脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法
【課題】
シリカ・チタニアガラス基板においてEUVリソグラフィー用の光学系に許されない脈理を一方向あるいは三方向に除去し、シリカ・チタニアガラスの均質性を向上させることができるシリカ・チタニアガラスの製造方法及び一方向あるいは三方向に脈理の存在しないシリカ・チタニアガラスを提供する。
【解決手段】
シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を透明化し、同心円状の層状脈理を有する円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製した後、該ガラス体から円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出し、該棒状ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、前記脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施すようにした。
シリカ・チタニアガラス基板においてEUVリソグラフィー用の光学系に許されない脈理を一方向あるいは三方向に除去し、シリカ・チタニアガラスの均質性を向上させることができるシリカ・チタニアガラスの製造方法及び一方向あるいは三方向に脈理の存在しないシリカ・チタニアガラスを提供する。
【解決手段】
シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を透明化し、同心円状の層状脈理を有する円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製した後、該ガラス体から円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出し、該棒状ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、前記脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施すようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波長13.5nmの超短波長紫外線を光源とするEUVリソグラフィー(Extreme Ultra-Violet Lithography)の反射光学系を構成するミラー基板や反射型マスクの基板に好適な均質で脈理のないチタニアを含有するシリカガラス(以下、チタニアを含有するシリカガラスをシリカ・チタニアガラスと称する)の製造方法及び一方向あるいは三方向に脈理の存在しないシリカ・チタニアガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造技術開発は留まることを知らないが、線幅が45nmよりも細い、次々世代の露光技術として、波長13.5nmのEUV光を用いたEUVリソグラフィー技術が最も有力視されている。このような超短波長の光は適切な透過材料が存在しないため、光学系は全て反射系で構成され、また、マスク材料も反射型マスクが用いられると考えられている。
【0003】
このような光学ミラー及びマスク基板の材料は露光操作中に熱膨張等で変形しては困るために、使用温度範囲での線膨張係数が極めて小さい超低膨張ガラスが必要とされる。また、これらの基板面はサブナノメーターのオーダーで平面もしくは球面、非球面に研磨できなければならない。このような超低膨張ガラスとしては、特許文献1に示されるようにTiO2濃度が6〜8質量%程度、残部がSiO2で構成されるシリカ・チタニアガラスが挙げられ、該シリカ・チタニアガラスは約20〜35℃の間で約±20ppb/℃の範囲の一様な線膨張係数を有する。
【0004】
このようなシリカ・チタニアガラスを製造する方法としては、シリカ原料である揮発性珪素化合物(四塩化珪素や環状シロキサン等)とチタニア原料である揮発性チタン化合物(四塩化チタンやチタンアルコキシド)をバーナー火炎中に導入して、回転する基体上に、原料の火炎加水分解によって生じるシリカ微粒子とチタニア微粒子を同時に堆積、溶融して製造する直接法が一般的である。
【0005】
この方法は所謂合成シリカガラスを製造する方法と同一であるが、得られるシリカ・チタニアガラスの高温での粘度がシリカガラスの粘度に比べて10〜20%低いため、得られるガラスを横向きに保持する横型直接法によって成長させることは困難で、下から上に徐々にガラスを成長させる縦型法が主たる方法である。このような縦型直接法によって製造されたシリカ・チタニアガラスはガラス成長中の基体の回転に伴う成長縞が層状の脈理を形成する。
【0006】
このような脈理部分においては、シリカ・チタニアの構成割合が微妙に変化するために線膨張係数が変化していると考えられる上、硬さも微妙に異なるため、高精度な研磨を施した場合、脈理部分だけ凹凸が出来るという不具合が生じ、EUVリソグラフィー用光学系に要求されるサブナノメーターオーダーの平坦面を形成するには甚だ不都合である。
【0007】
このような不都合を解消するために特許文献2ではシリカ・チタニアガラス成長時の温度条件を極めて均一に設定し、存在する脈理を屈折率差で10-7以下と極めて”薄く”することで解決しようとしているが、本発明は温度条件等を均一に成長させるのではなく、機械的に脈理を除去することによって完全に脈理を消滅させることを目的としている。
【0008】
また、このような脈理は成長面に平行に形成されるものであるから、平面状に加工して使用される平面ミラーやマスク材料としては使用することが可能であると思われるが、実際には成長面は完全には平行ではなく、若干の凹凸を持った面であることが多く、そのような場合には、完全な平面を形成した場合に、凹凸部分が切り出され、脈理として観察され、不具合を生じることがある。
【特許文献1】国際公開第03/077038号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0027555号明細書
【特許文献3】特開平7−267662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、シリカ・チタニアガラス基板においてEUVリソグラフィー用の光学系に許されない脈理を一方向あるいは三方向に除去し、シリカ・チタニアガラスの均質性を向上させることができるシリカ・チタニアガラスの製造方法及び一方向あるいは三方向に脈理の存在しないシリカ・チタニアガラスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
シリカ・チタニアガラスの持つ脈理を完全に除去するために、本発明者らが鋭意検討を加えた結果、脈理を有するシリカガラスの脈理除去、均質化手法である帯域溶融法(特許文献3)をシリカ・チタニアガラスの脈理方向に適切に施すことによって同様の結果が得られることを見出した。
【0011】
また、出発原料であるシリカ・チタニアガラスの製造方法として、直接法よりも一度多孔質ガラス体を経由するスート法の方が、成長温度が低いことが理由と考えられるが、得られたシリカ・チタニアガラス体に内在する脈理の強度が直接法で作成されたシリカ・チタニアガラスの脈理強度よりも弱いことが判った。このため、均質化するための出発材料の製造方法としてはスート法が好ましいことが判った。更に、得られたシリカ・チタニアガラスにおいて層状脈理形状が揃っている横型OVD法により作られたシリカ・チタニアガラスが本発明において好ましいことが判った。
【0012】
即ち、本発明のシリカ・チタニアガラスの製造方法の第一の態様は、一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を透明化し、同心円状の層状脈理を有する円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、前記シリカ・チタニアガラス体から円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出す工程と、前記棒状ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、前記脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施す均質化処理工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明のシリカ・チタニアガラスの製造方法の第二の態様は、一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体から前記基体を取り外し、加熱炉内で透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って長手方向に切断し、円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を形成する切り出し工程と、前記棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し、断面が略円形状又は楕円形状の棒状ガラス体を形成する除去処理工程と、前記棒状ガラス体の両端を一対の回転可能な保持手段で保持し、バーナーで該ガラス体の一部を加熱しながら該一対の回転可能な保持手段に回転差を与えつつ該バーナーを移動して断面が略円形な棒状ガラス体に成型する第1の成型工程と、前記成型された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該棒状ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る均質化処理工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
前記均質化処理工程後、前記均質化された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段間の距離を狭めることにより該棒状ガラス体の径を大きくする第2の成型工程を含むことが好ましい。
【0015】
前記棒状ガラス体を前記一対の回転可能な保持手段で保持する際、0〜900℃における線膨張係数が0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下のガラス支持棒を介して保持することが好適である。
【0016】
本発明のシリカ・チタニアガラスの製造方法の第三の態様は、三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を透明化し、同心円状の層状脈理を有する円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、前記シリカ・チタニアガラス体から円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出す工程と、前記棒状ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、前記脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施す第1の均質化処理工程と、前記均質化処理工程後のガラス体に対し均質化処理軸の方向を変えて帯域溶融法による均質化処理を施す第2の均質化処理工程と、を含むことを特徴とする。前記第1の均質化処理工程における第1の均質化処理軸と前記第2の均質化処理工程における第2の均質化処理軸とが略直交していること、例えば、第1の均質化処理軸と第2の均質化処理軸との成す角が80度以上100度以下であることがより効率的である。
【0017】
