説明

薄膜トランジスタ回路基板及び薄膜トランジスタ回路基板の検査方法、電気光学装置、電子機器

【課題】 CMOS回路において、例えば基板が収縮してしまっても、チャネルドープの打ち分け位置(境界位置)を特定できるようにした、薄膜トランジスタ回路基板と、この薄膜トランジスタ回路基板の検査方法、及び電気光学装置、電子機器を提供する。
【解決手段】 基板上にN型トランジスタ8Nを形成するNチャネル領域9Nと、P型トランジスタを形成するPチャネル領域8Pとが形成され、Nチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとの少なくとも一方の半導体層にチャネルドープがなされた薄膜トランジスタ回路基板である。Nチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとの境界部に、Nチャネル領域9N又はPチャネル領域9Pの部分的な抵抗を測定するための検査要素の集合体である検査要素グループ20が、少なくともNチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとの境界線10の両側に位置するようにして設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にNチャネル型のトランジスタを形成するNチャネル領域とPチャネル型のトランジスタを形成するPチャネル領域とを形成した薄膜トランジスタ回路基板と、この薄膜トランジスタ回路基板の検査方法、及び電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置や、有機EL(Electro-Luminescence)装置、無機EL装置に代表される発光装置等の電気光学装置では、表示の駆動を行う側の基板として、薄膜トランジスタ(TFT)からなる駆動回路を有する薄膜トランジスタ回路基板が多く用いられている。このような薄膜トランジスタ回路基板として、例えばガラス等の絶縁基板上に低温ポリシリコンプロセスを用いて、Nチャネル型のトランジスタを形成するNチャネル領域と、Pチャネル型のトランジスタを形成するPチャネル領域とを形成し、これによって相補型のトランジスタ回路(CMOS回路)を形成したものがある。
【0003】
このCMOS回路を形成した回路基板では、これを製造する際、特に高性能化を図るため、チャネルドープを行うことで各チャネルのしきい値を調整している。すなわち、チャネルドープを行わない場合には、図12のグラフにおけるP型(Pch)、N型(Nch)のトランジスタのId−Vg特性が、破線による曲線で示すように、P型(Pch)トランジスタの曲線とN型(Nch)トランジスタの曲線との間が狭くなり、それぞれの駆動を制御するのが難しくなってしまう。そこで、Pチャネル領域又はNチャネル領域の半導体層にチャネルドープを行うことにより、P型(Pch)、N型(Nch)のトランジスタのId−Vg特性を、図12中の実線による曲線に示すようにそのしきい値を矢印方向に移動させている。なお、このようなチャネルドープについては、Pチャネル領域あるいはNチャネル領域の一方のみに行うこともある。
【0004】
ところで、チャネルドープを行ってトップゲート型のTFTを形成し、CMOS回路を形成した場合、チャネルドープの打ち分けを行った境界の位置については、これを視覚的に確認することができない。したがって、特に基板としてガラスを用い、これに成膜した非晶質シリコン(アモルファスシリコン)を多結晶シリコン(ポリシリコン)に結晶化し、さらに結晶を改質する低温ポリシリコンプロセスを行った場合では、基板が収縮してしまうことにより、その打ち分け位置(境界位置)が変動し、分からなくなってしまう。
しかし、特にトランジスタ(TFT)を小型化してCMOS回路を高密度にレイアウトするためには、前記の境界位置を特定することが、工程管理の上などで必要となっている。
【0005】
パネルに関しての工程管理技術としては、例えば特許文献1に示すように、パネルにテストエレメントグループ(TEG)を入れて行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−207223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記の特許文献1では、前述したような、低温ポリシリコンプロセスで形成するCMOS回路で問題となる、チャネルドープの打ち分けについては全く言及されていない。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、低温ポリシリコンプロセスで形成するCMOS回路において、例えば基板が収縮してしまっても、チャネルドープの打ち分け位置(境界位置)を特定できるようにした、薄膜トランジスタ回路基板と、この薄膜トランジスタ回路基板の検査方法、及び電気光学装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明の薄膜トランジスタ回路基板は、基板上にNチャネル型のトランジスタを形成するNチャネル領域と、Pチャネル型のトランジスタを形成するPチャネル領域とが形成され、前記Nチャネル領域とPチャネル領域との少なくとも一方の半導体層にチャネルドープがなされた薄膜トランジスタ回路基板において、
前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界部に、該Nチャネル領域又はPチャネル領域の部分的な抵抗を測定するための検査要素の集合体である検査要素グループが、少なくとも前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界線の両側に位置するようにして設けられてなることを特徴とする薄膜トランジスタ回路基板。
【0008】
