説明

自動分析装置

【課題】待機時に消費される電力を低減しつつ、装置の破損を防ぐことができる自動分析装置を提供すること。
【解決手段】試料分析に係る一連の複数の処理の各処理を行う機構部Uのそれぞれが、パルスモータを有し、各パルスモータによって駆動されて試料分析を行う自動分析装置1において、待機させる各機構部Uのパルスモータに供給する電流を遮断するか否かの設定情報を記憶する設定情報記憶部33aと、設定情報記憶部33a内の設定情報に基づいて、供給する電流を遮断しない設定の機構部のパルスモータに電流を供給し、供給する電流を遮断する設定の機構部のパルスモータに供給する電流を遮断して各機構部Uを待機させる制御を行う待機制御部34aと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一連の複数の処理を行って試料分析をする自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試料分析の一連の複数の処理の各処理を行う機構部のそれぞれが、パルスモータを有し、各パルスモータが各機構部を駆動することによって試料分析を行う自動分析装置が知られている。特許文献1の段落番号0002では、この自動分析装置を待機させる際、各機構部のパルスモータに供給する電力を、各機構部を駆動させる際に供給する電力に比して低下させることによって消費電力を低減させる技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−105243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の自動分析装置では、自動分析装置を待機させる際にパルスモータによって各機構部の可動部を動かないように保持するため、各機構部のパルスモータに電流を供給し続けて保持トルクを発生させなければならなかった。このパルスモータに供給する電流を遮断した場合、可動部の自重あるいは、可動部と操作者との接触等によって可動部が動いてしまい、結果的に機構部を破損させてしまう恐れがあった。
【0005】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、待機時に消費される電力を低減しつつ、装置の破損を防ぐことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる自動分析装置は、試料分析に係る一連の複数の処理の各処理を行う機構部のそれぞれが、パルスモータを有し、前記各パルスモータによって駆動されて試料分析を行う自動分析装置において、待機させる前記各機構部のパルスモータに供給する電流を遮断するか否かの設定情報を記憶する記憶部と、前記設定情報に基づいて、供給する電流を遮断しない設定の機構部のパルスモータに電流を供給し、供給する電流を遮断する設定の機構部のパルスモータに供給する電流を遮断して前記各機構部を待機させる制御を行う制御部と、を有したことを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記制御部は、供給する電流を遮断しない設定の機構部のパルスモータに供給する電力を、該機構部を駆動させる際に供給する電力に比して低下させて前記各機構部を待機させる制御を行うことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記各機構部は、試薬を収容する試薬容器を保持する試薬容器保持機構部、試料を含む液体を収容する反応容器を保持する反応容器保持機構部、前記反応容器内に液体を分注する分注機構部、前記反応容器内の試料を含む液体を攪拌する攪拌機構部または前記反応容器内を洗浄する洗浄機構部のいずれかであることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記記憶部は、待機させる前記反応容器保持機構部のパルスモータに供給する電流を遮断する旨の設定情報を記憶することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記分注機構部は、パルスモータによって駆動される前記分注機構部の可動部の移動を規制する規制部材を有し、前記記憶部は、待機させる前記分注機構部のパルスモータに供給する電流を遮断する旨の設定情報を記憶し、前記制御部は、前記分注機構部の可動部の少なくとも一部を前記規制部材によって移動を規制される位置に移動させて前記分注機構部を待機させることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記反応容器保持機構部は、パルスモータによって駆動される前記反応容器保持機構部の可動部の外縁から突出する突出部を有し、前記分注機構部は、該分注機構部の可動部に連結して設けられ、前記突出部に係合する係合部を有し、前記制御部は、前記反応容器保持機構部および前記分注機構部を待機させる際、前記係合部と前記突出部とを係合させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、試料分析の一連の複数の処理の各処理を行う機構部のそれぞれが、パルスモータを有し、前記各パルスモータが前記各機構部を駆動することによって試料分析を行う自動分析装置において、記憶部が、待機させる前記各機構部のパルスモータに供給する電流を遮断するか否かの設定情報を記憶し、制御部が、前記設定情報に基づいて、供給する電流を遮断しない設定の機構部のパルスモータに電流を供給し、供給する電流を遮断する設定の機構部のパルスモータに供給する電流を遮断して前記各機構部を待機させる制御を行うので、パルスモータに供給する電流を遮断しても装置を破損させる恐れがない機構部を待機させる際、この機構部のパルスモータに供給する電流を遮断することができる。従って、待機時に消費される電力を低減しつつ、装置の破損を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明にかかる自動分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。図2は、図1に示した各機構部がパルスモータによって駆動されることを説明する図である。自動分析装置1は、図1に示すように、検体(試料)と試薬とを反応容器13aにそれぞれ分注し、反応容器13a内の検体と試薬との混合液に対して光学的な測定を行う測定部10と、この測定部10を含む自動分析装置1の制御を行うとともに測定部10における測定結果の分析を行う制御装置30とを有し、測定部10および制御装置30が連携することによって複数の検体の成分の生化学的な分析を連続的に行う。
【0015】
測定部10は、作業テーブル20を有し、作業テーブル20上に検体移送部11、試薬容器保持機構部12、反応容器保持機構部13、検体分注機構部14、試薬分注機構部15、攪拌機構部16、測光部17および洗浄機構部18を設けている。
【0016】
検体移送部11は、検体を収容する検体容器11aが保持された複数のラック11bを収納して順次移送する。
【0017】
試薬容器保持機構部12は、試薬が収容された試薬容器12aを保持する。試薬容器保持機構部12は、試薬容器12aを保持するホイール12bと、ホイール12bの底面中心に取り付けられ、その中心を通る鉛直線を回転軸としてホイール12bを回転させるパルスモータPMとを有する。
【0018】
反応容器保持機構部13は、検体と試薬とをそれぞれ分注して反応させる容器である反応容器13aを保持する。反応容器保持機構部13は、反応容器13aを保持するホイール13bと、ホイール13bの底面中心に取り付けられ、その中心を通る鉛直線を回転軸として可動部としてのホイール13bを回転させるパルスモータPMとを有する。
【0019】
検体分注機構部14は、検体移送部11上の検体容器11aに収容された検体を反応容器13aに分注する。検体分注機構部14は、検体の吸引あるいは吐出を行うプローブ14aと、プローブ14aを支持するアーム14bと、吸排シリンジ等によって実現される吸排機構(図示せず)と、可動部としてのアーム14bに鉛直方向の昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転をさせるパルスモータPMとを有する。
【0020】
また、検体分注機構部14は、規制部材14dを有する。規制部材14dは、パルスモータPMによって駆動されるアーム14bの移動を規制する。アーム14bは、図3に示すように、パルスモータPMによって駆動されて規制部材14d上のアーム14bの移動を規制される位置P1まで移動すると、規制部材14dによって昇降および回転を規制される。規制部材14dは、図4に示すように、操作者Hが自動分析装置1を操作する際に位置する側にプローブ14aを向けてアーム14bの移動を規制する。なお、規制部材14dは、操作者Hが自動分析装置1を操作する際に位置する側にプローブ14aを向けなくても、アーム14bの移動を規制することができればよい。
【0021】
試薬分注機構部15は、試薬容器保持機構部12上の試薬容器12aに収容された試薬を反応容器13aに分注する。試薬分注機構部15は、検体分注機構部14と同様の構成を有しており、試薬の吸引あるいは吐出を行うプローブ15aと、プローブ15aを支持するアーム15bと、吸排シリンジ等によって実現される吸排機構(図示せず)と、可動部としてのアーム15bに鉛直方向の昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転をさせるパルスモータPMとを有する。また、試薬分注機構部15は、規制部材15dを有する。規制部材15dは、規制部材14dと同様に、パルスモータPMによって駆動される可動部であるアーム15bの移動を規制する。規制部材15dは、図4に示すように、操作者Hが自動分析装置1を操作する際に位置する側にプローブ15aを向けてアーム15bの移動を規制する。なお、規制部材15dは、操作者Hが自動分析装置1を操作する際に位置する側にプローブ15aを向けなくても、アーム15bの移動を規制することができればよい。
