説明

自転車用配線接続構造

【課題】 2つの電気部品を電気的に接続する配線接続構造において、防水構造を図りやすくし、絶縁不良や配線の脱落を防止できるようにする。
【解決手段】 自転車用配線接続構造60は、ハンドルバー15に装着されるスイッチユニット23aに接続される第1電気配線50と第2制御ユニット31に接続される第2電気配線51とを電気的に接続するための構造であって、第1接続端子61と第2接続端子62と筒状のカバー部材63とを備えている。第1接続端子61は、第1電気配線50に電気的に接続可能な端子である。第2接続端子62は、第2電気配線51に電気的に接続可能でありかつ第1接続端子61に電気的に接続可能端子である。カバー部材63は、少なくとも両接続端子61,62を被覆する熱収縮性を有する合成樹脂製の部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線接続構造、特に、ハンドルを含む自転車のフレームに装着される第1電気部品に接続された第1電気配線と第2電気部品に装着される第2電気配線とを電気的に接続するための自転車用配線接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の自転車には、ランプ以外にも多くの電気部品が搭載されるようになっている。たとえば、ペダルによる駆動力をアシストする電動駆動力補助装置や変速動作を電動又は空圧により行う電動変速装置などの電気部品が広く採用されている。また、これらの電気部品を制御する電気部品や操作する電気部品も多く使用されている。このような電気部品を接続する従来の配線接続構造では、電気部品に設けられた接続端子台に電気配線に付けられた端子をねじや雌雄嵌合により接続している(たとえば、特許文献1参照)。従来の配線接続構造では、電気配線は、フレームに沿って露出して配置されており、たとえば、ハンドルに設けられた変速スイッチと表示部とを接続したり、表示部とフレームの中央部に設けられた制御部とを接続したりしている。
【特許文献1】特開2004−159490号公報(図5及び図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の配線接続構造では、電気部品に設けられた接続端子台に電気配線を接続しているので、防水構造を図りにくい。このため、従来の配線接続構造では、端子台が外部に露出し、水分の付着等による腐食による絶縁不良や配線の脱落等の不具合が生じるおそれがある。
【0004】
また、前記従来の配線接続構造では、電気配線がフレームに沿って露出して配置されているので、電気配線が障害物に引っ掛かって切断したり破損したりするおそれがある。これを防止するために電気配線をフレームの内部に挿通することが考えられる。しかし、フレーム外にある端子台に接続される電気配線をフレーム内部に挿通するのは困難である。
【0005】
本発明の課題は、2つの電気部品を電気的に接続する配線接続構造において、防水構造を図りやすくし、絶縁不良や配線の脱落を防止できるようにすることにある。
本発明の別の課題は、2つの電気部品を電気的に接続する配線接続構造において、フレーム内に配線を挿通しやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る自転車用配線接続構造は、ハンドルを含む自転車のフレームに装着される第1電気部品に接続される第1電気配線と第2電気部品に接続される第2電気配線とを電気的に接続するための自転車用配線接続構造であって、第1接続端子と第2接続端子と筒状のカバー部材とを備えている。第1接続端子は、第1電気配線に電気的に接続可能な端子である。第2接続端子は、第2電気配線に電気的に接続可能でありかつ第1接続端子に電気的に接続可能端子である。カバー部材は、少なくとも両接続端子を被覆する熱収縮性を有する合成樹脂製の部材である。
【0007】
