説明

船体抵抗低減装置

【課題】気泡放出に余分な動力消費が不要となり、しかも、シンプルな制御が可能な省エネルギー効果の高い船体抵抗低減装置を提供する。
【解決手段】船舶の船体外表面に気泡を放出して航行時の摩擦抵抗を低減する船体抵抗低減装置であって、船舶の主機関からの排気ガスによって駆動され、主機関に燃焼用空気を圧送する過給機20を備え、該過給機20から主機関へ供給される燃焼用空気を抽気して船体外表面に放出するとともに、過給機20が、排気流速を2段階に調整可能な可変ノズルを備え、燃焼用空気を抽気して船体外表面に放出する場合は可変ノズルを絞り、燃焼用空気を抽気して船体外表面に放出しない場合は可変ノズルを開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体から微小な気泡を放出して航行時の摩擦抵抗を低減する船体抵抗低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の船底部外面上に微小な気泡を放出しながら航行することにより船体の摩擦抵抗を低減し、船舶の推進に必要な動力、すなわち燃料消費を低減する技術が実用化されている。このような気泡を放出するためには、たとえば電動コンプレッサ等の駆動源が必要になる。
また、船舶の抵抗低減装置には、たとえば下記の特許文献1に開示されているように、船舶に搭載されたディーゼルエンジンの排気ガスに含まれている二酸化炭素を海水に溶解させ、この海水をジェットノズルから噴出することによって二酸化炭素を気泡化する装置もある。この場合、排気ガスから分離した二酸化炭素を圧縮する圧縮装置や海水を吸水するポンプがあるため、これらを駆動する駆動源が必要となる。
【0003】
さらに、下記の特許文献2は、過給機の周辺から加圧気体を取り出して気泡を発生させる船舶の摩擦低減方法及び装置に関するものであり、過給機の給気特性を改善する可変手段を可変ノズルとし、ノズル翼の向きや角度を変化させて、運転状態や周囲の条件に応じて最適なバイパス空気を得る技術が開示されている。この場合、過給機のタービンは、連続した容量変化を得る可変タービンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−208435号公報
【特許文献2】特開2010−228679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の船体抵抗低減装置によれば、船体の船底部外表面に気泡を放出するため、コンプレッサやポンプ等の駆動源が必要であるから、これらの駆動源用として電力等のエネルギーを消費する。このため、気泡放出により船舶推進の燃料消費を低減しても、コンプレッサやポンプ等のエネルギー消費分だけ省エネルギー効果が小さくなるので、より一層省エネルギー効果を向上させた船体抵抗低減装置の開発が望まれている。
【0006】
また、特許文献2に開示されているように、過給機の給気を利用する従来技術の場合には、過給機のタービンが連続した容量変化を得るものであるから、その制御が複雑になるという問題を有している。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、気泡放出に余分な動力消費が不要となり、しかも、シンプルな制御が可能な省エネルギー効果の高い船体抵抗低減装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る船体抵抗低減装置は、船舶の船体外表面に気泡を放出して航行時の摩擦抵抗を低減する船体抵抗低減装置であって、前記船舶の主機関からの排気ガスによって駆動され、前記主機関に燃焼用空気を圧送する過給機を備え、該過給機から前記主機関へ供給される前記燃焼用空気を抽気して前記船体外表面に放出するとともに、前記過給機が、排気流速を2段階に調整可能な可変ノズルを備え、前記燃焼用空気を抽気して前記船体外表面に放出する場合は前記可変ノズルを絞り、前記燃焼用空気を抽気して前記船体外表面に放出しない場合は前記可変ノズルを開くように制御されることを特徴とするものである。
