説明

蒸煮冷却システムおよび蒸煮冷却機

【課題】 簡易な構成で、品質を安定させて、蒸煮後の冷却を行うことのできる蒸煮冷却システムの提供。
【解決手段】 蒸煮冷却機1と、冷却装置2とからなる。蒸煮冷却機1は、食材16が収容される調理容器4と、この調理容器内へ蒸気供給する給蒸手段13と、調理容器内を減圧する減圧手段24と、減圧された調理容器内を復圧する復圧手段33とを有し、食材を加熱調理後、第一設定温度まで真空冷却してその温度を保持する。冷却装置2は、真空冷却機などからなり、蒸煮冷却機1にて第一設定温度まで冷却された食材を、第二設定温度までさらに冷却する。冷却装置2は、蒸煮冷却機1の複数の調理容器4からの食材をまとめて冷却してもよい。また、調理容器4からの食材は小分けされて、複数の冷却装置2にて冷却してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食材を加熱調理した後に真空冷却する蒸煮冷却機と、この蒸煮冷却機にて粗熱取りされた食材をさらに冷却する冷却装置とを備える蒸煮冷却システムおよびこのシステムに使用される蒸煮冷却機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食材を収容した調理容器内に蒸気を供給することで、食材を蒸し煮(蒸煮)して調理すると共に、加熱調理後には調理容器内を減圧することで真空冷却を図る蒸煮冷却機が知られている。
【特許文献1】特許第2781373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、蒸煮冷却機のみで、加熱調理後の所望温度までの冷却を行うには負担が大きい場合がある。そのような場合に備えて、蒸煮冷却機の減圧手段を高能力なものにすることも考えられるが、設置スペースやコストなどにおいて課題が残る。
【0004】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、簡易な構成で、品質を安定させて、蒸煮後の冷却を行うことのできる蒸煮冷却システムおよびこのシステムに使用される蒸煮冷却機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、食材が収容される調理容器と、この調理容器内へ蒸気供給する給蒸手段と、前記調理容器内を減圧する減圧手段と、減圧された前記調理容器内を復圧する復圧手段とを有し、前記食材を前記給蒸手段による加熱後、前記減圧手段により真空冷却する蒸煮冷却機と、この蒸煮冷却機にて冷却された食材を、さらに冷却する冷却装置とを備えることを特徴とする蒸煮冷却システムである。ここで、食材は、蒸煮冷却機にて加熱調理後、第一設定温度まで真空冷却され、その後、冷却装置にて第二設定温度までさらに冷却するよう構成することもできる。その場合、前記第一設定温度および前記第二設定温度は、それぞれ設定された特定温度でもよいし、ある程度の幅のある温度域でもよい。また、これら温度は、前記調理容器などの処理槽内の圧力に換算して制御することもできる。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、食材は、蒸煮冷却機にて加熱調理後に冷却された後、さらに冷却装置にて冷却される。従って、蒸煮冷却機にて粗熱を取った後、冷却装置にてさらに冷却することができる。しかも、その際、蒸煮冷却機では第一設定温度まで真空冷却するよう構成すれば、冷却装置へ搬入する食材の温度を一定させ、食材の品質を安定させることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記蒸煮冷却機により実現可能な冷却温度を、前記冷却装置により実現可能な冷却温度よりも高くしたことを特徴とする請求項1に記載の蒸煮冷却システムである。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、蒸煮冷却機と冷却装置との冷却能力の差を利用して、加熱調理後の食材の冷却を効率よく行うことができる。また、蒸煮冷却機の冷却能力を小さなものとすることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記蒸煮冷却機が複数の前記調理容器を備えるか、または前記蒸煮冷却機を複数備え、前記冷却装置は、複数の前記調理容器からの食材をまとめて冷却することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸煮冷却システムである。