説明

自動変速機

【課題】車両停車中に発生したインターロックを検知できるようにする。
【解決手段】車両の停車中に、副変速機構30に入力される入力トルクが変化し、かつ副変速機構30の入力回転を検出してパルス信号を出力するセカンダリ回転センサ48からパルス信号が出力されたにもかかわらず、副変速機構30の出力回転が伝達される駆動輪7の回転を検出してパルス信号を出力する車速センサ43からパルス信号が出力されないとき、副変速機構30にインターロックが発生したと判定する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の停車中にインターロックが発生したか否かを、車両の発進時に判定する機能を備える自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機の非変速時に、車両の減速度およびギア比に基づいてインターロックが発生したか否かを判定する技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−232355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術においては、車両停車中はインターロックの発生の有無によらず減速度およびギア比は変化しないため、車両停車中にインターロックが発生したときは、そのインターロックを検知することができない、という課題があった。
そこで、車両停車中に発生したインターロックを検知できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、変速機構が有する複数の締結要素の締結状態または解放状態を切り換えることで、変速機構の複数の変速段を切換可能な自動変速機であって、変速機構の入力回転を検出し、パルス信号を出力する第1回転センサと、変速機構の出力回転を検出し、パルス信号を出力する第2回転センサと、変速機構に入力される入力トルクの変化の有無を判断する入力トルク変化判断手段と、変速機構にインターロックが発生したか否かを判定するインターロック判定手段と、を備え、インターロック判定手段は、車両の停車中に、入力トルクが変化し、かつ第1回転センサからパルス信号が出力されたにもかかわらず、第2回転センサからパルス信号が出力されないとき、変速機構にインターロックが発生したと判定する構成とした。
【発明の効果】
【0006】
例えば停車している車両が発進しようとして入力トルクが変化すると、変速機構の入力軸にねじれが生じて、第1回転センサからパルス信号が出力される。このとき、変速機構にインターロックが生じていると、入力トルクは、変速機構の出力軸には伝達されないので、第2回転センサからパルス信号が出力されないことになる。
よって、変速機構の入力軸への入力トルクが変化したときに、第1回転センサと第2回転センサとから出力されるパルス信号に基づいて変速機構のインターロックを判定することによって、車両が停車中に発生したインターロックを判定することができる。
また、第2回転センサから出力されるパルス信号に基づいて変速機構のインターロックを判断しているため、縁石や登坂路におけるタイヤロック時をインターロックと誤判定することがなく、車両が停車中に発生したインターロックを精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態にかかる自動変速機を搭載した車両の駆動系の概略構成図である。
【図2】自動変速機の変速機コントローラにおける処理を説明するフローチャートである。
【図3】自動変速機の変速機コントローラにおける処理を説明するフローチャートである。
【図4】自動変速機の変速機コントローラにおける処理のタイムチャートである。
【図5】自動変速機の変速機コントローラにおける処理のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施の形態にかかる自動変速機を搭載した車両の概略構成図である。
この車両は動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、無段変速機(以下、単に「変速機4」という。)、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には、駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
【0009】
また、車両には、オイルポンプ(図示せず)からの油圧を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11などを制御する変速機コントローラ12と、エンジン1を制御するエンジンコントローラ(ECU)13と、が設けられている。
【0010】
変速機4は、ベルト式無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)と、バリエータ20に直列に設けられた副変速機構30と、を備える。
ここで、「直列に設けられる」とは、エンジン1から駆動輪7に至るまでの動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意昧である。副変速機構30は、図1の場合のように、バリエータ20の出力軸に直接接続されていても良いし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていても良い。
【0011】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、これらプ一リ21、22の間に掛け回されるVベルト23とを備える。
プ一リ21、22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置されて固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ24a、24bと、を備える。
