説明

自動ワインダー装置、および自動ワインダー装置における玉揚機の制御方法

【課題】自動ワインダー装置において、相互干渉位置に存する二台のユニットから玉揚げ処理の要求が出された場合でも、玉揚機を無駄なく走行移動させて、作業効率良く玉揚げ処理を実行できるようにすることにある。
【解決手段】ユニット2・2の満管パッケージ作成の進捗状況と、各玉揚機4a・4bの現在位置からユニット2・2までの距離との二つの要素を判断基準として、両玉揚機4a・4bの走行を制御する。これにて、相互干渉位置に存する二台のユニット2・2から玉揚げの処理要求が出された場合においても、ユニット2・2に対する玉揚機4a・4bの玉揚げ処理の優先順位を予め決定したうえで、両玉揚機4a・4bを一定の距離を置いて走行移動させることができるので、玉揚機4a・4bが他の玉揚機4a・4bに近付いてから停止・反転走行するように、玉揚機4a・4bが無駄に走行する不具合を確実に排除することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取ユニットの並び方向に沿って設けられた一本の走行路上に、複数台の玉揚機が走行自在に案内支持されている自動ワインダー装置において、二台の玉揚機どうしの相互干渉に起因する動作遅延を解消して、玉揚げ作業の作業効率の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダー装置などの繊維装置には、一本の走行路上に、複数台の玉揚機や糸継台車などの作業機を備えるものがある。これら作業機の制御方法の公知例としては、例えば特許文献1を挙げることができる。
【0003】
かかる特許文献1は、紡績機の糸継台車の制御方法に関するものであり、そこでは、一本の走行路上に糸継台車と粗糸継台車の二台の作業台車が走行自在に案内支持されている。作業台車どうしの対向距離を測ることを目的として、両作業台車には障害物センサが装着されており、両作業台車が近付いたときには、常に粗糸継台車を優先的に走行させるようにしている。この特許文献1に記載の制御方法は、両作業台車の衝突に起因する動作不良の発生を確実に防ぐことができる点で優れている。
【特許文献1】特開平6−108331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の制御方法では、近接位置する二台のユニットからサービス処理要求が出された場合に、作業台車が無駄な走行動作をするおそれがあり、作業台車による作業効率が著しく低下することが避けられず、その点に改良の余地があった。
すなわち、上記特許文献1に係る制御方法においては、両作業台車が接近して障害物センサがオンとなるまで、作業台車間で相互干渉が生じていて、両作業台車による同時作業が不可能な状態に陥っていることは検知できない。このため、相互干渉を生じさせる領域に存する二台のユニットからサービス処理要求が出された場合には、二台の作業台車による同時作業が不可能であるにもかかわらず、作業台車が処理要求ユニットに向かって走行したり、他の作業台車に近付いてから停止したり、反転走行したりすることがあり、作業台車の走行動作に無駄があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解決することを目的としてなされたものであり、自動ワインダー装置において、相互干渉位置に存する二台のユニットから玉揚げ処理の要求が出された場合でも、玉揚機を無駄なく走行移動させて、作業効率良く玉揚げ処理を実行できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明は、給糸装置から解舒された糸条を巻取装置において巻取管に巻き取って満管パッケージを作成する複数台の巻取ユニットと、これらユニットの並び方向に沿って形成された走行路と、該走行路に沿って走行可能に構成された複数台の玉揚機と、玉揚機の制御を担う制御手段とを備え、これら玉揚機により各ユニットに対する玉揚げ処理を自動的に行う自動ワインダー装置である。
各玉揚機には、連続する複数台のユニットで構成される作業領域が予め割り当てられており、各玉揚機は、ユニットから玉揚げ処理の要求が出されたときに、走行路に沿って走行移動して、担当する作業領域に属する各ユニットに対する玉揚げ処理を行うようになっている。
そして、隣り合う異なる作業領域の境界部分を挟んで近接位置する二台のユニットから玉揚げ処理の要求が出されると、これらユニットの満管パッケージ作成の進捗状況と、各玉揚機の現在位置からユニットまでの距離との二つの要素を判断基準として、これら二台のユニットに対する両玉揚機による玉揚げ処理によって相互干渉が生じないように、両玉揚機の走行を制御することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の本発明においては、二台の玉揚機が近付いたときに相互に干渉し合う領域が干渉エリアとされており、この干渉エリアの大きさは、少なくとも走行路の伸び方向におけるユニットの幅寸法と玉揚機の幅寸法に基づいて規定されている。各ユニットは、満管パッケージ作成の進捗状況を捉えており、満管パッケージの完成後において玉揚げ処理を求める処理要求信号と、満管パッケージの完成直前に送出されるプレ要求信号との少なくとも二種の要求信号を、制御手段に向けて送出するようになっている。
