説明

膜厚測定方法および膜厚測定装置および膜厚測定装置を有する画像形成装置、感光体および感光体の製造方法

【課題】支持基板上に下引層を介して光透過性の膜を形成してなる被測定物における光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を、同時に確実にかつ精度よく測定する膜厚測定方法、膜厚測定装置、画像形成装置。
【解決手段】膜厚測定を可能とする波長領域のスペクトル光を放射する光源からの光をファイバプローブにより放射し、光透過性の膜に集光して被測定物に垂直入射し、入射光が光透過性の膜の表面において反射した第1の反射光と、下引層の表面において反射した第2の反射光との干渉光、及び、第1の反射光と、支持基板の表面において反射した第3の反射光との干渉光を、分光手段に導いて分光し、分光した分光スペクトル強度から反射率を演算する際に、反射率を任意の大きさに拡大することにより干渉波形を求め、干渉波形をコサイン波成分に分解する周波数解析法に基づき光透過性の膜の膜厚、及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を演算算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚測定方法および膜厚測定装置および膜厚測定装置を有する画像形成装置、感光体および感光体の製造方法の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体に静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して得られるトナー画像をシート状の記録媒体に転写し定着して画像形成を行なう画像形成装置は、アナログやデジタルの複写装置、ファクシミリ、各種光プリンタや光プロッタ等として知られている。
感光体には、酸化亜鉛感光紙のようにトナー画像をそのまま定着されるものもあるが、トナー画像をシート状の記録媒体に転写する方式の画像形成装置で用いられる感光体は繰返し使用可能なもので、一般に、ドラム状や有端・無端のベルト状に形成され、その周面を1方向へ移動させつつ画像形成の各工程が行なわれる。
繰返し使用可能な感光体は一般に、導電性基体上に、微細粒子を分散させた中間層を下引層として形成し、この中間層上に感光層を「光透過性の膜」として形成した構成となっている。
【0003】
繰返し使用可能な感光体を用いる画像形成装置では、感光体の表面には各種の部材、例えば、帯電ローラや現像ブラシ、転写ローラ、さらにはクリーニングブラシやクリーニングブレード等が物理的に接触し、この物理的接触により、感光層表面が画像形成プロセスの繰返しに伴ない次第に磨耗していく。特に、クリーニングブラシやクリーニングブレードによる摺擦力は大きく、感光層磨耗の大きな要因となる。
このような磨耗に伴い、感光層の厚みがある程度以上減少すると、光感度が著しく減退したり、帯電特性が劣化して表面を所望の電位に均一帯電させることができなくなったりして、鮮明な画像を形成できなくなる。このようにして感光体の寿命が尽きる。
【0004】
かかる事情に鑑み、繰返し使用可能な感光体の感光層の厚みを経時的に測定し、感光体の「余命」を検知することが意図されている。
感光層の厚みを測定する方法としては、従来、帯電手段に一定電圧を印可して感光層表面を帯電するときの帯電電流を感光層の厚みと対応させ、帯電電流の経時的な変化を感光層の厚みの経時的な変化に換算する「電流検知方式」や、赤外線を感光層に照射し、中間層で反射される成分の強度から感光層による赤外線の吸収量を測定して層厚を求める「赤外線吸収方式」などが検討されている。
電流検知方式は、測定電流値が温・湿度等の環境の変化に影響されやすく、信頼度の高い測定結果を得るのは必ずしも容易でない。また、感光層の表面には前述の如く、種々の接触物があり、層厚測定時に接触物を通じてある程度の電流漏れが不可避的に生じるため、感光層の層厚を高精度(0.5μm以下)で測定することは難しい。
赤外線吸収方式は光学的測定であるから、物理的な接触なしに層厚を測定できる利点を有している。しかしながら、感光体の感光層には、物理的な接触に対する強度を補強するために、無機や有機のフィラー微粒子が分散されることがあり、このような感光層では「フィラー微粒子による赤外線吸収」がないため、フィラー微粒子とバインダー樹脂の混合比によっては、必要な計測精度を実現できなかったり、測定自体が不可能になったりし、層厚を測定できる感光層の種類が限られ、汎用性の面から問題がある。
「光透過性の膜」の膜厚を光学的に測定する測定方式として従来から知られた「光干渉膜厚計測方式」により感光層の層厚測定を行なうことも考えられるが、従来知られている
装置では、感光層に分散されたフィラー微粒子や顔料粒子による散乱の影響、或いは中間層における光拡散による散乱が原因して、膜厚計測に必要な「分光スペクトル強度の極大・極小が十分に分離した検出光」を得ることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した事情に鑑み、支持基板上に下引層を介して光透過性の膜を形成してなる被測定物における光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を、同時に確実にかつ精度よく測定する膜厚測定方法、この方法を実施するための膜厚測定装置、この膜厚測定装置を有する画像形成装置の実現を課題とする。
本発明は更に、感光体とその新規な製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明の膜厚測定方法は「支持基板上に下引層を介して光透過性の膜を形成してなる被測定物における光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を同時に測定する方法」であって、以下の如き特徴を有する。
即ち、上記被測定物に対する膜厚測定を可能とする波長領域のスペクトル光を放射する光源からの光をファイバプローブにより導光してその射出部から放射し、この放射光束を対物レンズにより被測定物に垂直入射させて光透過性の膜に集光させる。
スペクトル光の「上記被測定物に対する膜厚測定を可能とする波長領域」は、膜厚測定を可能ならしむる波長領域を意味し、光透過性の膜の構成(フィラー微粒子の分散の有無、フィラー微粒子の粒径、凝集径等)により定められる。
光透過性の膜表面と下引層表面とにより反射して互いに干渉した反射光及び膜表面と支持基板表面とにより反射して互いに干渉した反射光を、対物レンズを介して、ファイバプローブにおける検出光伝送用ファイバの端面に戻し、検出光伝送用ファイバにより分光手段に導き分光する。分光した分光スペクトル強度から反射率を演算する際に、前記反射率を任意の大きさに拡大することにより干渉波形を求め、前記干渉波形をコサイン波成分に分解する周波数解析法に基づき、光透過性の膜の膜厚を演算算出する。この周波数解析法は、干渉波形をコサイン波成分に分解し、各コサイン波成分の振幅同士、周波数(波長、周期)同士、又は/及び、位相同士のデジタルデータについて統計的に演算解析することができる他、解析の結果得られたチャート或いはグラフ上の重要部分の微細な差異を、関数処理により増幅して、顕著に差別化できる利点がある。
即ち、この周波数変換法は、典型的にはフーリエ変換法(z変換法を含む)であるが、フーリエ変換法は、
y(t)=aej(ωt+φ)或いは、y(t)=a cos(ωt+φ)
で与えられるような波形から、その周波数ω、振幅a、そして位相φを求める変換法でもあり、換言すれば「コサイン波(余弦波)成分に分解する」ものでもある。通常のフーリエ変換は、“柱時計の振り子”や“地球の自転・公転”或いは“地震の発生周期”など色々な時間内に変化する信号を、t:時間、横軸:(1/t)=Hz(1/s)周波数として解析するが、例えば、本発明において、反射率:Rと波長:λの間には、
R=A+Bcos(2πnd/λ)
の関係があるので、反射率:Rが、光が波長分の1(1/λ)進むごとにコサイン関数で周期的に変化(膜が厚さを増すに従って、一定の波長範囲で反射率の変化の回数が増える)することを利用したものである。薄い膜の場合は、同じ波長範囲での反射率の変化(振動)は殆ど生じてこない。
例えば、一定の波長範囲(t:時間に相当)に膜厚:ndを示す干渉波形(反射率の周期的変化)がどれだけ(周波数)あるかをフーリエ変換により求め、これから1周期の波長幅が導かれる。
波長幅と膜厚には、
nd=(山のピーク波長×谷のピーク波長)/4×(山のピーク波長−谷のピーク波長)の関係があるので、干渉波形(反射率の周期的変化)の山谷の波長を正確に検出できれば周波数解析による膜厚計測が可能になる。
【0007】
この際、上式からも明らかなように膜厚の演算に際しては、反射率の絶対値は必要なく、極大(山のピーク)及び極小(谷のピーク)を与える波長が高精度で取得できれば、事前に登録された分光屈折率:nを用いて、膜厚dが測定できる。そこで、反射率の極大及び極小を与える波長の精度を高めるために反射率を任意の大きさに拡大している。
【0008】
一般に、分光光度計、分光反射率測定計、光干渉膜厚計等で直接測定されるのは、試料からの反射光量、即ち分光スペクトル強度で、反射率を求めるためには、反射率が既知の標準試料を事前に測定して校正する必要がある。
これにより、試料の反射率R(λ)は、
R(λ)=(I(λ)−I(λ))/(I(λ)−I(λ))・r(λ)
として算出することができる。
ここでI(λ)は、試料からの反射光を受光して演算手段内で扱われるデジタルデータ、I(λ)は、演算手段内で扱われる受光器の暗電流成分のデジタルデータ、I(λ)は、標準試料からの反射光として演算手段内で扱われるデジタルデータ、r(λ)は、標準試料の既知反射率を意味する。
ここで例えば分母となる、標準試料からの反射光I(λ)を本来の値より小さく変化させ取得させておけば反射率R(λ)を任意の大きさに拡大することが可能となる。
【0009】
また請求項1記載の膜厚測定方法における測定対象となる「下引層」「光透過性の膜」の形成された被測定物は、前記の如く「支持基板上に下引層を介して光透過性の膜が形成」され、支持基板表面と光透過性の膜の表面及び下引層表面と光透過性の膜の表面とで反射される光の干渉が可能なものであればよく、被測定物に対する他の制限は特にない。
【0010】
請求項2記載の発明の膜厚測定方法は「表面粗度Rmax:0.4μm以下の支持基板上に下引層を介して光透過性の膜を形成してなる被測定物における光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を同時に測定する方法」であって、以下の如き特徴を有する。
即ち、「前記光透過性の膜表面と下引層表面とにより反射して互いに干渉した反射光及び光透過性の膜表面と、表面粗度Rmax:0.4μm以下(具体的には0〜0.4μmの範囲)の支持基板表面とにより反射して互いに干渉した反射光を、分光手段に導いて分光し、得られた干渉波形を周波数解析法に基づき演算計算する際に、第二のピーク強度を有する周波数成分から前記光透過性の膜の膜厚を、第一のピーク強度を有する周波数成分のから下引層と光透過性の膜の膜厚和を演算算出すること」で、請求項1記載の膜厚測定方法により「感光層の厚さ」と「下引層としての中間層と感光層の膜厚和」を同時に測定できる(請求項2)。ここで、本発明における「中間層」とは、下引層のうち、特に、微細粒子を分散させたものを意味する。
【0011】
請求項3記載の発明の膜厚測定方法は「支持基板上に下引層を介して光透過性の膜を形成してなる被測定物における光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を同時に測定する方法」であって、以下の如き特徴を有する。
即ち、「前記光透過性の膜表面と下引層表面とにより反射して互いに干渉した反射光及び光透過性の膜表面と、表面粗度RzJIS:0.4〜1.8μmの支持基板表面とにより反射して互いに干渉した反射光を、分光手段に導いて分光し、得られた干渉波形を周波数解析法に基づき演算計算する際に、第一のピーク強度を有する周波数成分から前記光透過性の膜の膜厚を、第二のピーク強度を有する周波数成分のから下引層と光透過性の膜の膜厚和を演算算出すること」で、請求項1記載の膜厚測定方法により「感光層の厚さ」と「中間層と感光層の膜厚和」を同時に測定できる(請求項3)。
表面粗度Rmax(JIS B0601:’82 準拠のRmax)、RzJIS(JIS B0601:’01準拠のRzJIS)に関しては、導電性基体を把持可能な一般の表面粗さ計で測定することができる。
【0012】
また、前記分光手段における波長分解能が0.6μm以下であることで請求項1記載の膜厚測定方法により「感光層の厚さ」と「中間層と感光層の膜厚和」を同時に測定できる(請求項4)。
【0013】
前記被測定物が「導電性基体の表面に、微細粒子を分散させた中間層を下引層として設け、中間層上に、感光層を光透過性の膜として形成された感光体」である場合には、請求項1記載の膜厚測定方法により「感光層の厚さ」と「中間層と感光層の膜厚和」を同時に測定できる(請求項5)。
「電性基体」としては、アルミニウム管やニッケルベルト等の金属基体、プラスチックベルト等、公知の種々のものを利用できる。前記アルミニウム管は切削、しごき、引き抜き等の表面加工を施すことができ、ニッケルベルトはメッキと同じ方法で析出させて形成されるベルト状の金属基体であり、プラスチックベルトはポリエステルフィルムにアルミ蒸着や導電性樹脂コートを施して導電性のベルトとしたものである。
【0014】
請求項5記載の膜厚測定方法において、被測定物である感光体における中間層と感光層の屈折率差が1.0〜1.1の範囲である場合には、中間層表面と表面層表面との間の距離及び導電性基体表面と表面層表面との距離を膜厚として同時に測定できる(請求項6)。
本発明における中間層と感光層の屈折率差が1.0以上であれば、本発明の場合、反射は物理的に屈折率差(複素屈折率差)が唯一の原因で発生するため、一部の光が中間層の表面で反射され、更に屈折率差の小ささから一部の光は中間層内に入射し、中間層と支持基板との屈折率差から支持基板上で反射されるため、感光層の表面で反射された光と共に干渉を発現する。
屈折率が1.0未満の場合は、屈折率差の小ささから感光層中に進入した光の多くが中間層表面で反射せず支持基板に達してしまうため、中間層表面と表面層表面との間の距離を膜厚として測定することが困難となり、中間層と支持基板との屈折率差から中間層と感光層の膜厚和のみを測定することは可能であるが、感光層の膜厚を同時に測定することができなくなる。
