説明

自動車用内装部品の製造方法並びにその方法に使用する成形金型

【課題】トリム本体の裏面に機能部品を組み付けてなる自動車用内装部品の製造方法において、材料コスト、加工コストを低減するとともに、機能部品の取付強度を強化する。
【解決手段】ドアトリムは、ドアトリム本体の裏面に側突パッド、クリップ取付座17等の機能部品が溶着固定されており、ドアトリム本体を成形する成形金型は、相互に型開き、型締め可能な成形上下型40,50からなり、成形下型50には、クリップ取付座17等の機能部品を溶着固定するための超音波溶着機構60が内蔵されており、ドアトリム本体のプレス成形と同一工程でクリップ取付座17の溶着加工を行なうことにより、従来のホットメルトフィルムによる接着構造を廃止することができ、材料コストの低減と、クリップ取付座17に代表される機能部品の取付強度を強化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トリム本体の裏面所定位置にクリップ取付座や衝撃吸収パッド等の機能部品を固着してなる自動車用内装部品の製造方法並びにその方法に使用する成形金型に関するもので、特に、廉価に製作できるとともに、機能部品の取付強度を強化した自動車用内装部品の製造方法並びにその方法に使用する成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車の室内には、ドアトリム、リヤコーナートリム等の内装部品が内装されるとともに、ラゲージルームやトランクルーム内にも各種内装部品が内装されている。図10,図11は、これら内装部品の代表例としてのドアトリム1を示す正面図並びに部分断面図であり、ドアトリム1は、保形性並びにドアパネルへの取付剛性を備えた基材2の表面に、表面風合、クッション性を備えた表皮3を貼付した積層構造体が使用されている。そして、クリップ取付座や側突パッド、補強リブ、ウエストフランジ等、各種機能部品が基材2の裏面所定位置に取り付けられるが、クリップ取付座4を例示して説明する。
【0003】
まず、図12に示すように、基材2の原反シート2Aの表面に表皮3をラミネートするとともに、裏面にホットメルトフィルム(クリップ取付座4等の各種機能部品を接着させるために使用するフィルム)aをラミネートした三層構造のものをヒーター装置5により160〜220℃まで加熱処理して基材2の原反シート2Aを加熱軟化処理する。そして、図13,図14は、それぞれクリップ取付座4及び原反シート2Aのセット工程を示すものであり、使用する成形金型6は、それぞれ型締め、型開き可能な成形上下型7,8から構成されており、図13に示すように、成形上下型7,8が型開き状態にある時、成形下型8の凹部8a内にクリップ取付座4をセットする。
【0004】
次いで、図14に示すように、加熱軟化処理した原反シート2Aを同様に型開き状態にある成形上下型7,8内に投入するが、その際、ホットメルトフィルムaを成形下型8に向けてセットする。そして、図15に示すように、成形上下型7,8を型締めすることにより、原反シート2Aを所要形状にプレス成形することで、基材2と表皮3とを所要形状にプレス成形するとともに、ホットメルトフィルムaの接着機能を利用して、クリップ取付座4を基材2の裏面所定位置に強固に取り付けるようにしている。尚、成形金型6にクリップ取付座4等の機能部品をセットし、その後、基材2の原反シート2Aを投入してプレス一体化する従来工法については、特許文献1に詳細に示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−48877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来のドアトリム1の製造方法は、基材2の裏面にクリップ取付座4を接着固定するために、基材2の原反シート2Aの裏面に沿ってホットメルトフィルムaをラミネートしていたため、ホットメルトフィルムaの材料コスト、及びラミネート加工コスト等、コストの高騰化を招くとともに、クリップ取付座4の接着強度が弱く、衝撃によりクリップ取付座4等に脱落、剥離等が生じ易く、機能部品の取付安定性に劣るという欠点が指摘されている。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、トリム本体の裏面所定位置にクリップ取付座等の機能部品を固着してなる自動車用内装部品の製造方法において、廉価に製作できるとともに、クリップ取付座等の機能部品の取付強度を高め、品質性能を高めた自動車用内装部品の製造方法並びにその方法に使用する成形金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者等は鋭意研究の結果、機能部品の接着のために従来から使用していたホットメルトフィルムを廃止して、材料コストを低減するとともに、金型内に溶着機構を内蔵することで、トリム本体の成形と同時に機能部品を強固に溶着固定できることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、成形上下型の型締めにより所要形状に成形されるトリム本体の裏面所定位置に機能部品を溶着加工により固着してなる自動車用内装部品の製造方法において、成形下型に設けられた部品セット用凹部に機能部品をセットした後、トリム本体の原反シートを加熱軟化処理した状態で成形下型の型面上にセットする機能部品と原反シートのセット工程と、成形上下型を型締めすることにより、原反シートを所要形状にプレス成形し、トリム本体を成形するとともに、成形下型の部品セット用凹部に内蔵されている溶着機構を動作させ、機能部品のフランジをトリム本体の裏面に溶着固定するトリム本体の成形並びに機能部品の溶着加工工程とからなることを特徴とする。
