説明

自己混合レーザセンサを有する安全システム及びそのような安全システムを駆動する方法

自己混合干渉で動作するレーザセンサ10を収容したセンサモジュール15を有する安全システムが記載されている。上記レーザセンサ10は、人間の身体等の物体の速度及びオプションとして該レーザセンサ10と該物体との間の距離に関する測定データを発生する。該レーザセンサ10により収集され、且つ、エアバッグコンピュータ等の制御回路30に供給される上記測定データに依存して、該エアバッグコンピュータは、エアバッグ35等の安全手段を駆動して人体の負傷を防止する。更に、このような安全システムを駆動する方法も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己混合干渉で動作するレーザセンサを有する安全システム、及び斯様な安全システムを駆動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパ特許第EP1031471B1号は、放射を反射又は散乱する物体又は人の位置画像を発生する装置を開示しており、該装置は、各放射パルスにより所定の立体角で物体又は人の小さな表面積のみが照射されるような小さなビーム角を持つ放射パルスを放出する照射源と、単一の光感知素子を有すると共に上記放射源に対して所定の空間的関係で配置されて上記物体又は人により反射又は散乱された放射パルスの部分を受光する放射受信器と、制御/評価装置とを有し、該制御/評価装置は、上記放射源を個々の放射パルスの伝達時間が斯かるパルスの放出から受信までから決定され得るように制御すると共に、前記位置画像を上記放射源及び放射受信器の位置、各放射パルスが送出される立体角並びに上記伝達時間の関数として計算する。斯かる装置は複雑であると共に高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、改善された安全システム及び斯様な安全システムを駆動する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の目的は、センサモジュールを有する安全システムであって、該センサモジュールが自己混合干渉(self-mixing interference)で動作する少なくとも1つのレーザセンサを有し、該安全システムが制御回路及び安全手段を更に有し、上記センサモジュールが該センサモジュールに対する物体の少なくとも1つの第1速度成分に直接的又は間接的に関係する第1測定データを発生するように構成され、上記制御回路が上記センサモジュールにより発生された上記第1測定データを入力すると共に、上記安全手段を上記センサモジュールから入力された上記第1測定データに依存して該第1測定データが所定の第1閾値を超えるやいなや駆動するように構成された安全システムにより達成される。
【0005】
上記レーザセンサは、レーザ源及び検出器を有することができる。該検出器はフォトダイオードとすることができる一方、上記レーザ源は例えば側面発光レーザダイオード(side-emitting laser diode)、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)又は垂直外部共振器面発光レーザ(VECSEL)等のレーザダイオードとすることができる。該レーザ源は、レーザ光を発生するためのレーザ共振器(laser cavity)、並びにオプションとしてレーザ光をコリメート及び収束するための光学手段を有する。上記レーザ光が放出される一方、該レーザ光の一部が前記物体により直接的に反射されるか、又は該物体の移動が、例えば該物体の移動により発生される圧力波により該レーザ光の反射を間接的に生じさせるかの何れかである。斯かる直接的に又は間接的に反射されたレーザ光の一部は、上記レーザ共振器に再突入し、該レーザ共振器においてレーザ光の変調を生じさせる。上記検出器は、該レーザ共振器におけるレーザ光の該変調を検出することができるように構成される。当該レーザ源の電気的駆動方式に依存して、物体の距離又は1つの速度成分に関する第1測定データを発生することができる。測定される速度成分は、放出されるレーザ光の方向と共線的(collinear)である。自己混合の原理についての更なる詳細は、米国特許第6,707,027B2号の図2ないし7並びに第1欄第65行〜第2欄第40行及び第2欄第56行〜第3欄第21行の関連する記載に見られる。当該安全システムでは、1個、2個、4個又はアレイのレーザセンサを使用することができる。当該センサモジュールが2以上のレーザセンサを有する場合、該センサモジュールと物体との間の距離は、前記測定データを発生するために使用されるレーザ光を放出するレーザセンサと当該物体との間の距離である。前記第1測定データは、有線又は無線接続を介して前記制御回路に送信することができる。該制御回路は、当該安全システムの目的のためにのみ使用することができるか、又は他の目的のためにも使用される一層複雑なシステムに組み込まれる副回路とすることもできる。一実施例において、該制御回路はハイパスフィルタのみを有することができ、前記安全手段は当該測定データが閾周波数より高い周波数成分を有するやいなや駆動される。他の例として、当該制御回路は、例えばプロセッサ等の計算ユニット及びメモリ装置を有することもできる。この場合、該制御回路は上記第1測定データを上記メモリ装置に記憶された基準データと比較することができ、前記安全手段は該第1測定データが上記基準データにより定められた閾値を超えるやいなや駆動される。当該物体は車両内の人体とすることができる一方、当該安全手段は該車両に組み込まれたエアバッグとすることができ、該エアバッグは上記人体の動きにより駆動される。他の例として、当該車両の一部の動きを上記安全システムにより検出することができ、エアバッグを駆動することができる。更に、当該車両と一緒には移動していない物体の動きを、該車両の外部に対して向けられたレーザセンサを用いて当該安全システムにより検出し、衝突の前にエアバッグ又は複数のバッグを駆動することもできる。車両内のエアバッグに加えて又は該エアバッグの代わりに、ブレーキ及び/又は外部エアバッグ等の他の安全手段を駆動することもできる。当該安全システムをロボットシステムに組み込んで、障害が検出された場合又は該ロボットシステムの動きが所定の閾値を超えた場合に該ロボットシステムの動きを停止させることもできる。