そして、制御手段は、隣り合う異なる作業領域の境界部分を挟んで近接位置する二台のユニットから処理要求信号および/又はプレ要求信号が出され、当該要求信号を出したユニットである処理要求ユニットが複数台生じると、これら処理要求ユニットに対する両玉揚機による玉揚げ処理によって相互干渉が生じるか否かを前記干渉エリアに基づいて判定し、かかる判定結果において、相互干渉が生じると判定されると、要求信号に基づいて満管パッケージ作成の進捗状況を認定するとともに、各玉揚機の現在位置から処理要求ユニットまでの距離を測定し、これら進捗状況と距離の二つの要素を判断基準として、両玉揚機の走行を制御するようにすることができる。
【0008】
具体的には、二台の玉揚機の間で相互干渉が生じると判定された場合において、満管パッケージ作成の進捗状況に差があるときには、玉揚げ処理の要求信号を出している処理要求ユニットに対する玉揚げ処理を優先的に実行し、二台の玉揚機の間で相互干渉が生じると判定された場合において、満管パッケージ作成の進捗状況が同じであるときには、各玉揚機の現在位置から処理要求ユニットまでの距離を測定結果に基づいて、処理要求ユニットまでの距離が短い一方の玉揚機による玉揚げ処理を、優先的に実行するようにすることができる。
【0009】
請求項3記載の本発明は、給糸装置から解舒された糸を巻取装置において巻取管に巻き取って満管パッケージを作成する複数台の巻取ユニットと、これらユニットの並び方向に沿って形成された走行路と、該走行路に沿って走行可能に構成された複数台の玉揚機と、玉揚機の制御を担う制御手段とを備え、これら玉揚機により各ユニットに対する玉揚げ処理を自動的に行う自動ワインダー装置における、前記玉揚機の制御方法を対象とする。
各玉揚機には、連続する複数台のユニットで構成される作業領域が予め割り当てられており、各玉揚機は、ユニットから玉揚げ処理の要求が出されたときに、走行路に沿って走行移動して、担当する作業領域に属する各ユニットに対する玉揚げ処理を行うようになっている。二台の玉揚機が近付いたときに相互に干渉し合う領域が干渉エリアとされており、この干渉エリアの大きさは、少なくとも走行路の伸び方向におけるユニットの幅寸法と玉揚機の幅寸法に基づいて規定されている。各ユニットは、満管パッケージ作成の進捗状況を捉えており、満管パッケージの完成後において玉揚げ処理を求める処理要求信号と、満管パッケージの完成直前に送出されるプレ要求信号との少なくとも二種の要求信号を、制御手段に向けて送出するようになっている。
【0010】
隣り合う異なる作業領域の境界部分を挟んで近接位置する二台のユニットから処理要求信号および/又はプレ要求信号が出され、当該要求信号を出したユニットである処理要求ユニットが複数台生じると、これら処理要求ユニットに対する両玉揚機による玉揚げ処理によって相互干渉が生じるか否かを前記干渉エリアに基づいて判定する判定工程と、前記判定工程に前後して、前記処理要求信号および/又はプレ要求信号に基づいて、満管パッケージ作成の進捗状況を把握・認定する進捗状況把握工程と、前記判定工程および進捗状況把握工程に前後して、各玉揚機の現在位置から処理要求ユニットまでの距離を測定する測距工程とを含む。
【0011】
そして、前記判定工程において二台の玉揚機の間で相互干渉が生じると判定された場合において、前記進捗状況把握工程において認定された満管パッケージ作成の進捗状況に差があるときには、処理要求信号を出している処理要求ユニットに対する玉揚げ処理を優先的に実行し、前記判定工程において二台の玉揚機の間で相互干渉が生じると判定された場合において、前記進捗状況把握工程において認定された満管パッケージ作成の進捗状況が同じであるときには、前記測距工程における測定結果に基づいて、処理要求ユニットまでの距離が短い一方の玉揚機による玉揚げ処理を、優先的に実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明の自動ワインダー装置においては、隣り合う異なる作業領域の境界部分を挟んで近接位置する二台のユニットから玉揚げ処理要求が出されると、これらユニットの満管パッケージ作成の進捗状況と、各玉揚機の現在位置からユニットまでの距離との二つの要素を判断基準として、両玉揚機の走行を制御するようにした。
このように、進捗状況と距離との二つの要素を判断基準として玉揚機を制御するようにしていると、相互干渉位置に存する二台のユニットから玉揚げ処理要求が出された場合でも、両玉揚機のユニットへの走行駆動に先立って、両要素(進捗状況と距離)に基づいてユニットに対する玉揚機の玉揚げ処理の優先順位を予め決定することができるので、両玉揚機を一定の距離を置きながら効率的に走行移動させることができる。これにて、特許文献1に係る従来形態のように、玉揚機が他の玉揚機に近付いてから停止・反転走行するように、玉揚機が無駄に走行する不具合の発生を確実に排除することができるので、玉揚機による玉揚げ処理を効率的に進めて、巻取ユニットの稼働率の向上を図り、自動ワインダー装置の処理能力の向上に貢献することができる。