この配線接続構造では、予め第1電気部品に第1電気配線を接続し、第2電気部品に第2電気配線を接続した状態で、第1接続端子に第1電気配線を接続するとともに、第2接続端子に第2電気配線を接続する。そして、両接続端子を接続した状態でカバー部材により少なくとも両接続端子、好ましくは両接続端子とそれに接続される電気配線の一部とを被覆して加熱する。これにより、両接続端子が接続された状態の形状に沿ってカバー部材が収縮し、カバー部材が両接続端子を被覆するとともに、カバー部材が両接続端子及び両電気配線に密着する。これにより、両接続端子が外れにくくなるとともに接続端子内部に液体が浸入しにくくなり防水効果が得られる。また、両接続端子が絶縁され導電性のものに接触しても導通しなくなる。ここでは、熱収縮性を有する合成樹脂製のカバー部材により少なくとも両接続端子を覆うように構成したので、両接続端子が接続された状態でカバー部材を被せて加熱することにより、両接続端子の形状に沿ってカバー部材の形状を収縮させることができる。このため、防水構造を図りやすくなるとともに、絶縁不良や配線の脱落を防止できるようになる。
【0008】
また、予め第1及び第2電気配線を第1及び第2電気部品に接続したあと、その各電気部品の装着位置からフレーム内を通して第1及び第2電気配線をフレーム外に取り出し、取り出した2本の電気配線を第1及び第2接続端子を用いて接続し接続後にフレーム内に収納することにより、フレーム内に電気配線を容易に挿通できる。このとき、両接続端子は熱収縮した合成樹脂製のカバー部材で覆われるので、絶縁性や防水性能が維持されるとともに、両接続端子や配線が外れにくくなる。
【0009】
発明2に係る自転車用配線接続構造は、発明1に記載の構造において、第1接続端子は、第1電気配線を圧着可能な第1圧着部と、第1圧着部と並べて配置され第2接続端子と雌雄嵌合により接続可能な第1接続部とを有し、第2接続端子は、第2電気配線を圧着可能な第1圧着部と、第2圧着部と並べて配置され第1接続端子と雌雄嵌合により接続可能な第2接続部とを有しカバー部材は、両接続端子が接続された状態で少なくとも第1及び第2圧着部と前記第1及び第2接続部とを覆う長さを有する。この場合には、電気配線が圧着される圧着端子で構成される2つの接続端子がカバー部材により確実に覆われるとともに、電気配線の一部をもカバー部材で覆うことにより防水性能をさらに高めることができる。
【0010】
発明3に係る自転車用配線接続構造は、発明1又は2に記載の構造において、第1及び第2接続端子並びにカバー部材は、フレーム内に収納可能である。この場合には、全ての構成要素がフレーム内に収納可能であるので、両電気配線を電気部品の装着位置からフレーム内に挿入し、フレーム外に取り出して両接続端子で接続し、接続後にフレーム内に収納することにより、電気配線をフレーム内に容易に挿通できる。
【0011】
発明4に係る自転車用配線接続構造は、発明1に記載の構造において、第1電気部品はハンドルに装着され変速操作用のスイッチを有する変速操作部であり、第2電気部品は、ハンドルに装着されるスイッチのオンオフ操作により変速信号を変速装置に出力する変速制御部であり、第1及び第2接続端子並びにカバー部材は、ハンドル内に収納可能である。この場合には、第1電気部品としての変速操作部と第2電気部品としての変速制御部との接続をハンドル内で容易に行うことができる。
【0012】
発明5に係る自転車用配線接続構造は、発明1から4のいずれかに記載の構造において、カバー部材は、透明なポリオレフィン樹脂製である。この場合には、比較的安価で汎用性があるポリオレフィン樹脂を用いることにより両接続端子を安価にカバーできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱収縮性を有する合成樹脂製のカバー部材により少なくとも両接続端子を覆うように構成したので、両接続端子が接続された状態でカバー部材を被せて加熱することにより、両接続端子の形状に沿ってカバー部材の形状を収縮させることができる。このため、防水構造を図りやすくなるとともに、絶縁不良や配線の脱落を防止できるようになる。
【0014】
また、予め第1及び第2電気配線を第1及び第2電気部品に接続したあと、その各電気部品の装着位置からフレーム内を通して第1及び第2電気配線をフレーム外に取り出し、取り出した2本の電気配線を第1及び第2接続端子を用いて接続し接続後にフレーム内に収納することにより、フレーム内に電気配線を容易に挿通できる。このとき、両接続端子は熱収縮した合成樹脂製のカバー部材で覆われるので、絶縁性や防水性能が維持されるとともに、両接続端子や配線が外れにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1において、本発明の一実施形態を採用した自転車は前後サスペンション付きのマウンテンバイクであり、リアサスペンション13r付きのフレーム体2、フロントサスペンション13f付きのフロントフォーク3、及びハンドル部4(ハンドルの一例)を有するフレーム1と、前後の変速装置8,9を含む駆動部5と、フロントフォーク3に装着された前輪6と、ハブダイナモ10が装着された後輪7と、前後の変速装置8,9を含む各部を制御するための制御装置11(図3)とを備えている。
