自立走行車両システム及び無線タグの配置構造
【課題】配置されている無線タグの配置を工夫することで、無線タグに記録されている情報を管理することなく少ない情報で自立走行車両の自立走行を実現する自立走行車両システム及び無線タグの配置構造を提供する。
【解決手段】7種類に識別されている情報のうち何れか1つが記録されている無線タグ11を等間隔に規則正しく並べる。そして、無線タグリーダ13が複数取り付けられた自立走行車両12で、無線タグ11の情報を読み取り予め設定されている情報に基づいて進行方向の推測と微調整とを実現する。
【解決手段】7種類に識別されている情報のうち何れか1つが記録されている無線タグ11を等間隔に規則正しく並べる。そして、無線タグリーダ13が複数取り付けられた自立走行車両12で、無線タグ11の情報を読み取り予め設定されている情報に基づいて進行方向の推測と微調整とを実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグを利用した無人運搬車両の自立走行車両システム及び無線タグの配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人運搬車両としては、走行エリアにおける床や天井等に走行経路となる誘導線やアルミテープを予め配置しておき、車両に取り付けられたセンサーによって当該誘導線やアルミテープを検知して目的地まで移動するものが知られている。こうした無人運搬車両においては、走行経路が変更になる場合は、走行経路となる誘導線やアルミテープを再配置するため、配置に掛かる膨大な工事日数や費用を要する。
最近では、例えば特許文献1に記載された技術のように、走行経路に低価格化が進む無線タグを用いて、使用する個々の無線タグに位置座標や移動方向といった様々な情報を記録して、容易な経路変更を可能とした自立走行車両システムが提案されている。
【特許文献1】特開2002−341939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術の場合、容易な経路変更を可能にするため、走行エリア一帯に無線タグを配置し、個々の無線タグに自立走行するための情報として位置座標や移動方向等の様々な情報を個別に記録している。この場合、走行エリアが広大な場合や複雑な走行経路を要求される場合には、配置に用いられる無線タグの数が膨大な量となる。その数多くの無線タグに位置座標や移動方向などの様々な情報を正確に記録することはかなりの労力を要する。
【0004】
また、無線タグに記録する情報は、自立走行を可能にするための位置座標や移動方向等その量は大きく、さらには、配置される無線タグの数も相当な数であることから、管理すべき総情報量は膨大になる。そのため、この膨大な情報量を管理するためのデータベースを備える高機能な情報処理演算機器が必要となる。
このような配置に用いられた全ての無線タグの情報が管理可能なデータベースを備える高機能な情報処理演算機器は、相当程度の大きさになり、車椅子等の小型な自立走行車両に配置した場合、障害物回避等のために取り付けられている他の様々なセンサーや機器の場所を圧迫することになる。
【0005】
また、走行経路の新規設定や変更を行う場合、無線タグに記録されている移動方向の情報を更新したり、データベースで管理している情報を更新したりする必要がある。
本発明は、こうした従来技術の問題点に鑑みなされた発明であって、配置する無線タグの配置を工夫して、無線タグに記録する情報を管理せず、少ない情報で自立走行を実現するとともに経路変更などの際に無線タグの記録情報を更新する必要がない自立走行車両システム及び無線タグの配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、走行エリアに配置されている複数の無線タグと、前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両とを備えた自立走行車両システムであって、前記自立走行車両は、前記無線タグに記録されている情報を読み取る複数の無線タグ情報受信部と、前記無線タグからの情報に基づいて進行方向を制御する自立走行制御部とを備えており、前記複数の無線タグは、1の無線タグの周囲に、等間隔となるように別の無線タグが配置されていることを特徴とする
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自立走行車両システムにおいて、前記複数の無線タグは、走行エリアに隙間なく敷き詰められた複数の正六角形をなす仮想パネルの中心に位置するように配置されており、1の無線タグと、その周囲に配置されている6の無線タグとにはそれぞれ異なる識別情報が記録されていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自立走行車両システムにおいて、前記自立走行車両は、目的地までの走行経路を推測するとともに、走行経路を微調整する進行方向算出部と、新規走行経路を設定及び変更する走行経路選択処理部とを更に備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、走行エリアに配置されている複数の無線タグと、前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両とを備えた自立走行車両システムで用いられる無線タグの配置構造であって、前記複数の無線タグを、走行エリアに隙間なく敷き詰められた複数の正六角形をなす仮想パネルの中心に位置するように配置することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の無線タグの配置構造において、前記複数の無線タグは、1の無線タグと、その周囲に配置されている6の無線タグとで構成されるグループが繰返し配置されている構成となっており、前記グループ内の無線タグにはそれぞれ異なる識別情報が記録されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自立走行車両システム及び無線タグの配置構造によれば、次のような効果がある。
・走行エリアに配置される複数の無線タグへ記録される識別情報は個別に異なる情報を記録する必要がない。そのため、正確に無線タグへ情報を記録する労力を軽減することができる。
・無線タグへ記録された情報の管理が不要となることで、データベースを備える高機能な情報処理演算装置が不要となりシステムを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した自立走行車両システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態における自立走行車両システムは、走行エリアに配置される複数の無線タグ11と、当該無線タグ11に記録されている情報に基づいて走行エリアを自動で走行する自立走行車両12とを含んで構成されている。
図2に示すように、自立走行車両12の底部には、無線タグ情報受信部としての複数の無線タグリーダ13が取り付けられている。この複数の無線タグリーダ13によって、走行エリアに配置されている無線タグ11に記録されている識別情報が読み取られる。無線タグリーダ13は各無線タグリーダ13の受信エリア14が重ならないように等間隔に9個配置されている。