本発明のシリカ・チタニアガラスの製造方法の第四の態様は、三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体から前記基体を取り外し、加熱炉内で透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って長手方向に切断し、同心円状の層状脈理を有する棒状ガラス体を形成する切り出し工程と、前記棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し、断面が略円形状又は楕円形状の棒状ガラス体を形成する除去処理工程と、前記棒状ガラス体の両端を0〜900℃における線膨張係数が0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下のガラス支持棒を介して一対の回転可能な保持手段で保持し、バーナーで該ガラス体の一部を加熱しながら該一対の回転可能な保持手段に回転差を与えつつ該バーナーを移動して断面が略円形な棒状ガラス体に成型する第1の成型工程と、前記成型された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該棒状ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る第1の均質化処理工程と、前記均質化された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段間の距離を狭めることにより該棒状ガラス体の径を大きくし、球状ガラス体に成型する第2の成型工程と、前記成型された球状ガラス体を前記ガラス支持棒から切り離し、略90度回転したのち再度ガラス支持棒を取り付ける持ち替え工程と、前記持ち替えた球状ガラス体をバーナーで加熱しつつ前記一対の回転可能な保持手段の間隔を広げることにより延伸する延伸工程と、前記延伸したガラス体に対して、前記一対の回転可能な保持手段に回転差を与えながら、バーナーを移動し、該ガラス体全体を円筒状に成型する第3の成型工程と、前記得られた円筒状ガラス体の一部を強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る第2の均質化処理工程と、前記得られたガラス体の一部をバーナーで加熱しつつ円筒状に成型する第4の成型工程と、を含むことを特徴とする。なお、本発明において、球状とは、円球、楕円球及びそれらに類似する形状を含むものである。
【0018】
本発明方法において、前記均質化処理を複数回繰り返すことが好ましい。
【0019】
前記均質化処理工程において前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与える方法としては、前記一対の回転可能な保持手段を逆回転する方法が好ましい。
【0020】
前記シリカ・チタニアガラスの組成は、チタニア濃度が2質量%以上15質量%以下で残部がSiO2であることが好ましい。
【0021】
前記均質化処理を施す棒状ガラス体の外径が、30mm以上150mm以下であることが好適である。
【0022】
前記一対の回転可能な保持手段としては、旋盤に設けられた左右のチャックを用いることができる。
【0023】
本発明のシリカ・チタニアガラスは、本発明方法により製造される一方向又は三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスであって、機械的に脈理が除去されてなることを特徴とする。
【0024】
本発明のシリカ・チタニアガラスは、EUVリソグラフィー用の反射光学材料又は反射型マスク材料として好適である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、EUVリソグラフィーの反射光学系を構成するミラー基板や反射型マスクの基板に好適な高均質で一方向又は三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0027】
図1は、本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の手順の大略を示すフローチャートである。図2〜図10は本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例を原理的に示す概略説明図である。
【0028】
図1に示すように、まず、横型OVD法とよばれる、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製した後、該多孔質ガラス体を透明ガラス化する方法により、中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する(ステップ100)。
【0029】
図2はステップ100における多孔質ガラス体の作製方法の一例を示す概略説明図である。図2に示した如く、水平に保持された基体31に対して垂直にバーナー33を設置し、酸素、水素、シリカ原料(例えば、四塩化珪素や環状シロキサン等の揮発性珪素化合物)及びチタニア原料(例えば、四塩化チタンやチタンアルコキシド等の揮発性チタン化合物)を該バーナー23に導入し、生じたシリカ及びチタニア微粒子(スート)を回転する基体31上に層状に堆積することにより、円筒状の多孔質ガラス体10が形成される。
【0030】
前記形成された多孔質ガラス体10から基体31を取り外し、該多孔質ガラス体10を電気炉等の加熱炉で高温加熱処理し透明ガラス化することにより、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体が得られる。図3はステップ100により得られるシリカ・チタニアガラス体を示す概略説明図であり、(a)は斜視概略説明図、(b)は断面概略説明図であり、11は中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体、13は脈理である。図3に示した如く、ステップ100により同心円状の層状脈理13を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体11が得られる。
【0031】
前記得られたシリカ・チタニアガラス体11の組成は特に限定されないが、チタニアとSiO2からなり、チタニア濃度は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4重量%以上、さらに好ましくは6質量%以上、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0032】
次に、前記得られたシリカ・チタニアガラス体11から、円弧状の層状脈理13を有する棒状ガラス体を切り出す(ステップ102:切り出し工程)。図4は、ステップ102を原理的に示す概略説明図であり、(a)は斜視概略説明図、(b)は断面概略説明図であり、12は扇柱状の棒状ガラス体である。棒状ガラス体の切り出し方法としては、該棒状ガラス体が円弧状の層状脈理を有する状態であれば特に限定はないが、図4に示した如く、中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体11を、円形断面が円分割されるように半径に沿って長手方向に切断することが好ましい。分割数は複数であれば特に限定されないが、4分割以上が好ましい。なお、図4においてはガラス体を6個に略等分割した場合の例を示したが、等分割でなくてもよい。
【0033】
前記切り出された棒状ガラス体に対し、層状脈理と垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施すことにより、一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスを得ることができるが、具体的には、前記棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し(ステップ104:除去処理工程)、断面が略円形な棒状ガラス体に成型した後(ステップ106:第1の成型工程)、脈理を除去し、組成の均一化を図る一方向目の均質化処理を実施する(ステップ108:第1の均質化処理工程)ことが望ましい。
【0034】
図5は、ステップ104を原理的に示す断面概略説明図であり、14は除去処理された棒状ガラス体、Lは切断方向を示す。図5に示した如く、除去処理工程において、扇柱状の棒状ガラス体12の角部及び凹部が除去処理され、断面が略円形状又は略楕円形状の棒状ガラス体が形成される。本発明において、前記棒状ガラス体の内周部に凹部が存在すると次工程である第1の成型工程において、泡をかみやすくなる為、角部の面取りに加えて、棒状ガラス体の内周面の凹部を除去し、断面が円形状又は楕円形状に近づくように加工することが好適である。除去処理加工の形状は特に限定されるものではないが、図5に示した如く、棒状ガラス体の内周面の凹部が完全に無くなるように凹面が除去されることが好ましい。
【0035】
図6は、ステップ106を原理的に示す概略説明図であり、(a)は成型工程で用いられる装置を含む概略説明図であり、(b)はステップ106による棒状ガラス体の形状の変化を示す概略説明図である。図6に示した如く、前記除去処理された棒状ガラス体14は、該棒状ガラス体14の長手方向の両端部を一対の回転可能な保持手段、例えば、旋盤のチャック32a,32bで保持し、バーナー34で該ガラス体14の一部を加熱しながら該旋盤の左右のチャック32a,32bに回転差を与え、該棒状ガラス体14を捻りながら該バーナー34を移動することにより、断面が略円形な円筒状の棒状ガラス体16に成型される。
【0036】
前記棒状ガラス体14を旋盤のチャック32a,32bで保持する際、0〜900℃における線膨張係数が0×10-7/℃以上6×10-7/℃以下のガラス支持棒30を介して保持することが好ましい。本発明者らはシリカ・チタニアガラスに帯域溶融法による均質化処理を施す際、旋盤に把持する際の支持棒の線膨張係数が処理物であるシリカ・チタニアガラスの線膨張係数と大きく異なる場合、線膨張係数の不適合によりクラック等が生じることがある為、支持棒の材質についても検討を加えたが、クラックが生じない線膨張係数の範囲として、3.0×10-7/℃±3.0×10-7/℃の範囲、即ち、0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下の線膨張係数の材料であることが必要であることを見出した。シリカガラスは線膨張係数が0℃〜900℃の温度領域で5.0×10-7/℃であるため、ガラス支持棒として特に好ましいものである。
【0037】
加えて、シリカ・チタニアガラスは粘度がシリカガラスよりも10%程低いことから、帯域溶融法により均質化する際に、均質化径が細すぎると自重による変形が生じ、安定した溶融帯域の保持が困難であることが判った。従って、前記成型された円筒状のガラス体16の外径を30mm以上にすることが重要である。径を太くする場合は特別制限はないが、溶融帯域内に強いせん断応力を生じさせる為には径が太すぎる場合、旋盤のチャックのトルクが過大になりすぎて機械的に大掛かりになりすぎるため、径の最大値は150mm以下であることが好ましい。
【0038】
図7はステップ108を原理的に示す概略説明図である。図7に示した如く、前記成型された棒状ガラス体16の一部をバーナー34で強熱しつつ、前記左右のチャック32a,32bに大きな回転差を与え捻りながらバーナー34を移動させることにより該棒状ガラス体16の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る均質化処理が行われる。図7において、42は均質化処理軸である。左右のチャック32a,32bに大きな回転差を与える方法としては、例えば、左右のチャック32a,32bを逆回転することが好適である。この均質化処理は1回以上行えばよいが、2回以上繰り返すことが脈理の除去及び組成の均一化により効果的である。
【0039】
前記均質化処理工程後、前記得られたガラス体を加熱しながら成型することにより、円筒状等、所望の形状に成型されたシリカ・チタニアガラス体を得ることができる。図8〜図10は均質化されたガラス体の成型方法の一例を示す概略説明図である。図8に示した如く、前記均質化された棒状ガラス体18の一部をバーナー34で強熱しつつ、前記旋盤の両チャック32a,32b間の距離を狭めることにより、該棒状ガラス体18の径を大きくし、球状ガラス体20に成型した後(ステップ110:第2の成型工程)、前記成型された球状ガラス体20を前記ガラス支持棒30から切り離す。なお、図8においては球状ガラス体として円球状のガラス体を示したが、球状とは円球状のみならず、ラクビーボール型形状等の楕円球形状等の種々の球状形態をも含むものである。
【0040】
その後、成型炉36内の成型用容器40に前記切り出されたガラス体20を設置し、加熱成型することにより、所望の形状に成型されたシリカ・チタニアガラス22が得られる(ステップ112)。図9はステップ112を原理的に示す概略説明図であり、36は成型炉、38は加熱手段、40は成型用容器である。図10は上記方法により得られた円盤状に成型されたシリカ・チタニアガラス24の一例を示す模式図である。前記本発明方法により機械的に脈理が除去された一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスを製造することができる。
【0041】
以下、本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法について具体的に説明する。図11は、本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の手順の大略を示すフローチャートである。図12〜図14は本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例を原理的に示す概略説明図である。
【0042】