【0022】
攪拌機構部16は、ホイール13bの外周にそって配置され、反応容器13a内の検体を含む液体を攪拌する。攪拌機構部16は、アーム16aと、攪拌棒16bと、アーム16aに鉛直方向の昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転をさせるパルスモータPMとを有する。攪拌棒16bは、アーム16aの各頂部近傍に配設してある。攪拌棒16bは、図示しない駆動部によってアーム16aと独立して回転する。
【0023】
測光部17は、反応容器13a内を通過した光の波長成分ごとの強度等を測定する。測光部17は、発光部17aおよび受光部17bを有する。測光部17は、発光部17aから発せられ、所定の測光位置に搬送された反応容器13a内の検体と試薬との混合液を透過した分析光を受光部17bが受光して分光強度測定を行う。この測光部17による測定結果は、制御部34に出力され、制御部34によって測定結果に基づいた分析演算が行われる。
【0024】
洗浄機構部18は、ホイール13bの外周にそって配置され、洗浄液を用いて反応容器13a内を洗浄する。洗浄機構部18は、アーム18aと、アーム18aの各頂部近傍に配設されたノズル18bと、アーム18aに鉛直方向の昇降をさせるパルスモータPMとを有する。ノズル18bは、反応容器13a内の液体を吸引する吸引ノズル、反応容器13a内に洗浄液を供給する洗浄ノズル等である。なお、上述した試薬容器保持機構部12、反応容器保持機構部13、検体分注機構部14、試薬分注機構部15、攪拌機構部16および洗浄機構部18を総称して機構部Uと称する。
【0025】
次に、図1を参照して、制御装置30について説明する。制御装置30は、入力部31と、出力部32と、記憶部33および制御部34を有する。
【0026】
入力部31は、キーボードやマウス等によって実現され、検体の分析に必要な情報や自動分析装置1の動作を指示する動作指示信号などを含む情報の入力操作を行うものである。
【0027】
出力部32は、ディスプレイパネル等によって実現され、分析結果を含む分析内容や警報等を出力する。
【0028】
記憶部33は、更新記憶可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵或いはデータ通信端子で接続されたハードディスク、CD−ROM等の情報記憶媒体及びその読取装置等によって実現される。記憶部33は、分析結果の他、自動分析装置1の動作に必要な各種プログラムや、これらプログラムの実行にかかるデータ等を記憶する。
【0029】
記憶部33は、設定情報記憶部33aを有する。設定情報記憶部33aは、待機させる各機構部UのパルスモータPMに供給する電流を遮断する否かの設定情報を記憶する。具体的には、設定情報記憶部33aは、試薬容器保持機構部12、反応容器保持機構部13、検体分注機構部14、および試薬分注機構部15のパルスモータPMに供給する電流を遮断し、攪拌機構部16および洗浄機構部18のパルスモータPMに供給する電流を遮断しない旨の設定情報を記憶する。
【0030】
なお、この設定情報は、パルスモータPMに供給する電流を遮断して待機させたとして各機構部Uを破損させてしまう恐れがあるかないかを各機構部Uについて確認することによって得られる情報に基づいている。すなわち、この実施の形態1の設定情報は、試薬容器保持機構部12、反応容器保持機構部13、検体分注機構部14、および試薬分注機構部15は、パルスモータPMに供給する電流を遮断して待機させたとしても各機構部Uを破損させてしまう恐れがないという情報に基づいている。
【0031】
制御部34は、制御機能および演算機能を有するCPU等によって実現され、制御装置30内の各部の制御を行うとともに測定部10の駆動制御を行う。また、制御部34は、測光部17から取得した測定結果に基づいた分析演算を行い検体の分析データを生成する。制御部34は、待機制御部34aを有する。
【0032】
待機制御部34aは、設定情報記憶部33a内の設定情報に基づいて、供給する電流を遮断しない設定の機構部のパルスモータPMに供給する電力を、この機構部を駆動させる際に供給する電力に比して低下させ、供給する電流を遮断する設定の機構部のパルスモータPMに供給する電流を遮断して各機構部Uを待機させる制御を行う。機構部を駆動させる際に供給する電力に比して低下させた電力は、機構部の可動部を保持させる保持トルクがパルスモータPMによって得られる電力である。
【0033】
図5は、機構部のパルスモータPMに供給する電力の時間変化の一例を示す図である。図5は、横軸を時間とし、縦軸を電力として、2つのグラフG1,G2を併せて示している。待機制御部34aは、機構部を待機させる際、グラフG1に示すように機構部を駆動させる際に比してパルスモータPMに供給する電力を低下させる。または、待機制御部34aは、機構部を待機させる際、グラフG2に示すようにパルスモータPMに供給する電流を遮断する。
