説明

自動車用ステアリングホイール及びその製造方法

【課題】本発明は、自動車用ステアリングホイール及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明は、金属フレームを乾燥機で予熱して水分を除去した状態で、予熱された製品を1次から3次に渡って金型内で2〜3mmの厚さで何回多層の層構造に射出し、各工程の段階において製品が空気中に露出される場合には、射出(被覆)表面に水分が含まれている恐れがあり、後工程の加工時に接着力及び品質に異常を起こすので、工程の中間に乾燥保管を必須的に実施している。この時、射出された層と層との間には、パッドプリンティング方式を適用するか、又は真空蒸着とパッドプリンティングとを混合した方式を適用して、パターンや絵を挿入する。このように、本発明は、最上位の射出部を除外した内部の射出部に、色、パターン、及び紋を挿入することができ、2個以上の段を有し、最上位の射出部を除外した各射出部に一つ以上のパターンを挿入する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ステアリングホイール及びその製造方法に関し、ウッドグレイン水圧転写工法を代替する新たな製造方法として、2〜3mmの厚さで何回多層の層構造に射出し、射出された層と層との間にパターンや絵(あるいは、図案)を挿入して、高級で及び美麗な感じを与えることができる自動車用ステアリングホイール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ステアリング(steering)システムは、自動車の進行方向を運転者の任意に変えるために操向する装置であり、大きく分けて、操作機構、ギア装置、及びリンク機構の三つの機構から構成される。
【0003】
このうちの操作機構は、運転者の操作力を、ギア装置及びリンク機構に伝達する部分であり、ステアリングホイール、ステアリング軸、カラム(column)等から構成される。
【0004】
このようなステアリングシステムにおいては、運転者が、走行方向を調整するために、ステアリングホイールを円周方向に操向すると、ステアリングホイールに沿ってステアリングギアに円周運動が伝えられ、このステアリングギアが、円周運動を直線運動に変えて、車両のタイヤを動かすので、これにより車両の操向が行われる。
【0005】
上記ステアリングホイールは、車両の操向のために、運転者がいつも手で取って操作する部分であるので、操作時に滑りやすくなく、感じ及び触感が良く、美観上に美麗に製作されるべきであり、近来には、衝突時に人体に強い衝撃が加えられないクッション性を有するものが選好されている。
【0006】
従って、近来のステアリングホイールは、ステアリング軸に装着される金属フレームのリム(rim)部を硬質の発泡ポリウレタン(polyurethane:PU)樹脂でインサートモールディングして製造されている。
【0007】
しかし、これは、発泡ポリウレタン樹脂により、クッション性と、ノンスリップの優秀性とはあるが、外観上に単調であり、触感がよくないので、大体ホイールの外面に別途のハンドルカバーをかぶせて使用する。
【0008】
反面、ハンドルカバーは、単調さと触感の不良とを多少改善する点はあるが、ホイールの厚さが厚くなって、運転者に、安全で人体工学的に設計された部分を把持させることができないので、安全運転に支障を与える問題点がある。
【0009】
そして、高級車には、ステアリングホイールの製作の際に、発泡ポリウレタン樹脂を一般的なホイールの厚さより細く形成し、その外面に革カバーを一体としてかぶせた革ハンドルが装着されているが、これは、上記した問題点を補完する長所がある反面、長期間使用すると、手垢が付いて滑りやすくなり、美観を害する欠点がある。
【0010】
また、最近には美しさ及び高級さを倍加させ、触感を良くするために、モールディングした発泡ポリウレタン樹脂の外面の一部に革カバーを一体としてかぶせ、その残りの部分にウッドの紋ときめを表出するウッドグレインフィルムコーティング部を複合させたステアリングホイールが、高級車を中心に装着されている。
【0011】
通常、ウッドグレインフィルムコーティング部を部分的に形成した従来のステアリングホイールにおいては、金属フレームの一部のみに対して、軟質のポリウレタン樹脂を発泡し、残りの部分に対しては、ABS(acryloninitrile butadiene styrene)、ポリプロピレン(polypropylene:PP)材質の射出樹脂で射出する。そして、射出された区間の外面には、ウッドグレイン転写フィルムを同一の平面にコーティング処理して製造する。
【0012】
このようなウッドグレインステアリングホイールにおけるウッドグレイン転写フィルムのコーティングは、水転写により行われるが、従来のウッドグレイン転写フィルムを、ABS(acryloninitrile butadiene styrene)、ポリプロピレン(polypropylene:PP)材質の射出樹脂層の表面に水転写するためには、転写前に多くの加工を必要とした。
【0013】
これは、ABS射出樹脂に補強材であるガラス繊維を、10〜20%添加させて作業することにより、射出の表面がなめらかでなく、微細な表面気孔及び異物質が存在し、表面自体が非常にでこぼこな状態で、ウッドグレインフィルムを転写することが不可能であるからである。
【0014】
従って、フィルムの転写の前に、不規則な発泡層の表面を一定にし、気泡をなくす表面研磨を必ず実施すべき問題点があった。
【0015】
また、転写の前に表面研磨をしても、転写フィルムの接着性の不良により、少し使用しただけでフィルムが剥がれることが頻繁であり、消費者に販売された車両のステアリングホイールにおいても一部のフィルムが剥がれる問題が生じ、顧客の不満が続出している。
【0016】
これにより、最近、本出願人は、上記のような従来のステアリングホイールにおいて、ウッドグレイン転写フィルムを水転写でコーティングする方式を改善することで、ステアリングホイールの一部を2回の射出成形で形成して不良率を減少させ生産性を改善し、ステアリングホイールの一部を透明又は半透明の材質を使用して製品の完成前に不良の検出が容易であり、また、第1の上端及び第2の下端の被覆部の表面にそれぞれ第1及び第2のパターンを形成し、第2の上端及び第2の下端の被覆部を通して観察することができ、ステアリングホイールの審美感を倍加させることができる方案を、研究開発し特許出願し、韓国登録特許第0887532号(2009年03月02日登録)に登録している。
【0017】
即ち、上記登録特許第0887532号に開示されている自動車のステアリングホイール100は、図1に示されたように、射出成形により形成される上端部102及び下端部103に区分され、樹脂により形成されるリム(rim)101と、上記リム101と連結され、リム101の内側に設けられる多数のスポーク111と、上記リム101の中央部に位置し、エアバッグモジュール(非図示)が組み立てられ、操向軸(非図示)と連結されるためのコアリング112を含むハブコア118とを備える構成を有する。
【0018】
ここで、上記リム101は、円形の金属フレーム106上に樹脂を被覆するものであり、上記金属フレーム106は、上端部102及び下端部103に対応する第1の領域と、上下端部102及び103間の2つの左右側面部107に対応する第2の領域とに区分される。