特に、当該物体までの距離が既知であるか又は当該レーザセンサの焦点により定められる場合、該物体の1つの速度成分に関する測定データで、臨界的な第1測定データを決定し、当該安全手段の駆動を開始するのに充分である。特に、当該レーザ光をコリメートし及び収束するために使用される光学エレメントにより決定される当該レーザセンサの焦点を、前記第1測定データを信頼性のある方法で測定することができる範囲(焦点範囲)を定めるために使用することができる。該焦点範囲の外側では、反射されたレーザ光は、前記検出器により検出することができるような、前記レーザ共振器におけるレーザ光の変調を発生させるには弱過ぎ得る。人の目は当該レーザ光に直接的に又は間接的に曝され得るので、パワーは最大許容暴露(MPE)値より充分に低く維持される。しかしながら、より高い平均パワーが必要な場合、人の網膜に対する如何なる潜在的光損傷も防止するために目に安全なレーザ(1.55μm波長)を適用することができる。
【0006】
当該安全システムは、物体の臨界的な動きが高速、簡単且つ正確に判定されるという利点を有している。
【0007】
本発明による他の実施例において、前記制御回路は、前記第1測定データを、ある時点において放出されるレーザ光の方向と共線的な前記物体の第1速度成分を決定することにより分析するように構成することができる。これは、前記レーザ共振器におけるレーザ光の変調周波数を上記第1速度成分に比例して決定することにより実行することができる。上記速度成分の方向は、米国特許第6,707,027B2号の第2欄第56行〜第3欄第21行に記載されているように、当該レーザセンサの駆動方式に依存して変調パターンから導出することができる。更に、当該制御回路は、放出されるレーザ光と共線的な当該物体の加速度成分を、該物体の速度成分の時間依存性変化により決定するように構成することができる。上記速度成分及び、オプションとして、上記加速度成分は、閾速度及び、オプションとして、閾加速度と比較することができ、当該安全手段は分析された測定データが上記閾速度及び、オプションとして、上記閾加速度を超えるやいなや駆動される。
【0008】
本発明による他の実施例において、前記制御回路は、更に、前記センサモジュールと前記物体との間の第1距離を決定するように構成される。上記センサモジュールと上記物体との間の第1距離に関する測定データは、前記レーザセンサの駆動方式を変更することにより発生することができる。該第1距離に関する測定データは、上記制御回路に転送され、該制御回路は第1距離を上記測定データ及び該測定データを発生するために使用された駆動方式に基づいて決定する。該センサモジュールは、1つのレーザセンサの駆動方式を変更することにより、上記第1速度成分又は上記第1距離の何れかに関係する測定データを発生するために順次使用することができる。他の例として、該センサモジュールは、少なくとも2つのレーザセンサを有することができ、第1レーザセンサは上記第1距離に関係する測定データを発生し、第2レーザセンサは上記第1速度成分に関係する測定データを発生する。更に、当該制御回路は、上記第1距離及び上記第1速度成分が順次又は並列の何れかで決定されるように構成することができ、その場合において、後者は必ずしもレーザセンサの数により決定される必要はない(例えば、単純だが高速な制御回路は、レーザセンサのアレイに配列されたレーザセンサを順次に読み出すことができる)。上記第1距離の知識は、第1距離の閾と組み合わせて使用して、第1速度成分が第1速度閾を超え、且つ、第1距離が第1距離の閾値より低下した場合にのみ前記安全手段を駆動するようにすることができる。更に、当該制御回路は、上記第1速度閾値を、当該レーザセンサと当該物体との間の第1距離に依存して調整するように構成することができる。第1速度閾値の該適応化は、適応型の安全システムを提供することができる。
【0009】
本発明の他の実施例において、前記センサモジュールに含まれるレーザセンサ又は複数のレーザセンサは、当該レーザセンサと前記物体との間に焦点領域を有することができ、該焦点領域と前記物体との間の距離は少なくとも1レイリ範囲(Rayleigh range)とすべきである。上記焦点領域は、レンズ等の光学エレメントにより定められ得る。当該安全システムは、上記物体の表面の一部の移動又は変形を、該物体又は該物体の表面の一部が上記焦点領域を通過するやいなや検出することができる。この場合、前記検出器は波状光電流信号の大きなバーストを測定する。前記制御回路により、上記物体の速度又は上記物体の表面の一部の変形速度を、上記波状光電流信号の周波数から導出することができる。他の例として、上記物体の移動又は上記物体の表面の一部の変形は、事実上の反射性表面と等価な圧力波面を生じさせ得る。前記レンズセンサの焦点領域を経ての該圧力波面の伝搬は、前記検出器において波状光電流信号のバーストを生じさせ得る。該圧力波の伝搬速度及び大きさは、波状光電流信号の周波数及び振幅に、各々、相関され得る。前記センサモジュールにより測定される該光電流に基づいて、前記制御回路は前記安全手段を駆動することができる。
【0010】
本発明の他の実施例によれば、前記センサモジュールは、該センサモジュールに対する前記物体の少なくとも第2速度成分及び/又は該センサモジュールと前記物体との間の少なくとも第2距離に直接的に又は間接的に関係する少なくとも第2測定データを発生するように構成することができ、前記制御回路は、前記センサモジュールから入力される前記第2測定データに基づいて前記第1測定データが前記所定の第1閾値を超える、及び/又は前記第2測定データが所定の第2閾値を超えるやいなや前記安全手段を駆動するように構成される。上記物体の移動を2以上の次元で測定するために、上記第2速度成分及び上記第2距離は、前記第1速度成分及び前記第1距離とは異なるように選択することができる。他の例として、上記第2速度成分及び第2距離は、当該測定及び上記制御回路による測定データの後の分析に冗長性を導入するために使用することができる。当該センサモジュールは、上記第2測定データを発生させるために、可動ミラー等の適応型光学系を備えた1つのレーザセンサを有することができる。他の例として、該センサモジュールは、上記第2測定データを発生させるために第2レーザセンサを有することができる。更に、当該センサモジュールは、レーザセンサのアレイ又は2以上のアレイのレーザセンサさえも有することができる。1以上のアレイのレーザセンサは、異なるレーザセンサの測定結果の照合(相互チェック)の可能性を提供し、これは当該安全システムの信頼性を向上させ得る。この測定データの照合を実現するために、上記制御回路は良く知られた方法で適合化されねばならない。特定の用途では、冗長性又は多重冗長性さえも重要であり得る。