また本発明における中間層と感光層の屈折率が1.1を越える場合は、二つの媒質の屈折率差が大きければその界面での反射が増すため、一部の光は中間層内に入射するが、多くの光は中間層表面で反射されるため、中間層表面と表面層表面との間の距離を膜厚として測定することは可能となる。但し、干渉に必要な光が支持基板まで届かなくなるため、感光層の膜厚及び中間層と感光層の膜厚和を同時に測定することができなくなる。
1.1以下であれば、一部の光が中間層を抜け、干渉に必要な光束として支持基板まで届くこととなる。
一般に良く知られる大気中の(屈折率:1.0)の氷(屈折率:1.309)は、二つの媒体の屈折率差が大きく、氷と空気の界面における光の反射も大きくなるため人の目でもその存在を良く認識できることに対して、水(屈折率:1.33)と氷(屈折率:1.309)では双方に屈折率差がないため、水と氷の界面での反射が弱くなり、透過する光の成分が増加するため氷の存在が判らなくなる現象と等価となる。
中間層上の界面反射を利用して光干渉法により膜厚を計測できる様にする為には、この二つの媒質、感光層と中間層の屈折率差は大きければ大きい程好ましいが、1.1を越えると前述した通り、支持基板に到達する光の成分が少なくなり、光干渉法での膜厚測定を困難にする。
本発明における中間層と感光層の屈折率に関しては、測定用のサンプルを作製することにより、一般の分光エリプソメータで測定を行なうことができる。
【0015】
請求項5に記載の膜厚計測方法においては、前記微細粒子の消光係数が0であることにより、微細粒子分散させた中間層を透過する一部の光の存在を可能にすることができ、この場合には、中間層表面と表面層表面との間の距離及び導電性基体表面と表面層表面との距離を膜厚として同時に測定できる(請求項7)。
微細粒子の複素屈折率のうち消光係数が0となることで、基本的に微細粒子での吸収がなくなり、他の因子としては微細粒子とバインダー樹脂間の屈折率差による反射や粒子の不均一さに伴う不透明さにより、導電性基体の隠蔽力が増してくるが、微細粒子径よりも波長の長い光は中間層を透過し、導電性基体表面まで到達して干渉を発現する。
【0016】
また請求項1〜7に記載の膜厚計測方法においては、前記被測定物に対する膜厚計測を可能とする波長領域が、750〜850nmであることにより、微細粒子を分散させた中間層を透過する一部の光の存在を可能にすることができ、この場合には、中間層表面と表面層表面との間の距離及び導電性基体表面と表面層表面との距離を膜厚として同時に測定できる(請求項8)。
前記被測定物に対する膜厚計測を可能とする波長領域が、750〜850nmの領域であれば、本発明の場合、一部の光が中間層の表面で反射され、更に一部の光は中間層内に入射するが、中間層中の微細粒子の影響を受け散乱されずに導電性基体上まで達し反射されるため、感光層の表面で反射された光と共に干渉を発現することが可能となる。
膜厚計測を可能とする波長領域に関しては、分光光度計や分光反射率計で測定することができる。
【0017】
請求項5〜8に記載の膜厚測定方法において、被測定物である感光体における感光層は「該感光層の表面側に補強用のフィラー微粒子を分散させた領域を有するものとして構成」することができ、この場合には、中間層表面と該フィラー微粒子を分散させた領域を有する前記感光層の表面との間の距離、及び導電性基体表面と該フィラー微粒子を分散させた領域を有する前記感光層の表面との距離を膜厚として同時に測定できる(請求項9)。
【0018】
請求項5〜8に記載の膜厚測定方法において、被測定物である感光体における感光層は「該感光層の表面側に電荷輸送機能を有する架橋結合型の構造となった領域を有するものとして構成」することができ、この場合には、中間層表面と該架橋結合型構造の領域を有する前記感光層の表面との間の距離、及び導電性基体表面と該架橋結合型構造の領域を有する前記感光層の表面との距離を膜厚として同時に測定できる(請求項10)。
【0019】
また、前記請求項5〜8に記載の膜厚測定方法において、被測定物である感光体における感光層は「中間層に接して設けられた電荷発生層と、この電荷発生層上に形成された電荷輸送層とにより構成」とすることができ、この場合は、電荷発生層と電荷輸送層の各層厚の和と、中間層と電荷発生層と電荷輸送層の膜厚和を同時に膜厚として測定できる(請求項11)。
【0020】
請求項11に記載の膜厚測定方法において、被測定物における「電荷輸送層の表面側に補強用のフィラー微粒子を分散させた領域を有するものとして構成でき、この場合には、中間層表面と該フィラー微粒子を分散させた領域を有する前記感光層の表面との間の距離、及び、導電性基体表面と該フィラー微粒子を分散させた領域を有する前記感光層の表面との距離を膜厚として測定できる(請求項12)。
【0021】
請求項11に記載の膜厚測定方法において、被測定物における「感光層を、表面側に電荷輸送機能を有する架橋結合型の構造となった領域を有するもの」として構成でき、この場合には、中間層表面と該架橋結合型構造の領域を有する前記感光層の表面との間の距離、及び、導電性基体表面と該架橋結合型構造の領域を有する前記感光層の表面との距離を膜厚として測定できる(請求項13)。
【0022】
本発明の膜厚測定装置は、請求項1に記載の膜厚測定方法を実施する装置であって、光源と、ファイバプローブと、対物レンズと、分光手段と、スペクトル強度検出手段と、演算手段とを有する(請求項14)。
「光源」は、光透過性の膜の構成により定められる波長領域のスペクトル光を放射する。
「ファイバプローブ」は、光源からの光を被測定物側へ導光し、射出部から被測定物側に向けて射出させ、被測定物からの反射光を該ファイバプローブに備えられた検出光伝送用ファイバにより受光して伝送する。
「対物レンズ」は、ファイバプローブの検出光伝送用ファイバの射出部から射出した照射光を被測定物の膜に向って集光させる。
「分光手段」は、被測定物により反射され、対物レンズを介して検出光伝送用ファイバにより伝送された検出光を分光する。
「スペクトル強度検出手段」は、分光手段により分光された検出光の分光スペクトル強度を検出する。
「演算手段」は、分光スペクトル強度の極小と極大を与える振幅の振動をコサイン波成分に分解する周波数解析法に基づき、被測定物における光透過性の膜及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を同時に演算算出する。
そして、照射光は被測定物の表面に垂直入射させられる。
【0023】
請求項14に記載の膜厚測定装置において用いられる対物レンズは、「開口数(NA)が0.2以上のもの」であることが好ましい(請求項15)。
NA:0.2以上の対物レンズを用いることにより、対物レンズによる集光性を向上させることができ、検出できる反射光の光量が大きくなり、検出光の分光スペクトル強度の良好な検出が可能になる。
【0024】
NAは対物レンズの性能を決める重要な値であり、焦点深度(空間分解能)、明るさに関係する値となる。NA(Numerical Aperture)とも呼び、以下の式で表されるものである。
NA=n・sinθ(ここでnは膜と対物レンズの間の媒質の屈折率、θは光軸と対物レンズの最も外側に入る光線とがなす角を示す)であり、NAが大きく成る程、空間分解能は向上する。但し、通常は市販対物レンズには単体のNAが記載されている。
請求項14または15に記載の膜厚測定装置において、対物レンズは「アクロマティックレンズ」であることが好ましい(請求項16)。
対物レンズをアクロマティックレンズとすることにより、集光時・受光時における色収差を除去でき、高い集光性と波長精度の良い分光スペクトル強度を検出できる。
【0025】
請求項14〜16に記載の膜厚測定装置における光源としては、750〜1000nmの発光波長を有することが好ましい(請求項17)。
750〜1000nmの発光波長を有することにより、一部の光は中間層表面で反射されるようになり、一部の光は中間層を透過して導電性基体表面まで到達し反射する為、光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を同時に測定することが可能となる。
請求項14〜17に記載の膜厚測定装置における光源としては、放射される光が可視域下限から近赤外域までの極めて広い分光分布を持つ「ハロゲン−タングステンランプ」が好ましい(請求項18)。
ハロゲン−タングステンランプから放射される光は広い波長領域に分光分布を持つので、上述の「光透過性の膜の構成により定められる波長領域のスペクトル光」を容易に実現できる。光源としては他に、400〜1000nmに発光分布を持つLED等を利用できる。
【0026】
請求項14〜18のいずれかに記載の膜厚測定装置において用いられる分光手段として「回折格子もしくはプリズムあるいは分光フィルタ」を用いることができる(請求項19)。
回折格子等の分光手段は、回転により分光波長領域を変化させる回転方式のものを用いることもできるが、「固定型の分光手段(空間的に固定して用いられる回折格子等)」を用いると、回転のためのスペースや回転機構が不要となるため、膜厚測定装置のコンパクト化が可能になる。
【0027】
請求項14〜19のいずれかに記載の膜厚測定装置において用いられるスペクトル強度検出手段としては、CCD等のラインセンサや、所定の分光波長位置にシリコンフォトダイオードを配列した「シリコンフォトダイオード列」を好適に用いることができる(請求項20)。
シリコンフォトダイオードは、小型、軽量、安価であり、後述するように「膜厚測定装置を画像形成装置に組み込む場合」にも回路構成が簡単である。
【0028】
請求項14〜20に記載の膜厚測定装置の分光手段としては、分光された検出光のスペクトル強度を検出するスペクトル強度検出手段の分光分解能が0.6nm/素子以下であることが好ましい(請求項21)。
分光分解能が0.6nm以下で有ることにより、光透過性の膜厚及び光透過性の膜と下引層の膜厚和に対応した干渉波形から山のピーク波長と谷のピーク波長を抽出することが可能となり光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を同時に測定することが可能となる。
【0029】
請求項14〜21のいずれかに記載の膜厚測定装置において用いられるファイバプローブは、その対物レンズ側端部が「検出光伝送用ファイバの端部を中心とし、これを照射光導光用のファイバの射出側端部が囲繞する」ように構成されたものを用いることができる(請求項22)。
【0030】
この発明の画像形成装置は「感光体に静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して得られるトナー画像をシート状の記録媒体に転写し、記録媒体上に定着して画像形成を行なう画像形成装置」であって、感光体が「導電性基体の表面に、微細粒子を分散させた中間層を下引層として設け、中間層上に感光層を光透過性の膜として形成された」ものであり、この感光体の感光層の厚さと中間層と感光層の膜厚和を同時に測定する手段として、請求項14〜22のいずれかに記載の膜厚測定装置を有することを特徴とする(請求項23)。
「シート状の記録媒体」としては、通常の転写紙やOHPシート(オーバヘッドプロジェクタ用のプラスチックシート)等を用いることができる。
この発明の画像形成装置は、アナログやデジタルの複写装置、ファクシミリ装置、光プリンタ、光プロッタ、光製版装置等として実施でき、タンデム式のカラー画像形成装置における「単色画像形成部」としても実施できる。
【0031】
前記請求項23に記載の画像形成装置は「膜厚測定装置により測定される感光層の厚み或いは中間層と感光層の膜厚和が所定値以下となったとき、その旨の表示を行なう」ことができる(請求項24)。
「感光層の厚みの所定値」は、例えば「100回程度の画像形成プロセスで感光体の寿命が尽きるような厚さ」とすることができ、このような場合、その旨の表示としては、例えば、画像形成装置のコントロールディスプレイに「まもなく感光体の寿命が尽きますので、感光体の交換を行って下さい」等のメッセージとして表示することができる。
あるいは、前記所定値を感光体の寿命限度の厚さとすることもでき、その場合には、前記ディスプレイに例えば「感光体の寿命が尽きました。感光体を交換して下さい」とのメッセージを表示することができ、必要とあれば、このメッセージ表示とともに画像形成装置を「作動できない状態」にすることもできる。
このようにすることにより、感光体の交換を適切且つスムーズに行なうことができ、画像形成プロセスが実行されるときには常に「感光体劣化に起因する画像劣化のない高品位な画像」を得ることが可能になる。
【0032】
前記請求項23または24記載の画像形成装置における感光体の中間層は「顔料の微細粒子を分散させた3.5μm以下の層厚」を持つことが好ましい(請求項25)。
【0033】
請求項23〜25のいずれかに記載の画像形成装置における感光体の感光層は「中間層に接して光導電層を有する」ものであってもよいし(請求項26)、「中間層に接して設けられた電荷発生層と、この電荷発生層上に形成された電荷輸送層とを有する」ものであってもよく(請求項27)、感光層の表面側が、補強用のフィラー微粒子を分散させた領域を有するもの」として構成されていてもよい(請求項28)。
請求項28に記載の画像形成装置に用いられる感光体のように、感光体表面部分を「補強用のフィラー微粒子を分散させた表面層」とすることにより、感光層表面の磨耗を有効に軽減でき、感光体を長寿命化できる。
また、「感光層の表面側が、電荷輸送機能を有する架橋結合型の構造となった領域を有するもの」として構成されていてもよい(請求項29)。
【0034】
前記請求項28に記載の画像形成装置において、感光層に分散される補強用のフィラー微粒子の粒子径もしくは凝集径は0.9μm以下であることが好ましく、その場合、膜厚測定装置における測定波長領域(分光スペクトル強度の極大・極小を与える波長を特定する領域)を、前記粒子径若しくは凝集径以上の領域とする(請求項30)。
このように、測定波長領域をフィラー微粒子の粒子径や凝集径よりも大きい波長領域とすることにより、検出光における「フィラー微粒子やその凝縮粒子による散乱や回折の影響」する波長領域を避けて、良好な膜厚測定を実現できる。
フィラー微粒子径やその凝集径が0.9μm以下であれば、膜厚測定に好適な0.9〜1.0μm領域の測定波長領域が確保され、良好な分光スペクトルを検出でき、フィラーを分散した表面層の残存膜厚を精度良く測定できる。
