説明

膜電極ユニット及び延長された実用寿命を持つ燃料電池

本発明は、高分子電解質膜によって隔離され、触媒層と各々接触している2個のガス拡散層を含む膜電極ユニットに関する。ポリマーフレームは、触媒層と接触している高分子電解質膜の2個の表面の少なくとも1個に取付けられている。前記ポリマーフレームは、高分子電解質膜の少なくとも1個の表面にある内側領域、及びガス拡散層の外側にある外側領域を含む。外側領域の全構成要素の厚さは、内側領域の全構成要素の厚さの50〜100%である。外側領域の厚さは80℃の温度で10N/mmの圧力で5時間にわたり最大2%減少し、前記厚さの減少は、10N/mmの圧力で1分間行なわれる最初の圧縮工程の後に確認される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質膜によって隔離されている2個の電気化学的に活性な電極を有する膜電極ユニット及び延長された実用寿命を持つ燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、高分子電解質膜(PEM)燃料電池におけるプロトン伝導性膜として、スルホン酸修飾型ポリマーが殆ど独占的に採用されている。この場合、主に、ペルフッ素化ポリマーが使用されている。米国、Willmington、デュポン・ドゥ・ヌムール(Du Pont deNemours)製のNafion(登録商標)がこの場合の顕著な例である。プロトン伝導性に対しては、膜の中で、スルホン酸基当り一般に4−20分子の水となる比較的高い含水量が必要である。必要とされる含水量ばかりでなく、酸性水及び反応ガス、即ち水素と酸素、が関連するポリマーの安定性によってもPEM燃料電池スタック動作温度は、80−100℃に制限される。これより高い動作温度では燃料電池の性能の低下することなく使用できない。所与の圧力レベルに対して、水の露点より高い温度で膜は完全に乾燥し、最早、望ましい電流が得られないほど膜の抵抗が高い値まで上昇するので、燃料電池は最早、電力を供給しない。
【0003】
前述の技術に基づいた一体型ガスケットを備えた膜電極ユニットは、例えば、US5,464,700に記載されている。この特許では、膜電極ユニットの外側領域では、膜の表面に、エラストマーで作られたフィルムが取り付けられていて、このフィルムは、電極で被覆されていないがリブ付セパレータと外側空間に対して同時にガスケットを構成している。
【0004】
この方法により、100℃までは、極めて高価な膜材料の節減を達成できる。エラストマーを使ってこれより高い動作温度を遂行することはできない。従って、前記特許に記載されている方法は、100℃を超える動作温度の燃料電池には適していない。
【0005】
しかしながら、システム特有の理由により、燃料電池では100℃を超える動作温度が望まれる。貴金属を主成分として、膜電極ユニット(MEU)に含有されている触媒の活性は、高い動作温度で著しい改良がされている。
【0006】
特に、炭化水素からの所謂、改質ガスが使用される場合、この改質ガスは可成りの量の一酸化炭素を含有していて、通常、この一酸化炭素は複雑なガス処理又はガス精製工程によって取り除かれなければならない。CO不純物に対する触媒の耐性は高い動作温度で向上されている。
【0007】
更に、燃料電池の操作過程で熱が発生する。しかしながら、これらの系を80℃より低く冷却することは煩雑になることがある。電力出力に応じて、冷却装置を可成り簡略に構成できる。このことは、100℃を超える温度で操作される燃料電池システムの廃熱を、確かに、より適切に利用でき、従って燃料電池システムの効率が向上され得ることを意味する。
【0008】
一般に、これらの温度を使いこなすために、新規の伝導性メカニズムを持つ膜が使用される。この目的に対する1つの方策は、水を採用することなく、イオン伝導性を発現する膜を使用することである。この方面の最初の有望な開発は、国際公開第96/13872号パンフレットに記載されている。
【0009】
このパンフレットには、膜電極ユニットの最初の製造方法も記載されている。このためには、2個の電極が膜にプレスされるが、これらの各電極は、膜の2個の主要面の一部分だけが被覆される。負極及び正極の各ガスの空間が互いに、そして環境に対して気密化されるように、PTFEガスケットは、燃料電池の膜の大部分の表面の残りの露出部分上にプレスされる。しかしながら、このように製造される膜電極ユニットは、1cmと言う極めて小さいセル表面積でのみ高い耐久性を示すことが判った。これより大きい電池、とりわけ少なくとも10cmの表面積を持つ電池を製造すると、150℃を超える温度では電池の耐久性は100時間にも達しない。
【0010】
別の高温燃料電池が、日本国特開2001−1960982号公報に開示されている。この公報には、ポリイミドガスケットに取り付けられている電極膜ユニットが記載されている。しかしながら、この構造体が抱える問題は、シールするために中間にポリイミド製のシールリングが取り付けられる2個の膜が必要であることである。技術的理由によって、膜の厚さは可能な限り薄く選ばれなければならないので、日本国特開2001−196082号公報に記載されている2個の膜の間のシールリングの厚さは極度に制約される。そのような構造体は、1000時間を超える期間にわたっては同様に安定でないことも長期試験で判った。
【0011】
更に、シール用のポリイミド層を含有する膜電極ユニットがDE10235360から公知である。しかしながら、これらの層は、境界領域が膜と接触している領域よりも薄くなるように均一な厚さを有する。
【0012】
前記の膜電極ユニットは、一般に、微細にされたガス流がリブ付セパレータの中に入るチャンネルを含む平坦なリブ付セパレータと接続されている。膜電極ユニットの一部分は、前述のガスケットよりも厚いので、ガスケットは、膜電極ユニットのガスケットと、通常はPTFEで作製されているリブ付セパレータとの間に挿入されている。
【0013】
前述の燃料電池の実用寿命は限界があることが今や明らかになった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、次の諸特性を有するべきであるのが好ましい改良されたMEU及びそのMEUで作動される燃料電池を提供することが本発明の1つの目的である:
− 燃料電池は、100℃を超える温度での操作過程で長い実用寿命を発現すべきである。
− 個々のセルは、長期間にわたって100℃を超える温度で安定した又は改良された性能を発現すべきである。
− これに関して、燃料電池は長い操作時間の後でも高い開放電圧ばかりでなく、低いガスクロスオーバーを有するべきである。
− とりわけ、100℃を超える動作温度で、追加の燃料ガス加湿をすることなく、燃料電池を使用することが可能であるべきである。膜電極ユニットは、とりわけ、負極と正極との間の長期間の、又は交番の圧力差に耐えることが可能であるべきである。
−更に、従って、容易な方法で且つ安価に製造できる膜電極ユニットを入手できることが本発明の1つの目的であった。
− とりわけ、燃料電池は長期間の後でも高電圧を持つべきであり、少量の化学量論で燃料電池を操作することが可能であるべきである。
− とりわけ、MEUは、一般に、信頼性を高めるために種々の操作条件下(T、p、形状、等)に強く耐えるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目的は、特許請求の範囲の第1項の全ての特徴を持つ膜電極ユニットにより解決される。
【0016】
従って、本発明の目的は、高分子電解質膜によって隔離され、触媒層と各々と接触している2個のガス拡散層を有する膜電極ユニットであって、触媒層と接触している前記高分子電解質膜の2個の表面の少なくとも1個がポリマーフレームに取付けられ、前記ポリマーフレームは、前記高分子電解質膜の表面の少なくとも1個に取付けられている内側領域、及びガス拡散層の表面に取付けられていない外側領域を有する前記膜電極ユニットにおいて、前記外側領域の全構成要素の厚さが、内側領域の全構成要素の厚さを基準として、50〜100%であり、前記外側領域の厚さは80℃の温度で10N/mmの圧力で5時間にわたり2%以下減少し、この厚さの減少は10N/mmの圧力で1分間にわたり行なわれる最初の圧縮段階の後に確認されることを特徴とする前記膜電極ユニットである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
高分子電解質膜
本発明の目的に対して、好適な高分子電解質膜それ自体は公知である。一般に、酸を含む膜がこの目的に使用されるが、その酸はポリマーに共有結合されていてもよい。更に、好適な膜を製造するためにシート状材料は酸でドーピングされるさことが可能である。
【0018】
これらの膜は、いろいろな方法のなかでも、シート状材料、例えばポリマーフィルム、を酸性化合物を含む流体で膨潤することにより、又はポリマーと酸性化合物との混合物を製造したのち、シート状構造体を形成し、次いで膜を形成するために固化することにより膜を形成することによって製造できる。
【0019】
好ましいポリマーには、就中、ポリオレフィン、例えば、ポリ(クロロプレン)、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリ(p−キシリレン)、ポリアリールメチレン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアミン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンと、ペルフルオロプロピルビニルエーテルと、トリフルオロニトロソメタンと、カルボアルコキシペルフルオロアルコキシビニルエーテルの各々とPTFEとのコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクロレイン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリシアノアクリレート、ポリメタクリルイミド、とりわけノルボルネンのシクロオレフィンコポリマー、;主鎖にC−O結合を有するポリマー、例えば、ポリアセタール、ポリオキシメチレン、ポリエーテル、ポリプロピレンオキシド、ポリエピクロロヒドリン、ポリテトラヒドロフラン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエステル、とりわけ、ポリヒドロキシ酢酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシプロピオン酸、ポリピバロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリマロン酸、ポリカーボネート;
主鎖にC−S結合を有するポリマー、例えばポリスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、主鎖にC−N結合を有するポリマー、例えばポリイミン、ポリイソシアニド、ポリエーテルイミン、ポリエーテルイミド、ポリアニリン、ポリアラミド、ポリアミド、ポリヒドラジド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアゾール、ポリアゾールエーテルケトン、ポリアジン;液晶高分子、とりわけベクトラ(Vectra)ばかりでなく、例えば、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリケイ酸、ポリシリケート、シリコン、ポリホスファゼン及びポリチアジルのような無機ポリマーも挙げられる。
【0020】
本明細書で好ましいのは、アルカリ性ポリマーであり、これは、特に酸でドーピングされた膜が当てはまる。プロトンを輸送できる殆ど全ての既知の高分子膜は、酸でドーピングされるアルカリ性高分子膜として検討対象となる。この場合、酸が好ましく、酸は、例えば、所謂、グロータス(Grotthus)メカニズムによって追加の水を必要とすることなくプロトンを輸送できる。
【0021】
本発明によるアルカリ性ポリマーとして、反復単位の中に少なくとも1個の窒素原子を持つアルカリ性ポリマーが使用されるのが好ましい。
【0022】
好ましい実施態様によると、アルカリ性ポリマーの中の反復単位は、少なくとも1個の窒素原子を持つ芳香族環を含有する。芳香環は、もう1つの環に、とりわけ、もう1つの芳香環に縮合され得る、1〜3個の窒素原子を持つ5員〜6員環であるのが好ましい。
【0023】
本発明の具体的態様によると、高温安定性ポリマーが使用されるが、このポリマーは1個又は種々の反復単位の中に少なくとも1個の窒素、酸素及び/又は硫黄原子を含有する。
【0024】
本発明の範囲内で、高温安定性ポリマーは、高分子電解質として120℃を超える温度で燃料電池の中で長期間にわたり操作できるポリマーである。長期間にわたりとは、本発明による膜が少なくとも100時間、好ましくは少なくとも500時間、少なくとも80℃、好ましくは120℃、特に好ましくは160℃の温度で、当初の特性を基準として、性能が50%を超えて低下することなく操作できることを意味していて、この性能は、国際公開第01/18894A2号パンフレットに記載されている方法によって測定できる。
【0025】
前記ポリマーは、単体でも混合物(ブレンド)としても使用できる。この場合、とりわけポリアゾール及び/又はポリスルホンを含有するブレンドが好ましい。これに関しては、好ましいブレンド構成要素は、独国特許出願公開第10052242.4号、及び第10245451.8号の各明細書に記載されているように、ポリエーテルスルホン、ポリエステルケトン、及びスルホン酸基で改質されたポリマーである。ブレンドを使用することにより、機械的特性は改良され、材料コストは削減できる。
【0026】
ポリアゾールは、アルカリ性ポリマーの特に好ましいグループを構成する。ポリアゾールを主成分とするアルカリ性ポリマーは次の一般式のアゾールの反復単位を含有する;一般式(II)及び/又は(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)及び/又は(V)及び/又は(VI)及び/又は(VII)及び/又は(VIII)及び/又は(IX)及び/又は(X)及び/又は(XI)及び/又は(XII)及び/又は(XIII)及び/又は(XIV)及び/又は(XV)及び/又は(XVI)及び/又は(XVII)及び/又は(XVIII)及び/又は(XIX)及び/又は(XX)及び/又は(XXI)及び/又は(XXII)、
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
式中、
Arは、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である四価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Arは、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である二価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Arは、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である二価の若しくは三価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Arは、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である三価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Arは、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である三価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Arは、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である四価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Arは、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である二価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Arは、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である二価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Arは、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である三価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Arは、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である二価の若しくは三価の若しくは四価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Ar10は、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である二価の若しくは三価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Ar11は、同じか又は異なり、単環でも多環でも可能である二価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
Xは、同じか又は異なり、酸素、硫黄又はアミン基を表し、この基は更なる基として水素原子、1−20個の炭素原子を有する基、好ましくは分岐又は非分岐アルキル若しくはアルコキシ基又はアリール基を持ち、
Rは、同じか又は異なり、水素、アルキル基及び芳香族基を表し、並びに
n、mは各々10以上の、好ましくは100以上の整数である。
【0032】
好ましい芳香族基又はヘテロ芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アジリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリン及びフェナントレンから誘導され、これらの基は随意に置換もされ得る。
【0033】
この場合、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、いずれの置換パターンも有することができ、フェニレンの場合、例えば、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、オルト−、メタ−及びパラ−フェニレンが可能である。特に好ましい基は、置換もされ得るベンゼン及びビフェニレンから誘導される。
【0034】
好ましいアルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する短鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル又はイソプロピル及びt−ブチル基である。
【0035】
好ましい芳香族基はフェニル又はナフチル基である。アルキル基及び芳香族基は置換され得る。
【0036】
好ましい置換基は、ハロゲン原子、例えばフッ素、アミノ基、ヒドロキシル基、又は短鎖アルキル基、例えばメチル基若しくはエチル基、である。
【0037】
1個の反復単位内で基Xが同じである式(I)の反復単位を有するポリアゾールが好ましい。
【0038】
ポリアゾールは、原則として、例えば基Xが異なる別の反復単位も有することができる。しかしながら、反復単位は、同じ基Xだけを有することが好ましい。
【0039】
更に好ましいポリアゾールポリマーは、ポリイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)及びポリ(テトラザピレン)である。
【0040】
本発明のもう1つの実施態様では、アゾール反復単位を含有するポリマーは、互いに異なる式(I)〜(XXII)のうちの少なくとも2種の単位を含有するコポリマー又はブレンドである。コポリマーは、ブロックコポリマー(ジブロック、トリブロック)、ランダムコポリマー、周期性コポリマー及び/又は交互コポリマーの形態が可能である。
【0041】
本発明の特に好ましい実施態様では、アゾール反復単位を含有するポリマーは、式(I)及び/又は(II)の単位だけを含有するポリアゾールである。
【0042】
ポリマーの中のアゾール反復単位の数は、10以上の整数であるのが好ましい。特に好ましいポリマーは、少なくとも100個のアゾール反復単位を含有する。
【0043】
本発明の範囲内では、ベンゾイミダゾール反復単位を含有するポリマーが好ましい。ベンゾイミダゾール反復単位を含有する最も好適なポリマーの幾つかの例は次式で表される:
【0044】
【化5】