【0011】
また、図3に示すように、自立走行車両12には、無線タグリーダ13に加えて、表示部15、入力部16、表示・入力制御部17、自立走行制御部18、経路情報格納部19、車両走行制御部20が備えられている。
表示部15は、例えば液晶パネル等であり、走行状況の確認のための各種情報等が表示される。入力部16は、例えばキーボードやマウス等であり、目的モード(自立走行開始や新規走行経路設定など)の選択や、目的地の選択の際にユーザによって使用される。表示・入力制御部17では、入力部16において入力されたユーザからの情報や表示部15に表示される情報を切替える制御等が実行される。
【0012】
自立走行制御部18には、進行方向算出処理部21、走行経路選択処理部22、経路情報読み取り処理部23が備えられている。進行方向算出処理部21では、目的地までの進行方向が、無線タグリーダ13で受信された無線タグ11の情報に基づいて決定されるとともに、修正角度の算出が実行される。また、走行経路選択処理部22では、新規走行経路が設定される際に無線タグリーダ13で受信された無線タグ11の情報に基づいて走行経路情報が生成される。経路情報読み取り処理部23では、目的地までの走行経路情報が経路情報格納部19から取得されたり、新規走行経路の経路情報が経路情報格納部19へ登録されたりする。
【0013】
経路情報格納部19には、走行経路情報が格納される。例えば、無線タグ11を識別するために当該無線タグ11に数字に関する情報が記録された場合、目的地と目的地までの走行経路を表す数列情報24が格納される。無線タグリーダ13では、複数の無線タグ11を識別するために記録されている情報が当該無線タグ11から読み取られる。車両走行制御部20では、自立走行車両12の走行開始、停止、速度、進行方向が制御される。
【0014】
自立走行車両12では、走行エリアに配置されている無線タグ11から送信される情報が複数の無線タグリーダ13で受信される。そして、当該情報に基づいて目的の走行経路を自立走行制御部18で探索しながら走行する。無線タグ11には、走行エリア全体で7種類に識別することができる情報のうち、何れか1つの情報が記録されている。例えば1から7までの番号に関する情報の何れか1つが無線タグ11に記録されると、目的の走行経路は1から7までの数列情報24で表され、自立走行車両12は目的の番号を順次探索することで自立走行することができる。
【0015】
次に、無線タグ11の配置方法について説明する。
図4に示すように、無線タグ11を7種類に識別するために、1から7までの数字のうち何れか1つの数字に関する情報が無線タグ11に記録される。無線タグ11は、正六角形の形状をなす仮想パネル25が隙間なく並べられた場合の、それぞれの仮想パネル25の中心部分に規則正しく等間隔となるように配置されている。すなわち、1つの無線タグ11の周囲6方向には、それぞれの無線タグ11が等間隔となるように別の無線タグ11が配置されている。
【0016】
また、1つの無線タグ11と、隣接する異なる番号に関する情報が記憶されている無線タグ11との距離26は等しく、同じ番号に関する情報が記憶されている無線タグ11の距離27は異なる番号間の距離26よりも遠くする。つまり、記憶されている情報が異なっている7種類の無線タグ11がグループをなして走行エリアに繰返し配置される。こうした無線タグ11の配置方法によって、進行方向算出処理部21が目的地までの番号の位置を順次推測しながら、走行することが可能となる。
【0017】
次に、自立走行車両12が有する座標系について説明する。
目的地までの進行方向を決定するために、自立走行車両12には車両座標系31を付与する。例えば、図5に示すように、自立走行車両12の中心を原点として進行方向をY軸32、進行方向左右をX軸33とする。そして、自立走行車両12に取り付けられた複数の無線タグリーダ13には座標34が与えられる。例えば、無線タグリーダ13Eには、座標(0,0)が与えられている。
【0018】
次に、走行エリアが有する座標系について説明する。
図6に示すように、目的地までの進行方向を決定するために、走行エリアに空間座標系35を付与する。例えば、走行エリアの左から右方向をX軸36、手前から奥方向をY軸37とする。すると、無線タグ11は規則正しく等間隔に配置されているため、隣接する番号の空間座標系35における角度が番号の差により算出することができる。
【0019】
なお、空間座標系35における角度には、次のようなルールが定められている。
(1)隣合う異なる番号は、+3から−3の範囲
(2)+3の番号は、空間座標系における60°の位置
(3)+2の番号は、空間座標系における120°の位置
(4)+1の番号は、空間座標系における0°の位置
(5)−1の番号は、空間座標系における180°の位置
(6)−2の番号は、空間座標系における−60°の位置
(7)−3の番号は、空間座標系における−120°の位置
【0020】
図6において、番号4番に関する情報が記憶されている無線タグ11の位置から7番に関する情報が記憶されている無線タグ11の位置へ移動する場合、空間座標系35における角度は、7から4を減算した結果が+3であることから、ルールに従うと番号7に関する情報が記憶されている無線タグ11の位置はX軸方向から60°の方向にあることが分かる。このように目的番号が空間座標系35においてどの方向に位置するのかを推測することができる。
【0021】
次に、自立走行処理の概要について説明する。
図7に示すように、自立走行車両12が自立走行を開始する場合、ユーザによって表示部15や入力部16を用いて自立走行モードが選択される。自立走行モードが選択されると、経路情報格納部19に登録されている目的地の一覧が表示部15に表示されて、当該一覧からユーザによって入力部16を用いて目的地が選択される(ステップS701)。目的地が選択されると走行経路となる数列情報24が決定され、進行方向算出処理部21で進行方向が決定され自立走行運転が開始される(ステップS702)。
【0022】
進行方向は、まず、経路情報である数列情報24の先頭から番号が取り出され、取り出された目的番号が、経路情報読み取り処理部23において、無線タグリーダ13から取得された番号中に存在するか検索される。具体的には、数列情報24に先頭番号が存在するか否かが検索される(ステップS703)。次に、先頭番号が存在する場合には、数列情報24から先頭番号が削除される(ステップS704)。一方、ステップS703において、数列情報24に先頭番号が存在しない場合、すなわち、経路情報である数列情報24から取出す番号がない場合には、目的地に到着したとして車両走行制御部20によって自立走行車両12の運転が停止される(ステップS705)。
【0023】
次に、ステップS706において、数列情報24の先頭から取り出された目的番号が、無線タグリーダ13から取得された番号中に存在しなかった場合には、無線タグ11から受信されている番号が2つ以上存在するか否かが判定される(ステップS707)。そして、受信されている番号が2つ以上存在する場合には、当該2つ以上の番号から目的番号の方向が推測されて、進行方向が車両走行制御部20によって修正される(ステップS708)。