本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法は、横型OVD法により同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製し、該シリカ・チタニアガラス体から、円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出し、脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を、軸を変えて施すものである。
【0043】
具体的には、図11に示した如く、横型OVD法により同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を製造し(ステップ200)、該シリカ・チタニアガラス体から、円弧状の層状脈理を有する扇柱状の棒状ガラス体を切り出した後(ステップ202:切り出し工程)、該棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し(ステップ204:除去処理工程)、断面が略円形な棒状ガラス体に成型した後(ステップ206:第1の成型工程)、脈理を除去し、組成の均一化を図る一方向目の均質化処理を実施する(ステップ208:第1の均質化処理工程)。その後、均質化された棒状ガラス体を球状ガラス体に成型し(ステップ210:第2の成型工程)、軸を変えるように該球状ガラス体を持ち替えた後(ステップ212:持ち替え工程)、該球状ガラス体を加熱しながら延伸し(ステップ214:延伸工程)、円筒状のガラス体に成型した後(ステップ216)、再度、脈理を除去し、組成の均一化を図る三方向目の均質化処理を実施することにより(ステップ218:第2の均質化処理工程)、三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスを得ることができる。
【0044】
前記ステップ200、202、204、206、208及び210はそれぞれ、一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法において前述したステップ100、102、104、106、108及び110と同様に行えばよい。
【0045】
図12はステップ212を原理的に示す概略説明図である。図12に示した如く、前記成型された球状ガラス体20を前記ガラス支持棒30から切り離し、均質化処理軸が変わるように再度ガラス支持棒30を取り付けることにより、該球状ガラス体20が持ち替えられる。図12において、42aは第1の均質化処理における均質化処理軸であり、42bは第2の均質化処理における均質化処理軸である。
【0046】
持ち替え方法は特に限定されず、軸を変えて均質化処理を施すことにより脈理除去が可能であるが、複数の均質化処理軸の交点において成す角を90℃に近付けることにより効率を高めることができ、直交する軸に対して均質化処理を行うことが最も効率が良く好適である。具体的には、図12に示した如く、ガラス支持棒30から切り離した球状ガラス体20を、略90度、例えば、80度〜100度の範囲で回転させ、第1の均質化処理軸42aと第2の均質化処理軸42bが略直交するように設置することが好ましい。
【0047】
図13はステップ214を原理的に示す概略説明図である。図13に示した如く、前記持ち替えた球状ガラス体20をバーナー34で加熱しつつ前記左右のチャック32a,32b間隔を広げることによりガラス体21が延伸される。
【0048】
図14はステップ216を原理的に示す概略説明図である。図14に示した如く、前記延伸したガラス体21に対して、前記左右のチャック32a,32bの回転数に差分を与え捻りながら、バーナー34を移動することにより、該ガラス体全体が円筒状に成型され、断面が略円形な棒状ガラス体23が得られる。
【0049】
前記成型された棒状ガラス体23に対し前記ステップ108と同様に均質化処理を施すことにより機械的に脈理が除去された三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスが製造される。図12〜14に示した如く、第2の均質化処理における軸42bは第1の均質化処理における軸42aとは略直交していることが好ましい。
前記均質化されたガラス体を前記ステップ110及びステップ112と同様に成型処理することにより(ステップ220:第4の成型工程)、円筒状等、所望の形状に成型された三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスが得られる。
【0050】
前記本発明方法により製造される一方向又は三方向に脈理がないシリカ・チタニアガラスは、非常に均質性が高く且つ機械的に脈理を除去することによって脈理が完全に消滅しており、EUVリソグラフィー用の反射光学材料又は反射型マスク材料として特に好適である。
【実施例】
【0051】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0052】
(実施例1)
四塩化珪素及び四塩化チタンを200mm間隔で置かれた10本の酸水素バーナーによって得られる酸水素火炎中に導入し、水平に設置され回転している、直径100mm、長さ2.5mのジルコニア製基体上に堆積、溶融して内径80mm、外径260mm、長さ2000mm、重量30kgの中空円筒状のシリカ・チタニアガラス多孔質体を得た。
【0053】
得られたシリカ・チタニアガラス多孔質体を真空炉内に縦置きして設置し、1600℃に加熱して透明な外径120mm、内径60mm、長さ1600mmの中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を得た(横型OVD法による中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体の製造工程)。シリカ・チタニアガラスを成長する際の四塩化珪素と四塩化チタンの流量割合を調整して、得られるシリカ・チタニアガラスの組成をシリカ分93質量%、チタニア分7質量%に調整した。
【0054】
得られた中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を円形断面が8個に円分割されるように半径に沿って長手方向に切断し、重量約3.5kgの扇柱状の棒状シリカ・チタニアガラス体を切り出した(切り出し工程)。得られた扇柱状のシリカ・チタニアガラス体からサンプルを切り出し、脈理構造を観察した結果、内周から外周に向かって等間隔の層状に0.1mmの周期で層状の脈理が認められた。図15は扇柱状の棒状ガラス体からのサンプルの切り出し方法を示す概略説明図であり、41はサンプルを示す。図17は、切り出したサンプル(縦約6cm×横約2cm×厚さ1cm)に対する、後述するシュリーレン装置を用いた脈理のシュリーレン像の観察結果を示す写真である。
【0055】
この扇柱状の棒状シリカ・チタニアガラス体の角部4箇所を5〜10mmずつ面取りを行い、かつ内周部の凹部がなくなるように略楕円状に加工した(除去処理工程)。得られた略楕円の長径は約50mm、短径は約30mmであった。
【0056】
前記加工したシリカ・チタニアガラス体の両端に線膨張係数5×10-7/℃のシリカガラスロッド支持棒を溶接し、支持棒を介して旋盤の両チャックに固定した。旋盤の両チャックを同期させつつ20rpmで回転させ、支持棒とシリカ・チタニアガラ体の左側の溶接部分近傍を酸水素バーナーで強熱して、シリカ・チタニアガラス体が溶解した事を確認してから、旋盤の右側のチャックの回転数を40rpmに上げ、両チャック間の回転数に差動を与え、楕円柱状のシリカ・チタニアガラス体をゆっくりと捻ることにより円柱状に成型しつつ、かつ両チャック間隔を詰めてガラス体の径を太めながら、バーナーを10mm/分の速度で右側に移動させ、ガラス体全体を直径約φ80mmの円筒状に成型した(第1の成型工程)。尚、この場合、両チャックの回転方向は同じである。
【0057】
シリカ・チタニアガラス体の成型が終了した後は左右のチャックの回転数を50rpmで同期させて回転しつつ、シリカ・チタニアガラス体の左端にバーナーを戻し、強熱して溶融帯域を形成した。溶融帯域が形成されたことを確認した後、右側の旋盤のチャックの回転を左側のチャックの回転方向と逆回転、60rpmで回転させ、強いせん断応力を与えて溶融帯域内を攪拌した。同時にバーナーを右方に10mm/分のゆっくりとした速度で移動させる事により溶融帯域を移動させ、シリカ・チタニアガラス体全体の均質化を行った(一方向目の均質化処理工程)。同様の操作で同方向に再度均質化処理を施し、合計2回の均質化処理を行った。
【0058】
前記均質化処理後、両チャックの回転方向を揃え、かつ50rpmで同期させて回転させ、バーナーをシリカ・チタニアガラス体の左端に戻し強熱して溶融した。シリカ・チタニアガラス体が溶融したことを確認した後、右側の旋盤のチャックをゆっくりと押し狭めてシリカ・チタニアガラス体を押し潰し、直径約140mmの球状に成型した(第2の成型工程)。
【0059】
前記成型工程を経た球状のガラス体の両端を支持棒から切り離し、一方の切断面を下にして内径φ160mmの成型用容器(グラファイト製円筒容器)内に入れ、成型用容器ごと真空炉内に設置し1800℃にて10分加熱して(成型用容器内での成型工程)、直径160mm、厚さ70mmのシリカ・チタニアガラス円盤を得た。
【0060】
得られた円盤の上下面に対して平行な面及び垂直な面からサンプルを切り出し平行平板に研磨した後、シュリーレン装置(溝尻光学製SCHLIEREN COMPACT 150)によって脈理観察を行った。図16は、シリカ・チタニアガラス円盤からのサンプルの切り出し方法を示す概略説明図であり、42は均質化処理軸、44は平行面から切り出されたサンプル、46は垂直面から切り出されたサンプルをそれぞれ示す。平行面から切り出したサンプル(縦約6cm×横約4cm×厚さ1cm)に対しては均質化処理軸方向のシュリーレン像を観察し、垂直面から切り出されたサンプル(縦約6cm×横約2cm×厚さ1cm)に対しては均質化処理軸と垂直方向のシュリーレン像を観察した。
【0061】
平行面のサンプルでは脈理は認められなかったが、垂直面から切り出したサンプルにおいては弱い脈理が観察され(図示せず)、一方向に脈理がない状態であった。なお、一般的に光学ガラスにおける脈理の測定には米軍軍事規格であるMIL-G-174が適用される。即ち、ピンホールから出る光をコリメートレンズで平行光にし、サンプルを照射し、その像を集光レンズで絞り込み、その焦点位置で目視観察する方法であるが、シュリーレン装置による脈理観察はより簡便にこの方法と同等の精度の測定が行えるため、普及している方法である。
【0062】
また、チタニア濃度が2、6、及び15質量%であり残部がSiO2であるシリカ・チタニアガラス体をそれぞれ作製し、実施例1と同様に一方向の均質化処理を行ったところ、実施例1と同様に一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスが得られることを確認した。
【0063】
(実施例2)
実施例1と同じ方法でシリカ分93質量%、チタニア分7質量%の中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製した。このシリカ・チタニアガラス体を実施例1と同様の方法で、切り出し工程、除去処理工程、第1の成型工程、2回の一方向目の均質化処理工程(第1の均質化処理工程)を実施した。
【0064】
均質化処理後、両チャックの回転方向を揃え、かつ50rpmで同期させて回転させ、バーナーをシリカ・チタニアガラス体の左端に戻し強熱して溶融した。シリカ・チタニアガラス体が溶融したことを確認した後、右側の旋盤のチャックをゆっくりと押し狭めてシリカ・チタニアガラス体を押し潰し、直径約130mmの球状に成型した(第2の成型工程)。
【0065】
切り離した球状シリカ・チタニアガラス体の一方の端面を下にして台上に置き、ガラス体の両側面に再度支持棒を溶接した。切り離したガラス体の両端を結ぶ軸が第1の均質化処理の軸であるから、新たに溶接した両支持棒を繋ぐ軸は第1の均質化の軸と直交していることになる(持ち替え工程)。両支持棒によりガラス体全体を同期させて20rpmで回転させながらバーナー火炎でガラス体全体を強加熱し、ガラス体全体を溶融した。ガラス体全体が溶融したことを確認した後、旋盤の両チャックを引き離し、ガラス体を延伸した(延伸工程)。
【0066】
延伸した形の不揃いなシリカ・チタニアガラス体を前記第1の成型工程と同様の操作で直径約φ70mmの円筒状のシリカ・チタニアガラス体に成型した(第3の成型工程)。このシリカ・チタニアガラス体に対し第1の均質化処理と同様の操作で均質化処理を施した(第2の均質化処理工程)。この場合の均質化処理における軸は第1の均質化処理における軸とは直交している。
【0067】
第2の均質化処理を終えたシリカ・チタニアガラス体を前記第2の成型工程と同様の操作で球状に成型した後、実施例1の成型用容器内での成型工程と同様の操作により真空炉内で円盤状に成型した(第4の成型工程)。得られたシリカ・チタニアガラス円盤はカットロスもあって実施例1よりは小さく、直径φ160mm、厚さ50mmであった。