この薄膜トランジスタ回路基板によれば、Nチャネル領域とPチャネル領域との境界部に、該Nチャネル領域又はPチャネル領域の部分的な抵抗を測定するための検査要素の集合体である検査要素グループを、前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界線の両側に位置するようにして設けたので、この検査要素グループを用いてNチャネル領域又はPチャネル領域の部分的な抵抗を測定することにより、Nチャネル領域とPチャネル領域との境界を特定することが可能になる。すなわち、測定によって得られた部分的な抵抗値が大きく変化する位置を特定することで、この大きく変化した位置をNチャネル領域とPチャネル領域との境界位置として特定することができる。
【0009】
そして、このように境界位置を特定することで、特にガラス基板上に低温ポリシリコンプロセスでCMOS回路を形成した際、基板の収縮に起因して位置ずれが生じ、製造不良が生じた場合に、例えば薄膜トランジスタ回路基板を完成させる前にこれを確認することができる。また、このようなCMOS回路の形成と境界位置の特定とを薄膜トランジスタ回路基板の製造毎に繰り返し、得られた結果をデータとして蓄積することで、基板の収縮に起因する境界位置のずれの傾向を把握することができる。そして、把握した傾向を設計ルールに反映させることでCMOS回路の高密度化を可能にし、この薄膜トランジスタ回路基板を用いて製造する電気光学装置等のデバイスの、小型化、低消費電力化を図ることができる。
【0010】
また、前記薄膜トランジスタ回路基板においては、前記検査要素は、前記Nチャネル領域又はPチャネル領域の半導体層からなる被抵抗測定部と、該被抵抗測定部の両側に接続する配線パターンと、該配線パターンに接続する端子とを備えた抵抗測定要素からなり、
前記検査要素グループは、前記の各被抵抗測定部を直線状に連続して配し、かつ、この連続した直線状の被抵抗測定部の集合体を、前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界線を横切らせて配しているのが好ましい。
このようにすれば、前記抵抗測定要素における端子間の抵抗を測定して被抵抗測定部の抵抗を検出することにより、前述したようにNチャネル領域とPチャネル領域との境界を特定することが可能になる。また、前記検査要素グループの各被抵抗測定部を直線状に連続して配したので、検査要素グループ自体を比較的小面積に形成することができる。
【0011】
また、前記薄膜トランジスタ回路基板においては、前記検査要素グループは、前記Nチャネル型のトランジスタとPチャネル型のトランジスタとから構成される駆動回路の周辺部に設けられているのが好ましい。
このようにすれば、駆動回路に干渉することなく検査要素グループを形成することができ、また、駆動回路となるCMOS回路のNチャネル領域とPチャネル領域との境界部、すなわち境界線の近傍に、前記検査要素グループを容易に形成することができる。
【0012】
また、前記薄膜トランジスタ回路基板においては、前記半導体層がポリシリコンからなり、前記チャネルドープはNチャネル領域の半導体層にのみP型不純物がドーピングされたことでなされているのが好ましい。
このようにすれば、チャネルドープを一回の工程で行えるため製造を簡略することができ、また、Pチャネル領域の半導体層にのみN型不純物をドーピングするのに比べ、しき値を容易に調整することができる。
【0013】
本発明の電気光学装置は、前記の薄膜トランジスタ回路基板を備えたことを特徴としている。
この電気光学装置によれば、前述したようにNチャネル領域とPチャネル領域との境界位置が特定され、これによりCMOS回路の高密度化が図られた薄膜トランジスタ回路基板を備えているので、電気光学装置自体の小型化、低消費電力化が図られたものとなる。
【0014】
本発明の電子機器は、前記の電気光学装置を備えたことを特徴としている。
この電子機器によれば、小型化、低消費電力化が図られた電気光学装置を備えているので、この電子機器自体も小型化、低消費電力化が図られたものとなる。
【0015】
本発明の薄膜トランジスタ回路基板の検査方法は、基板上にNチャネル型のトランジスタを形成するNチャネル領域と、Pチャネル型のトランジスタを形成するPチャネル領域とが形成され、前記Nチャネル領域とPチャネル領域との少なくとも一方の半導体層にチャネルドープがなされた薄膜トランジスタ回路基板の、前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界線を特定するための検査方法であって、
前記薄膜トランジスタ回路基板の前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界部に、予め該Nチャネル領域又はPチャネル領域の部分的な抵抗を測定するための検査要素の集合体である検査要素グループを、少なくとも前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界線の両側に位置するようにして設けておき、
前記Nチャネル領域とPチャネル領域との少なくとも一方の半導体層にチャネルドープを行った後、前記検査要素グループを用いて、前記Nチャネル領域又はPチャネル領域の部分的な抵抗を測定し、部分的な領域での抵抗値が大きく変位する位置を求めてこの位置を前記境界線として特定することを特徴としている。
【0016】
