説明

自動車の前部車体構造

【課題】 自動車の前部車体構造において、ウインドシールドを支持する支持剛性を高めると共に、上方から大きな衝突荷重が作用した場合にも所定の衝撃吸収性能を確保すること。
【解決手段】 自動車の前部車体構造は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル10と、ウインドシールド4の下部が支持され、後端がダッシュパネル10の上端に接合される上壁部と、上壁部の前端から下方に延び下端がダッシュパネル10に接合され且つ開口が形成された前壁部24dとを有するカウルパネル24と、カウルパネル24の開口近傍のカウルパネル24の上壁部24aに接合される補強部材30とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部車体構造に関し、特にカウルパネルに形成された複数の開口近傍の上壁部に補強部材を設けたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の前部車体構造において、エンジンルームと車室とを仕切る部位にダッシュパネルが車幅方向に延設され、このダッシュパネルの上側付近(ウインドシールドの前端部分の下側)にカウル部が車幅方向に延設されている。
ところで、カウル部のカウルパネルに複数の開口を設けて、歩行者などとの衝突時にボンネットに対して上方からの衝突荷重が作用した場合、カウルパネルが上下方向に圧縮変形して潰れることで衝突エネルギーを吸収するようにした構造が実用に供されている。
【0003】
特許文献1の車両のカウル構造では、底壁部と易変形部と縦壁部と上壁部とからなるカウルパネルにおいて、上壁部と底壁部との間にこれらを架橋する衝撃吸収部材を複数設けることで複数の開口が構成され、上方からの衝突荷重が作用した場合に、カウルパネルの縦壁部と複数の衝撃吸収部材とが上下方向に圧縮変形して潰れることで衝突エネルギーを吸収する。
【特許文献1】特開2004−217144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両のカウル構造においては、カウルパネルの上壁部によってガラス製のウインドシールドの下端部が支持されているが、カウルパネルの上壁部と底壁部との間の前壁に複数の開口が大きな開口率で形成されているため、上壁部によるウインドシールドの支持剛性が不足し、車両や歩行者との衝突時にウインドシールドが破損する虞がある。
さらに、カウルパネルの前壁の剛性が低下するため、上方から大きな衝突荷重が作用した場合に、カウルパネルの変形ストロークが大きくなりカウルパネルの底壁部が底づきする虞がある。
【0005】
本発明の目的は、自動車の前部車体構造において、ウインドシールドを支持する支持剛性を高めると共に、上方から大きな衝突荷重が作用した場合にも所定の衝撃吸収性能を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の自動車の前部車体構造は、自動車の前部車体構造において、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、ウインドシールドの下端部分が支持され、後端がダッシュパネルの上端に接合される上壁部と、上壁部の前端から下方に延び下端がダッシュパネルに接合され且つ開口が形成された前壁部とを有するカウルパネルと、前記カウルパネルの開口近傍のカウルパネルの上壁部に接合される補強部材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この自動車の前部車体構造では、ウインドシールドの下端部分が支持され後端がダッシュパネルの上端に接合される上壁部と、上壁部の前端から下方に延び下端がダッシュパネルに接合され且つ開口が形成された前壁部とを有するカウルパネルを有し、このカウルパネルの開口近傍のカウルパネルの上壁部に補強部材が接合されている。
【0008】
このように、カウルパネルの開口近傍のカウルパネルの上壁部に補強部材を接合したので、ウインドシールドを支持する支持剛性が補強部材によって向上し、車両や歩行者との衝突時にウインドシールドが破損するのを防止することができる。また、カウルパネルの上壁部の剛性が向上するので、上方から大きな衝突荷重が作用した場合にも、カウルパネルの下端部が底づきすることなく、所定の衝撃吸収性能を確保することができる。
【0009】