油圧シリンダ24a、24bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プ一リ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比が無段階に変化する。
【0012】
副変速機構30は、前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキヤリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結、解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。
【0013】
Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34を解放すれば、副変速機構30の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34を解放すれば、副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さい2速となる。また、Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33を解放すれば、副変速機構30の変速段は後進となる。
【0014】
変速機コントローラ12には、エンジン1のスロットルバルブ開度TVOを検出するスロットルバルブ開度センサ41の出力信号と、変速機4の入力回転速度を検出するプライマリ回転センサ42の出力信号と、車速VSPを検出する車速センサ43の出力信号と、エンジン回転速度を検出するエンジン回転センサ44の出力信号と、セレクトレバー9の位置を検出するインヒビタスイッチ45の出力信号と、ブレーキペダル10の踏み込みを検出するブレーキセンサ46の出力信号と、車両の傾きを検出するGセンサ(勾配検出手段)47からの出力信号と、変速機4の出力回転速度を検出するセカンダリ回転センサ48からの出力信号と、が入力される。
【0015】
油圧制御回路11は、複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。
油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えると共に、オイルポンプ(図示せず)で発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。
これにより、バリエータ20の変速比、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0016】
エンジンコントローラ(ECU)13は、スロットルバルブ(図示せず)の開度や燃料の噴射量などを制御して、エンジン1を制御する。
例えば、エンジンコントローラ13は、変速機コントローラ12からエンジントルク規制値が入力されると、エンジントルク規制値を上限としたトルクがエンジン1から出力されるように、スロットルバルブ開度TVOや燃料の噴射量などを制御する。
【0017】
変速機コントローラ12は、バリエータ20と副変速機構30とを駆動して変速制御を実行すると共に、車両の停車中に副変速機構30の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)で発生したインターロックを検知するための処理(インターロック判定処理)を実行する。
【0018】
以下、インターロック判定処理を説明する。
図2および図3は、インターロック判定処理のフローチャートである。
図4は、車両が所定角度以上の勾配路(坂道)で停車していない場合の処理を説明するタイムチャートである。
【0019】
インターロック判定処理は、変速機コントローラ12において繰り返し実行される処理であり、インターロックを暫定検知したのち、インターロックが発生しているか否かを最終的に判断する流れで、処理が進行する。
【0020】
ステップ101において、暫定検知の前提条件が成立しているか否かが確認される。
具体的には、車両が停車しており、かつセカンダリプーリ22の回転数が所定回転数以下である場合に、成立していると判定される。
【0021】
実施の形態では、車両が停止している状態から発進しようとしたときに、インターロックの発生の有無を確認するため、車両が停車していることが処理を実行するための前提だからである。車両が停止しているか否かは、車速センサ43の出力信号(パルス信号)に基づき特定される。
【0022】
さらに、セカンダリプーリ22の回転数が所定回転数以下であることを要件としているのは、副変速機構30の摩擦締結要素が締結できない故障(開放故障)と開放できない故障(インターロック)とを区別するためである。
【0023】
インターロックの場合には、セカンダリプーリ22(副変速機構30の入力軸30a)の回転がロックされるため、車両を発進させるためにアクセルペダルが踏み込まれても、踏み込み量に応じてセカンダリプーリ22(入力軸30a)の回転数は上昇しない。
一方、開放故障の場合には、セカンダリプーリ22(副変速機構30の入力軸30a)の回転がロックされないため、車両を発進させるためにアクセルペダルが踏み込まれると、踏み込み量に応じてセカンダリプーリ22(入力軸30a)の回転数が上昇する。
【0024】
よって、セカンダリプーリ22の回転数が所定回転数よりも大きい場合には、少なくともインターロックは発生していないことになるので、ステップ101において、車両が停車している場合であっても、暫定検知の前提条件が成立していないと判定される。
また、セカンダリプーリ22の回転数が所定回転数よりも大きくないときには、車両が停車している場合に、暫定検知の前提条件が成立していると判定される。
なお、セカンダリプーリ22(副変速機構30の入力軸30a)の回転数は、セカンダリ回転センサ48の出力信号(パルス信号)に基づいて特定される。
【0025】
ステップ101において暫定検知の前提条件が成立している場合、ステップ102において、トルク変化フラグがセットされているか否かが確認される。
トルク変化フラグは、副変速機構30の入力軸30aに入力されるトルクが変化しているか否かを示すフラグである。車両を発進させようとしてアクセルペダルが踏み込まれると、エンジン1のスロットルバルブ開度TVOが変化して、エンジン1から入力される入力トルクが変化する。トルク変化フラグは、かかる場合に、後記するステップ104においてセットされる。
【0026】
車両が停車しているときには、副変速機構30の入力軸30aに入力されるトルクは略ゼロまたは一定であり、トルク変化フラグがセットされていない状態である。
よって、かかる場合には、ステップ103の処理に移行して、停車している車両が発進しようとしているか否かを判定するために、スロットルバルブ開度TVOの変化率が、閾値αよりも大きいか否かが確認される。
【0027】
停車している車両を発進させようとしてアクセルペダル(図示せず)が踏み込まれると、アクセルペダルの踏み込み量に応じて、エンジン1のスロットルバルブ(図示せず)の開度(スロットルバルブ開度TVO)が大きくなる。ステップ103では、この際のスロットルバルブ開度TVOの変化率が、車両を発進させるためのアクセルペダルの操作であるか否かを判定する閾値αよりも大きいか否かを確認している。
【0028】
ステップ103においてスロットルバルブ開度TVOの変化率が、閾値αよりも大きい場合、ステップ104において、停車している車両が発進しようとしていることを示すために、トルク変化フラグがセットされる。
【0029】
よって、ステップ101の暫定検知の前提条件が成立している場合には、車両が発進しようとしていることが確認されるまで、ステップ101からステップ103までの処理が繰り返し実行され、最初に車両が発進しようとしていることが確認されると、ステップ104の処理に移行して、トルク変化フラグがセットされる。
図4の場合には、スロットルバルブ開度TVOの変化率が閾値αよりも大きくなった時刻t0において、トルク変化フラグがセットされる。
【0030】
ステップ102においてトルク変化フラグがセットされている場合、またはステップ104においてトルク変化フラグがセットされた場合には、ステップ105において、セカンダリ回転センサ48がパルス信号を出力しているか否かが確認される。
【0031】
副変速機構30の入力軸30aにトルクが入力されて、入力軸30aが回転するとセカンダリ回転センサ48がパルス信号を出力する。
インターロックが発生している場合には、入力軸30aは継続して回転できないものの、入力軸30aには、エンジン1から入力されるトルクに応じたねじれが作用する。そのため、少なくともギヤのガタ分だけは僅かに回転し、インターロックが発生している場合であっても、少なくとも一回のパルス信号が、セカンダリ回転センサ48から出力される。
よって、このパルス信号の出力の有無に基づいて、入力軸30aにトルクが入力されているか否かが確認される。
【0032】
セカンダリ回転センサ48からのパルス信号の出力があった場合、ステップ106において、インターロックが発生しているか否かの暫定判定を実行するために、タイマTをスタートする。図4の場合、セカンダリ回転センサ48からの最初のパルス信号の出力があった時刻t1において、タイマTがスタートされる。
インターロックが発生している場合には、副変速機構30の出力軸30bが回転できないため、この出力軸30bから第2ギヤ列5と終減速装置6とを介して駆動輪7に回転が伝達されない。かかる場合、駆動輪7に回転を伝達する車軸7aの回転を検出する車速センサ43からは、パルス信号が出力されない。
実施の形態では、セカンダリ回転センサ48からのパルス信号の出力があったのち、所定時間内に、車速センサ43からのパルス信号の出力がない場合には、インターロックが発生していると暫定的に判定する。
そのため、ステップ106では、インターロックが発生しているか否かを暫定的に判定するための所定時間をカウントするためにタイマTがスタートされる。
【0033】
タイマTがスタートされると、ステップ107において、所定時間のカウントを一時的に中断する条件(インターロックが発生しているか否かの判定を中断する条件:判定中断条件)が成立しているか否かを確認する。
実施の形態では、発進時に車両が後退する可能性のある坂道で車両が停車している場合には、インターロックが発生しているか否かの判定を、一時的に中断するようにしている。なお、判定中断条件と判定中断条件が成立している場合の処理は後で説明をし、ここでは判定中断条件が成立していない場合を先に説明する。
【0034】
ステップ107において判定中断条件が成立していない場合、または後記するステップ110においてタイマTが再スタートされた場合には、ステップ111において、車速センサ43からパルス信号が出力されているか否かを確認する。
【0035】
ステップ111においてパルス信号が出力されていない場合には、副変速機構30の入力軸30aに回転トルクが入力されているにも拘わらず副変速機構30の出力軸30bが回転していないことになる。
かかる場合には、ステップ113において、タイマTの値が、インターロックが発生していると判定するための閾値時間T1よりも大きいか否かを確認する。
【0036】
副変速機構30の入力軸30aに回転トルクが入力されているにも拘わらず副変速機構30の出力軸30bが回転していない場合には、インターロックのほかに、(a)車両が緩やかな坂道に停車していて、副変速機構30の入力軸30aに入力されるトルクと、出力軸30b側に作用する力とが釣り合っている場合や、(b)駆動輪7が縁石などに乗り上げてロックされている場合などがある。
【0037】
運転者が車両を発進させようとしてアクセルペダルを踏み込んでも車両が前進しない場合、運転者がさらにアクセルペダルを踏み込むことが予想され、アクセルペダルがさらに踏み込まれると、副変速機構30の入力軸30aに入力されるトルクが大きくなる。そうすると、前記した(a)、(b)の理由により副変速機構30の出力軸30bが回転していない場合には、やがて駆動輪7(出力軸30b)が回転し、車速センサ43からパルス信号が出力されることになる。