【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

【0047】
【化8】

【0048】
式中、n及びmは、各々、10以上、好ましくは100以上の整数である。
【0049】
しかしながら、使用されるポリアゾール、とりわけポリベンゾイミダゾールは、高分子量が特徴である。固有粘度として測定すると、これは、少なくとも0.2dl/g、好ましくは0.8〜10dl/g、とりわけ1〜10dl/gである。
【0050】
そのようなポリアゾールの製造法は知られていて、1個以上の芳香族テトラアミノ化合物を、溶融状態でカルボン酸モノマー当り少なくとも2個の酸基を含む1個以上の芳香族カルボン酸又はそのエステルと反応させてプレポリマーを生成させる。生成されたプレポリマーは、反応器の中で固化するので、引き続いて、機械的に微粉化される。微細なプレポリマーは、通常、400℃までの温度で、固相重合で最終重合体にされる。
【0051】
本発明により使用される好ましい芳香族カルボン酸は、就中、ジカルボン酸及びトリカルボン酸及びテトラカルボン酸、又はそれらのエステル又はそれらの無水物又はそれらの酸塩化物である。芳香族カルボン酸と言う用語は、同様に、テトロ芳香族カルボン酸も含む。
【0052】
好ましくは、芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−N,N−ジメチルアミノイソフタル酸、5−N,N−ジエチルアミノイソフタル酸、2,5−ヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4、6−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルフルホン−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4−カルボキシ桂皮酸又はそれらのC1−C20アルキルエステル若しくはC5−C12アリールエステル、又はそれらの酸無水物又はそれらの酸塩化物である。
【0053】
芳香族トリカルボン酸、テトラカルボン酸又はそれらのC1−C20アルキルエステル若しくはC5−C12アリールエステル、又はそれらの酸無水物又はそれらの酸塩化物は、好ましくは1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、(2−カルボキシフェニル)イミノジ酢酸、3,5,3’−ビフェニルトリカルボン酸、3,5,4’−ビフェニルトリカルボン酸である。
【0054】
芳香族テトラカルボン酸又はそれらのC1−C20アルキルエステル若しくはC5−C12アリールエステル、又はその酸無水物又はその酸塩化物は、好ましくは、3,5,3’、5’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸である。
【0055】
ヘテロ芳香族カルボン酸は、ヘテロ芳香族ジカルボン酸及びトリカルボン酸及びテトラカルボン酸及びそれらのエステル若しくはそれらの無水物である。ヘテロ芳香族ジカルボン酸とは、芳香族基の中に少なくとも1個の窒素、酸素、硫黄又はリン原子を含有する芳香族系を意味すると理解される。好ましくは、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、ベンゾイミダゾール−5,6−ジカルボン酸及びそれらのC1−C20アルキルエステル若しくはC5−C12アリールエステル、又はその酸無水物又はその酸塩化物が使用される。
【0056】
トリカルボン酸又はテトラカルボン酸の含量(使用されるジカルボン酸を基準として)は、0〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、特に好ましくは0.5〜10モル%である。
【0057】
使用される芳香族及びヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸は、好ましくはジアミノ安息香酸及びそのモノヒドロクロリド及びジヒドロクロリド誘導体である。
【0058】
好ましくは、少なくとも2個の異なる芳香族カルボン酸の混合物が使用される。特に好ましくは、芳香族カルボン酸に加えてヘテロ芳香族カルボン酸も含有する混合物が使用される。芳香族カルボン酸対ヘテロ芳香族カルボン酸の混合比は、1:99〜99:1、好ましくは1:50〜50:1である。
【0059】
これらの混合物は、とりわけ、N−ヘテロ芳香族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の混合物である。非限定例は、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸である。
【0060】
好ましい芳香族テトラアミノ化合物には、就中、3,3’4,4’−テトラアミノビフェニル、2,3,5、6−テトラアミノピリジン、1,2、4,5−テトラアミノベンゼン、3,3’4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン、3,3’4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル、3,3’4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラアミノジフェニルメタン及び3,3’4,4’−テトラアミノジフェニルジメチルメタンばかりでなく、それらの塩、とりわけそれらのモノヒドロクロリド、ジヒドロクロリド、トリヒドロクロリド及びテトラヒドロクロリド誘導体が挙げられる。
【0061】
好ましいポリベンゾイミダゾールは、Celanese AGから商品名(登録商標)Celazoleで市販品として入手できる。
【0062】
好ましいポリマーには、ポリスルホン、とりわけ主鎖に芳香族基及び/又はヘテロ芳香族基を有するポリスルホンが挙げられる。本発明の具体的態様によると、好ましいポリスルホン及びポリエーテルスルホンは、ISO 1133に従って測定して、40cm/10分以下、とりわけ、30cm/10分以下そして特に好ましくは20cm/10分以下の溶融容量率MVR300/21.6を有する。この場合、180℃〜230℃のビカー(Vicat)軟化温度VST/A/50を持つポリスルホンが好ましい。本発明の尚もう1つの好ましい実施態様では、ポリスルホンの数平均分子量は30,000グラム/モルより大きい。
【0063】
ポリスルホン系ポリマーには、とりわけ、次の一般式A、B、C、D、E、F及び/又はGに従って連結しているスルホン基を持つ反復単位を有するポリマーが挙げられる:
【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

【0066】
式中、基Rは、互いに独立で、同じか又は異なり、芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、これらの基は前記で詳細に説明されている。これらには、とりわけ1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニル、ピリジン、キノリン、ナフタレン、フェナントレンが挙げられる。
【0067】
本発明の範囲内の好ましいポリスルホンには、ホモポリマー及びコポリマー、例えばランダムコポリマー、が挙げられる。特に好ましいポリスルホンは次式のH〜Nの反復単位を含む:
【0068】
【化11】

