説明

自動車用燃料タンク

【課題】燃料タンク内の燃料の蒸気圧上昇を抑制するとともに、製造が容易でコストに優れた燃料タンクを提供する。
【解決手段】多層構成からなる合成樹脂層で本体の外壁が形成された自動車用燃料タンクにおいて、外壁10は、少なくとも外側から順に、表皮層11、本体発泡層12、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から一体的に形成されている。表皮層11と内部本体層16は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂で形成され、本体発泡層12は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主に含有する発泡樹脂層として形成され、外部接着剤層13と内部接着剤層15は、それぞれ本体発泡層12と内部本体層16とバリヤ層14の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、バリヤ層14は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクに関するものであり、特に、多層構成からなる合成樹脂層の合成樹脂部材をブロー成形することにより本体が形成される燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用等の燃料タンクの構造としては、金属製のものが用いられていたが、近年、車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性合成樹脂製のものが用いられるようになってきた。
合成樹脂製の自動車用燃料タンクの製造は、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した熱可塑性合成樹脂部材のパリソンを円筒状にしてノズルから下方へ押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、自動車用燃料タンクを製造していた。
【0003】
このブロー成形において、燃料タンクの強度を確保して、燃料油の透過性を防止するために、パリソンは多層構成を有している場合が多い。即ち、この多層構成は少なくとも、燃料タンクの強度を確保する耐衝撃性の樹脂からなる層と、燃料油の浸透を防止するバリヤ性の樹脂からなる層を個々に有し、そしてこの2種類の層を接着する層を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この場合は、燃料タンクの本体の外部本体層と内部本体層を燃料タンクとして必要な強度を保持して、燃料にも強い高密度ポリエチレン(HDPE)で構成し、その間に燃料の浸透を防止するバリヤ層としての中間層から構成されるエチレンービニルアルコール共重合体の熱可塑性合成樹脂部材で形成している(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、燃料タンク内に貯蔵されるガソリン等高い揮発性を有する燃料は、とりまく環境の温度上昇に敏感に反応し容易に気化する性質を持っているが、自動車等に搭載される燃料タンクは、このような性質を持つ燃料を安全に貯留しなければならない。
そして、高い揮発性を有するガソリンは、燃料タンク内では蒸気圧に基づき絶えず気化―液化を繰り返し、平衡状態を保っている。
【0006】
しかしながら、実際には周囲の温度が上昇した場合、ガソリンの気化が促進されて燃料タンク内の蒸気圧が上昇する恐れがある。このような蒸気圧上昇を抑制するために燃料タンクに連結されたキャニスタ(蒸発燃料処理装置)が用いられている。これは一般に、燃料タンクから蒸発燃料を含んだ空気をキャニスタに導入し、活性炭により蒸発燃料を吸着させるとともに、エンジンによる吸気負圧によりキャニスタに空気を導入し、活性炭に吸着した蒸発燃料を活性炭から脱離させることを繰り返すものである。
【0007】
ここで、燃料タンクの環境の温度上昇が大きいと、燃料の気化量が多くなり、これを吸着させるためにキャニスタ(蒸発燃料処理装置)の大型化が必要になる。また別の観点としては、間欠的にエンジンが停止するアイドリングストップ車、たとえばハイブリッド車においては、吸着された蒸発燃料の脱離が行われにくくなることがある。
【0008】
このため、図6に示すように、燃料タンク内の温度上昇を防止するため、燃料タンク101を外付けの断熱材で覆う等の処理がされる場合がある(例えば、特許文献3参照。)。
この場合は、燃料タンク101の外壁110は、最外層111、バリヤ層112と内層113から構成され、外壁110の外表面に断熱材としての被覆材層120が取付けられている。被覆材層120としては、合成樹脂の発泡体又は中空繊維の編物等が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−220840号公報
【特許文献2】特開平9−29904号公報
【特許文献3】特開2009−1048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながらこの場合は、燃料タンク101を覆うための、別途断熱材の被覆材層120を別々に用意しなければならない点、被覆材層120を燃料タンク101に装着するための手間が掛かるとともに、コストが上昇することとなる。
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、燃料タンク内の燃料の蒸気圧上昇を抑制するとともに、製造が容易でコストに優れた燃料タンクを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、多層構成からなる合成樹脂層で本体の外壁が形成された自動車用燃料タンクにおいて、