【0011】
本発明の他の実施例によれば、前記制御回路は前記物体の少なくとも前記第2速度成分を決定するように構成され、該制御回路は、更に、前記物体の前記第1速度成分が所定の第1速度閾値を超え、且つ、前記第2速度成分が所定の第2速度閾値を超えるやいなや前記安全手段を駆動するように構成される。2つの異なる速度成分を知ることは、上記物体の移動を一層良く知ることとなり得、上記安全手段を2つの異なる第1及び第2速度閾値が超過された場合にのみ駆動することができる。更に、上記物体は、互いに対して移動可能な異なる部分を有する柔らかい物体であり得る。このような柔らかい物体の第1速度成分のみを決定することは、上記安全手段を駆動する時点を決定するには不十分であり得る。
【0012】
本発明の他の実施例では、当該安全システムは、前記物体の重さに関する物体データを発生するように構成された少なくとも1つの物体センサを有することができ、前記制御回路は、前記物体データを入力すると共に、前記物体の運動学的データを前記レーザセンサにより発生される前記第1測定データと前記物体センサにより供給される前記物体データとの組み合わせに基づいて決定し、且つ、前記安全手段を該運動学的データに基づいて駆動するように構成される。上記物体センサは、圧電センサ等の圧力センサ、例えば上記物体の重量により生じる表面の変位を決定するように構成されたレーザセンサ、又は上記物体データを発生するために使用することが可能な如何なる他の種類のセンサとすることもできる。上記物体の重さに関する追加の情報を、上記安全手段の駆動を上記物体の実際の運動学的データに適応化させるために使用することができる。何故なら、上記物体の運動量の少なくとも1つの成分を、前記制御回路により、例えば前記第1速度成分及び上記物体の重さに関する測定データを用いて決定することができるからである。
【0013】
本発明の他の実施例において、前記制御回路はエアバッグコンピュータとすることができ、前記安全手段は少なくとも1つのエアバッグとすることができ、前記物体は人体であり得る。例えば人体の頭部の第1速度成分に関する測定データを、エアバッグを駆動するために使用することができる。別個のレーザセンサにより又は1以上のアレイによってさえ測定される人体の部分の速度成分に関する第2、第3、第4又はそれ以上の測定データを、上述したように使用することができる。更に、人体の異なる部分に関する距離を決定し、上述したように使用することができる。前記センサモジュールは、前記人体の頭部の第1速度成分及び第1距離に直接的に関係する第1測定データを発生するように構成することができ、該センサモジュールは更に前記人体の胸部の第2速度成分及び該センサモジュールと前記人体の該胸部との間の第2距離に直接的に関係する第2測定データを発生するように構成され、前記エアバッグコンピュータは前記第1速度成分、前記第1距離、前記第2速度成分及び前記第2距離を決定すると共に、前記第1速度成分が第1速度閾値を超え、及び/又は前記第2速度成分が第2速度閾値を超えるやいなや前記少なくとも1つのエアバッグを駆動するように構成される。該エアバッグコンピュータは、更に、前記第1速度閾値を前記第1距離に基づいて調整し、及び/又は前記第2速度閾値を前記第2距離に基づいて調整するように構成することができる。更に、前記センサモジュールは、前記人体の頭部の第3速度成分及び該センサモジュールと上記人体の頭部との間の第3距離に直接的に関係する第3測定データを発生するように構成することができ、前記エアバッグコンピュータは上記センサモジュールから入力される該第3測定データに基づいて上記第3速度成分及び上記第3距離を決定すると共に、前記第3速度成分が第3速度閾値を超えるやいなや少なくとも第2エアバッグを駆動するように構成される。当該安全システムは、前記人体の重量に関する物体データを発生するように構成された少なくとも1つの物体センサを更に有し、前記エアバッグコンピュータは、前記物体データを入力すると共に、前記人体の運動学的データを前記レーザセンサにより発生される前記第1測定データと前記物体センサにより供給される前記物体データとの組み合わせに基づいて決定し、且つ、前記安全手段を該運動学的データに基づいて駆動するように構成される。前述したように、上記人体の重さに関する追加の情報を、前記エアバッグ又は複数のエアバッグの駆動を上記人体の実際の運動学的データに適応化させるために使用することができる。何故なら、上記人体の総運動量の少なくとも1つの成分を、前記エアバッグコンピュータにより、例えば前記第1速度成分及び上記人体の重さに関する物体データを用いて決定することができるからである。
【0014】
上記物体センサの代わりに又は該物体センサに加えて、当該安全システムは、自己混合干渉で動作すると共に移動物体の速度に関係する第3測定データを発生するように構成された少なくとも1つのレーザセンサを備える側面衝撃センサモジュールを更に有することができ、前記移動物体は当該安全システムが取り付けられた車両の外側に有り、前記エアバッグコンピュータは前記第3測定データが所定の第3閾値を超えるやいなや前記少なくとも1つのエアバッグ及び/又は追加のサイドエアバッグを駆動するように構成される。当該安全システムが取り付けられた車両に接近する物体を衝突破壊の前に検出することは、エアバッグ及び/又はサイドエアバッグを駆動するために利用可能な時間を増加させ得る。他の例として、上記側面衝撃センサモジュールは、車両の外側表面の一部の変形に直接的に又は間接的に関係する変形測定データを発生するように構成することができ、前記エアバッグコンピュータは、上記側面衝撃センサモジュールから入力される変形測定データに基づいて前記少なくとも1つのエアバッグ及び/又は追加のサイドエアバッグを駆動するように構成される。特に、自動車のドアの変形は高速且つ敏感な方法で検出することができ、人体を保護するためにサイドエアバッグを駆動することができる。
