説明

自走車両用ドライブトレイン

作業機械、とりわけホイールローダのためのドライブトレインは、一次クラッチ(2)を介して流体トルクコンバータ(3)を駆動する内燃機関(1)を有する。流体トルクコンバータ(3)の出力側は減速装置(4)を駆動する。駆動機関(1)はパワーテークオフ(6)と連結され、負荷機器(7)を駆動する。駆動機関(1)と流体トルクコンバータは、停止点で負荷機器(7)が不作動の場合に駆動機関(1)がほぼ最大トルクで運転されるように設計されている。さらに負荷機器(7)が作動されると、駆動機関の所定の回転数が維持されるように、一次クラッチ(2)が切断方向に操作される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念で詳しく定義した種類の自走車両用ドライブトレインに関する。
【背景技術】
【0002】
種概念に基づくドライブトレインは、一方で流体コンバータ及び後置の切換え可能な減速装置を介して駆動輪を駆動し、他方では作動可能な負荷機器と連結される内燃機関を有する。しばしばこの構成は作業機械、例えばホイールローダで使用される。その場合負荷機器として油圧ポンプが駆動機関と連動し、ステアリング又はリフト装置及びショベルの操作のためにこれらに作動油を供給する。この種の車両にこのドライブトレインを使用する場合は、駆動機関及び流体トルクコンバータの設計でパワーテークオフの出力が走行駆動装置の出力と同様に重要である。駆動機関とトルクコンバータの組合せは通常、例えば35%という急激なトルク増加を有し、駆動機関のトルクコンバータは、車両の停止点で負荷機器が不作動の場合、駆動機関が定格回転数で運転されるように設計されている。駆動機関のトルク増加が急激であるため、パワーテークオフの負荷機器をフルに作動すると、駆動機関の回転数が低下する一方で、駆動機関のトルクは増加し、こうして駆動機関の突然の停止が防止される。この設計によって純走行運転の場合は車両が不利な効率領域で運動させられ、その結果燃料消費が増加する。
【0003】
DE69126327T2は、駆動機関とトルクコンバータの間に配置された一次クラッチをブレーキ弁に従って制御し、それによって作業用油圧系統の所定の運転状態で駆動機関のより多くの出力を利用可能にする、車両のドライブトレインのための電気油圧式制御装置を開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底にあるのは、内燃機関、トルクコンバータ及びパワーテークオフを有し、少ない燃料消費を特徴とする自走車両用ドライブトレインを提供するという課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、主請求項の特徴を有する、種概念に基づく自走車両用ドライブトレインによって解決される。
【0006】
本発明によれば自走車両用ドライブトレインは、一次クラッチを介して流体トルクコンバータと結合された内燃機関を有し、トルクコンバータが減速装置を駆動する。内燃機関とトルクコンバータは走行駆動のために最適化して設計されており、このため車両の停止点で、即ち停車時に駆動機関が全負荷の場合、駆動機関は最大トルクの近くにあり、この停止点でパワーテークオフの負荷機器は作動されない。こうして駆動機関は走行駆動で著しく小さな回転数で運転され、このため燃料消費が低下する。例えば15%のゆるやかなトルク増加を有する駆動機関を使用することが好ましい。駆動機関は停止点で約1700rev/minの範囲にあることが好ましい。とりわけトルク容量が高いコンバータが使用され、それによってコンバータのスリップが小さくなり、このことはさらに燃費に好影響を及ぼす。パワーテークオフを作動することによって駆動機関が最大トルク以上に負荷され、その結果駆動機関が停止することを防止するために、一次クラッチが駆動機関の運転状態に応じて、駆動機関の運転が引続き保証されるように切断方向に操作される。一次クラッチがスリップするこの運転状態では、一次クラッチを締結した場合より小さな駆動力が生じる。一次クラッチがスリップしても一次クラッチなしの比較可能な駆動装置と同等の駆動力を得るには、負荷応動形トランスミッションで別の減速段にシフトすればよい。この補助変速段は負荷機器が駆動される時だけ使用される。
【0007】
別の実施形態では負荷機器の所定の回転数が保証されるように、負荷機器の作動時に必ず一次クラッチが切断方向に操作される。電子制御装置を、例えば駆動機関の運転状態、一次クラッチの操作状態、トランスミッションの操作状態及び負荷機器の運転状態を識別するセンサに接続し、駆動機関が確実に運転され、負荷機器に十分な回転数が与えられるように、この信号に従って一次クラッチを制御することが可能である。パワーテークオフが作動しないときは、一次クラッチを完全に締結することが好ましい。この場合はアクセルペダルの位置を比例的に駆動機関の負荷信号として使用することが可能である。例えばアクセルペダルをフルに操作して、ホイールローダがバラ荷の山に進入すれば、抵抗に比例して車速が減少し、やがて車両が停止する。この場合駆動機関はほぼ最大トルクまで押し込まれる。そこで油圧リフト装置及びパワーテークオフを作動すれば、所定の駆動機関回転数を下回らないように、一次クラッチが電子制御装置によって切断方向に制御される。駆動力が一次クラッチなしの比較可能な駆動装置と同等のレベルにあるように、この状態で負荷応動形トランスミッションで別の高い変速段にシフトすることが可能である。パワーテークオフを作動するための信号は、例えばコントロールレバーのセンサ又はパワーテークオフの油圧ポンプのセンサで発生することができる。別の実施形態では駆動機関回転数がアクセルペダル位置に比例して制御され、複合ブレーキ・インチングペダルによって駆動力を減少することができる。この場合ブレーキ・インチングペダルは少なくとも2つの領域を有し、ペダルストロークの第1の領域では駆動力だけが一次クラッチにより減少され、ペダルストロークの別の第2の領域では常用ブレーキが比例立上り制御されるように設計することが可能である。その際一次クラッチは次第に切り離されてゆく。この補助機能を使用することによって、例えば上り坂での逆走が防止される。