この薄膜トランジスタ回路基板の検査方法によれば、検査要素グループを用いて、Nチャネル領域又はPチャネル領域の部分的な抵抗を測定し、部分的な領域での抵抗値が大きく変位する位置を求めてこの位置を前記境界線として特定するようにしたので、特にガラス基板上に低温ポリシリコンプロセスでCMOS回路を形成した際、基板の収縮に起因して位置ずれが生じ、製造不良が生じた場合に、例えば薄膜トランジスタ回路基板を完成させる前にこれを確認することができる。また、このようなCMOS回路の形成と境界位置の特定とを薄膜トランジスタ回路基板の製造毎に繰り返し、得られた結果をデータとして蓄積することで、基板の収縮に起因する境界位置のずれの傾向を把握することができる。そして、把握した傾向を設計ルールに反映させることでCMOS回路の高密度化を可能にし、この薄膜トランジスタ回路基板を用いて製造する電気光学装置等のデバイスの、小型化、低消費電力化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は本発明の薄膜トランジスタ回路基板の一実施形態を示す図であり、図1中符号1は薄膜トランジスタ回路基板である。この薄膜トランジスタ回路基板1は、例えば携帯電話装置の表示部を構成する液晶装置に用いられるもので、矩形のガラス基板2上に画素領域3を形成し、この画素領域3の周辺部、本実施形態では図1中において画素領域3の左側及び下側に、Yドライバとなる駆動回路群4Aと、Xドライバとなる駆動回路群4Bとを形成したものである。
【0018】
駆動回路群4Aは、本実施形態ではロジック系回路5aと、低電圧系回路6aと、低電圧系回路7aとを備えて構成されており、同様に駆動回路群4Bも、本実施形態ではロジック系回路5bと、低電圧系回路6bと、低電圧系回路7bとを備えて構成されている。これらロジック系回路5a、5b、低電圧系回路6a、6b、低電圧系回路7a、7bは、いずれもNチャネル型のトランジスタとPチャネル型のトランジスタとを有してなるCMOS回路によって形成されている。
【0019】
ガラス基板2上には、後述するように低温ポリシリコンプロセスによってポリシリコン層からなる半導体層が形成されている。この半導体層には、図1の要部を拡大した模式図である図2に示すように、前記CMOS回路が形成されている。すなわち、半導体層には、Nチャネル型のトランジスタ(N型トランジスタ、以下、NchTFTと記す)8Nを形成するNチャネル領域9Nと、Pチャネル型のトランジスタ(P型トランジスタ、以下、PchTFTと記す)8Pを形成するPチャネル領域9Pとが形成されており、これらNチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとは、境界線10を挟んでその両側に配設されている。
【0020】
なお、図2に示すCMOS回路は、特に縦型に配置されたものであり、このようなCMOS回路では、NchTFT8Nの半導体層13NとPchTFT8Pの半導体層13Pとの間をできるだけ狭くしたい。しかし、後述するようにトップゲート型では、特にポリシリコン(半導体層)のアイランド化やゲート電極の形成前にチャネルドープを行うのが一般的であり、チャネルドープの境界を、直接的に半導体層13Nと半導体層13Pとの間隔に合わせることができないのである。
しかも、チャネルドープの境界(境界線10)は、後述するようにシリコンの結晶化やシリコン膜の改質プロセスを経ることにより、ガラス基板2が収縮して変動する。そこで、その境界の位置を常にモニターしておくことが、CMOS回路を高密度化するうえで重要となっているのである。
【0021】
ここで、本実施形態では、特にNチャネル領域9Nにのみボロン等のP型不純物がドーピングされてチャネルドープがなされており、Pチャネル領域9Pにはチャネルドープがなされていない。したがって、前記の境界線10は、P型不純物がドーピングされたP型チャネルドープ領域(Nチャネル領域9N)と、チャネルドープがなされていないイントリンシック領域(Pチャネル領域9P)との境界を示すラインとなる。ただし、この境界線10については、視覚的には確認できないのは前述した通りである。
【0022】
そして、このような構成のもとに前記のロジック系回路5a、5b、低電圧系回路6a、6b、低電圧系回路7a、7bとなるCMOS回路は、前記境界線10を跨って形成されている。すなわち、Nチャネル領域9Nに形成されたNchTFT8Nと、Pチャネル領域9Pに形成されたPchTFT8Pとにより、CMOS11が形成されており、このCMOS11が多数形成されたことにより、前記のロジック系回路5a、5b、低電圧系回路6a、6b、低電圧系回路7a、7bとなるCMOS回路12が構成されている。
【0023】
ここで、CMOS11は、図2のA−A’線に沿う断面図である図3に示すように、ガラス基板2上に、例えば酸化珪素膜からなる保護層(図示せず)を介して前記のポリシリコンからなる半導体層13N、13Pを形成している。なお、ガラス基板2は、前述したように仮想のラインである境界線10によってNチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとに区画されている。そして、Nチャネル領域9Nにチャネルドープがなされた半導体層13Nが、Pチャネル領域9Pにチャネルドープがなされていない半導体層13Pがそれぞれ形成されている。半導体層13Nには、チャネル領域13aと、LDD部をなす低濃度ソース領域13b及び低濃度ドレイン領域13cと、これらLDD部の両側に位置する高濃度ソース領域13d及び高濃度ドレイン領域13eとが形成されている。一方、半導体層13Pには、チャネル領域13fと、これの両側に位置する高濃度ソース領域13g及び高濃度ドレイン領域13hとが形成されている。
【0024】
さらに、これら半導体層13N、13P上には、これらを覆ってゲート絶縁膜14が形成され、さらにゲート絶縁膜14上には、Al等の金属からなるゲート電極15N、15Pが形成されている。そして、ゲート絶縁膜14上には、前記ゲート電極15N、15Pを覆って層間絶縁膜16が形成され、さらにこの層間絶縁膜16には、コンタクトホール(図示せず)を介してAl等の金属からなるソース/ドレイン電極17が形成されたことにより、前述したようにNチャネル領域9NにNchTFT8Nが形成され、Pチャネル領域9PにPchTFT8Pが形成されている。このような構成によってNchTFT8NとPchTFT8PとからなるCMOS11は、境界線10を跨って形成されたものとなっている。
【0025】