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、蒸煮冷却機の複数の調理容器からの食材をまとめて冷却装置にて冷却することができる。従って、蒸煮冷却機の(一の調理容器の)処理量が冷却装置の処理量に比べて小さい場合において、蒸煮冷却機からの食材の量が冷却装置の効率的な処理量に達するまで、蒸煮冷却機の複数回の処理を待つ必要がない。つまり、蒸煮冷却機の複数の調理容器の処理完了を合わせておくことで、それら複数の調理容器の食材を合わせて冷却装置にて冷却することができ、効率よく品質も安定させて処理できる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記調理容器からの食材が小分けされて、複数の前記冷却装置にて冷却されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸煮冷却システムである。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、蒸煮冷却機の調理容器からの食材を小分けして冷却装置にて冷却することができる。従って、蒸煮冷却機の処理量が冷却装置の処理量に比べて大きい場合において、蒸煮冷却機からの食材を小分けして一の冷却装置にて繰り返し処理していたのでは、冷却装置への搬入までの待ち時間の差により食材の品質がばらつき、また全体の処理時間も長くなるが、蒸煮冷却機の食材を小分けして複数の冷却装置にて冷却することで、そのような不都合を回避できる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記蒸煮冷却機は、前記調理容器内を前記減圧手段により第一設定温度まで真空冷却した後その第一設定温度にて保持することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸煮冷却システムである。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、蒸煮冷却機は、食材を第一設定温度まで冷却した後、その温度を維持できる。従って、蒸煮冷却機から冷却装置へ搬入するまでの待ち時間差による品質の差を一層なくすことができる。この際、蒸煮冷却機の一の調理容器の処理量が冷却装置の処理量に比べて小さい場合であって、蒸煮冷却機からの食材の量が冷却装置の効率的な処理量に達するまで、蒸煮冷却機の複数の調理容器の処理を待つ場合においても、その各処理が仮に時間的に前後しても、食材の品質を安定させることができる。逆に、蒸煮冷却機の処理量が冷却装置の処理量に比べて大きい場合において、蒸煮冷却機からの食材を小分けして一の冷却装置にて繰り返し冷却しても品質が安定する。さらに、減圧下で保持することで、真空含浸効果で煮汁の染み込みなどを促進することもできる。
【0015】
さらに、請求項6に記載の発明は、食材が収容される調理容器と、この調理容器内へ蒸気供給する給蒸手段と、前記調理容器内を減圧する減圧手段と、減圧された前記調理容器内を復圧する復圧手段とを有し、前記減圧手段の真空冷却能力が、前記食材を前記給蒸手段による加熱後に、50〜70℃まで真空冷却する能力とされたことを特徴とする蒸煮冷却機である。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、50℃以上の温度とすることで、雑菌増殖のおそれがなく、70℃以下の温度とすることで、調理が進んでしまうのを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、簡易な構成で、品質を安定させて、蒸煮後の所望温度までの冷却を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の蒸煮冷却システムは、食材を加熱調理後、真空冷却により粗熱取りをなす蒸煮冷却機と、この蒸煮冷却機からの食材をさらに冷却する冷却装置とを備えている。冷却装置は、真空冷却機またはブラストチラーなどから構成される。
【0019】
蒸煮冷却機は、密閉可能な調理容器内に食材を収容し、調理容器内へ蒸気を供給(給蒸)して食材を加熱調理し、加熱調理後には調理容器内を減圧することで食材を真空冷却する。この蒸煮冷却機は、食材を収容する調理容器、調理容器内へ蒸気供給する給蒸手段、調理容器内を減圧する減圧手段、減圧された調理容器内を復圧する復圧手段、調理容器内に溜まった凝縮水などを排出する排水手段、およびこれら各手段を制御する制御手段などを備えて構成される。
【0020】
