説明

自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法

【課題】全荷収納部の走行停止位置情報を従来よりも短時間で取得することができる自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法の提供。
【解決手段】自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法において、枠組棚11の支柱は複数の柱部材の接続により形成され、柱部材に設定される荷収納部14の段数は3以上とし、クレーン装置の走行により支柱を検知する支柱検知手段の検知対象高さは、柱部材の荷収納部14に対応する2箇所の高さとし、検知対象高さ毎の柱部材の検知に基づき、荷収納部14に対応する走行停止位置情報を夫々取得し、取得された検知対象高さにおける走行停止位置情報に基づいて柱部材の傾斜角度を算出し、算出された傾斜角度に基づいて未検知対象高さの荷収納部14に対応する走行停止位置情報を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動倉庫では、荷を収容する荷収納部が複数段及び複数列に形成された枠組棚と、荷載置用のキャリッジを備え、荷収納部の列方向に沿って走行するスタッカクレーンを備えることが多い。
この種の自動倉庫は、入庫や出庫の指示に基づき、クレーン装置であるスタッカクレーンを軌道上で走行させるとともに、キャリッジを昇降させることにより、特定の荷収納部に対する荷の受け渡しを行う。
この荷の受け渡しの際、荷の受け渡しができるように荷収納部に対してキャリッジを正確に停止させる必要がある。
キャリッジが荷収納部に対向して停止すべき位置(「受け渡し位置」と表記する)は、枠組棚の列方向の位置(「走行停止位置」と表記する。)及び段方向の位置(「昇降停止位置」と表記する。)から特定することができる。
【0003】
枠組棚における各荷収納部は、枠組棚が有する多数の支柱と、各支柱において所定の高さに設けた載置体としての受具とにより実質的に構成される。
荷収納部に荷が存在するときは、支柱間の空間部に荷が位置し、荷は受具により支持される状態にある。
ところで、枠組棚の支柱は上下方向に長くなりがちであり、支柱が上下に長い場合、複数の柱部材を接続して一本の支柱を形成することが多い。
【0004】
複数の柱部材を接続して一本の支柱とする場合の枠組棚では、各柱部材が構造力学上傾斜することが多く、段方向の連なる各荷収納部は列方向に位置ずれすることになる。
つまり、柱部材が傾斜している場合、段方向の各荷収納部の受け渡し位置を特定する走行停止位置が同じ柱部材でも一致しない状態と言える。
この場合、キャリッジに支柱を検知する支柱検知手段としてのトラスセンサを設けておき、枠組棚における全ての荷収納部についてトラスセンサによる支柱の検知に基づき、荷収納部の走行停止位置の情報(「走行停止位置情報」と表記する。)を予め取得すれば、支柱の傾斜の有無に関わらず正確な受け渡し位置にキャリッジを停止させることができる。
【0005】
ところで、自動倉庫におけるクレーン装置を枠組棚の目的の荷収納部に停止させる技術としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示された技術が存在する。
この特許文献1に開示された技術では、スタッカクレーンに設けたドグセンサが走行レールに設置されたドグを認識することにより目的の荷収納部の列を特定し、ドグを認識した後にスタッカクレーンを微速速度で走行させる。
この微速走行中では、キャリッジに設けたトラスセンサが支柱であるトラスを検知すると、タイマの計時に基づく所定時間後にスタッカクレーンを停止させる。
この技術では、支柱の傾斜に関わらずクレーン装置を枠組棚の目的の荷収納部に対して正確に停止させることができる。
また、特許文献2にはクレーン装置を枠組棚の目的の荷収納部に対して正確に停止させる点について特許文献1とほぼ同趣旨の記載が認められる。
【特許文献1】特開平8−175617号公報
【特許文献2】特開平8−192904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のように、枠組棚における全ての荷収納部について、支柱検知手段による支柱の検知に基づき、走行停止位置情報を予め取得することは、時間が掛かり過ぎるおそれがある。
一方、特許文献1及び特許文献2に開示された技術は、荷の受け渡しの都度、ドグセンサによるドグの認識や、支柱検知手段による支柱の検知を必要とする技術に過ぎない。