【0019】
即ち、上記第1の領域は、樹脂射出部の上端部102及び下端部103としてパターンが形成された部分である。上記第2の領域は、革で作られた取っ手の部分であって、樹脂射出部の左右側面部107に区分される。
【0020】
この時、上記リム101の上端部102は、1次の射出成形により金属フレーム106を被覆して形成される第1の上端被覆部104と、2次の射出成形により第1の上端被覆部104を被覆して形成される第2の上端被覆部105とから構成され、同様に、上記リム101の下端部103は、金属フレーム106を被覆して形成される第1の下端被覆部108と、2次の射出成形により第1の下端被覆部108を被覆して形成される第2の下端被覆部109とから構成される。
【0021】
また、上記リム101の上端部102において、金属フレーム106上に射出成形により形成される第1の上端被覆部104及び第2の上端被覆部105は、分離できない一体型に構成され、同様に、上記リム101の下端部103において、金属フレーム106上に射出成形により形成される第1の下端被覆部108及び第2の下端被覆部109も、分離できない一体型に構成される。
【0022】
そして、上記金属フレーム106の第2領域に対応する左右側面部107には、3次の射出成形により第3の被覆部が構成される。
【0023】
このような構成を有する上記登録特許第0887532号に開示されているステアリングホイールの製造方法は、第1の金型に、第1の領域と第2の領域とから構成される金属フレームを有するステアリングホイールを挿入し、60℃〜80℃で加熱する段階と、上記第1の金型にPC(poly carbonate)の樹脂を注入し、上記第1の領域の上記金属フレームを被覆する第1の被覆部を形成する段階と、上記第1の金型において第1の被覆部上にパターンを形成する段階と、上記第1の金型を、上記樹脂が固まれるように冷却する段階と、第2の金型に、上記第1の被覆部が形成された上記ステアリングホイールを挿入し、60℃〜80℃で加熱する段階と、上記第2の金型に透明な材質のPC(poly carbonate)樹脂を注入し、上記第1の領域の上記第1の被覆部上に、対等な厚さに第2の被覆部を形成する段階と、上記第2の金型を、上記樹脂が固まれるように冷却する段階と、第3の金型に、上記第1及び第2の被覆部が形成された上記ステアリングホイールを挿入する段階と、第3の金型にポリウレタン(polyurethane)樹脂を注入し、上記第1領域の第1及び第2の被覆部と対等な厚さに上記第2の領域の上記金属フレーム上に第3の被覆部を形成する段階とを含む。
【0024】
しかし、このような上記登録特許第0887532号に開示されているステアリングホイールの製造方法は、工程上に問題点を有することが分かった。
【0025】
即ち、上記ステアリングホイールの製造方法は、第1の金型に、第1の領域と第2の領域とから構成される金属フレームを有するステアリングホイールを挿入し、60℃〜80℃で加熱する段階と、上記第2の金型に、上記第1の被覆部が形成された上記ステアリングホイールを挿入し、60℃〜80℃で加熱する段階とを含むが、実質的に上記第1の金型及び第2の金型に、上記ステアリングホイールを挿入して加熱する工程は、存在しなく、技術的に見れば、実現上に問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
これにより、本発明は、本出願人により特許出願され登録された上記登録特許第0887532号に開示されている技術の問題点を改善しながら、従来のウッドグレイン水圧転写工法を代替する新たな製造方法を提供するように発明されたものである。本発明の目的は、ステアリングホイールを製造する際に、2〜3mmの厚さで何回多層の層構造に射出し、射出された層と層との間にパターンや絵(あるいは、図案)を挿入して、高級で及び美麗な感じを与えることができる自動車用ステアリングホイール及びその製造方法を提供することである。
【0027】
特に、本発明の目的は、内部にパターンが挿入された後、一番外層の射出の厚さを2〜3mmの水準に維持する場合、パターンの美麗さ及び高級さを倍加させることができ、ボリューム感のあるパターンの演出が可能であるという点が、多数の試行錯誤を通して立証されたので、これを適用することができる金型技術及び射出技術に対して保護を受けることである。
【0028】
そして、本発明の他の目的は、ステアリングホイールの内部にパターンを挿入する方法として、パッドプリンティング(pad printing)方式を適用するか、真空蒸着とパッドプリンティングとを混合した方式を適用することにより、製造過程において廃水の発生をなくすことである。
【0029】
もちろん、本発明の基本的な目的は、従来のフィルム転写方式の場合に、フィルムが剥離(剥がれること)される不良が、内部の作業中に発生し、特に、顧客に引導された後にも発生されるという問題点を改善しようとするものであり、ステアリングホイールの内部にパターンを挿入して、上記した従来の問題点を根本的に遮断することである。
【0030】
また、本発明の目的は、従来のフィルム転写方式が、作業自体の難しさにより、ロボットを利用するか、又は長い作業工程が要求される問題点を有するので、これを改善して、機械の作動が可能な人員数のみでも生産が可能であるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記のような目的を達成するための本発明は、円形の金属フレーム上に、樹脂を射出(被覆)して形成される通常のステアリングホイールの製造方法であって、上記金属フレームを乾燥機で温度80℃〜100℃で、1時間の間に予熱する予熱段階と、上記予熱段階を経った金属フレームを1次の射出金型に挿入して、不透明な樹脂の材質で金属フレーム上に1次の射出部を射出(被覆)した後、製品を取出して乾燥機に保管し、温度80℃〜100℃で乾燥する1次射出部形成段階と、上記1次の射出部のラインを基準に上側面にパッドプリンティング(pad printing)を実施して、上側パターン部を形成し、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥した後、再度射出部のラインを基準に下側面にパッドプリンティングを実施して、下側パターン部を形成した後、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥して、1次にパターン部を形成する1次パターン部挿入段階と、上記パターン部挿入段階を経った製品を2次の射出金型に挿入して、1次の射出部に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂の材質で2次の射出部を射出した後、製品を取出して乾燥機に保管し、温度80℃〜100℃で乾燥する2次射出部形成段階と、上記2次の射出部のラインを基準に上側面にパッドプリンティングを実施して、上側パターン部を形成し、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥した後、再度射出部のラインを基準に下側面にパッドプリンティングを実施して、下側パターン部を形成した後、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥して、2次にパターン部を形成する2次パターン部挿入段階と、上記2次パターン部挿入段階を経った製品を3次の射出金型に挿入して、2次の射出部に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂の材質で一番外層である3次の射出部を射出する3次射出部形成段階と、上記3次の射出金型から製品を取出して保管した後、上記一番外層である3次の射出部に、革の厚さほどの厚さを引いた厚さを有し、上記パターン部を除外したリムの外周面にポリウレタンを発泡するウレタン発泡段階とを含むことを特徴とする、自動車用ステアリングホイールの製造方法を提供する。