食材は、蒸煮冷却機にて加熱調理後、第一設定温度まで真空冷却されて粗熱取りがなされた後、好ましくはその第一設定温度にて保持される。そして、第一設定温度まで粗熱取りがなされた食材は、冷却装置に移されて第二設定温度までさらに冷却される。たとえば、冷却装置が真空冷却機の場合には、食材が収容された冷却槽内を減圧して、食材の真空冷却が図られる。
【0021】
第一設定温度は、特に限定されず適宜に設定されるが、低過ぎると細菌増殖が起こる可能性があるし、高過ぎると調理反応が進んでしまうことを考慮して、細菌増殖が起こらず且つ調理反応が進みにくい温度に設定される。具体的には、本実施形態では約50〜70℃程度で選択された温度に設定される。そして、第二設定温度は、第一設定温度よりも低い温度に設定される。ここで、第一設定温度および第二設定温度は、それぞれ設定された特定温度でもよいし、ある程度の幅のある温度域でもよい。
【0022】
ところで、蒸煮冷却機と冷却装置の処理能力が異なる場合を考慮して、蒸煮冷却機の調理容器または冷却装置の冷却槽を複数用意するのがよい。蒸煮冷却機の調理容器を複数用意するには、一台の蒸煮冷却機に複数の調理容器を備えてもよいし、または蒸煮冷却機自体を複数用意してもよい。いずれの場合も、一または複数の調理容器ごとに、運転の有無の切り替えが可能で、しかも給蒸手段による給蒸、減圧手段による減圧、復圧手段による復圧などを可能に構成する。一台の蒸煮冷却機に複数の調理容器を備える場合には、制御手段や給蒸手段などの各手段の一部または全部を、複数の調理容器で共用するよう構成することもできる。
【0023】
このようにして、蒸煮冷却機が複数の調理容器を持つ場合、蒸煮冷却機の複数の調理容器からの食材をまとめて冷却装置にて冷却することができる。仮に蒸煮冷却機の(一の調理容器の)処理量が冷却装置の処理量に比べて小さい場合には、蒸煮冷却機からの食材の量が冷却装置の効率的な処理量に達するまで、蒸煮冷却機の複数回の処理を待つことになるが、本実施形態によればそのような不都合はない。つまり、冷却装置の処理量に合わせて、所望数の調理容器を作動させればよい。
【0024】
逆に、蒸煮冷却機の調理容器からの食材を小分けして、一または複数の冷却装置(の冷却槽)にて冷却するようにしてもよい。蒸煮冷却機の食材を小分けして、複数の冷却槽に移して冷却することで、処理能力の向上と、品質の安定化を図ることができる。また、蒸煮冷却機の食材を小分けして冷却装置にて繰り返し冷却処理することもでき、その場合でも蒸煮冷却機において食材が第一設定温度に保持されることで、冷却装置への搬入までの待ち時間に差が出ても温度は一定し、食材の品質も安定させることができる。
【0025】
このようにして、蒸煮冷却機にて粗熱取りをなした後、冷却装置にて一層の冷却を図ることができる。そして、その際、蒸煮冷却機の食材をまとめて或いは小分けして冷却装置にて冷却することで、冷却装置へ搬入するまでの時間差をなくし、食材の品質を安定させることができる。また、蒸煮冷却機にて第一設定温度に維持することで、冷却装置搬入時の温度を一定にし、食材の品質を安定させることができる。しかも、蒸煮冷却機においては、減圧下で食材を第一設定温度に保持するので、真空含浸効果で煮汁の染み込みなどを促進することもできる。
【実施例1】
【0026】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の蒸煮冷却システムの実施例1を示す概略構成図である。この図に示すように、本実施例の蒸煮冷却システムは、食材を加熱調理後に第一設定温度まで真空冷却する蒸煮冷却機1と、この蒸煮冷却機1にて第一設定温度まで冷却された食材を第二設定温度までさらに冷却する冷却装置2とを備えて構成される。
【0027】
図2は、本実施例の蒸煮冷却機1を示す構成図である。この図に示すように、本実施例の蒸煮冷却機1は、調理鍋3を着脱可能に収容する調理容器4を備えている。この調理容器4は、容器本体5に蓋体6が開閉可能に設けられて構成される。容器本体5は、上方にのみ開口した有底円筒状とされ、その底面7は緩やかな円弧状に下方へ膨出して形成されている。また、容器本体5の上端部には、径方向外側へ延出して第一フランジ8が形成されている。
【0028】
一方、蓋体6は、容器本体5と対応した直径に形成され、下方にのみ開口した短円筒状とされ、その上面9は緩やかな円弧状に上方へ膨出して形成されている。また、蓋体6の下端部には、径方向外側へ延出して第二フランジ10が形成されている。このような蓋体6は、容器本体5に対し開閉可能に設けられる。容器本体5の上部開口を蓋体6で閉じた際には、容器本体5の第一フランジ8と蓋体6の第二フランジ10とが、パッキン11を介して重ね合わされる。これにより、調理容器4を密閉することができる。
【0029】