【0016】
フレーム1のフレーム体2は、異形角パイプを溶接して製作されたものである。フレーム体2には、サドル18や駆動部5を含む各部が取り付けられている。フロントフォーク3は、フレーム体2の前部に斜めに傾いた軸回りに揺動自在に装着されている。
【0017】
ハンドル部4は、図2に示すように、フロントフォーク3の上部に固定されたハンドルステム12と、ハンドルステム12に固定されたハンドルバー15とを有している。ハンドルバー15の両端にはブレーキレバー16とグリップ17とが装着されている。ブレーキレバー16の装着部分の内側には、後変速装置9の手動変速操作を行う後変速スイッチ20a,20b及び運転モードを自動変速モードと手動変速モードとに切り換える操作スイッチ21aを有するスイッチユニット(第1電気部品の一例)23aと、前変速装置8の手動変速操作を行う前変速スイッチ20c,20d及びサスペンション13f,13rの硬軟の手動切り換えを行うための操作スイッチ21bを有するスイッチユニット(第1電気部品の一例)23bとが装着されている。変速スイッチ20aは、手動変速モード時に後述するリアディレーラ26rを1段ずつシフトダウンするためのスイッチであり、変速スイッチ20bは、リアディレーラ26rを1段ずつシフトアップするためのスイッチである。変速スイッチ20cは、手動変速モード時に後述するフロントディレーラ26fを1段ずつシフトダウンするためのスイッチであり、変速スイッチ20dは、フロントディレーラ26fを1段ずつシフトアップするためのスイッチである。
【0018】
駆動部5は、フレーム体2の下部(ハンガー部)に設けられクランク27と、外装式の前後の変速装置8,9とを有している。前変速装置8は、クランク27に装着された3枚のスプロケットF1〜F3と、フレーム体2に装着されたフロントディレーラ26fとを有している。後変速装置9は、たとえば8枚のスプロケットR1〜R8を有する多段ギア25と、フレーム体2の後部に装着されたリアディレーラ26rとを有している。クランク27は、3枚のスプロケットF1〜F3が装着されたギアクランク27aと左クランク27bとを有している。また、駆動部5は、ギアクランク27aと多段ギア25のそれぞれいずれかのスプロケットF1〜F3,R1〜R8に掛け渡されたチェーン29を有している。
【0019】
フロント側のスプロケットF1〜F3は、歯数が最も少ないスプロケットF1から順に歯数が多くなっており、歯数が最も多いスプロケットF3が最も外側に配置されている。また、リア側のスプロケットR1〜R8は、歯数が最も多いスプロケットR1から順に歯数が少なくなっており、歯数が最も少ないスプロケットR8が最も外側に配置されている。なお図1では、図面を簡略化するためにスプロケットR1〜R8の枚数を正確には表していない。
【0020】
左クランク27b側の回転中心には、クランク27の回転を検出するための回転検出器(図示せず)が装着されている。回転検出器は、リードスイッチ24(図3)と、リードスイッチ24の回転中心側でクランク27の回転方向に間隔を隔てて配置された磁石(図示せず)とを有しており、リードスイッチ24からクランク27の1回転当たり4つのパルスが出力される。ここで、回転検出器を設けたのは、外装変速機の場合、クランク27が回転していないと変速できないため、クランク27が回転しているときのみ変速動作が行われるようにするためである。
【0021】
後輪7のハブダイナモ10は、ディスクブレーキのブレーキディスク及び多段ギア25が装着されたフリーホイールを装着可能なハブであり、内部に後輪7の回転により発電する交流発電機19(図3)を有している。
【0022】
制御装置11は、変速スイッチ20a〜20dや操作スイッチ21a,21bの操作に応じて変速装置8,9やサスペンション13f,13rを制御するとともに、速度に応じてそれらを自動制御する。
【0023】