外壁は、少なくとも外側から順に、表皮層、本体発泡層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層及び内部本体層から一体的に形成され、
表皮層と内部本体層は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂で形成され、
本体発泡層は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主に含有する発泡樹脂層として形成され、
外部接着剤層は、本体発泡層とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、内部接着剤層は、内部本体層とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、
バリヤ層は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成されたことを特徴とする自動車用燃料タンクである。
【0012】
請求項1の本発明では、外壁は、少なくとも外側から順に、表皮層、本体発泡層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層及び内部本体層から一体的に形成されたため、1回の成形で本体発泡層を含む全体を成形することができ、製造が容易であり、コストも低くすることができる。さらに、外壁内部に発泡層を有するため、燃料タンクの断熱効果が高く、燃料タンクの周囲の温度が上昇しても燃料タンク内部の温度の上昇を抑えることができ、燃料の蒸発量の増加を防ぐことができる。
【0013】
各層が一体的に形成されているため、各層を積層して燃料タンクの断熱性、燃料透過防止性、剛性と耐衝撃性の各性能を満足させるとともに、各層間の接着を強固にして、全体の肉厚を薄くして燃料タンクの容量を確保し、重量増加を防止することができる。
また、本体発泡層を有するため、燃料タンクを軽量化することができる。
【0014】
表皮層と内部本体層は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂で形成されているため、充分な剛性を有することができ、燃料と接触してもその剛性が低下することがなく、燃料タンクの強度を大きくし、耐衝撃性も確保することができる。また、剛性の大きい表皮層で本体発泡層を覆うことができ、剛性の低い本体発泡層を保護することができる。
【0015】
本体発泡層は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主に含有する発泡樹脂層として形成されているため、樹脂を発泡させることが容易であり、表皮層と接着性がよく、燃料タンクを成形するときに一回の成形で他の層と同時に成形することができる。さらに、他の層と同種の樹脂を使用する場合は、リサイクルも容易である。
【0016】
外部接着剤層は、本体発泡層とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、内部接着剤層は、内部本体層とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成されている。このため、本体発泡層とバリヤ層、内部本体層とバリヤ層とを強固に接着することができ、外壁の全体の強度を確保することができる。
【0017】
バリヤ層は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成されるため、燃料タンクの内部本体層を浸透した燃料油と燃料蒸気が、本体発泡層と表皮層まで浸透することがなく、車外に蒸発することを防止することができる。
【0018】
請求項2の本発明は、外壁の肉厚は全体が7〜20mmであり、本体発泡層の肉厚は3〜15mmである自動車用燃料タンクである。
【0019】
請求項2の本発明では、外壁の肉厚は全体が7〜20mmであるため、充分な強度を有することができる。外壁の肉厚が7mm未満では充分な強度を有することができず、20mmを超える場合には、燃料タンクの全体の重量が増加して、自動車の軽量化の要請に反することとなる。
本体発泡層の肉厚は3〜15mmであるため、充分な断熱効果を有することができる。本体発泡層の肉厚が3mm未満では充分な断熱効果を有することができず、15mmを超える場合には断熱効果を増加させることがなく無駄であり、燃料タンクの外形が大きくなり、車体のスペースを多く必要となる。
【0020】
請求項3の本発明は、本体発泡層の密度は、0.2〜0.5g/立方センチメートルである自動車用燃料タンクである。
【0021】
請求項3の本発明では、本体発泡層の密度は、0.2〜0.5g/立方センチメートルであるため充分な断熱効果を有するとともに、本体発泡層自体も充分な強度を有することができる。
本体発泡層の密度が0.2g/立方センチメートル未満では、本体発泡層の強度が充分ではなく、成形中や使用中に本体発泡層が変形する恐れがあり、0.5g/立方センチメートルを超える場合には充分な断熱効果を有することができない。
【0022】
請求項4の本発明は、ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)である自動車用燃料タンクである。
【0023】
請求項4の本発明では、ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)であるため、燃料タンクの耐衝撃性の向上を図ることができる。内部本体層で燃料が浸透しにくく、燃料タンクの剛性を確保し、耐衝撃性を向上させることができる。
【0024】
請求項5の本発明は、本体発泡層は、発泡剤として、熱分解形発泡剤を使用する自動車用燃料タンクである。
【0025】