【0038】
よって、ステップ113では、副変速機構30の出力軸30bが回転していない理由が、インターロックによるものなのか、それとも前記した(a)、(b)の理由によるものなのかを区別するために、車速センサ43からパルス信号が出力されない時間(タイマTの値)が、インターロックが発生していると判定するための閾値時間T1よりも大きい(T>T1)か否かを確認している。なお、閾値時間T1は、実験結果などにより決定された値である。
【0039】
そのため、ステップ113においてタイマTの値が閾値時間T1より大きい場合には、ステップ114において、インターロックが生じたと暫定的に判定されたことを示す暫定検知フラグがセットされる。図4の場合には、タイマTの値が閾値時間T1よりも大きくなった時刻t2において、暫定検知フラグがセットされる。
【0040】
なお、ステップ113においてタイマTの値が閾値時間T1より短い間は、ステップ107、ステップ111、ステップ113の処理が繰り返し実行される。
そして、前記した(a)、(b)の理由により副変速機構30の出力軸30bが回転していなかった場合には、タイマTの値が閾値時間T1を超える前に、駆動輪7(車軸7a)が回転していることを示すパルス信号が車速センサ43から出力されることになる(ステップ111)。かかる場合には、ステップ112の処理に移行して、暫定検知フラグがリセット(ゼロクリア)される。
【0041】
ステップ114において暫定検知フラグがセットされると、インターロックが発生していると暫定的に判定されたことになる。かかる場合、ステップ115において、トルクダウン制御が実行されて、変速機コントローラ12からエンジンコントローラ13に出力されるエンジントルク規制値が、現在よりも低い値に変更される。
【0042】
車両の停車中にインターロックが発生し、運転者が車両を発進させようとしてアクセルペダルを踏み込んでも車両は前進しない場合、運転者がさらにアクセルペダルを踏み込むことが予想され、その場合には、エンジンの出力トルクがより大きくなる。
【0043】
この状態で、インターロックが不意に解消されると、トルクが急に駆動輪7に伝達されて、駆動力が唐突に復帰する場合がある。実施の形態では、かかる自体が生じた場合における唐突な駆動力の復帰を防止するために、インターロックが暫定的に判定されると、トルクダウン制御によりエンジントルク規制値を下げることで、インターロックが不意に解消されても、大きなトルクが急激に伝達されて、駆動力が唐突に復帰しないようにしている。
図4の場合には、タイマTの値が閾値時間T1よりも大きくなった(時刻t2)のち、時刻t3からトルクダウン制御が実行されて、エンジントルク規制値がより小さい値に低下させられている。
【0044】
インターロックが発生していると暫定的に判定されてトルクダウン制御が実行されると(ステップ114、ステップ115)、副変速機構30にインターロックによる異常が発生しているか否かを最終的に判定する処理(異常確定処理)が実行される。
【0045】
この異常確定処理では、図3に示すように、ステップ116において、異常確定の前提条件が成立しているか否かが確認される。
具体的には、セカンダリプーリ22の回転数が、所定回転数以下である場合に、成立していると判定される。
インターロックが発生していると暫定的に判定した後にインターロックが解消された場合や、車速センサ43が故障してパルス信号が出力されなかったためにインターロックであると誤って判定されていた場合を除外するためである。
【0046】
インターロックでない場合には、車両を発進させようとしてアクセルペダルを踏み込むと、セカンダリプーリ22の回転数がアクセルペダルの踏み込み量に応じて大きくなる。
これに対して、インターロックの場合、セカンダリプーリ22は継続して回転できないので、セカンダリ回転数は所定回転数以下となる。
【0047】
よって、インターロックが発生していると暫定的に判定されても、セカンダリプーリ22の回転数が所定回転数以下でない場合には、インターロックが解消された、または車速センサ43が故障しているために誤ってインターロックであると判定されたことになるため、ステップ120の処理に移行して、暫定検知フラグがリセット(ゼロクリア)される。
【0048】
ステップ116において、セカンダリプーリ22の回転数が所定回転数よりも小さくて、異常確定の前提条件が成立している場合、ステップ117において、スロットルバルブ開度TVOが、閾値βよりも大きいか否かが確認される。
運転者が、車両を発進させようとして、アクセルペダルを操作しているのかを確認するためである。
【0049】
車両を発進させようとした際にインターロックが発生していると、車両は発進できないので、運転者はアクセルペダルを踏み続ける、または強く踏み込むことになる。かかる場合には、スロットルバルブ開度TVOが所定の開度以上に保持される。
一方、アクセルペダルが一時的に踏み込まれた場合のように、運転者に車両を発進させようとする意図がない場合には、スロットルバルブ開度TVOの上昇は一時的なものであり、スロットルバルブ開度TVOはすぐに低下してしまう。
そこで、運転者に発進意図があるか否かを区別するための閾値開度βを、実験などにより求めて、ステップ117において、スロットルバルブ開度TVOが閾値βよりも大きいか否かに基づいて、車両を発進させようとしてアクセルペダルを操作しているのか、すなわち車両が発進しようとしているか否かを最終的に判定している。
【0050】
スロットルバルブ開度TVOが閾値βよりも大きい場合には、車両が発進しようとしていることになる。よって、ステップ118において、インターロックが発生しているか否かを最終的に判断するための閾値時間T2をカウントするために、タイマTをスタートさせる。
図4の場合には、インターロックが暫定検知されてトルクダウン制御が開始された時刻t3において、タイマTがリスタートされる。
【0051】
