説明

薄膜作成装置における基板保持具上の堆積膜の剥離防止方法及び薄膜作成装置

【課題】基板保持具に堆積した膜の剥離などにより生ずるパーティクルの問題を解決する手法を提供する。
【解決手段】成膜済みの基板9を基板保持具90から回収するアンロードロックチャンバー2と、未成膜の基板9を基板保持具90に搭載するロードロックチャンバー1との間のリターン移動路上に、膜剥離防止チャンバー710が、アンロードロックチャンバー2及びロードロックチャンバー1に対して気密に接続されている。膜剥離防止チャンバー710内には、基板保持具90及び保持爪91の表面の堆積膜の上にコーティングをする膜コーティング手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、基板の表面に所定の薄膜を作成する薄膜作成装置に関するものであり、特に、そのような装置において基板を保持する基板保持具の表面に堆積した膜を除去及びコーティングすることに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板の表面に所定の薄膜を作成する薄膜作成装置は、LSI等の半導体デバイスや液晶ディスプレイ等の表示装置、ハードディスク等の情報記録ディスクの製造において盛んに使用されている。このような薄膜作成装置は、成膜を行なう成膜チャンバー内の所定位置に基板を保持するため、特定構成の基板保持具を備えている。薄膜は本来は基板のみに堆積させるべきであるが、薄膜を堆積させる粒子は基板の表面のみならず基板保持具にも付着してしまう。薄膜には応力の高い膜もあり、基板保持具に厚く堆積されていくにつれて剥離を生じ、基板処理の品質を損ねる等の問題が生じている。
【0003】
このような場合、剥離した堆積膜は、ある程度の大きさの粒子(以下「パーティクル」という。)となって飛散する。このパーティクルが基板の表面に付着すると、局所的な膜厚異常が生じる。局所的な膜厚異常は、ハードディスクのような情報記録ディスクの場合は、セクタ不良などの欠陥を生じやすい。
【0004】
近年では、基板保持具に堆積した膜が剥離する前に堆積膜を除去する方法及び装置が提案されている(特許文献1,2)。
【0005】
特許文献1は、真空の成膜チャンバー内で基板保持具により基板を保持しながら基板の表面に所定の薄膜を作成する成膜装置を開示している。当該成膜装置は、基板保持具を大気中に取り出すことなく、成膜チャンバーに気密に接続された真空チャンバー内において、基板保持具の表面の堆積膜の除去を行うことを特徴としている。
【0006】
特許文献2は、基板表面に薄膜を作成する成膜チャンバーに対して未成膜の基板を搬入する際に一時的に基板を格納するロードロックチャンバーと、成膜済みの基板を取り出す際に一時的に基板を格納するアンロードロックチャンバーとが、真空が連通するようにして気密に接続されている薄膜作成装置を開示している。当該薄膜作成装置は、さらに、基板を保持した基板保持具をロードロックチャンバー、成膜チャンバー、アンロードロックチャンバーの順に移動させる移動機構を有する。当該薄膜作成装置は、アンロードロックチャンバーにおいて基板を回収した後に基板保持具をロードロックチャンバーに戻すリターン移動路が形成されており、基板保持具の表面に堆積した膜を除去する膜除去機構を当該リターン移動路上に具備することを特徴としている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−273615
【特許文献2】特開2001−156158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年の情報記録ディスクは、記録密度向上のため、セクタ間距離が狭くなってきている。このため、僅かな膜厚異常(例えば突起の形成)でも記録エラーとなり易く、パーティクルに対する管理が一層厳しくなってきている。
【0009】
また、基板保持具を周回して成膜を行う装置においては、スループットを向上されるため、一つの処理チャンバーに滞在し処理を施す時間(タクトタイム)のさらなる短縮が要求されている。
しかし、こうしたタクトタイム短縮の要求を満たしながら、上述した従来の装置を用いて、基板保持具の表面に堆積された膜を完全に除去することは困難である。堆積膜が除去されず、基板保持具上に残されていると、この残された膜が剥離してパーティクルが発生し、製造される情報記録ディスク等の性能に悪影響を及ぼす。特に、基板保持具上にカーボン保護膜が堆積されている場合、カーボン保護膜は応力が高く剥離を起こしやすいため、このようなパーティクル発生の問題が大きくなる。
【0010】
本願の発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、基板保持具に堆積した膜の剥離などにより生じるパーティクルの問題をより効果的に解決する方法及び装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態による基板保持具に堆積した膜の剥離を防止する方法は、真空中で基板上に所定の薄膜を作成する成膜チャンバーと、基板を保持する基板保持具と、成膜チャンバーに気密に接続され、未成膜の基板を成膜チャンバーに搬入する前に当該未成膜の基板を基板保持具に搭載するロードロックチャンバーと、成膜チャンバーに気密に接続され、成膜済みの基板を搭載した基板保持具を成膜チャンバーから取り出して当該基板を基板保持具から回収するアンロードロックチャンバーと、基板保持具を移動させる移動手段と、アンロードロックチャンバーにおいて成膜済みの基板が回収された前記基板保持具をロードロックチャンバーに戻す為のリターン移動路とを有する薄膜作成装置において行われる。そして、本方法は、リターン移動路上で、基板保持具に堆積した膜をコーティング材料でコーティングする工程を含むことを特徴とする。
【0012】
上記コーティングする工程は、リターン移動路上に設けられた、アンロードロックチャンバー及びロードロックチャンバーの間に気密に接続された膜剥離防止チャンバー内において、真空状態で行われる。
【0013】
また、上記コーティングする工程は、コーティング材料のターゲットをスパッタリングすることにより、基板保持具に堆積した膜をコーティング材料でコーティングする工程を含んでもよい。
【0014】
コーティングする工程によってコーティングされる膜の厚さは、好ましくは1nm以上とすることができる。また、上記基板は、例えば情報記録ディスク用基板である。
【0015】
さらに、本発明において、基板保持具は、基板保持具本体と前記基板保持具本体の周縁に配置された保持爪とからなるように構成することができる。この場合、上記コーティングする工程は、保持爪及び基板保持具本体の表面に堆積した膜をコーティングする工程を含む。
【0016】
本発明の別の実施形態による基板保持具に堆積した膜の剥離を防止する方法は、真空中で基板上に所定の薄膜を作成する成膜チャンバーと、基板を保持する基板保持具と、成膜チャンバーに気密に接続され、未成膜の基板を成膜チャンバーに搬入する前に当該未成膜の基板を基板保持具に搭載するロードロックチャンバーと、成膜チャンバーに気密に接続され、成膜済みの基板を搭載した基板保持具を成膜チャンバーから取り出して当該基板を基板保持具から回収するアンロードロックチャンバーと、基板保持具を移動させる移動手段と、アンロードロックチャンバーにおいて成膜済みの基板が回収された基板保持具をロードロックチャンバーに戻す為のリターン移動路とを有する薄膜作成装置において行われる。そして、本方法は、上記リターン移動路上において、基板保持具に堆積した膜を除去する工程と、基板保持具に堆積した膜をコーティング材料でコーティングする工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
