説明

荷台用空気バネのためのフェイルセーフ構造

【課題】空気バネが機能しなくなった場合に荷台の床の上下振動を最小限に抑えて積荷の損傷を防止することが可能な荷台用空気バネのためのフェイルセーフ構造を提供すること。
【解決手段】バイパス管13は右側エア配管11と左側エア配管12とを連通する。遮蔽膜保護コック38の右側バルブ40及び左側バルブ42は、バイパス管13に設けられバイパス管13を閉止可能に開放する。遮蔽膜37はバイパス管13の右側バルブ40及び左側バルブ42の間に設けられてバイパス管13を閉止し、バイパス管13の右側エア配管11側の管内圧と左側エア配管12側の管内圧との差が所定の限界圧を超えると破断する。ストッパ14は右側エア配管11に設けられ右側エア配管11の内圧が所定圧以下に低下したとき、下壁部18に対するフロアパン7の後端部の上下移動を許容する非ロック位置からフロアパン7の後端部を下壁部18側にロックするロック位置へ移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台用空気バネのためのフェイルセーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、荷台底部の前方側がシャシフレームにヒンジを介してピッチング方向に回転可能に取り付けられて、荷台底部の後方側端部が左右両側に配置された空気バネを介してシャシフレームに取り付けられたトラックの荷台防振構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−1345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の荷台防振構造では、空気バネの空気が何らかの原因により外部に流出して空気バネが機能しなくなった場合、空気バネによって荷台の後端部を支持できなくなり、荷台の後端部が単にシャシフレームに載置された状態となる。係る状態では、荷台の後端部の上下振動がシャシフレームの上下振動よりも大きくなってしまい、積荷が跳ね上がって損傷等してしまう可能性が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、空気バネが機能しなくなった場合に、荷台の床の上下振動を最小限に抑えて積荷の損傷を防止することが可能な荷台用空気バネのためのフェイルセーフ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明は、車体と荷台の床との間に介在し、第1及び第2のエア管路を介して圧縮空気がそれぞれ供給されることにより床を上下方向に移動自在に下方から弾性支持する第1及び第2の空気バネのためのフェイルセーフ構造であって、バイパス管路と第1及び第2のコックと遮蔽膜とロック機構とを備える。
【0007】
バイパス管路は、第1のエア管路と第2のエア管路とを連通する。第1及び第2のコックは、バイパス管路に設けられ、バイパス管路を閉止可能に開放する。遮蔽膜は、バイパス管路の第1のコックと第2のコックとの間に設けられてバイパス管路を閉止し、バイパス管路の第1のエア管路側の管内圧と第2のエア管路側の管内圧との差が所定の限界圧を超えると破断する。
【0008】
ロック機構は、第1のエア管路、第2のエア管路及びバイパス管路のうち何れか1つの管路又は1つの管路と連通して圧縮空気が流入する流入管路に設けられ、1つの管路又は流入管路の内圧が所定圧以下に低下したとき、車体に対する床の上下移動を許容する非ロック位置から床を車体側にロックするロック位置へ移動する。
【0009】
上記構成では、例えば車両走行時、第1の空気バネと第2の空気バネとは個別の空気圧に設定された状態で荷台の床を支持する。係る状態では、第1の空気バネの空気圧と第1のエア管路の管内圧とバイパス管路の第1のエア管路側の管内圧とは略同じであり、第2の空気バネの空気圧と第2のエア管路の管内圧とバイパス管路の第2のエア管路側の管内圧とは略同じであり、遮蔽膜は破断していない。すなわち、遮蔽膜が破断しない限界圧は、第1の空気バネが通常設定される空気圧と第2の空気バネが通常設定される空気圧との差よりも高い。また、上記第1の空気バネと第2の空気バネとが個別の空気圧に設定された状態では、全ての管路(第1のエア管路と第2のエア管路とバイパス管路と流入管路)に圧縮空気が供給されているので、ロック機構が非ロック位置となる。
【0010】
第1の空気バネ及び第1のエア管路或いは第2の空気バネ及び第2のエア管路の何れかに破損等が生じ、破損した側の空気バネ、エア管路及びこのエア管路側のバイパス管路内の圧縮空気が外部に漏れると、バイパス管路のうち遮蔽膜の一方側(破損側)の圧力が大気と略同じ値まで低下する。一方、バイパス管路のうち遮蔽膜の他方側(非破損側)は圧縮空気によって通常設定される圧力が維持される。このため、遮蔽膜の両側で所定の限界圧を超えた圧力差が生じ、遮蔽膜が破断する。すなわち、遮蔽膜の限界圧は、上記圧縮空気によって通常設定される空気圧と大気圧との差よりも低く設定されている。
【0011】
遮蔽膜が破断すると、第1のエア管路と第2のエア管路とが連通し、非破損側の圧縮空気がバイパス管路を通って破損側へ流通して破損箇所から流出する。このため、第1の空気バネ側及び第2の空気バネ側の何れか一方で破損等が生じた場合に、第1の空気バネ側及び第2の空気バネ側の双方が失陥し、第1及び第2の空気バネが共に機能しなくなり、床の第1の空気バネに支持された部分と第2の空気バネに支持された部分とが同時に下降する。従って、上記破損等が生じた場合に、破損側の空気バネのみが機能して床が傾くことがなく、積荷が荷崩れ等を起こすことがない。
【0012】
第1の空気バネ側及び第2の空気バネ側の双方が失陥すると、全ての管路の圧縮空気が流出し、この全ての管路の内圧が大気と略同じ値まで低下して所定圧以下となる。これにより、ロック機構が非ロック位置からロック位置へ移動して、下降した床を車体側にロックする。すなわち、ロック機構の所定圧は、上記圧縮空気によって通常設定される空気圧よりも低く、大気よりも高い。
【0013】
ロック機構が床を車体側にロックすることにより、車体に対する床の上下方向の移動が阻止され、床が車体側に支持された状態で床と車体とが一体的に上下振動するので、車体の上下振動よりも床の上下振動が増大することがない。従って、第1の空気バネ又は第2の空気バネが機能しなくなった場合において、床と車体とが一体的に上下振動することにより床の上下振動を最小限に抑えて、積荷の跳ね上がりを抑えることができる。
