説明

舶用エンジン制御システムおよび方法

【課題】新たにセンサを設けることなく海象の変化を判断し、海象に応じたガバナ制御を行うことにより燃費を向上する。
【解決手段】舶用エンジン制御システム10において、制御指令として目標回転速度Noを設定する。負荷抵抗係数算出ブロック24において実フューエルインデックスFIeと主機関13の実回転速度Neから負荷抵抗係数Rを求める。出力制御を行う第2制御モードが選択されるとき、回転速度/出力変換ブロック16において負荷抵抗係数Rの所定時間に亘る平均値Ravを用いて、目標回転速度Noが目標出力Poに変換される。また、フューエルインデックス制御を行う第3制御モードが選択されるとき、回転速度/フューエルインデックス変換ブロック12において、平均値Ravを用いて目標回転速度Noが目標フューエルインデックスFIoに変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用エンジンの制御システムに関し、特に海象に基づき舶用エンジンの制御を行う制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
舶用エンジンの制御では、設定された目標回転速度と実回転速度の間の偏差がなくなるようにPID制御が行われる。しかし、荒天時などには、プロペラによる負荷トルクが急激に変化するため通常の天候の下での航行を想定したゲインによるPID制御では、オーバースピードによる機関の故障を招くなどの恐れがある。このような問題に対しては、外乱によるプロペラ回転速度の変動を予測してPID制御のゲインを変更する構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−200131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃費向上には、海象に応じたガバナ制御を行う必要があるが、特許文献1では、海象の判断を行っていないので、時々刻々と変化する海象の変化に厳密には対応することはできない。また、回転速度制御は、海象によっては必ずしも燃費効率が良いとは言えない。
【0005】
本発明は、新たにセンサを設けることなく海象の変化を判断し、海象に応じたガバナ制御を行うことにより燃費の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の舶用エンジン制御システムは、主機関の実回転速度とフューエルインデックスから負荷抵抗係数を求め、更新される負荷抵抗係数を用いて制御目標値を第1の物理量から第2の物理量に変換することを特徴としている。
【0007】
好ましくは、負荷抵抗係数の所定時間に亘る平均値が変換に用いられる。また例えば、第1の物理量は、主機関の回転速度であり、第2の物理量は、主機関の出力である。また、第2の物理量は、フューエルインデックスであってもよい。更に、舶用エンジン制御システムが、複数の制御モードを備え、第2の物理量は、制御モードの切替えにおいて主機関の出力とフューエルインデックスとの間で切替えられることが好ましい。
【0008】
更に好ましくは、舶用エンジン制御システムは、負荷抵抗係数から導出される物理量をパラメータとして制御モードの切替えを行う。物理量には、例えば負荷抵抗係数の変動周期または変動の実効値の少なくとも一方が含まれる。また制御モードの切替えは、例えば制御目標値の切替えに対応し、あるいはPID演算の比例項、積分項の感度の変更に対応してもよい。
【0009】
本発明の船舶は、上記何れかの舶用エンジン制御システムを備えたことを特徴としている。
【0010】
本発明の舶用エンジン制御方法は、主機関の回転速度とフューエルインデックスから負荷抵抗係数を求め、更新される負荷抵抗係数を用いて制御目標値を第1の物理量から第2の物理量に変換することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、新たにセンサを設けることなく海象の変化を判断し、海象に応じたガバナ制御を行うことにより燃費を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の舶用エンジン制御システムの制御ブロック図である。
【図2】負荷抵抗係数Rと、実回転速度Ne、フューエルインデックスFIeの具体的な時系列変化を示すグラフである。
【図3】フューエルインデックス制御、出力制御、回転速度制御における動的特長を示すグラフである。
【図4】第2実施形態で使用される制御マップの例である。
【図5】図2(c)に示される負荷抵抗係数Rの変動成分Rvと、その実効値Reの時系列変化、負荷抵抗係数Rの変動周期を示すグラフである。
【図6】第3実施形態で使用される制御マップの例である。
【図7】第3実施形態の舶用エンジン制御システムの制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態である舶用エンジン制御システムの構成を示す制御ブロック図である。