【0032】
また、本発明の他の実施例として、本発明は、円形の金属フレーム上に樹脂を射出(被覆)して形成される通常のステアリングホイールの製造方法であって、上記金属フレームを乾燥機で温度80℃〜100℃で、1時間の間に予熱する予熱段階と、上記予熱段階を経った金属フレームを1次の射出金型に挿入して、不透明な樹脂の材質で金属フレーム上に1次の射出部を射出(被覆)した後、製品を取出して乾燥機に保管し、温度80℃〜100℃で乾燥する1次射出部形成段階と、上記1次射出部形成段階を経った製品の1次の射出部の外周面に、メタルの感じを生かすための真空蒸着を実施した後、乾燥機で3時間以上、温度80〜100℃の条件で保管乾燥する真空蒸着部形成段階と、上記真空蒸着部形成段階を経った製品を2次の射出金型に挿入して、1次の射出部に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂の材質で2次の射出部を射出した後、製品を取出して乾燥機に保管し、温度80℃〜100℃で乾燥する2次射出部形成段階と、上記2次の射出部のラインを基準に上側面にパッドプリンティング(pad printing)を実施して、上側パターン部を形成し、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥した後、再度2次の射出部のラインを基準に下側面にパッドプリンティングを実施して、下側パターン部を形成した後、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥して、パターン部を形成するパターン部挿入段階と、上記パターン部挿入段階を経った製品を3次の射出金型に挿入して、2次の射出部に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂の材質で一番外層である3次の射出部を射出する3次射出部形成段階と、上記3次の射出金型から製品を取出して保管した後、上記一番外層である3次の射出部に、革の厚さほどの厚さを引いた厚さを有し、上記パターン部を除外したリムの外周面にポリウレタンを発泡するウレタン発泡段階とを含むことを特徴とする、自動車用ステアリングホイールの製造方法を提供する。
【0033】
この時、上記1次の射出部を形成する不透明な樹脂は、ポリカーボネートやテレフタル酸ポリエチレン材質のうちのいずれか一つであることが好ましい。
【0034】
そして、上記2次の射出部及び3次の射出部を形成する透明な樹脂は、ポリカーボネートやテレフタル酸ポリエチレン材質のうちのいずれか一つであることが好ましい。
【0035】
特に、本発明の特徴は、上記のような自動車用ステアリングホイールの製造方法のうちのいずれか一つの製造方法により製造された自動車用ステアリングホイールを提供することである。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ステアリングホイールを製造する際に、2〜3mmの厚さで何回多層の層構造に射出し、射出された層と層との間にパターンや絵(あるいは、図案)を、パッドプリンティング(pad printing)方式を適用するか、又は真空蒸着とパッドプリンティングとを混合した方式を適用して挿入することにより、より高級で及び美麗な感じを与えることができる自動車用ステアリングホイールを提供することができ、また従来のウッドグレイン水圧転写工法を代替する新たな製造方法を提供することができる。
【0037】
特に、本発明は、ステアリングホイールの内部にパターン(あるいは、絵)が挿入された後、一番外層の射出の厚さを2〜3mmの水準に維持する場合、パターンの美麗さ及び高級さを倍加させることができ、ボリューム感のあるパターンの演出が可能であるという長所を有する。
【0038】
また、本発明は、従来のフィルム転写方式が、作業自体の難しさにより、ロボットを利用するか、長い作業工程が要求される問題点を改善して、機械を作動することができる人員数のみでも生産が可能であり、投資の費用が従来の水圧フィルム転写工法より1/5に少なくなる長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来の技術に係るステアリングホイールの内部にパターンが挿入された状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る多段射出による内部にパターンが挿入されたステアリングホイールを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る3段射出によるステアリングホイールにおいて、パッドプリンティングが適用されてパターンが挿入された状態の断面の構造を示す図面である。
【図4】本発明に係る3段射出によるステアリングホイールにおいて、真空蒸着とパッドプリンティングとが混合適用されて、パターンが挿入された状態の断面の構造を示す図面である。
【図5】本発明に係るステアリングホイールを製造するための上部金型を示す平面図である。
【図6】本発明に係るステアリングホイールを製造するための下部金型を示す平面図である。
【図7】本発明に係るステアリングホイールを製造するための上下部金型が組み立てられた状態の側端面図である。
【図8】本発明に係るステアリングホイールの金属フレームの形状の構造に応じて、3段射出時の各部位別の射出の厚さの変化を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付の図面を参照して、本発明についてより詳しく説明する。
【0041】
図2に示されたように、本発明に係るステアリングホイールは、従来の技術と同様に、射出成形を通して上端部2及び下端部3に区分されるように、樹脂で形成されるリム(rim)11と、上記リム11と連結され、リム11の内側に設けられる多数のスポーク12と、上記リム11の中央部に位置し、エアバッグモジュール(非図示)が組み立てられ、操向軸(非図示)が連結されるハブコア13とを備える構成を有する。
【0042】
上記のような構成を有する通常のステアリングホイールにおいて、本発明は、グリップを多段(あるいは、多層であり、少なくとも2段以上)に射出して成形し、上記成形の過程で、2〜3mmの厚さで何回多層の層構造に射出し、射出された層と層との間にパターンや絵(あるいは、図案)を挿入して、高級で及び美麗な感じを与えることができるステアリングホイールを提供することにその特徴がある。
【0043】
即ち、本発明に係る多段射出方法は、最上位の被覆を除外した内部の被覆に対して、色、パターン、及び紋を挿入することができる。従来の技術においては、2つの段を有する射出方法として、上位の射出(被覆)を除外した一つの射出(被覆)を有する構造により一つのパターンを挿入するが、本発明においては、2個以上の段を有し、最上位の段を除外した各段(被覆)に一つ以上のパターンを挿入する方法を提供する。
