説明

自動変速装置

【課題】車両の振動などによるマニュアルバルブの弁体の変位量を小さくする。
【解決手段】マニュアルバルブ23の弁体24に若干のクリアランスをもって連結された作動部材40における弁体24の軸方向の位置を作動部材40の軸部44,軸部44の移動を略平行に伝達する平行移動部材50,平行移動部材50の移動を回転移動に変換してケース22の外部に伝達する変換伝達部材60により構成された位置伝達機構30によりケース22の外部に伝達してポジションセンサ70により検出し、ポジションセンサ70により検出された作動部材40の位置がシフトポジションに応じて予め定められた位置に一致するようステッピングモータ28を駆動制御する。これにより、その後に車両の振動などにより弁体24が軸方向に変位しても、マニュアルバルブ23の弁体24の位置を検出する場合に比して、その変位量を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動変速装置としては、シフトレバーの位置に基づいた電気的信号によってコントロールユニットによりアクチュエータを駆動して自動変速機の油圧回路を切り替えるマニュアル弁を動作させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、マニュアル弁の位置決めについては、マニュアル弁の位置を検出するマニュアル弁位置センサに基づいて行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−169877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マニュアル弁の弁体を軸方向に移動させるためには、アクチュエータとしての電動機のロータの回転移動を軸方向に移動する移動軸の移動に変換し、部品の製造誤差や組み付け性を考慮して移動軸にマニュアル弁の弁体を若干のクリアランスをもって連結するのが一般的である。このとき、マニュアル弁位置センサとして弁体の位置を検出するものを用いてアクチュエータを制御すると、予め定められたシフト位置にマニュアル弁の弁体が位置決めされるが、その際に実際に固定されるのはアクチュエータ及び移動軸であるため、その後の車両の振動などにより移動軸との若干のクリアランスにより弁体が軸方向に変位する場合が生じる。このときの弁体の変位範囲は、移動軸との連結のクリアランスと移動軸と電動機のロータに連結された回転軸とのガタとの和となり、マニュアル弁による油路の形成に対してその分のマージンを取る必要が生じる。マージンを大きくすると、シフト位置の変更に必要となる弁体の移動量が増加し、運転者によるシフト位置の変更に対して油路の切り替えに時間を要し、運転者の運転フィーリング(ドライバビリティ)を低下させてしまう。
【0005】
本発明の自動変速装置は、車両の振動などによるマニュアルバルブの弁体の変位範囲を小さくすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動変速装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動変速装置は、
軸方向に移動する弁体を少なくとも前進用ポジション,ニュートラルポジション,後進用ポジションを含む複数のシフトポジションに対応する位置に移動させることにより油圧回路における油路を切り替えるマニュアルバルブと、前記マニュアルバルブの弁体を軸方向に移動させるアクチュエータと、を備える車載用の自動変速装置において、
前記マニュアルバルブの弁体と前記アクチュエータとの連結に介在し、前記弁体にクリアランスをもって機械的に連結された作動部材と、
前記アクチュエータの駆動に伴って移動する前記作動部材の移動範囲における位置を検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置により検出される前記作動部材の位置が予め定められたシフト位置に対応する位置に一致するよう前記アクチュエータを駆動制御する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の自動変速装置では、アクチュエータに連結した作動部材をマニュアルバルブの弁体にクリアランスをもって機械的に連結する。そして、アクチュエータの駆動に伴って移動する作動部材の移動範囲における位置を位置検出装置により検出し、この作動部材の位置が予め定められたシフト位置に対応する位置に一致するようアクチュエータを駆動制御する。その際、作動部材はシフト位置に対応する位置に固定されるため、クリアランスをもって連結された弁体の位置がシフト位置に対応する位置として取り得る範囲(変位量)は、その後の車両の振動等により弁体が変位しても作動部材との連結によるクリアランスの値と同等となる。一方、弁体の位置を検出するものは、弁体をアクチュエータにて押す場合と引く場合とで固定される作動部材の位置がクリアランスの分だけ変位するため、その後の車両の振動等による弁体の変位量は作動部材との連結によるクリアランスの倍の値となる。したがって、作動部材の位置を検出することにより、弁体の位置を検出するものに比して、弁体の変位量を小さくすることができる。
【0009】
