説明

腸溶性・徐放性ソフトカプセル及びその製造方法

【課題】容易に製造することができる腸溶性・徐放性ソフトカプセルを提供する。
【解決手段】ゼラチン、可塑剤として多価アルコール、多糖類、アルカリ金属塩及び水を混練して得られる腸溶性・徐放性ソフトカプセルにおいて、前記多糖類は、カラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンド種子多糖類、ペクチン、キサンタンガム、グルコマンナン、キチン質、プルラン、アルギン酸、及びアルギン酸誘導体から選ばれる少なくとも二種であって、6〜40質量%含有されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸溶性・徐放性ソフトカプセルに関し、さらに詳しくは胃内で崩壊することなく、腸内で崩壊し、内容物が溶出するよう構成された腸溶性・徐放性ソフトカプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に開示されるような胃内部で失活しやすい成分等を封入し、胃で崩壊することなく腸内で崩壊するよう構成された腸溶性カプセルが知られている。特許文献1に開示される腸溶性カプセルは、まず、多価アルコール、並びに天然高分子としてカラギーナン、アルギン酸、及びグアーガム等の天然多糖類を均一に混練して得られる天然多糖類・多価アルコール組成物からなる難消化性可食性カプセルを製造する。次に、該難消化性可食性カプセルの表面に穿孔を設け、さらに融点35℃以上の食用硬化油脂等の胃液難消化性の素材で被覆することにより製造される。
【0003】
胃酸で薬理効果が失活するおそれのある薬効成分等を腸溶性カプセル内で封入し、摂取した場合、胃液難消化性の素材で被覆したことにより胃液で崩壊することがなく、小腸に到達した後、被覆物質は消化され、カプセルの穿孔より薬効成分を徐々に溶出させることができる。
【特許文献1】特公平6−47530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示される腸溶性カプセルは、カプセル形状の成形後に難消化性可食性カプセルの表面に穿孔を設ける工程、さらに融点35℃以上の食用硬化油脂等の胃液難消化性の素材でカプセルを被覆する工程が必要となる。従って、カプセルの製造が非常に煩雑であり、製造コストの上昇を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、ゼラチンに可塑剤としての多価アルコール及び所定量の多糖類を混練し、成形することにより、特殊な加工及び被覆処理を施すことなく、腸溶性のカプセルが得られることを発見したことに基づくものである。本発明の目的とするところは、容易に製造することができる腸溶性・徐放性ソフトカプセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明の腸溶性・徐放性ソフトカプセルは、ゼラチン、可塑剤として多価アルコール、多糖類、アルカリ金属塩及び水を混練して得られる腸溶性・徐放性ソフトカプセルにおいて、前記多糖類は、カラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンド種子多糖類、ペクチン、キサンタンガム、グルコマンナン、キチン質、プルラン、アルギン酸、及びアルギン酸誘導体から選ばれる少なくとも二種であって、6〜40質量%含有されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の腸溶性・徐放性ソフトカプセルにおいて、前記多糖類は、カラギーナン及びペクチンの組み合わせ、又はカラギーナン、グルコマンナン、グアーガム及びアルギン酸の組み合わせであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の腸溶性・徐放性ソフトカプセルにおいて、前記アルカリ金属塩は、カリウム塩であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の腸溶性・徐放性ソフトカプセルにおいて、さらに、澱粉を1〜4.5質量%配合することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の腸溶性・徐放性ソフトカプセルにおいて、ニンニク、魚