【0014】
第1実施形態の舶用エンジン制御システム10は、例えば3つの制御モードを備え、各制御モードは、海象の状態などに応じて択一的に選択可能である。第1制御モードは、主機関13の実回転速度(回転数)Neを目標回転速度(回転数)Noに維持する回転速度制御である。第2制御モードは、主機関13の出力Peを目標値Poに維持する出力制御である。また、第3制御モードは、燃料噴射量、すなわち、その指標であるフューエルインデックスFIeを目標値FIoに維持するフューエルインデックス制御である。
【0015】
舶用エンジン制御システム10では、操縦者は、何れの制御モードにおいても回転速度(No)を制御指令として与える。すなわち、本実施形態のガバナ制御では、操縦者は、回転速度のみを制御対象として認識すればよい。
【0016】
第1制御モード(回転速度制御)では、制御指令として与えられた目標回転速度Noと、フィードバックされる実回転速度Neとの間の偏差がコントローラ11に入力される。コントローラ11からの出力は、切替えスイッチ22を介してアクチュエータ15へと送られ、アクチュエータ15は、コントローラ11からの出力に対応した燃料噴射量(フューエルインデックスFIe)の燃料を主機関13に供給する。
【0017】
なお、切替えスイッチ22は、第1〜第3制御モード間の切替えを行うスイッチであり、第1制御モード選択時には、回転速度制御用のコントローラ11とアクチュエータ15とを接続する。
【0018】
第2制御モード(出力制御)では、制御指令として与えられた目標回転速度Noが、回転速度/出力変換ブロック16において目標出力Poに変換される(後述)。出力制御では、主機関13の現在の出力Peがフィードバックされ、目標出力Poとの間の偏差がコントローラ17に入力される。第2制御モードにおいて、切替えスイッチ22は、コントローラ17とアクチュエータ15を接続し、コントローラ17からの出力は、切替えスイッチ22を介してアクチュエータ15へと送られる。アクチュエータ15は、コントローラ17からの出力に対応した燃料噴射(フューエルインデックスFIeに対応)を主機関13に行う。
【0019】
なお、フィードバックされる現在の出力Peは、出力算出ブロック19において、主機関13の実回転速度Neと実際の燃料噴射量に対応するフューエルインデックスFIeから算出される(後述)。
【0020】
また、回転速度/出力変換ブロック16における変換は、後述する負荷抵抗係数Rの平均値Ravに基づいて変換されるもので、負荷抵抗係数Rおよびその平均値Ravは、負荷抵抗係数算出ブロック24において、後述するように実フューエルインデックスFIeと実回転速度Neから算出される。
【0021】
第3制御モード(フューエルインデックス制御)では、制御指令として与えられた目標回転速度Noが、回転速度/フューエルインデックス変換ブロック12において目標フューエルインデックスFIoに変換される。なおこの変換においても、負荷抵抗係数算出ブロック24において算出される負荷抵抗係数Rの平均値Ravが用いられる。
【0022】
フューエルインデックス制御では、実際の燃料噴射量に対応するフューエルインデックスFIeがフィードバックされ、目標フューエルインデックスFIoとの間の偏差がコントローラ14に入力される。第3制御モードにおいて、切替えスイッチ22は、コントローラ14とアクチュエータ15を接続し、コントローラ14からの出力は、切替えスイッチ22を介してアクチュエータ15へと送られる。アクチュエータ15は、コントローラ14からの出力に対応した燃料噴射(フューエルインデックスFIeに対応)を主機関13に行う。
【0023】
以上のように、第1実施形態の舶用エンジン制御システム10では、切替えスイッチ22の切替えにより、制御モードを回転速度制御、出力制御、フューエルインデックス制御の間で切り替えられ、海象に合わせたガバナ制御を行うことが可能になる。
【0024】
次に、回転速度/出力変換ブロック16、回転速度/フューエルインデックス変換ブロック12における制御目標値の変換式、および出力算出ブロック19における出力算出式について説明する。なお以下の説明では、回転速度N、出力P、トルクT、フューエルインデックスFIを主機関13の連続最大定格(MCR)のときに100%となる百分率[%]で表す。
【0025】
プロペラ法則によれば、出力P[%]は、回転速度N[%]の3乗に比例し、
P=R・(N/100) (1)
と表される。ここでRは、上述した海象に依存する係数[%]であり、本明細書では負荷抵抗係数と呼ぶ。なお、R[%]は、平水状態(波風がない穏やかな状態)を航行中に100%となる。
【0026】
一方、トルクT[%]、出力P[%]、回転速度N[%]の間には、
T=P/(N/100) (2)
の関係があるので、トルクTは、負荷抵抗係数Rを用いると
T=R・(N/100) (3)
と表される。
【0027】
また、ガバナ制御においてフューエルインデックスFI[%]は、トルクT[%]に等しい(FI=T)と見なせるので(3)式から、