調理鍋3は、調理容器4よりも小さく形成され、上方にのみ開口した有底円筒状である。この調理鍋3は、ステンレスやアルミニウムなどから形成される。ところで、容器本体5内の周側面の下部には、複数の棒材12,12…が間隔を空けて平行に架け渡されて設けられている。従って、調理鍋3は、その下面をこれら棒材12,12…に保持されることで、容器本体5の底面から上方へ浮いた状態で保持される。また、調理鍋3は、容器本体5と同軸上に配置される。その状態では、調理鍋3の外周面は、容器本体5の内周面から離隔して配置される。
【0030】
ところで、調理容器4や調理鍋3は、適宜に設計されるが、本実施例の調理容器4は、第一種圧力容器の小型圧力容器規格内のものとされる。また、調理容器4や調理鍋3の大きさは、適宜に設定されるが、本実施例では、調理容器4は100リットル、調理鍋3は60リットルの容量とされている。
【0031】
調理容器4には、調理容器4内に蒸気を供給可能に、給蒸手段13が接続されている。本実施例の給蒸手段13は、一次ボイラ(不図示)と二次ボイラ(リボイラ)14とを備え、一次ボイラからの蒸気を熱源として、二次ボイラ14にて軟水15を蒸気に変え、そのようにして生成された清浄蒸気を調理容器4内へ供給する。一次ボイラは、通常の一般的なボイラから構成されるが、そのような一次ボイラによる蒸気には、配管内の錆や、防錆剤などのボイラ水処理薬品が混入するおそれが残る。ところが、調理容器4内へ供給された蒸気は、直接に食材16に接触し得るものである。そこで、二次ボイラ14にて軟水15を蒸気に変えて清浄蒸気を生成し、この清浄蒸気を調理容器4内へ供給するのである。
【0032】
具体的には、二次ボイラ14は、ステンレス製の熱交換器であり、軟水15を加熱して蒸気に変換する。軟水15を加熱するために、二次ボイラ14には、一次ボイラからの蒸気が給蒸弁17を介して供給される。このようにして一次ボイラから供給された蒸気は、二次ボイラ14にてステンレス配管内へ供給される軟水15を加熱し、清浄蒸気を生成する。一次ボイラからの蒸気は、二次ボイラ14にて使用後、スチームトラップ18を介して排出される。
【0033】
二次ボイラ14へ軟水15を供給するために、給蒸手段13は軟水装置19を備える。本実施例の軟水装置19は、イオン交換樹脂を使用して、供給された水を軟水15へ変換する。この軟水装置19にて作られた軟水15は給水タンク20に貯留され、この給水タンク20の軟水15が第一給水ポンプ21を介して二次ボイラ14へ供給される。
【0034】
そして、二次ボイラ14に供給された軟水15は、上述したように、一次ボイラからの蒸気にて加熱されて清浄蒸気に変換され、給蒸ライン22を介して調理容器4内へ供給される。給蒸ライン22の中途には、給蒸操作弁23が設けられている。本実施例の給蒸操作弁23は、調理容器4内への給蒸の有無と、給蒸する場合の蒸気量を調整可能な構成であり、典型的には比例制御弁から構成される。この給蒸操作弁23を調整することで、調理容器4内の圧力、ひいては温度を調整することができる。この調理容器4内の圧力調整は、給蒸操作弁23だけでなく減圧手段24を制御することによっても、行うことができる。
【0035】
調理容器4には、調理容器4内の空気を外部へ吸引して、調理容器4内を減圧する減圧手段24が接続されている。本実施例では、調理容器4に接続された減圧ライン25に、減圧操作弁26を介して真空発生装置27が接続されている。具体的には、減圧ライン25には、熱交換器28と逆止弁(不図示)を介して真空ポンプ29を設けている。
【0036】
熱交換器28には、冷却水が供給されることで、調理容器4内から吸引した空気中の蒸気を、冷却し凝縮させることができる。熱交換器28へ供給される冷却水は、使用後には貯水タンク30に貯留される。この貯水タンク30は、第二給水ポンプ31を介して洗浄ガン32などに接続されている。このようにして、熱交換器28で排熱を利用して温められた温水は、使用後の調理鍋3などの洗浄に利用することができる。
【0037】
調理容器4には、減圧手段24にて減圧された後、復圧するための復圧手段33が接続されている。本実施例の復圧手段33は、調理容器4に接続された復圧ライン34が、除菌フィルター35を介して外気と連通可能に設けられている。この復圧ライン34の中途には、復圧操作弁36が開閉可能に設けられており、この復圧操作弁36の開放により、調理容器4内は大気圧に開放可能とされている。
【0038】
調理容器4には、調理容器4内に溜まった凝縮水37などを外部へ排出するための排水手段38が接続されている。具体的には、調理容器4の底面中央に排水ライン39が接続され、この排水ライン39には排水弁40が開閉可能に設けられている。