油、プロポリス、腸内細菌、及びタンパク質系薬剤から選ばれる少なくとも一種を内包することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明の腸溶性・徐放性ソフトカプセルの製造方法は、ゼラチン、可塑剤として多価アルコール、アルカリ金属塩、水、並びに濃度が6〜40質量%となるようにカラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンド種子多糖類、ペクチン、キサンタンガム、グルコマンナン、キチン質、プルラン、アルギン酸、及びアルギン酸誘導体から選ばれる少なくとも二種からなる多糖類を均一に混練することにより得られるソフトカプセル原料混合物を製造する工程、該ソフトカプセル原料混合物を用いてニンニク、魚油、プロポリス、腸内細菌、及びタンパク質系薬剤から選ばれる少なくとも一種を内包する工程からなることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の腸溶性・徐放性ソフトカプセルの製造方法において、前記ソフトカプセル原料混合物を製造する工程において、さらに澱粉を1〜4.5質量%配合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容易に製造することができる腸溶性・徐放性ソフトカプセルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の腸溶性・徐放性ソフトカプセルを具体化した実施形態を説明する。
本実施形態の腸溶性・徐放性ソフトカプセル(以下、単に「ソフトカプセル」という)は、ゼラチン、可塑剤として多価アルコール、特定の多糖類、アルカリ金属塩及び水を均一に混練して得られるソフトカプセル原料混合物を所定形状に成形することにより製造される。ソフトカプセル原料混合物には、さらに澱粉を特定量配合してもよい。
【0014】
本実施形態のソフトカプセルの主成分であるゼラチンは、牛、豚、魚、鳥等を由来とするコラーゲンの加熱分解物であり、造膜性及びゲル化性を有した類い希な物質である。すなわちゼラチンは、例えば40質量%程度の高濃度の水溶液であっても流動性に優れるため、造膜性に優れている。従って、ゼラチンを被膜基材とするカプセルは、その内容物を好適に保護することができる。またゼラチンは、温度に応じて可逆的にゾルゲル転移するゲル化性を有しているため、そのゾルゲル転移を利用してソフトカプセルを容易に成形することができる。ゼラチンは、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、ペプチドゼラチン等のいずれも使用することができる。ゼラチンの含有量は、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは、25〜40質量%である。
【0015】
多価アルコールは、可塑剤として配合される。多価アルコールは、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、イソペンチルジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及び1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。これらの中で、入手の容易性及び可塑性付与効果の高いグリセリンが好ましく適用される。
【0016】
多価アルコールの含有量は、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは10〜35質量%、最も好ましくは15〜30質量%である。多価アルコールの含有量が1質量%未満の場合、胃内で崩壊し、腸溶性が得られないおそれがある。一方、多価アルコールの含有量が40質量%を超えて配合されるとソフトカプセル原料混合物が高粘度となり、カプセル化への成形が困難となる場合がある。
【0017】
