説明

航空機用レーダ・システム

使用中に自機を取り囲む領域内の少なくとも1つの監視可能なゾーンにある別の航空機を少なくとも検出するための設備を、航空機に設けるためのレーダ・システムであって、このシステムは、監視可能なゾーンごとに少なくとも1つのサブシステムを備え、サブシステムは、電磁探索信号を送信するための1つの送信器と、その探索信号の反射を受信するための少なくとも1つの受信器とを備え、送信器は、その航空機に対して静止した方向に探索信号を送信するように配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用中に自機を取り囲む領域内にある別の在空物体を少なくとも検出するための、航空機用レーダ・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなレーダ・システムは、周知のものであり、空軍の軍用航空機で使用される。周知のレーダ・システムは、そのシステムを使用する航空機から150海里に広がる領域全体にわたって探索することができる。このシステムは、別の航空機を、衝突を回避する目的ではなく、その検出された航空機が例えば標的にする必要のある敵国の航空機か無視できる航空機かできるだけ早期に判断可能にする目的で、できるだけ早期に検出するために使用される。周知のレーダ・システムの送信器は、長距離まで達する、反射後も検出可能な強い信号を送信することができる。送信器のアンテナは、アンテナの走査動作により全ての関心ゾーン[all zones of interest]信号を送信するために、例えば回転するなど機械的に動いてもよい。この送信器はまた、アンテナ自体を物理的に回転させることなく、全ての関心ゾーンを電子式に走査するように配置してもよい。しかし、どちらの場合も、関心ゾーンは、一時的にしか処理されない走査の域内にある。全ての関心ゾーンを走査する必要があると、航空機を取り囲む領域においてあり得る別の航空機の存在に関する情報を取得するのにしばらく時間を必要とする。この時間は通常は、数秒よりも長い。その結果として、この周知のシステムは、例えば、飛行中の航空機を取り囲む飛行安全量の直接目視確認と置き換えが利かない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来技術のシステムよりも速い形で、パイロットに別の在空物体の存在に関する情報をフィードバックすることができるレーダ・システムを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、使用中に自機を取り囲む領域内にある別の在空物体を少なくとも検出するための、航空機用レーダ・システムである、本発明によるレーダ・システムによって達成され、このシステムは、電磁探索信号を送信するための少なくとも1つの送信器と、送信された探索信号の反射を同時に受信するため、かつ受信された探索信号の反射をそれぞれ表す受信信号を生成するための受信器のフェーズド・アレーと、航空機を取り囲む領域内で検出された在空物体に関する情報を取得するために各受信信号を処理するための信号処理ユニットと、を備える少なくとも1つのサブシステムを備え、サブシステムは、航空機に対して静止している関心ゾーンをカバーするような探索信号を、送信器によって送信するように配置され、サブシステムは、受信器のフェーズド・アレーと、信号処理手段によって、関心ゾーン内の在空物体を検出するように配置される。これによって、目視確認と置き換えできるような、本発明によるレーダ・システムを開発することが可能になる。
【0005】
信号処理ユニットは、関心ゾーン内にある検出された在空物体の位置に関係なく、航空機に対する、受信された反射の起点方向を判定するように配置することができる。したがって、信号処理ユニットは、その方向をほぼ瞬時に判定することができ、それにより受信器が関心ゾーンを走査する(これによって方向の判定が遅くなる)必要がなくなる。
【0006】
より詳細には、信号処理ユニットは、航空機に対する、受信された反射の起点方向を判定することができるように、デジタル多重ビーム形成を使用するように配置される。このビーム形成は、関心ゾーン内にある検出された在空物体の位置に関係なく方向を判定する信号処理ユニットを配置するのに非常に適した方法である。
【0007】
詳細には、少なくとも1つのサブシステムが、関心ゾーンを連続的にカバーするような探索信号を送信するように配置されることが当てはまる。このことは、常にその関心ゾーンが、別の在空の装置の存在について監視されるという利点をもたらす。このようなシステムは、パイロットに情報を連続的に提供することができる。したがって、この情報は、周知のレーダ・システムがこのような情報を提供するよりもはるかに速いやり方で提供される。