【0024】
一方、ステップS707において受信されている番号が2つ以上存在しない場合には、進行方向算出処理部21において目的番号への方向が推測できないとして車両走行制御部20によって自立走行車両12の運転が停止される(ステップS709)。ステップS706において、数列情報24の先頭から取り出された目的番号が、無線タグリーダ13から取得された番号中に存在する場合には、当該目的番号が車両座標系31における原点(自立走行車両12の中心)に位置するか否か判断される(ステップS710)。
【0025】
目的番号の車両座標系31における位置は、図5に示すように、受信した無線タグ11に割当てられている座標34に対応している。目的番号が、車両座標系31における原点に位置しない場合には、車両走行制御部20によって目的番号へ進行方向が修正される(ステップS711)。一方、目的番号が、車両座標系31における原点に位置している場合には、走行経路上のあるポイントに達したとして、次のポイント、つまり目的番号が変更される。
【0026】
次に、目的番号への修正進路について説明する。
例として、図7におけるステップS706、S7107時点についての説明をする。
図8に示すように、ベクトルaは、車両座標系31の原点から目的番号へのベクトルを表しており、目的番号を5番に関する情報が記録されている無線タグ11とした場合、当該番号が受信された無線タグリーダ13の座標34を用いて算出される。ベクトルbは、進行方向のベクトルを表しており、ここではY軸を進行方向としている。目的番号への修正進路は、ベクトルaとベクトルbとの関係で算出される。
【0027】
次に、目的番号への進行方向算出処理について説明する。
図9に示すように、目的番号への進行方向算出処理は、図7のステップS711で実行される)。まず、目的番号が受信されている無線タグリーダ13の座標34が取得される(ステップS901)。次に、当該座標34を目的番号の位置として、車両座標系31における原点からのベクトルaが算出される(ステップS902)。次に、進行方向へのベクトルbと算出された目的番号へのベクトルaとの角度θが、内積を用いて算出される(ステップS903)。算出された角度θは、目的番号と進行方向とのずれを表しており、進行方向が角度θだけ修正されることで、目的番号へとたどりつく(ステップS904)。
【0028】
次に、目的番号への予想進路について説明する。ここでは、図7におけるステップS707、S708の時点について説明する。
図10に示すように、ベクトルaは、無線タグリーダ13によって受信された無線タグ11の番号の中から選出された車両座標系31における原点に最も近い番号から、2番目に近い番号へのベクトルを表している。ベクトルbは、進行方向のベクトルを表しており、ここではY軸を進行方向としている。ベクトルcは、無線タグリーダ13によって受信された無線タグ11の番号の中から選出された車両座標系31における原点に最も近い番号から目的番号へのベクトルを表している。目的番号への予想進路は、ベクトルa、b、cの関係から算出される。
【0029】
次に、目的番号への予想進路を算出する処理について説明する。
当該目的番号への予想進路算出処理は、図7におけるステップS708で実行される。図11に示すように、まず、無線タグリーダ13の座標34を受信している番号の位置として、車両座標系31における原点に最も近い2つの番号が選択される(ステップS1101)。次に、当該2つの番号を受信した無線タグリーダ13の座標34が取得される(ステップS1102)。次に、選択された2つの番号のうち、原点に最も近い番号から2番目に近い番号へのベクトルaが算出される(ステップS1103)。次に、進行方向へのベクトルbと算出された2つの番号のベクトルaの車両座標系31におけるなす角度θ1が、内積を用いて算出される(ステップS1104)。
【0030】
車両座標系31の原点に最も近い番号から目的番号への空間座標系35における角度θ2は、図12の空間座標系35における目的番号の角度算出処理で算出される(ステップS1105)。また、車両座標系31の原点に最も近い番号から2番目に近い番号への空間座標系35における角度θ3も、図12の空間座標系35における目的番号の角度算出処理で算出される(ステップS1106)。2つの番号のベクトルaと目的番号へのベクトルcとの車両座標系31におけるなす角度θ4は、算出された空間座標系35の角度θ2、θ3に基づいて算出される(ステップS1107)。このように算出された角度θ1とθ4とから、目的番号への修正角度θrが算出されて進路が変更される(ステップS1109)。
【0031】
次に、空間座標系35における目的番号の角度算出処理について説明する。
空間座標系35における目的番号の角度算出処理は、図11におけるステップS1105、S1106で実行される。図12に示すように、まず、目的番号から車両座標系31の原点に最も近い番号が減算される(ステップS1201)。そして、減算結果が+3から−3の範囲であるか否かについて判断される(ステップS1202)。減算結果が+3から−3の範囲でない場合において(ステップS1203)、減算結果が+4以上の場合にはさらに−7される(ステップS1204)。一方、減算結果が+3から−3の範囲でない場合において、減算結果が−4以下の場合にはさらに+7される(ステップS1205)。そして得られた+3から−3の値に対応する角度が目的番号への空間座標系35における角度となる(ステップS1206、S1207)。
【0032】
例えば、図10における目的番号が2の場合、次のように処理される。
(1)目的番号:2(最も近い番号4)
(2)2−4=−2
(3)−2に対応する角度は−60°
(4)目的番号への空間座標系35の角度は−60°となる
【0033】
次に、走行経路を設定する方法について説明する。
新規走行経路を設定する場合には、設定したい経路41を自立走行車両12で走行する。走行した際に、車両座標系31の原点に位置する無線タグリーダ13で受信された番号が経路情報格納部19に順次格納される。そして、経路情報格納部19に格納された数列情報24が新規走行経路となる。
【0034】
図14に示すように、新規走行経路を設定する場合、ユーザは表示部15や入力部16を用いて、新規走行経路設定モードを選択して、設定処理が開始される(ステップS1401)。自立走行車両12を予定している経路に沿って運転すると、無線タグリーダ13から受信された無線タグ11の番号の中から、車両座標系31の原点に最も近い番号が選択される(ステップS1402)。次に、選択された番号が、走行経路として設定されている数列情報24の末尾の番号と一致するか否かが検出される(ステップS1403)。選択された番号が、走行経路として設定されている数列情報24の末尾の番号と一致した場合には、数列情報24の最後尾に追加登録される(ステップS1404)。
【0035】
一方、ステップS1403において、数列情報24の末尾が同じ番号である場合には、再度、無線タグリーダ13から受信された無線タグ11の番号の中から、車両座標系31の原点に最も近い番号が選択される。
