説明

蒸気発生装置及び洗浄乾燥装置

【課題】小型化が可能であり、加熱効率が高く電力消費量が少ない洗浄乾燥装置を提供する。
【解決手段】洗浄液の蒸気を発生させる装置であって、少なくとも、導電性底面を有し前記洗浄液を収容する蒸気発生槽と、該蒸気発生槽の導電性底面に誘導電流を発生させるためのコイルと、該コイルに交流電流を流すための交流電源とを具備し、前記交流電源により前記コイルに交流電流を流し、前記導電性底面に誘導電流を発生させて前記蒸気発生槽を加熱することにより、前記洗浄液を加熱して蒸気を発生させるものである蒸気発生装置、及び対象物の洗浄及び/又は乾燥を行なう装置であって、少なくとも、前記蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置の蒸気発生槽内に前記対象物を保持するための保持治具とを具備し、前記蒸気発生装置により発生した蒸気により前記保持治具に保持された前記対象物を洗浄及び/又は乾燥するものである洗浄乾燥装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱により洗浄液の蒸気を発生させる蒸気発生装置及びこれを用いた洗浄乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学部品や半導体部品等の対象物の洗浄や乾燥に用いられる洗浄乾燥装置として、洗浄槽に例えばイソプロピルアルコールやエタノール等の洗浄液を収容し、これを加熱して洗浄液の蒸気を発生させ、この蒸気に対象物をさらし、対象物の表面の水分等を洗浄液に置換して洗浄し、これを気化させて乾燥を行なう装置が知られている。
【0003】
洗浄液を加熱する方法として、例えば洗浄槽の底面に抵抗加熱ヒータを取付け、これにより洗浄槽を加熱して洗浄液を加熱する方法(例えば特許文献1参照)や、洗浄液中に加熱ヒータを設けて洗浄液を加熱する方法(例えば特許文献2参照)や、洗浄液中に熱交換器を挿入し、その中に加熱ヒータにより加熱された熱媒蒸気を供給し、この熱交換器により洗浄液を加熱する方法(例えば特許文献3参照)等がある。
【0004】
一方、近年、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話のレンズ、また医療用レンズ、あるいはこれらと共に用いられる電子部品や金属加工部品等の需要の増加に伴い、これらの小型精密部品を洗浄乾燥するのに適する小型の洗浄乾燥装置に対する要求が高まってきた。
【0005】
【特許文献1】特開平7−193036号公報
【特許文献2】特開平6−196471号公報
【特許文献3】特開平8−17786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、小型化が可能であり、加熱効率が高く電力消費量が少ない蒸気発生装置及びこれを用いた洗浄乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的達成のため、本発明は、洗浄液の蒸気を発生させる装置であって、少なくとも、導電性底面を有し前記洗浄液を収容する蒸気発生槽と、該蒸気発生槽の導電性底面に誘導電流を発生させるためのコイルと、該コイルに交流電流を流すための交流電源とを具備し、前記交流電源により前記コイルに交流電流を流し、前記導電性底面に誘導電流を発生させて前記蒸気発生槽を加熱することにより、前記洗浄液を加熱して蒸気を発生させるものであることを特徴とする蒸気発生装置を提供する(請求項1)。
【0008】
このように、交流電源によりコイルに交流電流を流し、電磁誘導により蒸気発生槽の導電性底面に誘導電流を発生させ、この誘導電流によりジュール熱を発生させて蒸気発生槽を加熱することにより、蒸気発生槽に収容された洗浄液を加熱して蒸気を発生させる蒸気発生装置であれば、加熱のために蒸気発生槽にコイルを備えるだけでよいので、従来の抵抗加熱ヒータや熱交換器を備える場合よりも装置の小型化ができる。このとき、蒸気発生槽の導電性底部は誘導電流によるジュール熱により加熱されるので、加熱効率が高く、装置の電力消費量も少なくできる。
【0009】
