荷巻上げ機械の改良エネルギー蓄積方法
第1インバータにより制御される誘導ホイストモーターにより動力が供給される荷巻上げ装置のエネルギー蓄積及び取り出し方法であり、蓄電器を制御するデュアルインバータを有し、荷を降ろすときモーターが発生する逆電力や小負荷又はアイドル時の未利用電力などの剰余電力を活用して蓄電器を充電することでエネルギーを蓄電器に蓄積し、また、荷が持ち上げられ電力が消費されるときシステムを反転して蓄電器を放電させホイストモーターに電力を与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンや他の荷巻上げ機械と共に使用する特許されたエネルギー蓄積方法における改良に関する。特に、本発明は、荷巻上げ機械の駆動モーターにより充電される蓄電器にエネルギーを蓄積する方法における改良に関する。蓄積されたエネルギーは、より多くの電力が必要な荷が引き上げられているときにシステムに再供給される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、電力により駆動される荷巻上げクレーンにおけるエネルギー蓄積システム又は方法の改良に関する。特に、本発明は、広範囲の変動負荷を経験するディーゼル発電機により駆動される機械に有用である。本システムは、逆の又は小さい負荷のときにエネルギーを蓄積し、ピークの又は大きな負荷のときに電力を供給する。理論的には、これは単純な機械的な問題であり、結果として、相対的に一定の平均電力を供給するためにのみ主電源が必要とされ、ピーク電力を供給するのに主電源が必要とされないという利点を有する。しかしながら、現在まで、この問題の実際的な面がその使用を妨げてきた。
【0003】
従来この結果を達成するためにバッテリーと発電機が組み合わされたエネルギー蓄積システムが利用されており、理論的にはこれらは非常に効率的である。しかしながら、実際には、このバッテリー部品は、小さな電気容量、電気的な非効率性、バッテリーの大きな物理的体積、重い重量、及び短いバッテリー寿命などの多くの課題を引き起こし、それにより、現在のところこのようなシステムは、最新式のバッテリー技術を利用するエネルギー蓄積を達成する実現可能な方法ではない。
【0004】
この結果を達成するために、フライホイール式エネルギー蓄積システムもまた利用されてきた。しかしながら、フライホイールがエネルギーを蓄積して電力を作るためには、広範囲の速度にわたって駆動できなければならない。可変速度のフライホイールにエネルギーを伝達するために最も適するものとして、DCモーターが利用されてきたが、DCモーター駆動のフライホイールは多くの理由により満足のいくものでないことが分かった。それらの理由のうち以下のものが最も厳しい。
1.フライホイールがエネルギーを蓄積する際、そのエネルギーは、1/2×I×ω2により示され、ここでIは慣性モーメント、ωは回転する角速度である。したがって、エネルギーは回転速度の二乗により示されるので、回転速度が大きくなると、さらに多くのエネルギーをフライホイールに蓄積できる。しかしながら、フライホイールに接続させなければならないDCモーターは、その回転子のコイル部品の遠心強度が弱いので、回転速度の厳しい制限を受ける。
2.DCモーターは、ブラシの交換、整流子の修理、及び完全な絶遠の維持などの連続的なメンテナンスを必要とする。
3.DCモーターは比較的大きく、重く、高価である。
【0005】
これらの理由及びその他の理由によって、DCモーターを利用するフライホイール駆動式のエネルギー蓄積型システムも同様に、上記結果を達成するために実現可能な方法ではなかった。
【0006】
インバータ技術における最近の進展は、インバータを用いるACかご形誘導モーターがDCモーターに取って代わるところまで進んでいる。このインバータはDCを任意の周波数のACに変換し、また逆にACをDCに変換する。この任意のAC周波数のおかげで、ACかご形誘導モーターは非常に高い速度まで任意の回転速度で回転することができ、DCモーターに関連する上記課題のいくつかが解決される。
【0007】
図1は、現在用いられているディーゼル発電機の電源と荷巻上げ機械用のインバータ制御式誘導モーター駆動機械の典型的な例を示す。ディーゼルエンジン11はAC発電機13に機械的に連結される。この発電機からの交流出力はダイオード15により直流に変換される。次にこのDCは、インバータ17により任意の周波数のACに変換される。このACによりかご形誘導モーター19が駆動され、荷23を昇降するドラム21を駆動する。この昇降速度は、インバータにより生成され制御される交流周波数の結果で制御される。荷が降ろされるときには、逆AC電流が誘導モーターにより生成される。この逆電流は、誘導モーターが回生制動として有効に動作するように抵抗器25により消費される。
【0008】
図2は、図1のディーゼルエンジン/発電機の組み合わせの代わりに、市の公共電力網27からケーブルリール電源29によりシステムに供給されている電流の典型例を示す。入力電圧は変圧器31により下げられる。次にこの交流はDC変換器16によりDCに変換され、それ以降のシステムは図1に記載したものと同じである。
【0009】
荷23を降ろしている間は、逆電流が電力網27に送り返され、この例では他の消費者により使用される。しかしながら、この逆電流はサージや基準からはずれた周波数を含むので、他の消費者をこれを受け取るのを好まない。将来的には電力網に逆電力を送り返すのが禁じられることが予想される。その場合には、この逆電力は図1のシステムに記載されたのと同じ抵抗器により消費されるであろう。
【0010】
図3は、図1で用いられている従来技術のシステムの抵抗器の代わりにシステムに挿入された従来技術の改良を示す。これは、米国特許第5,936,375号、1999年8月10日発行、「荷巻上げ機械のエネルギー蓄積方法(a Method for Energy Storage for Load Hoisting Machinery)」に開示されている。本発明はこの構成に対する更なる非自明の改良を含む。
【特許文献1】米国特許第5,936,375号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の開示