【0068】
得られたシリカ・チタニアガラス円盤から実施例1と同様に平行面及び垂直面からサンプルを切り出し、平行平板に研磨してシュリーレン装置にて脈理観察を行った結果、どちらのサンプルについても脈理を認めず、3方向に脈理がない状態であった。平行面及び垂直面から切り出したサンプルの結果を図18及び図19にそれぞれ示す。なお、実施例2において図16に示したサンプルの均質化処理軸42は第2の均質化処理における軸である。
【0069】
また、チタニア濃度が2、6、8及び15質量%であり残部がSiO2であるシリカ・チタニアガラス塊をそれぞれ作製し、実施例2と同様に均質化処理を行ったところ、実施例2と同様に三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスが得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の手順の大略を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ100における多孔質ガラス体の作製方法の一例を示す概略説明図である。
【図3】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ100により得られるシリカ・チタニアガラス体を示す概略説明図であり、(a)は斜視概略説明図、(b)は断面概略説明図である。
【図4】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ102を原理的に示す概略説明図であり、(a)は斜視概略説明図、(b)は断面概略説明図である。
【図5】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ104を原理的に示す概略説明図である。
【図6】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ106を原理的に示す概略説明図であり、(a)はステップ106で用いられる装置を含む概略説明図であり、(b)はステップ106による棒状ガラス体の形状の変化を示す概略説明図である。
【図7】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ108を原理的に示す概略説明図である。
【図8】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ110を原理的に示す概略説明図である。
【図9】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ112を原理的に示す概略説明図である。
【図10】本発明の円盤状のシリカ・チタニアガラスの概略説明図である。
【図11】本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の手順の大略を示すフローチャートである。
【図12】本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ212を原理的に示す概略説明図である。
【図13】本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ214を原理的に示す概略説明図である。
【図14】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ216を原理的に示す概略説明図である。
【図15】実施例1の均質化処理前のサンプルの切り出し方法を示す概略説明図である。
【図16】実施例1及び2の均質化処理後のサンプルの切り出し方法を示す概略説明図である。
【図17】実施例1の均質化処理前のサンプルの結果を示す写真である。
【図18】実施例2の平行面から切り出したサンプルにおける脈理観察の結果を示す写真である。
【図19】実施例2の垂直面から切り出したサンプルにおける脈理観察の結果を示す写真である。
【符号の説明】
【0071】
10:多孔質ガラス体、11:中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体、12:扇柱状の棒状ガラス体、13:脈理、14:除去処理された棒状ガラス体、16:成型された棒状ガラス体、18:均質化されたガラス体、20:球状ガラス体、21:延伸されたガラス体、22:成型されたシリカ・チタニアガラス、23:成型された棒状ガラス体、24:円盤状のシリカ・チタニアガラス、30:ガラス支持棒、31:基体、32a,32b:チャック、33,34:バーナー、36:成型炉、38:加熱手段、40:成型用容器、41:均質化処理前のサンプル、42:均質化処理軸、42a:第1の均質化処理軸、42b:第2の均質化処理軸、44:平行面から切り出したサンプル、46:垂直面から切り出したサンプル、L:切断方向。
【技術分野】
【0001】
本発明は波長13.5nmの超短波長紫外線を光源とするEUVリソグラフィー(Extreme Ultra-Violet Lithography)の反射光学系を構成するミラー基板や反射型マスクの基板に好適な均質で脈理のないチタニアを含有するシリカガラス(以下、チタニアを含有するシリカガラスをシリカ・チタニアガラスと称する)の製造方法及び一方向あるいは三方向に脈理の存在しないシリカ・チタニアガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造技術開発は留まることを知らないが、線幅が45nmよりも細い、次々世代の露光技術として、波長13.5nmのEUV光を用いたEUVリソグラフィー技術が最も有力視されている。このような超短波長の光は適切な透過材料が存在しないため、光学系は全て反射系で構成され、また、マスク材料も反射型マスクが用いられると考えられている。
【0003】
このような光学ミラー及びマスク基板の材料は露光操作中に熱膨張等で変形しては困るために、使用温度範囲での線膨張係数が極めて小さい超低膨張ガラスが必要とされる。また、これらの基板面はサブナノメーターのオーダーで平面もしくは球面、非球面に研磨できなければならない。このような超低膨張ガラスとしては、特許文献1に示されるようにTiO2濃度が6〜8質量%程度、残部がSiO2で構成されるシリカ・チタニアガラスが挙げられ、該シリカ・チタニアガラスは約20〜35℃の間で約±20ppb/℃の範囲の一様な線膨張係数を有する。
【0004】
このようなシリカ・チタニアガラスを製造する方法としては、シリカ原料である揮発性珪素化合物(四塩化珪素や環状シロキサン等)とチタニア原料である揮発性チタン化合物(四塩化チタンやチタンアルコキシド)をバーナー火炎中に導入して、回転する基体上に、原料の火炎加水分解によって生じるシリカ微粒子とチタニア微粒子を同時に堆積、溶融して製造する直接法が一般的である。
【0005】
この方法は所謂合成シリカガラスを製造する方法と同一であるが、得られるシリカ・チタニアガラスの高温での粘度がシリカガラスの粘度に比べて10〜20%低いため、得られるガラスを横向きに保持する横型直接法によって成長させることは困難で、下から上に徐々にガラスを成長させる縦型法が主たる方法である。このような縦型直接法によって製造されたシリカ・チタニアガラスはガラス成長中の基体の回転に伴う成長縞が層状の脈理を形成する。
【0006】
このような脈理部分においては、シリカ・チタニアの構成割合が微妙に変化するために線膨張係数が変化していると考えられる上、硬さも微妙に異なるため、高精度な研磨を施した場合、脈理部分だけ凹凸が出来るという不具合が生じ、EUVリソグラフィー用光学系に要求されるサブナノメーターオーダーの平坦面を形成するには甚だ不都合である。
【0007】
このような不都合を解消するために特許文献2ではシリカ・チタニアガラス成長時の温度条件を極めて均一に設定し、存在する脈理を屈折率差で10-7以下と極めて”薄く”することで解決しようとしているが、本発明は温度条件等を均一に成長させるのではなく、機械的に脈理を除去することによって完全に脈理を消滅させることを目的としている。
【0008】
また、このような脈理は成長面に平行に形成されるものであるから、平面状に加工して使用される平面ミラーやマスク材料としては使用することが可能であると思われるが、実際には成長面は完全には平行ではなく、若干の凹凸を持った面であることが多く、そのような場合には、完全な平面を形成した場合に、凹凸部分が切り出され、脈理として観察され、不具合を生じることがある。
【特許文献1】国際公開第03/077038号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0027555号明細書
【特許文献3】特開平7−267662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、シリカ・チタニアガラス基板においてEUVリソグラフィー用の光学系に許されない脈理を一方向あるいは三方向に除去し、シリカ・チタニアガラスの均質性を向上させることができるシリカ・チタニアガラスの製造方法及び一方向あるいは三方向に脈理の存在しないシリカ・チタニアガラスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
シリカ・チタニアガラスの持つ脈理を完全に除去するために、本発明者らが鋭意検討を加えた結果、脈理を有するシリカガラスの脈理除去、均質化手法である帯域溶融法(特許文献3)をシリカ・チタニアガラスの脈理方向に適切に施すことによって同様の結果が得られることを見出した。
【0011】
また、出発原料であるシリカ・チタニアガラスの製造方法として、直接法よりも一度多孔質ガラス体を経由するスート法の方が、成長温度が低いことが理由と考えられるが、得られたシリカ・チタニアガラス体に内在する脈理の強度が直接法で作成されたシリカ・チタニアガラスの脈理強度よりも弱いことが判った。このため、均質化するための出発材料の製造方法としてはスート法が好ましいことが判った。更に、得られたシリカ・チタニアガラスにおいて層状脈理形状が揃っている横型OVD法により作られたシリカ・チタニアガラスが本発明において好ましいことが判った。
【0012】
即ち、本発明のシリカ・チタニアガラスの製造方法の第一の態様は、一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を透明化し、同心円状の層状脈理を有する円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、前記シリカ・チタニアガラス体から円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出す工程と、前記棒状ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、前記脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施す均質化処理工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明のシリカ・チタニアガラスの製造方法の第二の態様は、一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体から前記基体を取り外し、加熱炉内で透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って長手方向に切断し、円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を形成する切り出し工程と、前記棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し、断面が略円形状又は楕円形状の棒状ガラス体を形成する除去処理工程と、前記棒状ガラス体の両端を一対の回転可能な保持手段で保持し、バーナーで該ガラス体の一部を加熱しながら該一対の回転可能な保持手段に回転差を与えつつ該バーナーを移動して断面が略円形な棒状ガラス体に成型する第1の成型工程と、前記成型された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該棒状ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る均質化処理工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
前記均質化処理工程後、前記均質化された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段間の距離を狭めることにより該棒状ガラス体の径を大きくする第2の成型工程を含むことが好ましい。
【0015】
前記棒状ガラス体を前記一対の回転可能な保持手段で保持する際、0〜900℃における線膨張係数が0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下のガラス支持棒を介して保持することが好適である。
