説明

蒸気力装置を備える内燃機関を運転する方法

【課題】内燃機関の排ガス中の排熱を利用する蒸気力装置において、蒸気タービンを蒸気ジェット中の液滴、特に水滴による損傷から保護する。
【解決手段】蒸気力装置12を一時的に、特に運転開始時にまず、液滴による損傷からのタービン26の保護を優先する保護運転モードで運転するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気力装置を備える内燃機関を運転する方法であって、前記内燃機関の排ガスが蒸気を少なくとも間接的に加熱し、該蒸気がタービンを駆動するようになっている蒸気力装置を備える内燃機関を運転する方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、コンピュータプログラム、開ループ及び/又は閉ループ制御装置のための記憶媒体、並びに開ループ及び/又は閉ループ制御装置に関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関の排ガス中の排熱を利用する蒸気力装置(Dampfkraftanlage)は、公知である。ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006057247号明細書に記載の蒸気力装置では、排気管内に、作動媒体の回路の熱交換器が格納されている。熱交換器の上流には、圧送ユニットが作動媒体の回路に接続されている。作動媒体の回路は、タービン部を有しており、タービン部を介して、内燃機関の吸気管内に配置された少なくとも1つのコンプレッサ部が駆動されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006057247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、内燃機関の排ガス中の排熱を利用する蒸気力装置において、蒸気タービンを蒸気ジェット中の液滴、特に水滴による損傷から保護することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る、蒸気力装置を備える内燃機関を運転する方法では、前記蒸気力装置を一時的に、特に運転開始時にまず、液滴による損傷からのタービンの保護を優先する保護運転モードで運転するようにした。
【0007】
有利な態様は、従属請求項に記載されている。
【0008】
好ましくは、前記保護運転モードにおいて、通常運転モードに対して、流入する蒸気ジェットとタービンのインペラとの間の相対速度を下げる。
【0009】
好ましくは、前記流入する蒸気ジェットとタービンのインペラとの間の相対速度を、少なくとも一時的に、
‐前記流入する蒸気ジェットを制御するためのノズルの横断面を拡大する、かつ/又は
‐前記タービンを負荷なしに運転する、かつ/又は
‐前記タービンの回転をモータにより補助する、
ことにより下げる。
【0010】
好ましくは、前記保護運転モードにおいて、通常運転モードに対して、蒸気発生器内で形成される蒸気の温度を、通常の運転温度を上回る限界値まで高める。
【0011】
好ましくは、前記蒸気の温度を、
‐熱交換器の許容運転温度を下回る限り、該熱交換器の排ガス側のバイパスを閉鎖するか、又は通流を減じる、かつ/又は
‐フィードポンプの圧送量を調整する、かつ/又は
‐前記蒸気力装置の最大許容運転圧力を下回る限り、凝縮器の冷却を中止するか、又は弱める、
ことにより、前記通常の運転温度を上回る限界値まで高める。
【0012】
好ましくは、前記蒸気力装置が通常運転温度に達すると、前記保護運転モードを終了する。
【0013】
好ましくは、少なくとも前記蒸気力装置の運転圧力、前記タービンの入口と出口との間の圧力比、フィードポンプの流体質量流量、排ガスと蒸気との間の熱交換器の温度、凝縮器の温度、及び/又は前記タービンの温度を監視する。
【0014】
好ましくは、前記タービンの入口と出口との間の圧力比が閾値に達するか、又は閾値を上回ると、フィードポンプの圧送量を減じる。
【0015】
好ましくは、蒸気の過熱温度が通常運転中270℃〜360℃である。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るコンピュータプログラムでは、当該コンピュータプログラムが、上記方法での用途のためにプログラミングされているようにした。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る、開ループ及び/又は閉ループ制御装置のための記憶媒体では、当該記憶媒体に、上記方法での用途のためのコンピュータプログラムが記憶されているようにした。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明に係る開ループ及び/又は閉ループ制御装置では、当該開ループ及び/又は閉ループ制御装置が、上記方法での用途のためにプログラミングされているようにした。