【0015】
本発明による他の実施例において、当該安全システムは、車両に組み込まれると共に該車両の加速度に関係する加速度データを発生するように構成された加速度センサを更に有することができ、前記エアバッグコンピュータは前記第1測定データが前記第1閾値を超え、及び/又は前記加速度データが所定の加速度閾値を超えるやいなや前記少なくとも1つのエアバッグを駆動するように構成される。上記加速度センサは、自動車、オートバイ等の車両の加速度を全三次元で決定することができる微小電気機械(MEM)センサとすることができる。上述した冗長性により、幾つかの独立したセンサの組み合わせは信頼性のある安全システムを提供することができる。
【0016】
第2の目的は、センサモジュールを有する安全システムを駆動する方法により達成され、該方法において、前記センサモジュールは自己混合干渉で動作する少なくとも1つのレーザセンサを有し、前記安全システムは制御回路と安全手段とを更に有し、前記レーザセンサはレーザ共振器を備える少なくとも1つのレーザと少なくとも1つの検出器とを有し、当該方法は、
− 前記レーザ共振器内でレーザ光を発生させるステップと、
− 前記レーザ光により物体を照明するステップと、
− 前記物体により前記レーザ光の一部を反射させるステップと、
− 前記反射されたレーザ光及び前記レーザ共振器内の光波を干渉させるステップと、
− 前記反射されたレーザ光及び前記レーザ共振器内の光波の干渉を前記検出器により感知するステップと、
− 前記物体の少なくとも第1速度成分に直接的に又は間接的に関係する第1測定データを前記検出器により発生させるステップと、
− 前記第1測定データを前記制御回路により入力するステップと、
− 前記制御回路により、前記入力された第1測定データを所定の閾値に対して評価するステップと、
− 前記第1測定データが所定の第1閾値を超えるやいなや前記安全手段を駆動するステップと、
を有する。評価するとは、ここでは、例えば上記第1測定データがハイパスフィルタによりフィルタされ、前記物体の高い速度に関する所定の周波数閾より高い周波数成分のみが該ハイパスフィルタを通過することを意味すると理解される。他の例として、上記第1測定データを、前記第1閾値を有する基準データと比較することができる。
【0017】
更なるフィーチャは、後述され、上記態様の何れかと結合又は組み合わせることができる。特に他の従来技術を超える他の利点は、当業者にとり明らかとなるであろう。尚、本発明の請求項から逸脱することなしに、多数の変形例及び変更例を実施化することができる。従って、本発明の当該形態は解説のためのみであり、本発明の範囲を限定しようするものではないと明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、VCSEL及び集積化されたフォトダイオードを有するレーザセンサの概要図である。
【図2】図2は、レーザセンサのアレイの概要図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施例の概要図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例による安全システムに含まれるセンサモジュールの第1の光学的構成を示す。
【図5】図5は、本発明の一実施例による安全システムに含まれるセンサモジュールの第2の光学的構成を示す。
【図6】図6は、幾つかの群のレーザセンサを使用した、本発明の他の実施例を示す。
【図7】図7は、本発明によるレーザセンサを用いた速度測定を示す。
【図8】図8は、本発明による安全システムに組み込むことができる側面衝撃センサモジュールの一実施例を示す。
【図9】図9は、本発明による安全システムに組み込むことができる側面衝撃センサモジュールの他の実施例を示す。
【図10】図10は、レーザセンサを衝突破壊(クラッシュ)前サイドエアバッグセンサとして使用する、本発明による他の実施例の部分を示す。
【図11】図11は、本発明の他の実施例を概略図示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、各図において同一の符号は同様の部分を示している。
【0020】
図1は、本発明によるレーザセンサ10において、レーザ源100として使用し得るVCSELを、検出器200として使用し得る集積化されたフォトダイオードと共に示している。上記VCSELは、層構造を有すると共に、当該レーザの内部共振器(cavity)を形成する2つの分布ブラッグ反射器(DBR)2及び4の間に埋め込まれた電気的にポンピングされた利得媒体3(GaAs内に埋め込まれたInGaAs量子井戸)により形成されている。該DBRの一方はpドーピングされ、他方はnドーピングされて、利得領域への効率的な電流供給を可能にする。この例においては、下側のDBRがnドーピングされる一方、上側のDBRがpドーピングされている。しかしながら、原理的に、逆の順序のドーピングも可能である。利得媒体3への電流注入のための動作電流は、当該注入電流を適時に変調するための制御ユニット(図示略)に接続された適切な電源(図示略)により供給される。所望の距離又は速度情報を得るための放出レーザ放射7の周波数シフトは、この電流変調により達成される。適切な電流形状(駆動方式)が、n及びp型DBRの電気接触子(図には示されていない)を介して上記利得領域に供給される。下側のDBR4の下面に取り付けられたフォトダイオードである検出器200は、ミラー4からの少量の放射の漏れを測定し、従って目標(図には示されていない)からの後方散乱光8の当該レーザに対する影響を監視し、この情報から上記目標物体の距離又は速度を導出することができる。速度に関しては、放出されたレーザ放射7に対して共線的な(同一線上の)速度成分のみを決定することができる。上記フォトダイオードは、適切な基板1上に成長させられる。前記VCSEL構造の更なる層は、次いで、該フォトダイオード上に成長させられる。この基板上の斯かる層構造は、VCSELチップ用の低コスト製造方法で製造することができる。更に、レーザセンサのアレイを、容易な方法で製造することができる。代替的方法においては、上側DBR2で開始するVCSEL構造を、光学的に透明な基板(放出されるレーザ放射7の波長に依存して)上に成長させることができる。上記フォトダイオードは、下側のDBR4上に成長させられ、従って斯様なチップの後面に取り付けられる。この場合、レーザ放射は上記基板を介して放出される。他の例として、上記フォトダイオードは上記VCSELとは独立に製造され、該VCSELとは別のステップで、例えばフリップ・チップ接続、基板搬送(substrate transfer)等により組み合わせることができる。