なお、前記「補強用に分散させるフィラー微粒子」は1種に限らず、2種以上のもの(種類毎に粒径が異なっても良い)を混合して分散させてもよく、各種フィラー微粒子は有機材料・無機材料のものとも使用可能である。前記感光体の表面近傍の部分はまた「電荷輸送物質」を含むことができる。
【0035】
請求項31記載の膜厚測定装置は、請求項1記載の膜厚測定方法を実施する装置であって、請求項14〜22のいずれかに記載の膜厚測定装置の構成に加えて、「光透過性の膜の構成により定められる波長領域のスペクトル光を放射する光源から放射される光のうち、不要波長領域の光をカットするフィルタ」を有することを特徴とする。
「不要波長領域」の光は、膜厚測定に寄与しない波長領域の光(例えば、750〜850nm範囲外の波長の光であり、480nm以下の紫外線域を含む光や近赤外域で熱ダメージを受けることになる850nmを越える波長の光を含む)で、この波長領域の光を照射することにより被測定物(特に感光体)に光疲労等のダメージを与えるような光であり、被測定物の分光特性(例えば、感光体の分光感度や分光吸収特性等)により定められる。
被測定物が感光体の場合、前記不要波長領域は感光層非吸収帯域であることが好ましく、特に紫外域や近赤外領域であることが好ましい。この場合のフィルタとしては「720〜1050nm」の波長領域の光を透過させる「シャープカットフィルタ」等が好適である。
【0036】
請求項32記載の膜厚測定装置は、請求項1記載の膜厚測定方法を実施する装置であって、「光源が放射するスペクトル光が、下引層を透過する波長領域を含む」ことを特徴とする。
請求項31、32記載の膜厚測定装置において用いられる対物レンズは前述のもの同様「開口数(NA)が0.2以上のもの」であることが好ましく、「アクロマティックレンズ」であることが好ましい。また、光源は、放射される光が可視域下限:750nmから近赤外域:1000nmまでの極めて広い分光分布を持つ「ハロゲン−タングステンランプ」が好ましい。光源としては他に、400〜1050nmに発光分布を持つLED等を利用できる。
分光手段としては「回折格子もしくはプリズムあるいは分光フィルタ」を用いることができ、回折格子等の分光手段は、回転により分光波長領域を変化させる回転方式のものを用いることもできるが、「固定型の分光手段(空間的に固定して用いられる回折格子等)」を用いると、回転のためのスペースや回転機構が不要となるため、膜厚測定装置のコンパクト化が可能になる。
同様に、請求項31、32記載の膜厚測定装置においても、スペクトル強度検出手段としては、CCD等のラインセンサや、所定の分光波長位置にシリコンフォトダイオードを配列した「シリコンフォトダイオード列」を好適に用いることができる。
また、請求項31、32記載の膜厚測定装置においても、ファイバプローブはその対物レンズ側端部が「検出光伝送用ファイバの端部を中心とし、これを照射光導光用のファイバの射出側端部が囲繞する」ように構成されたものを用いることができる。
【0037】
請求項33記載の画像形成装置は「感光体に静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して得られるトナー画像をシート状の記録媒体に転写し、記録媒体に定着して画像形成を行なう画像形成装置」において、感光体が、導電性基体の表面に、顔料の微細粒子を分散させた中間層を下引層として設け、中間層上に感光層を光透過性の膜として形成されたものであり、感光体の感光層の厚さ及び中間層と感光層膜の膜厚和を測定する手段として請求項31記載の膜厚測定装置を有することを特徴とする。
請求項23記載の画像形成装置や「請求項33記載の画像形成装置のうちで、請求項31記載の膜厚測定装置を有するもの」では、膜厚測定装置が「不要波長領域の光をカットするフィルタ」を有するので、膜厚測定装置による感光層及び感光層と下引層の膜厚和の測定の際に、感光体に光疲労等のダメージを与えることが無い。
この発明の感光体の製造方法は、下引層形成工程と、感光性膜形成工程と、スプレー塗工工程と、膜厚測定工程と、塗膜乾燥硬化工程とを備える。
「下引層形成工程」は、導電性基体の表面に微細粒子を分散させた中間層を下引層として塗布、乾燥硬化させる工程である。
「感光性膜形成工程」は、中間層上に感光性の膜を光透過性の膜として塗布、乾燥硬化させる工程である。
「スプレー塗工工程」は、感光性膜形成工程後に「補強用のフィラー微粒子を分散させた塗液」をスプレー塗工法によって塗布する工程である。ここで、本発明における「補強」とは、例えば層の補強、或いは耐摩耗性の補強が含まれ、層の補強は、FRP等のフィラー充填された整形用樹脂組成物の場合と同様、硬度増強や耐応力変形性の増加や硬度増加或いは靭性増強等の機械強度の増進、温度膨張率の減少や耐熱性の増加等の熱的性質の改質を意味する。
「膜厚測定工程」は、スプレー塗工工程で塗布された塗液(塗膜)の湿潤状態で「中間層の表面と塗液表面との間の距離」及び「導電性基体の表面と塗液表面との間の距離」を膜厚として測定する膜厚測定工程であり、前述した請求項14〜22、31、32の任意の1に記載の膜厚測定装置を用いて行なう。
「塗膜乾燥硬化工程」は、膜厚測定工程後に塗膜を乾燥硬化する工程である。
膜厚測定工程で測定された湿潤膜厚に基づいてスプレー塗布条件を制御しつつスプレー塗工工程を実行する。
【0038】
また、この発明の感光体の製造方法は、下引層形成工程と、感光性膜形成工程と、スプレー塗工工程と、膜厚測定工程と、湿潤膜硬化工程とを備える。
「下引層形成工程」は、導電性基体の表面に微細粒子を分散させた中間層を下引層として塗布、乾燥硬化させる工程である。
「感光性膜形成工程」は、中間層上に感光性の膜を光透過性の膜として塗布、乾燥硬化させる工程である。
「スプレー塗工工程」は、感光性膜形成工程後に「電荷輸送性を有すると共に光エネルギーの付与により重合・硬化する光架橋型の重合成樹脂と溶媒を含む塗液」をスプレー塗工法によって塗布する工程である。
「膜厚測定工程」は、スプレー塗工工程で塗布された塗液(塗膜)の湿潤状態で「中間層の表面と塗液表面との間の距離」及び「導電性基体の表面と塗液表面との間の距離」を膜厚として測定する膜厚測定工程であり、前述した請求項14〜22、31、32の任意の1に記載の膜厚測定装置を用いて行なう。
「湿潤膜硬化工程」は、膜厚測定工程後に湿潤膜に光エネルギーを付与して硬化し、更に乾燥させて塗膜を硬化する工程である。
膜厚測定工程で測定された湿潤膜厚に基づいてスプレー塗布条件を制御しつつスプレー塗工工程を実行する。
【0039】
請求項34及び35に記載の製造方法においては、導電性基体を円筒状もしくはベルト状とし、膜厚測定工程で、導電性基体の軸方向において膜厚を多点測定し、前記軸方向に対する膜厚分布を測定することができる(請求項36)。
【0040】
また、請求項34または35、36記載の製造法方において、制御すべきスプレー塗布条件として「膜厚測定工程で測定された湿潤膜厚に基づいて、スプレー塗工工程における塗液の吐出量」を制御して塗布量を調整することができる(請求項37)。
【0041】
前記請求項34〜37記載の製造方法は「スプレー塗工工程により形成された表面層が乾燥固化した後に、中間層の表面と表面層の表面との間の距離及び導電性基体の表面と表面層の表面との間の距離を測定する工程を有する」ことができる(請求項38)。
【0042】
本発明の感光体は、前記請求項34〜38のいずれかに記載の製造方法により製造される感光体である(請求項39)。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、新規な膜厚測定方法および膜厚測定装置および膜厚測定装置を有する画像形成装置、感光体および感光体の製造方法を実現できる。この発明の膜厚測定方法及び装置は、前記の如く「支持基板上に下引層を介して光透過性の膜を形成してなる被測定物における光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和」を、容易、確実且つ高い精度をもって同時に測定することができる。
そして、このような膜厚測定装置を持つ画像形成装置では、各種の感光体、特にフィラー微粒子を分散させた表面層や電荷輸送機能有する架橋型表面層を持つ感光体における感光層の厚さを極めて精度よく測定でき、感光体の寿命が尽きることによるトラブルを有効に回避し、感光体の交換をスムーズに行なうことができる。
また、本発明の感光体の製造方法によれば、品質の均一な感光体を容易に且つ確実に製造でき、このように製造された感光体は品質が均一で信頼性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、発明の実施の形態を説明する。最初に画像形成装置の実施の1形態を説明する。
図1は、画像形成装置の実施の1形態を要部のみ説明図的に示している。
【0045】
図1において、符号(10)をもって示す光導電性感光体(以下、単に感光体(10)と呼ぶ)は「ドラム状」に形成され、画像形成時には時計回りに所定の回転速度で回転駆動される。
画像形成プロセスは以下の如く行なわれる。即ち、時計方向に等速回転する感光体(10)の周面が帯電手段(11)(帯電ローラによる接触式のものを示しているが、コロナ放電式のものや帯電ブラシ等を用いることもできる)により一様に帯電され、帯電された感光体表面が露光される。
図1における符号(12)は、図示されない光走査式書込装置による「走査光」を示している。勿論、露光は、アナログ複写機の場合のように「光像照射」によって行なうこともできるし、LEDアレイのような光書込装置による光書込みにより行なうこともできる。
露光により感光体(10)に形成される静電潜像は現像装置(13)により現像され、トナー画像として可視化される。説明中の例では、静電潜像は走査光(12)の走査により「ネガ潜像」として形成され、現像装置(13)による反転現像によりポジの「トナー画像」となる。
トナー画像を転写されるべきシート状の記録媒体(転写紙や、オーバヘッドプロジェクタ用のプラスチックシートであるOHPシート等)Sは、転写ベルト(14)の外周面に保持されて図の左方へ搬送されつつ、転写部においてトナー画像に重ね合せられ、転写手段(15)(転写ブラシによるものを例示しているが、転写ローラを用いることもできるし、コロナ放電式のものを用いることもできる)を通じて印加される転写バイアス電圧によりトナー画像を転写される。
トナー画像を転写された記録媒体Sは定着部へ搬送され、図示されない定着装置によりトナー画像を定着され、装置外へ排出される。なお、トナー画像のシート状の記録媒体への転写は、前記のように、感光体(10)上から記録媒体S上へ直接的に転写しても良いが、中間転写ベルトのような中間転写媒体を介して記録媒体への転写を行なうようにしてもよい。
トナー画像転写後の感光体(10)は、クリーニング装置(16)により、感光層表面に残留している転写残りのトナーや紙粉等を除去される。即ち、感光体(10)の表面は先ずクリーニングブラシ(18)によりブラッシングされ、次いでクリーニングブレード(17)の当接エッジ部により摺擦される。
クリーニングブラシ(18)、クリーニングブレード(17)により感光体表面から除去されたトナーは、廃トナー搬送スクリュー(19)により、図示されない廃トナー収容部に搬送される。クリーニングブレード(17)は、感光体(10)に対する接触圧が特に大きい。
【0046】
このように、画像形成プロセスが実行される際、感光体(10)の表面には帯電手段(11)やクリーニングブラシ(18)、クリーニングブレード(17)等が接触し、これら接触物により、感光体(10)の感光層は徐々に削られて磨耗する。
磨耗に伴ない、感光層の層厚が一定値以下になると、光感度の減退や帯電特性の劣化が生じ、良好な画像形成を行なえなくなる。図1の実施の形態においては、感光体(10)の感光層の層厚を膜厚測定装置(9)により測定し、その結果、層厚が所定の厚さ以下になった場合に、その旨の表示を行なうようにしている。
即ち、膜厚測定装置(9)による膜厚測定(膜厚測定は、常時行なうようにしてもよいし、画像形成プロセス複数回に対して1回の割合というように間欠的に行なってもよい)の測定結果である膜厚は、マイクロコンピュータ等で構成された制御手段(20)に入力される。
【0047】
図2のフロー図に示すように、制御手段(20)は「予め設定された膜厚値:DA、DB」を記憶している。膜厚値:DAは「感光体(10)の機能は正常であるが、例えば、画像形成プロセス100回くらいで感光体としての正常な機能が果たせなくなるような膜厚」であり、膜厚値:DBは感光体(10)の寿命が尽きる厚さである。
制御手段(20)は、膜厚(感光層の厚み)の測定値:Dを前記膜厚値:DA、DBと比較する。D>DAであるときは、感光体(10)は正常に機能し、画像形成プロセスに支障はなく「画像形成可能」である。
DA≧D>DBでは、感光体(10)は正常に機能し、画造形成プロセスに支障はないが、近い将来に感光体(10)の寿命が尽きるので、その旨を表示:Aとして、例えば、前述のように、画像形成装置のコントロールディスプレイに「まもなく感光体の寿命が尽きますので、感光体の交換を行って下さい。」等のメッセージとして表示する。
D≦DBであるときは感光体(10)の寿命が尽きているので、この場合にはその旨の表示:Bとして、例えば前述のように、前記ディスプレイに「感光体の寿命が尽きました。感光体を交換して下さい。」とのメッセージを表示し、画像形成装置を「作動できない状態」にする。なお、前記のメッセージの表示は、前記ディスプレイへの表示とともに、あるいはディスプレイへの表示に代えて「音声」により行なうようにしても良い。
上の例では、感光体(10)を交換するのであるが、勿論、プロセスカートリッジ等のプロセスユニットの交換を行なうようにすることもできる。
【0048】
感光体(10)としては種々の構成のものを用いることができる。
感光体(10)の構成として代表的なものを3例挙げると、図3(a)に示すものは、表面粗度Rmax0.4μm以下或いは表面粗度RzJIS:0.4〜1.8μmの導電性基体であるアルミニウムドラム(2)上に形成された中間層(3)の上に「表面側の一部を表面層(6)として形成された光導電層(30)」による感光層が形成されたものである。
【0049】
図3(b)に示すものは、表面粗度Rmax0.4μm以下或いは表面粗度RzJIS:0.4〜1.8μmのアルミニウムドラム(2)上に中間層(3)を形成し、その上に電荷発生層(4)と電荷輸送層(5)を積層し、さらに表面層(6)を形成したものであり、電荷発生層(4)、電荷輸送層(5)および表面層(6)が感光層をなしている。