【0019】
さらに、本発明にとって重要な特徴は、以下の説明及び図面に看取される。これらの特徴は、単独でも、それぞれ異なる組み合わせでも、そのそれぞれについて改めて明示しなくても、本発明にとって重要であり得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、内燃機関の排ガス中の排熱を利用する蒸気力装置において、蒸気タービンが蒸気ジェット中の液滴、特に水滴による損傷から保護されているという利点を有する。さらに、可及的早期に蒸気力出力を提供し、ひいては燃料消費の低下に寄与するために、蒸気力装置の運転態勢は、急速に整えられる。
【0021】
例えば、内燃機関の排ガス経路中の蒸気力装置は、以下のように構成されている。すなわち、排ガスは、熱交換器の一次系を通流する。二次系では、フィードポンプにより圧送された凝縮した水が加熱され、蒸気を生じる。熱交換器内で形成された蒸気は、タービンに導入される。タービンにおいて、蒸気は、ノズル内で膨張し、タービンのインペラを駆動する。タービンの出口は、膨張した蒸気を凝縮器あるいは復水器に圧送する。凝縮器内では、膨張した蒸気が冷却される。その結果、蒸気は凝縮して水になる。この水は、フィードポンプより吸い込まれ、改めて熱交換器に供給される。
【0022】
本発明は、蒸気から凝縮した水滴が高速で蒸気タービンのインペラの翼配列に衝突すると、蒸気タービンが損傷する場合があるという考察から出発している。この危険は、特に始動プロセス中、蒸気回路の部分及び蒸気タービン自体がまだそのそれぞれの運転温度に達していない場合に生じる。それゆえ、蒸気力装置を始動プロセス中、水滴による損傷からのタービンの保護を優先する保護運転モードで運転することが提案される。このような保護運転モードでは、例えば、熱交換器内で形成された蒸気が、下流の低温の管壁において、できる限り凝縮しないようにすることができる。これにより、個々の滴が、蒸気流動により連行され、強く加速されて、タービンへの衝突時に損傷を生じる危険は、少なくとも軽減される。
【0023】
対策の第1の思想は、保護運転モードにおいて、通常運転モードに対して、流入する蒸気ジェットとタービンのインペラとの間の相対速度を下げることを意図している。相対速度は、タービンのインペラに対する水滴の衝突速度の指標である。相対速度が低ければ低いほど、インペラが損傷する蓋然性は低い。こうして、有利には、タービン、ひいては蒸気力装置の疲れ強さは、全体として向上する。
【0024】
このために、本発明に係る方法は、流入する蒸気ジェットとタービンのインペラとの間の相対速度を、少なくとも一時的に、流入する蒸気ジェットを制御するためのノズルの横断面を拡大する、かつ/又はタービンを負荷なしに運転する、かつ/又はタービンの回転をモータにより補助することにより下げるようにしている。ノズルの横断面が拡大されると、ノズルを介してより小さな圧力比が生じる。この小さな圧力比は、他方、蒸気ジェットのより低い加速及びより低い流出速度に至る。補足的に又は択一的に、タービンが負荷なしに運転される、つまり、自由回転可能であると、蒸気ジェットとタービンのインペラとの間の相対速度をさらに下げることができる。やはり補足的に又は択一的に、タービンがモータにより補助されると、相対速度をさらに下げることができる。例えば、インペラは、電動モータに連結可能であり、電動モータは、タービンのインペラを少なくともほぼ蒸気ジェット速度に同期させる。これにより、三重にインペラの損傷を防止することができる。有利には、電動モータは、蒸気力装置の続いての通常運転モードでは、電気エネルギを発生させるために、ジェネレータとして作業することができる。
【0025】
対策の第2の思想は、保護運転モードにおいて、通常運転モードに対して、蒸気発生器内で形成される蒸気の温度を、通常の運転温度を上回る限界値まで高めることを意図している。上述の第1の対策が、蒸気から凝縮した水滴の、インペラに関する相対速度を下げているのに対して、第2の対策は、水滴が蒸気ジェット中に一切形成されないか、又は形成されたとしても、減じられた量で形成されるにすぎず、つまり、蒸気ジェットの凝縮戻りが実質的に起こらないようにするものである。対策の両思想は、補い合って、その作用効果を有利には積み重ねることができる。
【0026】