こうした本発明の自動変速装置において、前記マニュアルバルブと前記アクチュエータは単一のケースに収納されており、前記位置検出装置は、前記作動部材の位置を前記ケースの外部に伝達位置として伝達する位置伝達機構と、前記ケースの外部に配置されて前記位置伝達機構により伝達された伝達位置を検出する検出部と、を有する、ものとすることもできる。こうすれば、位置検出装置の検出部をケースの外部に配置するから、位置検出装置の検出部に対して防油を施す必要がない。また、ケースの内部の方が外部より温度が高くなるから、位置検出装置の検出部をケースの内部に配置する場合に比して、位置検出装置の検出部の耐熱性を低くすることができる。この結果、位置検出装置の検出部に用いるIC(集積回路)の耐熱を低くすることができ、用いるICの選択肢を多くすることができる。この場合、前記位置伝達機構は、前記作動部材の前記弁体の軸方向の移動に伴って該作動部材の移動方向と略平行に移動する平行移動部材と、前記平行移動部材に接続されて該平行移動部材の移動を前記ケースを貫通する貫通回転軸の回転移動に変換して該貫通回転軸の基準角度位置に対する回転角度位置を前記伝達位置として前記ケースの外部に伝達する変換伝達部材と、により構成されてなり、前記検出部は、前記貫通回転軸の回転角度位置を検出するセンサである、ものとすることもできる。作動部材の軸方向の移動を回転移動として検出することができる。
【0010】
また、本発明の自動変速装置において、前記作動部材は、前記アクチュエータにより位置決め固定されるされる、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例としての自動変速装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】マニュアルバルブ23やステッピングモータ28等の配置を示す説明図である。
【図3】マニュアルバルブ23,ステッピングモータ28,位置伝達機構60,ポジションセンサ70等の接続関係を示す分解斜視図である。
【図4】実施例の作動部材40の位置を検出する場合と比較例としての弁体24の位置を検出する場合の弁体24の変位量を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての自動変速装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車10は、図1に示すように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16と、エンジン12のクランクシャフトに図示しない流体伝動装置を介して接続されると共に出力側にギヤ機構やデファレンシャルギヤを介して駆動輪11a,11bが接続された自動変速機21と、自動変速機21の図示しない油圧回路を制御することによって流体伝動装置や自動変速機21を制御する変速機用電子制御ユニット(以下、変速機ECUという)80と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)17と、を備える。エンジンECU16にはエンジン12の運転状態を検出する各種センサからの信号やアクセルペダル93の踏み込み量としてのアクセル開度Accを検出するアクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,車速センサ98からの車速Vなどの信号が入力ポートを介して入力されており、エンジンECU16からは、スロットルバルブを駆動するスロットルモータへの駆動信号や燃料噴射弁への制御信号,点火プラグへの点火信号などが出力ポートを介して出力されている。変速機ECU80には、シフトレバー91の位置を検出するシフトポジションセンサ92からのシフトポジションSP,アクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,車速センサ98からの車速V,マニュアルバルブ23の弁体24とステッピングモータ28とに取り付けられた作動部材40の位置を検出するポジションセンサ70からの作動部材位置MPなどが入力ポートを介して入力されており、変速機ECU80からは、ステッピングモータ28への駆動信号や図示しない油圧回路への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。ここで、実施例の自動変速装置20としては、主に、図示しない流体伝動装置,自動変速機30,図示しない油圧回路,変速機ECU80が該当する。
【0014】
図2はマニュアルバルブ23やステッピングモータ28等の配置を示す説明図であり、図3はマニュアルバルブ23,ステッピングモータ28,位置伝達機構60,ポジションセンサ70等の接続関係を示す分解斜視図である。図3の一点鎖線は、各部材の接続を明示するための補助線である。
【0015】
マニュアルバルブ23は、図示しない流体伝動装置や自動変速機21,図示しない油圧回路と共にこれらを収納するケース22内のケース22の天板近傍に配置され、軸方向に移動する弁体24を前進用ポジション,ニュートラルポジション,後進用ポジション等のシフトポジションに対応する位置に移動させることにより図示しない油圧回路における油路を切り替える。
【0016】