【0044】
ここで、本発明に応じて、上記リム11を多層に射出するためには、金型技術及び射出技術において、後述する色々な要求条件に充足することができるように、金型を製作するべきであることはもちろんである。
【0045】
一番目は、冷却ラインの最適化設計により、射出の全部位における冷却温度を一定に維持する金型製作技術を必要とする。
【0046】
例えば、通常の射出時、ゲート(gate)側は、原料の温度が高く、先端に行くほど温度が低くなるが、多層の射出構造では、全射出区間の原料が低温で同一である場合のみ、両端の収縮防止と、ゲート部のパッドプリンティング(pad printing)されたパターンや文様の剥離を防止することができる。
【0047】
このためには、初期の成形部であるゲート側を集中的に冷却することができる構造の金型を製作することが好ましく、あまり温度を下げると、ウェルドライン(weld line)の発生の可能性に注意しなければならない。
【0048】
二番目は、コールドスラッジウエル(cold sludge well)の理想的な位置指定技術を必要とする。
【0049】
射出時にゲート及びノズルの残物をフィルタリングするコールドスラッジウエルの位置指定を適切にする必要性がある。
【0050】
本発明に係るグリップにおいては、多段射出を通してパターンや絵(あるいは、図案)が層と層との間に挿入されることで、2次射出時に透明性が保障されなければならないので、異物質が流入されるか、又は原料の流れがよくなくて発生するウェルドライン(weld line)やフローマーク(flow mark)等を防止することができる金型製作技術が必要である。
【0051】
三番目は、多層射出の成形時、剥離からパターン及び図案の保護のための理想的なゲートの設定技術を必要とする。
【0052】
即ち、本発明によれば、1次又は2次の射出後、パッドプリンティング(pad printing)と真空蒸着との方法で、パターンや図案を挿入し、その表面上に再度射出する過程を経る。
【0053】
ところが、ゲート部にあるパターンは、多層射出形状の構造的な不合理、射出圧力、及び高い結晶溶融点温度により、略100%に近く剥離現状の発生を製作過程で確認することができるところ、これを防止する理想的なゲート設定技術が必要である。
【0054】
四番目は、金型の耐圧を調節するためのガス孔(gas vent)設定技術を必要とする。
【0055】
即ち、本発明が適用されるステアリングホイールは、射出区間が長くて(通常、350〜400mm以上)、作業時に金型の内部で射出圧力により製品に流動が生じ、これにより射出成形の厚さが片側に向く不均一現状が発生することができるところ、これを防止するために、成形部の金型耐圧の下降に適切であるように、ガス孔設定技術が必要である。
【0056】
特に、従来のABS(acryloninitrile butadiene styrene)、ポリプロピレン(poly propylene:PP)等で射出される材料のガス孔は、0.02〜0.05mm程度であるが、本発明の多層射出に使用されるポリカーボネート(poly carbonate:PC)材料での厚さは、0.3〜0.5mm程度である場合に作業が容易である。ただし、あまり厚くなると、射出材料の飛散の恐れがある。
【0057】
五番目は、多層射出時、ゲートの入口での剥離の防止のための成形部の各区間の間隔設定技術を必要とする。
【0058】
即ち、原料の流れの方向に1次及び2次の射出区間の間隔設定は、リングゲート(Ring Gate)を過ぎる成形部と、1次射出及び2次射出の間隔である1〜1.5倍を維持することが好ましい。
【0059】
一方、本発明に係るステアリングホイールの多段(あるいは、多層)射出による内部のパターン及び図案の挿入技術を適用するためには、次のような射出技術を考慮しなければならない。
【0060】
一番目は、高温で低流動性を有する材料の低温高圧射出技術を必要とする。
【0061】
即ち、高温で低流動性を有する材料の低温高圧射出のための一番目の問題点は、ウェルドラインに対する問題が最も激しく現れるということであり、低温射出によりすでに冷却された表面層を有する流れの先端が他の流れに会うにつれて、フローマークが発生する恐れがある。
【0062】
このようなウェルドラインの生成を防止するための方案として、金型の表面の温度を上げ、スプルーチャネル、ゲート、及びノズルを広め、壁の厚さの急激な変化を避け、適合した排気口を設置することが好ましい。
【0063】
二番目は、層別の射出の厚さを適正に設定することができる射出技術を必要とする。
【0064】
即ち、ゲート部の表面の剥離を最小化するために設定された厚さとして、リングゲートを過ぎて成形部のすぐ前の区間、即ち、革挿入部の最下端部の厚さに対して1〜1.5倍の成形部の厚さを有するように基本的に設計され、2mm以下の薄板の成形の際に、入口側の相対的な高速の流れにより表面剥離の発生頻度が高まり、3倍以上の厚さ、即ち、5mm以上の厚さを有する時、速度の低下によるウェルドライン、収縮、気泡などの不良の発生頻度が高まることが確認されている。
【0065】
三番目は、多層射出時、支持部のない長い区間での揺れを防止することができる射出技術を必要とする。
【0066】
例えば、1段高速、2段中速、3段低速、及び4段高速の形態で射出する方式を使用する。
【0067】
ここで、1段射出は、ノズルの入口からゲートの入口まで、2段射出は、ゲートの入口から成形部の前まで、3段射出は、成形部の開始区間から変形の終わり区間まで、そして4段射出は、最後の成形部まで、射出する4段の圧力調節方式を使用して、インサート(Insert)の変形区間を最小化することが好ましい。
【0068】
四番目は、多層射出による各層間の気泡の発生を防止することができる射出技術を必要とする。
【0069】
即ち、十分な乾燥により、ガス化されやすいワックス(Wax)等の滑剤が少なく含まれている材料を使用することが好ましく、射出圧を高め、補圧の時間を増やすことが好ましい。
【0070】
また、急激な成形部の厚さを有さないようにし、冷却の速度を下げ、シリンダ内の材料の滞留時間を最大限に減らし、材料の成形の温度を低くすることが好ましい。
【0071】
上記のような本発明に係るステアリングホイールの製造に必要な金型技術及び射出技術を適用した金型が、図5から図7に示されている。
【0072】
本発明に係るステアリングホイールは、2〜3mmの厚さの差を置いて多層に射出されるので、各層間の射出のための金型の形状構造は、図5から図7に示された構造と同一の構造を有する。
【0073】
ただし、順次的な射出の回数に応じて変わる射出部の厚さを考慮して、金型別に樹脂が注入される射出部の大きさに少しずつ差を置いているのみである。
【0074】
このような本発明に係るステアリングホイールの製造に使用される金型を、図5から図7を参照して考察すると、次の通りである。
【0075】
図5から図7に示されたように、本発明に係るステアリングホイール1の上端部2、下端部3、及び側面部を射出成形するための金型は、ステアリングホイールの形状構造に合わせて、各部位別に射出が可能であるように、大きく、上部金型20、下部金型30、及びステアリングホイール1を金型から脱型させるイジェクタ(ejector)40から構成される。