【0069】
【化12】

【0070】
前述のポリスルホンは、Victrex 200P(登録商標)、Victrex 720P(登録商標)、Ultrason E(登録商標)、Ultrason S(登録商標)、Mindel(登録商標)、Radel A(登録商標)、Radel R(登録商標)、Victrex HTA(登録商標)、Astrel(登録商標)及びUdel(登録商標)の商品名で市販品として入手できる。
【0071】
更に、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン及びポリアリールケトンが特に好ましい。これらの高性能ポリマーはそれ自体は公知であり、Victrex(登録商標)、PEEK(登録商標)、Hostatec(登録商標)、Kadel(登録商標)の商品名で市販品として入手できる。
【0072】
ポリマーフィルムを製造するために、ポリマー、好ましくはポリアゾール、は追加の段階で、ジメチルアセトアミド(DMAc)のような極性非プロトン性溶媒の中に溶解でき、そしてフィルムは伝統的方法により製造される。
【0073】
溶媒の残部を取り除くために、こうして得られたフィルムは、独国特許出願公開第10109829.4号明細書に記載されているように洗浄液で処理され得る。前記の独国特許出願明細書に記載されているように溶媒の残部を取り除くためにポリアゾールフィルムを洗浄することにより、このフィルムの機械的特性は驚くほど改良される。これらの特性には、フィルムの、とりわけE−モジュラス、引裂き強度及び破断強度が挙げられる。
【0074】
加えて、ポリマーフィルムは、独国特許出願公開第1010752.8号明細書又は国際公開第00/44816号パンフレットに記載されているように、例えば架橋によって更に改質が可能である。好ましい実施態様では、アルカリ性ポリマー及び少なくとも1個のブレンド構成要素から成り、使用されるポリマーフィルムは、独国特許出願公開第10140147.7号明細書に記載されているように更に架橋剤を含有する。
【0075】
ポリアゾールフィルムの厚さは、広い範囲内にあることが可能である。好ましくは、ポリアゾールが酸でドーピングされる前のそのフィルムの厚さは、一般に、5μm〜2000μm、そして特に好ましくは10μm〜1000μmの範囲内である:しかしながら、これに限定されるものではない。
【0076】
プロトン伝導性を実現するために、これらのフィルムは酸でドーピングされる。これに関して、酸には、周知のルイス−ブレンステッド(Lewis-Bransted)酸、好ましくは無機ルイス−ブレンステッド酸が挙げられる。
【0077】
更に、ポリ酸の適用も可能であり、とりわけ、イソポリ酸及びヘテロポリ酸ばかりでなく、異なる酸の混合物も可能である。この場合、本発明に従うヘテロポリ酸は、部分混合無水物として、金属(好ましくは、Cr、MO、V、W)及び非金属(好ましくは、As、I、P、Se、Si、Te)の弱ポリアルカリ性酸素酸で形成されている少なくとも2個の異なる中央原子を持つ無機ポリ酸を定義する。就中、12−ホスホモリブデン酸及び12−ホスホタングステン酸がこのグループに属する。
【0078】
ドーピング度は、ポリアゾールフィルムの伝導性に影響を及ぼすことができる。伝導性は、最大値に達するまでドーピング物質の濃度の上昇と共に増加する。本発明によると、ドーピング度は、ポリマーの反復単位のモル当りの酸のモルとして表わされる。本発明の範囲内では、3〜50、とりわけ5〜40のドーピング度が好ましい。
【0079】
特に好ましいでドーピング物質は、ホスホン酸及びスルホン酸、又は例えば加水分解過程で、各々、これらの酸を放出する化合物である。極めて特に好ましいでドーピング物質は、リン酸(HPO)である。この場合、一般に、高濃度の酸が使用される。本発明の具体的態様によると、リン酸の濃度は、ドーピング物質の重量を基準として、好ましくは少なくとも50重量%、特に少なくとも20重量%が可能である。
【0080】
更に、プロトン伝導性膜は、次の諸段階を含む方法によって得ることができる:
I) リン酸の中でポリマー、特にポリアゾールを溶解する段階
II) 段階Iによって得られる混合物を、不活性ガスの中で400℃までの温度に加熱する段階
III) 段階II)によるポリアゾールフィルムの溶液を使って、支持体の上で膜を形成する段階及び
IV) 段階III)で形成された膜が自立型になるまで、前記膜を処理する段階。
【0081】
更に、ドーピングされたポリアゾールフィルムは、次の諸段階を含む方法によって得ることができる:
A) 1個以上の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー当り少なくとも2個の酸基を含有する1個以上の芳香族カルボン酸又はそれのエステルと混合する段階、或いは1個以上の芳香族及び/又はヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を、溶液及び/又は分散液の形成物とポリリン酸の中で混合する段階、
B)
C) 段階A)による混合物を使って、層を支持体に又は電極に適用する段階、
D) 段階B)によって得られるシート状構造体/層を、ポリアゾールフィルムの形成物と不活性ガスのもとで350℃までの、好ましくは280℃までの温度に加熱する段階、
E) 段階C)で形成された膜を処理する段階(この膜が自立型になるまで)。
【0082】
段階A)で使用される芳香族又はヘテロ芳香族カルボン酸及びテトラアミノ化合物は、前記で説明済みである。
【0083】
段階A)で使用されるポリリン酸は、例えばリーデル・デハーン(Riedel-deHaen)から入手できる常用のポリリン酸である。ポリリン酸、Hn+23n+1(n>1)は、通常、Pとして計算して(酸滴定法による)少なくとも83%の濃度を有する。モノマー溶液の代わりに、分散液/懸濁液を作ることもできる。段階A)で生成される混合物は、ポリリン酸対全モノマーの合計の重量比で、1:10,000〜10,000:1、好ましくは1:1,000〜1,000:1とりわけ1:100〜100:1を有する。
【0084】
段階B)による層の形成は、ポリマーフィルム製造の先行技術から知られている、それ自体は既知の方法(流込み、吹付け、ドクターブレードによる被覆)により行なわれる。いろいろな条件下で不活性と見なされるいずれの支持体も支持体として適している。粘度を調整するために、必要に応じてリン酸(濃リン酸、85%)を溶液に加えることができる。こうして、粘度は所望の値に調整できるので、膜の形成は容易になる。
【0085】
段階B)により製造される層は、20〜4000μm、好ましくは30〜3500μm、とりわけ50〜3000μmの厚さを有する。
【0086】
段階A)による混合物が、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸も含有するならば、形成されるポリマーの分岐/架橋は、それらの酸によって実現される。このことによって、機械的特性の改良が得られる。
【0087】
段階C)により製造されるポリマー層の処理は、この層が燃料電池で使用される場合に充分な強度を発現するまで、或る温度と時間、湿気の中に入れておくことである。この処理は、膜が何等の損傷も受けることなく支持体から取り外せるように自立型になる程度まで行なうことができる。
【0088】
段階B)で得られるシート状構造体は、段階C)により350℃までの、好ましくは280℃までの、そして特に好ましくは200℃〜250℃の範囲内の温度まで加熱される。段階C)での使用対象の不活性ガスは当業者内では知られている。とりわけ窒素ばかりでなく、ネオン、アルゴン及びヘリウムのような貴ガスもこのグループに属する。
【0089】
本方法の変形のうちでは、オリゴマー及びポリマーの形成は、段階A)で得られる混合物を350℃までの、好ましくは280℃までの温度に加熱することによって現在では行なうことができる。選択される温度及び時間によっては、むしろ段階C)での加熱を、或る程度は又は充分に省くことができる。この変形体も本発明の目的である。
【0090】
段階D)での膜の処理は、0℃〜150℃の範囲内の温度で、好ましくは10℃〜120℃の温度で、とりわけ室温(20℃)〜90℃で、湿気又は水及び/又は蒸気及び/又は含水の、最大85%のリン酸の存在で行なわれる。処理は、常圧で行なわれるのが好ましいが、圧力の作用で行なうこともできる。処理は、充分な湿気の存在で行なわれるのが不可欠であり、それによって、存在しているポリリン酸は、低分子量のポリリン酸及び/又はリン酸の形成を伴う部分加水分解によって膜の固化に寄与する。
【0091】
段階D)での有機リン酸の部分加水分解は、膜の固化、層厚さの減少、及び15〜3000μm、好ましくは20〜2000μm、とりわけ20〜1500μmの厚さを有し、自立型である膜の形成に繋がる。段階B)により、ポリリン酸層の中に存在している分子内構造及び分子間構造(相互貫入網目構造、IPN)は、段階C)での規則型膜の形成に繋がり、これは、形成される膜の固有の特性の要因となる。
【0092】
段階D)による処理の上限温度は、一般に、150℃である。例えば、過熱蒸気からの極めて短時間の湿気の作用により、この蒸気は150℃より熱くなることもある。処理の期間は温度の上限に対して重要である。
【0093】
部分加水分解(段階D)は、定義される湿気作用で加水分解が特別に制御され得る気候チャンバー内でも行なうことができる。これに関して、湿気は、温度、又は例えば空気、窒素、二酸化炭素若しくはその他の好適なガス、又は蒸気のようなガス、と接触している周囲の領域の飽和度によって具体的に設定できる。処理期間は、前述の選択されるパラメータによって決まる。
【0094】
更に、処理期間は、膜の厚さによって決まる。
【0095】
一般に、処理期間は、例えば過熱蒸気の作用では数秒〜数分間、又は、例えば屋外で、室温で比較的低い相対湿度では、丸一日にも及ぶ。好ましくは処理期間は、10秒〜300時間、とりわけ1分〜200時間である。
【0096】
部分加水分解が、室温(20℃)で周囲空気が相対湿度40−80%で行なわれる場合、処理期間は1〜200時間である。
【0097】
段階D)により得られる膜は、膜が自立型、即ち何等の損傷も受けずに支持体から取り外され、もし適用可能ならば、次に、直ちに更に加工され得るような方法で形成され得る。
【0098】
リン酸の濃度は、従って本発明による高分子膜の伝導性は、加水分解度、即ち期間、温度、周囲湿度によって設定できる。リン酸の濃度は、ポリマーの反復単位のモル当りの酸のモルとして表される。特に高濃度のリン酸を持つ膜は、段階A)〜D)を含む方法により得ることができる。10〜50の濃度(式(I)、例えばポリベンゾイミダゾール、の反復単位と関連するリン酸のモル)、とりわけ12〜40の濃度が好ましい。ポリアゾールを市販のオルトリン酸でドーピングすることにより、前記のようなドーピング度(濃度)を得ることは、極めて難しい、又は全くできないと言う訳ではない。
【0099】
前述の方法の改良法によると、ドーピングされたポリアゾールフィルムは、リン酸を使って製造され、これらのフィルムの製造は、次の諸段階を含む方法によって行なうことができる:
1) 1個以上の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー当り少なくとも2個の酸基を含有する1個以上の芳香族カルボン酸若しくはそれらのエステルと、又は1個以上の芳香族及び/又はヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸と、350℃までの、好ましくは300℃までの温度で溶融状態で反応させる段階、
2) 段階1)により得られた固体プレポリマーをリン酸に溶解する段階、
3) 段階2)により得られた溶液を、溶解ポリアゾールの形成物と共に不活性ガスのもとで300℃までの、好ましくは280℃までの温度に加熱する段階、
4) 段階3)によるポリアゾールポリマーの溶液を使って膜を支持体上に形成する段階、並びに
5) 段階4)で形成された膜が自立型になるまで、前記膜を処理する段階。
【0100】
1)〜5)で説明した方法の諸段階は、段階A)〜D)の場合、詳細に説明されていて、それによって、特に好ましい実施態様に関して参考になる。
【0101】
本発明の更なる好ましい実施態様では、ホスホン酸基を含むモノマー及び/又はスルホン酸基を含むモノマーから誘導されるポリマーを含む膜が使用される。
【0102】
いろいろな可能性のなかで、前記高分子膜は次の諸段階を含む方法によって得ることができる:
A) ホスホン酸基を含有するモノマーと少なくとも1個のポリマーを含む混合物を製造する段階、
B) 段階A)による混合物を使って層を支持体に適用する段階、
C) 段階B)によって得られるシート状構造体の中に存在しているホスホン酸基を含むモノマーを重合する段階。
【0103】
更に、いろいろな可能性のなかで、前記のプロトン伝導性高分子膜は、次の諸段階を含む方法によって得ることができる:
I) ホスホン酸基を含むモノマーを含有する液体でポリマーフィルムを膨潤する段階、及び
II) 段階I)のポリマーフィルムの中に導入されたホスホン酸基を含むモノマーの少なくとも一部分を重合する段階。
【0104】
膨潤は、フィルムの重量が少なくとも3重量%増加することを意味すると理解される。好ましくは、膨潤は、少なくとも5%、特に好ましくは少なくとも10%である。
【0105】
膨潤Qの決定は、重量測定によって、膨潤前のフィルムの質量m、及び段階B)による重合後のフィルムの質量、mから決められる。
Q=(m−m)/m×100
【0106】
膨潤は、0℃を超える温度で、とりわけ、室温(20℃)〜180℃で、好ましくはホスホン酸基を含むモノマーを少なくとも5重量%を含有する液体の中で行なわれるのが好ましい。更に、膨潤は昇圧下でも行なわれ得る。これに関しては、経済的考察及び技術的可能性から制約が生じる。
【0107】
膨潤のために使用されるポリマーフィルムは、一般に、5〜3000μm、好ましくは10〜1500μmそして特に好ましくは20〜500μmの範囲内の厚さを有する。ポリマーから作られるこのようなフィルムの製造は広く知られていて、これらのなかには市販されているのもある。ポリマーフィルムと言う用語は、膨潤のために使用されるフィルムが、芳香族スルホン酸を持つポリマーを含んでいて、このフィルムは更に常用の添加剤を含有してもよいことを意味する。
【0108】
フィルムばかりでなく、好ましいポリマー、特にポリアゾール及び/又はポリスルホンもその製造法は既に説明した。
【0109】
ホスホン酸基を含むモノマー及び/又はスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体は溶液でもよく、この液体は、懸濁された及び/又は分散された構成要素も含有してもよい。ホスホン酸基を含むモノマーを含有する液体の粘度は、広い範囲内で可能であり、溶媒添加又は昇温することによって粘度を調整できる。好ましくは、動的粘度は、0.1〜10000mPas、とりわけ0.2〜2000mPasの範囲内であり、この数値は、例えばDIN 53015に従って測定できる。
【0110】
ホスホン酸基を含むモノマー及び/又はスルホン酸基を含むモノマーは、当業者内では公知である。これらは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合及び少なくとも1個のホスホン酸基を有する化合物である。好ましくは炭素−炭素二重結合を形成する2個の炭素原子は、二重結合の立体障害を少なくする基との少なくとも2、好ましくは3個の結合を有する。これらの基には、就中、水素原子及びハロゲン原子、とりわけ、フッ素原子が挙げられる。本発明の範囲内では、ホスホン酸基を含むポリマーは、ホスホン酸基だけを含むモノマーの重合、又は別のモノマー及び/又は架橋剤との重合によって得られる重合生成物から得られる。
【0111】
ホスホン酸基を含むモノマーは、1、2、3個以上の炭素−炭素二重結合を含むことができる。ホスホン酸基を含むモノマーは、1、2、3個以上のホスホン酸基も含有できる。
【0112】
一般に、ホスホン酸基を含むモノマーは、2〜20個、好ましくは2〜10個の炭素原子を含有する。
【0113】
ホスホン酸基を含むポリマーを製造するために使用されるホスホン酸基を含むモノマーは、次式の化合物であるのが好ましい:
【0114】
【化13】