制御装置(第2電気部品の一例)11は、図3及び図4に示すように、第1、第2及び第3制御ユニット30〜32の3つの制御ユニットを有している。第1制御ユニット30は、交流発電機19に接続されている。第1制御ユニット30は、交流発電機19で生成された電力で駆動され、供給された電力によりフロントディレーラ26f、リアディレーラ26r及びリアサスペンション13rを制御する。第1制御ユニット30は、第2制御ユニット31に接続され、第2制御ユニット31や第3制御ユニット32に制御信号を電力に乗せて供給する。具体的には供給された電力を制御信号に応じてオンオフさせて制御信号を電力にのせて出力する。
【0024】
第2制御ユニット31は、第1制御ユニット30から送られた制御信号に応じて、フロントサスペンション13fを制御するとともに、各スイッチ20a〜20d、21a,21bの操作情報を第1制御ユニット30に仲介する。
【0025】
第3制御ユニット32は第2制御ユニット31に着脱自在に装着されている。第3制御ユニット32は、走行情報を表示可能な液晶表示部56を有しており、第1制御ユニット30から出力された制御信号に応じて液晶表示部56を表示制御する。液晶表示部56は、車速、走行距離、変速位置などの走行情報を表示する。
【0026】
第1制御ユニット30は、たとえば、フレーム体2の下部のハンガー部に装着されており、回転検出器及びフロントディレーラ26fに隣接して設けられている。第1制御ユニット30は、運転モードに応じて変速装置8,9及びリアサスペンション13rを制御する。具体的には、自動モードの時には、速度に応じて変速装置8,9を変速制御するとともにリアサスペンション13rを速度に応じて硬軟2つの硬さに制御する。手動モードの時には各変速スイッチ20a〜20d及び操作スイッチ21bの操作に応じて変速装置8,9及びリアサスペンション13rを制御する。また、速度信号を制御信号として第2制御ユニット31及び第3制御ユニット32に出力する。
【0027】
第1制御ユニット30は、CPUやメモリやI/Oインターフェイスなどを含むマイクロコンピュータからなる第1制御部35を有している。第1制御部35には、交流発電機19からのパルス出力により速度信号を生成するための波形成形回路36と、充電制御回路33と、第1蓄電素子38aと、回転検出器のリードスイッチ24と、電源通信回路34と、電源オンオフスイッチ28とが接続されている。また、フロントディレーラ26fのモータドライバ(FMD)39fと、リアディレーラ26rのモータドライバ(RMD)39rと、フロントディレーラ26fの動作位置センサ(FLS)41fと、リアディレーラ26rの動作位置センサ(RLS)41rと、リアサスペンション13rのモータドライバ(RSD)43rとが接続されている。
【0028】
第1制御部35内のメモリには、各種の走行情報などの走行データが記憶されるとともに、制御に必要な制御データが格納されている。第1制御部35には、第1蓄電素子38aにダイオード42を介して接続された第2蓄電素子38bからの電力が供給されている。ダイオード42は、第1蓄電素子38aから第2蓄電素子38bへ一方向のみ電流を流すように設けられている。これにより、第2蓄電素子38bから第1蓄電素子38aへの逆流を防止できる。ここで、第1蓄電素子38aは主に、モータドライバ39f,39r,43f,43rやモータドライバ39f,39r,43f,43rにより駆動されるモータを有するサスペンション13f,13rやディレーラ26f,26rなどの消費電力が大きく電気容量の大きな電装品の電源として使用される。ただし、後述する第2制御部45の電源としても使用される。第2蓄電素子38bは、第1制御部35、後述する第3制御部55及び液晶表示部56等の消費電力が小さく電気容量の小さな電装品の電源として使用される。
【0029】
第1及び第2蓄電素子38a,38bは、たとえば電気二重層コンデンサなどの大容量コンデンサからなり、交流発電機19から出力され、充電制御回路33で整流された直流電力を蓄える。なお、蓄電素子38a,38bをコンデンサに代えてニッケル・カドニウム電池やリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池で構成してもよい。
【0030】
