説明

自動ドア装置の戸挟み回避装置

【課題】電気的センサ装置を利用せず、故障がなく、安全で、比較的に狭い隙間で挟まれる細い物の戸挟みを確実に回避できる自動ドア装置の戸挟み回避装置を提供する。
【解決手段】 本発明による戸挟み回避装置は、例えば、両開き構造を有しかつ開閉自在に設けられた一対のホームドア12を備えるホームドア装置10等に適用され、左右一対のホームドア12の各々の対向辺に沿って、一対のホームドア12が閉じた時に線路側とホーム側のうちの少なくとも一方に開く戸先ゴムローラ13等の辺機構部を設けるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ドア装置の戸挟み回避装置に関し、特に、両開き構造または片開き構造の自動開閉ドアで戸挟み状態を簡単な構造で適切に回避する自動ドア装置の戸挟み回避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、近年、鉄道駅のホーム等では、電車・列車に乗降する旅客の安全性を高めるため、主に左右ドアの両開き構造を備えたホームドア装置の設置が進んでいる。当該ホームドア装置は、電車等が駅ホームに入ってくる時には、左右のドアは閉じた状態にあり、柵の一部として、旅客と駅ホームに入ってくる電車とを隔離する機能を有している。ホームドア装置は、線路にはいる電車の動作と連動して自動的な進退動作により開閉自在な左右のドアと、当該左右のドアの各々を収納するようにホームに固定されたドア筐体部とから構成される。ホームドア装置は、駅ホームの線路側縁部に沿って一対のドア筐体部が一定の間隔で設置され、一対の左右ドアが両開きの構造で配置されている。ドアを駆動するためのモータ等の駆動機構はドア筐体部内に設けられている。駅ホームに入ってきた電車が停止した後、車両ドアを開く時、これに合わせてホームドア装置のドアは開かれる。ホームドア装置でドアが開いた状態で、旅客の乗り降りが行われる。
【0003】
従来のホームドア装置では、両開き構造のドアの戸先によって挟み込み(戸挟み)が生じるまたは生じる可能性のあるとき、これを電気的なセンサを用いてに検知することにより戸挟み状態を回避するようにしていた(特許文献1,2,3)。電気的な検知の仕方としては、例えば、モータに加わる負荷を過電流値として検知する方法、サーボモータを使用してその速度変化を検知する方法、あるいは、戸先に加わる圧力をエッジスイッチ等で検知する方法等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−248826公報
【特許文献2】特開2001−233200公報
【特許文献3】特開2007−255092公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のホームドア装置におけ戸挟みを回避する装置によれば、ドアが完全に閉鎖される前の段階の例えば30mm程度の間隔になると、ドアが閉鎖状態にあるのか、あるいは何かを挟み込んでいるのかを正確に判断することが難しい。すなわち、従来の戸挟み回避装置によれば、両開きドアの完全閉鎖前の30mm程度の間隔では戸挟みの検知を有効に行うことができないという問題が提起されている。
【0006】
そのため、カバンの紐、マフラー、服の裾等の細い物が挟み込まれたときにそれを検知することが困難であり、ホームドアにそれらが挟まれたまま電車等が出発すると、大きな事故につながるおそれがある。また従来の回避装置では、電気的なセンサを使用しているため、誤検知の問題やセンサの故障の可能性もあり、必ずしも安全であるということができない。
【0007】
上記において「戸挟み」の問題は一例としてホームドア装置と関連づけて説明した。しかしながら、当該「戸挟み」の問題は両開き構造あるいは片開き構造の自動開閉を行うドアについて一般的な問題として提起されるものである。かかる自動ドアの例としては、例えば、電車等を含む乗り物一般の出入り口の自動ドア、エレベータの自動ドア、建物の出入り口の自動ドア、部屋の出入り口の自動ドア等を挙げることができる。このような自動ドアにおいて当該「戸挟み」の問題を解消する有意義な仕組み・構造を提案することが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、各種の自動ドアに関して電気的なセンサを利用せず、故障がなくかつ安全で、特に比較的に狭い隙間で挟まれる可能性のある細い物の戸挟みを確実に回避することができる自動ドア装置の戸挟み回避装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自動ドア装置の戸挟み回避装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0010】