請求項5の本発明では、本体発泡層は、発泡剤として、熱分解形発泡剤を使用するため、燃料タンクを成形するときの樹脂の溶融温度で容易に発泡することができ、発泡剤を樹脂に混入することで、成形と発泡を同時にすることができ、発泡率の制御も容易であり、製造が容易である。
【0026】
請求項6の本発明は、バリヤ層は、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)で形成された自動車用燃料タンクである。
【0027】
請求項6の本発明では、バリヤ層は、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)で形成されたため、ガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下において、あるいはアルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有する。
【0028】
請求項7の本発明は、燃料タンクの本体は、ブロー成形で形成された自動車用燃料タンクである。
【0029】
請求項7の本発明では、燃料タンクの本体は、ブロー成形で形成されたため、多層構造を有する合成樹脂層の大型中空状の燃料タンクを1回の成形で成形でき、自由に形状を選択することができる。
【発明の効果】
【0030】
外壁は、外壁内部に発泡層を有するため、発泡層の厚さを外面に取付けるよりも薄くしても、燃料タンクの断熱効果が高く、燃料タンクの周囲の温度が上昇しても燃料タンク内部の温度の上昇を抑えることができ、燃料の蒸発量の増加を防ぐことができる。また、発泡層が外皮層で覆われているため、発泡層を外からの衝撃に対して、保護することができる。
【0031】
本体発泡層は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主に含有する発泡樹脂層として形成されているため、表皮層と接着性がよく、燃料タンクを成形するときに一回の成形で他の層と同時に成形することができる。さらに、他の層と同種の樹脂であり、リサイクルも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態である燃料タンク斜視図である。
【図2】本発明の燃料タンクの外壁の構造を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を開いた状態の断面図である。
【図4】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型のピンチ板を閉じた状態の断面図である。
【図5】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を閉じた状態の断面図である。
【図6】従来の燃料タンクに一部切欠き正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態である自動車用の燃料タンク1について、図1〜図2に基づき説明する。図1は、本発明の実施の形態の燃料タンク1の斜視図であり、図2は、合成樹脂製の燃料タンク1の外壁10の一部断面図であり、外壁10の多層構造の構成を示すものである。
【0034】
本発明の実施の形態では、燃料タンク1は、図1に示すように、その燃料タンク1に燃料ポンプ(図示せず)等を出し入れするためにポンプユニット取付孔4が上面に形成されている。また、燃料タンク1の側面又は上面には、インレットパイプ(図示せず)から燃料を注入する燃料注入孔5が形成されている。
【0035】
また、燃料タンク1の周囲には外周リブ2が全周に亘り形成されており、外周リブ2のコーナー部等の所定箇所には、数箇所に亘り取付用孔3が形成され、取付用孔3と車体をボルト締めすることにより、燃料タンク1を車体に取付けている。
さらに、燃料タンク1の上面には、内部の燃料蒸気を回収するホース等を接続する各所の取付孔6が形成されている。
【0036】
本発明の燃料タンク1は、ブロー成形、押出多層シート成形等で形成されるが、本実施の形態においては、ブロー成形で成形される燃料タンク1を例にとり説明する。その外壁10は、図2に示すように、外側から順に表皮層11、本体発泡層12、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から形成されている。本実施の形態のブロー成形においては、上記の6層から構成されるパリソンが使用される。なお、6層以上の層構成を有するパリソンを使用することもできる。
【0037】
表皮層11と内部本体層16は、耐衝撃性が大きく、燃料油に対しても剛性が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂で形成される。このため、表皮層11と内部本体層16は、充分な剛性を有することができ、燃料と接触してもその剛性が低下することがなく、燃料タンクの強度を大きくし、耐衝撃性も確保することができる。また、剛性の大きい表皮層11で本体発泡層12を覆うことができ、剛性の低い本体発泡層を保護することができる。表皮層11は、カーボンブラック等の黒色顔料を含有させることができる。
【0038】
ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成されることが好ましい。本実施の形態では、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用した場合を例にとり説明する。
表皮層11と内部本体層16に使用する高密度ポリエチレン(HDPE)は、例えば、具体的には以下のポリエチレンを使用することができる。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、溶融流動速度(MRF:21.6kg/10min)が5〜7であって、密度(g/立方センチメートル)が0.94〜0.95のものを使用することができる。