【0013】
特許文献2記載の本発明のように、二台の玉揚機が近付いたときに相互に干渉し合う領域が干渉エリアとされていて、この干渉エリアの大きさは、少なくとも走行路の伸び方向におけるユニットの幅寸法と玉揚機の幅寸法に基づいて規定されていると、当該干渉エリアに基づいて、両玉揚機が相互干渉状態となるか否かを確実に判定することができるので、玉揚機の走行制御の信頼性が向上する。
とくに、干渉エリアがユニット単位で規定されていると、干渉エリアを距離寸法(メートル単位やセンチメートル単位)で規定する場合に比べて、相互干渉状態となるか否かの判断が格段に容易となり、判定処理を簡単確実に行うことができる。
【0014】
ここで干渉エリアは、先のようなユニットの幅寸法と玉揚機の幅寸法に加えて、例えば玉揚機に設けられた衝突防止センサの作動距離(設計検出距離)を要素として規定することができる。このとき、ユニットの幅寸法と玉揚機の幅寸法に由来する物理的な干渉エリアよりも、若干広く干渉エリアを設定しておくことで、玉揚機の衝突を確実に阻止することができる。
【0015】
また、各ユニットが、満管パッケージの完成後において玉揚げ処理を求める処理要求信号に加えて、満管パッケージの完成直前にプレ要求信号を送出するようにしていると、満管パッケージの作成に先立って、玉揚機をユニットの処理位置に移動させることができるので、満管パッケージ完成後の処理要求信号を受けてから玉揚機を走行移動させる形態に比べて、満管パッケージ完成後のユニットの待機時間の短縮化を図ることができる。したがって、玉揚機による玉揚げ処理を効率的に進めて、自動ワインダー装置の処理能力の向上を図ることができる。
【0016】
請求項3記載の本発明に係る玉揚機の制御方法によれば、請求項1記載と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、進捗状況と距離との二つの要素を判断基準として玉揚機を制御するようにしたから、相互干渉位置に存する二台のユニットから処理要求が出された場合においても、両要素に基づいてユニットに対する玉揚機による処理の優先順位を予め決定したうえで、両玉揚機を一定の距離を置いて走行移動させることができる。したがって、特許文献1に係る従来形態のように、玉揚機が他の玉揚機に近付いてから停止・反転走行するように、玉揚機が無駄に走行する不具合を確実に排除することができるので、巻取ユニットの稼働率の向上を図り、当該自動ワインダー装置の処理能力の向上に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る自動ワインダー装置、および玉揚機の制御方法について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1に自動ワインダー装置の正面図を、図2に巻取ユニットの構成図を、図3に自動ワインダー装置の全体的な構成を示した模式図を、図4に自動ワインダー装置の電気的構成を示すブロック図を示す。
この自動ワインダー装置1は、機台6の長手方向に並列配置された60台のワインダーユニットと称される巻取ユニット(以下、単にユニットと記す)2と、これらユニット2の並び方向に沿って形成された一本の走行路3と、走行路3に沿って走行可能に案内支持された玉揚機4a・4bなどで構成される。本実施形態においては、ユニット2の並び方向を左右方向と規定し、ユニット2側から見た走行路3の配設位置を前方位置と規定する。
【0019】
図2に示すように、各ユニット2は、給糸ボビン10から解舒された糸11を、上方に設けられた巻取装置12において巻取管13に巻き取ってパッケージ化して、満管パッケージ14を作成する装置である。各ユニット2には、糸11の経路に沿って下方から順に、解舒補助装置を有する給糸装置15、テンション装置16、糸継装置17、スラブキャッチャ18、綾振ドラム19を有する巻取装置12などの各種装置が配設されており、これら各装置は、ユニット2毎に設けられる制御装置20からの制御信号に基づいて制御される。図1に示すように、機台6の左右方向の一端側には、中央制御装置30(図3参照)などを内蔵する原動ボックス31が設けられており、左右方向の他端側には、給糸装置15への給糸ボビン10の供給を担うボビン準備装置(不図示)が設けられている。
【0020】
図2に示すように、巻取装置12は、パッケージを回転駆動しつつ糸11をトラバースさせる綾振ドラム19と、綾振ドラム19を回転させるための駆動モータ21と、駆動モータ21の回転速度を制御するインバータ22などからなり、制御装置20からの制御信号に基づいて、各ユニット2の巻取状態に最も適した回転速度に綾振ドラム19を回転させる。
【0021】
巻取装置12は、巻取管13への糸11の巻取量を測定するための巻取量検出機能を備える。具体的には、巻取管13に糸11を供給する綾振ドラム19の回転数を検出するパルス発生装置を備え、該パルス発生装置から送られてきたパルス数に基づいて、制御装置20が巻取管13に巻き取られた糸長、すなわち巻取量を算出することができるようにしている。