次に、数列情報24の最後尾に選択された番号が追加登録された後、設定終了通知があるか否かが確認される(ステップS1405)。新規走行経路の終了通知がない場合には、車両座標系31の原点に近い番号を選択するステップS1402へ戻る。新規走行経路の終了通知がある場合には、運転する自立走行車両12が目的地へ到着したということであるため、設定処理が終了される。このとき走行経路として設定された数列情報24が新規走行経路情報となり目的地と併せて経路情報格納部19へ登録される(ステップS1406)。
【0036】
以上説明したとおり、本実施形態の自立走行車両システムによれば、次のような効果がある。
・各無線タグ11に記録される識別情報は1種類のみであり、また走行エリアに配置される全無線タグ11でも7種類の識別情報のみで、個別に異なる情報を記録する必要がない。そのため、正確に無線タグ11へ識別情報を記録するといった労力を軽減することができる。
【0037】
・7種類に識別できる無線タグ11の配置方法により可能となる自立走行車両12の進行方向を推測するとともに、自立走行車両12に取り付けられた複数の無線タグにより可能となる自立走行車両12の進行方向を微調整する進行方向算出処理部21と、無線タグ11を7種類に識別するために記録する情報が目的地までの走行経路情報となる情報の少なさとが、無線タグ11へ記録された情報の管理を不要にする。
・無線タグ11に識別情報が記録されると、その後は識別情報の更新は不要である。したがって、無線タグ11の管理が不要となり、その結果、データベースを備える高機能な情報処理演算装置が不要となりシステムを小型化できる。よって車椅子等の小型車両にも無理なく取り付けることができる。
【0038】
・7種類に識別できる無線タグ11の配置方法により無線タグ11を7種類に識別するために記録する情報が目的地までの走行経路情報として表されるため、無線タグ11に記録されている情報を更新する必要がなく、設定されている経路を走行するだけで、走行経路の設定や更新をすることができる。
【0039】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・走行エリアに配置されている複数の無線タグと、前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両とを備えた自立走行車両システムで用いられる走行経路推測方法であって、7種類の識別情報が記録されている無線タグを配置した走行エリアに座標系を付与するステップと、前記自立走行車両に座標系を付与して備えている複数の無線タグリーダに座標を割り振るステップと、前記自立走行車両が受信している無線タグの2つの識別情報から受信していない目的の識別情報を持つ無線タグの方向を算出するステップと、算出された進行方向に前記自立走行車両を修正するステップと備えたことを特徴とする走行経路推測方法。
【0040】
・走行エリアに配置されている複数の無線タグと、前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両とを備えた自立走行車両システムで用いられる走行経路微調整方法であって、前記自立走行車両に座標系を付与し、前記自立走行車両に備えられている複数の無線タグリーダに座標を割り振るステップと、前記自立走行車両が受信している目的の識別情報と前記自立走行車両の進行方向とのずれを算出するステップと、目的の識別情報を持つ無線タグへ進行方向を修正するステップと備えたことを特徴とする走行経路微調整方法。
【0041】
・走行エリアに配置されている複数の無線タグと、前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両とを備えた自立走行車両システムで用いられる走行経路登録方法であって、前記自立走行車両に座標系を付与し与え、備えている複数の無線タグリーダに座標を割り振るステップと、走行予定の経路を運転するステップと、走行中において前記自立走行車両の中心に備えている無線タグリーダで受信した識別情報を記録するステップと、記録した識別情報を走行経路として設定するステップと備えたことを特徴とする走行経路登録方法。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】走行エリアに敷き詰められた無線タグ上を走行する自立走行車両を示した図。
【図2】複数の無線タグリーダが取り付けられた自立走行車両を示した図
【図3】本発明の一実施形態を示すシステム構成図。
【図4】走行エリアに敷き詰められる無線タグの配置方法についての説明図。
【図5】自立走行車両の座標系についての説明図。
【図6】走行エリアの座標系についての説明図。
【図7】自立走行処理の概要を示すフローチャート。
【図8】目的番号への修正進路を示す説明図。
【図9】目的番号への進行方向算出処理の概要を示すフローチャート。
【図10】目的番号への予想進路を示す説明図。
【図11】目的番号への予想進路算出処理の概要を示すフローチャート。
【図12】空間座標系における目的番号の角度算出処理の概要を示すフローチャート。
【図13】走行経路設定についての説明図。
【図14】走行経路設定の概要を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0043】
11…無線タグ、12…自立走行車両、13…無線タグ情報受信部としての無線タグリーダ、18…自立走行制御部、21…進行方向算出部、22…走行経路選択処理部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグを利用した無人運搬車両の自立走行車両システム及び無線タグの配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人運搬車両としては、走行エリアにおける床や天井等に走行経路となる誘導線やアルミテープを予め配置しておき、車両に取り付けられたセンサーによって当該誘導線やアルミテープを検知して目的地まで移動するものが知られている。こうした無人運搬車両においては、走行経路が変更になる場合は、走行経路となる誘導線やアルミテープを再配置するため、配置に掛かる膨大な工事日数や費用を要する。
最近では、例えば特許文献1に記載された技術のように、走行経路に低価格化が進む無線タグを用いて、使用する個々の無線タグに位置座標や移動方向といった様々な情報を記録して、容易な経路変更を可能とした自立走行車両システムが提案されている。
【特許文献1】特開2002−341939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術の場合、容易な経路変更を可能にするため、走行エリア一帯に無線タグを配置し、個々の無線タグに自立走行するための情報として位置座標や移動方向等の様々な情報を個別に記録している。この場合、走行エリアが広大な場合や複雑な走行経路を要求される場合には、配置に用いられる無線タグの数が膨大な量となる。その数多くの無線タグに位置座標や移動方向などの様々な情報を正確に記録することはかなりの労力を要する。
【0004】
また、無線タグに記録する情報は、自立走行を可能にするための位置座標や移動方向等その量は大きく、さらには、配置される無線タグの数も相当な数であることから、管理すべき総情報量は膨大になる。そのため、この膨大な情報量を管理するためのデータベースを備える高機能な情報処理演算機器が必要となる。