FI=R・(N/100) (4)
が得られる。
【0028】
したがって、負荷抵抗係数Rが決定されれば、回転速度/出力変換ブロック16では(1)式に基づいて回転速度Nから出力Pが、回転速度/フューエルインデックス変換ブロック12では(4)式に基づいてフューエルインデックスFIが求められる。
【0029】
また(4)式から、現在の負荷抵抗係数Rの値は、実フューエルインデックスFIe[%]と実回転速度Ne[%]から、
R=FIe/(Ne/100) (5)
として求めることができる。
【0030】
すなわち、(4)式の負荷抵抗係数Rは、海象に応じて時々刻々と変化するが、その値は、(5)式から求められる。したがって、本実施形態の回転速度/出力変換ブロック16、および回転速度/フューエルインデックス変換ブロック12では、(5)式を用いて算出される負荷抵抗係数Rの所定時間(例えば数十分から数時間程度、好ましくは1時間程度)Tの平均値Rav=[∫FIe/(Ne/100)・dt]/Tを、所定時間T毎に(1)式、(4)式で用いられる負荷抵抗係数Rの値として更新・設定する。
【0031】
すなわち、回転速度/出力変換ブロック16では、変換式として、
Po=Rav・(No/100) (6)
が用いられ、回転速度/フューエルインデックス変換ブロック12では、変換式として、
FIo=Rav・(No/100) (7)
が用いられる。
【0032】
また、出力算出ブロック19において算出される出力Peの値は、(1)、(5)式から
Pe=FIe・(Ne/100) (8)
として求められる。
【0033】
図2に、負荷抵抗係数Rと、実回転速度Ne、フューエルインデックスFIeの具体的な時系列変化を模式的に示す。なお、図2(a)は回転速度Ne[%]、図2(b)はフューエルインデックスFIe[%]の計測値、図2(c)は、(5)式に図2(a)、図2(b)に示される実回転速度Ne、フューエルインデックスFIeを代入して算出される負荷抵抗係数R[%]の算出値の時系列変化を示したもので、横軸は時間[秒]である。
【0034】
図2(a)に示されるように、実回転速度Neは、回転速度(回転数)を一定とする回転速度制御においても、波浪の影響により、設定された目標値を中心に変動し、変動の周期は、船体が受ける波の周期に相関する。一方、図2(b)に示されるように、フューエルインデックス(燃料噴射量)FIeには、回転速度変動に相関する変動の他に、回転速度変動の周期に比べオーダーが遥かに大きいトレンドが存在する。そして、(5)式、R=FIe/(Ne/100)により算出される負荷抵抗係数Rは、図2(a)、図2(b)、それぞれの変動の影響を受け、図2(c)に示されるように変動する。
【0035】
次に図3に、回転速度制御、出力制御、フューエルインデックス制御の各制御モードにおける主機関の回転速度[%]の変動(図3(a))、フューエルインデックスの値の変動(図3(b))、出力変動(図3(c))、負荷抵抗係数の変動(図3(d))の代表例を示す。
【0036】
図3に示されるように、フューエルインデックス制御は、例えば図3(d)に示されるように、負荷抵抗係数Rの変動が小さく、周期も短い主機関の応答遅れが発生する場合に選択される。フューエルインデックス制御では、図3(b)に示されるように、フューエルインデックスが一定に維持されるが、図3(a)、図3(c)に示される回転速度や出力は、短い周期で僅かに変動する。
【0037】
出力制御は、図3(d)に示されるように、負荷抵抗係数Rの変動が中程度で、周期もある程度長く、主機関が十分に追従できる状況で選択される。主機関の出力は、上述された出力制御により、図3(c)に示されるように略一定に維持され、主機関は安定して運転される。このとき回転速度(図3(a))やフューエルインデックス(図3(b))は、負荷抵抗係数Rと略同じ周期で、中程度の大きさで変動する。
【0038】
また、回転速度制御は、例えば極度に荒れた波浪中やハーバーゾーンで使用され、例えばレーシングによる主機関の過回転などが防止される。例えばレーシング発生時、図3(d)に示されるように、負荷抵抗係数Rは突然極度にその値が小さくなる。このとき、回転速度は急激に上昇し始めるため、回転速度を一定に維持するように、フューエルインデックスが大幅に下げられ(図3(b))、主機関の出力が大きく下げられる(図3(c))。これにより、回転速度の過度な上昇が防止される。
【0039】
以上のように、第1実施形態では、海象などに応じて、適切な物理量を制御目標値に設定してガバナ制御を行うことが可能になり、燃費を向上することができる。また、目標回転速度Noを与えれば、その値およびそのときの海象に適する出力制御目標値Poやフューエルインデックス制御目標値FIoが得られるので、燃費を更に改善することができる。
【0040】