特定の多糖類とは、カラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンド種子多糖類(タマリンドシードガム)、ペクチン、キサンタンガム、グルコマンナン、キチン質、プルラン、アルギン酸、及びアルギン酸誘導体から選ばれる少なくとも二種の多糖類のことを示す。多糖類は、二種以上であればよく、三種類であっても、さらに四種類以上を用いてもよい。これらの多糖類を二種以上配合することにより、ソフトカプセルに腸溶性・徐放性を付与することができる。多糖類の配合成分が1種類のみでは、他の原料と混練のみによって腸溶性・徐放性の効果が得られない。これらの多糖類は、天然多糖類であっても合成可能なものは合成多糖類であってもいずれでもよいが、安全性及び入手の容易性から天然多糖類が好ましい。多糖類のうちカラギーナンは、好ましくはκ(カッパー)カラギーナンが使用される。多糖類のうちペクチンとしては、好ましくはメチル化ガラクチュロン酸の占める割合が50%未満のLMペクチンが使用される。これらの多糖類のうち、被膜の強度向上による腸溶性付与効果が高いカラギーナン及びペクチンの組み合わせ、又はカラギーナン、グルコマンナン、グアーガム及びアルギン酸の組み合わせが好ましい。より好ましくはκカラギーナン及びLMペクチンの組み合わせである。カラギーナンとペクチンの組み合わせの場合、その混合比率は、質量比としてカラギーナン1に対し、ペクチンが好ましくは10〜100、より好ましくは30〜70、さらに好ましくは40〜60である。カラギーナン、アルギン酸、グアーガム、及びグルコマンナンの組み合わせの場合、その混合比率は、好ましくは質量比として50〜70:15〜25:6〜14:5〜15である。
【0018】
多糖類の含有量は、前記ソフトカプセル原料混合物中において、6〜40質量%であり、より好ましくは10〜30質量%、最も好ましくは10〜20質量%である。多糖類の含有量が6質量%未満の場合、被膜の強度が低下し胃内で崩壊し、腸溶性が得られないおそれがある。一方、多糖類の含有量が40質量%を超えて配合されるとソフトカプセル原料混合物が高粘度となり、カプセル化への成形が困難となる。
【0019】
アルカリ金属塩は、多糖類をゲル化させ、被膜の強度を高めるために配合される。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、及びセシウム塩が挙げられる。これらの中で、ゲル化付与効果が高いカリウム塩が好ましく使用される。アルカリ金属塩の含有量は、多糖類をゲル化するために少量添加すればよく、特に限定されないが、多糖類の含有量に対し、好ましくは0.01〜10質量%である。水は、ソフトカプセルの各原料成分の溶媒又は分散媒として使用される。
【0020】
澱粉は、ソフトカプセルの製造容易性をより向上させるために配合されてもよい。澱粉により、ソフトカプセルの製造時における成形性がより向上する。特に、ゲル状シートを作成し、左右の金型で熱溶着させながらカプセル形状に打ち抜くロータリーダイ法においては、シートのべたつきの低下により左右バランスの取れたカプセルの成形が可能となる。さらに、ソフトカプセルの製造後においては、カプセル被膜のべたつき、カプセル同士の密着、包装容器への付着等が抑制される。澱粉としては、例えば穀類澱粉、イモ類澱粉、豆類澱粉、野草類澱粉、幹茎澱粉、及びこれらの改質澱粉(加工澱粉)が挙げられる。より具体的には、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、及びこれらの改質澱粉が挙げられる。改質澱粉とは、澱粉に対して、エーテル化、エステル化、グラフト化等の誘導体化処理、焙焼、酵素変性、酸化、酸処理等の分解処理、α化、造粒処理、多孔質化等の加工を施すことにより、澱粉本来の物性を人為的に変化させたものをいう。
【0021】
澱粉の含有量は、前記ソフトカプセル原料混合物中において、好ましくは1〜4.5質量%、より好ましくは2〜4質量%である。澱粉の含有量が1質量%未満の場合、ソフトカプセルの製造容易性の向上効果が得られないおそれがある。一方、澱粉の含有量が4.5質量%を超えると腸溶性が低下するおそれがある。
【0022】
