透作用推進錯体(osmotically active driving complex)を包む選択的透析膜もまた本発明の経口投与組成物に好適である。これらの後者のプラットフォームでは、カプセルを包んでいる環境由来の液体が推進錯体により吸収され、それが膨張して開孔部を通して薬剤または薬剤組成物を移動させる。これらの送達プラットフォームは、即時放出製剤の瞬時プロファイルとは対照的に、本質的にはゼロオーダー送達プロファイルを提供することができる。グリセロールモノステアレートまたはグリセロールステアレート等の時間遅延原料もまた使用可能である。経口組成物は、標準の担体、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。かかる担体は、製薬グレードのものであるのが好ましい。
【0154】
本発明の医薬組成物は局所投与を目的とすることができるが、その場合には、担体は、溶液、エマルジョン、軟膏またはゲルベースの形態をとることができる。前記ベースは、例えば、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜ろう、鉱油、水およびアルコールなどの希釈剤、ならびに乳化剤および安定剤の1種以上を含み得る。粘稠化剤は局所投与用の組成物中に存在し得る。経皮投与を目的とする場合、本組成物は、経皮貼布剤またはイオン導入器具の形態であってよい。局所用製剤は、0.01%〜10%w/v(重量/組成物の単位用量)の濃度の本発明の化合物を含み得る。
【0155】
本組成物は、固体投与単位または液体投与単位の物理的形態を変化させる種々の原料を含み得る。例えば、本組成物は、有効成分の周囲にコーティングシェルを形成する原料を含み得る。コーティングシェルを形成する原料は一般には不活性であって、例えば、糖、シェラック、および他の腸溶性コーティング剤から選択することができる。あるいは、ゼラチンカプセルで有効成分を包むことができる。
【0156】
本組成物は気体用量単位から成ることが可能であって、例えば、それは、エアロゾルの形態であってよい。エアロゾルという用語は、コロイド性質のものから気圧調節されたパッケージから成る系に及ぶ様々な系を表すために用いられる。送達は、液化ガスまたは圧縮ガスによって、あるいは有効成分を送出する好適なポンプ系によって行うことができる。本組成物のエアロゾルは、本組成物を送達するために、単一相、二相系または三相系中で送達することができる。エアロゾルの送達には、必要な容器、アクチベーター、弁、サブ容器、スペーサー等が含まれ、それを1つにまとめてキットを形成することができる。好ましいエアロゾルは、過度の試験を行なうことなく、当業者により決定され得る。
【0157】
固体形態、液体形態または気体形態のいずれであっても、本発明の組成物は、これらに限定されるものではないが、追加の抗癌剤、制吐剤、造血コロニー刺激因子、抗うつ剤、および鎮痛剤をはじめとする薬剤から選択される、治療上活性のある追加薬剤を含み得る。
【0158】
本医薬組成物は、製薬分野において周知の方法を用いて調製することができる。例えば、注射により投与することを目的とする組成物は、水溶液を形成するように、本発明の化合物を水と組み合わせることによって調製することができる。界面活性剤は、均質の溶液または懸濁液の形成を促進するために添加することができる。界面活性剤は、水溶性送達系において本発明の化合物の分解または均質な懸濁を促進するように、本発明の化合物と非共有結合で相互作用し得る錯体である。
【0159】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、1種または複数の周知の治療上の活性剤を含み得る。
【0160】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、追加の抗癌剤の前に、同時に、後に、あるいは同日に、あるいは互いに1時間、2時間、12時間、24時間、48時間、72時間、1週間、2週間、3週間または4週間以内に投与することができる。
【0161】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、制吐剤の前に、同時に、後に、あるいは同日に、あるいは相互の薬剤の1時間、2時間、12時間、24時間、48時間、または72時間以内に投与することができる。
【0162】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、造血コロニー刺激因子の前に、同時に、後に、あるいは同日に、あるいは互いに1時間、2時間、12時間、24時間、48時間、72時間、1週間、2週間、3週間または4週間以内に投与することができる。
【0163】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、オピオイド鎮痛剤または非オピオイド鎮痛剤の前に、同時に、後に、あるいは同日に、あるいは互いに1時間、2時間、12時間、24時間、48時間、または72時間以内に投与することができる。
【0164】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、抗うつ剤の前に、同時に、後に、あるいは同日に、あるいは互いに1時間、2時間、12時間、24時間、48時間、または72時間以内に投与することができる。
【0165】
4.5.1 キット
本発明は、被験体への本発明の化合物または組成物の投与を簡易化することができるキットを包含する。
【0166】
本発明の代表的なキットは、本発明の化合物の単位剤形を含む。一実施形態では、単位剤形は有効量の本発明の化合物および製薬上許容可能な担体またはビヒクルを含有する、殺菌可能な容器中にある。別の実施形態では、単位剤形は、凍結乾燥物(lyophilate)として有効量の本発明の化合物を含有する容器中にある。この場合、本キットは、凍結乾燥物の再構成に有用な溶液(生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水等)を含有する第2の容器をさらに含み得る。本キットは、本発明の化合物の使用に関するラベルまたは印刷した取扱説明書も含み得る。本キットは、別の治療上の活性剤の単位剤形をさらに含み得る。一実施形態では、本キットは、癌治療に有効なある量の追加の抗癌剤を含有する容器を含む。別の実施形態では、本キットは、制吐剤、造血コロニー刺激因子、鎮痛剤、または不安緩解剤等の治療上の活性剤を含有する容器を含む。
【0167】
一実施形態では、本キットは、本発明の医薬組成物の単位剤形を含む。
【0168】
本発明のキットは、本発明の化合物または製薬組成物の単位剤形を投与するのに有用な器具をさらに含み得る。かかる器具の例としては、これらに限定されるものではないが、注射器、ドリップバッグ、貼付剤、または浣腸が挙げられ、これらには、場合により単位剤形が含有されていてもよい。
【0169】
4.6 治療用途
4.6.1 癌の治療
これらに限定されるものではないが、新生物、腫瘍、転移、または無制限細胞増殖を特徴とするすべての疾患もしくは障害をはじめとする癌または腫瘍疾患は、癌の治療に有効な量の本発明の化合物の投与によって、または癌の治療に有効な量の、製薬上許容可能な担体と本発明の化合物とを含む組成物の投与によって、治療、抑制、遅延、阻害、または防止し得る。本発明の化合物が脂質白金錯体である場合、本組成物はその製薬上許容可能な塩を含み得る。本発明は、それが癌に適用される場合、増殖および/または進行の治療、抑制、遅延、阻害、ならびに本明細書に記載の癌または腫瘍疾患の予防を包含する。
【0170】
4.6.1.1 治療方法
好ましい実施形態では、本発明は、癌細胞または新生細胞を死滅させること;癌細胞または新生細胞の増殖を阻害すること;癌細胞または新生細胞の複製を阻害すること;またはそれらの症状を改善することを含む、癌の治療方法であって、前記方法が、それらの必要な被験体に癌の治療に有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0171】
従って、本発明の化合物は、種々の癌の治療の様々な設定において用いることができる。理論に制約されるものではないが、一実施形態では、本発明の脂質白金錯体は、拡散によって細胞に入り、DNAと反応して鎖間架橋および鎖内架橋、ならびにDNAタンパク質架橋を形成することができる。これらの架橋は細胞の自己複製能力を阻害し得る。
【0172】
特定の実施形態では、治療の必要な被験体は、過去に癌の治療を受けている。かかる過去の治療としては、これらに限定されるものではないが、事前化学療法、放射線治療、外科手術または癌ワクチン等の免疫療法が挙げられる。
【0173】
別の実施形態では、治療対象の癌は、白金治療に対する感度が証明されている癌であるか、または白金治療に対して応答性があることが知られている癌である。かかる癌としては、これらに限定されるものではないが、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、乳癌、膀胱癌、睾丸癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、ホジキン病、白血病、骨原性肉腫、および黒色腫が挙げられる。
【0174】
別の実施形態では、治療対象の癌は、白金治療に対して抵抗性が証明されている癌であるか、または白金治療に対して耐性があることが知られている癌である。かかる耐性の癌としては、これらに限定されるものではないが、頚部癌、前立腺癌、および食道癌が挙げられる。癌細胞の少なくとも一部の重要な部分が死滅されないか、またはそれらの細胞分裂を治療に対する応答で防ぐことができない場合には、癌は治療に耐性があることと確定することができる。かかる測定は、癌細胞の治療効果の分析に関して当技術分野で周知の任意の方法によるin vivoまたはin vitroのいずれかで行なうことができるが、かかる状況においては技術容認された意味の「耐性」が用いられる。特定の実施形態では、癌細胞の数に有意な低下がみられなかった場合、または癌細胞が増加した場合に、癌は耐性である。かかる癌としては、これらに限定されるものではないが、頚部癌、前立腺癌、および食道癌が挙げられる。
【0175】
本発明の化合物で治療可能な他の癌としては、これらに限定されるものではないが、下に記載の表1の癌およびその転移が挙げられる。
【0176】
表1
固形腫瘍の例(但し、これらに限定されるものではない):
繊維肉腫
粘液肉腫
脂肪肉腫
軟骨肉腫
骨原性肉腫
脊索腫
血管肉腫
内皮細胞肉腫
リンパ管肉腫
リンパ管内皮細胞肉腫
滑膜腫
中皮腫
骨髄原発性肉腫
平滑筋肉腫
横紋筋肉腫
結腸癌
結腸直腸癌
腎臓癌
膵臓癌
骨肉腫
乳癌
卵巣癌
前立腺癌
食道癌
胃癌
口腔癌
鼻腔癌
喉頭癌
扁平上皮癌
基底細胞癌
腺癌
汗腺癌
脂腺癌
乳頭状癌
乳頭状腺癌
嚢胞腺癌
髄様癌
気管支原生癌
腎細胞癌
肝臓癌
胆管癌