【0076】
ここで、上部金型20には、射出のための樹脂を供給するためのゲート21、ランナー22、及びリングゲート23が設けられる。
【0077】
そして、図7に示されたように、上部金型20に対応して組み立てられる下部金型30の下部には、イジェクタ40が設けられ、上記イジェクタ40は、射出が完了された時、下部金型30から射出成形物を離脱させる機能をする。
【0078】
また、上記上部金型20と下部金型30との間に、支持部のないステアリングホイール1の高さを合わせるためのブロック24が設けられ、冷却のための冷却ライン25が備えられる。
【0079】
そして、上記上部金型20と下部金型30とには、ハブコア13、多数のスポーク12、及びリム11の両側面部に対応する金属フレーム10が位置し、ここには樹脂が供給されない。
【0080】
もちろん、上記上部金型20と下部金型30とには、リム11を射出形成するための空間が備えられ、ここに樹脂が供給されることにより、リム11を構成する射出部が形成される。
【0081】
この時、上記リム11を構成する上端部2及び下端部3は、同一の材質で射出成形され、ここに供給される樹脂は、ポリカーボネート(poly carbonate:PC)やテレフタル酸ポリエチレン(Polyethylene Terephthalate:PET)を使用することが好ましい。
【0082】
上記ポリカーボネート(PC)やテレフタル酸ポリエチレン(PET)は、透明又は半透明な材質で形成可能であり、材質の特性上、気泡の発生のような不良を製作過程で簡単に発見することができ、外部から後述するパターン部15を見ることができるようになっている。
【0083】
そして、上記リム11の上端部2及び下端部3を除外した側面部は、ポリオール(polyol)、イソシアネート(isocyanate)、及び着色剤を使用して、常温で発泡させて形成されたポリウレタン(polyurethane)樹脂を使用することが好ましい。
【0084】
特に、上記金型を通して射出する過程で発生する気泡は、美観上美麗でなく、また上記リム11の上端部2及び下端部3が脆性を有して、強度を低下させ、ステアリングホイール1の安定性にも問題を発生させる要因になる。
【0085】
従って、上記射出の過程で最大限に気泡を発生させないようにすることが好ましい。
【0086】
上記のような構成の金型を通して製作される、本発明に係るステアリングホイールの内部にパターンを挿入する方法としては、パッドプリンティング(pad printing)方式を適用するか、真空蒸着とパッドプリンティングとを混合した方式を適用する。
【0087】
ここで、本発明に適用されるパッドプリンティング方式とは、ステアリングホイール1に挿入しようとする文様をデザインし、これをフィルムに出力してエッチング板(又は、腐蝕板)を作り、このように作られたエッチング板をパッド(PAD)設備に付着し、インク塗布機具、インクコップホルダー、及び固定ユニットを通してエッチング板にインクを塗布すると、このような状態でシリコンパッドが、インクを塗布したエッチング板に文様を押し、これを製品に再度押すことにより印刷される方式である。
【0088】
このように、パッド印刷は、エッチング板で一回インク画線を、ゴム、シリコンゴム、膠などの弾性体の転写用パッド部材に移した後、被印刷体に転写する方法である。
【0089】
これは、平面、曲面、凹面、及び凸面がある小さい面積の表面にパッド印刷機を使用して印刷することであり、上記エッチング板は、鉄板を0.2mm程度腐蝕させてエッチング板を作り、濃淡の階調がある製板も可能である。
【0090】
一方、本発明に適用される真空蒸着とは、真空中で金属、金属化合物、又は合金を加熱蒸発させ、蒸発金属又は蒸発金属化合物を目的物質の表面に凝縮させて、薄膜(thin film)を形成させる方法であり、真空鍍金法(vacuum metallizing)ともいう。
【0091】
上記真空蒸着が可能な鍍金物体は、金属でも非金属でもよく、作業の操作は、装置のみが完全であれば、非常に簡単に実施することができる。
【0092】
そして、真空蒸着を行う時に必要な真空度は、10−4〜10−7mmHg(Torr)の高真空であり、真空度が悪ければ、蒸発金属が被鍍金体の表面に達するまで、互いに衝突を繰り返して、粒子が被鍍金体に到達することができないか、又は残留空気中の酸素分子と衝突して酸化されることで、良い薄膜を得ることができないので、注意しなければならない。
【0093】
普通、蒸着の操作は、非常に短時間(15〜30秒)で完了するが、鍍金タンク内の排気に相当な時間がかかる。
【0094】
もちろん、排気の時間は、被蒸着物質の差によっても違うが、真空度を増加させて行けば、プラスチックの場合、種類により被蒸着物質の表面から多量のガスが放出されて、適当な真空度に到達することが難しい。
【0095】
また、被蒸着物は、適当な薬品を使用して、化学的清浄を維持することが好ましく、被蒸着物の表面が粗い場合、研磨及び塗装することが好ましい。
【0096】
上記したように、本発明は、ステアリングホイールを、多段射出を通して製造する過程で、その内部にパターンを形成し、このようなパターンを形成する方法として、パッドプリンティング(pad printing)方式を適用するか、真空蒸着とパッドプリンティングとを混合した方式を適用することができるので、次のようなそれぞれの実施例を通してステアリングホイールを製造することができる。
【0097】
以下、本発明の好ましい実施例に係るステアリングホイールの製造方法を簡略に説明する。
[第1の実施例]
【0098】
本発明に係る第1の実施例は、図3に示されたように、上記した金型を通して多段射出する過程で、パッドプリンティングを適用して複数のパターン部を挿入して、ステアリングホイールを製造する方法と関連づけられている。
【0099】
第1の実施例に係る製造工程は、大きく分けて、予熱段階、1次射出部形成段階、1次パターン部挿入段階、2次射出部形成段階、2次パターン部挿入段階、3次射出部形成段階、ポリウレタン発泡段階、保護被膜部形成段階、及び革縫製段階を含む。
【0100】
ここで、上記予熱段階は、乾燥機で金属フレーム10と一体となるハブコア13(hub core)を予熱する段階である。
【0101】
このために、まず、金属フレーム10と一体に連結されたハブコア13を入庫させて準備する。
【0102】
上記入庫された金属フレーム10と一体に連結されたハブコア13は、多様な検査を通して、ステアリングホイール1の製品の製作に適正なものかを判断される。
【0103】
そして、このように検査が完了された金属フレーム10と一体に連結されたハブコア13は、乾燥機で予熱される。
【0104】
この時、乾燥機の内部の予熱温度は、80〜100℃が適正であり、予熱時間は、1時間程度が適正である。
【0105】
このように、金属フレーム10と一体に連結されたハブコア13を予熱する理由は、金属フレーム10と一体に連結されたハブコア13の表面の水分を増発させるためであるが、これは、金属フレーム10及びハブコア13の表面に水分が含まれている場合、金属フレーム10及びハブコア13と、射出材料との間の剥離、並びに表面気泡の多量発生により、品質及び強度に影響を与えるからである。
【0106】