このために、本発明に係る方法は、熱交換器(蒸気発生器)内で形成される蒸気の温度を、熱交換器の運転温度が最大許容値を上回らない限り、熱交換器の排ガス側のバイパスを閉鎖するか、又は通流を減じる、かつ/又はフィードポンプの圧送量を調整する、かつ/又は蒸気力装置の運転圧力が最大許容値を上回らない限り、凝縮器の冷却を中止するか、又は弱めることにより、通常の運転温度を上回る限界値まで高めるようにしている。これにより、蒸気を通常運転モードに対して「過熱」することが可能である。その結果、有害な水滴が発生する蓋然性は低下する。蒸気の温度に関する限界値は、有利には、蒸気力装置の各部を過負荷しないように、又は安全性を脅かさないように選択される。排ガス熱交換器が排ガス側のバイパスを有する場合は、バイパスが保護運転モード中、まず閉鎖される。その結果、すべての排ガス流が熱交換器を通流可能である。同時に、熱交換器の温度が監視される。熱交換器の上側の許容運転温度に達するか、又はそれどころか超過すると直ちに、バイパスが開かれる。結果として、熱交換器を通流する排ガス量が減じられる。有利には、バイパスを調節するための制御量として、内側の熱交換器温度が利用される。内側の熱交換器温度は、例えば、熱交換器の熱モデルにより、入力量、例えば排ガス温度、排ガス質量流量、流体温度及び流体質量流量を基に求められてもよい。
【0027】
択一的に又は補足的に、フィードポンプの圧送量を制御又は調節してもよい。フィードポンプは、水を熱交換器の流体流入部に圧送しているので、圧送量により、熱交換器からの蒸気流出温度を調節することができる。例えば、蒸気力装置の通常運転モードにおいて、熱交換器に供給される流体質量流量は、8g/s〜60g/s(グラム毎秒)である。保護運転モード中、流体質量流量を上記値に対して適当に減じることが有利であり得る。それというのも、熱交換器の加熱のためにエネルギが必要とされ、このエネルギは、蒸発及び過熱のために提供されないからである。つまり、流体質量流量は、フィードポンプの回転数変化により、蒸気温度が通常運転モードに対して高められるように調節又は制御され得る。熱交換器内で形成される蒸気の温度は、通常運転モードでは、例えば270℃〜360℃である。
【0028】
択一的に又は補足的に、凝縮器の冷却を調節してもよい。例えば、凝縮器の冷却を中止することができる。これにより、凝縮される水が減り、続いて、熱交換器内には、より高い蒸気温度が達成可能である。同時に、蒸気力装置の運転圧力が監視される。最大許容運転圧力に達するか、又は最大許容運転圧力を上回ると、凝縮器の冷却は、再びオンにされるか、又は無段階に高められる。例えば、内燃機関の運転点次第で、凝縮器の必要な冷却出力は、19kW〜140kWであってよい。有利には、凝縮器の冷却出力は、切り換えられるのではなく、閉ループ制御される。その際、蒸気力装置の許容運転圧力が、制御量である。これに対して、可及的多くの排ガス熱が、内燃機関の、凝縮器が接続されている冷却系に伝達されることが望ましいとき、凝縮器は、既に開始時に冷却される。このことは、ウォームアップ短縮又は内燃機関のエミッション減少にとって有利であり得る。この場合、例えば、凝縮器における冷却出力は、例えば2バールの運転圧力が生じるように制御される。その際、凝縮器冷却の制御を、一方では保護運転モードに関して、他方ではウォームアップ短縮及びエミッション減少に関して実施すること、つまり両要求を組み合わせることも可能である。
【0029】
さらに、本発明に係る方法は、蒸気力装置が通常運転温度に達すると、保護運転モードを終了するようにしている。これにより、通常の運転温度では、水滴によるタービンの損傷が考えられないので、可及的速やかな保護運転モードから通常運転モードへの移行が可能である。切換の基準は、蒸気回路の種々異なる箇所に設けられた種々異なる温度センサ及び/又は圧力センサから獲得されるか、又は熱モデルにより算出され得る。通常運転中、蒸気回路の、効率を最適化したプロセスガイド(Prozessfuehrung)が達成される。
【0030】
さらに、本発明に係る方法は、少なくとも蒸気力装置の運転圧力、タービンの入口と出口との間の圧力比、フィードポンプの流体質量流量、排ガスと蒸気との間の熱交換器の温度、凝縮器の温度、及び/又はタービンの温度を監視するようにしている。これにより、一方では、確実に、保護運転モードと通常運転モードとの間を区別することができ、他方では、保護運転モードを最適に調節又は制御することができる。やはり、こうして、蒸気力装置の損傷を特に高い信頼性をもって回避することができる。
【0031】
補足的に、本発明に係る方法は、タービンの入口と出口との間の圧力比が閾値に達するか、又は閾値を上回ると、フィードポンプの圧送量を減じるようにしている。例えば圧力比が閾値を上回ると、フィードポンプの圧送量は、圧力比が再び閾値の下にくるように減じられる。これにより、タービンのノズルからの蒸気流出速度が、タービンのインペラを水滴により損傷させる可能性があるほどに高くなることを、回避することができる。圧力比に関する閾値は、適当に設定される。
【0032】