【0008】
そこで本発明に基づき、駆動機関と流体トルクコンバータが走行駆動のために最適に設計され、一次クラッチがパワーテークオフによる補助動力取り出しを可能にすることによって、少ない燃料消費を特徴とする自走車両用ドライブトレインが提供される。
【0009】
その他の特徴は図の説明で明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
単一の図は、一次クラッチ2を介して流体トルクコンバータ3と連結した内燃機関として設計された駆動機関1を示す。流体トルクコンバータ3の出力側は切換え可能な減速装置4と結合され、減速装置4の出力側5は自走車両の図示しない駆動輪と結合される。パワーテークオフ6を経て負荷機器7が駆動機関1に直結される。負荷機器7は歯車ポンプ又は調整可能な油圧アキシャルピストンポンプとして形成され、油圧シリンダ8、例えばホイールローダのショベルのリフトシリンダに給油する。油圧シリンダ8はコントロールレバー9により作動することができる。電子制御装置10がセンサ11から駆動機関1の回転数、センサ12から一次クラッチ2の操作状態、センサ13から流体コンバータ3の出力回転数、センサ14からアクセルペダルのペダル位置、センサ15からブレーキペダルのペダル位置、センサ16からコントロールレバー9のレバー位置を検出する。流体コンバータ3をコンバータロックアップクラッチと連動させることが可能である。ロックアップクラッチは流体コンバータ3の所定の操作状態から切断又は締結する。例えばホイールローダが運搬走行中であれば、電子制御装置10はセンサ16を介して、油圧シリンダが作動されず、一次クラッチを締結状態にしていることを認識する。流体コンバータ3と駆動機関1は、停止点で駆動機関1が回転数の減少とともに最大トルク領域にあるように設計されているから、こうして駆動機関1と流体コンバータ3は最適化された効率領域で運転される。ホイールローダのショベルのリフト装置が操作されると、電子制御装置10はセンサ16を介してコントロールレバー9の操作を認識し、電子制御装置はセンサ11及びセンサ14で認識する駆動機関1の運転状態に応じて、パワーテークオフ6の所定の回転数が維持されるか又は駆動機関1が所定の回転数レベル以下に低下しないように、一次クラッチ2を制御する。電子制御装置10がセンサ15を介して、ブレーキペダルが操作されることを認識すると、電子制御装置10によって一次クラッチ2が切断方向に制御される。この場合ブレーキペダルの第1のストローク範囲では駆動力だけを一次クラッチによって減少し、ブレーキペダルの別のストローク範囲では図示しない常用ブレーキを次第に締結方向に制御することが可能である。
【0011】
こうしてドライブトレインの燃料節約運転を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一次クラッチ2を介して流体トルクコンバータ3と連結される内燃機関として設計された駆動機関1を示す。
【符号の説明】
【0013】
1 駆動機関
2 一次クラッチ
3 流体コンバータ
4 減速装置
5 出力側
6 パワーテークオフ
7 負荷機器
8 油圧シリンダ
9 コントロールレバー
10 電子制御装置
11 センサ
12 センサ
13 センサ
14 センサ
15 センサ
16 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体トルクコンバータ(3)を介して減速装置(4)を駆動する内燃機関(1)を有し、内燃機関(1)と流体トルクコンバータ(3)の間に一次クラッチ(2)があり、また内燃機関(1)と連結されて負荷機器(7)を駆動するパワーテークオフ(6)を有する自走車両用ドライブトレインにおいて、
全負荷で負荷機器(7)が作動せず、停車時、いわゆる停止点の場合に、内燃機関(1)がほぼ最大トルクで運転されるように、トルクコンバータ(3)が設計されていることを特徴とするドライブトレイン。
【請求項2】
負荷機器(7)が作動されたとき、内燃機関(1)が全負荷で最大トルク以下に低下しないように、一次クラッチ(2)が切断方向に操作されることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項3】
負荷機器(7)が作動されたとき、内燃機関(1)が所定の回転数をとるように、クラッチ(2)が切断方向に操作されることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項4】
内燃機関(1)がゆるやかなトルク増加を有することを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項5】
トルクコンバータが大きなトルク容量を有することを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項6】