【0034】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転する反応容器保持機構部13によって周方向に沿って移送される複数の反応容器13aに試薬分注機構部15が試薬容器12aから試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器13aは、反応容器保持機構部13によって周方向に沿って移送され、検体分注機構部14によってラック11bに保持された複数の検体容器11aから検体が順次分注される。
【0035】
その後、検体が分注された反応容器13aは、反応容器保持機構部13によって攪拌機構部16へ搬送され、分注された試薬と検体とが順次攪拌されて反応する。このようにして検体と試薬との混合液を収容した反応容器13aは、反応容器保持機構部13が再び回転したときに測光部17を通過し、発光部17aから発せらされた分析光が透過する。このとき、検体と試薬との混合液を透過した分析光は、光学的特性を測定され、制御部34よって分析演算される。そして、分析が終了した反応容器13aは、反応容器保持機構部13によって洗浄機構部18へ搬送され、洗浄機構部18によって内部を洗浄される。自動分析装置1は、このような検体の分析の一連の複数の処理を連続して行う。ここで、待機制御部34aは、入力部31から自動分析装置1を待機する旨の信号を取得した場合、パルスモータPMによって駆動される各機構部Uを待機させる処理を実行する。
【0036】
ここで、図6を参照して、パルスモータPMに供給する電力を遮断する機構部と遮断しない機構部とを判断して各機構部を待機させる処理手順について説明する。まず、待機制御部34aは、機構部UごとにパルスモータPMに供給する電流を遮断する機構部であるか否かを判断する(ステップS101)。この判断は、設定情報記憶部33aに予め記憶された設定情報に基づいて行われる。すなわち、待機制御部34aは、試薬容器保持機構部12、反応容器保持機構部13、検体分注機構部14、および試薬分注機構部15のパルスモータPMに供給する電流を遮断すると判断し、攪拌機構部16および洗浄機構部18のパルスモータPMに供給する電流を遮断しないと判断する。パルスモータPMに供給する電流を遮断する機構部である場合(ステップS101:Yes)、待機制御部34aは、機構部のパルスモータPMに供給する電流を遮断して待機させる処理を行う(ステップS102)。一方、パルスモータPMに供給する電流を遮断しない機構部である場合(ステップS101:No)、待機制御部34aは、パルスモータPMに供給する電力を、この機構部を駆動させる際に供給する電力に比して低下させて待機させる処理を行う(ステップS103)。
【0037】
その後、待機制御部34aは、パルスモータPMによって駆動される全ての機構部Uを待機させる処理が終了したか否かを判断する(ステップS104)。パルスモータPMによって駆動される全ての機構部Uを待機させる処理が終了した場合(ステップS104:Yes)、待機制御部34aは、この処理を終了させる。一方、パルスモータPMによって駆動される全ての機構部Uを待機させる処理が終了していない場合(ステップS104:No)、待機制御部34aは、ステップS101に移行し、上述した処理を繰り返す。
【0038】
次に、図7に示すフローチャートを参照して、反応容器保持機構部を待機させる処理手順について説明する。なお、試薬容器保持機構部12を待機させる処理手順は、反応容器保持機構部13を待機させる処理手順と同様にして行われるため、ここでは反応容器保持機構部13を待機させる処理手順について説明する。待機制御部34aは、まず、ホイール13bを回転させ(ステップS201)、ホイール13bが待機位置に移動したか否かを判断する(ステップS202)。ホイール13bが待機位置に移動した場合(ステップS202:Yes)、待機制御部34aは、ホイール13bの回転を停止させる(ステップS203)。一方、ホイール13bが待機位置に移動していない場合(ステップS202:No)、待機制御部34aは、この判断処理を繰り返す。
【0039】
その後、待機制御部34aは、反応容器保持機構部13のパルスモータPMに供給する電流を遮断し(ステップS205)、この処理を終了する。ここで、待機する反応容器保持機構部13のホイール13bを外力等によって回転させても、ホイール13bに接触する可能性のある検体分注機構部14、試薬分注機構部15、攪拌機構部16および洗浄機構部18が待機位置で保持されているため、各機構部Uを破損させてしまう恐れがない。
【0040】