タイマTがリスタートされると、ステップ119において、車速センサ43からパルス信号が出力されているか否かを確認する。
【0052】
ステップ119においてパルス信号が出力されていない場合には、副変速機構30の入力軸30aに回転トルクが入力されているにも拘わらず、引き続き、副変速機構30の出力軸30bが回転していないことになる。
かかる場合には、ステップ120において、タイマTの値が、インターロックが発生していると確定判定するための閾値時間T2よりも大きいか否かを確認する。
【0053】
ステップ120においてタイマTの値が閾値時間T2より短い場合、ステップ119の処理にリターンする。これによりタイマTの値が閾値時間T2よりも短い間は、ステップ119、ステップ120の処理が繰り返し実行される。
【0054】
車速センサ43からパルス信号が出力されていない状態が続くと、タイマTの値が閾値時間T2よりも大きく(長く)なる。かかる場合には、インターロックの発生が確定したことになる。
そのため、車両が発進できない状態を回避するために、ステップ121において、リンプホーム移行制御が実行される。なお、インターロック確定フラグを設けて、この際にフラグをセットするようにしても良い。
【0055】
実施の形態では、車両の発進時にインターロックが発生したか否かを確認しているため、かかる場合にインターロックが発生すると、Highクラッチ33が締結状態のままで変わらなくなっていることになる。よって、リンプホーム移行制御では、変速機コントローラ12からLowブレーキ32を開放状態にする指令が油圧制御回路11に出力されて、Lowブレーキ32が開放状態にされて、車両は2速での走行が可能な状態になる。
図4の場合には、タイマTの値が閾値時間T2よりも大きくなった(時刻t4)のち、時刻t4においてリンプホーム移行制御が実行されて、Lowブレーキ32が開放状態にされている。
【0056】
そして、ステップ121のリンプホーム移行制御が実行されると、ステップ122において、暫定検知フラグがリセット(ゼロクリア)されることになる。
なお、タイマTの値が閾値時間T2よりも大きくなる前に、ステップ119において、車速センサ43からパルス信号が出力されていることが確認された場合には、インターロックが発生していない、またはインターロックが解消されたことになる。この場合にも、ステップ122の処理に移行して、暫定検知フラグがリセットされることになる。
【0057】
このように、インターロックの発生が暫定的に検知されると、トルクダウン制御が実行されて、インターロックが不意に解消された場合に駆動力が唐突に復帰することを防止する。続いて、インターロックが本当に発生しているのかを判定する処理(異常確定処理)が実行されて、インターロックの発生が確定されると、リンプホーム移行制御が実行されて、車両が走行を続けることが可能な変速段が選択される。
【0058】
ここで、説明を省略した車両が所定の傾斜角度以上の勾配路(坂道)で停車している場合の処理を、図2および図5を参照して説明する。
図5は、車両が所定の傾斜角度以上の勾配路(坂道)で停車している場合の処理を説明するタイムチャートである。
【0059】
車両が坂道で停車している場合、アクセルペダルが踏み込まれた時点では、セカンダリプーリ22の回転数は、車両が走行中であるか否かを区別するための所定回転数以下であるので、ステップ101の暫定検知の前提条件が成立している。そして、アクセルペダルが踏み込まれた直後は、トルク変化フラグはセットされていないので、ステップ102の処理を経て、ステップ103の処理に移行する。
アクセルペダルが踏み込まれると、これ連動してスロットルバルブ開度TVOの変化率が大きくなり、この変化率は、車両を発進させようとする意図を判別するための閾値αよりも大きくなる。よって、ステップ104において、トルク変化フラグがセットされる。
図5の場合には、時刻t0においてトルク変化フラグがセットされる。
【0060】
そして、セカンダリ回転センサ48がパルス信号を出力すると(ステップ105)、タイマTがスタートされ(ステップ106)、ステップ107において判定中断条件が成立しているか否かが確認される。
図5の場合には、セカンダリ回転センサ48からの最初のパルス信号の出力があった時刻t1において、タイマTがスタートされる。
【0061】
ステップ107では、Gセンサ47の出力信号に基づき特定される坂道の傾斜が、発進時に車両が前進または後進してしまう傾斜角を規定する閾値Th1よりも大きく、かつブレーキがON状態からOFF状態になった場合に、判定中断条件が成立していると判定される。そして、ステップ108の処理に移行して、タイマTを停止させて、タイマTによるカウントを中断する。
【0062】
実施の形態では、セカンダリプーリ22の回転が検出されたのち、駆動輪7(車軸7a)の回転が検出されると、インターロックが発生していないと判定する。しかし、坂道で停車していた車両が発進しようとした場合には、インターロックが発生していたとしても、坂道の傾斜により例えばギヤの遊びの分だけ車両が後退する可能性がある。かかる場合には、車両が僅かに後退した際に、車速センサ43からパルス信号が出力されて、インターロックが発生していないと判定されてしまうおそれがある。
【0063】
そこで、坂道に起因して車両が移動した場合のパルス信号の検出を防止するために、ステップ108〜ステップ110の処理において、タイマTを所定時間の間停止させて、車両が坂道で停車している場合には、タイマTを停止させている期間内に車速センサ43からパルス信号が検出されても、この際のパルス信号の出力をもって、インターロックが発生していないと判定されないようにしている。
【0064】
図5の場合には、ブレーキがオフ状態にされて判定中断条件が成立した時刻taから時刻tbまでの所定時間の間、タイマTによるカウントの中断が継続される。
よって、この所定時間の間に、車速センサ43からパルス信号が検出されていても、タイマTがリスタートされるまでは、後段のステップ111の処理が実行されないので、インターロックが発生していないと判定されることがない。