第1の自動ドア装置の戸挟み回避装置(請求項1に対応)は、自動機構により開閉自在に設けられたドアを備える自動ドア装置において、ドアにおける当接部を形成する先端辺部に沿って、ドアが閉じた時にドアにおける外側と内側の少なくとも一方の側に開く構造を有した辺機構部を設けるように構成される。
【0011】
例えばホームドア装置では、ドアを収納し、当該ドアを進退させてドア開閉動作を行わせるドア筐体部を備える。ドア筐体部は、駅ホームの線路側の縁部に沿って一定の間隔をあけて配置されている。ホームドア装置は一対のドア筐体部によって構成される。ホームドア装置において、上記の一定の間隔は、2つのドアが両開き状態にあるとき、乗降時の旅客通路を形成する。かかるホームドア装置において、上記の戸挟み回避装置は、両開き構造のドアが閉成動作を行う時に、2つのドアの各々の対向する辺の部分に、線路側またはホーム側に開く構造を有した辺機構部を備えるため、2つのドアの間にカバンの革紐等の細い部材が挟まれた場合にも、容易に取り外すことができ、戸挟み状態の発生を回避し、旅客に安全な乗降を行わせることができる。さらに上記のような構造を有した辺機構部は、エレベータの自動ドア、電車の出入り口の自動ドア等においても付設することができ、同様な働きを生じさせることができる。
【0012】
第2の自動ドア装置の戸挟み回避装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、上記のドアは、両開き構造を有しかつ開閉自在に設けられた一対の左右ドアからなる自動ドアであり、辺機構部は、一対の左右ドアの各々の対向辺に沿って設けられ、一対の左右ドアが閉じた時に外側または内側のうちの少なくとも一方に開く構造を有することを特徴とする。
【0013】
第3の自動ドア装置の戸挟み回避装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、自動ドアは駅ホームの線路縁に設置されたホームドアであり、辺機構部は、一対の左右のホームドアの各々の対向辺に沿って設けられ、一対の左右のホームドアが閉じた時に線路側とホーム側のうちの少なくとも一方に開く構造を有することを特徴とする。
【0014】
第4の自動ドア装置の戸挟み回避装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、ドアは、エレベータドア、乗り物の出入り口ドア、建物の出入り口ドア、部屋の出入り口ドアのいずれかであることを特徴とする。
【0015】
第5の自動ドア装置の戸挟み回避装置(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、辺機構部は、偏心して取り付けられた戸先ゴムローラと、戸先ゴムローラを回転させるアクチュエータとから構成されることを特徴とする。戸先ゴムローラは、ドアの戸先の辺に沿って設けられ、その偏心機構により、アクチュエータ作動時に2つのドアの戸先間の隙間を広げるように線路側またはホーム側に移動する。その結果、自動ドア装置の2つのドア等の間で戸挟み状態が発生するのを回避することが可能となる。
【0016】
第6の自動ドア装置の戸挟み回避装置(請求項6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、辺機構部はホームドア用のものであり、アクチュエータは列車出発時に駆動され、戸先ゴムコントローラを回転させるように制御することを特徴とする。通常的には戸先ゴムローラは、ドアの先端部を形成しており、列車が出発する時点で、線路側等に移動され、戸挟み状態が発生するのを防止する。特に、ホームドア装置の場合において、列車出発時に戸挟みに起因する事故が起こりやすいので、これを回避するように構成されている。
【0017】
第7の自動ドア装置の戸挟み回避装置(請求項7に対応)は、上記の構成において、好ましくは、辺機構部は、線路側とホーム側の両方に開く戸先フラップであることを特徴とする。この構成では、電気的な駆動装置を用いることなく、機械的な構造のみで効果的に戸挟み状態を回避することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ホームドア装置等の自動ドア装置の戸挟み回避装置は、両開き構造等を有しかつ自動機構により開閉自在に設けられた一対の左右ドア等を備える自動ドア装置で、一対の左右ドア等の各々の対向辺に沿って、一対の左右ドア等が閉じた時に、例えば線路側とホーム側のごとき外側と内側のうちの少なくとも一方に開く戸先ゴムローラ等の辺機構部を設けるようにしたため、電気的なセンサを利用する必要なく、故障がなくかつ安全で、比較的に狭い隙間で挟まれる可能性のあるカバンの革紐のごとき細い物の戸挟みを確実に回避することができる。さらに、誤検知が生じないので、戸挟み状態の発生を確実に回避し、旅客等をトラブルなく安全に乗降させることができ、さらに当該ドアによる出入り口を通る人を安全に通行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る戸挟み回避装置が装備されるホームドア装置のホーム側から見た斜視図である。