【0021】
VCSELの代わりとして、VECSEL(垂直外部共振器面発光レーザ)を使用することもできる。この場合、上側DBR2上の適切な距離に配置及び調整された外部レーザミラー(図示略)が、外部共振器を形成する。上側DBR2の反射度は、該外部共振器からのフィードバックを可能にするためにVCSELと比較して低減される。適切なIR反射特性を持つ体積ブラッグ格子(VBG)が、上記の外部レーザミラーを形成することができ、これは、代わりに例えば金属又は誘電体でコーティングされたミラーとすることもできる。VCSELとは対照的に、利得媒体は内部レーザ共振器系(DBR2及び4の間に挟まれた利得媒体3)がレーザ閾を超えさせないようなレベルで電気的にポンピングされるが、レーザ動作を達成するために上記外部共振器、即ち外部ミラーのフィードバックを必要とする。この様にして、放出されるレーザ放射7の特性は、VCSELチップ上の短い内部共振器というよりは上記外部レーザ共振器により決定される。従って、放出されるレーザ放射7の発散角も減少させることができ、モード品質も純粋なVCSEL型レーザと比較して向上させることができる。該レーザは道路又は車輪等の目標物体上に良好に収束させることができ、感知用途にとり必要とされるレーザ共振器内へのフィードバック8(目標物体からの後方散乱放射)を改善することができる。VCSEL又はVECSELの代替として、端面発光(edge-emitting)レーザを使用することもできる。
【0022】
図2は、本発明による安全システムに組み込むことかできるレーザセンサのアレイを有するセンサモジュールの概略図である。該センサモジュールは車両(図示略)に取り付けることができる。この実施例においては、レーザ源(VCSEL)100のアレイが組み合わされている。更に、各レーザ源100には、マイクロレンズ41及び曲面ミラー42等の光学装置が追加されている。レーザ源100により放出されたレーザ放射11は、マイクロレンズ41によりコリメートされ、更にミラー42により異なる焦点領域12に収束される。曲面ミラー42の曲率は、各単一レーザ源の信頼度をチェックするために使用することができる冗長度を得るように互いに隣接するレーザ源の焦点領域12が重なり合うように選択される。更に、異なる焦点領域12を持つレーザビームの数を増加させるために、レーザ源100の二次元アレイを、二次元で湾曲された曲面ミラー42との組み合わせで使用することもできる。マイクロレンズ41の異なる位置が、焦点領域12までの異なる距離を生じさせる。個々のマイクロレンズ41の異なる焦点距離も、そのようにするであろう。人体(図示略)は一定量の光を後方散乱させ、該光は曲面ミラー42及びマイクロレンズ41によりレーザ源100のレーザ共振器内に収束される。フィードバックの量はレーザパワーを決定し、これが、当該VCSELの背後において検出器200(即ちレーザ源100と統合されたフォトダイオード)により監視(モニタ)される。上記フォトダイオードに接続された制御回路30により、個々の信号は増幅され、周波数スペクトルが分析される。当該信号が到来するレーザセンサを知ると共に異なる結果を比較すれば、焦点領域12内にある人体の異なる部分の速度成分を計算することが可能となる。1以上の速度成分が1以上の速度閾値を超える場合、例えば1以上のエアバッグ(図示略)がインターフェース31を介して駆動される。当該アレイのレーザ源のうちの幾つかは、車両に対する人体の相対位置を決定することにより当該安全システムの精度を改善するために、人体までの距離を連続的に測定するために使用することができる。他の例として、レーザ源100の駆動回路又は複数の駆動回路(図示略)による駆動方式を変更することにより、全体のアレイを速度測定と距離測定との間で順次切り換えることもできる。エアバッグ又は複数のエアバッグの駆動に加えて、上記制御回路による駆動信号の後にハンドル(ステアリングホイール;図示略)を人体から遠ざけることもできる。
【0023】
図3に示す本発明による安全システムの第1実施例において、当該センサモジュールは2つのレーザセンサ10及び物体センサとして使用される他のレーザセンサ20を有している。上記2つのレーザセンサは、車両300のルーフ又は運転室に設置することができる。第1のレーザセンサにより放出されるレーザ光7は人体400の頭部領域401に収束される一方、第2のレーザセンサ10のレーザ光7は人体400の胸部領域402に収束される。人間の重量に比例する座席基体の垂直変位を測定するために(サブミクロンの空間分解能)、物体センサ20が座席基体301に設置される。これらレーザセンサ及び物体センサの測定データは、エアバッグコンピュータ350に送信される(有線又は無線接続を介して)。該測定データに基づいて、ハンドル302に組み込まれたエアバッグ35が、該エアバッグに(有線又は無線接続を介して)送られる駆動信号により駆動される。他の実施例では、他のレーザセンサ10を、人体の前に(前後衝突検出)又は側部に(窓/ドア領域、側面衝突検出)、又は座席の背部において(2列目の搭乗者保護)当該車両に設置することができる。
【0024】