【0065】
ステップ109において、所定のタイマ経過期間が経過したことが確認されると、ステップ110においてタイマTが再スタートされたのち、前記したステップ111以降の処理が実行される。なお、ステップ111以降の処理は既に説明をしたので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0066】
ちなみに、図5の場合には、時刻tbにおいてタイマTが再スタートされたのち、時刻t2aまでの間に車速センサ43からのパルス信号の出力が確認されないと、暫定検知フラグがセット(ステップ114)され、時刻t3aからトルクダウン制御(ステップ115)が開始される。一方、時刻t2aまでの間に車速センサ43からのパルス信号の出力が確認されると、暫定検知フラグがリセットされる(ステップ112)ことになる。
【0067】
ここで、実施の形態におけるセカンダリ回転センサ48が、発明における第1回転センサに相当し、車速センサ43が、発明における第2回転センサに相当し、プライマリ回転センサ42が、発明における第3回転センサに相当し、実施の形態における副変速機構30が、発明における変速機構に相当する。
【0068】
また、実施の形態におけるステップ103が、入力トルク変化判断手段に相当し、ステップ101、ステップ105、ステップ106、ステップ111からステップ114が、インターロック判定手段に相当する。
さらに、ステップ107が、勾配検知手段およびブレーキ解除検知手段に相当し、ステップ108からステップ110が、判定停止手段に相当する。
ステップ115がトルクダウン制御手段に相当し、ステップ117からステップ121の処理がリンプホーム移行制御手段に相当する。
【0069】
以上の通り、実施の形態では、副変速機構30が有する複数の締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)の締結状態または解放状態を切り換えることで、副変速機構30の複数の変速段を切換可能な自動変速機であって、副変速機構30の入力回転(入力軸30aの回転)を検出し、パルス信号を出力するセカンダリ回転センサ48と、副変速機構30の出力回転(車軸7aの回転)を検出し、パルス信号を出力する車速センサ43と、副変速機構30に入力される入力トルクの変化の有無を判断する入力トルク変化判断手段と、副変速機構30にインターロックが発生したか否かを判定するインターロック判定手段と、を備え、インターロック判定手段は、車両の停車中に、入力トルクが変化し、かつセカンダリ回転センサ48からパルス信号が出力されたにもかかわらず、車速センサ43からパルス信号が出力されないとき、副変速機構30にインターロックが発生したと判定する構成とした。
【0070】
停車している車両が発進しようとして副変速機構30に入力されるトルク(入力トルク)が変化すると、副変速機構30の入力軸30aにはねじれが生じてセカンダリ回転センサ48からパルス信号が出力される。この際、副変速機構30にインターロックが発生していると、入力トルクは、副変速機構30の出力軸30bから後段には伝達されないので、駆動輪7(車軸7a)の回転を検出する車速センサ43からは、パルス信号が出力されない。
よって、副変速機構30に入力される入力トルクが変化したときに、セカンダリ回転センサ48と車速センサ43からのパルス信号の出力の有無に基づいて、車両が停車しているときにインターロックが発生したか否かを判定できる。
また、車速センサ43から出力されるパルス信号に基づいて副変速機構30のインターロックの有無を判定しているため、駆動輪7が縁石に乗り上げたときや、車両が勾配路(坂道)に停車しているときに生じるタイヤロック(駆動輪7のロック)を、インターロックであると誤判定することがない。よって、車両が停車中に発生したインターロックを精度よく判定することができる。
【0071】
特に、インターロック判定手段は、車両の停止中であって、かつ、副変速機構30の入力回転(入力軸30aの回転)が所定回転数以下のときに、入力トルクが変化し、かつセカンダリ回転センサ48からパルス信号が出力されたにもかかわらず、車速センサ43からパルス信号が出力されないとき、副変速機構30にインターロックが発生したと判定する構成とした。
【0072】
これにより、副変速機構30の入力回転が所定回転数以下のときにインターロックが発生しているか否かの判定を行うので、副変速機構30の摩擦締結要素32、33、34が締結されない故障(解放故障)や、車速センサ43に異常が生じて車速センサ43からパルス信号が出力されない場合を、インターロックであると誤って判定することを防止できる。よって、副変速機構30におけるインターロックをより精度良く判定できる。
【0073】
溝幅を変更可能なプライマリプーリ21とセカンダリプーリ22の間にVベルト23を掛け渡して構成されたベルト式無段変速機構(バリエータ20)と、プライマリプーリ21の回転を検出するプライマリ回転センサ42と、をさらに備え、副変速機構30は、バリエータ20の出力側に直列に設けられ、プライマリ回転センサ48は、セカンダリプーリ22の回転数(副変速機構30の入力軸30aの回転数)を検出する構成とした。
【0074】
このように構成すると、入力トルクが変化したときに、プライマリ回転センサ42からのパルス信号と、車速センサ43からのパルス信号とに基づいて、インターロックが発生したか否かを判定する構成にすると、プライマリ回転センサ42からパルス信号が出力されているにもかかわらず車速センサ43からパルス信号が出力されない場合に、副変速機構30のインターロックによって、副変速機構30の出力側にトルクが伝達されていないのか、それとも無段変速機構(バリエータ20)のVベルト23が滑っていることによって出力側にトルクが伝達されていないのか、を区別することができないので、副変速機構30におけるインターロックの発生を精度良く判定することができない。