第1インバータにより制御される誘導モーターにより動力が供給される荷移動機械システムについてエネルギーを蓄積及び取り出すという所望の目的のため、本発明の方法が提供される。本発明の方法のステップは、荷移動機械の誘導モーターを駆動して発電機として機能させ、該機械が荷を降下又は制動しているときは逆電力を生成することを含む。この生成された逆電力は該機械が小負荷又はアイドル時に生じる未利用の電力と結合され(この結合された電力を剰余電力という)、蓄電器を充電して剰余電力のポテンシャルエネルギーを蓄積するのに用いられる。この剰余電力は、デュアルインバータにより制御され、このデュアルインバータが蓄電器を充電し、又は蓄電器が放電するとき第1インバータに電流を送り戻す。蓄電器のポテンシャルエネルギーが測定され、また第1インバータの電力入力側でシステムの電圧が測定される。このポテンシャルエネルギー値と測定電圧はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に伝送される。蓄電器を充電して剰余電力を再使用のために蓄電器に蓄積できるように、このPLCはデュアルインバータを制御してACをDCに変換する。蓄電器の測定エネルギーに依存して、蓄電器のポテンシャルエネルギーから電力を取り戻して誘導モーターを駆動することができる。蓄電器を放電させ、それによって誘導モーターが回転して荷を持ち上げるための動力が作られる。換言すれば、誘導モーターが平均電力消費を超えて電力を消費しているとき電力が誘導モーターに戻される。
【0012】
本発明はまた、その方法を実行するための新規な装置を含む。荷移動機械のエネルギー蓄積システムは、荷を昇降するためのワイヤロープドラムに連結された誘導モーターを含む。このモーターは第1インバータにより制御される。エネルギー蓄積システムは、(a)デュアルインバータにより制御されるエネルギーの蓄積及び放出用の蓄電器、(b)デュアルインバータを制御するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)、(c)第1インバータの電力入力側の電圧を検知し、蓄電器の電圧を検知する手段、及び(d)検知した電圧及びパルス発生器の出力を設定電圧値と比較するためのPLCのプログラムドロジックを含む。エンジン駆動式AC発電機(ACG)が荷移動機械のための電力を発生し、ダイオードがACGのAC出力を制御する。
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明の重要な目的は、誘導モーター駆動式ホイスト機械の操作のための改善されたエネルギー蓄積方法を提供し、該機械の操作に必要な全体の電力を小さくすることである。
【0014】
本発明の別の目的は、誘導モーター駆動式ホイスト機械の操作のための改善されたエネルギー蓄積方法を提供し、該機械に必要な電力消費を平均化することである。
【0015】
本発明の別の目的は、荷を降ろすことによりモーターが駆動されるとき電力をソースに送り返す必要性、又は電力を抵抗器又はブレーキに吸収する必要性が取り除かれた誘導モーター駆動式ホイスト機械の操作の方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、電気エネルギーの蓄積のためにフライホイールを活用できる誘導モーター駆動式ホイスト機械の操作のためのエネルギー蓄積方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、エネルギーを蓄積するために蓄電器を利用する誘導モーター駆動式ホイスト機械のエネルギー蓄積システムのための装置を提供することである。
【0018】
添付図面と共に本発明の装置を参照すると、本発明のその他の目的及び利点が明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好ましい実施態様を説明するため図面を参照するが、対応する図において同じ参照番号は同じ要素を表す。
【0020】
図1〜3は、明細書の背景技術の欄に記載した現在実施されている従来技術を示す。図3は、破線内に示される追加によって図1の装置を改良した従来技術の特許装置を示す。背景技術の欄における図1の説明には、主要な装置要素11、13、15、17、19、21及び23の動作が記載されている。
【0021】
本発明の環境を説明するため図3を参照する。従来技術と本発明の両方においてシステムのホイスト機械21により荷23を上げるとき、市の公共電力網から又は自律ディーゼルエンジン動力付与型の発電機13からの電気エネルギーが、第1誘導モーター19を作動させるのに利用され、この第1誘導モーター19は、機械的な動力伝達手段により荷巻上げワイヤロープドラム21に連結されている。電力は、荷の巻上げ中は誘導モーターにより消費され、荷を降ろしている間は該モーターにより生成される。
【0022】
特許付与されたエネルギー蓄積システムが、図3において破線で囲まれて示されており、図1の抵抗器25に代わって追加の機械、すなわち第2インバータ35、第2誘導モーター37、回転速度を検出するタコメーター又はパルス発生器39、フライホイール41、及びプログラマブルロジックコントローラ(PLC)43を含む。
【0023】
ホイスト機械19及び21により荷が降ろされているとき、エネルギーはフライホイール41の回転に蓄積される。このことは以下の自明な関係から生じる。すなわち、荷巻上げドラム21は、荷23を降ろしている間はそのホイストモーターであるシステムの第1誘導モーター19を逆駆動する。第1誘導モーターはAC電流又は逆電力を発生する発電機として働く。発生されたAC電流は第1インバータ17によりDCに変換され、このDC電流はダイオード15と第1インバータ17との間を流れる。その結果、ポイントAの電圧は高くなる。
【0024】
ポイントAの電圧はまた、荷巻上げ機械がアイドル時、停止時、又は軽い荷の巻上げ時にも高くなる。主電源、AC発電機又は市の公共電力網からダイオード15を通って供給される電気は、荷巻上げ機械の電力消費が非常に小さいか又はほとんどゼロのときポイントAの電圧を上昇させる。このことが未利用の電力を発生させる。荷巻上げ機械が重い荷を巻上げ、その電力消費が大きいとき、ポイントAの電圧は電気不足ゆえにより低くなる。
【0025】
エネルギー蓄積システムは、未利用電力と、荷降ろし時に第1誘導モーター19が発電機として機能するよう駆動されるとき該第1誘導モーター19により生成される逆電力との両方を蓄積するよう働く。結合された未利用電力と逆電力を便宜上ここでは剰余電力と定義する。
【0026】
剰余電力は第2インバータ35により制御される。第2誘導モーター37が剰余電力により駆動され、第2インバータにより制御されてフライホイール41を回転させる。ポイントAの電圧が高いとき、この剰余電力はフライホイールの回転エネルギーに蓄積される。システムは、ポイントAの電圧が低いときフライホイールの回転エネルギーから電力を取り出して電気不足を補うように働く。
【0027】