本発明の一実施例による安全システムに含まれるセンサモジュールの光学構成が図4に示されている。2つのレーザセンサ10からのレーザ光は、単一の光学エレメント43により目標領域に収束される。これらレーザセンサ間の或る傾斜角度が、第1レーザセンサ10及び第2レーザセンサ10が人体の頭部領域401及び胸部領域402を各々測定することを保証する。平らなガラス又はプラスチック光学窓44が、当該レーザセンサを周囲汚染から保護するが、この目的のためには、上記光学エレメント43で充分であり得る。第1レーザセンサ10により放出されるレーザ光と、第2レーザセンサ10により放出されるレーザ光との間の傾斜角度により、光学窓44からの正反射は前記自己混合干渉には寄与しない。光学エレメント43は、少なくとも2つの要件を満たすべきである。第1に、第1レーザセンサ10からのレーザ光は概ねコリメートされるか又は頭部領域401上に弱く収束され、第2レーザセンサ10からのレーザ光は概ねコリメートされるか又は胸部領域402上に弱く収束される。座席の設定又は衝突の何れかによる人体の実際の位置の変化は、検出される自己混合信号の振幅に大きな影響を与えないであろう。第2に、光学エレメント43の開口数は、反射された光子を充分に収集する程度に大きくなければならない。大開口単一光学エレメント43は、高感度用途にとり有利である。
【0025】
本発明の他の実施例による安全システムに含まれるセンサモジュールの他の光学構成が図5に示されている。各レーザセンサ10はVCSELを有し、該VCSELはレーザセンサ10のレーザ源100である。2つのレーザセンサ10からのレーザ光は、2つのマイクロレンズ41により目標領域に収束される。これらレーザセンサ10間の或る傾斜角度が、第1レーザセンサ10が頭部領域401を測定し、第2レーザセンサ10が人体の胸部領域402を測定することを保証する。マイクロレンズ41は、上記VCSELの放射窓に直に集積される。光学窓44と上記VCSELとの間の距離は、図4に示した実施例におけるより大幅に小さい。
【0026】
図6は、本発明による他の実施例を示す。前部衝突の前又は間における人体400の運動学的データを特徴付けるために、1以上のレーザセンサ10を有する少なくとも3つのセンサ群が、車両300の種々の位置で使用される。即ち、車両300の運転室に組み込まれた少なくとも1つのレーザセンサ10を有するセンサ群Aは、ハンドル(図示略)又は車体に対する搭乗者の接近速度(closing speed)を検出し;車両300の座席320に組み込まれた少なくとも2つのレーザセンサ10を有するセンサ群Bは、人体400が着座している座席320に対する人間の速度をモニタし(座席から車体までの距離は、レーザセンサ10により又は他のタイプの変位若しくは距離センサにより容易に得ることができる);1つのレーザセンサ10を有する物体センサ20であるセンサ群Cは、人体の重量に比例する座席基体の垂直方向変位を検出する。別々のセンサ群により発生された全測定データは、エアバッグコンピュータ(図示略)に送信される。該エアバッグコンピュータにより決定された人体400の運動学的データ(例えば、人体の運動量(momentum)の1つの成分)に基づいて、1つのエアバッグ又は複数のエアバッグが駆動される。
【0027】
図7に示されるように、車両又は座席に対する人体400の速度は、2つのレーザセンサ10、10'により高精度で決定することができる。レーザセンサ10、10'により放出されたレーザ光は、光学エレメント41により人体400上に収束される。これらレーザセンサは、搭乗者の座席又はハンドル又は前部の車体の何れかに取り付けることができる。第1レーザセンサ10及び第2レーザセンサ10'の焦点距離は、δLの差を持つように設定される。激しい前部衝突の間において、人体400は位置Aから位置Bへ移動するであろう。位置Aにおいては、第1レーザセンサ10のレーザ焦点からの最大の光フィードバックにより、該第1レーザセンサ10により光電流信号201のバースト(測定データ)が発生されるであろう。同様にして、位置Bでは、第2レーザセンサ10'によりSMI信号201のバースト(測定データ)が発生されるであろう。斯かる2つのSMI信号バーストに間の時間遅延がδtにより示される。多焦点のレーザセンサに基づいて、車体、ハンドル又は搭乗者座席に対する搭乗者の相対速度は、δL/δtにより決定される。他の例として、位置A及び位置Bにおける瞬時速度を、T及びTの時点でレーザセンサ10及び10'により発生される測定データのドプラ周波数から、各々、直接的に導出することもできる。時点T及びTにおける速度の直接的測定は、速い応答(エアバッグの駆動)が可能であり、加速度を導出することができるという利点を有し得る。加速度に関する付加的情報は、エアバッグの駆動時間の制御の改善を可能にする。
【0028】
図8に示された本発明による他の実施例において、当該安全システムは、自己混合干渉で動作する側面衝撃センサモジュールを有する。該側面衝撃センサモジュールは、レーザ源として使用されたVCSELと検出器として使用された垂直に集積されたフォトダイオードとを備える1つのレーザセンサ10、及びマイクロレンズ41、並びに上記VCSELに対してフィードバックを導入する拡散性反射面310を有している。上記VCSEL及び反射面は、車両のドア空洞の各側部に取り付けられている。上記反射面は、上記VCSELの焦点の背後の或る距離に、例えば数センチメートル又は少なくとも1レイリ範囲(Rayleigh range)に配置される。図8に示されるように、車両のドアは激しい側面衝突の間に変形され、反射面310はレーザセンサ10の焦点領域12を横切って移動する。光フィードバック強度の変化により、波状光電流信号の大きなバーストが観察され得る。車両ドアの変形速度は、該波状光電流信号201の周波数に線形に比例する。この測定データはエアバッグコンピュータ(図示略)により分析され、当該車両ドアの変形速度が所定の閾値を超えた場合にサイドエアバッグ(図示略)が駆動される。側面衝突の位置を識別すべく、廉価で正確で且つ高度に集積化されたレーザ装置として、複数のVCSELを当該側面衝撃センサモジュールに種々の位置で組み込むことができる。更に、斯かる複数のVCSELは、図9に示されるように、車両のドアの変形を間接的に検出することができる。激しい側面衝突の場合、車両ドアの変形は、ドア空洞内の媒体(例えば空気)360に、これらVCSELに向かって伝搬する圧力波面361を生じさせる。空気密度の急激な変化を伴う圧力波面361は、事実上の反射面と等価である。該圧力波面361が上記VCSELの焦点領域を介して伝搬する際に、光電流201のバーストが観察される。この場合も、上記圧力波の速度及び大きさは、対応する波状光電流信号201の周波数及び振幅に相関する。圧力波面の複雑な形状に対応すると共に側面衝撃の方向を評価するために、高速応答で非接触な側面衝撃センサモジュールとして、異なる入射角を持つ複数のVCSEL型レーザセンサ10を採用することができる。