このような配置に用いられた全ての無線タグの情報が管理可能なデータベースを備える高機能な情報処理演算機器は、相当程度の大きさになり、車椅子等の小型な自立走行車両に配置した場合、障害物回避等のために取り付けられている他の様々なセンサーや機器の場所を圧迫することになる。
【0005】
また、走行経路の新規設定や変更を行う場合、無線タグに記録されている移動方向の情報を更新したり、データベースで管理している情報を更新したりする必要がある。
本発明は、こうした従来技術の問題点に鑑みなされた発明であって、配置する無線タグの配置を工夫して、無線タグに記録する情報を管理せず、少ない情報で自立走行を実現するとともに経路変更などの際に無線タグの記録情報を更新する必要がない自立走行車両システム及び無線タグの配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、走行エリアに配置されている複数の無線タグと、前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両とを備えた自立走行車両システムであって、前記自立走行車両は、前記無線タグに記録されている情報を読み取る複数の無線タグ情報受信部と、前記無線タグからの情報に基づいて進行方向を制御する自立走行制御部とを備えており、前記複数の無線タグは、1の無線タグの周囲に、等間隔となるように別の無線タグが配置されていることを特徴とする
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自立走行車両システムにおいて、前記複数の無線タグは、走行エリアに隙間なく敷き詰められた複数の正六角形をなす仮想パネルの中心に位置するように配置されており、1の無線タグと、その周囲に配置されている6の無線タグとにはそれぞれ異なる識別情報が記録されていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自立走行車両システムにおいて、前記自立走行車両は、目的地までの走行経路を推測するとともに、走行経路を微調整する進行方向算出部と、新規走行経路を設定及び変更する走行経路選択処理部とを更に備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、走行エリアに配置されている複数の無線タグと、前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両とを備えた自立走行車両システムで用いられる無線タグの配置構造であって、前記複数の無線タグを、走行エリアに隙間なく敷き詰められた複数の正六角形をなす仮想パネルの中心に位置するように配置することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の無線タグの配置構造において、前記複数の無線タグは、1の無線タグと、その周囲に配置されている6の無線タグとで構成されるグループが繰返し配置されている構成となっており、前記グループ内の無線タグにはそれぞれ異なる識別情報が記録されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自立走行車両システム及び無線タグの配置構造によれば、次のような効果がある。
・走行エリアに配置される複数の無線タグへ記録される識別情報は個別に異なる情報を記録する必要がない。そのため、正確に無線タグへ情報を記録する労力を軽減することができる。
・無線タグへ記録された情報の管理が不要となることで、データベースを備える高機能な情報処理演算装置が不要となりシステムを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した自立走行車両システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態における自立走行車両システムは、走行エリアに配置される複数の無線タグ11と、当該無線タグ11に記録されている情報に基づいて走行エリアを自動で走行する自立走行車両12とを含んで構成されている。
図2に示すように、自立走行車両12の底部には、無線タグ情報受信部としての複数の無線タグリーダ13が取り付けられている。この複数の無線タグリーダ13によって、走行エリアに配置されている無線タグ11に記録されている識別情報が読み取られる。無線タグリーダ13は各無線タグリーダ13の受信エリア14が重ならないように等間隔に9個配置されている。
【0011】
また、図3に示すように、自立走行車両12には、無線タグリーダ13に加えて、表示部15、入力部16、表示・入力制御部17、自立走行制御部18、経路情報格納部19、車両走行制御部20が備えられている。
表示部15は、例えば液晶パネル等であり、走行状況の確認のための各種情報等が表示される。入力部16は、例えばキーボードやマウス等であり、目的モード(自立走行開始や新規走行経路設定など)の選択や、目的地の選択の際にユーザによって使用される。表示・入力制御部17では、入力部16において入力されたユーザからの情報や表示部15に表示される情報を切替える制御等が実行される。
【0012】
自立走行制御部18には、進行方向算出処理部21、走行経路選択処理部22、経路情報読み取り処理部23が備えられている。進行方向算出処理部21では、目的地までの進行方向が、無線タグリーダ13で受信された無線タグ11の情報に基づいて決定されるとともに、修正角度の算出が実行される。また、走行経路選択処理部22では、新規走行経路が設定される際に無線タグリーダ13で受信された無線タグ11の情報に基づいて走行経路情報が生成される。経路情報読み取り処理部23では、目的地までの走行経路情報が経路情報格納部19から取得されたり、新規走行経路の経路情報が経路情報格納部19へ登録されたりする。
【0013】
経路情報格納部19には、走行経路情報が格納される。例えば、無線タグ11を識別するために当該無線タグ11に数字に関する情報が記録された場合、目的地と目的地までの走行経路を表す数列情報24が格納される。無線タグリーダ13では、複数の無線タグ11を識別するために記録されている情報が当該無線タグ11から読み取られる。車両走行制御部20では、自立走行車両12の走行開始、停止、速度、進行方向が制御される。
【0014】
自立走行車両12では、走行エリアに配置されている無線タグ11から送信される情報が複数の無線タグリーダ13で受信される。そして、当該情報に基づいて目的の走行経路を自立走行制御部18で探索しながら走行する。無線タグ11には、走行エリア全体で7種類に識別することができる情報のうち、何れか1つの情報が記録されている。例えば1から7までの番号に関する情報の何れか1つが無線タグ11に記録されると、目的の走行経路は1から7までの数列情報24で表され、自立走行車両12は目的の番号を順次探索することで自立走行することができる。
【0015】
次に、無線タグ11の配置方法について説明する。