制御装置20は、得られた巻取量から満管パッケージ14作成の進捗状況を捉えて、当該進捗状況を中央制御装置30および玉揚機4a・4bの制御装置(制御手段)41に報告する。具体的には、得られた巻取量を、予め設定されている満管パッケージ14を得るための巻取量と比較し、満管パッケージ14が完成したと判断したときには、玉揚げ処理を求める処理要求信号を中央制御装置30および制御装置41に送出する。また、満管パッケージ14の完成直前においても、もうすぐ満管パッケージ14が完成する旨を伝えるためのプレ要求信号を中央制御装置30および制御装置41に向けて送出する。
より詳しくは、制御装置20の内蔵のメモリ23(図2参照)には、満管パッケージ14を完成させるために必要な糸長に対応する第1の閾値と、該第1の閾値よりも僅かに小さな第2の閾値とが格納されている。そして、パルス発生装置から送られてきたパルス数に基づいて算出された巻取量が第2の閾値を超えたときに、プレ要求信号が送出される。巻取量が第1の閾値を超えたときに、綾振ドラム19の回転が停止されて、糸11の巻取動作が停止されるとともに、玉揚げ処理を求める処理要求信号が送出される。
なお、以下において、単に「要求信号」と記した場合には、満管パッケージの完成後に送出される処理要求信号と、プレ要求信号の両者が含まれる。
【0022】
図1に示すように、機台6の左右両端部には、左右一対のフレーム7・7が立設されており、これらフレーム7・7の間に架設された走行路3に、二台の玉揚機4a・4bが左右方向に走行自在に案内支持されている。これら玉揚機4a・4bのそれぞれは、満管パッケージ14の払い出し作業、巻取管13の巻取装置12へのセット動作、糸端のピックアック動作などを担うものであり、四角ボックス状の筐体内に、各処理動作を担う処理装置44のほか、走行駆動輪や、該駆動輪を駆動するためのモータ43(図3、図4参照)などが内蔵されている。
ユニット2の何れかにおいて満管パッケージ14が作成されて、玉揚げの処理要求信号が送出されたときには、両玉揚機4a・4bのいずれかが、制御装置20からの制御信号に基づいて、モータ43により走行駆動輪を駆動して、処理要求信号を送出したユニット2の上部まで自走して停止する。そして、処理装置44を駆動させて、満管パッケージ14を払い出したのち巻取管13を巻取装置12にセットする(玉揚げ処理)。
【0023】
図3に示すように、各玉揚機4a・4bの左右両端には衝突防止センサ40・40が設けられており、両センサ40・40によって測定された玉揚機4a・4bの対向間隔距離が所定値(設定検出距離)よりも小さくなった場合などに、両玉揚機4a・4bは緊急停止される。図3において、符号41は、玉揚機4a・4bの制御を担う制御装置を示す。図4において、符号42は、ユニット2ごとに設けられた図略のドグを検知するためのドグセンサを示す。
【0024】
図3に示すように、左右方向に並列配置された60台の各ユニット2には、自動ワインダー装置1の機台の一端(左端)から順に、1番、2番、・・・59番、60番のユニット番号が割り当てられている。
走行路3の左寄りに位置する第1の玉揚機(以下適宜に、第1玉揚機と記す)4aは、1番から30番のユニット番号が振られたユニット2に対する玉揚げ処理を担当する。右寄りに位置する第2の玉揚機(以下適宜に、第2玉揚機と記す)4bは、31番から60番のユニット番号が振られたユニット2に対する玉揚げ処理を担当する。
換言すれば、第1玉揚機4aには、1〜30番の30台のユニット2で構成される作業領域Aが予め割り当てられており、第2玉揚機4bには、31〜60番の30台のユニット2で構成される作業領域Bが予め割り当てられている。そして、各玉揚機4a・4bは、走行路3内を走行移動して、自身が担当する作業領域A、Bに属する各ユニット2に対する玉揚げ処理を実行する。
なお以下においては適宜に、作業領域Aに属して第1玉揚機4aによる玉揚げ処理を受けるユニット番号1〜30のユニット2をユニット(A−1)〜(A−30)と記し、作業領域Bに属して第2玉揚機4bによる玉揚げ処理を受けるユニット番号31〜60のユニット2を、ユニット(B−31)〜(B−60)と記す。
【0025】
各ユニット2のユニット番号は、制御装置20(図3参照)内に記憶されており、当該番号はユニット2から中央制御装置30や玉揚機4a・4bの制御装置41に向かって送信されるプレ要求信号や処理要求信号に含められる。そして、このユニット番号の情報に基づいて、中央制御装置30および玉揚機4a・4bの制御装置41は、何れのユニット2から処理要求が出されているかを認識することができる。
【0026】
玉揚機4a・4bとユニット2との間には、玉揚機4a・4bの現在位置を検知するための位置検出機能部が具備されている。本実施形態に係る位置検出機能部は、ユニット2に向けて磁力信号を出力するコイルを備える信号出力部32と、この信号出力部32からの信号を受ける受信素子を備える信号受信部33とで構成される。
【0027】