【0008】
今日では、飛行する商用航空機を取り囲む安全量は、衝突を回避する目的で航空管制官によって管理される。こういった航空管制官には、所定の空域ゾーン内の航空機の存在に関する情報が提供される。この情報は、地上にある、関心ゾーンを監視するレーダ・システムによる飛行機の検出に基づいている。経験を積んだ航空管制官は、所与の時点で、およそ30機の航空機の飛行状況を監視することができる。この数は、所与の空域ゾーン内の許容可能な航空機最大数の1つの根拠になっている。
【0009】
研究では、航空機自体がその離隔距離を所与の空域内で守ることができるならば、空域の効率をかなり改善することができることが証明されている。
【0010】
すべての航空機が、その位置に関する情報を含んだ信号を連続的に送信する送信器を装備するシステムを開発することが提案されてきた。すべての航空機が、こういった、その他の航空機から送信された信号を受信するための受信器も装備した場合は、すべての航空機はいつでも、同じ空域を使用しているその他のすべての航空機の位置に注意するはずである。この情報に基づいて、各航空機は、その他の航空機との衝突を回避できるはずである。このシステムの不利な点は、航空機のそれぞれがその他の航空機によって左右されるということである。このシステムは、すべての航空機がこのようなシステムを装備した場合に限って満足に機能する。したがって、このようなシステムは、徐々に実施することができない。このことは、このシステムの開発を著しく妨げる。
【0011】
本発明によるレーダ・システムは、そのレーダ・システムがその他の航空機に対して実施される時期には関係なく、航空機ごとに実施することができる。
【0012】
実際に、本発明によるレーダ・システムは原則として、航空機を取り囲む領域内の関心ゾーンに対する目視確認と置き換えできるので、このような航空機は、例えば悪天候の状況のために有視界飛行のルールが通常適用することができない状況下でも、有視界飛行ルールに従って飛行することもできる。したがって、本発明によるレーダ・システムを装備した航空機は例えば、有視界飛行ルールを適用した上でのみ、したがって天候状況によって有視界飛行ルールを適用できる場合に限って接近可能な飛行場に、着陸することができるようになるであろう。すなわち、本発明の結果、多数の飛行場が、天候状況によって通常は可能ではないはずの場合も、接近可能になるであろう。
【0013】
さらに本発明によるレーダ・システムは原則として目視確認と置き換えることができるので、このレーダ・システムは、無人航空機にうまく適用することもできる。このような無人航空機は、本発明の適用により非常によく制御されるので、正規の空域でも許容されるであろう。
【0014】
下記に詳細に説明するように、関心ゾーンに存在し、探索信号を反射する航空機の相対速度は、その探索信号の反射の繰り返しから導き出すことができる。
【0015】
本発明によるレーダ・システムの一実施形態では、探索信号の方向が航空機に対して静止している。これによって、探索信号によってカバーされるゾーンが所定の形状を連続的に有するようになる。したがって、このレーダ・システムは、航空機に対して静止している関心ゾーンを、連続的に監視することができる。
【0016】
本発明によるレーダ・システムの一実施形態では、少なくとも1つのサブシステムが、一定の周波数を有する探索信号を送信するように配置される。これによって、周知のドップラー効果に基づいた、関心ゾーン内に存在する航空機の検出が可能になる。
【0017】
本発明によるレーダ・システムの一実施形態では、少なくとも1つのサブシステムが、周波数変調された連続波(FMCW)を有する探索信号を送信するように配置される。これによって、探索信号の反射に基づいた、関心ゾーン内に存在する接近する航空機の距離の判定が可能になる。
【0018】
探索信号が周波数変調された連続波(FMCW)信号のときは、接近する航空機の距離を推定することができる。いわゆるFMCW掃引が数回行なわれると、接近する航空機の軌道を導き出すことができる。このとき、最接近点(C.P.A)とその発生時間を計算することが可能であり、パイロットは必要が生じたときに衝突回避行動を行なうことができる。
【0019】
本発明によるレーダ・システムのサブシステムの少なくとも1つの送信器が、半導体送信器を備えることが好ましい。高い供給電圧を必要とし、一般的に高価なマイクロ波送信器または送信管とは対照的に、半導体送信器は、比較的安価で、比較的低い供給電圧で作動させることができる。
【0020】