また、前記薄膜トランジスタ回路基板1には、図1に示すように、前記駆動回路群4A、4Bを構成する各駆動回路、すなわちロジック系回路5a、5b、低電圧系回路6a、6b、低電圧系回路7a、7bのそれぞれの周辺部、本実施形態ではそれぞれの両側に、検査要素グループ20が形成されている。これら検査要素グループ20は、Nチャネル領域9N又はPチャネル領域9Pの部分的な抵抗を測定するための検査要素の集合体であり、いずれも、前記Nチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとの境界線10の両側に位置するようにして形成されたものである。
【0026】
すなわち、この検査要素グループ20は、図2に示すようにCMOS回路12の一方の側に配置されたもので、抵抗測定要素21からなる検査要素の集合体である。抵抗測定要素21は、被抵抗測定部22と、該被抵抗測定部22の両端部に接続する配線パターン23と、該配線パターン23に接続する端子24とを備えてなるものである。そして、特に本実施形態の検査要素グループ20では、抵抗測定要素21における各被抵抗測定部22が直線状に連続して形成配置され、かつ、この連続した直線状の被抵抗測定部22の集合体が、前記境界線10を横切って形成配置されている。なお、各被抵抗測定部22は、その幅や長さが全て同一に形成されており、したがってその抵抗の差は、該被抵抗測定部22を形成する半導体層への不純物のドープ量の差に依存するものとなっている。
【0027】
ここで、抵抗測定要素21は、図2のB−B’線に沿う断面図である図4に示すように、ガラス基板2上に、例えば前記の保護層(図示せず)を介して半導体層からなる被抵抗測定部22を形成したものである。被抵抗測定部22は、特にこの抵抗測定要素21が、図2に示したように境界線10を横切って形成されているため、Nチャネル領域9N側に位置するチャネルドープがなされた半導体層13Nと、Pチャネル領域9Pに位置するチャネルドープがなされていない半導体層13Pとが連続した状態で形成されたものとなっている。
【0028】
この被抵抗測定部22には、前述したようにその両端部に、それぞれ半導体層からなる配線パターン23が接続されている。これら配線パターン23は、後述するように前記NchTFT8Nの高濃度ソース領域13d及び高濃度ドレイン領域13eや、PchTFT8Pの高濃度ソース領域13g及び高濃度ドレイン領域13hと同様にして形成されたものである。
【0029】
また、これら被抵抗測定部22及び配線パターン23上には、これらを覆ってゲート絶縁膜14が形成され、さらにゲート絶縁膜14上には、前記ゲート電極15N、15Pと同様にAl等の金属で形成されたゲートメタルカバー25が、前記被抵抗測定部22を覆って形成されている。ここで、ゲートメタルカバー25は、図2に示したように直線状に連続して形成配置された各被抵抗測定部22の全てに対し、これを覆った状態に形成されたものとなっている。また、ゲート絶縁膜14上には、図4に示したように前記ゲートメタルカバー25を覆って層間絶縁膜16が形成され、さらにこの層間絶縁膜16には、コンタクトホール(図示せず)を介して端子24が形成されている。このような構成により、抵抗測定要素21が境界線10を跨って形成されている。
【0030】
なお、このように境界線10を跨って形成されている抵抗測定要素21は、図2から分かるように一つだけであり、他の抵抗測定要素21は、Nチャネル領域9N側、あるいはPチャネル領域9P側のいずれかに形成されたものとなっている。したがって、その被抵抗測定部22は、Nチャネル領域9N側に形成された抵抗測定要素21ではチャネルドープがなされた半導体層13Nからなっており、Pチャネル領域9Pに形成された抵抗測定要素21ではチャネルドープがなされていない半導体層13Pからなっている。
【0031】
また、前記配線パターン23及び端子24は、後述するように不純物が高濃度にドープされ、あるいはAl等の金属によって形成されているので、半導体層13Nや半導体層13Pからなる被抵抗測定部22に比べ、その抵抗が無視できる程度に格段に低くなっている。したがって、各抵抗測定要素21についてその抵抗測定を行う際、その端子24、24間の抵抗を測定すれば、得られる抵抗値はほぼ被抵抗測定部22の抵抗値を表すものとなる。
【0032】
次に、このような構成からなる抵抗測定要素21と、前記NchTFT8N及びPchTFT8PからなるCMOS11との製造方法を、図5(a)〜(e)、図6(a)〜(c)を参照して説明する。なお、図5(a)〜(e)、図6(a)〜(c)では、CMOS11の製造工程図(図2のA−A’線に沿う断面図)を左側に示し、抵抗測定要素21の製造工程図(図2のB−B’線に沿う断面図)を右側に示している。
【0033】
まず、図5(a)に示すように、ガラス基板2に対してTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとしてプラズマCVD法により厚さ200nm程度の酸化珪素膜からなる保護層(図示せず)を形成する。
次に、ガラス基板2の温度を600℃以下、たとえば350℃に設定して、プラズマCVD法により保護層の表面に厚さ40〜70nm程度のアモルファスシリコンからなる半導体層13を形成する。
【0034】
次いで、前記半導体層13に対して、予め設定したPチャネル領域をマスクで覆った状態で、Nチャネル領域の半導体層13にのみボロンを比較的低濃度でドーピングし、チャネルドープを行う。これにより、半導体層13は図5(b)に示すように、Nチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとに区画され、仮想のラインとしての境界線10が形成される。なお、このチャネルドープにあたってのマスクの位置決めについては、例えばガラス基板2の端面を基準面とすることで、ほぼ正確に行うことができる。
【0035】