この種の技術では、荷の受け渡しの都度、ドグセンサによるドグを認識させたり、支柱検知手段による支柱の検知を必要することから、制御に係るシステムが複雑化したり、クレーン装置の応答性が低下するおそれがある。
さらに、この種の技術では、枠組棚が一方向に平行四辺形状に変形する支柱の傾斜を前提としており、枠組棚が非平行四辺形状に変形する場合には適用できないことが明らかである。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、全荷収納部の走行停止位置情報を従来よりも短時間で取得することができる自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明は、複数の支柱と該支柱に設けた複数の荷載置体とにより形成される複数段及び複数列の荷収納部を有する枠組棚が設置され、昇降する荷載置用のキャリッジを備えたクレーン装置が、前記荷収納部の列方向に沿って走行自在に備えられ、前記荷収納部に対応する高さに前記キャリッジを移動させた前記クレーン装置を走行させ、前記キャリッジに設けた支柱検知手段が支柱を検知することにより、前記キャリッジが停止すべき荷収納部に対応する列方向の走行停止位置情報を取得する自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法において、前記支柱は複数の柱部材の接続により形成され、前記柱部材に設定される前記荷収納部の段数は3以上とし、前記クレーン装置の走行により支柱を検知する前記支柱検知手段の検知対象高さは、前記柱部材の前記荷収納部に対応する2箇所の高さとし、検知対象高さ毎の前記柱部材の検知に基づき、荷収納部に対応する走行停止位置情報を夫々取得し、取得された前記検知対象高さにおける前記走行停止位置情報に基づいて前記柱部材の傾斜角度を算出し、算出された傾斜角度に基づいて未検知対象高さの前記荷収納部に対応する走行停止位置情報を得ることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、2箇所の検知対象高さにおける荷収納部の走行停止位置情報が、クレーン装置の走行による柱部材の検知に基づき取得される。
各柱部材が湾曲せず傾斜する前提で支柱に屈曲が存在する場合、柱部材の傾斜角度が検知対象高さにおける走行停止位置情報に基づいて算出される。
算出された傾斜角度に基づき、柱部材における未検知対象高さの荷収納部に対応する走行停止位置情報が取得される。
このため、実際に柱部材の検知は、2箇所の検知対象高さにおける柱部材だけで済み、全荷収納部の走行停止位置情報を従来よりも短時間で取得することができる。
そして、予め取得された走行停止位置情報に基づいてクレーン装置を走行・停止させるだけでキャリッジを目的の走行停止位置に正確に停止させることができる。
【0010】
また、本発明では、上記の自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法において、前記検知対象高さは、前記柱部材の両端に最も近い前記荷収納部に対応する高さが選択されてもよい。
【0011】
この場合、検知対象高さが、柱部材の両端に最も近い荷収納部に対応する高さが選択されるから、柱部材における検知対象高さの差が最大となる。
検知対象高さの差が最大となることにより、検知対象高さの差が小さい場合と比較して柱部材の傾斜角度を正確に算出しやすくなる。
【0012】
さらに、本発明では、自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法において、前記検知対象高さ又は前記未検知対象高さの前記荷収納部に対応する前記走行停止位置情報に基づき、前記荷収納部の列方向寸法を決定する柱間距離を算出し、該柱間距離が予め設定した許容範囲より外れたとき、前記荷収納部の異常を告知してもよい。
【0013】
この場合、検知対象高さ又は未検知対象高さの荷収納部に対応する走行停止位置情報に基づき、荷収納部の列方向寸法を決定する柱間距離が算出される。
算出された柱間距離が予め設定した許容範囲に含まれている場合は、荷収納部が正常に機能する状態にある。
算出された柱間距離が許容範囲より外れたときは、荷収納部としての機能に支障があるものとして、警告音や警告表示等により異常が告知される。
従って、取得した走行停止位置情報に基づいて柱間距離を算出することにより荷収納部の異常の有無を把握することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、全荷収納部の走行停止位置情報を従来よりも短時間で取得することができる自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法を提供するができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