ステッピングモータ28は、マニュアルバルブ23のアクチュエータとして周知のステッピングモータとして構成されており、マニュアルバルブ23と同様にケース22内のケース22の天板近傍に配置されている。また、ステッピングモータ28は、そのロータの回転量に対して軸方向の移動量に変換して移動軸29に連結するギヤ機構を内蔵している。ステッピングモータ28の出力軸である移動軸29には、作動部材40を介してマニュアルバルブ23の弁体24が接続されていると共に作動部材40を構成に含む位置伝達機構30を介してケース22の外部に取り付けられたポジションセンサ70が接続されている。
【0017】
位置伝達機構30は、弁体24およびステッピングモータ28に接続された作動部材40と、作動部材40に接続されて作動部材40における弁体24の軸方向の移動に伴って弁体24の軸方向に略平行に移動する平行移動部材50と、平行移動部材50の平行移動を回転軸の回転移動に変換する変換伝達部材60と、により構成される。
【0018】
作動部材40は、例えばステンレスや鋼などにより形成されており、ステッピングモータ28の回転量に対して軸方向の移動量を得る移動軸29に取り付けられている。作動部材40には、弁体24の端部に形成された貫通孔26に若干のクリアランスをもって嵌挿された図示しない嵌挿部42が形成されていると共に鉛直方向に延出する軸部44が形成されている。軸部44の端部には取付部46が形成されている。
【0019】
平行移動部材50は、例えばステンレスや鋼などにより板状に形成されて、作動部材40の軸部44に対して垂直に配置されている。平行移動部材50の一端には作動部材40の取付部46を回転自在に嵌挿して取り付けるための貫通孔52が形成されており、他端には変換伝達部材60を取り付けるための貫通孔54が形成されている。したがって、平行移動部材50は、作動部材40が弁体24と共に弁体24の軸方向に移動すると、この移動に対して略平行に移動する。
【0020】
変換伝達部材60は、例えばステンレスや鋼などにより、平行移動部材50と平行に配置された台座部62と台座部62から平行移動部材50に垂直(作動部材40の軸部44に平行)に立ち上がってケース22を貫通する貫通軸部66とからなるよう形成されている。台座部62には、クランク状に突出した突出部63が形成されており、突出部63には貫通軸部66に平行に且つ平行移動部材50の貫通孔54に回転自在に嵌挿する回転連結部64が形成されている。貫通軸部66には、ケース22に形成された図示しない貫通孔に嵌挿したときに回転可能に軸方向の位置を保持するために段差部をもって台座部62側より直径が小さく形成された位置保持部67と、この位置保持部67より更に直径が小さく且つ軸方向に対向する平行面を有するように形成されてポジションセンサ70が取り付けられるセンサ取付部68と、が形成されている。変換伝達部材60は、平行移動部材50が移動すると、この移動に伴って回転連結部64が貫通軸部66を軸として回転移動することにより、平行移動部材50の移動を貫通軸部66の回転移動に変換する。
【0021】
ポジションセンサ70は、中央の回転部72の回転位置を検出する周知のIC(集積回路)内蔵の回転位置ポジションセンサとして構成されており、ケース22の天板の上面に配置された収納ケース82に変速機ECU80と共に収納されている。ポジションセンサ70は、回転部72の中心に形成された矩形形状の貫通孔に変換伝達部材60の貫通軸部68の端部に形成されたセンサ取付部68を嵌挿するようにして取り付けられている。ポジションセンサ70は、予め定められた基準角度位置から貫通軸部68の回転角度位置を検出し、その検出信号を変速機ECU80に接続された図示しない信号ラインに出力している。
【0022】
次に、こうして構成された実施例の自動変速装置20における弁体24を移動させる際の動作について説明する。運転者がシフトレバー91を操作すると、シフトレバー91の位置がシフトポジションセンサ92によって検出されてシフトポジションSPとして変速機ECU80に入力される。変速機ECU80は、このシフトポジションSPに応じて予め定められた作動部材40の位置にポジションセンサ70からの作動部材位置MPが一致するようステッピングモータ28を駆動制御する。ステッピングモータ28の駆動は、移動軸29が弁体24の軸方向(図2中、作動部材40の下方の矢印方向)に移動するから、この移動と共に作動部材40および弁体24も軸方向に移動する。作動部材40が軸方向に移動すると、その移動が軸部44および取付部46を介して平行移動部材50に伝達され、平行移動部材50が弁体24の軸方向に略平行した方向(図2中、平行移動部材50の上方の矢印方向)に移動する。この平行移動部材50の移動に伴って貫通孔54に回転自在に嵌挿された回転連結部64を介して変換伝達部材60の突出部63が貫通軸部66を軸として回転移動し、貫通軸部66を回転させる(図2中、変換伝達部材60の左側の矢印方向)。この貫通軸部66の回転移動はセンサ取付部68を介してポジションセンサ70の回転部72に伝達され、ポジションセンサ70により検出される。そして、ポジションセンサ70により検出された回転部72の回転位置は作動部材位置MPとして図示しない信号ラインにより変速機ECU80に入力される。
【0023】