絨毛膜癌
精上皮腫
胎児性癌
ヴィルムス腫瘍
子宮頸癌
子宮癌
睾丸癌
小細胞肺癌
膀胱癌
肺癌
上皮癌腫
神経膠腫
多形膠芽腫
星状細胞腫
髄芽細胞腫
頭蓋咽頭腫
脳室上衣腫
松果体腫
血管芽細胞腫
聴神経腫
乏突起膠腫
髄膜腫
皮膚癌
黒色腫
神経芽細胞腫
網膜芽細胞腫
血液性癌の例(但し、これらに限定されるものではない):
急性リンパ芽球性白血病「ALL」
急性リンパ芽球性B細胞白血病
急性リンパ芽球性T細胞白血病
急性骨髄芽球白血病「AML」
急性前骨髄球性白血病「APL」
急性単芽球性白血病
急性赤白血病
急性巨核芽球性白血病
急性骨髄単球性白血病
急性非リンパ性白血病
急性未分化白血病
慢性骨髄性白血病「CML」
慢性リンパ球性白血病「CLL」
有毛細胞白血病
多発性骨髄腫
急性および慢性白血病の例:
リンパ芽球性白血病
骨髄性白血病
リンパ球性白血病
骨髄性白血病
リンパ腫の例:
ホジキン病
非ホジキンリンパ腫
多発性骨髄腫
ヴァルデンストレームマクログロブリン血症
H鎖病
真性一次赤血球増加症

一実施形態では、癌は、膵臓癌、結腸直腸癌、中皮腫、悪性胸水、腹膜癌腫症、腹膜肉腫症、腎細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、睾丸癌、膀胱癌、乳癌、頭頸部癌、および卵巣癌からなる群から選択される。
【0177】
好ましい実施形態では、癌は、膵臓癌、結腸直腸癌または中皮腫である。
【0178】
4.6.1.2 予防方法
本発明の化合物は、これらに限定されるものではないが、表1に挙げた癌をはじめとする、新生物状態または悪性状態に進行するのを予防するために投与することができる。かかる予防用途は、新生物または癌への進行に先行することが周知である症状または疑いのある症状、特に、異常増殖、化生、最も特に異形成症からなる非腫瘍性細胞増殖が発症している場合に適応される(かかる異常増殖症状の概説については、RobbinsおよびAngell, 1976, Basic Pathology, 第2版, W.B. Saunders Co., Philadelphia, pp.68-79を参照されたい)。異常増殖は、構造または機能における有意な変化はないが、組織または器官の細胞数の増加が関与する、コントロール下の細胞増殖の形態である。例えば、子宮内膜増殖症は、子宮内膜癌に先行する場合が多く、また、前癌症状の結腸ポリープは癌の病変へ変化することが多い。化生は、1つのタイプの成熟細胞または完全分化細胞が、別のタイプの成熟細胞に置き換わる、コントロール下の細胞増殖の形態である。化生は、上皮細胞または結合組織細胞で発生し得る。代表的な化生には、若干の無秩序性がみられる化生性上皮が含まれる。異形成症は癌の前兆であることが多く、主として皮膜組織で発見されているが、それは、個々の細胞均一性の欠如、および細胞の構造上定位の欠失が関与している、非腫瘍性細胞増殖の最も無秩序な形態である。形成障害細胞は、異常に大型であって、濃く染まった核を有しており、多形態性を示すことが多い。異形成症は、慢性的刺激または炎症が存在するところに発症することを特徴とし、頚部、気道、口腔および胆嚢で見つかることが多い。
【0179】
あるいは、異常増殖、化生または異形成症を特徴とする異常細胞増殖の存在以外に、1つ以上の形質転換表現型の特徴の存在、または患者由来の細胞試料によってin vivoで、もしくはin vitroで明らかにされる悪性表現型の存在は、本発明の組成物の予防投与/治療投与が望ましいものであることを示し得る。形質転換表現型のかかる特性としては、形態学変化、基質接着の低下、接触阻害の減少、足場依存性の減少、プロテアーゼ放出、糖輸送の上昇、血清必要量の減少、胎児性抗原の発現、250,000ダルトン細胞表面タンパク質の消失等が挙げられる(同文献も参照、なお、形質転換表現径または悪性表現型に関する特性については、pp.84-90を参照)。
【0180】
特定の実施形態では、白斑症、上皮の良性の見える過形成病変または形成障害病変、またはボーエン病、上皮内癌は、予防処置が望ましいことを示す前新生物病変である。
【0181】
別の実施形態では、線維嚢胞症(嚢胞性増殖症、乳腺異形成症、特に腺疾患(良性の上皮過形成))は、予防処置が望ましいことを示す。
【0182】
本発明の化合物の予防用途は、癌を誘発する可能性がある一部のウイルス感染でも適応される。例えば、ヒト乳頭腫ウイルスは子宮頸癌を引き起こす場合があり(例えば、Hemandez-Avilaら、Archives of Medical Research (1997) 28:265-271を参照されたい)、エプスタインバーウイルス(EBV)はリンパ腫を引き起こす場合があり(例えば、Herrmannら, J Pathol (2003) 199 (2):140-5を参照)、B型肝炎またはC型肝炎ウイルスは肝癌を引き起こす場合があり(例えば、El-Serag, J Clin Gastroenterol (2002) 35 (5 Suppl 2):S72-8を参照)、ヒトT細胞白血球ウイルス(HTLV)-IはT細胞白血病を引き起こす場合があり(例えば、Mortreuxら, Leukemia (2003) 17(1):26-38を参照)、ヒトヘルペスウイルス-8感染はカポジ肉腫を引き起こす場合があり(例えば、Kadowら, Curr. Opin. Investig. Drugs (2002) 3 (11):1574-9を参照)、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)感染は免疫不全の結果として癌の進行をもたらす(例えば、Dal Masoら, Lancet Oncol. (2003) 4 (2):110-9を参照)。
【0183】
他の実施形態では、以下の1つ以上の素因示す患者は、本発明の化合物の有効量を投与することにより治療することができる:悪性に関連性のある染色体転座(例えば、慢性骨髄性白血病のフィラデルフィア染色体、濾胞性リンパ腫のt(14;18)等)、家族性ポリポーシスまたはガードナー症候群(結腸癌になる可能性のある前症状)、良性モノクローナル免疫グロブリン増多症(多発性骨髄腫になる可能性のある前症状)、メンデルの法則の(遺伝学的)遺伝パターンを示す癌または前癌症状の疾患に罹患している人のある一等親血縁(例えば、家族性大腸ポリポーシス、ガードナー症候群、遺伝性外骨症、多内分泌腺腫症、アミロイド産生を伴う骨髄甲状腺癌およびクロム親和性細胞腫、ポイツ-ジェガーズ症候群、フォン・レックリングハウゼンの神経繊維腫症、網膜芽細胞腫、頸動脈球腫瘍、皮膚の黒色癌、眼内の黒色癌、色素性乾皮症、毛細血管拡張性運動失調、チェディアック‐東症候群、白化症、ファンコーニ再生不良性貧血、およびブルーム症候群;RobbinsおよびAngell, 1976, Basic Pathology, 第2版, W.B. Saunders Co., Philadelphia, pp.112-113)等を参照)、ならびに発癌物質への曝露(例えば、喫煙、および特定の化学物質の吸入または接触)。
【0184】
別の特定の実施形態では、本発明の組成物は、乳癌、結腸癌、卵巣癌または子宮頸癌の増殖および/または進行を予防、遅延、または阻害するためにヒト患者に投与される。
【0185】
別の特定の実施形態では、本発明の組成物は、乳癌、結腸癌、卵巣癌または子宮頸癌への進行を遅延させるためにヒト患者に投与される。
【0186】
4.6.2 癌に対するマルチモダリティ療法(multi-modality therapy)
本発明の化合物は、これらに限定されるものではないが、外科手術、放射線治療、または免疫療法(例えば、癌ワクチン)をはじめとする、1種または複数の追加の抗癌治療モダリティを過去に受けたか、または現在受けている被験体に投与することができる。
【0187】
一実施形態では、本発明は、癌の治療方法であって、(a)それを必要とする被験体に癌の治療に有効な量の本発明の化合物を投与するステップと;(b)前記被験体に、外科手術、放射線治療、または免疫療法(例えば、癌ワクチン)をはじめとする、1種または複数の追加の抗癌治療モダリティを施すステップとを含む、前記方法を提供する。
【0188】
一実施形態では、追加の抗癌治療モダリティは放射線治療である。
【0189】
別の実施形態では、追加の抗癌治療モダリティは外科手術である。
【0190】
さらに別の実施形態では、追加の抗癌治療モダリティは免疫療法である。
【0191】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、放射線治療と同時に投与する。別の特定の実施形態では、追加の抗癌治療モダリティは、本発明の化合物の投与の前または後に、好ましくは、本発明の化合物の投与の少なくとも1時間、5時間、12時間、1日、1週間、1か月、さらに好ましくは数か月(例えば、3か月以内)前または後に施される。
【0192】
追加の抗癌治療モダリティが放射線治療である場合、治療対象の癌のタイプに応じて、任意の放射線治療プロトコルを用いることができる。例えば、制限されるものではないが、X線照射を施すことができる;特に、高エネルギー超高圧(1MeVより大きい照射線)は深部腫瘍に使用可能であり、電子線および常用電圧X線は皮膚癌に使用することができる。ラジウム、コバルトおよび他の元素の放射性同位体等のガンマ線放射放射性同位元素も施すことができる。
【0193】
さらに本発明は、化学療法または放射線治療に非常に毒性があることが示された場合、あるいは非常に毒性があることが分かり得る場合、(例えば、治療対象の被験体にとって、受け入れ難い、または耐え難い副作用が生じる場合)、化学療法または放射線治療の代わりとして、本発明の化合物を用いる癌の治療方法を提供する。治療対象の被験体は、治療が許容可能である、あるいは耐えられることの判明に応じて、場合により、外科手術、放射線治療または免疫療法等の別の抗癌治療モダリティで治療され得る。
【0194】
本発明の化合物は、例えば、これらに限定されるものではないが、白血病およびリンパ腫(かかる治療には自己由来の幹細胞移植を含む)をはじめとする、特定の癌の治療のためのin vitroまたはex vivoの方法において用いることができる。この方法は、多重ステップ法を含み得る。この方法は、動物自己由来の造血幹細胞を回収し、かつすべての癌細胞を除去する;次いで、追加の抗癌剤および/または高用量の放射線治療を用いるか、または用いずに、残っている患者の骨髄細胞群を高用量の本発明の化合物を投与することにより取り除く;前記動物に幹細胞グラフトを注入して戻す。次いで、骨髄機能が元に戻り、被験体が回復する間、支持療法を提供する。
【0195】
4.6.3 癌に対する多重薬物治療