次に、図8に示すフローチャートを参照して、検体分注機構部を待機させる処理手順について説明する。なお、試薬分注機構部15を待機させる処理手順は、検体分注機構部14を待機させる処理手順と同様にして行われるため、ここでは検体分注機構部14を待機させる処理手順について説明する。待機制御部34aは、まず、アーム14bを原点位置に移動させる(ステップS301)。その後、待機制御部34aは、アーム14bを下降させ(ステップS302)、アーム14bが下降停止位置まで下降したか否かを判断する(ステップS303)。この下降停止位置は、アーム14bの回転によって、アーム14bが図3に示した規制部材14dの水平方向の切り込みに入るように設定された位置である。アーム14bが下降停止位置まで下降した場合(ステップS303:Yes)、待機制御部34aは、アーム14bの下降を停止させる(ステップS304)。一方、アーム14bが下降停止位置まで下降していない場合(ステップS303:No)、待機制御部34aは、この判断処理を繰り返す。
【0041】
その後、待機制御部34aは、アーム14bを回転させ(ステップS305)、アーム14bが回転停止位置まで回転したか否かを判断する(ステップS306)。この回転停止位置は、アーム14bの下降移動によって、アーム14bが図3に示した規制部材14dの鉛直方向の切り込みに入るように設定された位置である。アーム14bが回転停止位置まで回転した場合(ステップS306:Yes)、待機制御部34aは、アーム14bの回転を停止させる(ステップS307)。一方、アーム14bが回転停止位置まで回転していない場合(ステップS306:No)、待機制御部34aは、この判断処理を繰り返す。
【0042】
その後、待機制御部34aは、アーム14bを下降させ(ステップS308)、アーム14bが待機位置に移動したか否かを判断する(ステップS309)。アーム14bが待機位置に移動した場合(ステップS309:Yes)、待機制御部34aは、アーム14bの下降を停止させる(ステップS310)。これにより、アーム14bが、規制部材14d上のアーム14bの移動を規制される位置P1まで移動する。一方、アーム14bが待機位置に移動していない場合(ステップS309:No)、待機制御部34aは、この判断処理を繰り返す。その後、待機制御部34aは、検体分注機構部14のパルスモータPMに供給する電流を遮断し(ステップS311)、この処理を終了する。ここで、待機する検体分注機構部14のアーム14bに外力等が作用しても、アーム14bが規制部材14dによって移動を規制されているため、アーム14bが動いて各機構部Uを破損させてしまう恐れがない。
【0043】
この発明の実施の形態1では、設定情報記憶部33aが、待機させる各機構部UのパルスモータPMに供給する電流を遮断するか否かの設定情報を記憶し、待機制御部34aが、設定情報記憶部33a内の設定情報に基づいて、供給する電流を遮断しない設定の機構部のパルスモータPMに供給する電力を、この機構部が駆動する際に供給する電力に比して低下させ、供給する電流を遮断する設定の機構部のパルスモータPMに供給する電流を遮断して各機構部Uを待機させる制御を行うので、パルスモータPMに供給する電流を遮断しても装置を破損させる恐れがない機構部を待機させる際、この機構部のパルスモータPMに供給する電流を遮断することができる。従って、待機時に消費される電力を低減しつつ、装置の破損を防ぐことができる。
【0044】
また、この発明の実施の形態1では、試薬容器保持機構部12、反応容器保持機構部13、検体分注機構部14、および試薬分注機構部15のそれぞれのパルスモータPMに供給する電流を遮断して待機させているので、これらのパルスモータPMの発熱を低下させることができる。
【0045】
また、この発明の実施の形態1では、規制部材14d,15dは、操作者Hが自動分析装置1を操作する際に位置する側にプローブ14a,15aを向けてアーム14bの移動を規制するので、プローブ14a,15aのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0046】
なお、この実施の形態1では、パルスモータPMに供給する電流を遮断しないで待機させる設定の機構部のパルスモータPMに供給する電力を、この機構部を駆動させる際に供給する電力に比して低下させるものを例示したが、これに限らず、パルスモータPMに供給する電流を遮断しない設定の機構部のパルスモータPMに電流を供給して待機させればよい。
【0047】
なお、この実施の形態1では、試薬容器保持機構部12、反応容器保持機構部13、検体分注機構部14、試薬分注機構部15、攪拌機構部16および洗浄機構部18をパルスモータPMによって駆動するものを例示したが、これに限らず、自動分析装置1が、パルスモータPMによって駆動される機構部を有していればよい。例えば、試薬容器保持機構部12、反応容器保持機構部13、検体分注機構部14および試薬分注機構部15がパルスモータPMによって駆動され、攪拌機構部16および洗浄機構部18がパルスモータPM以外の駆動手段によって駆動されてもよい。この場合、待機制御部34aは、試薬容器保持機構部12、反応容器保持機構部13、検体分注機構部14および試薬分注機構部15に対してパルスモータPMに供給する電流を遮断するか否かを判断して待機させる制御を行う。
【0048】