【図2】ホームドア装置の正面図である。
【図3】ホームドア装置の平面図である。
【図4】本発明に係る戸挟み回避装置の実施形態の要部の平面図であって、一対のホームドアが閉じた状態での戸先部分の平面図である。
【図5】図4においてA方向から見た図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る戸挟み回避装置の要部構造の斜視図である。
【図7】本実施形態に係る戸挟み回避装置を備えたホームドアであって、3つの状態(A),(B),(C)を示す平面図である。
【図8】同ホームドアの正面図である。
【図9】本発明に係る戸挟み回避装置が装備された自動ドア装置の一例であるエレベータドアの斜視図(A)と正面図(B)である。
【図10】本発明に係る戸挟み回避装置が装備された自動ドア装置の一例である電車の出入り口ドアの斜視図(A)と正面図(B)である。
【図11】本発明に係る戸挟み回避装置が装備された自動ドア装置の一例である建物の出入り口ドアの斜視図(A)と正面図(B)である。
【図12】本発明に係る戸挟み回避装置が装備された自動ドア装置の一例である部屋の出入り口ドアの例を示す図(A),(B),(C)である。
【図13】本発明に係る戸挟み回避装置が装備された自動ドア装置の一例である建物の他の出入り口ドアの斜視図(A)と正面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る戸挟み回避装置が装備される自動ドア装置の一例としてホームドア装置を説明する。図1はホームドア装置のホーム側から見た斜視図であり、図2はホームドア装置の正面図であり、図3はホームドア装置の平面図である。
【0022】
図1〜図3において、電車(列車)が駅ホームに到着する前の段階のホームドアが閉じた状態を示している。1台のホームドア装置10の全体は、駅ホームの線路側の縁100に沿って配置され、かつ駅ホームの床面に固定されている。通常、ホームドア装置10は、駅ホームの線路側の場所に入線し停車した電車の各車両ドアの位置に対応して所要数のホームドア装置10が設置されている。ホームドア装置10は、駅ホームの床面に固定される一対のドア筐体部11と、一対のドア筐体部11の各内部の戸袋部分に収納されかつ進退動作により開閉自在に動作するホームドア12とから構成される。一対のドア筐体部11は、それぞれ基本的に同一の外観形状および構造を有し、かつ所要の間隔をあけて配置されている。当該間隔は、ホームドア12が開いている時、乗降通路を形成する。一対のドア筐体部11における各々の対向する面には、ホームドア12が出入りするスリット状開口部が形成され、当該開口部を通してホームドア12が出入りする。ホームドア装置10が閉状態のときには、両側のホームドア12が各ドア筐体部11から出て、乗降通路を閉じる。ホームドア装置10が開状態のときには、両側のホームドア12が各ドア筐体部11の中に入り、乗降通路が形成される。
【0023】
上記のホームドア12は、正面形状は全体として矩形であってプレート形状を有している。プレート形状のホームドア12は、後述するごとき駆動装置(アクチュエータ)を内蔵できるように、所要の厚みを有している。ホームドア12は、他方のホームドアと対向する先端の戸先部分に、本発明に係る戸挟み回避装置の構造部分を備えている。この構造部分は、この実施形態の場合、戸先ゴムローラ13である。戸先ゴムローラ13は、正面から見て矩形のホームドア12において、他方のホームドア12に対向し辺に沿うように設けられている。一対の左右のホームドア12が閉じ動作を完了した時、各ホームドア12の先端に設けられた戸先ゴムローラ13は、図3に示すごとく、互いに接触し当接した状態になる。戸先ゴムローラ13の回転軸は、ホームドア12の戸先(先端)の辺に沿って、これにほぼ平行に設けられている。
【0024】
駅ホームの線路側の縁100に沿って設けられた複数のホームドア装置10の各々において、ドア筐体部11の内部に収容されかつ進退動作に基づき開閉動作を行うホームドア12を動作させる駆動機構は、破線ブロック14で示すように、ドア筐体部11の内部に設けられている。またドア筐体部11の内部にはホームドア12を案内するガイドレール機構が備えられている。ホームドア12は、ガイドレール機構に移動自在に支持され、モータとベルト等からなる駆動機構14によって前進・後退動作する。