請求項2の自動車の前部車体構造は、請求項1の発明において、前記カウルパネルの開口は車幅方向に複数形成され、前記補強部材は、カウルパネルの上壁部において少なくとも車幅方向に隣接するカウルパネルの開口間に対応する位置に接合されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の自動車の前部車体構造は、請求項2の発明において、前記補強部材は、車幅方向に隣接するカウルパネルの開口に亙る位置に対応するカウルパネルの上壁部に接合され、且つ車幅方向においてカウルパネルの開口に対応する位置に開口部が形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の自動車の前部車体構造は、請求項3の発明において、前記補強部材は、その車幅方向の中心がカウルパネルの開口間の架橋部よりも車幅方向内側に変位して接合されたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の自動車の前部車体構造は、自動車の前部車体構造において、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、ウインドシールドの下端部分が支持され、後端がダッシュパネルの上端に接合される上壁部を備えると共に前端が下方のダッシュパネルから離間するカウルパネルと、前記カウルパネルに接合される補強部材とを備えたことを特徴とする。
【0013】
この自動車の前部車体構造では、ウインドシールドの下端部分が支持され後端がダッシュパネルの上端に接合される上壁部を備え、且つ前端が下方のダッシュパネルから離間するカウルパネルを有し、このカウルパネルに補強部材が接合されている。
このように、カウルパネルに補強部材を接合したので、請求項1とほぼ同様の作用を奏する。
【0014】
請求項6の自動車の前部車体構造は、請求項1〜5の何れかの発明において、前記カウルパネルの上壁部には、上壁部主面と、上壁部主面から上方に膨出しウインドシールドの下端が支持される膨出部が形成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項7の自動車の前部車体構造は、請求項6の発明において、前記補強部材は、カウルパネルの上壁部において膨出部から上壁部主面に亙って接合されたことを特徴とする。
【0016】
請求項8の自動車の前部車体構造は、請求項7の発明において、前記補強部材は、カウルパネルの上壁部において膨出部と上壁部主面に亙って車幅方向に延びる閉断面を形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項9の自動車の前部車体構造は、請求項1〜8の何れかの発明において、前記補強部材の前後端部に下方に指向する屈曲部が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、ダッシュパネルと、ウインドシールドの下端部分が支持され後端がダッシュパネルの上端に接合される上壁部と、上壁部の前端から下方に延び下端がダッシュパネルに接合され且つ開口が形成された前壁部とを有するカウルパネルと、カウルパネルの開口近傍のカウルパネルの上壁部に接合される補強部材とを備えたので、ウインドシールドを支持する支持剛性が補強部材によって向上し、車両や歩行者との衝突時にウインドシールドが破損するのを防止することができる。また、カウルパネルの開口近傍のカウルパネルの上壁部に補強部材を接合することにより、カウルパネルの上壁部の剛性が向上するので、上方から大きな衝突荷重が作用した場合にも、衝突初期時においてカウルパネルの変形ストロークが大きくなるのを抑制することができる。それ故、カウルパネルの下端部が底づきすることなく、所定の衝撃吸収性能を確保することができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、前記カウルパネルの開口は車幅方向に複数形成され、補強部材は、カウルパネルの上壁部において少なくとも車幅方向に隣接するカウルパネルの開口間に対応する位置に接合されたので、カウルパネルの上壁部の剛性を効果的に高めることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、補強部材は、車幅方向に隣接するカウルパネルの開口に亙る位置に対応するカウルパネルの上壁部に接合され、且つ車幅方向においてカウルパネルの開口に対応する位置に開口部が形成されたので、カウルパネルの開口周辺の剛性が向上する。
【0021】
請求項4の発明によれば、補強部材は、その車幅方向の中心がカウルパネルの開口間の架橋部よりも車幅方向内側に変位して接合されたので、側部車体構造に連結されるカウルパネルの車幅方向外側よりも剛性の低いカウルパネルの車幅方向中心側の剛性が向上する。
【0022】