また本発明は、癌の治療方法であって、それらが必要な被験体に、癌の治療に有効な量の本発明の化合物および1種または複数の追加の抗癌剤またはその製薬上許容可能な塩を投与することを含み、前記追加の抗癌剤が本発明の化合物でない、前記方法を提供する。薬剤の組み合わせは、付加的に、または相乗的に作用し得る。好適な追加の抗癌剤としては、これらに限定されるものではないが、ゲムシタビン、カペシタビン、メトトレキサート、タキソール、タキソテール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド、テニポシド、カンパテシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、L-アスパラギナーゼ、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、タキサン(ドセタキセルおよびパクリタキセルなど)、ロイコボリン、レバミソール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、ナイトロジェンマスタード、BCNU、ニトロソ尿素(カルムスチンおよびロムスチンなど)、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンなど)、白金錯体(シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンなど)、イマチニブメシレート、ヘキサメチルメラミン、トポテカン、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチンヘルビマイシンA、ゲニステイン、エルブスタチン、およびラベンダスチンAが挙げられる。
【0196】
一実施形態では、追加の抗癌剤は、これらに限定されるものではないが、表2に列挙した薬剤であり得る。
【0197】
表2
アルキル化剤
ナイトロジェンマスタード: シクロホスファミド
イホスファミド
トロフォスファミド
クロラムブチル
ニトロソ尿素: カルムスチン(BCNU)
ロムスチン(CCNU)
アルキルスルホネート: ブスルファン
トレオスルファン
トリアゼン: ダカルバジン
白金含有錯体: シスプラチン
カルボプラチン
アロプラチン
オキサリプラチン
植物アルカロイド
ビンカアルカロイド: ビンクリスチン
ビンブラスチン
ビンデシン
ビノレルビン
タキソイド: パクリタキセル
ドセタキセル
DNAトポイソメラーゼ阻害剤
エピポドフィリン(Epipodophyllin): エトポシド
テニポシド
トポテカン
9-アミノカンプトテシン
カンプトテシン
クリスナトール
マイトマイシン: マイトマイシンC
抗代謝産物
抗葉酸
DHFR阻害剤: メトトレキサート
トリメトレキサート
IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤: ミコフェノール酸
チアゾフリン
リバビリン
EICAR
リボヌクレオチド還元酵素阻害剤: ヒドロキシ尿素
デフェロキサミン
ピリミジン類似体
ウラシル類似体: 5-フルオロウラシル
フロクスウリジン
ドキシフルリジン
ラチトレキセド(Ratitrexed)
シトシン類似体: シタラビン(ara C)
サイトシンアラビノサイド
フルダラビン
ゲムシタビン
カペシタビン
プリン類似体: メルカプトプリン
チオグアニン
DNA抗代謝剤: 3-HP
2'-デオキシ-5-フルオロウリジン
5-HP
α-TGDR
アフィジコリングリシネート
ara-C
5-アザ-2'-デオキシシチジン
β-TGDR
シクロシチジン
グアナゾール
イノシングリコジアルデヒド
マセベシン(macebecin) II
ピラゾロイミダゾール
ホルモン療法
受容体アンタゴニスト:
抗エストロゲン: タモキシフェン
ラロキシフェン
メゲストロール
LHRHアゴニスト: ゴスクルクリン(Goscrclin)
酢酸ロイプロリド
抗アンドロゲン: フルタミド
ビカルタミド
レチノイド/デルトイド
cis-レチノイン酸
ビタミンA誘導体: オールtrans型レチノイン酸(ATRA-IV)
ビタミンD3類似体: EB 1089
CB 1093
KH 1060
光線力学療法: ベルトポルフィン(Vertoporfin)(BPD-MA)
フタロシアニン
光増感剤Pc4
デメトキシ-ヒポクレリン(hypocrellin) A
(2BA-2-DMHA)
サイトカイン: インターフェロン-α
インターフェロン-β
インターフェロン-γ
腫瘍壊死因子
血液造成阻害剤: アンギオスタチン(プラスミノーゲン断片)
抗血管形成抗トロンビンIII
アンギオザイム(Angiozyme)
ABT-627
Bay 12-9566
ベネフィン
ベバシズマブ
BM-275291
軟骨由来阻害剤(CDI)
CAI
CD59相補体断片
CEP-7055
Col 3
コンブレタスタチンA-4
エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片)
フィブロネクチン断片
Gro-β
ハロフギノン
ヘパリナーゼ
ヘパリンヘキササッカライド断片
HMV833
ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン
(hCG)
IM-862
インターフェロンα/β/γ
インターフェロン誘導性タンパク質(IP-10)
インターロイキン-12
クリングル5(プラスミノーゲン断片)
マリマスタット
メタロプロテイナーゼ阻害剤
(TIMPs)
2-メトキシエストラジオール
MMI 270(CGS 27023A)
MoAb IMC-1C11
ネオバスタット
NM-3
Panzem
PI-88
胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤
プラスミノーゲン活性化因子阻害剤
血小板第4因子(PF4)
プリノマスタット
プロラクチン16kD断片
プロリフェリン関連タンパク質(PRP)
PTK 787/ZK 222594
レチノイド
ソリマスタット
スクアラミン
SS 3304
SU 5416
SU 6668
SU 11248
テトラハイドロコルチゾル-S
テトラチオモリブデン酸
サリドマイド
トロンボスポンジン-1(TSP-1)
TNP-470
トランスフォーミング成長因子β
(TGF-b)
バスクロスタチン(Vasculostatin)
バソスタチン(カルレチクリン断片)
ZD 6126
ZD 6474
ファルネシルtransフェラーゼ阻害剤
(FTI)
ビスホスホン酸
抗有糸分裂薬剤: アロコルヒチン(Allocolchicine)
ハリコンドリンB
コルヒチン
コルヒチン誘導体
ドルスタチン(dolstatin)10
マイタンシン
リゾキシン
チオコルヒチン(Thiocolchicine)
トリチルシステイン
その他
イソプレニル化阻害剤:
ドーパミン作用性神経毒: 1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン
細胞周期阻害剤: スタウロスポリン
アクチノマイシン: アクチノマイシンD
ダクチノマイシン
ブレオマイシン: ブレオマイシンA2
ブレオマイシンB2
ペプロマイシン
アントラサイクリン: ダウノルビシン
ドキソルビシン(アドリアマイシン)
イダルビシン
エピルビシン
ピラルビシン
ゾルビシン
ミトキサントロン
MDR阻害剤: ベラパミル
Ca2+ATPアーゼ阻害剤: タプシガルギン

本発明の組成物および方法で使用可能な追加の抗癌剤としては、これらに限定されるものではないが、アシビシン(acivicin);アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレトアミン(altretamine);アンボマイシン(ambomycin);酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アンスラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン(asperlin);アザシチジン;アゼテパ(azetepa);アゾトマイシン(azotomycin);バチマスタット;ベンゾデパ(benzodepa);ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ジメシル酸ビスナフィド(bisnafide dimesylate);ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン(carubicin);カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブチル;シロレマイシン(cirolemycin);シスプラチン;クラドリビン;クリスナトールメシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニンメシレート;ジアジクォン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;ズアゾマイシン(duazomycin);エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン(elsamitrucin);エンロプラチン;エンプロメート(enpromate);エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール(erbulozole);塩酸エソルビシン(esorubicin);エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン(etoprine);塩酸ファドロゾール;ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インタ
ーロイキンII(組換えインターロイキンII、すなわちrIL2を含む)、インターフェロンα-2α;インターフェロンα-2β;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Iα;インターフェロンγ-Iβ;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;マイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン(mitocarcin);マイトクロミン;マイトジリン;マイトマルシン(mitomalcin);マイトマイシン;マイトスペル(mitosper);ミトーテン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン(peliomycin);ペンタムスチン(pentamustine);硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン(prednimustine);塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン(riboprine);ログレトイミド(rogletimide);サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルホセート(sparfosate)ナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テルオキシロン(teroxirone);テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン(trestolone);リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グロクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン(vinepidine);硫酸ビングリシネート(vinglycinate);硫酸ビンロイロシン(vinleurosine);酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン(vinrosidine);硫酸ビンゾリジン(vinzolidine);ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン(zorubicin)が挙げられる。