充電制御回路33は、交流発電機19から出力された電力を整流して直流の電力を生成する整流回路37と、整流回路37から出力された電力を第1制御部35からの電圧信号によりオンオフする充電オンオフスイッチ40とを備えている。充電オンオフスイッチ40は、第1蓄電素子38aに過大な電圧の電力を蓄えないようにするためのものである。第1蓄電素子38aの電圧は第1制御部35により監視されており、第1制御部35は監視している電圧が所定電圧(たとえば7ボルト)以上になると充電オンオフスイッチ40をオフする電圧信号を出力し、充電オンオフスイッチ40を開く。また、所定電圧(たとえば5.5ボルト)以下になるとオンする電圧信号を出力し、充電オンオフスイッチ40を閉じる。
【0031】
電源通信回路34は、第2蓄電素子38bにも接続されている。電源通信回路34は、第1制御部35からの速度、距離、変速段、自動又は手動、サスペンションの硬軟などの情報に応じた制御信号により第2蓄電素子38bから送られた電力をオンオフして制御信号を含む電力を第2制御ユニット31に向けて制御信号を供給する。
【0032】
電源オンオフスイッチ28は、第1蓄電素子38aにも接続されている。電源オンオフスイッチ28は、第1蓄電素子38aからフロントサスペンション13fのモータドライバ43f及び第2制御ユニット31に送る電力をオンオフするために設けられている。電源オンオフスイッチ28は、前後のサスペンション13f,13rの硬軟の制御が終了すると第1制御部35からの信号によりオフされ、制御開始時にオンする。これにより、第1蓄電素子38aの電力の無駄な消耗を抑えることができる。
【0033】
各モータドライバ39f,39r,43f,43rは、制御信号に応じてディレーラ26f,26rに設けられたモータ44f,44r、サスペンション13f,13rに設けられたモータ(図示せず)を駆動する駆動信号を各モータに出力する。
【0034】
第2制御ユニット31は、図2に示すように、ハンドル部4のハンドルバー15に固定可能なブラケット49により取り付けられている。第2制御ユニット31は、図4に示すように、マイクロコンピュータからなる第2制御部45を有している。第2制御部45には、第1受信回路46と、フロントサスペンション13fのモータドライバ(FSD)43fが接続されている。第1受信回路46は、第1制御ユニット30の電気通信回路34に接続されており、電力に含まれる制御信号を抽出して第2制御部45に出力する。電気通信回路34は、第3蓄電素子38cにも接続されている。第3蓄電素子38cは、たとえば電解コンデンサなどの比較的小容量のコンデンサを用いており、制御信号によりオンオフされた電力を平滑化するために設けられている。第3蓄電素子38cには、バッファアンプ48が接続されている。バッファアンプ48は、入出力電圧を一定に保持できるアンプであり、変速スイッチ20a,20b及び操作スイッチ21a,21bからのアナログの電圧信号を安定化させるために設けられている。
【0035】
第2制御ユニット31は、第1蓄電素子38aからの電力により動作するとともに、第2蓄電素子38bの電力に乗せられた制御信号に基づきフロントサスペンション13fを運転モードに応じて制御する。具体的には、自動モードの時には、速度に応じてフロントサスペンション13fの硬軟の切り換えを行うとともに、手動変速モードの時には、操作スイッチ21bの操作に応じてフロントサスペンション13fの硬軟の切り換えを行う。なお、前述したように、第2制御部45は、電源オンオフスイッチ28によりサスペンションの制御の時のみ動作するようになっている。
【0036】
第3制御ユニット32は、いわゆるサイクルコンピュータと呼ばれものであり、第2制御ユニット31に着脱自在に装着されている。また、第3制御ユニット32には、たとえばボタン電池などの電池59が装着されており、電池59からも電力を供給できるようになっている。これにより、第3制御ユニット32を第2制御ユニット31から取り外しても第3制御ユニット32は動作可能になっている。このため、ホイール径の設定などの各種の初期設定を行うことができるとともに、走行距離,走行時間等の各種のデータを記憶させることができる。
【0037】
第3制御ユニット32は、図4に示すように、マイクロコンピュータからなる第3制御部55を有している。第3制御部55には、液晶表示部56と、バックライト58と、電池59、第2受信回路64と、第4蓄電素子38dとが接続されている。液晶表示部56は、速度やケイデンスや走行距離や変速位置やサスペンションの状態などの各種の走行情報を表示可能であり、バックライト58により照明される。電力安定化回路57は、電力をオンオフして制御信号を供給してもオンオフ信号を含む電力をたとえば平滑化により安定化するものである。これにより、オンオフする制御信号を電力乗せてもバックライト58のちらつきが生じにくくなる。