【0050】
図3(c)に示すものは、表面粗度Rmax0.4μm以下或いは表面粗度RzJIS:0.4〜1.8μmのアルミニウムドラム(2)上に中間層(3)を形成し、その上に「電荷発生層(4)と電荷輸送層(5)を積層して感光層とした」ものである。
【0051】
図3(a)〜(c)において、中間層(3)は、導電性基体に感光層を接着固定するバインダとしての機能をもち、帯電ムラ等の弊害を抑制するために「顔料の微細粒子」が含有される。
図3(b)、(c)において、電荷発生層(4)は、特定の波長の照射により「正負の電荷対」を発生させる層であり、電荷輸送層(5)は電荷発生層(4)で発生した電荷のうち所定極性のものを感光層表面へ輸送する機能を持つ。
【0052】
また、図3(a)において、表面層(6)は「光導電層(30)の表面側に補強用のフィラー微粒子を分散」或いは「電荷輸送機能を有する架橋型樹脂」として形成したものであり、同様に、図3(b)の表面層(6)は「電荷輸送層(5)の表面側に補強用のフィラー微粒子を分散」或いは「電荷輸送機能を有する架橋型樹脂」として形成したものである。従って、図3(a)における表面層(6)は、光導電層(30)の成分となる光導電性物質とフィラー微粒子の分散系或いは電荷輸送機能を有する架橋型樹脂であり、図3(b)における表面層(6)は、電荷輸送層の材料物質とフィラー微粒子の分散系或いは電荷輸送機能を有する架橋型樹脂である。
なお、図3(c)に示す構成において、電荷輸送層(5)内に均一にフィラー微粒子を分散させることもできる。
前記中間層(3)、電荷発生層(4)、電荷輸送層(5)または光導電層(30)、表面層(6)の膜厚は好ましくはそれぞれ、2〜6μm、1μm以下、15〜35μm、3〜9μm程度であり、従って、感光層としての好ましい厚さは19〜45μmとなる。
中間層(3)の層厚は、前記の如く一般的に2〜6μmであるが、中間層としての十全な機能や、光透過性の膜表面と支持基板表面との光干渉効果を良好ならしむるためには中間層(3)の厚さは3.5μm以下であることが好ましい。
【0053】
図8に示すように中間層の層厚が3.5μm以上である場合は870nm以下では、光透過性の膜表面と支持基板表面との干渉計測に必要な中間層の透過光(図中の振動している反射率成分)が得られず、下引層(中間層)と光透過性の膜の膜厚和を測定することが不可能になる。
中間層の層厚は、膜を一部剥離することに依り、段差計或いは表面粗さ計にて測定することができる。
【0054】
画像形成装置における露光手段として「レーザ光による光走査装置」が用いられる場合、レーザ光の波長に依っては導電性基体の表面や中間層の表面、あるいは感光層表面で内部反射して感光層内部で干渉し、画像上に干渉模様が現れる場合があり、このような問題を回避するために導電性基体の表面を「切削」等により粗したり、中間層に顔料の微細粒子を分散させて乱反射を生じさせることもある。この場合も、導電性基体表面が荒れすぎたときは、下引層(中間層)と光透過性の膜の膜厚和を測定することが困難となる。
【0055】
前記の如く、中間層は顔料を含有するが、含有の形態は「バインダ樹脂に顔料の微細粒子を分散」させた形態である。この場合、顔料微粒子とバインダ樹脂の屈折率差を1.0以上にすると、顔料微粒子と樹脂との境界面の反射が増えて中間層の不透明度が増し、中間層界面で光の反射率が大きくなるとともに、顔料微粒子内での屈折角度が大きくなり、入射方向に多くの光が戻るため、「光透過性の膜の膜厚」を測定する場合は、「検出光の良好な分光スペクトル強度」を得ることが良好となる。
【0056】
中間層に分散させる顔料としては、その上に形成される感光層との屈折率差が小さければ、屈折率の大きなルチル型或いはアナターゼ型のTiOが好ましく、バインダ樹脂としては屈折率の小さなアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、酢ビ樹脂などが好適である。
中間層界面の反射率は、感光層の表面(空気と接触する面)での反射率に対する中間層界面の反射率を確保する観点から、400〜1100nmの波長領域に対して50%以上90%未満であることが好ましい。中間層の界面での反射率が90%を越えると、分光スペクトル強度の極大・極小の差が小さくなり、測定の感度が低下する。また、50%以下の反射率では、分光スペクトル強度が小さくなり、迅速な層厚測定が難しくなる。
【0057】
前述した如く、感光層の表面層を形成するために、感光層の表面部に分散させる補強用のフィラー微粒子としては、有機および無機の何れのものも使用可能であるが、有機フィラー微粒子の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が好適であり、無機フィラー微粒子の材料としては、銅、すず、アルミニウム、インジウムなどの金属の粉末、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、アルミナ等の金属酸化物、チタン酸カリウム等が好適である。
これら材料による1種若しくは2種以上のフィラー微粒子を分散させて表面層とすることができる。フィラー微粒子の分散は、電荷輸送層或いは表面層塗布液の状態で適当な分散機を用いることにより行なうことができる。分散させるフィラー微粒子の粒子径あるいは凝集径は0.9μm以下が好ましい。
【0058】
また、上述したように、必要に応じ、表面層に電荷輸送物質を添加することもでき、このような電荷輸送物質としては、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、トリアリールメタン系化合物等を挙げることができる。
更に表面層は、いわゆる電荷輸送性の分子構造を有する光架橋型樹脂と溶媒を含む塗工液を用いて形成した湿潤膜に光エネルギーを付与して硬化させたものでも良く、前述した電荷輸送物質や添加剤を含有させても良い。
【0059】
図3(b)、(c)に示す感光体構成のように、電荷発生層(4)を有する積層型の感光層の場合、電荷発生層(4)が光吸収層となって中間層界面での反射を弱めるので、十分な強度の分光スペクトルを得るには、CCDやシリコンフォトダイオード列によるスペクトル強度検出手段の波長感度内に十分な分光反射率を持つことが好ましく、特に分光吸収特性が900nm以下であると、良好な分光スペクトルの取得が容易である。
【0060】
図4(a)は、膜厚測定装置(9)の実施の1形態を略示している。
膜厚測定装置(9)は、光透過性の膜の構成により定められる波長領域のスペクトル光を放射する光源(91)と、光源(91)からの光を被測定物(感光体:10)側へ導光し、射出部から被測定物側に向けて射出させ、被測定物からの反射光を検出光伝送用ファイバ(92)により受光して伝送するファイバプローブ(93)と、ファイバプローブ(93)の射出部から射出した照射光を被測定物(感光体:10)の膜(感光層)に向って集光させる対物レンズ(94)と、被測定物により反射され、対物レンズ(94)を介して検出光伝送用ファイバ(92)により伝送された光を分光する分光手段(96)と、分光手段(96)により分光された検出光の分光スペクトル強度を検出するスペクトル強度検出手段(97)と、分光スペクトル強度の極小と極大を与える振幅の振動をコサイン波成分に分解する周波数解析法に基づき、被測定物における光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を同時に演算算出する演算手段(98)とを有し、照射光を被測定物の表面に垂直入射させるように構成されている(請求項14)。
【0061】
対物レンズ(94)は開口数(NA)が0.2以上のもの(請求項15)が好ましく、説明中の例においては、レンズ径:25.4mm、焦点距離30mmの「アクロマティックレンズ」である(請求項16)。対物レンズ(94)は、鏡筒(95)の一端部に固定され、鏡筒(95)の他端部はファイバプローブ(93)の射出側端部を保持している。
この装置例における対物レンズ(94)と感光層表面との距離は70mm、対物レンズ(93)とファイバプローブ(93)の射出側端部との距離は52.5mmである。
【0062】
光源(91)は「ハロゲン−タングステンランプ」で、可視領域から近赤外領域にわたる広い波長領域のスペクトル光を放射する。放射された光は、ファイバプローブ(93)の照射光導光用のファイバ(930)によりファイバプローブ(93)の射出部へ導光される。
【0063】
ファイバプローブ(93)の対物レンズ側端部は、図4(b)に示すように、検出光伝送用ファイバ(92)の端部を中心とし、これを照射光導光用のファイバ(930)の射出側端部が囲繞するように構成されている(請求項22)。射出部から射出した光は対物レンズ(94)により、感光層表面に径:0.53mmの光スポットとして集光される。
即ち、照射光導光用のファイバ(930)の「端面の直径」は0.2mmであり、図4(b)に示すファイバ(930)の束を直径:0.4mmの円形光源とすると、対物レンズ(94)の結像倍率(=70/52.5=1.33)を用いて、光スポットの径は0.53mmとなる。
【0064】
この装置例における分光手段(96)は「回折格子」であり(請求項19)、具体的には、固定型ツェルニターナ型回折格子(ポリクロメータ)で、分光領域:770〜1050nm、分光分解能:0.5nm/素子のものである。分光手段(96)としては、前述のように、回折格子に代えて「プリズムあるいは分光フィルタ」を用いることもできる。
【0065】
この装置例におけるスペクトル強度検出手段(97)は「ラインセンサ」であり(請求項20)、可視域から1050nmの範囲で感度を持ち、受光素子数:512のものを用いている。このようなラインセンサに代えて前述のシリコンフォトダイオード列を用いることもできることは言うまでもない。
【0066】
感光層の層厚測定のステップを、感光体(10)の構成として、図3(b)の如き場合を例として説明する。即ち、この場合、感光層は電荷発生層(4)と電荷輸送層(5)と表面層(6)により構成される。表面層(6)は、電荷輸送層(5)と同一材質中に粒径:0.85μm、即ち850nmのフィラー微粒子を均一に分散させたものである。
集光された光は、一部が、感光層の表面即ち表面層(6)の表面で反射され、一部は、表面層(6)内に入射し、電荷輸送層(5)を透過して中間層(3)の表面で反射される。更に一部の光は、中間層(3)内に入射し支持基板表面で反射される。これら反射光は対物レンズ(94)を介してファイバプローブ(93)の射出端の「検出光伝送用ファイバ(92)の端面」に集光され、導ファイバ(92)により分光手段(96)へ「検出光」として伝送される。伝送された検出光は分光手段(96)により分光され、その分光スペクトル強度がスペクトル強度検出手段(97)により検出される。
【0067】
図5は、前記のようにしてスペクトル強度検出手段(97)により検出されたデータである。図に示すように、分光スペクトル強度は、光透過性の膜表面と下引層表面とにより反射して互いに干渉した反射光と、光透過性の膜表面と支持基板表面とにより反射して互いに干渉した反射光が相乗された形となっており、分光スペクトル強度は波長:770nmから波長1050nmの領域にわたって有限であり、全波長領域で強度が波長とともに振動的に変化する。
分光スペクトル強度のこのような振動的な変化は「検出光における干渉」の結果であるが、分光スペクトル強度の振動的な変化の振幅は、波長:770〜870nmの領域では極めて小さく、波長:870nm以上の領域で大きい。これは、表面層(6)に分散されているフィラー微粒子が図5では850nmの粒径を持つため、850nm以下の波長の光が表面層(6)で散乱され、検出光の中で有意な干渉を生じないためであること、或いは電荷発生層(4)に分散されている顔料粒子の粒子と吸収特性に依って870nm以下で光が散乱されたり吸収され、検出光の中で有意な干渉を生じないためである。
前記の如き条件で、実験したところでは感光層の厚さを0.1μm以下の分解能で精度良く測定することができた。
感光体(10)の構成として、図3(c)の如き構成で、電荷輸送層(5)の内部に粒径:850nmのフィラー微粒子を均一に分散させたものの場合や、図3(b)の表面層を電荷輸送機能を有する架橋型樹脂とした場合、図3(a)の如く、光導電層の表面部分を表面層(6)とした感光層の場合にも、前記と同様にして、感光層の厚さを0.1μm以下の分解能で精度良く測定できた。
【0068】
図6は、図3(c)において、電荷発生層(4)の分光吸収特性を900nm以下とした場合の検出光の分光スペクトル強度を示している。このように、電荷発生層(4)の分光吸収特性を900nm以下としたことに伴ない、波長:880nm以上で極大と極小が大きく分離した良好な分光スペクトル強度を得ることができている。
【0069】
上に説明したように、膜厚測定装置(9)により、支持基板上に下引層を介して光透過性の膜を形成してなる被測定物における光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を同時に測定する方法であって、光透過性の膜の構成により定められる領域の波長スペクトル光を放射する光源(91)からの光をファイバプローブ(93)により導光してその射出部から放射し、この放射光束を対物レンズ(94)により被測定物(10)に垂直入射させて光透過性の膜に集光させ、光透過性の膜表面と下引層表面とにより反射して互いに干渉した反射光及び膜表面と支持基板表面とにより反射して互いに干渉した反射光を、対物レンズ(94)を介して、ファイバプローブ(93)における検出光伝送用ファイバ(92)の端面に戻し、検出光伝送用ファイバ(92)により分光手段(96)に導いて分光し、分光スペクトル強度をコサイン波成分に分解した周波数解析法に基づき光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を演算算出する膜厚測定方法(請求項1)が実施されることになる。
【0070】
上に説明したように、この発明の膜厚測定方法・膜厚測定装置では、対物レンズにより、ファイバプローブの射出端から射出する光を被測定物の光透過性の膜に集光させている。このように、対物レンズ(94)を用いて集光させる代わりに、ファイバプローブ(95)の射出端を、感光層表面から0.5mmの距離に近接させ、射出光を直接感光体(10)の表面に照射するようにしたところ、検出光の分光スペクトル強度は図7の如くになった。
図7から明らかなように、分光スペクトル強度は、振動の振幅(極大値と極小値の差)が極めて小さく、このため、干渉波形の特定が困難となり、周波数解析が困難となるため信頼性のある測定値を演算算出することができない。