上記膜を除去する工程及びコーティングする工程は、リターン移動路上に設けられた、アンロードロックチャンバー及びロードロックチャンバーの間に気密に接続された膜剥離防止チャンバー内において、真空状態で行われる。
【0018】
また、上記コーティングする工程は、コーティング材料のターゲットをスパッタリングすることにより、基板保持具に堆積した膜をコーティング材料でコーティングする工程を含んでもよい。
【0019】
さらに、基板保持具は、基板保持具本体と前記基板保持具の周縁に配置された保持爪とからなるように構成することができる。この場合、膜を除去する工程及びコーティングする工程は、保持爪及び基板保持具本体の表面に堆積した膜を除去する工程、及びその後に保持爪及び基板保持具本体の表面に残った膜をコーティングする工程を含む。
【0020】
上述の各実施形態による本発明の方法において、コーティング材料は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Al,Ga,Inを含むグループから選択することができる。コーティングする工程によってコーティングされる膜の厚さは、好ましくは1nm以上とすることができる。また、上記基板は、例えば情報記録ディスク用基板である。
【0021】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態による薄膜作成装置は、真空中で基板上に所定の薄膜を作成する成膜チャンバーと、基板を保持する基板保持具と、成膜チャンバーに気密に接続され、未成膜の基板を成膜チャンバーに搬入する前に当該未成膜の基板を基板保持具に搭載するロードロックチャンバーと、成膜チャンバーに気密に接続され、成膜済みの基板を搭載した基板保持具を成膜チャンバーから取り出して当該基板を基板保持具から回収するアンロードロックチャンバーと、基板保持具を移動させる移動手段と、アンロードロックチャンバーにおいて成膜済みの基板が回収された基板保持具をロードロックチャンバーに戻す為のリターン移動路とを具備する。そして、上記移動手段が、基板を搭載した基板保持具をロードロックチャンバー、成膜チャンバー及びアンロードロックチャンバーの順に移動させ、リターン移動路上において、基板保持具に堆積した膜をコーティング材料でコーティングする膜コーティング手段が設けられていることを特徴とする。
【0022】
膜コーティング手段を有した膜剥離防止チャンバーがリターン移動路上に設けられていてもよい。この構成において、基板保持具に堆積した膜のコーティングは真空中で行なえるようになっており、膜剥離防止チャンバーは、アンロードロックチャンバー及びロードロックチャンバーの間に気密に接続される。
【0023】
また、膜コーティング手段は、コーティング材料のターゲットをスパッタリングすることにより、基板保持具に堆積した膜をコーティング材料でコーティングを行なうように構成される。
【0024】
上記基板保持具は、基板保持具本体と基板保持具本体の周縁に配置された保持爪とからなるように構成することができる。この場合、膜コーティング手段は、保持爪及び基板保持具本体の表面に堆積した膜をコーティングする。
【0025】
本発明の別の実施形態による薄膜作成装置は、真空中で基板上に所定の薄膜を作成する成膜チャンバーと、基板を保持する基板保持具と、成膜チャンバーに気密に接続され、未成膜の基板を成膜チャンバーに搬入する前に当該未成膜の基板を基板保持具に搭載するロードロックチャンバーと、成膜チャンバーに気密に接続され、成膜済みの基板を搭載した基板保持具を成膜チャンバーから取り出して当該基板を基板保持具から回収するアンロードロックチャンバーと、基板保持具を移動させる移動手段と、アンロードロックチャンバーにおいて成膜済みの基板が回収された基板保持具をロードロックチャンバーに戻す為のリターン移動路とを具備するように構成される。この薄膜作成装置は、上記移動手段が、基板を搭載した基板保持具をロードロックチャンバー、成膜チャンバー及びアンロードロックチャンバーの順に移動させること、並びに、リターン移動路上に、基板保持具に堆積した膜を除去する膜除去手段と、基板保持具上に残った膜をコーティング材料でコーティングする膜コーティング手段とが設けられていることを特徴とする。
【0026】
膜除去手段と膜コーティング手段とを有する膜剥離防止チャンバーがリターン移動路上に設けられてもよい。この構成において、基板保持具に堆積した膜の除去及び基板保持具上に残った膜に対する膜コーティングが真空中で行なえるようになっており、膜剥離防止チャンバーは、アンロードロックチャンバー及びロードロックチャンバーの間に気密に接続される。
【0027】
また、膜コーティング手段は、コーティング材料のターゲットをスパッタリングすることにより、基板保持具に堆積した膜をコーティング材料でコーティングするように構成される。
【0028】
さらに、基板保持具は、基板保持具本体と基板保持具本体の周縁に配置された保持爪とからなるように構成することができる。この構成において、膜除去手段及び膜コーティング手段は、保持爪及び基板保持具本体の表面に堆積した膜を除去し、その後に保持爪及び基板保持具本体の表面に残った膜をコーティングする。
【0029】
上述の各実施形態による薄膜作成装置において、コーティング材料は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Al,Ga,Inを含むグループから選択することができる。
【0030】
膜コーティング手段によってコーティングされる膜の厚さは、好ましくは1nm以上とすることができる。また、上記基板は、例えば情報記録ディスク用基板である。
【0031】
本発明によれば、基板保持具上に堆積した膜(特に、応力が高く剥離を起こしやすいカーボン保護膜)を除去し、さらにその上から密着性が良く剥離を起こしにくい膜によってコーティングをすることができる。これにより、基板保持具上に堆積した膜の剥離に起因したパーティクル発生などの問題を解決することが出来る。
【0032】
また、膜除去手段及び膜コーティング手段が、アンロードロックチャンバーからロードロックチャンバーへのリターン移動路上において、真空が連通するようにして気密に接続されているため、基板保持具を大気側に取り出すことなく、剥離を起こしやすいカーボン保護膜などの堆積膜を基板保持具から除去できる。さらに、当該堆積膜が基板保持具上にわずかに残ったとしても、密着性が良く且つ剥離を起こしにくい膜にてその残った膜の上からコーティングをすることができる。したがって、基板保持具を介して大気中の汚染物質が装置内に持ち込まれることは無い。このため、基板や作成される薄膜の汚染が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。特に、本願発明を情報記録ディスク製造用の薄膜作成装置に適用した例につき詳細に説明する。しかし、本願発明はこのような実施形態のみに限定されるものではなく、その他多様な用途の薄膜作成装置にも適用することができる。
【0034】
図1は本願発明の第1の実施形態に係る薄膜作成装置の概略構成を示す平面図である。本実施形態の装置では、複数の真空チャンバー1、2、4、31−34、50−54及び500が方形の輪郭に沿って直列的に配置されている。各真空チャンバーは、専用または兼用の排気系によって排気される真空容器である。各真空チャンバーの境界部にはゲートバルブ10が配置されている。基板9は、基板保持具90に保持されて搬送されるようになっている。複数の直列的に配置された真空チャンバーに沿って方形の移動路80が設置されており、この移動路80に沿って基板保持具90を移動させる移動手段が設けられている。基板保持具90は基板9を保持したままこの移動手段により各チャンバー内を搬送されるようになっている。