【0008】
このような本発明の船体抵抗低減装置によれば、船舶の主機関からの排気ガスによって駆動され、主機関に燃焼用空気を圧送する過給機を備え、該過給機から主機関へ供給される燃焼用空気を抽気して船体外表面に放出するので、船体外表面に放出される気泡は過給機により圧縮された空気となり、たとえば圧縮機を駆動する電動機等のように、エネルギーを消費する駆動源が不要となる。
【0009】
さらに、過給機は、排気流速を2段階に調整可能な可変ノズルを備えており、燃焼用空気を抽気して船体外表面に放出する場合は可変ノズルを絞り、かつ、燃焼用空気を抽気して船体外表面に放出しない場合は可変ノズルを開くように制御されるため、抽気して船底に空気を送る場合には、タービンノズルを絞って過給機タービンの出力を増加させて気泡放出に必要な空気量を確保し、さらに、船底に空気を送る必要がない場合には、タービンノズルを開いて抽気しない場合の掃気圧力上昇を抑えることができる。
なお、船舶用の主機関は、一般的に2サイクルディーゼルエンジンであるから、上述した燃焼用空気は掃気となる。
【0010】
上記の発明において、前記過給機は、気泡が放出されない運転状況にあり、かつ、燃焼用空気圧力が所定の許容限度に達した負荷から最大負荷までの高負荷領域にある時に前記可変ノズルを開く気泡停止時高負荷運転モードを備えていることが好ましい。
このような気泡停止時高負荷運転モードを設けることにより、海象条件等により気泡の放出を停止して航行する場合において、主機関を高負荷領域で運転しても燃焼用空気圧力が所定値以上の高圧になることはない。従って、気泡を放出しない高負荷運転領域において、燃焼用空気圧力の上昇を抑制する無駄な抽気が不要になるので、過給効率の低下及び燃料消費率の増加を防止して主機関の効率改善が可能になる。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明によれば、気泡放出にエネルギーを消費する駆動源が不要になるので、余分な動力を消費することなく気泡を放出できる省エネルギー効果の高い船体抵抗低減装置を提供することができる。また、過給機は、排気流速を2段階に調整可能な可変ノズルを備えているので、可変ノズルの2段階切替によるシンプルな制御が可能となる。
さらに、過給機に2段階に調整可能な可変ノズル付過給機を採用して気泡停止時高負荷運転モードを設けると、気泡を放出しない高負荷運転領域でも燃焼用空気圧力の上昇を抑制する無駄な抽気が不要になって主機関の効率改善が可能になるので、省エネルギー効果がより一層向上した船体抵抗低減装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る船体抵抗低減装置の一実施形態として、気泡となる空気供給部の概略構成例を示す系統図である。
【図2】過給機として可変ノズル付過給機を採用した場合に設けられる気泡停止時高負荷運転モードの説明図である。
【図3】可変ノズル付過給機の一例として、タービン側の内部構成例を断面で示す一部断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る船体抵抗低減装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
船体抵抗低減装置は、水上を航行する船舶の船体外表面上に対し、特に、喫水線より下で航行時に水中となる船体の船底部外表面上に対し、微小な気泡を放出しながら航行することにより船体の摩擦抵抗を低減する装置である。
図1は、微細な気泡となる空気を船底に供給する空気供給部の概略構成例を示す系統図であり、船底に供給された空気がノズル等の空気放出部(不図示)から船体外表面に放出されることにより、無数の微細な気泡が船体外表面上に形成される。
【0014】