請求項5の発明によれば、ダッシュパネルと、ウインドシールドの下端部分が支持され、後端がダッシュパネルの上端に接合される上壁部を備えると共に前端が下方のダッシュパネルから離間するカウルパネルと、カウルパネルに接合される補強部材とを備えたので、カウルパネルの前壁がほとんどないオープンカウルを採用した自動車においても、請求項1とほぼ同様の効果が得られる。
【0023】
請求項6の発明によれば、カウルパネルの上壁部には、上壁部主面と、上壁部主面から上方に膨出しウインドシールドの下端が支持される膨出部が形成されたので、カウルパネルの剛性が向上し、ウインドシールドを支持する支持剛性とカウルパネルの衝撃吸収性能が一層高まる。
【0024】
請求項7の発明によれば、補強部材は、カウルパネルの上壁部において膨出部から上壁部主面に亙って接合されたので、カウルパネルの上壁部の剛性が一層高まる。
【0025】
請求項8の発明によれば、補強部材は、カウルパネルの上壁部において膨出部と上壁部主面に亙って車幅方向に延びる閉断面を形成したので、カウルパネルの上壁部の剛性を確実に高めることができる。
【0026】
請求項9の発明によれば、補強部材の前後端部に下方に指向する屈曲部が形成されたので、補強部材の重量を増加させずに、補強部材の剛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の自動車の前部車体構造は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、ウインドシールドの下部が支持され、後端がダッシュパネルの上端に接合される上壁部と、上壁部の前端から下方に延び下端がダッシュパネルに接合され且つ開口が形成された前壁部とを有するカウルパネルと、カウルパネルの開口近傍のカウルパネルの上壁部に接合される補強部材とを備えたものである。
【0028】
別の自動車の前部車体構造は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、ウインドシールドの下端部分が支持され、後端がダッシュパネルの上端に接合される上壁部を備えると共に前端が下方のダッシュパネルから離間するカウルパネルと、カウルパネルに接合される補強部材とを備えたものである。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動車1の前部車体構造には、エンジンルーム2と車室3とを仕切るダッシュパネル10と、ダッシュパネル10に連結され且つその上側近傍において車幅方向に延設されたカウル部20と、カウル部20の上側近傍においてルーフまで延びるフロントガラスであるウインドシールド4等が設けられている。
【0030】
先ず、ダッシュパネル10について説明する。
図1〜図5に示すように、ダッシュパネル10の左右両端部は、左右のフロントピラー5に連結され、ダッシュパネル10は、ダッシュロア12と、ダッシュロア12の上端部に接合されたダッシュアッパ11とを有する。ダッシュアッパ11は、下方へ行く程前方へ少し移行する傾斜状に形成されている。ダッシュアッパ11は、その下端部分を前方に折り曲げることで前方へ張出すほぼ水平な張出部11aを有し、その張出部11aの下面にダッシュロア12の上端が接合されると共に、後述のカウルパネル24とカウルフロント21が接合されている。
【0031】
次に、カウル部20について説明する。
図2、図4、図5に示すように、カウル部20の左右両端部は左右のフロントピラー5に連結されている。このカウル部20は、カウルフロント21と、カウルクロスメンバー22と、合成樹脂製のカウルグリル23と、カウルパネル24とを有する。ここで、カウルフロント21とカウルパネル24とで開断面構造が構成されている。
【0032】
カウルフロント21は、水平部21aと、水平部21aの後端から後方へ行く程上方へ移行する傾斜部21bと、水平部21aの前端から上方に立ち上がる縦壁部21cと、縦壁部21cの前端に形成されたフランジ部21dとを有する。縦壁部21cの後側において、縦壁部21cの前端から水平部21aの中央部分に亙って車幅方向に延びるカウルクロスメンバー22が設けられ、フランジ部21dの上面に、カウルクロスメンバー22の前端が接合された後、カウルグリル23の前端を位置決めした状態でボルト33とナット33aでもって締結されている。ここで、カウルフロント21とカウルクロスメンバー22において、縦壁部21cと水平部21aの前端側部分とカウルクロスメンバー22とで閉断面構造が構成されている。
【0033】
カウルフロント21とカウルパネル24との間にはエアボックス6が設けられ、このエアボックス6の上側の開口を覆うカウルグリル23が設けられ、カウルグリル23には、エアボックス6内に外気を導入する為の複数のスリット(図示略)が形成されている。カウルグリル23の前端は、カウルフロント21とカウルクロスメンバー22に対してボルト33とナット33aでもって締結され、一方、カウルグリル23の後端はウインドシールド4の下端部に当接され、カウルグリル23の弾性力により係止されている。