本発明によるレーダ・システムの一実施形態では、このサブシステムの少なくとも1つの受信器のそれぞれが、シングルチップ受信器を備えることがさらに可能である。このようなシングルチップ受信器を使用するとやはり、比較的安価な本発明によるレーダ・システムが可能になる。このようなシングルチップ受信器は例えば、携帯電話などの携帯型遠隔通信装置や、無線LANネットワーク内で運用可能な装置で使用される。
【0021】
本発明によるレーダ・システムの一好ましい実施形態では、レーダ・システムは、航空機の前方にある第1の関心ゾーンを監視するための複数のサブシステムと、少なくとも航空機の後方、上方、下方、側方の何れかにある第2の関心ゾーンとを備える。すなわち、航空機を取り囲む領域に、航空機の周りの最も脆弱な、別の航空機が飛行する可能性のあるゾーンをカバーするように安全ゾーンを設けることが可能である。
【0022】
本発明はまた、このようなレーダ・システムを装備する航空機に関する。
【0023】
本発明についてはさらに、例示的な図面に基づいて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図面では、同じ部品を同じ参照記号で示す。
【0025】
図1に、使用中に自機を取り囲む領域内にある別の在空物体を少なくとも検出するための、航空機用レーダ・システムの一実施形態が、略図で示されている。
【0026】
航空機は、飛行機、ヘリコプタ、飛行船などでもよい。在空物体は、電磁放射線を反射し、航空機と衝突したときに事故を引き起こす恐れのある任意の構造体または装置であってもよい。
【0027】
このシステムは、少なくとも1つのサブシステム1を備える。サブシステム1は、電磁探索信号を関心ゾーンに送信するための送信器2と、送信された探索信号の反射を同時に受信するため、かつ受信された探索信号の反射をそれぞれ表す受信信号を生成するための受信器3のフェーズド・アレーとを備える。このサブシステムは、航空機に対して静止している関心ゾーンをカバーするような探索信号を、送信器によって送信するように配置される。例えば、送信器アンテナ2aが航空機の機首に取り付けられ、その航空機が方向Fに飛行し、送信器アンテナ2aが使用中に、線Zで規定される円錐などの、ほぼ前方の関心ゾーンに向けられた探索信号を送信することが可能である。送信器アンテナは動作状態になると、送信アンテナ2aは航空機に対して機械的に動かない。線Zで規定される関心ゾーンは、航空機に対して静止している。図1からは分からないが、使用中、探索信号の方向は航空機に対して静止している。サブシステムは、関心ゾーンを連続的にカバーするような探索信号を送信するように配置される。
【0028】
図1に略図で示されているレーダ・システムは、8行16列に配列された受信器のフェーズド・アレーを有するサブシステム1を備える。このサブシステムはさらに、後述の信号処理手段を備える。受信アンテナ3aと、受信信号をさらにサブシステムに転送するための電子素子RXとを備える、受信器3が示されている。サブシステムが関心ゾーン内の在空物体の存在を検出するには、サブシステムごとに、少なくとも1つの受信器3が存在すべきであることは明らかであろう。ただし、関心ゾーンにある在空の装置の方向を確立するには、少なくとも2つの受信器が存在するべきである。後述の、検出される在空物体情報を航空機に対して少なくとも1次元で取得するための信号処理手段が配置される。好ましくは、各サブシステムは、そのサブシステムの送信器アンテナ2から送信される探索信号の反射を受信するための少なくとも3つの受信器を備える。後述の、検出される在空物体情報を航空機に対して少なくとも2次元で取得するための信号処理手段が配置されている。図のように、受信器3は互いに少なくとも2次元に広がる所定のパターンに従って配列される。各受信器3は、それぞれ最も近い隣接する受信器3に対して等間隔に配列された所定のパターン内に含まれることが可能である。このような間隔は、サブシステムの送信器のアンテナ2から送信される探索信号の波長のほぼ半分に相当すると好ましい。
【0029】
サブシステム1は、航空機を取り囲む領域内で検出される在空物体に関する情報を取得するために各受信信号を処理するための、信号処理ユニットSPUを備える。信号処理ユニットと信号処理手段は、本明細書では互いに入れ替え可能な形で使用される。
【0030】