【0035】
複数の真空チャンバーのうち、方形の一辺に配置された二つの真空チャンバーが、基板保持具90への基板9の搭載を行なうロードロックチャンバー1及び基板保持具90からの基板9の回収を行なうアンロードロックチャンバー2になっている。尚、方形の移動路80のうち、ロードロックチャンバー1とアンロードロックチャンバー2との間の部分は、アンロードロックチャンバー2からロードロックチャンバー1に基板保持具90を戻すリターン移動路になっている。ロードロックチャンバー1内には、基板9を基板保持具90に搭載する搭載用ロボット11、11’が設けられている。搭載用ロボット11’は、そのアームによって基板投入用チャンバー12から複数(たとえば、50枚)の基板9を同時に保持して基板投入用ストッカー13に載置する。搭載用ロボット11は、そのアームによって基板投入用ストッカー13から基板9を2枚同時に保持して、基板保持具90に搭載するよう構成されている。また、アンロードロックチャンバー2には、搭載用ロボット11、11’と同様の構成の回収用ロボット21、21’が設けられている。回収用ロボット21は、そのアームによって基板保持具90から基板9を2枚同時に保持して基板回収用ストッカー23に載置する。回収用ロボット21’は、そのアームによって基板回収用ストッカー23から複数(例えば、50枚)の基板9を同時に保持して基板回収チャンバー22に回収するよう構成されている。なお、基板投入用ストッカー13を設けたのは、基板投入用チャンバー12内のすべての基板を基板投入用ストッカー13に載置すれば、次の基板を基板投入用チャンバー12に投入することが可能となり、生産性を向上させることができるからである。基板投回収用ストッカー23についても同様である。
【0036】
また、方形の他の三辺に配置された真空チャンバー4、31−34、50−54及び500は、基板9に各種処理を行なう真空チャンバーである。方形の角の部分の真空チャンバー31−34は、搬送される基板保持具90の向きを90度方向転換する、方向転換手段を備えた方向転換チャンバー31、32、33、34である。本実施例において、真空チャンバー500は予備チャンバー500となっている。この予備チャンバー500は、必要に応じて基板9を冷却したりするチャンバーとして構成される。この予備チャンバー500を経た後、最後の方向転換チャンバー34を経て基板9がアンロードロックチャンバー2に達するようになっている。
【0037】
図1において、基板9を保持した基板保持具90は、薄膜作成装置内を時計回りに搬送される。基板保持具90に保持された基板9が一番最初に搬送される処理用の真空チャンバーは、成膜に先だって基板9を所定温度に予備加熱するプリヒートチャンバー4である。プリヒートチャンバー4での予備加熱の後、基板9は、基板9の表面に所定の薄膜を作成する1つ又は複数の成膜チャンバー内を搬送される。本実施例においては、方形の辺に沿って直列的に配置された複数の成膜チャンバー51、52、53、54、50内が使用される。成膜チャンバー51、52,53及び54は、スパッタリングにより基板上に成膜を行うスパッタ成膜チャンバーであり、成膜チャンバー50は保護膜作成チャンバーである。
【0038】
また、膜剥離防止チャンバー710が、ロードロックチャンバー1とアンロードロックチャンバー2との間に設けられている。膜剥離防止チャンバー710もまた、薄膜を作成する成膜チャンバー51、52、53、54、50と同様、排気系(図示せず)を備えた真空チャンバーである。
【0039】
本第1実施形態の薄膜作成装置において、移動手段は、基板9を保持した基板保持具90を移動路80に沿って時計回りに移動させて基板9が順次処理されるようになっている。移動手段の例として、基板保持具90を直線的に移動させる直線移動手段等について、図2及び図3を使用して説明する。
【0040】
図2及び図3は、図1に示す装置における基板保持具90及び移動手段の構成を説明する図であり、図2はその正面外略図、図3は側断面外略図である。
【0041】
基板保持具90の構成は、基板保持具本体92と基板保持具本体92の周縁に設けられた保持爪91とからなる。保持爪91は合計で六つ設けられており、三つが一組となって一枚の基板9を保持する。このような三つの保持爪91のうち、下側に位置する保持爪91は可動保持爪となっている。即ち、この保持爪91をその弾性に逆らって押し下げるレバー93が設けられている。基板9を基板保持具90に搭載する際には、レバー93によって下側の保持爪91を押し下げ、基板9を保持具本体92の円形の開口内に位置させる。そして、レバー93を戻して下側の保持爪91をその弾性によって元の姿勢に復帰させる。この結果、基板9が三つの保持爪91によって係止され、基板保持具90によって二枚の基板9が保持された状態となる。基板保持具90から基板9を回収する場合には、これと全く逆の動作となる。また、基板保持具90は同時に二枚の基板9を保持するようになっている。本第1実施形態における基板保持具90は、図2に示すように、その下端部に磁石(以下「保持具側磁石」という。)96を多数備えている。各保持具側磁石96は、上下の面に磁極を有している。そしてこの保持具側磁石96は、図2に示すように、配列方向に沿って、交互に逆の極性をもつように配置されている。
【0042】
また、基板保持具90の下側には、隔壁83を挟んで磁気結合ローラ81が設けられている。磁気結合ローラ81は丸棒状の部材であり、図2に示すように、螺旋状に伸びる細長い磁石(以下「ローラ側磁石」という。)82を有している。このローラ側磁石82は互いに異なる磁極で二つ設けられており、二重螺旋状になっている。磁気結合ローラ81は、ローラ側磁石82が隔壁83を挟んで保持具側磁石96に向かい合うよう配置されている。隔壁83は、透磁率の高い材料で形成されており、保持具側磁石96とローラ側磁石82とは、隔壁83を通して磁気結合している。尚、隔壁83の基板保持具90側の空間は真空(各真空チャンバーの内部側)であり、磁気結合ローラ81側の空間は大気である。このような磁気結合ローラ81は、図1に示す方形の移動路80に沿って設けられている。
【0043】
また、図3に示すように、基板保持具90は、水平な回転軸の回りに回転する主プーリー84の上に載せられている。主プーリー84は、基板保持具90の移動方向に沿って多数設けられている。また、基板保持具90の下端部分には、垂直な回転軸の回りに回転する一対の副プーリー85、85が当接している。この副プーリー85、85は、基板保持具90の下端部分を両端から挟むように押さえて基板保持具90の傾きを防止している。この副プーリー85、85も基板保持具90の移動方向に多数設けられている。図3に示すように、磁気結合ローラ81には傘歯車を介して駆動棒86が連結されている。そして、駆動棒86には移動用モータ87が接続されており、駆動棒86を介して磁気結合ローラ81をその中心軸の周りに回転されるようになっている。
【0044】
磁気結合ローラ81が回転すると、図2に示す二重螺旋状のローラ側磁石82も回転する。この際、ローラ側磁石82が回転する状態は、保持具側磁石96から見ると、交互に異なる磁極の複数の磁石が一列に並んでその並び方の方向に沿って一体に直線移動しているのと同様の状態となる。従って、ローラ側磁石82に磁気結合している保持具側磁石96は、ローラ側磁石82の回転とともに直線移動し、この結果、基板保持具90が全体として直線移動することになる。この際、図3に示す主プーリー85、85は従動する。
【0045】