さらに、本発明に係る方法は、水を運転手段として使用した場合、蒸気の過熱温度が通常運転中270℃〜360℃であるようにしている。蒸気の、この限界により規定された過熱温度により、通常運転モードにおいて、蒸気力装置の特に高い効率が達成可能である。このことから出発して、熱交換器内に形成される蒸気温度を運転開始時、つまり保護運転モード中に、有害な水滴の発生を軽減又は防止するために上昇させることが可能である。蒸気の過熱温度の上限は、蒸気力装置のコンポーネントの耐熱性及び安全要求により決定される。
【0033】
以下に、本発明の例示的な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】蒸気力装置の回路図である。
【図2】保護運転モードにおける方法の経過を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
機能等価の要素及び量には、全図において、異なる実施の形態であっても同じ符号を使用する。
【0036】
図1は、蒸気力装置12を示している。蒸気力装置12は、内燃機関10の排ガス系からエネルギの供給を受ける。内燃機関10の排ガスは、排ガス管14と、本実施の形態では三方弁16として構成されるバイパス弁とを介して、熱交換器18に供給される。熱交換器18は、蒸気発生器17の役割を有する。三方弁16の第3のポートは、排ガスを、バイパス19を介して熱交換器18を迂回させるように案内している。排ガスは、熱交換器18の一次系を通流し、その後、バイパス19を通して案内された部分と合流して出口管20を通して導出される。
【0037】
熱交換器の二次系は、流体流入部21及び蒸気流出部22を有する。蒸気流出部22は、タービン26の入口24に連通している。タービン26は、等圧タービンあるいは衝動タービンとして構成されており、ノズル28及びインペラ30を有する。タービン26の出口32は、凝縮器34に連通している。凝縮器の出口36は、フィードポンプ40の入口38に連通している。フィードポンプ40は、熱交換器18の流体流入部21に作用するようになっているので、蒸気回路は閉鎖されている。
【0038】
タービン26は、負荷42に作用するようになっている。負荷42は、制御要素44により制御される。破線46は、負荷42が内燃機関10の駆動を助成可能であることを概略的に示している。例えば、負荷42はコンプレッサ部であってよい。コンプレッサ部は、内燃機関10の吸気管内の圧力を高めるので、内燃機関10の吸気行程中、より大量の、燃焼に必要な空気をシリンダに流入させることができる。さらに、電動モータ48がタービン26に連結されている。図1の左下には、開ループ及び/又は閉ループ制御装置50が存在する。開ループ及び/又は閉ループ制御装置50は、記憶媒体52及びコンピュータプログラム54を有する。破線の矢印56は、開ループ及び/又は閉ループ制御装置50が、蒸気力装置12のそれぞれ異なるコンポーネントに接続されていることを概略的に示している。
【0039】
蒸気力装置12の運転中、特に、熱交換器18の温度が温度センサ58により、タービン26の入口24の圧力が圧力センサ60により、タービン26の出口32の圧力が圧力センサ62により測定される。さらに、凝縮器34の冷却を調節するための制御要素64と、フィードポンプ40の回転数を調節するための制御要素66とが設けられている。
【0040】
開ループ及び/又は閉ループ制御装置50により、蒸気力装置12又は内燃機関10が始動状態にあることが確認されると、保護運転モードに切り換えられる。これについての情報を、開ループ及び/又は閉ループ制御装置50は、特に、圧力センサ60,62及び温度センサ58のデータから、並びに蒸気回路の、開ループ及び/又は閉ループ制御装置50内に格納されたモデルから入手する。蒸気力装置12の回路内に記入された複数の矢印(符号なし)は、流体流、蒸気流及び排ガス流の方向を概略的に示している。
【0041】
保護運転モードにおいて、複数の措置が同時に講じられる。すなわち、タービン26のノズル28の横断面を拡大して、流入する蒸気ジェットの速度を下げる。これにより、流入する蒸気ジェットの、インペラ30の回転に関する相対速度を下げる。制御要素44により、負荷42はタービン26から切り離される。電動モータ48を通電して、電動モータ48によりタービン26を、インペラ30が流入する蒸気ジェットの速度と実質的に同期するように駆動する。
【0042】
さらに、熱交換器18の蒸気流出部22における蒸気の温度を可及的高く維持するために、種々異なる措置が講じられる。第1に、三方弁16を調整して、温度センサ58により監視される温度が閾値を超えない限り、内燃機関10から流出する排ガス流が完全に熱交換器18の一次系を通して案内されるようにする。この閾値に達するか、又はこの閾値を超過すると、三方弁は、バイパス19を介した経路を少なくとも部分的に開放して、より少量の排ガスが熱交換器18を通るように案内し、熱交換器18の温度を閾値の下に維持する。