【0029】
本発明の他の実施例が、図10に示されている。レーザセンサ10を有する安全システムが、衝突破壊(クラッシュ)前サイドエアバッグセンサとして使用される。レーザセンサ10により放出されるレーザ放射は、例えば車両ドア370の外側の位置する点又は焦点領域に収束される。該レーザ光は、好ましくは、衝突破壊を決定するために関連する速度成分を決定するために、車両ドア370の表面に対して実質的に垂直に放出されるようにする。レーザセンサ10の焦点と車体との間の距離は、Lとして示され、該距離は臨界的な衝突破壊前領域の深さ(奥行き)を定める。該臨界衝突破壊前領域に侵入する移動物体700は、光電流信号201のバーストを生じさせるが、該信号はエアバッグコンピュータ(図示略)に伝送される測定データの一部であると共に、レーザセンサ10に集積されたフォトダイオードにより発生されるものである。該光電流信号201の周波数は上記移動物体700の接近速度に比例する。上記エアバッグコンピュータは、急速に接近する移動物体700の存在を車両ドア空洞の厚さより大幅に大きな距離で決定する。当該レーザセンサの1mの焦点距離(L)及び移動物体700の50km/hの接近速度(V)において、該移動物体700は実際の衝突破壊より72ms前に検出することができる。更に、衝突破壊の確率を、該エアバッグコンピュータにより決定することができる。衝突破壊の確率(移動物体700の速度に依存する)が所定の閾値を超える場合、サイドエアバッグ(図示略)が当該エアバッグコンピュータにより駆動される。現在の圧力又は加速度レート感知性サイドエアバッグセンサと比較して、衝突破壊前レーザセンサ10の大きなリードタイム(準備期間)は、側面衝突の間における人体の一層早く且つ良好な保護を可能にする。安全に関わるセキュリティシステムとして、このような安全システムの最も信頼性のある使用のために、幾つかの対策が採られねばならない。第1に、必ずしも車両ドアには限定されない大きな側面衝突領域(例えば、エンジンハウジング又はトランクに隣接する領域、ヘッドライトハウジング又は尾灯ハウジング内等)を監視するために、レーザセンサ10のアレイが採用されるべきである。第2に、移動物体700の接近速度は、光電流信号201のドプラ周波数から直接導出することができる。サイドエアバッグ又は他の安全関連部品は、近づいている目標の接近速度Vが所定の閾値を超えた場合にのみ駆動されるであろう。更に、図7に関連して説明したように、検出の信頼性を更に改善するために、異なる焦点距離を持つレーザセンサ10の第2の群を使用することができる。光電流信号のバーストが、最初に、センサ群Aにより観測される。約δL/Vの時間遅延の後に、センサ群Bが第2のSMI信号のバーストを観測しなければならない。そうでない場合、サイドエアバッグは使用(deploy)されないであろう。更に、例えば鳥等の小さな物体がサイドエアバッグを動作させ得るのを防止するために、サイドエアバッグは、1つのセンサ群における2つ、3つ又はそれ以上の隣接するレーザセンサ10が移動物体700を検出した場合にのみ駆動し又は使用することができる。衝突破壊前エアバッグセンサを有する安全システムは、側面衝突により生じる損害を最小にするために、他の衝突破壊前安全部品(例えば、能動操縦、警報、座席自動位置決め等)に結合することができる。
【0030】
図11は、本発明による安全システムの主要図であり、該システムは3つのレーザセンサ10を備えるセンサモジュール15と、物体センサ20と、加速度センサ25とを有している。センサモジュール15、20、25により供給される測定データは、エアバッグコンピュータである制御回路350により入力される。該エアバッグコンピュータは、車両及び人体の両方の動力学を考慮に入れながらエアバッグ駆動条件の系統的評価を実行し、エアバッグ35が使用されるか、何時エアバッグが膨張されるか、個々の人体にとりどれが最適な膨張かを精密に決定する。
【0031】
以上、本発明を特定の実施例及び特定の図面に関連して説明したが、このことは、限定的な意味で解釈されるべきでなく、本発明は添付請求項によってのみ限定されるものである。また、請求項における如何なる符号も、これら請求項の範囲を限定するものと見なしてはならない。また、記載された図面は概略的且つ非制限的なものである。図において、構成要素の幾つかの寸法は、図示の目的で、誇張されており、寸法通りには描かれていない。また、本説明及び請求項における"有する"なる動詞及びその活用形の使用は、他の構成要素又はステップを排除するものではない。また、単数形の名詞は、特にそうでないと言及しない限り、この名詞の複数形を含む。
【0032】
更に、当該説明及び請求項における第1の、第2の、第3の等の用語は、類似の構成要素の間を区別するために使用されており、必ずしも順番又は時間的順序を記載しているものではない。このように使用されている用語は適切な状況下では入れ換え可能であり、以上に記載した本発明の実施例は、ここに記載又は図示したもの以外の順番で動作することができると理解されたい。
【0033】
更に、当該説明及び請求項における上、下(底)、第1、第2等の用語は、説明の目的のためのものであり、必ずしも相対的位置を記載するものではない。このように使用されている用語は適切な状況下では入れ換え可能であり、以上に記載した本発明の実施例は、ここに記載又は図示したもの以外の向きで動作することができると理解されたい。
【0034】
開示された実施例の他の変形例は、当業者によれば、請求項に記載された発明を実施化する場合に、図面、開示及び添付請求項の精査から理解し及び実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己混合干渉で動作する少なくとも1つのレーザセンサを備えたセンサモジュールを有する安全システムであって、該安全システムは制御回路と安全手段とを更に有し、前記センサモジュールは該センサモジュールに対する物体の少なくとも1つの第1速度成分に直接的に又は間接的に関係する第1測定データを発生し、前記制御回路が、前記センサモジュールにより発生される前記第1測定データを入力すると共に、前記センサモジュールから入力される前記第1測定データに基づいて該第1測定データが所定の第1閾値を超えるやいなや前記安全手段を駆動する安全システム。