【0198】
使用可能な他の抗癌剤としては、これらに限定されるものではないが、20-epi-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール(adecypenol);アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレトアミン(altretamine);アンバムスチン;アミドキス(amidox);アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラフォリド;血液造成阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリキス(antarelix);抗背方化形態形成タンパク質-1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;抗腫瘍薬;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシスレギュレーター;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン(asulacrine);アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン(axinastatin)1;アキシナスタチン(axinastatin)2;アキシナスタチン(axinastatin)3;アザセトロン;アザトキシン(azatoxin);アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール(balanol);バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリンス(benzochlorins);ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine);βラクタム誘導体;β-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン(bisaziridinylspermine);ビスナフィド;ビストラテン(bistratene)A;ビゼレシン;ブレフレート(breflate);ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリア痘IL-2;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリキス(cetrorelix);クロルルンス(chlorlns);クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;cis-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシン(collismycin)A;コリスマイシン(collismycin)B;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン(cryptophycin)8;クリプトフィシンA誘導体;キュラシンA;シクロペンタアントラキノン;シクロプラタム(cycloplatam);シペマイシン(cypemycin);シタラビンオクホスファート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ(dacliximab);デシタビン;デヒドロジデムニン(dehydrodidemnin)B;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド(dexifosfamide);デキスラゾキサン;デキスベラパミル(dexverapamil);ジアジクォン;ジデムニンB;ジドックス(didox);ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アシチジン(acytidine);ジヒドロタキソール;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;ズオカルマイシン(duocarmycin)SA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin);ホルフェニメックス(forfenimex);ホルメスタン;ホストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリキス(ganirelix);ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム(hepsulfam);ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン
酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン(imidazoacridones);イミキモド;免疫促進剤ペプチド;インシュリン様増殖因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール(ipomeanol)、4-;イロプラクト(iroplact);イルソグラジン;イソベンガゾール(isobengazole);イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン-Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンティナン;レプトルスタチン(leptolstatin);レトロゾール;白血病抑制因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミソール;リアロゾール;直鎖状ポリアミン類似体;脂溶性二糖類ペプチド;脂溶性白金錯体;リソソオクリンアミド(lissoclinamide)7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン(lurtotecan);ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶菌性ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン(merbarone);メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド(mitonafide);ミトトキシン(mitotoxin)繊維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール(mopidamol);多剤耐性遺伝子阻害剤;外発性腫瘍サプレッサー1-をベースとした治療;マスタード抗癌剤;マイカペルオキシド(mycaperoxide)B;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン(myr
iaporone);N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチプ(nagrestip);ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン(nemorubicin);ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン(nisamycin);一酸化窒素モジュレーター;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン(nitrullyn);O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン(okicenone);オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン(oracin);経口サイトカインインデューサー;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン(oxaunomycin);パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン(palauamine);パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン(parabactin);パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリサルフェートナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール(pentrozole);ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;脱リン酸化酵素阻害薬;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチン(placetin)A;プラセチン(placetin)B;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;白金錯体;白金錯体類;白金トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビスアクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAベースの免疫変調成分;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、ミクロアルガール(microalgal);タンパク質チロシン脱リン酸化酵素阻害薬;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質転移酵素阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン(retelliptine);レニウムRe 186
エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン(rohitukine);ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル(ruboxyl);サフィンゴール;サイントピン(saintopin);SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi 1擬似体;セムスチン;老化誘導阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレーター;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテイト;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール(solverol);ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン(spongistatin)1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド(stipiamide);ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン(sulfinosine);超活性脈管活性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ(suradista);スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオダイド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム(tellurapyrylium);テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド(tetrachlorodecaoxide);テトラゾミン(tetrazomine);タリブラスチン(thaliblastine);チオコラリン;トロンボポイエチン;トロンボポイエチン擬似体;チマルファシン;チモポイエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン(topsentin);トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞誘導化増殖抑制因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子治療;ベラレソール;ベルミン(vermine);ベルジン(verdins
);ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン(vitaxin);ボロゾール;ザノテロン(zanoterone);ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマーが挙げられる。
【0199】
好ましい実施形態では、追加の抗癌剤はゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである。
【0200】
4.7 その他の治療剤
本方法は、本発明の化合物、および他の治療上の有効成分またはその製薬上許容可能な塩の投与をさらに含み得る。本発明の化合物、およびその治療上の有効成分は、付加的、さらに好ましくは相乗的に作用し得る。好ましい実施形態では、本発明の化合物は、同じ組成物の一部であるか、または本発明の化合物を含む組成物と異なる組成物であってよい、1種または複数の他の治療上の活性剤の投与と同時に投与される。別の実施形態では、本発明の化合物は、1種または複数の他の治療上の活性剤の投与前または投与後に投与される。また、1種または複数の容器中に、本発明の化合物(好ましくは精製物)および1種または複数の治療上の活性剤を含むキットも提供する。
【0201】
癌を治療するための本方法では、他の治療上の活性剤は制吐剤であり得る。好適な制吐剤としては、これらに限定されるものではないが、メトクロプロミド、ドンペリドン、プロクロルペラジン、プロメタジン、クロルプロマジン、トリメトベンズアミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、ヒドロキシジン、アセチルロイシンモノエタノールアミン、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ビエタナウチン(bietanautine)、ブロモプリド、ブクリジン、クレボプリド、シクリジン、ジメンヒドリナート、ジフェニドール、ドラセトロン、メクリジン、メタラタール(methallatal)、メトピマジン、ナビロン、オキシペルンジル(oxyperndyl)、ピパマジン、スコポラミン、スルピリド、テトラヒドロカンナビノール、チエチルベラジン、チオプロペラジン、およびトロピセトロンが挙げられる。
【0202】
好ましい実施形態では、制吐剤はグラニセトロンまたはオンダンセトロンである。
【0203】
別の実施形態では、他の治療上の活性剤は造血コロニー刺激因子であり得る。好適な造血コロニー刺激因子としては、これらに限定されるものではないが、フィルグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチムおよびエポイエチン(epoietin)αが挙げられる。
【0204】
さらなる別の実施形態では、他の治療上の活性剤は、オピオイドまたは非オピオイド鎮痛剤であり得る。好適なオピオイド鎮痛剤としては、これに限定されるものではないが、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシモルホン、オキシコドン、メトポン、アポモルヒネ、ノルモルヒネ、エトルフィン、ブプレノルフィン、メペリジン、ロペルミド(lopermide)、アニレリジン、エトヘプタジン、ピミニジン(piminidine)、β-プロジン、ジフェノキシレート、フェンタニル、サフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、レボルファノール、デキストロメトルファン、フェナゾシン、ペンタゾシン、チクラゾシン、メタドン、イソメタドン、およびプロポキシフェンが挙げられる。好適な非オピオイド鎮痛剤としては、これらに限定されるものではないが、アスピリン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ジクロフィナク(diclofinac)、ジフルシナール(diflusinal)、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、メクロフェナメート、メファナミック酸(mefanamic acid)、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、およびスリンダクが挙げられる。
【0205】
さらに別の実施形態では、他の治療上の活性剤は不安緩解剤であり得る。好適な不安緩解剤としては、これらに限定されるものではないが、ブスプイロン、およびベンゾジアゼピン例えば、ジアゼパム、ロラゼパム、オキサザパム、クロラゼプ酸、クロナゼパム、クロルジアゼポキシド、およびアルプラゾラムが挙げられる。
【実施例】
【0206】
5. 実施例
5.1 実施例1:合成cis-[trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノ-シクロヘキサン]ジヨード白金(II)、(10)
水(10L)に溶解したK2PtCl4(1251.0g、3.014mol)(Alfa Aesar, Ward Hill, MA)の濾液を、25℃で水(5L)に溶解したKI(2919g、17.6mol)の溶液に添加し、10分間撹拌した。得られた溶液に、脱イオン水(1.3L)に溶解したtrans-(1R,2R)-1,2-ジアミンシクロヘキサン(364.0g、3.188mol)(11)(Alfa Aesar)の溶液をゆっくりと添加した。得られた反応混合物を25℃にて3時間撹拌し、濾過し、得られた黄色沈殿物を2Lの脱イオン水で3回洗浄した。この沈殿物を脱イオン水8L中に懸濁し、濾過し、濾液がAgNO3に対する陽性反応を示さなくなるまで固形物を脱イオン水1.5Lで6回洗浄した。ジメチルホルムアミド(DMF)(1.5L)中に固形物を再懸濁し、濾過した。次いで、DMF(0.3L)、水(3×1L)およびアセトン(3×0.7L)で濾過ケーキを洗浄した。固形物を回収し、減圧下で乾燥させて、淡黄色粉末(1527.6g、90%)としてcis-[trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]ジヨード白金)(II)(10)を得た。
【0207】
5.2 実施例2:1,2-ジミリストイル-SN-グリセロ-3-ホスホ(RAC-1-グリセロール、銀塩、(12)の合成
3:2(v:v)の水/エタノール(15mL)に溶解した硝酸銀(0.30g、1.75 mmol、2.0当量)の溶液を、25℃にて3:2の水/エタノール混合物(50mL)に溶解した1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)、ナトリウム塩(13)(1.21g、1.75 mmol)(Lipoid, GMBH, Ludwigshafen, Germany)の撹拌懸濁液に添加した。得られた反応混合物を光から保護し、25℃にて24時間撹拌した。この混合物を濾過し、得られた白色固形物を脱イオン水(3×25mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)、銀塩、(12)(1.11g;81%)を得た。
【0208】
5.3 実施例3:cis-ビス[1,2-ジミリストイル-SN-グリセロ-3-ホスホ](RAC-1-グリセロール)trans-1(1R,2R)-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)、14の合成