【0014】
また、例えば、上記破損等が生じていない車両の走行後において、上記第1及び第2の空気バネからそれぞれ圧縮空気を抜いた状態で車両を長時間駐車する場合、操作者は、第1及び第2のコックを操作してバイパス管路を遮蔽膜の両側でそれぞれ閉止し、第1及び第2の空気バネからそれぞれ圧縮空気を排気する。係る状態では、第1のコックと遮蔽膜との間及び第2のコックと遮蔽膜との間に圧縮空気を含んだ閉空間がそれぞれ形成され、第1のコックと第2のコックとの間を除く全ての管路の圧縮空気が排気される。これにより、床の第1の空気バネに支持された部分と第2の空気バネに支持された部分とが下降するとともに、ロック機構が非ロック位置からロック位置に移動して下降した床を車体側にロックする。また、遮蔽膜の両側の閉空間には共に圧縮空気が密封されおり遮蔽膜の両側の閉空間の圧力差が所定の限界圧を超えることがないので、第1の空気バネ及び第2の空気バネから圧縮空気を排気する際に遮蔽膜が破断するのを防止することができる。なお、この車両駐車時には、遮蔽膜の両側を第1及び第2のコックによって閉止したままであってもよいが、遮蔽膜の両側を開放した状態で駐車する場合には、操作者は、第1及び第2のコックを同時に操作して遮蔽膜の両側を同時に開放する必要がある。遮蔽膜の両側を同時に開放することにより、遮蔽膜の一方側が上記圧縮空気によって通常設定される空気圧のまま、他方側が大気圧に低下することがなく、遮蔽膜の破断を防止することができる。
【0015】
また、上記車両を長時間駐車した後に車両を走行させる場合(第1及び第2の空気バネからそれぞれ圧縮空気を抜いた後に第1及び第2の空気バネに圧縮空気を供給する場合)、操作者は、第1及び第2のコックを操作してバイパス管路を遮蔽膜の両側でそれぞれ閉止し、第1及び第2の空気バネにそれぞれ圧縮空気を供給する。係る状態では、遮蔽膜の両側の閉空間の圧力が共に大気圧となっており、第1のコックと第2のコックとの間を除く全ての管路に圧縮空気が供給される。これにより、ロック機構がロック位置から非ロック位置に移動して車体に対する床の上下移動が許容され、床の第1の空気バネに支持された部分と第2の空気バネに支持された部分とが上昇する。そして、第1及び第2の空気バネにそれぞれ圧縮空気を供給して第1及び第2の空気バネをそれぞれ所望の空気圧に設定した操作者は、第1及び第2のコックを同時に操作して遮蔽膜の両側を同時に開放する。これにより、遮蔽膜の両側に同時に圧縮空気が流入して遮蔽膜の両側の圧力が上記圧縮空気によって通常設定される空気圧に上昇するので、遮蔽膜の両側の圧力差が所定の限界圧を超えることがなく、遮蔽膜が破断しない。このため、第1及び第2の空気バネに圧縮空気を供給する際に遮蔽膜が破断するのを防止することができ、第1の空気バネと第2の空気バネとで個別に設定された空気圧を維持することができる。
【0016】
さらに、例えば、走行中の車両を停車させて第1及び第2の空気バネの一方又は双方の空気圧を変更する場合、操作者は、上記車両を長時間駐車する場合又は上記車両を長時間駐車した後に車両を走行させる場合と同様の操作を行うことにより、空気バネの空気圧を減少又は増加させることができる。
【0017】
従って、第1の空気バネと第2の空気バネとを個別の空気圧に設定することができるとともに、第1の空気バネ又は第2の空気バネが機能しなくなった場合に、床の上下振動を最小限に抑えて積荷の損傷を防止することができる。
【0018】
また、遮蔽膜はバイパス管路に対して着脱自在であってもよい。これにより、破断した遮蔽膜を新しい遮蔽膜に交換することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、2つの空気バネを個別の空気圧に設定でき、且つ2つの空気バネのうち一方の空気バネが機能しなくなった場合において荷台の床の上下振動を最小限に抑えて積荷の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る車両の概略側面図である。
【図2】図1の要部を示す概略斜視図である。
【図3】操作レバーが開放位置のときのバイパス管を示す図である。
【図4】操作レバーが閉止位置のときのバイパス管を示す図である。
【図5】固定用フックとストッパとを示す概略後面図である。
【図6】右側空気バネ及び左側空気バネが機能している状態でのストッパの概略断面図である。
【図7】遮蔽膜が破断した状態を示す図である。
【図8】右側空気バネ及び左側空気バネが機能していない状態でのストッパの概略断面図である。
【図9】バイパス管の他の配置例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る車両の概略側面図、図2は図1の要部を示す概略斜視図、図3は操作レバーが開放位置のときのバイパス管を示す図である。図4は操作レバーが閉止位置のときのバイパス管を示す図、図5は固定用フックとストッパとを示す概略後面図、図6は右側空気バネ及び左側空気バネが機能している状態でのストッパの概略断面図である。図7は遮蔽膜が破断した状態を示す図、図8は右側空気バネ及び左側空気バネが機能していない状態でのストッパの概略断面図、図9はバイパス管の他の配置例を示す概略斜視図である。以下の説明において、前後方向は車両の進行方向の前後を示し、内外方向は車幅方向の内外を示す。また、左右とは車両前方を向いた状態での左右を意味する。なお、図2ではショックアブソーバの図示を省略している。
【0022】
図1〜図8に示すように、本実施形態に係る車両1は、左右一対のシャシフレーム2と、左右一対の前輪3と、左右一対の後輪4と、キャブ5と、コンテナ(荷台)6と、右側空気バネ(第1の空気バネ)8と、左側空気バネ(第2の空気バネ)9と、左右一対のショックアブソーバ10と、右側エア配管(第1のエア管路)11と、左側エア配管(第2のエア管路)12と、バイパス管(バイパス管路)13と、ストッパ(ロック機構)14等を備えている。
【0023】
左右のシャシフレーム2は、車幅方向左右両側に配置されて車両前後方向に延びている。また、左右のシャシフレーム2の上端部には、前後方向に延びる略板状の下壁部(車体)18が接合されている。左右の前輪3は、シャシフレーム2の前端部に上方から支持されている。左右の後輪4は、シャシフレーム2の後端部に配置され、リーフスプリング(図示せず)等を介してシャシフレーム2に上方から支持されている。キャブ5は、シャシフレーム2の前端上部に載置されている。