サブシステム1は、そのサブシステムの受信器3ごとに、符号付きの受信されたアナログ反射をデジタル反射信号に変換するように配置することができる。このために、図1に示されているように、少なくとも1つのサブシステムの受信器はそれぞれ、アナログ−デジタル変換器(ADC)を備える。サブシステム1はさらに、このサブシステムの受信器3すべてのデジタル反射信号を高速フーリエ変換する、高速フーリエ変換器(FFT)を備えることができる。FFTの出力信号は、受信器3に対して接近する航空機の方向に関する情報を含んでいる。サブシステムはさらに、受信器3に対して接近する航空機の方向だけでなく、FFTの出力信号に基づいて、接近する航空機の存在を検出するための検出器Detを備えることができる。したがって、サブシステムは、受信器のフェーズド・アレーと、信号処理手段により、関心ゾーン内にある在空物体の位置に関係なく、関心ゾーン内の在空物体を検出するように配置される。この実施形態では、信号処理ユニットは、関心ゾーン内にある検出された在空物体の位置に関係なく、航空機に対する、受信された反射の起点方向を判定することができる。これを実現するために、信号処理ユニットは、FFTにより形成された、デジタル多重ビームを使用するように配置される。この実施形態では、受信器3および/または信号処理ユニットが関心ゾーンを走査する必要はない。このサブシステムは走査せずに、単に関心ゾーンの少なくともほぼ全体を、いわば「じっと見つめる」だけである。各受信器は、シングルチップ受信器を備えることができる。これらのタイプのシングルチップ受信器は、当業者にはよく知られているように、例えば無線ローカルエリア・ネットワーク(LAN)で使用される。
【0031】
サブシステムの送信器2は、当業者には周知で市販された半導体送信器を備えることができる。このような半導体送信器は、例えば10GHzという一定の周波数を有する信号を送信するように配置することができる。このような半導体送信器はまた、周波数変調された連続波(FMCW)を有する信号を送信するように配置することもできる。送信器2は、波形発生器WFGと、例えば送信器2から送信される信号のタイプをそれぞれ決定して、その信号を送信器アンテナ2aに適するように処理するためのアップコンバータUCとを備えることができる。検出器Detは、下記に詳細に説明するように波形発生器を制御するように配置することができる。サブシステム1は、使用中、そのサブシステムが関心ゾーン内で接近する航空機の存在を示すまで、サブシステム1の送信器が一定の周波数を有する信号を送信するように配置することができる。このサブシステムはさらに、使用中、そのサブシステムが関心ゾーン内で接近する航空機の存在を示すと、サブシステムの送信器が周波数変調された連続波(FMCW)を有する信号を送信するように配置することができる。このサブシステムはさらに、接近する航空機の軌道を計算できるように、周波数変調された連続波を有する信号の送信を繰り返すように配置することもできる。周波数変調された連続波は、適時にそれ自身を受ける周波数パターンを含む。このレーダ・システムは、航空機の前方の第1のゾーンと、航空機の後方、上方、下方、側方のいずれかにある第2のゾーンを監視するために、少なくとも2つのサブシステム1を備えるのが好ましい。
【0032】
本発明によるレーダ・システムの一実施形態が、そのサブシステムが図1に示されており、以下に概略が説明されるように機能する。図2には、本発明によるレーダ・システムを備える航空機を取り囲む領域内で航空機を検出する方法の概要が、略図により示されている。この方法は、通常動作では、一定の周波数を有する連続的な探索信号を送信することを伴う。これは、本発明による方法のステップSI.1である。SIは、第1の動作モードのステップを示す。図1に示されているサブシステムは、このような連続的な探索信号を送信することができる。このような周波数は、例えば10GHz、すなわち約3cmの波長を有する信号でもよい。図2に示されている方法の、この実施形態の次のステップは、探索信号の反射を受信することを含む(SI.2)。図1に示されている実施形態では、受信器3は、反射信号を受信するための受信素子3aを備える。図2に示されている実施形態における次のステップは、この受信信号をデジタル受信信号に変換することを含む(SI.3)。図1に示されている実施形態では、各受信器は、その目的のために、アナログ‐デジタル変換器(ADC)を含む。本発明による方法の実施形態による次のステップでは、各デジタル受信信号は、その各デジタル受信信号が空間の次元2つと時間の次元1つである3次元でフーリエ変換されるように、3次元高速フーリエ変換器の入力になっている。3次元高速フーリエ変換器は、デジタル多重ビームを形成するための2次元高速フーリエ変換器を含み、この2次元高速フーリエ変換器を使用してデジタル多重ビームを形成する。これらのビームは、受信アンテナ3a同士の位相差の結果として形成されている。したがって、2次元高速フーリエ変換器の入力は、受信アンテナ3aによってもたらされる。