次いで、前記半導体層13に対してレーザアニール(結晶化工程)を行い、半導体層13をポリシリコン膜にまで結晶化しておく。このレーザアニール法については、たとえばエキシマレーザのビーム長が400mmのラインビームを用い、その出力強度をたとえば350〜450mJ/cmとして行う。ラインビームについてはその幅方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるように、ラインビームを走査していく。
ここで、このようなレーザアニールを行うことによってガラス基板2が収縮し、これにより、チャネルドープの境界(境界線10)は変動してしまう。
【0036】
次いで、図5(c)に示すようにポリシリコン膜となった半導体層13を、公知のフォトリソグラフィ技術、エッチング技術によってパターニング(アイランド化)し、CMOS11側に島状の半導体層13N、13Pを形成する。また、これと同時に、抵抗測定要素21に島状の被抵抗測定部22とこれに連続する配線パターン23aとを形成する。なお、被抵抗測定部22は境界線10を横切るように形成されているため、半導体層13Nと半導体層13Pとが連続した状態で形成されたものとなっている。ただし、この被抵抗測定部22に連続する他の被抵抗測定部22は、Nチャネル領域9NあるいはPチャネル領域9Pのいずれかに配置されていることから、半導体層13Nあるいは半導体層13Pのいずれかによって形成されたものとなる。また、配線パターン23aは、不純物が高濃度にドープされる配線パターン23の、前駆体となるものである。
【0037】
ここで、特に半導体層13Nと半導体層13Pとの形成にあたっては、前述したようにその間隔をできるだけ狭くするのが好ましい。しかし、前述したようにこの時点ではガラス基板2の収縮に起因してチャネルドープの境界(境界線10)が変動してしまっており、このため、パターニングによる半導体層13N及び半導体層13Pの形成に際しては、境界線10を正確に特定できず、ある程度のマージンが必要になっている。
また、このようにチャネルドープの境界(境界線10)が変動してしまっていることから、検査要素グループ20側においても、必ずしも意図した抵抗測定要素21の被抵抗測定部22が境界線10を横切るとは限らない。しかし、各抵抗測定要素21の被抵抗測定部22を直線状に連続して形成しているため、これら直線状に形成された被抵抗測定部22の集合体を十分に長く形成しておくことにより、これら被抵抗測定部22は、少なくともその一部が前記Nチャネル領域側に位置し、一部がPチャネル領域側に位置するようなる。
【0038】
次いで、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとしてプラズマCVD法により厚さ100nm程度のシリコン酸化膜をガラス基板2上に成膜し、図5(d)に示すように半導体層13N、13P、さらに配線パターン23aを覆った状態にゲート絶縁膜14を形成する。
次いで、アルミニウムなどの金属膜からなる導電膜をスパッタ法により形成し、続いてこれをパターニングすることにより、図5(e)に示すように特にNチャネル領域9Nにゲート電極15Nを形成する。また、これと同時に、Pチャネル領域9Pにおいては少なくとも半導体層13Pを覆った状態に、ゲートメタルカバー15を形成する。一方、検査要素グループ20側においても、全ての被抵抗測定部22を覆った状態で図2に示したようにゲートメタルカバー25を形成する。
【0039】
次いで、図6(a)に示すように、Pチャネル領域9Pの全域を覆うとともに、前記Nチャネル領域9Nにおけるゲート電極15Nをやや広めに覆うレジストマスク30を形成する。なお、このレジストマスク30については、特に検査要素グループ20側では形成せず、したがって前記配線パターン23aは、レジストマスク30によって覆われないものとする。
【0040】
次いで、この状態で半導体層13N及び配線パターン23aに対してリンイオン(N型不純物)を約1×1015〜4×1015cm−2のドーズ量で導入する。その結果、半導体層13Nのうち、リンイオンが打ち込まれた領域は高濃度ソース領域13d及び高濃度ドレイン領域13eとなる。また、配線パターン23aは低抵抗な配線パターン23となる。
【0041】
次いで、図6(b)に示すようにレジストマスク30を除去し、その状態で、例えばリンイオン(N型不純物)を約1×1013〜4×1013cm−2のドーズ量で導入する。その結果、低濃度ソース領域13b及び低濃度ドレイン領域13cが形成され、これらの間の不純物が導入されなかった部分がチャネル領域13aとなる。
【0042】
次いで、Pチャネル領域9Pに形成したゲートメタルカバー15を、図6(c)に示すようにレジストマスク31を用いてパターニングし、ゲート電極15Pとする。なお、ここでのレジストマスク31については、Nチャネル領域9Nのほぼ全域と、検査要素グループ20側の領域のほぼ全域とを覆うようにして形成しておく。
【0043】
次いで、前記レジストマスク31をそのままマスクとして利用し、半導体層13Pに対してボロンイオン(P型不純物)を1×1015〜3×1015cm−2のドーズ量で導入する。その結果、半導体層13Pには、ゲート電極15Pに対してセルフアライン的に高濃度ソース領域13g及び高濃度ドレイン領域13hが形成され、さらにこれらの間の不純物が導入されなかった部分がチャネル領域13fとなる。
【0044】
次いで、レジストマスク31を除去し、続いて、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとしてプラズマCVD法により、図3、図4に示したように厚さ200〜700nm程度のシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜16を、前記ゲート15N、15P、ゲートメタルカバー25を覆った状態に形成する。
【0045】
次いで、層間絶縁膜16の表面にレジストマスク(図示せず)を形成し、さらにこれを用いて層間絶縁膜16にエッチングすることにより、前記Nチャネル領域9Nにおける高濃度ソース領域13d及び高濃度ドレイン領域13e、Pチャネル領域9Pにおける高濃度ソース領域13g及び高濃度ドレイン領域13h、さらに検査要素グループ20側における配線パターン23、23に通じるコンタクトホール(図示せず)をそれぞれ形成する。
