説明

自動調心ころ軸受

【課題】自動調心ころ軸受1aの運転時に、保持器5と案内輪6とが相対回転する際の摩擦低減を図り、運転に伴う発熱及び振動を低減すると共に、摩耗を抑制する。
【解決手段】上記保持器5と上記案内輪6との間に、ラジアルニードル軸受15を組み込み、これら保持器5と案内輪6とを、このラジアルニードル軸受15を介して相対回転させる。この構成により、上記保持器5を構成するリム部10の内周面と上記案内輪6の外周面とが滑り接触する事を防止できて、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種機械装置に組み込まれ、例えばハウジングの内側に回転軸を支承する、自動調心ころ軸受の改良に関する。具体的には、案内輪と、保持器及び内輪とが相対回転する際の摩擦低減を図るものである。特に、本発明に係る自動調心ころ軸受は、振動荷重や衝撃荷重が加わる中で高速回転を要求される、製紙機械装置の回転支持部に好ましく使用できる。
【背景技術】
【0002】
例えば重量の嵩む軸をハウジングの内側に回転自在に支承する為に従来から、特許文献1〜2に記載された様な自動調心ころ軸受が使用されている。図5は、これら特許文献1〜2に記載される等により、従来から広く知られている自動調心ころ軸受1を示している。この自動調心ころ軸受1は、互いに同心に組み合わされた外輪2と内輪3との間に、複数の球面ころ4、4を転動自在に配列して成る。そして、保持器5と案内輪6とにより、これら各球面ころ4、4の位置並びに姿勢を規制している。
【0003】
上記外輪2の内周面には、単一の中心を有する球状凹面である、外輪軌道7を形成している。又、内輪3の外周面の幅方向(図5の左右方向)両側には、それぞれが上記外輪軌道7と対向する(上記各球面ころ4、4の自転軸に関して対称な母線形状を有する)、1対の内輪軌道8、8を形成している。又、これら両内輪軌道8、8の母線形状の曲率半径は、上記外輪軌道7の母線形状の曲率半径と等しい。尚、図示の例の場合、上記内輪3の外周面の軸方向両端部に、それぞれ外向フランジ状の鍔部9、9を形成している。又、上記各球面ころ4、4は、その最大径部が各球面ころ4、4の軸方向中間部に存在するビヤ樽型(一般的には最大径部が軸方向中央部にある対称形)で、上記外輪軌道7と上記1対の内輪軌道8、8との間に、2列に亙って転動自在に配列されている。上記各球面ころ4、4の外周面の母線形状の曲率半径は、上記外輪軌道7及び上記両内輪軌道8、8の母線形状の曲率半径よりも少しだけ小さい。
【0004】
上記保持器5は、真鍮の如き銅系合金の様に自己潤滑性を有する金属製の素材に削り加工を施す事により、或いは、合成樹脂を射出成形する事により、全体を一体に造られたもので、円環状のリム部10と、このリム部10の軸方向両側面から互いに反対方向に突出した複数本の柱部11、11とを備える。そして、円周方向に隣り合う柱部11、11の側面と上記リム部10の軸方向側面とにより三方を囲まれる部分を、それぞれ上記各球面ころ4、4を保持する為のポケット12、12としている。
【0005】
更に、前記案内輪6は、銅系合金の如き自己潤滑性を有する金属、含油メタル、合成樹脂等の、摩擦係数の低い材料により、全体を円環状に形成している。上記案内輪6は、軸方向幅が外径側で大きく内径側で小さい、断面台形で、上記内輪3の軸方向中間部の外径よりも少しだけ大きい内径と、上記保持器5のリム部10の内径よりも少しだけ小さい外径とを有する。この様な案内輪6は、上記内輪3の軸方向中間部外周面と上記リム部10の内周面との間に、これら内輪3及びリム部10に対する相対回転を可能に設置している。この様に、上記案内輪6の外周面をこのリム部10の内周面に、この案内輪6の内周面を上記内輪3の軸方向中間部外周面に、それぞれ近接対向させて、上記保持器5の径方向の位置決めを(内輪案内により)図っている。又、この状態で上記案内輪6の軸方向両側面13、13は、上記各球面ころ4、4の軸方向内端面(自動調心ころ軸受1の幅方向中央側の端面。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)14、14と実質的に(対向する部分の周方向両端同士を結ぶ面同士が)平行になる。
【0006】