【0039】
さらに、調理容器4には、圧力センサ41が設けられている。この圧力センサ41により、調理容器4内の圧力が検出される。但し、圧力センサ41に代えて、温度センサを利用することも可能である。圧力と温度とを換算することで、いずれのセンサでも利用できる。
【0040】
前記給蒸手段13、減圧手段24、復圧手段33、排水手段38、二次ボイラ14などは、制御手段42により制御される。この制御手段42は、それが把握する時間や前記圧力センサ41からの検出信号などに基づいて、前記各手段13,24,33,38,14を制御する制御器である。具体的には、給蒸操作弁23、減圧操作弁26、復圧操作弁36、排水弁40、圧力センサ41などは、制御器42に接続されており、この制御器42は、所定のプログラムに基づき、後述するように、調理容器4内の食材16の蒸煮とその後の真空冷却を行う。
【0041】
また、制御器42は、二次ボイラ14の圧力制御と水位制御を行う。二次ボイラ14の圧力制御は、前記ステンレス配管内に設けた二次ボイラ用圧力センサ(不図示)を用いて行う。すなわち、この二次ボイラ用圧力センサ(不図示)に基づき、二次ボイラ14にて生成される清浄蒸気の圧力を検出し、一次ボイラ(不図示)から二次ボイラ14へ蒸気供給するための給蒸弁17の開閉を操作する。また、二次ボイラ14の水位制御は、二次ボイラ14の前記ステンレス配管内の純水または軟水の水位を、水位センサ(不図示)に基づき制御して行う。
【0042】
ところで、本実施例の蒸煮冷却機1は、図1に示すように、一つの基台1Aに、補機ボックス1Bと前記調理容器4とが備えられており、一つのユニットを構成している。そして、前記補機ボックス1Bには、前記各手段の一部または全部が備えられている。本実施例では、減圧手段24、復圧手段33、排水手段38、二次ボイラ14、軟水装置19、制御器42、給水タンク20および貯水タンク30が備えられている。
【0043】
次に、本実施例の蒸煮冷却機1の使用について説明する。図3は、本実施例の蒸煮冷却機1の使用例を示すフローチャートである。本実施例の蒸煮冷却機1で調理する食材(食品でもよい)16は、特に問わないが、ここでは煮物を作る場合を例に説明する。そのために、まず調理容器4の蓋体6を開けて、調理容器4内に調理鍋3をセットする(ST1)。そして、調理鍋3に食材16を投入する(ST2)。ここでは、煮物の具材と煮汁などを調理鍋3へ投入し、その後、容器本体5に蓋体6を取り付けて調理容器4を密閉する(ST3)。
【0044】
この初期状態では、給蒸操作弁23と減圧操作弁26は閉じられ、復圧操作弁36と排水弁40は開かれている。そして、この状態から、典型的には、空気排除工程(ST4)、真空保持工程(ST5)、給蒸工程(ST6)、蒸らし工程(ST7)、および真空冷却(粗熱取り)工程(ST8)、復圧工程(ST9)が順次に行われる。但し、これらは適宜に変更可能であり、たとえば蒸らし工程(ST7)を省略することもできる。
【0045】
前記空気排除工程(ST4)では、給蒸操作弁23、復圧操作弁36、および排水弁40を閉じる一方、減圧操作弁26を開いた状態で、真空発生装置27を駆動する。これにより、調理容器4内の空気を、減圧ライン25を介して調理容器4外へ排出することができる。このような調理容器4内からの空気排除は、圧力センサ41を利用することで、設定圧力まで行ってもよいし、あるいは設定時間だけ行うようにしてもよい。この空気排除工程は、給蒸操作弁23を開いた状態で給蒸して行うこともできる。
【0046】
このような減圧後、さらに減圧操作弁26も閉じて、真空保持工程(ST5)が設定時間だけ行われる。食材16を減圧状態に保持することで、真空含浸効果により、だし汁や煮崩れ防止剤などを具材に円滑で確実に浸透させることができる。特に、煮崩れ防止剤は、具材が煮える前に浸透させるべきものであるから、この真空保持工程(ST5)を行うことは有効である。
【0047】
真空保持後の給蒸工程(ST6)では、減圧操作弁26、復圧操作弁36、および排水弁40を閉じた状態で、給蒸操作弁23を開いて、調理容器4内へ蒸気を供給する。これにより、調理容器4内の調理鍋3に収容された食材16を加熱調理することができる。この際、上述したように、調理容器4内へ供給される蒸気は、二次ボイラ14にて軟水15から生成された清浄蒸気である。従って、安全で安心の加熱調理を実現することができる。また、調理鍋3の全周囲に清浄蒸気を行き渡らせることで、短時間での加熱料理がなされる。
【0048】