この実施形態に係る自動倉庫10では、図1及び図2に示すように、左右一対の枠組棚11(両枠組棚を区別する場合、説明の便宜上、一方を「枠組棚11A」、他方を「枠組棚11B」と表記する。)が設けられている。
図2及び図3に示すように、各枠組棚11には奥行き方向(列方向)及び上下方向(段方向)に複数の荷収納部14が設けられている。
互いに対向する枠組棚11A、11Bの間には走行用レール12が敷設されている。
走行用レール12にはクレーン装置としてのスタッカクレーン13が走行自在に設けられている。
【0016】
このスタッカクレーン13はホームポジションHPとオポジットポジションOPとの間を往復走行する。
ホームポジションHPは、スタッカクレーン13の走行の基準となる起点位置であり、スタッカクレーン13の走行位置等はホームポジションHPからスタッカクレーン13までの距離となる。
自動倉庫10が非稼動状態のときには、スタッカクレーン13はホームポジションHPまたはオポジットポジションOPのいずれかの位置にて待機する。
【0017】
枠組棚11には列方向に向かって複数の支柱としてのトラス15が等間隔に配設されている。
これらのトラス15により各荷収納部14が列方向に区画されている。
トラスは、図3に示されるように、柱部材としてトラス部材16、17を上下に連結することにより形成されている。
ここでは説明の便宜上、上側のトラス部材を上部トラス部材16とし、下側のトラス部材を下部トラス部材17とする。
【0018】
上部トラス部材16及び下部トラス部材17は、図4に示すように、いずれも断面方形の角柱である。
上部トラス部材16の下端及び下部トラス部材17の上端は、図3に示すように接続端である。
各トラス部材16、17の接続端は図示しないボルト等により連結され、接続部18を形成している。
【0019】
列方向において互いに対向する各接続部18の間には張力部材19が設けられており、張力部材19の張力はターンバックル20により調整されるものとなっている。
この張力部材19が接続部18を互いに引き合うことにより接続部18を屈曲点とするトラス15の屈曲を抑制してトラス15を直線状に保つ意図がある。
【0020】
上部トラス部材16及び下部トラス部材17には、荷を載置するための載置体としての受具板21が荷収納部14に対応して取り付けられている。
この実施形態では、上部トラス部材16及び下部トラス部材17に受具板21が取り付けられていることにより、各トラス部材16、17に夫々3つの荷収納部14が設定される。
つまり、トラス部材16、17毎の荷収納部14の段数は3であり、トラス15全体における荷収納部14の段数は6となる。
【0021】
次に、スタッカクレーン13について説明する。
スタッカクレーン13は走行用レール12に沿って走行可能な走行台車25を有する。
走行台車25には上方へ延びる一対のマスト26、27が立設されている。
走行台車25におけるオポジットポジションOP側のマスト27の近傍には、クレーンコントローラ29と、走行用モータ30及び昇降用モータ31が設けられている。
走行台車25が備える車輪28は走行用モータ30の駆動により転動され、車輪28の転動により走行用レール12に沿って走行台車25が走行する。
【0022】
マスト26、27の間には、キャリッジ33がワイヤ32に懸吊されている。
スタッカクレーン13にはワイヤ32を巻き上げたり、繰り出したりするワイヤ巻き上げ機構(図示せず)を有する。
ワイヤ巻き上げ機構は昇降用モータ31により作動され、ワイヤ巻き上げ機構の作動によるワイヤ操作により、キャリッジ33がマスト26、27に沿って昇降するものとなっている。
キャリッジ33には進退自在なフォーク34が設けられている。
フォーク34の進退により各荷収納部14とキャリッジ33との間で荷の受け渡し作業が実施されるようになっている。
【0023】
ところで、この荷の受け渡し作業は、荷収納部14毎に設定された受け渡し位置に基づいてキャリッジ33が位置決めされることにより行われる。
各荷収納部14の受け渡し位置は、列方向と一致するスタッカクレーン13の走行方向の位置(以下、「走行停止位置」と表記する。)とキャリッジ33の段方向と一致する昇降方向の位置(以下、「昇降停止位置」と表記する。)により特定される。
【0024】