【0038】
第2受信回路64は、第1受信回路46と並列に接続されており、第2蓄電素子38bからの電力に含まれる制御信号を抽出して第3制御部55に出力する。第4蓄電素子38dは、たとえは電解コンデンサからなり、第2蓄電素子38bから供給される電力を蓄えてオンオフする制御信号による影響を少なくするために設けられている。第4蓄電素子38dは、第2受信回路64と並列に接続されており、第3制御部55及び電力安定化回路57に接続されている。
【0039】
このような構成の制御装置11では、自転車が走行するとハブダイナモ10の交流発電機19が発電し、その電力が第1制御ユニット30に送られ、第1及び第2蓄電素子38a,38bに電力が蓄えられる。ここで、交流発電機19が後輪7に設けられているので、たとえばスタンドを立ててペダルを回せば充電量が不足していても第1及び第2蓄電素子38a,38bを充電できる。このため、変速装置の調整のためにペダルを回せば簡単に充電でき、充電量が不足していても液晶表示部56の設定等の作業を容易に行える。
【0040】
また、第1制御ユニット30がハンガー部に設けられているので、交流発電機19との距離が近くなり、電源ケーブルが短くて済み信号のやり取りや電力供給の効率が高くなる。
【0041】
また、操作スイッチ21a,21bや変速スイッチ20a〜20dが操作されると、異なるアナログ電圧の信号がバッファアンプ48を介して第1制御部35に出力され、第1制御部35でディレーラ26f,26rを制御する信号やサスペンション13f,13rを制御する信号やモードを変更する信号が生成される。このうち、フロントサスペンション13fを制御する信号は、電源通信回路34に出力されて速度信号と同様に電力をオンオフして第2制御部45に出力され、第2制御部45でフロントサスペンション13fが制御される。
【0042】
スイッチユニット23aには、図2のA部に拡大して示すように、3芯の第1電気配線50が接続されている。第1電気配線50は、スイッチユニット23aの内部で変速スイッチ20a,20b及び操作スイッチ21aと接続されている。具体的には、第1電気配線50の第1コード50aは、操作スイッチ21aの一端に接続され、第2コード50bは、変速スイッチ20a,20bの一端に異なる値の抵抗を介して接続されている。第3コード50cは、コモン線であり、操作スイッチ21a、変速スイッチ20a,20bの他端と接続されている。このように接続することにより、第1コード50aから操作スイッチ21aのオンオフ操作に応じたアナログ信号がバッファアンプ48に出力され、第2コード50cから変速スイッチ20a,20bのオンオフ操作に応じた異なるアナログ電圧の信号がバッファアンプ48に出力される。第1電気配線50は、スイッチユニット23aからハンドルバー15に内外周を貫通して形成された貫通孔を介してハンドルバー15の内部に挿通されハンドルバー15の端面から取り出されている。スイッチユニット23bにも同様な第1電気配線が接続されている。
【0043】
ブラケット49に装着された第2制御ユニット31には、第1電気配線50に配線接続構造60により電気的に接続される第2電気配線51が接続されている。第2電気配線51も3芯の配線であり、バッファアップ48に接続されている。
【0044】
配線接続構造60は、ハンドルバー15に装着されるスイッチユニット23aに接続される第1電気配線50と第2制御ユニット31に接続される第2電気配線51とを電気的に接続するためのものである。配線接続構造60は、図5に示すように、第1電気配線50の各コード50a,50b,50cに電気的に接続可能な第1接続端子61と、第2電気配線51の各コード51a,51b,51cに電気的に接続可能でありかつ第1接続端子61に電気的に接続可能な第2接続端子62と、少なくとも両接続端子61,62を被覆する熱収縮性を有する合成樹脂製の筒状のカバー部材63と有している。なお、図5では、第1電気配線50の第1コード50aと第2電気配線51の第1コード51aとを電気的に接続する配線接続構造60を図示しているが、他のコード及びそれらを接続する配線接続構造も同様な構造である。また、前述したようにスイッチユニット23bと第2制御ユニット31とにも第1電気配線と第2電気配線とが接続されており、これらの電気配線も同様な構造の配線接続構造60で接続されている。