【0046】
次いで、アルミニウム等の金属からなる導電膜(図示せず)を、前記コンタクトホール内を埋め込んだ状態に形成し、さらにこれをパターニングすることにより、図3に示したようにソース/ドレイン電極17を形成するとともに、図4に示したように端子24を形成する。これにより、CMOS回路の形成領域においては、図3に示したようにNchTFT8NとPchTFT8PとからなるCMOS11を形成することができ、検査要素グループ20の形成領域においては、図4に示したように抵抗測定要素21を形成することができる。
【0047】
なお、ここではCMOS11と抵抗測定要素21とについてのみ着目し、その製造方法を説明したが、これらの製造工程とは別に、あるいは一部を共通化することにより、ガラス基板2上に画素領域3や駆動回路群4A、4Bにおける他の要素を製造する。これにより、本実施形態の薄膜トランジスタ回路基板1を得ることができる。
【0048】
次に、このようにして得られた薄膜トランジスタ回路基板1の検査方法、すなわち、検査要素グループ20を用いた境界線10の特定方法について説明する。
この検査は、図3及び図4に示したように、CMOS11及び検査要素グループ20を形成した段階で、実施するものとする。したがって、CMOS11及び検査要素グループ20の形成以降の製造工程については、この検査工程(境界線10の特定)の後に行うようにするのが好ましい。
【0049】
この検査では、前記検査要素グループ20の各抵抗測定要素21について、その端子間の抵抗を例えば二端子法で測定する。ここでは、まず、図2において、全ての抵抗測定要素21の各端子に、基準位置の端子(0)からの距離(単位はμm)を示す、(−3)から(+3)までの番号を付ける。そして、端子(−3)と端子(−2)との間の抵抗を測定し、この抵抗値を図7に示すようにプロットする。以下、同様にして端子(−2)と端子(−1)との間の抵抗、……端子(+2)と端子(+3)との間の抵抗を測定し、得られた抵抗値を全てプロットする。なお、端子間の抵抗の測定法については、二端子法に代えて、例えば公知の四端子法を採用することもできる。
【0050】
すると、本実施形態では、Nチャネル領域9Nにのみチャネルドープを行っており、Pチャネル領域にはチャネルドープを行っていないので、各抵抗測定要素21についても、その被抵抗測定部22が形成されている位置がNチャネル領域9NにあるかPチャネル領域にあるかにより、その抵抗値が異なる。詳しくは、被抵抗測定部22がNチャネル領域9Nにあるものでは抵抗値が低く、Pチャネル領域9Pにあるものでは抵抗値が高くなる。また、図4に示した抵抗測定要素21、すなわち図2中において端子(−1)と端子(0)との間に形成された抵抗測定要素21では、その被抵抗測定部22がNチャネル領域9NからPチャネル領域9Pにかけて設けられているので、その抵抗値は、Nチャネル領域9Nにあるものの抵抗値と、Pチャネル領域9Pにあるものの抵抗値との中間的な値となる。
【0051】
図7は、このような抵抗値の傾向を示したグラフであり、横軸の数値は前記の端子の番号(基準位置からの距離)を示し、縦軸は抵抗値を示したものである。この図7より、基準の端子(0)に対して端子(−1)よりマイナス側に遠くなる領域では、抵抗が低くなることから、Nチャネル領域9Nにあることが分かり、また、端子(0)よりプラス側に遠くなる領域では、抵抗が高くなることから、Pチャネル領域9Pにあることが分かる。また、端子(−1)と端子(0)との間は、前記領域の中間的な値となっていることから、その被抵抗測定部22がNチャネル領域9NからPチャネル領域9Pにかけて設けられていることが分かる。
したがって、端子(−1)よりマイナス側と端子(0)よりプラス側との間で部分的な抵抗値が大きく変化していることから、Nチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとの境界位置(境界線10)は、端子(−1)と端子(0)との間に位置しているものと特定することができる。
【0052】
このような薄膜トランジスタ回路基板1によれば、Nチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとの境界部に、該Nチャネル領域9N又はPチャネル領域9Pの部分的な抵抗を測定するための検査要素の集合体である検査要素グループ20を、前記Nチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとの境界線の両側に位置するようにして設けたので、この検査要素グループ20を用いてNチャネル領域9N又はPチャネル領域9Pの部分的な抵抗を測定することにより、Nチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとの境界を特定することができる。すなわち、測定によって得られた部分的な抵抗値が大きく変化する位置を特定することで、この大きく変化した位置をNチャネル領域とPチャネル領域との境界位置として特定することができる。
【0053】
したがって、このように境界位置を特定することで、ガラス基板2上に低温ポリシリコンプロセスでCMOS回路12を形成した際、基板2の収縮に起因して位置ずれが生じ、製造不良が生じた場合に、例えば薄膜トランジスタ回路基板1を完成させる前にこれを確認することができる。また、このようなCMOS回路12の形成と境界位置の特定とを薄膜トランジスタ回路基板1の製造毎に繰り返し、得られた結果をデータとして蓄積することで、基板2の収縮に起因する境界位置のずれの傾向を把握することができる。そして、把握した傾向を設計ルールに反映させることでCMOS回路12の高密度化を可能にし、この薄膜トランジスタ回路基板を用いて製造する電気光学装置等のデバイスの、小型化、低消費電力化を図ることができる。
