説明

膜形成用組成物、及び、膜

【課題】優れた硬化性及び低誘電率を有する膜を形成することができる膜形成用組成物、並びに、前記膜形成用組成物を用いて得られる膜を提供。
【解決手段】(A)ラジカル開始剤と、下記式(1)の化合物及び/又は下記式(1)の化合物を用いて重合した重合体を含むことを特徴とする膜形成用組成物。R1は炭素と水素からなり、お互い連結し、6員環以上の環構造を形成していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物、及び、前記膜形成用組成物を用いて得られる膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
【0003】
一般に低誘電率を示す化合物として飽和炭化水素で構成されるポリマーが挙げられる。これらのポリマーは含ヘテロ原子ユニットや芳香族炭化水素ユニットで構成されるポリマーと比べてモル分極が小さくなるため、より低い誘電率を示す。しかし、例えばポリエチレン等のフレキシビリティーの高い炭化水素は耐熱性が不十分であり、電子デバイス用途に利用することはできない。
それに対してリジッドなカゴ構造の飽和炭化水素であるアダマンタンやジアマンタンを分子内に導入したポリマーが開示されており、低い誘電率を有することが開示されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−292878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた硬化性及び低誘電率を有する膜を形成することができる膜形成用組成物、並びに、前記膜形成用組成物を用いて得られる膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、上記課題が下記の<1>、<4>の構成により解決されることを見出した。好ましい実施態様である<2>、<3>及び<5>と共に以下に示す。
<1> (A)ラジカル重合開始剤と、(B−1)下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体、及び/又は(B−2)下記式(2)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体とを含むことを特徴とする膜形成用組成物、
【0007】
【化1】

(式(1)中、2つのR1は炭素と水素のみからなる基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、お互いに連結し、6員環以上の環構造を形成していてもよい。R2は水素原子又は下記式(3)で表され、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、少なくともR2のうち1つは式(3)で表される。)
【0008】
【化2】

(式(2)中、2つのR4及びR5は炭素と水素のみからなる基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R4はR4と、R5はR5とお互いに連結し、6員環以上の環構造を形成していてもよい。R6は水素原子又は式(3)で表され、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、少なくともR6のうち1つは式(3)で表される。)
【0009】
【化3】