【0115】
式中、
Rは、1個の結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基、例えばエチレンオキシ基、又は二価のC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換され得る、
Zは、互いに独立で、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコシキ基、例えばエチレンオキシ基、又はC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、−CNで置換され得る、及びxは整数1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10を表わす、yは整数1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10を表わす、
及び/又は式:
【0116】
【化14】

【0117】
式中、
Rは、1個の結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基、例えばエチレンオキシ基、又は二価のC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換され得る、
Zは、互いに独立で、水素、C1−C15アルキレン基、C1−C15アルコシキ基、例えばエチレンオキシ基、又はC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、−CNで置換され得る、及び
Xは、整数1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10を表わす、
及び/又は式:
【0118】
【化15】

【0119】
式中、
Aは、式COOR、CN、CONR、OR及び/若しくはRの基を表し、この式中のRは水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、例えばエチレンオキシ基、又はC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体はハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換され得る、
Rは、1個の結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基、例えばエチレンオキシ基、又は二価のC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換され得る、
Zは、互いに独立で、水素、C1−C15アルキレン基、C1−C15アルコシキ基、例えばエチレンオキシ基、又はC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、−CNで置換され得る、及び
Xは、整数1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10を表わす。
【0120】
ホスホン酸基を含む好ましいモノマーには、就中、エテンホスホン酸、プロペンホスホン酸、ブテンホスホン酸のようなホスホン酸基を有するアルケン;例えば、2−ホスホノメチルアクリル酸、2−ホスホノメチルメタクリル酸、2−ホスホノメチルアクリルアミド及び2−ホスホノメチルメタクリルアミドのようなホスホン酸基を有するアクリル酸化合物及び/又はメタクリル酸化合物が挙げられる。
【0121】
例えば、アルドリッチ(Aldrich)社又はクラリアント(Clariant)有限責任会社(GmbH)から購入できるような市販のビニルホスホン酸(エテンホスホン酸)を使用するのが特に好ましい。好ましいビニルホスホン酸は、70%、とりわけ90%を超える純度を有し、97%を超える純度を持つのが特に好ましい。
【0122】
後で酸に転化できる誘導体の形でもホスホン酸基を含むモノマーを使用できるが、その場合、酸への転化は重合状態でも行なわれ得る。これらの誘導体には、とりわけ、ホスホン酸基を含むモノマーの塩、エステル、アミド及びハロゲン物が挙げられる。
【0123】
使用される液体は、混合物の全重量を基準として、ホスホン酸基を含むモノマー及び/又はスルホン酸基を含むモノマーの、好ましくは少なくとも20重量%、とりわけ少なくとも30重量%そして特に好ましくは少なくとも50重量%を含む。
【0124】
使用される液体は、更に、更なる有機及び/又は無機溶媒を含有できる。有機溶媒には、とりわけ、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような極性非プロトン性溶媒、酢酸エチルのようなエステル、並びにエタノール、プロパノール、イソプロパノール及び/又はブタノールのようなアルコールのような極性プロトン性溶媒が挙げられる。無機溶媒には、とりわけ、水、リン酸及びポリリン酸が挙げられる。
【0125】
これらは、加工性に好ましい影響を及ぼすことができる。とりわけ、モノマーに対するフィルムの吸収能力は、有機溶媒を加えることにより向上され得る。そのような溶液の中でのホスホン酸基を含むモノマー及び/又はスルホン酸基を含むモノマーの含量は、一般に少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは10〜97重量%である。
【0126】
スルホン酸基を含むモノマーは、当業者内では公知である。これらは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合及び少なくとも1個のスルホン酸基を有する化合物である。好ましくは、炭素−炭素二重結合を形成する2個の炭素原子は、二重結合の立体障害を少なくする基との少なくとも2、好ましくは3個の結合を有する。これらの基には、就中、水素原子及びハロゲン原子、とりわけ、フッ素原子が挙げられる。本発明の範囲内では、スルホン酸基を含むポリマーは、スルホン酸基を含むモノマー単独の重合、又は更なるモノマー及び/若しくは架橋剤との重合によって得られる重合生成物から得られる。
【0127】
スルホン酸基を含むモノマーは、1、2、又は3個以上の炭素−炭素二重結合を含むことができる。スルホン酸基を含むモノマーは、1、2、又は3個以上のスルホン酸基も含有してもよい。
【0128】
一般に、スルホン酸基を含むモノマーは、2〜20個、好ましくは2〜10個の炭素原子を含有する。
【0129】
スルホン酸基を含むモノマーは、好ましくは次式の化合物である、
【0130】
【化16】

【0131】
式中、
Rは、1個の結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基、例えばエチレンオキシ基、又は二価のC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換され得る、
Zは、互いに独立で、水素、C1−C15アルキレン基、C1−C15アルコシキ基、例えばエチレンオキシ基、又はC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、−CNで置換され得る、
Xは、整数1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10を表わし、
Yは、整数1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10を表わす、
及び/又は式:
【0132】
【化17】

【0133】
式中、
Rは、1個の結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基、例えばエチレンオキシ基、又は二価のC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換され得る、
Zは、互いに独立で、水素、C1−C15アルキレン基、C1−C15アルコシキ基、例えばエチレンオキシ基、又はC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、−CNで置換され得る、
Xは、整数1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10を表わす、
及び/又は式:
【0134】
【化18】

【0135】
式中、
Aは、式COOR、CN、CONR、OR及び/若しくはRの基を表し、この式中のRは水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、例えばエチレンオキシ基、又はC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体はハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換され得る、
Rは、1個の結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基、例えばエチレンオキシ基、又は二価のC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換され得る、
Zは、互いに独立で、水素、C1−C15アルキレン基、C1−C15アルコシキ基、例えばエチレンオキシ基、又はC5−C20アリール若しくはヘテロアリール基を表し、前記基自体は、ハロゲン、−OH、−CNで置換され得る、及び
Xは、整数1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10を表わす。
【0136】
スルホン酸基を含む好ましいモノマーには、就中、エテンスルホン酸、プロペンスルホン酸、ブテンスルホン酸のようなスルホン酸基を有するアルケン;例えば、2−スルホノメチルアクリル酸、2−スルホノメチルメタクリル酸、2−スルホノメチルアクリルアミド及び2−スルホノメチルメタクリルアミドのようなスルホン酸基を有するアクリル酸化合物及び/又はメタクリル酸化合物が挙げられる。
【0137】
例えば、アルドリッチ(Aldrich)社又はクラリアント(Clariant)有限責任会社(GmbH)から購入できるような市販のビニルスルホン酸(エテンスルホン酸)を使用するのが特に好ましい。好ましいビニルスルホン酸は、70%、とりわけ90%を超える純度を有し、97%を超える純度を持つのが特に好ましい。
【0138】
後で酸に転化できる誘導体の形でもスルホン酸基を含むモノマーを使用できるが、その場合、酸への転化は、重合状態でも行なわれ得る。これらの誘導体には、とりわけ、スルホン酸基を含むモノマーの塩、エステル、アミド及びハロゲン物が挙げられる。
【0139】
本発明の具体的態様によると、スルホン酸基を含むモノマー対ホスホン酸基を含むモノマーの重量比は、100:1〜1:100、好ましくは10:1〜1:10そして特に好ましくは2:1〜1:2の範囲内で可能である。
【0140】
本発明の更なる具体的態様によると、ホスホン酸基を含むモノマーは、スルホン酸基を含むモノマーよりも好ましい。従って、ホスホン酸基を含むモノマーを含有する液体を使用するのが特に好ましい。
【0141】
本発明の別の実施態様では、架橋できるモノマーは、高分子膜の製造の際に使用できる。これらのモノマーは、フィルムを処理するのに使用される液体に加えてもよい。架橋できるモノマーは、液体での処理の後にシート状構造体にも適用してもよい。
【0142】
架橋可能なモノマーは、とりわけ、少なくとも2個の炭素−炭素二重結合を有する化合物である。好ましくは、ジエン、トリエン、テトラエン、ジメチルアクリレート、トリメチルアクリレート、テトラメチルアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレートである。
【0143】
特に好ましくは、次式のジエン、トリエン、テトラエン、
【0144】
【化19】