上述の様に構成される自動調心ころ軸受1により、例えばハウジングの内側に回転軸を支承する場合、前記外輪2をハウジングに内嵌固定し、上記内輪3を回転軸に外嵌固定する。この回転軸と共にこの内輪3が回転する場合には、上記各球面ころ4、4が転動して、この回転を許容する。上記ハウジングの軸心と上記回転軸の軸心とが不一致の場合、上記外輪2の内側で上記内輪3が調心する(外輪2の中心軸に対し内輪3の中心軸を傾斜させる)事で、この不一致を補償する。この場合に於いて、前記外輪軌道7は単一球面状に形成されている為、上記各球面ころ4、4の転動は、不一致補償後に於いても、円滑に行なわれる。又、これら各球面ころ4、4は、それぞれの軸方向内端面14、14と上記案内輪6の軸方向両側面13、13との係合に基づいて姿勢を制御される。即ち、上記各球面ころ4、4の自転中心軸が本来の位置からずれるスキューを抑え、これら各球面ころ4、4の転動面と上記外輪軌道7及び前記両内輪軌道8、8との転がり接触部での摩擦を抑える。
【0007】
上述の様な従来構造の自動調心ころ軸受1の場合、保持器5の径方向に関する位置決めを、案内輪6を用いた内輪案内により図る事に基づき、次の様な問題を生じる可能性がある。以下、前記図5に加えて、図6を参照しつつ説明する。尚、この図6中、案内輪6の軸方向側面13と球面ころ4の軸方向内端面14との間には隙間を描いているが、実際の使用状態ではこれら両面13、14は摺接する。
【0008】
転がり軸受の分野で広く知られている様に、上記保持器5を構成するリム部10の内周面と上記内輪3の外周面との相対速度は、回転軸の回転速度が速くなるにつれて大きくなる。この為、上記自動調心ころ軸受1を、例えば製紙機械装置の様に、高速回転する機械装置の回転支持部に組み込む場合、上記リム部10の内周面と上記案内輪6の外周面との係合部(滑り接触部)、及び、この案内輪6の内周面と上記内輪3の軸方向中間部外周面との係合部に作用する滑り摩擦は相当に大きくなる。従って、上記自動調心ころ軸受1の運転に伴う発熱(摩擦熱)及び振動(摩擦振動)が大きくなり、高速運転を行なう上で不利になる。
【0009】
更に、滑り接触面となる、上記リム部10の内周面、上記案内輪6の内外両周面、及び、上記内輪3の軸方向中間部外周面に生じる摩耗が多くなる。この為、軸受内部に充填されたグリースを劣化させたり、各球面ころ4、4の転動面や外輪軌道7及び内輪軌道8、8に摩耗を生じさせる等して、軸受性能を低下させる可能性がある。従って、製紙機械装置の回転支持部の様に、振動荷重や衝撃荷重が加わる厳しい使用条件下では、上記自動調心ころ軸受1の信頼性及び耐久性を長期間に亙り確保する事が難しくなる。
【0010】
【特許文献1】特開平11−2250号公報
【特許文献2】特開2005−24026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、案内輪と、保持器及び内輪とが相対回転する際の摩擦低減を図り、運転に伴う発熱及び振動を低減すると共に、摩耗の発生を抑制できる自動調心ころ軸受を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の自動調心ころ軸受は、前述した従来から知られている自動調心ころ軸受と同様に、外輪と、内輪と、複数個の球面ころと、保持器と、案内輪とから成る。
このうちの外輪は、球状凹面である外輪軌道を、その内周面に形成している。
又、上記内輪は、この外輪軌道と対向する1対の内輪軌道を、その外周面に形成している。
又、上記各球面ころは、上記外輪軌道と上記両内輪軌道との間に、2列に分けて、両列毎に複数個ずつ、転動自在に設けられている。
又、上記保持器は、円環状であって、上記各球面ころを転動自在に保持する複数のポケットを、円周方向複数個所に設けている。
更に、上記案内輪は、上記保持器の内周面と上記内輪の軸方向中間部外周面との間に配置されており、上記両列の球面ころの互いに対向する軸方向内端面同士の間に挟持されている。
尚、上記保持器としては、前記図5に示した様な、円環状のリム部と複数本の柱部とを備えるものの他、金属板をプレス成形して成る、所謂プレス保持器を使用する事もできる。
【0013】
特に、本発明の自動調心ころ軸受に於いては、上記案内輪と、上記保持器と上記内輪とのうちの少なくとも一方の部材との間に、ラジアルニードル軸受(所謂ケージ&ローラ形、シェル形、ソリッド形、総ころ形を含む)を組み込む。
【発明の効果】
【0014】