【0024】
コンテナ6は、前壁部15と左右一対の側壁部16と上壁部17と後壁部19とフロアパン(床)7とを有し、キャブ5の後方に配置されている。
【0025】
前壁部15は、キャブ5の後面に対向配置され、その下端縁は、下壁部18の前端縁に接合されている。左右の側壁部16は、前壁部15の車幅方向両端縁から後方に延び、それらの各下端縁は、下壁部18の車幅方向両端縁にそれぞれ接合されている。上壁部17は、前壁部15の上端縁から後方に延びて左右の側壁部16の各上端縁と接合されている。後壁部19は、上壁部17の上端縁から下方に延び、車幅方向両端縁が左右の側壁部16の各後端縁にそれぞれ接合されるとともに、その下端縁は、下壁部18の後端縁に接合されている。また、特に図示していないが、後壁部18には開閉自在な扉が設けられている。
【0026】
フロアパン7は、前壁部15と後端部19との間で且つ左右の側壁部16の車幅方向内側で前後方向に延びる略板状の部材であって、下壁部18の上方に対向配置されている。フロアパン7は、前端がヒンジ20によって下壁部18に回転自在に支持されている。フロアパン7の後端側は、後述する右側空気バネ8及び左側空気バネ9によって支持されて、ヒンジ20を中心として所定の範囲内を上下方向(ピッチング方向)に回転移動する。また、フロアパン7の後下面には、固定用フック21が設けられている。また、前壁部15の後面と側壁部16の内面と上壁部17の下面とフロアパン7の上面と後壁部19の前面とによって、積荷を収容する荷室22の前端と側端と上端と下端と後端とがそれぞれ区画されている。このように構成されたコンテナ6では、フロアパン7の後端部が、前壁部15、左右の側壁部16、上壁部17及び後壁部19に対して上下移動する。
【0027】
固定用フック21は、フロアパン7の後端部略中央に配置され、フロアパン7の下面に接合される略板状の固定部23と、固定部23の車幅方向両側から下方に延びる一対の略板状の下延部24と、一対の下延部24の下端部間に着脱自在に固定されて車幅方向に延びる略円柱形状の被係合部25とを有している。
【0028】
右側空気バネ8は、上下方向に延びる略円筒形状の部材であり、ゴム等によって形成されて内部に圧縮空気を保持可能である。右側空気バネ8は、フロアパン7の右側の後端隅部と下壁部18の右側の後端隅部との間に配置され、上端部及び下端部が、フロアパン7と下壁部18とにそれぞれ固定されている。
【0029】
左側空気バネ9は、上下方向に延びる略円筒形状の部材であり、ゴム等によって形成されて内部に圧縮空気を保持可能である。左側空気バネ9は、フロアパン7の左側の後端隅部と下壁部18の左側の後端隅部との間に配置され、上端部及び下端部が、フロアパン7と下壁部18とにそれぞれ固定されている。
【0030】
右側空気バネ8及び左側空気バネ9は、フロアパン7の左右の後端隅部を下方から支持するとともに、空気の弾性を利用することにより、下壁部18(シャシフレーム2)に対するフロアパン7の上下振動を抑制する。
【0031】
左右一対のショックアブソーバ10は、右側空気バネ8の近傍及び左側空気バネ9の近傍にそれぞれ配置されている。ショックアブソーバ10は、フロアパン7に固定される上端部(例えばピストンロッド、図示せず)と、下壁部18に固定される下端部(例えば外筒、図示せず)とを有する。ショックアブソーバ10は、外部からの力の入力に応じて上端部と下端部とが相対移動し、この上端部と下端部との相対移動の際に、この相対移動を阻止する方向に抵抗力を発生させ、この抵抗力により下壁部18に対するフロアパン7の振動を減衰する。
【0032】
右側エア配管11は、右側空気バネ8に接続される一端部26と、下壁部18の左側の後端部に配置され開閉自在な給排気用コック(図示せず)が設けられた他端部27とを有している。右側エア配管11の他端部27には、圧縮空気を貯留したエアタンク(図示せず)を接続可能であり、他端部27をエアタンクに接続した状態で給排気コックを開状態に設定することによりエアタンク内の圧縮空気が右側エア配管11へ供給される。また、他端部27とエアタンクとの接続を解除して給排気コックを閉状態に設定することにより、右側エア配管11内の圧縮空気の他端部27からの流出が阻止され、この他端部27とエアタンクとの接続を解除した状態で給排気コックを開状態に設定すると、右側エア配管11内の圧縮空気が他端部27から外部へと流出する。
【0033】
左側エア配管12は、左側空気バネ9に接続される一端部28と、右側エア配管11の他端部27の左側近傍に配置され、開閉自在な給排気用コック(図示せず)が設けられた他端部29とを有している。左側エア配管12の他端部29には、圧縮空気を貯留したエアタンク(図示せず)を接続可能であり、他端部29をエアタンクに接続した状態で給排気コックを開状態に設定することによりエアタンク内の圧縮空気が左側エア配管12へ供給される。また、他端部29とエアタンクとの接続を解除して給排気コックを閉状態に設定することにより、左側エア配管12内の圧縮空気の他端部29からの流出が阻止され、この他端部29とエアタンクとの接続を解除した状態で給排気コックを開状態に設定すると、左側エア配管12内の圧縮空気が他端部から外部へと流出する。
【0034】
バイパス管13は、下壁部18の左側後端部であって右側エア配管11の他端部27及び左側エア配管12の他端部29の前方に配置されている。バイパス管13は、右側エア配管11に継ぎ手30を介して連通する右側連通部31と、左側エア配管12に継ぎ手32を介して連通する左側連通部33とを有している。また、右側連通部31及び左側連通部33間の略中間には、後述する遮蔽膜固定部36と係合する切り欠き部(図示せず)が設けられている。また、バイパス管13には、切り欠き部を含む外側面を覆う遮蔽膜ユニット34が設けられている。
【0035】
遮蔽膜ユニット34は、バイパス管13の右側連通部31と左側連通部33との略中間に配置された略筒状のユニット本体35と、このユニット本体35の略中央部に着脱自在に装着される略環状の遮蔽膜固定部36と、遮蔽膜固定部36の内側面に固定されて右側連通部31と左側連通部33との間でバイパス管13を閉止する略膜状の遮蔽膜37と、ユニット本体35の両側に配置され、遮蔽膜37の両側でバイパス管13を開閉自在な遮蔽膜保護コック(第1のコック、第2のコック)38等で構成されている。
【0036】