【0025】
図2に示すように、ホームドア装置10において、左右両側に配置される一対のドア筐体部11のそれぞれには、ホームドア12の前進・後退動作を制御し、かつ総合制御装置15との間で通信を行って線路に入線する電車の到着・発車情報および車両ドアの開閉情報等を取得する制御装置16が設けられている。ホームドア装置10において、両開き構造の一対のホームドア12の開成動作と閉成動作は、線路に入線する電車の車両ドアの開閉動作に同期して制御される。すなわち、電車が入線して止まり車両ドアが開いた時にホームドア12は開き、出発すべく車両ドアを閉じた時にホームドア12は閉じる。
【0026】
次に、さらに図4と図5を参照して、本実施形態に係る戸挟み回避装置を説明する。図4は戸挟み回避装置の要部の平面図であり、前述した一対のホームドア12が閉じた状態での戸先部分の平面図である。図5は図4においてA方向から見た戸先部分およびホームドアの内部構造を示す図である。
【0027】
戸挟み回避装置20は、前述の戸先ゴムローラ13と、ソレノイド等のアクチュエータ21と、アクチュエータ21の動作を制御する前述のアクチュエータ制御部22とから構成される。
【0028】
戸先ゴムローラ13は、2つのホームドア12の各々の先端である戸先部分に、鉛直方向の支持軸部23によって、回転自在に取り付けられている。長いほぼ円柱状の戸先ゴムローラ13は、上下の端面に支持軸部23に設け、当該支持軸部23はホームドア12の対向辺部の上端凸片24aと下端凸片24bに回転自在に軸支されている。また支持軸部23は、円柱状の戸先ゴムローラ13の上下の端面で、偏心して設けられている。戸先ゴムローラ13は、偏心した支持軸部23の周りに回転自在になるように、ホームドア12の戸先部分に取り付けられている。
【0029】
上記の戸先ゴムローラ13において、少なくともその上端面13Aの箇所にリンク片25,26が連結されている。リンク片25の一端は、戸先ゴムローラ13の上端面13Aの回転自在な軸部27に連結される。さらにリンク片25の他端は、他のリンク片26の一端に回転自在になるように連結されている。他のリンク片26は、ホームドア12の内部で、回転軸部28で回転自在になるように取り付けられている。さらに他のリンク片26の他端は、ホームドア12の内部に設けられた上記のアクチュエータ21の可動軸部(出力軸)21Aに連結されている。アクチュエータ21は例えばソレノイドであり、可動軸部21Aは、その軸方向に突出動作または後退動作を行う。図4等に示した状態では、可動軸部21Aは後退した状態にある。その結果、戸先ゴムローラ13はホームドア12の先端前方に突き出された状態にあり、図4中実線で示されるような位置に存在する。2つのホームドア12で、それぞれの戸先ゴムローラ13が先端前方側に存在すると、対向する2つの戸先ゴムローラ13は接触した状態にあり、2つのホームドア12の間は完全に閉じた状態になる。
【0030】
また上記のアクチュエータ制御部22は、アクチュエータ21の動作を制御する専用の制御部であり、前述の制御装置16における特定機能として設けられている。
【0031】
図4等に示した状態で、アクチュエータ制御部22からの動作指令に応じてアクチュエータ21がその可動軸部21Aを突出させるように動作すると、リンク片26が回転軸部28の周りに反時計回り(図4中左側)または時計回り(図4中右側)に回転し、戸先ゴムローラ13は一点鎖線30のように移動する。その結果、対向する2つの戸先ゴムローラ13の間には隙間31が形成されることになる。アクチュエータ制御部22から出力される動作指令の出力タイミングは、総合制御装置15から提供される電車の発車情報に基づいて決定される。
【0032】
上記の戸先ゴムローラ13を備えた戸挟み回避装置20では、電車の発車時にアクチュエータ21を作動させ、対向する戸先ゴムローラ13の間に隙間31を形成する。これにより、左右一対のホームドア12の戸先に隙間が形成されることになり、戸挟みが生じたときに挟み込まれた物を逃がすようにしている。
【0033】
左右一対のホームドア12が閉じた状態において、通常、ホームドア12の対向辺である先端部に設けられた戸先ゴムローラ13はほぼ接触または当接した状態にあり、隙間は存在しない。両開き構造の左右一対のホームドア12が開くときにも、ホームドア12の対向先端部の戸先ゴムローラ13の位置は変化しない。ホームドア12が閉じた状態において、電車が発車する時に戸先ゴムローラ13は前述した一点鎖線30で示された位置に移動し、戸挟み回避のための隙間31が形成される。なお、この実施形態では、好ましくは、電車が発車する時点で戸先ゴムローラ13を開動作させるようにしたが、他の時点に開くように動作させることもできる。本実施形態に係る戸挟み回避装置によれば、電気的なセンサを利用せず、戸先ゴムローラ13という機構のみを利用して挟み込みを回避するため、誤検知により電車を遅延させるということがない。