玉揚機4a・4bが目的のユニット2の上方位置に到着して停止したとき、玉揚機4a・4bの制御装置41は、信号出力部32を駆動させて、ユニット2に向けてユニット番号返答させる旨の指示信号を出力する。指示信号を受けた信号受信部33のユニット2は、自身のユニット番号を含む応答信号を、中央制御装置30を介して玉揚機4a・4bの制御装置41に送信する。かかる応答信号に基づいて、停止中の玉揚機4a・4bは、何れのユニット2の上方に停止しているかを知ることができる。つまり、自己の現在位置情報を得ることができる。そして、玉揚機4a・4bが走行を開始するときは、この現在位置情報を基準として、前記ドグをドグセンサ42が検知した数をカウントすることにより、走行中に通過したユニット2の数を算出して、停止時の位置からの離間距離を特定し、走行中における現在位置を認識する。目的のユニット2の正面に到着したと判断して、モータ43の駆動を止めて停止すると、玉揚機4a・4bは、再びユニット2の信号受信部33に向けて信号を送信し、当該信号に応じてユニット2から返信されてきた応答信号に基づいて、自身の現在位置を確認する。以上のような一連の位置確認動作を行うことにより、玉揚機4a・4bは、自身の現在位置を正確に認識することができる。
【0028】
図1および図3に示すように、これらユニット2は、距離を置くことなく連続的に並設されている。また、各玉揚機4a・4bの左右幅寸法は、各ユニット2の左右幅寸法よりも大きなものとなっている。このため、作業領域の境界部を挟んで近接位置する二つのユニット2・2に対して、二つの玉揚機4a・4bが同時的に玉揚げ処理を実行しようとしても、これら玉揚機4a・4bが相互に干渉し合い、玉揚げ処理を実行することが不可能となる状態(以下、相互干渉状態と記す)に至る場合がある。
一例を挙げると、図5に示すように、作業領域Aの右端に存するA−30のユニット2と、作業領域Bの左端に存するB−31のユニット2から玉揚げ処理要求が出されても、これら二つのユニット(A−30、B−31)の上方に玉揚機4a・4bを並べることは、玉揚機4a・4bどうしが相互に干渉し合うために物理的に不可能であり、ユニット(A−30、B−31)に対して、両玉揚機4a・4bにより同時的に玉揚げ処理を行うことはできない。
【0029】
以上のような相互干渉が生じるか否かを判断するために、この自動ワインダー装置1においては、二台の玉揚機4a・4bが近付いたときに相互に干渉し合う領域が干渉エリアとされている。この干渉エリアの大きさは、走行路の伸び方向におけるユニット2の幅寸法、玉揚機4a・4bの幅寸法、双方の玉揚機4a・4bに設けられた衝突防止センサ40の設定検出距離に基づいて任意に規定することができ、本実施形態では、処理要求ユニット2を基準とする三つの範囲内のユニットを干渉エリアと規定している。
【0030】
具体例を挙げると、図6(a)に示すごとく、ユニット(B−31)の正面に第2玉揚機4bが位置しているときには、第1玉揚機4aは、ユニット(A−28)、ユニット(A−29)およびユニット(A−30)の正面位置に位置することはできない。したがって、ユニット(B−31)から処理要求が出されたときには、両玉揚機4a・4bの制御装置41・41は、ユニット(A−28)、ユニット(A−29)およびユニット(A−30)を干渉エリアとして規定する。
同様に、図6(b)に示すように、ユニット(B−33)から処理要求が出された場合には、第1玉揚機4aの制御装置41は、ユニット(A−30)、ユニット(B−31)、ユニット(B−32)を干渉エリアとする。尤も、第1玉揚機4aが玉揚げ処理を担当する作業領域Aを鑑みると、実質的にはユニット(A−30)のみが干渉エリアとなる。
図6(c)に示すように、ユニット(A−29)から処理要求が出された場合には、第2玉揚機4bの制御装置41は、ユニット(A−30)、ユニット(B−31)、ユニット(B−32)を干渉エリアとして規定する。尤も、第2玉揚機4bの作業領域Bを鑑みると、実質的にユニット(B−31)とユニット(B−32)が干渉エリアとなる。
【0031】
次に、以上のような構成からなる自動ワインダー装置1における玉揚機4a・4bの具体的な制御方法を、図7、図8および図9を使って説明する。
【0032】
いま、図7および図8に示すように、ユニット(A−29)から玉揚げ処理の要求信号が出されて、第1玉揚機4aが、このユニット(A−29)に向かって左方から右方向にユニット(A−20)の上方を移動していたとする。また、第2玉揚機4bは、ユニット(B−38)の上方位置で待機していたとする。このとき、ユニット(B−31)から第2玉揚機4bに対して要求信号が送出されたとする。
詳しくは、図7は、ユニット(B−31)から玉揚げ処理の要求信号が送出されて、ユニット(A−29)およびユニット(B−31)の双方から、進捗状況が同一の要求信号が送出された場合である。一方、図8は、ユニット(B−31)からプレ要求信号が送出されて、進捗状況の異なる要求信号が、ユニット(A−29)とユニット(B−31)とから送出された場合である。
【0033】
これらユニット(A−29)(B−31)から要求信号を受けると、玉揚機4a・4bの制御装置41は、まず、処理要求ユニット(A−29)(B−31)が相互干渉状態を招くような位置関係にあるか否かを干渉エリアを基準に判定するするとともに(判定工程、S1:図9)、処理要求ユニット(A−29)(B−31)までの距離を測定する(測距工程、S2)。