さて、本第1実施形態の薄膜作成装置の大きな特徴点は、基板保持具90の表面への膜コーティングを真空中で行なう膜コーティング手段を備えた膜剥離防止チャンバー710が設けられている点である。図1に示すように、膜剥離防止チャンバー710は、ロードロックチャンバー1とアンロードロックチャンバー2との間に設けられ、真空が連通するようにして気密に接続されている。ロードロックチャンバー1と膜剥離防止チャンバー710の間、及び、膜剥離防止チャンバー710とアンロードチャンバー2の間にはそれぞれゲートバルブ10が設けられている。
【0046】
本発明の第一の実施形態に係る膜剥離防止チャンバー710及び膜コーティング手段の構成について図4を使用して詳しく説明する。図4は、図1に示す装置に設けられた膜剥離防止チャンバー710の構成について説明する側断面外略図である。本発明の第一の実施形態に係る膜剥離防止チャンバー710もまた、上述した処理チャンバー等と同様に気密な真空チャンバーである。膜剥離防止チャンバー710は排気系71を有している。排気系71は、膜剥離防止チャンバー710内を1×10−6Pa程度まで排気できるように構成される。
【0047】
膜コーティング手段は、内部にプロセスガスを導入するガス導入系56と、内部の空間に被スパッタ面を露出させて設けたターゲット57と、ターゲット57にスパッタ放電用の電圧を印加するスパッタ電源58と、ターゲット57の背後に設けられた磁石機構59とを含むように構成される。本実施例では、ターゲット57の材料として、タンタル(Ta)を使用している。このほか、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などをターゲット57の材料として使用してもよい。
【0048】
排気系71は膜剥離防止チャンバー710内を1×10−6Pa程度まで排気可能である。ガス導入系56は、プロセスガスとしてアルゴン等のガスを所定の流量で導入できるように構成される。スパッタ電源58は、ターゲット57に−300V〜−500V程度の負の高電圧を印加できるよう構成される。磁石機構59はマグネトロン放電を達成するためのものであり、中心磁石591と、この中心磁石591を取り囲むリング状の周辺磁石592と、中心磁石591及び周辺磁石592をつなぐ板状のヨーク593とから構成される。尚、ターゲット57や磁石機構59は、絶縁ブロック571を介して膜剥離防止チャンバー710に固定されている。膜剥離防止チャンバー710は電気的には接地されている。
【0049】
ガス導入系56によってプロセスガスを導入しながら排気系71によって膜剥離防止チャンバー710内を所定の圧力に保ち、この状態でスパッタ電源58を動作させる。この結果、スパッタ放電が生じてターゲット57がスパッタされ、スパッタされたターゲット57の材料であるTaが基板保持具90、及び基板保持爪91に達して、基板保持具90、及び保持爪91の表面にTaのコーティング膜が作成される。尚、図4に示すように、ターゲット57、磁石機構59及びスパッタ電源58の組は、膜剥離防止チャンバー710内の基板保持具90、及び保持爪91を挟んで両側に設けてあり、基板保持具90、及び保持爪91の両側に同時にコーティング膜が作成されるようになっている。
【0050】
図4に示すように、基板保持具90は、ターゲット57の正面に位置するように配置され、基板保持具90全体をコーティングする。
【0051】
次に上記構成にかかわる膜剥離防止チャンバー710及び膜コーティング手段の動作について説明する。基板9を保持しながら成膜チャンバー51、52、53、54及び50内を搬送されて成膜に利用された基板保持具90及び保持爪91の表面には、薄膜が堆積している。また、これらの薄膜の中には応力が非常に高いカーボン保護膜も堆積され得る。本発明の薄膜作成装置によれば、アンロードロックチャンバー2において、基板保持具90から成膜済みの基板9が回収され、この基板保持具90は、基板9を保持しない状態で、移動手段により膜剥離防止チャンバー710に移動する。その後、ゲートバルブ10が閉じられる。
【0052】
膜剥離防止チャンバー710内は、排気系71によって予め所定の真空圧力まで排気され、その圧力が維持されている。ゲートバルブ10が閉じられた後、ガス導入系56によってプロセスガスを導入しながら排気系71によって排気を行ない、膜剥離防止チャンバー710内を所定の圧力に保つ。この状態でスパッタ電源58を動作させる。この結果スパッタ放電が生じてターゲット57がスパッタされ、スパッタされたターゲット57の材料であるTaが基板保持具90及び保持爪91に達して、基板保持具90、保持爪91の表面に応力の低いTa膜をコーティングする。これにより、基板保持具90及び保持爪91に付着していた応力の高い膜、特にカーボン保護膜等の膜厚がまだ薄いうちに、応力の低いTa膜によりコーティングすることができる。その結果、従来技術において問題となっていた、基板保持具90及び保持爪91からの堆積膜の剥離を抑制することができ、基板9表面へのパーティクルの付着を抑制することが出来る。
【0053】
なお、コーティングされるTa膜の厚さが1nm以上の厚さとなるように、圧力、アルゴンガス流量、成膜時間等のスパッタ条件を調整することが好ましい。コーティングされる膜の厚さを1nm以上とした場合に、堆積膜の剥離を抑制する効果が大きくなることは、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、得られた知見である。
【0054】
次に、本願発明の第2実施形態にかかる薄膜作成装置について説明する。当該薄膜作成装置の概略構成もまた図1に示されている。
【0055】
第2実施形態の薄膜作成装置の大きな特徴は、上記膜剥離防止チャンバー710に、膜除去を真空中で行なう膜除去機構と、その後膜コーティングを真空中で行なう膜コーティング機構とが併設されており、この膜除去機構及びコーティング機構を備えた膜剥離防止チャンバー720が設けられている点である。
【0056】
膜除去手段及びコーティング手段を備えた本発明の第二実施形態に係る膜剥離防止チャンバー720、膜除去手段及びコーティング手段の構成について図5を用いて詳しく説明する。図5は図1に示す装置に設けられた膜膜剥離防止チャンバー720の構成について説明する側断面概略図である。膜剥離防止チャンバー720も、上述した膜剥離防止チャンバー710等と同様に気密な真空チャンバーである。膜剥離防止チャンバー720は排気系701を有している。排気系701は、膜剥離防止チャンバー720内を1×10−6Pa程度まで排気できるようになっている。
【0057】
膜除去手段は、内部にプロセスガスを導入するガス導入系72と、導入されたガスに高周波放電を生じさせる高周波電源73を含むように構成されている。
【0058】
ガス導入系72及び高周波電源73により、膜剥離防止チャンバー720内に高周波放電を生じさせ、スパッタエッチングや酸素アッシングにより基板保持具90に堆積された膜が除去される。基板保持具90に堆積された膜をある程度除去した後、上記膜コーティング手段により、除去しきれなかった堆積膜の上に、応力が低く且つ密着性の高い膜によりコーティングが行なわれる。
【0059】
ガス導入系72はアルゴンのように化学的に不活性で放電を生じさせ易く且つスパッタ率の高いガスを導入する。また、カーボン膜除去の際にはガス導入系72を介して酸素を導入してもよい。ガス導入系72は流量調整器(図示せず)を備えており、所定の流量でガス導入ができるようになっている。高周波電源73としては、例えば周波数13.56MHz、出力100W〜1000W程度のものが使用できる。一方、膜剥離防止チャンバー720内には、可動電極74が設けられており、整合器731を介して高周波電源73と可動電極74とをつなぐようにして伝送線732が設けられている。伝送線732としては、例えば同軸ケーブルが使用される。