走行停止位置は、各荷収納部14においてフォーク34の列方向の中央位置(図4に示すフォーク間中心線CM)と、荷収納部14の中央位置(図4に示す支柱間中心線CA、CB)が一致する位置である。
昇降停止位置とは、各荷収納部14において受具板21の上面よりもフォーク34の上面が僅かに上方となる位置である。
【0025】
走行台車25のホームポジションHP側には光通信器35が設けられている。
走行台車25が備える走行用モータ30は、走行停止位置の検知手段としての走行用エンコーダ37を備えている。
キャリッジ33には、昇降停止位置の検知手段としての昇降位置検知センサ38が備えられている。
【0026】
図1及び図4に示すように、キャリッジ33のオポジットポジションOP側には、支柱検知手段としてのトラスセンサ40(40A、40B)が設けられている。
トラスセンサ40Aは枠組棚11Aのトラス15を検知し、トラスセンサ40Bは枠組棚11Bのトラス15を検知するセンサである。
この実施形態のトラスセンサは非接触式のセンサである光学式センサを用いている。
【0027】
自動倉庫10のホームポジションHPの近傍には、地上制御盤41が設置されている。
地上制御盤41は、キーボード等の入力手段42と、ディスプレイ等の表示手段43と、記憶手段44と、地上コントローラ45を有する。
地上制御盤41には光通信器36が備えられている。
オペレータや上位コンピュータが地上制御盤41を操作することによりスタッカクレーン13の運転が制御される。
【0028】
次に、図5に示す自動倉庫10における制御系要素の構成について説明する。
地上コントローラ45には、表示手段43および入力手段42が接続されている。
地上コントローラ45は入力手段42からの入力信号に基づき光通信器36を介してクレーンコントローラ29と通信するものとなっている。
地上コントローラ45には記憶手段44が備えられ、記憶手段44には枠組棚11の在庫管理のためのデータを記憶する領域や、各種プログラムが格納される領域を有する。
【0029】
クレーンコントローラ29には、走行用エンコーダ37と、昇降位置検知センサ38と、トラスセンサ40A、40Bが接続されている。
走行用エンコーダ37は、走行用モータ30の回転に基づいて発生するパルス信号を読み取ることにより、スタッカクレーン13の列方向の現在位置を読み取るものである。
クレーンコントローラ29は、走行用エンコーダ37によるパルス信号の読み取りに基づき走行用モータ30をフィードバック制御させ、目的の走行停止位置にスタッカクレーン13を走行させる機能を有する。
【0030】
昇降位置検知センサ38は、キャリッジ33が荷収納部14に対応する各昇降停止位置に達したことを検知するセンサである。
具体的には、マスト26、27において各昇降停止位置に対応する位置に被検知体(図示せず)を設けておき、昇降位置検知センサ38が目的の被検知体を検知したとき、クレーンコントローラ29が昇降用モータ31を停止させ、キャリッジ33を昇降停止位置に停止させる構成となっている。
このように、クレーンコントローラ29は、走行台車25の走行やキャリッジ33の昇降のためにスタッカクレーン13の各部を制御する要素である。
なお、この実施形態のクレーンコントローラ29には、メモリ等の記憶手段39が備えられ、各部のデータを記憶する領域や、各種プログラムが格納される領域を有する。
【0031】
次に、スタッカクレーン13の走行停止位置の情報(以下「走行停止位置情報」と表記する。)の取得の手順について説明する。
この実施形態では、自動倉庫10を本稼動させるに先立って予めスタッカクレーン13を操作して走行停止位置情報の取得する。
走行停止位置情報は、荷収納部14に対応してスタッカクレーン13が停止すべき列方向の位置の情報であり、具体的にはホームポジションHPを基準とする距離のデータとして示される。
【0032】
まず、荷収納部14に対応する高さにキャリッジ33を移動させたスタッカクレーン13を走行させるが、予めキャリッジ33の高さを設定する。
キャリッジ33の高さは、トラスセンサ40A、40Bがトラス部材16、17を検知する高さ位置であり、トラス部材16、17毎に高さが互いに異なる2箇所としている。
その高さを検知対象高さとし、この実施形態では、図3に示す一点鎖線が検知対象高さP1〜P4である。
【0033】
一方、荷収納部14に対応しつつも、トラスセンサ40A、40Bがトラス部材16、17を検知しない高さは未検知対象高さとする。
ここでは、図3に示す2点鎖線が未検知対象高さQ1、Q2である。
この実施形態では、トラス15において4箇所の検知対象高さP1〜P4と、2箇所の未検知対象高さQ1、Q2が設定されていることになる。