【0071】
ここで若干補足すると、上の実施の形態において、分光手段である回折格子として、固定型ツェルニターナ型回折格子で「分光波長領域:770〜1050nm、素子数:512、分解能:0.5nm/素子のもの」を測定用に作製して用いたが、回折格子の分光分解能は、0.6nm/素子〜0.1nm/素子の範囲とすることが好ましい。
なお、分光分解能とは分光波長領域を分光する素子数で割ったもので定義される。
分光分解能を高められる検出器としては、フォトダイオードより感度が高く、素子数が最大で5000画素に及ぶCCDがあるが、900nmを過ぎたあたりからノイズが重畳してくる問題がある。
回折格子の分光分解能を高めることは、電気信号取得時のサンプリング周波数を高めることと同じであり、厚膜化した膜や「フィラー含有に伴い高周波化された干渉スペクトル」の場合、極大(山のピーク)波長と極小(谷のピーク)波長の波長間隔が狭くなるため、情報を欠落することなく離散サンプリングでき、補強用のフィラー微粒子を分散させた表面層をもつ場合の膜厚測定を高精度に行なうことが容易である。
一例として、前記膜厚測定装置における回折格子(96)に代え「波長分解能:1.2nm/素子のもの」を用い、図3(b)の構成の感光体を対象として計測を行なったところ、10回計測での測定膜厚値の平均バラツキが0.8μmとなり、0.1μm以下の分解能での測定ができなかった。
このように、分解能:1.2nm/素子では表面層に分散させたフィラー粒子の粒子径或いは凝集径が0.9μm以下の場合は、十分なスペクトル取得ができない。逆に、分光分解能:0.1nm/素子以下はオーバースペックで、膜厚算出上の計算時間も長くなり、領域も広く取れなくなる。
【0072】
また、前記の如く、上の実施の形態で用いた回折格子(96)として、分光領域が770nm〜1050nmであるものを用いた。このような分光領域のものを用いると、フィラー微粒子径やその凝集径が0.9μm以下である場合、膜厚測定に好適な0.9〜1.0μm領域の測定波長が確保されるので、この領域に回折格子の分光領域を設定することにより、精度の高い干渉スペクトルの取得が可能になり0.1μm精度での膜厚測定が可能になるばかりでなく、回折格子の波長分解能の確保も容易になる。
【0073】
分光領域を770nm以下とした場合、測定波長領域がフィラー微粒子の粒子径や凝集径よりも小さな波長領域となるので、「フィラー微粒子やその凝集粒子による散乱や回折」の影響を受け、膜厚計測のための分光スペクトル強度が取得できない。また、分光領域を1050nm以上とした場合、スペクトル強度検出手段であるフォトダイオードの感度域の上限で、これから上の分光領域ではフォトダイオードによる干渉スペクトルの取得ができない。
【0074】
また膜厚計測を可能とする波長領域に関しては、850nmを越えた波長領域では、中間層中に分散された微細粒子の関係から、散乱されずに中間層界面を通り抜けて支持基板に到達する光の成分が多くなり、これに依って中間層界面での反射成分が少なくなる為、干渉波形を周波数解析した場合に、中間層界面と表面層界面間(光透過性の膜)に相当する干渉波形成分が少なくなり、光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和を同時に演算算出することができなくなる。
図9に、請求項31記載の膜厚測定装置の実施の1形態を示している。繁雑を避けるため、図4に示した膜厚測定装置の各部と同一のものについては図4(a)におけるものと同一の符号を付した。
図9に示す膜厚測定装置(9A)が図4のものと異なる点は、図9の膜厚測定装置(9A)は、図4に示した膜厚測定装置(9)の構成に加えて「光透過性の膜の構成により定められる波長領域のスペクトル光を放射する光源から放射される光のうち、不要波長領域の光」をカットするフィルタ(99)を光源(91)の側に有する点のみであり、他の部分は図4に示すものと同じである。
【0075】
フィルタ(99)として、例えば、前述した「720〜1050nmの波長領域」の光を透過させる「シャープカットフィルタ」を用いることにより、測定対象としての感光体に対し光疲労等のダメージを与えることなく良好な膜厚測定を行なうことが可能となる。
上に説明した実施の形態において、図3(b)に示す構成の感光体を対象とした膜厚測定で、電荷発生層(4)の分光吸収特性を900nm以下とした場合の検出光の分光スペクトル強度を図6に示した。
上に説明した実施の形態においては、分光スペクトル強度における極小と極大を与える各波長として「770nm〜850nmの波長領域の値」を用いて周波数解析に依る演算を行なった。
【0076】
即ち、前記のようにすることにより、支持基板上に下引層を介して光透過性の膜を形成してなる被測定物における、光透過性の膜及び下引層と光透過性の膜との膜厚和を測定する方法であって、下引層を透過する波長領域を含むスペクトル光を放射する光源(91)からの光をファイバプローブ(93)により導光してその射出部から放射し、この放射光束を対物レンズ(94)により被測定物(10)に垂直入射させて光透過性の膜に集光させ、光透過性の膜表面と下引層表面とにより反射して互いに干渉した反射光及び光透過性の膜表面と支持基板の表面とにより反射して互いに干渉した反射光を、対物レンズ(94)を介してファイバプローブ(93)における検出光伝送用ファイバの端面に戻し、検出光伝送用ファイバにより分光手段(96)に導いて分光し、分光スペクトル強度をコサイン波成分に分解した周波数解析法に基づき膜厚和を演算算出する膜厚測定方法が実施される。
【0077】
このように実施される膜厚測定方法は、また、被測定物(10)が、導電性基体(2)の表面に、微細粒子を分散させた中間層(3)を下引層として設け、中間層(3)上に感光層を光透過性の膜として形成された感光体であり、感光層が、中間層(3)に接して設けられた電荷発生層(4)と、この電荷発生層(4)上に形成された電荷輸送層(5)とにより構成され、さらに電荷輸送層(5)の表面側が、補強用のフィラー微粒子を分散させた領域、或いは電荷輸送機能を有する架橋型樹脂の領域(6)として構成され、感光層(4)、(5)、(6)との膜厚和、及び中間層(3)と感光層(4)、(5)、(6)との膜厚和を測定する膜厚測定方法である。
【0078】
図10、12、13に具体的な測定結果の1例を示す。
図10において、横軸は感光体上の位置(ドラム状感光体の軸方向の位置)、縦軸は膜厚を表わし、各黒点が膜厚測定値を表わす。図10における「下の測定値」は、測定波長領域として770nm〜850nmの範囲を用いたものであり、この膜厚は「中間層の表面と感光層の表面との間の距離」を与える。
図10における「上の測定値」は、測定波長領域として同様に770nm〜850nmの範囲を用いたものであり、この膜厚は「導電性基体の表面と感光層の表面との間の距離(感光層の膜厚と中間層の厚さの膜厚和)」を与える。従って、これら測定値の間隔は「中間層(下引層)の厚さ」になる。
【0079】
これらは図12のデータから判るように、支持基板の表面粗度をRzJIS:0.4〜1.8μmとした場合、中間層を透過して導電性基体表面に到達した光は、表面粗さの影響で導電性基体表面では光の散乱により干渉に必要な正反射成分が抑制されるので、上層の中間層表面と表面層表面での干渉波形成分が高くなり、干渉波形をコサイン波成分に分解する周波数解析を行なった際に、光透過性の膜の膜厚成分が第一のピーク強度を有する周波数成分となり、下引層と光透過性膜の膜厚和が第二ピーク強度を有する周波数成分となる。
表面粗度がRzJIS:1.8μm以上となった場合は、導電性基体表面まで到達した光は殆どが散乱、拡散反射してしまうので下引層と透過性膜の膜厚和を同時に測定できなくなる。
【0080】
また図13のデータから判るように支持基板の表面粗度をRmax:0.4μm以下の支持基板とした場合、中間層を透過して導電性基体表面に到達した光は、表面性の良さによる正反射光成分の増大により、導電性基体表面と表面層表面での干渉波形成分が高くなり、干渉波形をコサイン波成分に分解する周波数解析を行なった際に、光透過性の膜の膜厚成分が第二のピーク強度を有する周波数成分となり、下引層と光透過性膜の膜厚和が第一のピーク強度を有する周波数成分となってくる。
光の相互作用やばらつきの影響が仮にあった場合も、第一のピーク強度は大きな影響を受けないので下引層と光透過性膜の膜厚和に関しては、高精度での膜厚測定が可能となる。
【0081】
前記の如き条件で、実験したところでは感光層と中間層の膜厚和及び感光層膜厚を0.1μm以下の分解能で精度良く測定することができた。
感光体(10)の構成として、図3(c)の如く「電荷輸送層5の内部に粒子径:850nmのフィラー微粒子を均一に分散させたもの」や、図3(a)の如く「光導電層の表面部分を表面層6としたもの」の場合にも、前記と同様にして、感光層と中間層の膜厚和を0.1μm以下の分解能で精度良く測定できた。
フィラー粒子径の測定に関しては、表面層の一部をサンプリングし、ダイヤモンドカッターを用いて断面を作製し、これを走査型電子顕微鏡により写真撮影を行って膜中の粒子径を測定することで達成することが可能である。
図1に実施の形態を示した画像形成装置における膜厚測定装置(9)として、図9に示す如きものを用いることにより、請求項22記載の画像形成装置の実施の形態を得ることができる。
【0082】
以下には、請求項34以下の感光体の製造方法につき、実施の形態を説明する。
感光体が適正な機能を発揮するには、前述したように「感光層が適正な厚さを持つ」ことが必要であり、上には、画像形成装置の使用に伴なう感光層の厚さの「経時的な変化」を測定する場合を説明した。しかし、感光層の厚さの測定は感光体の製造時にも必要となる。例えば、製造された感光体の感光層が所定の適正な厚みを有するかを検査する場合等である。
また、この発明の膜厚測定方法・装置は、感光体を製造する際に感光層の厚さを適正な厚さに調整するのにも利用できる。
感光体の耐久性を向上させる手段として、感光層にフィラーを添加したり、感光層の表面部分を「フィラーを分散させた表面層」或いは「電荷輸送機能を有する架橋型表面層」とすることについては先に説明した。
感光体の製造において、導電性基体上に感光層を塗布する方法として、浸漬塗工法、リング塗工方、スプレー塗工法などが知られているが、「補強用のフィラー微粒子を分散させた塗液を塗布」或いは「電荷輸送性を有すると共に光エネルギーの付与により重合・硬化する光架橋型の重合成樹脂と溶媒を含む塗液を塗布」する場合、浸漬塗工法やリング塗工法は技術的に難点が多い。
「スプレー塗工法」は、少量の塗布液により様々な基体に対して感光層塗膜を形成でき、塗布液の物性の制御や塗工装置の維持管理が比較的容易であるという利点を有し、フィラー微粒子を分散させた塗工液でも均一な膜を塗布形成できる利点がある。
従って「補強用のフィラー微粒子を分散させた感光層を溶解する溶媒を含んだ塗液」を塗布する場合はスプレー塗工法が適している。
表面層を塗布、乾燥硬化後の製品の感光層の膜厚が変動していると、感光体の電気特性が変化し、異常画像の原因となるが、製造工程中「湿潤状態で膜厚のモニタ」が可能となれば、スプレー塗工工程中に膜の状況把握が可能となり、液物性或いは塗工条件を調整することにより、膜厚が最適化された高品位の感光体の製造が可能となる。
【0083】
請求項34以下の感光体の製造方法では、補強用のフィラー微粒子を分散させた塗液をスプレー塗工法によって塗布した湿潤膜厚を含む「中間層の表面と光透過性の表面層の表面との間の膜厚」及び「支持基体表面と光透過性の表面層の表面との間の膜厚」を、表面層が湿潤状態でも上述の膜厚測定装置を用いて精度良く測定する膜厚測定工程を備え、膜厚測定工程に基づいてスプレー塗布条件を制御して塗布量を調整し、膜厚を最適化して高品位の感光体を得る。
即ち、導電性基体上の下引層を含む感光層の上層に「フィラーを分散させた塗液をスプレー塗工法によって塗布し表面層を形成し、乾燥硬化」する製造方法において、スプレー塗布された塗膜を加熱乾燥する前に、湿潤状態での膜厚が「中間層の表面または導電性基体の表面と、湿潤状態の表面層の表面との間の距離」を上述の膜厚測定装置で測定し、測定された湿潤膜厚に基づいて乾燥膜厚を推定し、推定結果に基づき以後のスプレー塗工工程における塗布条件を制御して塗布量を調整する。
また、導電性基体上の下引層を含む感光層の上層に「電荷輸送性を有すると共に光エネルギーの付与により重合・硬化する光架橋型の重合成樹脂と溶媒を含む塗液をスプレー塗工法によって塗布し表面層を形成し、光エネルギーを付与して硬化し、更に乾燥硬化」する製造方法において、スプレー塗布された塗膜を光硬化及び熱乾燥する前に、湿潤状態での膜厚が「中間層の表面または導電性基体の表面と、湿潤状態の表面層の表面との間の距離」を上述の膜厚測定装置で測定し、測定された湿潤膜厚に基づいて乾燥膜厚を推定し、推定結果に基づき以後のスプレー塗工工程における塗布条件を制御して塗布量を調整する。
前記の如くこの発明の膜厚測定装置によれば、スプレー塗工された補強用のフィラー微粒子を含んだ表面層或いは電荷輸送性を有する光架橋型表面層でも膜厚測定が可能であり、湿潤膜厚に対する測定結果を、スプレー塗工中或いは放置乾燥中に「直後のスプレー塗工工程の塗布条件」に反映でき、感光体の表面層の膜厚均一性を高め、安定した画像品質を有する感光体が得られる。また、生産性を高め、良品率を向上させる事が可能となる。
【0084】
請求項36記載の方法のように、導電性基体の軸方向に湿潤膜厚を多点測定する場合「一般に、スプレー塗工工程では導電性基体の周方向の膜厚は回転塗布によりほぼ同じであるので、多点測定により湿潤膜厚の軸方向の膜厚プロファイルを知ることができ、硬化後の「軸方向の膜厚プロファイル」の推定も容易となり、推定結果に基づいて、以後のスプレー塗工工程における塗布条件を制御して、塗布量を調整することにより、フィラーを含んだ表面層或いは電荷輸送機能を有する架橋型表面層の均一性を高めて良好な感光体を得ることができる。
塗液の物性、スプレー塗工装置、導電性基体などの条件が同じであれば、スプレー塗工における湿潤膜厚は吐出量に応じて変化する。具体的には、吐出量が多くなると膜厚が厚くなり、少なくなると薄くなる。従って、吐出量を制御することでスプレー塗布膜厚を高精度に制御できる。