この場合、前記洗浄液はイソプロピルアルコールからなるものであることが好ましい(請求項2)。
このように、洗浄液がイソプロピルアルコール(以下、IPAと記載する場合がある)からなるものであれば、半導体電子部品等の対象物表面の水分が容易に洗浄液に置換され、また対象物表面に洗浄液のしみが残らないような好適な洗浄乾燥をすることができる蒸気が発生する装置となる。
【0010】
また、前記導電性底面はステンレスからなるものであることが好ましい(請求項3)。
このように、導電性底面がステンレスからなるものであれば、コイルにより発生する誘導電流により適度のジュール熱が発生して洗浄液を適度に加熱することができ、また耐久性も高いので好ましい。
【0011】
また、前記コイルは同一面内に同心円状に巻かれたものであることが好ましい(請求項4)。
このように、コイルが同一面内に同心円状に巻かれたものであれば、誘導電流の発生量を保ちながらコイルの占める厚さを薄くでき、高さがより低い小型の蒸気発生装置とできる。
【0012】
また、前記蒸気発生槽は側壁に保温手段を備えるものであることが好ましい(請求項5)。
このように、蒸気発生槽が側壁に保温手段を備えるものであれば、電力消費量を抑制しつつ、洗浄液の蒸気を即座に発生させることができる。
【0013】
また、前記交流電源は前記コイルに周波数100kHz以下の交流電流を流すものであること好ましい(請求項6)。
このように、交流電源がコイルに周波数100kHz以下の交流電流を流すものであれば、交流電源からコイルに電力を供給するためのケーブルにおいて電送損失が少なく、効率的に加熱を行なうことができる。
【0014】
また、前記交流電源は少なくとも前記蒸気発生槽と分離して配置されるものであることが好ましい(請求項7)。
このように、交流電源が少なくとも蒸気発生槽と分離して配置されるものであれば、交流電源が洗浄液の蒸気に曝されることがなく、洗浄液が可燃性のものであっても十分に防爆対策ができる。
【0015】
また、本発明は、対象物の洗浄及び/又は乾燥を行なう装置であって、少なくとも、前記のいずれかの蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置の蒸気発生槽内に前記対象物を保持するための保持治具とを具備し、前記蒸気発生装置により発生した蒸気により前記保持治具に保持された前記対象物を洗浄及び/又は乾燥するものであることを特徴とする洗浄乾燥装置を提供する(請求項8)。
【0016】
このように、前記のいずれかの蒸気発生装置の蒸気発生槽内に保持治具により対象物を保持し、蒸気発生槽において洗浄及び/又は乾燥を行なう洗浄乾燥装置であれば、小型であり、加熱効率が高く電力消費量が低い洗浄乾燥装置となる。
【0017】
また、本発明は、対象物の洗浄及び/又は乾燥を行なう装置であって、少なくとも、前記のいずれかの蒸気発生装置と、洗浄乾燥槽と、前記蒸気発生装置により発生した蒸気を前記洗浄乾燥槽に供給するための蒸気供給路と、前記洗浄乾燥槽内に前記対象物を保持するための保持治具とを具備し、前記蒸気発生装置により発生した蒸気を前記蒸気供給路により前記洗浄乾燥槽に供給し、該供給された蒸気により前記保持治具に保持された前記対象物を洗浄及び/又は乾燥するものであることを特徴とする洗浄乾燥装置を提供する(請求項9)。
【0018】
このように、蒸気発生装置と洗浄乾燥槽とを分離し、蒸気発生装置により発生した蒸気を蒸気供給路により洗浄乾燥槽に供給するものであれば、小型であり、加熱効率が高く電力消費量が低い洗浄乾燥装置となるし、さらに洗浄乾燥に供する蒸気を常に清浄に保つことができ、またその量を容易に調整できる。
【0019】
この場合、前記蒸気発生装置及び前記蒸気供給路は複数具備されたものとすることができる(請求項10)。