図4に示すように、無線タグ11を7種類に識別するために、1から7までの数字のうち何れか1つの数字に関する情報が無線タグ11に記録される。無線タグ11は、正六角形の形状をなす仮想パネル25が隙間なく並べられた場合の、それぞれの仮想パネル25の中心部分に規則正しく等間隔となるように配置されている。すなわち、1つの無線タグ11の周囲6方向には、それぞれの無線タグ11が等間隔となるように別の無線タグ11が配置されている。
【0016】
また、1つの無線タグ11と、隣接する異なる番号に関する情報が記憶されている無線タグ11との距離26は等しく、同じ番号に関する情報が記憶されている無線タグ11の距離27は異なる番号間の距離26よりも遠くする。つまり、記憶されている情報が異なっている7種類の無線タグ11がグループをなして走行エリアに繰返し配置される。こうした無線タグ11の配置方法によって、進行方向算出処理部21が目的地までの番号の位置を順次推測しながら、走行することが可能となる。
【0017】
次に、自立走行車両12が有する座標系について説明する。
目的地までの進行方向を決定するために、自立走行車両12には車両座標系31を付与する。例えば、図5に示すように、自立走行車両12の中心を原点として進行方向をY軸32、進行方向左右をX軸33とする。そして、自立走行車両12に取り付けられた複数の無線タグリーダ13には座標34が与えられる。例えば、無線タグリーダ13Eには、座標(0,0)が与えられている。
【0018】
次に、走行エリアが有する座標系について説明する。
図6に示すように、目的地までの進行方向を決定するために、走行エリアに空間座標系35を付与する。例えば、走行エリアの左から右方向をX軸36、手前から奥方向をY軸37とする。すると、無線タグ11は規則正しく等間隔に配置されているため、隣接する番号の空間座標系35における角度が番号の差により算出することができる。
【0019】
なお、空間座標系35における角度には、次のようなルールが定められている。
(1)隣合う異なる番号は、+3から−3の範囲
(2)+3の番号は、空間座標系における60°の位置
(3)+2の番号は、空間座標系における120°の位置
(4)+1の番号は、空間座標系における0°の位置
(5)−1の番号は、空間座標系における180°の位置
(6)−2の番号は、空間座標系における−60°の位置
(7)−3の番号は、空間座標系における−120°の位置
【0020】
図6において、番号4番に関する情報が記憶されている無線タグ11の位置から7番に関する情報が記憶されている無線タグ11の位置へ移動する場合、空間座標系35における角度は、7から4を減算した結果が+3であることから、ルールに従うと番号7に関する情報が記憶されている無線タグ11の位置はX軸方向から60°の方向にあることが分かる。このように目的番号が空間座標系35においてどの方向に位置するのかを推測することができる。
【0021】
次に、自立走行処理の概要について説明する。
図7に示すように、自立走行車両12が自立走行を開始する場合、ユーザによって表示部15や入力部16を用いて自立走行モードが選択される。自立走行モードが選択されると、経路情報格納部19に登録されている目的地の一覧が表示部15に表示されて、当該一覧からユーザによって入力部16を用いて目的地が選択される(ステップS701)。目的地が選択されると走行経路となる数列情報24が決定され、進行方向算出処理部21で進行方向が決定され自立走行運転が開始される(ステップS702)。
【0022】
進行方向は、まず、経路情報である数列情報24の先頭から番号が取り出され、取り出された目的番号が、経路情報読み取り処理部23において、無線タグリーダ13から取得された番号中に存在するか検索される。具体的には、数列情報24に先頭番号が存在するか否かが検索される(ステップS703)。次に、先頭番号が存在する場合には、数列情報24から先頭番号が削除される(ステップS704)。一方、ステップS703において、数列情報24に先頭番号が存在しない場合、すなわち、経路情報である数列情報24から取出す番号がない場合には、目的地に到着したとして車両走行制御部20によって自立走行車両12の運転が停止される(ステップS705)。
【0023】
次に、ステップS706において、数列情報24の先頭から取り出された目的番号が、無線タグリーダ13から取得された番号中に存在しなかった場合には、無線タグ11から受信されている番号が2つ以上存在するか否かが判定される(ステップS707)。そして、受信されている番号が2つ以上存在する場合には、当該2つ以上の番号から目的番号の方向が推測されて、進行方向が車両走行制御部20によって修正される(ステップS708)。
【0024】
一方、ステップS707において受信されている番号が2つ以上存在しない場合には、進行方向算出処理部21において目的番号への方向が推測できないとして車両走行制御部20によって自立走行車両12の運転が停止される(ステップS709)。ステップS706において、数列情報24の先頭から取り出された目的番号が、無線タグリーダ13から取得された番号中に存在する場合には、当該目的番号が車両座標系31における原点(自立走行車両12の中心)に位置するか否か判断される(ステップS710)。
【0025】
目的番号の車両座標系31における位置は、図5に示すように、受信した無線タグ11に割当てられている座標34に対応している。目的番号が、車両座標系31における原点に位置しない場合には、車両走行制御部20によって目的番号へ進行方向が修正される(ステップS711)。一方、目的番号が、車両座標系31における原点に位置している場合には、走行経路上のあるポイントに達したとして、次のポイント、つまり目的番号が変更される。
【0026】
次に、目的番号への修正進路について説明する。
例として、図7におけるステップS706、S7107時点についての説明をする。
図8に示すように、ベクトルaは、車両座標系31の原点から目的番号へのベクトルを表しており、目的番号を5番に関する情報が記録されている無線タグ11とした場合、当該番号が受信された無線タグリーダ13の座標34を用いて算出される。ベクトルbは、進行方向のベクトルを表しており、ここではY軸を進行方向としている。目的番号への修正進路は、ベクトルaとベクトルbとの関係で算出される。
【0027】
次に、目的番号への進行方向算出処理について説明する。
図9に示すように、目的番号への進行方向算出処理は、図7のステップS711で実行される)。まず、目的番号が受信されている無線タグリーダ13の座標34が取得される(ステップS901)。次に、当該座標34を目的番号の位置として、車両座標系31における原点からのベクトルaが算出される(ステップS902)。次に、進行方向へのベクトルbと算出された目的番号へのベクトルaとの角度θが、内積を用いて算出される(ステップS903)。算出された角度θは、目的番号と進行方向とのずれを表しており、進行方向が角度θだけ修正されることで、目的番号へとたどりつく(ステップS904)。
【0028】
次に、目的番号への予想進路について説明する。ここでは、図7におけるステップS707、S708の時点について説明する。
図10に示すように、ベクトルaは、無線タグリーダ13によって受信された無線タグ11の番号の中から選出された車両座標系31における原点に最も近い番号から、2番目に近い番号へのベクトルを表している。ベクトルbは、進行方向のベクトルを表しており、ここではY軸を進行方向としている。ベクトルcは、無線タグリーダ13によって受信された無線タグ11の番号の中から選出された車両座標系31における原点に最も近い番号から目的番号へのベクトルを表している。目的番号への予想進路は、ベクトルa、b、cの関係から算出される。