(式(3)中、C2xにおける2つの炭素原子は2重結合又は3重結合で連結されており、xは0又は2を表す。R3は水素原子、アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールエーテル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。nは4であり、n個のR7はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基、置換アリール基又はハロゲン原子を表す。)
【0010】
<2> ラジカル重合開始剤が有機過酸化物、有機アゾ系化合物、アルキルフェノン系化合物及びオキシムエステル系化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含有する上記<1>に記載の膜形成用組成物、
<3> 絶縁膜形成用である上記<1>又は上記<2>に記載の膜形成用組成物、
<4> 上記<1>〜上記<3>いずれか1つに記載の膜形成用組成物を用いて得られる膜、
<5> 絶縁膜である上記<4>に記載の膜。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた硬化性及び低誘電率を有する膜を形成することができる膜形成用組成物、並びに、前記膜形成用組成物を用いて得られる膜を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の膜形成用組成物(本発明において、単に組成物ともいうこととする。)は、(A)ラジカル重合開始剤と、(B−1)上記式(1)で表される化合物及び/又は上記式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体(以下、(B−1)成分ともいう。)、及び/又は、(B−2)上記式(2)で表される化合物及び/又は上記式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体(以下、(B−2)成分ともいう。)と、を含むことを特徴とする。
本発明の膜形成用組成物は(B−1)成分及び/又は(B−2)成分に、ラジカル重合開始剤を添加している。(B−1)成分、(B−2)成分のように、芳香環に連結した不飽和結合を持つ化合物にラジカル重合開始剤を添加することにより、反応効率が向上し、硬膜後の機械強度を向上させることができ、さらに未反応基低減により、k値(比誘電率)を低減させることができる。
【0013】
(A)ラジカル重合開始剤
本発明で使用するラジカル重合開始剤は熱、紫外線(UV)、電子線によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示すものが好ましい。特に有機過酸化物、有機アゾ系化合物、アルキルフェノン系化合物及びオキシムエステル系化合物が好ましく用いられる。
【0014】
有機過酸化物としては、diisobutyryl peroxide、cumyl peroxyneodecanoate、di-n-propyl peroxydicarbonate、diisopropyl peroxydicarbonate、di-sec-butyl peroxydicarbonate、1,1,3,3-tetramethylbutyl peroxyneodecanoate、di(4-t-butylcyclohexyl) peroxydicarbonate、di(2-ethylhexyl) peroxydicarbonate、t-hexyl peroxyneodecanoate、t-butyl peroxyneodecanoate、t-butyl peroxyneoheptanoate、t-hexyl peroxypivalate、t-butyl peroxypivalate、di(3,5,5-trimethylhexanoyl) peroxide、dilauroyl peroxide、1,1,3,3-tetramethylbutyl peroxy-2-ethylhexanoate、disuccinic acid peroxide、2,5-dimethyl-2,5-di(2-ethyhexanoylperoxy)hexane、t-hexyl peroxy-2-ethylhexanoate、di(4-methylbenzoyl) peroxide、t-butyl peroxy-2-ethylhexanoate、di(3-methylbenzoyl) peroxide、benzoyl(3-methylbenzoyl) peroxide、dibenzoyl peroxide、dibenzoyl peroxide、1,1-di(t-butylperoxy)-2-methylcyclohexane、1,1-di(t-hexylperoxy)-3,3,5-trimethylcyclohexane、1,1-di(t-hexylperoxy)cyclohexane、1,1-di(t-butylperoxy)cyclohexane、2,2-di(4,4-di-(t-butylperoxy)cyclohexyl)propane、t-hexyl peroxy isopropyl monocarbonate、t-butyl peroxymaleic acid、t-butyl peroxy-3,5,5-trimethylhexanoate、t-butyl peroxylaurate、t-butyl peroxy isopropyl monocarbonate、t-butyl peroxy 2-ethylhexyl monocarbonate、t-hexyl peroxybenzoate、2,5-di-methyl-2,5-di(benzoylperoxy)hexane、t-butyl peroxyacetate、2,2-di-(t-butylperoxy)butane、t-butyl peroxybenzoate、n-butyl 4,4-di-(t-butylperoxy)valerate、di(2-t-butylperoxyisopropyl)benzene、dicumyl peroxide、di-t-hexyl peroxide、2,5-dimethyl-2,5-di(t-butylperoxy)hexane、t-butyl cumyl peroxide、di-t-butyl peroxide、p-menthane hydroperoxide、2,5-dimethyl-2,5-di(t-butylperoxy)hexyne-3、diisopropylbenzene hydroperoxide、1,1,3,3-tetramethylbutyl hydroperoxide、cumene hydroperoxide、t-butyl hydroperoxide、2,3-dimethyl-2,3-diphenylbutane、2,4-dichlorobenzoyl peroxide、o-chlorobenzoyl peroxide、p-chlorobenzoyl peroxide、tris-(t-butyl peroxy)triazine、2,4,4-trimethyl pentyl peroxy neodecanoate、α-cumyl peroxy neodecanoate、t-amyl peroxy 2-ethyl hexanoate、t-butyl peroxy isobutylate、di-t-butyl peroxy hexahydro terephthalate、di-t-butylperoxy trimethyl adipate、di-3-methoxy butyl peroxy dicarbonate、di-isopropyl peroxy dicarbonate、t-butyl peroxy isopropyl carbonate、1,6-bis(t-butyl peroxycarbnyloxy)hexane、diethyleneglycol bis(t-butyl peroxycarbonate)、t-hexylperoxy neodecanoate等が好ましく用いられる。
【0015】
有機アゾ系化合物としては2,2-azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile)、2,2-azobis(2,4-dimethylvaleronitrile)、2,2-azobis(2-methylpropionitrile)、2,2-azobis(2,4-dimethylbuthyronitrile)、1,1-azobis(cyclohexane-1-carbonitrile)、1-[(1-cyano-1-methylethyl)azo]formamide、2,2-azobis{2-methyl-N-[1,1-bis(hydroxymethyl)-2-hydroxyethyle]propionamide}、2,2-azobis{2-methyl-N-[2-(1-hydroxybuthyl)]propionamide}、2,2-azobis[2-methyl-N-(2-hydroxyethyl)-propionamide]、2,2-azobis[N-(2-propenyl)-2-methylpropionamide]、2,2-azobis(N-buthyl-2-methylpropionamide)、2,2-azobis(N-cyclohexyl-2-methylpropionamide)、2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride、2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]disulfate dihydrate、2,2-azobis{2-[1-(2-hydroxyethyl)-2-imidazolin-2-yl]propane}dihydrochloride、2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]、2,2-azobis(1-imino-1-pyrrolidino-2-methyl-propane)dihydrochloride、2,2-azobis(2-methylpropionamidine) dihydrochloride、2,2-azobis[N-(2-carboxyethyl)-2-methyl-propionamidine] tetrahydrate、dimethyl 2,2-azobis(2-methylpropionate)、4,4-azobis(4-cyanovaleric acid)、2,2-azobis(2,4,4-trimethylpentane)等が好ましく用いられる。
【0016】
アルキルフェノン系化合物としては2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等が好ましく用いられる。
【0017】
本発明において、上記ラジカル重合開始剤は1種のみ使用することもでき、また、2種以上を併用してもよい。
本発明において、重合開始剤の使用量は、(B−1)成分、(B−2)成分及び他の重合性化合物の合計モル数1モルに対して、0.005〜20モルであることが好ましく、0.01〜8モルであることがより好ましく、0.1〜2モルであることが特に好ましい。ここで、合計モル数とは、(B−1)成分が式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体である場合には、重合体を構成する単量体単位の合計モル数を意味し、同様に、(B−2)成分が式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体である場合には、重合体を構成する単量体単位の合計モル数を意味する。
【0018】
(B−1)成分
本発明において、(B−1)成分は、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体である。
【0019】
<式(1)で表される化合物>
式(1)で表される化合物について説明する。
【0020】
【化4】