このように、スプレー塗工工程を伴なう製造方法で膜厚測定を行なう場合、膜厚測定装置に用いられる対物レンズは、レンズ径:φ25mm以上30mm以下の条件下で、被測定物の表面から50mm以上70mm以下離して垂直入射させるのが好ましい。対物レンズが、湿潤状態の膜に近過ぎると「拡散するスプレー塗布液」が対物レンズに掛かり対物レンズを汚損して測定検出力を低下させる虞がある。この問題は、被測定物から対物レンズを離せば解決されるが、離しすぎると対物レンズに戻る光量が低下し膜厚測定に支障をきたす。
対物レンズは、被測定物への光の集束度・集光度を高めるために用いられる。
大径のレンズを使用すると集束度・集光度を高めることができるが、測定に必要な「垂直入射/垂直受光」の基本原理が崩れ、測定光が膜に斜めから入るようになり測定誤差を生じる。対物レンズ径:φ25mm以上30mm以下の条件下で、被測定物の表面から50mm以上70mm以下離して垂直入射させるように構成することにより、スプレー塗工工程でも、スプレー塗液の影響を受けず、十分な測定光の集束度と集光性を確保できる。
本発明の感光体の製造方法において行なわれるスプレー塗工工程は、公知のスプレー塗布装置を用いて行なうことができる。
硬化した膜の厚さを推定するために「スプレー湿潤膜厚と硬化膜厚との相関関係」を予め求めておく。即ち、種々の吐出量で塗布を行ない、湿潤膜厚と硬化膜厚とを膜厚測定装置で測定して相関関係のデータを蓄積し、測定した湿潤膜厚に対応する硬化膜厚が推定される。
その場合、スプレー塗工工程後の湿潤膜厚は、放置乾燥中に時間経過に従って変化するが、液物性・放置乾燥条件が同じであれば、湿潤膜厚の経時変化の挙動は同じとなり、同一時間経過時であれば膜厚変動に及ぼす影響は少ない。湿潤膜厚は、スプレー塗工中に測定する事も可能であるが、一定時間放置した後膜厚測定をすると高精度な膜厚測定が可能となる。
この場合の放置乾燥の時間は、測定した湿潤膜厚に基づく推定結果が次のスプレー塗布にフィードバックできるように設定すれば良く、スプレー塗布直後の時点から「次のスプレー塗布の直前時点」までの時間として設定される。具体的には1〜30分、好ましくは2〜3分に設定される。1分より短いと「湿潤膜からの自然乾燥による溶剤の気化」が不充分で、自然乾燥による膜厚変化が最も激しいときであるため、膜厚測定値のバラツキも大きくなる。30分より長いと、次ぎのスプレー塗工工程へのフィードバックが間に合わなくなる。
湿潤膜の膜厚測定工程は、スプレー塗工工程直後の膜厚減少による測定誤差を低減するため、できる限り短時間で測定を終了させる必要があるが、この発明の膜厚測定装置では、導電性基体の軸方向に10mmピッチで30ポイントの計測を15〜45秒程度で計測できる。
【0085】
以下、図3(b)に構成を示した感光体を例にとって説明する。
中間層(3)は、結着樹脂中に粒子・微細粒子を分散した構成のものであり必要に応じてバインダが加えられる。
結着樹脂としてはポリビニルアルコール、ニトロセルロース、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン、アルキドーメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂などを利用できる。
中間層(3)に分散させる粒子としては酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、シリカ及びこれらの表面処理品を用い得るが、分散性・電気的特性において酸化チタンが好適である。酸化チタンはルチル型とアナターゼ型のいずれのものも用い得るが、無色透明顔料としては屈折率の大きなルチル型の酸化チタンが好ましい。
中間層(3)に分散させる微細粒子は、表面反射率を高くすることを考えると粉末状態で白色を呈し、裏面隠蔽力(導電性基体に対する光遮蔽力)がある無色透明顔料が好ましく、無色透明であれば選択的な波長吸収が無いので、全可視域領域で表面反射・内部多重屈折が可能となり、この時、良好な干渉スペクトルの取得が可能となる。
バインダ樹脂としては、屈折率の小さなアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、酢ビ樹脂などが好ましい。
前記の如き中間層(3)を実現するには、例えば、上述の結着樹脂を有機溶剤中に溶解し、その溶液中に上述の粒子をボールミル、サンドミル等の手段で分散し、導電性基体上に塗布・乾燥すれば良い。
【0086】
電荷発生層(4)は前述したように「特定波長光の照射により正負の電荷対を発生させる層」であって、電荷発生物質を主成分とする層であり、必要に応じてバインダ樹脂が加えられる。電荷発生材料としては、無機系材料あるいは有機系材料の何れも用いることができる。
【0087】
無機系材料としては、結晶セレン、アモルファスセレン、セレンーテルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素等のセレン化合物やアモルファスシリコンなどが挙げられる。アモルファスシリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等がドープされたものを好適に用いることができる。
【0088】
有機系材料としては、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビシベンズイミダゾール系顔料等、公知の材料を用いることができる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0089】
必要に応じて用いられるバインダ樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリーN−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどを挙げることができる。これらバインダ樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(4)には、必要に応じて電荷輸送物質を添加して良い。
【0090】
電荷発生層(4)を形成する方法は大別すると、真空薄膜製法と溶液分散系からのキャスティング法とがある。真空薄膜作製法としては、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法などであり、上述した無機系材料あるいは有機系材料を用いて電荷発生層を良好に形成できる。
キャスティング法によって電荷発生層(4)を形成するには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を、必要に応じてバインダ樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を適度に希釈・塗布して乾燥させれば良い。
塗布方法は、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビートコート法などを利用できる。電荷発生層の膜厚は、0.01〜1μm程度が適当であり、特に0.05〜0.5μmの範囲が好ましい。
【0091】
電荷輸送層(5)は電荷輸送物質を主成分としてなり、電荷輸送物質及び必要に応じてバインダ樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、モノクロベンゼン、ジクロルエタン、塩化メチレン、シクロヘキサノンなどに溶解あるいは分散し、溶液あるいは分散液を塗布・乾燥させることにより形成できる。電荷輸送層(5)には、必要により、可塑剤、レベリング剤などを添加することもできる。
【0092】
電荷輸送物質には正孔輸送物質と電子輸送物質があり、電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロー9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロー4H−インデノ[1,2−b]チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェンー5,5−ジオキサイド、3,5−ジメチル−3’,5’−ジターシヤリーブチル−4,4’−ジフェノキノンなど公知の電子受容性物質を挙げることができる。これらの電子輸送物質を単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0093】
正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビスー(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンジフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフォン誘導体などを挙げることができ、これらの正孔輸送物質を単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0094】
電荷輸送物層に用いられるバインダ樹脂には、ポリカーボネート(ビスフェノールA型、ビスフェノールZ型等)、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、アルキッド樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホリマール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、フェノキシ樹脂などを用いることができる。
これらバインダ樹脂を単独または2種以上の混合物として用いることができるが、バインダ樹脂の使用量は、電荷輸送物質:100重量部に対して0〜150重量部が適当である。
【0095】
バインダ樹脂には、バインダ樹脂としての機能及び電荷輸送物質としての機能を有する高分子電荷輸送物質を用いることもできる。このような高分子電荷輸送物質は、例えば、主鎖および/または側鎖にカルバゾール環を有する重合体や、主鎖及び/または側鎖にヒドラゾン構造を有する重合体、ポリシチレン重合体、主鎖及び/または側鎖に第3級アミン構造を有する重合体等を例示できる。電荷輸送層の膜厚は前述の如く15〜35μm程度が好適であるが、許容される範囲としては5〜100μm程度である。
電荷発生物質と電荷輸送物質で構成される単層の感光層(図3(a)の感光層(30))に用いられる電荷発生物質及び電荷輸送物質としては、前記材料を用いることができる。
【0096】
本発明の感光体には、感度の低下や残留電位の上昇を防止する目的で、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は有機物を含む層ならば何れの層に添加してもよいが、電荷輸送物質を含む層に添加することにより特に良好な効果を得ることができる。この場合、酸化防止剤が添加されても、干渉スペクトルの検出は殆ど影響を受けない。
【0097】
耐磨耗性を確保する為に、感光層上に種種の樹脂を主成分とする表面層(6)を設ける試みがなされている。例えば、特開平8−101524号公報にはフィラーを添加することによって磨耗量を制御した表面層(6)が提案されている。表面層中には、前述の添加剤、分散粒子を含有させることができる。
【0098】
フィラー粒子をポリマーバインダの中に分散して塗布することにより得られる表面層は形成が容易であり、平滑な表面の形成に適している。用いられるフィラーの1次粒子は、表面層内で光を過剰に散乱させないため、粒径:0.9μm以下、より好ましくは0.5μm以下のものが良い。
【0099】
感光層の表面層(6)に分散する有機フィラーには、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等を挙げることができ、無機フィラーとしては、銅、すず、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、アルミナ等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料を用いることができ、これらを1種類単独または2種類以上を混合して用いる「電荷移動層あるいは表面層」も好適である。
フィラー粒子の分散は、表面層用のスプレー塗布液の状態で適当な分散機を用いて行なうことができる。
また、いわゆる電荷輸送性の分子構造を有する光架橋型樹脂と溶媒を含む塗工液を用いて形成した湿潤膜に光エネルギーを付与して硬化させることによって磨耗量を制御した表面層(6)が提案されている。
前述した添加剤やフィラーを含有させることもでき、これに依って耐摩耗性を向上させている。
【0100】
以下、図3(b)に示す構成の感光体の場合を例にとって、スプレー塗工工程を説明する。
「感光層樹脂を溶解しない溶媒を含有する表面層塗工液」を用いて、スプレー塗工を行なっても、感光層である電荷輸送層(5)と表面層(6)は相溶しない。電荷輸送層(5)と表面層(6)が相溶しない場合、電荷輸送層(5)と表面層(6)は不連続な層構造となり、上層と下層の間に明確な界面が形成される。
この様な場合でも、表面層(6)は電荷輸送層(5)との屈折率差が大きく無いため界面反射は小さく、膜厚測定工程で使用される測定光は、中間層の表面或いは導電性基体の表面まで到達できる。
【0101】
「感光層樹脂を溶解する表面層塗工液」を用いてスプレー塗工を行なうと、電荷輸送層(5)と表面層(6)が相溶する。電荷輸送層(5)と表面層(6)が相溶した場合、電荷輸送層(5)と表面層(6)は連続した層構造となる。電荷輸送層(5)と表面層(6)が連続した層構成となると上層と下層の間に明確な界面が形成されず、膜厚測定工程で使用される測定光は中間層の表面或いは導電性基体の表面まで到達できる。また、このように電荷輸送層(5)と表面層(6)が連続した層構造となると、長期的使用における機械的耐久性が良好となる。
このような理由で、一般に、感光層樹脂を溶解する表面層塗工液を用いてスプレー塗工を行ない、電荷輸送層(5)と表面層(6)を相溶させ、電荷輸送層(5)と表面層(6)を連続した層構造とすることが行われている。
スプレー塗工する表面層(6)の硬化後の厚さは、前述の如く3〜9μm程度が好ましいが、これを薄くする場合、限界は0.1μm程度である。0.1μm未満の厚さでは表面硬度や強度が十分でなく耐久性に乏しく、厚さが9μmを越えて厚くなると、光走査や光書込みで形成された静電潜像を現像して可視化したときドット再現性が低下する。
スプレー塗工により形成される表面層の「硬化後の厚さ」の、より好ましい範囲は0.2〜8μmである。
【0102】
表面層(6)形成用の塗液に「必要に応じて電荷輸送物質」を添加してもよい。電荷輸送物質の例としてはヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、トリアリールメタン系化合物等を挙げることができる。