【0010】
ここで、自動車用内装部品としては、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム、ルーフトリム等に適用できる。また、トリム本体は、所要形状にプレス成形される基材と、所望ならば基材の表面に貼付され、装飾性能並びにソフト感を付与する表皮とから構成されている。基材としては、加熱軟化処理した後、コールドプレス成形により所望の曲面形状に成形されるものであれば、発泡樹脂シート、熱可塑性樹脂シート、木粉やガラス繊維等のフィラーを混入した熱可塑性複合樹脂シート、熱可塑性樹脂バインダと熱可塑性繊維等、マット状に集積した繊維マット等を使用することができる。使用する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等がある。また、発泡樹脂シートの場合には、上記熱可塑性樹脂中にアゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤を混入したものが使用される。
【0011】
次いで、基材の表面に積層される表皮としては、TPO(サーモプラスチックオレフィン)シート、TPU(サーモプラスチックウレタン)シート、塩ビシート等の合成樹脂シート、あるいは織布、不織布、網布等の布地シート、又は、フィルム、発泡体、網状物等の単体シートの形態で使用するか、あるいは合成樹脂シートや布地シートの裏面にポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォーム等のクッション層を裏打ちした積層シート材料の形態で使用することもできる。
【0012】
また、トリム本体における基材の裏面所定位置に溶着固定される機能部品としては、クリップ取付座、側突パッド、補強リブ、ウエストフランジ等が挙げられる。これら機能部品は、熱可塑性樹脂を射出成形することにより所要形状に成形して構成したものが多い。
【0013】
次に、本発明方法は、成形金型に対して機能部品及びトリム本体の原反シートを加熱軟化処理した後、セットする素材のセット工程と、成形上下型の型締めによるプレス成形でトリム本体を所要形状にプレス成形するとともに、トリム本体の裏面に機能部品を溶着固定するトリム本体の成形並びに機能部品の溶着加工工程の2工程に大別される。
【0014】
ここで、本発明方法に使用する成形金型は、加熱軟化処理した原反シートを所要形状にプレス成形して、トリム本体を所要形状に成形するとともに、このトリム本体の裏面所定位置に機能部品を溶着一体化する成形金型であって、この成形金型は、相互に型締め、型開き可能な成形上下型と、成形下型に内蔵される溶着機構とから構成され、この溶着機構は、サポート部材に支持される発信機に溶着ホーンが取り付けられており、成形下型の部品セット用凹部に機能部品をセットした際、フランジに対応する位置に溶着ホーンの上面が位置するように位置決めされており、溶着ホーンの周囲には制振ゴムが配置されていることを特徴とする。
【0015】
そして、素材のセット工程については、成形下型に設けられている部品セット用凹部に機能部品をセットするが、この凹部には、溶着機構が内蔵されている。例えば、超音波溶着機構を例にとれば、制御盤により制御される超音波溶着発信機が設置されており、この発信機で超音波溶着ホーンに超音波振動が伝達され、超音波振動により発生する摩擦熱で機能部品が基材の裏面所定位置に溶着固定される。従って、素材のセット工程は、成形下型の部品セット用凹部内に機能部品をセットした後、加熱軟化処理したトリム本体の原反シートをその上から載置すれば良い。尚、トリム本体として、基材表面に表皮を積層する積層構造体を使用する際は、基材の原反シートの一面に表皮を予めラミネートしておけば良い。以上が素材の成形金型へのセット工程である。
【0016】
次いで、トリム本体の成形並びに機能部品の溶着加工工程について説明すると、プレス上下型を型締めすることにより、原反シートを所望形状に絞り成形して、所望の曲面形状にトリム本体をプレス成形すると同時に、溶着機構を駆動させる。例えば、超音波溶着機構を使用する際は、超音波溶着発信機から超音波振動を超音波溶着ホーンに加え、超音波振動により発生する摩擦熱で機能部品をトリム本体の基材裏面に確実に溶着固定することができる。また、振動溶着機構を使用する際は、振動溶着発信機から振動を振動溶着ホーンに加えて、振動による摩擦熱で機能部品を基材の裏面所定位置に溶着固定すれば良い。
【0017】