【0034】
カウルパネル24は、ウインドシールド4の下端部分が支持され且つ後端がダッシュアッパ11の上端に接合される上壁部24aと、上壁部24aの前端から下方に延び下端がダッシュアッパ11の前端部とダッシュロア12の上端部に接合された前壁部24dとを有する。カウルパネル24とその後側のダッシュアッパ11とで上下に細長いほぼ矩形状の閉断面構造が構成されている。
【0035】
上壁部24aには、上壁部主面24bと、上壁部主面24bから上方に膨出しウインドシールド4の下端部分が支持される膨出部24cが一体的に形成されている。膨出部24cの上面には、ウインドシールド4の下端部分を接着する為の接着剤層34が設けられ、膨出部24cの上面において接着剤層34の後側には、接着剤層34の接着剤が車室3側へ漏出するのを防止する為の発泡樹脂製のダム部材35が設けられている。
【0036】
前壁部24dには、車幅方向に6つの開口25,26,27が形成され、これらの開口25,26,27は、前壁部24dにおいて左右両端部分と中央部分に夫々2つずつ隣接するように形成されている。前壁部24dにおいて左右両端部分に設けた2つの開口25,26の間には、上壁部24aに連なるように前壁部24dで形成された架橋部24eが夫々形成され、中央部分に設けた2つの開口27,27の間には、上壁部24aに連なるように前壁部24dで形成された架橋部24fが形成されている。
【0037】
上壁部24aにおいて、開口25の車幅方向内側部分と架橋部24eと開口26の上側に対応する位置には、補強部材30A,30Bが接合されている。一方、上壁部24aにおいて、2つの開口27の車幅方向内側部分とこれらの間の架橋部24fの上側に対応する位置には、補強部材30Bが接合されている。尚、これらの補強部材30A,30Bにおいて、上壁部24aの右端部分に設けた補強部材30Aと、上壁部24aの中央部分及び左端部分に設けた補強部材30Bとは左右反転させている以外は、同一の構成である。
【0038】
次に、補強部材30について説明する。
図2〜図6に示すように、補強部材30は薄い鋼板部材より構成され、この補強部材30は、上壁部主面24bに接合される下板部30aと、下板部30aの後端から後方へ行く程上方へ移行する傾斜部30bと、膨出部24cに接合される上板部30cとを有する。補強部材30の前端部には、下板部30aの前端を下方に屈曲させた屈曲部30dが形成され、補強部材30の後端部には、上板部30cの後端を下方に屈曲させた屈曲部30eが形成されている。補強部材30の下板部30aにおいて、前端から中央部分に亙って上壁部主面24bの下面に溶接接合されると共に、補強部材30の上板部30cが膨出部24cの下面に溶接接合され、カウルパネル24の上壁部24aにおいて膨出部24cと上壁部主面24bに亙って車幅方向に延びる閉断面構造を構成している。
【0039】
補強部材30には、下板部30aから上板部30cに亙り、車幅方向においてカウルパネル24の開口25,26,27に対応する位置に2つの開口部31,32が形成されており、前壁部24dの左右両側部分に設けた補強部材30A,30Bは、その車幅方向の中心がカウルパネル24の開口25,26間の架橋部24eよりも車幅方向内側に変位して夫々接合されている。一方、前壁部24dの車幅方向中央部分に設けた補強部材30Bは、その車幅方向の中心がカウルパネル24の開口27,27間の架橋部24fと一致するように接合されている。補強部材30の開口部31の周縁部には、補強部材30をカウルパネル24に組付ける際の位置決め部33が設けられている。
【0040】
次に、自動車1の前部車体構造の作用、効果について説明する。
ウインドシールド4の下端部分が支持され後端がダッシュパネル10の上端に接合される上壁部24aと、上壁部24aの前端から下方に延び下端がダッシュパネル10に接合され且つ6つの開口25,26,27が形成された前壁部24dとを有するカウルパネル24を設け、補強部材30の下板部30aにおいて、前端から中央部分に亙って上壁部主面24bの下面に溶接接合されると共に、補強部材30の上板部30cが膨出部24cの下面に溶接接合され、これらの補強部材30は、カウルパネル24の上壁部24aにおいて膨出部24cと上壁部主面24bに亙って車幅方向に延びる閉断面構造を夫々構成している。これにより、ウインドシールド4を支持する支持剛性が補強部材30によって向上すると共に、カウルパネル24の上壁部24aの剛性が向上する。
【0041】