【0021】
前記式(1)中、2つのR1は炭素と水素のみからなる基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、お互いに連結し、6員環以上の環構造を形成していてもよい。
1としては、アルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アリール基等が例示でき、これらの中でも、アルキル基が好ましい。アルキル基は、炭素数1〜5であることが好ましく、より好ましくは炭素数1、すなわちメチル基である。
2つのR1は、お互いに連結して、6員環以上の環構造を形成していることが好ましく、6〜8員環を形成していることがより好ましく、さらに好ましくは6員環を形成していることである。R1が6員環を形成している場合、式(1)で表される化合物は、アダマンタン骨格を有する。
【0022】
前記式(1)中、R2は水素原子又は下記式(3)で表され、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、少なくともR2のうち1つは式(3)で表される。
【0023】
【化5】

【0024】
前記式(3)中のC2xにおける2つの炭素原子は2重結合(−CH=CH−)又は3重結合(−C≡C−)で連結されており、xは0又は2を表す。C2xは、3重結合で連結されていることが好ましく、即ち、−C≡C−であることが好ましい。
【0025】
前記式(3)中、R3は水素原子、アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールエーテル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。R3は水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、t−ブチル基又はフェニル基である。これらの中でも、R3が水素原子又はフェニル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0026】
前記式(3)中、nは4であり、R7はベンゼン環に結合した水素原子又は置換基であり、n個(4つ)のR7はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基、置換アリール基又はハロゲン原子を表す。アリール基の例としては、フェニル基又はビフェニル基が例示できる。R7は、水素原子、ハロゲン原子であることが好ましく、より好ましくは水素原子である。
【0027】
式(1)で表される化合物の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
【化6】