図示の空気供給部10には、船舶の主機関に設けられた排気ガスマニフォールド11から排気ガスの供給を受けて外気を圧縮する過給機20が設けられている。この過給機20は、主機関の内燃機関から排出される排気ガスのエネルギーを利用してタービン21を回転させ、ロータ軸22により連結されたコンプレッサ23を駆動して外気を圧縮する装置である。すなわち、過給機20は、たとえば軸流式のタービン21に導入した排気ガスが膨張して得られる軸出力で同軸のコンプレッサ22を回転させ、吸入した外気を高密度に圧縮した圧縮空気を燃焼用空気として内燃機関に供給するように構成されている。
【0015】
船舶の主機関は、2サイクルのディーゼルエンジンが一般的であり、燃焼用空気として主機関に供給される圧縮空気は、燃焼シリンダ内に残る排気ガスを押し流すことから掃気と呼ばれている。すなわち、過給機20で外気を圧縮して供給される燃焼用空気は、空気冷却器12で冷却された後に掃気として掃気室13に導かれる。図示の構成例では、2組の過給機20及び空気冷却器12を示しているが、これに限定されることはない。
【0016】
掃気室13に集められた掃気は、主流が主機関の燃焼シリンダ内へ供給され、抽気した一部が船底の空気放出部へ供給される。こうして空気放出部に供給された掃気は、水中へ放出されることにより微細な気泡となるが、この掃気は、過給機20のコンプレッサ22により圧縮された圧縮空気であるから、空気放出部へ供給して水中へ放出することが可能な圧力を保有している。
【0017】
このため、水中に気泡を形成する空気放出用として、たとえば電動圧縮機等のように駆動源を必要とする装置を新たに設けることが不要となり、従って、電動機駆動用の電力消費も不要となる。すなわち、主機関から排出される排気ガスのエネルギーを利用して得られる圧縮空気で気泡を形成するので、余分な動力を消費することなく気泡を放出でき、省エネルギー効果の高い船体抵抗低減装置となる。換言すれば、気泡放出用としてエネルギーを消費する新たな駆動源が不要になるので、気泡放出による船舶推進の燃料消費低減効果が低減されることのない船体抵抗低減装置となる。
【0018】
ところで、上述した実施形態の空気供給部10は、掃気室13から掃気を抽気して気泡を形成する方式であるから、たとえば海象条件等により船底から気泡を出さないで航行するような状況も考えられる。このような場合に掃気室13からの抽気を止めてしまうと、主機関の出力が高い高負荷の運転領域においては、主機関の掃気圧力が上昇しすぎることも懸念される。従って、主機関や掃気室13を所定値以上の掃気圧力から保護するためには、船底からの気泡放出を停止した場合でも、掃気室13から一定量を抽気することが必要になる。
しかし、掃気室13から掃気を抽気すると、過給機20の過給効率が低下するので、主機関の燃料消費率は増加することになる。
【0019】
そこで、本実施形態では、上述した過給機20として、たとえば図3に示すように構成された可変ノズル付過給機20Aを採用する。この可変ノズル付過給機20Aは、可変ノズルの開閉制御により、主機関(内燃機関)から供給される排気ガスの流速(排気流速)を2段階に調整可能な過給機である。
図3は、可変ノズル付過給機20Aについて、タービン30側の内部構成例を示す断面図である。図示のタービン30は、導入した主機関の排気ガスが膨張して得られる軸出力で同軸のコンプレッサ(図示せず)を回転させ、高密度に圧縮した圧縮空気(掃気)を内燃機関に供給するように構成された軸流式のタービンである。
【0020】
このタービン30は、別体の内側ケーシング31及び外側ケーシング32をボルト・ナット等の締結手段により一体化し、内側ケーシング31と外側ケーシング32との間に形成される空間が排気ガスをタービンノズル33に導くための主排気ガス流路34となるよう構成されたガス入口ケーシング35を備えている。
【0021】
このような二重構造のガス入口ケーシング35では、主排気ガス流路34がタービン30の回転方向の全周にわたって形成されており、ガス入口ケーシング35のガス入口35aから図中に矢印Giで示すように導入された排気ガスは、主排気ガス流路34を通ってガス出口35bに導かれた後、図中に矢印Goで示すようにしてガス出口ケーシング36の出口から外部へ排出される。また、ガス出口35bは、回転方向の全周にわたってタービンノズル33へ排気ガスを供給するように開口して設けられている。