【0060】
可動電極74は、先端が基板保持具90の保持具本体92に接触する電極スプリング741と、絶縁材を介して電極スプリング741を先端に取り付けた電極駆動棒743と、電極駆動棒743に連結された電極駆動源744とを含むように構成されている。電極スプリング741は板バネ状になっている。
【0061】
電極駆動棒743は、膜剥離防止チャンバー720に設けられた貫通孔を貫通している。電極駆動棒743は、膜剥離防止チャンバー720の外側(大気側)に位置する部分にフランジ部746を有する。そして、このフランジ部746と膜剥離防止チャンバー720の外壁面との間にはベローズ748が設けられている。ベローズ748は電極駆動棒743が膜剥離防止チャンバー720を貫通する部分などからの真空リークを防止している。また、電極駆動棒743は中空となっており、内部に絶縁性の緩衝材を介して高周波導入棒747が設けられている。高周波導入棒747の先端は、電極スプリング741に固定されている。そして、電極駆動棒743のベローズ748内に位置する部分には、開口が設けられている。高周波電源73につながる伝送線732は、フランジ部746を気密に貫通するとともにこの開口を通して高周波導入棒747に接続されている。尚、電極駆動源744には、例えばエアシリンダーが使用されており、電極駆動棒743を所定のストロークで前後運動させるようになっている。
【0062】
次に上記構成にかかわる膜除去手段の動作について説明する。前記したように、基板9を保持した状態で成膜チャンバー51、52、53、54及び50内を搬送されて成膜に利用された基板保持具90及び保持爪91の表面には、薄膜が堆積している。また、これらの薄膜の中には応力が非常に高いカーボン保護膜も堆積され得る。アンロードロックチャンバー2において、基板保持具90から成膜済みの基板9が回収される。その後、基板保持具90は、基板9を保持しない状態で、移動手段により膜剥離防止チャンバー720に移動され、ゲートバルブ10が閉じられる。
【0063】
膜剥離防止チャンバー720内は、排気系71によって予め所定の真空圧力まで排気され、その圧力が維持される、そして、電極駆動源744が駆動され、電極駆動棒743が所定のストロークだけ前進する。この結果、電極ホルダー742を介して電極スプリング741も前進し、図5に示すように保持具本体92の側面に接触する。この際、電極スプリング741は、基板保持具本体92に接触することによる衝撃を吸収する。このため電極スプリング741の磨耗等が抑制される。また、電極スプリング741の弾性のため、保持具本体92への接触が確実に維持される。この状態で、高周波電源73が動作し、伝送線732、高周波導入棒747及び電極スプリング741を介して、高周波電圧が保持具本体92と保持爪91に印加される。
【0064】
保持具本体92や保持爪91に高周波電圧が印加されると、接地電位に維持されている膜剥離防止チャンバー720の器壁等との間に電界が形成され、膜剥離防止チャンバー720内に導入されているガスに高周波放電が生じ、高周波放電プラズマが形成される。この際、プラズマと高周波電源73との間には、整合器731に含まれるコンデンサ又は別途設けられるコンデンサ(図示せず)等によるキャパシタンスが存在する。プラズマが形成されている空間にキャパシタンスを介して高周波電界を設定すると、プラズマ中の電子とイオンがキャパシタンスの充放電に作用する。この結果、電子とイオンの移動度の違いから、保持具本体92と保持爪92の表面に自己バイアス電圧と呼ばれる負の電流分の電圧が重畳される。
【0065】
アルゴンガスを膜剥離防止チャンバー720内に導入した場合、プラズマ中のアルゴンイオンは、この負の自己バイアス電圧によって加速されて保持具本体92と保持爪91の表面の堆積膜に入射され、当該堆積膜に衝突する。これにより、堆積膜がスパッタエッチングされ、保持具本体92と保持爪91から除去される。
【0066】
また、アルゴンガスの代わりに、膜剥離防止チャンバー720内に酸素ガスを導入した場合は、酸素プラズマが発生し、これにより活性酸素が生成される。この活性酸素は、前述の応力の高いカーボン保護膜と反応を起こし、一酸化炭素や二酸化炭素のような気体に変化して排出される。これにより、堆積膜が酸素アッシングされ、保持具本体92と保持爪91から除去される。
【0067】
これらのスパッタエッチングやアッシングを所定時間行なった後、高周波電源73の動作は停止される。その後、電極駆動源744を駆動して電極スプリング741を保持具本体92から引き離す。
【0068】
続いて、ガス導入系72によってアルゴンガスを導入し、第1実施形態と同様にして前述の膜コーティング手段を起動させる。即ちスパッタ電源58を動作させ、この結果スパッタ放電が生じてターゲット57がスパッタされ、スパッタされたターゲット57の材料であるTaが基板保持具90及び保持爪91に達して、基板保持具90及び保持爪91の表面に応力の低いTa膜が厚さ1nm以上でコーティングされる。これにより基板保持具90及び保持爪91に付着していた応力の高い膜、特にカーボン保護膜等の膜厚が薄いうちに、応力の低いTa膜によりコーティングすることができる。この結果、従来問題となっていた、基板保持具90及び保持爪91からの堆積膜の剥離が抑制され、基板9の表面へのパーティクル付着を抑制することが出来る。
【0069】
図6は、本発明の第3実施形態にかかわる薄膜作成装置の概略構成を示す平面図である。
【0070】
本実施形態の薄膜作成装置の特徴は、図6に示すように、第2実施形態において説明したものと同様の膜除去手段と膜コーティング手段とを、別々のチャンバー(膜除去チャンバー71及び膜コーティングチャンバー72)に分けて配置している点である。
【0071】
本実施形態の薄膜作成装置によれば、まず、アンロードロックチャンバー2において、基板保持具90から成膜済みの基板9が回収される。この基板保持具90は、基板9を保持しない状態で、移動手段により膜除去チャンバー71に移動する。膜除去チャンバー71において、膜除去手段を使用して、スパッタエッチングや酸素アッシングにより基板保持具90上に堆積した膜が除去される。基板保持具90は、さらに膜コーティングチャンバー72へと移動し、除去しきれなかった堆積膜上に、応力が低く且つ密着性の高いTa膜により1nm以上の厚さでコーティングが行なわれる。
【0072】
この結果、第2実施形態の薄膜作成装置と同様に、基板保持具90及び保持爪91からの堆積膜の剥離が抑制され、基板9の表面へのパーティクル付着を抑制することが出来る。
【0073】
次に、図7と図8を参照して、成膜方法について説明する。
図7は、本願発明に係る薄膜作成装置の概略構成を示す平面図である。図8は、本願発明に係る薄膜作成装置により作成される膜構成の一例である。
成膜チャンバー61、62、63、64、65は、いずれもスパッタリング装置であり、基板の両側にターゲットが配置された構成である。チャンバー66は、ヒートチャンバーである。成膜チャンバー67、68は、CVD装置である。チャンバー69は、予備チャンバーである。それ以外の構成は、図1で示した薄膜作成装置で同一である。
【0074】