【0045】
両接続端子61,62は、雌雄嵌合の圧着端子であり、この実施形態では、第1接続端子61がソケット型(雌)の接続端子で、第2接続端子がプラグ型(雄)の接続端子である。両接続端子61,62は、たとえばりん青銅製の板材をプレス加工して形成され、表面にすずめっきが施されたものである。
【0046】
第1接続端子61は、第1電気配線50の第1コード50aを圧着可能な第1圧着部61aと、第1圧着部61aと並べて配置され第2接続端子62と接続可能なソケット形状の第1接続部61bと、第1コード50aの被覆部50dを固定するための第1被覆固定部61cを有している。第1被覆固定部61cは、第1接続部61bと逆側で第1圧着部61aに並べて配置されている。第1圧着部61aは、板を圧着工具により折り曲げて第1コード50aの芯線50eを電気的に接続している。
【0047】
第2接続端子62は、第2電気配線51の第1コード51aを圧着可能な第2圧着部62aと、第2圧着部62aと並べて配置され第1接続端子61の第1接続部61bに挿入して電気的に接続可能なプラグ形状の先細りの第2接続部62bと、第1コード51aの被覆部51dを固定するための第2被覆固定部62cを有している。第2被覆固定部62cは、第2接続部62bと逆側で第2圧着部62aに並べて配置されている。第2圧着部62aは、板を圧着工具により折り曲げて第1コード51aの芯線51eを電気的に接続している。
【0048】
カバー部材63は、たとえば、ポリオレフィン樹脂製の熱収縮性を有する透明なチューブであり、図6に示すように、両接続端子61,62が接続された状態で、第1及び第2圧着部61a,62aと、第1及び第2接続部61b,62bと、第1及び第2被覆固定部61c,62cと、第1及び第2電気配線50,51のたとえば2mm〜20mm程度の長さの接続部分とを覆う長さを有している。カバー部材63は、図6に示すように、たとえば110℃程度の熱風を吹き付けることにより熱収縮し、両接続端子61,62及び両コード50a,51aにほぼ沿う形状に収縮する。
【0049】
このように構成された配線接続構造60により、第1電気配線50と第2電気配線51とを接続する場合は以下のように接続作業を行う。
まず、第2制御ユニット31の装着部分及びスイッチユニット23a,23bの装着部分の近傍には、ハンドルバー15の外周面に予め電気配線挿通用の貫通孔(図示せず)をあけておく。そして、貫通孔を介して電気配線をスイッチユニット23aに接続された第1電気配線50をハンドルバー15の内部に通し、ハンドルバー15の端面から第1電気配線50を取り出す。同様に、貫通孔を介して第2制御ユニット31に接続された第2電気配線51をハンドルバー15の内部に通し、ハンドルバー15の端面から第2電気配線51を取り出す。そして取り出した第1及び第2電気配線50,51の各コード50a〜50c,51a〜51cから芯線を露出させ、第1接続端子61を第1電気配線50の各コード50a〜50cに圧着するとともに、第2接続端子62を第2電気配線51の各コード51a〜51cに圧着する。そして、熱収縮前のカバー部材63を各コードのいずれかに装着し、両接続端子61,62を接続する。接続した後に、カバー部材63を両接続端子61,62とともに、各コードの接続部分を覆う。その後熱風によりカバー部材63を熱収縮により収縮させ、両接続端子及びコードに沿う形状にして外径に密着させる。そして、最後に接続した両電気配線をハンドルバー15の内部に収納し、グリップ17をハンドルバー15に装着して配線を完了する。
【0050】
ここでは、熱収縮性を有する合成樹脂製のカバー部材により少なくとも両接続端子を覆うように構成したので、両接続端子が接続された状態でカバー部材を被せて加熱することにより、両接続端子の形状にほぼ沿ってカバー部材の形状を収縮させることができる。このため、防水構造を図りやすくなるとともに、絶縁不良や配線の脱落を防止できるようになる。
【0051】