【0029】
次に、目的番号への予想進路を算出する処理について説明する。
当該目的番号への予想進路算出処理は、図7におけるステップS708で実行される。図11に示すように、まず、無線タグリーダ13の座標34を受信している番号の位置として、車両座標系31における原点に最も近い2つの番号が選択される(ステップS1101)。次に、当該2つの番号を受信した無線タグリーダ13の座標34が取得される(ステップS1102)。次に、選択された2つの番号のうち、原点に最も近い番号から2番目に近い番号へのベクトルaが算出される(ステップS1103)。次に、進行方向へのベクトルbと算出された2つの番号のベクトルaの車両座標系31におけるなす角度θ1が、内積を用いて算出される(ステップS1104)。
【0030】
車両座標系31の原点に最も近い番号から目的番号への空間座標系35における角度θ2は、図12の空間座標系35における目的番号の角度算出処理で算出される(ステップS1105)。また、車両座標系31の原点に最も近い番号から2番目に近い番号への空間座標系35における角度θ3も、図12の空間座標系35における目的番号の角度算出処理で算出される(ステップS1106)。2つの番号のベクトルaと目的番号へのベクトルcとの車両座標系31におけるなす角度θ4は、算出された空間座標系35の角度θ2、θ3に基づいて算出される(ステップS1107)。このように算出された角度θ1とθ4とから、目的番号への修正角度θrが算出されて進路が変更される(ステップS1109)。
【0031】
次に、空間座標系35における目的番号の角度算出処理について説明する。
空間座標系35における目的番号の角度算出処理は、図11におけるステップS1105、S1106で実行される。図12に示すように、まず、目的番号から車両座標系31の原点に最も近い番号が減算される(ステップS1201)。そして、減算結果が+3から−3の範囲であるか否かについて判断される(ステップS1202)。減算結果が+3から−3の範囲でない場合において(ステップS1203)、減算結果が+4以上の場合にはさらに−7される(ステップS1204)。一方、減算結果が+3から−3の範囲でない場合において、減算結果が−4以下の場合にはさらに+7される(ステップS1205)。そして得られた+3から−3の値に対応する角度が目的番号への空間座標系35における角度となる(ステップS1206、S1207)。
【0032】
例えば、図10における目的番号が2の場合、次のように処理される。
(1)目的番号:2(最も近い番号4)
(2)2−4=−2
(3)−2に対応する角度は−60°
(4)目的番号への空間座標系35の角度は−60°となる
【0033】
次に、走行経路を設定する方法について説明する。
新規走行経路を設定する場合には、設定したい経路41を自立走行車両12で走行する。走行した際に、車両座標系31の原点に位置する無線タグリーダ13で受信された番号が経路情報格納部19に順次格納される。そして、経路情報格納部19に格納された数列情報24が新規走行経路となる。
【0034】
図14に示すように、新規走行経路を設定する場合、ユーザは表示部15や入力部16を用いて、新規走行経路設定モードを選択して、設定処理が開始される(ステップS1401)。自立走行車両12を予定している経路に沿って運転すると、無線タグリーダ13から受信された無線タグ11の番号の中から、車両座標系31の原点に最も近い番号が選択される(ステップS1402)。次に、選択された番号が、走行経路として設定されている数列情報24の末尾の番号と一致するか否かが検出される(ステップS1403)。選択された番号が、走行経路として設定されている数列情報24の末尾の番号と一致した場合には、数列情報24の最後尾に追加登録される(ステップS1404)。
【0035】
一方、ステップS1403において、数列情報24の末尾が同じ番号である場合には、再度、無線タグリーダ13から受信された無線タグ11の番号の中から、車両座標系31の原点に最も近い番号が選択される。
次に、数列情報24の最後尾に選択された番号が追加登録された後、設定終了通知があるか否かが確認される(ステップS1405)。新規走行経路の終了通知がない場合には、車両座標系31の原点に近い番号を選択するステップS1402へ戻る。新規走行経路の終了通知がある場合には、運転する自立走行車両12が目的地へ到着したということであるため、設定処理が終了される。このとき走行経路として設定された数列情報24が新規走行経路情報となり目的地と併せて経路情報格納部19へ登録される(ステップS1406)。
【0036】
以上説明したとおり、本実施形態の自立走行車両システムによれば、次のような効果がある。
・各無線タグ11に記録される識別情報は1種類のみであり、また走行エリアに配置される全無線タグ11でも7種類の識別情報のみで、個別に異なる情報を記録する必要がない。そのため、正確に無線タグ11へ識別情報を記録するといった労力を軽減することができる。
【0037】
・7種類に識別できる無線タグ11の配置方法により可能となる自立走行車両12の進行方向を推測するとともに、自立走行車両12に取り付けられた複数の無線タグにより可能となる自立走行車両12の進行方向を微調整する進行方向算出処理部21と、無線タグ11を7種類に識別するために記録する情報が目的地までの走行経路情報となる情報の少なさとが、無線タグ11へ記録された情報の管理を不要にする。
・無線タグ11に識別情報が記録されると、その後は識別情報の更新は不要である。したがって、無線タグ11の管理が不要となり、その結果、データベースを備える高機能な情報処理演算装置が不要となりシステムを小型化できる。よって車椅子等の小型車両にも無理なく取り付けることができる。
【0038】
・7種類に識別できる無線タグ11の配置方法により無線タグ11を7種類に識別するために記録する情報が目的地までの走行経路情報として表されるため、無線タグ11に記録されている情報を更新する必要がなく、設定されている経路を走行するだけで、走行経路の設定や更新をすることができる。
【0039】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・走行エリアに配置されている複数の無線タグと、前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両とを備えた自立走行車両システムで用いられる走行経路推測方法であって、7種類の識別情報が記録されている無線タグを配置した走行エリアに座標系を付与するステップと、前記自立走行車両に座標系を付与して備えている複数の無線タグリーダに座標を割り振るステップと、前記自立走行車両が受信している無線タグの2つの識別情報から受信していない目的の識別情報を持つ無線タグの方向を算出するステップと、算出された進行方向に前記自立走行車両を修正するステップと備えたことを特徴とする走行経路推測方法。
【0040】