セカンダリ回転センサ48からのパルス信号と車速センサ43からのパルス信号とに基づいてインターロックが発生したか否かを判定する構成にすることにより、無段変速機構のVベルト23が滑っている場合を、インターロックであると過って判定することを防止できる。よって、副変速機構30におけるインターロックの発生をより精度よく判定できる。
【0075】
車両が所定の傾斜角度以上の勾配路に停車していることを検知する勾配路検知手段と、
車両のブレーキが解除されたことを検知するブレーキ解除検知手段と、車両が所定の傾斜角度以上の勾配路に停車していることが検知され、かつブレーキ解除検知手段により車両のブレーキが解除されたことが検知されたときは、インターロック判定手段によるインターロックの判定を所定時間の間停止する判定停止手段と、を備える構成とした。
【0076】
車両が勾配路で停車中にブレーキが解除されると、仮に副変速機構30がインターロックしていたとしても、車両の回転系のガタ分だけ出力軸(車軸7a)が後退方向に回転して車速センサ43がパルスを出力する可能性がある。
上記のように、車両が勾配路で停車中にブレーキが解除されたことを検知してから所定時間の間はインターロックが発生したか否かの判定を停止することによって、車両が勾配路で後退したために車速センサ43からパルス信号が出力された場合を、インターロックが発生していないと誤判定することを防止できる。よって、副変速機構30におけるインターロックの発生をより精度よく判定できる。
【0077】
副変速機構30にインターロックが発生したと判定されると、車両の原動機(エンジン1)の駆動力(出力トルク)の上限を規制するトルクダウン制御を行うトルクダウン制御手段をさらに備える構成とした。
【0078】
このように構成すると、インターロックの暫定検知時(インターロック判定手段によりインターロックが発生したと判定されたとき)にトルクダウン制御を行うことにより、アクセルON状態でインターロックから正常復帰した場合に、大きいトルクが急に伝達されることで、駆動力が唐突に復帰することを防止できる。
【0079】
副変速機構30にインターロックが発生したと判定されたのち、入力トルクが所定値以下に低減されておらず、かつ、車速センサ43からのパルス信号の出力がさらに所定時間以上ない場合、車両の走行を確保するリンプホーム移行制御を実行するリンプホーム移行制御手段、をさらに備える構成とした。
【0080】
このように構成すると、インターロックの発生が暫定的に検知されたのち(インターロック判定手段によりインターロックが発生したと判定されたのち)に、入力トルクが所定値以下に低減されておらず、かつ、所定時間の間、車速センサ43からパルス信号が出力されないときに、副変速機構30にインターロックが発生していることが確実であると判断して、リンプホーム移行制御を実行して、車両が走行可能な変速段に変更することで、車両の走行を確保できる。
【0081】
実施の形態では、「複数の締結要素」が、副変速機構30の摩擦締結要素である場合を例示したが、これに限定されるものではなく、例えばシンクロ機構であっても良い。
【0082】
実施の形態では、「複数の変速段」が、副変速機構30の低速段と高速段とを切り換え可能なものを例示したが、これに限定されるものではなく、例えば3速以上の前進変速段を切り換え可能な変速機構や、前後進切換機構の前進段と後進段とを切換可能な変速機構などのように、変速段を切換可能な変速機構であれば、種々の変速機構に適用可能である。
【0083】
実施の形態では、「変速機構」が、無段変速機構の出力側に直列に設けられた副変速機構である場合を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば無段変速機構を備えていない有段変速機であっても良い。
【0084】
実施の形態では、「入力トルク変化判断手段」が、スロットル開度の変化率が所定値αよりも大きいときに、副変速機構30の入力軸30aに入力される入力トルクが変化したことを判断する構成を例示した。本発明は、これに限定されるものではなく、入力軸30aに入力される入力トルクが変化したこと検知できるものであれば、適宜採用可能である。例えばCAN通信により送信されるエンジントルクに基づいて判断する構成とすることや、そのほか、アクセル開度、エンジン回転数、そして自動変速機に設けられたトルクコンバータのスリップ量の変化率などに基づいて判断するようにしても良い。
【0085】
実施の形態では、スロットル開度の変化率が所定値よりも大きいとき、すなわち、入力トルクが増加したときに入力軸への入力トルクが変化したと判断する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、入力トルクが減少方向に変化したときに、入力軸への入力トルクが変化したと判断するようにしても良い。
【0086】
実施の形態では、セカンダリ回転センサ48(第1回転センサ)と車速センサ43(第2回転センサ)とから出力されるパルス信号に基づいてインターロックが発生しているか否かを判定する場合を例示した。本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、プライマリ回転センサ42(第3回転センサ)と車速センサ43(第2回転センサ)とから出力されるパルス信号に基づいてインターロックが発生しているか否かを判定するようにしても良い。かかる場合にも、前記した実施の形態とほぼ同じ作用・効果が奏されることになる。
【0087】
さらに、セカンダリ回転センサ48(第1回転センサ)と車速センサ43(第2回転センサ)とから出力されるパルス信号に基づいてインターロックが発生しているか否かを判定するものと、プライマリ回転センサ42(第3回転センサ)と車速センサ43(第2回転センサ)とから出力されるパルス信号に基づいてインターロックが発生しているか否かを判定するものとを組み合わせて、インターロックの発生の判定を、2重系にて行うようにしても良い。
【0088】