【0054】
図8は、本発明に係る検査要素グループの他の例を示す図であり、図8中符号35は検査要素グループである。この検査要素グループ35が図2に示した検査要素グループ20と異なるところは、図2に示した検査要素グループ20が各被抵抗測定部22を直線状に連続して形成配置したのに対し、図8に示した検査要素グループ35では、各被抵抗測定部36を、Nチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとの間の境界線10に対しほぼ平行に形成した点にある。
【0055】
すなわち、図8に示した検査要素グループ35は、被抵抗測定部36と、該被抵抗測定部36の両端部に接続する配線パターン37と、該配線パターン37に接続する端子38とからなる抵抗測定要素39の集合体であって、基本的には図2に示した検査要素グループ20と同じ構成を有している。ただし、この検査要素グループ35では、各被抵抗測定部36が、前記境界線10に対しほぼ平行に形成配置され、かつ、その少なくとも一部の被抵抗測定部36が境界線10の一方の側(例えばNチャネル領域9N)に位置し、他の一部が他方の側(例えばNチャネル領域9P)に位置するよう形成配置されている。
【0056】
このような検査グループ35にあっても、各抵抗測定要素39について、その端子38、38間の抵抗を二端子法、あるいは四端子法で測定し、その結果を図7に示したグラフのようにプロットし、抵抗値が大きく変位する位置を求めることにより、境界線10の位置、すなわちNチャネル領域9NとPチャネル領域9Pとの間の境界位置を特定することができる。
【0057】
なお、前記実施形態では、検査グループ20(35)を、駆動回路群4A、5Aを構成する各駆動回路(ロジック系回路5a、5b、低電圧系回路6a、6b、低電圧系回路7a、7b)のそれぞれの周辺部に配置したが、本発明はこれに限定されることなく、他の空きスペースやパネル(基板)の外側に設けるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、Nチャネル領域9Nの半導体層13NにのみP型不純物をドーピングしてチャンルドープを行ったが、Pチャネル領域9Pの半導体層13PにのみN型不純物をドーピングしてチャンルドープを行ってもよく、Nチャネル領域9N、Pチャネル領域9Pの両方の半導体層にそれぞれ不純物をドーピングし、チャンルドープを行うようにしてもよい。
また、前記実施形態では、抵抗測定要素21もしくは39を1μmの目盛で抵抗の変化を測定できるように配置したが、その他の目盛であってもよい。
【0058】
図9は、図1に示した薄膜トランジスタ回路基板1を用いた電気光学装置の一例としての、液晶装置を示す側断面図である。
図9に示すようにこの液晶装置は、前記の薄膜トランジスタ回路基板1と、対向基板40とが平面視略矩形枠状のシール材52によって貼り合わされ、このシール材52に囲まれた領域内に液晶層50が封入された構成を備えている。シール材52内周側に沿って平面視矩形枠状の周辺見切り53が形成され、この周辺見切りの内側の領域が画素領域(図示せず)とされている。シール材52の外側の領域には、駆動回路群(図示せず)が形成されており、これら駆動回路群の周辺部には、前記の検査要素グループ20が形成されている。
【0059】
本実施形態の液晶装置は、透過型の液晶装置として構成され、薄膜トランジスタ回路基板1側に配置された光源(図示略)からの光を変調して対向基板40側から出射するようになっている。
この液晶装置によれば、前述したようにNチャネル領域とPチャネル領域との境界位置が特定され、これによりCMOS回路の高密度化が図られた薄膜トランジスタ回路基板を備えているので、液晶装置自体の小型化、低消費電力化が図られたものとなる。
【0060】
次に、前記の液晶装置を備えた投射型表示装置の例について説明する。
図10は、前記液晶装置をライトバルブとして備えた投射型表示装置の構成を示す平面図である。本投射型液晶表示装置1110は、前記実施形態の液晶装置を各々RGB用のライトバルブ100R、100G、100Bとして用いた3板式のプロジェクタとして構成されている。この液晶プロジェクタ1110では、メタルハライドランプなどの白色光源のランプユニット1112から光が出射されると、3枚のミラー1116および2枚のダイクロイックミラー1118によって、R、G、Bの3原色に対応する光成分R、G、Bに分離され(光分離手段)、対応するライトバルブ100R、100G、100B(液晶装置/液晶ライトバルブ)に各々導かれる。この際に、光成分Bは、光路が長いので、光損失を防ぐために入射レンズ1132、リレーレンズ1123、および出射レンズ1134からなるリレーレンズ系1131を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G、100Bによって各々変調された3原色に対応する光成分R、G、Bは、ダイクロイックプリズム1122(光合成手段)に3方向から入射され、再度合成された後、投射レンズ(投射光学系)1124を介してスクリーン1130などにカラー画像として拡大投影される。
この投射型表示装置にあっても、小型化、低消費電力化が図られたものとなる。
【0061】
なお、前記実施形態では、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したが、本発明はこれに限定されることなく、EL装置(有機EL装置、無機EL装置)等の発光装置や電気泳動装置、電界放出ディスプレイ(FED)など種々のものに適用可能である。ここで、本発明において電気光学装置、あるいは電気光学素子、電気光学層とは、電界により物質の屈折率が変化して光の透過率を変化させる電気光学効果を有するものの他、電気エネルギーを光学エネルギーに変換するもの等も含んで総称している。
【0062】