【0029】
式(1)で表される化合物の分子量は、150〜3,000が好ましく、200〜2,000がより好ましく、220〜1,000が特に好ましい。
【0030】
<式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体>
本発明の膜形成用組成物は、式(1)で表される化合物、及び/又は、式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体を含むことが好ましい。すなわち、該重合体は、式(1)で表される化合物を単量体単位として有する。
式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体は、式(1)で表される化合物に由来するモノマー単位を、構造体中に10モル%以上含有することが好ましく、30モル%以上含有することが好ましく、50モル%以上含有することがさらに好ましい。
また、式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体は、式(1)で表される化合物のみを重合した重合体(単独重合体)、又は、アダマンタン骨格を有する他の化合物との共重合体であることが好ましく、式(1)で表される化合物のみを重合した重合体であることがより好ましい。
前記重合体に用いる式(1)で表される化合物における好ましい化合物は、前述した式(1)で表される化合物における好ましい化合物と同様である。
前記重合体に用いる式(1)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の製造方法としては、特に制限はないが、重合開始剤存在下又は遷移金属触媒存在下で式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合する工程を含む方法であることが好ましく、ラジカル重合開始剤存在下で式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合する工程を含む方法であることがより好ましい。
【0032】
重合剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物又は有機アゾ系化合物が好ましく用いられるが、特に有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物及び有機アゾ系化合物としては、前述したものを好ましく用いることができる。
【0033】
重合開始剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、モノマー1モルに対して、0.001〜2モルであることが好ましく、0.01〜1モルであることがより好ましく、0.05〜0.5モルであることが特に好ましい。
【0034】
モノマーの重合反応は、遷移金属触媒の存在下で行うことも好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有するモノマーを、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh34)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl6等のW系触媒、MoCl5等のMo系触媒、TaCl5等のTa系触媒、NbCl5等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等を用いて重合することが好ましい。
【0035】
遷移金属触媒は1種のみ、又は、2種以上を混合して用いてもよい。
遷移金属触媒の使用量は、モノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0036】
式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の重量平均分子量は、800〜200,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が特に好ましい。
式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体は、分子量分布を有する樹脂組成物として、本発明の膜形成用組成物に含まれていてもよい。
【0037】
重合反応で使用する溶媒は、原料モノマーが必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用してもよい。例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。
これらの中でより好ましい溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、さらに好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応液中のモノマーの濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。
【0038】
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、モノマー、溶媒の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜170℃、特に好ましくは100℃〜150℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
【0039】
(B−2)成分
本発明において、(B−2)成分は、式(2)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の総称である。
<式(2)で表される化合物>
以下、式(2)で表される化合物について説明する。
【0040】
【化7】

【0041】
式(2)中、2つのR4及びR5は炭素と水素のみからなる基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R4はR4と、R5はR5とお互いに連結し、6員環以上の環構造を形成していてもよい。
式(2)で表される化合物は、R4とR4、R5とR5が互いに連結し、6員環を形成していることが好ましい。即ち、式(2)で表される化合物が、ジアマンタン骨格を有することが好ましい。
【0042】
式(2)中、R6は水素原子又は上記式(3)で表され、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、少なくともR6のうち1つは式(3)で表される。式(3)は、式(1)におけるものと同義であり、その好ましい範囲も同じである。
【0043】
式(2)で表される化合物の好ましい例((2−1)〜(2−4))を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
【化8】