クロロホルム(100mL)に溶解した錯体10(0.81g、1.44mmol、2.0当量)の懸濁液を、25℃にて、クロロホルム(50mL)に溶解した12(1.11g、1.43mmol)の撹拌溶液に添加した。得られた反応混合物を光から保護し、2時間超音波処理し、25℃にて15時間撹拌した。得られた混合物を濾過し、固形物をクロロホルム(3×40mL)で洗浄した。濾液をあわせ、溶媒を減圧下で除去した。得られた油状残留物をアセトンから結晶化させ、クロロホルムアセトン混合物から再結晶させ、得られた沈殿物を減圧下で乾燥させて、cis-ビス[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ](rac-1-グリセロール)[trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)、(14)(0.96g、41%)を得た。白金錯体14の純度および構造は、元素分析と質量分光法により確認した。
【0209】
錯体14:C74H146N2O20P2PtxH2Oについての分析計算値:C 53.57, H 8.99, N 1.69, P 3.73, Pt 11.76;実測値:C 53.09 ; H 9.01, N 1.69, P 3.70, Pt 12.22;MS/FAB分子イオン:1663 m/z(M+ Na+)。
【0210】
5.4 実施例4:錯体14のリポソーム懸濁液の調製
70℃にてTween20(登録商標)(0.26g)を含有するtert-ブタノール(200mL)の溶液に脂質DMPC(1.57g)(Lipoid, GMBH)およびナトリウムDMPG(0.68g)(Lipoid, GMBH)を溶解させた。この溶液を35℃mで冷却し、錯体14(0.41g)を添加した。完全に溶解するまで得られた混合物を撹拌し、その溶液を凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を0.9%生食注射、USP(1ml当たり5mg)で再構成し、錯体14のリポソーム懸濁液を得た。
【0211】
5.5 実施例5:NDDPのリポソーム製剤中の変換生成物の同定における錯体14の使用
アロプラチン(商標)は、リポソームで封入化された、cis-ビス[ネオデカノアト-trans(R,R-1,2-ジアミノシクロヘキサン)]白金(II)、(NDDP)、(15)を含有するジアミノシクロヘキサン白金化合物である。錯体15のリポソーム懸濁液は実施例3および実施例5の記載のとおりに調製し、この再構成リポソーム懸濁液を室温にて2日間置き、懸濁液を変換させた。メタノール中にこの変換生成物を溶解し、紫外線(UV)とエバポレイディブ光散乱(ELS)検出器を装備した、HPLCカラム(逆相C18カラム)上で溶出させた。第1の方法では、溶離液は100%メタノールであり;第2の方法では、溶離液はメタノール:水(80:20 v:v、および100%メタノールまで増加)であった。第1の方法と第2の方法における錯体15のリポソーム懸濁液の溶出時間は、それぞれ2.0分と9.6分であった。
【0212】
比較については、メタノール中に錯体14(実施例3で調製したようなその純粋な形態のもの)を溶解し、上に記載のHPLC法によって分析した。第1の方法と第2の方法における錯体14の溶出時間もまたそれぞれ2.0分と9.6分であった。
【0213】
理論によって制限することを意図するものではないが、このHPLC試験の結果は、錯体14が錯体15のリポソーム懸濁液の変換生成物であることを示唆しているものと考えている。
【0214】
5.6 実施例6:癌の治療または予防のためのin vitroアッセイ
以下の試験を用いて、ヒトおよびマウスの細胞系において、錯体14のリポソーム懸濁液のin vitro抗癌活性を評価することができる。
【0215】
96ウェルプレート中に定着されたヒト腫瘍細胞系(HT 29、B16およびPACA2)とマウス腫瘍細胞系(L1210、CT26)に錯体14のリポソーム懸濁液を添加する。インキュベーションを18時間行なった後、これらの細胞を3Hチミジンでパルスし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。放射性同位元素取込量を測定し、細胞増殖が50%低減される濃度である阻害濃度50(IC50)を算出するために用いた。L1210モデルの試験プロトコルは、Hanら, Cancer Chemoter. Pharmacol. 39:17-24 (1996)に記載されている。
【0216】
5.7 実施例7:白血病の治療または予防のためのin vivoアッセイ
以下の試験を用いて、L1210マウス白血病に対する錯体14のリポソーム懸濁液のin vivoにおける抗白血病活性を評価することができる。
【0217】
6〜8匹のB6D2/F1マウスの群に、腹腔内(I.P.)経路により106個のL1210細胞を接種した。次いで、接種後1日目、4日目および9日目に、これらの動物に、錯体14のリポソーム懸濁液または空のリポソームを5、10および15mg/kgで腹腔内経路により処理し、1日2回、動物について腹部膨隆(白血病細胞活性を示す)と生存を記録し評価した。
【0218】
5.8 実施例8:結腸直腸癌の治療または予防のためのin vivoアッセイ
HT29のヒト結腸直腸癌細胞異種移植片を用いて、結腸直腸癌に対する錯体14のリポソーム懸濁液のin vivo活性を評価するために以下の試験を用いることができる。
【0219】
HT29細胞(106)を6週齢のメスBALB/cヌードマウスに皮下注射する。腫瘍が測定可能な場合(平均の腫瘍表面積が少なくとも33mm2)、処置を開始する。次の4群のマウスに尾部静脈へ注射して処置する:第1群には希釈剤を注射する;第2群には3、5および10mg/kgで錯体14のリポソーム製剤を注射する;第3群には50mg/kgで5-フルオロウラシルを注射する;第4群には50mg/kgで5-フルオロウラシルを注射した後、3、5および10mg/kgで白金錯体14のリポソーム製剤を注射する。毎日、腫瘍の大きさを測定するとともに体重を記録する。この試験プロトコルは、Raymondら, Anti-Cancer Drugs 8:876-885 (1997)に記載されている。
【0220】
5.9 実施例9:肝臓癌の治療または予防のためのin vivoアッセイ
M5076細網肉腫肝転移に対する錯体14のリポソーム懸濁液のin vivoにおける活性を評価するために以下の試験を用いることができる。
【0221】
C57BL/6マウスにM5076細胞(2×104)を静脈内接種する。以下の3群のマウスについて、4日目、11日目および18日目に尾部静脈へ注射により処置する:第1群は、希釈剤を注射する;第2群は、3、5および10mg/kgで錯体14のリポソーム製剤を注射する;第3群は、20mg/kgでリポソームアロプラチン(登録商標)を注射する。30日目に動物を殺して肝臓を解剖し、ボーインズ溶液(15重量部の濃縮ピクリン酸、3重量部の37〜40%ホルマリン、1重量部の氷酢酸)中に入れた。肝臓表面上の腫瘍結節数を研究者2名により数える。この試験プロトコルはPerez-Solarら, Cancer Res. 5:6341-6347 (1992)に記載されている。
【0222】
本明細書に引用したすべての文献は、各公報または特許または特許出願が、すべての目的においてその全体を参照により組み入れらることを特別に、かつ個別に示したのと同程度まで、それらの全体を参照によって、また、またすべての目的について本明細書に組み入れるものとする。
【0223】
本発明の多くの改変および変更は、当業者に明らかであるように、その趣旨と範囲から逸脱することなく行なうことができる。本明細書に記載されている具体的な実施形態は単に例示として示されているものであって、本発明は、添付の特許請求の範囲の用語と、かかる添付の特許請求の範囲に権利付与されるのに相当する全面的な範囲によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
R1およびR2は、独立して-N(R6)2、-NH3+であるか;あるいは、R1およびR2はそれぞれ-NH2であって、かつC2-C6アルキレンまたはC3-C7シクロアルキレン基を介して結合して、1個または複数のR7で置換されていてもよい二座ジアミンリガンドを形成しており;
R3は脂質リガンドであり、但し、R3はホスファチジン酸ではなく;
R4は脂質リガンド、無機リガンド、-CN、または-OC(O)R5であり、但し、R4はホスファチジン酸ではなく;
R5は、C1-C24アルキルであり;
各R6は、独立して、-H、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、または-アリールであり;
各R7は、独立して、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、または-アリールである)
で表される精製脂質白金錯体、またはその製薬上許容可能な塩。
【請求項2】
R3がリン脂質である、請求項1に記載の脂質白金錯体。
【請求項3】
R4がリン脂質である、請求項1に記載の脂質白金錯体。
【請求項4】
R3およびR4がそれぞれ独立してリン脂質である、請求項1に記載の脂質白金錯体。
【請求項5】
リン脂質がホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、またはスフィンゴミエリンである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項6】
リン脂質がジミリストイルホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、ジラウリロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、またはジオレオイルホスファチジルコリンである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項7】
リン脂質がジミリストイルホスファチジルコリンである、請求項6に記載の錯体。
【請求項8】
リン脂質がジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジラウリロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルグリセロール、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルグリセロール、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルグリセロール、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルグリセロール、およびジオレオイルホスファチジルグリセロールである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項9】
リン脂質がジミリストイルホスファチジルグリセロールである、請求項8に記載の錯体。
【請求項10】