【0016】
本発明のシリカ・チタニアガラスの製造方法の第三の態様は、三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を透明化し、同心円状の層状脈理を有する円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、前記シリカ・チタニアガラス体から円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出す工程と、前記棒状ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、前記脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施す第1の均質化処理工程と、前記均質化処理工程後のガラス体に対し均質化処理軸の方向を変えて帯域溶融法による均質化処理を施す第2の均質化処理工程と、を含むことを特徴とする。前記第1の均質化処理工程における第1の均質化処理軸と前記第2の均質化処理工程における第2の均質化処理軸とが略直交していること、例えば、第1の均質化処理軸と第2の均質化処理軸との成す角が80度以上100度以下であることがより効率的である。
【0017】
本発明のシリカ・チタニアガラスの製造方法の第四の態様は、三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体から前記基体を取り外し、加熱炉内で透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って長手方向に切断し、同心円状の層状脈理を有する棒状ガラス体を形成する切り出し工程と、前記棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し、断面が略円形状又は楕円形状の棒状ガラス体を形成する除去処理工程と、前記棒状ガラス体の両端を0〜900℃における線膨張係数が0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下のガラス支持棒を介して一対の回転可能な保持手段で保持し、バーナーで該ガラス体の一部を加熱しながら該一対の回転可能な保持手段に回転差を与えつつ該バーナーを移動して断面が略円形な棒状ガラス体に成型する第1の成型工程と、前記成型された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該棒状ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る第1の均質化処理工程と、前記均質化された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段間の距離を狭めることにより該棒状ガラス体の径を大きくし、球状ガラス体に成型する第2の成型工程と、前記成型された球状ガラス体を前記ガラス支持棒から切り離し、略90度回転したのち再度ガラス支持棒を取り付ける持ち替え工程と、前記持ち替えた球状ガラス体をバーナーで加熱しつつ前記一対の回転可能な保持手段の間隔を広げることにより延伸する延伸工程と、前記延伸したガラス体に対して、前記一対の回転可能な保持手段に回転差を与えながら、バーナーを移動し、該ガラス体全体を円筒状に成型する第3の成型工程と、前記得られた円筒状ガラス体の一部を強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る第2の均質化処理工程と、前記得られたガラス体の一部をバーナーで加熱しつつ円筒状に成型する第4の成型工程と、を含むことを特徴とする。なお、本発明において、球状とは、円球、楕円球及びそれらに類似する形状を含むものである。
【0018】
本発明方法において、前記均質化処理を複数回繰り返すことが好ましい。
【0019】
前記均質化処理工程において前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与える方法としては、前記一対の回転可能な保持手段を逆回転する方法が好ましい。
【0020】
前記シリカ・チタニアガラスの組成は、チタニア濃度が2質量%以上15質量%以下で残部がSiO2であることが好ましい。
【0021】
前記均質化処理を施す棒状ガラス体の外径が、30mm以上150mm以下であることが好適である。
【0022】
前記一対の回転可能な保持手段としては、旋盤に設けられた左右のチャックを用いることができる。
【0023】
本発明のシリカ・チタニアガラスは、本発明方法により製造される一方向又は三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスであって、機械的に脈理が除去されてなることを特徴とする。
【0024】
本発明のシリカ・チタニアガラスは、EUVリソグラフィー用の反射光学材料又は反射型マスク材料として好適である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、EUVリソグラフィーの反射光学系を構成するミラー基板や反射型マスクの基板に好適な高均質で一方向又は三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0027】
図1は、本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の手順の大略を示すフローチャートである。図2〜図10は本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例を原理的に示す概略説明図である。
【0028】
図1に示すように、まず、横型OVD法とよばれる、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製した後、該多孔質ガラス体を透明ガラス化する方法により、中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する(ステップ100)。
【0029】
図2はステップ100における多孔質ガラス体の作製方法の一例を示す概略説明図である。図2に示した如く、水平に保持された基体31に対して垂直にバーナー33を設置し、酸素、水素、シリカ原料(例えば、四塩化珪素や環状シロキサン等の揮発性珪素化合物)及びチタニア原料(例えば、四塩化チタンやチタンアルコキシド等の揮発性チタン化合物)を該バーナー23に導入し、生じたシリカ及びチタニア微粒子(スート)を回転する基体31上に層状に堆積することにより、円筒状の多孔質ガラス体10が形成される。
【0030】
前記形成された多孔質ガラス体10から基体31を取り外し、該多孔質ガラス体10を電気炉等の加熱炉で高温加熱処理し透明ガラス化することにより、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体が得られる。図3はステップ100により得られるシリカ・チタニアガラス体を示す概略説明図であり、(a)は斜視概略説明図、(b)は断面概略説明図であり、11は中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体、13は脈理である。図3に示した如く、ステップ100により同心円状の層状脈理13を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体11が得られる。
【0031】
前記得られたシリカ・チタニアガラス体11の組成は特に限定されないが、チタニアとSiO2からなり、チタニア濃度は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4重量%以上、さらに好ましくは6質量%以上、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0032】
次に、前記得られたシリカ・チタニアガラス体11から、円弧状の層状脈理13を有する棒状ガラス体を切り出す(ステップ102:切り出し工程)。図4は、ステップ102を原理的に示す概略説明図であり、(a)は斜視概略説明図、(b)は断面概略説明図であり、12は扇柱状の棒状ガラス体である。棒状ガラス体の切り出し方法としては、該棒状ガラス体が円弧状の層状脈理を有する状態であれば特に限定はないが、図4に示した如く、中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体11を、円形断面が円分割されるように半径に沿って長手方向に切断することが好ましい。分割数は複数であれば特に限定されないが、4分割以上が好ましい。なお、図4においてはガラス体を6個に略等分割した場合の例を示したが、等分割でなくてもよい。
【0033】
前記切り出された棒状ガラス体に対し、層状脈理と垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施すことにより、一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスを得ることができるが、具体的には、前記棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し(ステップ104:除去処理工程)、断面が略円形な棒状ガラス体に成型した後(ステップ106:第1の成型工程)、脈理を除去し、組成の均一化を図る一方向目の均質化処理を実施する(ステップ108:第1の均質化処理工程)ことが望ましい。
【0034】
図5は、ステップ104を原理的に示す断面概略説明図であり、14は除去処理された棒状ガラス体、Lは切断方向を示す。図5に示した如く、除去処理工程において、扇柱状の棒状ガラス体12の角部及び凹部が除去処理され、断面が略円形状又は略楕円形状の棒状ガラス体が形成される。本発明において、前記棒状ガラス体の内周部に凹部が存在すると次工程である第1の成型工程において、泡をかみやすくなる為、角部の面取りに加えて、棒状ガラス体の内周面の凹部を除去し、断面が円形状又は楕円形状に近づくように加工することが好適である。除去処理加工の形状は特に限定されるものではないが、図5に示した如く、棒状ガラス体の内周面の凹部が完全に無くなるように凹面が除去されることが好ましい。
【0035】
図6は、ステップ106を原理的に示す概略説明図であり、(a)は成型工程で用いられる装置を含む概略説明図であり、(b)はステップ106による棒状ガラス体の形状の変化を示す概略説明図である。図6に示した如く、前記除去処理された棒状ガラス体14は、該棒状ガラス体14の長手方向の両端部を一対の回転可能な保持手段、例えば、旋盤のチャック32a,32bで保持し、バーナー34で該ガラス体14の一部を加熱しながら該旋盤の左右のチャック32a,32bに回転差を与え、該棒状ガラス体14を捻りながら該バーナー34を移動することにより、断面が略円形な円筒状の棒状ガラス体16に成型される。
【0036】
前記棒状ガラス体14を旋盤のチャック32a,32bで保持する際、0〜900℃における線膨張係数が0×10-7/℃以上6×10-7/℃以下のガラス支持棒30を介して保持することが好ましい。本発明者らはシリカ・チタニアガラスに帯域溶融法による均質化処理を施す際、旋盤に把持する際の支持棒の線膨張係数が処理物であるシリカ・チタニアガラスの線膨張係数と大きく異なる場合、線膨張係数の不適合によりクラック等が生じることがある為、支持棒の材質についても検討を加えたが、クラックが生じない線膨張係数の範囲として、3.0×10-7/℃±3.0×10-7/℃の範囲、即ち、0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下の線膨張係数の材料であることが必要であることを見出した。シリカガラスは線膨張係数が0℃〜900℃の温度領域で5.0×10-7/℃であるため、ガラス支持棒として特に好ましいものである。
【0037】
加えて、シリカ・チタニアガラスは粘度がシリカガラスよりも10%程低いことから、帯域溶融法により均質化する際に、均質化径が細すぎると自重による変形が生じ、安定した溶融帯域の保持が困難であることが判った。従って、前記成型された円筒状のガラス体16の外径を30mm以上にすることが重要である。径を太くする場合は特別制限はないが、溶融帯域内に強いせん断応力を生じさせる為には径が太すぎる場合、旋盤のチャックのトルクが過大になりすぎて機械的に大掛かりになりすぎるため、径の最大値は150mm以下であることが好ましい。
【0038】