なお、この実施の形態1では、規制部材14dが作業テーブル20上に設けられるものを例示したが、これに限らず、待機制御部34aが、アーム14bの少なくとも一部を規制部材14dによって移動を規制される位置に移動させることができればよい。例えば、検体分注機構部14は、図9に示すように、規制部材14dを作業テーブル20より下方に設けられ、待機制御部34aは、作業テーブル20より下方に位置するアーム14bの一部(突出片14c)を規制部材14dによって移動を規制される位置P2に移動させて検体分注機構部14を待機させる。
【0049】
なお、この実施の形態1では、設定情報記憶部33aは、試薬容器保持機構部12、反応容器保持機構部13、検体分注機構部14、および試薬分注機構部15のパルスモータPMに供給する電流を遮断し、攪拌機構部16および洗浄機構部18のパルスモータPMに供給する電流を遮断しない設定情報を記憶するものを例示したが、これに限らず、待機させる各機構部UのパルスモータPMに供給する電流を遮断するか否かの設定情報を記憶すればよい。例えば、図10に示すように、攪拌機構部16が、攪拌機構部16のパルスモータPMによって駆動される可動部であるアーム16aの移動を規制する規制部材16dを有し、待機制御部34aは、アーム16aの一部(突出片16c)を規制部材16dによって移動を規制される位置に移動させて攪拌機構部16を待機させる。この場合、設定情報記憶部33aは、攪拌機構部16のパルスモータPMに供給する電流を遮断する旨の設定情報を記憶する。
【0050】
(実施の形態2)
次に、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1の自動分析装置1では、反応容器保持機構部13を待機させる際、ホイール13bの移動を規制しないが、この実施の形態2の自動分析装置2では、反応容器保持機構部41を待機させる際、ホイール13bの移動を規制している。反応容器保持機構部41は、図11および図12に示すように、ホイール13bの外縁から突出する突出部41aを有する。検体分注機構部42は、アーム14bに連結して設けられ、突出部41aに係合する係合部42aを有する。待機制御部51aは、反応容器保持機構部41および検体分注機構部42を待機させる際、係合部42aと突出部41aとを係合させる。
【0051】
ここで、図13のフローチャートを参照して、反応容器保持機構部41のホイール13bが移動を規制される処理手順を説明する。まず、待機制御部51aは、反応容器保持機構部41のホイール13bを回転させ(ステップS401)、ホイール13bが待機位置に移動したか否かを判断する(ステップS402)。ホイール13bが待機位置に移動した場合(ステップS402:Yes)、待機制御部51aは、反応容器保持機構部41のホイール13bの回転を停止させる(ステップS403)。これにより、突出部41aは、所定の位置への移動を完了する。一方、ホイール13bが待機位置に移動していない場合(ステップS402:No)、待機制御部51aは、この判断処理を繰り返す。
【0052】
その後、待機制御部51aは、検体分注機構部42を待機させる処理を行う(ステップS404)。この検体分注機構部42を待機させる処理は、上述した、検体分注機構部14を待機させる処理と同様の手順で行われる。これにより、アーム14bが位置P1に移動すると、図12に示すように、係合部42aが突出部41aに係合する。その後、待機制御部51aは、反応容器保持機構部41のパルスモータPMに供給する電流を遮断し(ステップS405)、この処理を終了する。ここで、待機する反応容器保持機構部41のホイール13bに外力等が作用してしても、アーム14bが規制部材14dによって移動を規制されているため、係合部42aと係合する突出部41aの移動が規制される。このため、反応容器保持機構部41のパルスモータPMに供給する電流を遮断してもホイール13bが動くことはない。
【0053】
この発明の実施の形態2では、実施の形態1と同様な効果を奏するとともに、反応容器保持機構部41および検体分注機構部42を待機させる際、ホイール13bおよびアーム14bのそれぞれに設けられた突出部41aと係合部42aとを係合し、突出部41aの移動を規制しているので、反応容器保持機構部41を待機させる際に、反応容器保持機構部41のパルスモータPMに供給する電流を遮断してもホイール13bの回転を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す摸式図である。
【図2】図1に示した各機構部がパルスモータによって駆動されることを説明する図である。
【図3】図1に示した規制部材によって検体分注機構部のアームの移動が規制されることを説明する図である。
【図4】図1に示した規制部材が、操作者が自動分析装置を操作する際に位置する側にプローブを向けてアームの移動を規制することを説明する図である。
【図5】図1に示した各機構部のパルスモータに供給する電力の時間変化の一例を示す図である。