また、高速フーリエ変換器は、ドップラー周波数を判定するための1次元高速フーリエ変換器を含む。したがって、1次元高速フーリエ変換器の入力は、受信アンテナの1つだけでもたらされることができる。このドップラースペクトルから、受信信号ごとに、関心ゾーン内の、探索信号の反射が受信された接近する在空物体の存在を検出(SI.5)することが可能である。以上から、検出された在空装置の速度および方向を導き出すことが可能である。探索信号の反射のドップラー情報に基づいて、検出された在空物体の、航空機に対する速度に関する情報を取得するための信号処理手段が配置される。例えば地表などの固定反射は、ドップラー周波数に基づいて抑制できることは当業者には明らかであろう。接近する在空の装置が検出されない場合、在空の装置が検出されるまで、一定の周波数を有する連続的な探索信号の送信が続く。
【0033】
接近する在空の装置が検出されると、次のステップは、周波数変調された連続波の探索信号を送信することを含む(SII.1)。SIIは、第2の動作モードのステップを示す。この探索信号の反射も受信される(SII.2)。これらの受信信号は、デジタル受信信号に変換され(SII.3)、3次元高速フーリエ変換器が、デジタル受信信号をすべて、空間の次元2つと時間の次元1つである3次元に変換する(SII.4)。3次元高速フーリエ変換器は、デジタル多重ビームを形成するための2次元高速フーリエ変換器を含み、この2次元高速フーリエ変換器を使用してデジタル多重ビームを形成する。これらのビームは、受信アンテナ3a同士の位相差の結果として形成される。したがって、2次元高速フーリエ変換器の入力は、受信アンテナ3aによってもたらされる。この変換された信号は、受信器3に対する接近する航空機の方向の情報をもたらす。したがって、信号処理手段は、航空機に対する、受信信号の起点方向を判定するように配置されている。また、3次元高速フーリエ変換器は、接近する在空の装置の距離を判定するための1次元高速フーリエ変換器を含む。したがって、1次元高速フーリエ変換器の入力は、受信アンテナの1つだけでもたらされることができる。周波数変調された連続波探索信号の送信繰り返しと、それに引き続くステップSII.2、ステップSII.3およびステップSII.4の後、何度も、検出された在空物体の距離プロファイルが導き出される。周波数変調された連続波は、2、3MHz程度の帯域幅を有することができる。周波数変調された連続波掃引の繰り返し周波数は、固定反射が距離測定を妨害しないように選択することができる。ステップSII.1〜SII.5の実行から、検出された在空物体の速度および方向が導き出される。ステップSII.1〜SII.5の実行から、検出された在空物体の距離プロファイルが導き出される。これによって、このレーダ・システムによる、接近する在空装置の軌道計算と、最接近点(CPA)とCPA時間の計算が可能になる。これに基づいて、パイロットは必要なら、衝突回避行動を行なうことができる。
【0034】
CPAがサブシステムで計算されると、サブシステムは一定の周波数を有する連続探索信号の送信を再び開始することができる。
【0035】
各サブシステムを、従来技術で周知の「走査するレーダ・システム」に対して、「見つめるレーダ・システム」とみなすことができることは明らかであろう。
【0036】
図1に示されている実施形態の変更形態が、図3に略図で示されている。フェーズド・アレーは、図1に示されているフェーズド・アレーと同じ量の受信器3を備える。しかしながら、受信器3のうちの3つ以外はすべて、見やすいように図3には示されていない。図3から分かるように、各受信器3は混合器4を備える。混合器4は、電子素子RXとアナログ−デジタル変換器(ADC)の間に配置される。さらに、混合器4は、出力信号として、2つの入力信号の周波数同士の差に少なくともほぼ等しい周波数を有する混合器信号を生成するように配置される。サブシステムは、送信器アンテナ2によって送信される探索信号に似た基準信号を混合器4に送信するように配置される。したがって、この混合器信号は、基準信号の周波数と受信反射との差に等しい周波数をもつ信号である。
【0037】
特別ステップSI.2aおよびSII.2aが追加された変更形態がさらに、図4に示されている。混合器4をレーダ・システムに追加すると共に、特別ステップSI.2aおよびSII.2aを追加することによって、SI.3、SII.3でアナログ−デジタル変換器(ADC)によって変換される各信号は、アナログ−デジタル変換器がかなり手頃な値段で入手できる範囲のものになる。一般に、基準信号も受信反射も、約1010Hzの範囲の周波数を有する。ただし、比較的簡易なアナログ−デジタル変換器が使用可能な場合は、混合器信号は約10Hzの範囲にあってもよい。