・走行エリアに配置されている複数の無線タグと、前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両とを備えた自立走行車両システムで用いられる走行経路微調整方法であって、前記自立走行車両に座標系を付与し、前記自立走行車両に備えられている複数の無線タグリーダに座標を割り振るステップと、前記自立走行車両が受信している目的の識別情報と前記自立走行車両の進行方向とのずれを算出するステップと、目的の識別情報を持つ無線タグへ進行方向を修正するステップと備えたことを特徴とする走行経路微調整方法。
【0041】
・走行エリアに配置されている複数の無線タグと、前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両とを備えた自立走行車両システムで用いられる走行経路登録方法であって、前記自立走行車両に座標系を付与し与え、備えている複数の無線タグリーダに座標を割り振るステップと、走行予定の経路を運転するステップと、走行中において前記自立走行車両の中心に備えている無線タグリーダで受信した識別情報を記録するステップと、記録した識別情報を走行経路として設定するステップと備えたことを特徴とする走行経路登録方法。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】走行エリアに敷き詰められた無線タグ上を走行する自立走行車両を示した図。
【図2】複数の無線タグリーダが取り付けられた自立走行車両を示した図
【図3】本発明の一実施形態を示すシステム構成図。
【図4】走行エリアに敷き詰められる無線タグの配置方法についての説明図。
【図5】自立走行車両の座標系についての説明図。
【図6】走行エリアの座標系についての説明図。
【図7】自立走行処理の概要を示すフローチャート。
【図8】目的番号への修正進路を示す説明図。
【図9】目的番号への進行方向算出処理の概要を示すフローチャート。
【図10】目的番号への予想進路を示す説明図。
【図11】目的番号への予想進路算出処理の概要を示すフローチャート。
【図12】空間座標系における目的番号の角度算出処理の概要を示すフローチャート。
【図13】走行経路設定についての説明図。
【図14】走行経路設定の概要を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0043】
11…無線タグ、12…自立走行車両、13…無線タグ情報受信部としての無線タグリーダ、18…自立走行制御部、21…進行方向算出部、22…走行経路選択処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行エリアに配置されている複数の無線タグと、
前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両と
を備えた自立走行車両システムであって、
前記自立走行車両は、
前記無線タグに記録されている情報を読み取る複数の無線タグ情報受信部と、
前記無線タグからの情報に基づいて進行方向を制御する自立走行制御部と
を備えており、
前記複数の無線タグは、1の無線タグの周囲に、等間隔となるように別の無線タグが配置されていることを特徴とする自立走行車両システム。
【請求項2】
前記複数の無線タグは、走行エリアに隙間なく敷き詰められた複数の正六角形をなす仮想パネルの中心に位置するように配置されており、1の無線タグと、その周囲に配置されている6の無線タグとにはそれぞれ異なる識別情報が記録されていることを特徴とする請求項1に記載の自立走行車両システム。
【請求項3】
前記自立走行車両は、
目的地までの走行経路を推測するとともに、走行経路を微調整する進行方向算出部と、
新規走行経路を設定及び変更する走行経路選択処理部と
を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自立走行車両システム。
【請求項4】
走行エリアに配置されている複数の無線タグと、
前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両と
を備えた自立走行車両システムで用いられる無線タグの配置構造であって、
前記複数の無線タグを、走行エリアに隙間なく敷き詰められた複数の正六角形をなす仮想パネルの中心に位置するように配置することを特徴とする無線タグの配置構造。
【請求項5】
前記複数の無線タグは、1の無線タグと、その周囲に配置されている6の無線タグとで構成されるグループが繰返し配置されている構成となっており、前記グループ内の無線タグにはそれぞれ異なる識別情報が記録されていることを特徴とする請求項4に記載の無線タグの配置構造。
【請求項1】
走行エリアに配置されている複数の無線タグと、
前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両と
を備えた自立走行車両システムであって、
前記自立走行車両は、
前記無線タグに記録されている情報を読み取る複数の無線タグ情報受信部と、
前記無線タグからの情報に基づいて進行方向を制御する自立走行制御部と
を備えており、
前記複数の無線タグは、1の無線タグの周囲に、等間隔となるように別の無線タグが配置されていることを特徴とする自立走行車両システム。
【請求項2】
前記複数の無線タグは、走行エリアに隙間なく敷き詰められた複数の正六角形をなす仮想パネルの中心に位置するように配置されており、1の無線タグと、その周囲に配置されている6の無線タグとにはそれぞれ異なる識別情報が記録されていることを特徴とする請求項1に記載の自立走行車両システム。
【請求項3】
前記自立走行車両は、
目的地までの走行経路を推測するとともに、走行経路を微調整する進行方向算出部と、
新規走行経路を設定及び変更する走行経路選択処理部と
を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自立走行車両システム。
【請求項4】
走行エリアに配置されている複数の無線タグと、
前記無線タグに記録されている情報に基づいて前記走行エリアを自動で走行する自立走行車両と
を備えた自立走行車両システムで用いられる無線タグの配置構造であって、
前記複数の無線タグを、走行エリアに隙間なく敷き詰められた複数の正六角形をなす仮想パネルの中心に位置するように配置することを特徴とする無線タグの配置構造。
【請求項5】
前記複数の無線タグは、1の無線タグと、その周囲に配置されている6の無線タグとで構成されるグループが繰返し配置されている構成となっており、前記グループ内の無線タグにはそれぞれ異なる識別情報が記録されていることを特徴とする請求項4に記載の無線タグの配置構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−242721(P2008−242721A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81201(P2007−81201)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】
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