このように、蒸気発生装置及び蒸気供給路が複数具備されたものであれば、洗浄乾燥に供する蒸気がたとえ大量に必要な場合であっても、その品質を維持して容易に必要量を確保できるので好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従い、交流電源によりコイルに交流電流を流し、電磁誘導により蒸気発生槽の導電性底面に誘導電流を発生させ、この誘導電流によりジュール熱を発生させて蒸気発生槽を加熱することにより、蒸気発生槽に収容された洗浄液を加熱して蒸気を発生させる蒸気発生装置であれば、加熱のために蒸気発生槽にコイルを備えるだけでよいので、従来のヒータや熱交換器を備える場合よりも装置の小型化ができる。このとき、蒸気発生槽の導電性底部は誘導電流によるジュール熱により加熱されるので、加熱効率が高く、装置の電力消費量も少なくできる。
また、前記の蒸気発生装置の蒸気発生槽内に保持治具により対象物を保持し、蒸気発生槽において洗浄及び/又は乾燥を行なう洗浄乾燥装置であれば、小型であり、加熱効率が高く電力消費量が低い洗浄乾燥装置となる。さらに、蒸気発生装置と洗浄乾燥槽とを分離し、蒸気発生装置により発生した蒸気を蒸気供給路により洗浄乾燥槽に供給するものであれば、小型であり、加熱効率が高く電力消費量が低い洗浄乾燥装置となるのに加え、洗浄に供する蒸気を常に清浄に保つことができ、またその量を容易に調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳述する。
前述のように、従来の洗浄乾燥装置として、様々な洗浄液の加熱方法を有するものが開示されている。
しかし、本発明者らは、近年要求が高まっている洗浄乾燥装置の小型化を実現する方法を鋭意検討したところ、従来の加熱方法を用いる場合には装置の小型化が制約されること、その制約は従来の加熱装置部の小型化が制約されることに起因することを見出した。
そこで本発明者らは、洗浄乾燥装置に用いられる蒸気発生装置において、洗浄液を収容する蒸気発生槽の底部を導電性の材質とし、交流電流を流したコイルによりこの導電性底部に電磁誘導による誘導電流を発生させ、導電性底部の電気抵抗により発生するジュール熱で加熱することに想到した。このような加熱方法によれば、蒸気発生槽には加熱装置としてはコイルを備えるだけでよいので、加熱装置部を小型化できる。さらに電磁誘導により加熱するから加熱効率が高く電力消費量を少なくできる。またこのように加熱効率が高いのでコイルもより小型化できる。従って、小型化が可能であり、加熱効率が高く電力消費量が少ない蒸気発生装置が実現できる。そしてさらに、このような蒸気発生装置を用いた洗浄乾燥装置であれば、小型で加熱効率が高く電力消費量が少ない洗浄乾燥装置とできることに想到し、本発明を完成させた。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明に従う蒸気発生装置の実施形態の一例を示す図であり、(a)は概略斜視透視図であり、(b)は側面概略図である。
この蒸気発生装置10は、導電性底面1aを有する蒸気発生槽1と、導電性底面1aに誘導電流を発生させるためのコイル2と、コイル2に交流電流を流すための交流電源3とを具備するものである。蒸気発生槽1は洗浄液4を収容する。この蒸気発生装置10は、上記構成を具備することにより、交流電源3によりコイル2に交流電流を流し、導電性底面1aに誘導電流を発生させて蒸気発生槽1を加熱することにより、洗浄液4を加熱して蒸気を発生させるものである。従って装置の小型化ができ、加熱効率が高く、装置の電力消費量も少なくできる。またこのように加熱効率が高いので、加熱開始から蒸気発生までの時間を短くすることができる。例えば従来の抵抗加熱等の加熱方法を利用した場合、加熱開始から蒸気発生までに2〜5分程度掛かっていた場合でも、本発明によれば加熱開始から蒸気発生までの時間を1分以内にすることができる。
【0024】
蒸気発生槽1の導電性底部1aは電磁誘導によりジュール熱が発生する導電性材料からなるものであればとくに限定されないが、ステンレスからなるものであれば、適度のジュール熱が発生して洗浄液を適度に加熱することができ、また耐久性も高いので好ましい。蒸気発生槽1のそれ以外の部分については導電性底部1aと同一の材料からなるものとすることもできるし、異なる材料からなるものとすることもできるが、洗浄液4及びその蒸気と直接接触する蒸気発生槽1の内側表面は、重金属汚染等を防止するため、フッ素樹脂やポリプロピレン等の樹脂コートや内壁を設けるのが好ましい。また、蒸気発生槽1は例えば直方体や円筒などの形状とでき、容量は例えば2〜3リットル程度とできるが、形状、容量等は特に限定されない。