遮蔽膜保護用コック38は、バイパス管13のうち遮蔽膜37の右側(以下、右側のバイパス管39と称する)であってユニット本体35の右側に配置され、この右側のバイパス管39を開閉自在な右側バルブ40と、バイパス管13のうち遮蔽膜37の左側(以下、左側のバイパス管41と称する)であってユニット本体35の左側に配置され、この左側のバイパス管41を開閉自在な左側バルブ42と、操作部43等を有している。
【0037】
操作部43は、前後方向に延びた開放位置と車幅方向に延びた閉止位置との間で移動自在な操作レバー44と、操作レバー44の開放位置及び閉止位置間の移動に連動して右側バルブ40及び左側バルブ42の開閉状態を切り替えるリンク機構等(図示せず)を備えた連動部45とを有している。
【0038】
このように構成された遮蔽膜保護用コック38では、操作レバー44が開放位置のとき、右側バルブ40及び左側バルブ42が開状態に設定されて右側のバイパス管39及び左側のバイパス管41が開放され、操作レバー44が閉止位置のとき、右側バルブ40及び左側バルブ42が閉状態に設定されて、右側のバイパス管39及び左側のバイパス管41が閉止される。
【0039】
遮蔽膜固定部36は、ユニット本体35に装着された状態でバイパス管13の切り欠き部と係合する。遮蔽膜37は、遮蔽膜固定部36の内周面に固定されている。遮蔽膜37は、遮蔽膜固定部36が切り欠き部と係合した状態においてバイパス管13を閉止し、遮蔽膜37の両側の圧力差が所定の限界圧を超えると破断する。遮蔽膜37が破断しない状態を維持できる限界圧は、右側空気バネ8で通常使用される空気圧と左側空気バネ9で通常使用される空気圧との差よりも高く、右側及び左側空気バネ8,9で通常使用される空気圧と大気圧との差よりも低く設定されている。
【0040】
ストッパ14は、ストッパ本体46とリンク部47とスライド部48等で構成されている。ストッパ14は、右側空気バネ8と左側空気バネ9との間であって固定用フック21の略真下に配置され、右側エア配管11の一端部26と他端部27との間に設けられている。また、ストッパ14の車幅方向の長さは、各下延部24間の距離よりも小さく設定されている。
【0041】
図2に示すように、ストッパ本体46は、側面視略凹字形状であり、ゴム等によって形成されている。ストッパ本体46は、車両前後方向に延びて下壁部18の略中央部に固定される略矩形状の下面部49と、この下面部49の前端から上方に延びてストッパ14の前端を区画する前側前面部50と、この前側前面部50の上端から後方に延びる前側上面部51と、この前側上面部51の後端から下方に延びる前側後面部52と、この前側後面部52の下端から略U字状に湾曲して後方に延びる曲面部53と、この曲面部53の後端から上方に延びる後側前面部54と、この後側前面部54の上端から後方に延びる後側上面部55と、この後側上面部55の後端から下方に延びて下面部49の後端に接続しストッパ14の後端を区画する後側後面部56と、ストッパ14の車幅方向両側を区画する一対のストッパ側壁部57等を有している。また、後側上面部55は、曲面部53よりも上方に配置されており、さらに、後側上面部55よりも上方に前側上面部51が配置されている。また、曲面部53には緩衝用ゴムシート58が設けられている。
【0042】
また、図6及び図8に示すように、前側後面部56は、前側上面部51の後端から下面部に向かって垂直に延びる前側垂直面部59と、この前側垂直面部59の下端から前下方に傾斜して延びる傾斜面部60と、この傾斜面部60の下端から前方に延びる前側ガイド上面部61と、この前側ガイド上面部61の前端から下方に延びる前側ガイド前面部62と、この前側ガイド前面部62の下端から後方に延びて曲面部53の前端に接続する前側ガイド下面部63とを有している。また、前側ガイド前面部62には緩衝用ゴムシート64が設けられている。
【0043】
また、後側前面部56は、曲面部53の後端から上方に延びる後側垂直面部65と、この後側垂直面部65の上端から後方に延びる後側ガイド下面部66と、この後側ガイド下面部66の後端から後下方に僅かに傾斜し、さらに後方に延びるバネ収容下面部67と、バネ収容下面部67の後端から上方に延びるバネ収容後面部68と、バネ収容後面部68の上端から前方に延び、さらに前下方に僅かに傾斜するバネ収容上面部69と、バネ収容上面部69の前端から前方に延びる後側ガイド上面部70とを有している。
【0044】
ストッパ本体46では、前側ガイド上面部61と、前側ガイド前面部62と、前側ガイド下面部63と、左右のストッパ側壁部57の各内側面部とによって、前側スライド凹部71が区画形成されている。また、前側スライド凹部71の上方であって前側垂直面部59と前側上面部51と前側前面部50と左右のストッパ側壁部57との間にはリンク収容空間72が形成されており、リンク収容空間72と前側スライド凹部71とは、前側ガイド上面部61に設けられた孔部73を介して連通している。さらに、リンク収容空間72の上方であって前側垂直面部59と前側上面部51と前側前面部50と左右のストッパ側壁部57との間には、圧縮空気保持空間74が形成されており、この圧縮空気保持空間74は、右側エア配管11と連通するとともに、孔部75を介してリンク収容空間72と連通している。また、後側ガイド下面部66と、バネ収容下面部67と、バネ収容後面部68と、バネ収容上面部69と、後側ガイド上面部70とによって後側スライド凹部76が区画形成されている。後側スライド凹部76の後端側、すなわち、バネ収容下面部67とバネ収容後面部68とバネ収容上面部69との間には、バネ77が収容されている。
【0045】
リンク部47は、圧縮空気保持空間74内に上下移動自在に配置されたピストン板78と、孔部75に挿通され、上端がピストン板78の下端に固定されるとともに下端がリンク収容空間72内に配置されるピストンロッド79と、このピストンロッド79に回転自在に取り付けられて後方に延び、リンク収容空間72内でストッパ本体46側に回転自在に支持されたリンクロッド80と、このリンクロッド80の後端に回転自在に支持されてリンク収容空間72内に収容された収容位置とこの収容位置から下方に移動して下端部が前側スライド凹部71に突出する突出位置とに移動自在な略板状のロック板81とを有している。また、ピストンロッド79には、孔部75を上下移動でき且つ圧縮空気保持空間74内の圧縮空気をリンク収容空間72に漏らすことないようにシール加工等が施されている。
【0046】