図7および図8に示す状況は、相互干渉状態を招くおそれがある。第1玉揚機4aの処理要求ユニット(A−29)を基準とする干渉エリア内に、第2玉揚機4bの処理要求ユニット(B−31)が位置し、同時に、第2玉揚機4bの処理要求ユニット(B−31)を基準とする干渉エリア内に、第1玉揚機4aの処理要求ユニット(A−29)が位置しているからである。したがって、玉揚機4aをユニット(A−29)に、玉揚機4bをユニット(B−31)に移動させても、両ユニット(A−29)(B−31)に対して同時的に玉揚げ処理を実行することは物理的に不可能であり(図6(a)(c)参照)、判定工程(S1)においては、相互干渉状態に至ったと判定される(S1でYes)。
【0034】
なお、当該判定工程(S1)において、相互干渉状態ではないと判定された場合には(S1でNo)、各玉揚機4a・4bは、担当するユニット2・2に対する玉揚げ処理を行う(S7)。
【0035】
このように、判定工程において相互干渉状態に至っていると判定されると(S1でYes)、玉揚機4a・4bの各制御装置41は、処理要求ユニット(A−29)(B−31)からの要求信号に基づいて満管パッケージ作成の進捗状況を把握・認定する(進捗状況把握工程、S3)。そして、進捗状況に差があるときは(S3でNo)、処理要求信号を出している処理要求ユニットに対する玉揚げ処理を優先的に実行する(S8、S6)。進捗状況が同じであるときには(S3でYes)、処理要求ユニットまでの距離が短い一方の玉揚機4a・4bによる玉揚げ処理を優先的に実行する(S4、S5、S6)。
【0036】
具体的には、図7に示すように、(A−29)および(B−31)の両ユニット2から満管パッケージ14の作成が完了して玉揚げを求める処理要求信号が送出されている場合には、両ユニット2の満管パッケージ作成の進捗状況は同じであり(S3でYes)、したがって当該進捗状況に基づいて処理要求ユニット2に対する玉揚機4a・4bによる玉揚げ処理の優先順位を付けることはできない。そこで、玉揚機4a・4bから処理要求ユニット2までの距離に基づいて、両玉揚機4a・4bによる作業に優先順位を付ける(S4、S5)。
図7に示す形態では、第1玉揚機4aの現在位置(A−20)から処理要求ユニット(A−29)までの距離は9ユニット分、第2玉揚機4bの現在位置(B−38)から処理要求ユニット(B−31)までの距離は7ユニット分であるから、第2玉揚機4bを優先機、第1玉揚機4aを従動機と認定する(S5)。そして、優先機である第2玉揚機4bの処理要求ユニット(B−31)の上方位置までの走行移動を許可して、当該ユニット(B−31)に対する玉揚げ処理を優先的に実行させる(S6)。
【0037】
一方、図8に示すように、ユニット(A−29)からは、満管パッケージ14の作成が完了して玉揚げを求める処理要求信号が送出されており、ユニット(B−31)からは、プレ要求信号が送出されている場合には、進捗状況に差があることから(S3でNo)、第1玉揚機4aによるユニット(A−29)に対する玉揚げ処理を優先的に実行させる。すなわち、この場合には、先の図7の場合とは逆に、第1玉揚機4aが優先機、第2玉揚機4bが従動機と認定される(S8)。
【0038】
このように、優先機が決定されて、優先的に玉揚げ処理を受ける処理要求ユニット2が決定されると、従動機の制御装置41は、干渉エリアに基づいて処理不能となるユニット2を決定し、該当するユニット2からの処理要求信号をマスクする(S6)。
図7の状態では、優先的に処理を受けるユニット(B−31)を基準として、干渉エリアに属することとなるユニット(A−28)、(A−29)、(A−30)を認定したうえで(図6(a)参照)、これら3つのユニットからの処理要求信号をマスクして、第1玉揚機4aによる玉揚げ処理が可能なユニット2を、これら3つのユニット2を除いて限定的に判断する。つまり、従動機である第1玉揚機4aは、処理要求ユニット(A−29)がマスクされているユニット2の一つであるため、この処理要求ユニット(A−29)に対する玉揚げ処理を後回しにして、他のユニット2に対する玉揚げ処理を実行する。
【0039】
また、図7の状態において、他に処理要求信号やプレ処理要求信号が出されていないときには、第1玉揚機4aは、処理対象ユニット(A−29)に向かって走行移動し、第2玉揚機4bと相互干渉し得る領域を避けて、しかしユニット(A−29)の可及的近傍に待機する。図7においては、ユニット(B−31)を基準とする干渉エリアは、ユニット(A−28)〜(A−30)の上方位置であるため、第1玉揚機4aは、ユニット(A−27)の上方位置で待機する(図6(a)参照)。そして、第2玉揚機4bによるユニット(B−31)に対する玉揚げ処理が終了すると、第2玉揚機4bは、処理要求ユニットであるユニット(A−29)に対する干渉エリア(図6(c)参照)から速やかに退避して、他のユニットに対する玉揚げ処理に向かい、かかる退避行動に伴い、第1玉揚機4aがユニット(A−29)の上方位置に移動して、玉揚げ処理を実行する。
【0040】