次に、図4、図5を参照して、本発明の第2実施形態の舶用エンジン制御システムについて説明する。第2実施形態の舶用エンジン制御システムの構成は、略第1実施形態の舶用エンジン制御システムと同様であるが、第2実施形態では、第1〜第3制御モードの切替えを、負荷抵抗係数Rの変動の周期と負荷抵抗係数Rの変動の実効値をパラメータとして行う。
【0041】
図4は、負荷抵抗係数Rの変動の周期と実効値に基づき第1〜第3の制御モードの切替えを行う制御マップの一例を示す。すなわち、図4において、横軸は負荷抵抗係数Rの変動周期、縦軸は負荷抵抗係数Rの変動の実効値に対応する。
【0042】
一般に負荷抵抗係数Rの変動周期の長短は、波浪変動に対する主機関の追従性に正相関し、変動の実効値の大小は、波浪の影響の大小に正相関するとともにノイズの影響の大小に逆相関する。したがって、本実施形態では変動周期が短く主機関の応答性が低い場合や、変動の実効値が小さく、波浪の影響は小さいがノイズの影響が大きい場合には、フューエルインデックス制御を行い、燃料噴射量を固定して無駄な燃料噴射を抑える(フューエルインデックス制御モード)。
【0043】
逆に変動周期が長く、十分な追従性が得られる場合や、変動の実効値が大きく、レーシングが起こるような波浪の影響が大きい場合には、回転速度制御を行い、主機関(プロペラ)回転速度を一定に維持する(回転速度制御モード)。そして、これら2つの運転モードの中間領域では、出力制御を行い、主機関の出力を一定に維持する(出力制御モード)。
【0044】
すなわち、第2実施形態では、負荷抵抗係数算出ブロック24(図1)において算出される負荷抵抗係数Rに基づき更に、負荷抵抗係数Rの変動の周期と負荷抵抗係数Rの変動の実効値が算出され、図4の制御マップを参照して、対応する領域の制御モードが選択され、切替スイッチ22(図1)の切替が行われる。
【0045】
ここで図5(a)に、図2(c)に示される負荷抵抗係数R[%]の変動成分Rv[%]の時系列変化とRvの実効値Re[%]の時系列変化をグラフに示す。なお、図5(a)における変動成分Rvは、図2(c)の負荷抵抗係数Rからトレンドを除去したものに対応する。また、図5(b)に、図5(a)の変動成分Rv[%]の立ち上がりにおいて0[%]を横切る時点から次の立ち上がりにおいて0[%]を横切る時点までに掛かる時間をプロットしたものをグラフ示し、本実施形態では、この値を負荷抵抗係数Rの変動周期として用いる。
【0046】
以上のように、本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と略同様の効果が得られるとともに、負荷抵抗係数の変動周期、変動の実効値などの負荷抵抗係数から導出される物理量から、現在の海象を判断して制御目標値が異なる複数の制御モードから適切な制御モードを選択することができる。
【0047】
次に、図6、図7を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第2実施形態と同様に、負荷抵抗係数Rの変動周期と変動の実効値をパラメータとしてガバナの制御モードを切替える。第2実施形態の制御モードの切替えでは、制御目標値を回転速度、出力、フューエルインデックスに変更したが、第3実施形態では、制御目標値の変更は行わず、制御パラメータをマップの各領域に対応して変更する。
【0048】
第3実施形態の舶用エンジン制御システムでは、例えば回転速度制御がガバナ制御に用いられ、第2実施形態の制御マップ(図4)に示される回転速度制御、出力制御、フューエルインデックス制御の各領域に対応する領域で、それぞれ、図6の制御マップに示されるように、敏感制御、中庸制御、緩慢制御が選択される。
【0049】
図7に第3実施形態の回転速度制御の制御ブロック図を示す。なお第1、第2実施形態と同様の構成については同じ参照符号を用いその説明を省略する。第3実施形態の回転速度制御では、目標回転速度Noと実回転速度Neの偏差がコントローラ25に入力される。コントローラ25からの出力はアクチュエータ15に入力され、主機関13へはコントローラ25からの出力に対応する燃料噴射量(フューエルインデックスFIe)が供給される。
【0050】
コントローラ25は、例えばPID制御ブロックを含み、各項のゲインの設定は、制御モード切替ブロック26からの指令に基づいて変更される。制御モード切替ブロック26には、実フューエルインデックスFIと実回転数Neが入力され、第1実施形態の負荷抵抗係数算出ブロック24と同様に、負荷抵抗係数Rが算出されるとともに、その変動周期および変動の実効値が算出され、図6の制御マップが参照される。そして制御モード切替ブロック26は、コントローラ25のPID制御ブロックに対して、制御マップに基づいて選択される制御モードのゲインを設定にする。
【0051】
表1に第3実施形態の各制御モードにおけるPID演算での各項の感度の相対的な関係を示し、これらは各項のゲインの設定を変更することにより変更される。
【表1】

【0052】
また、図6では、3つの領域に制御モードを分けたが、2つの制御モードのみに分ける構成でもよく、この場合には、例えば敏感制御と緩慢制御に分けられ、両モードにおけるPID演算での比例項、積分項の感度の相対的な関係は、表2に示される。