【0043】
第2に、制御要素66によりフィードポンプ40の圧送量を、所望の蒸気温度が熱交換器18の蒸気流出部22に生じるように調節する(運転開始時にはつまり比較的低く維持する)。フィードポンプ40の圧送量は、本実施の形態ではフィードポンプ40の回転数により調節される。補足的に、フィードポンプ40の圧送量は、タービン26の入口24と出口32との間の圧力差に基づいて調節される。圧力差は、その際、圧力センサ60及び62で求められた圧力の差により規定される。
【0044】
第3に、蒸気力装置12の許容運転圧力にまだ到達していない限り、凝縮器34の冷却を停止するか、又は弱めることにより、蒸気回路を迅速に加熱する。この運転圧力に達すると、凝縮器34の冷却を作動するか、又は強める。
【0045】
温度センサ58及び両圧力センサ60,62に基づいて、並びに開ループ及び/又は閉ループ制御装置50内に格納されたモデルに基づいて、蒸気力装置12の始動プロセスが完了していることが認識されると、通常運転モードに切り換えられる。その際、負荷42がタービン26に連結され、内燃機関10の駆動を助成することができる。電動モータ48は、停止されるか、又はジェネレータ運転に切り換えられる。蒸気力装置12の残りの制御要素は、通常運転モードに応じて運転される。
【0046】
図2は、開ループ及び/又は閉ループ制御装置50内のコンピュータプログラム54による方法の経過についてのフローチャートを示す。スタートブロック70から出発して、ブロック72において、保護運転モードのための前提が満たされているか否か確認する。この前提が満たされていなければ、エンドブロック74に枝分かれする。このエンドブロック74において、蒸気力装置12の通常運転モードが形成され、これにより、図示のフローチャートを離脱する。
【0047】
しかし、この前提が満たされていれば、後続のブロック76において、蒸気回路の種々異なる量が求められる。この量には、特に、温度センサ58の温度及び圧力センサ60,62の圧力並びに蒸気力装置12の、開ループ及び/又は閉ループ制御装置50内に記憶された種々異なるモデル量78が属する。後続のブロック80で、タービン26に流入する蒸気ジェットと、タービンのインペラ30との間の相対速度を下げるための種々異なる措置が講じられる。このために、(図1には示されていない)制御要素82を操作して、ノズル28の横断面を拡大する。さらに、ブロック80により、制御要素44を操作して、負荷42をタービン26から切り離す。さらに、ブロック80は、電動モータ48を制御要素48を介して切り換えて、電動モータ48がモータとして運転され、インペラ30の回転数が、ノズル28を通して流入する蒸気ジェットの速度に適合するようにする。
【0048】
後続のブロック84において、タービン26に流入する蒸気ジェットの温度を通常値を超える高さに昇温するために、種々異なる措置が講じられる。このために、制御要素86により三方弁16を調節して、バイパス19を通る排ガス流が減じられるか、又は遮断されるようにする。さらに、制御要素66を介して、フィードポンプ40の圧送量を適合する。制御要素64を介して凝縮器34の冷却出力を、蒸気力装置12の許容運転圧力が超過されない限り、引き下げる。次に、プログラムはブロック72に戻り、ブロック72において改めて、保護運転モードの条件が満たされているか検査する。この条件が満たされていれば、やはりブロック76に枝分かれして、保護運転モードのために必要であるような種々異なる量を調節又は調整する。本方法は、ブロック72において、始動状態が終了したことが確認されると直ちに、中止される。そして、ブロック74において通常運転モードに切換可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 内燃機関、 12 蒸気力装置、 14 排ガス管、 16 三方弁、 18 熱交換器、 19 バイパス、 20 出口管、 21 流体流入部、 22 蒸気流出部、 24 入口、 26 タービン、 28 ノズル、 30 インペラ、 32 出口、 34 凝縮器、 36 出口、 38 入口、 40 フィードポンプ、 42 負荷、 44 制御要素、 48 電動モータ、 50 開ループ及び/又は閉ループ制御装置、 52 記憶媒体、 54 コンピュータプログラム、 58 温度センサ、 60,62 圧力センサ、 64,66 制御要素、 70 スタートブロック、 72 ブロック、 74 エンドブロック、 76 ブロック、 78 モデル量、 80 ブロック、 84 ブロック、 86 制御要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気力装置(12)を備える内燃機関(10)を運転する方法であって、前記内燃機関(10)の排ガスが蒸気を少なくとも間接的に加熱し、該蒸気がタービン(26)を駆動するようになっている蒸気力装置(12)を備える内燃機関(10)を運転する方法において、前記蒸気力装置(12)を一時的に、特に運転開始時にまず、液滴による損傷からのタービン(26)の保護を優先する保護運転モードで運転することを特徴とする、蒸気力装置を備える内燃機関を運転する方法。