リンク部47は、圧縮空気保持空間74内に右側エア配管11から圧縮空気が供給されている場合、ピストン板78が圧縮空気の圧力によって下方に押圧されて、ピストンロッド79がリンクロッド80の前端を下方に押し下げ、リンクロッド80の後端が後上方に傾斜してロック板81が収容位置となる。一方、圧縮空気保持空間74内に圧縮空気が供給されておらず大気圧となっている状態では、ピストン板78が圧縮空気保持空間74内の上方に位置し、リンクロッド80の後端が後下方に傾斜してロック板81が突出位置となる。すなわち、圧縮空気保持空間74内の圧力が右側空気バネ8で通常設定される空気圧から大気圧よりも僅かに高い圧力まで低下したときに、収容位置のロック板81が自重により下方に移動し得るように、ロック板81の重量がピストン板78の重量よりも重く設定されている。
【0047】
スライド部48は、後側スライド凹部76に収容されて後側スライド凹部76を前後にスライド移動するスライド基部82と、このスライド基部82の前端から前上方に傾斜して延びる後側傾斜板部83と、この後側傾斜板部83の前端から前下方に延びる前側傾斜板部84と、前側傾斜板部84の下端から前方に延びて前側ガイド下面部63に対向配置される前側スライド下板部85と、この前側スライド下板部85の前端から上方に延びる前側スライド前板部86と、前側傾斜板部84の上下方向の略中央部から前方に延びて前側ガイド上面部61に対向配置される前側スライド上板部87とを有している。また、前側スライド上板部87の前端と前側スライド前板部86の後端との間の距離は、ロック板81の下端部の前後方向の長さと略同じに設定されている。また、前側スライド前板部86の前面には緩衝用ゴムシート88が設けられている。
【0048】
スライド部48は、スライド基部82の後端がバネ77によって前方に付勢されて、前側スライド前板部86の緩衝用ゴムシート88が前側ガイド前面部62の緩衝用ゴムシート64と接触した係合位置となる(図8参照)。この係合位置のスライド部48に後方への外力が加わると、外力によってバネ77が収縮してスライド基部82が後方に移動し、前側スライド前板部86の緩衝用ゴムシート88が前側ガイド前面部62の緩衝用ゴムシート64から後方に離間する。
【0049】
このように構成されたストッパ14は、右側空気バネ8及び左側空気バネ9が共に機能しなくなってフロアパン7の後端部が下降したときに、前側上面部51がフロアパン7の後下面部と面接触し、フロアパン7の後端部を下方から支持する。また、図5に示すように、ストッパ14の後側傾斜板部83と曲面部53の緩衝用ゴムシート58との間には、被係合部25が挿通され、係る状態で被係合部25の車幅方向両側が各下延部24に固定される。そして、この被係合部25の上下移動に伴ってスライド部48が前後方向に移動する。なお、被係合部25はフロアパン7の後端部の可動範囲に応じた距離を上下に移動し、この被係合部25の上下移動を妨げないように、スライド部48の前後方向の移動量、前側傾斜板部84及び後側傾斜板部83の形状(例えば傾斜角等)が設定されている。
【0050】
次に、左側エア配管12、左側空気バネ9、バイパス管13、右側エア配管11、右側空気バネ8及びストッパ14(以下、空気流通部89と称する)の圧縮空気の流通経路について説明する。なお、圧縮空気を保持するエアタンクを車両1の保管場所等に予め設置しておき、このエアタンクを利用することにより、車両走行前に右側空気バネ8及び左側空気バネ9に対して圧縮空気を供給する。
【0051】
図3に示すように、操作レバー44が閉止位置に設定されているとき、左側バルブ42及び右側バルブ40が閉状態となっている。係る状態では、閉状態の左側バルブ42と遮蔽膜37との間に左側閉空間90が形成され、閉状態の右側バルブ40と遮蔽膜37との間に右側閉空間91が形成される。左側エア配管12の他端部29とエアタンクとが接続されて給排気コックが開状態に設定されると、エアタンク内の圧縮空気が左側エア配管12に流入し、この左側エア配管12に流通した圧縮空気がバイパス管13と左側空気バネ9とにそれぞれ流入する。圧縮空気が左側空気バネ9に流入することにより、左側空気バネ9の空気圧が増加する。一方、バイパス管13に流入した圧縮空気は、閉状態の左側バルブ42によって左側閉空間90への流入が阻止される。係る状態で給排気用コックが閉状態に設定されると、左側空気バネ9、左側エア配管12及びバイパス管13のうち左側バルブ42と左側エア配管12との間(以下、左側空気流通部92と称する)の内圧が、略同じ圧力に維持される。
【0052】
同様に、右側エア配管11の他端部27とエアタンクとが接続されて給排気コックに開状態に設定されると、エアタンク内の圧縮空気が右側エア配管11に流入し、この右側エア配管11に流通した圧縮空気がストッパ14の圧縮空気保持空間74を通って右側空気バネ8に流入するとともにバイパス管13に流入する。圧縮空気が右側空気バネ8に流入することにより、右側空気バネ8の空気圧が増加する。一方、バイパス管13に流入した圧縮空気は、閉状態の右側バルブ40によって右側閉空間91への流入が阻止される。係る状態で給排気用コックが閉状態に設定されると、右側空気バネ8、右側エア配管11、バイパス管13のうち右側バルブ40と右側エア配管11との間及び圧縮空気保持空間74(以下、右側空気流通部93と称する)の内圧が、略同じ圧力に維持される。
【0053】
図3に示すように、左側空気バネ9及び右側空気バネ8の両方に対して圧縮空気が供給された状態で、操作レバー44が開放位置に設定されると、左側バルブ42及び右側バルブ40が同時に開状態となり、遮蔽膜37の両側に圧縮空気が同時に流入し、遮蔽膜37の両側の圧力が左側空気バネ9及び右側空気バネ8でそれぞれ設定した空気圧まで増加する。このため、遮蔽膜37の両側の圧力差が限界圧を超えることがなく、遮蔽膜37が破断しない。
【0054】
左側空気バネ9及び右側空気バネ8の両方に対して圧縮空気が供給されて操作レバー44が開放位置に設定された後、例えば、左側空気バネ9に破損等が生じた場合、この破損箇所から左側空気バネ9の圧縮空気が外部に漏れる。また、左側エア配管12内の圧縮空気が左側空気バネ9を通って破損箇所から外部に流出し、さらに、左側のバイパス管41内の圧縮空気が左側エア配管12と左側空気バネ9を通って破損箇所から外部に流出する。これにより、左側空気バネ9、左側エア配管12及び左側のバイパス管41の内圧が大気圧まで減少する。このとき、右側のバイパス管39の内圧は右側空気バネ8で設定した空気圧を維持しているので、遮蔽膜37の両側で限界圧を超えた圧力差が生じ、遮蔽膜37が破断する(図7参照)。遮蔽膜37が破断すると、破損していない側の右側のバイパス管39、右側エア配管11、圧縮空気保持空間74、右側空気バネ8内の圧縮空気が、破損した側の左側のバイパス管41、左側エア配管12及び左側空気バネ9を通って破損箇所から外部へ流出する。これにより、左側空気バネ9及び右側空気バネ8が機能しなくなりフロアパン7の後端部を支持できなくなる。