【0039】
表皮層11は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの5〜20%の厚さを有するように形成することができる。外壁10は全体として7mm〜20mmの肉厚を有することができるため、表皮層11は、0.35mmから4mm程度の範囲の肉厚を有する。これにより、確実に外壁10の表面を形成し、本体発泡層12に密着し、本体発泡層12を覆ことができる。剛性の大きい表皮層11で本体発泡層12を覆うため、剛性の低い本体発泡層12を保護することができる。
【0040】
本体発泡層12は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主に含有する発泡樹脂層として形成されている。表皮層11と本体発泡層12は同じ種類の合成樹脂を使用することが好ましい。この場合は、発泡樹脂層12を形成することが容易であり、表皮層11と同様の合成樹脂を使用するので接着性がよく、燃料タンク1を成形するときに一回の成形で他の層と同時に成形することができる。さらに、他の層と同種の樹脂であり、リサイクルも容易である。
【0041】
本体発泡層12は、表皮層11と同様にポリエチレン樹脂を使用する場合は、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用することができる。さらに、本体発泡層12は、再生材を主材として使用することができる。
高密度ポリエチレン(HDPE)を主材として含有する再生材は、例えば、本願発明のように、使用後に回収された燃料タンク1を粉砕してリサイクルして使用する場合や、燃料タンク1の製造工程中で発生する切れ端や不良品を粉砕して、リサイクルして使用する場合がある。燃料タンク1は、主として高密度ポリエチレン(HDPE)から構成されているため、燃料タンク1を粉砕した再生材は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主として有している。
これ等の再生材を本体発泡層12として100%使用する場合と、再生材を主材として、さらに、新材の高密度ポリエチレン(HDPE)を混合して使用する場合がある。
【0042】
本体発泡層12に、相溶化剤として、例えば、変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させることができる。使用後の回収された燃料タンク1や、製造工程中の端材等をリサイクルした材料は、再生材に含まれるバリヤ層14の構成材料であるエチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)等を含んでいる。この再生材を使用すると、高密度ポリエチレン(HDPE)の中にエチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)が分散して存在する。変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させると、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)が微細化して高密度ポリエチレン(HDPE)の中に分散し、相溶性が向上し、充分に混ざり合うことができる。そのため耐衝撃性を向上させることができる。
【0043】
相溶化剤としての変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンは、例えば以下のものを使用することができる。
変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンは、溶融流動速度(MRF:21.6kg/10min)が0.4〜0.7であって、密度(g/立方センチメートル)が0.930〜0.960のものを使用することができる。
変性ポリエチレンは、無水マレインで変性したものであり、変性量は、0.1%〜5%のものを使用することができる。
【0044】
本体発泡層12は、発泡剤として、化学発泡剤又は物理発泡剤を使用することができる。
化学発泡剤を使用する場合は、化学発泡剤としては熱分解形の発泡剤を使用し、例えば炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド等を使用することができる。これ等の熱分解形発泡剤を使用すると、樹脂に発泡剤を混入して、燃料タンク1を成形するときの樹脂の溶融温度で化学発泡剤が分解して容易に発泡することができ、燃料タンク1の成形と発泡を同時にすることができ、発泡率の制御も容易であり、製造が容易である。
本実施の形態では、アゾジカルボンアミドを使用する。
【0045】
物理発泡剤を使用する場合には、物理発泡剤として、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ化炭化水素、沸点が押し出し温度以下の各種アルコールなどのような液体、又は炭酸ガス、窒素等の無機ガスなどが挙げられる。これらの揮発性発泡剤は、混合して用いることもできる。
【0046】
バリヤ層14は、燃料油の透過が極めて少ない熱可塑性合成樹脂から形成されている。バリヤ層14を構成する熱可塑性合成樹脂は、例えば、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、半芳香族ナイロン(PPA)を使用することができるが、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。
バリヤ層14を有するため、後述する内部本体層16を浸透してきたガソリン等の燃料油を、バリヤ層14でその透過を防ぐことができ、大気中に燃料油が蒸発することを防止できる。