【0025】
蒸気発生槽1に収容される洗浄液4は、加熱により蒸気を発生するものであり、対象物を洗浄及び/又は乾燥できるものであれば特に限定されず、従来用いられるエタノール、トリクロロエタン等の水溶液とすることもできるが、特にIPA水溶液等のIPAからなるものであれば、対象物表面の水分が容易に洗浄液に置換され、また対象物表面に洗浄液のしみが残らないような好適な洗浄乾燥ができる。また、これらの洗浄液を混合したものであってもよい。なお、洗浄液がIPAの場合は導電性底部1aは最大150℃程度まで加熱出来る。
【0026】
コイル2は、例えば図1(b)のように導電性底部1aに密接して設置すれば加熱効率を高くできるので好ましい。その形状や材質、巻き数等は特に限定されないが、コイルが同一面内に同心円状に巻かれたものであれば、例えば円筒状に巻かれたコイルと比べて、誘導電流の発生量すなわちジュール熱の発生量を保ちながらコイルの占める厚さを薄くでき、高さがより低い小型の蒸気発生装置とできる。
【0027】
交流電源3は、コイル2に交流電流を流すことができれば特に限定されないが、周波数が高過ぎると、交流電源3からコイル2に電力を供給するためのケーブルの配線処理によっては電力が漏洩し、電送損失が増加するおそれがあるが、100kHz以下の周波数の交流電流を流すものであれば、十分に周波数が低いので電送損失が少なく、効率的に加熱を行なうことが出来る。また、所望量の蒸気を迅速に得るためには、周波数は30Hz以上であることが好ましい。
【0028】
また、交流電源3は少なくとも蒸気発生槽1と分離して配置されるものであることが好ましい。交流電源3と蒸気発生槽1とが近接して配置されるものであれば、交流電源3が洗浄液の蒸気に曝されるおそれがあり、洗浄液が可燃性のものであれば十分な防爆対策を行なう必要がありそれによって装置の大型化、複雑化を招く場合もあるが、これらが分離して配置されれば装置の大型化、複雑化なしに十分な防爆対策が行なえる。
【0029】
また、蒸気発生槽1は側壁に保温手段5を備えるものであることが好ましい。この保温手段5として、例えばラバーヒータ等を用いることができるが特に限定はされない。また大きさも、側壁の一部を覆うものや全面を覆うものであってもよく、特に限定されない。また、図1のように側壁の1面のみに備えてもよいし、2〜4面あるいはそれ以上に備えてもよい。このように保温手段5により加熱保温を行なえば、コイル2に交流電流を印加することにより即座に必要とする量の蒸気を発生させることができる。このように保温手段5は洗浄液を加熱して蒸気を発生させるためのものではなく保温に用いるものであるから、電力消費量は少ないものでよいので、電力消費量を抑えつつ、即座に必要とする量の蒸気を発生させることができる。
【0030】
図2は、本発明に従う洗浄乾燥装置の実施形態の一例を示す側面概略図である。
この洗浄乾燥装置50は、導電性底面11aを有する蒸気発生槽11と、導電性底面11aに誘導電流を発生させるためのコイル12と、コイル12に交流電流を流すための交流電源13とを具備する実質的に図1と同等の蒸気発生装置20を具備するものであって、これにさらに保持治具17と冷却コイル19を具備するものである。そして、上記構成を具備することによって、蒸気発生槽11内に発生した洗浄液14の蒸気18により、保持治具17に保持された対象物16を洗浄及び/又は乾燥するものである。蒸気発生槽11が側壁に保温手段15を備えるものであれば、コイル12に交流電流を印加することにより即座に必要とする量の蒸気18を発生させることができる。蒸気18の存在する領域は点線で示す境界より下に限られ、蒸気18がそれ以上上方に拡散すると冷却コイル19により冷却されて凝結して液滴となり、図示しない回収機構により回収され、浄化して再利用される。
【0031】
このように、蒸気発生装置20の蒸気発生槽11内に保持治具17により対象物16を保持し、蒸気発生槽11において洗浄及び/又は乾燥を行なう洗浄乾燥装置50であれば、小型であり、加熱効率が高く電力消費量が低い洗浄乾燥装置となる。