蒸煮のための給蒸工程(ST6)では、給蒸により調理容器4内の圧力を調整することで、調理容器4内の温度を調整することができる。本実施例では、60℃から130℃の範囲にて、自由な温度に設定して加熱調理を可能としている。この際、たとえば、段階的に温度を上げるなどの操作も可能である。このようにして調理容器4の圧力を調整することで、飽和蒸気温度が調整される。これにより、食材温度が調理容器4内の飽和蒸気温度より高くなることがなく、焦げ付きの少ない調理が可能である。また、沸騰が防止されると共に、空気排除工程(ST4)や真空保持工程(ST5)にて食材16内の溶存気体を予め抜いていることもあって、加熱時の吹きこぼれも防止することができる。
【0049】
設定時間の蒸煮後、前記給蒸操作弁23も閉じて、設定時間だけ蒸らし工程(ST7)が行われる。但し、上述したように、この蒸らし工程(ST7)は省略される場合もある。
【0050】
その後の真空冷却工程(ST8)では、給蒸操作弁23、復圧操作弁36、および排水弁40を閉じる一方、減圧操作弁26を開いた状態で、真空発生装置27を駆動する。これにより、調理容器4内の空気を、減圧ライン25を介して調理容器4外へ排出し、調理容器4内を真空冷却することができる。この際、熱交換器28に冷却水を供給することで、調理容器4内から吸引された空気中の蒸気は、熱交換器28にて冷却され凝縮される。冷却水は、熱交換器28にて温められることになり、その温められた水43は貯水タンク30に貯められる。
【0051】
本実施例では、蒸煮冷却機1の減圧手段24の能力を考慮して、前記真空冷却工程(ST8)では、第一設定温度まで冷却されることで粗熱取りのみがなされ、その後、真空冷却機などの冷却装置2にて、第二設定温度まで本格的に冷却がなされる。また、本実施例では、真空冷却工程(ST8)にて第一設定温度まで冷却された食材16は、その第一設定温度にて保持可能とされる。これは、蒸煮冷却機1と冷却装置2との処理量の差に基づき、蒸煮冷却後の食材16が冷却装置2に搬入されるまでの待ち時間差により、品質に差が出るのを防止するためである。また、減圧下で保持することは、真空含浸効果により、具材への煮汁の染み込みを良くする効果もある。
【0052】
前記第一設定温度における保持は、一定時間ごとに減圧手段24を駆動または停止する動作を繰り返してもよいし、或いは調理容器4内の圧力(つまり温度)をセンサ41で計測して、所定の上限圧力まで上昇した場合に、減圧手段24を駆動して所定の下限圧力まで減圧して放置し、再び前記上限圧力まで達したら前記下限圧力まで減圧するという動作を繰り返してもよい。或いは、復圧手段33を作動させて調理容器4内へ空気導入しながら、連続的に減圧手段24を駆動させることで、調理容器4内の圧力を所定圧力に保持するようにしてもよい。
【0053】
真空冷却工程(ST8)にてどの程度まで冷却して保持するかは、適宜に設定されるが、本実施例では、第一設定温度は50℃から70℃までの範囲で設定される。これは、50℃未満の温度では雑菌増殖のおそれが出てくる反面、70℃を超えると調理が進んでしまうことを考慮したものである。
【0054】
ところで、真空冷却時には、調理鍋3の底に触れる程度の水が、調理容器4の底部にあるのが好ましい。この場合、その水の蒸発時の気化熱により、調理鍋3内の食材16を効果的で均一に冷却することができる。この水は、調理容器4内に溜まる凝縮水37を利用してもよいし、この凝縮水37に代えてまたはそれに加えて、外部から給水してもよい。たとえば、図2において点線で示すように、給水弁44を介して給水ライン45を調理容器4に接続しておき、真空冷却工程(ST8)の直前に、排水弁40を一旦開けて凝縮水37を排水した後、排水弁40を閉じて前記給水弁44を開き、調理容器4内に所望量の水を供給するようにしてもよい。この場合、その給水量は、給水ライン45に設けた流量計(不図示)により把握することができる。
【0055】
以上のようにして、蒸煮後に粗熱取りがなされた後、所望時には復圧手段33を作動させて、調理容器4内を大気圧まで復圧する。つまり、復圧操作弁36を開ければよい。その後、蓋体が取り外され(ST9)、食材16および調理鍋3が調理容器4から取り出される(ST10,ST11)。取り出された食材16は、図1に示すように、ホテルパン46などに移されて、ワゴン47などを介して冷却装置2の処理槽48に搬入され、さらに冷却装置2にて最終的な所望温度まで冷却される。
【0056】