【請求項2】
前記保護運転モードにおいて、通常運転モードに対して、流入する蒸気ジェットとタービン(26)のインペラ(30)との間の相対速度を下げる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記流入する蒸気ジェットとタービン(26)のインペラ(30)との間の相対速度を、少なくとも一時的に、
‐前記流入する蒸気ジェットを制御するためのノズル(28)の横断面を拡大する、かつ/又は
‐前記タービン(26)を負荷(42)なしに運転する、かつ/又は
‐前記タービン(26)の回転をモータ(48)により補助する、
ことにより下げる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記保護運転モードにおいて、通常運転モードに対して、蒸気発生器(17)内で形成される蒸気の温度を、通常の運転温度を上回る限界値まで高める、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記蒸気の温度を、
‐熱交換器(18)の許容運転温度を下回る限り、該熱交換器(18)の排ガス側のバイパス(19)を閉鎖するか、又は通流を減じる、かつ/又は
‐フィードポンプ(40)の圧送量を調整する、かつ/又は
‐前記蒸気力装置(12)の最大許容運転圧力を下回る限り、凝縮器(34)の冷却を中止するか、又は弱める、
ことにより、前記通常の運転温度を上回る限界値まで高める、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記蒸気力装置(12)が通常運転温度に達すると、前記保護運転モードを終了する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記蒸気力装置(12)の運転圧力、前記タービン(26)の入口(24)と出口(32)との間の圧力比、フィードポンプ(40)の流体質量流量、排ガスと蒸気との間の熱交換器(18)の温度、凝縮器(34)の温度、及び/又は前記タービン(26)の温度を監視する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記タービン(26)の入口(24)と出口(32)との間の圧力比が閾値に達するか、又は閾値を上回ると、フィードポンプ(40)の圧送量を減じる、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
蒸気の過熱温度が通常運転中270℃〜360℃である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
コンピュータプログラム(54)において、当該コンピュータプログラムが、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法での用途のためにプログラミングされていることを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項11】
開ループ及び/又は閉ループ制御装置(50)のための記憶媒体(52)において、当該記憶媒体(52)に、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法での用途のためのコンピュータプログラム(54)が記憶されていることを特徴とする、開ループ及び/又は閉ループ制御装置のための記憶媒体。
【請求項12】
開ループ及び/又は閉ループ制御装置(50)において、当該開ループ及び/又は閉ループ制御装置が、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法での用途のためにプログラミングされていることを特徴とする、開ループ及び/又は閉ループ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−149432(P2011−149432A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12247(P2011−12247)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】