リン脂質がジミリストイルホスファチジルエタノールアミンまたはジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項11】
リン脂質が脳スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、またはジステアロイルスフィンゴミエリンである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項12】
R1およびR2が結合して二座ジアミンリガンドを形成している、請求項1に記載の脂質白金錯体。
【請求項13】
二座ジアミンリガンドが、trans-R,R-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-S,S-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン、または1,2-エチレンジアミンである、請求項12に記載の脂質白金錯体。
【請求項14】
二座ジアミンリガンドがtrans-R,R-1,2-ジアミノシクロヘキサンである、請求項13に記載の脂質白金錯体。
【請求項15】
R4が無機リガンド、-CNまたは-OC(O)R5(式中、R5はC1-C24アルキルである)である、請求項1に記載の脂質白金錯体。
【請求項16】
R4がCl-、Br-、I-、F-、NO3-、CN-、OH-、H2O、HCO3-、またはHSO4-である、請求項1に記載の脂質白金錯体。
【請求項17】
R4が-OC(O)R5であり、かつR5が5〜11個の炭素原子を有している、請求項1に記載の脂質白金錯体。
【請求項18】
R5が9個の炭素原子を有している、請求項17に記載の脂質白金錯体。
【請求項19】
R4が-OC(O)R5であり、かつR5が分枝状である、請求項1に記載の脂質白金錯体。
【請求項20】
R4が-OC(O)R5であり、かつR5が直鎖状である、請求項1に記載の脂質白金錯体。
【請求項21】
R4がネオデカノアト基である、請求項1に記載の脂質白金錯体。
【請求項22】
脂質白金錯体cis-ビス[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ](rac-1-グリセロール)[trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)、またはその製薬上許容可能な塩であって、精製形態である前記錯体または塩。
【請求項23】
脂質白金錯体cis-[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)](ネオ-デカノアト)[trans-(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)、またはその製薬上許容可能な塩であって、精製形態である前記錯体または塩。
【請求項24】
脂質白金錯体cis-ビス[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)[trans-(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)、またはその製薬上許容可能な塩であって、精製形態である前記錯体または塩。
【請求項25】
脂質白金錯体cis-ビス[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)[cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)、またはその製薬上許容可能な塩であって、精製形態である前記錯体または塩。
【請求項26】
脂質白金錯体cis-ビス[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)[trans-(rac)-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)、またはその製薬上許容可能な塩であって、精製形態である前記錯体または塩。
【請求項27】
脂質白金錯体cis-[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)(ネオ-デカノアト)[trans-(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)、またはその製薬上許容可能な塩であって、精製形態である前記錯体または塩。
【請求項28】
脂質白金錯体cis-[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)(ネオ-デカノアト)[cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)、またはその製薬上許容可能な塩であって、精製形態である前記錯体または塩。
【請求項29】
脂質白金錯体cis-[1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)(ネオ-デカノアト)[trans-(rac)-1,2-ジアミノシクロヘキサン]白金(II)、またはその製薬上許容可能な塩であって、精製形態である前記錯体または塩。
【請求項30】
リポソーム内に封入されている請求項1に記載の脂質白金錯体を含むリポソーム脂質白金錯体であって、前記リポソームがリポソーム脂質成分を含み、請求項1に記載の脂質白金錯体とリポソーム脂質成分が、1対2から1対30の間のモル比で存在する、前記錯体。
【請求項31】
リポソーム内に封入されている請求項22〜29のいずれか1項に記載の脂質白金錯体を含むリポソーム脂質白金錯体であって、前記リポソームがリポソーム脂質成分を含み、請求項22〜29のいずれか1項の脂質白金錯体とリポソーム脂質成分が、1対2から1対7の間のモル比で存在する、前記錯体。
【請求項32】
請求項1に記載の脂質白金錯体とリポソーム脂質成分が、1対3から1対5の間のモル比で存在する、請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項33】
リポソーム脂質成分が、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルコリン、またはその組み合わせである、請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項34】
リポソームが多重層である、請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項35】
リポソームが単層である、請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項36】
界面活性剤をさらに含む、請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項37】
界面活性剤が、リポソーム脂質成分の0.01モル%から4モル%の間の量で存在する、請求項36に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項38】
界面活性剤がアニオン性である、請求項36に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項39】
界面活性剤が非イオン性である、請求項36に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項40】
界面活性剤がカチオン性である、請求項36に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項41】
非イオン性界面活性剤がソルビタンポリオキシエチレンカルボキシレートである、請求項39に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項42】
非イオン性界面活性剤がソルビタンポリオキシエチレンモノラウレートまたはソルビタンポリオキシエチレンモノオレエートである、請求項39に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項43】
1μm未満の中央径を有している請求項36に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項44】
請求項1に記載の脂質白金錯体または請求項1に記載の脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩以外の追加の抗癌剤をさらに含む、請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項45】
追加の抗癌剤がゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである、請求項44に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項46】
請求項22〜29のいずれか1項に記載の脂質白金錯体以外の追加の抗癌剤をさらに含む、請求項31に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項47】
追加の抗癌剤がゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである、請求項46に記載のリポソーム脂質白金錯体。
【請求項48】
癌治療に有効な量の請求項1に記載の脂質白金錯体または請求項1に記載の脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩、および製薬上許容可能な担体またはビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項49】
癌治療に有効な量の、請求項1に記載の脂質白金錯体または請求項1に記載の脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩以外の追加の抗癌剤をさらに含む、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項50】
追加の抗癌剤がゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
癌治療に有効な量の、請求項22〜29のいずれか1項に記載の脂質白金錯体または請求項22〜29のいずれか1項に記載の脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩、および製薬上許容可能な担体またはビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項52】