【0034】
次に図6〜図8を参照して本発明に係る戸挟み回避装置の第2の実施形態を説明する。図6は本実施形態に係る戸挟み回避装置の要部構造の斜視図であり、図7は本実施形態に係る戸挟み回避装置を備えたホームドアの平面図であり、図8は同ホームドアの正面図である。図7の(A),(B),(C)と図8の(A),(B),(C)とはそれぞれ対応している。
【0035】
図6〜図8において、ホームドア12の先端部の辺に沿って戸先フラップ41が取り付けられる。戸先フラップ41は上端部41aと下端部41bで、ホームドア12の先端部において突き出た縁部分12aの上下端面に軸支構造で回転自在に取り付けられている。戸先フラップ41の取付け状態において、当該軸支構造では、バネ部材により戸先フラップ31が前方に突出するように弾支されている。左右一対のホームドア12が閉じた状態では、対向する2つの戸先フラップ41の先端辺は接触した状態にあり、隙間は形成されていない。一対のホームドア12が閉じた状態で、戸先フラップ41の間に何か物が挟まったとき、その所持者等がその物を引くという外力を加えると、戸先フラップ41は線路側(ホームドア12の外側)またはホーム側(ホームドア12の内側)に簡単に回転させることができるので、これを引き抜くことができる。すなわち、バネ部材で弾支された戸先フラップ41は、当該バネ部材の弾性力に抗して力(外力)を加えると、図7および図8の(B)に示すように線路側に、あるいは図7および図8の(C)に示すようにホーム側に容易に開くことができる構造となっている。この戸先フラップ41によれば、180°の回転が可能である。上記のバネ部材による弾支構造は任意に設計することができ、また戸先フラップ41の材質は比較的に軽量な部材であれば、任意のものを用いることができる。
【0036】
上記戸先フラップ41によって構成される本実施形態に係る戸挟み回避装置によれば、簡単な機構のみによって実現できると共に、線路側およびホーム側の180°の回転が可能であり、戸挟み状態が生じたときには線路側(電車側)またはホーム側のいずれの側からも引き抜くことができる。また本実施形態に係る戸挟み回避装置によっても、電気的なセンサを利用しておらず、戸先フラップ41という機構のみを利用して挟み込みを回避するため、誤検知により電車を遅延させるということがないという利点を有する。
【0037】
上記の第1および第2の実施形態では本発明に係る戸挟み回避装置51(戸先ゴムローラ13等を含む戸挟み回避装置20または戸先フラップ41等からなる戸挟み回避装置)をホームドア装置に適用した例を説明したが、次に、上記した戸挟み回避装置を他の自動ドア装置に適用した例を図を参照して説明する。
【0038】
図9は、本発明に係る戸挟み回避装置51をエレベータの自動ドア装置に適用した例を示し、エレベータドアの斜視図(A)と正面図(B)を示す。左右に位置する一対のエレベータドア52は、自動機構に基づき自動的に左右に開閉する。左右の一対のエレベータドア52の対向する辺部に前述した戸挟み回避装置51が装備される。
【0039】
図10は、本発明に係る戸挟み回避装置51を電車(乗り物一般)の自動ドア装置に適用した例を示し、出入り口ドアの斜視図(A)と正面図(B)を示す。電車53において左右に位置する一対の出入り口ドア54は、適宜なタイミングで自動機構に基づき自動的に左右に開閉する。左右の一対の出入り口ドア54の対向する辺部に前述した戸挟み回避装置51が装備される。
【0040】
図11は、本発明に係る戸挟み回避装置51を建物の自動ドア装置等に適用した例を示し、建物の出入り口ドアの斜視図(A)と正面図(B)を示す。建物55において左右に位置する一対の出入り口ドア56は、センサ57で出入りする人を検知することにより自動機構に基づき自動的に左右に開閉する。左右の一対の出入り口ドア56の対向する辺部に前述した戸挟み回避装置51が装備される。
【0041】
図12は、本発明に係る戸挟み回避装置51を部屋の自動ドア装置に適用した例を示し、部屋の出入り口ドアの3つの例を示す正面図(A)、斜視図(B)、斜視図(C)である。
図12の(A)は片開き構造の出入り口ドア61を示す。この出入り口ドア61は、センサ62で出入りする人を検知することにより自動機構に基づき自動的に開閉する。出入り口ドア61の先端辺部に前述した戸挟み回避装置51が装備される。