実施の形態では、Gセンサ47を用いて車両の傾きを検知することで、車両が登坂路に停車しているか否かを確認する場合を例示した。本発明は、車両が登坂路に停車していることを検知できるのであれば、これに限定されるものではない。例えば、車載のナビゲーションシステムの情報と車両の位置情報とに基づいて、車両が所定の傾斜角度以上の登坂路に停車しているか否かを確認するようにしても良い。
【0089】
実施の形態では、「原動機」がエンジン1である場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばモータや、エンジンとモータの両方からトルクが入力される構成のものであっても良い。
【0090】
実施の形態では、「トルクダウン制御」において、エンジントルク規制値を設定し、このエンジントルク規制値よりも大きいエンジントルクが出力されないようにエンジン1を制御する場合を例示した。本発明は、これに限定されるものではなく、例えばアクセル開度に応じてエンジンのトルクを所定量減少させることで、エンジントルクの上限値を規制するものなど、原動機の駆動力の上限値を規制できるものであれば、適宜採用可能である。
【0091】
実施の形態では、インターロックが発生していると確定されると、Highクラッチ33が故障していると判断できるため、「リンプホーム移行制御」として、Lowブレーキ32を開放して、副変速機構30を高速段選択にする制御である場合を例示した。本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、変速機構のインターロックが解消するように変速機構を制御して、車両の走行を確保する制御としても良い。
【符号の説明】
【0092】
1 エンジン
2 トルクコンバータ
3 第1ギヤ列
4 変速機
5 第2ギヤ列
6 終減速装置
7 駆動輪
7a 車軸
8 パーキング機構
9 セレクトレバー
10 ブレーキペダル
11 油圧制御回路
12 変速機コントローラ
13 エンジンコントローラ
20 バリエータ
21 プライマリプーリ
22 セカンダリプーリ
23 Vベルト
24a、24b 油圧シリンダ
30 副変速機構
30a 入力軸
30b 出力軸
31 ラビニョウ型遊星歯車機構
32 Lowブレーキ
33 Highクラッチ
34 Revブレーキ
41 スロットルバルブ開度センサ
42 プライマリ回転センサ
43 車速センサ
44 エンジン回転センサ
45 インヒビタスイッチ
46 ブレーキセンサ
47 Gセンサ
48 プライマリ回転センサ
48 セカンダリ回転センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機構が有する複数の締結要素の締結状態または解放状態を切り換えることで、前記変速機構の複数の変速段を切換可能な自動変速機であって、
前記変速機構の入力回転を検出し、パルス信号を出力する第1回転センサと、
前記変速機構の出力回転を検出し、パルス信号を出力する第2回転センサと、
前記変速機構に入力される入力トルクの変化の有無を判断する入力トルク変化判断手段と、
前記変速機構にインターロックが発生したか否かを判定するインターロック判定手段と、を備え、
前記インターロック判定手段は、車両の停車中に、前記入力トルクが変化し、かつ前記第1回転センサからパルス信号が出力されたにもかかわらず、前記第2回転センサからパルス信号が出力されないとき、前記変速機構にインターロックが発生したと判定することを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
前記インターロック判定手段は、車両の停車中であって、かつ前記入力回転が所定回転数以下のときに、前記入力トルクが変化しかつ前記第1回転センサからパルス信号が出力されたにもかかわらず、前記第2回転センサからパルス信号が出力されないとき、前記変速機構にインターロックが発生したと判定することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【請求項3】
溝幅を変更可能なプライマリプーリとセカンダリプーリの間にベルトを掛け渡して構成された無段変速機構と、
前記プライマリプーリの回転を検出する第3回転センサと、をさらに備え、
前記変速機構は、前記無段変速機構の出力側に直列に設けられ、
前記第1回転センサは、前記セカンダリプーリの回転を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動変速機。
【請求項4】
車両が所定の傾斜角度以上の勾配路に停車していることを検知する勾配路検知手段と、
車両のブレーキが解除されたことを検知するブレーキ解除検知手段と、
前記車両が所定の傾斜角度以上の勾配路に停車していることが検知され、かつ前記ブレーキ解除検知手段により車両のブレーキが解除されたことが検知されたときは、前記インターロック判定手段による前記インターロックの判定を所定時間停止する判定停止手段と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の自動変速機。
【請求項5】
前記変速機構にインターロックが発生したと判定されると、前記車両の原動機の駆動力の上限を規制するトルクダウン制御を行うトルクダウン制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の自動変速機。
【請求項6】
前記変速機構にインターロックが発生したと判定されたのち、前記入力トルクが所定値以下に低減されておらず、かつ、前記第2回転センサからのパルス信号の出力がさらに所定時間ない場合、前記車両の走行を確保するリンプホーム移行制御を実行するリンプホーム移行制御手段、をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−256896(P2011−256896A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129773(P2010−129773)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】