ロードロックチャンバー1で基板保持具90に搭載された基板9は、移動手段により、方向転換チャンバー31を経由して、成膜チャンバー61に到達する。成膜チャンバー61では、スパッタリング成膜により、Cr系下地膜801が作成される。次に、基板9は、成膜チャンバー62に搬送され、スパッタリングによりSUL(Soft under layer)層802が作成される。次に、基板9は成膜チャンバー63に搬送され、スパッタリング成膜により、下地層803が成膜される。次に基板9は、方向転換チャンバー32を経由して成膜チャンバー64に到着し、Ruターゲットを用いてスパッタリング成膜により中間層804(主にRu層)が成膜される。次に、基板9は成膜チャンバー65に搬送され、スパッタリング成膜によりCo系磁性膜805が成膜される。次に、基板9は、ヒートチャンバー66に搬送され、基板9が加熱される。次に、基板9は、方向転換チャンバー33を経由して、成膜チャンバー67および68に搬送され、CVD成膜により、ダイアモンドライクカーボンによる保護膜806が成膜される。成膜チャンバー67および68は、保護膜作成チャンバーであり、成膜チャンバー67で、必要な厚さの半分の厚さの保護膜が作成され、次の成膜チャンバー68で、残り半分の厚さの保護膜が作成される。
【0075】
保護膜作成チャンバー67、68は、CH4等の有機化合物ガスを内部に導入する不図示のプロセスガス導入系と、プロセスガスに高周波エネルギーを与えてプラズマを形成する不図示のプラズマ形成手段等を備えている。有機化合物ガスがプラズマ中で分解し、基板9の表面にカーボンの薄膜が堆積するようになっている。
【0076】
また、保護膜作成チャンバー67、68の次に基板9が搬送される真空チャンバーは、予備チャンバー69となっている。この予備チャンバー69は、必要に応じて基板9を冷却したりするチャンバーとして構成される。この予備チャンバー69を経た後、最後の方向転換チャンバー34を経て基板9がアンロードロックチャンバー2に達するようになっている。
【0077】
次に、上記構成に係る本実施形態の装置の全体の動作について説明する。本実施形態の装置では、すべての真空チャンバーに基板保持具90が常に位置している。そして、最も時間のかかる作業を行う真空チャンバー(律速チャンバー)での作業時間で決まるタクトタイムごとに、各真空チャンバー内の基板保持具90は次の真空チャンバーに同時に移動する。特定の基板9の動きに注目すると、一つの基板9は、ロードロックチャンバー1で基板保持具90に搭載された後、成膜チャンバー61、成膜チャンバー62、成膜チャンバー63、成膜チャンバー64、成膜チャンバー65、ヒートチャンバー66を経て、積層膜が作成される。その後、基板9は保護膜作成チャンバー67、68で保護膜が作成され、補助チャンバー69を経てアンロードロックチャンバー2に達する。そして、アンロードロックチャンバー2で、基板9は基板保持具90から回収される。
【0078】
基板保持具90は、アンロードロックチャンバー2で空(基板9を保持しない状態)となった後、リターン移動路に形成された膜剥離防止チャンバー710に到達する。膜剥離防止チャンバー710では、保護膜として使用したカーボンよりも応力が小さいターゲット(例えば、Cr)したようにコーティングを行う。ここで、使用するターゲットは、成膜チャンバー(スパッタリングチャンバー)61、62、63、64、65で使用したターゲットと同一であることが好ましい。そして、その次のタクトタイムで、ロードロックチャンバー1に移動して、未成膜の基板9の搭載動作が行われる。このようにして、基板保持具90は、図7に示す方形の移動路80を周回して、成膜処理に何回も使用される。
【0079】
このようにして基板保持具90は、移動路80を所定回数周回して所定回数の成膜処理に利用される。
なお、上述したように、基板保持具90が周回する毎にコーティング動作を行うようにしてもよいが、基板保持具90が所定回数(例えば2〜4回程度)の周回を繰り返した後にコーティング動作を行うようにしてもよい。
【0080】
上述した構成及び動作に係る本実施形態の装置では、アンロードロックチャンバー2からロードロックチャンバー1に戻すリターン移動路上に膜除去機構が設けられているので、装置の構成が簡略化されるメリットがある。即ち、前述した通り、膜除去の動作を行う際、基板9の損傷等を防止する観点から、基板保持具90が基板9を保持しない状態(空の状態)とすることが好ましい。この場合、膜除去機構がリターン移動路上に配置されていない場合、例えばロードロックチャンバー1とプリヒートチャンバー4との間の移動路上にある場合、膜除去を行う基板保持具90については、ロードロックチャンバー1で基板9の搭載動作を行わないよう構成することになる。この場合、ロードロックチャンバー1内の搭載用ロボット11の駆動プログラムを修正することが必要になる。
【0081】
また、基板9を保持しない基板保持具90が成膜チャンバー51,52,53,54,50内に位置する際に成膜が行われると、保持爪91の表面領域のうち基板9が陰になって本来は堆積しない領域にまで膜が堆積してしまう。このため、基板9を保持しない基板保持具90が成膜チャンバー51,52,53,54,50に達した場合には、成膜動作が行われないよう成膜チャンバー51,52,53,54,50内の各部の動作を制御することが好ましい。しかし、これについても制御プログラムの修正が必要であり、また装置全体の動作が複雑になる欠点がある。さらに、リターン移動路以外の移動路上に膜除去機構を配置する構成では、膜除去が行われた後に基板保持具90が空の状態でロードロックチャンバー1まで移動してから基板9の搭載動作が行われる。この部分の移動は、無駄な動きである。
【0082】
一方、本実施形態のように、アンロードロックチャンバー2からロードロックチャンバー1へのリターン移動路上に膜除去機構があると、成膜済みの基板9を回収した後に直ちに膜除去を行うことが可能で、膜除去後直ちに未成膜の基板9の搭載を行うことが可能である。このため、基板保持具90の移動に無駄がなく、制御のためのプログラムの修正も非常に少ない。さらに、基板保持具90が空の状態で処理チャンバーを移動することがないため、処理用の真空チャンバー4,50〜54の制御プログラムの修正も不要である。このようなことから、本実施形態では、装置の構成が簡略となっており、既存の装置への適用が容易である。尚、「リターン移動路」とは、成膜済みの基板が回収された基板保持具が、次の未成膜の基板の保持のために移動する際の経路の意味であって、その移動のための特別な機構の有無を問わない。
【0083】
また、膜除去機構が膜除去チャンバー70に設けられていて膜除去チャンバー70がロードロックチャンバー1及びアンロードロックチャンバー2に対して真空が連通するようにして気密に接続されている点は、基板保持具90の大気による汚損を防止するという技術的意義を有する。即ち、基板保持具90が大気に晒されると、前述したように、基板保持具90の表面に大気中の塵埃や酸素,水分等が付着することがある。このような汚損物質が基板保持具90を介して装置内に持ち込まれると、基板9を汚損したり、作成される薄膜の品質を損なう恐れがある。しかしながら、本実施形態では、膜除去が真空中で行われる上、アンロードロックチャンバー2からロードロックチャンバー1に戻るまでの過程で基板保持具90が大気に晒されることがないので、このような汚損の恐れはない。
【0084】
尚、このような大気中の汚損物質が基板保持具90の表面に付着した場合でも、膜除去機構による膜除去の際、汚損物質も一緒に除去できる場合がある。従って、アンロードロックチャンバー2から膜除去チャンバー70までの間では基板保持具90が大気に晒されても良い場合がある。
【0085】
また、本実施形態の装置は、リターン移動路の部分以外の移動路の部分でも、基板保持具90は大気に晒されず、常に真空中で移動して成膜が行われるため、大気中の汚損物質が基板保持具90を介して装置内に持ち込まれることがない。この点でも、基板9の汚損や薄膜の品質低下が低減されている。
【0086】