【0045】
式(2)で表される化合物の分子量は、270〜3,000が好ましく、275〜2,000がより好ましく、285〜1,000が特に好ましい。
【0046】
<式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体>
本発明の膜形成用組成物は、式(2)で表される化合物、及び/又は、式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体を含むことができる。該重合体は、式(2)で表される化合物を単量体単位として有する。
式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体は、式(2)で表される化合物に由来するモノマー単位を、構造体中に10モル%以上含有することが好ましく、30モル%以上含有することが好ましく、50モル%以上含有することがさらに好ましい。
また、式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体は、式(2)で表される化合物のみを重合した重合体(単独重合体)、又は、ジアダマンタン骨格を有する他の化合物との共重合体であることが好ましく、式(2)で表される化合物のみを重合した重合体であることがより好ましい。
前記重合体に用いる式(2)で表される化合物における好ましい化合物は、前述した式(2)で表される化合物における好ましい化合物と同様である。
前記重合体に用いる式(2)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0047】
式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の製造方法としては、式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の製造方法と同様の方法を使用することができ、また、好ましい反応条件も同様である。
【0048】
式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の重量平均分子量は、800〜200,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が特に好ましい。
式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体は、分子量分布を有する樹脂組成物として、本発明の膜形成用組成物に含まれていてもよい。
【0049】
<添加量>
本発明の膜形成用組成物における(B−1)成分及び(B−2)成分の総添加量は、膜形成用組成物に対して、0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、1.5〜20重量%であることが特に好ましい。
また、膜形成用組成物の固形分に対して、20〜99.9重量%添加することが好ましく、40〜99.7重量%添加することがより好ましく、60〜99.5重量%添加することがさらに好ましい。ここで固形分とは、本発明の膜形成用組成物を用いて得られる膜を構成する全成分に相当する。
また、本発明の膜形成用組成物における(B−1)成分及び(B−2)成分は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。したがって、複数の(B−1)成分を使用することもできるし、複数の(B−2)成分を使用することもできる。また、(B−1)成分及び(B−2)成分を併用することもできる。これらの中で、(B−1)成分又は(B−2)成分のみを使用し、両者を併用しないことが好ましい。
【0050】
<金属含量>
本発明の膜形成用組成物には、不純物としての金属含量が充分に少ないことが好ましい。膜形成用組成物の金属濃度は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)法にて高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは300ppb以下である。
また、遷移金属に関しては酸化を促進する触媒能が高く、プリベーク、熱硬化プロセスにおいて酸化反応によって本発明で得られた膜の誘電率を上げてしまうという観点から、含有量がより少ないほうがよく、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下、特に好ましくは100ppb以下である。
本発明の膜形成用組成物の金属濃度は、本発明の膜形成用組成物を用いて得た膜に対して全反射蛍光X線測定を行うことによっても評価できる。
X線源としてW(タングステン)線を用いた場合、金属元素としてK、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pdが観測可能であり、それぞれ100×1010atom・cm-2以下が好ましく、50×1010atom・cm-2以下がより好ましく、10×1010atom・cm-2以下が特に好ましい。
また、ハロゲンであるBrも観測可能であり、残存量は10,000×1010atom・cm-2以下が好ましく、1,000×1010atom・cm-2以下がより好ましく、400×1010atom・cm-2以下が特に好ましい。また、ハロゲンとしてClも観測可能であり、CVD装置、エッチング装置等へダメージを与えるという観点から残存量は100×1010atom・cm-2以下が好ましく、50×1010atom・cm-2以下がより好ましく、10×1010atom・cm-2以下が特に好ましい。
【0051】
<有機溶媒>
本発明の膜形成用組成物は、有機溶媒(塗布溶剤)を含んでいてもよい。
有機溶媒(塗布溶剤)としては特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール,1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶媒、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
より好ましい有機溶媒は、1−メトキシ−2−プロパノール、プロパノール、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンであり、特に好ましい有機溶媒は1−メトキシ−2−プロパノール、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、t−ブチルベンゼン、アニソールである。
【0052】
<固形分濃度>
本発明の膜形成用組成物の固形分濃度は、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは2〜15重量%であり、特に好ましくは3〜10重量%である。
ここで固形分とは、この組成物を用いて得られる膜を構成する全成分に相当する。
(B−1)成分及び(B−2)成分の溶解度は、25℃でシクロヘキサノン又はアニソールに対し、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上の溶解度である。
【0053】
<その他の添加剤>
さらに、本発明の膜形成用組成物には、得られる膜(好ましくは絶縁膜)の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、コロイド状シリカ、界面活性剤、シランカップリング剤、密着促進剤などの添加剤を添加してもよい。
【0054】
〔コロイド状シリカ〕
本発明に用いることができるコロイド状シリカとしては、いかなるコロイド状シリカを使用してもよい。例えば、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶媒若しくは水に分散した分散液であり、好ましくは平均粒径5〜30nm、より好ましくは10〜20nm、固形分濃度が好ましくは5〜40重量%のものである。
【0055】
〔界面活性剤〕
本発明に用いることができる界面活性剤としては、いかなる界面活性剤を使用してもよい。例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。本発明に用いることができる界面活性剤は、一種類でもよいし、二種類以上でもよい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、シリコーン系界面活性剤が特に好ましい。
【0056】
本発明に用いることができる界面活性剤の添加量は、膜形成用組成物の全量に対して、0.01重量%以上1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上0.5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明において、シリコーン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。本発明に用いることができるシリコーン系界面活性剤としては、いかなるシリコーン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。下記化学式を含む構造であることがさらに好ましい。
【0058】
【化9】