また、予め第1及び第2電気配線50,51をスイッチユニット23a及び第2制御ユニット31に接続したあと、その装着位置からフレーム1を構成するハンドルバー15内を通して第1及び第2電気配線50,51をハンドルバー15外に取り出し、取り出した2本の電気配線50,51を第1及び第2接続端子61,62を用いて接続し接続後にハンドルバー15内に収納することにより、ハンドルバー15内に電気配線を容易に挿通できる。このとき、両接続端子61,62は熱収縮した合成樹脂製のカバー部材63で覆われるので、絶縁性や防水性能が維持されるとともに、両接続端子61,62や両電気配線50,51が外れにくくなる。
【0052】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、フレームに装着された電気部品としてハンドルバー15に装着されたスイッチユニット23aと第2制御ユニット31を例示したが、本発明に係る配線接続構造で接続される電気部品はフレームに装着可能なものであればどのようなものでもよい。
【0053】
(b)前記実施形態では、雌雄嵌合により接続される接続端子を例示したが、両接続端子の接続構造は雌雄嵌合に限定されない。たとえば、ねじやカシメにより両接続端子を接続する構造も採用できる。また、電気配線との接続構造も圧着に限定されず、ねじによる接続構造や半田による接続構造でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態を採用した自転車の側面図。
【図2】そのハンドル部分の斜視拡大図。
【図3】制御装置の構成の一部を示すブロック図。
【図4】制御装置の構成の残りを示すブロック図。
【図5】本発明に係る配線接続構造の接続前の構成を示す分解斜視図。
【図6】配線接続構造の接続状態を示す一部断面側面図。
【符号の説明】
【0055】
1 フレーム
4 ハンドル部(ハンドルの一例)
11 制御装置(第2電気部品の一例)
15 ハンドルバー(ハンドルの構成の一例)
23a スイッチユニット(第1電気部品の一例)
31 第2制御ユニット(第2電気部品の構成の一例)
50 第1接続配線
51 第2接続配線
60 配線接続構造
61 第1接続端子
62 第2接続端子
63 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルを含む自転車のフレームに装着される第1電気部品に接続される第1電気配線と第2電気部品に接続される第2電気配線とを電気的に接続するための自転車用配線接続構造であって、
前記第1電気配線に電気的に接続可能な第1接続端子と、
前記第2電気配線に電気的に接続可能でありかつ前記第1接続端子に電気的に接続可能な第2接続端子と、
少なくとも前記両接続端子を被覆する熱収縮性を有する合成樹脂製の筒状のカバー部材と、
を備えた自転車用配線接続構造。
【請求項2】
前記第1接続端子は、前記第1電気配線を圧着可能な第1圧着部と、前記第1圧着部と並べて配置され前記第2接続端子と雌雄嵌合により接続可能な第1接続部とを有し、
前記第2接続端子は、前記第2電気配線を圧着可能な第1圧着部と、前記第2圧着部と並べて配置され前記第1接続端子と雌雄嵌合により接続可能な第2接続部とを有し、
前記カバー部材は、前記両接続端子が接続された状態で少なくとも前記第1及び第2圧着部と前記第1及び第2接続部とを覆う長さを有する、請求項1に記載の自転車用配線接続構造。
【請求項3】
前記第1及び第2接続端子並びに前記カバー部材は、前記フレーム内に収納可能である、請求項1又は2に記載の自転車用配線接続構造。
【請求項4】
前記第1電気部品は前記ハンドルに装着され変速操作用のスイッチを有する変速操作部であり、前記第2電気部品は、前記ハンドルに装着される前記スイッチのオンオフ操作により変速信号を変速装置に出力する変速制御部であり、
前記第1及び第2接続端子並びに前記カバー部材は、前記ハンドル内に収納可能である、請求項3に記載の自転車用配線接続構造。
【請求項5】
前記カバー部材は、透明なポリオレフィン樹脂製である、請求項1から4のいずれか1項に記載の自転車用配線接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−244743(P2006−244743A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55516(P2005−55516)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】