本実施形態の製造方法は、上記各種原料を配合し、均一に混練することにより得られるソフトカプセル原料混合物を製造する工程、及びソフトカプセル原料混合物を所定形状に成形するとともに、充填成分を内包する工程からなる。充填成分の内包工程は、打ち抜き法、浸漬法、滴下法等の公知の方法を適宜採用することができる。これらの中で、生産効率の高く、比較的多くの量の内容物を内包することができる打ち抜き法を採用することが好ましい。打ち抜き法は、前記ソフトカプセル原料混合物からゲル状シートを作成し、金型でカプセル形状に打ち抜くことによって製造する方法である。より具体的には内容物を充填しながらソフトカプセルを成形するロータリーダイ法を挙げることができる。尚、ロータリーダイ法は、ゲル状シートが二つの円筒型成型ダイロールの回転によって打ち抜かれ、同時にポンプにより内溶液が充填される成型方法であって、例えばゲル状フィルムがセグメントによって接着に必要な熱が与えられた後、カプセルの継ぎ目がダイロールの圧力によって圧着されて密閉される方法である。
【0023】
ソフトカプセルに充填(内包)される内容物としては、特に限定されず栄養補助成分、健康食品成分、特定の効能・効果の発揮を目的とする医薬品成分等の種々の有効成分が挙げられる。本実施形態のソフトカプセルは、胃内部で崩壊せず腸内で溶解するよう構成される。尚、腸とは十二指腸から肛門に至るまでの部位であり、特に十二指腸、小腸及び大腸を示す。そのため、胃液内で変性又は分解により有効成分によって生ずる効能効果が減少するおそれがある成分、又はソフトカプセルが胃内部で崩壊した場合、胃からの戻り臭が不快である成分に対して好ましく適用される。具体的には、例えばニンニク、魚油、プロポリス、腸内細菌、及びタンパク質系薬剤が挙げられる。腸内細菌としては、いわゆる腸内有用細菌(善玉菌)、例えばビフィズス菌、乳酸菌等が挙げられる。タンパク質系薬剤には、例えば酵素系薬剤等が挙げられる。
【0024】
ソフトカプセルの膜厚は、腸溶性が得られる膜厚であれば特に限定されないが、好ましくは0.8〜1.4mm、より好ましくは0.95〜1.2mmである。膜厚が0.8mm未満であると胃内で崩壊しやすくなる。一方、膜厚が1.4mmを超える場合、成形が困難となる。成形・充填されたソフトカプセルは、瓶詰め包装、PTP包装、パウチ等の包装形態で包装されて保存される。
【0025】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態の腸溶性・徐放性ソフトカプセルは、ゼラチン、可塑剤として多価アルコール、アルカリ金属塩、水、並びにカラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンド種子多糖類、ペクチン、キサンタンガム、グルコマンナン、キチン質、プルラン、アルギン酸、及びアルギン酸誘導体から選ばれる少なくとも二種の多糖類6〜40質量%を混練して得られる。したがって、ソフトカプセルを2層以上の複数の層で構成したり、表面に穿孔を設ける必要がない。つまり、各原料を混練し、成形するのみで腸溶性・徐放性効果を得ることができるため、腸溶性・徐放性ソフトカプセルを容易に製造することができる。
【0026】
(2)本実施形態において、好ましくは多糖類としてカラギーナン及びペクチンの組み合わせ、又はカラギーナン、グルコマンナン、グアーガム及びアルギン酸の組み合わせが適用される。したがって、ソフトカプセルにおいて、被膜の強度向上による腸溶性・徐放性付与効果を向上させることができる。
【0027】
(3)本実施形態において、好ましくはアルカリ金属塩としてカリウム塩が適用される。したがって、多糖類のゲル化を促進し、ソフトカプセルの被膜の強度を向上させ、さらには腸溶性・徐放性付与効果を向上させることができる。
【0028】
(4)本実施形態において、カプセル充填成分として、好ましくはニンニク、魚油、プロポリス、腸内細菌、及びタンパク質系薬剤を挙げることができる。したがって、胃内部の酸による成分の失活、又は胃からの戻り臭を抑制することができる。
【0029】
(5)本実施形態において、まずゼラチン、可塑剤として多価アルコール、アルカリ金属塩、水、並びに原料混合物中の最終濃度が6〜40質量%となるようにカラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンド種子多糖類、ペクチン、キサンタンガム、グルコマンナン、キチン質、プルラン、アルギン酸、及びアルギン酸誘導体から選ばれる少なくとも二種からなる多糖類を均一に混練することによりソフトカプセル原料混合物を製造する工程が行なわれる。次に、該ソフトカプセル原料混合物を用いて充填成分を内包する工程が行なわれる。したがって、ソフトカプセルを2層以上の複数の層で構成したり、表面に穿孔を設ける必要がない。つまり、腸溶性・徐放性ソフトカプセルを容易に製造することができる。