【0047】
バリヤ層14として、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)を使用する場合は、ガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下においても、ガソリンの透過防止性に優れている。さらに、アルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有することができる。
【0048】
外部接着剤層13は、本体発泡層12とバリヤ層14の間に設けられて、この2層を接着し、内部接着剤層15は、内部本体層16とバリヤ層14の間に設けられて、この2層を接着する。外部接着剤層13と内部接着剤層15は、同じ材料で形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層14の両方に接着性を有する合成樹脂で形成される。このため、外部接着剤層13と内部接着剤層15は、バリヤ層14と、本体発泡層12及び内部本体層16とをそれぞれ強固に接着して、それぞれの層が一体的に密着して、燃料タンク1の燃料透過防止性と、強度を確保することができる。
【0049】
外部接着剤層13と内部接着剤層15に使用される接着性の合成樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン樹脂を使用することができ、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、特に、不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹脂が好ましい。これは、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸を共重合、又はグラフト重合させることにより製造することができる。
【0050】
内部本体層16は、表皮層11で述べたように、表皮層11に使用するものと同じ材料である高密度ポリエチレン(HDPE)を使用する。
内部本体層16は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの15%〜70%の厚さを有する。外壁10は全体として7mm〜20mmの肉厚を有するため、1.0mmから14mmの範囲の肉厚を有する。これにより、燃料タンク1の外壁10は、内部本体層16が充分な肉厚を有するため、燃料で膨潤しても剛性を保ち、耐衝撃性を確保することができる。
【0051】
次に、本発明の本体発泡層12を使用した実施例の熱伝導性ついて説明する
まず、本実施例と比較するため、比較例1と比較例2として以下のものを使用する。
比較例1は、燃料タンク1の外壁10として、燃料タンク1の外側から順に、表皮層11、発泡していない高密度ポリエチレン(HDPE)のリサイクル材層、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から形成されているものを使用する。そして、その密度は全体として、0.95g/立方センチメートルであり、全体の肉厚は6mmである。表皮層11、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16は後述する実施例1〜3のものと同じである。
【0052】
比較例2は、燃料タンク1の外壁10として、比較例1のものにさらに表皮層11の外面に、ポリエチレン製の発泡フォームを取付ける。発泡フォームは、燃料タンク1の上面も下面もその全体を覆うように取付けられる。発泡フォームは、燃料タンク1に取付前では、肉厚は27mmであり、その密度は0.033g/立方センチメートルであり、燃料タンク1に取付後は圧縮されて、肉厚は18mmであり、その密度は0.05g/立方センチメートルである。
【0053】
実施例として、1〜3のものを使用することができる。
実施例1〜3は、いずれも燃料タンク1の外壁10として、燃料タンク1の外側から順に、表皮層11、本体発泡層12、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から形成されているものを使用する。そして、本体発泡層12を除いたその密度は全体として、0.95であり、肉厚は3.1mmである。本体発泡層12は、上述のとおり、表皮層11の下面に燃料タンク1の成形時に一体的に積層されて外壁10内に設けられている。
【0054】
実施例1〜3は、本体発泡層12以外は全て同じであり、本体発泡層12のみが異なるため、実施例2と3は、本体発泡層12のみについて説明する。
実施例1において、本体発泡層12は、高密度ポリエチレン(HDPE)のリサイクル材を使用する。本体発泡層12は、肉厚は4.5mmであり、その密度は0.2g/立方センチメートルである。
なお、本体発泡層12の発泡倍率は4.8であり、使用する発泡剤は、アゾジカルボンアミドを使用し、単位ガス量(ml/g)が210の場合には添加量(phr)は、1.9である。
【0055】
実施例2は、本体発泡層12は、高密度ポリエチレン(HDPE)のリサイクル材を使用し、本体発泡層12は、肉厚は7.5mmであり、その密度は0.32である。
なお、本体発泡層12の発泡倍率は3.0であり、使用する発泡剤は、単位ガス量(ml/g)が210の場合には添加量(phr)は、1.0である。
【0056】
実施例3は、本体発泡層12は、高密度ポリエチレン(HDPE)のリサイクル材を使用し、本体発泡層12は、肉厚は14mmであり、その密度は0.5g/立方センチメートルである。
なお、本体発泡層12の発泡倍率は1.9であり、使用する発泡剤は、単位ガス量(ml/g)が210の場合には添加量(phr)は、0.5である。