【0059】
上記式中、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、xは1〜20の整数であり、m、nはそれぞれ独立に2〜100の整数である。また、Rが複数存在する場合、それぞれ同じあっても異なっていてもよい。
【0060】
本発明に用いることができるシリコーン系界面活性剤としては、例えば、BYK−306、BYK−307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
【0061】
本発明に用いることができるノニオン系界面活性剤としては、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0062】
本発明に用いることができる含フッ素系界面活性剤としては、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0063】
本発明に用いることができるアクリル系界面活性剤としては、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、アクリル酸系共重合体やメタクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0064】
〔シランカップリング剤〕
本発明に用いることができるシランカップリング剤としては、いかなるシランカップリング剤を使用してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明に用いることができるシランカップリング剤は、一種類単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0065】
〔密着促進剤〕
本発明に用いることができる密着促進剤としては、いかなる密着促進剤を使用してもよい。
密着促進剤としては、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ビニルトリクロロシラン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、チオ尿素化合物等を挙げることができる。官能性シランカップリング剤が密着促進剤として好ましい。
密着促進剤の使用量は、全固形分100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、特に0.05〜5重量部であることがより好ましい。
【0066】
〔空孔形成因子〕
本発明の膜形成用組成物には、膜の機械強度の許す範囲内で、空孔形成因子を使用して、膜を多孔質化し、低誘電率化を図ることができる。
空孔形成剤となる添加剤としての空孔形成因子としては、特に限定はされないが、非金属化合物が好適に用いられ、膜形成用組成物で使用される溶剤との溶解性、(B−1)成分及び/又は(B−2)成分との相溶性を同時に満たすことが必要である。
また、この空孔形成剤の沸点若しくは分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。
分子量としては、好ましくは200〜50,000、より好ましくは300〜10,000、特に好ましくは400〜5,000である。
添加量は、膜を形成する重合体に対して、好ましくは0.5〜75重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。
また、空孔形成因子として、重合体の中に分解性基を含んでいてもよく、その分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。分解性基の含有率は、膜を形成する重合体に対して、好ましくは0.5〜75モル%、より好ましくは0.5〜30モル%、特に好ましくは1〜20モル%である。
【0067】
(膜)
本発明の膜は、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜であり、絶縁膜として好適に用いることができる。
また、本発明において、膜の製造方法は、特に制限はないが、本発明の膜形成用組成物を調製する工程、本発明の膜形成用組成物を膜状に塗布する工程、及び、塗布した膜を加熱する工程を含むことが好ましい。
【0068】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法によるものである。スピンコーティングについては、市販の装置を使用できる。例えば、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン(株)製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製造(株)製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業(株)製)等が好ましく使用できる。スピンコート条件としては、いずれの回転速度でもよいが、膜の面内均一性の観点より、300mmシリコン基板においては1,300rpm程度の回転速度が好ましい。
また、膜形成用組成物の吐出方法においては、回転する基板上に膜形成用組成物を吐出する動的吐出、静止した基板上へ膜形成用組成物を吐出する静的吐出のいずれでもよいが、膜の面内均一性の観点より、動的吐出が好ましい。また、組成物の消費量を抑制する観点より、予備的に組成物の主溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後、その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが、スループットの観点から180秒以内が好ましい。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。
熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは、ホットプレート加熱、ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン(株)製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製造(株)製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業(株)製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては、αシリーズ(東京エレクトロン(株)製)等が好ましく使用できる。
【0069】
本発明の膜形成用組成物は、基板上に塗布した後に加熱処理することによって硬化させることが特に好ましい。例えば、膜形成用組成物により形成した膜に残存する炭素三重結合等の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行ってもよい。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
【0070】
また、本発明では加熱処理ではなく高エネルギー線を照射することで重合体中に残存する炭素三重結合等の重合反応を起こして硬化させてもよい。高エネルギー線とは、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは、0〜50keVが好ましく、0〜30keVがより好ましく、0〜20keVが特に好ましい。電子線の総ドーズ量は、好ましくは0〜5μC/cm2、より好ましくは0〜2μC/cm2、特に好ましくは0〜1μC/cm2である。電子線を照射する際の基板温度は、0〜450℃が好ましく、0〜400℃がより好ましく、0〜350℃が特に好ましい。圧力は、好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。本発明において、電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は190〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2,000mWcm-2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましく、250〜350℃が特に好ましい。重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気は、Ar、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0071】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、その用途に応じて所望の比誘電率とすることが好ましいが、比誘電率が低いことが好ましく、絶縁膜であることがより好ましい。例えば、比誘電率が2.6以下であることが好ましい。
【0072】
また、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、硬度が高いことが好ましく、高いヤング率を有していることが好ましい。ヤング率が5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは5.5〜12GPaでり、さらに好ましくは6〜11GPaである。
なお、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、比誘電率及びヤング率がいずれも上記範囲内であることが特に好ましい。
【0073】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、絶縁膜として好適に使用することができ、半導体用層間絶縁膜としてより好適に使用することができる。すなわち、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる絶縁膜は、電子デバイスに好適に使用できる。
例えば、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があってもよく、また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMP(化学的機械的研磨)での剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、さらには層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けてもよい。