【0145】
次式のジメチルアクリレート、トリメチルアクリレート、テトラメチルアクリレート、
【0146】
【化20】

【0147】
次式のジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレートである、
【0148】
【化21】

【0149】
式中、
Rは、C1−C15アルキル基、C5−C20アリール又はヘテロアリール基、NR’、−SO、PR’、Si(R’)を表し、前記基自体は置換され得る、
R’は、互いに独立で、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコシキ基、C5−C20アリール又はヘテロアリール基を表し、及び
nは、少なくとも2である。
【0150】
前記基Rの置換基は、好ましくはハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、ニトリル、アミン、シリル又はシロキサンの各基である。
【0151】
特に好ましい架橋剤は、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレン及びポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、エポキシアクリレート、例えばエバクリル(Ebacryl)、N’,N−メチレンビスアクリルアミド、カルビノール、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ジビニルベンゼン及び/又はビスフェノールAジメチルアクリレートである。これらの化合物は、例えば、ペンシルベニア州、Exton、Sartomer社から名称CN-120、CN-104及びCN-980で市販品として入手できる。
【0152】
架橋剤の使用は随意であり、これらの化合物は、ホスホン酸基を含むモノマーの重量を基準として、一般に0.05〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%の範囲内で使用できる。
【0153】
ホスホン酸基を含むモノマー及び/又はスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体は溶液が可能であり、この液体は、懸濁された及び/又は分散された構成要素も含有可能である。ホスホン酸基を含むモノマー及び/又はスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体の粘度は、広い範囲内で可能であり、粘度を調整するために溶媒を添加する又は昇温することができる。動的粘度は、0.1〜10000mPas、とりわけ0.2〜2000mPasの範囲内にあるのが好ましく、これらの数値は、例えばDIN 53015に従って測定できる。
【0154】
膜、特にポリアゾールを主成分とする膜、は、大気中の酸素の存在で、熱の作用により表面で更に架橋され得る。膜のこのような硬化によって、更に、膜の特性が向上する。このために、膜を、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも200℃そして特に好ましくは少なくとも250℃の温度に加熱できる。この硬化方法の段階において、酸素濃度は、通常、5〜50容量%、好ましくは10〜40容量%の範囲内である;しかしながら、これに限定されるものではない。
【0155】
架橋は、各々、IR又はNIR(IR=赤外線、即ち700nmを超える波長を有する光;NIR=近赤外線、即ち約700〜2000nmの範囲内の波長を有し、約0.6〜1.75eVの範囲内のエネルギーを有する光)の作用によっても行なうことができる。もう1つの方法は、β−線照射である。これに関して、放射線量は、5〜250kGyである。
【0156】
所望される架橋によって、架橋反応の期間は広い範囲内で可能である。一般に、この反応時間は、1秒〜10時間、好ましくは1分〜1時間の範囲内であり、これは限定を表すことが意図されものではない。
【0157】
特に好ましい高分子膜は、高い性能を発現する。この理由は、とりわけ、改良されたプロトン伝導性である。この伝導率は、120℃の温度で、少なくとも1mS/cm、好ましくは少なくとも2mS/cm、とりわけ少なくとも5mS/cmである。これら値はここでは湿潤させることなく得られる。
【0158】
比導電率は、定電位法での四極配列で白金電極(ワイヤ、直径0.25mm)を使うインピーダンス分光法によって測定される。集電電極間の距離は2cmである。得られるスペクトルは、オーム抵抗とキャパシターとの並列配列から成る単純モデルを使って評価される。リン酸でドーピングされた膜の試料の断面積は試料を取り付ける直前に測定される。温度依存性を測定するために、測定電池は、炉の中で所望の温度にされた後、試料の直近に配置されたPt−100熱電対を使って調整される。所定の温度に達すると、測定の開始に先立って、試料は10分間この温度で保持される。
【0159】
ガス拡散層
本発明による膜電極ユニットは、高分子電解質膜によって隔離されている2個のガス拡散層を有する。この目的に対しては、平坦で、導電性の耐酸性構造体が使用されるのが普通である。これらには、例えば、黒鉛繊維ペーパー、カーボン繊維ペーパー、黒鉛織物及び/又は、カーボンブラックの添加によって伝導性にされたペーパーが挙げられる。これらの層を通るとガス及び/又は液体の流れの微細な分布が実現される。
【0160】
一般に、この層は、80μm〜2000μm、とりわけ100μm〜1000μmそして特に好ましくは150μm〜500μmの範囲内の厚さを有する。
【0161】
具体的実施態様によると、ガス拡散層の少なくとも1層は圧縮性材料で構成できる。本発明の範囲内では、圧縮性材料は、ガス拡散層が圧力によってこの層の完全性を損なうことなく、この層の当初の厚さの半分まで、とりわけ3分の1まで圧縮され得る特性によって特徴付けられる。
【0162】
この特性は、一般に、黒鉛織物及び/又は、カーボンブラックの添加によって伝導性にされたペーパーで作られたガス拡散層によって発現される。
【0163】
触媒層
触媒層(類)は、触媒的に活性な物質を含有する。これらには、就中、白金族、即ち、Pt、Pd、Ir、Rh、Os、Ruの貴金属、又はAu及びAgの貴金属も挙げられる。更に、前記金属の合金も使用可能である。加えて、少なくとも1種の触媒層は、白金族の元素と、例えばFe、Co、Ni、Cr、Mn、Zr、Ti、Ga、V等のような非貴金属との合金を含有できる。更に、前記貴金属及び/又は非貴金属の酸化物も使用できる。
【0164】
前記物質を含む触媒的に活性な粒子には、所謂、黒い貴金属、とりわけ白金及び/又は白金合金、を金属粉末として使用してもよい。そのような粒子は、一般に、5nm〜200nmの範囲内の、好ましくは7nm〜100nmの範囲内のサイズを有する。
【0165】
更に、金属は、担体材料の上にも使用できる。好ましくは、この担体は、特に、カーボンブラック、黒鉛又は黒鉛化カーボンブラックの形態で使用可能であるカーボンを含む。更に、例えばSnO、TiOのような導電性金属酸化物、又は例えばFePO、NbPO、Zr(POのようなリン酸塩を、担体材料として使用できる。これに関して、指数x、y及びzは、遷移金属がいろいろな酸化状態になり得るので、既知の範囲内で可能である個々の化合物の酸素又は金属の含量を表す。
【0166】
金属及び担体と接合剤との全重量基準で、担体上のこれらの金属粒子の含量は、一般に1〜80重量%、好ましくは5〜60重量%そして特に好ましくは10〜50重量%の範囲内である;しかしながら、これに限定されるものではない。担体の粒径、とりわけカーボン粒子のサイズは、20〜1000nm、とりわけ30〜100nmの範囲内にあるのが好ましい。担体上に存在している金属粒子のサイズは、好ましくは1〜20nm、とりわけ1〜10nmそして特に好ましくは2〜6nmの範囲内である。
【0167】
異なる粒子のサイズは、平均値で表し、透過型電子顕微鏡法又はX線粉末回折法によって決定できる。
【0168】
前述の触媒的に活性な粒子は、一般に市販品で得ることができる。
【0169】
更に、触媒的に活性な層は、常用の添加物を含有してもよい。これらには、就中、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフルオロポリマー、プロトン伝導性イオノマー及び界面活性剤が挙げられる。
【0170】
本発明の具体的実施態様によると、フルオロポリマー対少なくとも1種の貴金属及び随意に1種以上の担体材料を含む触媒材料との重量比は、0.1より大きく、この比は0.2〜0.6の範囲内であるのが好ましい。
【0171】
本発明の具体的実施態様によると、触媒層は、1〜1000μm、とりわけ5〜500、好ましくは10〜300μmの範囲内の厚さを有する。この数値は、走査型電子顕微鏡法(SEM)を使って得ることができ、写真から層の厚さの測定値を平均することにより決めることができる平均値を表す。
【0172】
本発明の具体的実施態様によると、触媒層の貴金属の含量は、0.1〜10.0mg/cm、好ましくは0.3〜6.0mg/cmそして特に好ましくは0.3〜3.0mg/cmである。これらの数値は、シート状試験の元素分析によって決めることができる。
【0173】
膜電極ユニットに関する更なる情報のために、技術文献、とりわけ特許出願書、国際公開第01/18894A2号パンフレット、DE19509748、DE19509749、国際公開第00/26982号パンフレット、国際公開第92/15121号パンフレット及びDE19757492が参考になる。膜電極ユニットの構造及び製造ばかりでなく、選択対象の電極、ガス拡散層及び触媒にも関する前記引用文献の中に含まれる開示内容も本記載文の一部である。
【0174】
触媒層の電気化学的に活性な表面は、高分子電解質膜と接触している表面であり、且つ前述のレドックス反応が起き得る表面を定義する。本発明によって、特に大きい、電気化学的に活性な表面の形成が可能となる。本発明の具体的態様によると、この電気化学的に活性な表面のサイズは、少なくとも2cm、とりわけ少なくとも5cmそして好ましくは少なくとも10cmである;しかしながら、これに限定されるものではない。