【0034】
以下、図6に示す枠組棚11Aの場合について具体的に説明する。
図6に示す枠組棚11Aは、説明の便宜上、略図化しており、列方向の2、3番目のトラス15において屈曲が存在する例である。
図6に示すA1、B1、C1は各上部トラス部材16の検知対象高さP1における検知箇所を示し、A3、B3、C3は検知対象高さP2における検知箇所を示す。
さらに、A2、B2、C2は各上部トラス部材16の未検知対象高さQ1における上部トラス部材16の位置を示している。
【0035】
まず、キャリッジ33を検知対象高さP1に移動させたスタッカクレーン13を列方向に走行させる。
スタッカクレーン13の走行中にトラスセンサ40Aは検知箇所A1、B1、C1における上部トラス部材16を検知する。
各上部トラス部材16を検知したトラスセンサ40Aの信号をクレーンコントローラ29が認識したときの走行用エンコーダ37のパルスを読み取ることにより、スタッカクレーン13の走行停止位置情報がクレーンコントローラ29に取得される。
クレーンコントローラ29に取得された走行停止位置情報は、光通信器35を通じて地上コントローラ45へ送信され、記憶手段44により記憶される。
同様に、検知対象高さP2における各上部トラス部材16の走行停止位置情報を取得する。
【0036】
次に、上部トラス部材16の傾斜角度を算出する。
上部トラス部材16の傾斜角度は、記憶された各検知対象高さP1、P2における走行停止位置情報をプログラムに基づいて演算処理することにより算出される。
例えば、図6に示す上部トラス部材16の検知箇所B1と検知箇所B3における走行停止位置情報が一致しない場合、この上部トラス部材16は傾斜していることを意味する。
つまり、各上部トラス部材16の傾斜の有無は、上部トラス部材16について上下の検知対象高さP1、P2における走行停止位置情報の一致・不一致により認識される。
【0037】
検知箇所B1、B3に係る上部トラス部材16では、検知対象高さP1、P2の高低差は一定である。
検知箇所B1、B3に係る上部トラス部材16の傾斜角度rは、検知対象高さP1、P2の高低差と、検知対象高さP1、P2における走行停止位置情報の差とに基づいて算出される。
そして、検知対象高さP1、P2に対する未検知対象高さQ1の高低差も一定であることから、算出された傾斜角度rに基づき、検知箇所B1、B3に係る上部トラス部材16における未検知対象高さQ1の走行停止位置情報が算出される。
【0038】
同様の手順により、各下部トラス部材17側の検知対象高さP3、P4における走行停止位置情報を取得し、各トラス部材17の傾斜角度を算出して、さらに、未検知対象高さQ2の走行停止位置情報を取得する。
【0039】
この実施形態ではトラス部材16、17の両端部に最も近い位置に検知対象高さP1〜P4を夫々設定している。
このため、トラス部材16、17における検知対象高さP1〜P4の高低差(P1−P2又はP3−P4)が最大となる。
従って、検知対象高さP1〜P4の高低差が小さい場合と比較して各トラス部材16、17の傾斜角度を正確に算出しやすくなる。
【0040】
なお、各トラス部材16の検知対象高さP1、P2における走行停止位置情報が一致する場合は、各トラス部材16は傾斜していないことを意味し、未検知対象高さQ1における走行停止位置情報は検知対象高さP1、P2における走行停止位置と同じ値となる。
各トラス部材17の検知対象高さP3、P4における走行停止位置情報の一致は、同様に未検知対象高さQ1及び検知対象高さP3、P4における走行停止位置情報と一致を意味する。
【0041】
このようにして得られた検知対象高さP1〜P4および未検知対象高さQ1、Q2における走行停止位置情報は地上制御盤41の記憶手段44に記憶される。
上記の全ての走行停止位置情報の取得の過程は、図7に示すSTEP1〜STEP3に相当する。
【0042】
次に、地上コントローラ45は、検知対象高さP1〜P4又は未検知対象高さQ1、Q2の荷収納部14に対応する走行停止位置情報に基づき、荷収納部14の列方向寸法(間口幅)を決定する柱間距離としてのトラス間距離を算出する。
具体的には、検知対象高さP1〜P4又は未検知対象高さQ1、Q2において互いに隣り合う走行停止位置情報の差を求めることによりトラス間距離は算出される。
図6の場合、検知対象高さP1における検知箇所C1、B1の走行停止位置情報の差から検知箇所B1、C1に対応するトラス間距離が得られる。
トラス間距離は予め許容範囲が設定されており、算出されたトラス間距離がこの許容範囲より外れたとき、地上コントローラ45は荷収納部14の異常と判断する。