【請求項2】
前記制御回路が、前記物体の前記第1速度成分を決定すると共に、該物体の第1速度成分が所定の第1速度閾値を超えるやいなや前記安全手段を駆動する請求項1に記載の安全システム。
【請求項3】
前記制御回路が、更に、前記センサモジュールと前記物体との間の第1距離を決定する請求項2に記載の安全システム。
【請求項4】
前記制御回路が、更に、前記第1距離に基づいて前記第1速度閾値を調整する請求項3に記載の安全システム。
【請求項5】
前記レーザセンサが該レーザセンサと前記物体との間に焦点領域を有し、該焦点領域と前記物体との間の距離が少なくとも1レイリ範囲である請求項1ないし4の何れか一項に記載の安全システム。
【請求項6】
前記センサモジュールが、該センサモジュールに対する前記物体の少なくとも第2速度成分及び/又は該センサモジュールと前記物体との間の少なくとも第2距離に直接的に又は間接的に関係する少なくとも第2測定データを発生し、前記制御回路が、前記センサモジュールから入力される前記第2測定データに基づいて前記第1測定データが前記所定の第1閾値を超え、及び/又は前記第2測定データが所定の第2閾値を超えるやいなや前記安全手段を駆動する請求項1ないし4の何れか一項に記載の安全システム。
【請求項7】
前記制御回路が、前記物体の少なくとも前記第2速度成分を決定すると共に、該物体の前記第1速度成分が所定の前記第1速度閾値を超え、且つ、前記第2速度成分が所定の第2速度閾値を超えるやいなや前記安全手段を駆動する請求項6に記載の安全システム。
【請求項8】
前記物体の重量に関する物体データを発生する少なくとも1つの物体センサを更に有し、前記制御回路が、前記物体データを入力すると共に、前記物体の運動学的データを前記レーザセンサにより発生される前記第1測定データと前記物体センサにより発生される前記物体データとの組み合わせに基づいて決定し、且つ、前記安全手段を該運動学的データに基づいて駆動する請求項1ないし4の何れか一項に記載の安全システム。
【請求項9】
前記制御回路がエアバッグコンピュータであり、前記安全手段が少なくとも1つのエアバッグであり、前記物体が人体である請求項1ないし4の何れか一項に記載の安全システム。
【請求項10】
前記センサモジュールは前記人体の頭部領域の第1速度成分及び該センサモジュールと前記人体の該頭部領域との間の第1距離に直接的に関係する第1測定データを発生し、前記センサモジュールは更に前記人体の胸部領域の第2速度成分及び該センサモジュールと前記人体の該胸部領域との間の第2距離に直接的に関係する第2測定データを発生し、前記エアバッグコンピュータは前記第1速度成分、前記第1距離、前記第2速度成分及び前記第2距離を決定すると共に、前記第1速度成分が第1速度閾値を超え、及び/又は前記第2速度成分が第2速度閾値を超えるやいなや前記少なくとも1つのエアバッグを駆動する請求項9に記載の安全システム。
【請求項11】
前記エアバッグコンピュータが、前記第1速度閾値を前記第1距離に基づいて調整し、及び/又は前記第2速度閾値を前記第2距離に基づいて調整する請求項10に記載の安全システム。
【請求項12】
前記物体の重量に関する物体データを発生する少なくとも1つの物体センサを更に有し、前記エアバッグコンピュータが、前記物体データを入力すると共に、前記物体の運動学的データを前記レーザセンサにより発生される前記第1測定データと前記物体センサにより供給される前記物体データとの組み合わせに基づいて決定し、且つ、前記安全手段を該運動学的データに基づいて駆動する請求項9に記載の安全システム。
【請求項13】
自己混合干渉で動作する少なくとも1つのレーザセンサを備えた側面衝撃センサモジュールを更に有し、該側面衝撃センサモジュールは移動物体の速度に関係する第3測定データを発生し、前記移動物体は当該安全システムが取り付けられた車両の外側に有り、前記エアバッグコンピュータは前記第3測定データが所定の第3閾値を超えるやいなや前記少なくとも1つのエアバッグ及び/又は追加のサイドエアバッグを駆動する請求項9に記載の安全システム。
【請求項14】
車両に組み込まれた加速度センサを更に有し、該加速度センサは前記車両の加速度に関係する加速度データを発生し、前記エアバッグコンピュータは前記第1測定データが前記第1閾値を超え、及び/又は前記加速度データが所定の加速度閾値を超えるやいなや前記少なくとも1つのエアバッグを駆動する請求項9に記載の安全システム。
【請求項15】
センサモジュールを有する安全システムを駆動する方法であって、前記センサモジュールは自己混合干渉で動作する少なくとも1つのレーザセンサを有し、前記安全システムは制御回路と安全手段とを更に有し、前記レーザセンサはレーザ共振器を備える少なくとも1つのレーザと少なくとも1つの検出器とを有し、当該方法が、
− 前記レーザ共振器内でレーザ光を発生させるステップと、
− 前記レーザ光により物体を照明するステップと、
− 前記物体により前記レーザ光の一部を反射させるステップと、
− 前記反射されたレーザ光及び前記レーザ共振器内の光波を干渉させるステップと、
− 前記反射されたレーザ光及び前記レーザ共振器内の光波の干渉を前記検出器により感知するステップと、
− 前記物体の少なくとも第1速度成分に直接的に又は間接的に関係する第1測定データを前記検出器により発生させるステップと、
− 前記第1測定データを前記制御回路により入力するステップと、
− 前記制御回路により、前記入力された第1測定データを所定の閾値に対して評価するステップと、
− 前記第1測定データが所定の第1閾値を超えるやいなや前記安全手段を駆動するステップと、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−523700(P2011−523700A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509053(P2011−509053)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051871
【国際公開番号】WO2009/138912
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】