図7はステップ108を原理的に示す概略説明図である。図7に示した如く、前記成型された棒状ガラス体16の一部をバーナー34で強熱しつつ、前記左右のチャック32a,32bに大きな回転差を与え捻りながらバーナー34を移動させることにより該棒状ガラス体16の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る均質化処理が行われる。図7において、42は均質化処理軸である。左右のチャック32a,32bに大きな回転差を与える方法としては、例えば、左右のチャック32a,32bを逆回転することが好適である。この均質化処理は1回以上行えばよいが、2回以上繰り返すことが脈理の除去及び組成の均一化により効果的である。
【0039】
前記均質化処理工程後、前記得られたガラス体を加熱しながら成型することにより、円筒状等、所望の形状に成型されたシリカ・チタニアガラス体を得ることができる。図8〜図10は均質化されたガラス体の成型方法の一例を示す概略説明図である。図8に示した如く、前記均質化された棒状ガラス体18の一部をバーナー34で強熱しつつ、前記旋盤の両チャック32a,32b間の距離を狭めることにより、該棒状ガラス体18の径を大きくし、球状ガラス体20に成型した後(ステップ110:第2の成型工程)、前記成型された球状ガラス体20を前記ガラス支持棒30から切り離す。なお、図8においては球状ガラス体として円球状のガラス体を示したが、球状とは円球状のみならず、ラクビーボール型形状等の楕円球形状等の種々の球状形態をも含むものである。
【0040】
その後、成型炉36内の成型用容器40に前記切り出されたガラス体20を設置し、加熱成型することにより、所望の形状に成型されたシリカ・チタニアガラス22が得られる(ステップ112)。図9はステップ112を原理的に示す概略説明図であり、36は成型炉、38は加熱手段、40は成型用容器である。図10は上記方法により得られた円盤状に成型されたシリカ・チタニアガラス24の一例を示す模式図である。前記本発明方法により機械的に脈理が除去された一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスを製造することができる。
【0041】
以下、本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法について具体的に説明する。図11は、本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の手順の大略を示すフローチャートである。図12〜図14は本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例を原理的に示す概略説明図である。
【0042】
本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法は、横型OVD法により同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製し、該シリカ・チタニアガラス体から、円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出し、脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を、軸を変えて施すものである。
【0043】
具体的には、図11に示した如く、横型OVD法により同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を製造し(ステップ200)、該シリカ・チタニアガラス体から、円弧状の層状脈理を有する扇柱状の棒状ガラス体を切り出した後(ステップ202:切り出し工程)、該棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し(ステップ204:除去処理工程)、断面が略円形な棒状ガラス体に成型した後(ステップ206:第1の成型工程)、脈理を除去し、組成の均一化を図る一方向目の均質化処理を実施する(ステップ208:第1の均質化処理工程)。その後、均質化された棒状ガラス体を球状ガラス体に成型し(ステップ210:第2の成型工程)、軸を変えるように該球状ガラス体を持ち替えた後(ステップ212:持ち替え工程)、該球状ガラス体を加熱しながら延伸し(ステップ214:延伸工程)、円筒状のガラス体に成型した後(ステップ216)、再度、脈理を除去し、組成の均一化を図る三方向目の均質化処理を実施することにより(ステップ218:第2の均質化処理工程)、三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスを得ることができる。
【0044】
前記ステップ200、202、204、206、208及び210はそれぞれ、一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法において前述したステップ100、102、104、106、108及び110と同様に行えばよい。
【0045】
図12はステップ212を原理的に示す概略説明図である。図12に示した如く、前記成型された球状ガラス体20を前記ガラス支持棒30から切り離し、均質化処理軸が変わるように再度ガラス支持棒30を取り付けることにより、該球状ガラス体20が持ち替えられる。図12において、42aは第1の均質化処理における均質化処理軸であり、42bは第2の均質化処理における均質化処理軸である。
【0046】
持ち替え方法は特に限定されず、軸を変えて均質化処理を施すことにより脈理除去が可能であるが、複数の均質化処理軸の交点において成す角を90℃に近付けることにより効率を高めることができ、直交する軸に対して均質化処理を行うことが最も効率が良く好適である。具体的には、図12に示した如く、ガラス支持棒30から切り離した球状ガラス体20を、略90度、例えば、80度〜100度の範囲で回転させ、第1の均質化処理軸42aと第2の均質化処理軸42bが略直交するように設置することが好ましい。
【0047】
図13はステップ214を原理的に示す概略説明図である。図13に示した如く、前記持ち替えた球状ガラス体20をバーナー34で加熱しつつ前記左右のチャック32a,32b間隔を広げることによりガラス体21が延伸される。
【0048】
図14はステップ216を原理的に示す概略説明図である。図14に示した如く、前記延伸したガラス体21に対して、前記左右のチャック32a,32bの回転数に差分を与え捻りながら、バーナー34を移動することにより、該ガラス体全体が円筒状に成型され、断面が略円形な棒状ガラス体23が得られる。
【0049】
前記成型された棒状ガラス体23に対し前記ステップ108と同様に均質化処理を施すことにより機械的に脈理が除去された三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスが製造される。図12〜14に示した如く、第2の均質化処理における軸42bは第1の均質化処理における軸42aとは略直交していることが好ましい。
前記均質化されたガラス体を前記ステップ110及びステップ112と同様に成型処理することにより(ステップ220:第4の成型工程)、円筒状等、所望の形状に成型された三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスが得られる。
【0050】
前記本発明方法により製造される一方向又は三方向に脈理がないシリカ・チタニアガラスは、非常に均質性が高く且つ機械的に脈理を除去することによって脈理が完全に消滅しており、EUVリソグラフィー用の反射光学材料又は反射型マスク材料として特に好適である。
【実施例】
【0051】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0052】
(実施例1)
四塩化珪素及び四塩化チタンを200mm間隔で置かれた10本の酸水素バーナーによって得られる酸水素火炎中に導入し、水平に設置され回転している、直径100mm、長さ2.5mのジルコニア製基体上に堆積、溶融して内径80mm、外径260mm、長さ2000mm、重量30kgの中空円筒状のシリカ・チタニアガラス多孔質体を得た。
【0053】
得られたシリカ・チタニアガラス多孔質体を真空炉内に縦置きして設置し、1600℃に加熱して透明な外径120mm、内径60mm、長さ1600mmの中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を得た(横型OVD法による中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体の製造工程)。シリカ・チタニアガラスを成長する際の四塩化珪素と四塩化チタンの流量割合を調整して、得られるシリカ・チタニアガラスの組成をシリカ分93質量%、チタニア分7質量%に調整した。
【0054】
得られた中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を円形断面が8個に円分割されるように半径に沿って長手方向に切断し、重量約3.5kgの扇柱状の棒状シリカ・チタニアガラス体を切り出した(切り出し工程)。得られた扇柱状のシリカ・チタニアガラス体からサンプルを切り出し、脈理構造を観察した結果、内周から外周に向かって等間隔の層状に0.1mmの周期で層状の脈理が認められた。図15は扇柱状の棒状ガラス体からのサンプルの切り出し方法を示す概略説明図であり、41はサンプルを示す。図17は、切り出したサンプル(縦約6cm×横約2cm×厚さ1cm)に対する、後述するシュリーレン装置を用いた脈理のシュリーレン像の観察結果を示す写真である。
【0055】
この扇柱状の棒状シリカ・チタニアガラス体の角部4箇所を5〜10mmずつ面取りを行い、かつ内周部の凹部がなくなるように略楕円状に加工した(除去処理工程)。得られた略楕円の長径は約50mm、短径は約30mmであった。
【0056】
前記加工したシリカ・チタニアガラス体の両端に線膨張係数5×10-7/℃のシリカガラスロッド支持棒を溶接し、支持棒を介して旋盤の両チャックに固定した。旋盤の両チャックを同期させつつ20rpmで回転させ、支持棒とシリカ・チタニアガラ体の左側の溶接部分近傍を酸水素バーナーで強熱して、シリカ・チタニアガラス体が溶解した事を確認してから、旋盤の右側のチャックの回転数を40rpmに上げ、両チャック間の回転数に差動を与え、楕円柱状のシリカ・チタニアガラス体をゆっくりと捻ることにより円柱状に成型しつつ、かつ両チャック間隔を詰めてガラス体の径を太めながら、バーナーを10mm/分の速度で右側に移動させ、ガラス体全体を直径約φ80mmの円筒状に成型した(第1の成型工程)。尚、この場合、両チャックの回転方向は同じである。
【0057】
シリカ・チタニアガラス体の成型が終了した後は左右のチャックの回転数を50rpmで同期させて回転しつつ、シリカ・チタニアガラス体の左端にバーナーを戻し、強熱して溶融帯域を形成した。溶融帯域が形成されたことを確認した後、右側の旋盤のチャックの回転を左側のチャックの回転方向と逆回転、60rpmで回転させ、強いせん断応力を与えて溶融帯域内を攪拌した。同時にバーナーを右方に10mm/分のゆっくりとした速度で移動させる事により溶融帯域を移動させ、シリカ・チタニアガラス体全体の均質化を行った(一方向目の均質化処理工程)。同様の操作で同方向に再度均質化処理を施し、合計2回の均質化処理を行った。
【0058】
前記均質化処理後、両チャックの回転方向を揃え、かつ50rpmで同期させて回転させ、バーナーをシリカ・チタニアガラス体の左端に戻し強熱して溶融した。シリカ・チタニアガラス体が溶融したことを確認した後、右側の旋盤のチャックをゆっくりと押し狭めてシリカ・チタニアガラス体を押し潰し、直径約140mmの球状に成型した(第2の成型工程)。
【0059】
前記成型工程を経た球状のガラス体の両端を支持棒から切り離し、一方の切断面を下にして内径φ160mmの成型用容器(グラファイト製円筒容器)内に入れ、成型用容器ごと真空炉内に設置し1800℃にて10分加熱して(成型用容器内での成型工程)、直径160mm、厚さ70mmのシリカ・チタニアガラス円盤を得た。
【0060】
得られた円盤の上下面に対して平行な面及び垂直な面からサンプルを切り出し平行平板に研磨した後、シュリーレン装置(溝尻光学製SCHLIEREN COMPACT 150)によって脈理観察を行った。図16は、シリカ・チタニアガラス円盤からのサンプルの切り出し方法を示す概略説明図であり、42は均質化処理軸、44は平行面から切り出されたサンプル、46は垂直面から切り出されたサンプルをそれぞれ示す。平行面から切り出したサンプル(縦約6cm×横約4cm×厚さ1cm)に対しては均質化処理軸方向のシュリーレン像を観察し、垂直面から切り出されたサンプル(縦約6cm×横約2cm×厚さ1cm)に対しては均質化処理軸と垂直方向のシュリーレン像を観察した。
【0061】
平行面のサンプルでは脈理は認められなかったが、垂直面から切り出したサンプルにおいては弱い脈理が観察され(図示せず)、一方向に脈理がない状態であった。なお、一般的に光学ガラスにおける脈理の測定には米軍軍事規格であるMIL-G-174が適用される。即ち、ピンホールから出る光をコリメートレンズで平行光にし、サンプルを照射し、その像を集光レンズで絞り込み、その焦点位置で目視観察する方法であるが、シュリーレン装置による脈理観察はより簡便にこの方法と同等の精度の測定が行えるため、普及している方法である。