負荷機器(7)が作動され、常用ブレーキが操作されたとき、一次クラッチ(2)が完全に切断方向に操作されることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項7】
トルクコンバータ(3)を介して減速装置(4)を駆動する内燃機関(1)を有し、駆動機関(1)と流体トルクコンバータ(3)の間に一次クラッチ(2)があり、また駆動機関(1)と連結されて負荷機器(7)を駆動するパワーテークオフ(6)を有する自走車両用ドライブトレインの一次クラッチ(2)の操作方法において、
全負荷で負荷機器(7)が作動せず、停車時、いわゆる停止点の場合に内燃機関(1)がほぼ最大トルクで運転されるように、トルクコンバータ(3)が設計されており、負荷機器(7)の作動時に、内燃機関(1)が最大必要トルク以下に低下しないように、一次クラッチ(2)が切断方向に操作されることを特徴とする方法。
【請求項8】
トルクコンバータ(3)を介して減速装置(4)を駆動する内燃機関(1)を有し、駆動機関(1)と流体トルクコンバータ(3)の間に一次クラッチ(2)があり、また駆動機関(1)と連結されて負荷機器(7)を駆動するパワーテークオフ(6)を有する自走車両用ドライブトレインの一次クラッチ(2)の操作方法において、
全負荷で負荷機器(7)が作動せず、停車時、いわゆる停止点の場合に内燃機関(1)がほぼ最大トルクで運転されるように、トルクコンバータ(3)が設計されており、負荷(7)の作動時に、パワーテークオフ(6)が所定の回転数をとるように、一次クラッチ(2)が切断方向に操作されることを特徴とする方法。
【請求項9】
常用ブレーキの操作時に一次クラッチ(2)が切断方向に操作されることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項10】
一次クラッチ(2)がスリップすると、減速装置(4)でより大きな減速比に切換えられることを特徴とする、請求項2に記載のドライブトレイン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体トルクコンバータ(3)を介して減速装置(4)を駆動する内燃機関(1)を有し、内燃機関(1)と流体トルクコンバータ(3)の間に切断及び締結方向に操作可能な一次クラッチ(2)があり、また内燃機関(1)と連結されて負荷機器(7)を駆動するパワーテークオフ(6)を有する自走車両用ドライブトレインにおいて、
全負荷で停車時、いわゆる停止点の場合及び一次クラッチ(2)が締結方向に操作され、負荷機器(7)が不作動の場合に、内燃機関(1)のトルクが最大トルクの近傍にあるように、トルクコンバータ(3)及び内燃機関(1)が設計されており、負荷機器(7)を作動すれば内燃機関のトルクが減少し、内燃機関(1)が停止の上方で運転されるように、一次クラッチが切断方向に操作されることを特徴とするドライブトレイン。
【請求項2】
負荷機器(7)が作動されたとき、内燃機関(1)が所定の回転数をとるように、一次クラッチ(2)が切断方向に操作されることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項3】
負荷機器(7)が作動され、常用ブレーキが操作されたとき、一次クラッチ(2)が完全に切断方向に操作されることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項4】
トルクコンバータ(3)を介して減速装置(4)を駆動する内燃機関(1)を有し、駆動機関(1)と流体トルクコンバータ(3)の間に切断方向及び締結方向に操作可能な一次クラッチ(2)があり、また駆動機関(1)と連結されて負荷機器(7)を駆動するパワーテークオフ(6)を有する自走車両用ドライブトレインの一次クラッチ(2)の操作方法において、
全負荷で負荷機器(7)が作動せず、停車時、いわゆる停止点の場合に内燃機関(1)が最大トルクの近傍で運転され、負荷機器(7)が作動され、その結果内燃機関のトルクが低下したときは、内燃機関(1)が少なくとも必要なトルク以下に低下しないように、一次クラッチ(2)が切断方向に操作されることを特徴とする一次クラッチの操作方法。
【請求項5】
全負荷で負荷機器(7)が作動せず、停車時、いわゆる停止点の場合に、内燃機関(1)が最大トルク又はそれより上で運転されるようにトルクコンバータ(3)が設計されており、負荷(7)の作動時に、パワーテークオフ(6)が所定の回転数をとるように、一次クラッチ(2)が切断方向に操作されることを特徴とする、請求項4に記載の一次クラッチ(2)の操作方法。
【請求項6】
常用ブレーキの操作時に一次クラッチ(2)が切断方向に操作されることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項7】
一次クラッチ(2)がスリップすると、減速装置(4)でより大きな減速比に切換えられることを特徴とする、請求項2に記載のドライブトレイン。

【図1】
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【公表番号】特表2006−520444(P2006−520444A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501669(P2006−501669)
【出願日】平成16年1月31日(2004.1.31)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000861
【国際公開番号】WO2004/069571
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】