そして、上記温度条件を80〜100℃に限定する理由は、金属フレーム10及びハブコア13の表面水分を増発させるための乾燥温度であるので、温度を低く設定すると、乾燥時間が長くなり、100℃以上の温度に設定すると、鍍金された金属フレーム10及びハブコア13の場合、鍍金が剥離されて、1次射出の表面に付け出すからである。
【0107】
また、上記予熱時間を1時間に限定する理由は、1時間程度ならば、金属フレーム10及びハブコア13の表面の水分が十分に全て増発するので、それ以上に超過することは意味がない。従って、基準時間を1時間程度に設定することである。
【0108】
上記乾燥機で予熱されて表面の水分が除去された金属フレーム10とハブコア13とは、1次射出金型に挿入されて、内部層(一番内側層)である1次射出部14を射出する。
【0109】
即ち、上記1次射出部形成段階を経ることにより、図5から図7に示されたような上部金型20と下部金型30とに組み立てられる金型に、上記予熱段階を経った金属フレーム10と一体となるハブコア13を挿入する。
【0110】
そして、上記上部金型20に形成されたゲート21を通して不透明な樹脂材質を注入して、上記金属フレーム10上に1次射出部14を射出(被覆)する。
【0111】
この時、上記不透明な樹脂としては、ポリカーボネート(poly carbonate:PC)を使用する。
【0112】
また、金型内に樹脂を注入する際に、上述したように、支持部のない長い区間での揺れを防止することができる射出技術を適用するところ、1段高速、2段中速、3段低速、及び4段高速の形態に射出する方式を使用する。
【0113】
即ち、1段射出は、ノズルの入口からゲートの入口まで、2段射出は、ゲート21の入口から成形部の前まで、3段射出は、成形部の開始区間から変形の終わりの区間まで、そして4段射出は、最後の成形部まで、射出する4段の圧力調節方式を使用して、インサート(Insert)の変形の区間を最小化させることである。
【0114】
その後、上記1次射出部14が形成された製品を取出し、乾燥機に保管し、温度80℃〜100℃で乾燥する。
【0115】
このように、1次射出部14を形成した後、乾燥機で乾燥する理由は、空気中に露出された射出(被覆)表面は水分を含有し、後工程である2次の射出時に接着力及び品質に異常を起こすので、工程の中間に乾燥保管することが必須的に要求される。
【0116】
後述する各工程においても、必要に応じて乾燥機で乾燥を実施することは、同一の理由のためであり、以下においては、乾燥機で乾燥する理由に対して、その説明を省略する。
【0117】
このように、1次射出部形成段階を終えた製品は、1次パターン部挿入段階を行う。
【0118】
上記1次パターン部挿入段階は、上記1次射出部14の外周面に、所望のパターンや絵(あるいは、図案)を挿入する段階であり、上述したように、パッドプリンティング方式を適用する。
【0119】
即ち、上記1次射出部14のラインを基準に、上側面にパッドプリンティングを実施して、上側パターン部を形成する。
【0120】
その後、上側パターン部が形成された製品を、乾燥機で80℃〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥する。
【0121】
そして、再度1次射出部14のラインを基準に、下側面にパッドプリンティングを実施して、下側パターン部を形成する。
【0122】
このように、下側パターン部を形成することにより、最終的に1次パターン部17aが挿入された製品は、乾燥機で80℃〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥する。
【0123】
上記1次パターン部挿入段階を経った製品は、2次射出部形成段階を行う。
【0124】
上記2次射出部形成段階は、図5から図7に示された金型と同一の構造を有し、1次射出部14を形成する1次金型に比べて、射出部の厚さが厚い構造を有する2次金型を使用する。
【0125】
即ち、上記1次パターン部挿入段階を経った製品を2次の射出金型に挿入し、1次射出部14に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂を注入して、2次射出部16を射出する。
【0126】
この時、上記透明な樹脂としては、ポリカーボネート(poly carbonate:PC)を使用し、1次射出部14を射出する時と同様に、1段高速、2段中速、3段低速、及び4段高速の形態に射出する方式を使用する。
【0127】
そして、このように2次射出部16を射出した後、製品を取出して乾燥機に保管し、温度80℃〜100℃で乾燥することにより、2次射出部形成段階を完了する。
【0128】
上記2次射出部形成段階が完了されると、2次パターン部挿入段階を行う。
【0129】
上記2次パターン部挿入段階は、1次パターン部挿入段階と手続的に同一である。
【0130】
即ち、上記2次射出部16のラインを基準に、上側面にパッドプリンティング(pad printing)を実施して上側パターン部を形成し、乾燥機で80℃〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥した後、再度2次射出部16のラインを基準に、下側面にパッドプリンティングを実施して下側パターン部を形成した後、乾燥機で80℃〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥して、2次パターン部17bを形成する2次パターン部挿入段階を仕上げることである。
【0131】
この時、上記1次及び2次パターン部17a、17bは、主に木のきめ又は波の文様に形成することができるが、特定の文様に限定されるものではない。
【0132】
そして、このように上記2次パターン部挿入段階を経った製品を3次の射出金型に挿入し、2次射出部16に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂の材質で一番外層である3次射出部18を射出する3次射出部形成段階を行う。
【0133】
この時、上記3次射出部18を射出する金型は、1次射出部14及び2次射出部16を射出する金型と同一の構造を有する。ただし、3次射出部18の厚さが変わるだけである。
【0134】
また、上記2次射出部16と同様に、3次射出部18を構成する透明な樹脂としては、ポリカーボネート(poly carbonate:PC)を使用する。
【0135】
このように、3次射出部形成段階が完了されると、ポリウレタン発泡段階を行う。
【0136】
上記ポリウレタン発泡段階は、上記3次の射出金型から製品を取出して保管した後、上記一番外層である3次射出部18に、革の厚さほどの厚さを引いた厚さを有し、上記1次及び2次パターン部17a、17bを除外したリム11の外周面に示されていないポリウレタンを発泡することである。
【0137】
そして、ポリウレタンの発泡が完了されると、公知の仕上げの段階であるステアリングホイール1の最外郭に該当する保護被膜部19を形成するための保護被膜部形成段階を行う。
【0138】
上記保護被膜部形成段階は、上記射出部のラインをなくすために表面の研磨を実施し、外部の衝撃及び汚染物質から外部の射出層を保護するために、射出部のクリアー(clear)作業を通してコーティングすることである。
【0139】
このように、保護被膜部19が形成されると、最終的に上記ポリウレタンが発泡された部位に、革縫製を実施する革縫製段階を行う。