【0074】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線あるいはその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしてはウエットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、あるいは窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、さらにはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0075】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMPをすることができる。CMPスラリー(薬液)としては、市販のスラリー(例えば、(株)フジミインコーポレーテッド製、ロデールニッタ(株)製、JSR(株)製、日立化成工業(株)製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製、(株)荏原製作所製等)を適宜使用することができる。さらにCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0076】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することができる。例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することができる。
さらに、別の用途として本発明の膜に電子ドナー又はアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することもできる。
【0077】
また、本発明の絶縁膜におけるヤング率の測定方法としては、MTS社ナノインデンターSA2を使用して測定することが好ましい。
【実施例】
【0078】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
【0079】
<実施例1>
1,3−ジフェニルエチニルアダマンタン2重量部、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.4重量部、及び、t−ブチルベンゼン8.6重量部を窒素気流下で内温130℃で1時間撹拌しながら、重合した。反応液を室温にした後、メタノール79重量部に添加し、析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。重量平均分子量約8,000の重合体(A)を1.0重量部得た。
重合体(A)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で20重量%以上であった。
【0080】
重合体(A)1.0重量部、ジクミルパーオキサイド0.2重量部をシクロヘキサノン9.5重量部に完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で120℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.48であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、8.5GPaであった。
【0081】
<実施例2>
1,3−ジフェニルエチニルアダマンタン2重量部、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.4重量部、及び、t−ブチルベンゼン8.6重量部を窒素気流下で内温130℃で1時間撹拌しながら、重合した。反応液を室温にした後、メタノール79重量部に添加し、析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。重量平均分子量約8,000の重合体(A)を1.0重量部得た。
重合体(A)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で20重量%以上であった。
【0082】
重合体(A)1.0重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.2重量部をシクロヘキサノン10重量部に完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で250℃で60秒間加熱した後、110℃にて30分のUV照射(波長222nm)を行い、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で30分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.49であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、8.8GPaであった。
【0083】
<実施例3>
1,3,5−トリフェニルエチニルアダマンタン2重量部、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.4重量部、及び、t−ブチルベンゼン8.6重量部とを窒素気流下で内温130℃で1時間撹拌しながら、重合した。反応液を室温にした後、メタノール79重量部に添加し、析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。重量平均分子量約1.7万の重合体(B)を1.0重量部得た。
重合体(B)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で20重量%以上であった。
【0084】
重合体(B)1.0重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.2重量部をシクロヘキサノン10重量部に完全に溶解させて膜形成用組成物を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で250℃で60秒間加熱した後、110℃にて30分のUV照射(波長222nm)を行い、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で30分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.53であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、10.5GPaであった。
【0085】
<実施例4>
1,3−ジフェニルエチニルアダマンタン2重量部、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.4重量部、及び、t−ブチルベンゼン8.6重量部を窒素気流下で内温140℃で1時間撹拌しながら、重合した。反応液を室温にした後、メタノール79重量部に添加し、析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。重量平均分子量約1.4万の重合体(C)を1.0重量部得た。
重合体(C)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で20重量%以上であった。
【0086】
重合体(C)1.0重量部をシクロヘキサノン10重量部に完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で250℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.48であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、8.3GPaであった。
【0087】
<実施例5>
4,9−ジフェニルエチニルジアマンタン2重量部、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.4重量部、及び、t−ブチルベンゼン8.6重量部を窒素気流下で内温130℃で1時間撹拌しながら、重合した。反応液を室温にした後、メタノール79重量部に添加し、析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。重量平均分子量約8,000の重合体(D)を1.0重量部得た。
重合体(D)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で20重量%以上であった。
【0088】
重合体(D)1.0重量部、ジクミルパーオキサイド0.2重量部をシクロヘキサノン9.5重量部に完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で120℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.43であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、9.5GPaであった。
【0089】
<比較例1>
1,3−ジフェニルエチニルアダマンタン2重量部、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.4重量部、及び、t−ブチルベンゼン8.6重量部を窒素気流下で内温130℃で1時間撹拌しながら、重合した。反応液を室温にした後、メタノール79重量部に添加し、析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。重量平均分子量約8,000の重合体(A)を1.0重量部得た。
重合体(A)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で20重量%以上であった。
【0090】
重合体(A)1.0重量部をシクロヘキサノン9.5重量部に完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で120℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.49であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、4.0GPaであった。
【0091】
【表1】