図11は、本発明に係る電子機器の一例を示す斜視図である。この図に示す携帯電話1300は、上記実施形態の液晶装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。
なお、本発明の電子機器としては、前記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等、各種のものを挙げることができる。
【0063】
このような電子機器にあっても、例えば前記実施形態の液晶装置を備えているので、この電子機器自体も小型化、低消費電力化が図られたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の薄膜トランジスタ回路基板の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1の要部を拡大した模式図。
【図3】図2のA−A’線に沿う断面図。
【図4】図2のB−B’線に沿う断面図。
【図5】(a)〜(e)は薄膜トランジスタ回路基板の製造工程図。
【図6】(a)〜(c)は図5に続く製造工程図。
【図7】端子の位置と抵抗値との関係を示すグラフ。
【図8】検査要素グループの他の例を示す模式図。
【図9】液晶装置の側断面図。
【図10】投射型表示装置の概略構成図。
【図11】電子機器の一例を示す斜視図。
【図12】P型、N型のトランジスタのId−Vg特性を説明するためのグラフ。
【符号の説明】
【0065】
1…薄膜トランジスタ、2…ガラス基板(基板)、4A、4B…駆動回路群、8N…N型トランジスタ、8P…P型トランジスタ、9N…Nチャネル領域、9P…Pチャネル領域、10…境界線、11…CMOS、12…CMOS回路、13、13N、13P…半導体層、20、35…検査要素グループ、21、39…抵抗測定要素、22、36…被抵抗測定部、23、37…配線パターン、24、38…端子、25…ゲートメタルカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にNチャネル型のトランジスタを形成するNチャネル領域と、Pチャネル型のトランジスタを形成するPチャネル領域とが形成され、前記Nチャネル領域とPチャネル領域との少なくとも一方の半導体層にチャネルドープがなされた薄膜トランジスタ回路基板において、
前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界部に、該Nチャネル領域又はPチャネル領域の部分的な抵抗を測定するための検査要素の集合体である検査要素グループが、少なくとも前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界線の両側に位置するようにして設けられてなることを特徴とする薄膜トランジスタ回路基板。
【請求項2】
前記検査要素は、前記Nチャネル領域又はPチャネル領域の半導体層からなる被抵抗測定部と、該被抵抗測定部の両側に接続する配線パターンと、該配線パターンに接続する端子とを備えた抵抗測定要素からなり、
前記検査要素グループは、前記の各被抵抗測定部を直線状に連続して配し、かつ、この連続した直線状の被抵抗測定部の集合体を、前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界線を横切らせて配していることを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタ回路基板。
【請求項3】
前記検査要素グループは、前記Nチャネル型のトランジスタとPチャネル型のトランジスタとから構成される駆動回路の周辺部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の薄膜トランジスタ回路基板。
【請求項4】
前記半導体層がポリシリコンからなり、前記チャネルドープはNチャネル領域の半導体層にのみP型不純物がドーピングされたことでなされていることを特徴とする請求項1〜3記載の薄膜トランジスタ回路基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタ回路基板を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項5記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
基板上にNチャネル型のトランジスタを形成するNチャネル領域と、Pチャネル型のトランジスタを形成するPチャネル領域とが形成され、前記Nチャネル領域とPチャネル領域との少なくとも一方の半導体層にチャネルドープがなされた薄膜トランジスタ回路基板の、前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界線を特定するための検査方法であって、
前記薄膜トランジスタ回路基板の前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界部に、予め該Nチャネル領域又はPチャネル領域の部分的な抵抗を測定するための検査要素の集合体である検査要素グループを、少なくとも前記Nチャネル領域とPチャネル領域との境界線の両側に位置するようにして設けておき、
前記Nチャネル領域とPチャネル領域との少なくとも一方の半導体層にチャネルドープを行った後、前記検査要素グループを用いて、前記Nチャネル領域又はPチャネル領域の部分的な抵抗を測定し、部分的な領域での抵抗値が大きく変位する位置を求めてこの位置を前記境界線として特定することを特徴とする薄膜トランジスタ回路基板の検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−41421(P2006−41421A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222994(P2004−222994)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】