なお、判定工程(S1)において、相互干渉状態ではないと判定された場合には(S1でNo)、各玉揚機4a・4bは、処理要求ユニットの上方位置に移動して玉揚げを行う(S7)。
【0041】
以上のように、本実施形態に記載の自動ワインダー装置においては、ユニット2・2の満管パッケージ作成の進捗状況と、各玉揚機4a・4bの現在位置からユニット2・2までの距離との二つの要素を判断基準として、両玉揚機4a・4bの走行を制御するようにした。これによれば、相互干渉位置に存する二台のユニット2・2から玉揚げの処理要求が出された場合でも、両玉揚機4a・4bのユニット2・2への走行駆動に先立って、両要素(進捗状況と距離)に基づいてユニット2・2に対する玉揚機4a・4bの玉揚げ処理の優先順位を予め決定することができるので、両玉揚機4a・4bを、互いに一定の距離を置きながら効率的に走行移動させることができる。
したがって、玉揚機4a・4bが他方の玉揚機4b・4aに近付いてから停止・反転走行するように、玉揚機4a・4bが無駄に走行する不具合の発生を確実に排除できるので、玉揚機4a・4bによる玉揚げ処理を効率的に進めて、巻取ユニット2の稼働率の向上を図り、自動ワインダー装置1の処理能力の向上に貢献することができる。
【0042】
二台の玉揚機4a・4bが近付いたときに相互に干渉し合う領域の大きさが、干渉エリアとして予め規定されていると、当該干渉エリアに基づいて、両玉揚機4a・4bが相互干渉状態となるか否かを確実に判定することができるので、玉揚機4a・4bの走行制御の信頼性が向上する。とくに干渉エリアがユニット2単位で規定されていると、干渉エリアを距離寸法(メートル単位やセンチメートル単位)で規定する場合に比べて、相互干渉状態となるか否かの判断が格段に容易となり、判定処理を簡単確実に行うことができる。
【0043】
また、各ユニット2が、満管パッケージ14の完成後において玉揚げを求める処理要求信号に加えて、満管パッケージ14の完成直前にプレ要求信号を送出するようにしていると、満管パッケージ14の作成に先立って、玉揚機4a・4bをユニット2の処理位置に移動させることができる。これにて、満管パッケージ14完成後の処理要求信号を受けてから玉揚機4a・4bを走行移動させる形態に比べて、満管パッケージ14完成後のユニット2の待機時間の短縮化を図ることができるので、玉揚機4a・4bによる玉揚げ処理を効率的に進めて、自動ワインダー装置1の処理能力の向上に貢献することができる。
【0044】
上記実施形態においては、処理要求ユニット2から前後三つの範囲内のユニット2を干渉エリアと規定していたが、本発明はこれに限られず、処理要求ユニット2から前後4以上の範囲内のユニットを干渉エリアとしたり、処理要求ユニット2から前後一つの範囲内のユニットを干渉エリアとしてもよい。干渉エリアは、ユニット2、玉揚機4a・4bの左右の幅寸法、および衝突防止センサ40の感度等に応じて規定されるものだからである。
【0045】
自動ワインダー装置1が備える巻取ユニット2の個数は、60台に限られず、それ以上であってもそれ以下であってもよい。同様に、走行路3に走行自在に支持される玉揚機4の台数は、2台以上であれば、その台数に限定はない。
【0046】
玉揚機4a・4bの現在位置を検知するための位置検出機能部は、上記のような磁力素子と受信素子とからなるものに限られず、例えば無線通信により信号の送受信を行う形態であってもよい。
【0047】
上記実施形態においては、進捗状況と距離の二つの要素のみを判断基準とする制御方法について説明したが、上記の制御方法は一例であり、これに限られない。すなわち、これら進捗状況と距離に加えて、衝突防止センサからの検出信号を要素として、玉揚機の走行を制御することができる。具体的には、優先機となる玉揚機が処理要求ユニット2への走行を行っている際に、衝突防止センサ40からの検出信号を受けると、優先機は走行速度を落としながら処理要求ユニット2への走行を継続するなどの制御方法を採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る制御方法が適用される自動ワインダー装置の正面図。
【図2】巻取ユニットの構成図。
【図3】空気紡績機の全体的な構成を示した模式平面図。
【図4】空気式紡績機の電気的構成を示すブロック図。
【図5】相互干渉状態を説明するための図。
【図6】干渉エリアを説明するための図。
【図7】玉揚機の制御方法を説明するための図。
【図8】玉揚機の制御方法を説明するための図。
【図9】玉揚機の制御方法を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0049】
1 自動ワインダー装置
2 巻取ユニット(ユニット)
3 走行路
4a 玉揚機(第1玉揚機)
4b 玉揚機(第2玉揚機)
11 糸
12 巻取装置
13 巻取管
14 満管パッケージ
15 給糸装置
41 制御手段(玉揚機の制御装置)
A 作業領域