上述の様な構成を有する本発明の自動調心ころ軸受によれば、運転時に、案内輪と、保持器と内輪とのうちの少なくとも一方の部材とを、ラジアルニードル軸受を介して相対回転させる事ができる。この為、上記案内輪の周面と、上記少なくとも一方の部材の周面である相手周面(保持器の内周面、内輪の軸方向中間部外周面)とが滑り摩擦する事を防止できる。従って、自動調心ころ軸受の運転に伴う発熱及び振動を低減できると共に、摩耗を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、保持器5と案内輪6との間に、ラジアルニードル軸受15を組み込んだ点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述した従来構造と同様である為、重複する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0016】
本例の自動調心ころ軸受1aは、上記保持器5を構成するリム部10の内周面と、上記案内輪6の外周面との間に、上記ラジアルニードル軸受15を組み込んでいる。このラジアルニードル軸受15は、図2に示す様に、複数本のニードル16、16と、これら各ニードル16、16を転動自在に保持する為の保持器17とから成る。そして、上記リム部10の内周面を外輪軌道18とし、上記案内輪6の外周面を内輪軌道19として、上記各ニードル16、16の転動面を、これら外輪軌道18及び内輪軌道19に転がり接触させている。
【0017】
上述の様に、本例の場合には、上記ラジアルニードル15として、所謂ケージ&ローラ形のものを使用している。この為、別途ラジアルニードル軸受用外輪及び内輪を設ける必要をなくして、その分、上記リム部10及び上記案内輪6の径方向に関する肉厚の減少を抑えている。尚、本例の場合には、上記リム部10の内周面に上記外輪軌道18を直接形成する為、上記保持器5を銅系合金、ステンレス鋼の如き鉄系合金等の金属材製としている。又、上記案内輪6に就いても、その外周面に上記内輪軌道19を直接形成する為、やはり銅系合金、鉄系合金等の金属材製としている。又、上記案内輪6の内周面と内輪3の軸方向中間部外周面との間には、上述の様なラジアルニードル軸受は設けずに、前述した従来構造の場合と同様に、これら両周面を近接対向させている。
【0018】
上述の様な構成を有する本例の自動調心ころ軸受1aの場合、運転時に、上記保持器5と上記案内輪6とを、上記ラジアルニードル軸受15を介して相対回転させる事ができる。この為、上記保持器5を構成するリム部10の内周面と上記案内輪6の外周面とが滑り摩擦する事を防止できる。本例の場合、上記リム部10の内周面と上記案内輪6の外周面とは、前記各ニードル16、16の転動面と転がり摩擦する。但し、この転がり摩擦は、上記滑り摩擦に比べて十分に小さくなる。従って、本例の場合には、上記リム部10の内周面と上記案内輪6の外周面との間部分で生じる発熱及び振動を十分に抑えられると共に、上記リム部10の内周面及び上記案内輪6の外周面の摩耗を抑えられる。
【0019】
更に、上記保持器5を構成するリム部10の内周面と上記案内輪6の外周面との間に作用する摩擦を低減できる事に伴い、この案内輪6と前記内輪3との相対速度を低く抑えられる。この為、この案内輪6の内周面と上記内輪3の軸方向中間部外周面との係合部(滑り接触部)に作用する滑り摩擦を、前述した従来構造の場合に比べて小さくできる。この為、上記係合部で生じる発熱及び振動を抑えられると共に、上記案内輪6の内周面及び上記内輪3の軸方向中間部外周面に生じる摩耗を抑えられる。
【0020】
以上の様に、本例の自動調心ころ軸受1aによれば、前述した従来構造の自動調心ころ軸受1(図5参照)に比べて、運転に伴う発熱及び振動を低減できると共に、摩耗の発生を抑えられる。又、動トルクの低減も図れる。この為、高速運転を行なう上で有利になると共に、軸受性能が低下する事を防止できる。従って、本例の自動調心ころ軸受1aは、製紙機械装置の回転支持部の様な厳しい使用条件下に於いても十分な耐久性を得られて、長期間に亙り十分な信頼性を確保できる。
【0021】
尚、本例の自動調心ころ軸受1aを組み立てる際には、例えば、上記保持器5と上記案内輪6との間に、前記ラジアルニードル軸受15を組み込み、1つの中間部品(サブアセンブリー)とする。その後、この中間部品を、外輪2(前記図5参照)の内周面と上記内輪3の外周面との間に組み込む。この様な組み立て方法を採用すれば、上記ラジアルニードル軸受15の組み込み作業を、広い空間内で行なう事ができると共に、上記各部材5、6、15をまとめて取り扱う事ができる為、作業効率の向上を図れる。
【0022】
[実施の形態の第2例]