ポイントAの測定電圧と、フライホイール41に連結されたタコメーター又はパルス発生器39により検出された回転速度とが、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)43に伝送又は入力される。このPLCは、DCを周波数の制御されたACに変換するように第2インバータ35を制御する。この周波数は、ポイントAの電圧とフライホイールの回転速度とに依存してPLC中のプログラムドロジックにより制御される。ポイントAの電圧は、プログラムドロジック中にマニュアルで事前設定し得る設定電圧値V0と比較される。
【0028】
図3を参照する。本発明では、第2誘導モーター37、フライホイール41、及びパルス発生器39を含む図示された従来技術の特許発明の高価で複雑な装置の部分を除去している。図4を参照すると、本発明の追加の代替装置が、図1〜3に図示された現在実施されている従来技術の装置に挿入されているのが示されている。図3の従来技術の特許装置が図4の発明の技術により改良されているのが示される。図4では従来の3つの要素37、39、41の代わりに蓄電器又はコンデンサー45が用いられ、図3の第2インバータ35の代わりにデュアルインバータ35が用いられている。このことにより、装置の構造が非常に簡単になり全体のコストが大きく削減されている。
【0029】
図4は、本発明の装置の実施態様を示し、ポイントAの電圧が設定値又は所定値V0よりも高いならば、PLC43がデュアルインバータ35に第1インバータからの出力をDCに変換するよう命令し、それによって蓄電器45が充電されて電力がポテンシャルエネルギーとして蓄積される。ポイントAの電圧が設定値V0よりも低いならば、デュアルインバータが蓄電器を制御して放電させて、誘導モーター19に供給される電力を生成し、そのようにして蓄電器からエネルギーを取り出す。
【0030】
次に、蓄電器45を制御する図4のデュアルインバータ35はまた、第1インバータが制御されたACに変換して誘導モーター19を駆動すべく蓄電器45のDC出力を第1インバータ17にDCとして送るように、及びその逆を行うように、PLC43により制御される。
【0031】
ポイントAの電圧とAC周波数αの関係について、図3及び4のみならず図5〜7も参照する。種々のグラフ表現を図面の簡単な説明の欄に記した。周波数αはAでの電圧に依存して決められる。巻上げドラムの負荷が小さく電力消費が大きくないとき、又は降ろされている荷により逆電力が生じるとき、Aでの電圧は、平均電圧に近いコントローラ中の設定値V0よりも高くなる。その場合、周波数αはプラスになり、エネルギーが蓄電器に蓄積される。負荷が大きく電力が消費されるとき、Aでの電圧は設定値V0より低くなり、周波数αはマイナスになり、エネルギーがフライホイールの回転から取り出される。
【0032】
Aでの電圧が設定値V0のときは、エネルギー蓄積システムによるエネルギーの蓄積も取り出しも行われない。この設定値V0は、平均負荷と機械的及び電気的な効率により決められる。荷巻上げ機械の操作のため本発明により許容されるディーゼルエンジン及びAC発電機の能力の軽減要件は、該機械の平均負荷と機械的及び電気的な効率から決めることができる。
【0033】
図8を参照すると、特に本発明に適合する電力消費グラフ図が示されている。これは、移動させている荷が大量に変化したり、又は荷の加速や減速によって大きな慣性の変化が生じるような例えば巻上げ機械、クレーン、トラクター、列車などの荷移動機械に対して利用できる。巻上げ機械やクレーンの場合には、可変重量の荷が昇降され、その際に荷は加速や減速を受ける。特定の負荷でのこのような操作の場合の誘導モーターの電力消費が、図8にグラフで示されている。図中、ブロックAは荷を上昇速度まで加速するのに必要な電力消費を表し;ブロックBは一定速度で荷を移動して上昇させるための電力消費を表し;ブロックCは荷の移動を停止するための電力消費を表し;ブロックDは荷を下降速度まで加速するための逆電力又は制動効果を表し;ブロックEは荷を一定速度で下降するための逆電力/制動効果を表し;ブロックFは荷の下降を停止するための逆電力/制動効果を表す。荷が巻上げられるとき、システムは電力を消費する。荷が下降されるとき、該モーターは電力を発生し且つブレーキとして機能するように動作する。
【0034】
図9を参照すると、本発明を用いて達成できる電力消費のグラフ図が示されている。機械が荷を引き上げていないとき、例えばアイドル時や、運転停止ではなく静止中のとき、電力入力は一定であり、未利用電力がある。平均電力消費は、図8の電力消費グラフ上に重ねられた図9のクロスハッチングされた領域により表される。
【0035】
図10は、本発明のシステムに蓄積される剰余電力のグラフ図を示す。本発明のエネルギー蓄積システムが用いられると、逆電力と小負荷又はアイドル時の未利用電力とを含めた剰余電力が、フライホイールの回転エネルギーとして蓄積され、蓄積されたエネルギーはピーク負荷又は大きな負荷の状況において電力として取り出される。この剰余電力は、図10において逆ハッチイング領域により表される。主電源の能力は、図9に示された平均消費電力を供給するのに十分である。荷が巻上げられたのと同じ高さだけ降ろされるならば、平均電力消費はちょうど機械的及び電気的な効率損失である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、第1インバータにより制御される誘導モーターによって動力の与えられる荷移動機械についてのエネルギー蓄積及び取り出し方法を含む。そのステップは、発電機として作動し、荷の降下又は制動時に逆電力を発生するように誘導モーターを駆動することを含む。荷巻上げ機械が小負荷又はアイドル時の未利用電力と結合された逆電力は、剰余電力として定義される。この剰余電力は、デュアルインバータにより制御される蓄電器を充電するために用いられる。誘導モーターがその平均電力消費を超えて電力を消費しているとき、該誘導モーターに電力を供給すべくこの蓄電器を放電させる。
【0037】
本発明の方法はまた、蓄電器に蓄積されたエネルギー(電圧)を測定すること、及び誘導モーターを制御する第1インバータの電力入力側の電圧を測定することを含む。蓄電器のエネルギー測定値とインバータ入力での測定された電圧とは、プログラマブルロジックコントローラに伝送される。この測定電圧は、コントローラ中の事前設定値と比較され、蓄電器を充電又は放電して誘導モーターを駆動するか又は誘導モーターにより駆動されるかを決める。本方法はさらに、コントローラが第1インバータの電力入力側の測定電圧が設定値よりも高いと判断すると、デュアルインバータが第1インバータの出力を変換して蓄電器を充電することで蓄電器にエネルギーを蓄積することを含む。したがって、この電圧が設定値よりも低いならば、デュアルインバータは第1インバータに送られる蓄電器の出力を変換し制御し、蓄電器から取り出した電力を誘導モーターに供給する。