なお、図中の符号37は、タービン動翼38の下流側に設けられたガス案内筒である。
【0022】
また、タービン30は、ロータ軸39の一端部に設けられたロータディスク40と、このロータディスク40の周縁部に、周方向に沿って取り付けられた多数のタービン動翼38とを備えている。タービン動翼38は、タービンノズル33の出口となる下流側に近接して設けられている。そして、タービンノズル33から噴出する高温の排気ガスがタービン動翼33を通過して膨張することにより、ロータディスク40及びロータ軸39が回転するようになっている。
【0023】
また、内側ケーシング31のロータディスク40側端部には、内周部(他端部内周側)に中空円筒状の部材41がボルト結合され、部材41の端面(ロータディスク40側の端面)には、タービンノズル33を形成するリング状部材(ノズルリング)の内周側部材33aがボルト結合されている。
一般にノズルリングと呼ばれてタービンノズル33を形成するリング状部材は、所定の間隔を有する内周側部材33a及び外周側部材33bのリング部材間を仕切部材で連結した二重リング構造とされる。
【0024】
一方、タービンノズル33を形成するノズルリングの外周側部材33bは、ガス入口側(ガス出口35bの側)の端部内周面33cがラッパ形状に拡径されている。また、外側ケーシング32のロータディスク40側の端部には、外側ケーシング32の内周面をロータディスク40の方向へ折曲するようにして形成された段差部32bが設けられている。そして、この段差部32bと、ノズルリング33のガス入口側の端部に設けられた段差部33dとが軸方向で係合(嵌合)するように構成されている。
【0025】
さらに、タービンノズル33の外周側部材33bには、ガス出口側(タービン動翼38の側)となる端部にガス案内筒37が連結されている。タービンノズル33の外周側部材33bとガス案内筒37との連結部は、互いの端部どうしを嵌合させたインロー構造とされている。
なお、図中に格子状のハッチングで示す部分は、断熱及び防音の目的で設置された断熱材42である。
【0026】
上述した内側ケーシング31の内周側(半径方向内側)には、主排気ガス流路34の途中で分岐された排気ガスを、タービンノズル33の内周側(半径方向内側)に導く副排気ガス流路43が、タービン30の回転方向の全周にわたって形成されている。この副排気ガス流路43は、主排気ガス流路34の内周側(半径方向内側)に設けられており、主排気ガス流路34と副排気ガス流路43とは、内側ケーシング31を形成する隔壁44によって仕切られている。
【0027】
また、内側ケーシング31の一端内周部(一端部内周側)には、排気ガス配管45を接続するためのフランジ46が設けられており、排気ガス配管45の途中には、制御装置47によって自動的に開閉される開閉弁(例えば、バタフライ弁)48が接続されている。そして、主排気ガス流路34の途中で分岐された排気ガスは、フランジ46及び排気ガス配管45の内部に形成された流路(図示せず)を通って副排気ガス流路43に導かれるようになっている。
【0028】
さらに、タービンノズル33の根元側(内周側部材33aの側)には、その内周面(半径方向内側の表面)49aが、隔壁44の内周面(半径方向内側の表面)44aと同一平面を形成するとともに、タービンノズル33の内周側と外周側とを仕切る隔壁49が設けられている。
なお、隔壁49は、タービンノズル33の根元における位置(内周側部材33aと接合されている位置)を翼長さ0%、タービンノズル33の先端における位置(外周側部材33bと接合されている位置)を翼長さ100%とした場合、翼長さ約10%の位置に設けられている。
【0029】
このように構成された可変ノズル付過給機20Aでは、主機関の負荷が低く、排気ガスの量が少ない場合に開閉弁48が全閉状態とされ、主機関の負荷が高く、排気ガスの量が多い場合に開閉弁48が全開状態とされる。