従って、本発明方法を使用すれば、トリム本体の原反シートに従来使用していたホットメルトフィルムをラミネートする必要がないため、ホットメルトフィルムの材料コストや、ホットメルトフィルムを原反シートにラミネートする加工コストを削減でき、コストを大幅に低減するこができる。
【0018】
また、従来のように、ホットメルトフィルムの接着力で基材裏面に機能部品を接着固定する構造ではなく、超音波溶着加工、あるいは振動溶着加工により機能部品を基材裏面に溶着固定するため、接着ムラ等が生じることがなく、取付強度を強化することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法並びにその方法に使用する成形金型によれば、従来のホットメルトフィルムを廃止することができ、ホットメルトフィルムの材料コスト、ホットメルトフィルムのラミネート加工コストを削減でき、コストを低減することができるとともに、機能部品をトリム本体の裏面に固定するのは成形金型に配置した溶着機構により行なうため、接着ムラ等がなく、機能部品の取り付けを強固に行なえ、衝撃時において、機能部品に脱落、剥離等が生じることがなく、機能部品の取付安定性を高めることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法並びにその方法に使用する成形金型の実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0021】
図1乃至図9は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明方法を適用して製作した自動車用ドアトリムを示す正面図、図2,図3は同自動車用ドアトリムの構成を示す各断面図、図4は本発明方法に使用する成形金型の全体構成を示す説明図、図5は同成形金型に内蔵される超音波溶着機構の概略説明図、図6乃至図9は本発明方法の各工程を示す説明図である。
【0022】
まず、図1乃至図3において本発明方法を適用して製作した自動車用ドアトリム10の構成について説明する。図面において、自動車用ドアトリム10は、ベースとなるドアトリム本体20に各種機能部品を装着して構成されている。例えば、ドアトリム本体20の中接部ややフロント側には、インサイドハンドルユニット11が取り付けられており、ドアトリム本体20のほぼ中央には、車室内側に膨出形成され、乗員が肘を掛けて休めるアームレスト20aが設定されている。更に、アームレスト20aの上面にプルハンドルユニット12、パワーウインドウスイッチユニット13が取り付けられているとともに、アームレスト20aの下方には、備品を収容できるドアポケット開口14aが開設されており、このドアポケット開口14aの周囲には、ポケットエスカッション14が開口縁部に装着されている。また、ドアポケット開口14aのフロント側には、スピーカグリル15がドアトリム本体20と一体、あるいは別体に設けられている。
【0023】
次に、ドアトリム本体20の構成について、図2,図3を基に説明すると、ドアトリム本体20は、保形性と図示しないドアパネルへの取付剛性を備えた基材21の表面に表面外観、表面感触を向上させる表皮22が貼付されている。具体的には、基材21は、本実施例では発泡樹脂基材としてポリプロピレン樹脂に発泡剤を添加して、シート状に押し出した発泡シートを加熱軟化処理後、コールドプレス成形により所望の曲面形状に成形されている。そして、ポリプロピレン樹脂以外の熱可塑性樹脂も使用することができる。使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等がある。また、発泡剤としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用される。
【0024】
更に、表皮22は、トップ層22aの裏面にクッション層22bを裏打ちした積層シート材料が使用されており、この実施例では、トップ層22aとしてTPOシート、クッション層22bとしてポリプロピレンフォームが使用されているが、表皮22としては、TPOシートの他に、TPUシート、塩ビシート等の合成樹脂シートや、織布、不織布、網布等の布地シートを使用でき、クッション層22bとしては、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム等のクッション層を代替することもできる。
【0025】
ところで、図1では、ドアトリム本体20の表面側に組み付ける機能部品を図面に即して説明したが、ドアトリム本体20の裏面側、すなわち、基材21の裏面所定位置に固定する機能部品としては、図2に示す側突パッド16、図3に示すクリップ取付座17がその代表的なものである。この他に補強リブやウエストフランジ等の機能部品も図示はしないが組み付けられている。上記側突パッド16は、ドアトリム10の比較的下側で、乗員の腰部がぶつかり易い箇所の裏面に側突パッド16の周縁に設定した取付フランジ161を溶着固定して組み付けられている。そして、図3に示すクリップ取付座17には、エンボス状の着座部171のほぼ中央に係止孔172が開設されており、この係止孔172にクリップ173が保持され、このクリップ173を図示しない車体パネルの取付孔に圧入嵌合する。そして、周縁の取付フランジ174を溶着加工することにより、ドアトリム本体20の裏面所定位置にクリップ取付座17が強固に組み付けられている。