【0038】
したがって、本発明のエネルギー蓄積システムは、ディーゼルエンジン及びAC発電機の能力又は電源からの引き出し量を削減するのに非常に効果的であり、それにより、本発明により低廉な荷巻上げ装置を提供することに加えて効果的なエネルギーに貢献する。本発明のエネルギー蓄積システムは、ディーゼルエンジン及びAC発電機の能力、電源からの引き出し量を削減するのに非常に効果的であり、それにより、効果的なエネルギー利用及び節約に貢献する。また、電源が不安定で変動する場合には、本発明のエネルギー蓄積システムは電力スタビライザーとして使用できる。
【0039】
本発明はまた、本発明の方法を実行する新規な装置を含む。荷移動機械のエネルギー蓄積システムは、荷を昇降させるためワイヤロープドラムに連結された誘導モーターを含む。このモーターは第1インバータにより制御される。エネルギー蓄積システムは、(a)デュアルインバータにより制御されるエネルギーの蓄積及び放出用の蓄電器、(b)デュアルインバータを制御するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)、(c)第1インバータの電力入力側の電圧を検知し、蓄電器の電圧を検知する手段、及び(d)検知された電圧及びパルス発生器の出力を設定電圧値と比較するためのPLCのプログラムドロジックを含む。エネルギー蓄積システムはまた、荷移動機械のために電力を作るエンジン駆動式AC発電機(ACG)と、ACGのAC出力を制御するダイオードとを含む。
【0040】
したがって、本発明の好ましい形態の上記説明から、上記目的すべてが達せられてそれに起因する利点が得られることが分かるであろう。ここではかなり詳しく図示し説明されているが、本発明は特許請求の範囲に必須のもの以外はこれまで述べてきた詳細に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】自律式荷巻上げクレーンのための標準的な従来技術の駆動機械の構成図である。
【図2】電力駆動式クレーンのための代わりの標準的な従来技術の駆動機械の構成図である。
【図3】特許付与された従来技術の荷巻上げ機械のためのエネルギー蓄積方法の図である。
【図4】図3の従来技術の改良であり、本発明の蓄電器/コンデンサーエネルギー蓄積システムがそのなかに含まれているのが示される。
【図5】周波数αと図3〜4中のポイントAの電圧との関係を関係を示すグラフであり、これにより第2インバータがAC周波数を制御する。
【図6】図5のグラフの操作のための基本的な関係である。
【図7】クレーンの操作における複雑な負荷変動に適合する図5のグラフのより現実的な関係である。
【図8】標準的な従来技術の荷移動機械構成の場合の基本的な電力消費グラフである。
【図9】本発明の方法を用いる駆動機械構成の場合の理想的な電力消費グラフ表示である。
【図10】剰余電力を定義しかつ蓄積される電力を示す図10の電力消費グラフである。
【符号の説明】
【0042】
11 ディーゼルエンジン
13 AC発電機
15 ダイオード
16 DC変換器
17 インバータ
19 誘導モータ
21 ドラム
23 荷
25 抵抗器
27 市の公共電力網
29 ケーブルリール電源
31 変圧器
35 第2インバータ
37 第2誘導モーター
39 パルス発生器
41 フライホイール
43 プログラマブルロジックコントローラ
45 蓄電器
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンや他の荷巻上げ機械と共に使用する特許されたエネルギー蓄積方法における改良に関する。特に、本発明は、荷巻上げ機械の駆動モーターにより充電される蓄電器にエネルギーを蓄積する方法における改良に関する。蓄積されたエネルギーは、より多くの電力が必要な荷が引き上げられているときにシステムに再供給される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、電力により駆動される荷巻上げクレーンにおけるエネルギー蓄積システム又は方法の改良に関する。特に、本発明は、広範囲の変動負荷を経験するディーゼル発電機により駆動される機械に有用である。本システムは、逆の又は小さい負荷のときにエネルギーを蓄積し、ピークの又は大きな負荷のときに電力を供給する。理論的には、これは単純な機械的な問題であり、結果として、相対的に一定の平均電力を供給するためにのみ主電源が必要とされ、ピーク電力を供給するのに主電源が必要とされないという利点を有する。しかしながら、現在まで、この問題の実際的な面がその使用を妨げてきた。
【0003】
従来この結果を達成するためにバッテリーと発電機が組み合わされたエネルギー蓄積システムが利用されており、理論的にはこれらは非常に効率的である。しかしながら、実際には、このバッテリー部品は、小さな電気容量、電気的な非効率性、バッテリーの大きな物理的体積、重い重量、及び短いバッテリー寿命などの多くの課題を引き起こし、それにより、現在のところこのようなシステムは、最新式のバッテリー技術を利用するエネルギー蓄積を達成する実現可能な方法ではない。
【0004】
この結果を達成するために、フライホイール式エネルギー蓄積システムもまた利用されてきた。しかしながら、フライホイールがエネルギーを蓄積して電力を作るためには、広範囲の速度にわたって駆動できなければならない。可変速度のフライホイールにエネルギーを伝達するために最も適するものとして、DCモーターが利用されてきたが、DCモーター駆動のフライホイールは多くの理由により満足のいくものでないことが分かった。それらの理由のうち以下のものが最も厳しい。
1.フライホイールがエネルギーを蓄積する際、そのエネルギーは、1/2×I×ω2により示され、ここでIは慣性モーメント、ωは回転する角速度である。したがって、エネルギーは回転速度の二乗により示されるので、回転速度が大きくなると、さらに多くのエネルギーをフライホイールに蓄積できる。しかしながら、フライホイールに接続させなければならないDCモーターは、その回転子のコイル部品の遠心強度が弱いので、回転速度の厳しい制限を受ける。
2.DCモーターは、ブラシの交換、整流子の修理、及び完全な絶遠の維持などの連続的なメンテナンスを必要とする。
3.DCモーターは比較的大きく、重く、高価である。
【0005】
これらの理由及びその他の理由によって、DCモーターを利用するフライホイール駆動式のエネルギー蓄積型システムも同様に、上記結果を達成するために実現可能な方法ではなかった。