表面層のみでなく電荷輸送層塗液中にフィラー粒子を添加して、スプレー塗工により膜を形成し、感光体の耐磨耗性を改善することも有効である。
【0103】
図11は、感光体の製造方法を実施するための装置の1例を概念的に示している。
符号(100)は、図3(b)に示した構成の感光体において「導電性基体(2)上に中間層(3)と電荷発生層(4)と電荷輸送層(5)を形成された状態のもの(以下「スプレー対象物」と呼ぶ)」であり、この状態でスプレー塗工工程により表面層(6)となる部分を形成されることにより感光体として完成する。
【0104】
符号(111)はスプレー塗工装置におけるスプレーガンを示す。スプレーガン(111)は、液タンク(113)に蓄えられた塗液を送液ポンプ(112)により供給されて、スプレー対象物(100)にスプレー塗工を行なう。このとき、スプレー対象物(100)は軸の回りに等速回転され、スプレーガン(111)は前記軸の方向へ等速的に移動しつつスプレーを行なう。スプレー塗工は、複数回のスプレーを行なうことにより実効される。
【0105】
符号(120)は「膜厚測定装置」であり、ここで用いられているのは、図9に示す膜厚測定装置(9A)である。フィルタ(99)を除く各部の構成は、先に図4に即して説明したものと同じものである。対物レンズ(94)はレンズ径:25.4mm、焦点距離30mmの「アクロマティックレンズ」で、スプレー対象物(100)の表面から70mm離れた位置に位置される。フィルタ(99)は前述した「720〜1050nmの波長領域」の光を透過させる「シャープカットフィルタ」である。
膜厚測定装置(120)はスプレー対象物(100)の軸方向へ移動可能である。
【0106】
即ち、スプレー塗工工程において、スプレー対象物(100)を回転させつつ、その軸方向へスプレーガン(111)を移動させてスプレーを行ない、スプレーにより湿潤膜が形成されたのち、前述したように2分間放置乾燥させたのち、膜厚測定装置(120)をスプレー対象物(100)の軸方向へ移動させ、例えば10mm間隔で30位置での膜厚測定(多点測定)を行なう。
膜厚測定の結果は演算手段(121)に入力される。演算手段(121)は、前記スプレーにより形成された湿潤膜の膜厚測定結果に応じ「測定された湿潤膜厚と乾燥硬化膜厚との相関関係」から「測定された湿潤膜厚に対応する乾燥硬化膜厚」を推定し、以後のスプレーを続行して所望の膜厚が得られるように、塗液の吐出量を決定する。
【0107】
このように決定された吐出量は制御手段(122)(演算手段(121)と共にマイクロコンピュータにより構成される)に入力され、制御手段(122)は、以後のスプレーを行なう際に、送液ポンプ(112)を制御し、前記吐出量に従ってスプレーを行なわせる。湿潤膜厚の測定が終了したスプレー対象物(100)は、続いて乾燥機により加熱乾燥或いは光架橋型の表面層の場合は光エネルギー付与後に乾燥され、湿潤膜が硬化される。
【実施例】
【0108】
以下、感光体の製造方法に関する具体的な実施例を説明する。
図3(b)に示す構成の感光体の製造を目的とし、導電性基体(2)として、管径:φ30mmの表面粗度Rmax:0.3μmの切削アルミニウム素管(東京精密:表面粗さ形状測定機 SURFCOM1400Dで測定済み)を用意した。
【0109】
「表面粗度Rmax0.4μm以下の導電性基体」としては、アルミニウム管やニッケルベルト(メッキと同じ方法で析出させて形成されるベルト状の金属基体)等の金属基体、プラスチックベルト(ポリエステルフィルムにアルミ蒸着や導電性樹脂コートを施して導電性のベルトとしたもの)等公知の種々のものを利用できるが、前記のアルミニウム素管は切削、しごき、引き抜き等の表面加工を施すことができ、導電性基体として好適である。
【0110】
無色透明顔料である酸化チタンを平均粒子径:0.25μmの粒子として70重量部、アルキッド樹脂(商品名:ベッコライトM6401−50−S(固形分50%):大日本インキ化学工業製):15重量部、メラミン樹脂(商品名:スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%):大日本インキ化学工業製):10重量部、メチルエチルケトン:100重量部を混合し、混合物をボールミルで72時間分散して「塗液」とした。
この塗液を表面粗度Rmax:0.3μmのアルミニウム素管に「浸漬法」で塗布し、130℃の温度で20分間乾燥して、膜厚:3.5μmの中間層(下引層)(3)が得られた。
中間層の屈折率は2.7(at 633nm)であった。屈折率は、Si-Wafer上に同条件で薄膜形成した試料を準備し、分光エリプソメータ(J.A.Woolam社 WVASE32)で別途測定した。
膜厚は同条件で塗工したモニタードラムの中間層の一部を剥がし、表面粗さ形状測定測定機 SURFCOM 1400Dで測定を行なった。
【0111】
ポリビニルブチラール(BM−2:積水化学工業社製):4重量部をシクロヘキサノン:150重量部に溶解した樹脂液に、トリスアゾ系顔料:10重量部を添加し、ボールミルで72時間分散した後、シクロヘキサノン:210重量部を加えて3時間分散を行ない、900nm以下に吸収ピークを持つ塗液を得、これを中間層(3)上に「浸漬法」で塗布し、130℃の温度で10分間乾燥して膜厚:0.2μmの電荷発生層(4)を形成した。
前記「トリスアゾ系顔料」の化学式を以下に示す。
【0112】
【化1】

【0113】
次に、電荷輸送物質(化合物):7重量部、ポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ200:三菱ガス化学社製):10重量部、シリコーンオイル(KF−50:信越化学工業社製):0.002重量部をテトラヒドロフラン:100重量部に溶解した塗工液を前記電荷発生層上に浸漬法により塗布し、130℃の温度で20分間乾燥して、平均膜厚22μmの電荷輸送層(5)を形成した。
電荷輸送層(感光層)の屈折率は1.6(at 633nm)であった(中間層との屈折率差は1.1)。屈折率は、Si-Wafer上に同条件で薄膜形成した試料を準備し、分光エリプソメータ(J.A.Woolam社 WVASE32)で測定した。
前記「電荷輸送物質」の化学式を以下に示す。
【0114】
【化2】


以上のようにして、図11に示したスプレー対象物(100)が得られる。
【0115】
表面層用の塗工液は、電荷輸送層(5)に用いた電荷輸送物質及び、ビスフェノールZ型ポリカーボネート及び、シリカ微粒子(KMPX100:信越化学製、粒子径:0.85μm、表面層の一部をサンプリングし、ダイヤモンドカッターを用いて断面を作製し、これを走査型電子顕微鏡により写真撮影を行って膜中の粒子径を測定)及び、テトラヒドロフラン及び、シクロヘキサノンを<混合比(重量)>電荷輸送物質/ポリカーボネート/シリカ微粒子/テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=3/4/2/160/40とし、吐出量:7(cc/min)でスプレー塗工した。表面層の屈折率は、電荷輸送層とほぼ同じであった。
【0116】
表面層(6)の塗布に関しては予め「表面層用の塗液に関するデータ」を演算手段(121)に入力しておく。具体的には「吐出量に対するスプレー終了後の2分経過後の湿潤状態での膜厚と硬化後の膜厚」を測定し、これらの相関関係を把握して入力した。
【0117】
最終的に得られる光透過性の膜の膜厚及び下引層と光透過性の膜の膜厚和となる二つの膜厚のうち、感光体の中間層(3)の表面と表面層(6)の表面との間の膜厚を28μmに設定し、表面層用の塗液をスプレー後の湿潤膜厚を、膜厚測定装置(9A)を用いて分光分解能0.5nm/素子(分光波長領域:1050−770=280nmを512素子で分光)の条件下で反射率を任意の大きさに拡大したのち周波数解析法に従い770〜850nmの波長領域(フィルメトリックス:分光反射率測定装置 F20で測定済み)で測定し、測定結果から「最適なスプレー吐出量」を演算処理し、以後のスプレーにおける吐出量を制御した。このようにして連続して50本の感光体を作製した。
1本の感光体が得られた後、この感光体の製造時における吐出量のデータを、次ぎの感光体での吐出量に反映させた。
【0118】
このようにして、表面層(6)を硬化した感光体の「アルミニウム素管の表面と表面層の表面との間の膜厚」と「中間層の表面と表面層の表面との間の膜厚」のうち「中間層の表面と表面層の表面との間の膜厚」を抽出したところ、得られた膜厚は28μm±1μmの範囲に収まっており一定であった。
結果の一部を以下に示す。
【0119】
【表1】

表中の「OK」は、品質に問題がないことを表わす。
比較例1として、前記と同じ条件であるが、スプレー吐出量を7.5cc/minに固定して製造を行なった結果は、以下の如くである。
【0120】
【表2】

表中の「NG」は、所定の品質を満足しないことを表わしている。
【0121】
このように、スプレー吐出量を制御しない場合、製造本数の増加と伴に感光層の膜厚が減少し、15本以後は所定の品質を達成できなかった。実施例、比較例で用いたスプレー塗工用の塗液は、経時的に物性が変化し、製作本数の増加に伴い吐出量を増加させないと品質の維持ができないものであり、実施例のように、膜厚測定工程を設けて膜厚測定に基づき吐出量を調整することにより、良好な品質の感光体を製造できる。
【0122】
なお実施例2として、感光体(10)の構成として図3(c)の如き構成で、電荷輸送層(5)の内部に粒径:850nmのフィラー微粒子を均一に分散させてスプレー塗工した湿潤膜厚のものや、実施例3として、図3(a)の如く、光導電層の表面部分を表面層(6)としてスプレー塗工により形成する場合も、前記と同様にして良好な感光体の製造を実現できた。
【0123】
また比較例2として、図3(b)の如き構成で、中間層の屈折率が2.7、電荷輸送層(感光層)の屈折率が1.5となり中間層と感光層の屈折率差が1.1を越えた場合は、中間層表面での反射が増すことに依り支持基板側へ到達する光の量が減少するため、感光層膜厚に起因する干渉波形は得られるが、感光層と中間層の膜厚に起因する干渉波形が弱くなるため、光透過性の膜となる感光層と中間層の膜厚和を同時に測定することができなくなる。
【0124】
また比較例3として、図3(b)の如き構成で、中間層の屈折率2.7、電荷輸送層(感光層)の屈折率1.75となり、中間層と感光層の屈折率差が1.0を切った場合は、屈折率差が小さくなることに依って中間層表面での反射が減少することにより、逆に支持基板側に到達する光の量が増大するため、感光層と中間層の膜厚和に起因する干渉波形成分は強く得られるが、感光層のみに起因する干渉波形成分が弱くなり、光透過性の膜となる感光層と中間層の膜厚和を同時に測定することができなくなる。
【0125】
更に比較例4として、実施例1と同じ条件であるが、分光スペクトル強度から反射率を演算する際に、前記反射率を任意の大きさに拡大する変わりに、反射率R(λ)の算出をセオリー通りの方法(拡大なし)で測定を行った場合は、中間層表面や導電性基体表面での光干渉計測に必要な反射光が微弱なことに依り、測定に必要な干渉波形の山谷の波形を正確に検出できないため、周波数解析により膜厚測定を実施することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】画像形成装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図2】図1の画像形成装置における感光層の厚さの測定に基づく感光体の、交換のための表示を行なうプロセスを説明するフロー図である。
【図3】感光体の構成例を示す図である。
【図4】膜厚測定装置の1形態を説明するための図である。
【図5】膜厚測定装置による測定における分光スペクトル強度の1例を示す図である。
【図6】電荷発生層の分光吸収特性を900nm以下とした場合の、検出光の分光スペクトル強度の1例を示す図である。
【図7】ファイバプローブの射出端からの射出光を直接感光体表面に照射するようにしたときの分光スペクトル強度の1例を示す図である。
【図8】中間層厚と反射率の関係を示す図である。
【図9】本発明の膜厚測定装置の他の形態を示す図である。
【図10】本発明の膜厚測定方法による測定結果の1例を示す図である。
【図11】本発明の感光体の製造方法を実施する装置の構成を説明図的に示す図である。
【図12】本発明の膜厚測定方法による測定結果の1例を示す図である。
【図13】本発明の膜厚測定方法による測定結果の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0127】
2 アルミニウムドラム
3 中間層
4 電荷発生層
5 電荷輸送層
6 表面層
9 膜厚測定装置
9A 膜厚測定装置
10 感光体(被測定物)
11 帯電手段
12 走査光
13 現像装置
S 記録媒体
14 転写ベルト
15 転写手段
16 クリーニング装置
18 クリーニングブラシ
17 クリーニングブレード
19 廃トナー搬送スクリュー
20 制御手段
30 光導電層
91 光源
92 検出光伝送用ファイバ
93 ファイバプローブ
94 対物レンズ
95 鏡筒
96 分光手段(回折格子)
97 スペクトル強度検出手段
98 演算手段
99 フィルタ
100 スプレー対象物
111 スプレーガン
112 送液ポンプ
113 液タンク
120 膜厚測定装置
121 演算手段
122 制御手段
930 照射光導光用のファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板上に下引層を介して光透過性の膜を形成してなる被測定物における前記光透過性の膜の膜厚及び前記下引層と前記光透過性の膜の膜厚和を同時に測定する方法であって、
前記被測定物に対する膜厚測定を可能とする波長領域のスペクトル光を放射する光源からの光をファイバプローブにより導光し、前記ファイバプローブの射出部から放射し、前記放射された光束を対物レンズにより前記光透過性の膜に集光して前記被測定物に垂直入射し、前記入射光が前記光透過性の膜の表面において反射した第1の反射光と、前記入射光が前記下引層の表面において反射した第2の反射光との干渉光、及び、前記入射光が前記光透過性の膜の表面において反射した第1の反射光と、前記入射光が前記支持基板の表面において反射した第3の反射光との干渉光を、前記対物レンズを介して前記ファイバプローブにおける検出光伝送用ファイバの端面に戻し、前記検出光伝送用ファイバにより分光手段に導いて分光し、分光した分光スペクトル強度から反射率を演算する際に、前記反射率を任意の大きさに拡大することにより干渉波形を求め、前記干渉波形をコサイン波成分に分解する周波数解析法に基づき前記光透過性の膜の膜厚、及び前記下引層と前記光透過性の膜の膜厚和を演算算出することを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項2】