【図6】パルスモータに供給する電力を遮断する機構部と遮断しない機構部とを判断して各機構部を待機させる処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図1に示した反応容器保持機構部を待機させる処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図1に示した検体分注機構部を待機させる処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図1に示した検体分注機構部の変形例の構成を示す斜視図である。
【図10】図1に示した攪拌機構部の変形例の構成を示す斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態2にかかる自動分析装置の構成を示す摸式図である。
【図12】図11に示した反応容器保持機構部および検体分注機構部の要部概要図である。
【図13】図11に示した反応容器保持機構部のホイールが移動を規制される処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1,2 自動分析装置
10,40 測定部
11 検体移送部
11a 検体容器
11b ラック
12 試薬容器保持機構部
12a 試薬容器
12b,13b ホイール
13,41 反応容器保持機構部
13a 反応容器
14,42 検体分注機構部
14a,15a プローブ
14b,15b,16a,18a アーム
14c,16c 突出片
14d,15d,16d 規制部材
15 試薬分注機構部
16 攪拌機構部
16b 攪拌棒
17 測光部
17a 発光部
17b 受光部
18 洗浄機構部
18b ノズル
20 作業テーブル
30,50 制御装置
31 入力部
32 出力部
33 記憶部
33a 設定情報記憶部
34,51 制御部
34a,51a 待機制御部
41a 突出部
42a 係合部
PM パルスモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料分析に係る一連の複数の処理の各処理を行う機構部のそれぞれが、パルスモータを有し、前記各パルスモータによって駆動されて試料分析を行う自動分析装置において、
待機させる前記各機構部のパルスモータに供給する電流を遮断するか否かの設定情報を記憶する記憶部と、
前記設定情報に基づいて、供給する電流を遮断しない設定の機構部のパルスモータに電流を供給し、供給する電流を遮断する設定の機構部のパルスモータに供給する電流を遮断して前記各機構部を待機させる制御を行う制御部と、
を有したことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記制御部は、供給する電流を遮断しない設定の機構部のパルスモータに供給する電力を、該機構部を駆動させる際に供給する電力に比して低下させて前記各機構部を待機させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記各機構部は、試薬を収容する試薬容器を保持する試薬容器保持機構部、試料を含む液体を収容する反応容器を保持する反応容器保持機構部、前記反応容器内に液体を分注する分注機構部、前記反応容器内の試料を含む液体を攪拌する攪拌機構部または前記反応容器内を洗浄する洗浄機構部のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記記憶部は、待機させる前記反応容器保持機構部のパルスモータに供給する電流を遮断する旨の設定情報を記憶することを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記分注機構部は、パルスモータによって駆動される前記分注機構部の可動部の移動を規制する規制部材を有し、
前記記憶部は、待機させる前記分注機構部のパルスモータに供給する電流を遮断する旨の設定情報を記憶し、
前記制御部は、前記分注機構部の可動部の少なくとも一部を前記規制部材によって移動を規制される位置に移動させて前記分注機構部を待機させることを特徴とする請求項3または4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記反応容器保持機構部は、パルスモータによって駆動される前記反応容器保持機構部の可動部の外縁から突出する突出部を有し、
前記分注機構部は、該分注機構部の可動部に連結して設けられ、前記突出部に係合する係合部を有し、
前記制御部は、前記反応容器保持機構部および前記分注機構部を待機させる際、前記係合部と前記突出部とを係合させることを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−217040(P2010−217040A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65091(P2009−65091)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】