次に、シフトポジションSPに応じて予め定められた作動部材40の位置にポジションセンサ70からの作動部材位置MPが一致するようステッピングモータ28を駆動制御した後に車両の振動等により弁体24が変位したときの取り得る範囲(以下、変位量)について考える。図4は、実施例の作動部材40の位置を検出する場合の弁体24の変位量と比較例としての弁体24の位置を検出する場合の弁体24の変位量とを模式的に示す説明図である。実施例では、シフトポジションSPに応じた作動部材40の位置は、弁体24が作動部材とのクリアランスの中央値で弁体24がシフトポジションSPに応じた位置となるように設定されているから、作動部材40を位置決めした位置で固定すれば、弁体24の変位量は、クリアランスの値と同等となる。一方、比較例では、弁体24の位置により位置決めするから、位置決めした位置からの弁体24の変位量は、作動部材40との連結によるクリアランスの倍の値となる。したがって、実施例では、作動部材40の位置により位置決めすることにより、弁体24の位置により位置決めする場合に比して、位置決めされてからの弁体24の変位量を小さくすることができる。なお、作動部材40は、位置伝達機構30によるガタやステッピングモータ28と作動部材40との間におけるガタによる変位も生じるが、作動部材4の位置を検出する場合および弁体24の位置を検出する場合のどちらにおいても同様であるため、その説明は省略した。
【0024】
以上説明した実施例の自動変速装置20によれば、マニュアルバルブ23の弁体24に若干のクリアランスをもって連結された作動部材40における弁体24の軸方向の位置を作動部材40の軸部44,軸部44の移動を略平行に伝達する平行移動部材50,平行移動部材50の移動を回転移動に変換してケース22の外部に伝達する変換伝達部材60により構成された位置伝達機構30によりケース22の外部に伝達し、この伝達された伝達位置としての貫通軸部68の基準角度位置からの回転角度位置としての作動部材位置MPをポジションセンサ70により検出し、この作動部材位置MPがシフトポジションSPに応じて予め定められた作動部材40の位置に一致するようステッピングモータ28を駆動制御することにより、その後に車両の振動などにより弁体24が軸方向に変位しても、マニュアルバルブ23の弁体24の位置を検出する場合に比して、その変位量を小さくすることができる。また、ポジションセンサ70をケース22の外部に配置するから、ポジションセンサ70に対して防油処理を施す必要がない。ケース22の内部に比して外部の方が温度が低いから、ポジションセンサ70に用いるIC(集積回路)の耐熱を低くすることができ、用いるICの選択範囲を広くすることができる。この結果、ポジションセンサ70として検出精度の高いものを選択することができる。しかも、ポジションセンサ70を収納する収納ケース82は、マニュアルバルブ24や作動部材40,ステッピングモータ28に対して直近のケース22の天板の上面に取り付けられているから、位置伝達機構30による伝達経路を短くすることができる。この結果、位置伝達機構30の製造誤差や位置伝達機構30の弾性変形や熱的変形による位置検出精度における誤差を小さくすることができ、作動部材40の軸方向の位置の検出の精度を高くすることができる。また、ポジションセンサ70は変速機ECU80と共に収納ケース82に収納されているから、ポジションセンサ70と変速機ECU80とを接続する信号ラインを短くすることができる。この結果、電圧降下を抑制することができ、電圧降下による誤信号を防止することができる。また、信号ラインを短くしたことにより、信号ラインに乗るノイズの発生を抑制することができる。
【0025】
実施例の自動変速装置20では、ポジションセンサ70は変速機ECU80と共に収納ケース82に収納されているものとしたが、変速機ECU80とは別の収納ケースに収納されているものとしてもよいし、収納ケースに収納されていないものとしても構わない。
【0026】
実施例の自動変速装置20では、、ポジションセンサ70をマニュアルバルブ24や作動部材40,ステッピングモータ28から直近のケース22の天板の外部に配置するものとしたが、ポジションセンサ70をケース22の外部に配置するものであれば、マニュアルバルブ24や作動部材40,ステッピングモータ28から直近でなくても構わない。
【0027】
実施例の自動変速装置20では、作動部材40と平行移動部材50と変換伝達部材60との3部材により位置伝達機構30を構成するものとしたが、作動部材40と平行移動部材50とを1部材により作動移動部材として構成し、作動移動部材と変換伝達部材との2部材により位置伝達機構を構成するものとしてもよいし、作動部材40や弁体24の位置をケース22の外部に伝達する機構であれば如何なる機構としても構わない。
【0028】
実施例の自動変速装置20では、自動変速機21を制御する変速機ECU80によりポジションセンサ70からの作動部材位置MPに基づいてステッピングモータ28を駆動制御するものとしたが、自動変速機21を制御する変速機ECU80とは異なる制御装置によりポジションセンサ70からの作動部材位置MPに基づいてステッピングモータ28を駆動制御するものとしてもよい。
【0029】