このように、ダッシュパネル10と、ウインドシールド4の下端部分が支持され後端がダッシュパネル10の上端に接合される上壁部24aと、上壁部24aの前端から下方に延び下端がダッシュパネル10に接合され且つ開口25,26,27が形成された前壁部24dとを有するカウルパネル24と、カウルパネル24の開口31,32の近傍のカウルパネル24の上壁部24aに接合される補強部材30とを備えたので、ウインドシールド4を支持する支持剛性が補強部材30によって向上し、車両や歩行者との衝突時にウインドシールド4が破損するのを防止することができる。
【0042】
また、カウルパネル24の開口25,26,27の近傍のカウルパネル24の上壁部24aに補強部材30を接合することにより、カウルパネル24の上壁部24aの剛性が向上するので、上方から大きな衝突荷重が作用した場合にも、衝突初期時においてカウルパネル24の変形ストロークが大きくなるのを抑制することができる。それ故、カウルパネル24の下端部が底づきすることなく、所定の衝撃吸収性能を確保することができる。
【0043】
カウルパネル24の開口25,26,27は車幅方向に6つ形成され、補強部材30は、カウルパネル24の上壁部24aにおいて車幅方向に隣接するカウルパネル24の開口25,26の間及び開口27,27の間に対応する位置に接合されたので、カウルパネル24の上壁部24aの剛性を効果的に高めることができる。カウルパネル24の上壁部24aには、上壁部主面24bと、上壁部主面24bから上方に膨出しウインドシールド4の下端が支持される膨出部24cが形成されたので、カウルパネル24の剛性が向上し、ウインドシールド4を支持する支持剛性とカウルパネル24の衝撃吸収性能が一層高まる。
【0044】
補強部材30は、車幅方向に隣接するカウルパネル24の開口25,26,27に亙る位置に対応するカウルパネル24の上壁部24aに接合され、且つ車幅方向においてカウルパネル24の開口25,26,27に対応する位置に開口部31,32が形成されたので、カウルパネル24の開口25,26,27の周辺の剛性が向上する。さらに、前壁部24dにおいて左右両端部分に設けた補強部材30A,30Bは、その車幅方向の中心がカウルパネル24の開口25,26の間の架橋部24eよりも車幅方向内側に変位して接合されたので、側部車体構造に連結されるカウルパネル24の車幅方向外側よりも剛性の低いカウルパネル24の車幅方向中心側の剛性が向上する。
【0045】
補強部材30の下板部30aにおいて、前端から中央部分に亙って上壁部主面24bの下面に溶接接合されると共に、補強部材30の上板部30cが膨出部24cの下面に溶接接合されたので、カウルパネル24の上壁部24aの剛性が一層高まる。さらに、補強部材30は、カウルパネル24の上壁部24aにおいて膨出部24cと上壁部主面24bに亙って車幅方向に延びる閉断面を形成したので、カウルパネル24の上壁部24aの剛性を確実に高めることができる。また、補強部材30の前後端部に下方に指向する屈曲部30d,30eが形成されたので、補強部材30の重量を増加させずに、補強部材30の剛性を高めることができる。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明の実施例2について、図7、図8に基づいて説明する。但し、前記実施例と同一の構成には同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
この実施例2においては、カウルパネルの前壁がほとんどないオープンカウルを採用した自動車に本発明を適用したものである。
【0047】
図7、図8に示すように、カウルパネル24Aは、ウインドシールド4の下端部分が支持され且つ後端がダッシュアッパ11の上端に接合される上壁部24aと、上壁部24aの前端から下方に僅かに延びる前壁部24hとを有する。前壁部24hの前端部には、前方に指向する屈曲部24gが形成され、屈曲部24gの下面がダッシュアッパ11の張出部11aから離間しており、カウルパネル24Aとその後側のダッシュアッパ11とで前方が開放する開断面構造が構成されている。上壁部24aの右端部分には補強部材30Aが接合され、上壁部24aの左端部分には30Bが接合され、上壁部24aの中央部分には、補強部材30Bが接合されている。この場合、上記実施例1とほぼ同様の作用、効果を奏する。
【0048】
次に、前記実施例を部分的に変更した変更例について説明する。
1]上記実施例1において、上壁部24aにおいて架橋部24e,24fの上側部分に対応する位置に小型の補強部材を溶接接合してもよい。
2]上記実施例1において、前壁部24dにおいて中央部分に開口27を設けずに、左右両端部分にのみ開口25,26を夫々設けて、上壁部24aにおいて、開口25の車幅方向内側部分と架橋部24eと開口26の上側に対応する位置に補強部材30を夫々接合してもよい。