【表2】

なお、このような場合には、PI制御のみであってもかまわない。
【0053】
以上のように、第3実施形態においても、第2実施形態と略同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態では、回転速度制御を例に説明を行ったが、出力制御やフューエルインデックス制御に本実施形態を適用することもできる。
【0054】
また、第1〜第3実施形態は、整合が取れる範囲において、それぞれ組合わせて適用することも可能である。
【0055】
なお、各実施形態において、算出される負荷抵抗係数、その変動周期、変動の実効値の何れか1つあるいは負荷抵抗係数から導出される物理量の2以上を操舵室や機関室等に表示する構成としてもよい。また、第2、第3実施形態において、制御モードの切替えを負荷抵抗係数の変動周期、変動の実効値の何れか一方のみ、あるいは負荷抵抗係数から導出される他の物理量と組合わせて規定することも可能である。また、変動周期の代わりに変動周波数を用いることも可能である。更に、本実施形態では、操縦者は制御指令として回転速度を設定したが、フューエルインデックス、出力、船速や他の物理量を制御指令として設定する構成とすることもできる。
【0056】
また、制御方法についてはPID制御に限らず、現代制御理論、適用制御、学習制御等にも適用可能である。例えば第3実施形態の場合、負荷抵抗係数から導かれる物理量に基づいて、PI演算やPID演算の感度を変更して、制御モードの切替えを行ったが、例えば、現代制御理論、適用制御、学習制御等では、負荷抵抗係数から導かれる物理量に基づいて、各々の制御における制御パラメータの値を変更し、制御モードの切替えを行ってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10、20 舶用エンジン制御システム
11、14、17、25 コントローラ
12 回転速度/フューエルインデックス変換ブロック
13 主機関
15 アクチュエータ
16 回転速度/出力値変換ブロック
19 出力算出ブロック
22 切替えスイッチ
24 負荷抵抗係数算出ブロック
26 制御モード切替ブロック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主機関の実回転速度とフューエルインデックスから負荷抵抗係数を求め、更新される前記負荷抵抗係数を用いて制御目標値を第1の物理量から第2の物理量に変換することを特徴とする舶用エンジン制御システム。
【請求項2】
前記負荷抵抗係数の所定時間に亘る平均値を前記変換に用いることを特徴とする請求項1に記載の舶用エンジン制御システム。
【請求項3】
前記第1の物理量が、前記主機関の回転速度であることを特徴とする請求項2に記載の舶用エンジン制御システム。
【請求項4】
前記第2の物理量が、前記主機関の出力であることを特徴とする請求項3に記載の舶用エンジン制御システム。
【請求項5】
前記第2の物理量が、フューエルインデックスであることを特徴とする請求項3に記載の舶用エンジン制御システム。
【請求項6】
複数の制御モードを備え、前記第2の物理量が、前記制御モードの切替えにおいて前記主機関の出力とフューエルインデックスとの間で切替えられることを特徴とする請求項2に記載の舶用エンジン制御システム。
【請求項7】
前記負荷抵抗係数から導出される物理量をパラメータとして制御モードの切替えを行うことを特徴とする請求項2または請求項6の何れか一項に記載の舶用エンジン制御システム。
【請求項8】
前記物理量に、前記負荷抵抗係数の変動周期または前記変動の実効値の少なくとも一方が含まれることを特徴とする請求項7に記載の舶用エンジン制御システム。
【請求項9】
前記制御モードの切替えが制御目標値の切替えに対応することを特徴とする請求項8に記載の舶用エンジン制御システム。
【請求項10】
前記制御モードの切替えがPID演算の比例項、積分項の感度の変更に対応することを特徴とする請求項9に記載の舶用エンジン制御システム。
【請求項11】
請求項1〜11の何れか一項に記載の舶用エンジン制御システムを備えたことを特徴とする船舶。
【請求項12】
主機関の実回転速度とフューエルインデックスから負荷抵抗係数を求め、更新される前記負荷抵抗係数を用いて制御目標値を第1の物理量から第2の物理量に変換することを特徴とする舶用エンジン制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−52577(P2011−52577A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201066(P2009−201066)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(000175043)三井造船システム技研株式会社 (13)
【Fターム(参考)】