【0062】
また、チタニア濃度が2、6、及び15質量%であり残部がSiO2であるシリカ・チタニアガラス体をそれぞれ作製し、実施例1と同様に一方向の均質化処理を行ったところ、実施例1と同様に一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスが得られることを確認した。
【0063】
(実施例2)
実施例1と同じ方法でシリカ分93質量%、チタニア分7質量%の中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製した。このシリカ・チタニアガラス体を実施例1と同様の方法で、切り出し工程、除去処理工程、第1の成型工程、2回の一方向目の均質化処理工程(第1の均質化処理工程)を実施した。
【0064】
均質化処理後、両チャックの回転方向を揃え、かつ50rpmで同期させて回転させ、バーナーをシリカ・チタニアガラス体の左端に戻し強熱して溶融した。シリカ・チタニアガラス体が溶融したことを確認した後、右側の旋盤のチャックをゆっくりと押し狭めてシリカ・チタニアガラス体を押し潰し、直径約130mmの球状に成型した(第2の成型工程)。
【0065】
切り離した球状シリカ・チタニアガラス体の一方の端面を下にして台上に置き、ガラス体の両側面に再度支持棒を溶接した。切り離したガラス体の両端を結ぶ軸が第1の均質化処理の軸であるから、新たに溶接した両支持棒を繋ぐ軸は第1の均質化の軸と直交していることになる(持ち替え工程)。両支持棒によりガラス体全体を同期させて20rpmで回転させながらバーナー火炎でガラス体全体を強加熱し、ガラス体全体を溶融した。ガラス体全体が溶融したことを確認した後、旋盤の両チャックを引き離し、ガラス体を延伸した(延伸工程)。
【0066】
延伸した形の不揃いなシリカ・チタニアガラス体を前記第1の成型工程と同様の操作で直径約φ70mmの円筒状のシリカ・チタニアガラス体に成型した(第3の成型工程)。このシリカ・チタニアガラス体に対し第1の均質化処理と同様の操作で均質化処理を施した(第2の均質化処理工程)。この場合の均質化処理における軸は第1の均質化処理における軸とは直交している。
【0067】
第2の均質化処理を終えたシリカ・チタニアガラス体を前記第2の成型工程と同様の操作で球状に成型した後、実施例1の成型用容器内での成型工程と同様の操作により真空炉内で円盤状に成型した(第4の成型工程)。得られたシリカ・チタニアガラス円盤はカットロスもあって実施例1よりは小さく、直径φ160mm、厚さ50mmであった。
【0068】
得られたシリカ・チタニアガラス円盤から実施例1と同様に平行面及び垂直面からサンプルを切り出し、平行平板に研磨してシュリーレン装置にて脈理観察を行った結果、どちらのサンプルについても脈理を認めず、3方向に脈理がない状態であった。平行面及び垂直面から切り出したサンプルの結果を図18及び図19にそれぞれ示す。なお、実施例2において図16に示したサンプルの均質化処理軸42は第2の均質化処理における軸である。
【0069】
また、チタニア濃度が2、6、8及び15質量%であり残部がSiO2であるシリカ・チタニアガラス塊をそれぞれ作製し、実施例2と同様に均質化処理を行ったところ、実施例2と同様に三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスが得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の手順の大略を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ100における多孔質ガラス体の作製方法の一例を示す概略説明図である。
【図3】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ100により得られるシリカ・チタニアガラス体を示す概略説明図であり、(a)は斜視概略説明図、(b)は断面概略説明図である。
【図4】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ102を原理的に示す概略説明図であり、(a)は斜視概略説明図、(b)は断面概略説明図である。
【図5】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ104を原理的に示す概略説明図である。
【図6】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ106を原理的に示す概略説明図であり、(a)はステップ106で用いられる装置を含む概略説明図であり、(b)はステップ106による棒状ガラス体の形状の変化を示す概略説明図である。
【図7】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ108を原理的に示す概略説明図である。
【図8】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ110を原理的に示す概略説明図である。
【図9】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ112を原理的に示す概略説明図である。
【図10】本発明の円盤状のシリカ・チタニアガラスの概略説明図である。
【図11】本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の手順の大略を示すフローチャートである。
【図12】本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ212を原理的に示す概略説明図である。
【図13】本発明の三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ214を原理的に示す概略説明図である。
【図14】本発明の一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法の工程順の一例におけるステップ216を原理的に示す概略説明図である。
【図15】実施例1の均質化処理前のサンプルの切り出し方法を示す概略説明図である。
【図16】実施例1及び2の均質化処理後のサンプルの切り出し方法を示す概略説明図である。
【図17】実施例1の均質化処理前のサンプルの結果を示す写真である。
【図18】実施例2の平行面から切り出したサンプルにおける脈理観察の結果を示す写真である。
【図19】実施例2の垂直面から切り出したサンプルにおける脈理観察の結果を示す写真である。
【符号の説明】
【0071】
10:多孔質ガラス体、11:中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体、12:扇柱状の棒状ガラス体、13:脈理、14:除去処理された棒状ガラス体、16:成型された棒状ガラス体、18:均質化されたガラス体、20:球状ガラス体、21:延伸されたガラス体、22:成型されたシリカ・チタニアガラス、23:成型された棒状ガラス体、24:円盤状のシリカ・チタニアガラス、30:ガラス支持棒、31:基体、32a,32b:チャック、33,34:バーナー、36:成型炉、38:加熱手段、40:成型用容器、41:均質化処理前のサンプル、42:均質化処理軸、42a:第1の均質化処理軸、42b:第2の均質化処理軸、44:平行面から切り出したサンプル、46:垂直面から切り出したサンプル、L:切断方向。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、
シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、
前記シリカ・チタニアガラス体から円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出す工程と、
前記棒状ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、前記脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施す均質化処理工程と、を含むことを特徴とするシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項2】
一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、
シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体から前記基体を取り外し、加熱炉内で透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、
前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って長手方向に切断し、円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を形成する切り出し工程と、
前記棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し、断面が略円形状又は楕円形状の棒状ガラス体を形成する除去処理工程と、
前記棒状ガラス体の両端を一対の回転可能な保持手段で保持し、バーナーで該ガラス体の一部を加熱しながら該一対の回転可能な保持手段に回転差を与えつつ該バーナーを移動して断面が略円形な棒状ガラス体に成型する第1の成型工程と、
前記成型された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該棒状ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る均質化処理工程と、を含むことを特徴とするシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項3】
前記均質化処理工程後、前記均質化された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段間の距離を狭めることにより該棒状ガラス体の径を大きくする第2の成型工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項4】
前記棒状ガラス体を前記一対の回転可能な保持手段で保持する際、0〜900℃における線膨張係数が0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下のガラス支持棒を介して保持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項5】
三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、
シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、
前記シリカ・チタニアガラス体から円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出す工程と、
前記棒状ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、前記脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施す第1の均質化処理工程と、
前記均質化処理工程後のガラス体に対し均質化処理軸の方向を変えて帯域溶融法による均質化処理を施す第2の均質化処理工程と、を含むことを特徴とするシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項6】
三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、
シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体から前記基体を取り外し、加熱炉内で透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、
前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って長手方向に切断し、円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を形成する切り出し工程と、
前記棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し、断面が略円形状又は楕円形状の棒状ガラス体を形成する除去処理工程と、
前記棒状ガラス体の両端を0〜900℃における線膨張係数が0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下のガラス支持棒を介して一対の回転可能な保持手段で保持し、バーナーで該ガラス体の一部を加熱しながら該一対の回転可能な保持手段に回転差を与えつつ該バーナーを移動して断面が略円形な棒状ガラス体に成型する第1の成型工程と、