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能で、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例に係る自動車の前部車体構造の要部の斜視図である。
【図2】カウル部とダッシュアッパと補強部材の分解図である。
【図3】カウルパネルに補強部材を接合した状態を示す要部の正面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図1のV −V 線断面図である。
【図6】補強部材の斜視図である。
【図7】実施例2の図2相当図である。
【図8】実施例2の図4相当図である。
【符号の説明】
【0050】
1 自動車
10 ダッシュパネル
24,24A カウルパネル
24a 上壁部
24b 上壁部主面
24c 膨出部
25,26,27 開口
30 補強部材
30d,30e 屈曲部
31,32 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部車体構造において、
エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、
ウインドシールドの下端部分が支持され、後端がダッシュパネルの上端に接合される上壁部と、上壁部の前端から下方に延び下端がダッシュパネルに接合され且つ開口が形成された前壁部とを有するカウルパネルと、
前記カウルパネルの開口近傍のカウルパネルの上壁部に接合される補強部材と、
を備えたことを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項2】
前記カウルパネルの開口は車幅方向に複数形成され、
前記補強部材は、カウルパネルの上壁部において少なくとも車幅方向に隣接するカウルパネルの開口間に対応する位置に接合されたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項3】
前記補強部材は、車幅方向に隣接するカウルパネルの開口に亙る位置に対応するカウルパネルの上壁部に接合され、且つ車幅方向においてカウルパネルの開口に対応する位置に開口部が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項4】
前記補強部材は、その車幅方向の中心がカウルパネルの開口間の架橋部よりも車幅方向内側に変位して接合されたことを特徴とする請求項3に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項5】
自動車の前部車体構造において、
エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、
ウインドシールドの下端部分が支持され、後端がダッシュパネルの上端に接合される上壁部を備えると共に前端が下方のダッシュパネルから離間するカウルパネルと、
前記カウルパネルに接合される補強部材と、
を備えたことを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項6】
前記カウルパネルの上壁部には、上壁部主面と、上壁部主面から上方に膨出しウインドシールドの下端が支持される膨出部が形成されたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の自動車の前部車体構造。
【請求項7】
前記補強部材は、カウルパネルの上壁部において膨出部から上壁部主面に亙って接合されたことを特徴とする請求項6に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項8】
前記補強部材は、カウルパネルの上壁部において膨出部と上壁部主面に亙って車幅方向に延びる閉断面を形成したことを特徴とする請求項7に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項9】
前記補強部材の前後端部に下方に指向する屈曲部が形成されたことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の自動車の前部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−13144(P2008−13144A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189097(P2006−189097)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】