【0043】
地上コントローラ45は荷収納部14の異常を判断したとき、荷収納部14の異常をオペレータに対して告知するが、この実施形態では表示手段43に警告画面を表示させるほか警告音を発するようにしている。
なお、トラス間距離の許容範囲の下限は、トラス間距離の狭くなり過ぎによるフォーク34と枠組棚11との衝突のおそれの有無により設定され、一方、上限はトラス間距離の開き過ぎによる荷の荷収納部14からの脱落のおそれの有無により設定される。
【0044】
トラス間距離の異常が認められる荷収納部14については、オペレータが異常と関係するトラス部材16、17と接続された張力部材19のターンバックル20を調整することにより解消する。
得られた全てのトラス間距離が許容範囲に含まれる場合、枠組棚11の状態は自動倉庫10の本稼動が可能な状態にあると言える。
トラス間距離の異常判断に係る一連の過程は、図7に示すSTEP4〜STEP8に相当する。
【0045】
この実施形態では、自動倉庫10が本稼動されるとき、スタッカクレーン13は、地上制御盤41の記憶手段44に記憶された検知対象高さP1〜P4における走行停止位置情報および未検知対象高さQ1、Q2における走行停止位置情報に基づき運転される。
具体的には、目的の荷収納部14に対応する走行停止位置へのスタッカクレーン13の位置決めは、走行用エンコーダ37のフィードバック制御により行われる。
つまり、自動倉庫10が本稼動に係る荷の入出庫作業等では、スタッカクレーン13の走行は、予め取得された検知対象高さP1〜P4および未検知対象高さQ1、Q2における走行停止位置情報に基づく制御され、トラスセンサ40A、40Bによるトラス部材16、17の検知は入出庫作業の都度行われることはない。
【0046】
この本発明の実施形態に係る自動倉庫10におけるスタッカクレーン13の走行停止位置情報の取得方法によれば、以下の効果を奏する。
(1)各トラス部材16、17が湾曲せず傾斜する前提では、検知対象高さP1〜P4における走行停止位置情報に基づき、各トラス部材16、17の傾斜角度を算出し、算出されたトラス部材16、17の傾斜角度に基づき、このトラス部材16、17における未検知対象高さQ1、Q2の荷収納部14に対応する走行停止位置情報が取得される。このため、検知対象高さP1〜P4におけるトラス部材16、17を検知するだけで済み、全荷収納部14に対応する走行停止位置情報をトラス部材16、17の検知により取得する必要がなく、全荷収納部14の走行停止位置情報を従来よりも短時間で取得することができる。
【0047】
(2)トラス部材16において検知対象高さP1、P2の高低差が最大となるため、検知対象高さの高低差が小さい場合と比較してトラス部材16の傾斜角度を正確に算出しやすくなる。トラス部材17についても同様である。
(3)検知対象高さP1〜P4又は未検知対象高さQ1、Q2の荷収納部14に対応する走行停止位置情報に基づき、荷収納部14の列方向寸法を決定するトラス間距離が算出されるから、算出されたトラス間距離が予め設定した許容範囲に含まれている場合は、荷収納部14が正常に機能する状態と認識できる。一方、算出されたトラス間距離が許容範囲より外れたときは、荷収納部14としての機能に支障があるものとして、警告音や警告表示等により異常がオペレータ等に告知され、荷収納部14の走行停止位置情報を取得することにより荷収納部14の異常を把握することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
○上記の実施形態では、走行停止位置の検知手段として走行用エンコーダを用いたが、走行停止位置の検知手段は走行用エンコーダに限定されない。例えば、ホームポジションHPを基準とする列方向からの距離を測定することができる公知の各種センサを用いてもよい。
○上記の実施形態では、昇降停止位置の検知手段としてセンサを用いたが、昇降位置の検知手段はセンサに替えて、昇降用モータの回転に応じて発生するパルスを読み取る昇降用エンコーダを用いてよい。
○上記の実施形態では、支柱としてのトラスは、柱部材としての上部トラス部材及び下部トラス部材の連結により実質的に構成されたが、支柱が有する柱部材の数は2以上であればよく、その数は限定されない。また、支柱における接続部は、両トラス部材を直接ボルト締めするようにしたが、連結部材を介在させた柱部材の連結でもよい。
○上記の実施形態では、柱部材毎に荷収納部の段数が3に設定されるように、載置体としての受具板が柱部材に取り付けられたが、柱部材には段方向において少なくとも3以上の荷収納部を設定する載置体を設ければよい。荷収納部の段数を3以上に設定することにより、少なくとも2箇所の検知対象高さと1箇所以上の未検知対象高さが設定される。また、柱部材毎に未検知対象高さが1箇所以上存在すれば、検知対象高さの数は3箇所以上としてもよい。