【0175】
ポリマーフレーム
本発明による膜電極ユニットは、触媒層と接触している高分子電解質膜の2個の表面の少なくとも1個の上に、ポリマーフレーム、高分子電解質膜の表面の少なくとも1個の上に取付けられている内側領域、及びガス拡散層の表面に取付けられていない外側領域を有する。これに関して、高分子電解質膜の表面に、又はフレームの内側領域の表面に垂直であるかどうかの点検が行なわれる場合、内側領域が高分子電解質膜と重なる領域を有する手段が設けられる。見方を変えれば、ガス拡散層の表面に、又はフレームの外側領域の表面に垂直であるかどうかの点検が行なわれる場合、外側領域はガス拡散層と重なる領域を有しない。これに関連して、“内側”及び“外側”領域の理解は、フレームの同じ表面と又は同じ側と関連があるので、フレームが、膜と又はガス拡散層と接触した後に始めて1つの配置が作られ得る。
【0176】
少なくとも1個のフレームの外側領域の厚さは、少なくとも1個のフレームの内側領域の厚さより厚い。少なくとも1個のフレームの外側フレームの厚さは、高分子電解質膜の厚さと少なくとも1個のフレームの内側領域の厚さとの合計以上であるのが好ましい。
【0177】
内側領域は、5μm〜500μmの範囲内の、特に好ましくは10μm〜100μmの範囲内の厚さを有するのが好ましい。外側領域は、80μm〜4000μmの範囲内の、とりわけ120μm〜2000μmの範囲内そして特に好ましくは150μm〜800μmの範囲内の厚さを有するのが好ましい。1つの好ましい実施態様によると、外側領域の厚さ対内側領域の厚さの比は、1.5:1〜200:1、好ましくは2.5:1、特に好ましくは5:1〜40:1の範囲内である。
【0178】
一般に、フレームは、膜表面の少なくとも80%を覆い、電極によって覆われていない。好ましくは、電極と接触している高分子電解質膜の2個の表面の各々には、ポリマーフレームが取付けられている。
【0179】
本発明の好ましい実施態様によると、高分子電解質膜の表面は、2個の電極及び2個のフレームにより完全に覆われていて、2個のフレームは外側領域で互いに接続可能である。
【0180】
外側領域の全構成要素の厚さは、内側領域の全構成要素の厚さの合計を基準として、50%〜100%、好ましくは65%〜95%そして特に好ましくは75%〜85%である。これに関して、外側領域の構成要素の厚さは、5N/mm、好ましくは10N/mmの圧力で1分間にわたり行なわれる最初の圧縮段階の後では、これらの構成要素が有する厚さに相当する。この点に関して、圧縮段階を必要としない場合、内側領域の構成要素の厚さは、使用される層の厚さに相当する。
【0181】
外側領域の厚さは、外側領域の全構成要素の厚さの合計と関連がある。外側領域の構成要素は、フレームの外側領域の表面領域に平行なベクトルから生じていて、このベクトルが交差する層は外側領域の構成要素に加えられることになる。膜に外側領域との重なりが見られない場合、外側領域の厚さはポリマーフレームの厚さから生じる。
膜に外側領域との重なりが見られる場合、外側領域の厚さは、ポリマーフレームの厚さ及びその重なりの領域の膜の厚さから生じる。
【0182】
内側領域の全構成要素の厚さは、一般に、膜、触媒層、並びに負極及び正極のガス拡散層の厚さの合計から得られる。
【0183】
層の厚さは、ミツトヨ(Mitutoyo)社製のデジタル式厚み計を使って測定される。測定過程での2個の円形の平坦な接触面の初期圧力は、1 PSIであり、接触面の直径は1cmである。
【0184】
触媒層は、一般に自立型ではなく、通常はガス拡散層又及び/又は膜に適用される。これに関して、例えば、触媒層の一部が、ガス拡散層及び/又は膜の中に拡散すると、転移層が形成できる。このことは、触媒層がガス拡散層の一部として理解されることにも繋げることができる。触媒層の厚さは、触媒層が適用されている層、例えばガス拡散層又は膜、の厚さの測定から、即ち、この測定によって、触媒層及び対応する層の合計、例えばガス拡散層と触媒層との合計、から得られる。
【0185】
外側領域の構成要素の厚さは、80℃の温度で10N/mmの圧力で5時間にわたり2%以下減少し、この厚さの減少は、10N/mmの圧力で1分間にわたり発生する最初の圧縮段階の後に確認される。
【0186】
外側領域、とりわけフレームの外側領域の構成要素の表面ベクトルに平行な圧力依存性及び温度依存性変形の測定は、加熱式プレス板付きの油圧プレスを使って行なわれる。
【0187】
これに関して、油圧プレスは次の技術データを示す:
【0188】
このプレスの最大圧縮面積は220×220mmで、力の範囲は50−50000Nである。圧力センサーの分解能は±1Nである。
【0189】
10mmの測定範囲を持つ誘導距離センサーが、プレス板に取り付けられている。距離センサーの分解能は±1μmである。
【0190】
プレス板は、室温〜200℃の温度範囲内で操作できる。
【0191】
このプレスは、対応するソフトウエアの入ったパソコンによって強制モードで操作される。
【0192】
力及び距離センサーのデータは、1秒当り最大100個の測定データのデータ速度でリアルタイムに記録され、表示される。
【0193】
試験方法:
試験対象のガスケット材料を、55×55mmの表面積に切断し、各々、80°、120℃及び160℃に予熱したプレス板の間に置く。
【0194】
プレス板を閉じて、このプレスの制御回路が閉となる様に120Nの初期応力を負荷する。この時点で距離センサーを0に設定する。次に、予めプログラミング化された圧力勾配試験を実施する。このために、圧力を、2N/mmsの速度で、予め定められた値、例えば、10、15又は20N/mmまで高め、そしてこの値を少なくとも5時間保持する。全保持時間が経つと、圧力を、2N/mmsの勾配で0N/mmまで下げた後、圧力を開放する。
【0195】
厚さの相対的及び/又は絶対的変化は、圧力試験過程で記録された変形曲線から読み取ることができる、又は普通の膜厚計を使う測定によって圧力試験の後に測定できる。
【0196】
外側領域の、特にフレームの、構成要素のこの特性は、一般に、高圧安定性を有するポリマーを使用することによって得られる。多くの場合、少なくとも1個のフレームは多層構造を有する。
【0197】
好ましくは、外側領域の構成要素の厚さは、120℃、特に好ましくは160℃の温度で、10N/mm、とりわけ15N/mmそして特に好ましくは20N/mmの圧力で、5時間、特に好ましくは10時間にわたり5%以下、とりわけ2%以下、好ましくは1%以下減少する。
【0198】
本発明の具体的態様によると、少なくとも1個のフレームは、10μm以上の厚さを有する少なくとも2個のポリマー層を含み、これらの層の各ポリマーは、80℃、好ましくは160℃で測定して、少なくとも6N/mm、好ましくは少なくとも7N/mmの電圧、及び100%の伸びを有する。これらの数値の測定は、DIN EN ISO 527−1に従って行なわれる。
【0199】
好ましくは、ポリマー層のうちの一部が、フレーム全体を覆う、一方、ポリマー層のうちの別のポリマー層がフレームの外側領域だけを覆う。
【0200】
本発明の具体的態様によると、層は、熱可塑性樹脂加工法、例えば射出成形又は押出成形、によって適用できる。従って、層は、溶融性ポリマーで製造されるのが好ましい。
【0201】
本発明の範囲内では、好ましく使用されるポリマーは、MIL−P−46112B、4.4.5項に従って測定されて、少なくとも190℃、好ましくは少なくとも220℃そして特に好ましくは少なくとも250℃の長期使用温度を発現するのが好ましい。
【0202】
好ましい溶融性ポリマーには、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン) FEP、ポリフッ化ビニリデン PVDF、ペルフルオロアルコキシポリマー PFA、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)) MFAのような、とりわけフルオロポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、多くの場合、例えばHostafon(登録商標)、Hyflon(登録商標)、Teflon(登録商標)、Dyneon(登録商標)及びNowoflon(登録商標)の商品名で市販品として入手できる。
【0203】
1層又は両方の層は、就中、ポリフェニレン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリイミン、ポリエーテルイミン、ポリアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサジアゾール、ポリベンゾトリアゾール、ポリホフファゼン、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニルアミド、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド及びこれらのポリマーの2種以上の混合物から作ることができる。
【0204】
本発明の好ましい態様によると、フレームはポリイミド層を有する。ポリイミドは、当業者により知られている。これらのポリマーは、主鎖の本質的構造単位としてイミド基を有していて、例えば、ウルマン編、“工業化学の百科事典(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry)”、第5版、CD−ROM版、1998年 、キーワード:ポリイミド、に記載されている。
【0205】
また、ポリイミドには、イミド基の他に、主鎖の構成要素として、アミド(ポリアミドイミド)、エステル(ポリエステルイミド)及びエーテル基(ポリエーテルイミド)を含有するポリマーが挙げられる。
【0206】
好ましいポリイミドは、次式(VI)の反復単位を包含する、
【0207】
【化22】