【0055】
また、空気流通部89に圧縮空気が供給され且つ破損等が生じていない状態で、操作レバー44が閉止位置に設定され、左側エア配管12の他端部29の給排気コックが開状態に設定されると、左側空気流通部92の圧縮空気が左側エア配管12の他端部29から外部に流出し、左側空気流通部92の内圧が減少する。同様に、右側エア配管11の他端部27の給排気コックが開状態に設定されると、右側空気流通部93の圧縮空気が右側エア配管12の他端部29から外部に流出し、右側空気流通部93の内圧が減少する。そして、左側エア配管12の給排気コックが閉状態に設定されることにより、左側空気流通部92からの圧縮空気の流出が止まり、右側エア配管11の給排気コックが閉状態に設定されることにより、右側空気流通部92からの圧縮空気の流出が止まる。このため、左側空気バネ9及び右側空気バネ8の一方又は双方の空気圧が減少する。なお、操作レバー44が開放位置に設定されると左側バルブ42及び右側バルブ40が開状態となるが、遮蔽膜37の両側の圧力差が限界圧を超えることがないので、遮蔽膜37が破断しない。
【0056】
また、空気流通部89に圧縮空気が供給され且つ破損等が生じていない状態で、操作レバー44が閉止位置に設定され、左側エア配管12の他端部29とエアタンクとが接続されて給排気コックが開状態に設定されると、左側空気流通部92に圧縮空気が供給され、左側空気流通部92の内圧が増加する。同様に、右側エア配管11の他端部27とエアタンクとが接続されて給排気コックが開状態に設定されると、右側空気流通部93に圧縮空気が供給され、右側空気流通部93の内圧が増加する。そして、左側エア配管12の給排気コックが閉状態に設定されることにより、左側空気流通部92への圧縮空気の供給が止まり、右側エア配管11の給排気コックが閉状態に設定されることにより、右側空気流通部93への圧縮空気の供給が止まる。これにより、左側空気バネ9及び右側空気バネ8の一方又は双方の空気圧が増加する。なお、操作レバー44が開放位置に設定されると左側バルブ42及び右側バルブ40が開状態となるが、遮蔽膜37の両側の圧力差が限界圧を超えることがないので、遮蔽膜37が破断しない。
【0057】
次に、固定用フック21とストッパ14との動作について説明する。
【0058】
図5に示すように、固定用フック21の被係合部25は、曲面部53の緩衝用ゴムシート58と後側傾斜板部83との間に挿通されて、被係合部25の車幅方向両側が各下延部24に固定される。例えば車両駐車時等、右側空気バネ8及び左側空気バネ9から圧縮空気を排気した状態において、ストッパ14は、前側上面部51がフロアパン7の後下面部と面接触し、フロアパン7の後端部を下方から支持する。係る状態では、被係合部25の下端部が曲面部53の緩衝用ゴムシート58と接触し、突出位置のロック板81が、係合位置のスライド部48の前側スライド上板部87の前端と前側スライド前板部86の後端との間に挿通されて、スライド部48と係合した状態となっている。このロック板81とスライド部48が係合した状態では、被係合部25の上下移動が後側傾斜板部83と曲面部53とによって阻止される。
【0059】
右側エア配管11(右側空気バネ8)及び左側エア配管12(左側空気バネ9)に圧縮空気が供給されると、図6に示すように、圧縮空気保持空間74内に圧縮空気が流入し、突出位置のロック板81が収容位置へ移動する。これにより、ロック板81とスライド部48との係合状態が解除されて、スライド部48の前後方向のスライド移動が許容される。そして、フロアパン7の後端部が上昇してストッパ14の前側上面部51から離間し、このフロアパン7の後端部の上昇に伴って被係合部25が上方へ移動して後側傾斜板部83を上方へ押圧する。このとき、後側傾斜板部83の下面が後下方に向かって傾斜していることにより、上方へ押圧された後側傾斜板部83には後方への力が作用し、スライド部48がバネ77の付勢力に抗して後方へスライド移動する。
【0060】
右側エア配管11及び左側エア配管12に圧縮空気を供給した状態で車両1を走行させ、この走行時にフロアパン7の後端部に上下振動が生じると、フロアパン7の後端部の上下振動に伴って被係合部25が上下移動する。そして、この被係合部25の上下移動に伴って、スライド部48は前側スライド凹部71及び後側スライド凹部76を前後にスライド移動する。
【0061】
車両走行中に右側空気バネ8及び左側空気バネ9が共に失陥すると、図8に示すように、フロアパン7の後端部が下降してストッパ14の前側上面部51と面接触し、ストッパ14がフロアパン7の後端部を下方から支持した状態となる。フロアパン7の後端部が下降することにより、被係合部25が下方へ移動し、被係合部25の下端部が曲面部53の緩衝用ゴムシート58と接触する。また、被係合部25の下方移動により、スライド部48がバネ77に付勢されて前方にスライド移動して係合位置となる。係る状態で圧縮空気保持空間74の圧力が大気圧となると、ピストン板78が圧縮空気保持空間74を上方へ移動してロック板81が突出位置となり、係合位置のスライド部48と係合する。これにより、被係合部25の上下移動が後側傾斜板部83と曲面部53とによって阻止される。
【0062】
次に、運転者(操作者)が行う操作を、一日の車両走行を終了して車両1を長時間駐車させる場合と、車両1を長時間駐車させた後に走行を開始する場合と、車両1の走行を開始した後、右側空気バネ8及び左側空気バネ9の一方又は双方の空気圧を変更する場合とに分けて説明する。なお、車両走行を終了する時点において、操作レバー44は開放位置に設定されており、左右の給排気コックはそれぞれ閉状態に設定されており、遮蔽膜37は破断していないものとする。
【0063】