【0030】
(6)本実施形態において、好ましくはさらにソフトカプセル原料混合物中に澱粉を1〜4.5質量%配合される。したがって、澱粉により、ソフトカプセルの製造時における成形性がより向上する。さらに、ソフトカプセルの製造後においては、カプセル被膜のべたつき、カプセル同士の密着、包装容器への付着等が抑制される。
【0031】
(7)本実施形態の構成により、成型時に熱圧着により継ぎ目が生ずるソフトカプセルにおいては、継ぎ目の接着性(密閉性・密着性)を向上させることができる。それにより、たとえば滴下法により得られる継ぎ目のない小さいサイズのソフトカプセルよりも、大きいサイズのソフトカプセルの製造が容易となる。したがって、本発明の構成により、小さいサイズのソフトカプセルを大量に摂取する必要がなく、カプセルの取り扱い性の向上のみならず、摂取者の負担も軽減することができる。
【0032】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態における腸溶性・徐放性ソフトカプセルは、内包する充填成分が液体であっても粉末状等の固体であってもいずれでもよい。
【0033】
・上記実施形態における腸溶性・徐放性ソフトカプセルは、ヒトが摂取する飲食品及び医薬品等に対して適用することができるのみならず、家畜、ペット等の飼養動物に適用してもよい。
【0034】
・本実施形態の腸溶性・徐放性ソフトカプセルは、腸疾患用の薬剤を充填してもよい。本実施形態のソフトカプセルは、腸溶性・徐放性のため腸疾患用の薬剤を非常に効率よく患部に投与することができる。
【0035】
・本実施形態において、ソフトカプセルの形状は特に限定されないが、例えば、楕円形、長形、球形、しずく形、SUPPO形、及び涙型が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実験例1:多糖類の配合量と腸溶性等の関係)
まず、調合タンク内で85〜90℃の精製水57kgにグリセリン20kgを投入し、混合する。次に、多糖類混合物(成分:κカラギーナン2質量%、LMペクチン97質量%及び塩化カリウム1質量%)を最終濃度が下記表1に示される数値になるように投入し、混合した。最後に、ゼラチンを43.5kg混合することにより粘稠なソフトカプセル原料混合物を調製した。次に、ソフトカプセル原料混合物をシート状に成形した後、ロータリーダイ法により、内容物(乳化剤、ミツロウ、及びビタミンB混合物)を内包しながら膜厚1mmのソフトカプセルを作製した。作成された各ソフトカプセルについて胃液又は腸液崩壊試験及び製造の容易性について判定を行なった。結果を表1に示す。
【0037】
(胃液又は腸液崩壊試験)
第15改正日本薬局方(崩壊試験法)に準じて行なった。胃液モデル(第1液)として塩化ナトリウム2.0gと塩酸7.0mLを水に溶かして1000mLとした(pH1.2)。腸液モデル(第2液)として0.2mol/Lリン酸二水素カリウム試液250mLに、0.2mol/L水酸化ナトリウム試液118mL及び水を加えて1000mLとした(pH6.8)。試験は、市販の崩壊試験機(富山産業社製)を使用し、ビーカー中の液温37℃、30往復/分、振幅55mmの条件で滑らかに上下運動を行なうように調節した。一定時間毎に吸光度(445nm)を測定することにより内容物(着色成分であるビタミンB)の溶出の有無の確認及びカプセル表面の崩壊状態を目視で確認を行なった。崩壊:被膜が跡形もなく溶解した、残存:被膜が崩壊傾向は見られたものの、完全に溶解しなかった状況(内容物の溶出はない)、崩壊せず:被膜の崩壊傾向すら認められなかった状況として評価した。
【0038】
(製造の容易性)
各原料を混合することにより得られる粘稠なソフトカプセル原料混合物について、ロータリーダイ法を用いてカプセル形状に成形する際の成形のしやすさについて、問題なく製造できる:○、高粘度のため製造しにくい:△、高粘稠のためロータリーダイ法により製造できない:×として評価した。
【0039】
【表1】

表1に示されるように胃液モデルにおいて、多糖類混合物の濃度が5質量%以下の場合、120分間で崩壊してしまうことが確認された。また、多糖類混合物の濃度が50質量%以上になるとソフトカプセル原料混合物の粘度が高くなるため容易に製造できないことが確認された。以上のように、多糖類の配合量を所定量に特定することにより、単層で腸溶性のソフトカプセルを製造することができることが確認された。