【0006】
インバータ技術における最近の進展は、インバータを用いるACかご形誘導モーターがDCモーターに取って代わるところまで進んでいる。このインバータはDCを任意の周波数のACに変換し、また逆にACをDCに変換する。この任意のAC周波数のおかげで、ACかご形誘導モーターは非常に高い速度まで任意の回転速度で回転することができ、DCモーターに関連する上記課題のいくつかが解決される。
【0007】
図1は、現在用いられているディーゼル発電機の電源と荷巻上げ機械用のインバータ制御式誘導モーター駆動機械の典型的な例を示す。ディーゼルエンジン11はAC発電機13に機械的に連結される。この発電機からの交流出力はダイオード15により直流に変換される。次にこのDCは、インバータ17により任意の周波数のACに変換される。このACによりかご形誘導モーター19が駆動され、荷23を昇降するドラム21を駆動する。この昇降速度は、インバータにより生成され制御される交流周波数の結果で制御される。荷が降ろされるときには、逆AC電流が誘導モーターにより生成される。この逆電流は、誘導モーターが回生制動として有効に動作するように抵抗器25により消費される。
【0008】
図2は、図1のディーゼルエンジン/発電機の組み合わせの代わりに、市の公共電力網27からケーブルリール電源29によりシステムに供給されている電流の典型例を示す。入力電圧は変圧器31により下げられる。次にこの交流はDC変換器16によりDCに変換され、それ以降のシステムは図1に記載したものと同じである。
【0009】
荷23を降ろしている間は、逆電流が電力網27に送り返され、この例では他の消費者により使用される。しかしながら、この逆電流はサージや基準からはずれた周波数を含むので、他の消費者をこれを受け取るのを好まない。将来的には電力網に逆電力を送り返すのが禁じられることが予想される。その場合には、この逆電力は図1のシステムに記載されたのと同じ抵抗器により消費されるであろう。
【0010】
図3は、図1で用いられている従来技術のシステムの抵抗器の代わりにシステムに挿入された従来技術の改良を示す。これは、米国特許第5,936,375号、1999年8月10日発行、「荷巻上げ機械のエネルギー蓄積方法(a Method for Energy Storage for Load Hoisting Machinery)」に開示されている。本発明はこの構成に対する更なる非自明の改良を含む。
【特許文献1】米国特許第5,936,375号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の開示
第1インバータにより制御される誘導モーターにより動力が供給される荷移動機械システムについてエネルギーを蓄積及び取り出すという所望の目的のため、本発明の方法が提供される。本発明の方法のステップは、荷移動機械の誘導モーターを駆動して発電機として機能させ、該機械が荷を降下又は制動しているときは逆電力を生成することを含む。この生成された逆電力は該機械が小負荷又はアイドル時に生じる未利用の電力と結合され(この結合された電力を剰余電力という)、蓄電器を充電して剰余電力のポテンシャルエネルギーを蓄積するのに用いられる。この剰余電力は、デュアルインバータにより制御され、このデュアルインバータが蓄電器を充電し、又は蓄電器が放電するとき第1インバータに電流を送り戻す。蓄電器のポテンシャルエネルギーが測定され、また第1インバータの電力入力側でシステムの電圧が測定される。このポテンシャルエネルギー値と測定電圧はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に伝送される。蓄電器を充電して剰余電力を再使用のために蓄電器に蓄積できるように、このPLCはデュアルインバータを制御してACをDCに変換する。蓄電器の測定エネルギーに依存して、蓄電器のポテンシャルエネルギーから電力を取り戻して誘導モーターを駆動することができる。蓄電器を放電させ、それによって誘導モーターが回転して荷を持ち上げるための動力が作られる。換言すれば、誘導モーターが平均電力消費を超えて電力を消費しているとき電力が誘導モーターに戻される。
【0012】
本発明はまた、その方法を実行するための新規な装置を含む。荷移動機械のエネルギー蓄積システムは、荷を昇降するためのワイヤロープドラムに連結された誘導モーターを含む。このモーターは第1インバータにより制御される。エネルギー蓄積システムは、(a)デュアルインバータにより制御されるエネルギーの蓄積及び放出用の蓄電器、(b)デュアルインバータを制御するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)、(c)第1インバータの電力入力側の電圧を検知し、蓄電器の電圧を検知する手段、及び(d)検知した電圧及びパルス発生器の出力を設定電圧値と比較するためのPLCのプログラムドロジックを含む。エンジン駆動式AC発電機(ACG)が荷移動機械のための電力を発生し、ダイオードがACGのAC出力を制御する。
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明の重要な目的は、誘導モーター駆動式ホイスト機械の操作のための改善されたエネルギー蓄積方法を提供し、該機械の操作に必要な全体の電力を小さくすることである。
【0014】
本発明の別の目的は、誘導モーター駆動式ホイスト機械の操作のための改善されたエネルギー蓄積方法を提供し、該機械に必要な電力消費を平均化することである。
【0015】
本発明の別の目的は、荷を降ろすことによりモーターが駆動されるとき電力をソースに送り返す必要性、又は電力を抵抗器又はブレーキに吸収する必要性が取り除かれた誘導モーター駆動式ホイスト機械の操作の方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、電気エネルギーの蓄積のためにフライホイールを活用できる誘導モーター駆動式ホイスト機械の操作のためのエネルギー蓄積方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、エネルギーを蓄積するために蓄電器を利用する誘導モーター駆動式ホイスト機械のエネルギー蓄積システムのための装置を提供することである。
【0018】
添付図面と共に本発明の装置を参照すると、本発明のその他の目的及び利点が明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好ましい実施態様を説明するため図面を参照するが、対応する図において同じ参照番号は同じ要素を表す。
【0020】