【0208】
式中、基Arは前述の意味を有し、基Rは、1〜40個の炭素原子を持つアルキル基、又は二価の芳香族基若しくはヘテロ芳香族基を表す。好ましくは、基Rは、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルケトン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、アントラセン及びフェナントレンから誘導される二価の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、これらは、随意に置換され得る。指数nは、反復単位がポリマーの部分を表すことを示す。
【0209】
このようなポリイミドは、デュポン(DuPont)からKapton(登録商標)、Vespel(登録商標)、Toray(登録商標)、及びPyralin(登録商標)、並びにGE PlasticsからUltem(登録商標)、並びにUbe IndustriesからUpilex(登録商標)の各商品名で市販品として入手できる。
【0210】
ポリイミド層の厚さは、好ましくは50〜100μm、特に10μm〜500μmそして特に好ましくは25μm〜100μm の範囲内である。
【0211】
好適なポリマーを使用することにより、異なる層を互いに接続できる。これらのポリマーには、とりわけフルオロポリマーが挙げられる。好適なフルオロポリマーは、当業者内では公知である。これらには、就中、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)(FEP)が挙げられる。前述の層の上に存在していてフルオロポリマーで作られている層は、一般に、少なくとも0.5μm、とりわけ少なくとも2.5μmの厚さを有する。この層は、高分子電解質膜とポリイミド層との間に取り付けられ得る。更に、この層は、高分子電解質膜に面していない面にも適用できる。加えて、ポリイミド層の両面に、フルオロポリマーで作られた層を取り付けることができる。驚くことに、これによってMEUの長期安定性を向上させることが可能である。
【0212】
フルオロポリマーで作られた層が取付けられたポリイミドフィルムは、DuPontによりKapton FN(登録商標)の商品名で市販品として入手できる。
【0213】
少なくとも1個のフレームは、ガス拡散層に面する側に、一般に、流れ場チャンネルが取付けられて反応体流体の分配を可能にする導電性セパレータプレートと接触しているのが普通である。セパレータプレートは、通常、黒鉛、又は導電性の熱安定性プラスチックで作られている。
【0214】
一般に、セパレータプレートと相互作用をして、ポリマーフレームは、外部に対してガス空間を気密にする。更に、ポリマーフレームは、一般に、負極と正極との間のガス空間も気密にする。驚くことには、その結果、気密に関する進歩した考え方により、延長された実用寿命を持つ燃料電池が得られることが判った。
【0215】
驚くことには、膜電極ユニットの長期安定性は、少なくとも1個の触媒層と接触している少なくとも1個のフレーム層によって改良できる。好ましい実施態様によると、2個のフレームが、各々、1個の触媒層と接触している。この場合、フレームの内側領域の少なくとも1個の層は、膜と触媒層との間に配置できる。更に、フレームの内側領域の少なくとも1個の層は、膜に面していない触媒層と接触することもできる。この場合、フレームの内側領域は、触媒層とガス拡散層との間に配置できる。
【0216】
一般に、フレームと、触媒層及び/又はガス拡散層との接触面積は、少なくとも2mm、とりわけ少なくとも5mmになる、しかしながら、これに限定されるものではない。触媒層及び/又はガス拡散層とフレームとの接触面積の上限は、経済的考察及び技術的考察によって決まる。好ましくは、この接触面積は、電気化学的に活性な表面に対して、100%以下、好ましくは80%以下そして特に好ましくは60%以下である。
【0217】
この場合、フレームは、エッジ面を介して、触媒層及び/又はガス拡散層と接触できる。エッジ面は、電極又はフレームの厚さと、これらの層に対応する長さ又は幅から成っている表面である。
【0218】
好ましくは、各々、フレーム又は電極の長さ及び幅によって定義される表面によって、フレームは触媒層及び/又はガス拡散層と接触する。
【0219】
ガス拡散層のこの接触面には、フレームと電極との間の密着を高めるためのフルオロポリマーを使用できる。
【0220】
次の図面は本発明のいろいろな実施態様を説明していて、これらの図面は、本発明の理解を深めるために意図されている;しかしながら、これに限定されるものではない。
【0221】
図1は、本発明による膜電極ユニットの断面側面図を示している。この図面は、この描写が、圧縮前の状態を説明し、層の間の空間が理解を深めるために意図されている略図である。この場合、フレーム1は、3個の層、1a、1b及び1c、を有していて、層1a及び1cだけは、層1bにより形成されるポリマーフレームの内側領域より厚い外側領域上に拡がっている。フレームの内側領域、即ちこの場合、層1bの一部、は、触媒層4及び高分子電解質膜5と接触している。高分子電解質膜の表面の両面に、触媒層を有するガス拡散層3、6が取付けられている。この加工法では、触媒層4が取付けられているガス拡散層3は、各々、負極又は正極を形成し、一方、触媒層4aが取付けられている第2ガス拡散層6は、各々、正極又は負極を形成している。
【0222】
図1bは、本発明による膜電極ユニットの断面側面図を示している。この図面は、この描写が、圧縮前の状態を説明し、層の間の空間が理解を深めるために意図されている略図である。この場合、フレーム1は、3個の層、1a、1b及び1c、を有していて、層1a及び1cだけは、層1bにより形成されるポリマーフレームの内側領域より厚い外側領域上に拡がっている。フレームの内側領域、この場合、層1bの一部、はガス拡散層3及び触媒層4と接触している。高分子電解質膜5の表面の両面には、触媒層拡散層4、4aが取付けられている。負極側及び正極側に、各々、ガス拡散層3があり、正極側及び負極側に、各々、ガス拡散層6がある。
【0223】
図2aは、本発明による第2膜電極ユニットの断面側面図を示している。この図面は、この描写が、圧縮前の状態を説明し、層の間の空間が理解を深めるために意図されている略図である。この場合、膜電極ユニットは、各々、2個の層、1a及び1b、又は7a及び7bを含む2個のフレーム1、7を有していて、層1a及び7aだけは、層1b及び7bによって形成されているポリマーフレームの内側領域より厚い外側領域上に拡がっている。フレームの内側領域、この場合、1b又は7bの一部、は触媒層4又は4a及び高分子電解質膜5と接触している。高分子電解質膜の表面の両面に、触媒層4又は4aを有するガス拡散層3、6が取付けられている。層、1a+1b+7a+7b、の合計の厚さは、層、1b+3+4+5+7b+4a+6、の厚さの50〜100%、好ましくは65〜95%そして特に好ましくは75〜80%の範囲内である。
【0224】
図2bは、本発明による第2膜電極ユニットの断面側面図を示している。この図面は、この描写が、圧縮前の状態を説明し、層の間の空間が理解を深めるために意図されている略図である。この場合、膜電極ユニットが、2個のフレーム1,7を有していて、これらの各フレームは、各々、2個の層1a及び1b、又は7a及び7bを含み、層1a及び7aだけが、各々、層1b及び7bにより形成されるポリマーフレームの内側領域より厚い外側領域上に拡がっている。ポリマーフレームの内側領域、この場合、層1bの一部、はガス拡散層3及び触媒層4と接触している。第2フレームの内側領域、この場合、7bの一部、はガス拡散層6及び触媒層4aと接触している。高分子電解質膜5の表面の両面に、ガス拡散層3,6と接触している、触媒層4又は4aが取付けられている。層、1a+1b+7a+7b、の合計の厚さは、層、1b+3+4+5+7b+4a+6、の厚さの50〜100%、好ましくは65〜95%そして特に好ましくは75〜80%の範囲内である。
【0225】
図3aは、本発明による膜電極ユニットの断面側面図を示している。この図面は、この描写が、圧縮前の状態を説明し、層の間の空間が理解を深めるために意図されている略図である。この場合、2個のフレーム、1,7、は各々、1個の層を有していて、これらの層の厚さはいろいろであり、外側領域1a又は7aは、各々、ポリマーフレームの内側領域1b又は7bより厚い。ポリマーフレーム1b又は7bの内側領域は、各々、高分子電解質膜5と接触している。高分子電解質膜表面の両面に、触媒層4又は4aを有するガス拡散層3、6が取付けられている。この加工法では、触媒層4が取付けられているガス拡散層3は、各々、負極又は正極を形成し、一方、触媒層4aが取付けられている第2ガス拡散層6は、各々、正極又は負極を形成している。層、1a+1b+7a+7b、の合計の厚さは、層、1b+3+4+5+4a+6+7b、の厚さの50〜100%、好ましくは65〜95%そして特に好ましくは75〜80%の範囲内である。
【0226】
図3bは、本発明による第3膜電極ユニットの断面側面図を示している。この図面は、この描写が、圧縮前の状態を説明し、層の間の空間が理解を深めるために意図されている略図である。この場合、2個のフレーム、1,7は、各々、1個の層を有していて、これらの層の厚さはいろいろであり、外側領域1a又は7aは、各々、ポリマーフレームの内側領域1b又は7bより厚い。ポリマーフレーム1b又は7bの内側領域は、各々、ガス拡散層3又は6及び触媒層4又は4aと接触している。高分子電解質膜5の表面の両面に触媒層4又は4aが取付けられている。負極側及び正極側に、各々、ガス拡散層3があり、正極側及び負極側に、各々、ガス拡散層6がある。層、1a+1b+7a+7b、の合計の厚さは、層、1b+3+4+4a+5+6+7b、の厚さの50〜100%、好ましくは65〜95%そして特に好ましくは75〜80%の範囲内である。
【0227】
図4aは、本発明による第4膜電極ユニットの断面側面図を示している。この図面は、この描写が、圧縮前の状態を説明し、層の間の空間が理解を深めるために意図されている略図である。この場合、膜電極ユニットが、2個のフレーム1,7を有していて、これらの各フレームは、各々、2個の層1a及び1b、又は7a及び7bを含み、層1a及び7aだけが、各々、層1b及び7bにより形成されるポリマーフレームの内側領域より厚い外側領域上に拡がっている。外側領域の中の2個のフレームの間に更なる層8が取付けられていて、中間ガスケットとして機能する。膜電極ユニットのその他の構成要素は、図2aに示している膜電極ユニットに対応する。層、1a+1b+7a+7b+8、の合計の厚さは、層、1b+3+4+4a+5+6+7b、の厚さの50〜100%、好ましくは65〜95%そして特に好ましくは75〜80%の範囲内である。
【0228】
図4bは、本発明による第4膜電極ユニットの断面側面図を示している。この図面は、この描写が、圧縮前の状態を説明し、層の間の空間が理解を深めるために意図されている略図である。この場合、膜電極ユニットが、2個のフレーム1,7を有していて、これらの各フレームは、各々、2個の層1a及び1b、又は7a及び7bを含み、層1a及び7aだけが、各々、層1b及び7bにより形成されるポリマーフレームの内側領域より厚い外側領域上に拡がっている。外側領域の中の2個のフレームの間に更なる層8が取付けられていて、中間ガスケットとして機能する。膜電極ユニットのその他の構成要素は、図2aに示している膜電極ユニットに対応する。層、1a+1b+7a+7b+8、の合計の厚さは、層、1b+3+4+4a+5+6+7b、の厚さの50〜100%、好ましくは65〜95%そして特に好ましくは75〜80%の範囲内である。
【0229】
本発明による膜電極ユニットの製造は、当業者には明白である。一般に、膜電極ユニットの種々の構成要素が重ね合わされたのち、圧力と温度により互に接続される。一般に、積層は、10〜300℃、とりわけ20℃〜200℃の範囲内の温度で、1〜1000バール、とりわけ3〜300バールの範囲内の圧力で行なわれる。
【0230】
好ましい実施態様は、例えば、先ず、ポリマー、例えばポリイミド、製のフレームが作られているから、製造され得る。次いで、このフレームは、触媒、例えば白金、で被覆され、事前作製された電極の上に配置されると、フレームは電極に重なり合う。この重なり合いは、一般に0.2〜5mmに達する。次いで、金属薄板がポリマーフィルムフレームの上に置かれるが、この金属薄板はポリマーフィルムと同じ形状と寸法を持つ、即ちこの薄板は電極の自由表面を被覆しない。この方法によって、ポリマーマスク及びこのマスクの下にある電極の一部を圧縮すると、触媒層の電気化学的に活性な表面を損傷することなく密着した成形材料を形成できる。金属薄板によって、ポリイミドは前記の条件下で電極に積層される。
【0231】
本発明による膜電極ユニットを製造するために、高分子電解質膜は前記で得られた2個のフレーム電極ユニットの間に配置される。引き続いて、複合体が圧力、温度によって製造される。
【0232】
次いで、フレームの外側領域が第2ポリマー層によって肉厚にされ得る。この第2層は、例えば更に積層され得る。更に、第2層は、熱可塑性樹脂加工法、例えば押出成形又は射出成形によっても適用され得る。
【0233】
冷却後、仕上げられた膜電極ユニット(MEU)は、実用可能であり、燃料電池に使用できる。
【0234】
特に驚くことには、本発明による膜電極ユニットは、これらのユニットには寸法安定性があることから、変化する周囲の温度や湿度でも何等の問題もなく保管又は輸送できることが判った。長期の保管の後でも、或いは著しく異なる気候条件の場所への輸送の後でも、このMEUの寸法は正常で、問題なく燃料電池スタックにぴたりと適合する。この場合、MEUは、外部組立のために現場での調整を必要とすることなく、燃料電池の製造を簡略化し、時間を節減しコストを低減する。
【0235】
好ましいMEUの1つの長所は、MEUによって120℃を超える温度で燃料電池の操作が可能であることである。このことは、例えば上流の改質工程で炭化水素から製造される、例えば水素含有ガスのような気体燃料及び液体燃料にも当てはまる。
これに関しては、例えば酸素又は空気を酸化剤として使用できる。
【0236】
好ましいMEUのもう1つの長所は、120℃を超える操作過程でMEUは、純粋な白金触媒、即ち追加的に合金成分を何も含まない白金、によっても、一酸化炭素に対して高い耐性を有することである。160℃の温度で、燃料電池の性能を著しく低下させることには繋がることなく、例えば1%を超えるCOを燃料に含有させることができる。
【0237】
好ましいMEUは、高い動作温度が考えられるにも拘らず、燃料及び酸化剤を加湿する必要はなく、燃料電池の中で操作できる。それにも拘らず、燃料電池は安定した状態で作動し、膜はその伝導性を失わない。これによって燃料電池システム全体が簡略化され、水の循環の管理が簡略化されるので、追加コストの節減となる。更に、これによって、0℃未満の温度での燃料電池システムの動きも改良される。
【0238】