○上記の実施形態では、柱部材において検知対象高さの差が最も大きくなるように、検知対象高さは、柱部材の両端に最も近い荷収納部に対応する高さとしたが、柱部材における検知対象高さの選択は自由である。
○上記の実施形態では、走行停止位置情報の記憶及び算出と、トラス間距離の算出及び荷収納部の異常の有無確認とを地上コントローラにおいて処理するようにしたが、例えば、クレーンコントローラにおいて処理させることを妨げるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る自動倉庫を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る自動倉庫を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る枠組棚の要部を示す側面図である。
【図4】実施形態に係るトラスとスタッカクレーンとの関係を示す平面図である。
【図5】実施形態に係る自動倉庫における制御系要素のブロック図である。
【図6】傾斜するトラスを含む枠組棚における走行停止位置の取得を説明
【図7】走行停止位置情報の取得及び荷収納部の異常確認を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0050】
10 自動倉庫
11(11A、11B) 枠組棚
13 スタッカクレーン
14 荷収納部
15 トラス
16 上部トラス部材
17 下部トラス部材
18 接続部
29 クレーンコントローラ
30 走行用モータ
31 昇降用モータ
33 キャリッジ
34 フォーク
40(40A、40B) トラスセンサ
41 地上制御盤
45 地上コントローラ
CM フォーク間中心線
CA、CB 支柱間中心線
P1〜P4 検知対象高さ
Q1、Q 未検知対象高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱と該支柱に設けた複数の荷載置体とにより形成される複数段及び複数列の荷収納部を有する枠組棚が設置され、昇降する荷載置用のキャリッジを備えたクレーン装置が、前記荷収納部の列方向に沿って走行自在に備えられ、前記荷収納部に対応する高さに前記キャリッジを移動させた前記クレーン装置を走行させ、前記キャリッジに設けた支柱検知手段が支柱を検知することにより、前記キャリッジが停止すべき荷収納部に対応する列方向の走行停止位置情報を取得する自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法において、
前記支柱は複数の柱部材の接続により形成され、前記柱部材に設定される前記荷収納部の段数は3以上とし、
前記クレーン装置の走行により支柱を検知する前記支柱検知手段の検知対象高さは、前記柱部材の前記荷収納部に対応する2箇所の高さとし、
検知対象高さ毎の前記柱部材の検知に基づき、荷収納部に対応する走行停止位置情報を夫々取得し、
取得された前記検知対象高さにおける前記走行停止位置情報に基づいて前記柱部材の傾斜角度を算出し、
算出された傾斜角度に基づいて未検知対象高さの前記荷収納部に対応する走行停止位置情報を得ることを特徴とする自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法。
【請求項2】
前記検知対象高さは、前記柱部材の両端に最も近い前記荷収納部に対応する高さが選択されることを特徴とする請求項1記載の自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法。
【請求項3】
前記検知対象高さ又は前記未検知対象高さの前記荷収納部に対応する前記走行停止位置情報に基づき、前記荷収納部の列方向寸法を決定する柱間距離を算出し、該柱間距離が予め設定した許容範囲より外れたとき、前記荷収納部の異常を告知することを特徴とする請求項1又は2記載の自動倉庫におけるクレーン装置の走行停止位置情報の取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−63062(P2008−63062A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241651(P2006−241651)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】