すなわち、主機関の負荷が低く、排気ガスの量が少ない場合には、ガス入口ケーシング35のガス入口35aから導入された排気ガスの全量が、排気ガス流路34を通ってガス出口35bに導かれる。ガス出口35bに導かれた排気ガスは、回転方向の全周にわたって開口するガス出口35bからタービンノズル33の外周側(外周側部材33bと隔壁49とで仕切られた空間内)に吸い込まれ、タービン動翼38を通過する際に膨張してロータディスク40及びロータ軸39を回転させる。
【0030】
一方、主機関の負荷が高く、排気ガスの量が多い場合には、ガス入口ケーシング35のガス入口35aから導入された排気ガスの大半(約70〜95%)が、主排気ガス流路34を通ってガス出口35bに導かれ、ガス入口ケーシング35のガス入口35aから導入された排気ガスの一部(約5〜30%)が、フランジ46、排気ガス配管45、開閉弁48、副排気ガス流路43を通ってガス出口43aに導かれる。ガス出口35bに導かれた排気ガスは、回転方向の全周にわたって開口するガス出口35bからタービンノズル33の外周側(外周側部材35bと隔壁49とで仕切られた空間内)に吸い込まれ、ガス出口43aに導かれた排気ガスは、回転方向の全周にわたって開口するガス出口43aからタービンノズル33の内周側(内周側部材33aと隔壁49とで仕切られた空間内)に吸い込まれて、タービン動翼38を通過する際に膨張してロータディスク40及びロータ軸39を回転させる。
そして、ロータディスク40及びロータ軸39が回転することにより、ロータ軸39の他端部に設けられたコンプレッサ(図示せず)が駆動され、主機関に供給する掃気が圧縮される。
【0031】
なお、コンプレッサで圧縮される空気は、フィルター(図示せず)を通して吸入され、タービン動翼38で膨張した排気ガスは、ガス出口案内筒37及びガス出口ケーシング36に導かれて外部へ流出する。
また、開閉弁48は、たとえばコンプレッサから送出(吐出)される空気の圧力、または主機関の燃焼室に供給される空気の圧力が絶対圧力で0.2MPa(2bar)よりも低い場合、すなわち、内燃機関が低負荷運転されている場合に全閉状態とされ、コンプレッサから送出(吐出)される空気の圧力、または内燃機関の燃焼室に供給される空気の圧力が絶対圧力で0.2MPa(2bar)以上の場合、すなわち、内燃機関が高負荷運転されている場合に全開状態とされる。
【0032】
このように構成された可変ノズル付過給機20Aでは、開閉弁48を開閉操作することにより、排気ガスが主排気ガス流路34からガス出口35bを通ってタービンノズル33に流れる場合(流路断面積小)と、排気ガスが主排気ガス流路34及び副排気ガス流路43からガス出口35b及びガス出口43aを通ってタービンノズル33に流れる場合(流路断面積大)との選択切換が可能である。
すなわち、タービンノズル33は、開閉弁48の開閉操作により排気ガス流路の流路断面積を変化させて排気流速の調整が可能な可変ノズルである。換言すれば、可変ノズル付過給機20Aは、可変ノズルの開閉制御(開閉弁48の開閉制御)により、排気流速を2段階に調整可能な過給機となる。
【0033】
従って、本実施形態では、図2に示すように、過給機20を排気流速の2段階調整を可能にした可変ノズル付過給機20Aとし、可変ノズル付過給機20Aの可変ノズルであるタービンノズル33を、気泡が放出されない運転状況にあり、かつ、掃気(燃焼用空気)圧力が所定の許容限度P1に達した負荷L1から最大負荷までの高負荷領域にある時に開く気泡停止時高負荷運転モードを備えている。
この気泡停止時高負荷運転モードは、気泡を放出しない運転状況において、開閉弁48を開閉操作する可変ノズルの開閉制御により排気ガス流路の流路断面積を変化させて、具体的には、掃気圧力が所定の許容限度P1に達した負荷L1から最大負荷までの高負荷領域で開閉弁48を開いて、排気ガスの流路断面積を増すものである。
【0034】