【0032】
図3は、本発明に従う洗浄乾燥装置の実施形態の別の一例を示す側面概略図である。
この洗浄乾燥装置60は、導電性底面21aを有する蒸気発生槽21と、導電性底面21aに誘導電流を発生させるためのコイル22と、コイル22に交流電流を流すための交流電源23とを具備する蒸気発生装置30と、洗浄乾燥槽31と、蒸気発生装置30により発生した蒸気28を洗浄乾燥槽31に供給するための蒸気供給路32と、洗浄乾燥槽31内に対象物26を保持するための保持治具27とを具備するものである。そして、上記構成を具備することによって、蒸気発生装置30により発生した洗浄液24の蒸気28を蒸気供給路32により洗浄乾燥槽31に供給し、この供給された蒸気28により保持治具27に保持された対象物26を洗浄及び/又は乾燥するものである。蒸気発生槽21が側壁に保温手段25を備えるものであれば、コイル22に交流電流を印加することにより即座に必要とする量の蒸気28を発生させることができる。また、洗浄乾燥槽31が側壁に保温手段25を、及び/又は蒸気供給路32が上壁に保温手段25を備えるものであれば、発生した蒸気28を適度な温度に保つことができる。蒸気28の存在する領域は点線で示す境界より下に限られ、蒸気28がそれ以上上方に拡散すると冷却コイル29により冷却されて凝結して液滴となり、図示しない回収機構により回収され、浄化して再利用される。又、洗浄乾燥槽31の底部に溜まった洗浄液も同様に処理される。
【0033】
このように蒸気発生装置30と洗浄乾燥槽31とを分離し、蒸気発生装置30により発生した蒸気28を蒸気供給路32により洗浄乾燥槽31に供給するものであれば、小型であり、加熱効率が高く電力消費量が低い洗浄乾燥装置となる。しかも、上記のような分離構造により、蒸気発生槽内において洗浄に使用されて徐々に汚染された蒸気が凝結、再蒸発して対象物を汚染するということがなく、常に清浄な蒸気を蒸気供給路により洗浄乾燥槽に供給することができ、洗浄乾燥に供する蒸気を清浄に保つことができ、またその量を容易に調整できる。蒸気発生槽21の大きさは、必要な蒸気量に応じて適宜選択することができる。
【0034】
また、この場合、蒸気発生装置及び蒸気供給路は洗浄乾燥槽1つに対して1つ具備されたものであってもよいが、蒸気発生装置及び蒸気供給路が複数具備されたものであれば、供給する蒸気の品質や量をさらに容易に調整でき好ましい。特に大型の対象物や一度に多数の対象物を洗浄乾燥する場合、大量の蒸気が必要とされるが、蒸気発生装置及び蒸気供給路が複数具備されたものであれば、大量の蒸気を洗浄乾燥槽に容易に供給でき、小型の洗浄乾燥装置であっても、大型のあるいは多数の対象物を十分に洗浄乾燥できる。
【0035】
図4は、このような本発明に従う蒸気発生装置及び蒸気供給路が複数具備された洗浄乾燥装置の実施形態の一例を示す平面概略図である。この洗浄乾燥装置70は、蒸気発生装置40a、40b、40c、40dと蒸気供給路42a、42b、42c、42dとを洗浄乾燥槽41の側壁の4面にそれぞれ配置したものであり、大量の清浄な蒸気を洗浄乾燥槽41に供給するのに好適なものとなる。なお、蒸気発生装置は4面に限らず、2面又は3面に配置するものでもよい。
【0036】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的思想に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に従う蒸気発生装置の実施形態の一例を示す図であり、(a)は概略斜視透視図であり、(b)は側面概略図である。
【図2】本発明に従う洗浄乾燥装置の実施形態の一例を示す側面概略図である。
【図3】本発明に従う洗浄乾燥装置の実施形態の別の一例を示す側面概略図である。
【図4】本発明に従う蒸気発生装置及び蒸気供給路が複数具備された洗浄乾燥装置の実施形態の一例を示す平面概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1、11、21…蒸気発生槽、 1a、11a、21a…導電性底面、