図1〜3は、明細書の背景技術の欄に記載した現在実施されている従来技術を示す。図3は、破線内に示される追加によって図1の装置を改良した従来技術の特許装置を示す。背景技術の欄における図1の説明には、主要な装置要素11、13、15、17、19、21及び23の動作が記載されている。
【0021】
本発明の環境を説明するため図3を参照する。従来技術と本発明の両方においてシステムのホイスト機械21により荷23を上げるとき、市の公共電力網から又は自律ディーゼルエンジン動力付与型の発電機13からの電気エネルギーが、第1誘導モーター19を作動させるのに利用され、この第1誘導モーター19は、機械的な動力伝達手段により荷巻上げワイヤロープドラム21に連結されている。電力は、荷の巻上げ中は誘導モーターにより消費され、荷を降ろしている間は該モーターにより生成される。
【0022】
特許付与されたエネルギー蓄積システムが、図3において破線で囲まれて示されており、図1の抵抗器25に代わって追加の機械、すなわち第2インバータ35、第2誘導モーター37、回転速度を検出するタコメーター又はパルス発生器39、フライホイール41、及びプログラマブルロジックコントローラ(PLC)43を含む。
【0023】
ホイスト機械19及び21により荷が降ろされているとき、エネルギーはフライホイール41の回転に蓄積される。このことは以下の自明な関係から生じる。すなわち、荷巻上げドラム21は、荷23を降ろしている間はそのホイストモーターであるシステムの第1誘導モーター19を逆駆動する。第1誘導モーターはAC電流又は逆電力を発生する発電機として働く。発生されたAC電流は第1インバータ17によりDCに変換され、このDC電流はダイオード15と第1インバータ17との間を流れる。その結果、ポイントAの電圧は高くなる。
【0024】
ポイントAの電圧はまた、荷巻上げ機械がアイドル時、停止時、又は軽い荷の巻上げ時にも高くなる。主電源、AC発電機又は市の公共電力網からダイオード15を通って供給される電気は、荷巻上げ機械の電力消費が非常に小さいか又はほとんどゼロのときポイントAの電圧を上昇させる。このことが未利用の電力を発生させる。荷巻上げ機械が重い荷を巻上げ、その電力消費が大きいとき、ポイントAの電圧は電気不足ゆえにより低くなる。
【0025】
エネルギー蓄積システムは、未利用電力と、荷降ろし時に第1誘導モーター19が発電機として機能するよう駆動されるとき該第1誘導モーター19により生成される逆電力との両方を蓄積するよう働く。結合された未利用電力と逆電力を便宜上ここでは剰余電力と定義する。
【0026】
剰余電力は第2インバータ35により制御される。第2誘導モーター37が剰余電力により駆動され、第2インバータにより制御されてフライホイール41を回転させる。ポイントAの電圧が高いとき、この剰余電力はフライホイールの回転エネルギーに蓄積される。システムは、ポイントAの電圧が低いときフライホイールの回転エネルギーから電力を取り出して電気不足を補うように働く。
【0027】
ポイントAの測定電圧と、フライホイール41に連結されたタコメーター又はパルス発生器39により検出された回転速度とが、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)43に伝送又は入力される。このPLCは、DCを周波数の制御されたACに変換するように第2インバータ35を制御する。この周波数は、ポイントAの電圧とフライホイールの回転速度とに依存してPLC中のプログラムドロジックにより制御される。ポイントAの電圧は、プログラムドロジック中にマニュアルで事前設定し得る設定電圧値V0と比較される。
【0028】
図3を参照する。本発明では、第2誘導モーター37、フライホイール41、及びパルス発生器39を含む図示された従来技術の特許発明の高価で複雑な装置の部分を除去している。図4を参照すると、本発明の追加の代替装置が、図1〜3に図示された現在実施されている従来技術の装置に挿入されているのが示されている。図3の従来技術の特許装置が図4の発明の技術により改良されているのが示される。図4では従来の3つの要素37、39、41の代わりに蓄電器又はコンデンサー45が用いられ、図3の第2インバータ35の代わりにデュアルインバータ35が用いられている。このことにより、装置の構造が非常に簡単になり全体のコストが大きく削減されている。
【0029】
図4は、本発明の装置の実施態様を示し、ポイントAの電圧が設定値又は所定値V0よりも高いならば、PLC43がデュアルインバータ35に第1インバータからの出力をDCに変換するよう命令し、それによって蓄電器45が充電されて電力がポテンシャルエネルギーとして蓄積される。ポイントAの電圧が設定値V0よりも低いならば、デュアルインバータが蓄電器を制御して放電させて、誘導モーター19に供給される電力を生成し、そのようにして蓄電器からエネルギーを取り出す。
【0030】
次に、蓄電器45を制御する図4のデュアルインバータ35はまた、第1インバータが制御されたACに変換して誘導モーター19を駆動すべく蓄電器45のDC出力を第1インバータ17にDCとして送るように、及びその逆を行うように、PLC43により制御される。
【0031】
ポイントAの電圧とAC周波数αの関係について、図3及び4のみならず図5〜7も参照する。種々のグラフ表現を図面の簡単な説明の欄に記した。周波数αはAでの電圧に依存して決められる。巻上げドラムの負荷が小さく電力消費が大きくないとき、又は降ろされている荷により逆電力が生じるとき、Aでの電圧は、平均電圧に近いコントローラ中の設定値V0よりも高くなる。その場合、周波数αはプラスになり、エネルギーが蓄電器に蓄積される。負荷が大きく電力が消費されるとき、Aでの電圧は設定値V0より低くなり、周波数αはマイナスになり、エネルギーがフライホイールの回転から取り出される。
【0032】
Aでの電圧が設定値V0のときは、エネルギー蓄積システムによるエネルギーの蓄積も取り出しも行われない。この設定値V0は、平均負荷と機械的及び電気的な効率により決められる。荷巻上げ機械の操作のため本発明により許容されるディーゼルエンジン及びAC発電機の能力の軽減要件は、該機械の平均負荷と機械的及び電気的な効率から決めることができる。
【0033】