【0038】
図5は、飛行機などの航空機が、静止関心ゾーンが飛行機前方の探索信号によってカバーされるような複数のサブシステムを備えるレーダ・システムをどのように装備できるか略図で示している。このゾーンは、飛行機から約10kmまで広がる。1つの探索信号によってカバーされる静止関心ゾーンが飛行機後方に存在し、その航空機から約1kmまで広がる。1つの探索信号によってカバーされる静止関心ゾーンが航空機の上方にも下方にも存在し、その航空機から約1.5km広がる。
【0039】
1つの関心ゾーンが、飛行機の両側に存在することも考えられる。関心ゾーンはそれぞれ、そのゾーン自身のサブシステムを必要とする。サブシステムはそれぞれ、2つの送信器アンテナ、すなわち一定の周波数を有する探索信号を連続的に送信するために1つと、FMCWを有する探索信号を連続的に送信するために1つを備えることも可能である。この場合、検出と、検出された飛行機の距離の判定とは、互いに排他的ではなく、既に検出された物体の距離が判定されているときに、さらに新しい在空物体を検出できるように、同時に行なうことができる。しかしながら、関心ゾーンが重なり合うことは可能である。このような実施形態はすべて、本発明の枠組みの範囲内に収まると理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明によるレーダ・システムの一実施形態の概略図である。
【図2】本発明による方法の一実施形態の概略図である。
【図3】図1に示されたレーダ・システムの実施形態の変更形態の概略図である。
【図4】図3に示されたレーダ・システムの実施形態の使用法の概略図である。
【図5】本発明によるレーダ・システムの一実施形態を装備した航空機について得られる結果の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用中に自機を取り囲む領域内にある別の在空物体を少なくとも検出するための、航空機用レーダ・システムであって、システムが電磁探索信号を送信するための少なくとも1つの送信器と、前記送信された探索信号の反射を同時に受信するため、かつ受信された前記探索信号の反射をそれぞれ表す受信信号を生成するための受信器のフェーズド・アレーと、前記航空機を取り囲む領域内で検出される在空物体に関する情報を取得するために前記受信信号をそれぞれ処理するための信号処理ユニットとを備える少なくとも1つのサブシステムを備え、前記サブシステムが、前記航空機に対して静止している関心ゾーンをカバーするような前記探索信号を、前記送信器によって送信するように配置され、前記サブシステムが、前記受信器のフェーズド・アレーと、前記信号処理手段によって、前記関心ゾーン内の在空物体を検出するように配置されるレーダ・システム。
【請求項2】
前記サブシステムが、前記関心ゾーンを連続的にカバーするような前記探索信号を送信するように配置される、請求項1に記載のレーダ・システム。
【請求項3】
前記信号処理ユニットが、前記関心ゾーンが全体的に観察されるように前記関心ゾーン内にある前記検出された在空物体の位置に関係なく、前記航空機に対する前記受信された探索信号の反射の起点方向を判定するように配置される、請求項1または請求項2の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項4】
前記受信器および/または前記信号処理ユニットが、前記関心ゾーンが全体的に観察されるように前記関心ゾーンを走査せずに、前記信号処理ユニットが、前記航空機に対する前記受信された反射の起点方向を判定するように配置される、請求項1ないし3の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項5】
前記信号処理ユニットが、前記航空機に対する前記受信された反射の起点方向を判定するために形成する、デジタル多重ビームを使用するように配置される、請求項1ないし4の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項6】
前記信号処理ユニットが、デジタル多重ビームを形成するために、受信信号について高速フーリエ変換を行なうように配置される、請求項1ないし5の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項7】
前記探索信号の方向が、前記航空機に対して静止している、請求項1ないし6の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項8】