前記支持基板の表面粗度がRmax:0.4μm以下の支持基板であり、且つ前記干渉波形を周波数解析法に基づき演算計算する際に、第二のピーク強度を有する周波数成分から前記光透過性の膜の膜厚を、前記第2のピーク強度よりもピーク高さの高い第一のピーク強度を有する周波数成分から前記下引層と前記光透過性の膜の膜厚和を演算算出することを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定方法。
【請求項3】
前記支持基板の表面粗度がRzJIS:0.4〜1.8μmの支持基板であり、且つ前記干渉波形を周波数解析法に基づき演算計算する際に、第一のピーク強度を有する周波数成分から前記光透過性の膜の膜厚を、前記第1のピーク強度よりもピーク高さの低い第二のピーク強度を有する周波数成分から前記下引層と前記光透過性の膜の膜厚和を演算算出することを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定方法。
【請求項4】
前記分光手段における波長分解能が、0.6nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の膜厚測定方法。
【請求項5】
前記被測定物が、導電性基体の表面に、微細粒子を分散させた中間層を下引層として設け、前記中間層上に感光層を光透過性の膜として形成された感光体であり、前記感光層の厚さと前記中間層と前記感光層の膜厚和を同時に測定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の膜厚測定方法。
【請求項6】
前記中間層と前記感光層の屈折率差が1.0〜1.1の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の膜厚測定方法。
【請求項7】
前記微細粒子の消光係数が0であることを特徴とする請求項5に記載の膜厚計測方法。
【請求項8】
前記被測定物に対する膜厚計測を可能とする波長領域が、750〜850nmであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の膜厚測定方法。
【請求項9】
前記感光体における前記感光層の表面側に補強用のフィラー微粒子を分散させた領域を有し、前記中間層の表面と該フィラー微粒子を分散させた領域を有する前記感光層の表面との間の距離、及び前記導電性基体の表面と該フィラー微粒子を分散させた領域を有する前記感光層の表面との距離を同時に測定することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の膜厚測定方法。
【請求項10】
前記感光体における前記感光層の表面側に電荷輸送機能を有する架橋結合型の構造となった領域を有し、
前記中間層の表面と該架橋結合型構造の領域を有する前記感光層の表面との間の距離、及び前記導電性基体の表面と該架橋結合型構造の領域を有する前記感光層の表面との距離を同時に測定することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の膜厚測定方法。
【請求項11】
前記感光体における前記感光層が、前記中間層に接して設けられた電荷発生層と、前記電荷発生層上に形成された電荷輸送層とにより構成され、
前記電荷発生層と前記電荷輸送層の各層の厚さの総和と、前記中間層と前記電荷発生層と前記電荷輸送層の各層の厚さの総和とを同時に測定することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の膜厚測定方法。
【請求項12】
前記感光体における前記感光層の表面側に補強用のフィラー微粒子を分散させた領域を有し、
前記中間層の表面と該フィラー微粒子を分散させた領域を有する前記感光層の表面との間の距離、及び前記導電性基体の表面と該フィラー微粒子を分散させた領域を有する前記感光層の表面との距離をそれぞれ測定することを特徴とする請求項11に記載の膜厚測定方法。
【請求項13】
前記感光体における前記感光層の表面側に電荷輸送機能を有する架橋結合型の構造となった領域を有し、
前記中間層の表面と該架橋結合型構造の領域を有する前記感光層の表面との間の距離、及び前記導電性基体の表面と該架橋結合型構造の領域を有する前記感光層の表面との距離をそれぞれ測定することを特徴とする請求項11に記載の膜厚測定方法。
【請求項14】
請求項1記載の膜厚測定方法を実施する装置であって、
前記被測定物に対する膜厚測定を可能とする波長領域のスペクトル光を放射する光源と、
前記光源からの光を前記被測定物側へ導光し、前記ファイバプローブの射出部から被測定物側に向けて射出させ、前記被測定物からの反射光を前記ファイバプローブに備えられた検出光伝送用ファイバにより受光して伝送するファイバプローブと、
前記ファイバプローブの前記射出部から射出した照射光を前記被測定物の膜に向って集光させる対物レンズと、
前記被測定物により反射され、前記対物レンズを介して前記検出光伝送用ファイバにより伝送された検出光を分光する分光手段と、
前記分光手段により分光された検出光の分光スペクトル強度を検出するスペクトル強度検出手段と、
前記分光スペクトル強度の極小と極大を与える振幅の振動をコサイン波成分に分解する周波数解析法に基づき、前記被測定物における前記光透過性の膜の膜厚、及び前記下引層と光透過性の膜の膜厚和を同時に演算算出する演算手段とを有し、
前記照射光を前記被測定物の表面に垂直入射させるように構成されたことを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項15】
前記対物レンズの開口数:NAが0.2以上のものであることを特徴とする請求項14に記載の膜厚測定装置。
【請求項16】
前記対物レンズがアクロマティックレンズであることを特徴とする請求項14又は15に記載の膜厚測定装置。
【請求項17】
前記光源が750〜1000nmの発光波長を有することを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載の膜厚測定装置。
【請求項18】
前記光源がハロゲン−タングステンランプであることを特徴とする請求項14乃至17のいずれかに記載の膜厚測定装置。
【請求項19】
前記分光手段が、回折格子もしくはプリズムあるいは分光フィルタであることを特徴とする請求項14乃至18のいずれかに記載の膜厚測定装置。
【請求項20】
前記スペクトル強度検出手段が、ラインセンサもしくはシリコンフォトダイオード列であることを特徴とする請求項14乃至19のいずれかに記載の膜厚測定装置。
【請求項21】
前記分光手段により分光された検出光のスペクトル強度を検出するスペクトル強度検出手段の分光分解能が0.6nm/素子以下であることを特徴とする請求項14乃至20のいずれかに記載の膜厚測定装置。
【請求項22】
前記ファイバプローブの対物レンズ側端部が、前記検出光伝送用ファイバの端部を中心とし、前記検出光伝送用ファイバを、前記ファイバプローブに備えられた照射光導光用のファイバの射出側端部が囲繞するように構成されていることを特徴とする請求項14乃至21のいずれかに記載の膜厚測定装置。
【請求項23】
前記感光体に静電潜像を形成し、前記静電潜像を現像して得られるトナー画像をシート状の記録媒体に転写し、前記記録媒体に定着して画像形成を行なう画像形成装置において、
前記感光体が、前記導電性基体の表面に、微細粒子を分散させた中間層を下引層として設け、前記中間層上に感光層を光透過性の膜として形成されたものであり、
前記感光体の感光層の厚さと前記中間層と前記感光層の膜厚和を同時に測定する手段として、請求項14乃至22のいずれかに記載の膜厚測定装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項24】
前記膜厚測定装置により測定される前記感光層の厚み或いは前記中間層と前記感光層の膜厚和が所定値以下となったことを表示することを特徴とする請求項23に記載の画像形成装置。
【請求項25】
前記感光体の前記中間層が、顔料の微細粒子を分散させた3.5μm以下の層厚を持つことを特徴とする請求項23又は24に記載の画像形成装置。
【請求項26】
前記感光体における前記感光層が、前記中間層に接してさらに光導電層を有することを特徴とする請求項23乃至25のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項27】
前記感光体における前記感光層が、前記中間層に接して設けられた電荷発生層と、前記電荷発生層上に形成された電荷輸送層とを有することを特徴とする請求項23乃至26のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項28】
前記感光体における前記感光層の表面側に補強用のフィラー微粒子を分散させた領域を有することを特徴とする請求項26又は27に記載の画像形成装置。
【請求項29】
前記感光体における前記感光層の表面側に電荷輸送機能を有する架橋結合型の構造となった領域を有することを特徴とする請求項26又は27に記載の画像形成装置。
【請求項30】
前記補強用のフィラー微粒子の粒子径もしくは凝集径が0.9μm以下であり、前記膜厚測定装置における測定波長領域を、前記粒子径若しくは凝集径以上の領域としたことを特徴とする請求項28に記載の画像形成装置。
【請求項31】
請求項1に記載の膜厚測定方法を実施する装置であって、
請求項14乃至22のいずれかに記載の膜厚測定装置の構成に加え、
前記被測定物に対する膜厚測定を可能とする波長領域のスペクトル光を放射する光源から放射される光のうち、不要波長領域の光をカットするフィルタを有することを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項32】
請求項1に記載の膜厚測定方法を実施する装置であって、
前記光源が放射するスペクトル光が、前記下引層を透過する波長領域を含むことを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項33】
前記感光体に静電潜像を形成し、前記静電潜像を現像して得られるトナー画像をシート状の記録媒体に転写し、前記記録媒体に定着して画像形成を行なう画像形成装置において、
前記感光体が、前記導電性基体の表面に、微細粒子を分散させた前記中間層を前記下引層として設け、該中間層上に前記感光層を前記光透過性の膜として形成されたものであり、前記感光体の前記感光層の厚さ及び前記中間層と前記感光層の膜厚和を測定する手段として、請求項31に記載の膜厚測定装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項34】
前記導電性基体の表面に微細粒子を分散させた中間層を下引層として塗布、乾燥硬化させる下引層形成工程と、
前記中間層上に感光性の膜を光透過性の膜として塗布、乾燥硬化させる感光性膜形成工程と、前記感光性膜形成工程後に、補強用のフィラー微粒子を分散させた塗液をスプレー塗工法により塗布するスプレー塗工工程と、
前記スプレー塗工工程で塗布された塗膜の湿潤状態で、前記中間層の表面と該塗膜表面との間の距離、もしくは前記導電性基体の表面と前記湿潤状態の塗膜表面との間の距離を測定する膜厚測定工程と、前記膜厚測定工程後に該塗膜を乾燥硬化する塗膜乾燥硬化工程を備え、前記膜厚測定工程における膜厚測定を、請求項14乃至22、31、32のいずれかに記載の膜厚測定装置を用いて行ない、前記膜厚測定工程で測定された湿潤状態での膜厚に基づいてスプレー塗布条件を制御しつつスプレー塗工工程を実行することを特徴とする感光体の製造方法。
【請求項35】
前記導電性基体の表面に微細粒子を分散させた前記中間層を下引層として塗布、乾燥硬化させる下引層形成工程と、前記中間層上に前記感光性の膜を前記光透過性の膜として塗布、乾燥硬化させる感光性膜形成工程と、前記感光性膜形成工程後に、電荷輸送性を有すると共に光エネルギーの付与により重合・硬化する光架橋型の重合成樹脂と溶媒を含む塗液をスプレー塗工法により塗布するスプレー塗工工程と、このスプレー塗工工程で塗布された塗膜を湿潤状態で、前記中間層の表面と塗膜表面との間の距離、もしくは前記導電性基体の表面と塗膜表面との間の距離を測定する膜厚測定工程と、
この膜厚測定工程後に湿潤状態の塗膜に光エネルギーを付与して硬化し、更に乾燥させて表面層とする湿潤膜硬化過程を備え、
前記膜厚測定工程における膜厚測定を、請求項14乃至22、31、32のいずれかに記載の膜厚測定装置を用いて行ない、
前記膜厚測定工程で測定された湿潤状態での膜厚に基づいてスプレー塗布条件を制御しつつスプレー塗工工程を実行することを特徴とする感光体の製造方法。
【請求項36】
前記導電性基体が円筒状もしくはベルト状であり、前記膜厚測定工程で、前記導電性基体の軸方向において膜厚が多点測定され、前記軸方向に対する膜厚分布を測定することを特徴とする請求項34又は35に記載の感光体の製造方法。
【請求項37】
前記膜厚測定工程で測定された湿潤状態での膜厚に基づいて、
スプレー塗工工程における塗液の吐出量を制御して塗布量を調整することを特徴とする請求項34又は35、36に記載の感光体の製造方法。
【請求項38】
スプレー塗工工程により形成された前記表面層が乾燥固化した後に、前記中間層の表面と前記表面層の表面との間の距離及び前記導電性基体の表面と前記表面層の表面との間の距離を測定する工程を有することを特徴とする請求項34乃至37のいずれかに記載の感光体の製造方法。
【請求項39】
請求項34乃至38のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする感光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−139360(P2009−139360A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148334(P2008−148334)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】