一日の車両走行を終了して車両1を長時間駐車させる場合、運転者は、操作レバー44を操作して閉止位置に設定する。そして、左右の給排気コックをそれぞれ開状態に設定する。これにより、左側空気流通部92及び右側空気流通部93の圧縮空気が外部へ流出して左側空気バネ9及び右側空気バネ8が共に機能しなくなり、フロアパン7の後端部が下降してストッパ14に支持されるとともにフロアパン7の後端部の下壁部18に対する上下移動が阻止される。そして、フロアパン7が下降した後、運転者は、操作レバー44を開放位置に設定し、左右の給排気コックを閉状態に設定する。なお、フロアパン7が下降した後、操作レバー44を閉止位置に設定したままであってもよく、左右の給排気コックも開状態のままであってもよい。
【0064】
車両1を長時間駐車させた後に走行を開始する場合、運転者は、操作レバー44を操作して閉止位置に設定する。そして、左側エア配管12の他端部29及び右側エア配管11の他端部27にそれぞれエアタンクを接続し、左右の給排気コックを開状態に設定する。これにより、フロアパン7の後端部が上昇するので、運転者は、フロアパン7の後端部の高さが所望の高さとなったときに、左右の給排気コックを閉状態に設定する。そして、操作レバー44を操作して開放位置に設定する。
【0065】
車両1の走行を開始した後、右側空気バネ8及び左側空気バネ9の一方又は双方の空気圧を変更する場合、運転者は、車両1を停車し、操作レバー44を操作して閉止位置に設定する。例えば右側空気バネ8及び左側空気バネ9の空気圧を減少させる場合、右側エア配管11の他端部27及び左側エア配管12の他端部29の給排気コックをそれぞれ開状態に設定する。これにより、右側空気流通部93及び左側空気流通部92の圧縮空気が各他端部27,29から外部へ流出し、右側空気バネ8及び左側空気バネ9の空気圧がそれぞれ減少する。運転者は、フロアパン7の後端部が所望の高さまで下降したことを確認する等して、各給排気コックを閉状態に設定する。また、右側空気バネ8及び左側空気バネ9の空気圧を増加させる場合には、右側エア配管11の他端部27及び左側エア配管12の他端部29にそれぞれエアタンクを接続し、各給排気コックをそれぞれ開状態に設定する。これにより、右側空気流通部93及び左側空気流通部92に圧縮空気が供給され、右側空気バネ8及び左側空気バネ9の空気圧がそれぞれ増加する。
【0066】
本実施形態によれば、例えば車両走行時、右側空気バネ8と左側空気バネ9とは個別の空気圧に設定された状態でコンテナ6のフロアパン7の後端部を支持する。係る状態では、右側空気バネ8の空気圧と右側エア配管11の管内圧とバイパス管13の右側エア配管11側の管内圧とは略同じであり、左側空気バネ9の空気圧と左側エア配管12の管内圧とバイパス管13の左側エア配管12側の管内圧とは略同じであり、遮蔽膜37は破断していない。また、上記右側空気バネ8と左側空気バネ9とが個別の空気圧に設定された状態では、空気流通部89に圧縮空気が供給されているので、ロック板81が収容位置となる。
【0067】
右側空気バネ8及び右側エア配管11或いは左側空気バネ9及び左側エア配管12の何れかに破損等が生じ、破損した側の空気バネ、エア配管及びこのエア配管側のバイパス管内の圧縮空気が外部に漏れると、バイパス管13のうち遮蔽膜37の一方側(破損側)の圧力が大気と略同じ値まで低下する。一方、バイパス管13のうち遮蔽膜37の他方側(非破損側)は圧縮空気によって通常設定される圧力が維持される。このため、遮蔽膜37の両側で所定の限界圧を超えた圧力差が生じ、遮蔽膜37が破断する。
【0068】
遮蔽膜37が破断すると、右側エア配管11と左側エア配管12とが連通し、非破損側の圧縮空気がバイパス管13を通って破損側へ流通して破損箇所から流出する。このため、右側空気バネ8側及び左側空気バネ9側の何れか一方で破損等が生じた場合に、右側空気バネ8側及び左側空気バネ9側の双方が失陥し、右側及び左側の空気バネ8,9が共に機能しなくなり、フロアパン7の後端部が下降する。従って、上記破損等が生じた場合に、破損側の空気バネのみが機能してフロアパン7が傾くことがなく、積荷が荷崩れ等を起こすことがない。
【0069】
右側空気バネ8側及び左側空気バネ9側の双方が失陥すると、空気流通部89の圧縮空気が流出し、この空気流通部89の内圧が大気と略同じ値まで低下する。これにより、ロック板81が収容位置から突出位置へ移動して係合位置のスライド部48と係合することにより下降したフロアパン7の後端部を下壁部18(シャシフレーム2)側にロックする。
【0070】
ロック板81及びスライド部48がフロアパン7の後端部を下壁部18側にロックすることにより、下壁部18に対するフロアパン7の後端部の上下方向の移動が阻止され、フロアパン7の後端部が下壁部18側に支持された状態でフロアパン7の後端部と下壁部17とが一体的に上下振動するので、下壁部18の上下振動よりもフロアパン7の後端部の上下振動が増大することがない。従って、右側空気バネ8又は左側空気バネ9が機能しなくなった場合において、フロアパン7の後端部と下壁部18とが一体的に上下振動することによりフロアパン7の後端部の上下振動を最小限に抑えて、積荷の跳ね上がりを抑えることができる。
【0071】
また、例えば、上記破損等が生じていない車両1の走行後において、上記右側及び左側の空気バネ8,9からそれぞれ圧縮空気を抜いた状態で車両1を長時間駐車する場合、運転者は、遮蔽膜保護用コック38の操作レバー44を操作してバイパス管13を遮蔽膜37の両側でそれぞれ閉止し、右側及び左側空気バネ8,9からそれぞれ圧縮空気を排気する。係る状態では、右側バルブ40と遮蔽膜37との間及び左側バルブ42と遮蔽膜37との間に圧縮空気を含んだ右側閉空間91及び左側閉空間90が形成され、右側バルブ40と左側バルブ42との間を除く空気流通部89の圧縮空気が排気される。これにより、フロアパン7の後端部が下降するとともに、ロック板81が収容位置から突出位置へ移動して係合位置のスライド部48と係合することにより下降したフロアパン7の後端部を下壁部18側にロックする。また、遮蔽膜37の両側の右側閉空間91及び左側閉空間90には共に圧縮空気が密封されおり遮蔽膜37の両側の右側閉空間91及び左側閉空間90の圧力差が所定の限界圧を超えることがないので、右側空気バネ8及び左側空気バネ9から圧縮空気を排気する際に遮蔽膜37が破断するのを防止することができる。
【0072】