このような流路断面積の増加は、主機関の負荷(出力)が同じ条件において、排気ガス流速を低下させる。この結果、排気ガスにより駆動されるタービン30の回転数(出力)も低下するので、タービン30により駆動されるコンプレッサから供給される掃気の圧力もP2まで低下することになる。すなわち、気泡の放出がない運転状況の掃気圧力は、無負荷から負荷L1までの低負荷領域において、開閉弁48を閉じた流路断面積小の状態で掃気圧力0から許容限度P1まで主機関負荷に比例して上昇する。
【0035】
しかし、掃気圧力が許容圧力P1に到達した時点において、開閉弁48を開いて流路断面積大の状態とすれば、掃気圧力はP2まで低下する。このため、負荷L1を超える高負荷領域の掃気圧力は、掃気圧力P2から最大負荷で最大負荷時の掃気圧力となるように、主機関負荷に比例して上昇する。
なお、気泡放出有りの場合には、開閉弁48を閉じて排気ガスの流路断面積を小とした運転が行われ、この結果、掃気圧力は主機関負荷に比例して最大負荷時の掃気圧力まで上昇する。
【0036】
このような気泡停止時高負荷運転モードを設けることにより、海象条件等により気泡の放出を停止して航行する場合において、主機関を高負荷領域で運転しても掃気圧力が所定位置以上の高圧になることはない。従って、気泡を放出しない高負荷運転領域において、掃気圧力の上昇を抑制する無駄な抽気が不要になるので、過給効率の低下及び燃料消費率の増加を防止して主機関の効率改善が可能になる。
【0037】
上述したように、排気流速の2段階調整を可能にした可変ノズル付過給機20Aを採用すると、気泡放出にエネルギーを消費する駆動源が不要になるため、余分な動力消費のない気泡放出が可能となり、さらに、気泡停止時高負荷運転モードを設けると、気泡を放出しない高負荷運転領域でも掃気圧力の上昇を抑制する無駄な抽気が不要になるため、主機関の効率改善が可能になり、この結果、シンプルな制御により省エネルギー効果がより一層向上する船体抵抗低減装置となる。
【0038】
また、可変ノズル付過給機20Aの構成については、可変ノズルの構造を含めて、排気流速の2段階調整が可能であれば図3に示した構成に限定されることはない。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、たとえば主機関が2サイクルのディーゼルエンジンに限定されないなど、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 空気供給部
11 排気ガスマニフォールド
13 掃気室
20 過給機
20A 可変ノズル付過給機
21,30 タービン
22,39 ロータ軸
23 コンプレッサ
33 タービンノズル
34 主排気ガス流路
35b,43a ガス出口
38 タービン動翼
40 ロータディスク
43 副排気ガス流路
45 排気ガス配管
48 開閉弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の船体外表面に気泡を放出して航行時の摩擦抵抗を低減する船体抵抗低減装置であって、
前記船舶の主機関からの排気ガスによって駆動され、前記主機関に燃焼用空気を圧送する過給機を備え、該過給機から前記主機関へ供給される前記燃焼用空気を抽気して前記船体外表面に放出するとともに、
前記過給機は、排気流速を2段階に調整可能な可変ノズルを備え、前記燃焼用空気を抽気して前記船体外表面に放出する場合は前記可変ノズルを絞り、前記燃焼用空気を抽気して前記船体外表面に放出しない場合は前記可変ノズルを開くことを特徴とする船体抵抗低減装置。
【請求項2】
前記過給機は、気泡が放出されない運転状況にあり、かつ、燃焼用空気圧力が所定の許容限度に達した負荷から最大負荷までの高負荷領域にある時に前記可変ノズルを開く気泡停止時高負荷運転モードを備えていることを特徴とする請求項1に記載の船体抵抗低減装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171582(P2012−171582A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38326(P2011−38326)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】