【0026】
次に、上記ドアトリム10の製造方法を説明する前に、その製造方法に使用する成形金型30の構成について、図4,図5を基に説明する。図4において、成形金型30は、相互に型締め、型開き可能な成形上型40と、成形下型50と、成形下型50に内蔵される超音波溶着機構60とから大略構成されている。
【0027】
更に詳しくは、成形上型40は、ドアトリム10の製品形状に合致したキャビティ部41を備えるとともに、昇降シリンダ42に取り付けられており、昇降シリンダ42の駆動により所定ストローク上下動作を行なう。この成形上型40の下方に固定側である成形下型50が位置しており、成形下型50には、成形上型40のキャビティ部41に対応するコア部51が設けられており、成形下型50の4隅部に立設されたガイドポスト52がそれに対応する成形上型40側のガイドブッシュ43内にガイドされて、成形上型40は、適正なプレス姿勢で昇降動作を行なう。
【0028】
そして、成形上型40の下降動作により、成形上型40のキャビティ部41と、成形下型50のコア部51との間でドアトリム本体20が所要形状にプレス成形される。このプレス機能に加えて、成形下型50には、図5に拡大して示す超音波溶着機構60が内蔵されている。すなわち、成形下型50のコア部51の型面には、例えば、クリップ取付座17を加工対象とした場合、部品セット用凹部53がクリップ取付座17の外形状に対応した形状に設けられている。ここで、部品セット用凹部53において、クリップ取付座17における着座部171には、中央の深底部531が対応するとともに、クリップ取付座17の取付フランジ174に対応して深底部531の両側に浅底部532が設けられている。
【0029】
更に、この部品セット用凹部53の浅底部532の下側には、超音波溶着機収容スペース54が設けられており、このスペース54内に超音波溶着機構60が内蔵されている。すなわち、このスペース54内にサポート部材61が設けられているとともに、このサポート部材61の上面に超音波溶着発信機62が支持されており、この超音波溶着発信機62からの振動が超音波溶着ホーン63に伝達される。そして、超音波溶着発信機62は、制御盤64に接続されており、超音波溶着ホーン63の周囲には、緩衝機能を備えた制振ゴム65が配置されている。尚、図中55は、成形下型50におけるコア部51に配管されている冷却配管を示す。また、超音波溶着発信機62からの超音波振動の周波数は、20KHz〜1GHzの範囲内に設定されている。
【0030】
次いで、図6乃至図9に基づいて、ドアトリム10の製造方法の各工程について説明する。まず、図6に示すように、基材21及び表皮22の素材をヒーター装置70により加熱軟化処理するが、この時のヒーター装置70による加熱温度は、160〜220℃であり、基材21の素材である発泡樹脂シートSの一面に表皮22が前もってラミネートされている。
【0031】
そして、図7に示すように、成形金型30が型開き状態にある時、成形下型50のコア部51の部品セット用凹部53内にクリップ取付座17をセットした後、図6に示す加熱工程で所定温度に加熱軟化処理した発泡樹脂シートS(一面に表皮22がラミネートされている)をその上側から載置する。そして、素材のセットが完了すれば、図8に示すように、昇降シリンダ42が駆動し、成形上型40が所定ストローク下降動作して、成形上下型40,50が型締めされる。よって、発泡樹脂シートSが所要形状に絞り加工され、基材21が所要形状に成形されるとともに、基材21の表面に表皮22が一体化され、所望形状のドアトリム本体20が得られる。更に、このプレス工程と同一工程で、図9に示すように、超音波溶着発信機62から所定周波数の超音波振動が超音波溶着ホーン63に伝達され、この超音波溶着ホーン63からの振動による摩擦熱でクリップ取付座17の取付フランジ174が溶融して、基材21の裏面に確実かつ強固にクリップ取付座17が溶着固定される。
【0032】
以上説明したように、本発明方法によれば、ドアトリム本体20の成形と同時にクリップ取付座17が溶着固定されるため、従来必要としていたホットメルトフィルムを廃止でき、ホットメルトフィルムのラミネート加工工程も不要となるため、コストを大幅に低減できるとともに、クリップ取付座17の取付強度についても、ホットメルトフィルムを接着媒体とするよりも、クリップ取付座17の取付フランジ174を直接溶融固着するため、側突等による衝撃が加わってもクリップ取付座17が剥離、あるいは脱落することがなく、クリップ取付座17の取付強度を著しく強固にできるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明した実施例は、ドアトリム10への適用例であるが、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム、ルーフトリム等、内装部品全般に適用することができる。また、基材21の材質として、発泡樹脂シートを使用したが、熱可塑性樹脂シート、複合樹脂シート、熱成形可能な繊維板等を使用することもでき、機能部品としては、クリップ取付座17の他に、側突パッド16、補強リブ、ウエストフランジ等、樹脂製の機能部品であれば、トリム本体裏面に組み付け固定できるもの全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明方法により製作した自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図ある。