前記成型された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該棒状ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る第1の均質化処理工程と、
前記均質化された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段間の距離を狭めることにより該棒状ガラス体の径を大きくし、球状ガラス体に成型する第2の成型工程と、
前記成型された球状ガラス体を前記ガラス支持棒から切り離し、略90度回転したのち再度ガラス支持棒を取り付ける持ち替え工程と、
前記持ち替えた球状ガラス体をバーナーで加熱しつつ前記一対の回転可能な保持手段の間隔を広げることにより延伸する延伸工程と、
前記延伸したガラス体に対して、前記一対の回転可能な保持手段に回転差を与えながら、バーナーを移動し、該ガラス体全体を円筒状に成型する第3の成型工程と、
前記得られた円筒状ガラス体の一部を強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る第2の均質化処理工程と、
前記得られたガラス体の一部をバーナーで加熱しつつ円筒状に成型する第4の成型工程と、を含むことを特徴とするシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項7】
前記均質化処理を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項8】
前記均質化処理工程において前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与える方法が、前記一対の回転可能な保持手段を逆回転することであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項9】
前記シリカ・チタニアガラスの組成が、チタニア濃度が2質量%以上15質量%以下で残部がSiO2であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項10】
前記均質化処理を施す棒状ガラス体の外径が30mm以上150mm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項11】
前記一対の回転可能な保持手段が旋盤に設けられた左右のチャックであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の方法により製造される一方向又は三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスであって、機械的に脈理が除去されてなることを特徴とするシリカ・チタニアガラス。
【請求項13】
EUVリソグラフィー用の反射光学材料又は反射型マスク材料であることを特徴とする請求項12記載のシリカ・チタニアガラス。
【請求項1】
一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、
シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、
前記シリカ・チタニアガラス体から円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出す工程と、
前記棒状ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、前記脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施す均質化処理工程と、を含むことを特徴とするシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項2】
一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、
シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体から前記基体を取り外し、加熱炉内で透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、
前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って長手方向に切断し、円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を形成する切り出し工程と、
前記棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し、断面が略円形状又は楕円形状の棒状ガラス体を形成する除去処理工程と、
前記棒状ガラス体の両端を一対の回転可能な保持手段で保持し、バーナーで該ガラス体の一部を加熱しながら該一対の回転可能な保持手段に回転差を与えつつ該バーナーを移動して断面が略円形な棒状ガラス体に成型する第1の成型工程と、
前記成型された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該棒状ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る均質化処理工程と、を含むことを特徴とするシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項3】
前記均質化処理工程後、前記均質化された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段間の距離を狭めることにより該棒状ガラス体の径を大きくする第2の成型工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項4】
前記棒状ガラス体を前記一対の回転可能な保持手段で保持する際、0〜900℃における線膨張係数が0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下のガラス支持棒を介して保持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項5】
三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、
シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、
前記シリカ・チタニアガラス体から円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を切り出す工程と、
前記棒状ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、前記脈理に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施す第1の均質化処理工程と、
前記均質化処理工程後のガラス体に対し均質化処理軸の方向を変えて帯域溶融法による均質化処理を施す第2の均質化処理工程と、を含むことを特徴とするシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項6】
三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、
シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを酸水素火炎中に導入し、シリカ及びチタニア微粒子を水平に保持された基体上に層状に堆積して円筒状の多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体から前記基体を取り外し、加熱炉内で透明化し、同心円状の層状脈理を有する中空円筒状のシリカ・チタニアガラス体を作製する工程と、
前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って長手方向に切断し、円弧状の層状脈理を有する棒状ガラス体を形成する切り出し工程と、
前記棒状ガラス体の角部及び凹部を除去処理し、断面が略円形状又は楕円形状の棒状ガラス体を形成する除去処理工程と、
前記棒状ガラス体の両端を0〜900℃における線膨張係数が0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下のガラス支持棒を介して一対の回転可能な保持手段で保持し、バーナーで該ガラス体の一部を加熱しながら該一対の回転可能な保持手段に回転差を与えつつ該バーナーを移動して断面が略円形な棒状ガラス体に成型する第1の成型工程と、
前記成型された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該棒状ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る第1の均質化処理工程と、
前記均質化された棒状ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段間の距離を狭めることにより該棒状ガラス体の径を大きくし、球状ガラス体に成型する第2の成型工程と、
前記成型された球状ガラス体を前記ガラス支持棒から切り離し、略90度回転したのち再度ガラス支持棒を取り付ける持ち替え工程と、
前記持ち替えた球状ガラス体をバーナーで加熱しつつ前記一対の回転可能な保持手段の間隔を広げることにより延伸する延伸工程と、
前記延伸したガラス体に対して、前記一対の回転可能な保持手段に回転差を与えながら、バーナーを移動し、該ガラス体全体を円筒状に成型する第3の成型工程と、
前記得られた円筒状ガラス体の一部を強熱しつつ、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該ガラス体の長軸と垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去し、組成の均一化を図る第2の均質化処理工程と、
前記得られたガラス体の一部をバーナーで加熱しつつ円筒状に成型する第4の成型工程と、を含むことを特徴とするシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項7】
前記均質化処理を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項8】
前記均質化処理工程において前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与える方法が、前記一対の回転可能な保持手段を逆回転することであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項9】
前記シリカ・チタニアガラスの組成が、チタニア濃度が2質量%以上15質量%以下で残部がSiO2であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項10】
前記均質化処理を施す棒状ガラス体の外径が30mm以上150mm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項11】
前記一対の回転可能な保持手段が旋盤に設けられた左右のチャックであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のシリカ・チタニアガラスの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の方法により製造される一方向又は三方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスであって、機械的に脈理が除去されてなることを特徴とするシリカ・チタニアガラス。
【請求項13】
EUVリソグラフィー用の反射光学材料又は反射型マスク材料であることを特徴とする請求項12記載のシリカ・チタニアガラス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−186348(P2007−186348A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374743(P2005−374743)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000190138)信越石英株式会社 (183)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000190138)信越石英株式会社 (183)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]