図12の(B)は、例えば手動による片開き構造の出入り口ドア63を示す。この出入り口ドア63では、出入り口ドア61の先端辺部に前述した戸挟み回避装置51が装備される。当該戸挟み回避装置51には前述した第2実施形態の戸挟み回避装置の構成が好ましい。
図12の(C)は、例えば手動によって手前側等に開閉する構造の出入り口ドア64を示す。この出入り口ドア64では、出入り口ドア64の先端辺部に前述した戸挟み回避装置51が装備される。当該戸挟み回避装置51には前述した第2実施形態の戸挟み回避装置の構成が好ましい。
【0042】
図13は、本発明に係る戸挟み回避装置51を建物の自動ドア装置に適用した他の例を示し、建物の出入り口ドアの斜視図(A)と正面図(B)を示す。建物55において左右に位置する一対の出入り口ドア65は、センサ66で出入りする人を検知することにより自動機構に基づき自動的に左右に開閉する。左右の出入り口ドア65は、それぞれ、折りたたみ構造の2枚のドアで形成されている。左右の一対の出入り口ドア65の各々において、対向部を形成する側のドアにおける互いに対向する辺部に、前述した戸挟み回避装置51が装備される。
【0043】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る自動ドア装置の戸挟み回避装置は、例えば駅ホーム等に設置されるホームドア装置等において電車の乗降時に発生する可能性のある比較に長い物の戸挟みを確実に迅速に回避することに利用される。
【符号の説明】
【0045】
10 ホームドア装置
11 ドア筐体部
12 ホームドア
13 戸先ゴムローラ
14 駆動機構
15 総合制御装置
16 制御装置
20 戸挟み回避装置
21 アクチュエータ
21A 可動軸部
22 アクチュエータ制御部
23 支持軸部
25,26 リンク片
41 戸先フラップ
51 戸挟み回避装置
52 エレベータドア
53 電車
54 出入り口ドア
55 建物
56 出入り口ドア
57 センサ
61 出入り口ドア
62 センサ
63,64 出入り口ドア
65 出入り口ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動機構により開閉自在に設けられたドアを備える自動ドア装置において、
前記ドアにおける当接部を形成する先端辺部に沿って、前記ドアが閉じた時に前記ドアの外側と内側の少なくとも一方の側に開く構造を有した辺機構部を設けたことを特徴とする自動ドア装置の戸挟み回避装置。
【請求項2】
前記ドアは、両開き構造を有しかつ開閉自在に設けられた一対の左右ドアからなる自動ドアであり、
前記辺機構部は、前記一対の左右ドアの各々の対向辺に沿って設けられ、前記一対の左右ドアが閉じた時に外側または内側のうちの少なくとも一方に開く構造を有することを特徴とする請求項1記載の自動ドア装置の戸挟み回避装置。
【請求項3】
前記自動ドアは駅ホームの線路縁に設置されたホームドアであり、
前記辺機構部は、前記一対の左右のホームドアの各々の対向辺に沿って設けられ、前記一対の左右のホームドアが閉じた時に線路側とホーム側のうちの少なくとも一方に開く構造を有することを特徴とする請求項2記載の自動ドア装置の戸挟み回避装置。
【請求項4】
前記ドアは、エレベータドア、乗り物の出入り口ドア、建物の出入り口ドア、部屋の出入り口ドアのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の自動ドアの戸挟み回避構造。
【請求項5】
前記辺機構部は、偏心して取り付けられた戸先ゴムローラと、前記戸先ゴムローラを回転させるアクチュエータとから構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動ドア装置の戸挟み回避装置。
【請求項6】
前記辺機構部は前記ホームドア用のものであり、前記アクチュエータは列車出発時に駆動され、前記戸先ゴムコントローラを回転させるように制御することを特徴とする請求項5記載の自動ドア装置の戸挟み回避装置。
【請求項7】
前記辺機構部は、前記の線路側とホーム側の両方に開く戸先フラップであることを特徴とする請求項3記載の自動ドア装置の戸挟み回避装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−7456(P2010−7456A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126556(P2009−126556)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】