【0040】
(実験例2:グリセリンの配合量と腸溶性等の関係)
まず、調合タンク内で下記表2に示される配合量で各原料を混合した。各原料の内、多糖類混合物とゼラチンの配合量を統一し、グリセリンの配合量を変化させた。その他、製造方法及び測定方法については、実験例1の記載の方法に従った。崩壊試験とカプセルの成形性について結果を表2に示す。尚、多糖類混合物は、実験例1で使用したものと同一のものを使用した。
【0041】
【表2】

表2に示されるように、可塑剤として配合されるグリセリンの配合量が低い場合、胃液モデルで容易に崩壊し、腸溶性・徐放性は得られないことが確認された。また、ソフトカプセル原料混合物の粘度が低すぎるため、成形時カプセルに割れが生じてしまうことが確認された。一方、グリセリンの配合量が高すぎる場合、ソフトカプセル原料混合物が高粘度となり、製造が困難となることが確認された。
【0042】
(実験例3:被膜の厚さと腸溶性等の関係)
試験例6の各原料の配合量でソフトカプセルを製造した。ソフトカプセルの被膜の膜厚を下記表3に示されるように変化させた。その他の製造方法及び評価方法については、実験例1に記載の方法に従った。カプセルの成形性と腸溶性について評価を行なった。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

表3に示されるように、ソフトカプセルの被膜が薄い場合、第1液の胃液モデルで容易に崩壊し、腸溶性・徐放性は得られないことが確認された。一方、ソフトカプセルの被膜が厚い場合、製造が困難となることが確認された。また、ロータリーダイ法では、接合部分の接着性が低下することが確認された。
【0044】
(実験例4:腸溶性・徐放性ソフトカプセルのモニタ試験)
試験例16に記載される各原料の配合量でソフトカプセルを製造した。充填成分としてローストガーリックオイル(理研化学社製)を使用した。試験者12名が空腹時にソフトカプセルを飲用し、1〜2時間後の胃からの戻り臭、口の中の不快感の有無について、評価を行なった。結果を表4に示す。
【0045】
【表4】

表4に示されるように、試験例16の組成のソフトカプセルを使用した場合、戻り臭を感じる試験者は、認められなかった。試験例16のソフトカプセルは、崩壊試験と同様に人体胃内部においても崩壊していないことが確認された。
【0046】
(実験例5:多糖類の種類と腸溶性の関係)
まず、調合タンク内で下記表5に示される配合量で各原料を混合した。多糖類混合物は、表5に示される多糖類1種類を99質量%と塩化カリウムを1質量%として調製した。その他、製造方法及び測定方法については、実験例1の記載の方法に従った。崩壊試験について結果を表5に示す。
【0047】
【表5】

各試験例に示されるように、多糖類の配合種類が1種類のみの場合、胃液モデルにおいて短時間で崩壊してしまうことが確認された。多糖類は二種類以上が必須であることが確認された。
【0048】
(実験例6:多糖類の種類と腸溶性等の関係)
まず、調合タンク内で85〜90℃の精製水57kgにグリセリン20kgを投入し、混合する。次に、多糖類混合物(成分:カラギーナン60質量%、アルギン酸20質量%、グアーガム9質量%及びグルコマンナン10質量%、塩化カリウム1質量%)を最終濃度が下記表6に示される数値になるように投入し、混合した。最後に、ゼラチンを43.5kg混合することにより粘稠なソフトカプセル原料混合物を調製した。次に、ソフトカプセル原料混合物を膜厚1mmのシート状に成形した後、そのシートを用いて、胃液又は腸液崩壊試験及び製造の容易性について判定を行なった。判定方法について実験例1に記載の方法に従った。結果を表6に示す。
【0049】
【表6】

多糖類として、カラギーナン、アルギン酸、グアーガム及びグルコマンナンの組み合わせにおいても、特定の配合割合(6〜40質量%)でグリセリンとゼラチンと混練させることにより、単層の腸溶性・徐放性ソフトカプセルを製造することができることが確認された。
【0050】
(実験例7:澱粉によるソフトカプセルの製造時における成形性の向上効果の確認)