さらに、表面に薄膜が堆積した基板保持具90が大気側に取り出されると、薄膜の表面が酸化したり異物が付着したりする。そして、次の基板9が保持されて表面に薄膜が作成されると、そのような表面が酸化したり異物が付着したりした薄膜の上にさらに薄膜が堆積することになる。このような性質の異なる薄膜が積層されると、応力が高く、剥離し易い。従って、上記パーティクルの発生の恐れが高くなる。しかしながら、本実施形態の薄膜作成装置は、基板保持具90が大気側には取り出されないので、このような問題はない。
【0087】
上述した各実施形態では、保持爪91の表面の堆積膜の除去について主に説明したが、保持具本体92の表面の堆積膜も同様に除去されており、保持具本体92の表面から放出されるパーティクルも低減されている。
【0088】
また、上記各実施形態では、膜除去機構を備えた専用の膜除去チャンバー70が設けられたが、これは必須の条件ではない。例えば、アンロードロックチャンバー2又はロードロックチャンバー1内に膜除去機構を設けるようにしてもよい。プラズマを形成して除去する構成の場合、搭載用ロボット11又は回収用ロボット21がプラズマに晒される恐れがあるので難しいが、光又は超音波等により除去する構成の場合、充分に実現性がある。但し、専用の膜除去チャンバー70を用意すると、プラズマを形成したり、反応性ガスを使用したりというような構成を自由に選択できるメリットがある。尚、膜除去チャンバー70は、ロードロックチャンバー1及びアンロードロックチャンバー2に直接隣接して設けられている必要はなく、間に別の真空チャンバーが介在していてもよい。要は、真空が連通するようになっていればよい。
【0089】
以上の説明では、基板保持具90は、保持爪91によって基板9の周縁を係止するものであったが、情報記録ディスク用基板のように中央に円形の開口がある基板については、その中央の開口の縁を係止するようにしてもよい。但し、保持爪が中央の開口の縁を係止する構成では、保持爪を設ける構造上、基板の両面を同時に成膜することはできない。また、最近では、ノートパソコン用ハードディスクのように非常に小型の情報記録ディスクも多くなっているが、小型の基板については、中央の開口の縁で係止するのは困難である。従って、基板9の周縁で係止する構成は、基板9の両面同時成膜を可能にし、小型の基板にも対応できるというメリットがある。
【0090】
尚、膜除去チャンバー70において、複数の基板保持具90が滞留する構成を採用することも可能である。即ち、膜除去を行う必要がある基板保持具90を複数収容した後、膜除去機構を動作させ、複数の基板保持具90に対して一括して膜除去を行うようにしてもよい。
【0091】
以上説明した通り、本願の各請求項の発明によれば、基板保持具の表面の堆積膜が除去されるので、堆積膜の剥離に起因したパーティクルの発生などの問題が抑制される。そして、膜除去機構がアンロードロックチャンバーからロードロックチャンバーへのリターン移動路上に設けられているので、基板保持具の移動に無駄がなく、装置の構成が簡略化される。また、請求項2の発明によれば、上記効果に加え、基板保持具を大気側に取り出すことなくその表面の堆積膜が除去されるので、基板保持具を介して大気中の汚損物質が装置内に持ち込まれることが無い。このため、基板の汚損や作成される薄膜の汚損が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本願発明の第1及び第2の実施形態に係る薄膜作成装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す装置に設けられた基板保持具及び移動手段の構成を示す正面概略図である。
【図3】図1に示す装置に設けられた基板保持具及び移動手段の構成を示す側断面概略図である。
【図4】本願発明の第1実施形態に係る膜剥離防止チャンバーの構成を示す側断面概略図である。
【図5】本願発明の第2実施形態に係る膜剥離防止チャンバーの構成を示す側断面概略図である。
【図6】本願発明の第3実施形態に係る情報記録ディスク製造用の薄膜作成装置の概略構成を示す平面図である。
【図7】本願発明に係る薄膜作成装置の概略構成を示す平面図である。
【図8】本願発明に係る薄膜作成装置により作成される膜構成である。
【符号の説明】
【0093】
1 ロードロックチャンバー
2 アンロードロックチャンバー
4 プリヒートチャンバー
9 基板
10 ゲートバルブ
11、11' 搭載用ロボット
12 基板投入用チャンバー
13 基板投入用ストッカー
21、21' 回収用ロボット
22 基板回収チャンバー
23 基板回収用ストッカー
31,32,33,34 方向転換チャンバー
51、52,53,54 スパッタ成膜チャンバー
50 保護膜作成チャンバー
71 排気系
72 ガス導入系
73 高周波電源
74 可動電極
80 基板の移動路
90 基板保持具
91 保持爪
92 保持具本体
93 レバー
500 予備チャンバー
710 第1実施形態の膜剥離防止チャンバー
720 第2実施形態の膜剥離防止チャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空中で基板上に所定の薄膜を作成する成膜チャンバーと、
基板を保持する基板保持具と、
前記成膜チャンバーに気密に接続され、未成膜の基板を前記成膜チャンバーに搬入する前に前記未成膜の基板を前記基板保持具に搭載するロードロックチャンバーと、
前記成膜チャンバーに気密に接続され、成膜済みの基板を搭載した前記基板保持具を前記成膜チャンバーから取り出して当該基板を前記基板保持具から回収するアンロードロックチャンバーと、
前記アンロードロックチャンバーにおいて成膜済みの基板が回収された前記基板保持具を前記ロードロックチャンバーに戻す為のリターン移動路と、
を無端状に配置し、前記基板保持具を移動させる移動手段が周回可能な薄膜作成装置において、
基板保持具に堆積した膜の剥離を防止する方法であって、
前記リターン移動路上で、前記基板保持具に堆積した膜をコーティング材料でコーティングする工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コーティングする工程は、前記コーティング材料のターゲットをスパッタリングすることにより、前記基板保持具に堆積した膜を前記コーティング材料でコーティングする工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング材料は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Al,Ga,Inを含むグループから選択される材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングする工程によってコーティングされる膜の厚さは、1nm以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基板保持具は、基板保持具本体と前記基板保持具本体の周縁に配置された保持爪とからなり、前記コーティングする工程は、前記保持爪及び前記基板保持具本体の表面に堆積した膜をコーティングする工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
真空中で基板上に所定の薄膜を作成する成膜チャンバーと、
基板を保持する基板保持具と、
前記成膜チャンバーに気密に接続され、未成膜の基板を前記成膜チャンバーに搬入する前に当該未成膜の基板を前記基板保持具に搭載するロードロックチャンバーと、
前記成膜チャンバーに気密に接続され、成膜済みの基板を搭載した前記基板保持具を前記成膜チャンバーから取り出して当該基板を前記基板保持具から回収するアンロードロックチャンバーと、
前記アンロードロックチャンバーにおいて成膜済みの基板が回収された前記基板保持具を前記ロードロックチャンバーに戻す為のリターン移動路と、