【0140】
その後、一定の検査の後、最終に完了されたステアリングホイール1が出荷される。
【0141】
このような本発明の第1実施例に係るステアリングホイール1の内部に形成された1次射出部14及び2次射出部16の外周面に、それぞれ1次及び2次パターン部17a、17bを形成し、2次射出部16及び3次射出部18を透明な樹脂で射出(被覆)して、外部から内部をのぞいて見ることができるようにすることにより、ステアリングホイール1の審美感を倍加させることができる。
[第2の実施例]
【0142】
一方、本発明の第2の実施例は、図4に示されたように、上記した金型を通して多段射出する過程で真空蒸着とパッドプリンティングとを混合適用して、真空蒸着部15とパターン部17とを挿入し、ステアリングホイール1を製造する方法と関連づけられている。
【0143】
第2の実施例に係る製造工程は、大きく分けて、予熱段階、1次射出部形成段階、真空蒸着部形成段階、2次射出部形成段階、パターン部挿入段階、3次射出部形成段階、ポリウレタン発泡段階、保護被膜部形成段階、及び革縫製段階を含む。
【0144】
ここで、上記予熱段階は、乾燥機で金属フレーム10と一体となるハブコア13(hub core)を予熱する段階であり、第1の実施例と同一である。従って、第1の実施例を参照して、その具体的な説明は省略する。
【0145】
そして、上記予熱段階の後、1次射出部形成段階も第1の実施例において記述された内容と同一であるので、その具体的な説明は省略する。
【0146】
ただし、1次射出部14を形成する不透明な樹脂として、ポリカーボネート(poly carbonate:PC)を使用することもできるが、本発明の第2の実施例においては、1次射出部14を形成する樹脂として、テレフタル酸ポリエチレン(Polyethylene Terephthalate:PET)を使用している。
【0147】
このように、1次射出部形成段階を終えた製品は、1次射出部14の外周面に、真空蒸着法を通してメタルの感じを生かすことができるように、真空蒸着部15を形成する真空蒸着部形成段階を行う。
【0148】
即ち、上述したような真空蒸着法(あるいは、真空鍍金法)を通じて、1次射出部14の外周面に真空蒸着部15を形成する。
【0149】
このように、真空蒸着を実施する理由は、従来の技術により具現することができないデザインを得るための方法の一つとして、従来に知られたパッドプリンティング方式は、1次射出部14の色を基本射出顔料の色にし、2次パッドの紋を印刷する方式であるが、真空蒸着法は、1次射出部14の材料のカラーにより具現することができないメタルの感じのカラーを表現するためものである。
【0150】
特に、本発明の第2の実施例の場合、メタルの感じを生かすための真空蒸着の材料として硬質のクロムを使用すると、1次射出の熱膨張率を吸収することができないので、熱膨張率の高いアルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)などの材料を使用して、表面のクラック(CRACK)を防止することが好ましい。
【0151】
この時、射出表面の粗度を管理する必要があり、射出表面の粗度をあまり良くすると、分子間の鎖構造が破壊されて、射出表面自体が剥離される現象が発生し、射出表面があまり粗いと、付着力が下がって塗装された表面の剥離が発生する恐れがあるからである。
【0152】
上記真空蒸着部形成段階を経った製品は、2次射出部形成段階を通して、2次射出部16を形成する作業を行う。
【0153】
上記2次射出部形成段階は、図5から図7に示された金型と同一の構造を有し、1次射出部14を形成する1次金型に比べて、2次射出部16の厚さが2〜3mmの厚い構造を有する2次金型を使用するものであり、第1の実施例において記述された2次射出部形成段階と同一であるので、その具体的な説明は省略する。
【0154】
ただし、上記2次射出部16を形成する透明な樹脂としては、第1の実施例において使用されているポリカーボネート(poly carbonate:PC)を使用することができるが、第2の実施例においては、テレフタル酸ポリエチレン(Polyethylene Terephthalate:PET)を使用している。
【0155】
そして、上記2次射出部形成段階が完了されると、パッドプリンティング方式を利用して、パターン部挿入段階を行う。
【0156】
上記パターン部挿入段階は、第1の実施例において記述された1次及び2次パターン部挿入段階と手続的に同一である。
【0157】
即ち、上記2次射出部16のラインを基準に、上側面にパッドプリンティングを実施して、上側パターン部を形成し、乾燥機で80℃〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥した後、再度2次射出部16のラインを基準に、下側面にパッドプリンティングを実施して、下側パターン部を形成した後、乾燥機で80℃〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥してパターン部17を形成するパターン部挿入段階を仕上げることである。
【0158】
この時、上記パターン部17は、主に木のきめ又は波の文様に形成されることができるが、特定の文様に限定されるものではない。
【0159】
そして、このように上記パターン部挿入段階を経った製品を3次の射出金型に挿入して、2次射出部16に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂の材質で一番外層である3次射出部18を射出する3次射出部形成段階を行う。
【0160】
このように、上記3次射出部形成段階を含めて、その以後の段階であるポリウレタン発泡段階、保護被膜部形成段階、及び革縫製段階は、第1の実施例において記述された段階と同一の段階であるので、本発明の第2の実施例においては、その具体的な技術の内容に対する説明を省略する。
【0161】
このような本発明の第2の実施例に係るステアリングホイール1の内部に形成された1次射出部14及び2次射出部16の外周面に、それぞれメタルの感じの真空蒸着部15とパターン部17とを形成し、2次射出部16及び3次射出部18を透明な樹脂で射出(被覆)して、外部から内部をのぞいて見ることができるようにすることにより、ステアリングホイール1の審美感を倍加させることができる。
【0162】
一方、図8には、本発明に係るステアリングホイールの金属フレームの形状構造に応じて3段に射出される場合の、各部位別の射出厚さの変化を示す図面が示されている。
【0163】
即ち、本発明によれば、内部にパターンが挿入された後、一番外層の射出の厚さを2〜3mmの水準に維持する場合、パターンの美麗さ及び高級さを倍加させることができ、ボリューム感のあるパターンの演出が可能であるという点が、多数の試行錯誤を通して立証されており、特に、リングタイプと形鋼タイプとに係る強度を考慮して、各部位別の厚さを図8及以下の表1を通して確認することができる。
【0164】
【表1】

【0165】
このように、本発明に係るそれぞれの実施例においては、表1に示されたように、射出部を2〜3mmの厚さで何回多層の層構造に射出し、射出された層と層との間にパターンや絵(あるいは、図案)を挿入して、高級で及び美麗な感じを与えることができるようにすることにその特徴がある。
【0166】