B 作業領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸装置から解舒された糸を巻取装置において巻取管に巻き取って満管パッケージを作成する複数台の巻取ユニットと、これらユニットの並び方向に沿って形成された走行路と、該走行路に沿って走行可能に構成された複数台の玉揚機と、玉揚機の制御を担う制御手段とを備え、これら玉揚機により各ユニットに対する玉揚げ処理を自動的に行う自動ワインダー装置であって、
各玉揚機には、連続する複数台のユニットで構成される作業領域が予め割り当てられており、各玉揚機は、ユニットから玉揚げ処理の要求が出されたときに、走行路に沿って走行移動して、担当する作業領域に属する各ユニットに対する玉揚げ処理を行うようになっており、
隣り合う異なる作業領域の境界部分を挟んで近接位置する二台のユニットから玉揚げ処理の要求が出されると、これらユニットの満管パッケージ作成の進捗状況と、各玉揚機の現在位置からユニットまでの距離との二つの要素を判断基準として、これら二台のユニットに対する両玉揚機による玉揚げ処理によって相互干渉が生じないように、両玉揚機の走行を制御することを特徴とする自動ワインダー装置。
【請求項2】
二台の玉揚機が近付いたときに相互に干渉し合う領域が干渉エリアとされており、この干渉エリアの大きさは、少なくとも走行路の伸び方向におけるユニットの幅寸法と玉揚機の幅寸法に基づいて規定されており、
各ユニットは、満管パッケージ作成の進捗状況を捉えており、満管パッケージの完成後において玉揚げ処理を求める処理要求信号と、満管パッケージの完成直前に送出されるプレ要求信号との少なくとも二種の要求信号を、制御手段に向けて送出しており、
制御手段は、隣り合う異なる作業領域の境界部分を挟んで近接位置する二台のユニットから処理要求信号および/又はプレ要求信号が出され、当該要求信号を出したユニットである処理要求ユニットが複数台生じると、これら処理要求ユニットに対する両玉揚機による玉揚げ処理によって相互干渉が生じるか否かを前記干渉エリアに基づいて判定し、かかる判定結果において、相互干渉が生じると判定されると、要求信号に基づいて満管パッケージ作成の進捗状況を認定するとともに、各玉揚機の現在位置から処理要求ユニットまでの距離を測定し、これら進捗状況と距離の二つの要素を判断基準として、両玉揚機の走行を制御する請求項1記載の自動ワインダー装置。
【請求項3】
給糸装置から解舒された糸を巻取装置において巻取管に巻き取って満管パッケージを作成する複数台の巻取ユニットと、これらユニットの並び方向に沿って形成された走行路と、該走行路に沿って走行可能に構成された複数台の玉揚機と、玉揚機の制御を担う制御手段とを備え、これら玉揚機により各ユニットに対する玉揚げ処理を自動的に行う自動ワインダー装置における、前記玉揚機の制御方法であって、
各玉揚機には、連続する複数台のユニットで構成される作業領域が予め割り当てられており、各玉揚機は、ユニットから玉揚げ処理の要求が出されたときに、走行路に沿って走行移動して、担当する作業領域に属する各ユニットに対する玉揚げ処理を行うようになっており、
二台の玉揚機が近付いたときに相互に干渉し合う領域が干渉エリアとされており、この干渉エリアの大きさは、少なくとも走行路の伸び方向におけるユニットの幅寸法と玉揚機の幅寸法に基づいて規定されており、
各ユニットは、満管パッケージ作成の進捗状況を捉えており、満管パッケージの完成後において玉揚げ処理を求める処理要求信号と、満管パッケージの完成直前に送出されるプレ要求信号との少なくとも二種の要求信号を、制御手段に向けて送出するようになっており、
隣り合う異なる作業領域の境界部分を挟んで近接位置する二台のユニットから処理要求信号および/又はプレ要求信号が出され、当該要求信号を出したユニットである処理要求ユニットが複数台生じると、これら処理要求ユニットに対する両玉揚機による玉揚げ処理によって相互干渉が生じるか否かを前記干渉エリアに基づいて判定する判定工程と、
前記判定工程に前後して、前記処理要求信号および/又はプレ要求信号に基づいて、満管パッケージ作成の進捗状況を把握・認定する進捗状況把握工程と、
前記判定工程および進捗状況把握工程に前後して、各玉揚機の現在位置から処理要求ユニットまでの距離を測定する測距工程とを含み、
前記判定工程において二台の玉揚機の間で相互干渉が生じると判定された場合において、前記進捗状況把握工程において認定された満管パッケージ作成の進捗状況に差があるときには、処理要求信号を出している処理要求ユニットに対する玉揚げ処理を優先的に実行し、
前記判定工程において二台の玉揚機の間で相互干渉が生じると判定された場合において、前記進捗状況把握工程において認定された満管パッケージ作成の進捗状況が同じであるときには、前記測距工程における測定結果に基づいて、処理要求ユニットまでの距離が短い一方の玉揚機による玉揚げ処理を、優先的に実行することを特徴とする自動ワインダー装置における玉揚機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−284205(P2007−284205A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114360(P2006−114360)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】