を無端状に配置し、前記基板保持具を移動させる移動手段が周回可能な薄膜作成装置において、基板保持具に堆積した膜の剥離を防止する方法であって、
前記リターン移動路上で、前記基板保持具に堆積した膜を除去する工程と、
前記基板保持具に堆積した膜をコーティング材料でコーティングする工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記膜を除去する工程と前記コーティングする工程とは、前記リターン移動路上に設けられ、前記アンロードロックチャンバー及び前記ロードロックチャンバーの間に気密に接続された膜剥離防止チャンバー内で、真空状態で行われることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングする工程は、前記コーティング材料のターゲットをスパッタリングすることにより、前記基板保持具に堆積した膜を前記コーティング材料でコーティングする工程を含むことを特徴とする請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング材料は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Al,Ga,Inを含むグループから選択される材料であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティングする工程によってコーティングされる膜の厚さは、1nm以上であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基板保持具は、基板保持具本体と前記基板保持具の周縁に配置された保持爪とからなり、前記膜を除去する工程及び前記コーティングする工程は、前記保持爪及び前記基板保持具本体の表面に堆積した膜を除去する工程、及びその後に前記保持爪及び前記基板保持具本体の表面に残った膜をコーティングする工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
真空中で基板上に所定の薄膜を作成する成膜チャンバーと、
基板を保持する基板保持具と、
前記成膜チャンバーに気密に接続され、未成膜の基板を前記成膜チャンバーに搬入する前に当該未成膜の基板を前記基板保持具に搭載するロードロックチャンバーと、
前記成膜チャンバーに気密に接続され、成膜済みの基板を搭載した前記基板保持具を前記成膜チャンバーから取り出して当該基板を前記基板保持具から回収するアンロードロックチャンバーと、
前記基板保持具を移動させる移動手段と、
前記アンロードロックチャンバーにおいて成膜済みの基板が回収された前記基板保持具を前記ロードロックチャンバーに戻す為のリターン移動路と、
を有する薄膜作成装置であって、
前記移動手段は、前記基板を搭載した前記基板保持具を、前記ロードロックチャンバー、前記成膜チャンバー、前記アンロードロックチャンバーの順に移動させ、
前記リターン移動路上に、前記基板保持具に堆積した膜をコーティング材料でコーティングする膜コーティング手段が設けられていることを特徴とする薄膜作成装置。
【請求項13】
前記膜コーティング手段を有した膜剥離防止チャンバーが前記リターン移動路上に設けられ、前記基板保持具に堆積した膜のコーティングが真空中で行なえるようになっており、当該膜剥離防止チャンバーは、前記アンロードロックチャンバー及び前記ロードロックチャンバーの間に気密に接続されていることを特徴とする請求項12記載の薄膜作成装置。
【請求項14】
前記膜コーティング手段は、前記コーティング材料のターゲットをスパッタリングすることにより、前記基板保持具に堆積した膜を前記コーティング材料でコーティングを行なうことを特徴とする請求項12または13記載の薄膜作成装置。
【請求項15】
前記コーティング材料は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Al,Ga,Inを含むグループから選択された材料であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の薄膜作成装置。
【請求項16】
前記膜コーティング手段によってコーティングされる膜の厚さは、1nm以上であることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の薄膜作成装置。
【請求項17】
前記基板保持具は、基板保持具本体と前記基板保持具本体の周縁に配置された保持爪とからなり、前記膜コーティング手段は、前記保持爪及び前記基板保持具本体の表面に堆積した膜をコーティングすることを特徴とする請求項1記載の薄膜作成装置。
【請求項18】
真空中で基板上に所定の薄膜を作成する成膜チャンバーと、
基板を保持する基板保持具と、
前記成膜チャンバーに気密に接続され、未成膜の基板を成膜チャンバーに搬入する前に当該未成膜の基板を前記基板保持具に搭載するロードロックチャンバーと、
前記成膜チャンバーに気密に接続され、成膜済みの基板を搭載した前記基板保持具を前記成膜チャンバーから取り出して当該基板を前記基板保持具から回収するアンロードロックチャンバーと、
前記基板保持具を移動させる移動手段と、
前記アンロードロックチャンバーにおいて成膜済みの基板が回収された前記基板保持具を前記ロードロックチャンバーに戻す為のリターン移動路と、
を有する薄膜作成装置であって、
前記移動手段は、前記基板を搭載した前記基板保持具を、前記ロードロックチャンバー、前記成膜チャンバー、前記アンロードロックチャンバーの順に移動させ、
前記リターン移動路上に、前記基板保持具に堆積した膜を除去する膜除去手段と、前記基板保持具上に残った膜をコーティング材料でコーティングする膜コーティング手段とが設けられていることを特徴とする薄膜作成装置。
【請求項19】
前記膜除去手段と前記膜コーティング手段とを有する膜剥離防止チャンバーが前記リターン移動路上に設けられ、前記基板保持具に堆積した膜の除去及び前記基板保持具上に残った膜に対する膜コーティングが真空中で行なえるようになっており、当該膜剥離防止チャンバーは、前記アンロードロックチャンバー及び前記ロードロックチャンバーの間に気密に接続されていることを特徴とする請求項18記載の薄膜作成装置。
【請求項20】
前記膜コーティング手段は、前記コーティング材料のターゲットをスパッタリングすることにより、前記基板保持具に堆積した膜を前記コーティング材料でコーティングすることを特徴とする請求項18または19記載の薄膜作成装置。
【請求項21】
前記コーティング材料は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Al,Ga,Inを含むグループから選択される材料であることを特徴とする請求項18乃至20のいずれか1項に記載の薄膜作成装置。
【請求項22】
前記膜コーティング手段によってコーティングされる膜の厚さは、1nm以上であることを特徴とする請求項18乃至21のいずれか1項に記載の薄膜作成装置。
【請求項23】
前記基板保持具は、基板保持具本体と前記基板保持具本体の周縁に配置された保持爪とからなり、前記膜除去手段及び膜コーティング手段は、前記保持爪及び前記基板保持具本体の表面に堆積した膜を除去し、その後に前記保持爪及び前記基板保持具本体の表面に残った膜をコーティングすることを特徴とする請求項1記載の薄膜作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−194360(P2009−194360A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213708(P2008−213708)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】