図8を参照すると、特に本発明に適合する電力消費グラフ図が示されている。これは、移動させている荷が大量に変化したり、又は荷の加速や減速によって大きな慣性の変化が生じるような例えば巻上げ機械、クレーン、トラクター、列車などの荷移動機械に対して利用できる。巻上げ機械やクレーンの場合には、可変重量の荷が昇降され、その際に荷は加速や減速を受ける。特定の負荷でのこのような操作の場合の誘導モーターの電力消費が、図8にグラフで示されている。図中、ブロックAは荷を上昇速度まで加速するのに必要な電力消費を表し;ブロックBは一定速度で荷を移動して上昇させるための電力消費を表し;ブロックCは荷の移動を停止するための電力消費を表し;ブロックDは荷を下降速度まで加速するための逆電力又は制動効果を表し;ブロックEは荷を一定速度で下降するための逆電力/制動効果を表し;ブロックFは荷の下降を停止するための逆電力/制動効果を表す。荷が巻上げられるとき、システムは電力を消費する。荷が下降されるとき、該モーターは電力を発生し且つブレーキとして機能するように動作する。
【0034】
図9を参照すると、本発明を用いて達成できる電力消費のグラフ図が示されている。機械が荷を引き上げていないとき、例えばアイドル時や、運転停止ではなく静止中のとき、電力入力は一定であり、未利用電力がある。平均電力消費は、図8の電力消費グラフ上に重ねられた図9のクロスハッチングされた領域により表される。
【0035】
図10は、本発明のシステムに蓄積される剰余電力のグラフ図を示す。本発明のエネルギー蓄積システムが用いられると、逆電力と小負荷又はアイドル時の未利用電力とを含めた剰余電力が、フライホイールの回転エネルギーとして蓄積され、蓄積されたエネルギーはピーク負荷又は大きな負荷の状況において電力として取り出される。この剰余電力は、図10において逆ハッチイング領域により表される。主電源の能力は、図9に示された平均消費電力を供給するのに十分である。荷が巻上げられたのと同じ高さだけ降ろされるならば、平均電力消費はちょうど機械的及び電気的な効率損失である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、第1インバータにより制御される誘導モーターによって動力の与えられる荷移動機械についてのエネルギー蓄積及び取り出し方法を含む。そのステップは、発電機として作動し、荷の降下又は制動時に逆電力を発生するように誘導モーターを駆動することを含む。荷巻上げ機械が小負荷又はアイドル時の未利用電力と結合された逆電力は、剰余電力として定義される。この剰余電力は、デュアルインバータにより制御される蓄電器を充電するために用いられる。誘導モーターがその平均電力消費を超えて電力を消費しているとき、該誘導モーターに電力を供給すべくこの蓄電器を放電させる。
【0037】
本発明の方法はまた、蓄電器に蓄積されたエネルギー(電圧)を測定すること、及び誘導モーターを制御する第1インバータの電力入力側の電圧を測定することを含む。蓄電器のエネルギー測定値とインバータ入力での測定された電圧とは、プログラマブルロジックコントローラに伝送される。この測定電圧は、コントローラ中の事前設定値と比較され、蓄電器を充電又は放電して誘導モーターを駆動するか又は誘導モーターにより駆動されるかを決める。本方法はさらに、コントローラが第1インバータの電力入力側の測定電圧が設定値よりも高いと判断すると、デュアルインバータが第1インバータの出力を変換して蓄電器を充電することで蓄電器にエネルギーを蓄積することを含む。したがって、この電圧が設定値よりも低いならば、デュアルインバータは第1インバータに送られる蓄電器の出力を変換し制御し、蓄電器から取り出した電力を誘導モーターに供給する。
【0038】
したがって、本発明のエネルギー蓄積システムは、ディーゼルエンジン及びAC発電機の能力又は電源からの引き出し量を削減するのに非常に効果的であり、それにより、本発明により低廉な荷巻上げ装置を提供することに加えて効果的なエネルギーに貢献する。本発明のエネルギー蓄積システムは、ディーゼルエンジン及びAC発電機の能力、電源からの引き出し量を削減するのに非常に効果的であり、それにより、効果的なエネルギー利用及び節約に貢献する。また、電源が不安定で変動する場合には、本発明のエネルギー蓄積システムは電力スタビライザーとして使用できる。
【0039】
本発明はまた、本発明の方法を実行する新規な装置を含む。荷移動機械のエネルギー蓄積システムは、荷を昇降させるためワイヤロープドラムに連結された誘導モーターを含む。このモーターは第1インバータにより制御される。エネルギー蓄積システムは、(a)デュアルインバータにより制御されるエネルギーの蓄積及び放出用の蓄電器、(b)デュアルインバータを制御するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)、(c)第1インバータの電力入力側の電圧を検知し、蓄電器の電圧を検知する手段、及び(d)検知された電圧及びパルス発生器の出力を設定電圧値と比較するためのPLCのプログラムドロジックを含む。エネルギー蓄積システムはまた、荷移動機械のために電力を作るエンジン駆動式AC発電機(ACG)と、ACGのAC出力を制御するダイオードとを含む。
【0040】
したがって、本発明の好ましい形態の上記説明から、上記目的すべてが達せられてそれに起因する利点が得られることが分かるであろう。ここではかなり詳しく図示し説明されているが、本発明は特許請求の範囲に必須のもの以外はこれまで述べてきた詳細に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】自律式荷巻上げクレーンのための標準的な従来技術の駆動機械の構成図である。
【図2】電力駆動式クレーンのための代わりの標準的な従来技術の駆動機械の構成図である。
【図3】特許付与された従来技術の荷巻上げ機械のためのエネルギー蓄積方法の図である。
【図4】図3の従来技術の改良であり、本発明の蓄電器/コンデンサーエネルギー蓄積システムがそのなかに含まれているのが示される。
【図5】周波数αと図3〜4中のポイントAの電圧との関係を関係を示すグラフであり、これにより第2インバータがAC周波数を制御する。
【図6】図5のグラフの操作のための基本的な関係である。
【図7】クレーンの操作における複雑な負荷変動に適合する図5のグラフのより現実的な関係である。
【図8】標準的な従来技術の荷移動機械構成の場合の基本的な電力消費グラフである。
【図9】本発明の方法を用いる駆動機械構成の場合の理想的な電力消費グラフ表示である。
【図10】剰余電力を定義しかつ蓄積される電力を示す図10の電力消費グラフである。
【符号の説明】
【0042】
11 ディーゼルエンジン
13 AC発電機
15 ダイオード
16 DC変換器
17 インバータ
19 誘導モータ
21 ドラム
23 荷
25 抵抗器
27 市の公共電力網
29 ケーブルリール電源
31 変圧器
35 第2インバータ
37 第2誘導モーター
39 パルス発生器
41 フライホイール
43 プログラマブルロジックコントローラ