この冷却装置2としては、ブラストチラーなどでもよいが、本実施例では真空冷却機が使用される。この真空冷却機2は、従来公知の構成であり、密閉可能な処理槽48と、この処理槽48内を減圧する真空ポンプやエゼクタなどを備え、蒸煮冷却機1の減圧手段24により実現されるよりも低い温度に真空冷却する機能を有する減圧機構(不図示)、および減圧された処理槽48内を復圧する復圧機構(不図示)などを備えて構成される。
【0057】
一方、蒸煮冷却機1においては、前記復圧操作弁36を開いた後、さらに排水弁40も開いて、調理容器4内の水が排水され、取り出された調理鍋3に代えて、別の調理鍋3を新たにセットすることで、直ちに次の調理に移ることができる。そして、取り出された使用後の調理鍋3は、洗浄される(ST12)。この洗浄には、貯水タンク30に貯められた温水43を利用でき、排熱を有効活用することができる。
【0058】
ところで、前記初期状態(ST3)、真空保持工程(ST5)、復圧工程および最後の排水工程においては、前記実施例では減圧操作弁26は閉じているが、この減圧操作弁26は開いていてもよい。また、給蒸工程(ST6)において、排水弁40を時々開くように制御してもよい。さらに、真空冷却工程(ST8)において、調理容器4内に溜めておく水の量も適宜に変更可能である。特に、本実施例では、真空冷却工程(ST8)における目標温度は、せいぜい50℃までの粗熱取りであるため、外部から給水された水の温度が目標温度以下であれば、食材冷却の阻害要因となることはない。また、上記制御において、各工程における設定圧力または温度は、特定の圧力または温度に限らず、ある程度幅のある圧力域または温度域であってもよい。
【実施例2】
【0059】
図4は、蒸煮冷却機1の実施例2を示す構成図である。本実施例2の蒸煮冷却機1も、基本的には前記実施例1の蒸煮冷却機1と同様の構成である。そのため、以下においては、両者の異なる点を中心に説明する。また、実施例1と対応する箇所には、同一の符号を付して説明する。
【0060】
本実施例2においては、前記実施例1における貯水タンク30が給水タンク20と共用されている。つまり、実施例2においては、給水タンク20のみを備え、実施例1における貯水タンク30は省略している。
【0061】
そして、実施例2では、軟水装置19から軟水は、熱交換器28を通された後、給水タンク20へ貯留され、その給水タンク20の軟水15が二次ボイラ14へ供給される。従って、蒸煮冷却機1の使用に伴って出る排熱を利用して、予め熱交換器28にて軟水を予熱することができ、二次ボイラ14における軟水15からの清浄蒸気の生成を円滑で省エネルギに行うことができる。
【0062】
また、本実施例2においても、給水タンク20の軟水15は、洗浄ガン32などを介して、使用後の調理鍋3などの洗浄に利用することができる。洗浄水に軟水を利用し、しかも排熱を利用した温水であるから、洗浄力を一層高めることができる。
【0063】
この実施例2の蒸煮冷却機1においても、食材16の加熱調理後には第一設定温度まで真空冷却した後、真空冷却機などの冷却装置2に移して、第二設定温度まで真空冷却することができる。
【0064】
なお、本発明の蒸煮冷却システムは、上記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。例えば、調理鍋3に穴開き鍋を使用することで、蒸煮冷却機1において蒸し調理をすることもできる。また、上記各実施例では、冷却装置2として、真空冷却機を用いたが、ブラストチラーなど、その他の各種の冷却装置を使用してもよい。さらに、上記実施例では、調理鍋3の上面は開放したが、蒸気は通すが水は通さない透湿防水性素材の蓋を被せてもよい。
【0065】
ところで、蒸煮冷却機1にて第一設定温度まで粗熱を取った後、冷却装置2にて第二設定温度までさらに冷却する場合において、蒸煮冷却機1と冷却装置2との間で、処理可能量が互いに異なる場合がある。蒸煮冷却機1の処理量が冷却装置2の処理量よりも多ければ、蒸煮冷却により第一設定温度まで冷却された食材は、小分けされて冷却装置2にて繰り返し冷却処理されることになる。その場合でも、上述したように、蒸煮冷却機1において、食材16を第一設定温度に保持できるので、冷却装置2への搬入待ち時間差によっても食材温度が変わることはなく、品質を安定させることができる。また、このような場合、冷却装置2(またはその処理槽48)を複数用意しておけば、蒸煮冷却機1からの食材16を小分けして、一度に複数の冷却装置2(処理槽48)にて第二設定温度まで冷却することができる。
【0066】