好ましいMEUによって、驚くことには、燃料電池を室温まで冷却して、簡単に出力を低下させ、それに引き続いて、性能を損なうことなく、燃料電池を元の操作に戻すことができる。リン酸を主成分とする従来の燃料電池は、対照的に、取り返しのつかないダメージを避けるために、燃料電池をオフに切り替えるとき、常に80℃を超える温度に保持されなければならない。
【0239】
更に、本発明の好ましいMEUは、極めて高い長期安定性を発現する。本発明による燃料電池は、乾燥反応ガスを使い120℃を超える温度で、性能に目立った劣化を検出できることなく、長時間、例えば5000時間を超えて、連続的に操作できることが判った。これに関して、得られる電力密度は、前記のような長時間の後でも極めて高い。
【0240】
これに関して、本発明による燃料電池は、長時間、例えば5000時間を超える、の後でも、このような時間の後に、好ましくは少なくとも900mV、特に好ましくは少なくとも920mVの高い開放電圧を示す。開放電圧を測定するために、負極に水素流、一方、正極に空気流を用いて燃料電池が無電流で操作される。測定は、燃料電池を0.2A/cmの電流から無電流状態へ切り換えた後、この時点から2分間、開放電圧を記録することによって行なわれる。5分後の値は各々の開路電位である。開放電圧の測定値は160℃の温度に当てはまる。更に、燃料電池は、この時間の後、低度のガスクロスオーバを示すのが好ましい。クロスオーバを測定するために、燃料電池の負極側は水素(5リットル/時)で、正極側は窒素(5リットル/時)で操作される。負極は参照電極で対電極として機能し、一方、正極は作用電極として機能する。正極は、0.5Vの電位に設定され、水素は膜を通って拡散し、物質移動が限定されている水素が正極で酸化される。こうして得られる電流は水素透過率の変数である。電流は、50cmのセルの中で、<3mA/cm、好ましくは<2mA/cm、特に好ましくは<1mA/cmである。Hのクロスオーバの測定値は160℃の温度に当てはまる。
【0241】
更に、本発明によるMEUは、安価でしかも簡単な方法で製造できる。
【0242】
膜電極ユニットに関する更なる情報については、技術文献、とりわけ特許、US−A−4,191,618、US−A−4,212,714及びUS−A−4,333,805が注目される。膜電極ユニットの構造及び製造ばかりでなく、選択対象の電極、ガス拡散層及び触媒にも関する前記引用文献[US−A−4,191,618、US−A−4,212,714及びUS−A−4,333,805]に含まれる開示内容も本説明の一部である。
【実施例1】
【0243】
図1aの図面による膜電極ユニットの製造を行なう。
触媒層付きで72mm72mmのサイズを有する市販の2個のガス拡散電極を使用する。負極を、Kapton 120 FN 616製の厚さ30μmのフレームで被覆したのち、140℃の温度で規定の圧力と期間、重ね合わせ領域の中で電極表面に圧縮する。Kaptonフレームからの切り出し片は、67.2mm67.2mmのサイズなので、フレームと電極との重ね合わせは各面で2.4mmである。この結果、活性電極表面は45.15cmである。
【0244】
MEUを製造するために、プロトン伝導性膜を、フレーム付きの電極表面とフレームの付かない電極表面との間に配置したのち、140℃の温度で規定の圧力及び規定の期間、互いに圧縮する。この膜は、HPO(約75%)を含有し、特許出願書DE101176872に従って製造されたポリベンゾイミダゾールフィルムである。
【0245】
Kaptonフレームの外側領域の各面に、ペルフルオロアルコキシ(PFA)で作られた別のフレームを配置し、MEUの後続の製造のために規定の圧力、期間及び温度で溶着する。
【0246】
こうして得られたMEUを、標準燃料電池に組み込んだのち、黒鉛製の流量マグネットレジスターを使って測定する。この過程で次の測定条件が観察される:
T=180℃、p=1バール、非加湿ガスH(化学量論1.2)及び空気(化学量論2)、このMEUの性能を表1に示している。
【実施例2】
【0247】
図2aの図面による膜電極ユニットの製造を行なう。
触媒層が取付けられていて、72mm72mmのサイズを有する市販の2個のガス拡散電極を、触媒側で、Kapton 120 FN 616製の厚さ30μmのフレームで被覆したのち、140℃の温度で規定の圧力と期間、重ね合わせ領域の中で電極表面に圧縮する。Kaptonフレームからの切り出し片は、67.2mm67.2mmのサイズなので、フレームと電極との重ね合わせは各面で2.4mmである。この結果、活性電極表面は45.15cmである。MEUを製造するために、プロトン伝導性膜を、2個のフレーム付きの平行に配置した電極表面の間に配置したのち、140℃の温度で規定の圧力と期間、互いに圧縮する。引き続いて、負極と正極の2個のKaptonフレームを、ガスケットの重ね合わせ領域の中の電極表面の外側に積層する。
【0248】
この膜は、HPO(約85%)を含有し、特許出願書DE101176872に従って製造されたポリベンゾイミダゾールフィルムで作られている。
【0249】
溶着されたKapton フレームの外側領域の各面に、ペルフルオロアルコキシ(PFA)で作られた別のフレームを配置し、規定の圧力、期間及び温度で溶着したのち、燃料電池に組み込む。
【0250】
こうして得られたMEUを、標準燃料電池に組み込んで黒鉛製の流量マグネットレジスターを使って測定する。この過程で、次の測定状況が観察される:
T=180℃、p=1バール、非加湿ガスH(化学量論1.2)及び空気(化学量論2)、このMEUの性能を表1に示している。
【0251】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1a】本発明による膜電極ユニットの概略断面図であり、触媒層はガス拡散層に適用されている。
【図1b】本発明による膜電極ユニットの概略断面図であり、触媒層はガス拡散層に適用されている。
【図2a】本発明による第2膜電極ユニットの概略断面図であり、触媒層はガス拡散層に適用されている。
【図2b】本発明による第2膜電極ユニットの概略断面図であり、触媒層はガス拡散層に適用されている。
【図3a】本発明による第3膜電極ユニットの概略断面図であり、触媒層はガス拡散層に適用されている。
【図3b】本発明による第3膜電極ユニットの概略断面図であり、触媒層はガス拡散層に適用されている。
【図4a】本発明による第4膜電極ユニットの概略断面図であり、触媒層はガス拡散層に適用されている。
【図4b】本発明による第4膜電極ユニットの概略断面図であり、触媒層はガス拡散層に適用されている。
【符号の説明】
【0253】
1、7 フレーム
3、6 ガス拡散層層
4 触媒層
5 高分子電解質膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜によって隔離され、触媒層と各々と接触している2個のガス拡散層を有する膜電極ユニットであって、触媒層と接触している前記高分子電解質膜の2個の表面の少なくとも1個にポリマーフレームが取付けられ、前記ポリマーフレームは、前記高分子電解質膜の表面の少なくとも1個に取付けられている内側領域、及びガス拡散層の表面に取付けられていない外側領域を有する前記膜電極ユニットにおいて、前記外側領域の全構成要素の厚さが、内側領域の全構成要素の厚さを基準として、50〜100%であり、前記外側領域の厚さは80℃の温度で10N/mmの圧力で5時間にわたり2%以下減少し、この厚さの減少は10N/mmの圧力で1分間にわたり行なわれる最初の圧縮段階の後に確認されることを特徴とする前記膜電極ユニット。
【請求項2】
触媒層と接触している前記高分子電解質膜の両面に、ポリマーフレームが取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の膜電極ユニット。
【請求項3】
前記2個のポリマーフレームが、前記外側領域の中で互いに接続されていることを特徴とする請求項2に記載の膜電極ユニット。
【請求項4】
前記外側領域の全構成要素の厚さが、前記内側領域の全構成要素の厚さを基準として、75〜85%であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項5】
少なくとも1個のフレームが多層構造を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項6】
前記フレームの少なくとも内側領域がポリイミド層を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項7】
前記ポリイミド層の厚さが5〜1000μmの範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の膜電極ユニット。
【請求項8】
前記前記フレームの少なくとも1個が、少なくとも1個の溶融性ポリマー層を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項9】
前記ポリマー層がフルオロポリマーを含むことを特徴とする請求項8に記載の膜電極ユニット。
【請求項10】
前記ポリマー層が、ポリフェニレン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリイミン、ポリエーテルイミン、ポリアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサジアゾール、ポリベンゾトリアゾール、ポリホスファゼン、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニレンアミド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド及びこれらのポリマーの2種以上の混合物を含むことを特徴とする請求項8の膜電極ユニット。
【請求項11】
少なくとも1個のレームが、10μm以上の厚さを有する少なくとも2個のポリマー層を含み、これらの層のポリマーの各々は、160℃で100%の伸びで測定して、少なくとも6N/mmの電圧を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項12】
前記ポリマー層の1個が全フレーム上に拡がり、一方、他のポリマー層の1個がフレームの外側領域の上に拡がることを特徴とする請求項10に記載の膜電極ユニット。
【請求項13】
前記内側領域が5〜100μmの範囲内の厚さを有することを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項14】
前記フレームの外側領域が50〜8 00μmの範囲内の厚さを有することを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項15】
前記前記フレームの外側領域の厚さ対前記フレームの内側領域の厚さの比が、1.5:1〜200:1の範囲内であることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項16】
前記2個の触媒層が、面積は少なくとも2cmである電気化学的に活性な表面を有することを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項17】
前記高分子電解質膜がポリアゾールを含むことを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項18】
前記高分子電解質膜が、酸でドーピングされていることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項19】
前記高分子電解質膜が、ホスホン酸でドーピングされていることを特徴とする請求項18に記載の膜電極ユニット。
【請求項20】
前記ホスホン酸の濃度が少なくとも50重量%であることを特徴とする請求項19に記載の膜電極ユニット。
【請求項21】
前記膜が、次の諸段階を含む方法により得られることを特徴とする請求項1から20のいずれかに記載の膜電極ユニット、
A) 1個以上の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー当り少なくとも2個の酸基を含有する1個以上の芳香族カルボン酸又はそれらのエステルと混合する段階、或いはポリリン酸の中で、1個以上の芳香族及び/又はヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を、溶液及び/又は分散液の形成物と混合する段階、
B) 段階A)による混合物を使い層を支持体に又は電極に適用する段階、
C) 段階B)によって得られるシート状構造体/層を、ポリアゾール層の形成物と一緒に不活性ガスのもとで、350℃までの、好ましくは280℃までの温度に加熱する段階、
D) 段階C)で形成された膜を処理する段階(この膜が自立型になるまで)。
【請求項22】
前記ドーピング度が3〜50であることを特徴とする請求項19、20又は21に記載の膜電極ユニット。
【請求項23】
前記膜が、ホスホン酸基を含むモノマー及び/又はスルホン酸基を含むモノマーの重合によって得られるポリマーを含むことを特徴とする請求項1から22のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項24】
前記電極の少なくとも1個が、圧縮性材料で作られることを特徴とする請求項1から23のいずれかに記載の膜電極ユニット。
【請求項25】
請求項1から24のいずれかに記載の少なくとも1個の膜電極ユニットを有する燃料電池。
【請求項26】
前記フレームの少なくとも1個が、導電性セパレータプレートと接触していることを特徴とする請求項25に記載の燃料電池。
【請求項27】
膜が、電極及び前記フレームの第1層に接続され、次いで、更なるポリマー層が前記フレームの外側領域上に適用されることを特徴とする請求項1から24のいずれかに記載の膜電極ユニットの製造方法。
【請求項28】
前記外側領域のポリマー層が、積層することによって適用されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記外側領域のポリマー層が、押出すことによって適用されることを特徴とする請求項27に記載の方法。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate


【公表番号】特表2008−507107(P2008−507107A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521902(P2007−521902)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007946
【国際公開番号】WO2006/008158
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507021159)ペメアス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】