図3は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の特徴は、案内輪6と内輪3との間に、ラジアルニードル軸受15aを組み込んだ点にある。その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例、及び、前述した従来構造の場合と同様である為、重複する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0023】
本例の場合にも、上述した実施の形態の第1例の場合と同様に、上記ラジアルニードル軸受15aを、複数本のニードル16aと、これら各ニードル16aを転動自在に保持する為の保持器17aとから構成している。そして、上記案内輪6の内周面を外輪軌道18aとし、上記内輪3の軸方向中間部外周面を内輪軌道19aとして、上記各ニードル16aの転動面を、これら外輪軌道18a及び内輪軌道19aに転がり接触させている。尚、本例の場合にも、上記案内輪6を銅系合金、鉄系合金等の金属材製としているが、保持器5に就いては、合成樹脂製としている。又、上記案内輪6の外周面とこの保持器5を構成するリム部10の内周面との間には、上述の様なラジアルニードル軸受は設けずに、前述した従来構造の場合と同様に、これら両周面を直接近接対向させている。
【0024】
上述の様な構成を有する本例の自動調心ころ軸受1bの場合、運転時に、上記案内輪6と上記内輪3とを、上記ラジアルニードル軸受15aを介して相対回転させる事ができる。この為、上記案内輪6の内周面と上記内輪3の軸方向中間部外周面とが滑り摩擦する事を防止できる。上記案内輪6の内周面と上記内輪3の軸方向中間部外周面とは、上記各ニードル16aの転動面と転がり接触するが、この転がり接触に伴う摩擦(転がり摩擦)は、上記滑り摩擦に比べて十分に小さくなる。従って、上記案内輪6の内周面と上記内輪3の軸方向中間部外周面との間部分で生じる発熱及び振動を十分に抑えられると共に、上記案内輪6の内周面及び上記内輪3の軸方向中間部外周面の摩耗を抑えられる。
【0025】
更に、上記案内輪6の内周面と上記内輪3の軸方向中間部外周面との間に作用する摩擦を低減できる事に伴い、前記保持器5を構成するリム部10と上記案内輪6との相対速度を低く抑えられる。この為、これらリム部10の内周面と案内輪6の外周面との係合部(滑り接触部)に作用する滑り摩擦を、前述した従来構造の場合に比べて小さくできる。この結果、上記係合部で生じる発熱及び振動を抑えられると共に、上記リム部10の内周面及び上記案内輪6の外周面に生じる摩耗を抑えられる。
以上の様に、本例の自動調心ころ軸受1bの場合にも、前述した従来構造の自動調心ころ軸受1(図5参照)に比べて、運転に伴う発熱及び振動を低減できると共に、摩耗を抑えられる。
【0026】
[実施の形態の第3例]
図4は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の特徴は、保持器5を構成するリム部10と案内輪6との間部分、及び、この案内輪6と内輪3との間部分に、それぞれラジアルニードル軸受15、15aを組み込む点にある。その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1〜2例、及び、前述した従来構造の場合と同様である為、重複する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0027】
上述の様な構成を有する本例の自動調心ころ軸受1cの場合、運転時に、上記保持器5と上記案内輪6とを、上記ラジアルニードル軸受15を介して相対回転させる事ができると共に、この案内輪6と上記内輪3とを、上記ラジアルニードル軸受15aを介して相対回転させる事ができる。この為、上記保持器5を構成するリム部10の内周面と上記案内輪6の外周面とが滑り摩擦する事を防止できると共に、この案内輪6の内周面と上記内輪3の軸方向中間部外周面とが滑り摩擦する事を防止できる。
従って、本例の自動調心ころ軸受1cの場合にも、前述した従来構造の自動調心ころ軸受1(図5参照)に比べて、運転に伴う発熱及び振動を低減できると共に、摩耗の発生を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