検出される在空物体情報を前記航空機に対して少なくとも1次元で取得するための前記信号処理手段が配置される、請求項1ないし7の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項9】
検出される在空装置の方向情報を航空機に対して少なくとも2次元で取得するための前記信号処理手段が配置される、請求項8に記載のレーダ・システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのサブシステムが、一定の周波数を有する前記探索信号を送信するように配置される、請求項1ないし9の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのサブシステムが、周波数変調された連続波(FMCW)を有する前記探索信号を送信するように配置される、請求項1ないし10の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項12】
前記信号処理手段が、検出された在空物体の、前記航空機に対する位置を判定するように配置される、請求項11に記載のレーダ・システム。
【請求項13】
前記探索信号の反射のドップラー情報に基づいて、検出された在空物体の、前記航空機に対する速度に関する情報を取得するための前記信号処理手段が配置される、請求項1ないし12の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのサブシステムの前記送信器が、半導体送信器を備える、請求項1ないし13の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのサブシステムの各受信器が、シングルチップ受信器を備える、請求項1ないし14の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのサブシステムが、第1のモードで少なくとも一定の周波数を有する探索信号が送信され、第2のモードで少なくとも周波数変調された連続波を有する探索信号が送信されるように配置される、請求項1ないし15の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項17】
前記サブシステムが、前記第1のモードで在空物体が検出されると、前記在空物体が前記第2のモードでさらに検出されるように配置される、請求項16に記載のレーダ・システム。
【請求項18】
前記サブシステムが、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替えるために、前記第1のモードで前記航空機に接近する在空物体が検出されると、前記在空物体が前記第2のモードでさらに検出されるように配置される、請求項17に記載のレーダ・システム。
【請求項19】
前記少なくとも1つのサブシステムが、前記周波数変調された連続波を備える前記探索信号を送信するように配列され、前記周波数変調された連続波が、適時にそれ自身を受ける周波数パターンを含む、請求項11、12、16、17または18の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項20】
前記レーダ・システムが、前記航空機の前方の第1のゾーンと、少なくとも前記航空機の後方、上方、下方のいずれかにある第2のゾーンを監視するための複数のサブシステムを備える、請求項1ないし19の何れかに記載のレーダ・システム。
【請求項21】
請求項1ないし20の何れかに記載のレーダ・システムを装備する、特に無人航空機である航空機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−505037(P2009−505037A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514571(P2008−514571)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000272
【国際公開番号】WO2006/130004
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(501259662)ネイダーランゼ、オルガニザティー、ボー、トゥーゲパストナトゥールウェテンシャッペルーク、オンダーツォーク、ティーエヌオー (28)
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDSE ORGANISATIE VOOR TOEGEPASTNATUURWETENSCHAPPELIJK ONDERZOEK TNO
【Fターム(参考)】