【0092】
本発明の膜形成用組成物を用いて形成された膜(絶縁膜)は、硬化性に優れ、低い誘電率であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラジカル重合開始剤と、
(B−1)下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体、及び/又は
(B−2)下記式(2)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体とを含むことを特徴とする
膜形成用組成物。
【化1】

(式(1)中、2つのR1は炭素と水素のみからなる基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、お互いに連結し、6員環以上の環構造を形成していてもよい。R2は水素原子又は下記式(3)で表され、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、少なくともR2のうち1つは式(3)で表される。)
【化2】

(式(2)中、2つのR4及びR5は炭素と水素のみからなる基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R4はR4と、R5はR5とお互いに連結し、6員環以上の環構造を形成していてもよい。R6は水素原子又は式(3)で表され、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、少なくともR6のうち1つは式(3)で表される。)
【化3】

(式(3)中、C2xにおける2つの炭素原子は2重結合又は3重結合で連結されており、xは0又は2を表す。R3は水素原子、アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールエーテル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。nは4であり、n個のR7はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基、置換アリール基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項2】
ラジカル重合開始剤が有機過酸化物、有機アゾ系化合物、アルキルフェノン系化合物及びオキシムエステル系化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含有する請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
絶縁膜形成用である請求項1又は2に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1つに記載の膜形成用組成物を用いて得られる膜。
【請求項5】
絶縁膜である請求項4に記載の膜。

【公開番号】特開2009−79164(P2009−79164A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250513(P2007−250513)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】