【図3】図1中III −III 線断面図である。
【図4】本発明方法に使用する成形金型の全体構成を示す概要図である。
【図5】図4に示す成形金型に内蔵される超音波溶着機構の概略構成を示す説明図である。
【図6】本発明に係るドアトリムの製造方法における原反シートの加熱工程を示す説明図である。
【図7】本発明に係るドアトリムの製造方法における機能部品と原反シートの成形金型へのセット工程を示す説明図である。
【図8】本発明に係るドアトリムの製造方法におけるドアトリム本体のプレス成形工程を示す説明図である。
【図9】本発明に係るドアトリムの製造方法における機能部品の溶着加工工程を示す説明図である。
【図10】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図11】図10中XI−XI線断面図である。
【図12】従来のドアトリムの製造方法における原反シートの加熱工程を示す説明図である。
【図13】従来のドアトリムの製造方法における機能部品のセット工程を示す説明図である。
【図14】従来のドアトリムの製造方法における原反シートの成形金型へのセット工程を示す説明図である。
【図15】従来のドアトリムの製造方法におけるドアトリム本体のプレス成形工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
10 自動車用ドアトリム
16 側突パッド
17 クリップ取付座
171 着座部
174 取付フランジ
20 ドアトリム本体
30 成形金型
40 成形上型
41 キャビティ部
42 昇降シリンダ
43 ガイドブッシュ
50 成形下型
51 コア部
52 ガイドポスト
53 部品セット用凹部
531 深底部
532 浅底部
54 超音波溶着機収容スペース
55 冷却配管
60 超音波溶着機構
61 サポート部材
62 超音波溶着発信機
63 超音波溶着ホーン
64 制御盤
65 制振ゴム
70 ヒーター装置
S 発泡樹脂シート(原反シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形上下型(40,50)の型締めにより所要形状に成形されるトリム本体(20)の裏面所定位置に機能部品(17)を溶着加工により固着してなる自動車用内装部品(10)の製造方法において、
成形下型(50)に設けられた部品セット用凹部(53)に機能部品(17)をセットした後、トリム本体(20)の原反シート(S)を加熱軟化処理した状態で成形下型(50)の型面上にセットする機能部品(17)と原反シート(S)のセット工程と、
成形上下型(40,50)を型締めすることにより、原反シート(S)を所要形状にプレス成形し、トリム本体(20)を成形するとともに、成形下型(50)の部品セット用凹部(53)に内蔵されている溶着機構(60)を動作させ、機能部品(17)のフランジ(174)をトリム本体(20)の裏面に溶着固定するトリム本体(20)の成形並びに機能部品(17)の溶着加工工程と、
からなることを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。
【請求項2】
加熱軟化処理した原反シート(S)を所要形状にプレス成形して、トリム本体(20)を所要形状に成形するとともに、このトリム本体(20)の裏面所定位置に機能部品(17)を溶着一体化する成形金型(30)であって、
この成形金型(30)は、相互に型締め、型開き可能な成形上下型(40,50)と、成形下型(50)に内蔵される溶着機構(60)とから構成され、この溶着機構(60)は、サポート部材(61)に支持される発信機(62)に溶着ホーン(63)が取り付けられており、成形下型(50)の部品セット用凹部(53)に機能部品(17)をセットした際、フランジ(174)に対応する位置に溶着ホーン(63)の上面が位置するように位置決めされており、溶着ホーン(63)の周囲には制振ゴム(65)が配置されていることを特徴とする成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−149410(P2010−149410A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330802(P2008−330802)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】