実施例の自動変速装置20では、作動部材40における弁体24の軸方向の位置を、作動部材40の軸部44,軸部44の移動を略平行に伝達する平行移動部材50,平行移動部材50の移動を回転移動に変換してケース22の外部に伝達する変換伝達部材60により構成された位置伝達機構30によりケース22の外部に伝達し、ポジションセンサ70により検出するものとしたが、位置伝達機構30とポジションセンサ70とに代えて作動部材40の位置を直接検出するセンサを取り付けるものとしてもよい。この場合、センサには防油処理を施す必要があるが、図4におけるその他の変位量のうち位置伝達機構30による変位量が小さくなるから、位置決めしてからの弁体24の変位を更に小さくすることができる。
【0030】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、マニュアルバルブ23が「マニュアルバルブ」に相当し、ステッピングモータ28が「アクチュエータ」に相当し、作動部材40が「作動部材」に相当し、作動部材40の軸部44と平行移動部材50と変換伝達部材60とにより構成された位置伝達機構30とポジションセンサ70とが「位置検出装置」に相当し、ポジションセンサ70により検出された作動部材40の位置としての作動部材位置MPがシフトポジションSPに応じて予め定められた作動部材40の位置に一致するようステッピングモータ28を駆動制御する変速機ECU80が「制御装置」に相当する。
【0031】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0032】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、自動変速装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 自動車、11a,11b 駆動輪、12 エンジン、16 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、17 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、20 自動変速装置、21 自動変速機、22 ケース、23 マニュアルバルブ、24弁体、28 ステッピングモータ、29 移動軸、30 位置伝達機構、40 作動部材、42 嵌挿部、44 軸部、46 取付部、50 平行移動部材、52,54 貫通孔、60 変換伝達部材、62 台座部、63 突出部、64 回転連結部、66 貫通軸部、67 位置保持部、68 センサ取付部、70 ポジションセンサ、72 回転部、80 変速機用電子制御ユニット(変速機ECU)、82 収納ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動する弁体を少なくとも前進用ポジション,ニュートラルポジション,後進用ポジションを含む複数のシフトポジションに対応する位置に移動させることにより油圧回路における油路を切り替えるマニュアルバルブと、前記マニュアルバルブの弁体を軸方向に移動させるアクチュエータと、を備える車載用の自動変速装置において、
前記マニュアルバルブの弁体と前記アクチュエータとの連結に介在し、前記弁体にクリアランスをもって機械的に連結された作動部材と、
前記アクチュエータの駆動に伴って移動する前記作動部材の移動範囲における位置を検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置により検出される前記作動部材の位置が予め定められたシフト位置に対応する位置に一致するよう前記アクチュエータを駆動制御する制御装置と、
を備える自動変速装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動変速装置であって、
前記マニュアルバルブと前記アクチュエータは単一のケースに収納されており、
前記位置検出装置は、前記作動部材の位置を前記ケースの外部に伝達位置として伝達する位置伝達機構と、前記ケースの外部に配置されて前記位置伝達機構により伝達された伝達位置を検出する検出部と、を有する、
自動変速装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動変速装置であって、
前記位置伝達機構は、前記作動部材の前記弁体の軸方向の移動に伴って該作動部材の移動方向と略平行に移動する平行移動部材と、前記平行移動部材に接続されて該平行移動部材の移動を前記ケースを貫通する貫通回転軸の回転移動に変換して該貫通回転軸の基準角度位置に対する回転角度位置を前記伝達位置として前記ケースの外部に伝達する変換伝達部材と、により構成されてなり、
前記検出部は、前記貫通回転軸の回転角度位置を検出するセンサである、
自動変速装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の自動変速装置であって、
前記作動部材は、前記アクチュエータにより位置決め固定される、
自動変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−207705(P2012−207705A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72684(P2011−72684)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】