また、上記車両1を長時間駐車した後に車両1を走行させる場合(右側及び左側空気バネ8,9からそれぞれ圧縮空気を抜いた後に右側及び左側空気バネ8,9に圧縮空気を供給する場合)、運転者は、遮蔽膜保護用コック38の操作レバー44を操作してバイパス管13を遮蔽膜37の両側でそれぞれ閉止し、右側及び左側空気バネ8,9にそれぞれ圧縮空気を供給する。係る状態では、遮蔽膜37の両側の右側閉空間91及び左側閉空間90の圧力が共に大気圧となっており、右側バルブ40と左側バルブ42との間を除く空気流通部89に圧縮空気が供給される。これにより、ロック板81が突出位置から収容位置に移動して下壁部18に対するフロアパン7の後端部の上下移動が許容され、フロアパン7の後端部が上昇する。そして、右側及び左側空気バネ8,9にそれぞれ圧縮空気を供給して右側及び左側空気バネ8,9をそれぞれ所望の空気圧に設定した運転者は、遮蔽膜保護用コック38の操作レバー44を操作して遮蔽膜37の両側を同時に開放する。これにより、遮蔽膜37の両側に同時に圧縮空気が流入して遮蔽膜37の両側の圧力が右側空気バネ8及び左側空気バネ9で通常設定される空気圧に上昇するので、遮蔽膜37の両側の圧力差が所定の限界圧を超えることがなく、遮蔽膜37が破断しない。このため、右側及び左側空気バネ8,9に圧縮空気を供給する際に遮蔽膜37が破断するのを防止することができ、右側空気バネ8と左側空気バネ9とで個別に設定された空気圧を維持することができる。
【0073】
さらに、例えば、走行中の車両1を停車させて右側及び左側空気バネ8,9の一方又は双方の空気圧を変更する場合、運転者は、上記車両1を長時間駐車する場合又は上記車両1を長時間駐車した後に車両1を走行させる場合と同様の操作を行うことにより、右側及び左側空気バネ8,9の空気圧を減少又は増加させることができる。
【0074】
従って、右側空気バネ8と左側空気バネ9とを個別の空気圧に設定することができるとともに、右側空気バネ8又は左側空気バネ9が機能しなくなった場合に、フロアパン7の後端部の上下振動を最小限に抑えて積荷の損傷を防止することができる。
【0075】
また、遮蔽膜37がバイパス管13に対して着脱自在であるため、破断した遮蔽膜37を新しい遮蔽膜37に交換することができる。
【0076】
また、操作レバー44の操作によって右側バルブ40と左側バルブ42とを同時に開閉できるので、運転者が行う操作も簡単である。
【0077】
また、右側空気バネ8及び左側空気バネ9の一方又は双方の空気圧を変更する場合において、遮蔽膜保護コック38を閉止位置に設定して右側閉空間91及び左側閉空間90の内圧が右側空気バネ8及び左側空気バネ9で設定される圧力をそれぞれ維持しているので、例えば、運転者が、開状態の給排気コックを閉状態に戻すタイミングが遅れ、右側空気流通部93及び左側空気流通部92の一方から圧縮空気を抜き過ぎてしまった場合であっても遮蔽膜37の両側の圧力差が限界圧を超えて遮蔽膜が破断するのを防ぐことができる。
【0078】
なお、本実施形態では、ストッパ14を右側エア配管11に設けた場合を説明したが、左側エア配管12に設けてもよい。また、図9に示すように、一端がバイパス管13と連通する流入管(流入管路)94を設け、この流入管94の他端をストッパ14の右側のストッパ側壁部57に接続して圧縮空気保持空間74と連通してもよい。なお、この流入管94を設ける場合に上記右側エア配管11に設けたストッパ14を用いる場合には、圧縮空気保持空間74の圧縮空気が流出しないようにストッパ14の左側のストッパ側壁部57を閉塞する。
【0079】
また、操作レバー44によって右側バルブ40と左側バルブ42とを同時に開閉する場合を説明したが、右側バルブ40と左側バルブ42とにそれぞれ対応する操作レバーを設けて右側バルブ40と左側バルブ42とを個別に開閉してもよい。このように右側バルブ40と左側バルブ42とを個別に開閉する場合、圧縮空気を供給又は排気する側のバルブを順次閉状態に設定すればよいが、両側への圧縮空気の供給又は排気が終了したときには、遮蔽膜37が破損するのを防ぐために、右側バルブ40と左側バルブ42とを同時に開状態に設定する必要がある。
【0080】
また、本実施形態では、荷台の前後左右の壁部を車体側に固定して、床のみを上下移動させた場合を説明したが、荷台の前後左右の壁部に床側を固定して、荷台全体を上下移動させてもよい。
【0081】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、荷台の床を上下方向に移動自在に支持する空気バネを備えた車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
6 コンテナ(荷台)
7 フロアパン(床)
8 右側空気バネ(第1の空気バネ)
9 左側空気バネ(第2の空気バネ)
11 右側エア配管(第1のエア管路)
12 左側エア配管(第2のエア管路)
13 バイパス管(バイパス管路)
14 ストッパ(ロック機構)
18 下壁部(車体)
37 遮蔽膜
38 遮蔽膜保護コック(第1のコック、第2のコック)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と荷台の床との間に介在し、第1及び第2のエア管路を介して圧縮空気がそれぞれ供給されることにより前記床を上下方向に移動自在に下方から弾性支持する第1及び第2の空気バネのためのフェイルセーフ構造であって、
前記第1のエア管路と前記第2のエア管路とを連通するバイパス管路と、
前記バイパス管路に設けられ、該バイパス管路を閉止可能に開放する第1及び第2のコックと、
前記バイパス管路の前記第1のコックと前記第2のコックとの間に設けられて前記バイパス管路を閉止し、該バイパス管路の前記第1のエア管路側の管内圧と前記第2のエア管路側の管内圧との差が所定の限界圧を超えると破断する遮蔽膜と、
前記第1のエア管路、前記第2のエア管路及び前記バイパス管路のうち何れか1つの管路又は該1つの管路と連通して圧縮空気が流入する流入管路に設けられ、前記1つの管路又は前記流入管路の内圧が所定圧以下に低下したとき、前記車体に対する前記床の上下移動を許容する非ロック位置から前記床を前記車体側にロックするロック位置へ移動するロック機構と、を備えた
ことを特徴とする荷台用空気バネのためのフェイルセーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−25883(P2011−25883A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176158(P2009−176158)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】