【0057】
比較例1、2と実施例1〜3の熱伝導率(kcal/mh℃)と熱貫流率(kcal/平方mh℃)は、以下のとおりである。
【表1】

ここで、全体(除発泡層)とは、全体の層のうち本体発泡層12又は発泡フォーム層を除いた部分のデータである。
【0058】
上記表1に記載したように、本体発泡層12を設けると、設けない比較例1と比べて、熱貫流率を大幅に低下させることができる。そして、表皮層11の外面に発泡フォーム層を設けた比較例2と略同様の熱貫流率とすることができる。そして、燃料タンク1の全体の肉厚が比較例2では、24mmであるのに対して、実施例1は7.6mm、実施例2は10.6mm、実施例1は17.1mmと、大幅に減少させることができる。このため、燃料タンク1を全体として小さくすることができる。
【0059】
次に、ブロー成形による本件発明の燃料タンク1の製造方法を、図3〜図5に基づき説明する。
まず、図3に示すように、ノズル9の下方にブロー成形金型40が開いた状態に位置させる。その後、ノズル9からパリソン8を下降させて、パリソン8をブロー成形金型40の内部に導入させる。
【0060】
パリソン8は、燃料タンク1の外壁10を形成するため、外側から順に表皮層11、本体発泡層12、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から形成されている。パリソン8がノズル9から押出されて下降するときに、本体発泡層12は発泡しており、発泡した状態でブロー成形金型40の内部に位置する。
【0061】
そして、図4に示すように、ピンチ板43をスライドさせて、パリソン8の下端を挟持する。ピンチ板43をブロー成形金型40の上部と下部の両方に設けてもよい。
その後、図5に示すように、ピンチ板44をスライドさせてパリソン8を閉じるとともに、ブロー成形金型40を閉じて、スライドカッター46でパリソン8を切断する。
【0062】
そして、エアノズル45からパリソン8の内部に空気を吹き込み、パリソン8の外面をブロー成形金型40に押圧して、燃料タンク1を形成する。このとき、パリソン8の内部の本体発泡層12が潰れないようにするために、ブロー成形金型40の内表面から空気を吸引して、ブロー成形金型40の外側へ排出し、パリソン8とブロー成形金型40の内面との間を減圧にすることによりパリソン8をブロー成形金型40の表面に密着させることが望ましい。この場合には、パリソン8の表皮層11がブロー成形金型40の内面に吸着することにより、本体発泡層12が潰れることなく、燃料タンク1の形状が確実の形成することができる。
その後、ブロー成形金型40を開き、燃料タンク1を取出す。
【符号の説明】
【0063】
1 燃料タンク
10 外壁
11 表皮層
12 本体発泡層
13 外部接着剤層
14 バリヤ層
15 内部接着剤層
16 内部本体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構成からなる合成樹脂層で本体の外壁が形成された自動車用燃料タンクにおいて、
上記外壁は、少なくとも外側から順に、表皮層、本体発泡層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層及び内部本体層から一体的に形成され、
上記表皮層と上記内部本体層は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂で形成され、
上記本体発泡層は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主に含有する発泡樹脂層として形成され、
上記外部接着剤層は、上記本体発泡層とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、上記内部接着剤層は、上記内部本体層とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、
上記バリヤ層は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成されたことを特徴とする自動車用燃料タンク。
【請求項2】
上記外壁の肉厚は全体が7〜20mmであり、上記本体発泡層の肉厚は3〜15mmである請求項1に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項3】
上記本体発泡層の密度は、0.2〜0.5g/立方センチメートルである請求項1又は請求項2に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項4】
上記ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項5】
上記本体発泡層は、発泡剤として、熱分解形発泡剤を使用する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項6】
上記バリヤ層は、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)で形成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項7】
上記燃料タンクは、ブロー成形で形成された請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−168072(P2011−168072A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31016(P2010−31016)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(308039414)株式会社FTS (60)
【Fターム(参考)】