まず、調合タンク内で下記表7に示される配合量で各原料を混合した。各原料の内、多糖類混合物、グリセリン、及びゼラチンの配合量を統一し、澱粉及び水の配合量を変化させた。澱粉はコーンスターチを使用した。ソフトカプセルの膜厚は1.1mmとした。その他の製造条件及び測定方法については、実験例1の記載の方法に従った。崩壊試験と製造時における成形性について結果を表7に示す。尚、多糖類混合物は、実験例1で使用したものと同一のものを使用した。
【0051】
(ソフトカプセルの製造時における成形性)
各原料を混合することにより得られるソフトカプセル原料混合物をシート状に成形した後、左右の金型で熱溶着させながらカプセル形状に打ち抜くロータリーダイ法を用いてカプセル形状に成形する際の成形のしやすさについて、本試験例では以下の観点から評価を行った。問題なく製造できる:○、シートのべたつきのためカプセルの左右のバランスがわずかに崩れる:△、シートのべたつきのためカプセルの左右のバランスが崩れる:×として評価した。
【0052】
【表7】

表7に示されるように、澱粉をさらに特定量配合することにより、ソフトカプセルに腸溶性のみならず製造時におけるカプセルの成形性、つまりシートの取り扱い性向上効果も付与することができることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチン、可塑剤として多価アルコール、多糖類、アルカリ金属塩及び水を混練して得られる腸溶性・徐放性ソフトカプセルにおいて、
前記多糖類は、カラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンド種子多糖類、ペクチン、キサンタンガム、グルコマンナン、キチン質、プルラン、アルギン酸、及びアルギン酸誘導体から選ばれる少なくとも二種であって、6〜40質量%含有されていることを特徴とする腸溶性・徐放性ソフトカプセル。
【請求項2】
前記多糖類は、カラギーナン及びペクチンの組み合わせ、又はカラギーナン、グルコマンナン、グアーガム及びアルギン酸の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の腸溶性・徐放性ソフトカプセル。
【請求項3】
前記アルカリ金属塩は、カリウム塩であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の腸溶性・徐放性ソフトカプセル。
【請求項4】
さらに、澱粉を1〜4.5質量%配合することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の腸溶性・徐放性ソフトカプセル。
【請求項5】
ニンニク、魚油、プロポリス、腸内細菌、及びタンパク質系薬剤から選ばれる少なくとも一種を内包することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の腸溶性・徐放性ソフトカプセル。
【請求項6】
ゼラチン、可塑剤として多価アルコール、アルカリ金属塩、水、並びに濃度が6〜40質量%となるようにカラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンド種子多糖類、ペクチン、キサンタンガム、グルコマンナン、キチン質、プルラン、アルギン酸、及びアルギン酸誘導体から選ばれる少なくとも二種からなる多糖類を均一に混練することにより得られるソフトカプセル原料混合物を製造する工程、該ソフトカプセル原料混合物を用いてニンニク、魚油、プロポリス、腸内細菌、及びタンパク質系薬剤から選ばれる少なくとも一種を内包する工程からなることを特徴とする腸溶性・徐放性ソフトカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記ソフトカプセル原料混合物を製造する工程において、さらに澱粉を1〜4.5質量%配合することを特徴とする請求項6に記載の腸溶性・徐放性ソフトカプセルの製造方法。

【公開番号】特開2009−185022(P2009−185022A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331524(P2008−331524)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(500124275)ユニメディカル株式会社 (2)
【出願人】(591045471)アピ株式会社 (59)
【Fターム(参考)】