尚、上述した実施の形態の各例に於いては、一方の列の球面ころ4と、他方の列の球面ころ4とを、一体の保持器5により保持する構造のみを示したが、これら一方の列の球面ころ4と、他方の列の球面ころ4とを、それぞれ独立の保持器により保持する事もできる。即ち、図7に示す様に、一方の列の球面ころ4を保持する為の保持器5aと、他方の列の球面ころ4を保持する為の保持器5aとを、相対回転を可能に互いに独立させる事ができる。この様な構成を採用すれば、両列の球面ころ4、4の公転速度に差が生じた場合でも、これら両列の球面ころ4、4を保持している保持器5a、5aが独立して回転する。即ち、自動調心ころ軸受は、両列の球面ころ4、4のうち、一方の列が他方の列に比べて大きな荷重を支承して運転される場合が多い。この場合には、これら両列の球面ころ4、4の公転速度に差が生じる。この様な場合に、これら両列の球面ころ4、4を保持する保持器5a、5aは、それぞれ独立して回転する為、公転速度が速い列の球面ころ4が、同じく遅い列の球面ころ4を引き摺ったり、公転速度が遅い列の球面ころ4が、同じく速い列の球面ころ4の公転運動に対して制動を加える事がなくなる。この結果、動トルク並びに運転に伴う発熱を低く抑えられる。
【0029】
尚、上述の様に、一方の列の球面ころ4と他方の列の球面ころ4とを、それぞれ独立の保持器5a、5aにより保持する場合、これら両保持器5a、5aの内径側に配置するラジアルニードル軸受15(図1、4参照)は、前述した実施の形態の第1例、第3例の場合と同様に1つでも良いし、上記各保持器5a、5a毎にそれぞれ1つずつ、合計2つでも良い。この様に、2つのラジアルニードル軸受を配置すれば、上記各保持器5a、5aが互いに独立して回転する際に、これら各保持器5a、5aを構成するリム部の内周面と、上記各ラジアルニードル軸受を構成する各ニードル16(図1、4参照)の転動面との転がり接触部での摩擦を低く抑えられる。
【0030】
又、上述した実施の形態の各例に於いては、ラジアルニードル軸受15、15aとして、軌道輪を省略したケージ&ローラ形のラジアルニードル軸受を示して説明したが、本発明に使用するラジアルニードル軸受は、この様な構成に限定されるものではない。即ち、保持器を省略した総ころ軸受の他、軌道輪を備えたシェル形やソリッド型のラジアルニードル軸受を使用する事もできる。尚、軌道輪を備えたラジアルニードル軸受を用いる場合には、保持器及び案内輪を銅系合金、鉄系合金等の金属材製ではなく、合成樹脂製とする事もできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、図6に相当する図。
【図2】同じくラジアルニードル軸受を抜き出して示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図。
【図4】同3例を示す、図1と同様の図。
【図5】従来から知られている自動調心ころ軸受の1例を示す半部断面図。
【図6】同じく外輪及び一方の列の球面ころを省略して示す、図5のイ部拡大模式図。
【図7】本発明の対象となる自動調心ころ軸受の別例を示す半部断面図。
【符号の説明】
【0032】
1、1a〜1c 自動調心ころ軸受
2 外輪
3 内輪
4 球面ころ
5、5a 保持器
6 案内輪
7 外輪軌道
8 内輪軌道
9 鍔部
10 リム部
11 柱部
12 ポケット
13 軸方向側面
14 軸方向内端面
15、15a ラジアルニードル軸受
16、16a ニードル
17、17a 保持器
18、18a 外輪軌道
19、19a 内輪軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状凹面である外輪軌道を内周面に形成した外輪と、この外輪軌道と対向する1対の内輪軌道を外周面に形成した内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に、2列に分けて、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた球面ころと、これら各球面ころを転動自在に保持する複数のポケットを、円周方向複数個所に設けた円環状の保持器と、この保持器の内周面と上記内輪の軸方向中間部外周面との間に配置され、上記両列の球面ころの互いに対向する軸方向内端面同士の間に挟持された案内輪とを備えた自動調心ころ軸受に於いて、この案内輪と、上記保持器と上記内輪とのうちの少なくとも一方の部材との間に、ラジアルニードル軸受が組み込まれている事を特徴とする自動調心ころ軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−180235(P2009−180235A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17165(P2008−17165)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】