45 蓄電器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1インバータにより制御される誘導モーターによって動力が与えられる荷移動機械のエネルギー蓄積及び取り出し方法であって、
発電機として機能して荷の下降又は制動時に逆電力を発生するように前記誘導モーターを駆動するステップであって、前記逆電力は前記荷巻上げ機械が小負荷又はアイドル時の未利用電力と結合され、前記結合された電力は剰余電力として定義される、前記ステップ、
前記剰余電力を用いて蓄電器を充電するステップ、
デュアルインバータにより前記剰余電力を制御するステップ、及び
前記モーターがその平均電力消費を超えて電力を消費しているとき前記蓄電器を放電させて前記誘導モーターに電力を供給するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記蓄電器に蓄積されたエネルギーを測定するステップ、
前記第1インバータの電力入力側の電圧を測定するステップ、
前記蓄積されたエネルギーの前記エネルギー値と前記測定した電圧とをプログラマブルロジックコントローラに伝送するステップ、及び
前記測定した電圧を前記コントローラにおいて事前設定された値と比較して前記蓄電器を充電すべきか又は放電すべきかを決めるステップ
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コントローラは、もし前記第1インバータの電力入力側の測定電圧が前記設定値より高いならば、前記デュアルインバータが前記第1インバータの出力を変換して前記蓄電器を充電し、またもし前記電圧が前記設定値より低いならば、前記デュアルインバータが前記第1インバータに送られる前記蓄電器の出力を変換し制御して前記誘導モーターに前記蓄電器から電力を供給することを決める、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
荷を昇降するためにワイヤロープドラムに連結され、第1インバータにより制御される誘導モーター、
エネルギー蓄積システムであって、
デュアルインバータにより制御されエネルギーを蓄積及び放出するための蓄電器と、
前記デュアルインバータを制御するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)と、
前記第1インバータの電力入力側の電圧を検知し、前記蓄電器の電圧を検知するための手段と、
前記検知した電圧を設定電圧値と比較するための前記プログラマブルロジックコントローラ(PLC)のプログラムドロジックと
を含む前記エネルギー蓄積システム、
前記荷移動機械のために電力を作るエンジン駆動式AC発電機(ACG)、及び
前記AC発電機(ACG)のAC出力を制御するダイオード
を含む荷移動機械のエネルギー蓄積システム。
【請求項1】
第1インバータにより制御される誘導モーターによって動力が与えられる荷移動機械のエネルギー蓄積及び取り出し方法であって、
発電機として機能して荷の下降又は制動時に逆電力を発生するように前記誘導モーターを駆動するステップであって、前記逆電力は前記荷巻上げ機械が小負荷又はアイドル時の未利用電力と結合され、前記結合された電力は剰余電力として定義される、前記ステップ、
前記剰余電力を用いて蓄電器を充電するステップ、
デュアルインバータにより前記剰余電力を制御するステップ、及び
前記モーターがその平均電力消費を超えて電力を消費しているとき前記蓄電器を放電させて前記誘導モーターに電力を供給するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記蓄電器に蓄積されたエネルギーを測定するステップ、
前記第1インバータの電力入力側の電圧を測定するステップ、
前記蓄積されたエネルギーの前記エネルギー値と前記測定した電圧とをプログラマブルロジックコントローラに伝送するステップ、及び
前記測定した電圧を前記コントローラにおいて事前設定された値と比較して前記蓄電器を充電すべきか又は放電すべきかを決めるステップ
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コントローラは、もし前記第1インバータの電力入力側の測定電圧が前記設定値より高いならば、前記デュアルインバータが前記第1インバータの出力を変換して前記蓄電器を充電し、またもし前記電圧が前記設定値より低いならば、前記デュアルインバータが前記第1インバータに送られる前記蓄電器の出力を変換し制御して前記誘導モーターに前記蓄電器から電力を供給することを決める、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
荷を昇降するためにワイヤロープドラムに連結され、第1インバータにより制御される誘導モーター、
エネルギー蓄積システムであって、
デュアルインバータにより制御されエネルギーを蓄積及び放出するための蓄電器と、
前記デュアルインバータを制御するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)と、
前記第1インバータの電力入力側の電圧を検知し、前記蓄電器の電圧を検知するための手段と、
前記検知した電圧を設定電圧値と比較するための前記プログラマブルロジックコントローラ(PLC)のプログラムドロジックと
を含む前記エネルギー蓄積システム、
前記荷移動機械のために電力を作るエンジン駆動式AC発電機(ACG)、及び
前記AC発電機(ACG)のAC出力を制御するダイオード
を含む荷移動機械のエネルギー蓄積システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2007−537110(P2007−537110A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552323(P2006−552323)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/003795
【国際公開番号】WO2005/076989
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(504225736)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/003795
【国際公開番号】WO2005/076989
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(504225736)
【Fターム(参考)】
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