以上、本発明は、示された実施例を参考として説明したが、これは例示的なものにすぎず、本技術分野の通常の知識を有する者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解するだろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びこれと均等なものなどにより定められなければならない。
【符号の説明】
【0167】
1:ステアリングホイール
2:上端部
3:下端部
10:金属フレーム
11:リム
12:スポーク
13:ハブコア
14:1次射出部
15:真空蒸着部
16:2次射出部
17:パターン部
17a、17b:1次及び2次パターン部
18:3次射出部
19:保護被膜部
20:上部金型
21:ゲート
22:ランナー
23:リングゲート
24:ブロック
25:冷却ライン
30:下部金型
40:イジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の金属フレーム上に、樹脂を射出(被覆)して形成される通常のステアリングホイールの製造方法であって、
前記金属フレームを乾燥機で、温度80℃〜100℃で、1時間の間に予熱する予熱段階と、
前記予熱段階を経った金属フレームを1次の射出金型に挿入して、不透明な樹脂の材質で金属フレーム上に1次の射出部を射出(被覆)した後、製品を取出して乾燥機に保管し、温度80℃〜100℃で乾燥する1次射出部形成段階と、
前記1次の射出部のラインを基準に上側面にパッドプリンティング(pad printing)を実施して、上側パターン部を形成し、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥した後、再度1次の射出部のラインを基準に下側面にパッドプリンティングを実施して、下側パターン部を形成した後、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥して、1次にパターン部を形成する1次パターン部挿入段階と、
前記1次パターン部挿入段階を経った製品を2次の射出金型に挿入して、1次の射出部に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂の材質で2次の射出部を射出した後、製品を取出して乾燥機に保管し、温度80℃〜100℃で乾燥する2次射出部形成段階と、
前記2次の射出部のラインを基準に上側面にパッドプリンティングを実施して、上側パターン部を形成し、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥した後、再度2次の射出部のラインを基準に下側面にパッドプリンティングを実施して、下側パターン部を形成した後、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥して、2次にパターン部を形成する2次パターン部挿入段階と、
前記2次パターン部挿入段階を経った製品を3次の射出金型に挿入して、2次の射出部に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂の材質で一番外層である3次の射出部を射出する3次射出部形成段階と、
前記3次の射出金型から製品を取出して保管した後、前記パターン部を除外した3次の射出部の外周面に、所望の厚さのリムを構成するために、革カバーの厚さを引いた厚さを有するように、ポリウレタンを発泡するウレタン発泡段階と
を含むことを特徴とする、自動車用ステアリングホイールの製造方法。
【請求項2】
円形の金属フレーム上に樹脂を射出(被覆)して形成される通常のステアリングホイールの製造方法であって、
前記金属フレームを乾燥機で温度80℃〜100℃で、1時間の間に予熱する予熱段階と、
前記予熱段階を経った金属フレームを1次の射出金型に挿入して、不透明な樹脂の材質で金属フレーム上に1次の射出部を射出(被覆)した後、製品を取出して乾燥機に保管し、温度80℃〜100℃で乾燥する1次射出部形成段階と、
前記1次射出部形成段階を経った製品の1次の射出部の外周面に、メタルの感じを生かすための真空蒸着を実施した後、乾燥機で3時間以上、温度80〜100℃の条件で保管乾燥する真空蒸着部形成段階と、
前記真空蒸着部形成段階を経った製品を2次の射出金型に挿入して、1次の射出部に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂の材質で2次の射出部を射出した後、製品を取出して乾燥機に保管し、温度80℃〜100℃で乾燥する2次射出部形成段階と、
前記2次の射出部のラインを基準に上側面にパッドプリンティング(pad printing)を実施して、上側パターン部を形成し、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥した後、再度2次の射出部のラインを基準に下側面にパッドプリンティングを実施して、下側パターン部を形成した後、乾燥機で80〜100℃の温度で、3時間以上保管乾燥して、パターン部を形成するパターン部挿入段階と、
前記パターン部挿入段階を経った製品を3次の射出金型に挿入して、2次の射出部に比べて2〜3mmの厚さの差を有するように、透明な樹脂の材質で一番外層である3次の射出部を射出する3次射出部形成段階と、
前記3次の射出金型から製品を取出して保管した後、前記パターン部を除外した3次の射出部の外周面に、所望の厚さのリムを構成するために、革カバーの厚さを引いた厚さを有するように、ポリウレタンを発泡するウレタン発泡段階と
を含むことを特徴とする、自動車用ステアリングホイールの製造方法。
【請求項3】
前記1次の射出部を形成する不透明な樹脂は、ポリカーボネートやテレフタル酸ポリエチレン材質のうちのいずれか一つであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車用ステアリングホイールの製造方法。
【請求項4】
前記2次の射出部及び3次の射出部を形成する透明な樹脂は、ポリカーボネートやテレフタル酸ポリエチレン材質のうちのいずれか一つであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車用ステアリングホイールの製造方法。
【請求項5】
前記真空蒸着部を形成するための真空蒸着の材料としては、メタルの感じを生かすことができるアルミニウム又は亜鉛のような金属の材質のうちのいずれか一つを使用することを特徴とする、請求項2に記載の自動車用ステアリングホイールの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の自動車用ステアリングホイールの製造方法により製造されたことを特徴とする、自動車用ステアリングホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−264742(P2010−264742A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225414(P2009−225414)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(510219475)ミラテック カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】