癌治療に有効な量の、請求項22〜29のいずれか1項に記載の脂質白金錯体または請求項22〜29のいずれか1項に記載の脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩以外の追加の抗癌剤をさらに含む、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
追加の抗癌剤がゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
癌治療に有効な量の請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体と製薬上許容可能な担体またはビヒクルとを含む医薬組成物。
【請求項55】
癌治療に有効な量の、請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体以外の追加の抗癌剤をさらに含む、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
追加の抗癌剤がゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
癌治療に有効な量の請求項31に記載のリポソーム脂質白金錯体と製薬上許容可能な担体またはビヒクルとを含む医薬組成物。
【請求項58】
癌治療に有効な量の請求項31に記載のリポソーム脂質白金錯体以外の追加の抗癌剤をさらに含む、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
追加の抗癌剤がゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
癌の治療方法であって、かかる治療を必要とする被験体に、癌治療に有効な量の請求項1に記載の脂質白金錯体または請求項1に記載の脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項61】
癌の治療方法であって、かかる治療を必要とする被験体に、癌治療に有効な量の請求項22〜29のいずれか1項に記載の脂質白金錯体または請求項22〜29のいずれか1項に記載の脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項62】
癌の治療方法であって、かかる治療を必要とする被験体に、癌治療に有効な量の請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体を投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
癌の治療方法であって、かかる治療を必要とする被験体に、癌治療に有効な量の請求項31に記載のリポソーム脂質白金錯体を投与することを含む、前記方法。
【請求項64】
癌の治療方法であって、かかる治療を必要とする被験体に、請求項48に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項65】
癌の治療方法であって、かかる治療を必要とする被験体に、請求項51に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項66】
癌の治療方法であって、かかる治療を必要とする被験体に、請求項54に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項67】
癌の治療方法であって、かかる治療を必要とする被験体に、請求項57に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項68】
前記被験体に、請求項1に記載の脂質白金錯体または請求項1の脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩ではない追加の抗癌剤を投与することをさらに含む、請求項60または64に記載の方法。
【請求項69】
前記被験体に、請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体ではない追加の抗癌剤を投与することをさらに含む、請求項62または66に記載の方法。
【請求項70】
追加の抗癌剤がゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
追加の抗癌剤がゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
癌が膵臓癌、結腸直腸癌または中皮腫である、請求項60、62、64または66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
被験体がヒトである、請求項60、62、64または66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
請求項1に記載の脂質白金錯体またはその製薬上許容可能な塩の単位剤形を含有している容器を含むキット。
【請求項75】
請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体の単位剤形を含有している容器を含むキット。
【請求項76】
リポソーム脂質白金錯体が凍結乾燥形態である、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
第2の容器をさらに含む請求項76に記載のキットであって、第2の容器が凍結乾燥したリポソーム脂質白金錯体の再構成に有用な溶液を含有している、前記キット。
【請求項78】
前記溶液が水溶液である、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
前記水溶液が塩化ナトリウムを含む、請求項78に記載のキット。
【請求項80】
前記水溶液が食塩水である、請求項79に記載のキット。
【請求項81】
前記食塩水がリン酸緩衝生理食塩水である、請求項80に記載のキット。
【請求項82】
第2の容器をさらに含む請求項74に記載のキットであって、第2の容器が請求項1に記載の脂質白金錯体または請求項1に記載の脂質白金錯体の製薬上許容可能な塩以外の追加の抗癌剤を含有している、前記キット。
【請求項83】
追加の抗癌剤がゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである、請求項82に記載のキット。
【請求項84】
第2の容器をさらに含む請求項75に記載のキットであって、第2の容器が請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体以外の追加の抗癌剤を含む、前記キット。
【請求項85】
追加の抗癌剤がゲムシタビン、カペシタビンまたは5-フルオロウラシルである、請求項84に記載のキット。
【請求項86】
第2の容器をさらに含む請求項74または75に記載のキットであって、第2の容器が制吐剤または造血コロニー刺激因子を含有している、前記キット。
【請求項87】
請求項1に記載の脂質白金錯体またはその製薬上許容可能な塩を被験体に投与するための手段をさらに含む、請求項74に記載のキット。
【請求項88】
請求項30に記載のリポソーム脂質白金錯体を被験体に投与するための手段をさらに含む、請求項75に記載のキット。
【請求項89】
式(I):
【化2】

で表される白金錯体またはその製薬上許容可能な塩を製造する方法であって、式(II):
【化3】

で表される錯体を、少なくとも約2モル当量の式(III):
【化4】

で表される化合物と反応させることを含む、前記方法。
(式中、
R1およびR2は、独立して-N(R6)2、-NH3+であるか;あるいは、R1およびR2はそれぞれ-NH2であって、C2-C6アルキレンまたはC3-C7シクロアルキレン基を介して結合して、1個または複数のR7で置換されていてもよい、二座ジアミンリガンドを形成しており;
R3は、脂質リガンドであり、但し、R3はホスファチジン酸ではなく;
R4は、脂質リガンド、無機リガンド、-CN、または-OC(O)R5であり、但し、R4はホスファチジン酸ではなく;
R5は、C1-C24アルキルであり;
各R6は、独立して、-H、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、または-アリールであり;
各R7は、独立して、-C1-C6アルキル、-C3-C7シクロアルキル、または-アリールであり、
haloは、-F、-Cl、-Br、-I、または-Atであり;
M+は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、またはAg+である)
【請求項90】
R3がリン脂質である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
R4がリン脂質である、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
R3およびR4がそれぞれ独立してリン脂質である、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
R1およびR2が結合して二座ジアミンリガンドを形成している、請求項89に記載の方法。
【請求項94】
二座ジアミンリガンドが、trans-R,R-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-S,S-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン、または1,2-エチレンジアミンである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
二座ジアミンリガンドがtrans-R,R-1,2-ジアミノシクロヘキサンである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
R3およびR4がそれぞれ1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(rac-1-グリセロール)である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
M+がAg+である、請求項96に記載の方法。

【公表番号】特表2006−525368(P2006−525368A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514250(P2006−514250)
【出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/013727
【国際公開番号】WO2004/098524
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505407782)アロネックス,ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】