逆に、蒸煮冷却機1の処理量が冷却装置2の処理量よりも少なければ、蒸煮冷却機1を複数用意するか、あるいは一台の蒸煮冷却機1に複数の調理容器4,4…を用意し、これら複数の調理容器4,4…からの食材をまとめて冷却装置2で冷却するのがよい。さらに、図5に示すように、複数の調理容器4,4…を備える蒸煮冷却機1を複数用意し、それら調理容器4,4…にてそれぞれ食材を加熱調理後に第一設定温度まで粗熱を取り、その後、それら食材をまとめて一または複数の冷却装置2にて第二設定温度まで冷却してもよい。
【0067】
ところで、一の蒸煮冷却機1に複数の調理容器4を備える場合には、前記制御器42、前記給水タンク20、前記二次ボイラ14、前記軟水装置19などのいずれか一以上のものを、複数の調理容器4,4…にて共用するよう構成することもできる。また、複数の調理容器4を備える蒸煮冷却機1は、冷却装置2の処理量など、食材の処理量に合わせて、所望の数の調理容器4のみを作動可能な構成とするのが好ましい。さらに、複数の調理容器4からの食材をまとめて冷却装置2へ搬入する関係から、各調理容器4における蒸煮冷却が並列的に行われるように制御するのが好ましい。但し、各調理容器4における処理が時間的に前後しても、食材は第一設定温度に維持されるので、冷却装置2への搬入時間差により品質に差が出るのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の蒸煮冷却システムの実施例1を示す概略構成図である。
【図2】実施例1の蒸煮冷却機を示す構成図である。
【図3】実施例1の蒸煮冷却機の使用例を示すフローチャートである。
【図4】実施例2の蒸煮冷却機を示す構成図である。
【図5】本発明の蒸煮冷却システムの変形例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0069】
1 蒸煮冷却機
2 冷却装置(真空冷却機など)
3 調理鍋
4 調理容器
13 給蒸手段
14 二次ボイラ(リボイラ)
16 食材
24 減圧手段
28 熱交換器
33 復圧手段
38 排水手段
42 制御手段(制御器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材(16)が収容される調理容器(4)と、この調理容器(4)内へ蒸気供給する給蒸手段(13)と、前記調理容器(4)内を減圧する減圧手段(24)と、減圧された前記調理容器(4)内を復圧する復圧手段(33)とを有し、前記食材(16)を前記給蒸手段(13)による加熱後、前記減圧手段(24)により真空冷却する蒸煮冷却機(1)と、
この蒸煮冷却機(1)にて冷却された食材(16)を、さらに冷却する冷却装置(2)と
を備えることを特徴とする蒸煮冷却システム。
【請求項2】
前記蒸煮冷却機(1)により実現可能な冷却温度を、前記冷却装置(2)により実現可能な冷却温度よりも高くした
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸煮冷却システム。
【請求項3】
前記蒸煮冷却機(1)が複数の前記調理容器(4)を備えるか、または前記蒸煮冷却機(1)を複数備え、
前記冷却装置(2)は、複数の前記調理容器(4)からの食材(16)をまとめて冷却する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸煮冷却システム。
【請求項4】
前記調理容器(4)からの食材(16)が小分けされて、複数の前記冷却装置(2)にて冷却される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸煮冷却システム。
【請求項5】
前記蒸煮冷却機(1)は、前記調理容器(4)内を前記減圧手段(24)により第一設定温度まで真空冷却した後その第一設定温度にて保持する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸煮冷却システム。
【請求項6】
食材(16)が収容される調理容器(4)と、この調理容器(4)内へ蒸気供給する給蒸手段(13)と、前記調理容器(4)内を減圧する減圧手段(24)と、減圧された前記調理容器(4)内を復圧する復圧手段(33)とを有し、
前記減圧手段(24)の真空冷却能力が、前記食材(16)を前記給蒸手段(13)による加熱後に、50〜70℃まで真空冷却する能力とされた
ことを特徴とする蒸煮冷却機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−180889(P2006−180889A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374377(P2004−374377)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】