2、12、22…コイル、 3、13、23…交流電源、
4、14、24…洗浄液、 5、15、25…保温手段、
10、20、30…蒸気発生装置、 16、26…対象物、 17、27…保持治具、
18、28…蒸気、 19、29…冷却コイル、
31、41…洗浄乾燥槽、 32…蒸気供給路、
40a、40b、40c、40d…蒸気発生装置、
42a、42b、42c、42d…蒸気供給路
50、60、70…洗浄乾燥装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液の蒸気を発生させる装置であって、少なくとも、導電性底面を有し前記洗浄液を収容する蒸気発生槽と、該蒸気発生槽の導電性底面に誘導電流を発生させるためのコイルと、該コイルに交流電流を流すための交流電源とを具備し、前記交流電源により前記コイルに交流電流を流し、前記導電性底面に誘導電流を発生させて前記蒸気発生槽を加熱することにより、前記洗浄液を加熱して蒸気を発生させるものであることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項2】
前記洗浄液はイソプロピルアルコールからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生装置。
【請求項3】
前記導電性底面はステンレスからなるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蒸気発生装置。
【請求項4】
前記コイルは同一面内に同心円状に巻かれたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の蒸気発生装置。
【請求項5】
前記蒸気発生槽は側壁に保温手段を備えるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の蒸気発生装置。
【請求項6】
前記交流電源は前記コイルに周波数100kHz以下の交流電流を流すものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の蒸気発生装置。
【請求項7】
前記交流電源は少なくとも前記蒸気発生槽と分離して配置されるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の蒸気発生装置。
【請求項8】
対象物の洗浄及び/又は乾燥を行なう装置であって、少なくとも、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置の蒸気発生槽内に前記対象物を保持するための保持治具とを具備し、前記蒸気発生装置により発生した蒸気により前記保持治具に保持された前記対象物を洗浄及び/又は乾燥するものであることを特徴とする洗浄乾燥装置。
【請求項9】
対象物の洗浄及び/又は乾燥を行なう装置であって、少なくとも、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の蒸気発生装置と、洗浄乾燥槽と、前記蒸気発生装置により発生した蒸気を前記洗浄乾燥槽に供給するための蒸気供給路と、前記洗浄乾燥槽内に前記対象物を保持するための保持治具とを具備し、前記蒸気発生装置により発生した蒸気を前記蒸気供給路により前記洗浄乾燥槽に供給し、該供給された蒸気により前記保持治具に保持された前記対象物を洗浄及び/又は乾燥するものであることを特徴とする洗浄乾燥装置。
【請求項10】
請求項9に記載の洗浄乾燥装置において、前記蒸気発生装置及び前記蒸気供給路は複数具備されたものであることを特徴とする洗浄乾燥装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−130451(P2006−130451A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324233(P2004−324233)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(504289738)株式会社ピーティーシーエンジニアリング (7)
【Fターム(参考)】